taro-h260330 不登校への対応 ノープロブレムcjid/h26 futoukou kyouinn.pdf-3-Ⅰ...
Post on 15-Aug-2020
0 Views
Preview:
TRANSCRIPT
不登校への対応不登校への対応
大 丈 夫大 丈 夫ノープロブレム
秋田県総合教育センター
目 次
Ⅰ 不登校への対応について
1 不登校の状態に対応するステージの決定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
2 誘いかけのパターンの決定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
3 チェック表から判断される対応〔ステージとパターンの仮説〕 ・・・・・・・・・・・・4
Ⅱ 再登校援助の実際
ステージⅠ「学校へ行きたいけど行けないと言う本人」への対応
1 家庭訪問での「誘いかけのパターン」の選択 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
ステージⅡ「学校へ行かせたいという保護者」との連携
1 保護者と足並みをそろえた再登校援助 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
2 「学校への誘いかけ」を実施するまでの対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
3 回復の手応えが見えはじめた子どもへの家庭訪問 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
4 再登校までのプログラム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
5 家庭訪問のポイント ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
6 登校が今すぐには困難と判断した場合の対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
ステージⅢ「行きたくない本人」「休ませたい保護者」への対応
1 家庭訪問で本人に会えないとき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
2 「行きたくない」本人への対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
3 「ゆっくり休ませたい保護者」への対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
ステージⅣ「保護者・本人の登校に関する考え」に配慮しないケース
1 精神的な病気や発達障害などが心配な場合 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
2 強引な登校刺激について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
3 「本人は行きたい」が「保護者が行かせない」という場合の対応 ・・・・・・・・18
Ⅲ ~事例から見た「再登校」のきっかけ~
1 本人への対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
2 保護者との対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
3 家庭生活の改善 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
4 精神的な病気等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
5 保健室等での対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
6 職員間の理解や連携 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
7 進級・卒業・進路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
8 その他 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
- 3 -
Ⅰ 不登校への対応について
学校への誘いかけの方法を,不登校
児童生徒やその保護者の状態に応じて
「4つのステージとパターン」に分け
て述べています。
チェック表で不登校児童生徒・保護
者の登校に関する考えや現在の状態を
確認しながら,対応の方針を決めます。
1 不登校の状態に対応するステージの決定
(1) 不登校対応:チェック表
登校に関する考えをチェックし,4つのステージのどこに進むかを決めます。
登校に関する考えに○印 ステージ決定
本 人 本人 保護者 ステージ
行きたいけど行けない A A ⅠA
行きたくない B B Ⅳ
不 明 C A ⅡB
B Ⅲ保 護 者
A Ⅱ学校へ行かせたい A C
B Ⅲ休ませたい B
例 外
精神的な病気や発達障害などが疑われる
ステージⅣ保護者が,強引な登校刺激をしたがっている
本人は登校したいが,保護者が行かせない
(2) 再登校に向けた4つのステージ
ステージⅠ 「学校へ行きたいけど行けないと言う本人」への対応 P5
ステージⅡ 「学校へ行かせたいという保護者」との連携 P9
ステージⅢ 「行きたくない本人」「休ませたい保護者」への対応 P17
ステージⅣ 「保護者・本人の登校に関する考え」に配慮しないケース P18
(チェックⅠ)登校に関する本人・保護者の考えを把握
(チェックⅡ)不登校児童生徒の「回復度」を把握
4つのステージとパターンに応じた対応
対応方法のステージ決定
誘いかけのパターン決定
チェックⅠ
- 4 -
2 誘いかけのパターンの決定
(1) 再登校援助の〔誘いかけ4パターン〕
パターン1 強く登校を促す
パターン2 積極的に学校への誘いかけをする
パターン3 学校への誘いかけを控え,家庭訪問等で本人との関係づくりに努める
パターン4 家庭訪問等をしばらく控え様子を見るが,家庭との連絡は取り合う
(2) 「回復度」のチェック
回復度をチェックし,4つのパターンのなかの,どの誘いかけをするかを決めます。
誘いかけ回復度 自殺願望や自傷行為などがみられる
心と体の症状がみられるd 部屋に閉じこもり家族との会話がない パターン
家族への暴力が見られる昼夜逆転等生活のリズムが乱れる 3・4一日中着替えることなく,パジャマ等で過ごす家庭訪問で本人に会えない
家族との会話が普通にできるc 趣味などを楽しんでいる パターン
すぐにカッとしたり,イライラしなくなる 3家庭訪問で本人に会って話ができる
生活のリズムが整ってくる身の回りのことが自分でできる表情が明るくなる パターン
b 自分から勉強をしだす 2・3家族に素直に甘えることができる教師や友達の訪問を楽しみに待ちだす
学校や友達の話題などを自分から言いだす友達の家に頻繁に遊びに行きだす パターン
a 自分に自信を持ち出す 2学校へ行きたいと言いだす
〔注〕チェック箇所が複数にまたがる場合abcdの場合 パターン3または4abc の場合 パターン3ab の場合 パターン2または3
3 チェック表から判断される対応〔ステージとパターンの仮説〕
ステージ パターン
(状態・対応) (誘いかけ)
ステージⅠ(行きたいけど行けない本人)・・・・・・・・・・・・・・・P5へステージⅡ(行かせたいという保護者)・・・・・・・・・・・・・・・・・P9へステージⅢ(行きたくない本人、休ませたい保護者)・・・・・P17へステージⅣ(保護者・本人の考えに配慮しないケース)・・・P18へ
チェックⅡ
チェックⅠ チェックⅡ
- 5 -
Ⅱ 再登校援助の実際
1 家庭訪問での「誘いかけのパターン」の選択
① 登校できない理由を聴きます(途中で説教や説明をしたりせず,どんな話でも最後まで聴きます)(口を閉ざすときは,話題を変えましょう)
② 誘いかけて大丈夫かを判断します(身体的・精神的な病気や発達障害などを伴う心配がないかを確認します)
(1) 身体的・精神的な病気や発達障害などが心配ないと判断された場合の誘いかけ方
〔積極的に学校への誘いかけをする〕
(精神的な病気や発達障害などの心配がある場合は,ステージⅣ(P18)へ進みます)
【初期の対応】
① 雑談 → ② 休む理由を聴く(無駄に見えても,一応聞いてみます) → ③ 誘いかけ
初期の段階では,家庭訪問をして「学校に行こう」という誘いかけも大切です
誘いかけをする方法や場所などを,次の表を参考に選択します。
誘いかける人 ・担任 ・担任以外 ・友達 ・スクールカウンセラー ・その他
方 法 ・家庭訪問(家に迎えに行くか) ・電話 ・手紙 ・Eメール
言 葉 掛 け ・強い言葉掛け ・やさしく ・事務的に ・その他
場 所 ・教室 ・保健室 ・相談室 ・その他の空き教室・グラウンド・校門
時 間 ・朝から ・昼から ・夕方から ・昼まで ・部活だけ ・休日だけ
(2) 再登校に向けた学校の環境づくり
① 本人・保護者の要望を聴き,本人に合った学校の環境づくりをします
・ 学級に入りたくないのであれば,保健室や相談室の登校を勧めます。
・ 保健室での過ごし方は,本人にも決めさせます。
・ 座席は,遅刻しても入りやすいように「教室の後ろの廊下側」に準備します。
・ 本人の座席の周りには,リーダー的な子どもではなく,本人が望んだ子ども
や本人と似たような性格の子どもを座らせます。
本人・保護者の要望の中には,学校としてそのまま受け入れることのできないもの
があります。その際は,無下に断るのではなく,妥協案を探したり,学校の方針を納
得してもらう努力を充分にします。
一人で困ったら二人で,二人で困ったらチームで対応します。
パターン2
- 6 -
② 「最大の環境は教師自身」を合い言葉に,学校全体で取り組みます
・ 全職員で,本人のために配慮すべきことを確認する機会を設けます。
・ 登校の状態が安定するまでは,特別な配慮を続けることを共通理解します。
・ 昨日まで学校に来ていたかのように対応します(特別扱いしない)。
・ 登校時間が遅れることや宿題をやってこない時には,注意するのではなく,
途中までのがんばりを認めたり,相談に乗る(特別扱いする)などの配慮が必
要なことを確認します。
・ 登校してきた際に,休んだ理由や休んでいたときなどの話を,聴かないよう
にします。こうした配慮を周りの児童生徒にもお願いします。
・ 登校後も,それまでの交換日記やメールでのやりとりなどは続けます。
・ 休み時間に,教師がそれとなく本人の様子を把握します。
・ 家庭訪問をしていたときに本人が喜んだことを,登校後も話題にして関係を
持ち続けます。
・ 本人が部活動を休みたいと言いだした時には,部の監督や先輩から「部活動
はゆっくり休んでも大丈夫」と言ってもらい,本人が休みやすいようにします。
・ 保護者に不安感を与えないようにします。学校での様子を伝えるときは,保
護者が安心できる内容を伝えます。
・ 今まで家庭訪問等で行ってきた相談を,登校できてからもしばらくは継続し
ます(相談方法を,電話や交換ノートなどに切り替えてもかまいません)。
資料:不登校児童生徒への対応方針
年 組 さんへの対応
継続する 2回目以降の対応1回目の対応
かの判断 (改善点)
誘いかける人
誘いかけの方法
言葉掛けの方法
誘いかける場所
誘いかける時間
5ページの「誘いかけをする方法や場所など」を参考に方針を決めます。
- 7 -
資料:再登校に向けた学校の環境づくり
年 組 さんへの対応
提 案 事 項
本 人 の 座 席
周囲のメンバー
その他配慮する点
保 護 者 の 要 望
本 人 の 要 望
※本人や保護者の要望を聴きながら,学校の環境づくりをします。資料:保健室(相談室)での過ごし方
月 火 水 木 金月 日 月 日 月 日 月 日 月 日
教 教 教 教 教1校時
保 保 保 保 保教 教 教 教 教
2校時保 保 保 保 保教 教 教 教 教
3校時保 保 保 保 保教 教 教 教 教
4校時保 保 保 保 保教 教 教 教 教
昼 食保 保 保 保 保教 教 教 教 教
5校時保 保 保 保 保教 教 教 教 教
6校時保 保 保 保 保出 る 出 る 出 る 出 る 出 る
部活動出ない 出ない 出ない 出ない 出ない
教:教室 保:保健室
教 ・教:教室 保:保健室のどちらで過ごすかを選択してチェック
保 ・本人が希望する学習内容や実施した学習内容を記入
保健室等への登校が長くなった場合
○ 「今の保健室での生活は,100点満点のうち何点?」などと聴き,保健室での過
ごし方の改善を図ります。
○ 教室登校に向けて,段階的に次のような取組があります。
・休み時間や給食の時間に本人が望む友達が保健室に行くようにする。
・授業時間に,保健室から出て,廊下を歩いてみる → 教室まで行ってみる。
・行ける時間だけでも,教室で授業を受ける。
- 8 -
(3) 行こうとしたが,登校できなかった子どもへの対応
〔家庭訪問で本人との関係づくりに努める〕
① 行こうと思えたことを認め,励まします。行けなかったことを,失敗体験としま
せん。また,「失敗しても大丈夫なんだ」ということが,実感できる対応も大切です。
② ゴールの再設定をします〔登校以外の目標を一緒に考えます〕。
〈小さな目標(スモールステップ)を決めます〉
教 師 「元気に学校に来ていた頃の君を100点とすると,今の君は何点?」
子ども 「10点」
教 師 「じゃ,少しずつ100点に近付けていこうよ」「まず20点になるために
は,何が出来ればいい?」
☆ ケースによっては目標を決めず,10点分を認め,ほめます。
「今の君でいいんだよ。今の状況で10点でいれるなんて,君はすごいね」
☆ 「80点」以上だったら,「少しがんばりすぎだよ。10点分ゆっくりする方法
を一緒に考えようよ」など,臨機応変に行います。
資料:〔児童生徒面談用〕教育相談カード
私 の 趣 味
私 が 好 き な も の
私 が 嫌 い な も の
私が嬉しいと感じるとき
私 が 困 っ て い る こ と
今の私に点数を付けると その理由はしたら100点満点の何点 点
教育相談カードを活用して,本人との関係づくりや悩みの解決に向けた面談をします。
本人の点数から,次の1~3の中のいずれかを選択し,本人に提案します。
1 点数を「10点上げる」としたら,どんなことができるか
「今のままですごいね」といい, (ほめてあげられる点)2 理由を伝える ・
(ほめられる点を3つ以上考 ・えておく) ・
3 「10点分,ゆっくりする」としたら,どんなことができるか
パターン3
- 9 -
1 保護者と足並みをそろえた再登校援助
(1) 「学校に行くように働きかける」か「ゆっくり休ませる」かを相談して決めます
〈判断基準〉
① 精神的な病気や自傷行為などの心配がある場合は,迷わず休ませます。〔ステージⅣ(P18)へ〕
② ゆっくり休ませるを選択した場合は,「学校の話や勉強の話はせず,本人が行き
たいと思うまでじっくり待たなければなりません。そうしないと,せっかく休ん
でもエネルギーがたまらない」というのが,基本です。それを保護者に理解させ,
実践してもらいます。 〔ステージⅡ-6(1)(P15)へ〕
保護者が,それができないときは, 〔ステージⅡ-1(2)(P9)へ〕
③ 小学校の低学年の場合は,少し無理をしても登校を促す方がよいという考えが
あります。〔自我が発達していない子どもに,自分で考えて判断することを求める
のは,無理があります。それよりも,周りの大人が環境を整えてあげることが大
切です。〕
この考え方も伝え,納得するようであれば, 〔ステージⅡ-1(2)(P9)へ〕
④ 母親が一緒であれば登校できるというケースは,一緒に登校させます。
・ 母子登校の場合,多くの母親は,自分が教室にいることを学校が歓迎してい
ないのではないかと不安です。そこで,母親の座席も教室内に準備します。
・ 母親の悩みや不安などを聴き,がんばりを認めたり励ましたりします。
(2) 再登校への試み
① 初めて不登校になった場合
〔学校への誘いかけ:パターン1(強く促す)またはパターン2(積極的に誘
いかけをする)〕を試みます
・ 再登校に向けて,学校と家庭で取り組むことを確認します。
・ 過去の実践例(P19)等から,本人に有効だと思われる学校への誘いかけの
方法を保護者に提案し協力を求めます。
② 過去に,不登校の経験がある場合
「過去に,一度でも登校できたときのことを,そのまま再現します」
過去に一度でも登校できた児童生徒であれば,「再登校できたときの状況」を
思い出し,そのときあったことを「そのまま再現」します。
前回登校できたときに何があったのかを確認します。
a:「登校できた前日に,友達が遊びに来てくれていた」「明日7時40分!(に,
迎えに来るよ)という張り紙を机の前に貼った」
b:「担任の先生が一緒にゲームをした後,じっくり話を聞いてくれた」
c:「当日は友達が3人家に迎えに来てくれた」
登校できた日の前後の状況が確認できたら,その中で,再現できることをその
まま再現します。
- 10 -
③ 今すぐの再登校は難しいと判断した場合
保護者のがんばりを認め,悩みを受け止めながら,保護者と足並みをそろえた取
り組みをします。登校できない状態が,長引いたり,心身等に強い拒否反応が見ら
れる場合などは, 〔パターン3またはパターン4(P15)へ〕
資料5:〔保護者面談用〕教育相談カード
「再登校に向けた誘いかけ」について
① 過去の実践例(P18~)から,有効だと思われる「再登校の誘いかけ」
② 過去に一度でも再登校 ・担任はできた時の状況 ・その他の先生は
・友達は・保護者は・その他
「今すぐの再登校は難しい」と判断した場合
③ 家庭訪問の仕方
④ 学習のケアの方法
⑤ その他・学校で提案すること
① 本人に有効だと思われる方法を保護者に提案します。実施する内容は,保護者
の考えも参考にして改善していきます。
② 過去に登校できた日のことを,そのまま再現します。〔ステージⅡ-1(2)②(P9)〕
③ ○週に○回,誰が(誰と誰が),どのパターンで家庭訪問を実施するかを決めます。
④ 家庭訪問で○○の教科を一緒に勉強する。プリントを添削するなど,本人に合
った方法を相談して決めます。
⑤ その他に保護者に提案することを,保護者の要望を参考にしながらチームで決
めます。
チーム対応
○ 一つの目標に向かって役割を分担し取り組みます。
家庭訪問のケースでは,次のような役割分担があります。
・本人に関わる先生と保護者に関わる先生
・受容的に関わる先生と指導的に関わる先生
・教師の鎧を脱いで関わる先生と教師として関わる先生
- 11 -
2 「学校への誘いかけ」を実施するまでの対応
〔学校への誘いかけを控え,家庭訪問等で本人との関係づくりに努める:パターン3〕
〔家庭訪問等を控えしばらく様子を見るが,家庭との連絡は取り合う :パターン4〕
(1) 誘いかけるまでの過程を大切にします
「学校においで」という誘いかけの言葉は,プロポーズの言葉に似ています
家庭訪問のたびに「学校においで」と誘いかけるのは,交際を断った相手の家
をそれでもなお訪ね,「結婚してください」と言っていることと似ています。
家庭訪問が再登校に結び付いた例を見ると,登校の誘いの前に様々な工夫をし
て,子どもと仲よくなろうとする教師の姿が多く見られます。
(2) 本人に合った家庭訪問の仕方を決めます
「家庭訪問は○週に○回行う」「学習のケアーは○○の方法で行う」「授業のノート
は他の子どもがとり,家にコピーを持っていく」など具体的に学校ができることを提
案したり,家庭からの要望を聴いたりします。
(3) 誘いかけのタイミング
「学校や友達の話題などを自分からしだす」「積極的に外出して遊びだす」など,
回復してきているという手応えが感じられたら,
〔ステージⅡ-3(P12)へ〕
〔再登校に向けた,回復の手応え〕
しばらく休んでいた子どもに,次のような回復の兆しが見えはじめたら,学校
への誘いかけを再開してみましょう。
チ ェ ッ ク 項 目 ○ ×
・生活のリズムが整い,自分から勉強をし始める。
・表情が明るくなり,先生や友達の訪問を楽しみに待つようになる。
・学校の話や友達の話題を自分からしだす。
・友達の家に頻繁に遊びに出かけ,楽しそうに過ごしている。
- 12 -
3 回復の手応えが見えはじめた子どもへの家庭訪問
〈家庭訪問実践例〉
(1) 「だいぶ元気が出てきたようだね。そろそろ少しだけ今の生活を変えてみようか(笑
顔で語りかけながら,A~Eの内容を紙に書き提案する)」
〈回復の手応えはあるが,イライラは続いているというケースでは次のような言葉
掛けをします〉
「君が家の中でイライラして過ごしているのを見るのは残念だな」「一日一日
を,少しでも楽しいと思える生活にして欲しいな。どうだろう,少しだけ今の生
活を変えてみないか。この中のどれならできそうかな?」と言って次の提案をす
る(紙に書いて見せる)。
A B C D E学校へ行く 適応指導教 センター等 家で楽しく その他
室へ 関係機関へ 過ごす 働く(小・中学校) など
(2) A~Eのそれぞれの回答に対する言葉掛け
「学校に行く」が大丈夫そうな場合
A :「一緒に学校に行くための作戦を考えてみようか」「作戦会議に友達にも
入ってもらおうか?」
「先生がついているから大丈夫だよ」
「先生に何かできることはないかな?」
無理をして言っている様子が伺える場合
A/B/C:「そうか,でも,無理はしなくていいよ」「体調を整える方が先だから,
(共通) 学校に行くのはもう1週間がまんしよう。その間,一緒に体力づくり
でもしようか」
「骨折をしたらリハビリが必要だよね。心も体と同じだよ。今は,無理
をしないで,ゆっくり過ごすことが必要な時期だよ」「家の中で,楽
しく過ごす方法を考えよう」
選択が「学校に行く」以外の場合
B/C/D:「本当は学校に来てほしいけど,無理に引っ張って行くようなことはし
(共通) ないから安心してね」
B/C :「○○がどんなところか,一緒に見に行ってみよう」
(共通)
D :「家で楽しく過ごすための作戦を一緒に考えてみよう」
「家の中にずっといるみたいだね。若いときは体力づくりも必要だよ。
一緒に運動でもしてみないか」
「イライラすることが多いようだね。私はゲームが得意なんだけど,ゲー
ムに付き合ってくれないかな(散歩しようetc.)」
E :「どんなことか教えてくれる?(じっくりと話を聴きます)」
「○○について一緒に調べてみよう」
(3) 本人に会えない場合は,(1)~(2)を手紙や電話などで実施します。
- 13 -
4 再登校までのプログラム
第Ⅰ段階 第Ⅱ段階 第Ⅲ段階
① ⑤ ⑨
ス 学校への登校時刻に合 朝食の後,登校時の服 登校時の服装で,鞄をテ わせて起きる。 装になってみる。 持って通学路まで出てみッ その後で,眠いときは その後で,私服に着替 る。プ 眠ってもよい。 えてもよい。①
② ⑥ ⑦~⑫
登校時刻に合わせて起 登校時の服装で,鞄を 校門まで行ってみる。きた後,朝食をとる。 持って玄関まで行ってみ 登校する時間は自由。その後で,眠いときは る。
眠ってもよい。
③ ⑦ ⑪
朝食の後,夕方まで眠 私服でよいので,日中 保健室など行きやすいらない。 から夕方にかけて家の外 部屋に行ってみる。1日パジャマのままで に出る機会を多くしてみ 登校する時間は自由。
過ごさない。 る。
④ ⑧ ⑫
日中は趣味やお手伝い 夜に学校まで行ってみ 教室まで行ってみる。などに取り組む。 る。 1時間だけ授業を受け勉強は,したくなった 私服でかまわない。行 てみる。
らする。 けるところまででよい。
プログラムの進め方
(1) どの段階のどのステップから始めるかを,本人に第Ⅰ段階 決めさせます。①~④ステップ (第Ⅰ段階①ステップから始めてもよいし,第Ⅱ段
階の⑧から始めてもよい。)
(2) 一つのステップが1週間続いたら次のステップに移行します。
第Ⅱ段階⑤~⑧ステップ (3) 一つのステップを1日で終了してもかまいません。
(4) いくつかのステップを行わずに,数ステップ先に進んでもかまいません。
第Ⅲ段階 (5) 一気に⑫まで進んでもかまいません。⑨~⑫ステップ
(6) 計画どおりに進まなくてもかまいません。本人,保護者と協力しながら進めます。
(7) ステップが後退することがあってもかまいません。本人や保護者の努力を認めたり励ましたりしながら,焦らずに進めます。
- 14 -
5 家庭訪問のポイント
家庭訪問には,教師の鎧を脱いで出かけます
担任は子どもと仲よくなることに最大の努力を注ぎます。そのためには,教師の鎧を脱いで出かける必要があります。嫌われそうな話や指導を要する場合は,学年主任等から話してもらうなどチー
ムで対応します。
今日一日の家庭訪問で,問題を全て解決しようと思わないようにします
決して焦らないこと。言いたいことは,次の機会に言うくらいの気持ちの余裕をもちます。
明日につながる家庭訪問にします
「あの先生なら,いつか相談してもいいな」と思ってもらえる面談を目指します。
会えないときは手紙を置いて来ます
手紙を継続するためのポイントは,3~4行の短いものにすることです。手紙は残るものであり,本人以外の目にも留まることを頭に入れて書きます。「ここが勝負」と手応えを感じたら,長い手紙も書いてみましょう。
相手の気持ちになって話します
言いたいことをすぐに言わず,自分の言葉が相手にどう伝わるかシミュレーションし,相手の心に響くように練り直してから話すようにします。
子どもの心を動かすために,先ず体を動かしてあげましょう
話を聴こうと思っても,何も言わない子どもがいます。子どもの心が動かないときは,一緒にゲームや運動などをして体を動かしてあげます。体を動かすことで笑い声や言葉が出やすくなり,心も動き出します。
対応はよかったのだろうか?自分の言葉掛けや対応がよかっ よい対応ならこんな結果に!!
たのか迷うときがあります。善し ・帰る際の子どもや保護者の顔が,来た悪しのチェックポイントとして, ときよりも明るい顔になっている。次のことが参考になります。 ・教師よりも保護者の話す時間の割合が
長くなる。
〔次のような言葉は禁句です〕・子どもを追いつめるような叱咤激励・子どもの回復度を考慮しないアドバイス・あなたは「怠けている」「甘えている」「ダメな奴だ」など見放すような言葉・実行できそうもない約束
「本人との関係がよい先生」が,学校への誘いかけを担当するという方法も有効です
- 15 -
6 登校が今すぐには困難と判断した場合の対応
〔学校への誘いかけを控え,家庭訪問等で本人との関係づくりに努める:パターン3〕
今すぐ登校させることが困難に見える場合には,「登校に関すること」以外で保護者が困っていることを見つけ,それを解決することを「小さな目標」としましょう。
(1) 「保護者とともにゴールの再設定〔新しい目標の設定〕」をします
〔登校が難しいのに,「ゴールは学校に行くこと」が続く場合〕
登校が難しい状態の子どもを,無理に学校に行かせようとすることが続く場合,子
どもや祖父母を巻き込んだトラブルが起きる可能性があります。
〔ゆっくり休ませると決めたが,ゴールは学校というケース〕
「小学校は行かなくていいが,中学からは行ってほしい。せめて高校からは。高校
は行かなくてもよいが,大学には入ってほしい」ということが頭から離れない場合,
会話の中心が常に「勉強」に偏りがちになり,学校の時間割に合わせて,休んでいる
子どもに勉強を強いるなどの過干渉が続きがちです。そのため,子どもがゆっくり休
んでエネルギーをためることができません。
〔ゴールを登校以外に再設定する〕
「子どもとゆっくりした気持ちで過ごす」「笑いがある家庭にする」「楽しいと感
じる生活をする」ことなどを目指します。
「例外探し」をする
保護者 「学校や勉強の話をすると,家の中で暴れたり・・・・もう大変です」
教 師 「A子さんが楽しそうにしているのは,どんなときですか」
保護者 「音楽を聴いているときですかね。音楽の話なら,私にもしてきます」
教 師 「じゃ,しばらく勉強の話は止めて,A子さんの趣味に付き合ってみるの
はどうでしょう」
(2) 「小さな目標」をつくるためのスケーリング・クエスチョン
教 師 「学校に来ていた頃のA君を100点とすると,今のA君は何点くらいですか?」
保護者 「0点ですね」
教 師 「0点からいきなり100点を目指すのは,A君もたいへんだと思うので,
ひとまず30点を目指しましょうか。A君が30点になるためには,何が
できたらいいですか」
保護者 「勉強ですかね。勉強を毎日やってくれれば」
教 師 「今のA君が勉強を毎日やり出したらもう80点かもしれませんね。30点
だともう少し楽にA君がやれそうなことのほうがいいのかな?」
保護者 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
教 師 「今,お母さんが学校に行かせること以外で困っていることは何ですか?」
保護者 「朝起こすことですね。私の仕事もあるので。できれば8時までには起きて
ほしいんですが」
教 師 「それ,いいですね。じゃA君の,この1週間の目標は朝8時までに起きる
にしましょう。お母さんが,この1週間がんばることは,8時までに起こ
すために工夫するということにしましょう。それが出来たら,次は40点
を目指して新しい目標を決めるという感じでやっていきませんか」
- 16 -
☆ 小さな目標を決めることで,保護者が毎日「学校へ行きなさい」を連呼するこ
とを避けることができます。
☆ 保護者が「90点です」などと,高い点数を付けたとき教師は「A君がんばっ
てますね。もう少し,のんびりさせてもいいかもしれませんね」と提案します。
保護者が納得したら,「10点分のんびりさせるとしたら何がいいですか」と
聴きます。
資料:〔登校以外の目標の設定〕のための教育相談カード
保護者とのゴールの再設定
登校以外で,保護者が困っていること
例外的に,困っていることが起こらないとき
本人に点数を付けるとしたら,100点満点の何点? 点
教育相談カードを活用して,本人との関係づくりや悩みの解決に向けた面談をします。
本人の点数から,次の1~3の中のいずれかを選択し,本人に提案します。
本人の点数を「10点上げ1 る」としたら,何ができ
ればよいか
「今のままの状態をほめ ・2 る」としたら,ほめてあ ・
げられる点(3つ以上) ・
「10点分,ゆっくりする」3 とすれば,子どもに提案
できること
- 17 -
1 家庭訪問で本人に会えないとき
(1) 電話や手紙,メールなどでコンタクトをとり,状態を把握し判断
(2) 友達から情報を得て判断
(3) 保護者とともに判断
2 「行きたくない」本人への対応 〔誘いかけのパターン1~4〕
パターン1 強く登校を促す
パターン2 積極的に学校への誘いかけをする
パターン3 学校への誘いかけを控え,家庭訪問等で本人との関係づくりに努める
パターン4 家庭訪問等をしばらく控え様子を見るが,家庭との連絡は取り合う
(1) 「あそび・非行型」(文部科学省)であれば、基本的には→「パターン1」
(2) 「分離不安型」→「パターン2」
母子が共依存の小学校低学年の場合は「パターン1」を有効とする説もある。
専門機関と相談の上で対応
(3) 学校の話をすると心身等に「強い拒否反応」が見られる場合は→「パターン3」
(4) 家庭訪問の際,本人の心身等に「強い拒否反応」が見られる場合や保護者が家庭
訪問を強く拒否する場合は→「パターン4」
3 「ゆっくり休ませたい保護者」への対応
(1) 「じっくり話を聴きます」
① 学校での情報を伝えながら,保護者にも学校に行きたくないということについて,
心当たりがないか尋ねます。
② 家庭の中に原因を探すのではなく,本人のために何をしてあげればよいかを,「学
校は保護者と一緒に誠心誠意考え,取り組んでいく」ことを伝えます。
☆ じっくり話を聴いてから,「保護者とともにゴールの再設定」を行います。
〔ステージⅡ-6(1)(P15)〕
(2) 保護者との信頼関係づくり〔パターン3〕
保護者の不安に応えます
保護者の不安に応える相談活動をします。→ まず,保護者の要望を聴きます。
学校として応じられない要望の場合は,管理職等から保護者に説明してもらいます。
①学習等の援助
②情報の提供(相談機関,医療機関,適応指導教室など)
③その他(家庭訪問の仕方など)
(3) 保護者が家庭訪問を拒否する場合〔パターン3/パターン4〕
① 再登校のきっかけの多くが「学校や友達の誘いかけ」であることから,今は本人
に会わなくとも,学校と家庭が連携を取り続けて行くことが大切であることを理解
してもらいます。
② 保護者が望む家庭訪問の仕方や家庭訪問以外の連携の取り方などを,一緒に考え
ます。
- 18 -
1 精神的な病気や発達障害などが心配な場合〔誘いかけパターン3/パターン4〕
~専門機関等と連携しての対応~
・ 「安易に精神的な病気や障害などの話をすることは,トラブルの原因」になる時が
あります。保護者との信頼関係ができてからタイミングをみて話題にします。
・ 病院を勧める場合は,「夜眠れずに困っている」「吐き気や頭痛が続く」などの身体
の状態を改善することを理由にすると,保護者に勧めやすくなります。
・ 病院を勧めにくい場合は,先に専門機関を紹介します。
・ 専門機関等と連携する際,「学校が見放した」と誤解されないために「専門機関と
の連絡を学校がとる」「専門機関に学校が一緒についていく」などの配慮が必要です。
本人に会えない場合は,相談の主を保護者に移行します
「明日は,学校に行きます」と子どもが言っても,無理だと感じるときがあります。言葉だけでなく,表情やしぐさからも判断し,「無理はしなくてもいいよ」という言葉掛けが必要なケースがあります。
気持ちを表現する割合(心理学者メレイビアンの研究)・言 葉 7%・表情・しぐさ 93%(声38%、身体55%)
2 強引な登校刺激について
(1) 「あそび・非行型」の場合
・関係機関と連携しながら実施
(2) 保護者が「首に縄を付けてでも学校へ連れて行きたい」という場合
・ 強引な登校刺激については,保護者の責任で保護者がやることを基本とします。
・ 「1週間だけ」という限定付きで実施します。そのような思いでいる保護者に「ゆ
っくり休ませましょう」と言ってもなかなか実行できません。
・ 「1週間」と,期間を限定しても,数日の間に本人に強い拒否反応が出たり教師
から見て心配な状態であれば,無理をしない方がよいことを助言します。
3 「本人は行きたい」が「保護者が行かせない」という場合の対応
(1) 本人の状態から,保護者が「行かせない」を判断している場合
・ 病院や関係機関などと連携しながら対応していくことを勧めます
(2) その他
・ 「行かせない理由」を確認します
・虐待等がないか ・家の労働力となっていないか
〔虐待に気づくためのチェックリスト〕児 童 生 徒 チェック 保 護 者 チェック
不自然な傷が多い 地域や家庭内で孤立している身長が異常に低い・痩せている 子どもがなつかないと言う攻撃的・乱暴な行動が見られる 家庭訪問を拒む表情に乏しい 子どもへの対応が冷たい・乱暴態度がおどおどしている 常にイライラしている子どもらしさが見られない 被害者意識が異常に強い
虐待等が心配な場合は,児童相談所へ連絡
- 19 -
Ⅲ ~事例から見た「再登校」のきっかけ~
1 本人への対応
(1) 話ができる関係での家庭訪問
・ 小学校時代からの不登校。中2になり適応指導教室に通い出したので,学校と疎遠にならないよう,定期的に母親が学校に来たり,担任が適応指導教室に出向いて一緒に遊んだりした。やがて,3年になることをきっかけに保健室登校。
・ 本人はまだ登校できないので,シートやイラストなどの授業に使う資料を本人に作ってもらい,本人が作った資料を授業で活用した。資料を使っての授業の感想などを手紙にして渡すことを続けているうちに登校しだした。
・ 学校には行きたくないの一点張りだったが,家に何もしないでいるのはよくない。特に「成長期なのだから,運動はしないといけない」ということで,散歩やキャッチボールを一緒にすることにした。関係ができてから,「仕事を手伝って欲しい」という理由で夜に学校に呼ぶと手伝いに
来た。やがて登校できるようになった。
・ 学級の友達が学習の面倒をみるために家庭訪問。学習ノートを教師にも提出するようになり,がんばりをほめるようにした。
・ 友人の協力を得て,携帯電話にメールで学校の情報を入れてもらったり,直接配布物を届けてもらった。
・ 長期休業中,仕事の手伝いのために学校に呼ぶ。1回でも学校に来たことが自信となった。やがて保健室に登校できるようになり,その後,本人が望む授業には参加できている。
・ 進級するときに,学級編制等に関する要望を聴き入れることにより,始業式から完全復帰した。
(2) 会っても学校の話ができない子どもへの対応
・ 担任が家庭訪問し,30分くらい一緒にテレビゲームをして帰ってくる日が続いた。最初はぎこちなかったが,やがて一緒に楽しめるようになった。時間はかかったが,ある日突然登校しだし,以後一度も欠席することがなかった。
・ 家庭訪問をして,一緒にゲームや魚釣り,やがて,スポ少の大会に参加することを促す。その後,徐々に登校刺激をした。
・ ギターに凝っていたので,一緒にギターを弾いたりした。やがて夜に,犬をつれて散歩がてら学校に。その後,休日に登校し自分の教室や席を確認。
(3) なかなか会ってくれない子どもへの対応
・ 家庭訪問で本人に会えるまで半年かかった。適応指導教室に通級しだしたので,そこの先生から情報をもらい対応。年賀状,暑中見舞い,釣りへの誘い等を続けたら,学校祭をきっかけに登校。
・ 毎日していた家庭訪問を控えることにし,気持ちが向くまで待つようにした。また,友達には,遊びに行ったりクラブ活動に誘ってもらった。行事が近付いた際には家庭訪問を行い登校を促した。
・ 部活動の友人や先輩から声をかけてもらい,不安を取り除くようにした。部活の先輩が,「少し部活を休んでゆっくりした方がよい」とアドバイスを与えたのが安心につながったようだ。
(4) 子どもへの登校刺激
・ 部活動が好きだということが分かり,放課後迎えに行き部活動にだけ出る。やがて,学校に行ってみたいと言いだし,保健室登校をし自分の好きな授業だけ参加。疲れたらいったん帰り,部活動に参加という日が続き,やがて普通に登校しだす。
- 20 -
・ 学級や部活の友人が誘いに行ったりしたが,登校できなかった。その後,部活の顧問が本人と話し合い,毎朝一緒に登校することにし,登校できた。
・ 登校時の受け入れ態勢の話合いに参加し,朝教師が家に迎えに行き特別教室で学習,昼には自宅に送っていくということでスタート。最初は30分程度,一日おきというペースだったが徐々に欠席がなくなった。
・ 夜に,次の日の時間割に合わせて教科書や筆記用具を準備,朝に登校時間に合わせて起きる。着替えてみる。玄関まで出てみる。通学路まで出てみる。というように段階を決めて少しずつ実施させた。少しでもできたらほめるようにした。
・ インターネットに興味があるので,制限せずに使用させた。コンピュータを使うために登校しだした状態だが,毎日休まず登校している。
2 保護者との対応
・ 小学校6年生だが,母親も一緒に登校することにしたら,登校。最初の数週間は,帰りたいときに帰る。その後,母親が体調を崩したことから,本人が母親に「保健室で休んでいていいよ」と
言い出し,やがて母親から離れる時間が増え一人で登校できるようになった。
・ 生活のリズムを崩さないように保護者にお願い。父親が毎日散歩につれて歩いた。
・ 母親と担任が交換日記。本人のよいところを見つけ書き合うようにした。このノートを,友達が運んだ。
3 家庭生活の改善
・ 夜遅くまでテレビを見ている母に本人はつきあって起きている。母親がテレビよりも本人の話を聞いて,スキンシップに努めることを確認。その後,登校しだす。
・ 父親による理不尽な暴力があることが分かり,管理職に事実を伝え対応。身の危険を感じるときの対処の仕方を教える。また,父親と面談し,今後同じようなことがあれば,公的機関に連絡することを伝える。
・ テレビゲームで遊ぶ時間を制限するよう本人を納得させ,家族にも協力を頼む。生活習慣を正そうと努力させた。これがきっかけで,朝に起きられるようになった。
・ 本人の毎日の生活プログラムを決め,なるべく学校のリズムに合わせるようにし,徐々にプログラムのレベルを上げていくようにした。
4 精神的な病気等
・ 自立神経失調症と診断された生徒。登校刺激は避け,精神的な不安をかけないようにした。担任は,近くに用事ができたから遊びに来たという感じで家庭訪問。
・ 自傷行為があり,自殺の心配もあったので,ゆっくり休むことに徹する。その間,家庭訪問は続け話し相手になる。夏休み明け,登校時間をずらし母親が車で送り,保健室で好きなことをやり,帰りたいとき帰るという登校を勧めたら登校しだした。
・ 友達が,交代でノートをとり支援。病院でカウンセリングを受けながら,少しずつ長時間学校に居られるように指導。学校行事等で役割を与えることにより完全登校。
・ 医師のアドバイスを聴きながら,体調のよい日に登校するようになった。
5 保健室での対応
・ 小6。母親の車で登校,保健室へ。その日のスケジュールを本人が決める。一日の感想をカードに書いて,担任や養護教諭が返事を書いて綴る。
・ 図書館登校の生徒。本人の承諾を得た上で,学級で話し合い。座席を教室に入りやすい位置にしたり,友達が図書館に迎えに行ったりした。気の合う友達が複数でき,学級に復帰した。
- 21 -
・ 中学校からの申し送り事項や,保護者からの要望もあり,入学後すぐ無理をさせず職員室近くの部屋に別室登校。周りの教師が,できるだけ話し合う機会をもち,精神的にリラックスさせることを心掛けた。1年生の2学期から教室に入り欠席はほとんど無い。
6 職員間の理解や連携
・ 怠学傾向のある生徒だったので,担任と科長とで指導に当たり,1日でやれることから始め,3日で,1週間で・・・・と,小さな目標をつくった。本人が努力している姿が見えれば,あまり小さなことにはこだわらずに,まず「ほめる」という指導を続けた。
・ 原級留置後,再登校しだすが欠席が目立ちだしたので,別室登校を勧め,学担,各教科担当,相談担当者が空き時間を利用し授業や会話をする。級友も別室を訪れるようになり,2ヶ月半後学級復帰。
・ 母親からの,担任を替えてほしいという訴えに対し,学年部,養護教諭,部活の顧問が全面的に担任をバックアップし守った。やがて母親の理解が得られ,再登校に結び付いた。
7 進級・卒業・進路
・ 学担,学年主任,養護教諭で対応し,保健室登校を4か月ほど続ける。各教科から課題を出してもらい毎日会話をもつようにした。課題学習や夏季休業中の補習を単位として認めるなどで励まし,やがて教室復帰。
・ 電話をしたり迎えに行ったりしたが,うまくいかなかった。慌てず,ゆっくりした気持ちで接することにし,本人と笑顔で話せるようになった。出席日数等を満たすという考えから抜け出すことで,面談の内容が実のあるものになっていった。その後,同じように電話や迎えに行くことをしたが,同じことをやるにしても全く違う
気持ちで行うことができ,登校に結び付いた。
8 その他
・ リーダー的な子ではなく,似たような性格の子を積極的に関わらせた。
・ 配布物は,近所の子ではなく少し離れていても仲のよい子どもにお願いした。最上級生になり,登校班のリーダーとなり集団登校を始めた。
・ いじめが原因であったので,休み時間に教師が交代で様子を見ることにし,不安をうち消すようにした。
・ 給食が嫌だというので,昼食を持ってきてもよいし,午前中だけの登校でもよいことを伝えた。修学旅行に出たのをきっかけに通常登校。
・ 長期休業中に,学級レクリエーションを行い,休み明け登校しやすいようにした。
〔参考・引用文献〕
◇不登校に関する実態調査(2001)森田洋司 現代教育研究会◇学校現場で使えるカウンセリング・テクニック(1999)諸富祥彦 誠信書房◇担任と親とでなおす登校拒否(1992)金子保 田研出版◇スクールカウンセリング再考(1997)原田正文 朱鷺書房◇先生のための不登校の予防と再登校援助(2002)小林正幸 ほんの森出版◇学校におけるブリーフセラピー(1998)宮田敬一 金剛出版◇ブリーフセラピーを生かした学校カウンセリングの実際(2001)栗原慎二 ほんの森出版◇「ひきこもり」救出マニュアル(2002)斎藤 環 PHP研究所◇タイプや状態に応じた不登校児童生徒への対応(1998) 県総合教育センター研究紀要◇秋田県内における不登校児童生徒の「再登校」の状況(2003)県総合教育センター34集5分冊の5所員研究
発行:平成16年 1月 秋田県総合教育センター改訂:平成27年 3月 同センター 支援班児童生徒支援担当
top related