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リチウムイオン電池と分子シミュレーション光田 英司
2011/09/01CG研御岳セミナー at おんたけ休暇村
※ 本発表の内容は、あくまでも公知の事実であり、光田の研究内容を表すものではありません。
リチウムイオン電池の能力
50
100
150
200
100 200 300 400 500 600
重量エネルギー密度 [Wh/kg]
体積エネルギー密度 [Wh/L]
ニカド蓄電池(1899年~)
ニッケル水素蓄電池(1990年~)
リチウムイオン電池(1991年~)
リチウムイオン電池の理論限界
ハイブリッド(HV)車
プラグインハイブリッド(PHV)車
小型携帯機器や自動車等で、主流となりつつある。引用: 小久見 善八 「リチウム二次電池」(オーム社)
2/10
リチウムイオン電池のしくみ概要
正極
負極
リチウムイオン
引用: http://www.edisonpower.co.jp/ion_battery/5.html
Liイオンの移動により電気エネルギーが生まれる。
3/10
分子シミュレーション
分子シミュレーション → 以下の方法の総称。電子の波動関数を計算(計算コスト高)
密度汎関数(DFT)法 → 結晶の性質(磁性、バンド構造等)
古典論のみ(計算コスト低) 分子動力学(MD)法 → 流体、気体の性質 モンテカルロ(MC)法 → 熱平衡状態の高分子構造
※ 静的 分子軌道(MO)法 → 分子の性質、化学反応の性質
※「第一原理計算」と呼ぶ
・1電子近似: h!i = "i!i (Hartree-Fock方程式)・分子にも軌道があると仮定(結果の解釈が明確)
イメージ
・1電子近似: h!i = "i!i
・電子の交換相関相互作用は考慮できない。
(Kohn-Sham方程式)・hは電子密度の汎関数と仮定。・電子の交換相関相互作用を考慮できる。
4/10
リチウムイオン電池の研究
Liイオン電池(LiB)の性能向上、熱安定性向上
Liイオン移動のメカニズム、ダイナミクスを詳細に解明する必要あり。
実験と理論の両面で研究。
分子シミュレーションが活躍。・複雑な現象(多体問題+量子力学)を扱うことができる。・実験では見えない現象を見ることができる。・計算機と計算技術の発展により、実験よりも費用対効果大になりつつある。
5/10
研究テーマの1つ: 拡散係数の予測
Liの移動が速くなればLiBの性能が上がる。移動が速い材料(条件)を理論的に予測・提案したい。
まずは、Liの拡散係数 D [m2/t]を計算する技術が必要。
正極材料におけるDの研究の1例を紹介します。
(Dは実験でよく計測される → 実験との相互理解が可能。)
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LiBの正極内部(一例)引用: Phys. Rev. B 73, 174112 (2006)
Li
O
Fe
P
Li周辺の拡大図
LiはOを頂点とする八面体内部(Liサイト)に「格納」されている。
充放電時、Liは順番に出入りする(他は変化しない)。故に、メモリ効果なし。
1.5 nm
7/10
Liのホッピングと遷移状態理論
ホッピング
E
Liは「確率的に」隣のサイトへ移動する。
遷移状態理論(TST)の適用
D =kBTL2
6hQ!
Qexp ("!E/kBT)
Q : RSでの分配関数 Q!
調和振動子近似
!E : 活性化エネルギー L : ホッピング距離
Q =1
1! exp(h f /kBT)
: TSでの分配関数
Q =1
1! exp(h f "/kBT)
ΔE, f, f*をDFTを使って計算。反応物状態(RS)
遷移状態(TS)
!E(数100 meV)
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計算方法概要
① RS
・「構造最適化計算」最安定な原子配置と、そのときのエネルギーERSを算出。
・原子配置の摂動による振動数fの計算
② TS
・TS探索TSは、N次元空間での鞍点→ 真のTSならば、虚数の振動数が1つ存在
N次元空間 → 振動数もN 個
・構造最適化計算でETS ・振動数計算でf*
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最後に: マルチスケールシミュレーションの必要性
正極内部E 正極表面 電解液
Å スケールDFT
数100nmスケールMDどうする?
Liは数々の「壁」を乗り越えて負極まで旅をする。その過程には、様々なスケールがある。
「マルチスケールシミュレーション」
量子力学と古典力学をつなげる技術が必要。
(例)Car-Pariinello(CP)法波動関数を解きながら、原子核の時間発展を計算する方法
µ!̈i(r) = H!i(r) + "i!i(r)MI R̈I = !"I E
10/10
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