状態を見るspect検査 パーキンソン病の...1 2 3...
Post on 04-Aug-2020
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パーキンソン病の診断と治療って?
MRI検査の画像
新しいSPECT検査の画像
健康な人 パーキンソン病
国立精神・神経医療研究センターパーキンソン病・運動障害疾患センター センター長 村田 美穂
早期からの診断・治療で、大きな支障なく生活できます。
ドパミン神経の状態を見るSPECT検査〔検査の受け方〕
検査前
検査当日
検査後
疑問や不安がありましたら、納得がいくまで確認しておきましょう。●診察を受けます
●検査室に入り準備します●検査に必要な薬を注射します●3~6時間待ちます●検査をします
●当日、または後日、 担当医から結果の 説明を聞きます
●検査の予約をしてください検査に使う薬は検査当日しか使えませんので、確実に来られる日に予約してください。
装置のベッドに仰向けに寝ている間に検査します。頭の周りをカメラが回ったり、トンネルのようなカメラの中に頭を入れたりして撮影します。検査中は頭を動かさないでください。約30分で終わります。もし気分が悪くなったら我慢せずお申し出ください。
●注意事項、指示を確認して おきましょう
URL http://www.nmp.co.jp/提供:日本メジフィジックス株式会社
2014.12月作成(TA-1412-G01)
医療機関名
順天堂大学医学部附属順天堂医院 提供
順天堂大学医学部附属順天堂医院 提供
ス ペ ク ト
ス ペ ク ト
パーキンソン病は どんな病気?体の動きに障害があらわれる 病気です。
ゆっくりと進行するのが特徴です。パーキンソン病は、脳の異常のために、体の動きに障害があらわれる病気です。現在、日本には約15万人の患者さんがいるといわれています。高齢者に多くみられる病気ですが、若い人でも発症することがあります。
パーキンソン病は、何年もかけてゆっくりと進行する病気です。以前は、「パーキンソン病を発症すると、10年後には寝たきりになる」といわれていました。しかし、現在は効果的な治療薬もあるため、発症から長い年数にわたり、よい状態を保つことができます。それだけに、早い段階からきちんと治療を始めることが大切です。
パーキンソン病の代表的な症状動作が
遅い・少ない・小さい
歩く速度が遅くなり、歩幅も狭くなります。腕の振りも小さくなります。
手足が震える(振戦)
安静にしている時に、手や足に細かな震えが生じます。
筋固縮
患者さんの腕や足を動かそうとすると、関節がカクカクするような抵抗が感じられます。
バランスがとれない(姿勢反射障害)
重心がぐらついたときに、姿勢を立て直すことができず、そのまま倒れてしまいます。
しんせん
1度
2度
3度
4度
5度
症状は片側の手足のみ。日常生活への影響はごく軽度です。
症状が両側の手足に。多少の不便はあっても、従来どおりの日常生活を送ることができます。
歩行障害や姿勢反射障害があらわれます。活動がやや制限されますが、日常生活は自立しています。
両側の手足に強い症状があり、自力での生活は困難。介助が必要なことが多くなります。
一人で立つことができなくなり、車椅子での生活や寝たきりになります。全面的介助が必要。
軽度
重度
Q
きんこしゅく
2 3
A
パーキンソン病の進行の度合い(ヤール重症度分類)
早く治療を始めれば、
良好な状態が保たれ、大きな支障なく生活することができます。
STOP!STOP!
1
23
なぜパーキンソン 病になるの?原因は、脳内のドパミン神経の 減少です。
さまざまな神経の障害に伴い多彩な症状が現れます。私たちが体を動かそうとすると、脳の「大脳皮質」から全身の筋肉に、運動の指令が伝わります。このとき、私たちの意図どおりに体が動くように、運動の調節を指令しているのが神経伝達物質の「ドパミン」です。ドパミンは、脳の奥の「黒質」にある「ドパミン神経」でつくられています。パーキンソン病になると、このドパミン神経が減少し、ドパミンが十分につくられなくなります。その結果、運動の調節がうまくいかなくなり、体の動きに障害があらわれるのです。
パーキンソン病では、黒質のドパミン神経の減少に加え、他の中枢神経や自律神経もダメージを受けます。これにより、手足の震えなどの代表的な症状に加え、精神症状や自律神経の障害があらわれることもあります。
Q
4 5
A
多岐にわたるパーキンソン病の症状
ドパミン神経の減少に伴う代表的な症状
自律神経障害
抑うつ
幻覚
頭痛
嗅覚障害認知症
睡眠障害
便秘腰痛
頻尿
異常な発汗
「抑うつ」や「幻覚」を伴う場合があります。また、高齢で重度の患者さんでは、「認知症」を合併することもあります。
最も多いのは「便秘」で、患者さんの8割程度にみられます。
精神症状
立ち上がったときにふらついたり、めまいがする
起立性低血圧(2ページ参照)
体を動かすときの脳の働き
1
23
うまく伝わらない
黒質
ドパミン線条体
大脳皮質
黒質のドパミン神経でつくられたドパミンが線条体に送られます。
線条体から大脳皮質に運動を調整する指令が出されます。
ドパミンが不足
ドパミン神経が減少
パーキンソン病になると
運動を調整する機能が低下
指令を受けた大脳皮質から、全身に運動の指令が伝えられます。
全身への運動の指令がうまく伝わらなくなり、体の動きに障害があらわれます。
どのように診断するの?新しい画像検査が実施できる ようになりました。
Q
6 7
Aドパミン神経の状態を直接見ることができます。新しいSPECT検査により、従来の検査では調べられなかったドパミン神経の状態を、画像で確認できるようになりました。
健康な人 パーキンソン病診察の流れ
新しいSPECT検査の画像と仕組み
問 診 神経学的診察 画像検査
ドパミン神経には、ドパミンを再び取り込み、ドパミン量を調整する部分(ドパミントランスポーター)があります。ドパミン神経が壊れると同じくドパミントランスポーターが減少します。この変化を画像でとらえているのです。
手足の震えなどの症状を聞きます。
関節の動きや身体のバランスをチェックします。
脳の形や働きを調べます。P9参照
白く見える部分( )がドパミン神経。パーキンソン病ではドパミン神経が減少するため、健康な人の場合と比べて白く見えた部分が小さくなります。
ドパミン神経脳の中で起こっていること
ドパミントランスポーターはドパミンが多く伝わりすぎないように再取り込みをする。
(MRI、SPECTなど)脳の断面を映しています
ドパミンが減るとともに減少
この変化を画像でとらえています
ス ペ クト
ス ペ クト
ス ペ クト
まず医師が患者さんに、「手足の震えや歩きにくさなどの症状がいつごろからあり、どのように進行したか」などについて質問します(問診)。
次に、医師が患者さんの腕や足を動かして、筋固縮や姿勢反射など、パーキンソン病に特徴的な症状があるか調べます(神経学的診察)。
ここまでの診察でパーキンソン病が疑われる場合には、MRIやSPECT(スペクト)による画像検査で脳を詳しく調べます。2014年1月からは、新しいSPECT検査が保険診療で実施できるようになりました。
ドパミン
ドパミントランスポーター
順天堂大学医学部附属順天堂医院 提供 順天堂大学医学部附属順天堂医院 提供
新しい画像検査で 何が変わるの?パーキンソン病の早期発見や、ほかの病気との区別がしやすくなります。
Q
8 9
A脳の形を見る検査ではわからない異常を見つけられる場合があります。
パーキンソン病があっても、MRIやCTなど脳の形を見る画像検査では、健康な人との区別がほとんどつきません。これに対し、新しいSPECT検査は、パーキンソン病の原因となるドパミン神経の減少が目で見てわかるので、早期診断、早期からの治療開始に役立ちます。
また、手足の震えなど、パーキンソン病に似た症状があらわれる別の病気もあります。これらの病気とパーキンソン病では治療の内容が違うので、しっかり区別することが大切です。こうした“鑑別診断”にもSPECT検査が用いられます。
パーキンソン病に似た症状があらわれる病気(状態)
MRI検査の画像
同じ時期のSPECT検査の画像
パーキンソン病本態性振戦
薬剤性パーキンソニズム
多系統萎縮症特に線条体黒質変性症
正常 減少
動作をするときに震えが生じる病気です。
薬の副作用が原因で症状があらわれます。
脳の黒質、視床下核などの神経細胞が減少することにより、動作の遅れ、歩行障害などが生じます。
動作が遅くなったり、筋肉がこわばり転びやすくなるなどの症状がみられます。
ほんたいせいしんせん
たけいとういしゅくしょう
進行性核上性麻痺しんこうせいかくじょうせいまひ
健康な人 パーキンソン病
健康な人 パーキンソン病健康な人とパーキンソン病の人との区別がほとんどつきません
パーキンソン病での脳内の変化(ドパミン神経の減少)がはっきりと確認できます。
脳血管性パーキンソニズム脳梗塞など、脳血管障害の後遺症として
症状が発生します。
ス ペ ク ト
ドパミン神経順天堂大学医学部附属順天堂医院 提供
順天堂大学医学部附属順天堂医院 提供
ス ペ クト
ス ペ クト
どのような治療をするの?大きく分けて3つの治療法が あります。
Q
10 11
Aドパミン系を補充する薬を始め、様々な薬があり、年齢や症状により組み合わせて使います。以下に代表的な2剤をご紹介します。
薬物療法の副作用が強かったり、症状のコントロールが難しい場合には、手術が選択されることもあります。主に行われる「脳深部刺激療法」では、脳の奥のドパミンに関係する部位に電極を埋め込み、弱い電気刺激を与えることで運動機能を改善します。
パーキンソン病と診断されたら、すぐにリハビリテーションを始めることが大切です。有酸素運動やストレッチなどを積極的に行うことで、生活に支障のない状態を長く保つことができ、薬の使用も最小限ですみます。
また、パーキンソン病になると、口の周りの動きの影響で、「声が小さくなる」「早口になる」「声がかすれる」などの障害があらわれることもあります。これらの症状にもリハビリテーションが有効です。
薬物療法 手術
リハビリテーション
バランスや筋力を保つ運動
カラオケで大きな声で歌う
本や新聞を大きな声で読む
親指を上に向ける
できるだけ高く上げる
話し言葉のリハビリテーション
1 2
3L-ドパ
ドパミンアゴニスト
脳内でドパミンに変化して、不足しているドパミンを補います。治療効果が高く、速効性に優れているのが特徴です。
ドパミンに似た作用をもつ薬です。治療効果がやや弱く、ゆっくり効くので、1日中穏やかで安定した効果を得られます。近年は内服薬に加え、注射薬と貼付薬も登場し、治療の選択肢が広がりました。
早期からの薬物治療の有効性が確認されました──ELLDOPA study(イーエルドパ試験、2004年)──
初期のパーキンソン病の患者さんを、L-ドパを服用するグループと、プラセボ(有効成分を含まない見かけだけの薬)を服用するグループとに分けて症状を比較しました。その結果、服用中だけでなく服用中止後も、L-ドパグループのほうがプラセボグループよりも良好な状態が維持されました。初期からのL-ドパ投与により、病気の進行が抑制された可能性があり、あらためて早期診断・早期治療の有効性が示されたといえます。
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