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NTT技術ジャーナル 2018.2 69
グローバルスタンダード最前線
oneM2Mは水平統合型のIoT(Inter-netofThings)プラットフォームの標準化を進めるために開始されたパートナーシッププロジェクトです.oneM2Mは多くのIoTシステムで共通的に使われる機能群をプラットフォームとして仕様化する一方で,他の既存規格と相互接続するための仕様策定も進めています.ここではoneM2Mの組織概要,基本仕様,最新動向などについて紹介します.
oneM2Mの組織概要
IoTプラットフォーム層における標準規格の乱立を防ぎ,水平統合型のIoT(Internet of Things)プラットフォームの仕様策定を進めるために,2012年に欧米日中韓の 7 つの標準化団体〔ETSI(European Te l e communi cation Standards Institute),
ARIB(Asso c i a t i o n o f Rad i o Industries and Busi nesses),TTC
(Telecommunication Technology Committee)等〕が協力し,oneM2Mをパートナーシッププロジェクトとして 設 立 し ま し た.2015年 にTSDSI
(Telecom Standards Development Society, India)が加わり, 8 つの地域標準化団体がPartner Type1としてoneM2Mの運営を行っています.このPartner Type1から選ばれたメンバが,運営委員会(SC: Steering Commit tee)を構成し,その配下に技術総会(TP: Technical Plenary)が組織され,さらにその配下に 6 つの作業グループ(WG: Working Group)が存在します(図 1 ).年間 6 回のF2F会合やその間に行われる電話会議においてoneM2M仕様に関する技術的な議論が行われています.
oneM2M仕様は2015年 2月にRelease
1,2016年 8 月にRelease2が公開されています.2018年 3 月にはRelease3の公開が予定されています.
Release-1における 基本仕様
oneM2Mでは,通信方式に非依存なハイレベルなアーキテクチャと,その配下で使われる具体的な通信方式の 2段階に分けて仕様化しています(1),(2).
アーキテクチャの概要を図 2 に示します.通信にかかわる実体としては,アプリケーションを表すAE(Ap plication Entity)と,IoTシステムにおける共通機能の集合体であるCSE
(Common Services Entity)が規定されています.また,それらの間の参照点 と し て は,Mca(CSEAE間 ),Mcc(CSECSE間)などが規定されています.CSEはクラウド ・ エッジ ・ゲートウェイなどに配置され,ツリー
運営委員会(SteeringCommittee)
技術総会(TechnicalPlenary)
財務委員会(Finance)
要求条件部会(REQ)
プロトコル部会(PRO)
試験部会(TST)
アーキテクチャ部会
(ARC)
セキュリティ部会
(SEC)
管理・抽象化・セマンティクス部会(MAS)
法務委員会(Legal)
マーケティング委員会(Marketing)
作業手順委員会(Methods and Procedures
Subcommittee)
図 1 oneM2Mの組織
水平統合型IoTプラットフォーム標準規格oneM2Mの最新動向
原は ら だ
田 恵け い
/前まえおおみち
大道 浩ひろゆき
之 /山やまさき
崎 育い く お
生NTT未来ねっと研究所
NTT技術ジャーナル 2018.270
グローバルスタンダード最前線
を構成するように接続されます.AEはこれらのCSEのうちの 1 つに接続して動作します.AEは直接接続されていないCSEとの間でも,経路上のCSEがルーチングすることにより,メッセージを送受信することが可能になります.
CSEは多くのIoTシステムにおいて共通的に必要な機能の集合体であり,この機能にはデータ管理,デバイス管理,セキュリティなど12種類の機能が含まれます(図 3 ).これらの機能は,外部から利用できるようにするためリソースとして表現されており,外部のAEやCSEによって,リソースの操作を通じて各機能が利用されます.リソースの操作には,生成(CREATE),取得(RETRIEVE),更新(UPDATE),削 除(DELETE), 通 知(NO TI FICA TION)があり,この 5 つの操作に絞ることでWeb Serviceなどよりも
シンプルなプロトコル設計が実現されています.
oneM2Mのリソースには複数のタイプが定義されており,測定データなどを格納する〈contentInstance〉やそれらを格納するための〈container〉,情報の更新時に通知を受けるために使用する〈subscription〉などがあります.主なリソースタイプを表に示し
ます.上記のアーキテクチャの配下で用い
られる具体的な通信方式については,複数のプロトコルおよび複数の電文のエンコーディング方法(シリアライゼーション)から選択できるようになっています.oneM2M Release1では,プロトコルとしてHTTP・CoAP
(Constrained Application Protocol)・
IN
IN:インフラストラクチャ・ノード
(サーバ)
MN:ミドル・ノード(M2Mゲートウェイ,
中継ノードなど)
M2Mデバイス
MN
Mca
McaMca
Mca Mca
Mca Mcc
Mcc Mcc
AE
AE
CSE
AEAE
CSE
AE
CSE
AE
CSE
:oneM2M規定スコープ外
非oneM2Mデバイス
非oneM2Mデバイス
非oneM2Mデバイス
非oneM2Mデバイス
図 2 アーキテクチャの概要
アプリケーション管理
登録 セキュリティ サービス課金関連機能
サブスクリプション・通知
探索 ネットワークサービス連携グループ管理 位置情報
通信管理/配布機能 データ管理 デバイス管理
図 3 CSEの持つ12種類の共通機能
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MQTT(Message Queuing Telemetly Transport)が,シリアライゼーションとしてはXMLとJSONが選択可能になっています.このように,具体的な通信方式を選択可能にすることには,システムを開発する際に要件に適した通信方式を選べるようにするとともに,将来,より優れた通信方式が利用可能になった際に移行を容易にする効果があります.
また,oneM2Mは他規格のプロトコルとも連携して動作するための枠組みを決めています(3)〜(6).IPE(Interworking Proxy Application Entity)と呼ばれる一種のAEは,oneM2MのAEとして振る舞う一方で,他規格のプロトコル通信も行います.IPEが他規格プロトコル上の情報をCSE上にリソースとして作成することで,他のoneM2MのAEから読み取りを可能にします.また,逆に,oneM2MのAEがリソースを操作することを契機に,IPEがその更新をモニタし他規格プロトコルに通信を行い,働きかけることが可能となります.このように,IPEを用いることでoneM2Mと他規格のプロトコルを連携させることができます.
Release-2および Release-3における拡張
■Release-2Release2では,ホームドメイン ・
産業ドメインのための仕様化, Interworking関連の仕様化,セマンティック技術の導入などが行われました.
ホームドメインのための仕様としては,家電機器の情報モデルが定義されました.
産業ドメインのための仕様としては, 時 系 列 デ ー タ を 扱 う た め の
〈timeSeries〉 リ ソ ー ス お よ び〈timeSeriesInstance〉リソースが導入されました.また,より即時性の高い通信や効率的な通信ができるよう,通信方式の選択肢が増やされ,プロトコルにWebsocket, シリアライゼーシ ョ ン に バ イ ナ リ 形 式 のCBOR
(Concise Binary Object Rep re sentation)が追加されました.
Interworking関連の仕様化としては,AllJoyn, OIC, Light Weight M2MとのInterworking仕様が決められました.また,Interworkingにおける多様なデータを効率的に表現するた
めに,〈flexContainer〉リソースが導入されました.
セ マ ン テ ィ ッ ク 技 術 と し て は,〈semanticDescriptor〉リソースが導入され,RDF(Resource Description Framework)を用いてデータの意味を記述可能となり,この情報を用いてリソースを検索することが可能になりました.■Release-3
2018年 3 月 に リ リ ー ス 予 定 のRelease 3 では,oneM2Mの採用を促進する営みに重点が置かれました.このタスクの中には,重要事項の修正 ・改良,開発者ガイド,テスト仕様が含まれます.またホームドメイン仕様の拡張も継続して行われており,その 1つとしてOMA GotAPI (DeviceWebAPI)で規定しているヘルスケア機器とoneM2Mを連携させる追加が承認されました.具体的には,対象の機器をoneM2M上で表現するデータモデルの追加と,OMA側のデータモデルとの対応関係を定義しています.この仕様追加はNTT未来ねっと研究所,NTTサービスエボリューション研究所およびNTTドコモが協力して行いました.
表 主なリソースタイプ
リソースタイプ名 役割 ・特徴 導入されたリリース〈CSEBase〉 すべてのリソースツリーのルートとなり,この配下に各リソースが登録される R1〈container〉 データをためるコンテナの働きをする R1〈contentInstance〉 〈container〉の直下に生成される,データを格納する R1〈subscription〉 リソースの変更等を契機に通知を受ける場合に,本リソースを対象リソース配下に作成して使
用するR1
〈accessControlPolicy〉 アクセス制御のためのポリシー R1〈flexContainer〉 保持する属性をカスタマイズすることができる.Inteworkingにおいて多様な型を扱うために導
入されたR2
〈timeSeries〉 〈container〉と似た役割だが,時系列データの欠損を検出できる機能を有する R2〈timeSeriesInstance〉 〈timeSeries〉の直下に生成される.〈contentInstance〉と似た役割だが,データ生成時間を属
性として保持することができるR2
NTT技術ジャーナル 2018.272
グローバルスタンダード最前線
oneM2Mの周辺に おける動向
oneM2Mの周辺における主要な動向として,相互接続テストイベント,認証,オープンソースソフトウェア
(OSS)の 3 点を紹介します.■相互接続テストイベント
相互接続テストイベントとは各社の実装を持ち寄って相互接続試験を行うイベントです.oneM2Mメンバ以外も参加できるオープンなイベントとなっており,2015年より年 2 回のペースで 4 〜 5 日間にわたって行われています.参加者は 1 〜 2 時間のセッション内で事前に決められた相手とoneM2Mのテスト仕様書(7)に従って接続試験を行い,このセッションを 1 日 4 回程度繰り返します.このイベントによって,参加者の実装の品質を効率的に向上させることが可能になるとともに,oneM2M仕様の齟齬や曖昧性が摘出でき,実装可能なこと,相互運用可能なことが確認できます.NTTは過去の5 回のイベントにはすべて参加しています.■認証
認証とは,標準仕様に製品が準拠していることを試験により確認し,その旨の表示の許可を与える活動です.oneM2Mはパートナーシッププロジェクトであり,法人格を持たないため自分自身では認証機関になることができず,外部の機関に認証事業を委ねることになります.このような事情もありさまざまな議論が続いていましたが,oneM2Mの認証を早期に開始するという観点から認証事業の展開を段階的に行うこととし,地域ごとの認証(第 1フェーズ)に次いでグローバルな認証
(第 2 フェーズ)を進めることが2016年 4 月に合意されました.第 1 フェーズ の 先 駆 け と し て, 韓 国 のTTA
(Telecommunication Technology Association)がアジアを対象として,2017年 2 月に認証活動を開始しました.2017年12月時点では, 8 社11製品が認証されています.2018年中ごろには第 2 フェーズとして全世界を対象 と し た グ ロ ー バ ル 認 証 がGCF
(Global Certification Forum,英国)を認証機関として開始される予定です.■OSS
oneM2MのOSSプロジェクトによる実装も進められています.CSEの実装としては EclipseプロジェクトのOM2M,OCEANプ ロ ジ ェ ク ト のMobius,OpenDaylightプロジェクトのIoTDM等が挙げられます.また,組込デバイス向けのAEを開発するためのライブラリとしては,ATISが進めているOSIoTがあります.
今後の予定
今後の予定としては,2018年 3 月にRelease 3 のリリースが計画されています.
ま た,oneM2M仕 様 のITUT(Inter national Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)勧告化の手続きが進められており,SG(Study Group)20にて合意が行われる予定です.ITUT勧告化されることで,oneM2Mの認知 ・ 普及がより進むと考えられます.
oneM2MのRelease3のリリース後,Release4の仕様化が本格的に開始されます.2017年12月時点で取り組み項目として承認されている対象に,ア
クセス制御性の向上とoneM2Mプラットフォームの軽量化があります.また,oneM2Mの適用先として親和性が高いと考えられるスマートシティ分野(8)
に,より注力していくべきとの提案も出ています.
NTT未来ねっと研究所は,oneM2MをIoTプラットフォームとして利用可能な標準規格として有望であると考えて お り, 今 後 もNTTグ ル ー プ がoneM2Mを有効活用できる仕様となるように,寄書提案や働きかけを行っていく予定です.
■参考文献(1) 筒井 ・ 後藤:“oneM2M標準化動向,” NTT技
術 ジ ャ ー ナ ル,Vol.26,No.6,pp.3841, 2014.
(2) o n e M 2 M T S 0 0 0 1 : “ F u n c t i o n a l Architecture,” V.2.10.0, Aug. 2016.
(3) oneM2M TS0008 : “CoAP Protoco l Binding,” V.1.3.2, Mar. 2016.
(4) oneM2M TS0009 : “HTTP Pro toco l Binding,” V.2.6.1, Aug. 2016.
(5) oneM2M TS0010 : “MQTT Protoco l Binding,” V.2.4.1, Aug. 2016.
(6) oneM2M TS0020: “Websocket Protocol Binding,” V.2.0.0, Aug. 2016.
(7) oneM2M TS0013 : “ In teroperab i l i t y Testing,” V.1.0.0, Mar. 2016.
(8) http://www.onem2m.org/images/files/oneM2M_WhitePaper_SmartCitiesDone Smarter.pdf
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