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原子核虹現象と核構造
勝間 正彦
(大阪市立大学 理学研究科数学研究所)
基研研究会「核力に基づく核構造、核反応物理の展開」
京都大学, 2017.03.28
核虹と核構造
核虹現象原子核弾性散乱の後方角度で観測される断面積の増加α粒子散乱: e.g. Goldberg & Smith, PRL29, 500 (1972).
軽重イオン弾性散乱: e.g. HMI, PLB223, 291 (1989).
原子核間の相互作用ポテンシャルを決定する重要な現象
平均ポテンシャル内の一粒子運動殻模型α粒子クラスタ模型: 核内のα粒子の運動
分子共鳴: 16O+16O, 12C+16O, 12C+12C 等の核間相対運動
本講演
核虹現象16O+16O核虹散乱のチャネル結合効果
M.K., Y. Sakuragi, S. Okabe, and Y. Kondo, PTP107, 377 (2002).16Oのミステリアス0+状態の現象論的研究
M.K., J. Phys. G40, 025107 (2013).
原子核虹現象
古典軌道と偏向角の概略図
核虹原子核弾性散乱の後方角度で観測される断面積の増加
原子核の内部領域を通過してくるので、ポテンシャル内部に敏感な現象
ポテンシャルの深さを不定性なく決定できる。
クーロン散乱
核力
G.R. Satchler, Nucl. Phys. A 409, 3c (1983)
核虹の例
α+90Zr
16O+16O Elab=350 MeV
● L.W. Put & A.M.J. Paans, NPA 291, 93 (1977).● E. Stiliaris et al., PLB 223, 91 (1989).
ポテンシャルの深さの決定
空に架かるの虹: 42°の偏向角 ← 水と空気の屈折率原子核の虹散乱: 古典軌道の振れ角 ← 核間相互作用 F= -∇U
ポテンシャルの深さ = 体積積分値
ポテンシャルの深さの違いは、後方角度の断面積の違いを生む。
16O+16O Elab=350 MeV
● Y. Kondo, F. Michel, G. Reidemeister, PLB 242, 340 (1990).● M.K., Y. Sakuragi, S. Okabe, and Y. Kondo, PTP107, 377 (2002).
jv U
低エネルギーでの不定性の除去
低エネルギーのポテンシャルは、深さに不定性がある。例: Elab=145 MeV, 16O+16O, 3つの深さの違うポテンシャル
過剰虹を参考に決定する。障壁近傍の分子共鳴状態の相対運動の全量子数(N=2n+L)
Y. Sugiyama et al., Phys. Lett. B 312, 35 (1993).
核虹
過剰虹 (干渉虹)
2つの異なる衝突係数の波が干渉して生じる虹。虹のアーチの内側で見られる。雨滴のサイズが大きいと見える。
偏向
角
L1 L2
L1
L2
軽重イオンの弾性散乱で顕著に見える。
Far side の散乱振幅の干渉
核内に強い吸収があると見えない
16O+16O分子共鳴の回転励起バンド
障壁近傍の分子共鳴状態: N=28
Y. Kondo et al., J. Phys. Soc. Japan Suppl. 58, 597 (1989).
核虹現象のまとめ
ポテンシャルの深さを不定性なく決定できる。過剰虹を追跡することで、低エネルギーのポテンシャルも決定できる。
ポテンシャルの変化に敏感なので、ポテンシャルの関数形の評価ができる。弾性散乱以外のチャネルとの結合効果が評価できる。
例: 16O+16O核虹散乱のチャネル結合効果
複合系の障壁近傍の分子共鳴状態の全量子数が決定できる。平均ポテンシャル内の一粒子運動: 16O+16O間の相対運動
例: 16Oミステリアス0+状態と α+12C回転バンド
φ16O = φαφ12C χnL(r)
16O+16O核虹散乱のチャネル結合効果
M.K., Y. Sakuragi, S. Okabe, and Y. Kondo, PTP107, 377 (2002).
畳みこみポテンシャルの適応性
16O+16O 虹散乱の(半)現象論的光学模型計算交換項をゼロレンジ近似した畳みこみポテンシャルは、16O+16O虹散乱の全角度領域を再現しない。
有限レンジ交換項にし自己無撞着にした畳みこみポテンシャルが虹散乱の解析に利用されている。
畳みこみポテンシャルの適応性
16O+16O 虹散乱の(半)現象論的光学模型計算交換項をゼロレンジ近似した畳みこみポテンシャルは、16O+16O虹散乱の全角度領域を再現しない。
有限レンジ交換項にし自己無撞着にした畳みこみポテンシャルが虹散乱の解析に利用されている。
課題a) CDCCの経験から核表面(前方角
度)で斥力効果を期待する。チャネル結合の効果がポテンシャルの形を補正し、実験データの再現を良くする?
b)交換項を有限レンジにする。チャネル結合を含めると模型が悪くなる?
微視的チャネル結合法
チャネル結合方程式
結合ポテンシャル
畳みこみ模型
核子間有効相互作用 (DD-M3Y)
Uab(r) = NR VNab(r) + VC
ab(r) + i W(r) δab
[ Ea-Ta-Uaa(r) ]Φa(r) = Σ Uab(r)Φb(r)a ≠ b
VNab(r) = ρ ρ vNN(s) dr1dr2∫ i j kℓ
ρ: OCM (S. Okabe)
(FR)
(ZR)
課題 a) 16O+16O 虹散乱のチャネル結合法計算 (ZR)
チャネル結合の効果がポテンシャルの形を補正し、実験データの再現を良くする?
チャネル結合の効果は、前方角の再現に寄与しない。
Exp:● E. Stiliaris et al., Phys. Lett. B 223, 291 (1989).● Y. Kondo et al., Phys. Lett. B 365, 17 (1996).● Y. Sugiyama et al., Phys. Lett. B 312, 35 (1993).● D. T. Khoa, W. von Oertzen, H. G. Bohlen, PRC 49,
1652 (1994).
課題 b) 16O+16O 虹散乱のチャネル結合法計算 (FR)
チャネル結合を含めると模型が悪くなる?
チャネル結合の効果は、微視的チャネル結合法と矛盾しないことを確認する。
チャネル結合の効果 (DPP)主に、核表面での吸収効果
弱い斥力
核虹は相互作用ポテンシャルに敏感
ポテンシャルの深さ
ポテンシャルの関数形
弾性チャネル以外との結合効果
核子間有効相互作用と有効模型汎用性 Elab/A= 7.5 ~ 22 MeV
16O+16O分子共鳴の回転励起バンド
障壁近傍の分子共鳴状態: N=28WS型の現象論的ポテンシャルを使った結果に矛盾しない。
勝間, 桜木, 近藤, 日本物理学会2002秋季大会, 13pRF-2.
16Oミステリアス0+状態の現象論的研究
12C
α
M.K., J. Phys. G40, 025107 (2013).
16O基底状態:0+1
殻模型 二重閉殻構造
N = 4 (パウリ原理で許されるの最低状態)
第一励起状態:0+2 (Ex= 6.05 MeV)
a クラスター模型
高励起領域に現れるはずの 0+2
ミステリアス状態
微視的 a クラスター模型0+
2 は N = 6 になる。
回転励起モード(0+…6+)
8+ 状態が回転バンドに存在しない。
0S 0S
0p 3/2
0p 1/2
N = 2n + L
12Cα
φ16O = φαφ12C χnL(r)
8
0
0S
0p 3/2
0p 1/2
16O0+1
12
16O ミステリアス 0+ 状態 殻模型状態と a クラスター状態の共存
課題:ミステリアス状態の内部構造を調べる
16O 核の高励起領域に 8+ と 9 -状態が存在する。(Ex≈ 30 MeV)
実験12C(12C, 8Be) 16O* 12C( α, 8Be) 8Be
理論
4p4h
Potential models
8+ と 9 -状態が既知の回転バンドのメンバーであるかを調べ、
ミステリアス状態が N=6 と N=8 のどちらを持つかを述べる。
α 12C
L
16O
α+12C 弾性散乱: 核虹散乱
回転バンド
α+12C 弾性散乱断面積
Ecm= 21.15 - 26.625 MeV
クーロン散乱からの増加
干渉縞の強弱を再現する。
利用した核間ポテンシャルは十分よく実験データを再現する。
現象論的 Woods-Saxon ポテンシャル
12C
α
核力の影響
共鳴状態
Exp:● T. Mikumo et al., J. Phys. Soc. Japan 15, 1158 (1960).● T. Mikumo, J. Phys. Soc. Japan 16, 1066 (1961).
α+12C 分子共鳴状態
ポテンシャル共鳴
位相のずれ:90度
S行列のピーク
弾性散乱にも 8+ と 9 -の共鳴状態が見つかった。
共鳴エネルギー8+ :Ecm ≈ 22 MeV
(Ex ≈ 29 MeV)
9- :Ecm ≈ 23.0 MeV(Ex ≈ 30.2 MeV)
核間ポテンシャルの強さの指標
ポテンシャルの体積積分値
体積積分値は、核虹の見えるエネルギーから滑らかに変化する。
核虹
分子共鳴
ミステリアス状態(現象論)
核虹
後方角に現れる強い Far side 断面積
核虹角 ” ” 核虹角より後方角度は 光 の届かな
い暗い領域になる。
ポテンシャルの深さを決定できる。
核虹を再現するポテンシャルからの外挿は、低エネルギーでのポテンシャルの強さの強い証拠になる。
D.T. Khoa, PRC 63, 034007 (2001)
F
N
104 MeV
120 MeV
145 MeV
172.5 MeV
α+12C 回転バンド
8+ と 9 -状態は既知の回転バンドのメンバーである。
N = 8 (遇パリティ)N = 9 (奇パリティ)
ミステリアス0+ 状態は、
N = 8相対運動の波動関数のノードが一つ多い。
まとめ
本講演のトッピクス:
核虹現象のおさらい
16O+16O核虹散乱のチャネル結合効果
16Oのミステリアス0+状態の現象論的研究
原子核虹現象:
核間相互作用ポテンシャルの深さを不定性なく決定する重要な現象。
(核反応) 最も単純な原子核反応、弾性散乱で主に観測される。(核構造) 複合系の一粒子運動の全量子数を決定できる。
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