第 224 回 日本小児科学会宮城地方会 - tohoku …...第224回...

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224 日本小児科学会宮城地方会 繁夫 2017(平成 29)11 19 ()10 星陵オーディトリアム 仙台市青葉区星陵町 2-1 東北大学星陵会館内

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Page 1: 第 224 回 日本小児科学会宮城地方会 - Tohoku …...第224回 日本小児科学会宮城地方会 会 長 呉 繁夫 日 時 2017(平成29)年11月19日(日)10時 会

第 224 回

日本小児科学会宮城地方会

会 長 呉 繁夫

日 時 2017(平成 29)年 11 月 19 日(日)10 時

会 場 星陵オーディトリアム

仙台市青葉区星陵町 2-1 東北大学星陵会館内

時 間 厳 守

Page 2: 第 224 回 日本小児科学会宮城地方会 - Tohoku …...第224回 日本小児科学会宮城地方会 会 長 呉 繁夫 日 時 2017(平成29)年11月19日(日)10時 会

第 224回 日本小児科学会宮城地方会 プログラム

◆10:00-10:05 開会の辞 日本小児科学会宮城地方会会長 呉繁夫

◆10:05-10:23 神経 座長:遠藤若葉(東北大学病院 小児科)

01. 脳内ディスプレイという概念を用いて精神疾患の機序を考える

○神田進 (国立病院機構八戸病院 小児科)

02. 当院で経験した急性壊死性脳症 13 例の臨床的検討

○宇根岡紗希、守谷充司、荒川貴弘、篠崎まみ、安西豪人、阪本昌樹、鈴木力生、新田恩、北村太郎、

西尾利之、高柳勝、村田祐二、大浦敏博 (仙台市立病院 小児科)

◆10:23-10:50 アレルギー・外来 座長:箕浦貴則(キッズクリニック田子)

03. 初回喫煙後に発症した急性好酸球性肺炎の1例

○大黒顕佑、金美賢、加納伸介、宮野峻輔、堀野智史、有馬正貴、工藤充哉

(大崎市民病院 小児科)

滝田克也 (大崎市民病院 呼吸器内科)

04. 当院救急外来を受診したアナフィラキシー104例の検討

○荒川貴弘、新田恩、宇根岡紗希、篠崎まみ、安齋豪人、阪本昌樹、守谷充司、鈴木力生、北村太郎、

西尾利之、高柳勝、村田祐二、大浦敏博 (仙台市立病院 小児科)

05. 2か月健診時股関節超音波検査で発見された発育性股関節形成不全例における臨床所見および危険因子

の分析

○大橋芳之 (大はしこどもクリニック)

◆10:50-11:17 血液・免疫 座長:片山紗乙莉(東北大学病院 小児科)

06. 鉄欠乏性貧血関連遺伝子 Helicobacter pylori sabA

○加藤晴一 (かとうこどもクリニック)

大崎敬子、神谷茂 (杏林大学 感染症学)

Xue-Song Zhang、Martin J. Blaser (New York 大学 微生物学)

07. 周期性発熱症候群 15例の臨床的検討

○鈴木聡志、三浦拓人、石田智之、渡邉浩司、渡邊庸平、加賀麻衣子、大沼良一、貴田岡節子、久間木悟

(国立病院機構仙台医療センター 小児科)

08. ANKRD26 遺伝子変異を有する先天性血小板減少症の1家系

○鈴木信、鈴木資、南條由佳、小沼正栄、佐藤篤、今泉益栄 (宮城県立こども病院 血液腫瘍科)

渡邊周永 (気仙沼市立病院 小児科)

笹原洋二 (東北大学病院 小児科)

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◆11:17-11:44 内分泌・代謝 座長:藤原幾磨(東北大学大学院医学系研究科)

09. RSウイルス感染を契機に心筋障害が顕性化したミトコンドリア病の1例

○篠崎まみ、新田恩、鈴木直生、寺嶋祥、宇根岡紗希、荒川貴弘、安斎豪人、阪本昌樹、守谷充司、

鈴木力生、北村太郎、西尾利之、高柳勝、村田祐二、大浦敏博 (仙台市立病院 小児科)

10. インスリン中断により糖尿病性ケトアシドーシスと急性膵炎を来たした 1型糖尿病の1例

○三浦啓暢、菅野潤子、高橋俊成、川嶋明香、松木琢磨、市野井那津子、上村美季、熊谷直憲、呉繁夫

(東北大学病院 小児科)

藤原幾磨 (東北大学大学院医学系研究科 小児環境医学分野)

11. 思春期早発症、GH 産生下垂体腺腫を併発した McCune-Albright 症候群の女児例

○池田美希、橋本峻、相原悠、池田秀之、湯沢健太郎、越浪正太、松田直、金城学、鈴木豊

(八戸市立市民病院 小児科)

藤原幾磨 (東北大学病院 小児科)

◆11:44-11:50 若手優秀演題賞表彰

◆11:50-12:30 休憩

◆12:30-13:00 ランチョンセミナー 座長:呉繁夫(日本小児科学会宮城地方会会長)

「原発性免疫不全症を疑う時」

東北大学医学部小児科学講座 准教授 笹原 洋二先生

共催:CSLベーリング株式会社

◆13:00-13:10 休憩

◆13:10-14:10 特別講演 座長:呉繁夫(日本小児科学会宮城地方会会長)

「わかりたいあなたのためのミトコンドリア病の話 診断から治療にわたる最前線」

千葉県こども病院代謝科 村山 圭先生

◆14:10-14:20 休憩

◆14:20-14:56 循環器 座長:川合英一郎(宮城県立こども病院 循環器科)

12. 重症拡張型心筋症に対する小児用補助人工心臓 Berlin Heart EXCOR Pediatricの使用経験

○小野頼母、元野憲作、濱本奈央、大崎真樹 (静岡県立こども病院 循環器集中治療科)

土井悠司、田邊雄大、内山弘基、石垣瑞彦、佐藤慶介、芳本潤、金成海、満下紀恵、新居正基、田中靖彦

(静岡県立こども病院 循環器科)

福場遼平、坂本喜三郎 (静岡県立こども病院 心臓血管外科)

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13. 心臓 MRI検査による心房中隔欠損症の血行動態評価

○髙橋怜 (東北大学病院 小児科)

矢尾板久雄、大軒健彦、川合英一郎、小澤晃、田中高志 (宮城県立こども病院 循環器科)

14. 心機能低下を合併した WPW症候群に対するカテーテルアブレーション治療

○木村正人、川野研悟、大田千晴、遠藤早紀、山口祐樹、呉繁夫 (東北大学病院 小児科)

福田浩二 (国際医療福祉大学病院 循環器内科)

15. 神経線維腫症 1型に高血圧を合併した2症例

○山口祐樹、木村正人、川野研悟、大田千晴、呉繁夫 (東北大学病院 小児科)

大浦敏博 (仙台市立病院 小児科)

小林朋子 (東北メディカル・メガバンク機構)

高瀬圭 (東北大学病院 放射線診断科)

◆14:56-15:14 新生児 座長:三浦雄一郎(宮城県立こども病院 新生児科)

16. 新生児リステリア症による敗血症で出生した超低出生体重児の救命例

○名和達郎、鈴木智尚、三浦雄一郎、内田俊彦、渡邉達也 (宮城県立こども病院 新生児科)

17. 突然の大量喀血で発症した気管支動脈蔓状血管腫の生後1か月女児

○池田秀之、橋本峻、相原悠、池田美希、湯沢健太郎、越浪正太、松田直、金城学、鈴木豊

(八戸市立市民病院 小児科)

木村正人 (東北大学病院 小児科)

大田英揮 (東北大学病院 放射線診断科)

◆15:14-15:41 腎臓 座長:工藤宏紀(岩手県立中央病院 小児科) 18. 嘔吐、体重増加不良、発熱にて発見された腎性尿崩症の1例

○佐々木太郎、熊谷直憲、内田奈生、呉繁夫 (東北大学病院 小児科)

昆野理恵子 (岩手県立中部病院 小児科)

19. 急性増悪により腎機能低下を示した先天性水腎症の年長児例

○新妻創、内田奈生、高橋俊成、佐々木太郎、熊谷直憲、呉繁夫 (東北大学病院 小児科)

佐竹洋平、相野谷慶子、坂井清秀 (宮城県立こども病院 泌尿器科)

武山淳二 (宮城県立こども病院 臨床病理科)

20. イホスファミドによる薬剤性 Fanconi 症候群を呈した 1例

○髙橋俊成、稲垣徹史 (宮城県立こども病院 腎臓内科)

鈴木資、鈴木信、南條由佳、小沼正栄、佐藤篤 (宮城県立こども病院 血液腫瘍科)

◆15:41-16:08 感染症 座長:久間木悟(仙台医療センター 小児科)

21. ヒトヘルペスウイルス 6 型と RS ウイルスの混合感染により麻疹が疑われた乳児例

○後藤悠輔、酒井秀行、工藤宏紀、西野美奈子、星能元、三上仁 (岩手県立中央病院 小児科)

22. RSウイルス感染症に High flow nasal cannula(HFNC)を導入した症例の検討

○宮林広樹、齋藤あかり、鈴木恵美子、小野田正志、近岡秀二、藤山純一 (山形県立中央病院 小児科)

23. 当科で経験したパラインフルエンザウイルス感染症 285例の検討

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○三浦拓人、鈴木聡志、石田智之、渡邉浩司、渡邊庸平、加賀麻衣子、大沼良一、貴田岡節子、久間木悟

(国立病院機構仙台医療センター 小児科)

佐藤光、大宮卓、渡邊王志、西村秀一 (国立病院機構仙台医療センター ウイルスセンター)

◆16:08-16:13 閉会の辞 日本小児科学会宮城地方会会長 呉繁夫

◆16:13-16:23 荒川記念賞、成澤賞授賞式

※一般演題は口演 6分、討論 3分、計 9分で進行します。時間厳守でお願いします。

※ランチョンセミナーで、お弁当をご用意しています(配布時間:午前のセクションが

終わり次第)。数に限りがありますので品切れの際はご容赦ください。

※若手優秀演題を2題選出し表彰します。

※特別講演は、日本小児科学会/日本専門医機構専門医(新制度)のⅲ小児科領域講習の認

定単位になります。受講証は、特別講演開始前に会場入り口にてお渡し致します。機構の

強い指導もあり、10分以上遅刻された場合は受講証をお渡しできません。

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<特別講演>

わかりたいあなたのためのミトコンドリア病の話

診断から治療にわたる最前線

千葉県こども病院代謝科

村山 圭先生

ミトコンドリアはライソゾームやペルオキシソームなどとともに細胞内小器官の1つで

ある。それぞれの小器官の障害は、神経系を含む全身性の細胞障害を来す一方で、臨床症

状だけではどの小器官の障害なのか判らない場合もある。それぞれの小器官が関連した障

害も起こすことが知られている。例えばライソゾーム病の1つであるゴーシェ病はマイト

ファジー障害を引き起こしたり、パーキンソン病のリスクを増大させたりすることが知ら

れている。パーキンソン病は、ミトコンドリア障害が成因の 1つであることは周知の通り

である。本邦におけるミトコンドリア障害に対する包括的遺伝子解析の論文(Kohda et

al. PLOS Genet 2016)では、従来知られていたミトコンドリア病の遺伝子異常以外に、

(ミトコンドリア病としてではなく)別な疾患として報告されていたものや、染色体異常

(特に微小欠失)によるものなどが含まれることが報告されている。多彩な神経症状等を

呈する疾患について、2次的なミトコンドリア障害(多くは呼吸鎖の障害)が含まれてい

ることが示唆される。また、尿中有機酸分析やアシルカルニチン分析の結果がミトコンド

リア病の病因遺伝子の同定に重要な情報を与えてくれることもある。

こうした多彩な病態に基づくミトコンドリア障害を念頭に置きつつ治療を組み立ててい

く必要がある。ミトコンドリア障害は、①核 DNAないしミトコンドリア DNAの異常に基づ

き、②特定のあるいは全般的な呼吸鎖酵素の活性低下がおこる結果、③細胞質の酸化還元

状態の不均衡(NADHの増加)やエネルギー産生の低下が起こり、④細胞障害・臓器障害

を引き起こす疾患である。治療の基本的なとらえ方は、①から④の流れのどこを改善して

いくのかということを考えると、理解がしやすい。①は遺伝子関連治療や出生前診断など

が該当する。②③はビタミンカクテル、ピルビン酸 Na、5-ALAや食事療法であり、④は症

状に対しての対症療法のことである。一部のミトコンドリア病は、遺伝子まで同定されれ

ば治療可能なものもある(Distelmaier et al. Brain 2017)。さらに東北大学発で開発中

の 5-MAには大きな期待がかかる。

本講演では、日常診療でも遭遇する可能性のあるミトコンドリア障害による疾患を広く

紹介しつつ、まだ確立されていない治療の本質、戦略に言及したい。

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【職歴】

1997年 3月 秋田大学医学部卒業

1997年 4月 千葉大学医学部小児科入局

1999年 4月 千葉大小児科代謝グループに所属

1999年 4月 埼玉医科大学病院小児科

2002年 4月 千葉大学附属病院小児科

2005年 4月 千葉県こども病院代謝科医長

2006年 4月 Melbourne Royal Children's Hospital, Murdoc Childrens Research Institute

に短期留学

2011年 10月 千葉県がんセンター研究所・医長兼任

2013年 4月 千葉県こども病院代謝科および千葉県がんセンター研究所・主任医長

2014年 4月 千葉県こども病院代謝科・部長(現在に至る)

2014年 6月 Helmholtz Zentrum in Munich, Human Geneticsに研修

【最終学歴】

2006年 3月 千葉大学大学院医学研究院小児病態学博士課程修了

【受賞】

1) 2006 年;日本小児肝臓研究会白木賞

2) 2008 年;Pediatric Academic Society, Japan Pediatric Society Fellow Award

3) 2009 年;国際先天代謝異常学会にて Travel Award

4) 2010 年;第 1回アジア先天代謝異常学会にて若手研究者賞

5) 2010 年;千葉地方会中島賞

6) 2013 年;日本先天代謝異常学会奨励賞

「ミトコンドリア呼吸鎖異常症の酵素診断と分子病理についての研究」

7) 2014 年;日本先天代謝異常学会 JCRトラベルアワード

【専門医】

小児科学会専門医、臨床遺伝専門医、小児栄養消化器肝臓学会認定医

【学会の役職】

日本先天代謝異常学会評議委員、日本ミトコンドリア学会評議委員、

日本栄養消化器肝臓学会運営委員

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<一般演題>

01. 脳内ディスプレイという概念を用いて精神疾患の機序を考える

○神田進 (国立病院機構八戸病院 小児科)

自閉症などを理解するためのツールとして先回提唱した「脳内ディスプレイ」を応用し

て精神疾患の機序を考察した。まず「脳内ディスプレイ」の概念について概略する。脳の

中にあって解剖学的構造を持たない「場」として脳内ディスプレイを想定する。脳内ディ

スプレイは情報を統合する場であるので意識の場と言うことが可能である。脳内ディスプ

レイには視覚情報・聴覚情報・思考情報などがマルチウインドウで表示され、表示された

情報を脳の各パーツが閲覧し校正することが可能である。この概念では「心」と「脳」と

を明瞭に区別するため「心」の性質を明確に位置付けることも可能となる。てんかんや自

閉症や多重人格といった疾患の病態機序を合理的に説明できるほか、好奇心や葛藤や知的

創造といった心の働きについても説明ができる。具体例として自閉症を挙げれば、自閉症

は脳内ディスプレイのサイズの障害であり、脳内ディスプレイがとても小さいから 1 度に

1 つの情報処理しかできないのが病態機序であると説明することが可能である。脳内ディ

スプレイという概念を用いると、さらに統合失調症の機序についても説明が可能であり、

新たな治療戦略を発想することを可能性の視野に含めることが可能である。脳内ディスプ

レイという概念は精神疾患の機序を考えるうえで有用であると思われたので紹介する。

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02. 当院で経験した急性壊死性脳症 13例の臨床的検討

○宇根岡紗希、守谷充司、荒川貴弘、篠崎まみ、安西豪人、阪本昌樹、鈴木力生、

新田恩、北村太郎、西尾利之、高柳勝、村田祐二、大浦敏博(仙台市立病院 小児科)

急性壊死性脳症(acute necrotizing encephalopathy of childhood、以下 ANE)は急

性脳症・脳炎の 1亜型であり、臨床症状、検査所見、画像所見から総合的に診断される。

ANEの発症はインフルエンザウィルス、ヒトヘルペスウィルス 6型などのウィルス感染症

が原因となることが知られており、重症な経過をたどることが多い。ANEに特徴的な画像

所見として両側視床病変は必発で、大脳側脳室周囲白質、内包、被殻、脳幹、小脳に病変

を認めることがある。ANEの治療としては発症早期のステロイドパルス療法が推奨されて

いるが、ANEが稀な疾患であるためまだ確立されていない。

2017年に当院で ANEの 1症例を経験した。症例は 1歳 7か月男児。熱性痙攣重積のた

め当院へ転院搬送となり ICUで人工呼吸管理の上、脳平温療法、ステロイドパルス療法、

免疫グロブリン、免疫抑制剤などの集中治療を行った。頭部 CTで大脳白質、視床、小

脳、脳幹など広範囲に低吸収域を認め、時間経過とともに増悪した。治療は抵抗性であ

り、生命予後は不良であった。1994年から 2017年まで当院で ANEの診断に至った 13例

の臨床経過を後方視的に検討し、文献を踏まえ考察する。

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03. 初回喫煙後に発症した急性好酸球性肺炎の1例

○大黒顕佑、金美賢、加納伸介、宮野峻輔、堀野智史、有馬正貴、工藤充哉

(大崎市民病院 小児科)

滝田克也 (大崎市民病院 呼吸器内科)

症例は 15歳男児。発熱、咳嗽に加え呼吸苦が短期間で進行したため、発症 4日目に近

医より紹介され、当科入院となった。胸部レントゲンと CTで両側胸水と末梢優位のびま

ん性スリガラス影を認め、血液検査では好中球優位の白血球上昇と CRP上昇を認めた。感

染性肺炎としては非典型的な画像所見であると考え詳細な問診を行ったところ、発症 3日

前に喫煙していたことが発覚した。病歴と画像所見から急性好酸球性肺炎を疑い、気管支

鏡検査で気管支肺胞洗浄液中の好酸球増加を認めた。急性好酸球性肺炎の診断でステロイ

ド治療を開始し、速やかに症状と画像所見は改善した。

急性好酸球性肺炎は喫煙を契機として若年成人に発症することが多いとされ、急激な経

過で呼吸困難が出現することが特徴である。まれな疾患ではあるが小児領域でも報告が散

見され、非典型的な肺炎像を認めた際には、本症を念頭において喫煙を含めた病歴聴取を

行うことが重要であると考えられた。

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04. 当院救急外来を受診したアナフィラキシー104例の検討

○荒川貴弘、新田恩、宇根岡紗希、篠崎まみ、安齋豪人、阪本昌樹、守谷充司、

鈴木力生、北村太郎、西尾利之、高柳勝、村田祐二、大浦敏博

(仙台市立病院 小児科)

2015年 1月から 2017年 7月に当院救急外来を受診し、食物が原因と考えられアナフィ

ラキシーと診断された 104例について後方視的に、原因食物・年齢・症状のグレード別・

治療について検討した。アナフィラキシーは原因食物の誤食が半数を占めると言われてい

るが、今回の検討では 84%が初発例でアレルギーの既往も特になかった。原因食物では、

卵(38%)・牛乳(16%)・小麦(8%)という小児の代表的なアレルギー原因食物が多かったもの

の、他の原因も多岐に渡るものだった。年齢は 65%が 3歳未満であり、特に 1歳未満が

23%と最も多かった。症状別ではショックが 5%存在し、皮膚症状が 91%とその割合が最も

多く、次いで呼吸器症状を 74%、消化器症状を 52%認めた。また原因食物摂取から発症ま

での時間では摂取直後が 54%と最も多く、1時間以内が全体の 80%と、早期発症が多いこ

とが分かった。治療では、アドレナリン筋注を施行した症例が 30%あり、当院ではその有

無に関わらず全例でステロイド、H1及び H2受容体拮抗薬の投与を行い 1泊の経過観察入

院としている。今回の検討から初発のアナフィラキシーが多いことが分かり、代表的な食

物以外でも症状が出る可能性があることや、症状が出た場合の対処法について保護者も含

めて啓蒙する必要があると思われた。ショックを呈した症例も一定割合あることから、初

発であってもアナフィラキシーの診断を迅速に行い、病院到着前後に関わらずアドレナリ

ン筋注を迷わず施行することが大切であると考えた。

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05. 2か月健診時股関節超音波検査で発見された発育性股関節形成不全例に

おける臨床所見および危険因子の分析

○大橋芳之 (大はしこどもクリニック)

【はじめに】発育性股関節形成不全(DDH)は股関節脱臼から永続的な関節痛や歩行障害

を来すため早期に発見すべき疾患である。前回 DDHのスクリーニングを目的として 2か月

健診時に股関節超音波検査を行い陽性例の臨床像や重症度について報告したが、今回は超

音波検査陽性例について、現行のスクリーニング法と比較するためその基準項目である臨

床所見や危険因子を分析した。

【方法】2009年 1月から 2016年 12月まで 2か月健診で当院を受診し股関節超音波検

査を施行された 1708例(男児 912例、女児 796例)について宮城県の股関節脱臼スクリ

ーニングで用いられている危険因子別に DDHの割合を統計学的に比較した。

【結果】超音波検査で陽性となったのは 115例(男児 17例、女児 98例)で、女児

(p<0.0001)、分娩時骨盤位(p=0.04)で有意に多かった。低出生体重児(<2500g)では DDH発

症頻度はむしろ少なかった(p=0.03)。生まれた季節、在胎週数、家族歴の有無では有意差

は見られなかった。大腿皮膚溝非対称や開排制限などの臨床所見について健診時に指摘で

きたものは 36例(31.3%)であったが、健診時指摘されなかった例のうち 26例(22.6%)は整

形外科での 2次精検で指摘された。危険因子がスクリーニング陽性となる 3個以上有して

いたのは 3例(2.6%)で、危険因子 3個以上と 3個未満では DDHの割合に有意差は見られな

かった。

【結語】臨床所見と危険因子の組み合わせたスクリーニング法による DDHの捕捉は不十

分であり股関節超音波検査の実施も含めた検討が必要と思われる。

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06. 鉄欠乏性貧血関連遺伝子 Helicobacter pylori sabA

○加藤晴一 (かとうこどもクリニック、杏林大学 感染症学)

大崎敬子、神谷茂 (杏林大学 感染症学)

Xue-Song Zhang、Martin J. Blaser (New York大学 微生物学)

Helicobacter pylori (HP) は特に小児の鉄欠乏性貧血 (IDA) の発症に関連するが、機

序は不明である。HPのヒトからの競合的な鉄摂取が有力な仮説であり、HPに IDA関連遺

伝子が存在する可能性を検討した。IDA小児 4例 (平均 14歳) 及び年齢・性をマッチさ

せた IDAのない 4例からの HP分離株について、DNAマイクロアレイ法により遺伝子発現

を比較し(≥3.5 倍の発現差を有意)、関連遺伝子候補の絞り込みを行った。また、鉄欠乏

の培養条件で同法を行い、鉄イオンによる発現調節も検討した。候補遺伝子は RT-PCR法

で遺伝子発現を確認した。結果は、通常の培養条件下の発現と比較して、両群共に鉄欠乏

条件で pfrは down regulation、fecA1や frpB1は up regulationと既報の結果と一致

し、本マイクロアレイ法の妥当性が示唆された。主要な鉄関連遺伝子 pfr、furや feoBな

どは両群間で有意差を示さなかった。非 IDA群に比べ、IDA群は 29の遺伝子が高発現、

11遺伝子が低発現を示した。高発現の遺伝子の中で coaX、外膜蛋白をコードする sabAや

sabB等の RT-PCR法での発現は、sabAのみが有意差(p=0.029)を示した。(結論)既知の

鉄関連遺伝子は IDAに関与していなかった。シアル酸結合蛋白をコードする sabAは IDA

関連遺伝子と考えられる。

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07. 周期性発熱症候群 15例の臨床的検討

○鈴木聡志、三浦拓人、石田智之、渡邉浩司、渡邊庸平、加賀麻衣子、大沼良一、

貴田岡節子、久間木悟 (国立病院機構仙台医療センター 小児科)

当科で 2014年 6月から 2017年 8月までの 3年 2か月間に経験した周期性発熱症候群

15例の臨床的検討を行った。男女比は 9:6と男児に多く、発症時年齢は平均 4.1歳(0~

11歳)で、PFAPA症候群 14例、家族性地中海熱 1例であった。PFAPA症候群の治療につ

いては、欧米からの報告ではプレドニゾロンが第 1選択とされているが発熱発作を予防で

きない。そこで我々は発熱発作抑制が期待できるシメチジンの投与を中心に治療を行っ

た。長期投与を行った 12例中 7例で、明らかに発熱周期の延長または発熱日数の短縮を

認めた。その中で発熱周期は消失したものの倦怠感・関節痛・口内炎の周期が残存した症

例が 1例あった。また、治療が無効であった1例で冠動脈拡張を認めた。一方、プレドニ

ゾロンの投与を行った 8例中 7例で 12時間以内に解熱が得られたが、6例で投与 6~9日

後に再発熱を認めた。発熱初期段階でのプレドニゾロン投与を継続している 1例では、服

薬後すぐに解熱するものの、発熱周期が 1か月から 2週間に短縮している。家族性地中海

熱の症例は発熱を 2~3週間周期で繰り返し、腹痛、関節痛、頭痛などの症状も強く MEFV

に変異(E148Q、P369S)が確認されたためコルヒチン投与を行っている。

このように間欠的に発熱を繰り返す症例では周期性発熱症候群の可能性を考慮し、冠動

脈を含めた精査と注意深い経過観察が必要である。また、今回我々が経験した PFAPA症候

群症例ではシメチジン投与により約半数で発熱発作抑制効果が認められた。

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08. ANKRD26遺伝子変異を有する先天性血小板減少症の1家系

○鈴木信、鈴木資、南條由佳、小沼正栄、佐藤篤、今泉益栄

(宮城県立こども病院 血液腫瘍科)

渡邊周永 (気仙沼市立病院 小児科)

笹原洋二 (東北大学病院 小児科)

血小板減少の要因は多岐にわたるが、近年、慢性的な血小板減少を呈する症例の一部に

おいて、先天性血小板減少症の原因遺伝子が同定できるようになった。

今回、我々は、血小板減少症の 1家系を経験し、遺伝子解析にて原因遺伝子の変異を同

定したので報告する。

発端者は1歳の男児で、鼻出血の止血困難の訴えで前医にて血小板低値を指摘され、当

科紹介。血液検査では、白血球・赤血球の 2系統には異常無し。血小板は 5.4万/μlで

あり、サイズは正常大であった。

家族歴では、患児の兄と父にも頻回の鼻出血のエピソードと血小板低値を認めた。ま

た、問診上は父方祖母、父方叔母、父方従兄についても血小板低値が疑われた。

患児と兄、姉、両親のうち、症状を有する 3人において同一の ANKRD26変異(c.-127A

→T)が同定された。

先天性血小板減少症は血小板サイズによって大きく分類されるが、正常大サイズの血小

板の場合、骨髄検査、前腕骨の異常、遺伝形式などによってさらに細分される。

ANKRD26変異は Autosomal dominant thrombocytopenia2(=THC2)とも呼ばれ、常染色体

優性遺伝の遺伝形式を呈し、正常大サイズの血小板減少を認めるほか、白血病などの家族

性腫瘍のリスクがある。そのため、適切な診断と継続したフォローがなされることが望ま

しい。

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09. RSウイルス感染を契機に心筋障害が顕性化したミトコンドリア病の1例

○篠崎まみ、新田恩、鈴木直生、寺嶋祥、宇根岡紗希、荒川貴弘、安斎豪人、阪本昌樹、

守谷充司、鈴木力生、北村太郎、西尾利之、高柳勝、村田祐二、大浦敏博

(仙台市立病院 小児科)

9歳男児。37週 2694gで出生、生来発達の遅れを指摘されていた。6歳時に胃腸炎、発

熱後に歩行困難、視力障害、傾眠傾向を認め、急性脳症疑いで当院に救急搬送。高乳酸血

症(7.5mmol/l)、乳酸/ピルビン酸比上昇(30)、頭部 MRIにて両側頭頂後頭葉の皮質・皮

質下に T2WI/FLAIRで高信号域を認めミトコンドリア病が疑われた。mtDNAの解析で

A3243G変異を認め、末梢血でのヘテロプラスミーの割合は 80%であった。心電図では、

V5-V6での平坦 T波とエコーにて左室の全周性の 130% of Normalの壁肥厚など心筋症の

所見を認めたが、進行なく経過観察していた。9歳時に発熱、咳嗽がみられ受診、RSV気

管支炎の診断で入院。HR 155回/分、CK 11032、CK-MB 134 U/L、BNP 78.9、トロポニン I

114pg/mlと上昇、心電図上Ⅱ・Ⅲ・aVFと V5-6の ST低下と陰性 T波を認め、逸脱酵素の

上昇から虚血性変化と矛盾しない所見であった。左室壁運動低下は認めなかった為、酸素

投与と対症療法を行ったところ 1週間後には心電図変化および血液所見は改善した。発

熱・感染による頻脈と RSV気管支炎により全身の酸素需要が増大し、心筋障害まで来した

可能性が示唆された。異常ミトコンドリア率は 80%と高く、心筋症合併のリスクの高い症

例であり、運動制限に加え、感染時にも注意が必要であると思われた。

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10. インスリン中断により糖尿病性ケトアシドーシスと急性膵炎を来たした

1型糖尿病の1例

○三浦啓暢、菅野潤子、高橋俊成、川嶋明香、松木琢磨、市野井那津子、上村美季、

熊谷直憲、呉繁夫 (東北大学病院 小児科)

藤原幾磨 (東北大学病院 小児科、東北大学大学院医学系研究科 小児環境医学分野)

インスリンは糖代謝のみならず、脂質分解にも関わっており、高度のインスリン作用不

足があると、高トリグリセリド血症(高 TG血症)となる diabetic lipemiaという病態が

起こることが知られている。我々は、治療アドヒアランス不良により糖尿病性ケトアシド

ーシスを発症し、急性膵炎を併発した 1型糖尿病の女児例を経験した。症例は 14歳女

児。1歳時に 1型糖尿病を発症し、7歳時に母親による管理から自己管理へと切り替え

後、血糖コントロール不良となった。14歳 5か月時、嘔吐と顔色不良あり、当院に救急

搬送され、糖尿病性ケトアシドーシスの診断で入院となった。膵酵素上昇あり、造影 CT

検査で急性膵炎の診断となった。急性膵炎の原因には脂質異常症の関連が考えられた。高

TG血症は急性膵炎の発症のリスクとなるため、糖尿病の血糖コントロール不良例や初発

時には急性膵炎の合併に注意しなければならない。

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11. 思春期早発症、GH産生下垂体腺腫を併発した McCune-Albright症候群の

女児例

○池田美希、橋本峻、相原悠、池田秀之、湯沢健太郎、越浪正太、松田直、金城学、

鈴木豊 (八戸市立市民病院 小児科)

藤原幾磨 (東北大学病院 小児科)

McCune-Albright症候群(MAS)は、GNAS1遺伝子の機能獲得型体細胞変異に起因する疾患

であり、線維性骨異形成、皮膚カフェオレ斑、内分泌疾患を三主徴とする。MASの有病率

は 10~100万人に 1人と稀な疾患であり、そのうち約 25%に GH産生腺腫が合併する。今

回、我々はゴナドトロピン非依存性思春期早発で発症し、GH産生下垂体腺腫と線維性骨

異形成の併発を認め、MASと診断した女児例を経験したので報告する。

症例。1歳 8か月時、乳房腫大を主訴に当院初診。頭部 MRIは異常所見なし、LHRH負荷

試験は思春期前反応であり、周期性の E2上昇と左卵巣嚢腫を認め、自律性機能性卵巣嚢

腫と診断した。その後成長の促進(身長 +3.6 SD)あり、4歳 6か月時に GH産生腫瘍を疑

い再精査を行った。E2 39.6 pg/mL、IGF-Ⅰ 340 ng/mL、GHは 75gOGTTで持続性高値(≧5

ng/mL)、TRH負荷試験で奇異反応を示し、頭部 MRIで下垂体前葉左側に微小腺腫と考える

病変を認めた。また骨シンチグラフィで顔面骨に多発性に集積像あり、頭部 CTで多発性

の線維性骨異形成と診断した。現在、顔面骨病変に伴う視覚・聴覚の障害は認めていない

が、今後進行していく可能性があり、また顔面骨変形による容姿の変化、疼痛などが危惧

される。

小児領域での MASの GH産生腺腫の治療経験は本邦では稀である。手術困難例も多く、

薬物療法についてもその効果は確立していない。症状の進行状態を注意深く経過観察しな

がら、内科的・外科的治療を含め治療介入のタイミングと治療法の十分な検討が必要であ

る。

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12. 重症拡張型心筋症に対する小児用補助人工心臓 Berlin Heart EXCOR

Pediatricの使用経験

○小野頼母、元野憲作、濱本奈央、大崎真樹 (静岡県立こども病院 循環器集中治療科)

土井悠司、田邊雄大、内山弘基、石垣瑞彦、佐藤慶介、芳本潤、金成海、満下紀恵、

新居正基、田中靖彦 (静岡県立こども病院 循環器科)

福場遼平、坂本喜三郎 (静岡県立こども病院 心臓血管外科)

心臓移植へのブリッジとして体外設置式補助人工心臓は小児でもしばしば装着が試みら

れるが、これまでは国内で使用可能な小児専用回路がなく、成人用回路を各施設で工夫す

ることで小児患者へと応用してきた。2015年より小児用補助人工心臓 Berlin Heart

EXCOR Pediatricが保険償還され、静岡県立こども病院の第一例目として重症拡張型心筋

症へ EXCORを装着したので報告する。症例は 7歳女児。7か月前、学校検診で心電図異常

を指摘。二次検診までは受診するも両親の判断で三次検診を受診せず。1か月前から易疲

労を自覚。1週間前から咳嗽・呼吸困難感も出現し、前夜には呼吸促迫を認めるようにな

ったため近医を受診。頻脈および心拡大を認め、心エコー上、左室内腔の拡大と収縮能低

下を伴っており、拡張型心筋症を疑われ当院 CCUへ緊急搬送された。10日間にわたる人

工呼吸器管理、強心剤持続静注、利尿剤などの集学的治療に反応し一時は一般病棟へ転出

できたが、呼吸器感染を契機に心不全が増悪し CCUへ再入室した。6日間の ECMO管理の

のち、入院後 1か月で EXCORを装着した。EXCOR装着後は速やかに人工呼吸器から離脱可

能だった。これまでに開胸血腫除去を 1回、ポンプ交換を 1回行っている。現在は装着後

10か月が経過し、ADLはほぼ全自立、入院にて移植待機中である。

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13. 心臓 MRI検査による心房中隔欠損症の血行動態評価

○髙橋怜 (東北大学病院 小児科)

矢尾板久雄、大軒健彦、川合英一郎、小澤晃、田中高志

(宮城県立こども病院 循環器科)

【背景】 心臓 MRI検査は被曝することなく、任意の断面で心血管系の形態評価、cine

MRIによる動画での心室容量評価、Phase contrast (PC) 法による血流の定量測定、心筋

線維化等の評価が可能である。血行動態評価に有用な検査として、小児先天性心疾患領域

でも徐々に臨床応用されている。

【目的】 心臓 MRI検査で得られた結果を心臓カテーテル検査の結果と比較し、その有

用性や問題点を明らかにする。

【対象および方法】 2016年 9月から 2017年 9月の間、宮城県立こども病院循環器科

へ心臓カテーテル検査・治療のため入院した心房中隔欠損症患者のうち、心臓 MRI検査を

施行した症例について、結果を後方視的に比較検討した。

【結果】 対象は 24例であった。治療適応の指標となる肺体血流比や一回心拍出量につ

いて、心臓 MRI検査と心カテーテル検査で良い相関が得られた。その一方、部分肺静脈還

流異常などの合併奇形を捉えきれない症例があったが、スライス厚や角度調整不足が原因

と考えられた。これらは検査時の調整で修正可能であり、また他の検査での補完評価が可

能であった。

【結語】 心臓 MRI検査は、他の検査と組み合わせることで、より低侵襲で正確に血行

動態を評価し、治療に繋げることが可能な検査であることを確認した。

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14. 心機能低下を合併した WPW症候群に対するカテーテルアブレーション治

○木村正人、川野研悟、大田千晴、遠藤早紀、山口祐樹、呉繁夫

(東北大学病院 小児科)

福田浩二 (国際医療福祉大学病院 循環器内科)

心電図上デルタ波を認めるいわゆる顕性 WPW症候群のカテーテル治療は、一部の例外を

除き頻拍発作が出現したのちに検討されるのが一般的である。一方、小児においては体格

的な理由から頻拍発作の出現後もできる限り薬物治療で頻拍発作をコントロールしている

のが現状である。

今回、我々は心機能低下の原因が WPW症候群による副伝導路の早期興奮と考えられた、

明らかな頻拍発作歴のない顕性 WPW症候群 4例にカテーテルアブレーションを施行し、3

例で心機能の回復を認めた。心機能回復を認めなかった症例では治療後早期に顕性デルタ

波の再発があったことから心機能低下の原因に WPW症候群による副伝導路の関与が示唆さ

れた。また、2例は拡張型心筋症として他院にて加療されており、これまで拡張型心筋症

と診断されていた症例中に WPW症候群が原因であり、カテーテルアブレーションにより心

機能が回復する症例も存在する可能性があることが示唆された。

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15. 神経線維腫症 1型に高血圧を合併した2症例

○山口祐樹、木村正人、川野研悟、大田千晴、呉繁夫 (東北大学病院 小児科)

大浦敏博 (仙台市立病院 小児科)

小林朋子 (東北メディカル・メガバンク機構)

高瀬圭 (東北大学病院 放射線診断科)

神経線維腫症 1型(NF1)は全身の神経線維腫とカフェオレ斑と呼ばれる特徴的な色素班

を主徴とする比較的頻度の高い遺伝病である。しかし NF1のまれな合併症として高血圧を

認めることはあまり知られていない。NF1に合併する高血圧は大きく分けて腎動脈狭窄症

などの血管病変によるものと褐色細胞腫の合併によるものの2つの要因がある。今回 NF

1の血管病変が原因と考えられた高血圧を呈した 2症例を経験したので報告する。

1例は大動脈縮窄症が疑われ当科に紹介となった女児例で、上肢の高血圧と上下肢の血

圧差をみとめた。当科紹介時にカフェオレ斑と Lisch結節を指摘され、NF1の診断となっ

た。4歳時に人工血管置換術、8歳時に吻合部の再狭窄に対しバルーン拡張術を施行し

た。軽度の高血圧残存しているものの経過は良好である。もう 1例は NF1のフォロー中に

高血圧を指摘され、精査の結果、左腎動脈狭窄症と診断した男児例であり 9歳時に経皮的

腎動脈形成術を施行した。これまで計 3回のカテーテル治療を行い徐々に高血圧が改善し

てきている。

NF1に合併する高血圧はまれではあるが、今回のように血管病変に起因し、侵襲的な治

療が必要となることがあるため、日常診療の中で定期的に血圧をフォローし、早期発見に

努めることが必要であると考えられる。

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16. 新生児リステリア症による敗血症で出生した超低出生体重児の救命例

○名和達郎、鈴木智尚、三浦雄一郎、内田俊彦、渡邉達也

(宮城県立こども病院 新生児科)

【はじめに】リステリア症は主に食品から媒介される感染症である。妊婦が感染した場

合、胎児や新生児にも感染し、髄膜炎や敗血症をきたすため著しく予後が悪い。今回、新

生児リステリア症による敗血症で出生した超低出生体重児の救命例を経験した。

【症例】母体は 29歳、1経妊 1経産。妊娠 25週 5日、前期破水と胎児頻脈のため、当

院に母体搬送となった。子宮内感染が強く疑われ、緊急帝王切開で出生した。出生体重

982 g、Apgar スコアは、8/1分、9/5分であった。NICU入室時、バイタルサインは体温

38.2 ℃、心拍数 200 /分、血圧 38/18 mmHgであった。胃液のグラム染色でグラム陽性桿

菌を認め、Listeria monocytogenesによる敗血症を疑い、アンピシリンを 300 mg/kg/d

で開始した。日齢 1に入院時血液培養から Listeria monocytogenesが検出され、確定診

断を得た。敗血症による心不全のため、生後 30時間に肺出血、脳室内出血をきたした。

その後出血後水頭症となり、日齢 41にオンマヤリザーバー留置術を施行した。呼吸状態

や哺乳は良好であり、日齢 103、自宅退院となった。

【考察】新生児リステリア症は重症化しやすく、致死率も高い。本症例では早期診断・

治療を行なうことで救命できた。リステリア症の頻度は欧米に比べ日本では少ないが、新

生児の重症感染症例では鑑別すべき疾患と考えられた。

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17. 突然の大量喀血で発症した気管支動脈蔓状血管腫の生後1か月女児

○池田秀之、橋本峻、相原悠、池田美希、湯沢健太郎、越浪正太、松田直、金城学、

鈴木豊 (八戸市立市民病院 小児科)

木村正人 (東北大学病院 小児科)

大田英揮 (東北大学病院 放射線診断科)

乳児の大量喀血は速やかに気道確保できなければ救命が困難な救急疾患である一方、可

能な検査が限られるためその診断と病態把握に苦慮することが多い。本症例は妊娠 39週

4日に頭囲経膣で自然分娩され、体重 2,598 gで仮死なく出生した日齢 41の女児。一か

月健診を経て当院産科の育児サポート外来を受診中に、突然大量の鼻出血を生じ、外来助

産師が心肺停止を確認。たまたま居合わせた小児科医が直ちに気管内挿管して蘇生。気管

内から大量の鮮血が吸引されたが、人工肺サーファクタントの気管内注入によって速やか

に止血された。緊急気管支鏡検査では右気管支内腔からの持続性出血が観察された。出血

源の検索では、胸部造影 CTで右肺 S9領域に斑状異常信号が認められたため肺動脈のカテ

ーテル造影を行ったところ、同部位に一致して気管支動脈と肺動脈の間に異常短絡血流

(気管支動脈蔓状血管腫)が同定された。これが今回の出血源と判断し、選択的気管支動

脈塞栓術によって短絡血流は消失した。生後 6か月の時点で成長発達に異常なく、脳画像

診断上も異常信号は指摘されていない。乳児喀血はきわめて珍しいが、初期蘇生と肺出血

の止血に成功するとともに、出血源を同定できた貴重な症例として報告する。

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18. 嘔吐、体重増加不良、発熱にて発見された腎性尿崩症の1例

○佐々木太郎、熊谷直憲、内田奈生、呉繁夫 (東北大学病院 小児科)

昆野理恵子 (岩手県立中部病院 小児科)

【はじめに】腎性尿崩症は、抗利尿ホルモン(AVP)に対する腎集合管の感受性が低下

することで多尿を呈する疾患である。多飲多尿以外を契機に診断されることもある。

【症例】3か月男児。家族歴・周産期歴の異常なし。生後 2か月から頻回の嘔吐があ

り、小児外科で精査されるも異常を認めなかった。その後も嘔吐が続き、体重増加も不良

で、間欠的な微熱もあったことから前医入院となった。入院時の採血で Na 157mEq/Lと高

値を認め、哺乳量も少なく脱水が疑われた。哺乳+経管栄養と輸液で約 175mL/kg/日の水

分を投与するも、血中 Naは 150台 mEq/Lが持続し、体重増加も不良であった。尿量が

5.3mL/kg/h程度と多く、尿浸透圧が低値で、投与した水分のほとんどが低張尿として漏

れている状態であった。AVPを測定すると 50pg/mLと上昇しており、腎性尿崩症の診断で

当院へ転院とした。

転院後は水分負荷を続けつつ、尿量減少を目的に低塩ミルクとヒドロクロロチアジドを

導入した。導入後は尿量が減少し、また血中 Naの低下とともに活気が出て哺乳量も増え

ていった。輸液なしで体重増加が良好なことが確認できたところで退院とした。

【考察】腎性尿崩症は多飲多尿以外に、乳児発症では発熱や体重増加不良を呈すること

がある。適切な介入が行わなければその後の成長・発達に影響が出るとされ、忘れずに鑑

別に挙げる必要がある。

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19. 急性増悪により腎機能低下を示した先天性水腎症の年長児例

○新妻創、内田奈生、高橋俊成、佐々木太郎、熊谷直憲、呉繁夫

(東北大学病院 小児科)

佐竹洋平、相野谷慶子、坂井清秀 (宮城県立こども病院 泌尿器科)

武山淳二 (宮城県立こども病院 臨床病理科)

【緒言】先天性水腎症は重症度により grade1から4に分類される。Grade1から 2の軽

症例は自然軽快率が高く腎機能低下を伴うことも少ないため、経過観察のみで治療を必要

としないことが多い。しかし、尿路感染症や肉眼的血尿、腰背部痛などの症状が出現した

際には、精査し診療方針を再評価する必要がある。

【症例】10歳女児。早産低出生体重児であり出生施設で顕微鏡的血尿と尿路奇形(詳

細不明)についても診療されていた。低身長のため前医を紹介受診し、ターナー症候群と

右水腎症 grade2、顕微鏡的血尿と診断された。転居に伴い 9歳時に当科を初診した。水

腎症の gradeや尿所見は前医の最終観察時点と同様であった。半年毎にフォローアップし

たが、10歳時に右水腎 grade4と急激な増悪を認め、DMSAシンチグラフィで同側の集積低

下を認めた。転居前から間欠的な右腰背部痛があったが、水腎症との関連は考えず、医療

者に報告していなかった。泌尿器科に紹介し、右腎盂形成術を施行された。

【考察】軽度の水腎症であっても、年長になってから急激に増悪する例があることが知

られている。本症例は転院を繰り返したこともあり、水腎症の症状についてどこまで説明

され理解しているか医療者と患者間で確認が不十分になっていた。無症状で経過すること

が多い疾患であるが、水腎症の症状と対応について本人・保護者に充分説明し理解しても

らった上で経過観察することが重要である。

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20. イホスファミドによる薬剤性 Fanconi症候群を呈した 1例

○髙橋俊成、稲垣徹史 (宮城県立こども病院 腎臓内科)

鈴木資、鈴木信、南條由佳、小沼正栄、佐藤篤 (宮城県立こども病院 血液腫瘍科)

【はじめに】Fanconi症候群は近位尿細管の全般性溶質輸送機能障害により本来再吸収

される物質が尿中への過度の喪失をきたす疾患群で、原因は多岐に渡り発症年齢も多様で

ある。今回我々は病歴および腎生検所見等よりイホスファミドによる薬剤性 Fanconi症候

群と診断した 1例を経験したため報告する。

【症例】14歳女児。悪性リンパ腫の診断で当院入院。入院後 6コースの化学療法施行

後の PETCT・腹部 MRIで腎浸潤が疑われ経皮的腫瘍・腎生検施行。腎組織には異常所見を

認めず腎機能は正常であった。その後 R-ICE療法を 5クール施行し骨髄移植。移植後の尿

検査で尿蛋白・尿糖と腎機能軽度低下を認め当科紹介。病歴より R-ICE療法 1クール施行

後より尿細管機能異常を認めていた。尿細管機能異常の鑑別目的に二回目の経皮的腎生検

施行し近位尿細管の脱落を伴う萎縮を認め、イホスファミドによる薬剤性 Fanconi症候群

と診断した。

【考察】後天性 Fanconi症候群の原因として薬剤性が多数を占めており、尿細管機能障

害を診断した際には薬剤によるものの可能性を念頭に置く必要がある。特に血液腫瘍疾患

等の多数の薬剤投与を行う際には定期的な尿検査が望ましいと考えられた。また、

Fanconi症候群では成長障害や骨形成異常などが出現する可能性があり慎重なフォローア

ップが必要である。

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21. ヒトヘルペスウイルス 6型と RSウイルスの混合感染により麻疹が疑わ

れた乳児例

○後藤悠輔、酒井秀行、工藤宏紀、西野美奈子、星能元、三上仁

(岩手県立中央病院 小児科)

【はじめに】麻疹に遭遇する機会は稀であるが、疑い例にはしばしば遭遇する。今回

我々は臨床経過から麻疹が疑われたが、ヒトヘルペスウイルス 6型(HHV6)と RSウイル

ス(RSV)の混合感染と判明した興味ある乳児例を経験したので報告する。

【症例】10か月女児

【主訴】発熱、咳嗽、発疹

【現病歴】入院 5日前から発熱、咳嗽、鼻汁があった。入院 2日前に顔面体幹を中心に

紅色の発疹が出現。前医で麻疹が疑われ精査加療目的に当科紹介となった。

【現症】体温 39.8℃ 元気なく臥床。頚部から体幹部にかけ紅色発疹を認めた。

Koplik spotsは認めず。聴診上喘鳴聴取せず。

【検査所見】白血球数 6680/μl 好中球 41% リンパ球 47% 異型リンパ球 12% LDH

602U/l 麻疹ウイルス IgM抗体(EIA) 陽性

【経過】入院 1日目に保健所経由にて県環境保健研究センターに咽頭、血液、尿の検体

を送付した。入院 3日目に解熱し発疹は消退傾向であった。PCRにより咽頭、血液、尿の

いずれの検体からも麻疹ウイルスは検出されず、HHV6が咽頭から検出された。麻疹抗体

値(HI)の上昇はなく、HHV6抗体値の上昇を認めた。外注検査会社に提出していた咽頭

拭い液から RSウイルスが分離同定された。

【考察】麻疹疑い例からしばしば突発性発疹の原因ウイルスである HHV6が検出され

る。突発性発疹は通常鼻汁や咳などのカタル症状を伴うことはなく麻疹とは容易に区別で

きるが、呼吸器ウイルスの混合感染があれば麻疹と紛らわしい経過をとることがある。

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22. RSウイルス感染症に High flow nasal cannula(HFNC)を導入した症例

の検討

○宮林広樹、齋藤あかり、鈴木恵美子、小野田正志、近岡秀二、藤山純一

(山形県立中央病院 小児科)

近年全国的に大流行している RSウイルス感染症は呼吸状態の悪化を認める際に入院が

必要となる代表的な下気道感染症疾患である。当院においても RSウイルス感染症による

入院数は近年増加傾向であり、その中には加湿や吸入、酸素、ステロイドなどの支持療法

のみでは呼吸管理が不可能で人工呼吸管理に移行する症例もある。HFNCは加温・加湿と

ともに高流量の酸素を与え、呼気に気道陽圧を加えることが可能であり、RSウイルス感

染症の管理には適している。また RSウイルス感染症の riskの高いと言われている低月齢

の患者にも鼻カニューラを用いることで NIV(Noninvasive ventilation)によるマスクの

閉塞感もなく哺乳など可能なことも利点の 1つである。当院では 2015年 11月以降 HFNC

を導入し、患者呼吸状態に合わせて補助換気することで人工呼吸管理を回避し良好な経過

を得られた症例を複数認めた。しかし、HFNC導入基準を明確に示している文献は現在の

ところなく導入時期は呼吸状態の速やかな改善には大事なものと考えられる。今回我々は

2015年 11月から現在(2017年 11月)に至るまでの過去 2年間における HFNCを導入した症

例を後方視的に検討し、導入前後の患者呼吸状態の改善を様々な点から比較するとともに

導入時期・基準も考察する。また当院における HFNC導入後(他疾患も含む)に改善を得

られずに挿管管理に至った症例との比較検討を考察に付け加え提示する。

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23. 当科で経験したパラインフルエンザウイルス感染症 285例の検討

○三浦拓人、鈴木聡志、石田智之、渡邉浩司、渡邊庸平、加賀麻衣子、大沼良一 、

貴田岡節子、久間木悟 (国立病院機構仙台医療センター 小児科)

佐藤光、大宮卓、渡邊王志、西村秀一

(国立病院機構仙台医療センター ウイルスセンター)

パラインフルエンザウイルス(PIV)は小児呼吸器感染症の最もありふれた原因ウイル

スの一つで、血清型により 1~4型に分類される。しかし、迅速診断ができないため臨床

像を把握しにくい。今回、我々は 2013年 2月から 2017年 7月までの 4年 6か月間に当院

で PIVが分離・同定された 285例について検討を行った。その結果、3型が 167例と最も

多く、次いで 4型 51例、1型 36例、2型 31例の順であった。検出時期は 3型が初夏に、

1型・2型・4型が秋季に多く検出された。性別は男児 160例、女児 125例と男児にやや

多く、罹患時の平均年齢は 1型 2.3歳、2型 4.5歳、3型 1.7歳、4型 2.2歳と 3型が低

年齢で罹患するのに対し 2型は罹患年齢が高いという特徴があった。入院時診断は 1型・

2型でクループの割合が高く、3型・4型で下気道炎が多かった。また喘鳴を聴取した割

合は 3型・4型で有意に高かった。治療では酸素投与を必要とした患者の割合は 1型・2

型に比べて 3型・4型で有意に高かった。以上より、3型はより低年齢で発症し重症化し

やすいことがわかった。そこで 3型に感染した患児について早産児と成熟児に分けて比較

したところ、早産児のほうが酸素投与を受けた割合が有意に高いことがわかった。このこ

とから早産の既往は 3型の重症化因子になると考えられた。その他の型についても臨床像

の特徴を詳細に解析したので併せて報告する。

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<優秀演題賞 歴代受賞者(敬称略)>

第 215回(H25・春) 堅田有宇 (国立病院機構仙台医療センター 小児科)

塙 淳美 (東北大学病院 小児科)

第 216回(H25・秋) 窪田祥平 (石巻赤十字病院 小児科)

松原容子 (国立病院機構仙台医療センター 小児科)

第 217回(H26・春) 内田 崇 (宮城県立こども病院 総合診療科)

鈴木菜絵子(国立病院機構仙台医療センター 小児科)

第 218回(H26・秋) 伊藤貴伸 (仙台赤十字病院 総合周産期母子医療センター 新生児科)

岩瀨愛恵 (仙台市立病院 小児科)

第 219回(H27・春) 阿部雄紀 (大崎市民病院 小児科)

相原 悠 (仙台市立病院 小児科)

第 220回(H27・秋) 鈴木智尚 (仙台市立病院 小児科)

三浦舞子 (国立病院機構仙台医療センター 小児科)

第 221回(H28・春) 佐藤優子 (坂総合病院 小児科)

目時嵩也 (国立病院機構仙台医療センター 小児科)

第 222回(H28・秋) 西條直也 (いわき市立総合磐城共立病院 小児科)

佐々木都寛(八戸市立市民病院 小児科)

<若手優秀演題賞 歴代受賞者(敬称略)>

第 223回(H29・春) 楠本耕平 (宮城県立こども病院 集中治療科)

星 雄介 (宮城県立こども病院 消化器科)

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日本小児科学会宮城地方会 若手優秀演題賞審査方法

1. 賞の目的

日本小児科学会宮城地方会では、2013 年春の第 215 回学会より、優れ

た研究発表に対し「優秀演題賞」の表彰を始めた。2017 年春の第 223 回

学会より、名称を「若手優秀演題賞」と改め、受賞者の条件を定めるこ

とにより、若手研究者の育成を図ることを目的とする。

2. 審査対象 地方会開催時年度で、卒後 10 年以内の発表筆頭演者とする。

3. 審査方法 拡大運営委員会が演題申込抄録の事前審査にて選出する。

審査対象者の抄録を拡大運営委員に事前に送付し、5 段階評価で対象演

題を採点する。採点基準は下記の通りとする。 ・対象演題の 5%程度を 5 点 ・対象演題の 15~20%程度を 4 点

・対象演題の 40~50%程度を 3 点 ・対象演題の 15~20%程度を 2 点 ・対象演題の 5%程度を 1 点

なお、対象演題の共同演者に採点者が含まれていた場合は、同演題を

採点対象から除外する。 平均得点の上位者2名を「若手優秀演題賞」に選出する。同点数など

で 2 名以上となる場合には、宮城地方会会長が受賞者 2 名を決定する。

4. 表彰 受賞者には賞状と金 3 万円を学会当日に贈呈する。

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[査読者一覧]

関連病院(11 箇所) 鈴木 豊 八戸市立市民病院

三上 仁 岩手県立中央病院

藤山 純一 山形県立中央病院 鈴木 潤 磐城共立病院 大浦 敏博 仙台市立病院

久間木 悟 仙台医療センター 永野千代子 仙台赤十字病院

今泉 益栄 宮城県立こども病院 工藤 充哉 大崎市民病院

大原朋一郎 みやぎ県南中核病院 伊藤 健 石巻赤十字病院

医会 奥村 秀定 宮城県小児科医会

川村 和久 仙台小児科医会

大学 呉 繁夫 東北大学

坂本 修 東北大学 笹原 洋二 東北大学

森本 哲司 東北医科薬科大学 (プログラム委員兼任)

宮城地方会運営委員 (プログラム委員会)

中川 洋 仙台市医療センター

梅林 宏明 宮城県立こども病院 西尾 利之 仙台市立病院

花水 啓 花水こどもクリニック

大橋 芳之 大はしこどもクリニック

菅野 潤子 東北大学 植松 貢 東北大学 熊谷 直憲 東北大学

力石 健 東北大学

木村 正人 東北大学

埴田 卓志 東北大学

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日本小児科学会宮城地方会会則

第 1章 総則

第 1条 本会は日本小児科学会宮城地方会と称する。

第 2条 本会は小児医学の進歩、発達及び知識の普及を図ると共に、会員相互の親睦を図ることを目的

とする。

1.学術講演会の開催。

2.各種の団体、機関との連絡を図り、社会の福祉に寄与する事。

3.その他必要と認めた事業。

第 3条 本会は事務局を東北大学医学部小児科教室に置く。

第 2章 会員

第 4条 本会は小児医学に関心を有する医師で宮城県在住の者及び県外居住者の希望者をもって構成す

る。但しその他学会の主旨に賛同する者は、運営委員会の承認を得て、本会会員となることが

出来る。

第 5条 会員になろうとする者は、氏名、現住所及び勤務する者は勤務先を記し、当該年度の会費を添

えて、事務局へ申込むものとする。会員で前項に変更を生じた時は,速やかに事務局に届け出

なければならない。

第 6条 退会しようとする者は、その旨を事務局へ届け出なければならない。但し既納の会費は返付し

ない。

第 3章 役員

第 7条 本会に次の役員を置く。

会長 1名,運営委員 若干名,監事 2名

第 8条 本会に名誉会員若干名を置くことが出来る。名誉会員は本会に特に功労のあった会員のうちか

ら会長の推薦を受け、総会の承認を経て決定される。名誉会員は会費を納入しない。

第 9条 (1)会長は全会員の投票により決める。任期は 4年とする。但し再任は妨げない。

(2)運営委員は総会において会員の互選で決める。

(3)運営委員長は会長がこれを兼ねる。

(4)運営委員・監事の任期は 2年とする。但し再任は妨げない。

第 10条 (1)運営委員は、運営委員会を組織し、庶務、会計、渉外連絡その他、本会の運営に関する

事項を協議、処理し、総会に報告する。監事は、会計を監査する。

(2)運営委員会は、委員長が必要に応じて召集する。

第 4章 学会

第 11条 (1)地方会:運営委員会の議を経て、会長がこれを開催する。

(2)北日本小児科学会:当番年度においては当地方会がその主催、運営にあたる。

(3)学会における学術発表者は会員とする。ただし会員以外の場合は運営委員会の承認を要

するものとする。

第 5章 総会

第 12条 (1)当該年度第 1回の学会の際、会長が総会を開催する。必要に応じ運営委員会の議を経て、

臨時総会を開催することが出来る。

(2)総会は会員現在数の 1/10 以上を以て成立する。

(3)総会の議事は、出席会員の過半数を以て決する。

(4)総会の議長は出席会員の中から互選する。

第 6章 会計

第 13条 本会の会計年度は毎年 4月 1日に始まり、翌年 3月 31日に終り、経費は会費その他の収入に

よって支弁する。ただし運営委員会の認めるものを会費免除とする。

第 14条 会員は毎年会費 5,000 円を納入する(平成 6年度より)。会費の額の変更は総会の議を経るも

のとする。

第 15条 総会において、庶務、会計の報告を行う。

第 7章 会則変更

第 16条 本会会則は総会の議を経て変更することが出来る。

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附則

(1)本会会則は昭和 44年 11月8日より施行する。

(2)平成 7年 6月 24日一部改訂。

(3)会費は 3年以上滞納の場合は退会とする。

(4)平成 20年 6月 7日一部改訂。

(5)会費免除対象者として第 8条(名誉会員)のほか、海外への留学者、海外からの留学生、初期研修

医とする(平成 20年 6月 7日)。

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日本小児科学会宮城地方会運営委員

(敬称略)

会長 呉 繁夫

宮城地方会 運営委員

〇常任 中川 洋

〇監事 岡田 美穂

〇会計 植松 貢

〇プログラム委員

・勤務 梅林 宏明 西尾 利之

・開業 大橋 芳之 花水 啓

・東北大学 熊谷 直憲 植松 貢 力石 健

木村 正人 菅野 潤子 埴田 卓志

・東北医科薬科大学 森本 哲司

宮城地方会 北日本小児科学会幹事

呉 繁夫 川村 和久 今泉 益栄

坂本 修 笹原 洋二

宮城地方会会員総数 440 名(平成 29 年 10 月現在)

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メーリングリスト参加のお願い

日本小児科学会宮城地方会メーリングリストは、現在 249 名の地方会会員に

登録頂いております。メーリングリストに参加されますと、地方会のご案内や

プログラムを早めに把握することができます。地方会の事務運営上、多くの会

員の皆様にメーリングリストの会員になっていただきたく存じます。個人情報

の問題もありますので、東北大学小児科地方会事務局の熊谷が管理者となりま

す。

日本小児科学会宮城地方会

事務局代表 熊谷 直憲

◆メーリングリストへの参加方法◆

(1)お名前、勤務先、勤務先住所を記したメールを、

メーリングリストに登録したいメールアドレスで作成する。

(2)メールの件名を「メーリングリスト参加希望」とする。

(3)作成したメールを下記アドレス(東北大学小児科医局)へ送る。

[email protected]

(4)登録済みをお知らせする返信メールが届く。

以上の手続きで、登録は完了です。

尚、既に参加されている方はお申込み不要です。

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謝辞

この度、第 224回日本小児科学会宮城地方会を開催するにあたり、多くの企業・団体の

方々にご支援をいただきました。ここに厚く御礼申し上げます。

第 224回日本小児科学会宮城地方会

会長 呉 繁夫

<ご協力企業一覧>

◆ アステラス製薬株式会社

◆ アレクシオンファーマ合同会社

◆ 協和発酵キリン株式会社

◆ CSLベーリング株式会社

◆ 第一三共株式会社

◆ 大日本住友製薬株式会社

◆ 日本イーライリリー株式会社

◆ ノボ ノルディスク ファーマ株式会社

◆ ファイザー株式会社

2017 年 10月 13現在

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次回 第 225 回宮城地方会開催予定

2018(平成 30)年 7 月 1 日(日)

於 星陵オーディトリアム