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( 1 )
Glycative Stress ResearchOnline edition : ISSN 2188-3610
Print edition : ISSN 2188-3602Received: September 2, 2017Accepted : October 26, 2017
Published online : December 31, 2017
Glycative Stress Research 2017; 4 (4): 329-340本論文を引用する際はこちらを引用してください。
(c) Society for Glycative Stress Research
Original article
Masayuki Yagi 1), Wakako Takabe 1), Shigeru Matsumi 2), Akihiko Shimode 2), Tetsuya Maruyama 2), Yoshikazu Yonei 1)
1) Anti-Aging Medical Research Center and Glycative Stress Research Center, Faculty of Life and Medical Sciences, Doshisha University, Kyoto, Japan 2) Yomeishu Seizo Co. Ltd., Tokyo, Japan
Glycative Stress Research 2017; 4 (4): 329-340(c) Society for Glycative Stress Research
Biochemistry of Kuromoji (Lindera umbellata) extract: Anti-oxidative and anti-glycative actions.
(原著論文-日本語翻訳版)クロモジ(Lindera umbellata)抽出物の生化学特性:抗酸化作用、抗糖化作用
抄録
八木雅之 1)、高部稚子 1)、松見 繁 2)、下出昭彦 2)、丸山徹也 2)、米井嘉一 1)
1) 同志社大学大学院生命医科学研究科アンチエイジングリサーチセンター・糖化ストレス研究センター2) 養命酒製造株式会社
[目的]我々が参加している SIPプログラムでは農業産物の中から新規機能を有する素材を見つけ、製品化を視野に入れた社会実装を目指している。先行研究からスクリーニングによって得られたクロモジ(Lindera umbellata)について生化学的性質を検証した。
[方法] クロモジ抽出物(試験品)の抗糖化作用、抗酸化作用、酵素阻害活性について検証した。抗糖化活性についてはターゲット蛋白(ヒト血清アルブミン [HSA]、1 型コラーゲン [Col]、エラスチン [Ela])とグルコース
(Glu)を反応させた際の糖化最終生成物 AGEs(蛍光性 AGEs、カルボキシメチルリジン [CML], ペントシジン)及び中間体(3-deoxyglucosone [3DG], glyoxal [GO], methylglyoxal [MGO])生成抑制、架橋(α ジケトン構造)切断活性、酸化蛋白分解酵素(OPH)活性増強作用を測定した。抗酸化活性については DPPH 法、ORAC 法などを行った。酵素阻害活性について α アミラーゼ、α グルコシダーゼ、リパーゼ、アンジオテンシン転換酵素
(ACE)に対する阻害活性を測定した。
連絡先: 教授 米井嘉一 同志社大学大学院生命医科学研究科アンチエイジングリサーチセンター/糖化ストレス研究センター〒610 - 0394 京都府京田辺市多々羅都谷 1-3電話&FAX:0774-65-6394 メール:yyonei@mail.doshisha.ac.jp共著者 : 八木雅之 yagi@mail.doshisha.ac.jp;高部稚子 wtakabe@mail.doshisha.ac.jp;松見 繁 s-matsumi@yomeishu.co.jp;下出昭彦 a-shimode@yomeishu.co.jp;丸山徹也 te-maruyama@yomeishu.co.jp
( 2 )
Glycative Stress Research
KEY WORDS: クロモジ(Lindera umbellata)、糖化最終生成物(adavneced glycation end products: AGEs)、架橋切断、OPH 活性、糖尿病性腎症
はじめに 我々の研究室は 2014 年から国家プロジェクト「戦略
的イノベーション創造プログラム(Cross-Ministerial Strategic Innovation Promotion Program : SIP)」の農林水産部門である「次世代農林水産業創造技術:アグリイノベーション創出」、その中の「次世代機能性農林水産物・食品の開発」プログラムに参画している。日本の農林水産物に次世代型新規機能性を見出し、付加価値をつけること通じて農林水産業の活性化に貢献することが目的である。
これまでに我々の研究室は 500 種以上の食品素材を対象に、ターゲット蛋白をヒト血清アルブミン(human serum albumin: HSA)とした in vitro 糖化反応モデルを用いて、糖化最終生成物(advanced glycation end products: AGEs)生成抑制活性を測定し、抗糖化素材の探索を行ってきた 1-5)。さらに消化管吸収特性の高い素材としてクロモジ(Lindera umbellata)とヨモギ(Artemisia indica var. maximowiczii)を選定、糖尿病モデル動物における抗糖化作用を発揮するか否かについて検証した 6)。ストレプトゾトシン(streptozotocin: STZ)誘発糖尿病ラットに対してクロモジ抽出物を 8 週間投与し、糖脂質代謝指標、糖尿病性腎症および白内障の進展予防効果を検証した結果、クロモジ抽出物投与により中性脂肪(triglyceride: TG)、遊離脂肪酸(free fatty acid: FFA)の改善、腎組織中炎症性サイトカイン(tumor necrosis factor-α: TNF-α、interleukin-6: IL-6)の低下および腎機能の改善、白内障の進展予防効果を認めた 6)。クロモジ抽出物の社会実装を進めるために、今回は抗糖化作用、抗酸化作用、酵素活性阻害作用など生化学的特性を検証した。
方法試験品としてクロモジ(Lindera umbellata)幹枝の乾
燥粉砕物 6) を用いた。試験品は養命酒製造株式会社(東京都渋谷区)より提供を受けた。
(1)糖化反応阻害作用試験(ヒト血清アルブミン 反応系:human serum albumin [HSA])
AGEs は糖化反応における最終生成物の総称であり、一部の AGEs (ペントシジン、 クロスリン、 ピロピリジンなど)は特徴的な蛍光性を有する 7)。糖化反応阻害作用はHSA- グルコース(glucose: Glu)糖化反応系に試験品を添加し、試験品による蛍光性 AGEs、3-deoxyglucosone(3DG)、ペントシジン、カルボキシメチルリジン(carboxymethyl-lysine: CML)の生成阻害率を測定した。
蛍光性 AGEsについては、既報の如く 8)、in vitro 糖化反応 0.1 mol/L NaH2PO4-Na2HPO4 リン酸緩衝液( pH 7.4)、8 mg/mL HSA、0.2 moL/LGlu 溶液中に、調製した各濃度のサンプルを 1/10 濃度になるように添加し、60℃で 40 時間インキュベートした。対照(コントロール)としては試験品サンプルの代わりに蒸留水を添加したものを用いた。蛍光性 AGEs 測定は、糖化反応終了後、反応液中に生成した蛍光性 AGEs をマイクロプレートリーダーで測定した(励起波長 370 nm /蛍光波長 440 nm)。
3DG 測定については、糖化反応終了後、反応液中に生成した 3DG を 2.3-diaminonaphthalen(DAN)プレラベル化逆相高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography: HPLC)により定量した。
CML 測定については、反応液中に生成した CML を測 定 キット(CircuLex CML / Nε-(carboxymethyl) lysine, サイクレックス)を使用して、enzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)で測定した。
ペントシジン測定 HPLC 法の場合は Scheijena らの方法 9) を参考に、反応液を塩酸加水分解後、逆相 HPLC で測定した。
糖化反応阻害作用の陽性対照としては糖化反応阻害剤の一種であるアミノグアニジン(aminoguanidine: AG)を使用した。
AGEs の生成阻害率(%)は、in vitro 糖化反応系においてサンプルを添加した反応液(A)、グルコース水溶液の代わりに蒸留水を添加したもの(B)、サンプルを添加し ない溶液のみを添加してインキュベーションしたもの(C)、
[結果] 試験品は HSA のみならず Col、Ela に対しても強い AGEs 生成抑制活性を示し、蛍光性 AGEs、CML、ペントシジン、中間体の生成を幅広く抑制した。また架橋切断作用、OPH 活性増強作用も中程度認めた。DPPH 法、ORAC 法により強力な抗酸化活性が示された。酵素阻害活性については強力なリパーゼ阻害を示し、ACE 阻害、α アミラーゼと α グルコシダーゼに対する阻害活性は中等度であった。
[結論] 試験品は AGEs 生成抑制、AGEs 分解促進、Glu や脂質の消化吸収遅延作用を有し、腎機能保護作用を有する可能性が示された。今後本試験品についてはヒトにおける安全性評価、効能評価を実施する予定とした。
( 3 )
クロモジ抽出物の抗酸化作用、抗糖化作用
ブランクとしてグルコ ースの代わりに蒸留水を添加したもの(D)として下記の式に従って算出した。抗 AGEs 活性は IC50(50% 生成阻害濃度)を算出した。
AGEs 生成阻害率 (%) = {1 − (A − B) / (C − D)} × 100
(2)糖化反応阻害作用試験(1型コラーゲン反応系: type I collagen [Col])
糖化反応阻害作用は、前述の HSA 反応系試験で使用した HSA の代わりに 1.2 mg/mL 牛皮由来 1 型コラーゲン
(Col)を用いた Col-Glu 糖化反応系に試験サンプルを添加して 10日間反応を行った。試験サンプルによる蛍光性AGEs、3DG、CML の生成阻害率を測定した。
(3)糖化反応阻害作用試験(エラスチン反応系: elastin [Ela])
糖化反応阻害作用は、前述の HSA 反応系試験で使用した HSAの代わりに 6 mg/mL 豚由来エラスチン(Ela)を用いた Ela-Glu 糖化反応系に試験サンプルを添加して 10日間反応を行った。
(4)AGEs 分解作用試験 AGEs 架橋切断作用
AGEs が関与する架橋構造を分解する化合物として N−フェナシルチアゾリウムブロミド(N-phenacylthiazolium bromide: PTB)が報告されている 10)。PTB は α ジケトン構造の C− C 結合を切断分解することで血管内の AGEsの蓄積を抑制し、糖尿病性血管合併症の治療に寄与する可能性が示唆されている。このため本作用は糖化ストレスの治療的なアプローチとして注目されている。本試験では αジケトン構造を有する 1-フェニル -1, 2 -プロパンジオン
(1-phenyl-1, 2-propanedione: PPD)をモデル基質とした反応系を使用して、AGEs 架橋切断 作用を評価した。陽性対照としては PTB を使用した。
AGEs 架橋切断作用の測定には、サンプル溶液または 10 mmol/L PTB、10 mmol/L PPD、0.2 mol/L リン酸緩衝液(pH 7.4)を 5 : 1 : 4 の割合で混合し、37℃ で 8 時間反応させた(n = 3)。反応終了後、塩酸を加えて反応停止させた。反応液は 20℃、3,000 × g で 10 分間遠心分離し、上清中の安息香酸量を逆相 HPLC で分析した。反応液中の安息香酸量は、別途測定したサンプル中の安息香酸量を差し引いて求めた。1 mol の PPD は 1 mol の安息香酸を生成することから、以下の式で架橋切断率を算出した。架橋切断の相対値は PTB の架橋切断率を 100 とした時の値を求めた。
架橋切断率 (%) = { (A − B) / C} × 100 A:反応液中の安息香酸量、B:サンプル中の安息香酸量、
C:反応に供した PPD 量(基質量)。
OPH 活性増強作用酸化蛋白分解酵素(oxidized protein hydrolase: OPH)
は蛋白の N 末端アシル化アミノ酸を遊離するセリンプロ
テアーゼの一種で、アシルアミノ酸遊離酵素(acylamino-acid releasing enzyme: AARE)、アシル化ペプチド分解酵素(acylpeptide hydrolase: APH)とも言われている 11)。OPH はブタ肝臓、ラット脳、ヒト血液、皮膚角層などの生体組織に広く存在している。OPH は酸化や糖化蛋白を優先的に分解するとともにプロテアソームと協働して老化蛋白を分解すること、アルツハイマー病の原因であるアミロイド β を減少させることが報告されている 12)。また OPH が AGEs を分解することも確認されている。本測定では OPH とその反応基質である N-acetyl-L-alanine p-nitro-anilide(AAPA)との反応系に試験品溶液を添加し、OPH の酵素反応への影響を評価した。
OPHとしてacylamino-acid releasing enzyme(AARE)、OPH の反応基質として AAPA 溶液を使用した。測定にはOPH を 0.01 U/mL、0.005 U/mL、0.001 U/mL に 調 製して使用した。96 ウェルマイクロプレートの各ウェルにOPH、AAPA、試料溶液を混合添加し、37°C に設定したインキュベーター内で 4 時間反応させた反応液の 405 nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダーで測定した。OPH の酵素活性は 1時間当たりの吸光度変化量(反応速度)を求めた。同時に reference(Ref)として試料無添加時の反応速度を求め、下式に従って Ref の反応速度を 100%とした時の活性増強作用を算出した。OPH 活性増強作用の対照にはエピガロカテキンガレート(epigallocatechin gallate: EGCg)を使用した。
OPH 活性増強作用 (%) =(試料の OPH 反応速度/Ref の OPH 反応速度)× 100
(5)抗酸化作用試験 酸化ストレスは、生体内で生成する活性酸素群の酸化損
傷力と生体内の抗酸化システムの抗酸化ポテンシャルとの差として定義され、老化やさまざまな疾患の進行に関与する。本評価試験では 1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl(DPPH)ラジカルを用いた DPPH 法、アメリカ農務省で開発され た ORAC(Oxygen Radical Absorbance Capacity)法、electron spin resonance(ESR)スピントラッピング法、antioxidant potential(AP)法 13) の 4 種類の測定法で、 様々な観点から試験品の抗酸化作用を評価した。抗酸化作用の比較には、同条件で測定した野菜、ハーブ、茶・健康茶などのデータと相対比較した。
DPPH 法では、DPPH のフリーラジカルを消去する作用を測定した。ORAC 法では 2, 2’- azobis (2-amidino-propane) dihydrochloride が熱分解して生成したフリーラジカルを消去する作用を測定した。ESR スピントラッピング法では、ESR 装置を使用して、スーパーオキシドラジカル(O2・−)、ヒドロキシルラジカル(HO・)、一重項酸素(1O2)の消去作用を同時に測定した。上述の測定はデザイナーフーズ株式会社(名古屋市千種区)にて行った。
AP 法では、抗酸化力の測定にはチオシアン酸化合物と鉄(Ⅲ)イオンを混合すると赤色の錯体を形成し、その錯体が試料の還元作用により鉄(Ⅱ)イオンに還元されて脱色
( 4 )
Glycative Stress Research
される変化を吸光度で測定した 13)。抗酸化力はアスコルビン酸(ビタミン C)当量で示し、同条件で測定した野菜、ハーブ、茶・健康茶などのデータと比較した。測定にはスポットケム i-Pack Oxystress Test(アークレイ株式会社、京都市中京区)を使用した。
(6)酵素阻害作用試験 アミラーゼ阻害作用試験
アミラーゼ阻害作用の検討には Enzy Chrom α-AmylaseAssay Kit(BioAssay System, Hayward, CA, USA)および α-Amylase from Porcine pancrease(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)を使用した。マイクロプレートの各ウェルにキット付属の酵素、Assay Buffer、Glu STD を10 μL ずつ分注した。その後、各ウェルのサンプルに対応する Working Reagent(試料溶液を含む)を 40 μL ずつ分注し、 撹拌後 15 分間反応させた。その後、各ウェルに発色試薬を 150 μL 分注し、室温で 20 分間反応させ。585 nm の吸光度を測定した。阻害作用の陽性対照としてアミラーゼ阻害薬のボグリボース(voglibose)を使用した。アミラーゼ阻害率は以下の計算式にて算出した。
アミラーゼ阻害率 (% ) = ( 1− A / B ) × 100 A:試料添加系の吸光値、B:各抽出溶媒添加系の吸光
値(コントロール:全発色)
αグルコシダーゼ阻害作用試験α グルコシダーゼ阻害作用の検討には QuantiChrom
αGlucosidase Assay Kit DAGD-100(BioAssay System)および α- Glucosidase としてラット小腸アセトンパウダ ー
(Sigma-Aldrich)を使用した。 マイクロプレートリーダーの測定部温度を 30℃ に設定
後、マイクロプレートの各ウェルに、試料溶液 200 μL および α - グルコシダーゼ溶液、Assay Buffer(pH 7.0)を各ウェルに応じて 20 μL 分注して撹拌した。その後、各ウェルのサンプルに対応する Working Solution を 200 μL ずつ分注して反応 を開始させ、波長 4 05 nm の吸光度変化を 30 分間測定した。阻害作用の陽性対照としては α グルコシダーゼ阻害薬のアカルボース(acarbose)を使用した。α グルコシダーゼ阻害率は以下の計算式にて算出した。
α グルコシダーゼ阻害率 (%) = ( 1− A / B) × 100 A:試料添加系の吸光値、B:各抽出溶媒添加系の吸光
値(コントロール:全発色)。
DDP-4 阻害作用試験DPP- 4(dipeptidyl peptidase-4)は細胞表面に存在す
るセリンペプチダーゼの一種で、ポリプチド鎖の N 末端から X-プロリンまたは X -アラニンを切断する生体内酵素である。DPP-4 は哺乳動物組織の肝細胞や膵臓上皮細胞、腸上皮細胞、腎皮質で高発現している。また DPP-4は GLP-1 などのインクレチンの分解によるグルコース恒常性において重要な役割を担っているため 2 型糖尿病の創薬ターゲットとして注目されている。本方法では蛍光標
識された DPP-4 基質が分解される時に発する蛍光強度を測定することにより DPP-4 活性を測定した。陽性対照として DPP-4 阻害剤である P32/98- 競争剤を使用した。測定 に は SensoLyte Rh110 DPPⅣ Assay Kit(AnaSpec, Fremont, CA, USA)を使用した。
測定キットの記載の方法に従い、試験サンプル 10 μL と酵素希釈液 40 μL をマイクロプレートのウェルに入れ、予め 37℃ でプレインキュベーションした基質液を各ウェルに 50 uL ずつ入れた。その後、マイクロプレートリーダーを用いて 37℃ で 60 分間、励起波長 492 nm /蛍光波長533 nm における蛍光強度を測定した。DPP-4 阻害率は以下の計算式にて算出した。
DPP-4 阻害率 (%) = ( 1− A / B) × 100 A:試料添加系の蛍光値、B:各抽出溶媒添加系の蛍光
値(コントロール:全発色)。
アンジオテンシン転換酵素(ACE)阻害作用試験アンジオテンシン転換酵素(angiotensin converting
enzyme: ACE)はレニン - アンジオテンシン系において、アンジオテンシン Ⅰ からアンジオテンシン ⅠⅠ に変換する酵 素 で あ る。 本 測 定 で は 3-hydroxybutyryl-Gly-Gly-Gly(3HB-GGG)から ACE によって切り出されてくる 3-hydroxybutyric acid(3HB)量から ACE 阻害活性を測定した。陽性対照にはアンジオテンシン変換酵素阻害薬であるカプトプリル(captopril)を使用した。測定にはACE-Kit WST(同人化学、熊本県上益城郡)を使用した。
測定キットの記載の方法に従い、試験サンプル 20 μL、Substrate buffer 20 μL、Enzyme working solution 20 μLをマイクロプレートのウェルに入れ、37℃ で 60 分間インキュベートした。その後、各ウェルに Indicator working solution を 200 μL ずつ加え、さらにその後、室温で 10 分間インキュベートした。その後、マイクロプレートリ ーダーで 450 nm の吸光度を測定した。アンジオテンシン転換酵素阻害率は以下の計算式にて算出した。
アンジオテンシン転換酵素阻害率(%)=( 1−A / B)× 100 A:試料添加系の吸光値、B:各抽出溶媒添加系の吸光
値(コントロール:全発色)。
リパーゼ阻害作用試験リパーゼは脂質を構成するエステル結合を分解する酵素
群で、脂質の分解に関わっている。本方法では 4 -メチルウンベリフェノンのオレイン酸エステルとリパーゼの反応により生成した 4 -メチルウンベリフェノンの蛍光強度を測定することにより、リパーゼの活性を測定した。陽性対照には抗リパーゼ作用を有するテトラサイクリン系抗生物質の一つであるミノサイクリンを使用した。基質溶液として 0.1 mmol/L 4-methylumbeliferyl olate 50 μL、試験サンプル 25 μL、1.25 mg/mL のリパーゼ溶液 25 μL を混合し、30℃ で 15 分間インキュベートした。その後、0.1 mol/L クエン酸緩衝液(pH 4.2)100 μL を添加して酵素反応を停止させ、反応液を黒色の 96 穴マイクロプレート
( 5 )
クロモジ抽出物の抗酸化作用、抗糖化作用
に 100 μL ずつ分注し、マイクロプレートリーダーを用いて、励起波長 360 nm /蛍光波長 460 nm における蛍光強度を測定した。リパーゼ阻害率は以下の計算式にて算出した。
リパーゼ阻害率 (%) = (1− A / B ) × 100 A:試料添加系の蛍光値、B:各抽出溶媒添加系の蛍光
値(コントロール:全発色)。
結果抗糖化作用:AGE および中間体生成抑制
試験品(クロモジ抽出物)の抗糖化活性について陽性対照AGと比較した結果を Table 1 に示した。
試験品(1 mg/mL)は HSA-Glu 反応系で蛍光性 AGEs、3DG、GO、CML の生成を80%以上抑制した。Col-Glu反応系では、蛍光性 AGEs、3DG、GO、CML、ペントシジンの生成を 80% 以上抑制した。Ela-Glu 反応系では、3DG、GO、MGO、CML の生成を 80% 以上抑制した。
陽性対照 AG(1 mg/mL)は HSA-Glu 反応系で蛍光性AGEs、3DG、GO の生成を 80% 以上抑制した。Col-Glu反応系では、GO, CML を 80% 以上抑制した。Ela-Glu
反応系で 80% 以上の抑制効果を示したのは MGO のみであった。
HSA-Glu 反応系では、試験品の蛍光性 AGEs および3DG に対する生成抑制作用は AG 同等で(IC50 比:蛍光性 AGEs 0.9, 3DG 1.5)、 試験品の CML 生成抑制作用
(IC50 比:4.1)は AG よりも強かった(Fig. 1)。Col-Glu 反応系では、試験品の蛍光性 AGEs、3DG、
CML に対する生成抑制作用はいずれもAGよりも強力であった(IC50 比:蛍光性 AGEs 13.4, 3DG 9.5, CML 4.6, Fig. 2)。
Ela-Glu 反応系では、試験品の蛍光性 AGEs に対する生成抑制作用は AG と同等で(IC50 比: 2.3)、試験品の 3DG および CML 生成抑制作用は AGよりも強かった
(IC50 比: 3DG 15.7, CML 46.9, Fig. 3)。
抗糖化作用:AGEs 分解促進試験品の架橋切断作用はクロモジ抽出物中等量(1
mg/dL)で陽性対照 PTB の 3 割程度(相対値 34)、 高用量(5 mg/dL)で PTBと同等(相対値 97)であった(Table 2)。
試験品の OPH 活性増強作用は高用量(5 mg/dL)で無添加時を 100%とした時に対し 146.3 ± 1.1% の活性増強を認めた(Table 3)。
Table 1. Inhibitory effect of Kuromoji extract on AGE and intermediate formation.
Target protein
HSAColEla
HSAColEla
HSAColEla
HSAColEla
HSAColEla
HSACol
Test product
Kuromoji extract
% Inhibition(1 mg/mL)
(%)
IC50
(mg/mL)
Positive control
Aminoguanidine
% Inhibition(1 mg/mL)
(%)
IC50 ratio(Positivecontrol /
Test product)IC50
(mg/mL)
80.492.566.281.981.680.883.888.5
120.076.065.695.998.498.4
104.951.193.2
0.1270.0290.2860.1770.2230.1280.1450.2830.1520.2620.380
< 0.00010.0640.0270.0310.553ND
98.469.064.593.836.942.692.288.017.577.871.992.776.387.847.6--
0.1110.3930.6590.2572.1161.9990.1080.145
> 1.00.4090.314
< 0.0010.2610.1241.439 - -
0.913.42.31.59.5
15.70.70.5NC1.60.8NC4.14.6
46.9--
Fluorescent AGEs
3DG
GO
MGO
CML
Pentosidine
AGEs, advanced glycation end products; IC50, 50% inhibitory concentration; 3DG, 3-deoxyglucosone; GO, glyoxal; MGO, methylglyoxal; CML, carboxymethyl-lysin; HSA, human serum albumin; Col, collagen type I; Ela, elastin; NC, not caliculated.
Index for anti-glycative actions
( 6 )
Glycative Stress Research
Fig. 1. Inhibitory effect of Kuromoji extract on AGE and intermediate formation in the HSA-Glu reaction model. a) Fluorescent AGEs, b) 3DG, c) CML. Results are expressed as mean ± SD (n = 3 ). AGEs, advanced glycation end products; HSA, human serum albumin; Glu, glucose; AG, aminoguanidine; 3DG, 3-deoxyglucosone; CML, carboxymethyl-lysin; SD, standard deviation.
Fig. 2. Inhibitory effect of Kuromoji extract on AGE and intermediate formation in the Col-Glu reaction model. a) Fluorescent AGEs, b) 3DG, c) CML. Results are expressed as mean ± SD (n = 3). AGEs, advanced glycation end products; Col, collagen type I; Glu, glucose; AG, aminoguanidine; 3DG, 3-deoxyglucosone; CML, carboxymethyl-lysin; SD, standard deviation.
- 20
020
40
60
80
100
- 20
020
40
60
80
100
- 20
0
20
40
60
80
100
0.0001 0.001 0.01 0.1 1.0
Fluorescent AGEs
Kuromoji AG
Kuromoji AG
Kuromoji AG
3DG
CML
(mg/mL)
0.0001 0.001 0.01 0.1 1.0 (mg/mL)
0.0001 0.001 0.01 0.1 1.0 (mg/mL)
Inhibition ratio (%)
Inhibition ratio (%)
Inhibition ratio (%)
0.0001 0.001 0.01 0.1 1.0
Fluorescent AGEs
3DG
CML
- 20
0
20
40
60
80
100
Inhibition ratio (%)
- 20
0
20
40
60
80
100
Inhibition ratio (%)
- 20
0
20
40
60
80
100
Inhibition ratio (%)
(mg/mL)
0.0001 0.001 0.01 0.1 1.0 (mg/mL)
0.0001 0.001 0.01 0.1 1.0 (mg/mL)
Kuromoji AG
Kuromoji AG
Kuromoji AG
( 7 )
クロモジ抽出物の抗酸化作用、抗糖化作用
Fig. 3. Inhibitory effect of Kuromoji extract on AGE and intermediate formation in the Ela-Glu reaction model. a) Fluorescent AGEs, b) 3DG, c) CML. Results are expressed as mean ± SD (n = 3). AGEs, advanced glycation end products; Ela, elastin; Glu, glucose; AG, aminoguanidine; 3 D G , 3 - d e o x y g l u c o s o n e ; C M L , carboxymethyl-lysin; SD, standard deviation.
0.0001 0.001 0.01 0.1 1.0
0.0001 0.001 0.01 0.1 1.0
0.0001 0.001 0.01 0.1 1.0
3DG
CML
- 20
0
20
40
60
80
100
Inhibition ratio (%)
- 20
0
20
40
60
80
100
Inhibition ratio (%)
- 20
0
20
40
60
80
100
Inhibition ratio (%)
Kuromoji AG
Kuromoji AG
Kuromoji AG
Fluorescent AGEs
(mg/mL)
(mg/mL)
(mg/mL)
Table 2. AGE cross-link breaking activity
Concentration(mg/mL)
Perecent breakage (%) Relative value
0.0080.040.21.05.05 mmol/L
1112163497
100
±±±±±±
2.72.93.78.1
23.123.9
0.0 30.0 20.0 10.0 40.1 70.1
Kuromoji extract (Test product)
PTB (Positive control)Results are expressed as mean ± SD (n = 3). AGE, advanced glycation end product; PTB, N-phenacylthiazolium bromide; SD, standard deviation.
Sample
Table 3. OPH enhance activity.
Concentration(mg/mL)
Percent enhancement(%)
5.0
-
1.0
±
±
146.3
100.0
15. 5
1.1
3.2
Kuromoji extract (Test product)
Control (no reagent added)
EGCg (Positive control)
Results are expressed as mean ± SD (n = 3). OPH, oxidized protein hydrolase; EGCg, epigallocatechin gallate; SD, standard deviation.
Sample
( 8 )
Glycative Stress Research
の生成を抑制した。同様にクロモジ抽出物はターゲット蛋白 Ela に対しても、3DG、GO、MGO、CML の生成を強力に抑制した。HSA に対する効果も決して弱いわけではなく、蛍光性 AGEs、3DG、GO、MGO、CML の生成抑制は陽性対照の AG と同等または同等以上であった。試験品の特徴として、幅広いターゲット蛋白に対し糖化防御的作用を発揮すること、特に 1 型 Col や Ela といった皮膚、関節の構造と機能に関与する蛋白の糖化予防が特徴的である。運動器の障害(ロコモティブシンドローム)との関連から新規機能性食品の開発を行っている SIP プログラムに適した素材といえる。
AGEs分解促進AGEs 架橋切断作用と OPH 活性増強作用は「③ AGEs
分解・排泄の促進」に関与する。AGEs 架橋切断作用を有する素材としては、ザクロ(Punica granatum)に含まれるgallic acid、ヒドロキシベンゼン化合物の hydroxyquinol、pyrogallol やジヒドロキシベンゼン化合物のhydroquinone、pyrocatechol 15)、ヒシ(Trapa natans)に含まれるエラジタ ン ニ ン 16)、 ノ ニ(Morinda citrifolia)、 サ ン シ ュ ユ
(Cornus officinalis)、 オリーブ(Olea europaea)に含まれるイリドイド化合物 17) が知られている。睡眠中に分泌されるホルモンで食用野菜中にも存在するメラトニンもAGEs 架橋切断作用を増強する 18)。クロモジの AGEs 分解促進作用はザクロやヒシよりもやや弱いが中等度の作用があり、糖化ストレスの軽減に相乗的に作用すると推定される。
OPH が AGEs 分解作用を有することはすでに確認した 11)。OPH 活性を増強する作用を有する物質は存在すると予想される。今回の試験ではクロモジ抽出物(5 mg/mL)が OPH 活性を 46% 増強することが示された。この作用も糖化ストレスの軽減に相乗的に作用すると推定される。
抗酸化作用一般的に酸化ストレスは糖化に関する複雑多経路の反応
に対し促進的に作用する。中間体 GO, MGO は自動酸化によって生成されるために、抗酸化物質はこの経路に対し抑制的に作用する。GO はリジンと反応し、CML 生成に関わり 7)、この過程においても酸化反応が関与するので酸化ストレス亢進時には CML 生成は増加する。CML は非蛍光性の AGEs であり、糖化ストレスや酸化ストレス亢進によって生成される 19)。今回の抗酸化作用の評価ではクロモジ抽出物に強力な抗酸化作用を認めた。この作用は AGEs生成に対し抑制的に作用すると予想される。
酵素阻害活性食品に含まれる炭水化物は消化酵素によって、単糖であ
る Glu などに分解されて腸管から吸収される。アミラーゼは消化管内において炭水化物を二糖類 へと分解する。同様に α グルコシダーゼは二糖類から単糖類へ分解する。アミラーゼ阻害作用を有する素材は食品と共に摂取すること
抗酸化作用試験品の抗酸化作用はクロモジ抽出物高用量(10 mg/
dL)で DPPH 法、ORAC 法、スーパーオキシド消去活性、一重項酸素消去活性は大葉(Perilla frutescens)を 100とした時の相対値が 72.4 ~ 164.9 で概ね同程度であった
(Table 4)。ヒドロキシルラジカル消去活性、ビタミン C 含有量は大葉を 100とした時の相対値は低かった(相対値:ヒドロキシルラジカル消去活性 14、ビタミン C 含有量14.1)。AP 法による評価については、クロモジ抽出物高用量(10 mg/dL)の結果(ビタミン当量 : 5217 ± 226 mg/L)はゆず抽出物と同程度であった(Table 5)
酵素阻害作用クロモジ抽出物は αアミラーゼ阻害作用(IC50:2.04
mg/mL)、αグルコシダーゼ阻害作用(IC50:1.06 mg/mL)を認めたが、 DPP-4 阻害活性はみられなかった(Table 6)。ACE 阻害作用は強かった(IC50:0.29 mg/mL)。蛋白脂肪分解酵素についてはリパーゼ阻害作用(IC50:0.022 mg/mL)が強力であった。
考察 近年は過食と運動不足の時代である。身体に吸収された
グルコースは骨格筋で十分に利用されないまま、脂肪組織や肝臓に貯蔵されるか、一部のグルコースは末端のアルデヒド基が体内の構造蛋白や機能性蛋白と反応して様々な反応を惹起する(糖化反応)。他にも解糖系反応由来のグリセルアルデヒド、飲酒由来のアセトアルデヒド、TG や低比重リポ蛋白 - コレステロール(LDL-C)など脂質由来のアルデヒド、香料由来の芳香族アルデヒドが糖化反応を引き起こす原因となる。糖化ストレスとは、糖尿病・脂質異常症・メタボリックシンドローム・慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)など身体にアルデヒドを生じやすい状態を示し、アルデヒドが体内の蛋白と反応して、AGEs の生成・蓄積を促し、RAGE(Receptor for AGEs)シグナル活性化を介して炎症性サイトカイン生成し、結果的に組織障害などの変化を起こしやすい状態と言える。
糖化ストレス対策はステージ別に① 食後高血糖の予防、②AGEs 生成の予防、③AGEs 分解・排泄の促進、④AGEs / RAGE シグナルの活性化予防に分けられる 14)。酸化ストレスは AGEs 生成反応に対し促進的に作用するため、酸化ストレスに対する注意も必要である。糖化ストレスというと血糖に注目されがちになるが、脂質過剰にも留意する。
AGEs・中間体生成抑制試験品(クロモジ抽出物)は「② AGEs 生成の予防」に
対する抑制作用が強いことが示された。ターゲット蛋白Col に対し抗糖化活性(AGEs・中間体生成抑制)は強く、蛍光性 AGEs、3DG、GO、MGO、CML、ペントシジン
( 9 )
クロモジ抽出物の抗酸化作用、抗糖化作用
Table 5. AP method.
Kuromoji [En, JP], Lindera [En], , Lindera umbellata [Sc] (10 mg/mL)
Green tea [En], Ryoku-cha [Jp], Camelia sinensis [Sc] ( products of Kagoshima)
Black tea (leaf) [En], Kou-cha (ha) [Jp], Camelia sinensis [Sc]Coarse tea [En], Ban-cha [Jp], Camelia sinensis [Sc]Pu-erh tea [En], Puaru tea [Jp], Camelia sinensis [Sc]Yuzu [En, Jp], Citrus junos [Sc]Sudachi [En, Jp], Citrus sudachi [Sc]Lemon [En, Jp], Citrus limon [Sc]Fukinoto [En, Jp], Petasites japonicas [Sc]
Edible chrysanthemum [En], Shokuyo-kiku [Jp], Chrysanthemum morifolium f. esculentum [Sc]
Chestnut (astringent skin) [En], Kuri (shibu kawa) [Jp], Castanea crenata [Sc]
Results are expressed a single-measued value (n = 1) except for kuromoji in which the value shows mean ± SD (n = 4). Anti-oxidant potential is expressed as VC equivalent (Eq). Hot water extracts were prepared from each dried sample of vegetable, fruits, tea and herbs (4 g in 40 mL hot water) at 80 ° C for 1 hour. AP, anti-oxidant potential; VC, vitamin C; SD, standard deviation; Jp, Japanese name; En, English name; Sc, scientific name.
Extract sample Anti-oxidant potential(mg VC Eq/L)
±5,217
3,151
1,929
1,592
1,590
5,749
3,618
3,614
3,615
2,100
2,071
226
Table 4. Anti-oxidative profile of kuromoji extract.
Value
12,900
376,000
37,800
53,400
218,000
1.9
888
2,610
Unit
mg TE/100g
mg TE/100g
unit SOD/g
μmol DMSO/g
μmol Histidine/g
%
mg/100g
mg/kg
Relative value 1)
72.4
131.1
115.9
14
164.9
0.2
14.1
5.8
DPPHORACESR (Superoxide scavenging activity)ESR (Hydroxyl radical scavenging activity)ESR (Singlet oxygen scavenging activity)Sugar contentVitamine C contentNitrate ion content
1) The relative value when assuming the megaphylly (Jp; ouba, En; green perilla, Sc; Perilla frutescens) as 100. DPPH, 1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl; ORAC, oxygen radical absorbance capacity; TE, trolox equivalent; ESR, electron spin resonance; SOD, super oxide dismutase; DMSO, dimethyl sulfoxide; Jp, Japanese name; En, English name; Sc, scientific name.
Method
( 10 )
Glycative Stress Research
Table 6. Enzyme inhibition assay.
Concentration(mg/mL)
Percent inhibition (%)
# 2 Average# 1IC 50 (mg/mL)
0.0160.080.81.64.0
0.008 −
− 45.6− 89.7
14.241.770.1
46.7
−50.5− 92.7
21.440.376.8
45.3
− 48.0− 91.2
17.841.073.5
46.0
Kuromoji extract(Test product)
Voglibose(Positive control)
Sample
a) α-Amylase
Concentration(mg/mL)
Percent inhibition (%)
# 2 Average# 1IC 50 (mg/mL)
0.0180.090.91.84.4
0.01
− 3.613.943.660.370.4
47.9
7.013.135.861.273.3
45.0
1.713.539.760.771.9
46.5
Kuromoji extract(Test product)
Acarbose(Positive control)
Sample
b) α-Glucosidase
2.04
−
1.06
Concentration(mg/mL)
Percent inhibition (%)
# 2 Average# 1IC 50 (mg/mL)
0.010.10.20.51.0
0.1μmol/L
17.8− 3.0
4.323.611.6
52.1
− 1.40.6
− 4.13.5
−
18.0− 0.8
2.59.87.5
52.1
Kuromoji extract(Test product)
P32/98(Positive control)
Sample
c) DPP-4
−
N D
( 11 )
クロモジ抽出物の抗酸化作用、抗糖化作用
で、食品中の炭水化物の分解を抑制し、食後の血糖上昇を緩徐にする。本試験ではブタ脾臓由来のアミラーゼを用いて α アミラーゼ阻害作用を確認した。
急激な血糖上昇は食後高血糖を助長し、この間に糖化反応が進行しやすくなる。これらの酵素活性の阻害によって小腸から血液中への Glu 吸収を緩やかにできるので、
「①食後高血糖の予防」として糖化ストレス対策に位置づけられる。今回の試験では、ミスカミスカ(Geranium dielsianum 抽出物)ほど強力ではないが(IC50:0.028 mg/dL)20)、中等度の α アミラーゼ阻害作用(IC50:2.04 mg/dL)と α グルコシダーゼ阻害作用(IC50:1.06 mg/dL)を認めた。クロモジ抽出物が食後高血糖を緩和する可能性がある。
糖化反応の原因となるアルデヒドは Glu やフルクトースなどの還元糖の他にも、TG や LDL-C などの脂質にも由来する。リパーゼは脂肪を分解して消化・吸収を補助する酵素である。リパーゼ阻害作用のある物質は脂肪の分解を抑え、脂肪吸収を抑制する。今回の試験では試験品に強いリパーゼ阻害作用が示された(IC50:0.022 mg/dL)。我々の先行研究で STZ 誘発性ラットにクロモジ抽出物を 8 週間投与した結果、TG、FFA の有意な改善を認めたが 6)、その機序としてリパーゼ阻害作用が関与する可能性は十分考えられる。
ACE はヒトの血圧調節機構の一つであるレニン - アンジオテンシン系においてアンジオテンシン Ⅰ から昇圧作用を有するアンジオテンシン Ⅱ 生成し、同時に降圧ペプチドであるブラジキニンを分解する作用を有し、血圧上昇に大きく関与している酵素である。またアンジオテンシン Ⅱ 腎動脈収縮を起こし、腎血流量の低下、腎濾過量の低下(クレアチニンクリアランス [CCr] の低下)をもたらす作用がある。今回の試験では試験品が ACE 阻害作用(IC50:0.29 mg/mL)を有することが示された。我々の先行研究で STZ 誘発性ラットにクロモジ抽出物を 8 週間投与した
結果、糖尿病性腎症に伴う CCr の低下が有意に改善された 6)。これはクロモジ抽出物が単に抗糖化作用を発揮しただけでなく、ACE 阻害作用によりアンジオテンシン Ⅱ の上昇抑制を介し腎臓血流量の維持に働き、その結果として腎保護に至ったものと推測される。
結論食物素材のスクリーニングにより選択された試験品(ク
ロモジ抽出物)の抗糖化作用、抗酸化作用を調べた結果、試験品が HSA のみならず Col、Ela に対しても強いAGEs 生成抑制活性を示し、中等度の AGEs 分解促進活性および強い抗酸化活性を示した。酵素阻害活性については α アミラーゼ阻害作用、α グルコシダーゼ阻害作用、リパーゼ阻害作用を示し食後高血糖や食後高 TG 血症を緩和する可能性があること、ACE 阻害作用により腎機能保護を補助する可能性が示された。今後本試験品についてはヒトにおける安全性評価、効能評価を実施する予定とした。
謝辞本研究は総合科学技術・イノベーション会議の SIP
(戦略的イノベーション創造プログラム 研究課題番号14533567)「次世代農林水産業創造技術」(農研機構生研センター委託研究)によって実施された。
利益相反申告本研究を遂行するにあたり SIP 協力企業として養命酒
製造より支援を受けた。
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