フットケアの感染対策フットケアの感染対策 公立陶生病院感染制御室...

Post on 14-Feb-2020

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フットケアの感染対策

公立陶生病院 感染制御室感染管理認定看護師

金子美晴

フットケアが必要となってくる疾患

糖尿病透析

(腎不全)悪性腫瘍

末梢動脈

疾患脳血管疾患 加齢

免疫力が低下している患者が多い!

など・・・

神経障害・血流障害があることで起こりやすいのが・・・

潰瘍 壊疽胼胝(たこ)や

鶏眼(うおのめ)

白癬菌 熱傷

免疫力が低下しているのに加えて傷に付着した微生物が増殖し、感染しやすい状態にある

など・・・

フットケアに使用する器材には?

洗面器やバケツ爪切りや

ニッパー、ヤスリ

タオル

など・・・ 患者間で共有する物品が多い

器材処理の流れ

使用後の器材

分解・器材の

分別

洗浄 消毒 すすぎ 乾燥 保管

洗浄・消毒・滅菌の目的と用語の定義

洗浄 対象物からあらゆる異物(汚染・有機物など)を除去すること(表面の付着物を洗い、すすぐこと)

消毒 対象物から細菌芽胞を除くすべて、または多数の微生物を除去すること(必ずしもすべての微生物の殺滅ではない)

滅菌 微生物をすべて完全に除去、あるいは殺滅すること(無菌保証水準は10—6レベルであること)

<目的>

患者(利用者)に使用する器材を介した患者や医療従事者の交差感染を予防する

器材の破損、腐食、変色や精度・機能低下を防止する

洗浄なくして消毒は行えない!

• きちんと洗浄をすることで、確実な消毒ができる!

• 洗浄を行わない器具を消毒薬に浸漬すると、タンパク性物質が凝固して固着し、消毒効果が阻害されます。

基本的には汚染後(使用後)直ちに洗浄することが望ましい。洗浄までに時間がかかり乾燥してしまう可能性がある場合は水に浸漬する・予備洗浄用スプレー洗剤などを使用し、乾燥を予防する手段を講じることが望ましい。 (鋼製小物の洗浄ガイドライン2004より)

洗浄のポイント!

1. 標準予防策に則り、個人防護具を適切に装着する。

2. 分解できる器材は可能な限り分解する

ブラシでの洗浄には特に水はねしやすいので注意!排水の際も水はねする可能性が高い!

自分を汚染微生物から守る!

3. 洗剤を用いて溜め水の中でスポンジやブラシを用いて洗浄する

4. 目に見えるすべての汚染を除去する

5. 最後に水を交換してしっかりすすぐ

水はねによる飛散を予防するために溜め水の中で洗浄する!

スポルディングの分類とその処理方法

器材の分類 器材 処理分類

クリティカル(高度リスク)分類

無菌の組織または血管内に挿入する

植え込み機材、外科用メス・針・その他手術用器材

滅菌

セミクリティカル(中等度リスク)分類創傷のある皮膚・粘膜に接触

呼吸器回路、消化管内視鏡、気管内チューブ

高水準消毒

体温計 中水準消毒

ノンクリティカル(低度リスク)分類

粘膜に接触しない、創傷のない無傷の皮膚と接触する。あるいは皮膚と接触しない

便器血圧測定用カフ聴診器テーブル上面など

低水準消毒洗浄

※ フットケアの場合、傷がある可能性が多く、どこに傷があるかわからない場合もあるのでセミクリティカルで対応

中水準消毒には

次亜塩素酸ナトリウム:0.01%(100ppm)1時間以上または0.1%~0.05%(500~1000ppm)30分浸漬消毒ミルトンⒸ・ピューラックスⒸ ・ハイターⒸなど・・・

消毒用エタノール、70%イソプロパノール

熱水消毒:70℃30分もしくは80℃10分

下肢にはこのような微生物が・・・

表皮ブドウ球菌

真菌(白癬菌など)

コリネ菌 枯草菌(Bacillus )

緑膿菌

足の裏には、頭皮の20倍、顔の200倍もの量の微生物が住み着いているといわれています

微生物別にみた消毒薬の殺菌効力

一般細菌

緑膿菌 真菌 芽胞B型肝炎ウイルス

次亜塩素酸ナトリウム

〇 〇 〇 〇1000ppm(0.1%)

で一時間以上の浸漬消毒

アルコール

〇 〇 〇 × 〇

白癬菌(皮膚糸状菌)

• 人間や動物などの皮膚の角質層に定着する真菌(カビ)の一種

• ケラチナーゼというたんぱく質分解酵素を持っていて皮膚の角質層のケラチンを溶かし栄養源としていく

• 感染経路:ヒトーヒト感染(間接接触感染)

• 白癬菌は手や足などの皮膚に付着しても角質層に侵入するまで2~3日かかる

患者 環境 非罹患者

白癬菌:生存期間

• 乾燥状態で1か月程度で急速に死滅

• 湿潤した環境下で半年以上にわたって生存する可能性がある

物品やマット(タオル)を定期的に清掃・洗濯することで感染を予防することができる

白癬菌に有効な消毒法

• 熱水による消毒

→ 70~80℃ 10分間

• 消毒薬による消毒

① 0.1%~0.05%(500~1000ppm)次亜塩素酸ナトリウム液 30分浸漬消毒

②消毒用エタノールによる清拭消毒または10分間の浸漬消毒

次亜塩素酸ナトリウム液使用時のポイント!

1. 次亜塩素酸の入った浸漬容器は蓋を閉め・直射日光を下げる

• 異物や水の跳ね返りなどの混入を防ぐ

• 塩素ガスが発生する可能性があるため眼や粘膜などの刺激から守る

• 光による濃度低下を避ける

2. 手荒れを起こす可能性がある

• 個人防護具を着用し、消毒剤に接触した場合は十分に手洗いを行う

3. 金属腐食性がある

• 金属性の物品の消毒は避ける

4. 一部のプラスチック・ゴムを劣化させる

• メラニン樹脂・ポリウレタン・天然ゴム・フェノール樹脂などは使用に適さない

5. 脱色作用がある

• 色柄物のリネン類の消毒は避ける

希釈後は24時間以内に使用するようにする

次亜塩素酸ナトリウム液使用時のポイント!

足ふき用のタオルは個人持ちにする

• 白癬菌は湿った場所を好み、湿度70%以上、温度15℃以上になると活発に増殖する

• 湿ったタオルは白癬菌の格好の生息場所!

足ふきタオルの共用は避け、タオルは個人持ちにする

洗面器・バケツは十分に洗浄をする

• 洗面器には「垢」がたくさん付着しています。

• 洗浄を十分に行うだけでも白癬菌は除去されるとも言われている。

• しっかりスポンジなどで洗浄し、垢を落とした後に消毒する

適切な洗浄は,その後の消毒・滅菌が有効に行えるかどうかの鍵を握る重要な処理である.最も洗浄が困難な消化器内視鏡でも汚染微生物数が平均4log(99.99%)以上減少 (1/10,000に減少)することが明らかになっている

洗浄を容易にするために・・・

洗面器やバケツにビニール袋を張ってその中に湯を入れフットケアを行う

→ 汚染を最小限に抑えることができる!

爪切り・ニッパーは錆に注意!

• 爪切りやニッパーは金属のものが多い

• ブラシなどで洗浄を行った後、消毒用エタノールで清拭消毒を実施する

• 消毒時、次亜塩素酸ナトリウムを使用すると、金属腐食性があるので使用を避ける。

錆が器材に残ることで、腐食部分に微生物が入りこんでしまい、洗浄しても取り除くことが困難になり、微生物伝播の原因になる

(傷のある部分も同様の状況になる)

洗浄後のスポンジはしっかり乾燥

洗浄後のスポンジを湿ったまま管理することで、白癬菌に限らず微生物の増殖につながる

使用後はスポンジを洗浄したあと、消毒をし、フックに掛けるなどして乾燥した状態で管理する

おすすめの方法は、洗面器を消毒する際にスポンジも一緒に浸漬消毒する

スポンジの交換頻度について明確な基準はない見た目で変色や古くなっている状態であれば交換する必要がある乾燥しやすい素材のスポンジを選択する

よくある質問!

別に取り扱う必要はありません!

標準予防策の考え方を思い出してください・・・

感染症の有無に関わらず手順の処理は同じです。むしろ、感染症がわかっていない患者に使用した器材こそ危険が含まれています!

感染症の患者に使用した器材は他の器材と別に取り扱わなくても大丈夫?

最後に・・・フットケア後の器具は白癬菌など感染の有無に関わらず、

適切に洗浄すること

(99.99%の汚染微生物を除去することができる)

洗浄時は個人防護具を着用

(自分を守る)

器具や対象菌に合わせて消毒薬を選択

• 想定される範囲の微生物に対応する消毒薬を選択する。

• 次亜塩素酸は金属腐食性がある

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