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2013 Microchip Technology Inc. DS01494A_JP - p.1 AN1494 はじめに 光検出アプリケーションには幅広い種類があります が、一般にこれらのアプリケーションでは電流誤差を 抑えて出力信号の精度を高めるために低入力バイアス 電流のオペアンプが必要です。 代表的な光検出アプリケーションは以下の通りです。 煙検出器 炎監視システム 空港のセキュリティ チェック用 X 線スキャナ 照度計 輝度調整器 バーコード スキャナ パルス オキシメータ 血中粒子解析装置 • CT スキャナ 自動車のヘッドライト減光装置 日没検出 カメラのフラッシュ制御 自動シャッター制御 光リモコン 光通信、等 本アプリケーション ノートでは、まずマイクロチップ 社の低入力バイアス電流オペアンプ MCP6491 [1] の主 な特長、フォトダイオードの特性、パッシブ型と比較 した場合のアクティブ型フォトダイオード電流 - 電圧 コンバータ ( フォトダイオード アンプ ) の長所につい て説明します。次に、フォトダイオード アンプ回路の 設計手法について説明します。回路の性能を高める上 で重要な設計のポイントを説明します。次に、アプリ ケーションの例と PSpice シミュレーションの結果を 示し、設計手法について詳しく説明します。さらに、 フォトダイオード アンプのノイズ解析を行い、フォト ダイオード アンプ回路と併用するローパスフィルタの 設計について説明します。最後に、リーク電流を抑え るプリント基板設計手法についても簡単に触れます。 MCP6491 低入力バイアス電流オペアンプ マイクロチップ社の MCP6491 オペアンプは 125 ℃で 150 pA (typ.) と入力バイアス電流が低く、入出力とも レールツーレールで動作します。本製品はユニティゲ インで安定動作し、ゲイン帯域幅積は 7.5 MHz (typ.) です。このデバイスは最小 2.4 V の単電源で動作し、 静止電流は 530 μA (typ.) です。このように、 MCP6491 オペアンプはフォトダイオード アンプ、 pH 電極アンプ、 低リーク電流アンプ、バッテリ駆動のシグナル コン ディショニング アプリケーション等に適しています。 特長 : 低入力バイアス電流 : - 1 pA (typ.)25 ℃時 - 8 pA (typ.)85 ℃時 - 150 pA (typ.)125 ℃時 低静止電流 : - 530 μA (typ.) 低入力オフセット電圧 : - 1.5 mV (max) レールツーレール入出力 電源電圧レンジ : 2.4 5.5 V ゲイン帯域幅積 : 7.5 MHz (typ.) スルーレート : 6 V/μs (typ.) ユニティゲインで安定動作 位相反転なし 小型パッケージ : - SC70-5SOT-23-5 拡張温度レンジ : - -40 +125 ファミリデバイス MCP6481: 4 MHz、低入力バイアス電流オペアンプ [2] MCP6471: 2 MHz、低入力バイアス電流オペアンプ [3] 著者 : Yang Zhen Microchip Technology Inc. MCP6491 オペアンプを利用した光検出アプリケーション 注意 : この日本語版文書は参考資料としてご利用ください。最新情報は必ずオリジ ナルの英語版をご参照願います。

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Page 1: AN1494 - Using MCP6491 Op Amps for Photodetection Applicationsww1.microchip.com/downloads/jp/AppNotes/01494A_JP.pdf · 等価回路 図1 に、フォトダイオードの等価回路を示します。

AN1494MCP6491 オペアンプを利用した光検出アプリケーション

注意 : この日本語版文書は参考資料としてご利用ください。最新情報は必ずオリジナルの英語版をご参照願います。

はじめに

光検出アプリケーションには幅広い種類がありますが、一般にこれらのアプリケーションでは電流誤差を抑えて出力信号の精度を高めるために低入力バイアス電流のオペアンプが必要です。

代表的な光検出アプリケーションは以下の通りです。

• 煙検出器

• 炎監視システム

• 空港のセキュリティ チェック用 X 線スキャナ

• 照度計

• 輝度調整器

• バーコード スキャナ

• パルス オキシメータ

• 血中粒子解析装置

• CT スキャナ

• 自動車のヘッドライト減光装置

• 日没検出

• カメラのフラッシュ制御

• 自動シャッター制御

• 光リモコン

• 光通信、等

本アプリケーション ノートでは、まずマイクロチップ社の低入力バイアス電流オペアンプMCP6491 [1]の主な特長、フォトダイオードの特性、パッシブ型と比較した場合のアクティブ型フォトダイオード電流 - 電圧コンバータ ( フォトダイオード アンプ ) の長所について説明します。次に、フォトダイオード アンプ回路の設計手法について説明します。回路の性能を高める上で重要な設計のポイントを説明します。次に、アプリケーションの例と PSpice シミュレーションの結果を示し、設計手法について詳しく説明します。さらに、フォトダイオード アンプのノイズ解析を行い、フォトダイオード アンプ回路と併用するローパスフィルタの設計について説明します。最後に、リーク電流を抑えるプリント基板設計手法についても簡単に触れます。

MCP6491 低入力バイアス電流オペアンプ

マイクロチップ社の MCP6491 オペアンプは 125 ℃で150 pA (typ.) と入力バイアス電流が低く、入出力ともレールツーレールで動作します。本製品はユニティゲインで安定動作し、ゲイン帯域幅積は 7.5 MHz (typ.)です。このデバイスは最小 2.4 V の単電源で動作し、静止電流は 530 µA (typ.) です。このように、MCP6491オペアンプはフォトダイオード アンプ、pH 電極アンプ、低リーク電流アンプ、バッテリ駆動のシグナル コンディショニング アプリケーション等に適しています。

特長 :

• 低入力バイアス電流 :

- 1 pA (typ.)、25 ℃時

- 8 pA (typ.)、85 ℃時

- 150 pA (typ.)、125 ℃時

• 低静止電流 : - 530 µA (typ.)

• 低入力オフセット電圧 : - 1.5 mV (max)

• レールツーレール入出力

• 電源電圧レンジ : 2.4 ~ 5.5 V

• ゲイン帯域幅積 : 7.5 MHz (typ.)

• スルーレート : 6 V/µs (typ.)

• ユニティゲインで安定動作

• 位相反転なし

• 小型パッケージ :

- SC70-5、SOT-23-5

• 拡張温度レンジ :

- -40 ~ +125 ℃

ファミリデバイス

• MCP6481: 4 MHz、低入力バイアス電流オペアンプ[2]

• MCP6471: 2 MHz、低入力バイアス電流オペアンプ[3]

著者 : Yang ZhenMicrochip Technology Inc.

2013 Microchip Technology Inc. DS01494A_JP - p.1

Page 2: AN1494 - Using MCP6491 Op Amps for Photodetection Applicationsww1.microchip.com/downloads/jp/AppNotes/01494A_JP.pdf · 等価回路 図1 に、フォトダイオードの等価回路を示します。

AN1494

光検出アプリケーション

光検出アプリケーションに使える検出素子には、フォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトレジスタ、光電管、光電子倍増管、電荷結合素子 (CCD) 等、多くの種類があります。

これらの光検出素子で最も一般的なのがフォトダイオードで、光の強度、位置、色、存在の検出に広く使われているため、本アプリケーション ノートでもフォトダイオードについて取り上げます。

フォトダイオード

フォトダイオードは、光をその照度に比例した微弱電流に変換できる光検出素子です。

特長

フォトダイオードの主な特長を以下にまとめます。

• 広いスペクトル応答

• 優れた直線性

• 低ノイズ

• 優れた耐久性と安定性

• 小型

• 長寿命

• 低コスト

等価回路

図 1 に、フォトダイオードの等価回路を示します。

図 1: フォトダイオードの等価回路

フォトダイオードは、電流源 (I)、接合部シャント抵抗(RJ)、接合容量 (CJ) が理想ダイオードと並列に接続されたものとして表す事ができます。直列抵抗 (RS) は、その他全ての部品と直列に接続します。暗電流 (ID) は逆バイアス条件下でのみ存在します。

• 接合部シャント抵抗 (RJ)

RJ は、ゼロバイアス時のフォトダイオード接合部の抵抗値です。理想フォトダイオードでは RJ の値は無限ですが、実際の RJ の値は数千 MΩ 程度です。この値はフォトダイオードの材料によって異なり、温度が 10 ℃上昇するごとに 1/2 に減少します。RJ の値が大きいほどフォトダイオードのノイズ電流は低減します。

• 直列抵抗 (RS)

RS は、フォトダイオードのワイヤボンドとコンタクトの抵抗値です。理想フォトダイオードでは直列抵抗はありませんが、実際には数十Ω程度の抵抗があります。ただし、RJ に比べてはるかに小さな値です。RS は、ゼロバイアス条件下でのフォトダイオードの直線性を求めるために使います。ほとんどのアプリケーションで、この値は無視できます。

• 接合容量 (CJ)

CJ は接合面積に正比例し、ダイオードの逆バイアス電圧に反比例します。接合面積が小さいダイオードでゼロバイアスの場合、この値は通常数十 pF 程度です。

• 暗電流 (ID)

ID は、逆バイアス条件下でフォトダイオードにわずかに流れるリーク電流です。この電流は光量がゼロでも存在し、温度が 10 ℃上昇するごとに約 2 倍に増加します。ゼロバイアス条件下では暗電流は存在しません。

動作モード

フォトダイオードの動作モードには、光起電モード ( 図2) と光伝導モード ( 図 3) の 2 つがあります。これら 2つのモードにはそれぞれ長所と短所があり、目的に応じて使い分けます。

• 光起電モード

このモードでは、フォトダイオード両端の電位差はありません。フォトダイオードには暗電流が流れず、直線性と感度が最大となり、ノイズレベルも比較的低い(RJ の熱ノイズのみ ) ため、高い精度が要求されるアプリケーションに適しています。

図 2: 光起電モード

CJRJ

RS << RJ

Light

I

I = 電流源

RJ = 接合部シャント抵抗

CJ = 接合容量

RS = 直列抵抗

Ideal Diode

ID

ID = 暗電流

( 入射光によって生成される光電流 )

Light

DS01494A_JP - p.2 2013 Microchip Technology Inc.

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• 光伝導モード

このモードでは、フォトダイオードに逆バイアス電圧をかけておきます。この逆バイアス電圧によりダイオード接合容量が減少し、応答時間が短縮します。従って、光伝導モードは高速性が要求されるアプリケーション ( 高速デジタル通信等 ) に適しています。このモードの主な短所としては、暗電流が存在する事、非直線性である事、ノイズレベルが高い事 (RJ の熱ノイズと ID のショットノイズ ) 等があります。

図 3: 光伝導モード

フォトダイオード電流 - 電圧コンバータ

この回路は、フォトダイオードの微弱な出力電流を計測可能な電圧に変換する目的で使います。一般に、この回路にはパッシブ型とアクティブ型の 2 種類の実装があります。

パッシブ型フォトダイオード電流 - 電圧コンバータ

パッシブ型フォトダイオード電流 -電圧コンバータ (図4) は、受動部品のみを使って実装します。この回路の出力抵抗は値の大きい抵抗の値 (RF) にほぼ等しく、出力電圧は I*RF です。

値の大きい RF により、VOUT の精度が低下し応答時間が比較的長くなる等、後続の負荷抵抗と負荷静電容量に負荷効果が生じます。

また、光電流の変動によりフォトダイオードのバイアス電圧が不安定になり、これによって接合容量 (CJ) が変化し、フォトダイオードの周波数応答に影響します。

図 4: パッシブ型フォトダイオード電流 - 電圧コンバータ

アクティブ型フォトダイオード電流 - 電圧コンバータ

アクティブ型フォトダイオード電流 - 電圧コンバータは、フォトダイオード アンプとも呼ばれます。図 5 と図 6 に示すように、フォトダイオード アンプにはフォトダイオードの動作モードによって 2 種類の回路実装方法があります。各実装の長所と短所については、「動作モード」を参照してください。

どちらの実装にも、帰還ループに値の大きい抵抗 (RF)があります。フォトダイオード アンプの出力抵抗はRF/AOL (AOL はオペアンプの開ループゲイン ) とほぼ同じです。従って出力抵抗は非常に小さく、負荷効果は無視できます。

光伝導モードアンプの場合、バイアス電圧は VBIAS と同じです。光起電モードアンプの場合、バイアス電圧はゼロです。どちらのバイアス電圧も光電流の変動によって変化しないため、フォトダイオードの周波数応答に影響しません。

これらの長所により、フォトダイオード アンプは光検出アプリケーションで広く使われています。

図 5: 「光起電モード」のフォトダイオード アンプ

図 6: 「光伝導モード」のフォトダイオード アンプ

Light

VBIAS 0V<

Light

RF

+

VOUT I RF=

I

Light

VOUT

VDD

RF

I –

+

MCP6491

VOUT I RF=

Light

VOUT

VDD

RF

+

MCP6491

VBIAS

I

VBIAS 0V V,OUT

I RF=

2013 Microchip Technology Inc. DS01494A_JP - p.3

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AN1494

フォトダイオード アンプ設計のキーポイント

ここからは、フォトダイオード アンプ回路の性能を高めるための重要な設計上のポイントをいくつか説明します。

オペアンプの選択

まず重要なのは、フォトダイオード アンプに適したオペアンプを選択する事です。オペアンプのデータシートには多くの DC および AC 特性が記載されていますが、特にフォトダイオード アンプに関連する重要なオペアンプ仕様項目について以下に説明します。

低入力バイアス電流 (IB)

IB に起因する DC 出力電圧誤差は、IB*RF で求められます。IB は温度と共に増加するため、高温になるほど誤差が大きくなります。通常、RF||RJ の値を持つ補償抵抗 RC をオペアンプの非反転入力と直列に接続する事で、電圧誤差を IOS*RF まで抑える事ができます。

しかし温度が上昇すると RJ の値が大きく低下するため、高温では RC の値は容易には決定できません。この条件では、RJ の値が RF の値より小さくなる可能性があります。

また、RC にオペアンプ入力ノイズ電流が流れるとノイズ電圧が発生します。RC からは熱ノイズ電圧も発生します。どちらのノイズ電圧も、回路のノイズゲインによって増幅されます。このため、出力ノイズレベルが増大します。

また、IB はオペアンプの非反転入力に接続した RC の両端に電圧を発生させます。これにより、反転入力にも同じ電圧が発生します。するとバイアス電圧が安定しなくなり、フォトダイオードの応答の直線性が悪くなります。

従って、補償抵抗 RC を追加して電圧誤差 IB*RF を抑えるという方法は、一般的には有効でありません。電圧誤差がアプリケーションの許容範囲内に収まるように、IBが十分に小さいオペアンプを選ぶ必要があります。

低入力オフセット電圧 (VOS)

VOS による DC 出力電圧誤差は、室温 25 ℃でVOS*(1 + RF/RJ)ですが、RF はRJ よりはるかに小さく、ゲインは約 1 V/V であるため、ほぼ VOS と同じです。温度が上昇すると RJ の値が大きく低下し、ゲインが1 V/V を超える事があるため、この誤差ははるかに大きくなります。加えて、VOS のドリフトによって誤差はさらに大きくなります。従って、高温での出力誤差を抑えるには VOS と VOS ドリフトの小さいものを選ぶと効果的です。

コモンモード入力電圧レンジ

オペアンプの非反転入力は接地されているため、コモンモード入力電圧レンジには少なくともグランドを含める必要があります。

レールツーレール出力

レールツーレール出力は、出力電圧のダイナミック レンジを最大化し、信号 / ノイズ比 (SNR) を改善します。

広いゲイン帯域幅積 (GBWP) と高スルーレート(SR)

後述する出力ステップ応答時間の要件を満たすには、GBWPとSRの値が十分に大きいものを選ぶ必要があります。

低入力ノイズ電流密度と低入力ノイズ電圧密度

フォトダイオード アンプにノイズ電流が流れると、抵抗ノイズ電圧が生じます。オペアンプの入力ノイズ電流密度 ( 、q は電荷、I は電流 ) は IB によって求められ、IB が小さいほどオペアンプの入力ノイズ電流密度は低下します。入力ノイズ電圧密度もフォトダイオードの出力ノイズに密接に関係します。これはノイズゲインによって増幅されるため、出力ノイズレベルに大きく影響します。これについては本セクションで後述します。

マイクロチップ社の MCP6491 オペアンプは、ここまで述べてきた低 IB、低 VOS、低 VOS 温度ドリフト、レールツーレール入出力、広い GBWP、高 SR、低入力ノイズ電流密度、低入力ノイズ電圧密度といった特長を備えており、結論としてフォトダイオード アンプに適していると言えます。

帰還抵抗

光電流に与えるトランスインピーダンス ゲインの値を大きくするには、帰還抵抗の値 (RF) をできるだけ大きくします。通常は、光電流が最大値の時にオペアンプの出力電圧レンジの大部分を使えるように、ゲインを十分に高く設定します。高い精度が要求されるアプリケーションでは、許容差が狭く、温度係数が低く、値の大きい抵抗を選択します。

後続の回路段でゲインを増やす事も可能ですが、1 つの回路段で値の大きいRFを使った方が簡単にSNRを改善でき、良好なノイズ特性が得られます。

ある帯域幅fにおいて、RFの熱ノイズ電圧はで求められます。kはボルツマン定数(1.38 x 10-13J/K)、T は絶対温度 (K)、RF は帰還抵抗の値 (Ω) です。

出力信号は VSIGNAL = I*RF で求められ、SNR = 20*log(VSIGNAL/VNOISE) で求められます。RFが 2 倍になると抵抗の熱ノイズ電圧も 2 倍になり、出力信号電圧は 2 倍になります。従って、SNR は 3 dB増加します。

2ql

4kTRFf

DS01494A_JP - p.4 2013 Microchip Technology Inc.

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帰還コンデンサ

フォトダイオード アンプは、必ずしも意図した通りに動作しない事があります。よく見られるのは周波数領域と時間領域で発生するゲインピーキングとステップ出力リンギングです ( 図 7、図 8 参照 )。

また、ノイズゲイン ピーキングによって非常に高いレベルの出力ノイズが発生し ( 図 9)、出力信号の品質が大きく低下する事があります。

図 7: 信号ゲイン ( トランスインピーダンス ゲイン ) ピーキング

図 8: 出力リンギング

図 9: ノイズゲイン ピーキング

これらの現象により、フォトダイオード アンプの動作が不安定になります。帰還ループに値の小さいコンデンサ (CF) を追加すると、ゲインピーキング、ステップ出力リンギング、ノイズゲイン ピーキングの問題を解消できます ( 図 10 参照 )。

図 10: フィードバック コンデンサを用いたフォトダイオード アンプ

次のセクションでは、フォトダイオード アンプの安定性について述べた後、フィードバック コンデンサを追加するとアンプの動作が安定する理由、最適な出力応答が得られるフィードバック コンデンサの値の求め方を説明します。

ped

ance

Gai

n (

V/A

)

100k

100M

10k

1M

10M

1.00 10.00 100.00 1,000.00 10,000.00 100,000.00 1,000,000.00 10,000,000.0

Tran

sim

p

Frequency (Hz)

1 10 100 1k 10k 100k 1M 10M100

10k

1k

2

3

4

5

6

utp

ut

Vo

ltag

e (V

)

0

1

2

Ste

p O

u

Time (ms)0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

20

40

60

80

100

No

ise

Gai

n (

dB

)

-20

0

20N

Frequency (Hz)1 10 100 1k 10k 100k 1M 10M

VOUT

VDD

RF

+

MCP6491

CF

CJRJIdeal Diode

I

VOUT I RF=

2013 Microchip Technology Inc. DS01494A_JP - p.5

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AN1494

アンプの安定性解析

図 11 に、フォトダイオード アンプのノイズゲインのボード線図を両対数グラフで示します。システムの安定性は信号ゲインではなくノイズゲインの特性で決まります。このため、ノイズゲインと信号ゲインを明確に区別しておく事が重要です。

ノイズゲインとは、オペアンプの非反転入力に直列に接続したテスト電圧源から見たゲインで、オペアンプの非反転入力に信号を入力した時の値は信号ゲインと同じです。

図 11: ノイズゲインのボード線図

システムの安定性は、ノイズゲイン (GN) と開ループゲイン (AOL) が交差する周波数におけるこれら各々の傾きの差によって決まります。

• 動作が不安定なフォトダイオード アンプでは、GNと AOL の各々の傾きの差は +40 dB/decade です( 図 11 で GN の点線と AOL の曲線が交差した部分 )。この点線は、CF を追加しない場合の GN の曲線を延長したものです。

• 動作が安定したフォトダイオード アンプでは、GNと AOL の各々の傾きの差は +20 dB/decade です( 図 11 で GN の実線と AOL の曲線が交差した部分 )。この実線は、CF を追加した場合の GN の曲線を示しています。

以下に、このノイズゲインのボード線図について説明します。

• f が f1 より小さい場合 :

- GN = 1 + RF/RJ で、RF << RJ の場合はほぼ 1 V/V (0 dB) です。

- GN のゼロ点は f1 にあります。

• f が f1 と f2 の間にある場合 :

- GN は +20 dB/decade の傾きで増加します。

- GN の極は、f2 = 1/(2*RF*CF) にあります。この周波数は信号ゲイン帯域幅でもあります。

• f が f2 と f3 の間にある場合 :

- GN = 1 + (CJ + COP)/CF です。

- AOL と GN のクロスオーバー周波数はf3 = GBWP/GN にあります。

• f が f3 より大きい場合 :

- GN の値は、-20 dB/decade の傾きで減少する AOLによって決まります。

フォトダイオード アンプの信号ゲイン帯域幅と位相マージンを決定する f2 の位置は、CF の値による影響を受けます。

CF の値が大きくなると位相マージンが増大し、ゲインピーキング、ステップ オーバーシュート、ノイズゲイン ピーキングが抑えられ、システムの安定性が向上します。その一方で信号ゲイン帯域幅が減少し、出力応答時間が延長します。表 1 に、位相マージンの値を変化させた場合のオーバーシュート率を示します。

表 1:

f (Hz)

(dB)

AOL

GN

f1 f2 f3

-20 dB/dec

+20 dB/dec

without adding CF (Unstable)

with adding CF (Stable)

f11

2 RJ RF CJ COP C+ +F

--------------------------------------------------------------------------------=

f21

2 RF CF-----------------------------=

f3GBWPGN

----------------- GBWP

1CJ C+

OP

CF-----------------------+

---------------------------------= =

RJ = 接合部シャント抵抗

 

RF = 帰還抵抗の抵抗値

CJ = 接合容量

COP = オペアンプの入力静電容量

= CCM + CDM

CF = 帰還コンデンサ静電容量

CCM = オペアンプのコモンモード入力静電容量

CDM = オペアンプの差動モード入力静電容量

GBWP = オペアンプのゲイン帯域幅積

f2 = 信号ゲイン帯域幅

f3 = ノイズゲイン帯域幅

f1 = GN の最初のゼロ点

GN = ノイズゲイン

AOL = オペアンプの開ループゲイン

( トランスインピーダンス ゲイン帯域幅 )

位相マージン (°) オーバーシュート (%)

45 25

55 13.3

65 4.7

75 0.008

DS01494A_JP - p.6 2013 Microchip Technology Inc.

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AN1494

ほとんどの光検出アプリケーションでは、CF の最適値は位相マージンを 65°として考えるのが一般的です。この位相マージンでは、出力のゲインピーキングは無視できるほど小さく、オーバーシュート率は 4.7% で、信号ゲイン帯域幅と応答時間は良好なレベルを維持できます。

RF << RJ と仮定した場合、位相マージン 65°での CFの値は、式 1 で近似的に求める事ができます。

式 1:

図 11 では、信号ゲイン帯域幅が最大となるのは位相マージン 45°で f2 = f3 の場合です。その時の CF の値は、式 1 で示した値の半分です。

RF の寄生容量の影響を考慮すると、CF は式 1 の値から RF の寄生容量を引いた値です。

表面実装抵抗はサイズが小さいため、この寄生容量は通常 0.1 pF 未満です。従って、寄生容量の影響は無視できます。

アプリケーション例

ここからは、フィードバック コンデンサを追加した場合に周波数領域と時間領域で回路の性能がどのように改善するかを、具体的なアプリケーション例を挙げて見ていきます。

図 12 では、フォトダイオードの RJ = 2000 MΩ (25 ℃ )、CJ = 100 pF、MCP6491 オペアンプの VDD = 5.5 V、RF = 10 MΩです。VOUT は、2 段階の照度に合わせて2 V と 4 V で切り換わるものとします。

図 12: フォトダイオード アンプの回路例

MCP6491 オペアンプの GBWP は 7.5 MHz (typ.) で、入力静電容量は COP = CCM + CDM = 12 pF です。

フォトダイオード アンプの動作を安定させるには、フィードバック コンデンサ CF が必要です。式 1 より、アンプの位相マージンが 65°の場合、CF = 1 pF です。

室温 25 ℃の場合、MCP6491 の IB と VOS に起因するDC 出力電圧誤差は、IB*RF + VOS = 1 pA*10 MΩ + 1.5 mV = 1.51 mVです。

図 13 ~図 17 に、CF ありとなしの場合の出力応答を示します。

図 13: 周波数に対する信号ゲイン

図 14: ステップ出力応答

CF 2CJ C+

O P

2 RF GBWP ----------------------------------------

VOUT

VDD

10 M

+

MCP6491

CF

100 2000pFM

I

VOUT I RF=

Note: これらは、マイクロチップ社ウェブサイト (www.microchip.com) で無償で提供している MCP6491 オペアンプの Spice マクロモデルを用いた PSpice シミュレーション結果です。このモデルは、初期段階の設計ツールとしての使用を目的としています。どのような設計であれ、ベンチ試験は非常に重要であり、シミュレーションで置き換える事はできません。

1.00E+05

1.00E+06

1.00E+07

1.00E+08

1.00E+09

ped

ance

Gai

n (

V/A

)

100k

100M

1M

10M

1G

with CF

without CF

1.00E+02

1.00E+03

1.00E+04

Tran

sim

p

Frequency (Hz)1 10 100 1k 10k 100k 1M 10M

10k

1k

100

2

3

4

5

6

Ou

tpu

t V

olt

age

(V)

with CF

without CF

0

1

2

Ste

pO

Time (ms)

0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

2013 Microchip Technology Inc. DS01494A_JP - p.7

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AN1494

図 15: 周波数に対するノイズゲイン

図 16: 周波数に対する総出力 RMS ノイズ電圧密度

図 17: 周波数に対する総出力 RMS ノイズ電圧

CF を追加すると出力ノイズは大きく減少しますが、SNR を改善して信号品質を高めるには、さらにノイズを低減する必要があります。次のセクションでは、フォトダイオード アンプのノイズ解析について詳しく説明します。

フォトダイオード アンプのノイズ解析

図 18 に、フォトダイオード アンプのノイズモデルを示します。

図 18: ノイズモデル

ここでは、総出力 RMS (2 乗平均平方根 ) ノイズを簡単に見積もる方法を 2 つ紹介します。

• 手計算

• PSpice シミュレーション

手計算によるノイズ見積もり

抵抗の電圧ノイズ密度は VN = で求める事ができ、スペクトルは平坦です。1 kΩの抵抗の場合、VN = 4 nV/Hz です。

MCP6491 の入力ノイズ電圧密度と入力ノイズ電流密度は、それぞれ 19 nV/Hz (typ.) と 0.6 fA/Hz (typ.)です。周波数に対する入力ノイズ電圧密度のグラフは、MCP6491 のデータシートに記載しています。低周波側では 1/f ノイズが支配的で、高周波側では熱ノイズが支配的です。

総出力 RMS ノイズは、各出力ノイズ源の値の 2 乗和の平方根をとって求めます。各出力ノイズ源の値は、出力ノイズ密度の 2 乗を等価ノイズ帯域幅全体で積分し、その平方根をとって求めます。出力ノイズ密度は、入力ノイズ密度に適切なゲインを掛けて求めます。最も大きな出力ノイズ源が、総出力 RMS ノイズに対する支配的要因です。

表 2 に、各ノイズ源の入力ノイズ密度と対応する出力ノイズ密度、等価ノイズ帯域幅を示します。

20

40

60

80

100

No

ise

Gai

n (

dB

)

with CF

without CF

-20

0

20N

Frequency (Hz)1 10 100 1k 10k 100k 1M 10M

F

put R

MS

Noi

se V

olta

ge

ensi

ty (n

V/H

z)

with CF

without CF

1k

10k

100k

Tota

l Out

p De

Frequency (Hz)0.1 1 10 100 1k 10k 100k 1M 10M

F

100

10

3

4

5

6

7

ut

RM

S N

ois

e V

olt

age

(mV

)

without CF

0

1

2

Tota

l Ou

tpu

Frequency (Hz)

0.1 1 10 100 1k 10k 100k 1M 10M

with CF

VOUT

VDD–

+

MCP6491

CF

+–

+–

+–

RF

RJ CJ

VNVN_RJ

VN_RF

IN-

VN_RJ = RJ のノイズ電圧密度

 

VN_RF = RF のノイズ電圧密度

IN+

VN = オペアンプの入力ノイズ電圧密度

IN-, IN+ = オペアンプの入力ノイズ電流密度

4kTR

DS01494A_JP - p.8 2013 Microchip Technology Inc.

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AN1494

極が 1 つのシステムの場合、等価ノイズ帯域幅は -3 dB帯域幅に 1.57を掛けた値です。 オペアンプの非反転入力には直列に接続された抵抗はないため、IN+ は出力ノイズには関係しません。

表 2:

Note 1: ノイズゲイン帯域幅は、GBWP/GN で求めます。

2: 信号ゲイン帯域幅は 1/(2*RF*CF) で求めます。

図 12 に示した回路では、ノイズゲイン帯域幅は(7.5 MHz)/(113 V/V) = 66 kHz で、その等価ノイズ帯域幅は 66 kHz*1.57 = 104 kHz です。信号ゲイン帯域幅は 16 kHz で、その等価ノイズ帯域幅は16 kHz*1.57 = 25 kHz です。

GN は周波数によって決まります。低周波域では 1 V/Vで、そこから周波数が高くなると徐々に値が大きくなり、最大値は 113 V/V です。ここではノイズを簡単に見積もるため、周波数領域で GN を積分するのではなく、113 V/V の値を等価ノイズ帯域幅全体のノイズゲインの値として用います。

このようにして、各ノイズ源からの出力ノイズを表 2を用いて見積もる事ができます。表 3 に、この見積もり結果を示します。

表 3:

総出力 RMS ノイズは、各出力ノイズ源の値の 2 乗和の平方根である 695 µV です。

なお、対応する出力ノイズ密度を得るにはオペアンプの入力ノイズ電圧密度 (VN)にノイズゲインGN を掛ける必要があるため、ノイズゲイン帯域幅は信号ゲイン帯域幅よりもはるかに大きくなります。このため、VNが総出力 RMS ノイズ電圧に対する支配的要因となります。

PSpice シミュレーションによるノイズ見積もり

図 19 に示したのは、MCP6491 オペアンプの Spice マクロモデルを用いた PSpice シミュレーションによるMCP6491 オペアンプの入力ノイズ電圧密度のスペクトル図で、MCP6491 データシートに記載しているノイズ密度スペクトル図とほぼ同じ結果です。

図 19: MCP6491 オペアンプの周波数に対する入力ノイズ電圧密度

図 20 に、総出力 RMS ノイズ電圧密度のスペクトルを示します。

図 20: 周波数に対する総出力 RMS ノイズ電圧密度

入力ノイズ密度

出力ノイズ密度 等価ノイズ帯域幅

VN VN*GN 1.57* ノイズゲイン帯域幅

IN- IN-*RF 1.57* 信号ゲイン帯域幅

VN_RJ VN_RJ*(RF/RJ) 1.57* 信号ゲイン帯域幅

VN_RF VN_RF 1.57* 信号ゲイン帯域幅

入力ノイズ密度

出力ノイズ 電圧密度(nV/Hz)

各ノイズ源の出力 RMSノイズ電圧

(µV)

VN VN*GN = 19*113 692

IN- IN-*RF = 6 1

VN_RJ VN_RJ*(RF/RJ) = 28 4.4

VN_RF VN_RF = 400 63

oise

Vol

tage

Den

sity

(nV/

Hz)

100

1k

Inpu

t No

Frequency (Hz)0.1 1 10 100 1k 10k 100k 1M 10M

10pu

t RM

S N

oise

Vol

tage

D

ensi

ty (n

V/H

z)

100

1k

10k

Tota

l Out D

Frequency (Hz)0.1 1 10 100 1k 10k 100k 1M 10M

100

10

2013 Microchip Technology Inc. DS01494A_JP - p.9

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AN1494

図 21 に、総出力 RMS ノイズ電圧のスペクトルを示します。総出力 RMS ノイズ電圧は、10 MHz までのレンジで 650 µV です。

手計算で見積もったノイズの値 (695 µV) と PSpice シミュレーションの結果は、ほぼ一致しています。

4 V の出力電圧信号の場合、SNR は20*log(VSIGNAL/VNOISE) = 20*log(4V/650µV) = 76 dBとなります。

図 21: 周波数に対する総出力 RMS ノイズ電圧

ノイズフィルタ

図 22 に示したように、フォトダイオード アンプの後段に 1 次 RC ローパスフィルタを設置すると、信号ゲイン帯域幅を超えるノイズを除去できます。

図 22: ノイズ フィルタ

式 2 では、ローパスフィルタのカットオフ周波数 (fc)が最大許容信号ゲインと等しくなるように設定しています。こうすると、出力ステップの立ち上がり時間 (tR)が最小になります。

RF が固定されている場合、GBWP の値が大きいオペアンプを選ぶと tR を小さくする事ができます。式 1 より、GBWP の値を大きくすると CF の値が小さくなるため、fc の値が大きくなります。

式 2:

図 12 に示したように、RF = 10 MΩ、CF = 1 pF であるため、式 2 より fC = 16 kHz で tR = 22 µs となります。

図 23 に、このローパスフィルタの fC の値を変化させた場合のステップ出力応答を示します。フィルタの fCの値が小さいほど、tR の時間が長くなっています。

図 23: ローパスフィルタの fC の値を変化させた場合の出力応答

このローパスフィルタは、後段の ADC (Analog-to-Digital Converter) のアンチ エイリアシング フィルタとしての役割も果たします。ADCのサンプリング レートは、ローパスフィルタの fc の 2 倍以上とする必要があります。

Note: PSpice プローブでトレース式「SQRT(S(V(ONOISE)*V(ONOISE)))」を使うと帯域幅全体で出力ノイズ電圧密度を積分できます。

700

age

500

600

se V

olt

a

400

500

S N

ois

V)

300

pu

t R

M (μV

100

200

al O

utp

0

100

Tota

0

Frequency (Hz)

0.1 1 10 100 1k 10k 100k 1M 10M

VOUT

VDD

RF

I –

+

MCP6491

CF

R

C

fC1

2 RF CF-----------------------------=

tR0.35fC----------

tR = 10 ~ 90% の立ち上がり時間

 

fC = ローパスフィルタのカットオフ周波数

2

3

4

Ou

tpu

t V

olt

age

(V)

fC = 16kHz

fC = 1.6kHz

fC = 318Hz

0

1

Ste

pO

Time (ms)

0 2 4 6 8 10 12

DS01494A_JP - p.10 2013 Microchip Technology Inc.

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ここでは、R = 100 kΩ、C = 0.1 nF として fc = 16 kHzのローパスフィルタを作りました。フィルタ自体から発生するノイズは無視できます。

図 24 と図 25 に、フィルタあり / なしの場合の関連する出力 RMS ノイズのスペクトル図を示します。これらは全て PSpice シミュレーションの結果です。

図 24: 周波数に対する総出力 RMS ノイズ電圧密度

図 25: 周波数に対する総出力 RMS ノイズ電圧

図 25 を見ると、総出力 RMS ノイズ電圧は 10 MHz までのレンジで 205 µV です。

4 V の出力電圧信号の場合、SNR は20*log(VSIGNAL/VNOISE) = 20*log(4V/205µV) = 86 dBとなり、フィルタを使わない場合に比べ 10 dB 高くなっています。

プリント基板の表面リーク電流

光検出アプリケーションでは、プリント基板の表面リーク電流の影響を考慮する必要があります。表面リーク電流は湿気やほこり等の汚れによって発生します。低湿度条件における隣接トレース間の抵抗は、一般的に 1012程度です。この場合、5 V の電圧差によって 5 pA の電流が流れ、これは MCP6491 のバイアス電流 (+25 ℃で 1 pA、typ.) を上回ります。

表面リーク電流は、洗浄、コーティング、ガードリング等、いくつかの方法で抑える事ができます。

イソプロピル アルコールによる洗浄は、残渣の除去に

効果があります。コーティングは、基板表面を湿気やほこり等から保護します。

より確実かつ永続的に表面リーク電流を抑えるには、ガードリングを使います。図 26 の点線で示したよう

に、ガードリングとは低インピーダンスの導電性パターンでノイズに敏感な反転入力ピンのエリアを囲んだものをいいます。ガードリングには反転入力ピンと同じ電圧のバイアスがかかるため、ガードリングで囲まれたピンとガードリングの間にリーク電流は流れません。フォトダイオード アンプ回路では、ガードリン

グをオペアンプのグランドに接続された非反転入力ピンに直接接続します。こうすると、ノイズに敏感なピンに流れ込むリーク電流をガードリングがブロックし、グランドにシンクします。また、カップリング効果を最小限に抑えるため、ガードリング内側の回路パターンをできるだけ短くします。

PCB レイアウト手法の詳細は、マイクロチップ社の

AN1258『オペアンプを使用した高精度回路デザイン :PCB のレイアウト テクニック』を参照してください。

図 26: ガードリングを用いた方法

t Noi

se V

olta

ge D

ensi

ty

(nV/

Hz)

No low pass filter

100

1k

10k

Tota

l Out

put

Frequency (Hz)0.1 1 10 100 1k 10k 100k 1M 10M

Adding low pass filter with fC = 16 kHz

100

10

300

400

500

600

700

pu

t R

MS

No

ise

Vo

ltag

e(μ

V)

No low pass filter

Adding low pass filter with fC = 16 kHz

0

100

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l Ou

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Frequency (Hz)

0.1 1 10 100 1k 10k 100k 1M 10M

VOUT

VDD

RF

I –

+

MCP6491

CF

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AN1494

まとめ

本アプリケーション ノートでは、マイクロチップ社の低入力バイアス電流オペアンプ MCP6491 [1] の特長、フォトダイオードの特性と動作モードについて確認した後、フォトダイオード アンプ回路の設計方法と回路の性能を向上させるための主なポイントをいくつか紹介しました。また、フォトダイオード アンプのノイズ解析とローパスフィルタの設計手法についても説明しました。最後に、リーク電流を抑えるプリント基板設計手法についても簡単に触れました。

参考文献

[1] MCP6491 データシート『7.5 MHz Low Input BiasCurrent Op Amps 』、マイクロチップ テクノロジー社、DS22321、2012 年

[2] MCP6481 データシート『4 MHz Low Input BiasCurrent Op Amps 』マイクロチップ テクノロジー社、DS22322、2012 年

[3] MCP6471 データシート『2 MHz Low Input BiasCurrent Op Amps 』、マイクロチップ テクノロジー社、DS22324、2012 年

DS01494A_JP - p.12 2013 Microchip Technology Inc.

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• マイクロチップ社製品は、該当するマイクロチップ社データシートに記載の仕様を満たしています。

• マイクロチップ社では、通常の条件ならびに仕様に従って使用した場合、マイクロチップ社製品のセキュリティ レベルは、

現在市場に流通している同種製品の中でも最も高度であると考えています。

• しかし、コード保護機能を解除するための不正かつ違法な方法が存在する事もまた事実です。弊社の理解では、こうした手法

はマイクロチップ社データシートにある動作仕様書以外の方法でマイクロチップ社製品を使用する事になります。このような

行為は知的所有権の侵害に該当する可能性が非常に高いと言えます。

• マイクロチップ社は、コードの保全性に懸念を抱いているお客様と連携し、対応策に取り組んでいきます。

• マイクロチップ社を含む全ての半導体メーカーで、自社のコードのセキュリティを完全に保証できる企業はありません。コー

ド保護機能とは、マイクロチップ社が製品を「解読不能」として保証するものではありません。

コード保護機能は常に進歩しています。マイクロチップ社では、常に製品のコード保護機能の改善に取り組んでいます。マイクロ

チップ社のコード保護機能の侵害は、デジタル ミレニアム著作権法に違反します。そのような行為によってソフトウェアまたはそ

の他の著作物に不正なアクセスを受けた場合、デジタル ミレニアム著作権法の定めるところにより損害賠償訴訟を起こす権利があ

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るマイクロチップ・テクノロジー社の登録商標です。

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です。

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シンガポールTel: 65-6334-8870Fax: 65-6334-8850

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台湾 - 高雄

Tel: 886-7-213-7828Fax: 886-7-330-9305

台湾 - 台北

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タイ - バンコク

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ヨーロッパオーストリア - ヴェルス

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イタリア - ミラノ Tel: 39-0331-742611 Fax: 39-0331-466781

オランダ - ドリューネン

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スペイン - マドリッド

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イギリス - ウォーキンガム

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11/29/12