第186通常国会が閉幕しました。衆参の「ねじれ」 …...title...

Post on 07-Jul-2020

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IT政策は「未来への投資」そのものなのです。

戦後、日本が経済成長とともに得た大きな成果には「長寿」があります。厚生労働省のデータによると、日本人の平均寿命が男女共に50歳を超えたのは昭和22年のことです。(男性50.06歳、女性が53.95歳)。私が生まれた昭和33年の平均寿命は男性で64.98歳、女性で69.61歳となっており、還暦を迎えられるということは、まさしく慶賀すべきことであったのです。

その後、日本では国をあげた感染症対策や国民皆保険制度の確立など、様々な取り組みが行われ、現在の平均寿命は男女共に80歳を超えるところとなりました。少子高齢化社会で1人当たりGDPを増やすために生産労働人口が減少するなかで生産性を向上させることは可能か?

しかし、その一方でわが国では少子化が進んでおり、生産労働人口が減少するなかで社会保障は増え続けるという問題が生じています。日本のGDPはアメリカ・中国に続き世界第3位となっていますが、1人当たりのGDPは世界26位、経済成長率は160位(2015年)と低い位置に留まっています。

このような状況下で、国民に過剰な負担を強いることなく、社会を発展的に維持していくには、1人当たりGDPの増加を目標とし、以下の改革を同時並行で進めていく必要があります。

たとえば、働く人の生産性向上のみを加速的に進めることは負担の増加に繋がるため、働き方改革やITの利活用も同時に行うことが重要なのです。

平井たくや 特集号

未来への投資イコールIT政策

働き方改革と同時に、本記事のメインテーマでもあるデータの利活用と、そのための構造改革を進めていくことが急務とされています。

私は、未来への投資とはIT政策そのものなのではないかと考えています。より強い言葉で言えば、社会システムを進化させない限り、人口の減少が進む日本において財政再建を目指すことも、国民一人ひとりの生産と消費を促すことも難しいと考えます。

現役の医師が運営する医療Webメディア「メディカルノート」のインタビュー記事

原則ITへと移行し徹底的な効率化を

社会システムの進化とは、行政手続などの徹底的な効率化を指します。たとえば、転居や結婚するとき、私たちは役所の窓口などに足を運び、必要書類を提出する必要があります。人が生まれたとき、亡くなったときも同様です。つまり、現行の社会システムでは、生まれてから亡くなるまでに、何度も市役所や区役所に赴くための時間と労力を使わざるを得ないというわけです。この時間を削減するためには、以下3項目の実現が不可欠です。

(1)デジタルファーストの実現デジタルファーストとは、対面原則や書面原則を撤廃し、「原則IT」へと転換することをいいます。マイナンバーカードを活用して本人確認を行えるよう、カードの普及とシステム構築が必要です。

(2)コネクテッド・ワンストップ原則の実現コネクテッド・ワンストップとは、利用者が省庁や自治体を意識することなく、どこでも、あるいは1か所でサービスを受けられることです。行政サービスのみならず、民間サービスも融合させ、あらゆるサービスをまとめて受けられる世界を目指します。

(3)ワンスオンリー原則の実現ワンスオンリーとは、過去の手続き時に提出したデータを、再び提出する必要のない仕組みのことです。行政(国)から国民に対し、同じ書面を二度以上要求しないよう、バックヤードの連携強化が不可欠です。

これにより、戸籍謄本や住民票の写しといった書類は不要になり、拘束されていた時間を生産や消費のために使うことが可能になります。

上記3項目の実現のためには、これまで各省庁や各自治体が管理していた情報を裏で紐付け、横串を通す作業が生じます。戸籍関連事務や旅券事務に関しては、平成31年の通常国会を目処に法制上の措置を講ずることが閣議決定されており、実現の見通しが立っています。

生産労働人口の減少を乗り越えるためのデータ利活用

急速に進展する少子高齢化に対応するため、現在わが国ではインターネットなどの高度情報通信ネットワークを用いた大量のデータ利活用と、そのための環境整備が課題とされています。データの利活用により、私たちの暮らしはどのように変わるのでしょうか。また、デジタルファーストの実現のために、私たち国民が知っておくべきことには何があるのでしょうか。自民党IT戦略特命委員長として日本のIT政策を牽引し続けている平井たくやさんにお伺いしました。

「長寿」は戦後日本が得た成果のひとつ

兼業を原則禁止から原則容認へと方向転換

働き方改革としては、現在日本の企業の多くが就業規則で禁止している副業・兼業を原則容認へと転換することが重要です。これらからの社会は、働く人が自分自身の時間の使い方を自分で決めることができ、スキルアップのチャンスや選択肢に富む世界であるべきだと考えます。

現在の日本には、取得した資格を使えないまま眠らせてしまっている方が多数おられます。現場では常に人員不足傾向にある看護師や歯科衛生士の資格を持つ方々のなかには、”週5日間9時から5時まで”という足枷さえなければ、ご自身の能力を社会で活かしたいと考える方もいるでしょう。

人材を必要としている企業(施設)と供給できる方のマッチングをうまく行えるフレキシブルな社会を実現できれば、働く人は自分の人生をセルフコントロールしながら、生産性を上げていくことができます。もちろん、働くことばかりが選択肢ではありません。

日本に暮らす人が、豊かさを感じながら自由に自分の道を選んでいくための環境構築。この視点を忘れてしまうと、今後の社会はネガティブな要素ばかりが顕在化するものにもなりかねません。

これからの働き方、企業の在り方

~フォーマットが標準化されたレセプトデータに着目~

続いて、全国で早期に応用できる健康データ利活用の構想についてお話しします。健康に関するデータには、各医療機関に保管されているカルテや健康診断の結果など、様々なものがありますが、このなかにはフォーマットが標準化されているものが一つだけあります。その唯一のデータとは、レセプトデータです。

レセプトデータとは、患者一人ひとりに対して行った保険診療の医療費(診療報酬)を1か月ごとに集計した診療報酬明細書のことです。フォーマットが標準化されているということは、完全にネットワーク化はされていないものの、既にデジタル化はなされているということです。現行の規定では、主治医の許可を得ない限り、患者本人が過去のレセプトデータをみることはできません。しかし、レセプトデータには10年保存の規則があるため、自分の病歴や薬歴などのデータは確かに蓄積されているのです。

レセプトデータを本人の意思で救急医等にみせられる仕組みを

そこで今、レセプトデータを患者本人の意思によって、新たにかかる医師にみせられるような仕組みを作るプロジェクトを構想しています。仮に救急搬送された場合、救急医がレセプトデータのサマリーをみることができれば、より迅速で適切な検査・診断を受けられる可能性があります。もちろん、データのコントロール権は患者本人にあるため、レセプトデータをみせてもよいという意思の有無を明示できるような印をつける仕組みも必要です。

その際に活用できるものが、マイナンバーカードとHPKIです。HPKIは資格を有する医師などが持つ電子証明書であり、マイナンバーカードは患者さんの本人確認に使用できる機能を持つカードです。HPKIとマイナンバーカードの2つが揃ってはじめて過去のレセプトデータを医師がみられるように規定すれば、データの安全性は担保されます。マイナンバーカードとは、預けた自分の健康情報を取り出すために、国民一人ひとりに付与された鍵にもなり得るというわけです。

標準化された情報の強みとは

過去のレセプトデータとは、自分自身の健康状態や体を知るうえで非常に重要な情報といえます。次世代医療基盤法案に記されている匿名加工医療情報の研究機関等への提供は、“巡り巡って”国民に利益をもたらすものですが、本構想を実現させることができれば、国民は即時的にメリットを得られます。そのため、私は今年中に地域を限定して実証(社会への実装)を行い、効果を明示したいと計画しています。患者さんにとって本当にメリットがあり、医療機関の負担が重くならないことが明らかになれば、地域の壁を取り払い、一度に全国に広げることもできます。これが、全国で標準化されているデジタル情報の強みです。

マイナンバーカードはデジタル社会の新しいパスポート

2016年1月にマイナンバー制度の運用が始まり、現在の日本では国民すべてが唯一無二の個人番号を持っています。しかしながら、マイナンバーカードの普及率は決して高いとはいえません。したがって、カードの普及はわが国の直近の課題であるといえます。

ITの利活用を前提とした社会では、マイナンバーカードが重要なポジションを占めることとなります。前項でも記しましたが、デジタルファーストの徹底により、行政サービスを受けるに本人確認も書面や対面からマイナンバーカードへと移行していきます。また、12桁のマイナンバーとは異なり、マイナンバーカードのICチップを利用する公的個人認証サービスは、安全で確実な本人確認の手段として民間へも開放されています。マイナンバーカードは来たるデジタル社会における新たなパスポートのようなものであると捉えていただければ、その利便性に対する理解も進みやすくなるのではないでしょうか。

お問合せ、ご要望は、お気軽に 760-0025高松市古新町4-3

平井たくや事務所まで ℡087-826-2811 Fax087-826-3611

~丸亀町商店街(香川県高松市)の取り組み~

2017年3月、高松市の中央に位置する丸亀町商店街に、健康チェックや予防トレーニングなどのサービスを提供するセルフメディケーションプラザ「ボディバンク(bodybank)」がオープンしました。ボディバンクとは、その名の通り自分の健康情報を預けて管理する予防医療のための拠点です。ボディバンクでは、“心とからだの健康寿命を10年のばそう”というスローガンのもと、次のようなサービスを行っています。

健康状態を測る血管年齢や肺年齢、脳年齢、ストレス度や基礎体力をセルフチェックできるコーナーがあります。予防トレーニングコーナーには最新の検査機器やマシンが完備されており、会員の方は自由に利用することができます。測定したデータを預けて管理するボディバンクで測定したデータは継続的に記録されていくため、体の小さな異変や病気の早期発見に役立てることが可能です。将来的には、このデータにお薬手帳や健康診断の結果も組み込まれる予定です。

コミュニティを広げるための講座を開講ボディバンクに入会している会員を対象に、原則無料でヘルスケアや子育てなどに関するイベントやセミナーを定期開催する予定です。健康づくりだけでなく、同じ地域に住まう仲間を増やし、心身共に元気に過ごしていただくことを目的としています。

既に多くの方が自発的に会員登録し、施設とシステムを利用されています。健康指導に医師が携わっていることも、予防医療の新拠点として住民の信頼を得られた理由のひとつといえるでしょう。これまでの日本には、ボディバンクのように一般市民が自分の健康データを預けて管理するという考え方はありませんでした。今後は豊かな長寿社会を目指し、発想を転換してデータを積極的に利活用していける世界を作っていきたいと企図しています。

批判だけでは何も変わりません。 平井たくやは結果を出します。

現時点では、全国で利活用できる標準化された医療データは、レセプトデータのみです。近い将来、カルテなどの情報をデジタル化、ネットワーク化せねばなない時代が到来した際には、莫大な労力やコストがかかるでしょう。医療分野に限らず、国や自治体が持っているあらゆるデータベースに関しても同様のことがいえます。

このような問題を次世代に持ち越さないために、今後はデータの開放を前提として、行政情報システムなどの企画・設計を行っていく必要があります。これを、オープンデータ・バイ・デザインといいます。この際には、必ず情報セキュリティを確保するための方策もデザインされていなければなりません。つまり、オープンデータ・バイ・デザインとセキュリティ・バイ・デザインは必ず2つセットで用いられなければならないというわけです。

人口が減少していくなかで国民の豊かな生活と国の発展性を維持していくためには、AIやIoTが至るところで活躍し、可能な限り人の手を介さずに物事が進むデータ駆動型社会の構築が欠かせません。データとは、AIやIoTを動かす血液であり、データ駆動型社会のガソリンとなるものです。昨年末に成立した「官民データ活用基本法」による重点計画により、今後進むべき方向性を定めることができるので、データというガソリンを社会に適切に供給できるよう、その基盤構築に力を注ぎ続けていきたいと考えています。

健康長寿という成果を産業として活用するために

自らの健康のために自分の情報を利用するためのアイデア

データはデジタル駆動型社会のガソリンである

※ 本記事は、医師が運営する医療Webメディア「メディカルノート」https://medicalnote.jp/ からの転載記事です。

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