bioimaging center

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東京大学 大学院新領域創成科学研究科 附属 バイオイメージングセンター Bioimaging Center

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Page 1: Bioimaging Center

東京大学 大学院新領域創成科学研究科

附属バイオイメージングセンター

東京大学 大学院新領域創成科学研究科附属バイオイメージングセンター

Bioimaging Center

柏キャンパス

正門東大西東大前 柏の葉公園北

Tel: 04-7136-3614 Fax: 04-7136-3619E-mail: [email protected]

アクセス

0 100 200 300m

N

新領域生命棟(バイオイメージングセンター)

新領域環境棟 新領域基盤棟

基盤科学実験棟

情報生命科学実験棟

柏図書館

物性研究所

物性研究実験棟

宇宙線研究所 総合研究棟

本郷キャンパスからのルート徒歩 バス 電車

徒歩 バス 電車

徒歩

6min

つくばエクスプレス

23min/¥550

5min¥140

5min¥160

つくばエクスプレス

27min/¥650(柏の葉キャンパス駅まで)

JR常磐線

18min/¥380

東武バス

東武野田線

徒歩

25min

6min/¥180

東武バス8-13min/¥160

東武バス

25min/¥280

都営大江戸線

4min/¥170

徒歩

8min

千代田線

10min/¥190

駒場キャンパスからのルート

徒歩

7min

井の頭線

3min/¥120 銀座線

34min/¥230

小田急線

2min/¥120

千代田線

38min/¥230

千代田線

北千住

東大前東大本郷キャンパス

東大西

柏キャンパス

柏の葉公園北

国立がんセンター

江戸川台

柏の葉キャンパス

本郷三丁目

根津

流山おおたかの森

新御徒町

東大駒場キャンパス

I

東大駒場キャンパス

II

表参道駒場東大前

東北沢 代々木上原

渋谷

つくばエクスプレス

23min/¥550

5min¥140

5min¥160

JR常磐線

18min/¥380

東武バス

東武野田線

徒歩

25min

6min/¥180

東武バス8-13min/¥160

東武バス

25min/¥280

北千住

東大前

東大西

柏キャンパス

柏の葉公園北

国立がんセンター

江戸川台

柏の葉キャンパス

流山おおたかの森

新領域創成科学研究科

Page 2: Bioimaging Center

 本センターは、ナノレベルを対象とした分子イメージング部門、ミクロの世界を扱う細胞イメージング部門、よりマクロな組織や個体を対象とする個体・組織イメージング部門、そしてこれらの解析で得られたデータに基づく多次元画像処理、データマイニング、確率情報処理などのプラットフォームを担う数理イメージング部門の4つで構成されています。これら4つの部門が相互に緊密に連携を図るとともに、全学的な連携や学外諸研究機関との共同研究等を通じて、複雑な動的生命現象の理解に迫ります。

 緑色蛍光タンパク質(GFP)を発見した下村博士のノーベル化学賞受賞に象徴されるように、見えないものを可視化することはさまざまな研究分野において重要なテーマであり、科学の領域でしばしば大きなブレークスルーとなってきました。とりわけ生命科学の分野においては、分子・原子レベルで起こる反応を一つの切り口として、生命反応の時・空間的に変化する膨大な情報を適切な処理によってイメージング化し、細胞あるいは組織・個体の反応、さらには行動などのマクロな事象を理解することが求められています。本研究科で行なわれているさまざまな研究教育において、イメージング技術を組み入れた専攻や研究系間の融合研究を推進するとともに、新規の技術を自ら創造しそれに基づく革新的な研究成果を挙げることを目指し、2009年4月にバイオイメージングセンターが設置されました。本センターでは、バイオイメージング設備の利用促進を図ると共に、新しい機器の開発などを通じて萌芽的研究を育成し、その成果を世界に発信して行きます。また、全学的な連携や学外諸研究機関との共同研究の支援を行いつつ分野横断的な研究を先導し、広い視野をもつ人材の育成にも努めてゆきます。

1998年 4月 大学院新領域創成科学研究科設置1999年 4月 学生受け入れ開始2001年 3月 生命棟竣工2002年 3月 基盤棟(1期)竣工2003年 4月 情報生命科学専攻設置2003年 9月 基盤棟(2期)竣工2003年 12月 基礎科学実験棟竣工2004年 4月 メディカルゲノム専攻設置2004年 10月 総合研究棟竣工

2005年 4月 生涯スポーツ健康科学研究センター設置2006年 3月 環境棟竣工2006年 4月 環境学研究系5専攻に改組2008年 4月 海洋技術環境学専攻設置 オーミクス情報センター設置 基盤情報学専攻 工学系研究科へ2009年 4月 バイオイメージングセンター設置

2 3

Bioimaging Center

沿 革

1) 分子イメージング部門 山本 一夫、佐々木 裕次、田口 英樹2) 細胞イメージング部門 河野 重行、大矢 禎一、馳澤 盛一郎、神保 泰彦、青木 不学、東原 和成3) 個体・組織イメージング部門 三谷 啓志、大崎 博之、能瀬 聡直、岡本 孝司、久恒 辰博、尾田 正二、関野 正樹4) 数理イメージング部門 岡田 真人、中谷 明弘

職員名リスト

バイオイメージングセンター

 新領域創成科学研究科を構成する基盤科学、生命科学、環境学の各研究系ならびに情報生命科学専攻に共通する特徴は、既存の個別学問分野から派生する未開拓の領域を研究・教育の対象とし、人類が解決を迫られている課題に取り組んでいることです。この新たな領域に果敢に挑戦するため、本研究科では「学融合」を基本理念に、多様なバックグラウンドを持つ教員を学内外の研究・教育機関から結集し、各専攻に配置しました。本センターでは、これら多様な教員の総力を、バイオイメージングというキーワードのもとに結集させ、新たなブレークスルーとなるような領域横断的な研究を目指します。

新領域創成科学研究科とは

分子イメージング部門

数理イメージング部門

細胞イメージング部門

個体・組織イメージング部門

ナノの可視化

ミクロな動き マクロな組織化

物質系専攻

先端エネルギー工学専攻

複雑理工学専攻

基盤情報学専攻

先端生命科学専攻

メディカルゲノム専攻

自然環境学専攻

海洋技術環境学専攻

環境システム学専攻

人間環境学専攻

社会文化環境学専攻

国際協力学専攻

情報生命科学専攻

生涯スポーツ健康科学研究センター

オーミクス情報センター

バイオイメージングセンター

基盤科学研究系

大学院新領域創成科学研究科

生命科学研究系環境学研究系研究科附属施設

連携体制

(1)革新的バイオイメージング機器および解析手法の研究開発(2)バイオイメージング設備の利用促進(3)学融合的研究の推進 (4)バイオイメージング研究の可視化

設置目的

●分子イメージング部門

 細胞の応答には、多くの分子のかかわる分子間相互作用を介した情報伝達が必須です。このダイナミックな分子間相互作用を可視化し、生きた細胞内で起こる事象を経時的に観察することは、生命のメカニズムを理解するためのもっとも基本であり、かつ重要な課題です。細胞内におけるタンパク質輸送のメカニズムの研究において、いくかのレクチン分子が効率よくリガンドを受け渡すメカニズムを明らかにすることが目的の一つです。一方、タンパク質に修飾された糖鎖は癌などのさまざまな病態を敏感に察知し、その構造を変化させることは古くから知られていますが、がん糖鎖抗原を標的とした人工レクチンを作成し、新規がん診断プローブの作成も試みています。糖鎖は細胞間の情報伝達を担う言語であり、それらの生物学的意義の解明には、組織.個体レベルのよりダイナミックな動きを可視化することが重要です。

山本 一夫 教授(先端生命科学専攻) センター長

ナノレベルの分子間相互作用を可視化する

Fluorescence Resonance Energy Transfer (FRET)

 私たちの研究室では、1分子という極めて小さな空間における運動情報をミリ秒以下の速度で計測できる方法論の研究開発を進めてきました。現在、放射光や電子線などÅレベルの超短波長高エネルギープローブを利用しています。測定共通原理は単純で、観察体へ標識したナノ結晶から発生する回折現象に由来するスポットやパターンを指標に、人為的に指定した部位の実時間運動をモニターすることができます。この発想は他の多くのプローブでも利用可能で、中性子、イオンプローブ、そして自由電子レーザーなどへの応用も検討されています。最近、機能性生体高分子の中で機能特性が一番注目されているカリウムチャネル分子の機能発現時における1分子内運動を実時間計測しました。だれも予想していなかった分子内の大きな回転ねじれ運動は、その機能制御の可能性をも示唆する極めて重要な分子運動情報でした。私たちは計測するだけでなく、その結果から類推される新機能や機能制御をも研究対象としています。

佐々木 裕次 教授(物質系専攻)

新規高精度1分子計測による機能性分子の可視化

機能性カリウムチャネル分子を1分子だけモニターして、その分子内運動をX線1分子追跡法(DXT)を用いてリアルタイムで計測することに世界で初めて成功した

Page 3: Bioimaging Center

 本センターは、ナノレベルを対象とした分子イメージング部門、ミクロの世界を扱う細胞イメージング部門、よりマクロな組織や個体を対象とする個体・組織イメージング部門、そしてこれらの解析で得られたデータに基づく多次元画像処理、データマイニング、確率情報処理などのプラットフォームを担う数理イメージング部門の4つで構成されています。これら4つの部門が相互に緊密に連携を図るとともに、全学的な連携や学外諸研究機関との共同研究等を通じて、複雑な動的生命現象の理解に迫ります。

 緑色蛍光タンパク質(GFP)を発見した下村博士のノーベル化学賞受賞に象徴されるように、見えないものを可視化することはさまざまな研究分野において重要なテーマであり、科学の領域でしばしば大きなブレークスルーとなってきました。とりわけ生命科学の分野においては、分子・原子レベルで起こる反応を一つの切り口として、生命反応の時・空間的に変化する膨大な情報を適切な処理によってイメージング化し、細胞あるいは組織・個体の反応、さらには行動などのマクロな事象を理解することが求められています。本研究科で行なわれているさまざまな研究教育において、イメージング技術を組み入れた専攻や研究系間の融合研究を推進するとともに、新規の技術を自ら創造しそれに基づく革新的な研究成果を挙げることを目指し、2009年4月にバイオイメージングセンターが設置されました。本センターでは、バイオイメージング設備の利用促進を図ると共に、新しい機器の開発などを通じて萌芽的研究を育成し、その成果を世界に発信して行きます。また、全学的な連携や学外諸研究機関との共同研究の支援を行いつつ分野横断的な研究を先導し、広い視野をもつ人材の育成にも努めてゆきます。

1998年 4月 大学院新領域創成科学研究科設置1999年 4月 学生受け入れ開始2001年 3月 生命棟竣工2002年 3月 基盤棟(1期)竣工2003年 4月 情報生命科学専攻設置2003年 9月 基盤棟(2期)竣工2003年 12月 基礎科学実験棟竣工2004年 4月 メディカルゲノム専攻設置2004年 10月 総合研究棟竣工

2005年 4月 生涯スポーツ健康科学研究センター設置2006年 3月 環境棟竣工2006年 4月 環境学研究系5専攻に改組2008年 4月 海洋技術環境学専攻設置 オーミクス情報センター設置 基盤情報学専攻 工学系研究科へ2009年 4月 バイオイメージングセンター設置

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Bioimaging Center

沿 革

1) 分子イメージング部門 山本 一夫、佐々木 裕次、田口 英樹2) 細胞イメージング部門 河野 重行、大矢 禎一、馳澤 盛一郎、神保 泰彦、青木 不学、東原 和成3) 個体・組織イメージング部門 三谷 啓志、大崎 博之、能瀬 聡直、岡本 孝司、久恒 辰博、尾田 正二、関野 正樹4) 数理イメージング部門 岡田 真人、中谷 明弘

職員名リスト

バイオイメージングセンター

 新領域創成科学研究科を構成する基盤科学、生命科学、環境学の各研究系ならびに情報生命科学専攻に共通する特徴は、既存の個別学問分野から派生する未開拓の領域を研究・教育の対象とし、人類が解決を迫られている課題に取り組んでいることです。この新たな領域に果敢に挑戦するため、本研究科では「学融合」を基本理念に、多様なバックグラウンドを持つ教員を学内外の研究・教育機関から結集し、各専攻に配置しました。本センターでは、これら多様な教員の総力を、バイオイメージングというキーワードのもとに結集させ、新たなブレークスルーとなるような領域横断的な研究を目指します。

新領域創成科学研究科とは

分子イメージング部門

数理イメージング部門

細胞イメージング部門

個体・組織イメージング部門

ナノの可視化

ミクロな動き マクロな組織化

物質系専攻

先端エネルギー工学専攻

複雑理工学専攻

基盤情報学専攻

先端生命科学専攻

メディカルゲノム専攻

自然環境学専攻

海洋技術環境学専攻

環境システム学専攻

人間環境学専攻

社会文化環境学専攻

国際協力学専攻

情報生命科学専攻

生涯スポーツ健康科学研究センター

オーミクス情報センター

バイオイメージングセンター

基盤科学研究系

大学院新領域創成科学研究科

生命科学研究系環境学研究系研究科附属施設

連携体制

(1)革新的バイオイメージング機器および解析手法の研究開発(2)バイオイメージング設備の利用促進(3)学融合的研究の推進 (4)バイオイメージング研究の可視化

設置目的

●分子イメージング部門

 細胞の応答には、多くの分子のかかわる分子間相互作用を介した情報伝達が必須です。このダイナミックな分子間相互作用を可視化し、生きた細胞内で起こる事象を経時的に観察することは、生命のメカニズムを理解するためのもっとも基本であり、かつ重要な課題です。細胞内におけるタンパク質輸送のメカニズムの研究において、いくかのレクチン分子が効率よくリガンドを受け渡すメカニズムを明らかにすることが目的の一つです。一方、タンパク質に修飾された糖鎖は癌などのさまざまな病態を敏感に察知し、その構造を変化させることは古くから知られていますが、がん糖鎖抗原を標的とした人工レクチンを作成し、新規がん診断プローブの作成も試みています。糖鎖は細胞間の情報伝達を担う言語であり、それらの生物学的意義の解明には、組織.個体レベルのよりダイナミックな動きを可視化することが重要です。

山本 一夫 教授(先端生命科学専攻) センター長

ナノレベルの分子間相互作用を可視化する

Fluorescence Resonance Energy Transfer (FRET)

 私たちの研究室では、1分子という極めて小さな空間における運動情報をミリ秒以下の速度で計測できる方法論の研究開発を進めてきました。現在、放射光や電子線などÅレベルの超短波長高エネルギープローブを利用しています。測定共通原理は単純で、観察体へ標識したナノ結晶から発生する回折現象に由来するスポットやパターンを指標に、人為的に指定した部位の実時間運動をモニターすることができます。この発想は他の多くのプローブでも利用可能で、中性子、イオンプローブ、そして自由電子レーザーなどへの応用も検討されています。最近、機能性生体高分子の中で機能特性が一番注目されているカリウムチャネル分子の機能発現時における1分子内運動を実時間計測しました。だれも予想していなかった分子内の大きな回転ねじれ運動は、その機能制御の可能性をも示唆する極めて重要な分子運動情報でした。私たちは計測するだけでなく、その結果から類推される新機能や機能制御をも研究対象としています。

佐々木 裕次 教授(物質系専攻)

新規高精度1分子計測による機能性分子の可視化

機能性カリウムチャネル分子を1分子だけモニターして、その分子内運動をX線1分子追跡法(DXT)を用いてリアルタイムで計測することに世界で初めて成功した

Page 4: Bioimaging Center

 遺伝学の究極の目標の一つは、ある生物種の遺伝子産物すべてについて、機能と表現型との間の関係を全て明らかにすることです。約6,000という比較的少数の遺伝子からなる出芽酵母は、個々の遺伝子の単独破壊株セットが作成されており、遺伝子機能の喪失と表現型との関係を網羅的に調べるフェノーム研究に適しています。私たちは、出芽酵母の顕微鏡画像に基づく形態表現型を、1,111の観点で定量的に数値化できるシステムを用いて、遺伝子産物の機能と表現型との関係を詳細に明らかにしようとしています。高次元の表現型情報から、「表現型プロファイリング」というこれまでにない手法を用いた解析が可能になりました。

大矢 禎一 教授(先端生命科学専攻)

出芽酵母変異株の網羅的な細胞イメージング

 生体情報処理の中枢である脳神経系は、多数のニューロンによる分散・並列処理と可塑性に最大の特徴があると考えられています。本研究では、時空間的に広がるニューロン群の活動を長期間非侵襲的に観測する手法として集積化電極基板を開発しました。これまでに、発達過程で見られる自発的な細胞電気活動の遷移過程、活動履歴に依存したネットワーク特性の変化を観測しています。本手法を神経系だけでなく心筋や幹細胞系に適用することにより、将来の医療応用も視野に入れた研究展開が可能であると考えています。

神保 泰彦 教授(人間環境学専攻)

集積化電極基板による細胞電気活動の計測

 光顕の分解能は0.1μm程度ですが、電顕の分解能は0.1nmと極めて高く1,000倍もの開きがあります。光顕から電顕への転換は生命現象を分子レベルで捉えるには不可欠のものですが、マイクロからナノへの急激な転換は、統合されたより高次な生命現象を見失わせる危険もはらんでいます。FE-SEMやTEMの連続切片法三次元立体構築から得られる情報は、高次な生命現象と分子レベルでの解析の橋渡しとして極めて重要で、近年、「シアネレ分裂装置」や「眼点と接合装置の非対称性による雌雄の起源」など興味深い生命現象が次々と見つかっています。

河野 重行 教授(先端生命科学専攻) 副センター長

トランスレーショナルマイクロビュー

4 5

Bioimaging Center

眼点と接合装置の非対称性分裂するシアネレ

マイクロ電極を多数集積化した基板上でニューロンを培養することにより、ニューロン群が発生するスパイク信号の時空間パターンを可視化することに成功した

非必須遺伝子は遺伝子欠損株を用いた解析が可能(4,718変異株)

 受精前の卵は分化した細胞であり、卵特異的な遺伝子発現パターンを示すが、受精後の胚は全能性を有しており、卵とは大きく異なるパターンの遺伝子発現を行います。従って、受精前後で遺伝子発現のリプログラミングが起こっていると考えられ、私たちは、そのメカニズムの解明に取り組んでいます。そのため、まずエピゲノムの関与を考え、受精前後におけるヒストン修飾およびヒストン変異体置換を調べてきました。その結果、ヒストンのメチル化およびヒストンH3変異体などクロマチン構造を変化させて遺伝子発現を調節する因子が、受精前後に大きく変化することが明らかになりました。現在はこのような変化を引き起こすメカニズムについて解析を行っています。このような研究により、将来的は細胞における分化・未分化状態の人為的支配を可能にし、クローン動物作成・再生医療などに貢献できることが期待されます。

青木 不学 准教授(先端生命科学専攻)

受精に伴う遺伝子発現リプログラミング

DNA

H3K79me2

DNA

H3K79me3

未受精卵 受精卵 未受精卵 受精卵

 環境ストレスにより生じるDNA損傷に対しては、修復機構と細胞周期チェックポイント制御機構、損傷をもつ細胞を安全に排除するためのアポトーシス機構がネットワーク制御により協調して働いており、その主要な遺伝子の同定がされています。しかし個体内での個々の細胞が、個体としての生存を最適化している分子の機能解析は今後の課題です。メダカは、個体全体を観察することができ、哺乳類は連続観察の困難な発生の全過程を観察することも可能なモデル生物であり、突然変異のような低頻度の現象を統計的に解析するためにも優れています。近交系が利用可能であること、種内変異性が高く低温下での長時間観察ができる等の利点が多くあることからも、環境ストレスのもたらすゲノム維持機構解析のモデル動物としてメダカを利用しています。

三谷 啓志 教授(先端生命科学専攻)

ストレス応答のリアルタイム全身イメージング 生殖細胞をGFP標識したメダカ稚魚生殖腺

全身を加熱したメダカ稚魚の熱ショック応答の可視化

 生命活動を担う蛋白質はフォールディングという動的な立体構造形成過程を経て機能できるようになります。さらに、細胞内ではフォールディングにとどまらずストレス応答、膜透過、品質管理、アミロイド形成など細胞内の重要な現象に蛋白質の動的なふるまいが関与しています。私たちは蛋白質のフォールディングを助ける分子シャペロンがどのようにフォールディングを助けているのか、また、フォールディングの異常であるアミロイドやプリオンがどのように増殖していくのか、といったことを明らかにするため、試験管内から細胞レベルまで蛋白質の動的な挙動を1分子蛍光イメージングなどで明らかにすべく研究を進めています。

田口 英樹 准教授(メディカルゲノム専攻)

1分子蛍光イメージングからタンパク質の構造形成の秘密に迫る

蛋白質の構造形成を助けるシャペロニンのはたらきを1分子蛍光イメージングで可視化して作用機構を解明→1分子で蛋白質間相互作用を調べる新規な手法

 高等植物の細胞では明確な中心体が観られず、隔膜形成体と呼ばれる微小管構造により隔壁を形成して染色体を分配するなど、動物細胞とは異なる独自の構造や現象が知られており、その実態解明が待たれています。また植物細胞では、大きな体積を占める液胞の細胞内位置や形状が細胞生長に深く関与しています。さらにこれらの形態と動態は細胞骨格により制御されています。これらの細胞内構造の関わり合いは植物細胞の分裂と分化に際して物理的・構造的に大きな役割を果たすとことから、定量的かつ統合的なイメージング解析が必要と考えられます。これらの理由から、私たちは、植物細胞の分裂と分化という基本的現象における、細胞核・染色体、液胞、細胞骨格などの細胞構造とその動態の、バイオイメージングと画像情報処理に基づく独自の手法による解析を行い、構造的関係を明らかにすることを目指しています。

馳澤 盛一郎 教授(先端生命科学専攻)

細胞分裂・分化の時空間的なイメージング

液胞の立体再構築

可視化した表層微小管

 生物は、匂いやフェロモンなど外部環境からの情報分子を受容・伝達・情報統合するための高感度・高選択性の嗅覚センサーをもちます。私たちの分野は、特に齧歯類と昆虫の嗅覚受容体に着目して、嗅覚センサー感覚の分子基盤を明らかにしようとしています。培養細胞における嗅覚受容体の匂い応答測定、嗅覚一次中枢の匂い応答イメージング、嗅神経投射パターンを可視化した遺伝子改変マウスの解析など、さまざまな可視化およびイメージング技術を駆使することにより、匂いやフェロモンの受容体機能、情報伝達経路、嗅覚情報を統合する神経回路網を目で見ることができるようになってきています。

東原 和成 准教授(先端生命科学専攻)

匂いやフェロモンの応答イメージング

神経回路可視化

実験対象生物

●細胞イメージング部門

●個体・組織イメージング部門

Page 5: Bioimaging Center

 遺伝学の究極の目標の一つは、ある生物種の遺伝子産物すべてについて、機能と表現型との間の関係を全て明らかにすることです。約6,000という比較的少数の遺伝子からなる出芽酵母は、個々の遺伝子の単独破壊株セットが作成されており、遺伝子機能の喪失と表現型との関係を網羅的に調べるフェノーム研究に適しています。私たちは、出芽酵母の顕微鏡画像に基づく形態表現型を、1,111の観点で定量的に数値化できるシステムを用いて、遺伝子産物の機能と表現型との関係を詳細に明らかにしようとしています。高次元の表現型情報から、「表現型プロファイリング」というこれまでにない手法を用いた解析が可能になりました。

大矢 禎一 教授(先端生命科学専攻)

出芽酵母変異株の網羅的な細胞イメージング

 生体情報処理の中枢である脳神経系は、多数のニューロンによる分散・並列処理と可塑性に最大の特徴があると考えられています。本研究では、時空間的に広がるニューロン群の活動を長期間非侵襲的に観測する手法として集積化電極基板を開発しました。これまでに、発達過程で見られる自発的な細胞電気活動の遷移過程、活動履歴に依存したネットワーク特性の変化を観測しています。本手法を神経系だけでなく心筋や幹細胞系に適用することにより、将来の医療応用も視野に入れた研究展開が可能であると考えています。

神保 泰彦 教授(人間環境学専攻)

集積化電極基板による細胞電気活動の計測

 光顕の分解能は0.1μm程度ですが、電顕の分解能は0.1nmと極めて高く1,000倍もの開きがあります。光顕から電顕への転換は生命現象を分子レベルで捉えるには不可欠のものですが、マイクロからナノへの急激な転換は、統合されたより高次な生命現象を見失わせる危険もはらんでいます。FE-SEMやTEMの連続切片法三次元立体構築から得られる情報は、高次な生命現象と分子レベルでの解析の橋渡しとして極めて重要で、近年、「シアネレ分裂装置」や「眼点と接合装置の非対称性による雌雄の起源」など興味深い生命現象が次々と見つかっています。

河野 重行 教授(先端生命科学専攻) 副センター長

トランスレーショナルマイクロビュー

4 5

Bioimaging Center

眼点と接合装置の非対称性分裂するシアネレ

マイクロ電極を多数集積化した基板上でニューロンを培養することにより、ニューロン群が発生するスパイク信号の時空間パターンを可視化することに成功した

非必須遺伝子は遺伝子欠損株を用いた解析が可能(4,718変異株)

 受精前の卵は分化した細胞であり、卵特異的な遺伝子発現パターンを示すが、受精後の胚は全能性を有しており、卵とは大きく異なるパターンの遺伝子発現を行います。従って、受精前後で遺伝子発現のリプログラミングが起こっていると考えられ、私たちは、そのメカニズムの解明に取り組んでいます。そのため、まずエピゲノムの関与を考え、受精前後におけるヒストン修飾およびヒストン変異体置換を調べてきました。その結果、ヒストンのメチル化およびヒストンH3変異体などクロマチン構造を変化させて遺伝子発現を調節する因子が、受精前後に大きく変化することが明らかになりました。現在はこのような変化を引き起こすメカニズムについて解析を行っています。このような研究により、将来的は細胞における分化・未分化状態の人為的支配を可能にし、クローン動物作成・再生医療などに貢献できることが期待されます。

青木 不学 准教授(先端生命科学専攻)

受精に伴う遺伝子発現リプログラミング

DNA

H3K79me2

DNA

H3K79me3

未受精卵 受精卵 未受精卵 受精卵

 環境ストレスにより生じるDNA損傷に対しては、修復機構と細胞周期チェックポイント制御機構、損傷をもつ細胞を安全に排除するためのアポトーシス機構がネットワーク制御により協調して働いており、その主要な遺伝子の同定がされています。しかし個体内での個々の細胞が、個体としての生存を最適化している分子の機能解析は今後の課題です。メダカは、個体全体を観察することができ、哺乳類は連続観察の困難な発生の全過程を観察することも可能なモデル生物であり、突然変異のような低頻度の現象を統計的に解析するためにも優れています。近交系が利用可能であること、種内変異性が高く低温下での長時間観察ができる等の利点が多くあることからも、環境ストレスのもたらすゲノム維持機構解析のモデル動物としてメダカを利用しています。

三谷 啓志 教授(先端生命科学専攻)

ストレス応答のリアルタイム全身イメージング 生殖細胞をGFP標識したメダカ稚魚生殖腺

全身を加熱したメダカ稚魚の熱ショック応答の可視化

 生命活動を担う蛋白質はフォールディングという動的な立体構造形成過程を経て機能できるようになります。さらに、細胞内ではフォールディングにとどまらずストレス応答、膜透過、品質管理、アミロイド形成など細胞内の重要な現象に蛋白質の動的なふるまいが関与しています。私たちは蛋白質のフォールディングを助ける分子シャペロンがどのようにフォールディングを助けているのか、また、フォールディングの異常であるアミロイドやプリオンがどのように増殖していくのか、といったことを明らかにするため、試験管内から細胞レベルまで蛋白質の動的な挙動を1分子蛍光イメージングなどで明らかにすべく研究を進めています。

田口 英樹 准教授(メディカルゲノム専攻)

1分子蛍光イメージングからタンパク質の構造形成の秘密に迫る

蛋白質の構造形成を助けるシャペロニンのはたらきを1分子蛍光イメージングで可視化して作用機構を解明→1分子で蛋白質間相互作用を調べる新規な手法

 高等植物の細胞では明確な中心体が観られず、隔膜形成体と呼ばれる微小管構造により隔壁を形成して染色体を分配するなど、動物細胞とは異なる独自の構造や現象が知られており、その実態解明が待たれています。また植物細胞では、大きな体積を占める液胞の細胞内位置や形状が細胞生長に深く関与しています。さらにこれらの形態と動態は細胞骨格により制御されています。これらの細胞内構造の関わり合いは植物細胞の分裂と分化に際して物理的・構造的に大きな役割を果たすとことから、定量的かつ統合的なイメージング解析が必要と考えられます。これらの理由から、私たちは、植物細胞の分裂と分化という基本的現象における、細胞核・染色体、液胞、細胞骨格などの細胞構造とその動態の、バイオイメージングと画像情報処理に基づく独自の手法による解析を行い、構造的関係を明らかにすることを目指しています。

馳澤 盛一郎 教授(先端生命科学専攻)

細胞分裂・分化の時空間的なイメージング

液胞の立体再構築

可視化した表層微小管

 生物は、匂いやフェロモンなど外部環境からの情報分子を受容・伝達・情報統合するための高感度・高選択性の嗅覚センサーをもちます。私たちの分野は、特に齧歯類と昆虫の嗅覚受容体に着目して、嗅覚センサー感覚の分子基盤を明らかにしようとしています。培養細胞における嗅覚受容体の匂い応答測定、嗅覚一次中枢の匂い応答イメージング、嗅神経投射パターンを可視化した遺伝子改変マウスの解析など、さまざまな可視化およびイメージング技術を駆使することにより、匂いやフェロモンの受容体機能、情報伝達経路、嗅覚情報を統合する神経回路網を目で見ることができるようになってきています。

東原 和成 准教授(先端生命科学専攻)

匂いやフェロモンの応答イメージング

神経回路可視化

実験対象生物

●細胞イメージング部門

●個体・組織イメージング部門

Page 6: Bioimaging Center

 シナプスは、神経細胞が情報をやりとりする重要な基本単位ですが、動物の発生過程において、どのようにして形成されるのかは、ほとんど明らかになっていませんでした。私たちは、遺伝子操作技術を用いて蛍光を発するように工夫した分子の挙動を、レーザーを用いて追跡することにより、動物個体内で進行するシナプス形成過程の可視化に成功し、その分子機構を明らかにしました。

能瀬 聡直 教授(複雑理工学専攻)

シナプス形成過程のイメージング

 X線CT画像や顕微鏡画像をはじめとする画像データを用いて、空間的な形状や分布といった「かたち」に関係する形質の遺伝的背景を探ります。画像データは単なる画素の集合に過ぎないため、解析対象の形質を定義して定量的に抽出する必要があります。マウスの内臓/皮下脂肪領域や、メダカの頭部形状の自動認識と定量はその例です。「かたち」の全体像は、抽出した複数の量的形質から構成されることになります。量的形質それぞれは複数の遺伝子座(QTLs)間の交互作用が関連していると考えられていますので、形状全体に関連する遺伝的背景は複雑なものになります。これまでに、量的形質に関連する遺伝子マーカーの交互作用を網羅的に列挙するシステムを開発しています。現在開発中の画像から量的形質を自動抽出するシステムと連携させることによって、表現型情報と遺伝子型情報の両面から多因子的な解析を行うことが可能になります。

中谷 明弘 准教授(情報生命科学専攻)

画像からの量的形質の抽出と関連遺伝子座の網羅的探索 少子高齢化が一段と進むわが国において、認知症患者の急増が極めて大きな社会問題となっています。全世界的にも、認知症の急増に対する対応策が模索されている中、認知症の発症を未然に食い止める予防法の開発に大きな期待が寄せられています。認知症においては、認知機能を司る海馬回路のはたらきが障害されてくることが知られています。そこで、私たちは、海馬回路の保護・再生をターゲットにした神経再生イメージング研究を展開してきました。そして、成体の海馬において、神経回路が再生される仕組みを明らかにしてきました。加えて、認知症に伴う脳組織の変性度合いを非侵襲的に可視化する方法を開発するために、認知症動物モデルを用いた強磁場MRIイメージング研究に取り組んできました。今後、認知症に関連したバイオイメージング研究を重点的に進めていけば、社会の要請に応え、認知症を予防する方法が見出されることが強く期待されます。

久恒 辰博 准教授(先端生命科学専攻)

認知症の予防を実現するバイオイメージング

6 7

Bioimaging Center

アルツハイマー病モデルマウスの海馬において蓄積する老人班

海馬のニューロン再生を誘導GABAシナプス末端

輪郭・口・目・エラ等の形状認識と定量

シナプス形成過程における細胞微小突起ダイナミクス及び分子局在の可視化

 MRIは、強磁場下に置かれた原子核から発生する共鳴信号を利用して、断層像を得る技術です。近年の超電導技術の著しい進歩により、磁場強度10テスラに迫るMRI用超電導磁石が作られるようになり、医学や脳科学などの幅広い分野にインパクトを与えています。私たちは、超電導工学や電磁界解析の手法を駆使して、MRI用超電導磁石やMRI計測手法などの基盤技術の研究に取り組んでいます。例えば、MRIの測定対象物に電流を流したときの画像の変化をもとにして、対象物内部のインピーダンスを高分解能で画像計測する手法を考案しました。また、直径数cmで数テスラの磁場を発生可能な高温バルク超電導体を用いて、小型・強磁場のMRI用磁石を開発しています。

大崎 博之 教授(先端エネルギー工学専攻)

MRI用超電導磁石と測定技術

動物用MRI装置主磁場強度:4.7T傾斜磁場強度:60mT/mRFコイル:バードゲージ60mm等

インピーダンスイメージング手法

 多次元の時空間観測データに潜む隠れた構造を、ベイズ推定や機械学習などの数理的手法により系統的に推測・抽出する手法を開発します。私たちの開発した手法を用いると、多電極計測された高次元の神経活動ベクトルからサルがどのように世界を認識しているかを描くことができます。これは神経活動という階層と心理学の階層という大きく異なる階層の間を機械学習という客観的手段で関連づけたことになります。この手法は網羅的な研究から得られる多量のデータにも適用可能です。また、EPSP伝播データから、オームの法則を画像処理に組み込んで、画像では直接表現できていない隠れた状態である膜比抵抗を推定することに成功しました。

岡田 真人 教授(複雑理工学専攻)

高次元データ処理と画像処理で見えないものを視る

膜比抵抗推定図

高次元観測空間から巨視的低次元空間を抽出し可視化(高次元データ処理)

 高速度ビデオカメラを駆使して、ラット腸間膜における細動脈や毛細血管内の赤血球挙動を可視化解析を行う手法を確立しました。拍動の各位相ごとの速度分布を定量的に明らかにしています。さらに、リポソームと赤血球の同時計測を実施して、相対速度を評価するなど、微小循環における速度計測手法を確立しました。また、毛細血管内部の赤血球の変形挙動や流動挙動を画像解析によって明らかにしています。

岡本 孝司 教授(人間環境学専攻)

血流挙動のイメージング

Phase averaged RBC velocity distributionsVisualized RBC flow using high-speed camera

 自家蛍光がない透明メダカを用いて、蛍光タンパク質遺伝子を組み込んだ光るトランスジェニックメダカを作製し、遺伝子機能を個体レベルにおいて解明することを目指しています。細胞死や細胞分裂を可視化したトランスジェニックメダカ、熱ショックに反応して光るトランスジェニックメダカなどを作製して、様々な生命現象を個体レベルで可視化しようとしています。さらに、メダカの行動、あるいは胸鰭の動きのようなメダカの仕草をハイビジョン映像によって高速度・高解像度撮影し、画像解析によってメダカの行動・仕草を詳細に分析することによって、メダカの行動心理学的研究を開始しています。

尾田 正二 講師(先端生命科学専攻)

イメージングによる個体生理学

41℃、10minの熱ショックによって蛍光が発現誘導されたトランスジェニックメダカ(上:下はコントロール)

透過像 蛍光像

 MRIは、非侵襲かつ高分解能で生体の断層像を得る技術であり、疾患の診断や脳機能の研究などに広く使われています。測定法を工夫することで、解剖学的な情報に加えて、脳の活動,物質の拡散,神経線維の走行、流れ、温度など、さまざまな情報を反映した画像を撮ることができます。私たちは、生体内の磁場,導電率、誘電率などの電気的情報を中心に、MRIを使ったさまざまなバイオイメージングの手法を研究しています。例えばMRIをもとに生体組織の導電率を異方性まで含めて推定する手法を提案し、電磁場解析などに役立てられています。

関野 正樹 助教(先端エネルギー工学専攻)

MRIによる個体や組織のイメージング

ラットの脳の導電率分布、我々が提案した手法により、異方性の情報まで含めて、生体組織の導電率の高分解能イメージングが可能になった

●数理イメージング部門

Page 7: Bioimaging Center

 シナプスは、神経細胞が情報をやりとりする重要な基本単位ですが、動物の発生過程において、どのようにして形成されるのかは、ほとんど明らかになっていませんでした。私たちは、遺伝子操作技術を用いて蛍光を発するように工夫した分子の挙動を、レーザーを用いて追跡することにより、動物個体内で進行するシナプス形成過程の可視化に成功し、その分子機構を明らかにしました。

能瀬 聡直 教授(複雑理工学専攻)

シナプス形成過程のイメージング

 X線CT画像や顕微鏡画像をはじめとする画像データを用いて、空間的な形状や分布といった「かたち」に関係する形質の遺伝的背景を探ります。画像データは単なる画素の集合に過ぎないため、解析対象の形質を定義して定量的に抽出する必要があります。マウスの内臓/皮下脂肪領域や、メダカの頭部形状の自動認識と定量はその例です。「かたち」の全体像は、抽出した複数の量的形質から構成されることになります。量的形質それぞれは複数の遺伝子座(QTLs)間の交互作用が関連していると考えられていますので、形状全体に関連する遺伝的背景は複雑なものになります。これまでに、量的形質に関連する遺伝子マーカーの交互作用を網羅的に列挙するシステムを開発しています。現在開発中の画像から量的形質を自動抽出するシステムと連携させることによって、表現型情報と遺伝子型情報の両面から多因子的な解析を行うことが可能になります。

中谷 明弘 准教授(情報生命科学専攻)

画像からの量的形質の抽出と関連遺伝子座の網羅的探索 少子高齢化が一段と進むわが国において、認知症患者の急増が極めて大きな社会問題となっています。全世界的にも、認知症の急増に対する対応策が模索されている中、認知症の発症を未然に食い止める予防法の開発に大きな期待が寄せられています。認知症においては、認知機能を司る海馬回路のはたらきが障害されてくることが知られています。そこで、私たちは、海馬回路の保護・再生をターゲットにした神経再生イメージング研究を展開してきました。そして、成体の海馬において、神経回路が再生される仕組みを明らかにしてきました。加えて、認知症に伴う脳組織の変性度合いを非侵襲的に可視化する方法を開発するために、認知症動物モデルを用いた強磁場MRIイメージング研究に取り組んできました。今後、認知症に関連したバイオイメージング研究を重点的に進めていけば、社会の要請に応え、認知症を予防する方法が見出されることが強く期待されます。

久恒 辰博 准教授(先端生命科学専攻)

認知症の予防を実現するバイオイメージング

6 7

Bioimaging Center

アルツハイマー病モデルマウスの海馬において蓄積する老人班

海馬のニューロン再生を誘導GABAシナプス末端

輪郭・口・目・エラ等の形状認識と定量

シナプス形成過程における細胞微小突起ダイナミクス及び分子局在の可視化

 MRIは、強磁場下に置かれた原子核から発生する共鳴信号を利用して、断層像を得る技術です。近年の超電導技術の著しい進歩により、磁場強度10テスラに迫るMRI用超電導磁石が作られるようになり、医学や脳科学などの幅広い分野にインパクトを与えています。私たちは、超電導工学や電磁界解析の手法を駆使して、MRI用超電導磁石やMRI計測手法などの基盤技術の研究に取り組んでいます。例えば、MRIの測定対象物に電流を流したときの画像の変化をもとにして、対象物内部のインピーダンスを高分解能で画像計測する手法を考案しました。また、直径数cmで数テスラの磁場を発生可能な高温バルク超電導体を用いて、小型・強磁場のMRI用磁石を開発しています。

大崎 博之 教授(先端エネルギー工学専攻)

MRI用超電導磁石と測定技術

動物用MRI装置主磁場強度:4.7T傾斜磁場強度:60mT/mRFコイル:バードゲージ60mm等

インピーダンスイメージング手法

 多次元の時空間観測データに潜む隠れた構造を、ベイズ推定や機械学習などの数理的手法により系統的に推測・抽出する手法を開発します。私たちの開発した手法を用いると、多電極計測された高次元の神経活動ベクトルからサルがどのように世界を認識しているかを描くことができます。これは神経活動という階層と心理学の階層という大きく異なる階層の間を機械学習という客観的手段で関連づけたことになります。この手法は網羅的な研究から得られる多量のデータにも適用可能です。また、EPSP伝播データから、オームの法則を画像処理に組み込んで、画像では直接表現できていない隠れた状態である膜比抵抗を推定することに成功しました。

岡田 真人 教授(複雑理工学専攻)

高次元データ処理と画像処理で見えないものを視る

膜比抵抗推定図

高次元観測空間から巨視的低次元空間を抽出し可視化(高次元データ処理)

 高速度ビデオカメラを駆使して、ラット腸間膜における細動脈や毛細血管内の赤血球挙動を可視化解析を行う手法を確立しました。拍動の各位相ごとの速度分布を定量的に明らかにしています。さらに、リポソームと赤血球の同時計測を実施して、相対速度を評価するなど、微小循環における速度計測手法を確立しました。また、毛細血管内部の赤血球の変形挙動や流動挙動を画像解析によって明らかにしています。

岡本 孝司 教授(人間環境学専攻)

血流挙動のイメージング

Phase averaged RBC velocity distributionsVisualized RBC flow using high-speed camera

 自家蛍光がない透明メダカを用いて、蛍光タンパク質遺伝子を組み込んだ光るトランスジェニックメダカを作製し、遺伝子機能を個体レベルにおいて解明することを目指しています。細胞死や細胞分裂を可視化したトランスジェニックメダカ、熱ショックに反応して光るトランスジェニックメダカなどを作製して、様々な生命現象を個体レベルで可視化しようとしています。さらに、メダカの行動、あるいは胸鰭の動きのようなメダカの仕草をハイビジョン映像によって高速度・高解像度撮影し、画像解析によってメダカの行動・仕草を詳細に分析することによって、メダカの行動心理学的研究を開始しています。

尾田 正二 講師(先端生命科学専攻)

イメージングによる個体生理学

41℃、10minの熱ショックによって蛍光が発現誘導されたトランスジェニックメダカ(上:下はコントロール)

透過像 蛍光像

 MRIは、非侵襲かつ高分解能で生体の断層像を得る技術であり、疾患の診断や脳機能の研究などに広く使われています。測定法を工夫することで、解剖学的な情報に加えて、脳の活動,物質の拡散,神経線維の走行、流れ、温度など、さまざまな情報を反映した画像を撮ることができます。私たちは、生体内の磁場,導電率、誘電率などの電気的情報を中心に、MRIを使ったさまざまなバイオイメージングの手法を研究しています。例えばMRIをもとに生体組織の導電率を異方性まで含めて推定する手法を提案し、電磁場解析などに役立てられています。

関野 正樹 助教(先端エネルギー工学専攻)

MRIによる個体や組織のイメージング

ラットの脳の導電率分布、我々が提案した手法により、異方性の情報まで含めて、生体組織の導電率の高分解能イメージングが可能になった

●数理イメージング部門

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東京大学 大学院新領域創成科学研究科

附属バイオイメージングセンター

東京大学 大学院新領域創成科学研究科附属バイオイメージングセンター

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本郷キャンパスからのルート徒歩 バス 電車

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23min/¥550

5min¥140

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つくばエクスプレス

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東武バス

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