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JNC TJ8400 2003-063 低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び 変質評価(Ⅱ)(概要) (核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書) 2003 2 株式会社 大林組

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Page 1: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び

変質評価(Ⅱ)(概要)

(核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書)

2003年 2月

株式会社 大林組

本資料の全部または一部を複写複製転載する場合は下記にお問い合わせ

ください 319-1184 茨城県那珂郡東海村大字村松4番地49

核燃料サイクル開発機構 技術展開部 技術協力課

Inquiries about copyright and reproduction should be addressed to

Technical Cooperation Section Technology Management Division Japan Nuclear Cycle Development Institute

4-49 Muramatsu Tokai-mura Naka-gun Ibaraki 319-1184 Japan

copy 核燃料サイクル開発機構 (Japan Nuclear Cycle Development Institute)

2003

JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063

2003年 2月

低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価(Ⅱ)(概要) (核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書)

入矢桂史郎 藤井健介 田島孝敏 竹田宣典 久保博

要 旨

本研究ではベントナイトや岩石の変質を抑制する対策として開発した低アルカリ

性セメントの実用性に関する諸特性を把握する室内試験と変質抑制効果の長期試験を

実施した具体的な実施項目はフライアッシュの混合率を変えた HFSC中での鉄筋腐食に関する促進試験HFSC の自己収縮試験低アルカリセメント浸出水を用いたベントナイトおよび岩石の変質試験ベントナイトおよび岩石の高アルカリ変質に関

する研究成果のまとめである 本研究の成果を要約すると次のようになる 低アルカリセメントの自己収縮に関して HFSCのセメントペーストにおける自己収縮ひずみはOPCと同じかあるいは大きいフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなりHFSC226では OPCと同等であったまたコンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうがOPCより小さい ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次鉱物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた 本報告書は(株)大林組が核燃料サイクル開発機構との委託研究契約により実施した研究成果に関するものである 機構担当課室東海事業所 環境保全研究開発センター 処分研究部 処分材料研究グループ (株)大林組

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February 2003

Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

(Document Preparent by Other Institute Based on the Trust Contract)

KIRIYA KFUJII TTAJIMA NTAKEDA and HKUBO

Abstract Applicability and potential for decreasing alteration of Low alkaline cement which has been produced for preventing alteration of bentonite and rock is investigated Applicability is assessed by laboratory test and preventing potential is assessed by long term accelerating test This study consists of accelerating corrosion test of rebar in saline atomogeneous shrinkage test of HFSC accelerating test for bentonite and rock and summarizing rock and bentonite alteration Automogenous shrinkage Automogenous shrinkage of HFSC is larger than OPC in cement paste It decreases corresponding to rise of fly ash content The shrinkage in HFSC226 is quite similar to OPC in cement paste The shrinkage in HFSC concrete is smaller than OPC concrete 720 days alteration test of bentonite by solution of low alkaline cement Ion exchange to Ca bentonite and calcite are observed in the solid phase Thin plate of bentonite is disappeared and round shaped secondary mineral is generated Dissolution of bentonite and generation of secondary minerals are limited in pH 110 or less since pH of bentonite is about 100 720 days alteration test of rock by solution of low alkaline cementCalcite is generated in every test Very small evidence is observed as generation of secondary minerals Etched pits are observed in tuff A due to corrosion This work was performed by OBAYASHI Co under contract with Japan Nuclear Cycle Development Institute JNC Liaison Material Research group Waste Isolation Research Division Waste

Management and Fuel Cycle Research Center Tokaiworks OBAYASHI CO

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目 次 はじめに 1

1 低アルカリ性コンクリートにおける鉄筋腐食 2 11 試験概要2 12 コンクリートの配合 2 13 試験の組み合わせ3 14 鉄筋腐食促進試験方法3 (1) 試験項目 3 (2) 促進試験条件 3 (3) 試験実施期間 4 15 塩分浸透標準試験方法4 16 pH測定試験方法 5 17 試験結果5

171 フレッシュコンクリート試験結果 5 172 圧縮強度および引張強度 5 173 鉄筋腐食 6

(1) 自然電位 6 (2) 分極抵抗 7 174 pH試験 8 18 考察8

181 塩分浸透性 8 182 塩分の固定化能力 8 183 pHの低下速度 9 184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合) 10

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係 10 (2)コンクリートの pHと腐食量の関係 11 (3) 腐食速度 12

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合) 12 186 腐食ひび割れ発生予測 14

(1) 塩化物イオン浸透予測 14 (2) 鉄筋腐食 14 (3) ひび割れ発生予測 15 (4) ひび割れ発生予測その 2 15

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価17 21 試験目的17 22 試験方法17 (1) 試験ケースとコンクリートの配合 17 (2) 自己収縮の測定方法 17 23 試験結果18 (1) フレッシュコンクリートの試験結果 18 (2) ペーストの自己収縮試験結果 18 (3) コンクリートの自己収縮試験結果 19 24 考察20

3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験 21 31 使用材料21 32 試験ケース 21 33 試験方法22 331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製 22 332 試料の浸せき 22 333 浸せき後の試料分析 22 34 試験結果23 341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの 変質試験 23 (1) X線回折 23 (2) 熱分析 25 (3) メチレンブルー吸着量 27 (4) 電子顕微鏡観察 28 (5) 液相の分析 29 342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験 30 (1) X線回折 30 (2) 熱分析 31 (3) 電子顕微鏡観察 32 (4) 液相の分析 33 35 まとめ 34 351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの 変質試験 34 352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験 35

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おわりに 36 参考文献 37

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表 目 次 表 11 コンクリートの配合 2 表 12 セメントごとの試験の組み合わせ 3 表 13 腐食促進試験の試験項目 3 表 14 試験方法と実施時期 4 表 15 供試体一覧 5 表 16 フレッシュコンクリート試験結果 5 表 17 分極抵抗測定結果7 表 18 pH測定結果 8 表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 8 表 110 HFSCの塩分固定能力 9 表 111 pHの抵抗予測 10 表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果 10 表 113 鉄筋の腐食速度 12 表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果 13 表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数 14 表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率) 15 表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期 15 表 118 ひび割れ発生年 15 表 119 ひび割れ発生年その 2 16

表 21 コンクリートの配合 17 表 22 フレッシュコンクリート試験結果 18 表 23 ペーストの自己収縮ひずみ 18 表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ 19 表 31 使用材料21 表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験 21 表 33 リーチング水の pHと化学組成 22 表 34 分析装置と条件 23 表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ 25 表 36 温度区間ごとの質量減少率26 表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 27 表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成 29 表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ 30

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表 310 温度区間ごとの質量減少率31 表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成 34

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図 目 次

図 11 自然電位の測定結果(HFSC424) 6 図 12 自然電位の測定結果(HFSC325) 6 図 13 コンクリートの pHと塩分固定能力 9 図 14 全塩分量と腐食減量率 11 図 15 コンクリートの pHと腐食減量率 11 図 16 腐食減量率 13

図 21 埋込みひずみ計設置方法 18 図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化 19 図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化 19

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写 真 目 次 写真 31 未処理試料のSEM写真(クニピアFreg) 28 写真 32 No41の SEM写真(リーチング水100720日) 28 写真 33 No42の SEM写真(リーチング水80720日) 28 写真 34 No43の SEM写真(リーチング水50720日) 28 写真 35 No44の SEM写真(花崗岩未処理) 32 写真 36 No44の SEM写真(花崗岩リーチング水80720日) 32 写真 37 No45の SEM写真(凝灰岩 A未処理) 32 写真 38 No45の SEM写真(凝灰岩 Aリーチング水80720日) 32 写真 39 No46の SEM写真(凝灰岩 B未処理) 32 写真 310 No46の SEM写真(凝灰岩 Bリーチング水80720日) 32

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はじめに

TRU廃棄物の処分システムでは構成材料にコンクリートや圧縮成型したベントナイトを用いることが考えられているが普通コンクリートは地下水と接することに

よって周辺地下水を高アルカリ性に変える場合がありベントナイトのゼオライト

化や周囲の岩石の変遷等に影響することが懸念されている1) この変質に対してセメントの改良として間隙水のアルカリ性を下げた低アルカ

リ性セメントの研究が進められているフライアッシュを高含有したHFSC(Highly Fly ash contained Silicafume Cement)の研究が進められこれまで鉄筋腐食に関する実用化研究を実施している2) 既往の研究でフライアッシュを 60混合した HFSC では塩化物イオンが浸透しなくても鉄筋腐食が確認されたまたシリカフュームを 20含む HFSC では自己収縮ひずみが大きくなることが懸念される さらに低アルカリセメントを使用した場合の長期のベントナイトの変質や岩石の

変質についても調べておく必要がある 以上の背景から本研究ではフライアッシュの使用率をかえた HFSC における鉄筋腐食の評価自己収縮性の評価を行い実用化の研究を実施したさらに HFSCの浸出液を用いたベントナイトおよび岩石の浸透試験を行いベントナイトおよび岩

石の高アルカリ変質について得られた知見をまとめた

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1 低アルカリ性コンクリ-トにおける鉄筋腐食

11 試験概要

既往の研究でフライアッシュを 60使用したHFSC(HFSC226 と称す)における鉄筋腐食促進試験を実施した2) 本研究ではフライアッシュの混合割合が異なる低アルカリ性セメント(HFSC)を使

用し水セメント比 30のコンクリートで供試体を作製し鉄筋腐食促進試験を実施することにより鉄筋腐食に及ぼす以下の要因の影響について促進試験による評価を

行った ①塩水濃度の影響 ②かぶりの影響 ③ひび割れ幅の影響

鉄筋の腐食に与えるセメントの影響を評価するために鉄筋腐食試験に使用したコ

ンクリートについて以下の試験を実施した ①塩分浸透量測定(促進環境および標準浸漬環境) ②pH測定

12 コンクリ-トの配合

表 11に使用したコンクリートの配合を示す 使用したコンクリートは水セメント比および細骨材率を一定としセメントの密度に

より調整を行ったものであるコンシステンシ-に関してはスランプフローが目標

範囲に入るように高性能 AE減水剤により調整した

表 11 コンクリートの配合

配合 WC 目標スラン

プフロー sa 単 位 量(kgm3) 使用

セメント 記号 () (cm) () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 575 807 673 Ctimes220

HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes230 HFSC

HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes300

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

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13 試験の組み合わせ

OPCHFSC424HFSC325において実施した試験の組み合わせを表 12に示す 表 12 セメントごとの試験の組み合わせ

セメントの種類 鉄筋腐食促進試験 塩分浸透促進試験 塩分浸透標準試験 pH 経時変化測定

HSFC424

HFSC325

HFSC226

OPC

14 鉄筋腐食促進試験方法

(1) 試験項目

鉄筋腐食促進試験の試験項目を表 13に示す

表 13 腐食促進試験の試験項目

腐食条件 パラメータ 使用セメント

WC () 固定条件 パラメータ 試験項目

HFSC424 30

塩水濃度

HFSC325 30

かぶり 25mm

人工海水濃度 50100飽和 (Clイオン濃度0918

27)

自然電位分極抵抗 鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量 塩分浸透量

pH

HFSC① 30

かぶり HFSC② 30

人工海水

濃度 100

かぶり 152535mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

HFSC① 30

ひび割れ幅 HFSC② 30

人工海水

濃度

100 かぶり 25mm

ひび割れ幅 020510mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

(2) 促進試験条件

本試験での促進条件は既往の研究と同じ促進条件とした促進条件は湿潤期間 3日間乾燥期間 4日間を 1サイクルとし13サイクルの乾湿繰返しを行った 湿潤乾燥条件は

湿潤条件50の人工海水に浸漬 乾燥条件5060RHの恒温恒湿室内

- - 3

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としたコンクリ-トのは打設後 28日間標準養生(水中 20養生)とし促進試験開始材齢を 28日として湿潤状態から開始して上記の促進試験を 13サイクル(91日間)実施した (3) 試験実施期間

表 14に試験方法と試験実施時期を示す

表 14 試験方法と実施時期

実施時期 試験項目 試験方法 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - コンクリート中の塩分濃度 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進試験開始時 (材齢 28日)

pH - 自然電位 -

促進 6 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 8 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 10 サイクル終了後 分極抵抗 - 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - 腐食面積率 JCI基準案 腐食減量 - コンクリート中の塩分分析 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進 13 サイクル終了後 (材齢 119日)

コンクリートの pH測定 -

15 塩分浸透標準試験方法

供試体はφ150times300mmの型枠を用いて製作した

コンクリートの種類はOPCHFSC424HFSC325 および HFSC226の 4水準とし

養生およびコーティングの方法は促進試験における塩分浸透量測定供試体と同様とした

28 日標準養生後人工海水濃度 100(Cl-イオン濃度 18)に 20の条件で浸漬し

鉄筋腐食促進試験の終了時にこの供試体を取り出し塩分浸透量を測定した

塩分浸透量の測定方法は鉄筋腐食促進試験と同じである

- - 4

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16 pH測定試験方法

この試験ではHFSC を使用した場合の長期的な浸漬液の pH の低下速度を測定した 鉄筋腐食促進試験で使用したコンクリートと同様な水セメント比のセメントペース

ト(水セメント比 30)を用いて直径 5cm高さ 10cm の円柱供試体を作成したなおセメントの種類はHSFC226HFSC424HFSC325である 円柱供試体は液固比が 21 となるようにイオン交換水中に浸漬し材齢 28 日

91日において円柱をスライスしたものを試料としpHを測定した pHの測定方法はスライスした試料を微粉砕した後試料 20gにイオン交換水 40gとなるようにイオン交換水中に浸漬し1週間放置した後pHを測定した 17 試験結果

171 フレッシュコンクリート試験結果

フレッシュコンクリート試験結果を表 15に示す

表 15 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート温度 ()

HFSC424 680times680 37 210 HFSC325 700times680 41 210 HFSC226 680times680 42 210

OPC 630times620 39 210

172 圧縮強度および引張強度

圧縮強度および引張強度試験結果を表 16に示す

表 16 圧縮強度および引張強度

圧縮強度 (Nmm2) 引張強度 (Nmm2) 記 号

材齢 28日 材齢 119日 材齢 28日 材齢 119日

HFSC424 748 938 415 619

HFSC325 516 736 355 491 HFSC226 338 549 - -

HFSC226の試験結果は既往の研究 2)より引用した

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173 鉄筋腐食

(1) 自然電位

図 11および図 12に自然電位測定結果を示す

-800

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 11自然電位の測定結果(HFSC424)

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし

18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 12 自然電位の測定結果(HFSC325)

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(2) 分極抵抗

表 17に分極抵抗測定結果を示す

表 17 分極抵抗測定結果 上段分極抵抗(Ωcm2) 下段腐食速度(microAcm2) 記号 海水濃度 かぶり ひび割れ

0 サイクル 6 サイクル 8 サイクル 10 サイクル 13 サイクル 2149 2262 2319 2247 1818 50

0012 0012 0011 0012 0015 2505 2038 2265 2377 2083

飽和 0011 0013 0011 0011 0013 2302 2105 1557 1914 2240

25mm

0011 0012 0017 0014 0012 2865 2645 2406 2434 2190 15mm 0009 0010 0011 0011 0012 3237 2948 2927 2889 2228 35mm

無し

0008 0009 0009 0009 0012 3531 3256 1139 1329 1246 02mm 0007 0008 0023 0020 0021 2482 2584 1512 1610 1305 05mm 0011 0010 0017 0017 0020 3614 2636 1742 1753 1208

HFSC424

100

25mm

10mm 0007 0010 0015 0015 0022 2276 2417 2400 2233 1800 50 0012 0011 0011 0012 0014 3044 2590 2320 2372 2106

飽和 0009 0010 0011 0011 0012 2875 2309 2300 2169 2279

25mm

0009 0011 0011 0012 0012 4000 2601 2430 2540 3333 15mm 0007 0010 0011 0010 0008 3283 2377 2220 2375 2330 35mm

無し

0008 0011 0012 0011 0011 3252 2701 2375 2151 1843 02mm 0008 0010 0011 0012 0014 3770 2233 1972 2035 1684 05mm 0007 0012 0013 0013 0015 2258 2385 2270 1571 1237

HFSC325

100

25mm

10mm 0012 0011 0011 0017 0021

- - 7

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174 pH試験

pH測定結果を表 18に示す

表 18 pH測定結果

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 4 HFSC424 1217 1202 HFSC325 1229 1221 HFSC226

28 1229 1216

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 3 HFSC424 1196 1188 HFSC325 1223 1219 HFSC226

91 1240 1241

18 考察

181 塩分浸透性

得られた拡散係数を基に塩分浸透に関する促進試験の促進倍率と定義し値を算

定した表 19に促進倍率を示す

表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 セメントの種類 促進試験の拡散係数①

(times10-8cm2s) 標準試験の拡散係数② (times10-8cm2s)

促進倍率①②

HFSC424 29 177 16 HFSC325 40 190 20 HFSC226 40 2057 02 OPC 44 108 35

182 塩分の固定化能力

OPCでは塩化物イオンが浸入した場合フリーデル氏塩として塩化物イオンを固定化する能力があるここでは塩分浸透試験から得られた全塩分量から可溶性塩分

を除いたものが塩分を固定化する能力と定義する 標準試験で測定された各セメントにおける塩分固定化能力を表 110 に示すまた

本研究で得られた pHと固定化された塩分量の関係を図 13に示す

- - 8

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表 110 HFSCの塩分固定能力 セメントの種類

固定された塩分量

(kgm3) pH 試験方法

HFSC424 065 1241 標準 HFSC325 022 1219 標準 HFSC226 000 1188 標準

OPC 098 1300 標準

y = -03404x2 + 93859x - 63495

-02

0

02

04

06

08

1

12

118 12 122 124 126 128 13 132

pH

固定された塩分量(kgm3)

図 117コンクリートのpHと塩分固定能力

183 pHの低下速度

本研究の期間中ではpHの変化に関しては浸漬 28日と 91日の 2点測定したここではpHと経過時間の関係が既往の研究3)と同様に直線と考えてpHが 110 および 100になる時間を算出した 本研究で得られた pHと経過時間の関係は次のようである HFSC424 pH(t)=-000254t + 1248 HFSC325 pH(t)=-000032t + 1221 HFSC226 pH(t)=-000222t + 1208 ここでt経過時間(日)である ここでは最も大きい pHの低下速度を用いてpHが 110と 100になるまでに必要な期間を推定した表 111 にその結果を示す以上からpHが 110に到達する期間はHFSCでは 2年以内との結果が得られた

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表 111 pHの低下予測

pH低下速度 経過時間(年) セメントの種類 初期 pH

1日当り 1年当り pH 110 pH 100 HFSC424 1248 160 267 HFSC325 1221 131 238 HFSC226 1208

000254 0927 117 224

184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合)

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係

これまで実験したひび割れのない供試体における pH と鉄筋位置での全塩分量と腐

食面積率および腐食減量率をまとめて表 112に示す

表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果

pH 鉄筋位置 セメントの

種類

人工海水 の塩化物イオ

ン濃度() 試験開

始前 試験終

了時 かぶり (mm)

全塩分量

(kgm3)

腐食面積

率() 腐食減量

率()

15 022 50 011 25 000 00 002 HFSC424 1203 1164 35 000 00 002 15 031 20 005 25 000 00 004 HFSC325 1172 1141 35 000 00 003 15 066 5370 058 25 031 1058 063 HFSC226 1143 1110 35 026 821 020 15 013 231 055 25 009 00 00 OPC

18

1300 1300 35 016 00 00

HFSC424 1203 1164 011 30 001 HFSC325 1172 1141 000 20 005 HFSC226 1143 1110 006 2818 140

OPC

27

1300 1300 009 00 00

HFSC226 1143 1110 114 1429 076

OPC 塩分練り込み

1300 1300

25

109 427 085 図 14に鉄筋位置の全塩分量と腐食減量を示すHFSC226と OPCの一部に塩分量が小さいにも関わらず腐食が進んでいるものが見られるが概ね全塩分量が大きくな

ると腐食減量率が大きくなる傾向が認められるHFSC に関しては塩分固定能力はなく塩分が浸透するとすぐに塩分環境下の腐食を始めると考えるべきである

- - 10

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全塩分量と減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

0 02 04 06 08 1 12

全塩分量(kgm3)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 14 全塩分量と腐食減量率

(2) コンクリートの pHと腐食量の関係

塩分が少ない状態(HFSC02kgm3以下OPC10kgm3以下)でのコンクリート

のpH(試験終了後)と腐食減量関係を図 15に示す コンクリートのpHと腐食減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

11 115 12 125 13 135

pH

腐食減量率()

図 15 コンクリートの pHと腐食減量率

- - 11

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pHが大きくなると塩分が存在しない場合の腐食量は小さくなっているしかしpHが 110 付近では急激に腐食減量率が大きくなったpH と腐食の関係を明確に定量化することはできなかったがpH1125 より pH が低くなると塩分がなくても腐食が進行することが認められる HFSC の配合を見ると本実験の範囲ではHFSC226 は塩分が浸透しなくても腐食する領域に位置しHFSC325 と 424 は塩分がこなければ腐食しない領域に位置すると考えられるただしHFSC ではフライアッシュのポゾラン反応とともに pH が低下してき110 を下回ることが想定されるために鉄筋コンクリート構造として工学的な検討を行う場合は塩分が浸透しなくても腐食すると考える必要があるさらに

HFSC226では塩分が存在する場合の腐食量と存在しない場合の腐食量は腐食減量率から見るとほぼ同等であった

(3) 腐食速度

HFSC226の塩分が鉄筋に到達しない供試体の腐食減量率をもとに塩分が存在しない場合の腐食速度を推定したHFSC226の 91日間におけるかぶり 25mmの腐食減量率は 0631で35mm の腐食減量率は 0201であったここで両者の平均をHFSC226の塩分が存在しない場合の腐食率とすると167年となる 一方既往の研究3)によれば一年間海洋環境下(海中)に暴露したHFSC226を用いた腐食速度は塩分が鉄筋まで到達しない条件下で 043年であった 次に塩分が存在する場合の腐食速度は塩分練り込み供試体の腐食減量率(07691日)と促進倍率 43倍から換算すると 071となる塩分が存在するときの腐食減量率はHFSC226と OPCでは076と 085とほとんど変わらないことから塩分が到達した後の鉄筋腐食量は pH に依存しないものと考えられる以上の計算を

HFSC424および 325に当てはめるとHFSC424および 325では塩分が浸入し到達しないと腐食しないということになる 鉄筋の腐食を考える上での腐食速度は表 113のようになる

表 113 鉄筋の腐食速度

セメントの

種類 pH(試験開始時)

塩分が浸透しないときの腐

食速度(重量年)

塩分が浸透したと

きの腐食速度 (重量年)

HFSC424 1164 HFSC325 1141 000

HFSC226 1110 043 071

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合)

ひび割れを有する場合の鉄筋の腐食減量率についての試験結果を表 114に示す既

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往の研究2)におけるOPCおよびHFSC226の試験結果についても参考として示した

表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果

セメントの種類 海水濃度 (Cl)

pH

かぶり (mm)

ひび割れ幅 (mm)

腐食面積率 ()

腐食減量率 ()

00 000 002 02 1600 019 05 1800 020 HFSC424 18 1164 25

10 2800 022 0 000 004

02 1900 021 05 2400 025

HFSC325 18 1141 25

10 3100 031 00 1058 063 02 2581 160 05 2938 158

HFSC226 (参考) 18 1110 25

10 3437 154 00 000 000 02 082 099 05 632 134

OPC (参考) 18 1300 25

10 857 058 セメントの種類およびひび割れ幅と腐食減量率の関係を図 16に示す

0

02

04

06

08

1

12

14

16

18

0 02 05 10

ひび割れ幅(mm)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 16 腐食減量率

腐食減量率はHFSC424と 325では OPCより小さくなったこの結果からHFSCではひび割れが入った場合鉄筋の腐食減量は OPCより小さいと考えられる

- - 13

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186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

- - 14

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表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

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割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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JNC TJ8400 2003-063

【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 2: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

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2003

JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063

2003年 2月

低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価(Ⅱ)(概要) (核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書)

入矢桂史郎 藤井健介 田島孝敏 竹田宣典 久保博

要 旨

本研究ではベントナイトや岩石の変質を抑制する対策として開発した低アルカリ

性セメントの実用性に関する諸特性を把握する室内試験と変質抑制効果の長期試験を

実施した具体的な実施項目はフライアッシュの混合率を変えた HFSC中での鉄筋腐食に関する促進試験HFSC の自己収縮試験低アルカリセメント浸出水を用いたベントナイトおよび岩石の変質試験ベントナイトおよび岩石の高アルカリ変質に関

する研究成果のまとめである 本研究の成果を要約すると次のようになる 低アルカリセメントの自己収縮に関して HFSCのセメントペーストにおける自己収縮ひずみはOPCと同じかあるいは大きいフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなりHFSC226では OPCと同等であったまたコンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうがOPCより小さい ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次鉱物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた 本報告書は(株)大林組が核燃料サイクル開発機構との委託研究契約により実施した研究成果に関するものである 機構担当課室東海事業所 環境保全研究開発センター 処分研究部 処分材料研究グループ (株)大林組

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JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063

February 2003

Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

(Document Preparent by Other Institute Based on the Trust Contract)

KIRIYA KFUJII TTAJIMA NTAKEDA and HKUBO

Abstract Applicability and potential for decreasing alteration of Low alkaline cement which has been produced for preventing alteration of bentonite and rock is investigated Applicability is assessed by laboratory test and preventing potential is assessed by long term accelerating test This study consists of accelerating corrosion test of rebar in saline atomogeneous shrinkage test of HFSC accelerating test for bentonite and rock and summarizing rock and bentonite alteration Automogenous shrinkage Automogenous shrinkage of HFSC is larger than OPC in cement paste It decreases corresponding to rise of fly ash content The shrinkage in HFSC226 is quite similar to OPC in cement paste The shrinkage in HFSC concrete is smaller than OPC concrete 720 days alteration test of bentonite by solution of low alkaline cement Ion exchange to Ca bentonite and calcite are observed in the solid phase Thin plate of bentonite is disappeared and round shaped secondary mineral is generated Dissolution of bentonite and generation of secondary minerals are limited in pH 110 or less since pH of bentonite is about 100 720 days alteration test of rock by solution of low alkaline cementCalcite is generated in every test Very small evidence is observed as generation of secondary minerals Etched pits are observed in tuff A due to corrosion This work was performed by OBAYASHI Co under contract with Japan Nuclear Cycle Development Institute JNC Liaison Material Research group Waste Isolation Research Division Waste

Management and Fuel Cycle Research Center Tokaiworks OBAYASHI CO

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JNC TJ8400 2003-063

目 次 はじめに 1

1 低アルカリ性コンクリートにおける鉄筋腐食 2 11 試験概要2 12 コンクリートの配合 2 13 試験の組み合わせ3 14 鉄筋腐食促進試験方法3 (1) 試験項目 3 (2) 促進試験条件 3 (3) 試験実施期間 4 15 塩分浸透標準試験方法4 16 pH測定試験方法 5 17 試験結果5

171 フレッシュコンクリート試験結果 5 172 圧縮強度および引張強度 5 173 鉄筋腐食 6

(1) 自然電位 6 (2) 分極抵抗 7 174 pH試験 8 18 考察8

181 塩分浸透性 8 182 塩分の固定化能力 8 183 pHの低下速度 9 184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合) 10

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係 10 (2)コンクリートの pHと腐食量の関係 11 (3) 腐食速度 12

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合) 12 186 腐食ひび割れ発生予測 14

(1) 塩化物イオン浸透予測 14 (2) 鉄筋腐食 14 (3) ひび割れ発生予測 15 (4) ひび割れ発生予測その 2 15

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JNC TJ8400 2003-063

2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価17 21 試験目的17 22 試験方法17 (1) 試験ケースとコンクリートの配合 17 (2) 自己収縮の測定方法 17 23 試験結果18 (1) フレッシュコンクリートの試験結果 18 (2) ペーストの自己収縮試験結果 18 (3) コンクリートの自己収縮試験結果 19 24 考察20

3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験 21 31 使用材料21 32 試験ケース 21 33 試験方法22 331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製 22 332 試料の浸せき 22 333 浸せき後の試料分析 22 34 試験結果23 341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの 変質試験 23 (1) X線回折 23 (2) 熱分析 25 (3) メチレンブルー吸着量 27 (4) 電子顕微鏡観察 28 (5) 液相の分析 29 342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験 30 (1) X線回折 30 (2) 熱分析 31 (3) 電子顕微鏡観察 32 (4) 液相の分析 33 35 まとめ 34 351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの 変質試験 34 352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験 35

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おわりに 36 参考文献 37

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表 目 次 表 11 コンクリートの配合 2 表 12 セメントごとの試験の組み合わせ 3 表 13 腐食促進試験の試験項目 3 表 14 試験方法と実施時期 4 表 15 供試体一覧 5 表 16 フレッシュコンクリート試験結果 5 表 17 分極抵抗測定結果7 表 18 pH測定結果 8 表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 8 表 110 HFSCの塩分固定能力 9 表 111 pHの抵抗予測 10 表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果 10 表 113 鉄筋の腐食速度 12 表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果 13 表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数 14 表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率) 15 表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期 15 表 118 ひび割れ発生年 15 表 119 ひび割れ発生年その 2 16

表 21 コンクリートの配合 17 表 22 フレッシュコンクリート試験結果 18 表 23 ペーストの自己収縮ひずみ 18 表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ 19 表 31 使用材料21 表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験 21 表 33 リーチング水の pHと化学組成 22 表 34 分析装置と条件 23 表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ 25 表 36 温度区間ごとの質量減少率26 表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 27 表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成 29 表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ 30

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表 310 温度区間ごとの質量減少率31 表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成 34

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図 目 次

図 11 自然電位の測定結果(HFSC424) 6 図 12 自然電位の測定結果(HFSC325) 6 図 13 コンクリートの pHと塩分固定能力 9 図 14 全塩分量と腐食減量率 11 図 15 コンクリートの pHと腐食減量率 11 図 16 腐食減量率 13

図 21 埋込みひずみ計設置方法 18 図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化 19 図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化 19

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写 真 目 次 写真 31 未処理試料のSEM写真(クニピアFreg) 28 写真 32 No41の SEM写真(リーチング水100720日) 28 写真 33 No42の SEM写真(リーチング水80720日) 28 写真 34 No43の SEM写真(リーチング水50720日) 28 写真 35 No44の SEM写真(花崗岩未処理) 32 写真 36 No44の SEM写真(花崗岩リーチング水80720日) 32 写真 37 No45の SEM写真(凝灰岩 A未処理) 32 写真 38 No45の SEM写真(凝灰岩 Aリーチング水80720日) 32 写真 39 No46の SEM写真(凝灰岩 B未処理) 32 写真 310 No46の SEM写真(凝灰岩 Bリーチング水80720日) 32

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はじめに

TRU廃棄物の処分システムでは構成材料にコンクリートや圧縮成型したベントナイトを用いることが考えられているが普通コンクリートは地下水と接することに

よって周辺地下水を高アルカリ性に変える場合がありベントナイトのゼオライト

化や周囲の岩石の変遷等に影響することが懸念されている1) この変質に対してセメントの改良として間隙水のアルカリ性を下げた低アルカ

リ性セメントの研究が進められているフライアッシュを高含有したHFSC(Highly Fly ash contained Silicafume Cement)の研究が進められこれまで鉄筋腐食に関する実用化研究を実施している2) 既往の研究でフライアッシュを 60混合した HFSC では塩化物イオンが浸透しなくても鉄筋腐食が確認されたまたシリカフュームを 20含む HFSC では自己収縮ひずみが大きくなることが懸念される さらに低アルカリセメントを使用した場合の長期のベントナイトの変質や岩石の

変質についても調べておく必要がある 以上の背景から本研究ではフライアッシュの使用率をかえた HFSC における鉄筋腐食の評価自己収縮性の評価を行い実用化の研究を実施したさらに HFSCの浸出液を用いたベントナイトおよび岩石の浸透試験を行いベントナイトおよび岩

石の高アルカリ変質について得られた知見をまとめた

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1 低アルカリ性コンクリ-トにおける鉄筋腐食

11 試験概要

既往の研究でフライアッシュを 60使用したHFSC(HFSC226 と称す)における鉄筋腐食促進試験を実施した2) 本研究ではフライアッシュの混合割合が異なる低アルカリ性セメント(HFSC)を使

用し水セメント比 30のコンクリートで供試体を作製し鉄筋腐食促進試験を実施することにより鉄筋腐食に及ぼす以下の要因の影響について促進試験による評価を

行った ①塩水濃度の影響 ②かぶりの影響 ③ひび割れ幅の影響

鉄筋の腐食に与えるセメントの影響を評価するために鉄筋腐食試験に使用したコ

ンクリートについて以下の試験を実施した ①塩分浸透量測定(促進環境および標準浸漬環境) ②pH測定

12 コンクリ-トの配合

表 11に使用したコンクリートの配合を示す 使用したコンクリートは水セメント比および細骨材率を一定としセメントの密度に

より調整を行ったものであるコンシステンシ-に関してはスランプフローが目標

範囲に入るように高性能 AE減水剤により調整した

表 11 コンクリートの配合

配合 WC 目標スラン

プフロー sa 単 位 量(kgm3) 使用

セメント 記号 () (cm) () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 575 807 673 Ctimes220

HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes230 HFSC

HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes300

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

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13 試験の組み合わせ

OPCHFSC424HFSC325において実施した試験の組み合わせを表 12に示す 表 12 セメントごとの試験の組み合わせ

セメントの種類 鉄筋腐食促進試験 塩分浸透促進試験 塩分浸透標準試験 pH 経時変化測定

HSFC424

HFSC325

HFSC226

OPC

14 鉄筋腐食促進試験方法

(1) 試験項目

鉄筋腐食促進試験の試験項目を表 13に示す

表 13 腐食促進試験の試験項目

腐食条件 パラメータ 使用セメント

WC () 固定条件 パラメータ 試験項目

HFSC424 30

塩水濃度

HFSC325 30

かぶり 25mm

人工海水濃度 50100飽和 (Clイオン濃度0918

27)

自然電位分極抵抗 鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量 塩分浸透量

pH

HFSC① 30

かぶり HFSC② 30

人工海水

濃度 100

かぶり 152535mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

HFSC① 30

ひび割れ幅 HFSC② 30

人工海水

濃度

100 かぶり 25mm

ひび割れ幅 020510mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

(2) 促進試験条件

本試験での促進条件は既往の研究と同じ促進条件とした促進条件は湿潤期間 3日間乾燥期間 4日間を 1サイクルとし13サイクルの乾湿繰返しを行った 湿潤乾燥条件は

湿潤条件50の人工海水に浸漬 乾燥条件5060RHの恒温恒湿室内

- - 3

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としたコンクリ-トのは打設後 28日間標準養生(水中 20養生)とし促進試験開始材齢を 28日として湿潤状態から開始して上記の促進試験を 13サイクル(91日間)実施した (3) 試験実施期間

表 14に試験方法と試験実施時期を示す

表 14 試験方法と実施時期

実施時期 試験項目 試験方法 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - コンクリート中の塩分濃度 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進試験開始時 (材齢 28日)

pH - 自然電位 -

促進 6 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 8 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 10 サイクル終了後 分極抵抗 - 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - 腐食面積率 JCI基準案 腐食減量 - コンクリート中の塩分分析 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進 13 サイクル終了後 (材齢 119日)

コンクリートの pH測定 -

15 塩分浸透標準試験方法

供試体はφ150times300mmの型枠を用いて製作した

コンクリートの種類はOPCHFSC424HFSC325 および HFSC226の 4水準とし

養生およびコーティングの方法は促進試験における塩分浸透量測定供試体と同様とした

28 日標準養生後人工海水濃度 100(Cl-イオン濃度 18)に 20の条件で浸漬し

鉄筋腐食促進試験の終了時にこの供試体を取り出し塩分浸透量を測定した

塩分浸透量の測定方法は鉄筋腐食促進試験と同じである

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16 pH測定試験方法

この試験ではHFSC を使用した場合の長期的な浸漬液の pH の低下速度を測定した 鉄筋腐食促進試験で使用したコンクリートと同様な水セメント比のセメントペース

ト(水セメント比 30)を用いて直径 5cm高さ 10cm の円柱供試体を作成したなおセメントの種類はHSFC226HFSC424HFSC325である 円柱供試体は液固比が 21 となるようにイオン交換水中に浸漬し材齢 28 日

91日において円柱をスライスしたものを試料としpHを測定した pHの測定方法はスライスした試料を微粉砕した後試料 20gにイオン交換水 40gとなるようにイオン交換水中に浸漬し1週間放置した後pHを測定した 17 試験結果

171 フレッシュコンクリート試験結果

フレッシュコンクリート試験結果を表 15に示す

表 15 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート温度 ()

HFSC424 680times680 37 210 HFSC325 700times680 41 210 HFSC226 680times680 42 210

OPC 630times620 39 210

172 圧縮強度および引張強度

圧縮強度および引張強度試験結果を表 16に示す

表 16 圧縮強度および引張強度

圧縮強度 (Nmm2) 引張強度 (Nmm2) 記 号

材齢 28日 材齢 119日 材齢 28日 材齢 119日

HFSC424 748 938 415 619

HFSC325 516 736 355 491 HFSC226 338 549 - -

HFSC226の試験結果は既往の研究 2)より引用した

- - 5

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173 鉄筋腐食

(1) 自然電位

図 11および図 12に自然電位測定結果を示す

-800

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 11自然電位の測定結果(HFSC424)

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし

18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 12 自然電位の測定結果(HFSC325)

- - 6

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(2) 分極抵抗

表 17に分極抵抗測定結果を示す

表 17 分極抵抗測定結果 上段分極抵抗(Ωcm2) 下段腐食速度(microAcm2) 記号 海水濃度 かぶり ひび割れ

0 サイクル 6 サイクル 8 サイクル 10 サイクル 13 サイクル 2149 2262 2319 2247 1818 50

0012 0012 0011 0012 0015 2505 2038 2265 2377 2083

飽和 0011 0013 0011 0011 0013 2302 2105 1557 1914 2240

25mm

0011 0012 0017 0014 0012 2865 2645 2406 2434 2190 15mm 0009 0010 0011 0011 0012 3237 2948 2927 2889 2228 35mm

無し

0008 0009 0009 0009 0012 3531 3256 1139 1329 1246 02mm 0007 0008 0023 0020 0021 2482 2584 1512 1610 1305 05mm 0011 0010 0017 0017 0020 3614 2636 1742 1753 1208

HFSC424

100

25mm

10mm 0007 0010 0015 0015 0022 2276 2417 2400 2233 1800 50 0012 0011 0011 0012 0014 3044 2590 2320 2372 2106

飽和 0009 0010 0011 0011 0012 2875 2309 2300 2169 2279

25mm

0009 0011 0011 0012 0012 4000 2601 2430 2540 3333 15mm 0007 0010 0011 0010 0008 3283 2377 2220 2375 2330 35mm

無し

0008 0011 0012 0011 0011 3252 2701 2375 2151 1843 02mm 0008 0010 0011 0012 0014 3770 2233 1972 2035 1684 05mm 0007 0012 0013 0013 0015 2258 2385 2270 1571 1237

HFSC325

100

25mm

10mm 0012 0011 0011 0017 0021

- - 7

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174 pH試験

pH測定結果を表 18に示す

表 18 pH測定結果

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 4 HFSC424 1217 1202 HFSC325 1229 1221 HFSC226

28 1229 1216

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 3 HFSC424 1196 1188 HFSC325 1223 1219 HFSC226

91 1240 1241

18 考察

181 塩分浸透性

得られた拡散係数を基に塩分浸透に関する促進試験の促進倍率と定義し値を算

定した表 19に促進倍率を示す

表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 セメントの種類 促進試験の拡散係数①

(times10-8cm2s) 標準試験の拡散係数② (times10-8cm2s)

促進倍率①②

HFSC424 29 177 16 HFSC325 40 190 20 HFSC226 40 2057 02 OPC 44 108 35

182 塩分の固定化能力

OPCでは塩化物イオンが浸入した場合フリーデル氏塩として塩化物イオンを固定化する能力があるここでは塩分浸透試験から得られた全塩分量から可溶性塩分

を除いたものが塩分を固定化する能力と定義する 標準試験で測定された各セメントにおける塩分固定化能力を表 110 に示すまた

本研究で得られた pHと固定化された塩分量の関係を図 13に示す

- - 8

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表 110 HFSCの塩分固定能力 セメントの種類

固定された塩分量

(kgm3) pH 試験方法

HFSC424 065 1241 標準 HFSC325 022 1219 標準 HFSC226 000 1188 標準

OPC 098 1300 標準

y = -03404x2 + 93859x - 63495

-02

0

02

04

06

08

1

12

118 12 122 124 126 128 13 132

pH

固定された塩分量(kgm3)

図 117コンクリートのpHと塩分固定能力

183 pHの低下速度

本研究の期間中ではpHの変化に関しては浸漬 28日と 91日の 2点測定したここではpHと経過時間の関係が既往の研究3)と同様に直線と考えてpHが 110 および 100になる時間を算出した 本研究で得られた pHと経過時間の関係は次のようである HFSC424 pH(t)=-000254t + 1248 HFSC325 pH(t)=-000032t + 1221 HFSC226 pH(t)=-000222t + 1208 ここでt経過時間(日)である ここでは最も大きい pHの低下速度を用いてpHが 110と 100になるまでに必要な期間を推定した表 111 にその結果を示す以上からpHが 110に到達する期間はHFSCでは 2年以内との結果が得られた

- - 9

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表 111 pHの低下予測

pH低下速度 経過時間(年) セメントの種類 初期 pH

1日当り 1年当り pH 110 pH 100 HFSC424 1248 160 267 HFSC325 1221 131 238 HFSC226 1208

000254 0927 117 224

184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合)

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係

これまで実験したひび割れのない供試体における pH と鉄筋位置での全塩分量と腐

食面積率および腐食減量率をまとめて表 112に示す

表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果

pH 鉄筋位置 セメントの

種類

人工海水 の塩化物イオ

ン濃度() 試験開

始前 試験終

了時 かぶり (mm)

全塩分量

(kgm3)

腐食面積

率() 腐食減量

率()

15 022 50 011 25 000 00 002 HFSC424 1203 1164 35 000 00 002 15 031 20 005 25 000 00 004 HFSC325 1172 1141 35 000 00 003 15 066 5370 058 25 031 1058 063 HFSC226 1143 1110 35 026 821 020 15 013 231 055 25 009 00 00 OPC

18

1300 1300 35 016 00 00

HFSC424 1203 1164 011 30 001 HFSC325 1172 1141 000 20 005 HFSC226 1143 1110 006 2818 140

OPC

27

1300 1300 009 00 00

HFSC226 1143 1110 114 1429 076

OPC 塩分練り込み

1300 1300

25

109 427 085 図 14に鉄筋位置の全塩分量と腐食減量を示すHFSC226と OPCの一部に塩分量が小さいにも関わらず腐食が進んでいるものが見られるが概ね全塩分量が大きくな

ると腐食減量率が大きくなる傾向が認められるHFSC に関しては塩分固定能力はなく塩分が浸透するとすぐに塩分環境下の腐食を始めると考えるべきである

- - 10

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全塩分量と減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

0 02 04 06 08 1 12

全塩分量(kgm3)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 14 全塩分量と腐食減量率

(2) コンクリートの pHと腐食量の関係

塩分が少ない状態(HFSC02kgm3以下OPC10kgm3以下)でのコンクリート

のpH(試験終了後)と腐食減量関係を図 15に示す コンクリートのpHと腐食減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

11 115 12 125 13 135

pH

腐食減量率()

図 15 コンクリートの pHと腐食減量率

- - 11

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pHが大きくなると塩分が存在しない場合の腐食量は小さくなっているしかしpHが 110 付近では急激に腐食減量率が大きくなったpH と腐食の関係を明確に定量化することはできなかったがpH1125 より pH が低くなると塩分がなくても腐食が進行することが認められる HFSC の配合を見ると本実験の範囲ではHFSC226 は塩分が浸透しなくても腐食する領域に位置しHFSC325 と 424 は塩分がこなければ腐食しない領域に位置すると考えられるただしHFSC ではフライアッシュのポゾラン反応とともに pH が低下してき110 を下回ることが想定されるために鉄筋コンクリート構造として工学的な検討を行う場合は塩分が浸透しなくても腐食すると考える必要があるさらに

HFSC226では塩分が存在する場合の腐食量と存在しない場合の腐食量は腐食減量率から見るとほぼ同等であった

(3) 腐食速度

HFSC226の塩分が鉄筋に到達しない供試体の腐食減量率をもとに塩分が存在しない場合の腐食速度を推定したHFSC226の 91日間におけるかぶり 25mmの腐食減量率は 0631で35mm の腐食減量率は 0201であったここで両者の平均をHFSC226の塩分が存在しない場合の腐食率とすると167年となる 一方既往の研究3)によれば一年間海洋環境下(海中)に暴露したHFSC226を用いた腐食速度は塩分が鉄筋まで到達しない条件下で 043年であった 次に塩分が存在する場合の腐食速度は塩分練り込み供試体の腐食減量率(07691日)と促進倍率 43倍から換算すると 071となる塩分が存在するときの腐食減量率はHFSC226と OPCでは076と 085とほとんど変わらないことから塩分が到達した後の鉄筋腐食量は pH に依存しないものと考えられる以上の計算を

HFSC424および 325に当てはめるとHFSC424および 325では塩分が浸入し到達しないと腐食しないということになる 鉄筋の腐食を考える上での腐食速度は表 113のようになる

表 113 鉄筋の腐食速度

セメントの

種類 pH(試験開始時)

塩分が浸透しないときの腐

食速度(重量年)

塩分が浸透したと

きの腐食速度 (重量年)

HFSC424 1164 HFSC325 1141 000

HFSC226 1110 043 071

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合)

ひび割れを有する場合の鉄筋の腐食減量率についての試験結果を表 114に示す既

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往の研究2)におけるOPCおよびHFSC226の試験結果についても参考として示した

表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果

セメントの種類 海水濃度 (Cl)

pH

かぶり (mm)

ひび割れ幅 (mm)

腐食面積率 ()

腐食減量率 ()

00 000 002 02 1600 019 05 1800 020 HFSC424 18 1164 25

10 2800 022 0 000 004

02 1900 021 05 2400 025

HFSC325 18 1141 25

10 3100 031 00 1058 063 02 2581 160 05 2938 158

HFSC226 (参考) 18 1110 25

10 3437 154 00 000 000 02 082 099 05 632 134

OPC (参考) 18 1300 25

10 857 058 セメントの種類およびひび割れ幅と腐食減量率の関係を図 16に示す

0

02

04

06

08

1

12

14

16

18

0 02 05 10

ひび割れ幅(mm)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 16 腐食減量率

腐食減量率はHFSC424と 325では OPCより小さくなったこの結果からHFSCではひび割れが入った場合鉄筋の腐食減量は OPCより小さいと考えられる

- - 13

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186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

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表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

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割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

- - 16

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

-21-

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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JNC TJ8400 2003-063

おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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JNC TJ8400 2003-063

【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

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JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 3: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063

2003年 2月

低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価(Ⅱ)(概要) (核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書)

入矢桂史郎 藤井健介 田島孝敏 竹田宣典 久保博

要 旨

本研究ではベントナイトや岩石の変質を抑制する対策として開発した低アルカリ

性セメントの実用性に関する諸特性を把握する室内試験と変質抑制効果の長期試験を

実施した具体的な実施項目はフライアッシュの混合率を変えた HFSC中での鉄筋腐食に関する促進試験HFSC の自己収縮試験低アルカリセメント浸出水を用いたベントナイトおよび岩石の変質試験ベントナイトおよび岩石の高アルカリ変質に関

する研究成果のまとめである 本研究の成果を要約すると次のようになる 低アルカリセメントの自己収縮に関して HFSCのセメントペーストにおける自己収縮ひずみはOPCと同じかあるいは大きいフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなりHFSC226では OPCと同等であったまたコンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうがOPCより小さい ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次鉱物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた 本報告書は(株)大林組が核燃料サイクル開発機構との委託研究契約により実施した研究成果に関するものである 機構担当課室東海事業所 環境保全研究開発センター 処分研究部 処分材料研究グループ (株)大林組

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JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063

February 2003

Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

(Document Preparent by Other Institute Based on the Trust Contract)

KIRIYA KFUJII TTAJIMA NTAKEDA and HKUBO

Abstract Applicability and potential for decreasing alteration of Low alkaline cement which has been produced for preventing alteration of bentonite and rock is investigated Applicability is assessed by laboratory test and preventing potential is assessed by long term accelerating test This study consists of accelerating corrosion test of rebar in saline atomogeneous shrinkage test of HFSC accelerating test for bentonite and rock and summarizing rock and bentonite alteration Automogenous shrinkage Automogenous shrinkage of HFSC is larger than OPC in cement paste It decreases corresponding to rise of fly ash content The shrinkage in HFSC226 is quite similar to OPC in cement paste The shrinkage in HFSC concrete is smaller than OPC concrete 720 days alteration test of bentonite by solution of low alkaline cement Ion exchange to Ca bentonite and calcite are observed in the solid phase Thin plate of bentonite is disappeared and round shaped secondary mineral is generated Dissolution of bentonite and generation of secondary minerals are limited in pH 110 or less since pH of bentonite is about 100 720 days alteration test of rock by solution of low alkaline cementCalcite is generated in every test Very small evidence is observed as generation of secondary minerals Etched pits are observed in tuff A due to corrosion This work was performed by OBAYASHI Co under contract with Japan Nuclear Cycle Development Institute JNC Liaison Material Research group Waste Isolation Research Division Waste

Management and Fuel Cycle Research Center Tokaiworks OBAYASHI CO

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目 次 はじめに 1

1 低アルカリ性コンクリートにおける鉄筋腐食 2 11 試験概要2 12 コンクリートの配合 2 13 試験の組み合わせ3 14 鉄筋腐食促進試験方法3 (1) 試験項目 3 (2) 促進試験条件 3 (3) 試験実施期間 4 15 塩分浸透標準試験方法4 16 pH測定試験方法 5 17 試験結果5

171 フレッシュコンクリート試験結果 5 172 圧縮強度および引張強度 5 173 鉄筋腐食 6

(1) 自然電位 6 (2) 分極抵抗 7 174 pH試験 8 18 考察8

181 塩分浸透性 8 182 塩分の固定化能力 8 183 pHの低下速度 9 184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合) 10

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係 10 (2)コンクリートの pHと腐食量の関係 11 (3) 腐食速度 12

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合) 12 186 腐食ひび割れ発生予測 14

(1) 塩化物イオン浸透予測 14 (2) 鉄筋腐食 14 (3) ひび割れ発生予測 15 (4) ひび割れ発生予測その 2 15

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JNC TJ8400 2003-063

2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価17 21 試験目的17 22 試験方法17 (1) 試験ケースとコンクリートの配合 17 (2) 自己収縮の測定方法 17 23 試験結果18 (1) フレッシュコンクリートの試験結果 18 (2) ペーストの自己収縮試験結果 18 (3) コンクリートの自己収縮試験結果 19 24 考察20

3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験 21 31 使用材料21 32 試験ケース 21 33 試験方法22 331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製 22 332 試料の浸せき 22 333 浸せき後の試料分析 22 34 試験結果23 341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの 変質試験 23 (1) X線回折 23 (2) 熱分析 25 (3) メチレンブルー吸着量 27 (4) 電子顕微鏡観察 28 (5) 液相の分析 29 342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験 30 (1) X線回折 30 (2) 熱分析 31 (3) 電子顕微鏡観察 32 (4) 液相の分析 33 35 まとめ 34 351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの 変質試験 34 352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験 35

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おわりに 36 参考文献 37

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表 目 次 表 11 コンクリートの配合 2 表 12 セメントごとの試験の組み合わせ 3 表 13 腐食促進試験の試験項目 3 表 14 試験方法と実施時期 4 表 15 供試体一覧 5 表 16 フレッシュコンクリート試験結果 5 表 17 分極抵抗測定結果7 表 18 pH測定結果 8 表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 8 表 110 HFSCの塩分固定能力 9 表 111 pHの抵抗予測 10 表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果 10 表 113 鉄筋の腐食速度 12 表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果 13 表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数 14 表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率) 15 表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期 15 表 118 ひび割れ発生年 15 表 119 ひび割れ発生年その 2 16

表 21 コンクリートの配合 17 表 22 フレッシュコンクリート試験結果 18 表 23 ペーストの自己収縮ひずみ 18 表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ 19 表 31 使用材料21 表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験 21 表 33 リーチング水の pHと化学組成 22 表 34 分析装置と条件 23 表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ 25 表 36 温度区間ごとの質量減少率26 表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 27 表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成 29 表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ 30

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表 310 温度区間ごとの質量減少率31 表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成 34

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図 目 次

図 11 自然電位の測定結果(HFSC424) 6 図 12 自然電位の測定結果(HFSC325) 6 図 13 コンクリートの pHと塩分固定能力 9 図 14 全塩分量と腐食減量率 11 図 15 コンクリートの pHと腐食減量率 11 図 16 腐食減量率 13

図 21 埋込みひずみ計設置方法 18 図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化 19 図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化 19

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写 真 目 次 写真 31 未処理試料のSEM写真(クニピアFreg) 28 写真 32 No41の SEM写真(リーチング水100720日) 28 写真 33 No42の SEM写真(リーチング水80720日) 28 写真 34 No43の SEM写真(リーチング水50720日) 28 写真 35 No44の SEM写真(花崗岩未処理) 32 写真 36 No44の SEM写真(花崗岩リーチング水80720日) 32 写真 37 No45の SEM写真(凝灰岩 A未処理) 32 写真 38 No45の SEM写真(凝灰岩 Aリーチング水80720日) 32 写真 39 No46の SEM写真(凝灰岩 B未処理) 32 写真 310 No46の SEM写真(凝灰岩 Bリーチング水80720日) 32

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はじめに

TRU廃棄物の処分システムでは構成材料にコンクリートや圧縮成型したベントナイトを用いることが考えられているが普通コンクリートは地下水と接することに

よって周辺地下水を高アルカリ性に変える場合がありベントナイトのゼオライト

化や周囲の岩石の変遷等に影響することが懸念されている1) この変質に対してセメントの改良として間隙水のアルカリ性を下げた低アルカ

リ性セメントの研究が進められているフライアッシュを高含有したHFSC(Highly Fly ash contained Silicafume Cement)の研究が進められこれまで鉄筋腐食に関する実用化研究を実施している2) 既往の研究でフライアッシュを 60混合した HFSC では塩化物イオンが浸透しなくても鉄筋腐食が確認されたまたシリカフュームを 20含む HFSC では自己収縮ひずみが大きくなることが懸念される さらに低アルカリセメントを使用した場合の長期のベントナイトの変質や岩石の

変質についても調べておく必要がある 以上の背景から本研究ではフライアッシュの使用率をかえた HFSC における鉄筋腐食の評価自己収縮性の評価を行い実用化の研究を実施したさらに HFSCの浸出液を用いたベントナイトおよび岩石の浸透試験を行いベントナイトおよび岩

石の高アルカリ変質について得られた知見をまとめた

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1 低アルカリ性コンクリ-トにおける鉄筋腐食

11 試験概要

既往の研究でフライアッシュを 60使用したHFSC(HFSC226 と称す)における鉄筋腐食促進試験を実施した2) 本研究ではフライアッシュの混合割合が異なる低アルカリ性セメント(HFSC)を使

用し水セメント比 30のコンクリートで供試体を作製し鉄筋腐食促進試験を実施することにより鉄筋腐食に及ぼす以下の要因の影響について促進試験による評価を

行った ①塩水濃度の影響 ②かぶりの影響 ③ひび割れ幅の影響

鉄筋の腐食に与えるセメントの影響を評価するために鉄筋腐食試験に使用したコ

ンクリートについて以下の試験を実施した ①塩分浸透量測定(促進環境および標準浸漬環境) ②pH測定

12 コンクリ-トの配合

表 11に使用したコンクリートの配合を示す 使用したコンクリートは水セメント比および細骨材率を一定としセメントの密度に

より調整を行ったものであるコンシステンシ-に関してはスランプフローが目標

範囲に入るように高性能 AE減水剤により調整した

表 11 コンクリートの配合

配合 WC 目標スラン

プフロー sa 単 位 量(kgm3) 使用

セメント 記号 () (cm) () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 575 807 673 Ctimes220

HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes230 HFSC

HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes300

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

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13 試験の組み合わせ

OPCHFSC424HFSC325において実施した試験の組み合わせを表 12に示す 表 12 セメントごとの試験の組み合わせ

セメントの種類 鉄筋腐食促進試験 塩分浸透促進試験 塩分浸透標準試験 pH 経時変化測定

HSFC424

HFSC325

HFSC226

OPC

14 鉄筋腐食促進試験方法

(1) 試験項目

鉄筋腐食促進試験の試験項目を表 13に示す

表 13 腐食促進試験の試験項目

腐食条件 パラメータ 使用セメント

WC () 固定条件 パラメータ 試験項目

HFSC424 30

塩水濃度

HFSC325 30

かぶり 25mm

人工海水濃度 50100飽和 (Clイオン濃度0918

27)

自然電位分極抵抗 鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量 塩分浸透量

pH

HFSC① 30

かぶり HFSC② 30

人工海水

濃度 100

かぶり 152535mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

HFSC① 30

ひび割れ幅 HFSC② 30

人工海水

濃度

100 かぶり 25mm

ひび割れ幅 020510mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

(2) 促進試験条件

本試験での促進条件は既往の研究と同じ促進条件とした促進条件は湿潤期間 3日間乾燥期間 4日間を 1サイクルとし13サイクルの乾湿繰返しを行った 湿潤乾燥条件は

湿潤条件50の人工海水に浸漬 乾燥条件5060RHの恒温恒湿室内

- - 3

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としたコンクリ-トのは打設後 28日間標準養生(水中 20養生)とし促進試験開始材齢を 28日として湿潤状態から開始して上記の促進試験を 13サイクル(91日間)実施した (3) 試験実施期間

表 14に試験方法と試験実施時期を示す

表 14 試験方法と実施時期

実施時期 試験項目 試験方法 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - コンクリート中の塩分濃度 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進試験開始時 (材齢 28日)

pH - 自然電位 -

促進 6 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 8 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 10 サイクル終了後 分極抵抗 - 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - 腐食面積率 JCI基準案 腐食減量 - コンクリート中の塩分分析 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進 13 サイクル終了後 (材齢 119日)

コンクリートの pH測定 -

15 塩分浸透標準試験方法

供試体はφ150times300mmの型枠を用いて製作した

コンクリートの種類はOPCHFSC424HFSC325 および HFSC226の 4水準とし

養生およびコーティングの方法は促進試験における塩分浸透量測定供試体と同様とした

28 日標準養生後人工海水濃度 100(Cl-イオン濃度 18)に 20の条件で浸漬し

鉄筋腐食促進試験の終了時にこの供試体を取り出し塩分浸透量を測定した

塩分浸透量の測定方法は鉄筋腐食促進試験と同じである

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16 pH測定試験方法

この試験ではHFSC を使用した場合の長期的な浸漬液の pH の低下速度を測定した 鉄筋腐食促進試験で使用したコンクリートと同様な水セメント比のセメントペース

ト(水セメント比 30)を用いて直径 5cm高さ 10cm の円柱供試体を作成したなおセメントの種類はHSFC226HFSC424HFSC325である 円柱供試体は液固比が 21 となるようにイオン交換水中に浸漬し材齢 28 日

91日において円柱をスライスしたものを試料としpHを測定した pHの測定方法はスライスした試料を微粉砕した後試料 20gにイオン交換水 40gとなるようにイオン交換水中に浸漬し1週間放置した後pHを測定した 17 試験結果

171 フレッシュコンクリート試験結果

フレッシュコンクリート試験結果を表 15に示す

表 15 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート温度 ()

HFSC424 680times680 37 210 HFSC325 700times680 41 210 HFSC226 680times680 42 210

OPC 630times620 39 210

172 圧縮強度および引張強度

圧縮強度および引張強度試験結果を表 16に示す

表 16 圧縮強度および引張強度

圧縮強度 (Nmm2) 引張強度 (Nmm2) 記 号

材齢 28日 材齢 119日 材齢 28日 材齢 119日

HFSC424 748 938 415 619

HFSC325 516 736 355 491 HFSC226 338 549 - -

HFSC226の試験結果は既往の研究 2)より引用した

- - 5

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173 鉄筋腐食

(1) 自然電位

図 11および図 12に自然電位測定結果を示す

-800

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 11自然電位の測定結果(HFSC424)

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし

18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 12 自然電位の測定結果(HFSC325)

- - 6

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(2) 分極抵抗

表 17に分極抵抗測定結果を示す

表 17 分極抵抗測定結果 上段分極抵抗(Ωcm2) 下段腐食速度(microAcm2) 記号 海水濃度 かぶり ひび割れ

0 サイクル 6 サイクル 8 サイクル 10 サイクル 13 サイクル 2149 2262 2319 2247 1818 50

0012 0012 0011 0012 0015 2505 2038 2265 2377 2083

飽和 0011 0013 0011 0011 0013 2302 2105 1557 1914 2240

25mm

0011 0012 0017 0014 0012 2865 2645 2406 2434 2190 15mm 0009 0010 0011 0011 0012 3237 2948 2927 2889 2228 35mm

無し

0008 0009 0009 0009 0012 3531 3256 1139 1329 1246 02mm 0007 0008 0023 0020 0021 2482 2584 1512 1610 1305 05mm 0011 0010 0017 0017 0020 3614 2636 1742 1753 1208

HFSC424

100

25mm

10mm 0007 0010 0015 0015 0022 2276 2417 2400 2233 1800 50 0012 0011 0011 0012 0014 3044 2590 2320 2372 2106

飽和 0009 0010 0011 0011 0012 2875 2309 2300 2169 2279

25mm

0009 0011 0011 0012 0012 4000 2601 2430 2540 3333 15mm 0007 0010 0011 0010 0008 3283 2377 2220 2375 2330 35mm

無し

0008 0011 0012 0011 0011 3252 2701 2375 2151 1843 02mm 0008 0010 0011 0012 0014 3770 2233 1972 2035 1684 05mm 0007 0012 0013 0013 0015 2258 2385 2270 1571 1237

HFSC325

100

25mm

10mm 0012 0011 0011 0017 0021

- - 7

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174 pH試験

pH測定結果を表 18に示す

表 18 pH測定結果

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 4 HFSC424 1217 1202 HFSC325 1229 1221 HFSC226

28 1229 1216

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 3 HFSC424 1196 1188 HFSC325 1223 1219 HFSC226

91 1240 1241

18 考察

181 塩分浸透性

得られた拡散係数を基に塩分浸透に関する促進試験の促進倍率と定義し値を算

定した表 19に促進倍率を示す

表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 セメントの種類 促進試験の拡散係数①

(times10-8cm2s) 標準試験の拡散係数② (times10-8cm2s)

促進倍率①②

HFSC424 29 177 16 HFSC325 40 190 20 HFSC226 40 2057 02 OPC 44 108 35

182 塩分の固定化能力

OPCでは塩化物イオンが浸入した場合フリーデル氏塩として塩化物イオンを固定化する能力があるここでは塩分浸透試験から得られた全塩分量から可溶性塩分

を除いたものが塩分を固定化する能力と定義する 標準試験で測定された各セメントにおける塩分固定化能力を表 110 に示すまた

本研究で得られた pHと固定化された塩分量の関係を図 13に示す

- - 8

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表 110 HFSCの塩分固定能力 セメントの種類

固定された塩分量

(kgm3) pH 試験方法

HFSC424 065 1241 標準 HFSC325 022 1219 標準 HFSC226 000 1188 標準

OPC 098 1300 標準

y = -03404x2 + 93859x - 63495

-02

0

02

04

06

08

1

12

118 12 122 124 126 128 13 132

pH

固定された塩分量(kgm3)

図 117コンクリートのpHと塩分固定能力

183 pHの低下速度

本研究の期間中ではpHの変化に関しては浸漬 28日と 91日の 2点測定したここではpHと経過時間の関係が既往の研究3)と同様に直線と考えてpHが 110 および 100になる時間を算出した 本研究で得られた pHと経過時間の関係は次のようである HFSC424 pH(t)=-000254t + 1248 HFSC325 pH(t)=-000032t + 1221 HFSC226 pH(t)=-000222t + 1208 ここでt経過時間(日)である ここでは最も大きい pHの低下速度を用いてpHが 110と 100になるまでに必要な期間を推定した表 111 にその結果を示す以上からpHが 110に到達する期間はHFSCでは 2年以内との結果が得られた

- - 9

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表 111 pHの低下予測

pH低下速度 経過時間(年) セメントの種類 初期 pH

1日当り 1年当り pH 110 pH 100 HFSC424 1248 160 267 HFSC325 1221 131 238 HFSC226 1208

000254 0927 117 224

184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合)

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係

これまで実験したひび割れのない供試体における pH と鉄筋位置での全塩分量と腐

食面積率および腐食減量率をまとめて表 112に示す

表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果

pH 鉄筋位置 セメントの

種類

人工海水 の塩化物イオ

ン濃度() 試験開

始前 試験終

了時 かぶり (mm)

全塩分量

(kgm3)

腐食面積

率() 腐食減量

率()

15 022 50 011 25 000 00 002 HFSC424 1203 1164 35 000 00 002 15 031 20 005 25 000 00 004 HFSC325 1172 1141 35 000 00 003 15 066 5370 058 25 031 1058 063 HFSC226 1143 1110 35 026 821 020 15 013 231 055 25 009 00 00 OPC

18

1300 1300 35 016 00 00

HFSC424 1203 1164 011 30 001 HFSC325 1172 1141 000 20 005 HFSC226 1143 1110 006 2818 140

OPC

27

1300 1300 009 00 00

HFSC226 1143 1110 114 1429 076

OPC 塩分練り込み

1300 1300

25

109 427 085 図 14に鉄筋位置の全塩分量と腐食減量を示すHFSC226と OPCの一部に塩分量が小さいにも関わらず腐食が進んでいるものが見られるが概ね全塩分量が大きくな

ると腐食減量率が大きくなる傾向が認められるHFSC に関しては塩分固定能力はなく塩分が浸透するとすぐに塩分環境下の腐食を始めると考えるべきである

- - 10

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全塩分量と減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

0 02 04 06 08 1 12

全塩分量(kgm3)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 14 全塩分量と腐食減量率

(2) コンクリートの pHと腐食量の関係

塩分が少ない状態(HFSC02kgm3以下OPC10kgm3以下)でのコンクリート

のpH(試験終了後)と腐食減量関係を図 15に示す コンクリートのpHと腐食減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

11 115 12 125 13 135

pH

腐食減量率()

図 15 コンクリートの pHと腐食減量率

- - 11

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pHが大きくなると塩分が存在しない場合の腐食量は小さくなっているしかしpHが 110 付近では急激に腐食減量率が大きくなったpH と腐食の関係を明確に定量化することはできなかったがpH1125 より pH が低くなると塩分がなくても腐食が進行することが認められる HFSC の配合を見ると本実験の範囲ではHFSC226 は塩分が浸透しなくても腐食する領域に位置しHFSC325 と 424 は塩分がこなければ腐食しない領域に位置すると考えられるただしHFSC ではフライアッシュのポゾラン反応とともに pH が低下してき110 を下回ることが想定されるために鉄筋コンクリート構造として工学的な検討を行う場合は塩分が浸透しなくても腐食すると考える必要があるさらに

HFSC226では塩分が存在する場合の腐食量と存在しない場合の腐食量は腐食減量率から見るとほぼ同等であった

(3) 腐食速度

HFSC226の塩分が鉄筋に到達しない供試体の腐食減量率をもとに塩分が存在しない場合の腐食速度を推定したHFSC226の 91日間におけるかぶり 25mmの腐食減量率は 0631で35mm の腐食減量率は 0201であったここで両者の平均をHFSC226の塩分が存在しない場合の腐食率とすると167年となる 一方既往の研究3)によれば一年間海洋環境下(海中)に暴露したHFSC226を用いた腐食速度は塩分が鉄筋まで到達しない条件下で 043年であった 次に塩分が存在する場合の腐食速度は塩分練り込み供試体の腐食減量率(07691日)と促進倍率 43倍から換算すると 071となる塩分が存在するときの腐食減量率はHFSC226と OPCでは076と 085とほとんど変わらないことから塩分が到達した後の鉄筋腐食量は pH に依存しないものと考えられる以上の計算を

HFSC424および 325に当てはめるとHFSC424および 325では塩分が浸入し到達しないと腐食しないということになる 鉄筋の腐食を考える上での腐食速度は表 113のようになる

表 113 鉄筋の腐食速度

セメントの

種類 pH(試験開始時)

塩分が浸透しないときの腐

食速度(重量年)

塩分が浸透したと

きの腐食速度 (重量年)

HFSC424 1164 HFSC325 1141 000

HFSC226 1110 043 071

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合)

ひび割れを有する場合の鉄筋の腐食減量率についての試験結果を表 114に示す既

- - 12

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往の研究2)におけるOPCおよびHFSC226の試験結果についても参考として示した

表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果

セメントの種類 海水濃度 (Cl)

pH

かぶり (mm)

ひび割れ幅 (mm)

腐食面積率 ()

腐食減量率 ()

00 000 002 02 1600 019 05 1800 020 HFSC424 18 1164 25

10 2800 022 0 000 004

02 1900 021 05 2400 025

HFSC325 18 1141 25

10 3100 031 00 1058 063 02 2581 160 05 2938 158

HFSC226 (参考) 18 1110 25

10 3437 154 00 000 000 02 082 099 05 632 134

OPC (参考) 18 1300 25

10 857 058 セメントの種類およびひび割れ幅と腐食減量率の関係を図 16に示す

0

02

04

06

08

1

12

14

16

18

0 02 05 10

ひび割れ幅(mm)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 16 腐食減量率

腐食減量率はHFSC424と 325では OPCより小さくなったこの結果からHFSCではひび割れが入った場合鉄筋の腐食減量は OPCより小さいと考えられる

- - 13

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186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

- - 14

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表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

- - 15

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割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

- - 16

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

-18-

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

-19-

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

-20-

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

-21-

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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JNC TJ8400 2003-063

352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

-35-

JNC TJ8400 2003-063

おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

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JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 4: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063

February 2003

Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

(Document Preparent by Other Institute Based on the Trust Contract)

KIRIYA KFUJII TTAJIMA NTAKEDA and HKUBO

Abstract Applicability and potential for decreasing alteration of Low alkaline cement which has been produced for preventing alteration of bentonite and rock is investigated Applicability is assessed by laboratory test and preventing potential is assessed by long term accelerating test This study consists of accelerating corrosion test of rebar in saline atomogeneous shrinkage test of HFSC accelerating test for bentonite and rock and summarizing rock and bentonite alteration Automogenous shrinkage Automogenous shrinkage of HFSC is larger than OPC in cement paste It decreases corresponding to rise of fly ash content The shrinkage in HFSC226 is quite similar to OPC in cement paste The shrinkage in HFSC concrete is smaller than OPC concrete 720 days alteration test of bentonite by solution of low alkaline cement Ion exchange to Ca bentonite and calcite are observed in the solid phase Thin plate of bentonite is disappeared and round shaped secondary mineral is generated Dissolution of bentonite and generation of secondary minerals are limited in pH 110 or less since pH of bentonite is about 100 720 days alteration test of rock by solution of low alkaline cementCalcite is generated in every test Very small evidence is observed as generation of secondary minerals Etched pits are observed in tuff A due to corrosion This work was performed by OBAYASHI Co under contract with Japan Nuclear Cycle Development Institute JNC Liaison Material Research group Waste Isolation Research Division Waste

Management and Fuel Cycle Research Center Tokaiworks OBAYASHI CO

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目 次 はじめに 1

1 低アルカリ性コンクリートにおける鉄筋腐食 2 11 試験概要2 12 コンクリートの配合 2 13 試験の組み合わせ3 14 鉄筋腐食促進試験方法3 (1) 試験項目 3 (2) 促進試験条件 3 (3) 試験実施期間 4 15 塩分浸透標準試験方法4 16 pH測定試験方法 5 17 試験結果5

171 フレッシュコンクリート試験結果 5 172 圧縮強度および引張強度 5 173 鉄筋腐食 6

(1) 自然電位 6 (2) 分極抵抗 7 174 pH試験 8 18 考察8

181 塩分浸透性 8 182 塩分の固定化能力 8 183 pHの低下速度 9 184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合) 10

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係 10 (2)コンクリートの pHと腐食量の関係 11 (3) 腐食速度 12

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合) 12 186 腐食ひび割れ発生予測 14

(1) 塩化物イオン浸透予測 14 (2) 鉄筋腐食 14 (3) ひび割れ発生予測 15 (4) ひび割れ発生予測その 2 15

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価17 21 試験目的17 22 試験方法17 (1) 試験ケースとコンクリートの配合 17 (2) 自己収縮の測定方法 17 23 試験結果18 (1) フレッシュコンクリートの試験結果 18 (2) ペーストの自己収縮試験結果 18 (3) コンクリートの自己収縮試験結果 19 24 考察20

3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験 21 31 使用材料21 32 試験ケース 21 33 試験方法22 331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製 22 332 試料の浸せき 22 333 浸せき後の試料分析 22 34 試験結果23 341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの 変質試験 23 (1) X線回折 23 (2) 熱分析 25 (3) メチレンブルー吸着量 27 (4) 電子顕微鏡観察 28 (5) 液相の分析 29 342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験 30 (1) X線回折 30 (2) 熱分析 31 (3) 電子顕微鏡観察 32 (4) 液相の分析 33 35 まとめ 34 351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの 変質試験 34 352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験 35

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おわりに 36 参考文献 37

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表 目 次 表 11 コンクリートの配合 2 表 12 セメントごとの試験の組み合わせ 3 表 13 腐食促進試験の試験項目 3 表 14 試験方法と実施時期 4 表 15 供試体一覧 5 表 16 フレッシュコンクリート試験結果 5 表 17 分極抵抗測定結果7 表 18 pH測定結果 8 表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 8 表 110 HFSCの塩分固定能力 9 表 111 pHの抵抗予測 10 表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果 10 表 113 鉄筋の腐食速度 12 表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果 13 表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数 14 表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率) 15 表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期 15 表 118 ひび割れ発生年 15 表 119 ひび割れ発生年その 2 16

表 21 コンクリートの配合 17 表 22 フレッシュコンクリート試験結果 18 表 23 ペーストの自己収縮ひずみ 18 表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ 19 表 31 使用材料21 表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験 21 表 33 リーチング水の pHと化学組成 22 表 34 分析装置と条件 23 表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ 25 表 36 温度区間ごとの質量減少率26 表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 27 表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成 29 表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ 30

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表 310 温度区間ごとの質量減少率31 表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成 34

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図 目 次

図 11 自然電位の測定結果(HFSC424) 6 図 12 自然電位の測定結果(HFSC325) 6 図 13 コンクリートの pHと塩分固定能力 9 図 14 全塩分量と腐食減量率 11 図 15 コンクリートの pHと腐食減量率 11 図 16 腐食減量率 13

図 21 埋込みひずみ計設置方法 18 図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化 19 図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化 19

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写 真 目 次 写真 31 未処理試料のSEM写真(クニピアFreg) 28 写真 32 No41の SEM写真(リーチング水100720日) 28 写真 33 No42の SEM写真(リーチング水80720日) 28 写真 34 No43の SEM写真(リーチング水50720日) 28 写真 35 No44の SEM写真(花崗岩未処理) 32 写真 36 No44の SEM写真(花崗岩リーチング水80720日) 32 写真 37 No45の SEM写真(凝灰岩 A未処理) 32 写真 38 No45の SEM写真(凝灰岩 Aリーチング水80720日) 32 写真 39 No46の SEM写真(凝灰岩 B未処理) 32 写真 310 No46の SEM写真(凝灰岩 Bリーチング水80720日) 32

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はじめに

TRU廃棄物の処分システムでは構成材料にコンクリートや圧縮成型したベントナイトを用いることが考えられているが普通コンクリートは地下水と接することに

よって周辺地下水を高アルカリ性に変える場合がありベントナイトのゼオライト

化や周囲の岩石の変遷等に影響することが懸念されている1) この変質に対してセメントの改良として間隙水のアルカリ性を下げた低アルカ

リ性セメントの研究が進められているフライアッシュを高含有したHFSC(Highly Fly ash contained Silicafume Cement)の研究が進められこれまで鉄筋腐食に関する実用化研究を実施している2) 既往の研究でフライアッシュを 60混合した HFSC では塩化物イオンが浸透しなくても鉄筋腐食が確認されたまたシリカフュームを 20含む HFSC では自己収縮ひずみが大きくなることが懸念される さらに低アルカリセメントを使用した場合の長期のベントナイトの変質や岩石の

変質についても調べておく必要がある 以上の背景から本研究ではフライアッシュの使用率をかえた HFSC における鉄筋腐食の評価自己収縮性の評価を行い実用化の研究を実施したさらに HFSCの浸出液を用いたベントナイトおよび岩石の浸透試験を行いベントナイトおよび岩

石の高アルカリ変質について得られた知見をまとめた

-1-

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1 低アルカリ性コンクリ-トにおける鉄筋腐食

11 試験概要

既往の研究でフライアッシュを 60使用したHFSC(HFSC226 と称す)における鉄筋腐食促進試験を実施した2) 本研究ではフライアッシュの混合割合が異なる低アルカリ性セメント(HFSC)を使

用し水セメント比 30のコンクリートで供試体を作製し鉄筋腐食促進試験を実施することにより鉄筋腐食に及ぼす以下の要因の影響について促進試験による評価を

行った ①塩水濃度の影響 ②かぶりの影響 ③ひび割れ幅の影響

鉄筋の腐食に与えるセメントの影響を評価するために鉄筋腐食試験に使用したコ

ンクリートについて以下の試験を実施した ①塩分浸透量測定(促進環境および標準浸漬環境) ②pH測定

12 コンクリ-トの配合

表 11に使用したコンクリートの配合を示す 使用したコンクリートは水セメント比および細骨材率を一定としセメントの密度に

より調整を行ったものであるコンシステンシ-に関してはスランプフローが目標

範囲に入るように高性能 AE減水剤により調整した

表 11 コンクリートの配合

配合 WC 目標スラン

プフロー sa 単 位 量(kgm3) 使用

セメント 記号 () (cm) () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 575 807 673 Ctimes220

HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes230 HFSC

HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes300

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

- - 2

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13 試験の組み合わせ

OPCHFSC424HFSC325において実施した試験の組み合わせを表 12に示す 表 12 セメントごとの試験の組み合わせ

セメントの種類 鉄筋腐食促進試験 塩分浸透促進試験 塩分浸透標準試験 pH 経時変化測定

HSFC424

HFSC325

HFSC226

OPC

14 鉄筋腐食促進試験方法

(1) 試験項目

鉄筋腐食促進試験の試験項目を表 13に示す

表 13 腐食促進試験の試験項目

腐食条件 パラメータ 使用セメント

WC () 固定条件 パラメータ 試験項目

HFSC424 30

塩水濃度

HFSC325 30

かぶり 25mm

人工海水濃度 50100飽和 (Clイオン濃度0918

27)

自然電位分極抵抗 鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量 塩分浸透量

pH

HFSC① 30

かぶり HFSC② 30

人工海水

濃度 100

かぶり 152535mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

HFSC① 30

ひび割れ幅 HFSC② 30

人工海水

濃度

100 かぶり 25mm

ひび割れ幅 020510mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

(2) 促進試験条件

本試験での促進条件は既往の研究と同じ促進条件とした促進条件は湿潤期間 3日間乾燥期間 4日間を 1サイクルとし13サイクルの乾湿繰返しを行った 湿潤乾燥条件は

湿潤条件50の人工海水に浸漬 乾燥条件5060RHの恒温恒湿室内

- - 3

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としたコンクリ-トのは打設後 28日間標準養生(水中 20養生)とし促進試験開始材齢を 28日として湿潤状態から開始して上記の促進試験を 13サイクル(91日間)実施した (3) 試験実施期間

表 14に試験方法と試験実施時期を示す

表 14 試験方法と実施時期

実施時期 試験項目 試験方法 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - コンクリート中の塩分濃度 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進試験開始時 (材齢 28日)

pH - 自然電位 -

促進 6 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 8 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 10 サイクル終了後 分極抵抗 - 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - 腐食面積率 JCI基準案 腐食減量 - コンクリート中の塩分分析 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進 13 サイクル終了後 (材齢 119日)

コンクリートの pH測定 -

15 塩分浸透標準試験方法

供試体はφ150times300mmの型枠を用いて製作した

コンクリートの種類はOPCHFSC424HFSC325 および HFSC226の 4水準とし

養生およびコーティングの方法は促進試験における塩分浸透量測定供試体と同様とした

28 日標準養生後人工海水濃度 100(Cl-イオン濃度 18)に 20の条件で浸漬し

鉄筋腐食促進試験の終了時にこの供試体を取り出し塩分浸透量を測定した

塩分浸透量の測定方法は鉄筋腐食促進試験と同じである

- - 4

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16 pH測定試験方法

この試験ではHFSC を使用した場合の長期的な浸漬液の pH の低下速度を測定した 鉄筋腐食促進試験で使用したコンクリートと同様な水セメント比のセメントペース

ト(水セメント比 30)を用いて直径 5cm高さ 10cm の円柱供試体を作成したなおセメントの種類はHSFC226HFSC424HFSC325である 円柱供試体は液固比が 21 となるようにイオン交換水中に浸漬し材齢 28 日

91日において円柱をスライスしたものを試料としpHを測定した pHの測定方法はスライスした試料を微粉砕した後試料 20gにイオン交換水 40gとなるようにイオン交換水中に浸漬し1週間放置した後pHを測定した 17 試験結果

171 フレッシュコンクリート試験結果

フレッシュコンクリート試験結果を表 15に示す

表 15 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート温度 ()

HFSC424 680times680 37 210 HFSC325 700times680 41 210 HFSC226 680times680 42 210

OPC 630times620 39 210

172 圧縮強度および引張強度

圧縮強度および引張強度試験結果を表 16に示す

表 16 圧縮強度および引張強度

圧縮強度 (Nmm2) 引張強度 (Nmm2) 記 号

材齢 28日 材齢 119日 材齢 28日 材齢 119日

HFSC424 748 938 415 619

HFSC325 516 736 355 491 HFSC226 338 549 - -

HFSC226の試験結果は既往の研究 2)より引用した

- - 5

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173 鉄筋腐食

(1) 自然電位

図 11および図 12に自然電位測定結果を示す

-800

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 11自然電位の測定結果(HFSC424)

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし

18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 12 自然電位の測定結果(HFSC325)

- - 6

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(2) 分極抵抗

表 17に分極抵抗測定結果を示す

表 17 分極抵抗測定結果 上段分極抵抗(Ωcm2) 下段腐食速度(microAcm2) 記号 海水濃度 かぶり ひび割れ

0 サイクル 6 サイクル 8 サイクル 10 サイクル 13 サイクル 2149 2262 2319 2247 1818 50

0012 0012 0011 0012 0015 2505 2038 2265 2377 2083

飽和 0011 0013 0011 0011 0013 2302 2105 1557 1914 2240

25mm

0011 0012 0017 0014 0012 2865 2645 2406 2434 2190 15mm 0009 0010 0011 0011 0012 3237 2948 2927 2889 2228 35mm

無し

0008 0009 0009 0009 0012 3531 3256 1139 1329 1246 02mm 0007 0008 0023 0020 0021 2482 2584 1512 1610 1305 05mm 0011 0010 0017 0017 0020 3614 2636 1742 1753 1208

HFSC424

100

25mm

10mm 0007 0010 0015 0015 0022 2276 2417 2400 2233 1800 50 0012 0011 0011 0012 0014 3044 2590 2320 2372 2106

飽和 0009 0010 0011 0011 0012 2875 2309 2300 2169 2279

25mm

0009 0011 0011 0012 0012 4000 2601 2430 2540 3333 15mm 0007 0010 0011 0010 0008 3283 2377 2220 2375 2330 35mm

無し

0008 0011 0012 0011 0011 3252 2701 2375 2151 1843 02mm 0008 0010 0011 0012 0014 3770 2233 1972 2035 1684 05mm 0007 0012 0013 0013 0015 2258 2385 2270 1571 1237

HFSC325

100

25mm

10mm 0012 0011 0011 0017 0021

- - 7

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174 pH試験

pH測定結果を表 18に示す

表 18 pH測定結果

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 4 HFSC424 1217 1202 HFSC325 1229 1221 HFSC226

28 1229 1216

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 3 HFSC424 1196 1188 HFSC325 1223 1219 HFSC226

91 1240 1241

18 考察

181 塩分浸透性

得られた拡散係数を基に塩分浸透に関する促進試験の促進倍率と定義し値を算

定した表 19に促進倍率を示す

表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 セメントの種類 促進試験の拡散係数①

(times10-8cm2s) 標準試験の拡散係数② (times10-8cm2s)

促進倍率①②

HFSC424 29 177 16 HFSC325 40 190 20 HFSC226 40 2057 02 OPC 44 108 35

182 塩分の固定化能力

OPCでは塩化物イオンが浸入した場合フリーデル氏塩として塩化物イオンを固定化する能力があるここでは塩分浸透試験から得られた全塩分量から可溶性塩分

を除いたものが塩分を固定化する能力と定義する 標準試験で測定された各セメントにおける塩分固定化能力を表 110 に示すまた

本研究で得られた pHと固定化された塩分量の関係を図 13に示す

- - 8

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表 110 HFSCの塩分固定能力 セメントの種類

固定された塩分量

(kgm3) pH 試験方法

HFSC424 065 1241 標準 HFSC325 022 1219 標準 HFSC226 000 1188 標準

OPC 098 1300 標準

y = -03404x2 + 93859x - 63495

-02

0

02

04

06

08

1

12

118 12 122 124 126 128 13 132

pH

固定された塩分量(kgm3)

図 117コンクリートのpHと塩分固定能力

183 pHの低下速度

本研究の期間中ではpHの変化に関しては浸漬 28日と 91日の 2点測定したここではpHと経過時間の関係が既往の研究3)と同様に直線と考えてpHが 110 および 100になる時間を算出した 本研究で得られた pHと経過時間の関係は次のようである HFSC424 pH(t)=-000254t + 1248 HFSC325 pH(t)=-000032t + 1221 HFSC226 pH(t)=-000222t + 1208 ここでt経過時間(日)である ここでは最も大きい pHの低下速度を用いてpHが 110と 100になるまでに必要な期間を推定した表 111 にその結果を示す以上からpHが 110に到達する期間はHFSCでは 2年以内との結果が得られた

- - 9

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表 111 pHの低下予測

pH低下速度 経過時間(年) セメントの種類 初期 pH

1日当り 1年当り pH 110 pH 100 HFSC424 1248 160 267 HFSC325 1221 131 238 HFSC226 1208

000254 0927 117 224

184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合)

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係

これまで実験したひび割れのない供試体における pH と鉄筋位置での全塩分量と腐

食面積率および腐食減量率をまとめて表 112に示す

表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果

pH 鉄筋位置 セメントの

種類

人工海水 の塩化物イオ

ン濃度() 試験開

始前 試験終

了時 かぶり (mm)

全塩分量

(kgm3)

腐食面積

率() 腐食減量

率()

15 022 50 011 25 000 00 002 HFSC424 1203 1164 35 000 00 002 15 031 20 005 25 000 00 004 HFSC325 1172 1141 35 000 00 003 15 066 5370 058 25 031 1058 063 HFSC226 1143 1110 35 026 821 020 15 013 231 055 25 009 00 00 OPC

18

1300 1300 35 016 00 00

HFSC424 1203 1164 011 30 001 HFSC325 1172 1141 000 20 005 HFSC226 1143 1110 006 2818 140

OPC

27

1300 1300 009 00 00

HFSC226 1143 1110 114 1429 076

OPC 塩分練り込み

1300 1300

25

109 427 085 図 14に鉄筋位置の全塩分量と腐食減量を示すHFSC226と OPCの一部に塩分量が小さいにも関わらず腐食が進んでいるものが見られるが概ね全塩分量が大きくな

ると腐食減量率が大きくなる傾向が認められるHFSC に関しては塩分固定能力はなく塩分が浸透するとすぐに塩分環境下の腐食を始めると考えるべきである

- - 10

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全塩分量と減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

0 02 04 06 08 1 12

全塩分量(kgm3)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 14 全塩分量と腐食減量率

(2) コンクリートの pHと腐食量の関係

塩分が少ない状態(HFSC02kgm3以下OPC10kgm3以下)でのコンクリート

のpH(試験終了後)と腐食減量関係を図 15に示す コンクリートのpHと腐食減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

11 115 12 125 13 135

pH

腐食減量率()

図 15 コンクリートの pHと腐食減量率

- - 11

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pHが大きくなると塩分が存在しない場合の腐食量は小さくなっているしかしpHが 110 付近では急激に腐食減量率が大きくなったpH と腐食の関係を明確に定量化することはできなかったがpH1125 より pH が低くなると塩分がなくても腐食が進行することが認められる HFSC の配合を見ると本実験の範囲ではHFSC226 は塩分が浸透しなくても腐食する領域に位置しHFSC325 と 424 は塩分がこなければ腐食しない領域に位置すると考えられるただしHFSC ではフライアッシュのポゾラン反応とともに pH が低下してき110 を下回ることが想定されるために鉄筋コンクリート構造として工学的な検討を行う場合は塩分が浸透しなくても腐食すると考える必要があるさらに

HFSC226では塩分が存在する場合の腐食量と存在しない場合の腐食量は腐食減量率から見るとほぼ同等であった

(3) 腐食速度

HFSC226の塩分が鉄筋に到達しない供試体の腐食減量率をもとに塩分が存在しない場合の腐食速度を推定したHFSC226の 91日間におけるかぶり 25mmの腐食減量率は 0631で35mm の腐食減量率は 0201であったここで両者の平均をHFSC226の塩分が存在しない場合の腐食率とすると167年となる 一方既往の研究3)によれば一年間海洋環境下(海中)に暴露したHFSC226を用いた腐食速度は塩分が鉄筋まで到達しない条件下で 043年であった 次に塩分が存在する場合の腐食速度は塩分練り込み供試体の腐食減量率(07691日)と促進倍率 43倍から換算すると 071となる塩分が存在するときの腐食減量率はHFSC226と OPCでは076と 085とほとんど変わらないことから塩分が到達した後の鉄筋腐食量は pH に依存しないものと考えられる以上の計算を

HFSC424および 325に当てはめるとHFSC424および 325では塩分が浸入し到達しないと腐食しないということになる 鉄筋の腐食を考える上での腐食速度は表 113のようになる

表 113 鉄筋の腐食速度

セメントの

種類 pH(試験開始時)

塩分が浸透しないときの腐

食速度(重量年)

塩分が浸透したと

きの腐食速度 (重量年)

HFSC424 1164 HFSC325 1141 000

HFSC226 1110 043 071

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合)

ひび割れを有する場合の鉄筋の腐食減量率についての試験結果を表 114に示す既

- - 12

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往の研究2)におけるOPCおよびHFSC226の試験結果についても参考として示した

表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果

セメントの種類 海水濃度 (Cl)

pH

かぶり (mm)

ひび割れ幅 (mm)

腐食面積率 ()

腐食減量率 ()

00 000 002 02 1600 019 05 1800 020 HFSC424 18 1164 25

10 2800 022 0 000 004

02 1900 021 05 2400 025

HFSC325 18 1141 25

10 3100 031 00 1058 063 02 2581 160 05 2938 158

HFSC226 (参考) 18 1110 25

10 3437 154 00 000 000 02 082 099 05 632 134

OPC (参考) 18 1300 25

10 857 058 セメントの種類およびひび割れ幅と腐食減量率の関係を図 16に示す

0

02

04

06

08

1

12

14

16

18

0 02 05 10

ひび割れ幅(mm)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 16 腐食減量率

腐食減量率はHFSC424と 325では OPCより小さくなったこの結果からHFSCではひび割れが入った場合鉄筋の腐食減量は OPCより小さいと考えられる

- - 13

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186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

- - 14

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表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

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割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

- - 16

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

-19-

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

-21-

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

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JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 5: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

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目 次 はじめに 1

1 低アルカリ性コンクリートにおける鉄筋腐食 2 11 試験概要2 12 コンクリートの配合 2 13 試験の組み合わせ3 14 鉄筋腐食促進試験方法3 (1) 試験項目 3 (2) 促進試験条件 3 (3) 試験実施期間 4 15 塩分浸透標準試験方法4 16 pH測定試験方法 5 17 試験結果5

171 フレッシュコンクリート試験結果 5 172 圧縮強度および引張強度 5 173 鉄筋腐食 6

(1) 自然電位 6 (2) 分極抵抗 7 174 pH試験 8 18 考察8

181 塩分浸透性 8 182 塩分の固定化能力 8 183 pHの低下速度 9 184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合) 10

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係 10 (2)コンクリートの pHと腐食量の関係 11 (3) 腐食速度 12

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合) 12 186 腐食ひび割れ発生予測 14

(1) 塩化物イオン浸透予測 14 (2) 鉄筋腐食 14 (3) ひび割れ発生予測 15 (4) ひび割れ発生予測その 2 15

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価17 21 試験目的17 22 試験方法17 (1) 試験ケースとコンクリートの配合 17 (2) 自己収縮の測定方法 17 23 試験結果18 (1) フレッシュコンクリートの試験結果 18 (2) ペーストの自己収縮試験結果 18 (3) コンクリートの自己収縮試験結果 19 24 考察20

3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験 21 31 使用材料21 32 試験ケース 21 33 試験方法22 331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製 22 332 試料の浸せき 22 333 浸せき後の試料分析 22 34 試験結果23 341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの 変質試験 23 (1) X線回折 23 (2) 熱分析 25 (3) メチレンブルー吸着量 27 (4) 電子顕微鏡観察 28 (5) 液相の分析 29 342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験 30 (1) X線回折 30 (2) 熱分析 31 (3) 電子顕微鏡観察 32 (4) 液相の分析 33 35 まとめ 34 351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの 変質試験 34 352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験 35

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おわりに 36 参考文献 37

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表 目 次 表 11 コンクリートの配合 2 表 12 セメントごとの試験の組み合わせ 3 表 13 腐食促進試験の試験項目 3 表 14 試験方法と実施時期 4 表 15 供試体一覧 5 表 16 フレッシュコンクリート試験結果 5 表 17 分極抵抗測定結果7 表 18 pH測定結果 8 表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 8 表 110 HFSCの塩分固定能力 9 表 111 pHの抵抗予測 10 表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果 10 表 113 鉄筋の腐食速度 12 表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果 13 表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数 14 表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率) 15 表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期 15 表 118 ひび割れ発生年 15 表 119 ひび割れ発生年その 2 16

表 21 コンクリートの配合 17 表 22 フレッシュコンクリート試験結果 18 表 23 ペーストの自己収縮ひずみ 18 表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ 19 表 31 使用材料21 表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験 21 表 33 リーチング水の pHと化学組成 22 表 34 分析装置と条件 23 表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ 25 表 36 温度区間ごとの質量減少率26 表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 27 表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成 29 表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ 30

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表 310 温度区間ごとの質量減少率31 表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成 34

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図 目 次

図 11 自然電位の測定結果(HFSC424) 6 図 12 自然電位の測定結果(HFSC325) 6 図 13 コンクリートの pHと塩分固定能力 9 図 14 全塩分量と腐食減量率 11 図 15 コンクリートの pHと腐食減量率 11 図 16 腐食減量率 13

図 21 埋込みひずみ計設置方法 18 図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化 19 図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化 19

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写 真 目 次 写真 31 未処理試料のSEM写真(クニピアFreg) 28 写真 32 No41の SEM写真(リーチング水100720日) 28 写真 33 No42の SEM写真(リーチング水80720日) 28 写真 34 No43の SEM写真(リーチング水50720日) 28 写真 35 No44の SEM写真(花崗岩未処理) 32 写真 36 No44の SEM写真(花崗岩リーチング水80720日) 32 写真 37 No45の SEM写真(凝灰岩 A未処理) 32 写真 38 No45の SEM写真(凝灰岩 Aリーチング水80720日) 32 写真 39 No46の SEM写真(凝灰岩 B未処理) 32 写真 310 No46の SEM写真(凝灰岩 Bリーチング水80720日) 32

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はじめに

TRU廃棄物の処分システムでは構成材料にコンクリートや圧縮成型したベントナイトを用いることが考えられているが普通コンクリートは地下水と接することに

よって周辺地下水を高アルカリ性に変える場合がありベントナイトのゼオライト

化や周囲の岩石の変遷等に影響することが懸念されている1) この変質に対してセメントの改良として間隙水のアルカリ性を下げた低アルカ

リ性セメントの研究が進められているフライアッシュを高含有したHFSC(Highly Fly ash contained Silicafume Cement)の研究が進められこれまで鉄筋腐食に関する実用化研究を実施している2) 既往の研究でフライアッシュを 60混合した HFSC では塩化物イオンが浸透しなくても鉄筋腐食が確認されたまたシリカフュームを 20含む HFSC では自己収縮ひずみが大きくなることが懸念される さらに低アルカリセメントを使用した場合の長期のベントナイトの変質や岩石の

変質についても調べておく必要がある 以上の背景から本研究ではフライアッシュの使用率をかえた HFSC における鉄筋腐食の評価自己収縮性の評価を行い実用化の研究を実施したさらに HFSCの浸出液を用いたベントナイトおよび岩石の浸透試験を行いベントナイトおよび岩

石の高アルカリ変質について得られた知見をまとめた

-1-

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1 低アルカリ性コンクリ-トにおける鉄筋腐食

11 試験概要

既往の研究でフライアッシュを 60使用したHFSC(HFSC226 と称す)における鉄筋腐食促進試験を実施した2) 本研究ではフライアッシュの混合割合が異なる低アルカリ性セメント(HFSC)を使

用し水セメント比 30のコンクリートで供試体を作製し鉄筋腐食促進試験を実施することにより鉄筋腐食に及ぼす以下の要因の影響について促進試験による評価を

行った ①塩水濃度の影響 ②かぶりの影響 ③ひび割れ幅の影響

鉄筋の腐食に与えるセメントの影響を評価するために鉄筋腐食試験に使用したコ

ンクリートについて以下の試験を実施した ①塩分浸透量測定(促進環境および標準浸漬環境) ②pH測定

12 コンクリ-トの配合

表 11に使用したコンクリートの配合を示す 使用したコンクリートは水セメント比および細骨材率を一定としセメントの密度に

より調整を行ったものであるコンシステンシ-に関してはスランプフローが目標

範囲に入るように高性能 AE減水剤により調整した

表 11 コンクリートの配合

配合 WC 目標スラン

プフロー sa 単 位 量(kgm3) 使用

セメント 記号 () (cm) () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 575 807 673 Ctimes220

HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes230 HFSC

HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes300

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

- - 2

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13 試験の組み合わせ

OPCHFSC424HFSC325において実施した試験の組み合わせを表 12に示す 表 12 セメントごとの試験の組み合わせ

セメントの種類 鉄筋腐食促進試験 塩分浸透促進試験 塩分浸透標準試験 pH 経時変化測定

HSFC424

HFSC325

HFSC226

OPC

14 鉄筋腐食促進試験方法

(1) 試験項目

鉄筋腐食促進試験の試験項目を表 13に示す

表 13 腐食促進試験の試験項目

腐食条件 パラメータ 使用セメント

WC () 固定条件 パラメータ 試験項目

HFSC424 30

塩水濃度

HFSC325 30

かぶり 25mm

人工海水濃度 50100飽和 (Clイオン濃度0918

27)

自然電位分極抵抗 鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量 塩分浸透量

pH

HFSC① 30

かぶり HFSC② 30

人工海水

濃度 100

かぶり 152535mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

HFSC① 30

ひび割れ幅 HFSC② 30

人工海水

濃度

100 かぶり 25mm

ひび割れ幅 020510mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

(2) 促進試験条件

本試験での促進条件は既往の研究と同じ促進条件とした促進条件は湿潤期間 3日間乾燥期間 4日間を 1サイクルとし13サイクルの乾湿繰返しを行った 湿潤乾燥条件は

湿潤条件50の人工海水に浸漬 乾燥条件5060RHの恒温恒湿室内

- - 3

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としたコンクリ-トのは打設後 28日間標準養生(水中 20養生)とし促進試験開始材齢を 28日として湿潤状態から開始して上記の促進試験を 13サイクル(91日間)実施した (3) 試験実施期間

表 14に試験方法と試験実施時期を示す

表 14 試験方法と実施時期

実施時期 試験項目 試験方法 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - コンクリート中の塩分濃度 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進試験開始時 (材齢 28日)

pH - 自然電位 -

促進 6 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 8 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 10 サイクル終了後 分極抵抗 - 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - 腐食面積率 JCI基準案 腐食減量 - コンクリート中の塩分分析 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進 13 サイクル終了後 (材齢 119日)

コンクリートの pH測定 -

15 塩分浸透標準試験方法

供試体はφ150times300mmの型枠を用いて製作した

コンクリートの種類はOPCHFSC424HFSC325 および HFSC226の 4水準とし

養生およびコーティングの方法は促進試験における塩分浸透量測定供試体と同様とした

28 日標準養生後人工海水濃度 100(Cl-イオン濃度 18)に 20の条件で浸漬し

鉄筋腐食促進試験の終了時にこの供試体を取り出し塩分浸透量を測定した

塩分浸透量の測定方法は鉄筋腐食促進試験と同じである

- - 4

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16 pH測定試験方法

この試験ではHFSC を使用した場合の長期的な浸漬液の pH の低下速度を測定した 鉄筋腐食促進試験で使用したコンクリートと同様な水セメント比のセメントペース

ト(水セメント比 30)を用いて直径 5cm高さ 10cm の円柱供試体を作成したなおセメントの種類はHSFC226HFSC424HFSC325である 円柱供試体は液固比が 21 となるようにイオン交換水中に浸漬し材齢 28 日

91日において円柱をスライスしたものを試料としpHを測定した pHの測定方法はスライスした試料を微粉砕した後試料 20gにイオン交換水 40gとなるようにイオン交換水中に浸漬し1週間放置した後pHを測定した 17 試験結果

171 フレッシュコンクリート試験結果

フレッシュコンクリート試験結果を表 15に示す

表 15 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート温度 ()

HFSC424 680times680 37 210 HFSC325 700times680 41 210 HFSC226 680times680 42 210

OPC 630times620 39 210

172 圧縮強度および引張強度

圧縮強度および引張強度試験結果を表 16に示す

表 16 圧縮強度および引張強度

圧縮強度 (Nmm2) 引張強度 (Nmm2) 記 号

材齢 28日 材齢 119日 材齢 28日 材齢 119日

HFSC424 748 938 415 619

HFSC325 516 736 355 491 HFSC226 338 549 - -

HFSC226の試験結果は既往の研究 2)より引用した

- - 5

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173 鉄筋腐食

(1) 自然電位

図 11および図 12に自然電位測定結果を示す

-800

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 11自然電位の測定結果(HFSC424)

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし

18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 12 自然電位の測定結果(HFSC325)

- - 6

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(2) 分極抵抗

表 17に分極抵抗測定結果を示す

表 17 分極抵抗測定結果 上段分極抵抗(Ωcm2) 下段腐食速度(microAcm2) 記号 海水濃度 かぶり ひび割れ

0 サイクル 6 サイクル 8 サイクル 10 サイクル 13 サイクル 2149 2262 2319 2247 1818 50

0012 0012 0011 0012 0015 2505 2038 2265 2377 2083

飽和 0011 0013 0011 0011 0013 2302 2105 1557 1914 2240

25mm

0011 0012 0017 0014 0012 2865 2645 2406 2434 2190 15mm 0009 0010 0011 0011 0012 3237 2948 2927 2889 2228 35mm

無し

0008 0009 0009 0009 0012 3531 3256 1139 1329 1246 02mm 0007 0008 0023 0020 0021 2482 2584 1512 1610 1305 05mm 0011 0010 0017 0017 0020 3614 2636 1742 1753 1208

HFSC424

100

25mm

10mm 0007 0010 0015 0015 0022 2276 2417 2400 2233 1800 50 0012 0011 0011 0012 0014 3044 2590 2320 2372 2106

飽和 0009 0010 0011 0011 0012 2875 2309 2300 2169 2279

25mm

0009 0011 0011 0012 0012 4000 2601 2430 2540 3333 15mm 0007 0010 0011 0010 0008 3283 2377 2220 2375 2330 35mm

無し

0008 0011 0012 0011 0011 3252 2701 2375 2151 1843 02mm 0008 0010 0011 0012 0014 3770 2233 1972 2035 1684 05mm 0007 0012 0013 0013 0015 2258 2385 2270 1571 1237

HFSC325

100

25mm

10mm 0012 0011 0011 0017 0021

- - 7

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174 pH試験

pH測定結果を表 18に示す

表 18 pH測定結果

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 4 HFSC424 1217 1202 HFSC325 1229 1221 HFSC226

28 1229 1216

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 3 HFSC424 1196 1188 HFSC325 1223 1219 HFSC226

91 1240 1241

18 考察

181 塩分浸透性

得られた拡散係数を基に塩分浸透に関する促進試験の促進倍率と定義し値を算

定した表 19に促進倍率を示す

表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 セメントの種類 促進試験の拡散係数①

(times10-8cm2s) 標準試験の拡散係数② (times10-8cm2s)

促進倍率①②

HFSC424 29 177 16 HFSC325 40 190 20 HFSC226 40 2057 02 OPC 44 108 35

182 塩分の固定化能力

OPCでは塩化物イオンが浸入した場合フリーデル氏塩として塩化物イオンを固定化する能力があるここでは塩分浸透試験から得られた全塩分量から可溶性塩分

を除いたものが塩分を固定化する能力と定義する 標準試験で測定された各セメントにおける塩分固定化能力を表 110 に示すまた

本研究で得られた pHと固定化された塩分量の関係を図 13に示す

- - 8

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表 110 HFSCの塩分固定能力 セメントの種類

固定された塩分量

(kgm3) pH 試験方法

HFSC424 065 1241 標準 HFSC325 022 1219 標準 HFSC226 000 1188 標準

OPC 098 1300 標準

y = -03404x2 + 93859x - 63495

-02

0

02

04

06

08

1

12

118 12 122 124 126 128 13 132

pH

固定された塩分量(kgm3)

図 117コンクリートのpHと塩分固定能力

183 pHの低下速度

本研究の期間中ではpHの変化に関しては浸漬 28日と 91日の 2点測定したここではpHと経過時間の関係が既往の研究3)と同様に直線と考えてpHが 110 および 100になる時間を算出した 本研究で得られた pHと経過時間の関係は次のようである HFSC424 pH(t)=-000254t + 1248 HFSC325 pH(t)=-000032t + 1221 HFSC226 pH(t)=-000222t + 1208 ここでt経過時間(日)である ここでは最も大きい pHの低下速度を用いてpHが 110と 100になるまでに必要な期間を推定した表 111 にその結果を示す以上からpHが 110に到達する期間はHFSCでは 2年以内との結果が得られた

- - 9

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表 111 pHの低下予測

pH低下速度 経過時間(年) セメントの種類 初期 pH

1日当り 1年当り pH 110 pH 100 HFSC424 1248 160 267 HFSC325 1221 131 238 HFSC226 1208

000254 0927 117 224

184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合)

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係

これまで実験したひび割れのない供試体における pH と鉄筋位置での全塩分量と腐

食面積率および腐食減量率をまとめて表 112に示す

表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果

pH 鉄筋位置 セメントの

種類

人工海水 の塩化物イオ

ン濃度() 試験開

始前 試験終

了時 かぶり (mm)

全塩分量

(kgm3)

腐食面積

率() 腐食減量

率()

15 022 50 011 25 000 00 002 HFSC424 1203 1164 35 000 00 002 15 031 20 005 25 000 00 004 HFSC325 1172 1141 35 000 00 003 15 066 5370 058 25 031 1058 063 HFSC226 1143 1110 35 026 821 020 15 013 231 055 25 009 00 00 OPC

18

1300 1300 35 016 00 00

HFSC424 1203 1164 011 30 001 HFSC325 1172 1141 000 20 005 HFSC226 1143 1110 006 2818 140

OPC

27

1300 1300 009 00 00

HFSC226 1143 1110 114 1429 076

OPC 塩分練り込み

1300 1300

25

109 427 085 図 14に鉄筋位置の全塩分量と腐食減量を示すHFSC226と OPCの一部に塩分量が小さいにも関わらず腐食が進んでいるものが見られるが概ね全塩分量が大きくな

ると腐食減量率が大きくなる傾向が認められるHFSC に関しては塩分固定能力はなく塩分が浸透するとすぐに塩分環境下の腐食を始めると考えるべきである

- - 10

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全塩分量と減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

0 02 04 06 08 1 12

全塩分量(kgm3)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 14 全塩分量と腐食減量率

(2) コンクリートの pHと腐食量の関係

塩分が少ない状態(HFSC02kgm3以下OPC10kgm3以下)でのコンクリート

のpH(試験終了後)と腐食減量関係を図 15に示す コンクリートのpHと腐食減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

11 115 12 125 13 135

pH

腐食減量率()

図 15 コンクリートの pHと腐食減量率

- - 11

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pHが大きくなると塩分が存在しない場合の腐食量は小さくなっているしかしpHが 110 付近では急激に腐食減量率が大きくなったpH と腐食の関係を明確に定量化することはできなかったがpH1125 より pH が低くなると塩分がなくても腐食が進行することが認められる HFSC の配合を見ると本実験の範囲ではHFSC226 は塩分が浸透しなくても腐食する領域に位置しHFSC325 と 424 は塩分がこなければ腐食しない領域に位置すると考えられるただしHFSC ではフライアッシュのポゾラン反応とともに pH が低下してき110 を下回ることが想定されるために鉄筋コンクリート構造として工学的な検討を行う場合は塩分が浸透しなくても腐食すると考える必要があるさらに

HFSC226では塩分が存在する場合の腐食量と存在しない場合の腐食量は腐食減量率から見るとほぼ同等であった

(3) 腐食速度

HFSC226の塩分が鉄筋に到達しない供試体の腐食減量率をもとに塩分が存在しない場合の腐食速度を推定したHFSC226の 91日間におけるかぶり 25mmの腐食減量率は 0631で35mm の腐食減量率は 0201であったここで両者の平均をHFSC226の塩分が存在しない場合の腐食率とすると167年となる 一方既往の研究3)によれば一年間海洋環境下(海中)に暴露したHFSC226を用いた腐食速度は塩分が鉄筋まで到達しない条件下で 043年であった 次に塩分が存在する場合の腐食速度は塩分練り込み供試体の腐食減量率(07691日)と促進倍率 43倍から換算すると 071となる塩分が存在するときの腐食減量率はHFSC226と OPCでは076と 085とほとんど変わらないことから塩分が到達した後の鉄筋腐食量は pH に依存しないものと考えられる以上の計算を

HFSC424および 325に当てはめるとHFSC424および 325では塩分が浸入し到達しないと腐食しないということになる 鉄筋の腐食を考える上での腐食速度は表 113のようになる

表 113 鉄筋の腐食速度

セメントの

種類 pH(試験開始時)

塩分が浸透しないときの腐

食速度(重量年)

塩分が浸透したと

きの腐食速度 (重量年)

HFSC424 1164 HFSC325 1141 000

HFSC226 1110 043 071

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合)

ひび割れを有する場合の鉄筋の腐食減量率についての試験結果を表 114に示す既

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往の研究2)におけるOPCおよびHFSC226の試験結果についても参考として示した

表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果

セメントの種類 海水濃度 (Cl)

pH

かぶり (mm)

ひび割れ幅 (mm)

腐食面積率 ()

腐食減量率 ()

00 000 002 02 1600 019 05 1800 020 HFSC424 18 1164 25

10 2800 022 0 000 004

02 1900 021 05 2400 025

HFSC325 18 1141 25

10 3100 031 00 1058 063 02 2581 160 05 2938 158

HFSC226 (参考) 18 1110 25

10 3437 154 00 000 000 02 082 099 05 632 134

OPC (参考) 18 1300 25

10 857 058 セメントの種類およびひび割れ幅と腐食減量率の関係を図 16に示す

0

02

04

06

08

1

12

14

16

18

0 02 05 10

ひび割れ幅(mm)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 16 腐食減量率

腐食減量率はHFSC424と 325では OPCより小さくなったこの結果からHFSCではひび割れが入った場合鉄筋の腐食減量は OPCより小さいと考えられる

- - 13

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186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

- - 14

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表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

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割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

-22-

JNC TJ8400 2003-063

び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 6: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価17 21 試験目的17 22 試験方法17 (1) 試験ケースとコンクリートの配合 17 (2) 自己収縮の測定方法 17 23 試験結果18 (1) フレッシュコンクリートの試験結果 18 (2) ペーストの自己収縮試験結果 18 (3) コンクリートの自己収縮試験結果 19 24 考察20

3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験 21 31 使用材料21 32 試験ケース 21 33 試験方法22 331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製 22 332 試料の浸せき 22 333 浸せき後の試料分析 22 34 試験結果23 341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの 変質試験 23 (1) X線回折 23 (2) 熱分析 25 (3) メチレンブルー吸着量 27 (4) 電子顕微鏡観察 28 (5) 液相の分析 29 342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験 30 (1) X線回折 30 (2) 熱分析 31 (3) 電子顕微鏡観察 32 (4) 液相の分析 33 35 まとめ 34 351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの 変質試験 34 352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験 35

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おわりに 36 参考文献 37

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表 目 次 表 11 コンクリートの配合 2 表 12 セメントごとの試験の組み合わせ 3 表 13 腐食促進試験の試験項目 3 表 14 試験方法と実施時期 4 表 15 供試体一覧 5 表 16 フレッシュコンクリート試験結果 5 表 17 分極抵抗測定結果7 表 18 pH測定結果 8 表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 8 表 110 HFSCの塩分固定能力 9 表 111 pHの抵抗予測 10 表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果 10 表 113 鉄筋の腐食速度 12 表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果 13 表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数 14 表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率) 15 表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期 15 表 118 ひび割れ発生年 15 表 119 ひび割れ発生年その 2 16

表 21 コンクリートの配合 17 表 22 フレッシュコンクリート試験結果 18 表 23 ペーストの自己収縮ひずみ 18 表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ 19 表 31 使用材料21 表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験 21 表 33 リーチング水の pHと化学組成 22 表 34 分析装置と条件 23 表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ 25 表 36 温度区間ごとの質量減少率26 表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 27 表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成 29 表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ 30

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表 310 温度区間ごとの質量減少率31 表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成 34

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図 目 次

図 11 自然電位の測定結果(HFSC424) 6 図 12 自然電位の測定結果(HFSC325) 6 図 13 コンクリートの pHと塩分固定能力 9 図 14 全塩分量と腐食減量率 11 図 15 コンクリートの pHと腐食減量率 11 図 16 腐食減量率 13

図 21 埋込みひずみ計設置方法 18 図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化 19 図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化 19

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写 真 目 次 写真 31 未処理試料のSEM写真(クニピアFreg) 28 写真 32 No41の SEM写真(リーチング水100720日) 28 写真 33 No42の SEM写真(リーチング水80720日) 28 写真 34 No43の SEM写真(リーチング水50720日) 28 写真 35 No44の SEM写真(花崗岩未処理) 32 写真 36 No44の SEM写真(花崗岩リーチング水80720日) 32 写真 37 No45の SEM写真(凝灰岩 A未処理) 32 写真 38 No45の SEM写真(凝灰岩 Aリーチング水80720日) 32 写真 39 No46の SEM写真(凝灰岩 B未処理) 32 写真 310 No46の SEM写真(凝灰岩 Bリーチング水80720日) 32

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はじめに

TRU廃棄物の処分システムでは構成材料にコンクリートや圧縮成型したベントナイトを用いることが考えられているが普通コンクリートは地下水と接することに

よって周辺地下水を高アルカリ性に変える場合がありベントナイトのゼオライト

化や周囲の岩石の変遷等に影響することが懸念されている1) この変質に対してセメントの改良として間隙水のアルカリ性を下げた低アルカ

リ性セメントの研究が進められているフライアッシュを高含有したHFSC(Highly Fly ash contained Silicafume Cement)の研究が進められこれまで鉄筋腐食に関する実用化研究を実施している2) 既往の研究でフライアッシュを 60混合した HFSC では塩化物イオンが浸透しなくても鉄筋腐食が確認されたまたシリカフュームを 20含む HFSC では自己収縮ひずみが大きくなることが懸念される さらに低アルカリセメントを使用した場合の長期のベントナイトの変質や岩石の

変質についても調べておく必要がある 以上の背景から本研究ではフライアッシュの使用率をかえた HFSC における鉄筋腐食の評価自己収縮性の評価を行い実用化の研究を実施したさらに HFSCの浸出液を用いたベントナイトおよび岩石の浸透試験を行いベントナイトおよび岩

石の高アルカリ変質について得られた知見をまとめた

-1-

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1 低アルカリ性コンクリ-トにおける鉄筋腐食

11 試験概要

既往の研究でフライアッシュを 60使用したHFSC(HFSC226 と称す)における鉄筋腐食促進試験を実施した2) 本研究ではフライアッシュの混合割合が異なる低アルカリ性セメント(HFSC)を使

用し水セメント比 30のコンクリートで供試体を作製し鉄筋腐食促進試験を実施することにより鉄筋腐食に及ぼす以下の要因の影響について促進試験による評価を

行った ①塩水濃度の影響 ②かぶりの影響 ③ひび割れ幅の影響

鉄筋の腐食に与えるセメントの影響を評価するために鉄筋腐食試験に使用したコ

ンクリートについて以下の試験を実施した ①塩分浸透量測定(促進環境および標準浸漬環境) ②pH測定

12 コンクリ-トの配合

表 11に使用したコンクリートの配合を示す 使用したコンクリートは水セメント比および細骨材率を一定としセメントの密度に

より調整を行ったものであるコンシステンシ-に関してはスランプフローが目標

範囲に入るように高性能 AE減水剤により調整した

表 11 コンクリートの配合

配合 WC 目標スラン

プフロー sa 単 位 量(kgm3) 使用

セメント 記号 () (cm) () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 575 807 673 Ctimes220

HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes230 HFSC

HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes300

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

- - 2

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13 試験の組み合わせ

OPCHFSC424HFSC325において実施した試験の組み合わせを表 12に示す 表 12 セメントごとの試験の組み合わせ

セメントの種類 鉄筋腐食促進試験 塩分浸透促進試験 塩分浸透標準試験 pH 経時変化測定

HSFC424

HFSC325

HFSC226

OPC

14 鉄筋腐食促進試験方法

(1) 試験項目

鉄筋腐食促進試験の試験項目を表 13に示す

表 13 腐食促進試験の試験項目

腐食条件 パラメータ 使用セメント

WC () 固定条件 パラメータ 試験項目

HFSC424 30

塩水濃度

HFSC325 30

かぶり 25mm

人工海水濃度 50100飽和 (Clイオン濃度0918

27)

自然電位分極抵抗 鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量 塩分浸透量

pH

HFSC① 30

かぶり HFSC② 30

人工海水

濃度 100

かぶり 152535mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

HFSC① 30

ひび割れ幅 HFSC② 30

人工海水

濃度

100 かぶり 25mm

ひび割れ幅 020510mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

(2) 促進試験条件

本試験での促進条件は既往の研究と同じ促進条件とした促進条件は湿潤期間 3日間乾燥期間 4日間を 1サイクルとし13サイクルの乾湿繰返しを行った 湿潤乾燥条件は

湿潤条件50の人工海水に浸漬 乾燥条件5060RHの恒温恒湿室内

- - 3

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としたコンクリ-トのは打設後 28日間標準養生(水中 20養生)とし促進試験開始材齢を 28日として湿潤状態から開始して上記の促進試験を 13サイクル(91日間)実施した (3) 試験実施期間

表 14に試験方法と試験実施時期を示す

表 14 試験方法と実施時期

実施時期 試験項目 試験方法 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - コンクリート中の塩分濃度 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進試験開始時 (材齢 28日)

pH - 自然電位 -

促進 6 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 8 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 10 サイクル終了後 分極抵抗 - 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - 腐食面積率 JCI基準案 腐食減量 - コンクリート中の塩分分析 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進 13 サイクル終了後 (材齢 119日)

コンクリートの pH測定 -

15 塩分浸透標準試験方法

供試体はφ150times300mmの型枠を用いて製作した

コンクリートの種類はOPCHFSC424HFSC325 および HFSC226の 4水準とし

養生およびコーティングの方法は促進試験における塩分浸透量測定供試体と同様とした

28 日標準養生後人工海水濃度 100(Cl-イオン濃度 18)に 20の条件で浸漬し

鉄筋腐食促進試験の終了時にこの供試体を取り出し塩分浸透量を測定した

塩分浸透量の測定方法は鉄筋腐食促進試験と同じである

- - 4

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16 pH測定試験方法

この試験ではHFSC を使用した場合の長期的な浸漬液の pH の低下速度を測定した 鉄筋腐食促進試験で使用したコンクリートと同様な水セメント比のセメントペース

ト(水セメント比 30)を用いて直径 5cm高さ 10cm の円柱供試体を作成したなおセメントの種類はHSFC226HFSC424HFSC325である 円柱供試体は液固比が 21 となるようにイオン交換水中に浸漬し材齢 28 日

91日において円柱をスライスしたものを試料としpHを測定した pHの測定方法はスライスした試料を微粉砕した後試料 20gにイオン交換水 40gとなるようにイオン交換水中に浸漬し1週間放置した後pHを測定した 17 試験結果

171 フレッシュコンクリート試験結果

フレッシュコンクリート試験結果を表 15に示す

表 15 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート温度 ()

HFSC424 680times680 37 210 HFSC325 700times680 41 210 HFSC226 680times680 42 210

OPC 630times620 39 210

172 圧縮強度および引張強度

圧縮強度および引張強度試験結果を表 16に示す

表 16 圧縮強度および引張強度

圧縮強度 (Nmm2) 引張強度 (Nmm2) 記 号

材齢 28日 材齢 119日 材齢 28日 材齢 119日

HFSC424 748 938 415 619

HFSC325 516 736 355 491 HFSC226 338 549 - -

HFSC226の試験結果は既往の研究 2)より引用した

- - 5

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173 鉄筋腐食

(1) 自然電位

図 11および図 12に自然電位測定結果を示す

-800

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 11自然電位の測定結果(HFSC424)

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし

18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 12 自然電位の測定結果(HFSC325)

- - 6

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(2) 分極抵抗

表 17に分極抵抗測定結果を示す

表 17 分極抵抗測定結果 上段分極抵抗(Ωcm2) 下段腐食速度(microAcm2) 記号 海水濃度 かぶり ひび割れ

0 サイクル 6 サイクル 8 サイクル 10 サイクル 13 サイクル 2149 2262 2319 2247 1818 50

0012 0012 0011 0012 0015 2505 2038 2265 2377 2083

飽和 0011 0013 0011 0011 0013 2302 2105 1557 1914 2240

25mm

0011 0012 0017 0014 0012 2865 2645 2406 2434 2190 15mm 0009 0010 0011 0011 0012 3237 2948 2927 2889 2228 35mm

無し

0008 0009 0009 0009 0012 3531 3256 1139 1329 1246 02mm 0007 0008 0023 0020 0021 2482 2584 1512 1610 1305 05mm 0011 0010 0017 0017 0020 3614 2636 1742 1753 1208

HFSC424

100

25mm

10mm 0007 0010 0015 0015 0022 2276 2417 2400 2233 1800 50 0012 0011 0011 0012 0014 3044 2590 2320 2372 2106

飽和 0009 0010 0011 0011 0012 2875 2309 2300 2169 2279

25mm

0009 0011 0011 0012 0012 4000 2601 2430 2540 3333 15mm 0007 0010 0011 0010 0008 3283 2377 2220 2375 2330 35mm

無し

0008 0011 0012 0011 0011 3252 2701 2375 2151 1843 02mm 0008 0010 0011 0012 0014 3770 2233 1972 2035 1684 05mm 0007 0012 0013 0013 0015 2258 2385 2270 1571 1237

HFSC325

100

25mm

10mm 0012 0011 0011 0017 0021

- - 7

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174 pH試験

pH測定結果を表 18に示す

表 18 pH測定結果

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 4 HFSC424 1217 1202 HFSC325 1229 1221 HFSC226

28 1229 1216

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 3 HFSC424 1196 1188 HFSC325 1223 1219 HFSC226

91 1240 1241

18 考察

181 塩分浸透性

得られた拡散係数を基に塩分浸透に関する促進試験の促進倍率と定義し値を算

定した表 19に促進倍率を示す

表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 セメントの種類 促進試験の拡散係数①

(times10-8cm2s) 標準試験の拡散係数② (times10-8cm2s)

促進倍率①②

HFSC424 29 177 16 HFSC325 40 190 20 HFSC226 40 2057 02 OPC 44 108 35

182 塩分の固定化能力

OPCでは塩化物イオンが浸入した場合フリーデル氏塩として塩化物イオンを固定化する能力があるここでは塩分浸透試験から得られた全塩分量から可溶性塩分

を除いたものが塩分を固定化する能力と定義する 標準試験で測定された各セメントにおける塩分固定化能力を表 110 に示すまた

本研究で得られた pHと固定化された塩分量の関係を図 13に示す

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表 110 HFSCの塩分固定能力 セメントの種類

固定された塩分量

(kgm3) pH 試験方法

HFSC424 065 1241 標準 HFSC325 022 1219 標準 HFSC226 000 1188 標準

OPC 098 1300 標準

y = -03404x2 + 93859x - 63495

-02

0

02

04

06

08

1

12

118 12 122 124 126 128 13 132

pH

固定された塩分量(kgm3)

図 117コンクリートのpHと塩分固定能力

183 pHの低下速度

本研究の期間中ではpHの変化に関しては浸漬 28日と 91日の 2点測定したここではpHと経過時間の関係が既往の研究3)と同様に直線と考えてpHが 110 および 100になる時間を算出した 本研究で得られた pHと経過時間の関係は次のようである HFSC424 pH(t)=-000254t + 1248 HFSC325 pH(t)=-000032t + 1221 HFSC226 pH(t)=-000222t + 1208 ここでt経過時間(日)である ここでは最も大きい pHの低下速度を用いてpHが 110と 100になるまでに必要な期間を推定した表 111 にその結果を示す以上からpHが 110に到達する期間はHFSCでは 2年以内との結果が得られた

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表 111 pHの低下予測

pH低下速度 経過時間(年) セメントの種類 初期 pH

1日当り 1年当り pH 110 pH 100 HFSC424 1248 160 267 HFSC325 1221 131 238 HFSC226 1208

000254 0927 117 224

184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合)

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係

これまで実験したひび割れのない供試体における pH と鉄筋位置での全塩分量と腐

食面積率および腐食減量率をまとめて表 112に示す

表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果

pH 鉄筋位置 セメントの

種類

人工海水 の塩化物イオ

ン濃度() 試験開

始前 試験終

了時 かぶり (mm)

全塩分量

(kgm3)

腐食面積

率() 腐食減量

率()

15 022 50 011 25 000 00 002 HFSC424 1203 1164 35 000 00 002 15 031 20 005 25 000 00 004 HFSC325 1172 1141 35 000 00 003 15 066 5370 058 25 031 1058 063 HFSC226 1143 1110 35 026 821 020 15 013 231 055 25 009 00 00 OPC

18

1300 1300 35 016 00 00

HFSC424 1203 1164 011 30 001 HFSC325 1172 1141 000 20 005 HFSC226 1143 1110 006 2818 140

OPC

27

1300 1300 009 00 00

HFSC226 1143 1110 114 1429 076

OPC 塩分練り込み

1300 1300

25

109 427 085 図 14に鉄筋位置の全塩分量と腐食減量を示すHFSC226と OPCの一部に塩分量が小さいにも関わらず腐食が進んでいるものが見られるが概ね全塩分量が大きくな

ると腐食減量率が大きくなる傾向が認められるHFSC に関しては塩分固定能力はなく塩分が浸透するとすぐに塩分環境下の腐食を始めると考えるべきである

- - 10

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全塩分量と減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

0 02 04 06 08 1 12

全塩分量(kgm3)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 14 全塩分量と腐食減量率

(2) コンクリートの pHと腐食量の関係

塩分が少ない状態(HFSC02kgm3以下OPC10kgm3以下)でのコンクリート

のpH(試験終了後)と腐食減量関係を図 15に示す コンクリートのpHと腐食減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

11 115 12 125 13 135

pH

腐食減量率()

図 15 コンクリートの pHと腐食減量率

- - 11

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pHが大きくなると塩分が存在しない場合の腐食量は小さくなっているしかしpHが 110 付近では急激に腐食減量率が大きくなったpH と腐食の関係を明確に定量化することはできなかったがpH1125 より pH が低くなると塩分がなくても腐食が進行することが認められる HFSC の配合を見ると本実験の範囲ではHFSC226 は塩分が浸透しなくても腐食する領域に位置しHFSC325 と 424 は塩分がこなければ腐食しない領域に位置すると考えられるただしHFSC ではフライアッシュのポゾラン反応とともに pH が低下してき110 を下回ることが想定されるために鉄筋コンクリート構造として工学的な検討を行う場合は塩分が浸透しなくても腐食すると考える必要があるさらに

HFSC226では塩分が存在する場合の腐食量と存在しない場合の腐食量は腐食減量率から見るとほぼ同等であった

(3) 腐食速度

HFSC226の塩分が鉄筋に到達しない供試体の腐食減量率をもとに塩分が存在しない場合の腐食速度を推定したHFSC226の 91日間におけるかぶり 25mmの腐食減量率は 0631で35mm の腐食減量率は 0201であったここで両者の平均をHFSC226の塩分が存在しない場合の腐食率とすると167年となる 一方既往の研究3)によれば一年間海洋環境下(海中)に暴露したHFSC226を用いた腐食速度は塩分が鉄筋まで到達しない条件下で 043年であった 次に塩分が存在する場合の腐食速度は塩分練り込み供試体の腐食減量率(07691日)と促進倍率 43倍から換算すると 071となる塩分が存在するときの腐食減量率はHFSC226と OPCでは076と 085とほとんど変わらないことから塩分が到達した後の鉄筋腐食量は pH に依存しないものと考えられる以上の計算を

HFSC424および 325に当てはめるとHFSC424および 325では塩分が浸入し到達しないと腐食しないということになる 鉄筋の腐食を考える上での腐食速度は表 113のようになる

表 113 鉄筋の腐食速度

セメントの

種類 pH(試験開始時)

塩分が浸透しないときの腐

食速度(重量年)

塩分が浸透したと

きの腐食速度 (重量年)

HFSC424 1164 HFSC325 1141 000

HFSC226 1110 043 071

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合)

ひび割れを有する場合の鉄筋の腐食減量率についての試験結果を表 114に示す既

- - 12

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往の研究2)におけるOPCおよびHFSC226の試験結果についても参考として示した

表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果

セメントの種類 海水濃度 (Cl)

pH

かぶり (mm)

ひび割れ幅 (mm)

腐食面積率 ()

腐食減量率 ()

00 000 002 02 1600 019 05 1800 020 HFSC424 18 1164 25

10 2800 022 0 000 004

02 1900 021 05 2400 025

HFSC325 18 1141 25

10 3100 031 00 1058 063 02 2581 160 05 2938 158

HFSC226 (参考) 18 1110 25

10 3437 154 00 000 000 02 082 099 05 632 134

OPC (参考) 18 1300 25

10 857 058 セメントの種類およびひび割れ幅と腐食減量率の関係を図 16に示す

0

02

04

06

08

1

12

14

16

18

0 02 05 10

ひび割れ幅(mm)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 16 腐食減量率

腐食減量率はHFSC424と 325では OPCより小さくなったこの結果からHFSCではひび割れが入った場合鉄筋の腐食減量は OPCより小さいと考えられる

- - 13

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186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

- - 14

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表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

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割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

- - 16

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

-22-

JNC TJ8400 2003-063

び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

-23-

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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【参考文献】

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研究rdquo地盤工学誌(1998)

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サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

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ならびに基準(案)rdquo(1987)

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7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

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関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

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次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

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JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 7: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

おわりに 36 参考文献 37

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JNC TJ8400 2003-063

表 目 次 表 11 コンクリートの配合 2 表 12 セメントごとの試験の組み合わせ 3 表 13 腐食促進試験の試験項目 3 表 14 試験方法と実施時期 4 表 15 供試体一覧 5 表 16 フレッシュコンクリート試験結果 5 表 17 分極抵抗測定結果7 表 18 pH測定結果 8 表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 8 表 110 HFSCの塩分固定能力 9 表 111 pHの抵抗予測 10 表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果 10 表 113 鉄筋の腐食速度 12 表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果 13 表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数 14 表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率) 15 表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期 15 表 118 ひび割れ発生年 15 表 119 ひび割れ発生年その 2 16

表 21 コンクリートの配合 17 表 22 フレッシュコンクリート試験結果 18 表 23 ペーストの自己収縮ひずみ 18 表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ 19 表 31 使用材料21 表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験 21 表 33 リーチング水の pHと化学組成 22 表 34 分析装置と条件 23 表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ 25 表 36 温度区間ごとの質量減少率26 表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 27 表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成 29 表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ 30

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表 310 温度区間ごとの質量減少率31 表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成 34

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図 目 次

図 11 自然電位の測定結果(HFSC424) 6 図 12 自然電位の測定結果(HFSC325) 6 図 13 コンクリートの pHと塩分固定能力 9 図 14 全塩分量と腐食減量率 11 図 15 コンクリートの pHと腐食減量率 11 図 16 腐食減量率 13

図 21 埋込みひずみ計設置方法 18 図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化 19 図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化 19

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写 真 目 次 写真 31 未処理試料のSEM写真(クニピアFreg) 28 写真 32 No41の SEM写真(リーチング水100720日) 28 写真 33 No42の SEM写真(リーチング水80720日) 28 写真 34 No43の SEM写真(リーチング水50720日) 28 写真 35 No44の SEM写真(花崗岩未処理) 32 写真 36 No44の SEM写真(花崗岩リーチング水80720日) 32 写真 37 No45の SEM写真(凝灰岩 A未処理) 32 写真 38 No45の SEM写真(凝灰岩 Aリーチング水80720日) 32 写真 39 No46の SEM写真(凝灰岩 B未処理) 32 写真 310 No46の SEM写真(凝灰岩 Bリーチング水80720日) 32

-ix-

JNC TJ8400 2003-063

はじめに

TRU廃棄物の処分システムでは構成材料にコンクリートや圧縮成型したベントナイトを用いることが考えられているが普通コンクリートは地下水と接することに

よって周辺地下水を高アルカリ性に変える場合がありベントナイトのゼオライト

化や周囲の岩石の変遷等に影響することが懸念されている1) この変質に対してセメントの改良として間隙水のアルカリ性を下げた低アルカ

リ性セメントの研究が進められているフライアッシュを高含有したHFSC(Highly Fly ash contained Silicafume Cement)の研究が進められこれまで鉄筋腐食に関する実用化研究を実施している2) 既往の研究でフライアッシュを 60混合した HFSC では塩化物イオンが浸透しなくても鉄筋腐食が確認されたまたシリカフュームを 20含む HFSC では自己収縮ひずみが大きくなることが懸念される さらに低アルカリセメントを使用した場合の長期のベントナイトの変質や岩石の

変質についても調べておく必要がある 以上の背景から本研究ではフライアッシュの使用率をかえた HFSC における鉄筋腐食の評価自己収縮性の評価を行い実用化の研究を実施したさらに HFSCの浸出液を用いたベントナイトおよび岩石の浸透試験を行いベントナイトおよび岩

石の高アルカリ変質について得られた知見をまとめた

-1-

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1 低アルカリ性コンクリ-トにおける鉄筋腐食

11 試験概要

既往の研究でフライアッシュを 60使用したHFSC(HFSC226 と称す)における鉄筋腐食促進試験を実施した2) 本研究ではフライアッシュの混合割合が異なる低アルカリ性セメント(HFSC)を使

用し水セメント比 30のコンクリートで供試体を作製し鉄筋腐食促進試験を実施することにより鉄筋腐食に及ぼす以下の要因の影響について促進試験による評価を

行った ①塩水濃度の影響 ②かぶりの影響 ③ひび割れ幅の影響

鉄筋の腐食に与えるセメントの影響を評価するために鉄筋腐食試験に使用したコ

ンクリートについて以下の試験を実施した ①塩分浸透量測定(促進環境および標準浸漬環境) ②pH測定

12 コンクリ-トの配合

表 11に使用したコンクリートの配合を示す 使用したコンクリートは水セメント比および細骨材率を一定としセメントの密度に

より調整を行ったものであるコンシステンシ-に関してはスランプフローが目標

範囲に入るように高性能 AE減水剤により調整した

表 11 コンクリートの配合

配合 WC 目標スラン

プフロー sa 単 位 量(kgm3) 使用

セメント 記号 () (cm) () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 575 807 673 Ctimes220

HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes230 HFSC

HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes300

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

- - 2

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13 試験の組み合わせ

OPCHFSC424HFSC325において実施した試験の組み合わせを表 12に示す 表 12 セメントごとの試験の組み合わせ

セメントの種類 鉄筋腐食促進試験 塩分浸透促進試験 塩分浸透標準試験 pH 経時変化測定

HSFC424

HFSC325

HFSC226

OPC

14 鉄筋腐食促進試験方法

(1) 試験項目

鉄筋腐食促進試験の試験項目を表 13に示す

表 13 腐食促進試験の試験項目

腐食条件 パラメータ 使用セメント

WC () 固定条件 パラメータ 試験項目

HFSC424 30

塩水濃度

HFSC325 30

かぶり 25mm

人工海水濃度 50100飽和 (Clイオン濃度0918

27)

自然電位分極抵抗 鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量 塩分浸透量

pH

HFSC① 30

かぶり HFSC② 30

人工海水

濃度 100

かぶり 152535mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

HFSC① 30

ひび割れ幅 HFSC② 30

人工海水

濃度

100 かぶり 25mm

ひび割れ幅 020510mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

(2) 促進試験条件

本試験での促進条件は既往の研究と同じ促進条件とした促進条件は湿潤期間 3日間乾燥期間 4日間を 1サイクルとし13サイクルの乾湿繰返しを行った 湿潤乾燥条件は

湿潤条件50の人工海水に浸漬 乾燥条件5060RHの恒温恒湿室内

- - 3

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としたコンクリ-トのは打設後 28日間標準養生(水中 20養生)とし促進試験開始材齢を 28日として湿潤状態から開始して上記の促進試験を 13サイクル(91日間)実施した (3) 試験実施期間

表 14に試験方法と試験実施時期を示す

表 14 試験方法と実施時期

実施時期 試験項目 試験方法 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - コンクリート中の塩分濃度 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進試験開始時 (材齢 28日)

pH - 自然電位 -

促進 6 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 8 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 10 サイクル終了後 分極抵抗 - 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - 腐食面積率 JCI基準案 腐食減量 - コンクリート中の塩分分析 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進 13 サイクル終了後 (材齢 119日)

コンクリートの pH測定 -

15 塩分浸透標準試験方法

供試体はφ150times300mmの型枠を用いて製作した

コンクリートの種類はOPCHFSC424HFSC325 および HFSC226の 4水準とし

養生およびコーティングの方法は促進試験における塩分浸透量測定供試体と同様とした

28 日標準養生後人工海水濃度 100(Cl-イオン濃度 18)に 20の条件で浸漬し

鉄筋腐食促進試験の終了時にこの供試体を取り出し塩分浸透量を測定した

塩分浸透量の測定方法は鉄筋腐食促進試験と同じである

- - 4

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16 pH測定試験方法

この試験ではHFSC を使用した場合の長期的な浸漬液の pH の低下速度を測定した 鉄筋腐食促進試験で使用したコンクリートと同様な水セメント比のセメントペース

ト(水セメント比 30)を用いて直径 5cm高さ 10cm の円柱供試体を作成したなおセメントの種類はHSFC226HFSC424HFSC325である 円柱供試体は液固比が 21 となるようにイオン交換水中に浸漬し材齢 28 日

91日において円柱をスライスしたものを試料としpHを測定した pHの測定方法はスライスした試料を微粉砕した後試料 20gにイオン交換水 40gとなるようにイオン交換水中に浸漬し1週間放置した後pHを測定した 17 試験結果

171 フレッシュコンクリート試験結果

フレッシュコンクリート試験結果を表 15に示す

表 15 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート温度 ()

HFSC424 680times680 37 210 HFSC325 700times680 41 210 HFSC226 680times680 42 210

OPC 630times620 39 210

172 圧縮強度および引張強度

圧縮強度および引張強度試験結果を表 16に示す

表 16 圧縮強度および引張強度

圧縮強度 (Nmm2) 引張強度 (Nmm2) 記 号

材齢 28日 材齢 119日 材齢 28日 材齢 119日

HFSC424 748 938 415 619

HFSC325 516 736 355 491 HFSC226 338 549 - -

HFSC226の試験結果は既往の研究 2)より引用した

- - 5

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173 鉄筋腐食

(1) 自然電位

図 11および図 12に自然電位測定結果を示す

-800

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 11自然電位の測定結果(HFSC424)

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし

18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 12 自然電位の測定結果(HFSC325)

- - 6

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(2) 分極抵抗

表 17に分極抵抗測定結果を示す

表 17 分極抵抗測定結果 上段分極抵抗(Ωcm2) 下段腐食速度(microAcm2) 記号 海水濃度 かぶり ひび割れ

0 サイクル 6 サイクル 8 サイクル 10 サイクル 13 サイクル 2149 2262 2319 2247 1818 50

0012 0012 0011 0012 0015 2505 2038 2265 2377 2083

飽和 0011 0013 0011 0011 0013 2302 2105 1557 1914 2240

25mm

0011 0012 0017 0014 0012 2865 2645 2406 2434 2190 15mm 0009 0010 0011 0011 0012 3237 2948 2927 2889 2228 35mm

無し

0008 0009 0009 0009 0012 3531 3256 1139 1329 1246 02mm 0007 0008 0023 0020 0021 2482 2584 1512 1610 1305 05mm 0011 0010 0017 0017 0020 3614 2636 1742 1753 1208

HFSC424

100

25mm

10mm 0007 0010 0015 0015 0022 2276 2417 2400 2233 1800 50 0012 0011 0011 0012 0014 3044 2590 2320 2372 2106

飽和 0009 0010 0011 0011 0012 2875 2309 2300 2169 2279

25mm

0009 0011 0011 0012 0012 4000 2601 2430 2540 3333 15mm 0007 0010 0011 0010 0008 3283 2377 2220 2375 2330 35mm

無し

0008 0011 0012 0011 0011 3252 2701 2375 2151 1843 02mm 0008 0010 0011 0012 0014 3770 2233 1972 2035 1684 05mm 0007 0012 0013 0013 0015 2258 2385 2270 1571 1237

HFSC325

100

25mm

10mm 0012 0011 0011 0017 0021

- - 7

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174 pH試験

pH測定結果を表 18に示す

表 18 pH測定結果

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 4 HFSC424 1217 1202 HFSC325 1229 1221 HFSC226

28 1229 1216

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 3 HFSC424 1196 1188 HFSC325 1223 1219 HFSC226

91 1240 1241

18 考察

181 塩分浸透性

得られた拡散係数を基に塩分浸透に関する促進試験の促進倍率と定義し値を算

定した表 19に促進倍率を示す

表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 セメントの種類 促進試験の拡散係数①

(times10-8cm2s) 標準試験の拡散係数② (times10-8cm2s)

促進倍率①②

HFSC424 29 177 16 HFSC325 40 190 20 HFSC226 40 2057 02 OPC 44 108 35

182 塩分の固定化能力

OPCでは塩化物イオンが浸入した場合フリーデル氏塩として塩化物イオンを固定化する能力があるここでは塩分浸透試験から得られた全塩分量から可溶性塩分

を除いたものが塩分を固定化する能力と定義する 標準試験で測定された各セメントにおける塩分固定化能力を表 110 に示すまた

本研究で得られた pHと固定化された塩分量の関係を図 13に示す

- - 8

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表 110 HFSCの塩分固定能力 セメントの種類

固定された塩分量

(kgm3) pH 試験方法

HFSC424 065 1241 標準 HFSC325 022 1219 標準 HFSC226 000 1188 標準

OPC 098 1300 標準

y = -03404x2 + 93859x - 63495

-02

0

02

04

06

08

1

12

118 12 122 124 126 128 13 132

pH

固定された塩分量(kgm3)

図 117コンクリートのpHと塩分固定能力

183 pHの低下速度

本研究の期間中ではpHの変化に関しては浸漬 28日と 91日の 2点測定したここではpHと経過時間の関係が既往の研究3)と同様に直線と考えてpHが 110 および 100になる時間を算出した 本研究で得られた pHと経過時間の関係は次のようである HFSC424 pH(t)=-000254t + 1248 HFSC325 pH(t)=-000032t + 1221 HFSC226 pH(t)=-000222t + 1208 ここでt経過時間(日)である ここでは最も大きい pHの低下速度を用いてpHが 110と 100になるまでに必要な期間を推定した表 111 にその結果を示す以上からpHが 110に到達する期間はHFSCでは 2年以内との結果が得られた

- - 9

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表 111 pHの低下予測

pH低下速度 経過時間(年) セメントの種類 初期 pH

1日当り 1年当り pH 110 pH 100 HFSC424 1248 160 267 HFSC325 1221 131 238 HFSC226 1208

000254 0927 117 224

184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合)

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係

これまで実験したひび割れのない供試体における pH と鉄筋位置での全塩分量と腐

食面積率および腐食減量率をまとめて表 112に示す

表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果

pH 鉄筋位置 セメントの

種類

人工海水 の塩化物イオ

ン濃度() 試験開

始前 試験終

了時 かぶり (mm)

全塩分量

(kgm3)

腐食面積

率() 腐食減量

率()

15 022 50 011 25 000 00 002 HFSC424 1203 1164 35 000 00 002 15 031 20 005 25 000 00 004 HFSC325 1172 1141 35 000 00 003 15 066 5370 058 25 031 1058 063 HFSC226 1143 1110 35 026 821 020 15 013 231 055 25 009 00 00 OPC

18

1300 1300 35 016 00 00

HFSC424 1203 1164 011 30 001 HFSC325 1172 1141 000 20 005 HFSC226 1143 1110 006 2818 140

OPC

27

1300 1300 009 00 00

HFSC226 1143 1110 114 1429 076

OPC 塩分練り込み

1300 1300

25

109 427 085 図 14に鉄筋位置の全塩分量と腐食減量を示すHFSC226と OPCの一部に塩分量が小さいにも関わらず腐食が進んでいるものが見られるが概ね全塩分量が大きくな

ると腐食減量率が大きくなる傾向が認められるHFSC に関しては塩分固定能力はなく塩分が浸透するとすぐに塩分環境下の腐食を始めると考えるべきである

- - 10

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全塩分量と減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

0 02 04 06 08 1 12

全塩分量(kgm3)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 14 全塩分量と腐食減量率

(2) コンクリートの pHと腐食量の関係

塩分が少ない状態(HFSC02kgm3以下OPC10kgm3以下)でのコンクリート

のpH(試験終了後)と腐食減量関係を図 15に示す コンクリートのpHと腐食減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

11 115 12 125 13 135

pH

腐食減量率()

図 15 コンクリートの pHと腐食減量率

- - 11

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pHが大きくなると塩分が存在しない場合の腐食量は小さくなっているしかしpHが 110 付近では急激に腐食減量率が大きくなったpH と腐食の関係を明確に定量化することはできなかったがpH1125 より pH が低くなると塩分がなくても腐食が進行することが認められる HFSC の配合を見ると本実験の範囲ではHFSC226 は塩分が浸透しなくても腐食する領域に位置しHFSC325 と 424 は塩分がこなければ腐食しない領域に位置すると考えられるただしHFSC ではフライアッシュのポゾラン反応とともに pH が低下してき110 を下回ることが想定されるために鉄筋コンクリート構造として工学的な検討を行う場合は塩分が浸透しなくても腐食すると考える必要があるさらに

HFSC226では塩分が存在する場合の腐食量と存在しない場合の腐食量は腐食減量率から見るとほぼ同等であった

(3) 腐食速度

HFSC226の塩分が鉄筋に到達しない供試体の腐食減量率をもとに塩分が存在しない場合の腐食速度を推定したHFSC226の 91日間におけるかぶり 25mmの腐食減量率は 0631で35mm の腐食減量率は 0201であったここで両者の平均をHFSC226の塩分が存在しない場合の腐食率とすると167年となる 一方既往の研究3)によれば一年間海洋環境下(海中)に暴露したHFSC226を用いた腐食速度は塩分が鉄筋まで到達しない条件下で 043年であった 次に塩分が存在する場合の腐食速度は塩分練り込み供試体の腐食減量率(07691日)と促進倍率 43倍から換算すると 071となる塩分が存在するときの腐食減量率はHFSC226と OPCでは076と 085とほとんど変わらないことから塩分が到達した後の鉄筋腐食量は pH に依存しないものと考えられる以上の計算を

HFSC424および 325に当てはめるとHFSC424および 325では塩分が浸入し到達しないと腐食しないということになる 鉄筋の腐食を考える上での腐食速度は表 113のようになる

表 113 鉄筋の腐食速度

セメントの

種類 pH(試験開始時)

塩分が浸透しないときの腐

食速度(重量年)

塩分が浸透したと

きの腐食速度 (重量年)

HFSC424 1164 HFSC325 1141 000

HFSC226 1110 043 071

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合)

ひび割れを有する場合の鉄筋の腐食減量率についての試験結果を表 114に示す既

- - 12

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往の研究2)におけるOPCおよびHFSC226の試験結果についても参考として示した

表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果

セメントの種類 海水濃度 (Cl)

pH

かぶり (mm)

ひび割れ幅 (mm)

腐食面積率 ()

腐食減量率 ()

00 000 002 02 1600 019 05 1800 020 HFSC424 18 1164 25

10 2800 022 0 000 004

02 1900 021 05 2400 025

HFSC325 18 1141 25

10 3100 031 00 1058 063 02 2581 160 05 2938 158

HFSC226 (参考) 18 1110 25

10 3437 154 00 000 000 02 082 099 05 632 134

OPC (参考) 18 1300 25

10 857 058 セメントの種類およびひび割れ幅と腐食減量率の関係を図 16に示す

0

02

04

06

08

1

12

14

16

18

0 02 05 10

ひび割れ幅(mm)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 16 腐食減量率

腐食減量率はHFSC424と 325では OPCより小さくなったこの結果からHFSCではひび割れが入った場合鉄筋の腐食減量は OPCより小さいと考えられる

- - 13

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186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

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表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

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割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

- - 16

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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JNC TJ8400 2003-063

び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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JNC TJ8400 2003-063

加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

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JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 8: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

表 目 次 表 11 コンクリートの配合 2 表 12 セメントごとの試験の組み合わせ 3 表 13 腐食促進試験の試験項目 3 表 14 試験方法と実施時期 4 表 15 供試体一覧 5 表 16 フレッシュコンクリート試験結果 5 表 17 分極抵抗測定結果7 表 18 pH測定結果 8 表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 8 表 110 HFSCの塩分固定能力 9 表 111 pHの抵抗予測 10 表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果 10 表 113 鉄筋の腐食速度 12 表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果 13 表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数 14 表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率) 15 表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期 15 表 118 ひび割れ発生年 15 表 119 ひび割れ発生年その 2 16

表 21 コンクリートの配合 17 表 22 フレッシュコンクリート試験結果 18 表 23 ペーストの自己収縮ひずみ 18 表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ 19 表 31 使用材料21 表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験 21 表 33 リーチング水の pHと化学組成 22 表 34 分析装置と条件 23 表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ 25 表 36 温度区間ごとの質量減少率26 表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 27 表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成 29 表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ 30

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表 310 温度区間ごとの質量減少率31 表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成 34

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図 目 次

図 11 自然電位の測定結果(HFSC424) 6 図 12 自然電位の測定結果(HFSC325) 6 図 13 コンクリートの pHと塩分固定能力 9 図 14 全塩分量と腐食減量率 11 図 15 コンクリートの pHと腐食減量率 11 図 16 腐食減量率 13

図 21 埋込みひずみ計設置方法 18 図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化 19 図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化 19

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写 真 目 次 写真 31 未処理試料のSEM写真(クニピアFreg) 28 写真 32 No41の SEM写真(リーチング水100720日) 28 写真 33 No42の SEM写真(リーチング水80720日) 28 写真 34 No43の SEM写真(リーチング水50720日) 28 写真 35 No44の SEM写真(花崗岩未処理) 32 写真 36 No44の SEM写真(花崗岩リーチング水80720日) 32 写真 37 No45の SEM写真(凝灰岩 A未処理) 32 写真 38 No45の SEM写真(凝灰岩 Aリーチング水80720日) 32 写真 39 No46の SEM写真(凝灰岩 B未処理) 32 写真 310 No46の SEM写真(凝灰岩 Bリーチング水80720日) 32

-ix-

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はじめに

TRU廃棄物の処分システムでは構成材料にコンクリートや圧縮成型したベントナイトを用いることが考えられているが普通コンクリートは地下水と接することに

よって周辺地下水を高アルカリ性に変える場合がありベントナイトのゼオライト

化や周囲の岩石の変遷等に影響することが懸念されている1) この変質に対してセメントの改良として間隙水のアルカリ性を下げた低アルカ

リ性セメントの研究が進められているフライアッシュを高含有したHFSC(Highly Fly ash contained Silicafume Cement)の研究が進められこれまで鉄筋腐食に関する実用化研究を実施している2) 既往の研究でフライアッシュを 60混合した HFSC では塩化物イオンが浸透しなくても鉄筋腐食が確認されたまたシリカフュームを 20含む HFSC では自己収縮ひずみが大きくなることが懸念される さらに低アルカリセメントを使用した場合の長期のベントナイトの変質や岩石の

変質についても調べておく必要がある 以上の背景から本研究ではフライアッシュの使用率をかえた HFSC における鉄筋腐食の評価自己収縮性の評価を行い実用化の研究を実施したさらに HFSCの浸出液を用いたベントナイトおよび岩石の浸透試験を行いベントナイトおよび岩

石の高アルカリ変質について得られた知見をまとめた

-1-

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1 低アルカリ性コンクリ-トにおける鉄筋腐食

11 試験概要

既往の研究でフライアッシュを 60使用したHFSC(HFSC226 と称す)における鉄筋腐食促進試験を実施した2) 本研究ではフライアッシュの混合割合が異なる低アルカリ性セメント(HFSC)を使

用し水セメント比 30のコンクリートで供試体を作製し鉄筋腐食促進試験を実施することにより鉄筋腐食に及ぼす以下の要因の影響について促進試験による評価を

行った ①塩水濃度の影響 ②かぶりの影響 ③ひび割れ幅の影響

鉄筋の腐食に与えるセメントの影響を評価するために鉄筋腐食試験に使用したコ

ンクリートについて以下の試験を実施した ①塩分浸透量測定(促進環境および標準浸漬環境) ②pH測定

12 コンクリ-トの配合

表 11に使用したコンクリートの配合を示す 使用したコンクリートは水セメント比および細骨材率を一定としセメントの密度に

より調整を行ったものであるコンシステンシ-に関してはスランプフローが目標

範囲に入るように高性能 AE減水剤により調整した

表 11 コンクリートの配合

配合 WC 目標スラン

プフロー sa 単 位 量(kgm3) 使用

セメント 記号 () (cm) () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 575 807 673 Ctimes220

HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes230 HFSC

HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes300

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

- - 2

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13 試験の組み合わせ

OPCHFSC424HFSC325において実施した試験の組み合わせを表 12に示す 表 12 セメントごとの試験の組み合わせ

セメントの種類 鉄筋腐食促進試験 塩分浸透促進試験 塩分浸透標準試験 pH 経時変化測定

HSFC424

HFSC325

HFSC226

OPC

14 鉄筋腐食促進試験方法

(1) 試験項目

鉄筋腐食促進試験の試験項目を表 13に示す

表 13 腐食促進試験の試験項目

腐食条件 パラメータ 使用セメント

WC () 固定条件 パラメータ 試験項目

HFSC424 30

塩水濃度

HFSC325 30

かぶり 25mm

人工海水濃度 50100飽和 (Clイオン濃度0918

27)

自然電位分極抵抗 鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量 塩分浸透量

pH

HFSC① 30

かぶり HFSC② 30

人工海水

濃度 100

かぶり 152535mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

HFSC① 30

ひび割れ幅 HFSC② 30

人工海水

濃度

100 かぶり 25mm

ひび割れ幅 020510mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

(2) 促進試験条件

本試験での促進条件は既往の研究と同じ促進条件とした促進条件は湿潤期間 3日間乾燥期間 4日間を 1サイクルとし13サイクルの乾湿繰返しを行った 湿潤乾燥条件は

湿潤条件50の人工海水に浸漬 乾燥条件5060RHの恒温恒湿室内

- - 3

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としたコンクリ-トのは打設後 28日間標準養生(水中 20養生)とし促進試験開始材齢を 28日として湿潤状態から開始して上記の促進試験を 13サイクル(91日間)実施した (3) 試験実施期間

表 14に試験方法と試験実施時期を示す

表 14 試験方法と実施時期

実施時期 試験項目 試験方法 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - コンクリート中の塩分濃度 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進試験開始時 (材齢 28日)

pH - 自然電位 -

促進 6 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 8 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 10 サイクル終了後 分極抵抗 - 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - 腐食面積率 JCI基準案 腐食減量 - コンクリート中の塩分分析 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進 13 サイクル終了後 (材齢 119日)

コンクリートの pH測定 -

15 塩分浸透標準試験方法

供試体はφ150times300mmの型枠を用いて製作した

コンクリートの種類はOPCHFSC424HFSC325 および HFSC226の 4水準とし

養生およびコーティングの方法は促進試験における塩分浸透量測定供試体と同様とした

28 日標準養生後人工海水濃度 100(Cl-イオン濃度 18)に 20の条件で浸漬し

鉄筋腐食促進試験の終了時にこの供試体を取り出し塩分浸透量を測定した

塩分浸透量の測定方法は鉄筋腐食促進試験と同じである

- - 4

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16 pH測定試験方法

この試験ではHFSC を使用した場合の長期的な浸漬液の pH の低下速度を測定した 鉄筋腐食促進試験で使用したコンクリートと同様な水セメント比のセメントペース

ト(水セメント比 30)を用いて直径 5cm高さ 10cm の円柱供試体を作成したなおセメントの種類はHSFC226HFSC424HFSC325である 円柱供試体は液固比が 21 となるようにイオン交換水中に浸漬し材齢 28 日

91日において円柱をスライスしたものを試料としpHを測定した pHの測定方法はスライスした試料を微粉砕した後試料 20gにイオン交換水 40gとなるようにイオン交換水中に浸漬し1週間放置した後pHを測定した 17 試験結果

171 フレッシュコンクリート試験結果

フレッシュコンクリート試験結果を表 15に示す

表 15 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート温度 ()

HFSC424 680times680 37 210 HFSC325 700times680 41 210 HFSC226 680times680 42 210

OPC 630times620 39 210

172 圧縮強度および引張強度

圧縮強度および引張強度試験結果を表 16に示す

表 16 圧縮強度および引張強度

圧縮強度 (Nmm2) 引張強度 (Nmm2) 記 号

材齢 28日 材齢 119日 材齢 28日 材齢 119日

HFSC424 748 938 415 619

HFSC325 516 736 355 491 HFSC226 338 549 - -

HFSC226の試験結果は既往の研究 2)より引用した

- - 5

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173 鉄筋腐食

(1) 自然電位

図 11および図 12に自然電位測定結果を示す

-800

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 11自然電位の測定結果(HFSC424)

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし

18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 12 自然電位の測定結果(HFSC325)

- - 6

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(2) 分極抵抗

表 17に分極抵抗測定結果を示す

表 17 分極抵抗測定結果 上段分極抵抗(Ωcm2) 下段腐食速度(microAcm2) 記号 海水濃度 かぶり ひび割れ

0 サイクル 6 サイクル 8 サイクル 10 サイクル 13 サイクル 2149 2262 2319 2247 1818 50

0012 0012 0011 0012 0015 2505 2038 2265 2377 2083

飽和 0011 0013 0011 0011 0013 2302 2105 1557 1914 2240

25mm

0011 0012 0017 0014 0012 2865 2645 2406 2434 2190 15mm 0009 0010 0011 0011 0012 3237 2948 2927 2889 2228 35mm

無し

0008 0009 0009 0009 0012 3531 3256 1139 1329 1246 02mm 0007 0008 0023 0020 0021 2482 2584 1512 1610 1305 05mm 0011 0010 0017 0017 0020 3614 2636 1742 1753 1208

HFSC424

100

25mm

10mm 0007 0010 0015 0015 0022 2276 2417 2400 2233 1800 50 0012 0011 0011 0012 0014 3044 2590 2320 2372 2106

飽和 0009 0010 0011 0011 0012 2875 2309 2300 2169 2279

25mm

0009 0011 0011 0012 0012 4000 2601 2430 2540 3333 15mm 0007 0010 0011 0010 0008 3283 2377 2220 2375 2330 35mm

無し

0008 0011 0012 0011 0011 3252 2701 2375 2151 1843 02mm 0008 0010 0011 0012 0014 3770 2233 1972 2035 1684 05mm 0007 0012 0013 0013 0015 2258 2385 2270 1571 1237

HFSC325

100

25mm

10mm 0012 0011 0011 0017 0021

- - 7

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174 pH試験

pH測定結果を表 18に示す

表 18 pH測定結果

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 4 HFSC424 1217 1202 HFSC325 1229 1221 HFSC226

28 1229 1216

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 3 HFSC424 1196 1188 HFSC325 1223 1219 HFSC226

91 1240 1241

18 考察

181 塩分浸透性

得られた拡散係数を基に塩分浸透に関する促進試験の促進倍率と定義し値を算

定した表 19に促進倍率を示す

表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 セメントの種類 促進試験の拡散係数①

(times10-8cm2s) 標準試験の拡散係数② (times10-8cm2s)

促進倍率①②

HFSC424 29 177 16 HFSC325 40 190 20 HFSC226 40 2057 02 OPC 44 108 35

182 塩分の固定化能力

OPCでは塩化物イオンが浸入した場合フリーデル氏塩として塩化物イオンを固定化する能力があるここでは塩分浸透試験から得られた全塩分量から可溶性塩分

を除いたものが塩分を固定化する能力と定義する 標準試験で測定された各セメントにおける塩分固定化能力を表 110 に示すまた

本研究で得られた pHと固定化された塩分量の関係を図 13に示す

- - 8

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表 110 HFSCの塩分固定能力 セメントの種類

固定された塩分量

(kgm3) pH 試験方法

HFSC424 065 1241 標準 HFSC325 022 1219 標準 HFSC226 000 1188 標準

OPC 098 1300 標準

y = -03404x2 + 93859x - 63495

-02

0

02

04

06

08

1

12

118 12 122 124 126 128 13 132

pH

固定された塩分量(kgm3)

図 117コンクリートのpHと塩分固定能力

183 pHの低下速度

本研究の期間中ではpHの変化に関しては浸漬 28日と 91日の 2点測定したここではpHと経過時間の関係が既往の研究3)と同様に直線と考えてpHが 110 および 100になる時間を算出した 本研究で得られた pHと経過時間の関係は次のようである HFSC424 pH(t)=-000254t + 1248 HFSC325 pH(t)=-000032t + 1221 HFSC226 pH(t)=-000222t + 1208 ここでt経過時間(日)である ここでは最も大きい pHの低下速度を用いてpHが 110と 100になるまでに必要な期間を推定した表 111 にその結果を示す以上からpHが 110に到達する期間はHFSCでは 2年以内との結果が得られた

- - 9

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表 111 pHの低下予測

pH低下速度 経過時間(年) セメントの種類 初期 pH

1日当り 1年当り pH 110 pH 100 HFSC424 1248 160 267 HFSC325 1221 131 238 HFSC226 1208

000254 0927 117 224

184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合)

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係

これまで実験したひび割れのない供試体における pH と鉄筋位置での全塩分量と腐

食面積率および腐食減量率をまとめて表 112に示す

表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果

pH 鉄筋位置 セメントの

種類

人工海水 の塩化物イオ

ン濃度() 試験開

始前 試験終

了時 かぶり (mm)

全塩分量

(kgm3)

腐食面積

率() 腐食減量

率()

15 022 50 011 25 000 00 002 HFSC424 1203 1164 35 000 00 002 15 031 20 005 25 000 00 004 HFSC325 1172 1141 35 000 00 003 15 066 5370 058 25 031 1058 063 HFSC226 1143 1110 35 026 821 020 15 013 231 055 25 009 00 00 OPC

18

1300 1300 35 016 00 00

HFSC424 1203 1164 011 30 001 HFSC325 1172 1141 000 20 005 HFSC226 1143 1110 006 2818 140

OPC

27

1300 1300 009 00 00

HFSC226 1143 1110 114 1429 076

OPC 塩分練り込み

1300 1300

25

109 427 085 図 14に鉄筋位置の全塩分量と腐食減量を示すHFSC226と OPCの一部に塩分量が小さいにも関わらず腐食が進んでいるものが見られるが概ね全塩分量が大きくな

ると腐食減量率が大きくなる傾向が認められるHFSC に関しては塩分固定能力はなく塩分が浸透するとすぐに塩分環境下の腐食を始めると考えるべきである

- - 10

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全塩分量と減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

0 02 04 06 08 1 12

全塩分量(kgm3)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 14 全塩分量と腐食減量率

(2) コンクリートの pHと腐食量の関係

塩分が少ない状態(HFSC02kgm3以下OPC10kgm3以下)でのコンクリート

のpH(試験終了後)と腐食減量関係を図 15に示す コンクリートのpHと腐食減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

11 115 12 125 13 135

pH

腐食減量率()

図 15 コンクリートの pHと腐食減量率

- - 11

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pHが大きくなると塩分が存在しない場合の腐食量は小さくなっているしかしpHが 110 付近では急激に腐食減量率が大きくなったpH と腐食の関係を明確に定量化することはできなかったがpH1125 より pH が低くなると塩分がなくても腐食が進行することが認められる HFSC の配合を見ると本実験の範囲ではHFSC226 は塩分が浸透しなくても腐食する領域に位置しHFSC325 と 424 は塩分がこなければ腐食しない領域に位置すると考えられるただしHFSC ではフライアッシュのポゾラン反応とともに pH が低下してき110 を下回ることが想定されるために鉄筋コンクリート構造として工学的な検討を行う場合は塩分が浸透しなくても腐食すると考える必要があるさらに

HFSC226では塩分が存在する場合の腐食量と存在しない場合の腐食量は腐食減量率から見るとほぼ同等であった

(3) 腐食速度

HFSC226の塩分が鉄筋に到達しない供試体の腐食減量率をもとに塩分が存在しない場合の腐食速度を推定したHFSC226の 91日間におけるかぶり 25mmの腐食減量率は 0631で35mm の腐食減量率は 0201であったここで両者の平均をHFSC226の塩分が存在しない場合の腐食率とすると167年となる 一方既往の研究3)によれば一年間海洋環境下(海中)に暴露したHFSC226を用いた腐食速度は塩分が鉄筋まで到達しない条件下で 043年であった 次に塩分が存在する場合の腐食速度は塩分練り込み供試体の腐食減量率(07691日)と促進倍率 43倍から換算すると 071となる塩分が存在するときの腐食減量率はHFSC226と OPCでは076と 085とほとんど変わらないことから塩分が到達した後の鉄筋腐食量は pH に依存しないものと考えられる以上の計算を

HFSC424および 325に当てはめるとHFSC424および 325では塩分が浸入し到達しないと腐食しないということになる 鉄筋の腐食を考える上での腐食速度は表 113のようになる

表 113 鉄筋の腐食速度

セメントの

種類 pH(試験開始時)

塩分が浸透しないときの腐

食速度(重量年)

塩分が浸透したと

きの腐食速度 (重量年)

HFSC424 1164 HFSC325 1141 000

HFSC226 1110 043 071

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合)

ひび割れを有する場合の鉄筋の腐食減量率についての試験結果を表 114に示す既

- - 12

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往の研究2)におけるOPCおよびHFSC226の試験結果についても参考として示した

表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果

セメントの種類 海水濃度 (Cl)

pH

かぶり (mm)

ひび割れ幅 (mm)

腐食面積率 ()

腐食減量率 ()

00 000 002 02 1600 019 05 1800 020 HFSC424 18 1164 25

10 2800 022 0 000 004

02 1900 021 05 2400 025

HFSC325 18 1141 25

10 3100 031 00 1058 063 02 2581 160 05 2938 158

HFSC226 (参考) 18 1110 25

10 3437 154 00 000 000 02 082 099 05 632 134

OPC (参考) 18 1300 25

10 857 058 セメントの種類およびひび割れ幅と腐食減量率の関係を図 16に示す

0

02

04

06

08

1

12

14

16

18

0 02 05 10

ひび割れ幅(mm)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 16 腐食減量率

腐食減量率はHFSC424と 325では OPCより小さくなったこの結果からHFSCではひび割れが入った場合鉄筋の腐食減量は OPCより小さいと考えられる

- - 13

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186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

- - 14

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表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

- - 15

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割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

- - 16

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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JNC TJ8400 2003-063

加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

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17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

-38-

Page 9: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

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表 310 温度区間ごとの質量減少率31 表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成 34

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図 目 次

図 11 自然電位の測定結果(HFSC424) 6 図 12 自然電位の測定結果(HFSC325) 6 図 13 コンクリートの pHと塩分固定能力 9 図 14 全塩分量と腐食減量率 11 図 15 コンクリートの pHと腐食減量率 11 図 16 腐食減量率 13

図 21 埋込みひずみ計設置方法 18 図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化 19 図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化 19

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写 真 目 次 写真 31 未処理試料のSEM写真(クニピアFreg) 28 写真 32 No41の SEM写真(リーチング水100720日) 28 写真 33 No42の SEM写真(リーチング水80720日) 28 写真 34 No43の SEM写真(リーチング水50720日) 28 写真 35 No44の SEM写真(花崗岩未処理) 32 写真 36 No44の SEM写真(花崗岩リーチング水80720日) 32 写真 37 No45の SEM写真(凝灰岩 A未処理) 32 写真 38 No45の SEM写真(凝灰岩 Aリーチング水80720日) 32 写真 39 No46の SEM写真(凝灰岩 B未処理) 32 写真 310 No46の SEM写真(凝灰岩 Bリーチング水80720日) 32

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はじめに

TRU廃棄物の処分システムでは構成材料にコンクリートや圧縮成型したベントナイトを用いることが考えられているが普通コンクリートは地下水と接することに

よって周辺地下水を高アルカリ性に変える場合がありベントナイトのゼオライト

化や周囲の岩石の変遷等に影響することが懸念されている1) この変質に対してセメントの改良として間隙水のアルカリ性を下げた低アルカ

リ性セメントの研究が進められているフライアッシュを高含有したHFSC(Highly Fly ash contained Silicafume Cement)の研究が進められこれまで鉄筋腐食に関する実用化研究を実施している2) 既往の研究でフライアッシュを 60混合した HFSC では塩化物イオンが浸透しなくても鉄筋腐食が確認されたまたシリカフュームを 20含む HFSC では自己収縮ひずみが大きくなることが懸念される さらに低アルカリセメントを使用した場合の長期のベントナイトの変質や岩石の

変質についても調べておく必要がある 以上の背景から本研究ではフライアッシュの使用率をかえた HFSC における鉄筋腐食の評価自己収縮性の評価を行い実用化の研究を実施したさらに HFSCの浸出液を用いたベントナイトおよび岩石の浸透試験を行いベントナイトおよび岩

石の高アルカリ変質について得られた知見をまとめた

-1-

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1 低アルカリ性コンクリ-トにおける鉄筋腐食

11 試験概要

既往の研究でフライアッシュを 60使用したHFSC(HFSC226 と称す)における鉄筋腐食促進試験を実施した2) 本研究ではフライアッシュの混合割合が異なる低アルカリ性セメント(HFSC)を使

用し水セメント比 30のコンクリートで供試体を作製し鉄筋腐食促進試験を実施することにより鉄筋腐食に及ぼす以下の要因の影響について促進試験による評価を

行った ①塩水濃度の影響 ②かぶりの影響 ③ひび割れ幅の影響

鉄筋の腐食に与えるセメントの影響を評価するために鉄筋腐食試験に使用したコ

ンクリートについて以下の試験を実施した ①塩分浸透量測定(促進環境および標準浸漬環境) ②pH測定

12 コンクリ-トの配合

表 11に使用したコンクリートの配合を示す 使用したコンクリートは水セメント比および細骨材率を一定としセメントの密度に

より調整を行ったものであるコンシステンシ-に関してはスランプフローが目標

範囲に入るように高性能 AE減水剤により調整した

表 11 コンクリートの配合

配合 WC 目標スラン

プフロー sa 単 位 量(kgm3) 使用

セメント 記号 () (cm) () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 575 807 673 Ctimes220

HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes230 HFSC

HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes300

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

- - 2

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13 試験の組み合わせ

OPCHFSC424HFSC325において実施した試験の組み合わせを表 12に示す 表 12 セメントごとの試験の組み合わせ

セメントの種類 鉄筋腐食促進試験 塩分浸透促進試験 塩分浸透標準試験 pH 経時変化測定

HSFC424

HFSC325

HFSC226

OPC

14 鉄筋腐食促進試験方法

(1) 試験項目

鉄筋腐食促進試験の試験項目を表 13に示す

表 13 腐食促進試験の試験項目

腐食条件 パラメータ 使用セメント

WC () 固定条件 パラメータ 試験項目

HFSC424 30

塩水濃度

HFSC325 30

かぶり 25mm

人工海水濃度 50100飽和 (Clイオン濃度0918

27)

自然電位分極抵抗 鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量 塩分浸透量

pH

HFSC① 30

かぶり HFSC② 30

人工海水

濃度 100

かぶり 152535mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

HFSC① 30

ひび割れ幅 HFSC② 30

人工海水

濃度

100 かぶり 25mm

ひび割れ幅 020510mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

(2) 促進試験条件

本試験での促進条件は既往の研究と同じ促進条件とした促進条件は湿潤期間 3日間乾燥期間 4日間を 1サイクルとし13サイクルの乾湿繰返しを行った 湿潤乾燥条件は

湿潤条件50の人工海水に浸漬 乾燥条件5060RHの恒温恒湿室内

- - 3

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としたコンクリ-トのは打設後 28日間標準養生(水中 20養生)とし促進試験開始材齢を 28日として湿潤状態から開始して上記の促進試験を 13サイクル(91日間)実施した (3) 試験実施期間

表 14に試験方法と試験実施時期を示す

表 14 試験方法と実施時期

実施時期 試験項目 試験方法 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - コンクリート中の塩分濃度 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進試験開始時 (材齢 28日)

pH - 自然電位 -

促進 6 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 8 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 10 サイクル終了後 分極抵抗 - 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - 腐食面積率 JCI基準案 腐食減量 - コンクリート中の塩分分析 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進 13 サイクル終了後 (材齢 119日)

コンクリートの pH測定 -

15 塩分浸透標準試験方法

供試体はφ150times300mmの型枠を用いて製作した

コンクリートの種類はOPCHFSC424HFSC325 および HFSC226の 4水準とし

養生およびコーティングの方法は促進試験における塩分浸透量測定供試体と同様とした

28 日標準養生後人工海水濃度 100(Cl-イオン濃度 18)に 20の条件で浸漬し

鉄筋腐食促進試験の終了時にこの供試体を取り出し塩分浸透量を測定した

塩分浸透量の測定方法は鉄筋腐食促進試験と同じである

- - 4

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16 pH測定試験方法

この試験ではHFSC を使用した場合の長期的な浸漬液の pH の低下速度を測定した 鉄筋腐食促進試験で使用したコンクリートと同様な水セメント比のセメントペース

ト(水セメント比 30)を用いて直径 5cm高さ 10cm の円柱供試体を作成したなおセメントの種類はHSFC226HFSC424HFSC325である 円柱供試体は液固比が 21 となるようにイオン交換水中に浸漬し材齢 28 日

91日において円柱をスライスしたものを試料としpHを測定した pHの測定方法はスライスした試料を微粉砕した後試料 20gにイオン交換水 40gとなるようにイオン交換水中に浸漬し1週間放置した後pHを測定した 17 試験結果

171 フレッシュコンクリート試験結果

フレッシュコンクリート試験結果を表 15に示す

表 15 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート温度 ()

HFSC424 680times680 37 210 HFSC325 700times680 41 210 HFSC226 680times680 42 210

OPC 630times620 39 210

172 圧縮強度および引張強度

圧縮強度および引張強度試験結果を表 16に示す

表 16 圧縮強度および引張強度

圧縮強度 (Nmm2) 引張強度 (Nmm2) 記 号

材齢 28日 材齢 119日 材齢 28日 材齢 119日

HFSC424 748 938 415 619

HFSC325 516 736 355 491 HFSC226 338 549 - -

HFSC226の試験結果は既往の研究 2)より引用した

- - 5

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173 鉄筋腐食

(1) 自然電位

図 11および図 12に自然電位測定結果を示す

-800

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 11自然電位の測定結果(HFSC424)

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし

18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 12 自然電位の測定結果(HFSC325)

- - 6

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(2) 分極抵抗

表 17に分極抵抗測定結果を示す

表 17 分極抵抗測定結果 上段分極抵抗(Ωcm2) 下段腐食速度(microAcm2) 記号 海水濃度 かぶり ひび割れ

0 サイクル 6 サイクル 8 サイクル 10 サイクル 13 サイクル 2149 2262 2319 2247 1818 50

0012 0012 0011 0012 0015 2505 2038 2265 2377 2083

飽和 0011 0013 0011 0011 0013 2302 2105 1557 1914 2240

25mm

0011 0012 0017 0014 0012 2865 2645 2406 2434 2190 15mm 0009 0010 0011 0011 0012 3237 2948 2927 2889 2228 35mm

無し

0008 0009 0009 0009 0012 3531 3256 1139 1329 1246 02mm 0007 0008 0023 0020 0021 2482 2584 1512 1610 1305 05mm 0011 0010 0017 0017 0020 3614 2636 1742 1753 1208

HFSC424

100

25mm

10mm 0007 0010 0015 0015 0022 2276 2417 2400 2233 1800 50 0012 0011 0011 0012 0014 3044 2590 2320 2372 2106

飽和 0009 0010 0011 0011 0012 2875 2309 2300 2169 2279

25mm

0009 0011 0011 0012 0012 4000 2601 2430 2540 3333 15mm 0007 0010 0011 0010 0008 3283 2377 2220 2375 2330 35mm

無し

0008 0011 0012 0011 0011 3252 2701 2375 2151 1843 02mm 0008 0010 0011 0012 0014 3770 2233 1972 2035 1684 05mm 0007 0012 0013 0013 0015 2258 2385 2270 1571 1237

HFSC325

100

25mm

10mm 0012 0011 0011 0017 0021

- - 7

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174 pH試験

pH測定結果を表 18に示す

表 18 pH測定結果

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 4 HFSC424 1217 1202 HFSC325 1229 1221 HFSC226

28 1229 1216

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 3 HFSC424 1196 1188 HFSC325 1223 1219 HFSC226

91 1240 1241

18 考察

181 塩分浸透性

得られた拡散係数を基に塩分浸透に関する促進試験の促進倍率と定義し値を算

定した表 19に促進倍率を示す

表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 セメントの種類 促進試験の拡散係数①

(times10-8cm2s) 標準試験の拡散係数② (times10-8cm2s)

促進倍率①②

HFSC424 29 177 16 HFSC325 40 190 20 HFSC226 40 2057 02 OPC 44 108 35

182 塩分の固定化能力

OPCでは塩化物イオンが浸入した場合フリーデル氏塩として塩化物イオンを固定化する能力があるここでは塩分浸透試験から得られた全塩分量から可溶性塩分

を除いたものが塩分を固定化する能力と定義する 標準試験で測定された各セメントにおける塩分固定化能力を表 110 に示すまた

本研究で得られた pHと固定化された塩分量の関係を図 13に示す

- - 8

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表 110 HFSCの塩分固定能力 セメントの種類

固定された塩分量

(kgm3) pH 試験方法

HFSC424 065 1241 標準 HFSC325 022 1219 標準 HFSC226 000 1188 標準

OPC 098 1300 標準

y = -03404x2 + 93859x - 63495

-02

0

02

04

06

08

1

12

118 12 122 124 126 128 13 132

pH

固定された塩分量(kgm3)

図 117コンクリートのpHと塩分固定能力

183 pHの低下速度

本研究の期間中ではpHの変化に関しては浸漬 28日と 91日の 2点測定したここではpHと経過時間の関係が既往の研究3)と同様に直線と考えてpHが 110 および 100になる時間を算出した 本研究で得られた pHと経過時間の関係は次のようである HFSC424 pH(t)=-000254t + 1248 HFSC325 pH(t)=-000032t + 1221 HFSC226 pH(t)=-000222t + 1208 ここでt経過時間(日)である ここでは最も大きい pHの低下速度を用いてpHが 110と 100になるまでに必要な期間を推定した表 111 にその結果を示す以上からpHが 110に到達する期間はHFSCでは 2年以内との結果が得られた

- - 9

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表 111 pHの低下予測

pH低下速度 経過時間(年) セメントの種類 初期 pH

1日当り 1年当り pH 110 pH 100 HFSC424 1248 160 267 HFSC325 1221 131 238 HFSC226 1208

000254 0927 117 224

184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合)

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係

これまで実験したひび割れのない供試体における pH と鉄筋位置での全塩分量と腐

食面積率および腐食減量率をまとめて表 112に示す

表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果

pH 鉄筋位置 セメントの

種類

人工海水 の塩化物イオ

ン濃度() 試験開

始前 試験終

了時 かぶり (mm)

全塩分量

(kgm3)

腐食面積

率() 腐食減量

率()

15 022 50 011 25 000 00 002 HFSC424 1203 1164 35 000 00 002 15 031 20 005 25 000 00 004 HFSC325 1172 1141 35 000 00 003 15 066 5370 058 25 031 1058 063 HFSC226 1143 1110 35 026 821 020 15 013 231 055 25 009 00 00 OPC

18

1300 1300 35 016 00 00

HFSC424 1203 1164 011 30 001 HFSC325 1172 1141 000 20 005 HFSC226 1143 1110 006 2818 140

OPC

27

1300 1300 009 00 00

HFSC226 1143 1110 114 1429 076

OPC 塩分練り込み

1300 1300

25

109 427 085 図 14に鉄筋位置の全塩分量と腐食減量を示すHFSC226と OPCの一部に塩分量が小さいにも関わらず腐食が進んでいるものが見られるが概ね全塩分量が大きくな

ると腐食減量率が大きくなる傾向が認められるHFSC に関しては塩分固定能力はなく塩分が浸透するとすぐに塩分環境下の腐食を始めると考えるべきである

- - 10

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全塩分量と減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

0 02 04 06 08 1 12

全塩分量(kgm3)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 14 全塩分量と腐食減量率

(2) コンクリートの pHと腐食量の関係

塩分が少ない状態(HFSC02kgm3以下OPC10kgm3以下)でのコンクリート

のpH(試験終了後)と腐食減量関係を図 15に示す コンクリートのpHと腐食減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

11 115 12 125 13 135

pH

腐食減量率()

図 15 コンクリートの pHと腐食減量率

- - 11

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pHが大きくなると塩分が存在しない場合の腐食量は小さくなっているしかしpHが 110 付近では急激に腐食減量率が大きくなったpH と腐食の関係を明確に定量化することはできなかったがpH1125 より pH が低くなると塩分がなくても腐食が進行することが認められる HFSC の配合を見ると本実験の範囲ではHFSC226 は塩分が浸透しなくても腐食する領域に位置しHFSC325 と 424 は塩分がこなければ腐食しない領域に位置すると考えられるただしHFSC ではフライアッシュのポゾラン反応とともに pH が低下してき110 を下回ることが想定されるために鉄筋コンクリート構造として工学的な検討を行う場合は塩分が浸透しなくても腐食すると考える必要があるさらに

HFSC226では塩分が存在する場合の腐食量と存在しない場合の腐食量は腐食減量率から見るとほぼ同等であった

(3) 腐食速度

HFSC226の塩分が鉄筋に到達しない供試体の腐食減量率をもとに塩分が存在しない場合の腐食速度を推定したHFSC226の 91日間におけるかぶり 25mmの腐食減量率は 0631で35mm の腐食減量率は 0201であったここで両者の平均をHFSC226の塩分が存在しない場合の腐食率とすると167年となる 一方既往の研究3)によれば一年間海洋環境下(海中)に暴露したHFSC226を用いた腐食速度は塩分が鉄筋まで到達しない条件下で 043年であった 次に塩分が存在する場合の腐食速度は塩分練り込み供試体の腐食減量率(07691日)と促進倍率 43倍から換算すると 071となる塩分が存在するときの腐食減量率はHFSC226と OPCでは076と 085とほとんど変わらないことから塩分が到達した後の鉄筋腐食量は pH に依存しないものと考えられる以上の計算を

HFSC424および 325に当てはめるとHFSC424および 325では塩分が浸入し到達しないと腐食しないということになる 鉄筋の腐食を考える上での腐食速度は表 113のようになる

表 113 鉄筋の腐食速度

セメントの

種類 pH(試験開始時)

塩分が浸透しないときの腐

食速度(重量年)

塩分が浸透したと

きの腐食速度 (重量年)

HFSC424 1164 HFSC325 1141 000

HFSC226 1110 043 071

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合)

ひび割れを有する場合の鉄筋の腐食減量率についての試験結果を表 114に示す既

- - 12

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往の研究2)におけるOPCおよびHFSC226の試験結果についても参考として示した

表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果

セメントの種類 海水濃度 (Cl)

pH

かぶり (mm)

ひび割れ幅 (mm)

腐食面積率 ()

腐食減量率 ()

00 000 002 02 1600 019 05 1800 020 HFSC424 18 1164 25

10 2800 022 0 000 004

02 1900 021 05 2400 025

HFSC325 18 1141 25

10 3100 031 00 1058 063 02 2581 160 05 2938 158

HFSC226 (参考) 18 1110 25

10 3437 154 00 000 000 02 082 099 05 632 134

OPC (参考) 18 1300 25

10 857 058 セメントの種類およびひび割れ幅と腐食減量率の関係を図 16に示す

0

02

04

06

08

1

12

14

16

18

0 02 05 10

ひび割れ幅(mm)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 16 腐食減量率

腐食減量率はHFSC424と 325では OPCより小さくなったこの結果からHFSCではひび割れが入った場合鉄筋の腐食減量は OPCより小さいと考えられる

- - 13

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186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

- - 14

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表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

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割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

- - 16

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

-17-

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

-18-

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

-31-

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

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17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

-38-

Page 10: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

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図 目 次

図 11 自然電位の測定結果(HFSC424) 6 図 12 自然電位の測定結果(HFSC325) 6 図 13 コンクリートの pHと塩分固定能力 9 図 14 全塩分量と腐食減量率 11 図 15 コンクリートの pHと腐食減量率 11 図 16 腐食減量率 13

図 21 埋込みひずみ計設置方法 18 図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化 19 図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化 19

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写 真 目 次 写真 31 未処理試料のSEM写真(クニピアFreg) 28 写真 32 No41の SEM写真(リーチング水100720日) 28 写真 33 No42の SEM写真(リーチング水80720日) 28 写真 34 No43の SEM写真(リーチング水50720日) 28 写真 35 No44の SEM写真(花崗岩未処理) 32 写真 36 No44の SEM写真(花崗岩リーチング水80720日) 32 写真 37 No45の SEM写真(凝灰岩 A未処理) 32 写真 38 No45の SEM写真(凝灰岩 Aリーチング水80720日) 32 写真 39 No46の SEM写真(凝灰岩 B未処理) 32 写真 310 No46の SEM写真(凝灰岩 Bリーチング水80720日) 32

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はじめに

TRU廃棄物の処分システムでは構成材料にコンクリートや圧縮成型したベントナイトを用いることが考えられているが普通コンクリートは地下水と接することに

よって周辺地下水を高アルカリ性に変える場合がありベントナイトのゼオライト

化や周囲の岩石の変遷等に影響することが懸念されている1) この変質に対してセメントの改良として間隙水のアルカリ性を下げた低アルカ

リ性セメントの研究が進められているフライアッシュを高含有したHFSC(Highly Fly ash contained Silicafume Cement)の研究が進められこれまで鉄筋腐食に関する実用化研究を実施している2) 既往の研究でフライアッシュを 60混合した HFSC では塩化物イオンが浸透しなくても鉄筋腐食が確認されたまたシリカフュームを 20含む HFSC では自己収縮ひずみが大きくなることが懸念される さらに低アルカリセメントを使用した場合の長期のベントナイトの変質や岩石の

変質についても調べておく必要がある 以上の背景から本研究ではフライアッシュの使用率をかえた HFSC における鉄筋腐食の評価自己収縮性の評価を行い実用化の研究を実施したさらに HFSCの浸出液を用いたベントナイトおよび岩石の浸透試験を行いベントナイトおよび岩

石の高アルカリ変質について得られた知見をまとめた

-1-

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1 低アルカリ性コンクリ-トにおける鉄筋腐食

11 試験概要

既往の研究でフライアッシュを 60使用したHFSC(HFSC226 と称す)における鉄筋腐食促進試験を実施した2) 本研究ではフライアッシュの混合割合が異なる低アルカリ性セメント(HFSC)を使

用し水セメント比 30のコンクリートで供試体を作製し鉄筋腐食促進試験を実施することにより鉄筋腐食に及ぼす以下の要因の影響について促進試験による評価を

行った ①塩水濃度の影響 ②かぶりの影響 ③ひび割れ幅の影響

鉄筋の腐食に与えるセメントの影響を評価するために鉄筋腐食試験に使用したコ

ンクリートについて以下の試験を実施した ①塩分浸透量測定(促進環境および標準浸漬環境) ②pH測定

12 コンクリ-トの配合

表 11に使用したコンクリートの配合を示す 使用したコンクリートは水セメント比および細骨材率を一定としセメントの密度に

より調整を行ったものであるコンシステンシ-に関してはスランプフローが目標

範囲に入るように高性能 AE減水剤により調整した

表 11 コンクリートの配合

配合 WC 目標スラン

プフロー sa 単 位 量(kgm3) 使用

セメント 記号 () (cm) () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 575 807 673 Ctimes220

HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes230 HFSC

HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes300

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

- - 2

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13 試験の組み合わせ

OPCHFSC424HFSC325において実施した試験の組み合わせを表 12に示す 表 12 セメントごとの試験の組み合わせ

セメントの種類 鉄筋腐食促進試験 塩分浸透促進試験 塩分浸透標準試験 pH 経時変化測定

HSFC424

HFSC325

HFSC226

OPC

14 鉄筋腐食促進試験方法

(1) 試験項目

鉄筋腐食促進試験の試験項目を表 13に示す

表 13 腐食促進試験の試験項目

腐食条件 パラメータ 使用セメント

WC () 固定条件 パラメータ 試験項目

HFSC424 30

塩水濃度

HFSC325 30

かぶり 25mm

人工海水濃度 50100飽和 (Clイオン濃度0918

27)

自然電位分極抵抗 鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量 塩分浸透量

pH

HFSC① 30

かぶり HFSC② 30

人工海水

濃度 100

かぶり 152535mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

HFSC① 30

ひび割れ幅 HFSC② 30

人工海水

濃度

100 かぶり 25mm

ひび割れ幅 020510mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

(2) 促進試験条件

本試験での促進条件は既往の研究と同じ促進条件とした促進条件は湿潤期間 3日間乾燥期間 4日間を 1サイクルとし13サイクルの乾湿繰返しを行った 湿潤乾燥条件は

湿潤条件50の人工海水に浸漬 乾燥条件5060RHの恒温恒湿室内

- - 3

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としたコンクリ-トのは打設後 28日間標準養生(水中 20養生)とし促進試験開始材齢を 28日として湿潤状態から開始して上記の促進試験を 13サイクル(91日間)実施した (3) 試験実施期間

表 14に試験方法と試験実施時期を示す

表 14 試験方法と実施時期

実施時期 試験項目 試験方法 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - コンクリート中の塩分濃度 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進試験開始時 (材齢 28日)

pH - 自然電位 -

促進 6 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 8 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 10 サイクル終了後 分極抵抗 - 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - 腐食面積率 JCI基準案 腐食減量 - コンクリート中の塩分分析 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進 13 サイクル終了後 (材齢 119日)

コンクリートの pH測定 -

15 塩分浸透標準試験方法

供試体はφ150times300mmの型枠を用いて製作した

コンクリートの種類はOPCHFSC424HFSC325 および HFSC226の 4水準とし

養生およびコーティングの方法は促進試験における塩分浸透量測定供試体と同様とした

28 日標準養生後人工海水濃度 100(Cl-イオン濃度 18)に 20の条件で浸漬し

鉄筋腐食促進試験の終了時にこの供試体を取り出し塩分浸透量を測定した

塩分浸透量の測定方法は鉄筋腐食促進試験と同じである

- - 4

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16 pH測定試験方法

この試験ではHFSC を使用した場合の長期的な浸漬液の pH の低下速度を測定した 鉄筋腐食促進試験で使用したコンクリートと同様な水セメント比のセメントペース

ト(水セメント比 30)を用いて直径 5cm高さ 10cm の円柱供試体を作成したなおセメントの種類はHSFC226HFSC424HFSC325である 円柱供試体は液固比が 21 となるようにイオン交換水中に浸漬し材齢 28 日

91日において円柱をスライスしたものを試料としpHを測定した pHの測定方法はスライスした試料を微粉砕した後試料 20gにイオン交換水 40gとなるようにイオン交換水中に浸漬し1週間放置した後pHを測定した 17 試験結果

171 フレッシュコンクリート試験結果

フレッシュコンクリート試験結果を表 15に示す

表 15 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート温度 ()

HFSC424 680times680 37 210 HFSC325 700times680 41 210 HFSC226 680times680 42 210

OPC 630times620 39 210

172 圧縮強度および引張強度

圧縮強度および引張強度試験結果を表 16に示す

表 16 圧縮強度および引張強度

圧縮強度 (Nmm2) 引張強度 (Nmm2) 記 号

材齢 28日 材齢 119日 材齢 28日 材齢 119日

HFSC424 748 938 415 619

HFSC325 516 736 355 491 HFSC226 338 549 - -

HFSC226の試験結果は既往の研究 2)より引用した

- - 5

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173 鉄筋腐食

(1) 自然電位

図 11および図 12に自然電位測定結果を示す

-800

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 11自然電位の測定結果(HFSC424)

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし

18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 12 自然電位の測定結果(HFSC325)

- - 6

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(2) 分極抵抗

表 17に分極抵抗測定結果を示す

表 17 分極抵抗測定結果 上段分極抵抗(Ωcm2) 下段腐食速度(microAcm2) 記号 海水濃度 かぶり ひび割れ

0 サイクル 6 サイクル 8 サイクル 10 サイクル 13 サイクル 2149 2262 2319 2247 1818 50

0012 0012 0011 0012 0015 2505 2038 2265 2377 2083

飽和 0011 0013 0011 0011 0013 2302 2105 1557 1914 2240

25mm

0011 0012 0017 0014 0012 2865 2645 2406 2434 2190 15mm 0009 0010 0011 0011 0012 3237 2948 2927 2889 2228 35mm

無し

0008 0009 0009 0009 0012 3531 3256 1139 1329 1246 02mm 0007 0008 0023 0020 0021 2482 2584 1512 1610 1305 05mm 0011 0010 0017 0017 0020 3614 2636 1742 1753 1208

HFSC424

100

25mm

10mm 0007 0010 0015 0015 0022 2276 2417 2400 2233 1800 50 0012 0011 0011 0012 0014 3044 2590 2320 2372 2106

飽和 0009 0010 0011 0011 0012 2875 2309 2300 2169 2279

25mm

0009 0011 0011 0012 0012 4000 2601 2430 2540 3333 15mm 0007 0010 0011 0010 0008 3283 2377 2220 2375 2330 35mm

無し

0008 0011 0012 0011 0011 3252 2701 2375 2151 1843 02mm 0008 0010 0011 0012 0014 3770 2233 1972 2035 1684 05mm 0007 0012 0013 0013 0015 2258 2385 2270 1571 1237

HFSC325

100

25mm

10mm 0012 0011 0011 0017 0021

- - 7

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174 pH試験

pH測定結果を表 18に示す

表 18 pH測定結果

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 4 HFSC424 1217 1202 HFSC325 1229 1221 HFSC226

28 1229 1216

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 3 HFSC424 1196 1188 HFSC325 1223 1219 HFSC226

91 1240 1241

18 考察

181 塩分浸透性

得られた拡散係数を基に塩分浸透に関する促進試験の促進倍率と定義し値を算

定した表 19に促進倍率を示す

表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 セメントの種類 促進試験の拡散係数①

(times10-8cm2s) 標準試験の拡散係数② (times10-8cm2s)

促進倍率①②

HFSC424 29 177 16 HFSC325 40 190 20 HFSC226 40 2057 02 OPC 44 108 35

182 塩分の固定化能力

OPCでは塩化物イオンが浸入した場合フリーデル氏塩として塩化物イオンを固定化する能力があるここでは塩分浸透試験から得られた全塩分量から可溶性塩分

を除いたものが塩分を固定化する能力と定義する 標準試験で測定された各セメントにおける塩分固定化能力を表 110 に示すまた

本研究で得られた pHと固定化された塩分量の関係を図 13に示す

- - 8

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表 110 HFSCの塩分固定能力 セメントの種類

固定された塩分量

(kgm3) pH 試験方法

HFSC424 065 1241 標準 HFSC325 022 1219 標準 HFSC226 000 1188 標準

OPC 098 1300 標準

y = -03404x2 + 93859x - 63495

-02

0

02

04

06

08

1

12

118 12 122 124 126 128 13 132

pH

固定された塩分量(kgm3)

図 117コンクリートのpHと塩分固定能力

183 pHの低下速度

本研究の期間中ではpHの変化に関しては浸漬 28日と 91日の 2点測定したここではpHと経過時間の関係が既往の研究3)と同様に直線と考えてpHが 110 および 100になる時間を算出した 本研究で得られた pHと経過時間の関係は次のようである HFSC424 pH(t)=-000254t + 1248 HFSC325 pH(t)=-000032t + 1221 HFSC226 pH(t)=-000222t + 1208 ここでt経過時間(日)である ここでは最も大きい pHの低下速度を用いてpHが 110と 100になるまでに必要な期間を推定した表 111 にその結果を示す以上からpHが 110に到達する期間はHFSCでは 2年以内との結果が得られた

- - 9

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表 111 pHの低下予測

pH低下速度 経過時間(年) セメントの種類 初期 pH

1日当り 1年当り pH 110 pH 100 HFSC424 1248 160 267 HFSC325 1221 131 238 HFSC226 1208

000254 0927 117 224

184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合)

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係

これまで実験したひび割れのない供試体における pH と鉄筋位置での全塩分量と腐

食面積率および腐食減量率をまとめて表 112に示す

表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果

pH 鉄筋位置 セメントの

種類

人工海水 の塩化物イオ

ン濃度() 試験開

始前 試験終

了時 かぶり (mm)

全塩分量

(kgm3)

腐食面積

率() 腐食減量

率()

15 022 50 011 25 000 00 002 HFSC424 1203 1164 35 000 00 002 15 031 20 005 25 000 00 004 HFSC325 1172 1141 35 000 00 003 15 066 5370 058 25 031 1058 063 HFSC226 1143 1110 35 026 821 020 15 013 231 055 25 009 00 00 OPC

18

1300 1300 35 016 00 00

HFSC424 1203 1164 011 30 001 HFSC325 1172 1141 000 20 005 HFSC226 1143 1110 006 2818 140

OPC

27

1300 1300 009 00 00

HFSC226 1143 1110 114 1429 076

OPC 塩分練り込み

1300 1300

25

109 427 085 図 14に鉄筋位置の全塩分量と腐食減量を示すHFSC226と OPCの一部に塩分量が小さいにも関わらず腐食が進んでいるものが見られるが概ね全塩分量が大きくな

ると腐食減量率が大きくなる傾向が認められるHFSC に関しては塩分固定能力はなく塩分が浸透するとすぐに塩分環境下の腐食を始めると考えるべきである

- - 10

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全塩分量と減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

0 02 04 06 08 1 12

全塩分量(kgm3)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 14 全塩分量と腐食減量率

(2) コンクリートの pHと腐食量の関係

塩分が少ない状態(HFSC02kgm3以下OPC10kgm3以下)でのコンクリート

のpH(試験終了後)と腐食減量関係を図 15に示す コンクリートのpHと腐食減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

11 115 12 125 13 135

pH

腐食減量率()

図 15 コンクリートの pHと腐食減量率

- - 11

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pHが大きくなると塩分が存在しない場合の腐食量は小さくなっているしかしpHが 110 付近では急激に腐食減量率が大きくなったpH と腐食の関係を明確に定量化することはできなかったがpH1125 より pH が低くなると塩分がなくても腐食が進行することが認められる HFSC の配合を見ると本実験の範囲ではHFSC226 は塩分が浸透しなくても腐食する領域に位置しHFSC325 と 424 は塩分がこなければ腐食しない領域に位置すると考えられるただしHFSC ではフライアッシュのポゾラン反応とともに pH が低下してき110 を下回ることが想定されるために鉄筋コンクリート構造として工学的な検討を行う場合は塩分が浸透しなくても腐食すると考える必要があるさらに

HFSC226では塩分が存在する場合の腐食量と存在しない場合の腐食量は腐食減量率から見るとほぼ同等であった

(3) 腐食速度

HFSC226の塩分が鉄筋に到達しない供試体の腐食減量率をもとに塩分が存在しない場合の腐食速度を推定したHFSC226の 91日間におけるかぶり 25mmの腐食減量率は 0631で35mm の腐食減量率は 0201であったここで両者の平均をHFSC226の塩分が存在しない場合の腐食率とすると167年となる 一方既往の研究3)によれば一年間海洋環境下(海中)に暴露したHFSC226を用いた腐食速度は塩分が鉄筋まで到達しない条件下で 043年であった 次に塩分が存在する場合の腐食速度は塩分練り込み供試体の腐食減量率(07691日)と促進倍率 43倍から換算すると 071となる塩分が存在するときの腐食減量率はHFSC226と OPCでは076と 085とほとんど変わらないことから塩分が到達した後の鉄筋腐食量は pH に依存しないものと考えられる以上の計算を

HFSC424および 325に当てはめるとHFSC424および 325では塩分が浸入し到達しないと腐食しないということになる 鉄筋の腐食を考える上での腐食速度は表 113のようになる

表 113 鉄筋の腐食速度

セメントの

種類 pH(試験開始時)

塩分が浸透しないときの腐

食速度(重量年)

塩分が浸透したと

きの腐食速度 (重量年)

HFSC424 1164 HFSC325 1141 000

HFSC226 1110 043 071

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合)

ひび割れを有する場合の鉄筋の腐食減量率についての試験結果を表 114に示す既

- - 12

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往の研究2)におけるOPCおよびHFSC226の試験結果についても参考として示した

表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果

セメントの種類 海水濃度 (Cl)

pH

かぶり (mm)

ひび割れ幅 (mm)

腐食面積率 ()

腐食減量率 ()

00 000 002 02 1600 019 05 1800 020 HFSC424 18 1164 25

10 2800 022 0 000 004

02 1900 021 05 2400 025

HFSC325 18 1141 25

10 3100 031 00 1058 063 02 2581 160 05 2938 158

HFSC226 (参考) 18 1110 25

10 3437 154 00 000 000 02 082 099 05 632 134

OPC (参考) 18 1300 25

10 857 058 セメントの種類およびひび割れ幅と腐食減量率の関係を図 16に示す

0

02

04

06

08

1

12

14

16

18

0 02 05 10

ひび割れ幅(mm)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 16 腐食減量率

腐食減量率はHFSC424と 325では OPCより小さくなったこの結果からHFSCではひび割れが入った場合鉄筋の腐食減量は OPCより小さいと考えられる

- - 13

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186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

- - 14

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表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

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割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

- - 16

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

-18-

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

-19-

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

-20-

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

-34-

JNC TJ8400 2003-063

352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

-35-

JNC TJ8400 2003-063

おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

-36-

JNC TJ8400 2003-063

【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

-38-

Page 11: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

写 真 目 次 写真 31 未処理試料のSEM写真(クニピアFreg) 28 写真 32 No41の SEM写真(リーチング水100720日) 28 写真 33 No42の SEM写真(リーチング水80720日) 28 写真 34 No43の SEM写真(リーチング水50720日) 28 写真 35 No44の SEM写真(花崗岩未処理) 32 写真 36 No44の SEM写真(花崗岩リーチング水80720日) 32 写真 37 No45の SEM写真(凝灰岩 A未処理) 32 写真 38 No45の SEM写真(凝灰岩 Aリーチング水80720日) 32 写真 39 No46の SEM写真(凝灰岩 B未処理) 32 写真 310 No46の SEM写真(凝灰岩 Bリーチング水80720日) 32

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はじめに

TRU廃棄物の処分システムでは構成材料にコンクリートや圧縮成型したベントナイトを用いることが考えられているが普通コンクリートは地下水と接することに

よって周辺地下水を高アルカリ性に変える場合がありベントナイトのゼオライト

化や周囲の岩石の変遷等に影響することが懸念されている1) この変質に対してセメントの改良として間隙水のアルカリ性を下げた低アルカ

リ性セメントの研究が進められているフライアッシュを高含有したHFSC(Highly Fly ash contained Silicafume Cement)の研究が進められこれまで鉄筋腐食に関する実用化研究を実施している2) 既往の研究でフライアッシュを 60混合した HFSC では塩化物イオンが浸透しなくても鉄筋腐食が確認されたまたシリカフュームを 20含む HFSC では自己収縮ひずみが大きくなることが懸念される さらに低アルカリセメントを使用した場合の長期のベントナイトの変質や岩石の

変質についても調べておく必要がある 以上の背景から本研究ではフライアッシュの使用率をかえた HFSC における鉄筋腐食の評価自己収縮性の評価を行い実用化の研究を実施したさらに HFSCの浸出液を用いたベントナイトおよび岩石の浸透試験を行いベントナイトおよび岩

石の高アルカリ変質について得られた知見をまとめた

-1-

JNC TJ8400 2003-063

1 低アルカリ性コンクリ-トにおける鉄筋腐食

11 試験概要

既往の研究でフライアッシュを 60使用したHFSC(HFSC226 と称す)における鉄筋腐食促進試験を実施した2) 本研究ではフライアッシュの混合割合が異なる低アルカリ性セメント(HFSC)を使

用し水セメント比 30のコンクリートで供試体を作製し鉄筋腐食促進試験を実施することにより鉄筋腐食に及ぼす以下の要因の影響について促進試験による評価を

行った ①塩水濃度の影響 ②かぶりの影響 ③ひび割れ幅の影響

鉄筋の腐食に与えるセメントの影響を評価するために鉄筋腐食試験に使用したコ

ンクリートについて以下の試験を実施した ①塩分浸透量測定(促進環境および標準浸漬環境) ②pH測定

12 コンクリ-トの配合

表 11に使用したコンクリートの配合を示す 使用したコンクリートは水セメント比および細骨材率を一定としセメントの密度に

より調整を行ったものであるコンシステンシ-に関してはスランプフローが目標

範囲に入るように高性能 AE減水剤により調整した

表 11 コンクリートの配合

配合 WC 目標スラン

プフロー sa 単 位 量(kgm3) 使用

セメント 記号 () (cm) () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 575 807 673 Ctimes220

HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes230 HFSC

HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes300

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

- - 2

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13 試験の組み合わせ

OPCHFSC424HFSC325において実施した試験の組み合わせを表 12に示す 表 12 セメントごとの試験の組み合わせ

セメントの種類 鉄筋腐食促進試験 塩分浸透促進試験 塩分浸透標準試験 pH 経時変化測定

HSFC424

HFSC325

HFSC226

OPC

14 鉄筋腐食促進試験方法

(1) 試験項目

鉄筋腐食促進試験の試験項目を表 13に示す

表 13 腐食促進試験の試験項目

腐食条件 パラメータ 使用セメント

WC () 固定条件 パラメータ 試験項目

HFSC424 30

塩水濃度

HFSC325 30

かぶり 25mm

人工海水濃度 50100飽和 (Clイオン濃度0918

27)

自然電位分極抵抗 鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量 塩分浸透量

pH

HFSC① 30

かぶり HFSC② 30

人工海水

濃度 100

かぶり 152535mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

HFSC① 30

ひび割れ幅 HFSC② 30

人工海水

濃度

100 かぶり 25mm

ひび割れ幅 020510mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

(2) 促進試験条件

本試験での促進条件は既往の研究と同じ促進条件とした促進条件は湿潤期間 3日間乾燥期間 4日間を 1サイクルとし13サイクルの乾湿繰返しを行った 湿潤乾燥条件は

湿潤条件50の人工海水に浸漬 乾燥条件5060RHの恒温恒湿室内

- - 3

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としたコンクリ-トのは打設後 28日間標準養生(水中 20養生)とし促進試験開始材齢を 28日として湿潤状態から開始して上記の促進試験を 13サイクル(91日間)実施した (3) 試験実施期間

表 14に試験方法と試験実施時期を示す

表 14 試験方法と実施時期

実施時期 試験項目 試験方法 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - コンクリート中の塩分濃度 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進試験開始時 (材齢 28日)

pH - 自然電位 -

促進 6 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 8 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 10 サイクル終了後 分極抵抗 - 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - 腐食面積率 JCI基準案 腐食減量 - コンクリート中の塩分分析 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進 13 サイクル終了後 (材齢 119日)

コンクリートの pH測定 -

15 塩分浸透標準試験方法

供試体はφ150times300mmの型枠を用いて製作した

コンクリートの種類はOPCHFSC424HFSC325 および HFSC226の 4水準とし

養生およびコーティングの方法は促進試験における塩分浸透量測定供試体と同様とした

28 日標準養生後人工海水濃度 100(Cl-イオン濃度 18)に 20の条件で浸漬し

鉄筋腐食促進試験の終了時にこの供試体を取り出し塩分浸透量を測定した

塩分浸透量の測定方法は鉄筋腐食促進試験と同じである

- - 4

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16 pH測定試験方法

この試験ではHFSC を使用した場合の長期的な浸漬液の pH の低下速度を測定した 鉄筋腐食促進試験で使用したコンクリートと同様な水セメント比のセメントペース

ト(水セメント比 30)を用いて直径 5cm高さ 10cm の円柱供試体を作成したなおセメントの種類はHSFC226HFSC424HFSC325である 円柱供試体は液固比が 21 となるようにイオン交換水中に浸漬し材齢 28 日

91日において円柱をスライスしたものを試料としpHを測定した pHの測定方法はスライスした試料を微粉砕した後試料 20gにイオン交換水 40gとなるようにイオン交換水中に浸漬し1週間放置した後pHを測定した 17 試験結果

171 フレッシュコンクリート試験結果

フレッシュコンクリート試験結果を表 15に示す

表 15 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート温度 ()

HFSC424 680times680 37 210 HFSC325 700times680 41 210 HFSC226 680times680 42 210

OPC 630times620 39 210

172 圧縮強度および引張強度

圧縮強度および引張強度試験結果を表 16に示す

表 16 圧縮強度および引張強度

圧縮強度 (Nmm2) 引張強度 (Nmm2) 記 号

材齢 28日 材齢 119日 材齢 28日 材齢 119日

HFSC424 748 938 415 619

HFSC325 516 736 355 491 HFSC226 338 549 - -

HFSC226の試験結果は既往の研究 2)より引用した

- - 5

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173 鉄筋腐食

(1) 自然電位

図 11および図 12に自然電位測定結果を示す

-800

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 11自然電位の測定結果(HFSC424)

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし

18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 12 自然電位の測定結果(HFSC325)

- - 6

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(2) 分極抵抗

表 17に分極抵抗測定結果を示す

表 17 分極抵抗測定結果 上段分極抵抗(Ωcm2) 下段腐食速度(microAcm2) 記号 海水濃度 かぶり ひび割れ

0 サイクル 6 サイクル 8 サイクル 10 サイクル 13 サイクル 2149 2262 2319 2247 1818 50

0012 0012 0011 0012 0015 2505 2038 2265 2377 2083

飽和 0011 0013 0011 0011 0013 2302 2105 1557 1914 2240

25mm

0011 0012 0017 0014 0012 2865 2645 2406 2434 2190 15mm 0009 0010 0011 0011 0012 3237 2948 2927 2889 2228 35mm

無し

0008 0009 0009 0009 0012 3531 3256 1139 1329 1246 02mm 0007 0008 0023 0020 0021 2482 2584 1512 1610 1305 05mm 0011 0010 0017 0017 0020 3614 2636 1742 1753 1208

HFSC424

100

25mm

10mm 0007 0010 0015 0015 0022 2276 2417 2400 2233 1800 50 0012 0011 0011 0012 0014 3044 2590 2320 2372 2106

飽和 0009 0010 0011 0011 0012 2875 2309 2300 2169 2279

25mm

0009 0011 0011 0012 0012 4000 2601 2430 2540 3333 15mm 0007 0010 0011 0010 0008 3283 2377 2220 2375 2330 35mm

無し

0008 0011 0012 0011 0011 3252 2701 2375 2151 1843 02mm 0008 0010 0011 0012 0014 3770 2233 1972 2035 1684 05mm 0007 0012 0013 0013 0015 2258 2385 2270 1571 1237

HFSC325

100

25mm

10mm 0012 0011 0011 0017 0021

- - 7

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174 pH試験

pH測定結果を表 18に示す

表 18 pH測定結果

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 4 HFSC424 1217 1202 HFSC325 1229 1221 HFSC226

28 1229 1216

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 3 HFSC424 1196 1188 HFSC325 1223 1219 HFSC226

91 1240 1241

18 考察

181 塩分浸透性

得られた拡散係数を基に塩分浸透に関する促進試験の促進倍率と定義し値を算

定した表 19に促進倍率を示す

表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 セメントの種類 促進試験の拡散係数①

(times10-8cm2s) 標準試験の拡散係数② (times10-8cm2s)

促進倍率①②

HFSC424 29 177 16 HFSC325 40 190 20 HFSC226 40 2057 02 OPC 44 108 35

182 塩分の固定化能力

OPCでは塩化物イオンが浸入した場合フリーデル氏塩として塩化物イオンを固定化する能力があるここでは塩分浸透試験から得られた全塩分量から可溶性塩分

を除いたものが塩分を固定化する能力と定義する 標準試験で測定された各セメントにおける塩分固定化能力を表 110 に示すまた

本研究で得られた pHと固定化された塩分量の関係を図 13に示す

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JNC TJ8400 2003-063

表 110 HFSCの塩分固定能力 セメントの種類

固定された塩分量

(kgm3) pH 試験方法

HFSC424 065 1241 標準 HFSC325 022 1219 標準 HFSC226 000 1188 標準

OPC 098 1300 標準

y = -03404x2 + 93859x - 63495

-02

0

02

04

06

08

1

12

118 12 122 124 126 128 13 132

pH

固定された塩分量(kgm3)

図 117コンクリートのpHと塩分固定能力

183 pHの低下速度

本研究の期間中ではpHの変化に関しては浸漬 28日と 91日の 2点測定したここではpHと経過時間の関係が既往の研究3)と同様に直線と考えてpHが 110 および 100になる時間を算出した 本研究で得られた pHと経過時間の関係は次のようである HFSC424 pH(t)=-000254t + 1248 HFSC325 pH(t)=-000032t + 1221 HFSC226 pH(t)=-000222t + 1208 ここでt経過時間(日)である ここでは最も大きい pHの低下速度を用いてpHが 110と 100になるまでに必要な期間を推定した表 111 にその結果を示す以上からpHが 110に到達する期間はHFSCでは 2年以内との結果が得られた

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表 111 pHの低下予測

pH低下速度 経過時間(年) セメントの種類 初期 pH

1日当り 1年当り pH 110 pH 100 HFSC424 1248 160 267 HFSC325 1221 131 238 HFSC226 1208

000254 0927 117 224

184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合)

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係

これまで実験したひび割れのない供試体における pH と鉄筋位置での全塩分量と腐

食面積率および腐食減量率をまとめて表 112に示す

表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果

pH 鉄筋位置 セメントの

種類

人工海水 の塩化物イオ

ン濃度() 試験開

始前 試験終

了時 かぶり (mm)

全塩分量

(kgm3)

腐食面積

率() 腐食減量

率()

15 022 50 011 25 000 00 002 HFSC424 1203 1164 35 000 00 002 15 031 20 005 25 000 00 004 HFSC325 1172 1141 35 000 00 003 15 066 5370 058 25 031 1058 063 HFSC226 1143 1110 35 026 821 020 15 013 231 055 25 009 00 00 OPC

18

1300 1300 35 016 00 00

HFSC424 1203 1164 011 30 001 HFSC325 1172 1141 000 20 005 HFSC226 1143 1110 006 2818 140

OPC

27

1300 1300 009 00 00

HFSC226 1143 1110 114 1429 076

OPC 塩分練り込み

1300 1300

25

109 427 085 図 14に鉄筋位置の全塩分量と腐食減量を示すHFSC226と OPCの一部に塩分量が小さいにも関わらず腐食が進んでいるものが見られるが概ね全塩分量が大きくな

ると腐食減量率が大きくなる傾向が認められるHFSC に関しては塩分固定能力はなく塩分が浸透するとすぐに塩分環境下の腐食を始めると考えるべきである

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全塩分量と減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

0 02 04 06 08 1 12

全塩分量(kgm3)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 14 全塩分量と腐食減量率

(2) コンクリートの pHと腐食量の関係

塩分が少ない状態(HFSC02kgm3以下OPC10kgm3以下)でのコンクリート

のpH(試験終了後)と腐食減量関係を図 15に示す コンクリートのpHと腐食減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

11 115 12 125 13 135

pH

腐食減量率()

図 15 コンクリートの pHと腐食減量率

- - 11

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pHが大きくなると塩分が存在しない場合の腐食量は小さくなっているしかしpHが 110 付近では急激に腐食減量率が大きくなったpH と腐食の関係を明確に定量化することはできなかったがpH1125 より pH が低くなると塩分がなくても腐食が進行することが認められる HFSC の配合を見ると本実験の範囲ではHFSC226 は塩分が浸透しなくても腐食する領域に位置しHFSC325 と 424 は塩分がこなければ腐食しない領域に位置すると考えられるただしHFSC ではフライアッシュのポゾラン反応とともに pH が低下してき110 を下回ることが想定されるために鉄筋コンクリート構造として工学的な検討を行う場合は塩分が浸透しなくても腐食すると考える必要があるさらに

HFSC226では塩分が存在する場合の腐食量と存在しない場合の腐食量は腐食減量率から見るとほぼ同等であった

(3) 腐食速度

HFSC226の塩分が鉄筋に到達しない供試体の腐食減量率をもとに塩分が存在しない場合の腐食速度を推定したHFSC226の 91日間におけるかぶり 25mmの腐食減量率は 0631で35mm の腐食減量率は 0201であったここで両者の平均をHFSC226の塩分が存在しない場合の腐食率とすると167年となる 一方既往の研究3)によれば一年間海洋環境下(海中)に暴露したHFSC226を用いた腐食速度は塩分が鉄筋まで到達しない条件下で 043年であった 次に塩分が存在する場合の腐食速度は塩分練り込み供試体の腐食減量率(07691日)と促進倍率 43倍から換算すると 071となる塩分が存在するときの腐食減量率はHFSC226と OPCでは076と 085とほとんど変わらないことから塩分が到達した後の鉄筋腐食量は pH に依存しないものと考えられる以上の計算を

HFSC424および 325に当てはめるとHFSC424および 325では塩分が浸入し到達しないと腐食しないということになる 鉄筋の腐食を考える上での腐食速度は表 113のようになる

表 113 鉄筋の腐食速度

セメントの

種類 pH(試験開始時)

塩分が浸透しないときの腐

食速度(重量年)

塩分が浸透したと

きの腐食速度 (重量年)

HFSC424 1164 HFSC325 1141 000

HFSC226 1110 043 071

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合)

ひび割れを有する場合の鉄筋の腐食減量率についての試験結果を表 114に示す既

- - 12

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往の研究2)におけるOPCおよびHFSC226の試験結果についても参考として示した

表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果

セメントの種類 海水濃度 (Cl)

pH

かぶり (mm)

ひび割れ幅 (mm)

腐食面積率 ()

腐食減量率 ()

00 000 002 02 1600 019 05 1800 020 HFSC424 18 1164 25

10 2800 022 0 000 004

02 1900 021 05 2400 025

HFSC325 18 1141 25

10 3100 031 00 1058 063 02 2581 160 05 2938 158

HFSC226 (参考) 18 1110 25

10 3437 154 00 000 000 02 082 099 05 632 134

OPC (参考) 18 1300 25

10 857 058 セメントの種類およびひび割れ幅と腐食減量率の関係を図 16に示す

0

02

04

06

08

1

12

14

16

18

0 02 05 10

ひび割れ幅(mm)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 16 腐食減量率

腐食減量率はHFSC424と 325では OPCより小さくなったこの結果からHFSCではひび割れが入った場合鉄筋の腐食減量は OPCより小さいと考えられる

- - 13

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186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

- - 14

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表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

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割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

- - 16

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

-18-

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

-19-

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

-22-

JNC TJ8400 2003-063

び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

-23-

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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JNC TJ8400 2003-063

【参考文献】

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研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

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ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

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11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

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JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 12: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

はじめに

TRU廃棄物の処分システムでは構成材料にコンクリートや圧縮成型したベントナイトを用いることが考えられているが普通コンクリートは地下水と接することに

よって周辺地下水を高アルカリ性に変える場合がありベントナイトのゼオライト

化や周囲の岩石の変遷等に影響することが懸念されている1) この変質に対してセメントの改良として間隙水のアルカリ性を下げた低アルカ

リ性セメントの研究が進められているフライアッシュを高含有したHFSC(Highly Fly ash contained Silicafume Cement)の研究が進められこれまで鉄筋腐食に関する実用化研究を実施している2) 既往の研究でフライアッシュを 60混合した HFSC では塩化物イオンが浸透しなくても鉄筋腐食が確認されたまたシリカフュームを 20含む HFSC では自己収縮ひずみが大きくなることが懸念される さらに低アルカリセメントを使用した場合の長期のベントナイトの変質や岩石の

変質についても調べておく必要がある 以上の背景から本研究ではフライアッシュの使用率をかえた HFSC における鉄筋腐食の評価自己収縮性の評価を行い実用化の研究を実施したさらに HFSCの浸出液を用いたベントナイトおよび岩石の浸透試験を行いベントナイトおよび岩

石の高アルカリ変質について得られた知見をまとめた

-1-

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1 低アルカリ性コンクリ-トにおける鉄筋腐食

11 試験概要

既往の研究でフライアッシュを 60使用したHFSC(HFSC226 と称す)における鉄筋腐食促進試験を実施した2) 本研究ではフライアッシュの混合割合が異なる低アルカリ性セメント(HFSC)を使

用し水セメント比 30のコンクリートで供試体を作製し鉄筋腐食促進試験を実施することにより鉄筋腐食に及ぼす以下の要因の影響について促進試験による評価を

行った ①塩水濃度の影響 ②かぶりの影響 ③ひび割れ幅の影響

鉄筋の腐食に与えるセメントの影響を評価するために鉄筋腐食試験に使用したコ

ンクリートについて以下の試験を実施した ①塩分浸透量測定(促進環境および標準浸漬環境) ②pH測定

12 コンクリ-トの配合

表 11に使用したコンクリートの配合を示す 使用したコンクリートは水セメント比および細骨材率を一定としセメントの密度に

より調整を行ったものであるコンシステンシ-に関してはスランプフローが目標

範囲に入るように高性能 AE減水剤により調整した

表 11 コンクリートの配合

配合 WC 目標スラン

プフロー sa 単 位 量(kgm3) 使用

セメント 記号 () (cm) () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 575 807 673 Ctimes220

HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes230 HFSC

HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes300

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

- - 2

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13 試験の組み合わせ

OPCHFSC424HFSC325において実施した試験の組み合わせを表 12に示す 表 12 セメントごとの試験の組み合わせ

セメントの種類 鉄筋腐食促進試験 塩分浸透促進試験 塩分浸透標準試験 pH 経時変化測定

HSFC424

HFSC325

HFSC226

OPC

14 鉄筋腐食促進試験方法

(1) 試験項目

鉄筋腐食促進試験の試験項目を表 13に示す

表 13 腐食促進試験の試験項目

腐食条件 パラメータ 使用セメント

WC () 固定条件 パラメータ 試験項目

HFSC424 30

塩水濃度

HFSC325 30

かぶり 25mm

人工海水濃度 50100飽和 (Clイオン濃度0918

27)

自然電位分極抵抗 鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量 塩分浸透量

pH

HFSC① 30

かぶり HFSC② 30

人工海水

濃度 100

かぶり 152535mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

HFSC① 30

ひび割れ幅 HFSC② 30

人工海水

濃度

100 かぶり 25mm

ひび割れ幅 020510mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

(2) 促進試験条件

本試験での促進条件は既往の研究と同じ促進条件とした促進条件は湿潤期間 3日間乾燥期間 4日間を 1サイクルとし13サイクルの乾湿繰返しを行った 湿潤乾燥条件は

湿潤条件50の人工海水に浸漬 乾燥条件5060RHの恒温恒湿室内

- - 3

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としたコンクリ-トのは打設後 28日間標準養生(水中 20養生)とし促進試験開始材齢を 28日として湿潤状態から開始して上記の促進試験を 13サイクル(91日間)実施した (3) 試験実施期間

表 14に試験方法と試験実施時期を示す

表 14 試験方法と実施時期

実施時期 試験項目 試験方法 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - コンクリート中の塩分濃度 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進試験開始時 (材齢 28日)

pH - 自然電位 -

促進 6 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 8 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 10 サイクル終了後 分極抵抗 - 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - 腐食面積率 JCI基準案 腐食減量 - コンクリート中の塩分分析 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進 13 サイクル終了後 (材齢 119日)

コンクリートの pH測定 -

15 塩分浸透標準試験方法

供試体はφ150times300mmの型枠を用いて製作した

コンクリートの種類はOPCHFSC424HFSC325 および HFSC226の 4水準とし

養生およびコーティングの方法は促進試験における塩分浸透量測定供試体と同様とした

28 日標準養生後人工海水濃度 100(Cl-イオン濃度 18)に 20の条件で浸漬し

鉄筋腐食促進試験の終了時にこの供試体を取り出し塩分浸透量を測定した

塩分浸透量の測定方法は鉄筋腐食促進試験と同じである

- - 4

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16 pH測定試験方法

この試験ではHFSC を使用した場合の長期的な浸漬液の pH の低下速度を測定した 鉄筋腐食促進試験で使用したコンクリートと同様な水セメント比のセメントペース

ト(水セメント比 30)を用いて直径 5cm高さ 10cm の円柱供試体を作成したなおセメントの種類はHSFC226HFSC424HFSC325である 円柱供試体は液固比が 21 となるようにイオン交換水中に浸漬し材齢 28 日

91日において円柱をスライスしたものを試料としpHを測定した pHの測定方法はスライスした試料を微粉砕した後試料 20gにイオン交換水 40gとなるようにイオン交換水中に浸漬し1週間放置した後pHを測定した 17 試験結果

171 フレッシュコンクリート試験結果

フレッシュコンクリート試験結果を表 15に示す

表 15 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート温度 ()

HFSC424 680times680 37 210 HFSC325 700times680 41 210 HFSC226 680times680 42 210

OPC 630times620 39 210

172 圧縮強度および引張強度

圧縮強度および引張強度試験結果を表 16に示す

表 16 圧縮強度および引張強度

圧縮強度 (Nmm2) 引張強度 (Nmm2) 記 号

材齢 28日 材齢 119日 材齢 28日 材齢 119日

HFSC424 748 938 415 619

HFSC325 516 736 355 491 HFSC226 338 549 - -

HFSC226の試験結果は既往の研究 2)より引用した

- - 5

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173 鉄筋腐食

(1) 自然電位

図 11および図 12に自然電位測定結果を示す

-800

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 11自然電位の測定結果(HFSC424)

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし

18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 12 自然電位の測定結果(HFSC325)

- - 6

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(2) 分極抵抗

表 17に分極抵抗測定結果を示す

表 17 分極抵抗測定結果 上段分極抵抗(Ωcm2) 下段腐食速度(microAcm2) 記号 海水濃度 かぶり ひび割れ

0 サイクル 6 サイクル 8 サイクル 10 サイクル 13 サイクル 2149 2262 2319 2247 1818 50

0012 0012 0011 0012 0015 2505 2038 2265 2377 2083

飽和 0011 0013 0011 0011 0013 2302 2105 1557 1914 2240

25mm

0011 0012 0017 0014 0012 2865 2645 2406 2434 2190 15mm 0009 0010 0011 0011 0012 3237 2948 2927 2889 2228 35mm

無し

0008 0009 0009 0009 0012 3531 3256 1139 1329 1246 02mm 0007 0008 0023 0020 0021 2482 2584 1512 1610 1305 05mm 0011 0010 0017 0017 0020 3614 2636 1742 1753 1208

HFSC424

100

25mm

10mm 0007 0010 0015 0015 0022 2276 2417 2400 2233 1800 50 0012 0011 0011 0012 0014 3044 2590 2320 2372 2106

飽和 0009 0010 0011 0011 0012 2875 2309 2300 2169 2279

25mm

0009 0011 0011 0012 0012 4000 2601 2430 2540 3333 15mm 0007 0010 0011 0010 0008 3283 2377 2220 2375 2330 35mm

無し

0008 0011 0012 0011 0011 3252 2701 2375 2151 1843 02mm 0008 0010 0011 0012 0014 3770 2233 1972 2035 1684 05mm 0007 0012 0013 0013 0015 2258 2385 2270 1571 1237

HFSC325

100

25mm

10mm 0012 0011 0011 0017 0021

- - 7

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174 pH試験

pH測定結果を表 18に示す

表 18 pH測定結果

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 4 HFSC424 1217 1202 HFSC325 1229 1221 HFSC226

28 1229 1216

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 3 HFSC424 1196 1188 HFSC325 1223 1219 HFSC226

91 1240 1241

18 考察

181 塩分浸透性

得られた拡散係数を基に塩分浸透に関する促進試験の促進倍率と定義し値を算

定した表 19に促進倍率を示す

表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 セメントの種類 促進試験の拡散係数①

(times10-8cm2s) 標準試験の拡散係数② (times10-8cm2s)

促進倍率①②

HFSC424 29 177 16 HFSC325 40 190 20 HFSC226 40 2057 02 OPC 44 108 35

182 塩分の固定化能力

OPCでは塩化物イオンが浸入した場合フリーデル氏塩として塩化物イオンを固定化する能力があるここでは塩分浸透試験から得られた全塩分量から可溶性塩分

を除いたものが塩分を固定化する能力と定義する 標準試験で測定された各セメントにおける塩分固定化能力を表 110 に示すまた

本研究で得られた pHと固定化された塩分量の関係を図 13に示す

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表 110 HFSCの塩分固定能力 セメントの種類

固定された塩分量

(kgm3) pH 試験方法

HFSC424 065 1241 標準 HFSC325 022 1219 標準 HFSC226 000 1188 標準

OPC 098 1300 標準

y = -03404x2 + 93859x - 63495

-02

0

02

04

06

08

1

12

118 12 122 124 126 128 13 132

pH

固定された塩分量(kgm3)

図 117コンクリートのpHと塩分固定能力

183 pHの低下速度

本研究の期間中ではpHの変化に関しては浸漬 28日と 91日の 2点測定したここではpHと経過時間の関係が既往の研究3)と同様に直線と考えてpHが 110 および 100になる時間を算出した 本研究で得られた pHと経過時間の関係は次のようである HFSC424 pH(t)=-000254t + 1248 HFSC325 pH(t)=-000032t + 1221 HFSC226 pH(t)=-000222t + 1208 ここでt経過時間(日)である ここでは最も大きい pHの低下速度を用いてpHが 110と 100になるまでに必要な期間を推定した表 111 にその結果を示す以上からpHが 110に到達する期間はHFSCでは 2年以内との結果が得られた

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表 111 pHの低下予測

pH低下速度 経過時間(年) セメントの種類 初期 pH

1日当り 1年当り pH 110 pH 100 HFSC424 1248 160 267 HFSC325 1221 131 238 HFSC226 1208

000254 0927 117 224

184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合)

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係

これまで実験したひび割れのない供試体における pH と鉄筋位置での全塩分量と腐

食面積率および腐食減量率をまとめて表 112に示す

表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果

pH 鉄筋位置 セメントの

種類

人工海水 の塩化物イオ

ン濃度() 試験開

始前 試験終

了時 かぶり (mm)

全塩分量

(kgm3)

腐食面積

率() 腐食減量

率()

15 022 50 011 25 000 00 002 HFSC424 1203 1164 35 000 00 002 15 031 20 005 25 000 00 004 HFSC325 1172 1141 35 000 00 003 15 066 5370 058 25 031 1058 063 HFSC226 1143 1110 35 026 821 020 15 013 231 055 25 009 00 00 OPC

18

1300 1300 35 016 00 00

HFSC424 1203 1164 011 30 001 HFSC325 1172 1141 000 20 005 HFSC226 1143 1110 006 2818 140

OPC

27

1300 1300 009 00 00

HFSC226 1143 1110 114 1429 076

OPC 塩分練り込み

1300 1300

25

109 427 085 図 14に鉄筋位置の全塩分量と腐食減量を示すHFSC226と OPCの一部に塩分量が小さいにも関わらず腐食が進んでいるものが見られるが概ね全塩分量が大きくな

ると腐食減量率が大きくなる傾向が認められるHFSC に関しては塩分固定能力はなく塩分が浸透するとすぐに塩分環境下の腐食を始めると考えるべきである

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全塩分量と減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

0 02 04 06 08 1 12

全塩分量(kgm3)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 14 全塩分量と腐食減量率

(2) コンクリートの pHと腐食量の関係

塩分が少ない状態(HFSC02kgm3以下OPC10kgm3以下)でのコンクリート

のpH(試験終了後)と腐食減量関係を図 15に示す コンクリートのpHと腐食減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

11 115 12 125 13 135

pH

腐食減量率()

図 15 コンクリートの pHと腐食減量率

- - 11

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pHが大きくなると塩分が存在しない場合の腐食量は小さくなっているしかしpHが 110 付近では急激に腐食減量率が大きくなったpH と腐食の関係を明確に定量化することはできなかったがpH1125 より pH が低くなると塩分がなくても腐食が進行することが認められる HFSC の配合を見ると本実験の範囲ではHFSC226 は塩分が浸透しなくても腐食する領域に位置しHFSC325 と 424 は塩分がこなければ腐食しない領域に位置すると考えられるただしHFSC ではフライアッシュのポゾラン反応とともに pH が低下してき110 を下回ることが想定されるために鉄筋コンクリート構造として工学的な検討を行う場合は塩分が浸透しなくても腐食すると考える必要があるさらに

HFSC226では塩分が存在する場合の腐食量と存在しない場合の腐食量は腐食減量率から見るとほぼ同等であった

(3) 腐食速度

HFSC226の塩分が鉄筋に到達しない供試体の腐食減量率をもとに塩分が存在しない場合の腐食速度を推定したHFSC226の 91日間におけるかぶり 25mmの腐食減量率は 0631で35mm の腐食減量率は 0201であったここで両者の平均をHFSC226の塩分が存在しない場合の腐食率とすると167年となる 一方既往の研究3)によれば一年間海洋環境下(海中)に暴露したHFSC226を用いた腐食速度は塩分が鉄筋まで到達しない条件下で 043年であった 次に塩分が存在する場合の腐食速度は塩分練り込み供試体の腐食減量率(07691日)と促進倍率 43倍から換算すると 071となる塩分が存在するときの腐食減量率はHFSC226と OPCでは076と 085とほとんど変わらないことから塩分が到達した後の鉄筋腐食量は pH に依存しないものと考えられる以上の計算を

HFSC424および 325に当てはめるとHFSC424および 325では塩分が浸入し到達しないと腐食しないということになる 鉄筋の腐食を考える上での腐食速度は表 113のようになる

表 113 鉄筋の腐食速度

セメントの

種類 pH(試験開始時)

塩分が浸透しないときの腐

食速度(重量年)

塩分が浸透したと

きの腐食速度 (重量年)

HFSC424 1164 HFSC325 1141 000

HFSC226 1110 043 071

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合)

ひび割れを有する場合の鉄筋の腐食減量率についての試験結果を表 114に示す既

- - 12

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往の研究2)におけるOPCおよびHFSC226の試験結果についても参考として示した

表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果

セメントの種類 海水濃度 (Cl)

pH

かぶり (mm)

ひび割れ幅 (mm)

腐食面積率 ()

腐食減量率 ()

00 000 002 02 1600 019 05 1800 020 HFSC424 18 1164 25

10 2800 022 0 000 004

02 1900 021 05 2400 025

HFSC325 18 1141 25

10 3100 031 00 1058 063 02 2581 160 05 2938 158

HFSC226 (参考) 18 1110 25

10 3437 154 00 000 000 02 082 099 05 632 134

OPC (参考) 18 1300 25

10 857 058 セメントの種類およびひび割れ幅と腐食減量率の関係を図 16に示す

0

02

04

06

08

1

12

14

16

18

0 02 05 10

ひび割れ幅(mm)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 16 腐食減量率

腐食減量率はHFSC424と 325では OPCより小さくなったこの結果からHFSCではひび割れが入った場合鉄筋の腐食減量は OPCより小さいと考えられる

- - 13

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186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

- - 14

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表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

- - 15

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割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

- - 16

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

-33-

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

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JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 13: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

1 低アルカリ性コンクリ-トにおける鉄筋腐食

11 試験概要

既往の研究でフライアッシュを 60使用したHFSC(HFSC226 と称す)における鉄筋腐食促進試験を実施した2) 本研究ではフライアッシュの混合割合が異なる低アルカリ性セメント(HFSC)を使

用し水セメント比 30のコンクリートで供試体を作製し鉄筋腐食促進試験を実施することにより鉄筋腐食に及ぼす以下の要因の影響について促進試験による評価を

行った ①塩水濃度の影響 ②かぶりの影響 ③ひび割れ幅の影響

鉄筋の腐食に与えるセメントの影響を評価するために鉄筋腐食試験に使用したコ

ンクリートについて以下の試験を実施した ①塩分浸透量測定(促進環境および標準浸漬環境) ②pH測定

12 コンクリ-トの配合

表 11に使用したコンクリートの配合を示す 使用したコンクリートは水セメント比および細骨材率を一定としセメントの密度に

より調整を行ったものであるコンシステンシ-に関してはスランプフローが目標

範囲に入るように高性能 AE減水剤により調整した

表 11 コンクリートの配合

配合 WC 目標スラン

プフロー sa 単 位 量(kgm3) 使用

セメント 記号 () (cm) () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 575 807 673 Ctimes220

HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes230 HFSC

HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes300

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

- - 2

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13 試験の組み合わせ

OPCHFSC424HFSC325において実施した試験の組み合わせを表 12に示す 表 12 セメントごとの試験の組み合わせ

セメントの種類 鉄筋腐食促進試験 塩分浸透促進試験 塩分浸透標準試験 pH 経時変化測定

HSFC424

HFSC325

HFSC226

OPC

14 鉄筋腐食促進試験方法

(1) 試験項目

鉄筋腐食促進試験の試験項目を表 13に示す

表 13 腐食促進試験の試験項目

腐食条件 パラメータ 使用セメント

WC () 固定条件 パラメータ 試験項目

HFSC424 30

塩水濃度

HFSC325 30

かぶり 25mm

人工海水濃度 50100飽和 (Clイオン濃度0918

27)

自然電位分極抵抗 鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量 塩分浸透量

pH

HFSC① 30

かぶり HFSC② 30

人工海水

濃度 100

かぶり 152535mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

HFSC① 30

ひび割れ幅 HFSC② 30

人工海水

濃度

100 かぶり 25mm

ひび割れ幅 020510mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

(2) 促進試験条件

本試験での促進条件は既往の研究と同じ促進条件とした促進条件は湿潤期間 3日間乾燥期間 4日間を 1サイクルとし13サイクルの乾湿繰返しを行った 湿潤乾燥条件は

湿潤条件50の人工海水に浸漬 乾燥条件5060RHの恒温恒湿室内

- - 3

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としたコンクリ-トのは打設後 28日間標準養生(水中 20養生)とし促進試験開始材齢を 28日として湿潤状態から開始して上記の促進試験を 13サイクル(91日間)実施した (3) 試験実施期間

表 14に試験方法と試験実施時期を示す

表 14 試験方法と実施時期

実施時期 試験項目 試験方法 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - コンクリート中の塩分濃度 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進試験開始時 (材齢 28日)

pH - 自然電位 -

促進 6 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 8 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 10 サイクル終了後 分極抵抗 - 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - 腐食面積率 JCI基準案 腐食減量 - コンクリート中の塩分分析 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進 13 サイクル終了後 (材齢 119日)

コンクリートの pH測定 -

15 塩分浸透標準試験方法

供試体はφ150times300mmの型枠を用いて製作した

コンクリートの種類はOPCHFSC424HFSC325 および HFSC226の 4水準とし

養生およびコーティングの方法は促進試験における塩分浸透量測定供試体と同様とした

28 日標準養生後人工海水濃度 100(Cl-イオン濃度 18)に 20の条件で浸漬し

鉄筋腐食促進試験の終了時にこの供試体を取り出し塩分浸透量を測定した

塩分浸透量の測定方法は鉄筋腐食促進試験と同じである

- - 4

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16 pH測定試験方法

この試験ではHFSC を使用した場合の長期的な浸漬液の pH の低下速度を測定した 鉄筋腐食促進試験で使用したコンクリートと同様な水セメント比のセメントペース

ト(水セメント比 30)を用いて直径 5cm高さ 10cm の円柱供試体を作成したなおセメントの種類はHSFC226HFSC424HFSC325である 円柱供試体は液固比が 21 となるようにイオン交換水中に浸漬し材齢 28 日

91日において円柱をスライスしたものを試料としpHを測定した pHの測定方法はスライスした試料を微粉砕した後試料 20gにイオン交換水 40gとなるようにイオン交換水中に浸漬し1週間放置した後pHを測定した 17 試験結果

171 フレッシュコンクリート試験結果

フレッシュコンクリート試験結果を表 15に示す

表 15 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート温度 ()

HFSC424 680times680 37 210 HFSC325 700times680 41 210 HFSC226 680times680 42 210

OPC 630times620 39 210

172 圧縮強度および引張強度

圧縮強度および引張強度試験結果を表 16に示す

表 16 圧縮強度および引張強度

圧縮強度 (Nmm2) 引張強度 (Nmm2) 記 号

材齢 28日 材齢 119日 材齢 28日 材齢 119日

HFSC424 748 938 415 619

HFSC325 516 736 355 491 HFSC226 338 549 - -

HFSC226の試験結果は既往の研究 2)より引用した

- - 5

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173 鉄筋腐食

(1) 自然電位

図 11および図 12に自然電位測定結果を示す

-800

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 11自然電位の測定結果(HFSC424)

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし

18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 12 自然電位の測定結果(HFSC325)

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(2) 分極抵抗

表 17に分極抵抗測定結果を示す

表 17 分極抵抗測定結果 上段分極抵抗(Ωcm2) 下段腐食速度(microAcm2) 記号 海水濃度 かぶり ひび割れ

0 サイクル 6 サイクル 8 サイクル 10 サイクル 13 サイクル 2149 2262 2319 2247 1818 50

0012 0012 0011 0012 0015 2505 2038 2265 2377 2083

飽和 0011 0013 0011 0011 0013 2302 2105 1557 1914 2240

25mm

0011 0012 0017 0014 0012 2865 2645 2406 2434 2190 15mm 0009 0010 0011 0011 0012 3237 2948 2927 2889 2228 35mm

無し

0008 0009 0009 0009 0012 3531 3256 1139 1329 1246 02mm 0007 0008 0023 0020 0021 2482 2584 1512 1610 1305 05mm 0011 0010 0017 0017 0020 3614 2636 1742 1753 1208

HFSC424

100

25mm

10mm 0007 0010 0015 0015 0022 2276 2417 2400 2233 1800 50 0012 0011 0011 0012 0014 3044 2590 2320 2372 2106

飽和 0009 0010 0011 0011 0012 2875 2309 2300 2169 2279

25mm

0009 0011 0011 0012 0012 4000 2601 2430 2540 3333 15mm 0007 0010 0011 0010 0008 3283 2377 2220 2375 2330 35mm

無し

0008 0011 0012 0011 0011 3252 2701 2375 2151 1843 02mm 0008 0010 0011 0012 0014 3770 2233 1972 2035 1684 05mm 0007 0012 0013 0013 0015 2258 2385 2270 1571 1237

HFSC325

100

25mm

10mm 0012 0011 0011 0017 0021

- - 7

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174 pH試験

pH測定結果を表 18に示す

表 18 pH測定結果

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 4 HFSC424 1217 1202 HFSC325 1229 1221 HFSC226

28 1229 1216

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 3 HFSC424 1196 1188 HFSC325 1223 1219 HFSC226

91 1240 1241

18 考察

181 塩分浸透性

得られた拡散係数を基に塩分浸透に関する促進試験の促進倍率と定義し値を算

定した表 19に促進倍率を示す

表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 セメントの種類 促進試験の拡散係数①

(times10-8cm2s) 標準試験の拡散係数② (times10-8cm2s)

促進倍率①②

HFSC424 29 177 16 HFSC325 40 190 20 HFSC226 40 2057 02 OPC 44 108 35

182 塩分の固定化能力

OPCでは塩化物イオンが浸入した場合フリーデル氏塩として塩化物イオンを固定化する能力があるここでは塩分浸透試験から得られた全塩分量から可溶性塩分

を除いたものが塩分を固定化する能力と定義する 標準試験で測定された各セメントにおける塩分固定化能力を表 110 に示すまた

本研究で得られた pHと固定化された塩分量の関係を図 13に示す

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表 110 HFSCの塩分固定能力 セメントの種類

固定された塩分量

(kgm3) pH 試験方法

HFSC424 065 1241 標準 HFSC325 022 1219 標準 HFSC226 000 1188 標準

OPC 098 1300 標準

y = -03404x2 + 93859x - 63495

-02

0

02

04

06

08

1

12

118 12 122 124 126 128 13 132

pH

固定された塩分量(kgm3)

図 117コンクリートのpHと塩分固定能力

183 pHの低下速度

本研究の期間中ではpHの変化に関しては浸漬 28日と 91日の 2点測定したここではpHと経過時間の関係が既往の研究3)と同様に直線と考えてpHが 110 および 100になる時間を算出した 本研究で得られた pHと経過時間の関係は次のようである HFSC424 pH(t)=-000254t + 1248 HFSC325 pH(t)=-000032t + 1221 HFSC226 pH(t)=-000222t + 1208 ここでt経過時間(日)である ここでは最も大きい pHの低下速度を用いてpHが 110と 100になるまでに必要な期間を推定した表 111 にその結果を示す以上からpHが 110に到達する期間はHFSCでは 2年以内との結果が得られた

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表 111 pHの低下予測

pH低下速度 経過時間(年) セメントの種類 初期 pH

1日当り 1年当り pH 110 pH 100 HFSC424 1248 160 267 HFSC325 1221 131 238 HFSC226 1208

000254 0927 117 224

184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合)

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係

これまで実験したひび割れのない供試体における pH と鉄筋位置での全塩分量と腐

食面積率および腐食減量率をまとめて表 112に示す

表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果

pH 鉄筋位置 セメントの

種類

人工海水 の塩化物イオ

ン濃度() 試験開

始前 試験終

了時 かぶり (mm)

全塩分量

(kgm3)

腐食面積

率() 腐食減量

率()

15 022 50 011 25 000 00 002 HFSC424 1203 1164 35 000 00 002 15 031 20 005 25 000 00 004 HFSC325 1172 1141 35 000 00 003 15 066 5370 058 25 031 1058 063 HFSC226 1143 1110 35 026 821 020 15 013 231 055 25 009 00 00 OPC

18

1300 1300 35 016 00 00

HFSC424 1203 1164 011 30 001 HFSC325 1172 1141 000 20 005 HFSC226 1143 1110 006 2818 140

OPC

27

1300 1300 009 00 00

HFSC226 1143 1110 114 1429 076

OPC 塩分練り込み

1300 1300

25

109 427 085 図 14に鉄筋位置の全塩分量と腐食減量を示すHFSC226と OPCの一部に塩分量が小さいにも関わらず腐食が進んでいるものが見られるが概ね全塩分量が大きくな

ると腐食減量率が大きくなる傾向が認められるHFSC に関しては塩分固定能力はなく塩分が浸透するとすぐに塩分環境下の腐食を始めると考えるべきである

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全塩分量と減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

0 02 04 06 08 1 12

全塩分量(kgm3)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 14 全塩分量と腐食減量率

(2) コンクリートの pHと腐食量の関係

塩分が少ない状態(HFSC02kgm3以下OPC10kgm3以下)でのコンクリート

のpH(試験終了後)と腐食減量関係を図 15に示す コンクリートのpHと腐食減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

11 115 12 125 13 135

pH

腐食減量率()

図 15 コンクリートの pHと腐食減量率

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pHが大きくなると塩分が存在しない場合の腐食量は小さくなっているしかしpHが 110 付近では急激に腐食減量率が大きくなったpH と腐食の関係を明確に定量化することはできなかったがpH1125 より pH が低くなると塩分がなくても腐食が進行することが認められる HFSC の配合を見ると本実験の範囲ではHFSC226 は塩分が浸透しなくても腐食する領域に位置しHFSC325 と 424 は塩分がこなければ腐食しない領域に位置すると考えられるただしHFSC ではフライアッシュのポゾラン反応とともに pH が低下してき110 を下回ることが想定されるために鉄筋コンクリート構造として工学的な検討を行う場合は塩分が浸透しなくても腐食すると考える必要があるさらに

HFSC226では塩分が存在する場合の腐食量と存在しない場合の腐食量は腐食減量率から見るとほぼ同等であった

(3) 腐食速度

HFSC226の塩分が鉄筋に到達しない供試体の腐食減量率をもとに塩分が存在しない場合の腐食速度を推定したHFSC226の 91日間におけるかぶり 25mmの腐食減量率は 0631で35mm の腐食減量率は 0201であったここで両者の平均をHFSC226の塩分が存在しない場合の腐食率とすると167年となる 一方既往の研究3)によれば一年間海洋環境下(海中)に暴露したHFSC226を用いた腐食速度は塩分が鉄筋まで到達しない条件下で 043年であった 次に塩分が存在する場合の腐食速度は塩分練り込み供試体の腐食減量率(07691日)と促進倍率 43倍から換算すると 071となる塩分が存在するときの腐食減量率はHFSC226と OPCでは076と 085とほとんど変わらないことから塩分が到達した後の鉄筋腐食量は pH に依存しないものと考えられる以上の計算を

HFSC424および 325に当てはめるとHFSC424および 325では塩分が浸入し到達しないと腐食しないということになる 鉄筋の腐食を考える上での腐食速度は表 113のようになる

表 113 鉄筋の腐食速度

セメントの

種類 pH(試験開始時)

塩分が浸透しないときの腐

食速度(重量年)

塩分が浸透したと

きの腐食速度 (重量年)

HFSC424 1164 HFSC325 1141 000

HFSC226 1110 043 071

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合)

ひび割れを有する場合の鉄筋の腐食減量率についての試験結果を表 114に示す既

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往の研究2)におけるOPCおよびHFSC226の試験結果についても参考として示した

表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果

セメントの種類 海水濃度 (Cl)

pH

かぶり (mm)

ひび割れ幅 (mm)

腐食面積率 ()

腐食減量率 ()

00 000 002 02 1600 019 05 1800 020 HFSC424 18 1164 25

10 2800 022 0 000 004

02 1900 021 05 2400 025

HFSC325 18 1141 25

10 3100 031 00 1058 063 02 2581 160 05 2938 158

HFSC226 (参考) 18 1110 25

10 3437 154 00 000 000 02 082 099 05 632 134

OPC (参考) 18 1300 25

10 857 058 セメントの種類およびひび割れ幅と腐食減量率の関係を図 16に示す

0

02

04

06

08

1

12

14

16

18

0 02 05 10

ひび割れ幅(mm)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 16 腐食減量率

腐食減量率はHFSC424と 325では OPCより小さくなったこの結果からHFSCではひび割れが入った場合鉄筋の腐食減量は OPCより小さいと考えられる

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186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

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表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

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割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

-18-

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

-19-

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

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JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 14: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

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13 試験の組み合わせ

OPCHFSC424HFSC325において実施した試験の組み合わせを表 12に示す 表 12 セメントごとの試験の組み合わせ

セメントの種類 鉄筋腐食促進試験 塩分浸透促進試験 塩分浸透標準試験 pH 経時変化測定

HSFC424

HFSC325

HFSC226

OPC

14 鉄筋腐食促進試験方法

(1) 試験項目

鉄筋腐食促進試験の試験項目を表 13に示す

表 13 腐食促進試験の試験項目

腐食条件 パラメータ 使用セメント

WC () 固定条件 パラメータ 試験項目

HFSC424 30

塩水濃度

HFSC325 30

かぶり 25mm

人工海水濃度 50100飽和 (Clイオン濃度0918

27)

自然電位分極抵抗 鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量 塩分浸透量

pH

HFSC① 30

かぶり HFSC② 30

人工海水

濃度 100

かぶり 152535mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

HFSC① 30

ひび割れ幅 HFSC② 30

人工海水

濃度

100 かぶり 25mm

ひび割れ幅 020510mm

自然電位 分極抵抗

鉄筋腐食面積 鉄筋腐食減量

(2) 促進試験条件

本試験での促進条件は既往の研究と同じ促進条件とした促進条件は湿潤期間 3日間乾燥期間 4日間を 1サイクルとし13サイクルの乾湿繰返しを行った 湿潤乾燥条件は

湿潤条件50の人工海水に浸漬 乾燥条件5060RHの恒温恒湿室内

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としたコンクリ-トのは打設後 28日間標準養生(水中 20養生)とし促進試験開始材齢を 28日として湿潤状態から開始して上記の促進試験を 13サイクル(91日間)実施した (3) 試験実施期間

表 14に試験方法と試験実施時期を示す

表 14 試験方法と実施時期

実施時期 試験項目 試験方法 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - コンクリート中の塩分濃度 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進試験開始時 (材齢 28日)

pH - 自然電位 -

促進 6 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 8 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 10 サイクル終了後 分極抵抗 - 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - 腐食面積率 JCI基準案 腐食減量 - コンクリート中の塩分分析 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進 13 サイクル終了後 (材齢 119日)

コンクリートの pH測定 -

15 塩分浸透標準試験方法

供試体はφ150times300mmの型枠を用いて製作した

コンクリートの種類はOPCHFSC424HFSC325 および HFSC226の 4水準とし

養生およびコーティングの方法は促進試験における塩分浸透量測定供試体と同様とした

28 日標準養生後人工海水濃度 100(Cl-イオン濃度 18)に 20の条件で浸漬し

鉄筋腐食促進試験の終了時にこの供試体を取り出し塩分浸透量を測定した

塩分浸透量の測定方法は鉄筋腐食促進試験と同じである

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16 pH測定試験方法

この試験ではHFSC を使用した場合の長期的な浸漬液の pH の低下速度を測定した 鉄筋腐食促進試験で使用したコンクリートと同様な水セメント比のセメントペース

ト(水セメント比 30)を用いて直径 5cm高さ 10cm の円柱供試体を作成したなおセメントの種類はHSFC226HFSC424HFSC325である 円柱供試体は液固比が 21 となるようにイオン交換水中に浸漬し材齢 28 日

91日において円柱をスライスしたものを試料としpHを測定した pHの測定方法はスライスした試料を微粉砕した後試料 20gにイオン交換水 40gとなるようにイオン交換水中に浸漬し1週間放置した後pHを測定した 17 試験結果

171 フレッシュコンクリート試験結果

フレッシュコンクリート試験結果を表 15に示す

表 15 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート温度 ()

HFSC424 680times680 37 210 HFSC325 700times680 41 210 HFSC226 680times680 42 210

OPC 630times620 39 210

172 圧縮強度および引張強度

圧縮強度および引張強度試験結果を表 16に示す

表 16 圧縮強度および引張強度

圧縮強度 (Nmm2) 引張強度 (Nmm2) 記 号

材齢 28日 材齢 119日 材齢 28日 材齢 119日

HFSC424 748 938 415 619

HFSC325 516 736 355 491 HFSC226 338 549 - -

HFSC226の試験結果は既往の研究 2)より引用した

- - 5

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173 鉄筋腐食

(1) 自然電位

図 11および図 12に自然電位測定結果を示す

-800

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 11自然電位の測定結果(HFSC424)

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし

18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 12 自然電位の測定結果(HFSC325)

- - 6

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(2) 分極抵抗

表 17に分極抵抗測定結果を示す

表 17 分極抵抗測定結果 上段分極抵抗(Ωcm2) 下段腐食速度(microAcm2) 記号 海水濃度 かぶり ひび割れ

0 サイクル 6 サイクル 8 サイクル 10 サイクル 13 サイクル 2149 2262 2319 2247 1818 50

0012 0012 0011 0012 0015 2505 2038 2265 2377 2083

飽和 0011 0013 0011 0011 0013 2302 2105 1557 1914 2240

25mm

0011 0012 0017 0014 0012 2865 2645 2406 2434 2190 15mm 0009 0010 0011 0011 0012 3237 2948 2927 2889 2228 35mm

無し

0008 0009 0009 0009 0012 3531 3256 1139 1329 1246 02mm 0007 0008 0023 0020 0021 2482 2584 1512 1610 1305 05mm 0011 0010 0017 0017 0020 3614 2636 1742 1753 1208

HFSC424

100

25mm

10mm 0007 0010 0015 0015 0022 2276 2417 2400 2233 1800 50 0012 0011 0011 0012 0014 3044 2590 2320 2372 2106

飽和 0009 0010 0011 0011 0012 2875 2309 2300 2169 2279

25mm

0009 0011 0011 0012 0012 4000 2601 2430 2540 3333 15mm 0007 0010 0011 0010 0008 3283 2377 2220 2375 2330 35mm

無し

0008 0011 0012 0011 0011 3252 2701 2375 2151 1843 02mm 0008 0010 0011 0012 0014 3770 2233 1972 2035 1684 05mm 0007 0012 0013 0013 0015 2258 2385 2270 1571 1237

HFSC325

100

25mm

10mm 0012 0011 0011 0017 0021

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174 pH試験

pH測定結果を表 18に示す

表 18 pH測定結果

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 4 HFSC424 1217 1202 HFSC325 1229 1221 HFSC226

28 1229 1216

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 3 HFSC424 1196 1188 HFSC325 1223 1219 HFSC226

91 1240 1241

18 考察

181 塩分浸透性

得られた拡散係数を基に塩分浸透に関する促進試験の促進倍率と定義し値を算

定した表 19に促進倍率を示す

表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 セメントの種類 促進試験の拡散係数①

(times10-8cm2s) 標準試験の拡散係数② (times10-8cm2s)

促進倍率①②

HFSC424 29 177 16 HFSC325 40 190 20 HFSC226 40 2057 02 OPC 44 108 35

182 塩分の固定化能力

OPCでは塩化物イオンが浸入した場合フリーデル氏塩として塩化物イオンを固定化する能力があるここでは塩分浸透試験から得られた全塩分量から可溶性塩分

を除いたものが塩分を固定化する能力と定義する 標準試験で測定された各セメントにおける塩分固定化能力を表 110 に示すまた

本研究で得られた pHと固定化された塩分量の関係を図 13に示す

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表 110 HFSCの塩分固定能力 セメントの種類

固定された塩分量

(kgm3) pH 試験方法

HFSC424 065 1241 標準 HFSC325 022 1219 標準 HFSC226 000 1188 標準

OPC 098 1300 標準

y = -03404x2 + 93859x - 63495

-02

0

02

04

06

08

1

12

118 12 122 124 126 128 13 132

pH

固定された塩分量(kgm3)

図 117コンクリートのpHと塩分固定能力

183 pHの低下速度

本研究の期間中ではpHの変化に関しては浸漬 28日と 91日の 2点測定したここではpHと経過時間の関係が既往の研究3)と同様に直線と考えてpHが 110 および 100になる時間を算出した 本研究で得られた pHと経過時間の関係は次のようである HFSC424 pH(t)=-000254t + 1248 HFSC325 pH(t)=-000032t + 1221 HFSC226 pH(t)=-000222t + 1208 ここでt経過時間(日)である ここでは最も大きい pHの低下速度を用いてpHが 110と 100になるまでに必要な期間を推定した表 111 にその結果を示す以上からpHが 110に到達する期間はHFSCでは 2年以内との結果が得られた

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表 111 pHの低下予測

pH低下速度 経過時間(年) セメントの種類 初期 pH

1日当り 1年当り pH 110 pH 100 HFSC424 1248 160 267 HFSC325 1221 131 238 HFSC226 1208

000254 0927 117 224

184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合)

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係

これまで実験したひび割れのない供試体における pH と鉄筋位置での全塩分量と腐

食面積率および腐食減量率をまとめて表 112に示す

表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果

pH 鉄筋位置 セメントの

種類

人工海水 の塩化物イオ

ン濃度() 試験開

始前 試験終

了時 かぶり (mm)

全塩分量

(kgm3)

腐食面積

率() 腐食減量

率()

15 022 50 011 25 000 00 002 HFSC424 1203 1164 35 000 00 002 15 031 20 005 25 000 00 004 HFSC325 1172 1141 35 000 00 003 15 066 5370 058 25 031 1058 063 HFSC226 1143 1110 35 026 821 020 15 013 231 055 25 009 00 00 OPC

18

1300 1300 35 016 00 00

HFSC424 1203 1164 011 30 001 HFSC325 1172 1141 000 20 005 HFSC226 1143 1110 006 2818 140

OPC

27

1300 1300 009 00 00

HFSC226 1143 1110 114 1429 076

OPC 塩分練り込み

1300 1300

25

109 427 085 図 14に鉄筋位置の全塩分量と腐食減量を示すHFSC226と OPCの一部に塩分量が小さいにも関わらず腐食が進んでいるものが見られるが概ね全塩分量が大きくな

ると腐食減量率が大きくなる傾向が認められるHFSC に関しては塩分固定能力はなく塩分が浸透するとすぐに塩分環境下の腐食を始めると考えるべきである

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全塩分量と減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

0 02 04 06 08 1 12

全塩分量(kgm3)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 14 全塩分量と腐食減量率

(2) コンクリートの pHと腐食量の関係

塩分が少ない状態(HFSC02kgm3以下OPC10kgm3以下)でのコンクリート

のpH(試験終了後)と腐食減量関係を図 15に示す コンクリートのpHと腐食減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

11 115 12 125 13 135

pH

腐食減量率()

図 15 コンクリートの pHと腐食減量率

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pHが大きくなると塩分が存在しない場合の腐食量は小さくなっているしかしpHが 110 付近では急激に腐食減量率が大きくなったpH と腐食の関係を明確に定量化することはできなかったがpH1125 より pH が低くなると塩分がなくても腐食が進行することが認められる HFSC の配合を見ると本実験の範囲ではHFSC226 は塩分が浸透しなくても腐食する領域に位置しHFSC325 と 424 は塩分がこなければ腐食しない領域に位置すると考えられるただしHFSC ではフライアッシュのポゾラン反応とともに pH が低下してき110 を下回ることが想定されるために鉄筋コンクリート構造として工学的な検討を行う場合は塩分が浸透しなくても腐食すると考える必要があるさらに

HFSC226では塩分が存在する場合の腐食量と存在しない場合の腐食量は腐食減量率から見るとほぼ同等であった

(3) 腐食速度

HFSC226の塩分が鉄筋に到達しない供試体の腐食減量率をもとに塩分が存在しない場合の腐食速度を推定したHFSC226の 91日間におけるかぶり 25mmの腐食減量率は 0631で35mm の腐食減量率は 0201であったここで両者の平均をHFSC226の塩分が存在しない場合の腐食率とすると167年となる 一方既往の研究3)によれば一年間海洋環境下(海中)に暴露したHFSC226を用いた腐食速度は塩分が鉄筋まで到達しない条件下で 043年であった 次に塩分が存在する場合の腐食速度は塩分練り込み供試体の腐食減量率(07691日)と促進倍率 43倍から換算すると 071となる塩分が存在するときの腐食減量率はHFSC226と OPCでは076と 085とほとんど変わらないことから塩分が到達した後の鉄筋腐食量は pH に依存しないものと考えられる以上の計算を

HFSC424および 325に当てはめるとHFSC424および 325では塩分が浸入し到達しないと腐食しないということになる 鉄筋の腐食を考える上での腐食速度は表 113のようになる

表 113 鉄筋の腐食速度

セメントの

種類 pH(試験開始時)

塩分が浸透しないときの腐

食速度(重量年)

塩分が浸透したと

きの腐食速度 (重量年)

HFSC424 1164 HFSC325 1141 000

HFSC226 1110 043 071

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合)

ひび割れを有する場合の鉄筋の腐食減量率についての試験結果を表 114に示す既

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往の研究2)におけるOPCおよびHFSC226の試験結果についても参考として示した

表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果

セメントの種類 海水濃度 (Cl)

pH

かぶり (mm)

ひび割れ幅 (mm)

腐食面積率 ()

腐食減量率 ()

00 000 002 02 1600 019 05 1800 020 HFSC424 18 1164 25

10 2800 022 0 000 004

02 1900 021 05 2400 025

HFSC325 18 1141 25

10 3100 031 00 1058 063 02 2581 160 05 2938 158

HFSC226 (参考) 18 1110 25

10 3437 154 00 000 000 02 082 099 05 632 134

OPC (参考) 18 1300 25

10 857 058 セメントの種類およびひび割れ幅と腐食減量率の関係を図 16に示す

0

02

04

06

08

1

12

14

16

18

0 02 05 10

ひび割れ幅(mm)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 16 腐食減量率

腐食減量率はHFSC424と 325では OPCより小さくなったこの結果からHFSCではひび割れが入った場合鉄筋の腐食減量は OPCより小さいと考えられる

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186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

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表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

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割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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JNC TJ8400 2003-063

【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

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JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 15: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

としたコンクリ-トのは打設後 28日間標準養生(水中 20養生)とし促進試験開始材齢を 28日として湿潤状態から開始して上記の促進試験を 13サイクル(91日間)実施した (3) 試験実施期間

表 14に試験方法と試験実施時期を示す

表 14 試験方法と実施時期

実施時期 試験項目 試験方法 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - コンクリート中の塩分濃度 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進試験開始時 (材齢 28日)

pH - 自然電位 -

促進 6 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 8 サイクル終了後 分極抵抗 - 自然電位 -

促進 10 サイクル終了後 分極抵抗 - 圧縮強度 JIS A 1108 自然電位 - 分極抵抗 - 腐食面積率 JCI基準案 腐食減量 - コンクリート中の塩分分析 JCI SC-45(全塩分可溶性塩分)

促進 13 サイクル終了後 (材齢 119日)

コンクリートの pH測定 -

15 塩分浸透標準試験方法

供試体はφ150times300mmの型枠を用いて製作した

コンクリートの種類はOPCHFSC424HFSC325 および HFSC226の 4水準とし

養生およびコーティングの方法は促進試験における塩分浸透量測定供試体と同様とした

28 日標準養生後人工海水濃度 100(Cl-イオン濃度 18)に 20の条件で浸漬し

鉄筋腐食促進試験の終了時にこの供試体を取り出し塩分浸透量を測定した

塩分浸透量の測定方法は鉄筋腐食促進試験と同じである

- - 4

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16 pH測定試験方法

この試験ではHFSC を使用した場合の長期的な浸漬液の pH の低下速度を測定した 鉄筋腐食促進試験で使用したコンクリートと同様な水セメント比のセメントペース

ト(水セメント比 30)を用いて直径 5cm高さ 10cm の円柱供試体を作成したなおセメントの種類はHSFC226HFSC424HFSC325である 円柱供試体は液固比が 21 となるようにイオン交換水中に浸漬し材齢 28 日

91日において円柱をスライスしたものを試料としpHを測定した pHの測定方法はスライスした試料を微粉砕した後試料 20gにイオン交換水 40gとなるようにイオン交換水中に浸漬し1週間放置した後pHを測定した 17 試験結果

171 フレッシュコンクリート試験結果

フレッシュコンクリート試験結果を表 15に示す

表 15 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート温度 ()

HFSC424 680times680 37 210 HFSC325 700times680 41 210 HFSC226 680times680 42 210

OPC 630times620 39 210

172 圧縮強度および引張強度

圧縮強度および引張強度試験結果を表 16に示す

表 16 圧縮強度および引張強度

圧縮強度 (Nmm2) 引張強度 (Nmm2) 記 号

材齢 28日 材齢 119日 材齢 28日 材齢 119日

HFSC424 748 938 415 619

HFSC325 516 736 355 491 HFSC226 338 549 - -

HFSC226の試験結果は既往の研究 2)より引用した

- - 5

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173 鉄筋腐食

(1) 自然電位

図 11および図 12に自然電位測定結果を示す

-800

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 11自然電位の測定結果(HFSC424)

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし

18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 12 自然電位の測定結果(HFSC325)

- - 6

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(2) 分極抵抗

表 17に分極抵抗測定結果を示す

表 17 分極抵抗測定結果 上段分極抵抗(Ωcm2) 下段腐食速度(microAcm2) 記号 海水濃度 かぶり ひび割れ

0 サイクル 6 サイクル 8 サイクル 10 サイクル 13 サイクル 2149 2262 2319 2247 1818 50

0012 0012 0011 0012 0015 2505 2038 2265 2377 2083

飽和 0011 0013 0011 0011 0013 2302 2105 1557 1914 2240

25mm

0011 0012 0017 0014 0012 2865 2645 2406 2434 2190 15mm 0009 0010 0011 0011 0012 3237 2948 2927 2889 2228 35mm

無し

0008 0009 0009 0009 0012 3531 3256 1139 1329 1246 02mm 0007 0008 0023 0020 0021 2482 2584 1512 1610 1305 05mm 0011 0010 0017 0017 0020 3614 2636 1742 1753 1208

HFSC424

100

25mm

10mm 0007 0010 0015 0015 0022 2276 2417 2400 2233 1800 50 0012 0011 0011 0012 0014 3044 2590 2320 2372 2106

飽和 0009 0010 0011 0011 0012 2875 2309 2300 2169 2279

25mm

0009 0011 0011 0012 0012 4000 2601 2430 2540 3333 15mm 0007 0010 0011 0010 0008 3283 2377 2220 2375 2330 35mm

無し

0008 0011 0012 0011 0011 3252 2701 2375 2151 1843 02mm 0008 0010 0011 0012 0014 3770 2233 1972 2035 1684 05mm 0007 0012 0013 0013 0015 2258 2385 2270 1571 1237

HFSC325

100

25mm

10mm 0012 0011 0011 0017 0021

- - 7

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174 pH試験

pH測定結果を表 18に示す

表 18 pH測定結果

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 4 HFSC424 1217 1202 HFSC325 1229 1221 HFSC226

28 1229 1216

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 3 HFSC424 1196 1188 HFSC325 1223 1219 HFSC226

91 1240 1241

18 考察

181 塩分浸透性

得られた拡散係数を基に塩分浸透に関する促進試験の促進倍率と定義し値を算

定した表 19に促進倍率を示す

表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 セメントの種類 促進試験の拡散係数①

(times10-8cm2s) 標準試験の拡散係数② (times10-8cm2s)

促進倍率①②

HFSC424 29 177 16 HFSC325 40 190 20 HFSC226 40 2057 02 OPC 44 108 35

182 塩分の固定化能力

OPCでは塩化物イオンが浸入した場合フリーデル氏塩として塩化物イオンを固定化する能力があるここでは塩分浸透試験から得られた全塩分量から可溶性塩分

を除いたものが塩分を固定化する能力と定義する 標準試験で測定された各セメントにおける塩分固定化能力を表 110 に示すまた

本研究で得られた pHと固定化された塩分量の関係を図 13に示す

- - 8

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表 110 HFSCの塩分固定能力 セメントの種類

固定された塩分量

(kgm3) pH 試験方法

HFSC424 065 1241 標準 HFSC325 022 1219 標準 HFSC226 000 1188 標準

OPC 098 1300 標準

y = -03404x2 + 93859x - 63495

-02

0

02

04

06

08

1

12

118 12 122 124 126 128 13 132

pH

固定された塩分量(kgm3)

図 117コンクリートのpHと塩分固定能力

183 pHの低下速度

本研究の期間中ではpHの変化に関しては浸漬 28日と 91日の 2点測定したここではpHと経過時間の関係が既往の研究3)と同様に直線と考えてpHが 110 および 100になる時間を算出した 本研究で得られた pHと経過時間の関係は次のようである HFSC424 pH(t)=-000254t + 1248 HFSC325 pH(t)=-000032t + 1221 HFSC226 pH(t)=-000222t + 1208 ここでt経過時間(日)である ここでは最も大きい pHの低下速度を用いてpHが 110と 100になるまでに必要な期間を推定した表 111 にその結果を示す以上からpHが 110に到達する期間はHFSCでは 2年以内との結果が得られた

- - 9

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表 111 pHの低下予測

pH低下速度 経過時間(年) セメントの種類 初期 pH

1日当り 1年当り pH 110 pH 100 HFSC424 1248 160 267 HFSC325 1221 131 238 HFSC226 1208

000254 0927 117 224

184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合)

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係

これまで実験したひび割れのない供試体における pH と鉄筋位置での全塩分量と腐

食面積率および腐食減量率をまとめて表 112に示す

表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果

pH 鉄筋位置 セメントの

種類

人工海水 の塩化物イオ

ン濃度() 試験開

始前 試験終

了時 かぶり (mm)

全塩分量

(kgm3)

腐食面積

率() 腐食減量

率()

15 022 50 011 25 000 00 002 HFSC424 1203 1164 35 000 00 002 15 031 20 005 25 000 00 004 HFSC325 1172 1141 35 000 00 003 15 066 5370 058 25 031 1058 063 HFSC226 1143 1110 35 026 821 020 15 013 231 055 25 009 00 00 OPC

18

1300 1300 35 016 00 00

HFSC424 1203 1164 011 30 001 HFSC325 1172 1141 000 20 005 HFSC226 1143 1110 006 2818 140

OPC

27

1300 1300 009 00 00

HFSC226 1143 1110 114 1429 076

OPC 塩分練り込み

1300 1300

25

109 427 085 図 14に鉄筋位置の全塩分量と腐食減量を示すHFSC226と OPCの一部に塩分量が小さいにも関わらず腐食が進んでいるものが見られるが概ね全塩分量が大きくな

ると腐食減量率が大きくなる傾向が認められるHFSC に関しては塩分固定能力はなく塩分が浸透するとすぐに塩分環境下の腐食を始めると考えるべきである

- - 10

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全塩分量と減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

0 02 04 06 08 1 12

全塩分量(kgm3)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 14 全塩分量と腐食減量率

(2) コンクリートの pHと腐食量の関係

塩分が少ない状態(HFSC02kgm3以下OPC10kgm3以下)でのコンクリート

のpH(試験終了後)と腐食減量関係を図 15に示す コンクリートのpHと腐食減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

11 115 12 125 13 135

pH

腐食減量率()

図 15 コンクリートの pHと腐食減量率

- - 11

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pHが大きくなると塩分が存在しない場合の腐食量は小さくなっているしかしpHが 110 付近では急激に腐食減量率が大きくなったpH と腐食の関係を明確に定量化することはできなかったがpH1125 より pH が低くなると塩分がなくても腐食が進行することが認められる HFSC の配合を見ると本実験の範囲ではHFSC226 は塩分が浸透しなくても腐食する領域に位置しHFSC325 と 424 は塩分がこなければ腐食しない領域に位置すると考えられるただしHFSC ではフライアッシュのポゾラン反応とともに pH が低下してき110 を下回ることが想定されるために鉄筋コンクリート構造として工学的な検討を行う場合は塩分が浸透しなくても腐食すると考える必要があるさらに

HFSC226では塩分が存在する場合の腐食量と存在しない場合の腐食量は腐食減量率から見るとほぼ同等であった

(3) 腐食速度

HFSC226の塩分が鉄筋に到達しない供試体の腐食減量率をもとに塩分が存在しない場合の腐食速度を推定したHFSC226の 91日間におけるかぶり 25mmの腐食減量率は 0631で35mm の腐食減量率は 0201であったここで両者の平均をHFSC226の塩分が存在しない場合の腐食率とすると167年となる 一方既往の研究3)によれば一年間海洋環境下(海中)に暴露したHFSC226を用いた腐食速度は塩分が鉄筋まで到達しない条件下で 043年であった 次に塩分が存在する場合の腐食速度は塩分練り込み供試体の腐食減量率(07691日)と促進倍率 43倍から換算すると 071となる塩分が存在するときの腐食減量率はHFSC226と OPCでは076と 085とほとんど変わらないことから塩分が到達した後の鉄筋腐食量は pH に依存しないものと考えられる以上の計算を

HFSC424および 325に当てはめるとHFSC424および 325では塩分が浸入し到達しないと腐食しないということになる 鉄筋の腐食を考える上での腐食速度は表 113のようになる

表 113 鉄筋の腐食速度

セメントの

種類 pH(試験開始時)

塩分が浸透しないときの腐

食速度(重量年)

塩分が浸透したと

きの腐食速度 (重量年)

HFSC424 1164 HFSC325 1141 000

HFSC226 1110 043 071

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合)

ひび割れを有する場合の鉄筋の腐食減量率についての試験結果を表 114に示す既

- - 12

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往の研究2)におけるOPCおよびHFSC226の試験結果についても参考として示した

表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果

セメントの種類 海水濃度 (Cl)

pH

かぶり (mm)

ひび割れ幅 (mm)

腐食面積率 ()

腐食減量率 ()

00 000 002 02 1600 019 05 1800 020 HFSC424 18 1164 25

10 2800 022 0 000 004

02 1900 021 05 2400 025

HFSC325 18 1141 25

10 3100 031 00 1058 063 02 2581 160 05 2938 158

HFSC226 (参考) 18 1110 25

10 3437 154 00 000 000 02 082 099 05 632 134

OPC (参考) 18 1300 25

10 857 058 セメントの種類およびひび割れ幅と腐食減量率の関係を図 16に示す

0

02

04

06

08

1

12

14

16

18

0 02 05 10

ひび割れ幅(mm)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 16 腐食減量率

腐食減量率はHFSC424と 325では OPCより小さくなったこの結果からHFSCではひび割れが入った場合鉄筋の腐食減量は OPCより小さいと考えられる

- - 13

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186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

- - 14

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表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

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割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

- - 16

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

-17-

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

-18-

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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JNC TJ8400 2003-063

【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 16: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

16 pH測定試験方法

この試験ではHFSC を使用した場合の長期的な浸漬液の pH の低下速度を測定した 鉄筋腐食促進試験で使用したコンクリートと同様な水セメント比のセメントペース

ト(水セメント比 30)を用いて直径 5cm高さ 10cm の円柱供試体を作成したなおセメントの種類はHSFC226HFSC424HFSC325である 円柱供試体は液固比が 21 となるようにイオン交換水中に浸漬し材齢 28 日

91日において円柱をスライスしたものを試料としpHを測定した pHの測定方法はスライスした試料を微粉砕した後試料 20gにイオン交換水 40gとなるようにイオン交換水中に浸漬し1週間放置した後pHを測定した 17 試験結果

171 フレッシュコンクリート試験結果

フレッシュコンクリート試験結果を表 15に示す

表 15 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート温度 ()

HFSC424 680times680 37 210 HFSC325 700times680 41 210 HFSC226 680times680 42 210

OPC 630times620 39 210

172 圧縮強度および引張強度

圧縮強度および引張強度試験結果を表 16に示す

表 16 圧縮強度および引張強度

圧縮強度 (Nmm2) 引張強度 (Nmm2) 記 号

材齢 28日 材齢 119日 材齢 28日 材齢 119日

HFSC424 748 938 415 619

HFSC325 516 736 355 491 HFSC226 338 549 - -

HFSC226の試験結果は既往の研究 2)より引用した

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173 鉄筋腐食

(1) 自然電位

図 11および図 12に自然電位測定結果を示す

-800

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 11自然電位の測定結果(HFSC424)

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし

18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 12 自然電位の測定結果(HFSC325)

- - 6

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(2) 分極抵抗

表 17に分極抵抗測定結果を示す

表 17 分極抵抗測定結果 上段分極抵抗(Ωcm2) 下段腐食速度(microAcm2) 記号 海水濃度 かぶり ひび割れ

0 サイクル 6 サイクル 8 サイクル 10 サイクル 13 サイクル 2149 2262 2319 2247 1818 50

0012 0012 0011 0012 0015 2505 2038 2265 2377 2083

飽和 0011 0013 0011 0011 0013 2302 2105 1557 1914 2240

25mm

0011 0012 0017 0014 0012 2865 2645 2406 2434 2190 15mm 0009 0010 0011 0011 0012 3237 2948 2927 2889 2228 35mm

無し

0008 0009 0009 0009 0012 3531 3256 1139 1329 1246 02mm 0007 0008 0023 0020 0021 2482 2584 1512 1610 1305 05mm 0011 0010 0017 0017 0020 3614 2636 1742 1753 1208

HFSC424

100

25mm

10mm 0007 0010 0015 0015 0022 2276 2417 2400 2233 1800 50 0012 0011 0011 0012 0014 3044 2590 2320 2372 2106

飽和 0009 0010 0011 0011 0012 2875 2309 2300 2169 2279

25mm

0009 0011 0011 0012 0012 4000 2601 2430 2540 3333 15mm 0007 0010 0011 0010 0008 3283 2377 2220 2375 2330 35mm

無し

0008 0011 0012 0011 0011 3252 2701 2375 2151 1843 02mm 0008 0010 0011 0012 0014 3770 2233 1972 2035 1684 05mm 0007 0012 0013 0013 0015 2258 2385 2270 1571 1237

HFSC325

100

25mm

10mm 0012 0011 0011 0017 0021

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174 pH試験

pH測定結果を表 18に示す

表 18 pH測定結果

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 4 HFSC424 1217 1202 HFSC325 1229 1221 HFSC226

28 1229 1216

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 3 HFSC424 1196 1188 HFSC325 1223 1219 HFSC226

91 1240 1241

18 考察

181 塩分浸透性

得られた拡散係数を基に塩分浸透に関する促進試験の促進倍率と定義し値を算

定した表 19に促進倍率を示す

表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 セメントの種類 促進試験の拡散係数①

(times10-8cm2s) 標準試験の拡散係数② (times10-8cm2s)

促進倍率①②

HFSC424 29 177 16 HFSC325 40 190 20 HFSC226 40 2057 02 OPC 44 108 35

182 塩分の固定化能力

OPCでは塩化物イオンが浸入した場合フリーデル氏塩として塩化物イオンを固定化する能力があるここでは塩分浸透試験から得られた全塩分量から可溶性塩分

を除いたものが塩分を固定化する能力と定義する 標準試験で測定された各セメントにおける塩分固定化能力を表 110 に示すまた

本研究で得られた pHと固定化された塩分量の関係を図 13に示す

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表 110 HFSCの塩分固定能力 セメントの種類

固定された塩分量

(kgm3) pH 試験方法

HFSC424 065 1241 標準 HFSC325 022 1219 標準 HFSC226 000 1188 標準

OPC 098 1300 標準

y = -03404x2 + 93859x - 63495

-02

0

02

04

06

08

1

12

118 12 122 124 126 128 13 132

pH

固定された塩分量(kgm3)

図 117コンクリートのpHと塩分固定能力

183 pHの低下速度

本研究の期間中ではpHの変化に関しては浸漬 28日と 91日の 2点測定したここではpHと経過時間の関係が既往の研究3)と同様に直線と考えてpHが 110 および 100になる時間を算出した 本研究で得られた pHと経過時間の関係は次のようである HFSC424 pH(t)=-000254t + 1248 HFSC325 pH(t)=-000032t + 1221 HFSC226 pH(t)=-000222t + 1208 ここでt経過時間(日)である ここでは最も大きい pHの低下速度を用いてpHが 110と 100になるまでに必要な期間を推定した表 111 にその結果を示す以上からpHが 110に到達する期間はHFSCでは 2年以内との結果が得られた

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表 111 pHの低下予測

pH低下速度 経過時間(年) セメントの種類 初期 pH

1日当り 1年当り pH 110 pH 100 HFSC424 1248 160 267 HFSC325 1221 131 238 HFSC226 1208

000254 0927 117 224

184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合)

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係

これまで実験したひび割れのない供試体における pH と鉄筋位置での全塩分量と腐

食面積率および腐食減量率をまとめて表 112に示す

表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果

pH 鉄筋位置 セメントの

種類

人工海水 の塩化物イオ

ン濃度() 試験開

始前 試験終

了時 かぶり (mm)

全塩分量

(kgm3)

腐食面積

率() 腐食減量

率()

15 022 50 011 25 000 00 002 HFSC424 1203 1164 35 000 00 002 15 031 20 005 25 000 00 004 HFSC325 1172 1141 35 000 00 003 15 066 5370 058 25 031 1058 063 HFSC226 1143 1110 35 026 821 020 15 013 231 055 25 009 00 00 OPC

18

1300 1300 35 016 00 00

HFSC424 1203 1164 011 30 001 HFSC325 1172 1141 000 20 005 HFSC226 1143 1110 006 2818 140

OPC

27

1300 1300 009 00 00

HFSC226 1143 1110 114 1429 076

OPC 塩分練り込み

1300 1300

25

109 427 085 図 14に鉄筋位置の全塩分量と腐食減量を示すHFSC226と OPCの一部に塩分量が小さいにも関わらず腐食が進んでいるものが見られるが概ね全塩分量が大きくな

ると腐食減量率が大きくなる傾向が認められるHFSC に関しては塩分固定能力はなく塩分が浸透するとすぐに塩分環境下の腐食を始めると考えるべきである

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全塩分量と減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

0 02 04 06 08 1 12

全塩分量(kgm3)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 14 全塩分量と腐食減量率

(2) コンクリートの pHと腐食量の関係

塩分が少ない状態(HFSC02kgm3以下OPC10kgm3以下)でのコンクリート

のpH(試験終了後)と腐食減量関係を図 15に示す コンクリートのpHと腐食減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

11 115 12 125 13 135

pH

腐食減量率()

図 15 コンクリートの pHと腐食減量率

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pHが大きくなると塩分が存在しない場合の腐食量は小さくなっているしかしpHが 110 付近では急激に腐食減量率が大きくなったpH と腐食の関係を明確に定量化することはできなかったがpH1125 より pH が低くなると塩分がなくても腐食が進行することが認められる HFSC の配合を見ると本実験の範囲ではHFSC226 は塩分が浸透しなくても腐食する領域に位置しHFSC325 と 424 は塩分がこなければ腐食しない領域に位置すると考えられるただしHFSC ではフライアッシュのポゾラン反応とともに pH が低下してき110 を下回ることが想定されるために鉄筋コンクリート構造として工学的な検討を行う場合は塩分が浸透しなくても腐食すると考える必要があるさらに

HFSC226では塩分が存在する場合の腐食量と存在しない場合の腐食量は腐食減量率から見るとほぼ同等であった

(3) 腐食速度

HFSC226の塩分が鉄筋に到達しない供試体の腐食減量率をもとに塩分が存在しない場合の腐食速度を推定したHFSC226の 91日間におけるかぶり 25mmの腐食減量率は 0631で35mm の腐食減量率は 0201であったここで両者の平均をHFSC226の塩分が存在しない場合の腐食率とすると167年となる 一方既往の研究3)によれば一年間海洋環境下(海中)に暴露したHFSC226を用いた腐食速度は塩分が鉄筋まで到達しない条件下で 043年であった 次に塩分が存在する場合の腐食速度は塩分練り込み供試体の腐食減量率(07691日)と促進倍率 43倍から換算すると 071となる塩分が存在するときの腐食減量率はHFSC226と OPCでは076と 085とほとんど変わらないことから塩分が到達した後の鉄筋腐食量は pH に依存しないものと考えられる以上の計算を

HFSC424および 325に当てはめるとHFSC424および 325では塩分が浸入し到達しないと腐食しないということになる 鉄筋の腐食を考える上での腐食速度は表 113のようになる

表 113 鉄筋の腐食速度

セメントの

種類 pH(試験開始時)

塩分が浸透しないときの腐

食速度(重量年)

塩分が浸透したと

きの腐食速度 (重量年)

HFSC424 1164 HFSC325 1141 000

HFSC226 1110 043 071

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合)

ひび割れを有する場合の鉄筋の腐食減量率についての試験結果を表 114に示す既

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往の研究2)におけるOPCおよびHFSC226の試験結果についても参考として示した

表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果

セメントの種類 海水濃度 (Cl)

pH

かぶり (mm)

ひび割れ幅 (mm)

腐食面積率 ()

腐食減量率 ()

00 000 002 02 1600 019 05 1800 020 HFSC424 18 1164 25

10 2800 022 0 000 004

02 1900 021 05 2400 025

HFSC325 18 1141 25

10 3100 031 00 1058 063 02 2581 160 05 2938 158

HFSC226 (参考) 18 1110 25

10 3437 154 00 000 000 02 082 099 05 632 134

OPC (参考) 18 1300 25

10 857 058 セメントの種類およびひび割れ幅と腐食減量率の関係を図 16に示す

0

02

04

06

08

1

12

14

16

18

0 02 05 10

ひび割れ幅(mm)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 16 腐食減量率

腐食減量率はHFSC424と 325では OPCより小さくなったこの結果からHFSCではひび割れが入った場合鉄筋の腐食減量は OPCより小さいと考えられる

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186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

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表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

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割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

-36-

JNC TJ8400 2003-063

【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

-38-

Page 17: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

173 鉄筋腐食

(1) 自然電位

図 11および図 12に自然電位測定結果を示す

-800

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 11自然電位の測定結果(HFSC424)

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

0 2 4 6 8 10 12 14

乾湿繰り返しサイクル(回)

自然電位(mV)

09-25mmなし18-25mmなし27-25mmなし18-15mmなし

18-35mmなし18-25mm02mm18-25mm05mm18-25mm10mm

図 12 自然電位の測定結果(HFSC325)

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(2) 分極抵抗

表 17に分極抵抗測定結果を示す

表 17 分極抵抗測定結果 上段分極抵抗(Ωcm2) 下段腐食速度(microAcm2) 記号 海水濃度 かぶり ひび割れ

0 サイクル 6 サイクル 8 サイクル 10 サイクル 13 サイクル 2149 2262 2319 2247 1818 50

0012 0012 0011 0012 0015 2505 2038 2265 2377 2083

飽和 0011 0013 0011 0011 0013 2302 2105 1557 1914 2240

25mm

0011 0012 0017 0014 0012 2865 2645 2406 2434 2190 15mm 0009 0010 0011 0011 0012 3237 2948 2927 2889 2228 35mm

無し

0008 0009 0009 0009 0012 3531 3256 1139 1329 1246 02mm 0007 0008 0023 0020 0021 2482 2584 1512 1610 1305 05mm 0011 0010 0017 0017 0020 3614 2636 1742 1753 1208

HFSC424

100

25mm

10mm 0007 0010 0015 0015 0022 2276 2417 2400 2233 1800 50 0012 0011 0011 0012 0014 3044 2590 2320 2372 2106

飽和 0009 0010 0011 0011 0012 2875 2309 2300 2169 2279

25mm

0009 0011 0011 0012 0012 4000 2601 2430 2540 3333 15mm 0007 0010 0011 0010 0008 3283 2377 2220 2375 2330 35mm

無し

0008 0011 0012 0011 0011 3252 2701 2375 2151 1843 02mm 0008 0010 0011 0012 0014 3770 2233 1972 2035 1684 05mm 0007 0012 0013 0013 0015 2258 2385 2270 1571 1237

HFSC325

100

25mm

10mm 0012 0011 0011 0017 0021

- - 7

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174 pH試験

pH測定結果を表 18に示す

表 18 pH測定結果

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 4 HFSC424 1217 1202 HFSC325 1229 1221 HFSC226

28 1229 1216

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 3 HFSC424 1196 1188 HFSC325 1223 1219 HFSC226

91 1240 1241

18 考察

181 塩分浸透性

得られた拡散係数を基に塩分浸透に関する促進試験の促進倍率と定義し値を算

定した表 19に促進倍率を示す

表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 セメントの種類 促進試験の拡散係数①

(times10-8cm2s) 標準試験の拡散係数② (times10-8cm2s)

促進倍率①②

HFSC424 29 177 16 HFSC325 40 190 20 HFSC226 40 2057 02 OPC 44 108 35

182 塩分の固定化能力

OPCでは塩化物イオンが浸入した場合フリーデル氏塩として塩化物イオンを固定化する能力があるここでは塩分浸透試験から得られた全塩分量から可溶性塩分

を除いたものが塩分を固定化する能力と定義する 標準試験で測定された各セメントにおける塩分固定化能力を表 110 に示すまた

本研究で得られた pHと固定化された塩分量の関係を図 13に示す

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表 110 HFSCの塩分固定能力 セメントの種類

固定された塩分量

(kgm3) pH 試験方法

HFSC424 065 1241 標準 HFSC325 022 1219 標準 HFSC226 000 1188 標準

OPC 098 1300 標準

y = -03404x2 + 93859x - 63495

-02

0

02

04

06

08

1

12

118 12 122 124 126 128 13 132

pH

固定された塩分量(kgm3)

図 117コンクリートのpHと塩分固定能力

183 pHの低下速度

本研究の期間中ではpHの変化に関しては浸漬 28日と 91日の 2点測定したここではpHと経過時間の関係が既往の研究3)と同様に直線と考えてpHが 110 および 100になる時間を算出した 本研究で得られた pHと経過時間の関係は次のようである HFSC424 pH(t)=-000254t + 1248 HFSC325 pH(t)=-000032t + 1221 HFSC226 pH(t)=-000222t + 1208 ここでt経過時間(日)である ここでは最も大きい pHの低下速度を用いてpHが 110と 100になるまでに必要な期間を推定した表 111 にその結果を示す以上からpHが 110に到達する期間はHFSCでは 2年以内との結果が得られた

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表 111 pHの低下予測

pH低下速度 経過時間(年) セメントの種類 初期 pH

1日当り 1年当り pH 110 pH 100 HFSC424 1248 160 267 HFSC325 1221 131 238 HFSC226 1208

000254 0927 117 224

184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合)

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係

これまで実験したひび割れのない供試体における pH と鉄筋位置での全塩分量と腐

食面積率および腐食減量率をまとめて表 112に示す

表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果

pH 鉄筋位置 セメントの

種類

人工海水 の塩化物イオ

ン濃度() 試験開

始前 試験終

了時 かぶり (mm)

全塩分量

(kgm3)

腐食面積

率() 腐食減量

率()

15 022 50 011 25 000 00 002 HFSC424 1203 1164 35 000 00 002 15 031 20 005 25 000 00 004 HFSC325 1172 1141 35 000 00 003 15 066 5370 058 25 031 1058 063 HFSC226 1143 1110 35 026 821 020 15 013 231 055 25 009 00 00 OPC

18

1300 1300 35 016 00 00

HFSC424 1203 1164 011 30 001 HFSC325 1172 1141 000 20 005 HFSC226 1143 1110 006 2818 140

OPC

27

1300 1300 009 00 00

HFSC226 1143 1110 114 1429 076

OPC 塩分練り込み

1300 1300

25

109 427 085 図 14に鉄筋位置の全塩分量と腐食減量を示すHFSC226と OPCの一部に塩分量が小さいにも関わらず腐食が進んでいるものが見られるが概ね全塩分量が大きくな

ると腐食減量率が大きくなる傾向が認められるHFSC に関しては塩分固定能力はなく塩分が浸透するとすぐに塩分環境下の腐食を始めると考えるべきである

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全塩分量と減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

0 02 04 06 08 1 12

全塩分量(kgm3)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 14 全塩分量と腐食減量率

(2) コンクリートの pHと腐食量の関係

塩分が少ない状態(HFSC02kgm3以下OPC10kgm3以下)でのコンクリート

のpH(試験終了後)と腐食減量関係を図 15に示す コンクリートのpHと腐食減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

11 115 12 125 13 135

pH

腐食減量率()

図 15 コンクリートの pHと腐食減量率

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pHが大きくなると塩分が存在しない場合の腐食量は小さくなっているしかしpHが 110 付近では急激に腐食減量率が大きくなったpH と腐食の関係を明確に定量化することはできなかったがpH1125 より pH が低くなると塩分がなくても腐食が進行することが認められる HFSC の配合を見ると本実験の範囲ではHFSC226 は塩分が浸透しなくても腐食する領域に位置しHFSC325 と 424 は塩分がこなければ腐食しない領域に位置すると考えられるただしHFSC ではフライアッシュのポゾラン反応とともに pH が低下してき110 を下回ることが想定されるために鉄筋コンクリート構造として工学的な検討を行う場合は塩分が浸透しなくても腐食すると考える必要があるさらに

HFSC226では塩分が存在する場合の腐食量と存在しない場合の腐食量は腐食減量率から見るとほぼ同等であった

(3) 腐食速度

HFSC226の塩分が鉄筋に到達しない供試体の腐食減量率をもとに塩分が存在しない場合の腐食速度を推定したHFSC226の 91日間におけるかぶり 25mmの腐食減量率は 0631で35mm の腐食減量率は 0201であったここで両者の平均をHFSC226の塩分が存在しない場合の腐食率とすると167年となる 一方既往の研究3)によれば一年間海洋環境下(海中)に暴露したHFSC226を用いた腐食速度は塩分が鉄筋まで到達しない条件下で 043年であった 次に塩分が存在する場合の腐食速度は塩分練り込み供試体の腐食減量率(07691日)と促進倍率 43倍から換算すると 071となる塩分が存在するときの腐食減量率はHFSC226と OPCでは076と 085とほとんど変わらないことから塩分が到達した後の鉄筋腐食量は pH に依存しないものと考えられる以上の計算を

HFSC424および 325に当てはめるとHFSC424および 325では塩分が浸入し到達しないと腐食しないということになる 鉄筋の腐食を考える上での腐食速度は表 113のようになる

表 113 鉄筋の腐食速度

セメントの

種類 pH(試験開始時)

塩分が浸透しないときの腐

食速度(重量年)

塩分が浸透したと

きの腐食速度 (重量年)

HFSC424 1164 HFSC325 1141 000

HFSC226 1110 043 071

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合)

ひび割れを有する場合の鉄筋の腐食減量率についての試験結果を表 114に示す既

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往の研究2)におけるOPCおよびHFSC226の試験結果についても参考として示した

表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果

セメントの種類 海水濃度 (Cl)

pH

かぶり (mm)

ひび割れ幅 (mm)

腐食面積率 ()

腐食減量率 ()

00 000 002 02 1600 019 05 1800 020 HFSC424 18 1164 25

10 2800 022 0 000 004

02 1900 021 05 2400 025

HFSC325 18 1141 25

10 3100 031 00 1058 063 02 2581 160 05 2938 158

HFSC226 (参考) 18 1110 25

10 3437 154 00 000 000 02 082 099 05 632 134

OPC (参考) 18 1300 25

10 857 058 セメントの種類およびひび割れ幅と腐食減量率の関係を図 16に示す

0

02

04

06

08

1

12

14

16

18

0 02 05 10

ひび割れ幅(mm)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 16 腐食減量率

腐食減量率はHFSC424と 325では OPCより小さくなったこの結果からHFSCではひび割れが入った場合鉄筋の腐食減量は OPCより小さいと考えられる

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186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

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表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

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割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

-18-

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

-19-

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

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JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 18: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

(2) 分極抵抗

表 17に分極抵抗測定結果を示す

表 17 分極抵抗測定結果 上段分極抵抗(Ωcm2) 下段腐食速度(microAcm2) 記号 海水濃度 かぶり ひび割れ

0 サイクル 6 サイクル 8 サイクル 10 サイクル 13 サイクル 2149 2262 2319 2247 1818 50

0012 0012 0011 0012 0015 2505 2038 2265 2377 2083

飽和 0011 0013 0011 0011 0013 2302 2105 1557 1914 2240

25mm

0011 0012 0017 0014 0012 2865 2645 2406 2434 2190 15mm 0009 0010 0011 0011 0012 3237 2948 2927 2889 2228 35mm

無し

0008 0009 0009 0009 0012 3531 3256 1139 1329 1246 02mm 0007 0008 0023 0020 0021 2482 2584 1512 1610 1305 05mm 0011 0010 0017 0017 0020 3614 2636 1742 1753 1208

HFSC424

100

25mm

10mm 0007 0010 0015 0015 0022 2276 2417 2400 2233 1800 50 0012 0011 0011 0012 0014 3044 2590 2320 2372 2106

飽和 0009 0010 0011 0011 0012 2875 2309 2300 2169 2279

25mm

0009 0011 0011 0012 0012 4000 2601 2430 2540 3333 15mm 0007 0010 0011 0010 0008 3283 2377 2220 2375 2330 35mm

無し

0008 0011 0012 0011 0011 3252 2701 2375 2151 1843 02mm 0008 0010 0011 0012 0014 3770 2233 1972 2035 1684 05mm 0007 0012 0013 0013 0015 2258 2385 2270 1571 1237

HFSC325

100

25mm

10mm 0012 0011 0011 0017 0021

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174 pH試験

pH測定結果を表 18に示す

表 18 pH測定結果

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 4 HFSC424 1217 1202 HFSC325 1229 1221 HFSC226

28 1229 1216

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 3 HFSC424 1196 1188 HFSC325 1223 1219 HFSC226

91 1240 1241

18 考察

181 塩分浸透性

得られた拡散係数を基に塩分浸透に関する促進試験の促進倍率と定義し値を算

定した表 19に促進倍率を示す

表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 セメントの種類 促進試験の拡散係数①

(times10-8cm2s) 標準試験の拡散係数② (times10-8cm2s)

促進倍率①②

HFSC424 29 177 16 HFSC325 40 190 20 HFSC226 40 2057 02 OPC 44 108 35

182 塩分の固定化能力

OPCでは塩化物イオンが浸入した場合フリーデル氏塩として塩化物イオンを固定化する能力があるここでは塩分浸透試験から得られた全塩分量から可溶性塩分

を除いたものが塩分を固定化する能力と定義する 標準試験で測定された各セメントにおける塩分固定化能力を表 110 に示すまた

本研究で得られた pHと固定化された塩分量の関係を図 13に示す

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表 110 HFSCの塩分固定能力 セメントの種類

固定された塩分量

(kgm3) pH 試験方法

HFSC424 065 1241 標準 HFSC325 022 1219 標準 HFSC226 000 1188 標準

OPC 098 1300 標準

y = -03404x2 + 93859x - 63495

-02

0

02

04

06

08

1

12

118 12 122 124 126 128 13 132

pH

固定された塩分量(kgm3)

図 117コンクリートのpHと塩分固定能力

183 pHの低下速度

本研究の期間中ではpHの変化に関しては浸漬 28日と 91日の 2点測定したここではpHと経過時間の関係が既往の研究3)と同様に直線と考えてpHが 110 および 100になる時間を算出した 本研究で得られた pHと経過時間の関係は次のようである HFSC424 pH(t)=-000254t + 1248 HFSC325 pH(t)=-000032t + 1221 HFSC226 pH(t)=-000222t + 1208 ここでt経過時間(日)である ここでは最も大きい pHの低下速度を用いてpHが 110と 100になるまでに必要な期間を推定した表 111 にその結果を示す以上からpHが 110に到達する期間はHFSCでは 2年以内との結果が得られた

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表 111 pHの低下予測

pH低下速度 経過時間(年) セメントの種類 初期 pH

1日当り 1年当り pH 110 pH 100 HFSC424 1248 160 267 HFSC325 1221 131 238 HFSC226 1208

000254 0927 117 224

184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合)

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係

これまで実験したひび割れのない供試体における pH と鉄筋位置での全塩分量と腐

食面積率および腐食減量率をまとめて表 112に示す

表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果

pH 鉄筋位置 セメントの

種類

人工海水 の塩化物イオ

ン濃度() 試験開

始前 試験終

了時 かぶり (mm)

全塩分量

(kgm3)

腐食面積

率() 腐食減量

率()

15 022 50 011 25 000 00 002 HFSC424 1203 1164 35 000 00 002 15 031 20 005 25 000 00 004 HFSC325 1172 1141 35 000 00 003 15 066 5370 058 25 031 1058 063 HFSC226 1143 1110 35 026 821 020 15 013 231 055 25 009 00 00 OPC

18

1300 1300 35 016 00 00

HFSC424 1203 1164 011 30 001 HFSC325 1172 1141 000 20 005 HFSC226 1143 1110 006 2818 140

OPC

27

1300 1300 009 00 00

HFSC226 1143 1110 114 1429 076

OPC 塩分練り込み

1300 1300

25

109 427 085 図 14に鉄筋位置の全塩分量と腐食減量を示すHFSC226と OPCの一部に塩分量が小さいにも関わらず腐食が進んでいるものが見られるが概ね全塩分量が大きくな

ると腐食減量率が大きくなる傾向が認められるHFSC に関しては塩分固定能力はなく塩分が浸透するとすぐに塩分環境下の腐食を始めると考えるべきである

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全塩分量と減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

0 02 04 06 08 1 12

全塩分量(kgm3)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 14 全塩分量と腐食減量率

(2) コンクリートの pHと腐食量の関係

塩分が少ない状態(HFSC02kgm3以下OPC10kgm3以下)でのコンクリート

のpH(試験終了後)と腐食減量関係を図 15に示す コンクリートのpHと腐食減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

11 115 12 125 13 135

pH

腐食減量率()

図 15 コンクリートの pHと腐食減量率

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pHが大きくなると塩分が存在しない場合の腐食量は小さくなっているしかしpHが 110 付近では急激に腐食減量率が大きくなったpH と腐食の関係を明確に定量化することはできなかったがpH1125 より pH が低くなると塩分がなくても腐食が進行することが認められる HFSC の配合を見ると本実験の範囲ではHFSC226 は塩分が浸透しなくても腐食する領域に位置しHFSC325 と 424 は塩分がこなければ腐食しない領域に位置すると考えられるただしHFSC ではフライアッシュのポゾラン反応とともに pH が低下してき110 を下回ることが想定されるために鉄筋コンクリート構造として工学的な検討を行う場合は塩分が浸透しなくても腐食すると考える必要があるさらに

HFSC226では塩分が存在する場合の腐食量と存在しない場合の腐食量は腐食減量率から見るとほぼ同等であった

(3) 腐食速度

HFSC226の塩分が鉄筋に到達しない供試体の腐食減量率をもとに塩分が存在しない場合の腐食速度を推定したHFSC226の 91日間におけるかぶり 25mmの腐食減量率は 0631で35mm の腐食減量率は 0201であったここで両者の平均をHFSC226の塩分が存在しない場合の腐食率とすると167年となる 一方既往の研究3)によれば一年間海洋環境下(海中)に暴露したHFSC226を用いた腐食速度は塩分が鉄筋まで到達しない条件下で 043年であった 次に塩分が存在する場合の腐食速度は塩分練り込み供試体の腐食減量率(07691日)と促進倍率 43倍から換算すると 071となる塩分が存在するときの腐食減量率はHFSC226と OPCでは076と 085とほとんど変わらないことから塩分が到達した後の鉄筋腐食量は pH に依存しないものと考えられる以上の計算を

HFSC424および 325に当てはめるとHFSC424および 325では塩分が浸入し到達しないと腐食しないということになる 鉄筋の腐食を考える上での腐食速度は表 113のようになる

表 113 鉄筋の腐食速度

セメントの

種類 pH(試験開始時)

塩分が浸透しないときの腐

食速度(重量年)

塩分が浸透したと

きの腐食速度 (重量年)

HFSC424 1164 HFSC325 1141 000

HFSC226 1110 043 071

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合)

ひび割れを有する場合の鉄筋の腐食減量率についての試験結果を表 114に示す既

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往の研究2)におけるOPCおよびHFSC226の試験結果についても参考として示した

表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果

セメントの種類 海水濃度 (Cl)

pH

かぶり (mm)

ひび割れ幅 (mm)

腐食面積率 ()

腐食減量率 ()

00 000 002 02 1600 019 05 1800 020 HFSC424 18 1164 25

10 2800 022 0 000 004

02 1900 021 05 2400 025

HFSC325 18 1141 25

10 3100 031 00 1058 063 02 2581 160 05 2938 158

HFSC226 (参考) 18 1110 25

10 3437 154 00 000 000 02 082 099 05 632 134

OPC (参考) 18 1300 25

10 857 058 セメントの種類およびひび割れ幅と腐食減量率の関係を図 16に示す

0

02

04

06

08

1

12

14

16

18

0 02 05 10

ひび割れ幅(mm)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 16 腐食減量率

腐食減量率はHFSC424と 325では OPCより小さくなったこの結果からHFSCではひび割れが入った場合鉄筋の腐食減量は OPCより小さいと考えられる

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186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

- - 14

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表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

- - 15

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割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

- - 16

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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JNC TJ8400 2003-063

加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

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17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 19: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

174 pH試験

pH測定結果を表 18に示す

表 18 pH測定結果

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 4 HFSC424 1217 1202 HFSC325 1229 1221 HFSC226

28 1229 1216

測定材齢(日) 記 号 試験体材齢

(日) 1 3 HFSC424 1196 1188 HFSC325 1223 1219 HFSC226

91 1240 1241

18 考察

181 塩分浸透性

得られた拡散係数を基に塩分浸透に関する促進試験の促進倍率と定義し値を算

定した表 19に促進倍率を示す

表 19 塩分浸透に関する促進倍率の算定 セメントの種類 促進試験の拡散係数①

(times10-8cm2s) 標準試験の拡散係数② (times10-8cm2s)

促進倍率①②

HFSC424 29 177 16 HFSC325 40 190 20 HFSC226 40 2057 02 OPC 44 108 35

182 塩分の固定化能力

OPCでは塩化物イオンが浸入した場合フリーデル氏塩として塩化物イオンを固定化する能力があるここでは塩分浸透試験から得られた全塩分量から可溶性塩分

を除いたものが塩分を固定化する能力と定義する 標準試験で測定された各セメントにおける塩分固定化能力を表 110 に示すまた

本研究で得られた pHと固定化された塩分量の関係を図 13に示す

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表 110 HFSCの塩分固定能力 セメントの種類

固定された塩分量

(kgm3) pH 試験方法

HFSC424 065 1241 標準 HFSC325 022 1219 標準 HFSC226 000 1188 標準

OPC 098 1300 標準

y = -03404x2 + 93859x - 63495

-02

0

02

04

06

08

1

12

118 12 122 124 126 128 13 132

pH

固定された塩分量(kgm3)

図 117コンクリートのpHと塩分固定能力

183 pHの低下速度

本研究の期間中ではpHの変化に関しては浸漬 28日と 91日の 2点測定したここではpHと経過時間の関係が既往の研究3)と同様に直線と考えてpHが 110 および 100になる時間を算出した 本研究で得られた pHと経過時間の関係は次のようである HFSC424 pH(t)=-000254t + 1248 HFSC325 pH(t)=-000032t + 1221 HFSC226 pH(t)=-000222t + 1208 ここでt経過時間(日)である ここでは最も大きい pHの低下速度を用いてpHが 110と 100になるまでに必要な期間を推定した表 111 にその結果を示す以上からpHが 110に到達する期間はHFSCでは 2年以内との結果が得られた

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表 111 pHの低下予測

pH低下速度 経過時間(年) セメントの種類 初期 pH

1日当り 1年当り pH 110 pH 100 HFSC424 1248 160 267 HFSC325 1221 131 238 HFSC226 1208

000254 0927 117 224

184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合)

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係

これまで実験したひび割れのない供試体における pH と鉄筋位置での全塩分量と腐

食面積率および腐食減量率をまとめて表 112に示す

表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果

pH 鉄筋位置 セメントの

種類

人工海水 の塩化物イオ

ン濃度() 試験開

始前 試験終

了時 かぶり (mm)

全塩分量

(kgm3)

腐食面積

率() 腐食減量

率()

15 022 50 011 25 000 00 002 HFSC424 1203 1164 35 000 00 002 15 031 20 005 25 000 00 004 HFSC325 1172 1141 35 000 00 003 15 066 5370 058 25 031 1058 063 HFSC226 1143 1110 35 026 821 020 15 013 231 055 25 009 00 00 OPC

18

1300 1300 35 016 00 00

HFSC424 1203 1164 011 30 001 HFSC325 1172 1141 000 20 005 HFSC226 1143 1110 006 2818 140

OPC

27

1300 1300 009 00 00

HFSC226 1143 1110 114 1429 076

OPC 塩分練り込み

1300 1300

25

109 427 085 図 14に鉄筋位置の全塩分量と腐食減量を示すHFSC226と OPCの一部に塩分量が小さいにも関わらず腐食が進んでいるものが見られるが概ね全塩分量が大きくな

ると腐食減量率が大きくなる傾向が認められるHFSC に関しては塩分固定能力はなく塩分が浸透するとすぐに塩分環境下の腐食を始めると考えるべきである

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全塩分量と減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

0 02 04 06 08 1 12

全塩分量(kgm3)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 14 全塩分量と腐食減量率

(2) コンクリートの pHと腐食量の関係

塩分が少ない状態(HFSC02kgm3以下OPC10kgm3以下)でのコンクリート

のpH(試験終了後)と腐食減量関係を図 15に示す コンクリートのpHと腐食減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

11 115 12 125 13 135

pH

腐食減量率()

図 15 コンクリートの pHと腐食減量率

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pHが大きくなると塩分が存在しない場合の腐食量は小さくなっているしかしpHが 110 付近では急激に腐食減量率が大きくなったpH と腐食の関係を明確に定量化することはできなかったがpH1125 より pH が低くなると塩分がなくても腐食が進行することが認められる HFSC の配合を見ると本実験の範囲ではHFSC226 は塩分が浸透しなくても腐食する領域に位置しHFSC325 と 424 は塩分がこなければ腐食しない領域に位置すると考えられるただしHFSC ではフライアッシュのポゾラン反応とともに pH が低下してき110 を下回ることが想定されるために鉄筋コンクリート構造として工学的な検討を行う場合は塩分が浸透しなくても腐食すると考える必要があるさらに

HFSC226では塩分が存在する場合の腐食量と存在しない場合の腐食量は腐食減量率から見るとほぼ同等であった

(3) 腐食速度

HFSC226の塩分が鉄筋に到達しない供試体の腐食減量率をもとに塩分が存在しない場合の腐食速度を推定したHFSC226の 91日間におけるかぶり 25mmの腐食減量率は 0631で35mm の腐食減量率は 0201であったここで両者の平均をHFSC226の塩分が存在しない場合の腐食率とすると167年となる 一方既往の研究3)によれば一年間海洋環境下(海中)に暴露したHFSC226を用いた腐食速度は塩分が鉄筋まで到達しない条件下で 043年であった 次に塩分が存在する場合の腐食速度は塩分練り込み供試体の腐食減量率(07691日)と促進倍率 43倍から換算すると 071となる塩分が存在するときの腐食減量率はHFSC226と OPCでは076と 085とほとんど変わらないことから塩分が到達した後の鉄筋腐食量は pH に依存しないものと考えられる以上の計算を

HFSC424および 325に当てはめるとHFSC424および 325では塩分が浸入し到達しないと腐食しないということになる 鉄筋の腐食を考える上での腐食速度は表 113のようになる

表 113 鉄筋の腐食速度

セメントの

種類 pH(試験開始時)

塩分が浸透しないときの腐

食速度(重量年)

塩分が浸透したと

きの腐食速度 (重量年)

HFSC424 1164 HFSC325 1141 000

HFSC226 1110 043 071

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合)

ひび割れを有する場合の鉄筋の腐食減量率についての試験結果を表 114に示す既

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往の研究2)におけるOPCおよびHFSC226の試験結果についても参考として示した

表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果

セメントの種類 海水濃度 (Cl)

pH

かぶり (mm)

ひび割れ幅 (mm)

腐食面積率 ()

腐食減量率 ()

00 000 002 02 1600 019 05 1800 020 HFSC424 18 1164 25

10 2800 022 0 000 004

02 1900 021 05 2400 025

HFSC325 18 1141 25

10 3100 031 00 1058 063 02 2581 160 05 2938 158

HFSC226 (参考) 18 1110 25

10 3437 154 00 000 000 02 082 099 05 632 134

OPC (参考) 18 1300 25

10 857 058 セメントの種類およびひび割れ幅と腐食減量率の関係を図 16に示す

0

02

04

06

08

1

12

14

16

18

0 02 05 10

ひび割れ幅(mm)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 16 腐食減量率

腐食減量率はHFSC424と 325では OPCより小さくなったこの結果からHFSCではひび割れが入った場合鉄筋の腐食減量は OPCより小さいと考えられる

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186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

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表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

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割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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JNC TJ8400 2003-063

【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

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JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 20: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

表 110 HFSCの塩分固定能力 セメントの種類

固定された塩分量

(kgm3) pH 試験方法

HFSC424 065 1241 標準 HFSC325 022 1219 標準 HFSC226 000 1188 標準

OPC 098 1300 標準

y = -03404x2 + 93859x - 63495

-02

0

02

04

06

08

1

12

118 12 122 124 126 128 13 132

pH

固定された塩分量(kgm3)

図 117コンクリートのpHと塩分固定能力

183 pHの低下速度

本研究の期間中ではpHの変化に関しては浸漬 28日と 91日の 2点測定したここではpHと経過時間の関係が既往の研究3)と同様に直線と考えてpHが 110 および 100になる時間を算出した 本研究で得られた pHと経過時間の関係は次のようである HFSC424 pH(t)=-000254t + 1248 HFSC325 pH(t)=-000032t + 1221 HFSC226 pH(t)=-000222t + 1208 ここでt経過時間(日)である ここでは最も大きい pHの低下速度を用いてpHが 110と 100になるまでに必要な期間を推定した表 111 にその結果を示す以上からpHが 110に到達する期間はHFSCでは 2年以内との結果が得られた

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表 111 pHの低下予測

pH低下速度 経過時間(年) セメントの種類 初期 pH

1日当り 1年当り pH 110 pH 100 HFSC424 1248 160 267 HFSC325 1221 131 238 HFSC226 1208

000254 0927 117 224

184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合)

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係

これまで実験したひび割れのない供試体における pH と鉄筋位置での全塩分量と腐

食面積率および腐食減量率をまとめて表 112に示す

表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果

pH 鉄筋位置 セメントの

種類

人工海水 の塩化物イオ

ン濃度() 試験開

始前 試験終

了時 かぶり (mm)

全塩分量

(kgm3)

腐食面積

率() 腐食減量

率()

15 022 50 011 25 000 00 002 HFSC424 1203 1164 35 000 00 002 15 031 20 005 25 000 00 004 HFSC325 1172 1141 35 000 00 003 15 066 5370 058 25 031 1058 063 HFSC226 1143 1110 35 026 821 020 15 013 231 055 25 009 00 00 OPC

18

1300 1300 35 016 00 00

HFSC424 1203 1164 011 30 001 HFSC325 1172 1141 000 20 005 HFSC226 1143 1110 006 2818 140

OPC

27

1300 1300 009 00 00

HFSC226 1143 1110 114 1429 076

OPC 塩分練り込み

1300 1300

25

109 427 085 図 14に鉄筋位置の全塩分量と腐食減量を示すHFSC226と OPCの一部に塩分量が小さいにも関わらず腐食が進んでいるものが見られるが概ね全塩分量が大きくな

ると腐食減量率が大きくなる傾向が認められるHFSC に関しては塩分固定能力はなく塩分が浸透するとすぐに塩分環境下の腐食を始めると考えるべきである

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全塩分量と減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

0 02 04 06 08 1 12

全塩分量(kgm3)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 14 全塩分量と腐食減量率

(2) コンクリートの pHと腐食量の関係

塩分が少ない状態(HFSC02kgm3以下OPC10kgm3以下)でのコンクリート

のpH(試験終了後)と腐食減量関係を図 15に示す コンクリートのpHと腐食減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

11 115 12 125 13 135

pH

腐食減量率()

図 15 コンクリートの pHと腐食減量率

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pHが大きくなると塩分が存在しない場合の腐食量は小さくなっているしかしpHが 110 付近では急激に腐食減量率が大きくなったpH と腐食の関係を明確に定量化することはできなかったがpH1125 より pH が低くなると塩分がなくても腐食が進行することが認められる HFSC の配合を見ると本実験の範囲ではHFSC226 は塩分が浸透しなくても腐食する領域に位置しHFSC325 と 424 は塩分がこなければ腐食しない領域に位置すると考えられるただしHFSC ではフライアッシュのポゾラン反応とともに pH が低下してき110 を下回ることが想定されるために鉄筋コンクリート構造として工学的な検討を行う場合は塩分が浸透しなくても腐食すると考える必要があるさらに

HFSC226では塩分が存在する場合の腐食量と存在しない場合の腐食量は腐食減量率から見るとほぼ同等であった

(3) 腐食速度

HFSC226の塩分が鉄筋に到達しない供試体の腐食減量率をもとに塩分が存在しない場合の腐食速度を推定したHFSC226の 91日間におけるかぶり 25mmの腐食減量率は 0631で35mm の腐食減量率は 0201であったここで両者の平均をHFSC226の塩分が存在しない場合の腐食率とすると167年となる 一方既往の研究3)によれば一年間海洋環境下(海中)に暴露したHFSC226を用いた腐食速度は塩分が鉄筋まで到達しない条件下で 043年であった 次に塩分が存在する場合の腐食速度は塩分練り込み供試体の腐食減量率(07691日)と促進倍率 43倍から換算すると 071となる塩分が存在するときの腐食減量率はHFSC226と OPCでは076と 085とほとんど変わらないことから塩分が到達した後の鉄筋腐食量は pH に依存しないものと考えられる以上の計算を

HFSC424および 325に当てはめるとHFSC424および 325では塩分が浸入し到達しないと腐食しないということになる 鉄筋の腐食を考える上での腐食速度は表 113のようになる

表 113 鉄筋の腐食速度

セメントの

種類 pH(試験開始時)

塩分が浸透しないときの腐

食速度(重量年)

塩分が浸透したと

きの腐食速度 (重量年)

HFSC424 1164 HFSC325 1141 000

HFSC226 1110 043 071

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合)

ひび割れを有する場合の鉄筋の腐食減量率についての試験結果を表 114に示す既

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往の研究2)におけるOPCおよびHFSC226の試験結果についても参考として示した

表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果

セメントの種類 海水濃度 (Cl)

pH

かぶり (mm)

ひび割れ幅 (mm)

腐食面積率 ()

腐食減量率 ()

00 000 002 02 1600 019 05 1800 020 HFSC424 18 1164 25

10 2800 022 0 000 004

02 1900 021 05 2400 025

HFSC325 18 1141 25

10 3100 031 00 1058 063 02 2581 160 05 2938 158

HFSC226 (参考) 18 1110 25

10 3437 154 00 000 000 02 082 099 05 632 134

OPC (参考) 18 1300 25

10 857 058 セメントの種類およびひび割れ幅と腐食減量率の関係を図 16に示す

0

02

04

06

08

1

12

14

16

18

0 02 05 10

ひび割れ幅(mm)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 16 腐食減量率

腐食減量率はHFSC424と 325では OPCより小さくなったこの結果からHFSCではひび割れが入った場合鉄筋の腐食減量は OPCより小さいと考えられる

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186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

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表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

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割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

-36-

JNC TJ8400 2003-063

【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

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サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

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ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

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11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

-38-

Page 21: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

表 111 pHの低下予測

pH低下速度 経過時間(年) セメントの種類 初期 pH

1日当り 1年当り pH 110 pH 100 HFSC424 1248 160 267 HFSC325 1221 131 238 HFSC226 1208

000254 0927 117 224

184 鉄筋の腐食挙動(ひび割れがない場合)

(1) 塩分量と鉄筋腐食の関係

これまで実験したひび割れのない供試体における pH と鉄筋位置での全塩分量と腐

食面積率および腐食減量率をまとめて表 112に示す

表 112 ひび割れがない供試体での促進腐食試験結果

pH 鉄筋位置 セメントの

種類

人工海水 の塩化物イオ

ン濃度() 試験開

始前 試験終

了時 かぶり (mm)

全塩分量

(kgm3)

腐食面積

率() 腐食減量

率()

15 022 50 011 25 000 00 002 HFSC424 1203 1164 35 000 00 002 15 031 20 005 25 000 00 004 HFSC325 1172 1141 35 000 00 003 15 066 5370 058 25 031 1058 063 HFSC226 1143 1110 35 026 821 020 15 013 231 055 25 009 00 00 OPC

18

1300 1300 35 016 00 00

HFSC424 1203 1164 011 30 001 HFSC325 1172 1141 000 20 005 HFSC226 1143 1110 006 2818 140

OPC

27

1300 1300 009 00 00

HFSC226 1143 1110 114 1429 076

OPC 塩分練り込み

1300 1300

25

109 427 085 図 14に鉄筋位置の全塩分量と腐食減量を示すHFSC226と OPCの一部に塩分量が小さいにも関わらず腐食が進んでいるものが見られるが概ね全塩分量が大きくな

ると腐食減量率が大きくなる傾向が認められるHFSC に関しては塩分固定能力はなく塩分が浸透するとすぐに塩分環境下の腐食を始めると考えるべきである

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全塩分量と減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

0 02 04 06 08 1 12

全塩分量(kgm3)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 14 全塩分量と腐食減量率

(2) コンクリートの pHと腐食量の関係

塩分が少ない状態(HFSC02kgm3以下OPC10kgm3以下)でのコンクリート

のpH(試験終了後)と腐食減量関係を図 15に示す コンクリートのpHと腐食減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

11 115 12 125 13 135

pH

腐食減量率()

図 15 コンクリートの pHと腐食減量率

- - 11

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pHが大きくなると塩分が存在しない場合の腐食量は小さくなっているしかしpHが 110 付近では急激に腐食減量率が大きくなったpH と腐食の関係を明確に定量化することはできなかったがpH1125 より pH が低くなると塩分がなくても腐食が進行することが認められる HFSC の配合を見ると本実験の範囲ではHFSC226 は塩分が浸透しなくても腐食する領域に位置しHFSC325 と 424 は塩分がこなければ腐食しない領域に位置すると考えられるただしHFSC ではフライアッシュのポゾラン反応とともに pH が低下してき110 を下回ることが想定されるために鉄筋コンクリート構造として工学的な検討を行う場合は塩分が浸透しなくても腐食すると考える必要があるさらに

HFSC226では塩分が存在する場合の腐食量と存在しない場合の腐食量は腐食減量率から見るとほぼ同等であった

(3) 腐食速度

HFSC226の塩分が鉄筋に到達しない供試体の腐食減量率をもとに塩分が存在しない場合の腐食速度を推定したHFSC226の 91日間におけるかぶり 25mmの腐食減量率は 0631で35mm の腐食減量率は 0201であったここで両者の平均をHFSC226の塩分が存在しない場合の腐食率とすると167年となる 一方既往の研究3)によれば一年間海洋環境下(海中)に暴露したHFSC226を用いた腐食速度は塩分が鉄筋まで到達しない条件下で 043年であった 次に塩分が存在する場合の腐食速度は塩分練り込み供試体の腐食減量率(07691日)と促進倍率 43倍から換算すると 071となる塩分が存在するときの腐食減量率はHFSC226と OPCでは076と 085とほとんど変わらないことから塩分が到達した後の鉄筋腐食量は pH に依存しないものと考えられる以上の計算を

HFSC424および 325に当てはめるとHFSC424および 325では塩分が浸入し到達しないと腐食しないということになる 鉄筋の腐食を考える上での腐食速度は表 113のようになる

表 113 鉄筋の腐食速度

セメントの

種類 pH(試験開始時)

塩分が浸透しないときの腐

食速度(重量年)

塩分が浸透したと

きの腐食速度 (重量年)

HFSC424 1164 HFSC325 1141 000

HFSC226 1110 043 071

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合)

ひび割れを有する場合の鉄筋の腐食減量率についての試験結果を表 114に示す既

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往の研究2)におけるOPCおよびHFSC226の試験結果についても参考として示した

表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果

セメントの種類 海水濃度 (Cl)

pH

かぶり (mm)

ひび割れ幅 (mm)

腐食面積率 ()

腐食減量率 ()

00 000 002 02 1600 019 05 1800 020 HFSC424 18 1164 25

10 2800 022 0 000 004

02 1900 021 05 2400 025

HFSC325 18 1141 25

10 3100 031 00 1058 063 02 2581 160 05 2938 158

HFSC226 (参考) 18 1110 25

10 3437 154 00 000 000 02 082 099 05 632 134

OPC (参考) 18 1300 25

10 857 058 セメントの種類およびひび割れ幅と腐食減量率の関係を図 16に示す

0

02

04

06

08

1

12

14

16

18

0 02 05 10

ひび割れ幅(mm)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 16 腐食減量率

腐食減量率はHFSC424と 325では OPCより小さくなったこの結果からHFSCではひび割れが入った場合鉄筋の腐食減量は OPCより小さいと考えられる

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186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

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表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

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割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

-34-

JNC TJ8400 2003-063

352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

-35-

JNC TJ8400 2003-063

おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

-36-

JNC TJ8400 2003-063

【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

-38-

Page 22: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

全塩分量と減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

0 02 04 06 08 1 12

全塩分量(kgm3)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 14 全塩分量と腐食減量率

(2) コンクリートの pHと腐食量の関係

塩分が少ない状態(HFSC02kgm3以下OPC10kgm3以下)でのコンクリート

のpH(試験終了後)と腐食減量関係を図 15に示す コンクリートのpHと腐食減量率

0

02

04

06

08

1

12

14

16

11 115 12 125 13 135

pH

腐食減量率()

図 15 コンクリートの pHと腐食減量率

- - 11

JNC TJ8400 2003-063

pHが大きくなると塩分が存在しない場合の腐食量は小さくなっているしかしpHが 110 付近では急激に腐食減量率が大きくなったpH と腐食の関係を明確に定量化することはできなかったがpH1125 より pH が低くなると塩分がなくても腐食が進行することが認められる HFSC の配合を見ると本実験の範囲ではHFSC226 は塩分が浸透しなくても腐食する領域に位置しHFSC325 と 424 は塩分がこなければ腐食しない領域に位置すると考えられるただしHFSC ではフライアッシュのポゾラン反応とともに pH が低下してき110 を下回ることが想定されるために鉄筋コンクリート構造として工学的な検討を行う場合は塩分が浸透しなくても腐食すると考える必要があるさらに

HFSC226では塩分が存在する場合の腐食量と存在しない場合の腐食量は腐食減量率から見るとほぼ同等であった

(3) 腐食速度

HFSC226の塩分が鉄筋に到達しない供試体の腐食減量率をもとに塩分が存在しない場合の腐食速度を推定したHFSC226の 91日間におけるかぶり 25mmの腐食減量率は 0631で35mm の腐食減量率は 0201であったここで両者の平均をHFSC226の塩分が存在しない場合の腐食率とすると167年となる 一方既往の研究3)によれば一年間海洋環境下(海中)に暴露したHFSC226を用いた腐食速度は塩分が鉄筋まで到達しない条件下で 043年であった 次に塩分が存在する場合の腐食速度は塩分練り込み供試体の腐食減量率(07691日)と促進倍率 43倍から換算すると 071となる塩分が存在するときの腐食減量率はHFSC226と OPCでは076と 085とほとんど変わらないことから塩分が到達した後の鉄筋腐食量は pH に依存しないものと考えられる以上の計算を

HFSC424および 325に当てはめるとHFSC424および 325では塩分が浸入し到達しないと腐食しないということになる 鉄筋の腐食を考える上での腐食速度は表 113のようになる

表 113 鉄筋の腐食速度

セメントの

種類 pH(試験開始時)

塩分が浸透しないときの腐

食速度(重量年)

塩分が浸透したと

きの腐食速度 (重量年)

HFSC424 1164 HFSC325 1141 000

HFSC226 1110 043 071

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合)

ひび割れを有する場合の鉄筋の腐食減量率についての試験結果を表 114に示す既

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JNC TJ8400 2003-063

往の研究2)におけるOPCおよびHFSC226の試験結果についても参考として示した

表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果

セメントの種類 海水濃度 (Cl)

pH

かぶり (mm)

ひび割れ幅 (mm)

腐食面積率 ()

腐食減量率 ()

00 000 002 02 1600 019 05 1800 020 HFSC424 18 1164 25

10 2800 022 0 000 004

02 1900 021 05 2400 025

HFSC325 18 1141 25

10 3100 031 00 1058 063 02 2581 160 05 2938 158

HFSC226 (参考) 18 1110 25

10 3437 154 00 000 000 02 082 099 05 632 134

OPC (参考) 18 1300 25

10 857 058 セメントの種類およびひび割れ幅と腐食減量率の関係を図 16に示す

0

02

04

06

08

1

12

14

16

18

0 02 05 10

ひび割れ幅(mm)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 16 腐食減量率

腐食減量率はHFSC424と 325では OPCより小さくなったこの結果からHFSCではひび割れが入った場合鉄筋の腐食減量は OPCより小さいと考えられる

- - 13

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186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

- - 14

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表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

- - 15

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割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

- - 16

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

-18-

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

-19-

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

-20-

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

-34-

JNC TJ8400 2003-063

352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

-35-

JNC TJ8400 2003-063

おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

-36-

JNC TJ8400 2003-063

【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 23: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

pHが大きくなると塩分が存在しない場合の腐食量は小さくなっているしかしpHが 110 付近では急激に腐食減量率が大きくなったpH と腐食の関係を明確に定量化することはできなかったがpH1125 より pH が低くなると塩分がなくても腐食が進行することが認められる HFSC の配合を見ると本実験の範囲ではHFSC226 は塩分が浸透しなくても腐食する領域に位置しHFSC325 と 424 は塩分がこなければ腐食しない領域に位置すると考えられるただしHFSC ではフライアッシュのポゾラン反応とともに pH が低下してき110 を下回ることが想定されるために鉄筋コンクリート構造として工学的な検討を行う場合は塩分が浸透しなくても腐食すると考える必要があるさらに

HFSC226では塩分が存在する場合の腐食量と存在しない場合の腐食量は腐食減量率から見るとほぼ同等であった

(3) 腐食速度

HFSC226の塩分が鉄筋に到達しない供試体の腐食減量率をもとに塩分が存在しない場合の腐食速度を推定したHFSC226の 91日間におけるかぶり 25mmの腐食減量率は 0631で35mm の腐食減量率は 0201であったここで両者の平均をHFSC226の塩分が存在しない場合の腐食率とすると167年となる 一方既往の研究3)によれば一年間海洋環境下(海中)に暴露したHFSC226を用いた腐食速度は塩分が鉄筋まで到達しない条件下で 043年であった 次に塩分が存在する場合の腐食速度は塩分練り込み供試体の腐食減量率(07691日)と促進倍率 43倍から換算すると 071となる塩分が存在するときの腐食減量率はHFSC226と OPCでは076と 085とほとんど変わらないことから塩分が到達した後の鉄筋腐食量は pH に依存しないものと考えられる以上の計算を

HFSC424および 325に当てはめるとHFSC424および 325では塩分が浸入し到達しないと腐食しないということになる 鉄筋の腐食を考える上での腐食速度は表 113のようになる

表 113 鉄筋の腐食速度

セメントの

種類 pH(試験開始時)

塩分が浸透しないときの腐

食速度(重量年)

塩分が浸透したと

きの腐食速度 (重量年)

HFSC424 1164 HFSC325 1141 000

HFSC226 1110 043 071

185 鉄筋の腐食挙動(ひび割れが存在する場合)

ひび割れを有する場合の鉄筋の腐食減量率についての試験結果を表 114に示す既

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往の研究2)におけるOPCおよびHFSC226の試験結果についても参考として示した

表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果

セメントの種類 海水濃度 (Cl)

pH

かぶり (mm)

ひび割れ幅 (mm)

腐食面積率 ()

腐食減量率 ()

00 000 002 02 1600 019 05 1800 020 HFSC424 18 1164 25

10 2800 022 0 000 004

02 1900 021 05 2400 025

HFSC325 18 1141 25

10 3100 031 00 1058 063 02 2581 160 05 2938 158

HFSC226 (参考) 18 1110 25

10 3437 154 00 000 000 02 082 099 05 632 134

OPC (参考) 18 1300 25

10 857 058 セメントの種類およびひび割れ幅と腐食減量率の関係を図 16に示す

0

02

04

06

08

1

12

14

16

18

0 02 05 10

ひび割れ幅(mm)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 16 腐食減量率

腐食減量率はHFSC424と 325では OPCより小さくなったこの結果からHFSCではひび割れが入った場合鉄筋の腐食減量は OPCより小さいと考えられる

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186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

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表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

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割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

- - 16

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

-34-

JNC TJ8400 2003-063

352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

-35-

JNC TJ8400 2003-063

おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

-36-

JNC TJ8400 2003-063

【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

-38-

Page 24: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

往の研究2)におけるOPCおよびHFSC226の試験結果についても参考として示した

表 114 ひび割れがある場合の腐食試験結果

セメントの種類 海水濃度 (Cl)

pH

かぶり (mm)

ひび割れ幅 (mm)

腐食面積率 ()

腐食減量率 ()

00 000 002 02 1600 019 05 1800 020 HFSC424 18 1164 25

10 2800 022 0 000 004

02 1900 021 05 2400 025

HFSC325 18 1141 25

10 3100 031 00 1058 063 02 2581 160 05 2938 158

HFSC226 (参考) 18 1110 25

10 3437 154 00 000 000 02 082 099 05 632 134

OPC (参考) 18 1300 25

10 857 058 セメントの種類およびひび割れ幅と腐食減量率の関係を図 16に示す

0

02

04

06

08

1

12

14

16

18

0 02 05 10

ひび割れ幅(mm)

腐食減量率()

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 16 腐食減量率

腐食減量率はHFSC424と 325では OPCより小さくなったこの結果からHFSCではひび割れが入った場合鉄筋の腐食減量は OPCより小さいと考えられる

- - 13

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186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

- - 14

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表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

- - 15

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割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

- - 16

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

-22-

JNC TJ8400 2003-063

び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

-23-

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

-38-

Page 25: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

186 腐食ひび割れ発生予測

HFSC424325226OPCの各配合に関して塩化物イオン浸透鉄筋腐食を予測しひび割れ発生鉄筋腐食量と比較することによって 40年間でのひび割れ発生の有無を予測した厚肉円筒理論4)によりひび割れが発生する鉄筋腐食量を求め鉄筋腐食

量の予測値がこれを超えたときにひび割れの発生と判定する手法を用いた鉄筋の腐

食速度は暴露試験の結果から塩化物イオン濃度と配合に応じて決定したまた腐

食速度が酸素の供給量とアノードカソード面積比により決められるという既往の研

究5)に基づいて鉄筋腐食量を予測する手法に関しても検討を行った条件としてかぶり

100mm鉄筋径はD16222932について検討した (1) 塩化物イオン浸透予測

塩分浸透標準試験より得られた浸漬期間 91 日の供試体の塩分量測定結果より求めたここでは比較的塩化物イオンの浸透が早く深さ 35cm まで塩化物イオンが浸透している HFSC226 の供試体の測定結果から表面塩化物イオン濃度と拡散係数をフィッティングにより推定しこの表面塩化物イオン濃度をその他の配合においても表

面塩化物イオン濃度としたこの表面塩化物イオン濃度を用い各配合の拡散係数を

フィッティングにより推定した得られた各配合の特性値は表 115の通りである

表 115 各配合の表面塩化物イオン濃度および拡散係数

記号 表面塩化物イオン濃

度 (kgm3)

塩化物イオンの見掛け

の拡散係数(times10-8

cm2s) HFSC424 1013 177

HFSC325 1013 190

HFSC226 1013 2057

OPC 1013 108

(2) 鉄筋腐食

鉄筋の腐食速度に関してはHFSCOPCそれぞれの鉄筋腐食減量率測定結果より各配合中の腐食速度を定めたHFSC424 および 325 に関しては塩化物イオンが全く存在していない場合の鉄筋腐食が認められなかったため鉄筋位置の塩化物イオン

濃度が 01kgm3未満では腐食が発生しないとし若干鉄筋腐食の認められた塩化物イ

オン濃度 01kgm3以上では 071年の腐食速度としたHFSC226に関しては塩化物イオンが存在していない状態でも腐食が発生したため01kgm3未満での腐食速度

を 043年とし01kgm3以上での腐食速度は 071年としたOPCに関しては12kgm3未満で腐食が発生しないとし12kgm3以上での腐食速度を 071年とした各条件での腐食速度をまとめると表 116となる

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JNC TJ8400 2003-063

表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

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JNC TJ8400 2003-063

割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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JNC TJ8400 2003-063

び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

-38-

Page 26: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

表 116 各配合中の鉄筋腐食速度(腐食減量率)

記号 塩化物イオン濃度

01(kgm3)未満 (年)

塩化物イオン濃度

01(kgm3)以上 (年)

塩化物イオン濃度

12(kgm3)以上 (年)

HFSC424 0 071 071

HFSC325 0 071 071

HFSC226 043 071 071

OPC 0 0 071

(3) ひび割れ発生予測

かぶりを 100mmとし表面塩化物イオン濃度および塩化物イオンの見掛けの拡散係数に表 115 の値を用いて鉄筋位置の塩化物イオン濃度が表 116 の鉄筋腐食開始濃度あるいは腐食速度変化点濃度に到達するまでの年数を求めると表 117のようになった鉄筋腐食発生後表 116の腐食速度により鉄筋腐食量を計算し厚肉円筒理論4)より求めたひび割れ発生腐食量に到達する年数を求めると表 118のようになった

表 117 各配合における塩化物イオン濃度到達時期

記号 01kgm3到達時期 (年)

12kgm3到達時期 (年)

HFSC424 14 -

HFSC325 13 -

HFSC226 2 -

OPC - 61

表 118 ひび割れ発生年

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 18 17 16 16

HFSC325 17 15 15 14

HFSC226 5 4 3 3

OPC 65 63 63 62

(4) ひび割れ発生予測その2

ひび割れ発生前までの鉄筋腐食速度は経年的に低下するという報告がなされている5)ここでは鉄筋腐食速度が鉄筋のカソードアノード比および供給される酸素濃

度に依存して変化するとの考え方に基いてひび割れ発生予測を行った各配合のひび

- - 15

JNC TJ8400 2003-063

割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

- - 16

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

-36-

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【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

-38-

Page 27: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

割れ発生年を求めると表 119のようになった

表 119 ひび割れ発生年その 2

記号 D16 (年)

D22 (年)

D29 (年)

D32 (年)

HFSC424 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

HFSC325 100年以上 100年以上 44 38

HFSC226 14 9 7 6

OPC 100年以上 100年以上 100年以上 100年以上

- - 16

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2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

-34-

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

-36-

JNC TJ8400 2003-063

【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 28: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

2 低アルカリセメントの自己収縮特性の評価

21 試験目的

低アルカリセメント HFSC ではシリカフュームを 20使用することとしており粒径の非常に細かいシリカフュームを使用することにより自己収縮にひび割れが懸

念されるここではフライアッシュ含有率の異なる HFSCを使用し水セメント比30のセメントペーストおよびコンクリートの自己収縮を測定してHFSCの自己収縮特性を把握することを目的として実験を行った

22 試験方法

(1) 試験ケースとコンクリートの配合

試験はコンクリートとペーストで実施したペーストで実施したのは自己収縮

がペースト部分で起きる反応であり各材料の影響が大きく出る可能性があることを

考慮したためである コンクリートでの試験は実際に施工されるのはコンクリートであり構造物での自己収縮の大きさおよびひび割れの可能性などを検討するための

データを取得するために実施した 表 21に使用したコンクリートの配合を示すコンクリートの配合は1章で使用した配合と同一のものであるスランプフローの調整は高性能 AE 減水剤の使用量を調整することで行ったそのためHFSC226では高性能 AE減水剤の使用量が若干多くなった セメントペーストは水セメント比をコンクリートにあわせてWC=30行った

表 21 コンクリートの配合 単 位 量 (kgm3) 使用

セメント 配合 記号

WC ()

目標スラン

プフロー (cm)

sa () W C S G HS700

HFSC424 300 65plusmn5 550 172 574 807 673 Ctimes22 HFSC325 300 65plusmn5 550 169 565 807 673 Ctimes23 HFSC HFSC226 300 65plusmn5 550 165 550 807 673 Ctimes30

OPC OPC 300 65plusmn5 550 189 629 807 673 Ctimes165

(2) 自己収縮の測定方法

自己収縮の測定はセメントペーストについては40times40times160mmの型枠を用いそれぞれの配合につき 1試験体を作製するコンクリートについては100times100times400mmの型枠を用い各配合につき 1試験体を作製する 自己収縮試験はJCI「超流動コンクリート研究委員会」の測定方法に準拠しテフロンシートで型枠の拘束をなくした供試体のひずみを埋込み型ひずみ計により測定し

た温度膨張収縮の影響は測定されたひずみから線膨張係数を 10times10-6として補正した

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型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

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JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 29: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

型枠への埋込みひずみ計の設置状況を図 21に示す

ポリエステルフィルム

ポリエチレンボード

テフロンシート

型枠

埋込みひずみ計

試料

図 21 埋込みひずみ計設置方法

23 試験結果

(1) フレッシュコンクリートの試験結果

フレッシュコンクリートの試験結果を表 22に示す

表 22 フレッシュコンクリート試験結果

記号 スランプフロー (cm)

空気量 ()

コンクリート

温度()

HFSC424 610times610 36 210 HFSC325 630times610 54 210 HFSC226 640times700 41 210

OPC 640times620 45 210

(2) ペーストの自己収縮試験結果

ペーストを用いた自己収縮試験結果を表 23および図 22に示す

表 23 ペーストの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 94 1023 1114 1180 1226 1304 1348 1371 1408 1435 1472HFSC325 0 71 956 1097 1161 1182 1203 1212 1228 1265 1302 1341HFSC226 0 52 63 730 948 982 965 988 1026 1085 1121 1147OPC 0 50 360 512 612 680 800 875 920 1015 1068 1129

自己収縮ひずみ(times10-6)

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

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17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 30: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

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自己収縮(ペースト)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 22 ペーストの自己収縮ひずみの変化

(3) コンクリートの自己収縮試験結果

コンクリートの自己収縮ひずみの測定結果を表 24および図 23に示す

表 24 コンクリートの自己収縮ひずみ

セメントの種類 05日 1日 3日 5日 7日 9日 14日 18日 21日 28日 35日 43日HFSC424 0 30 151 162 161 164 171 177 181 191 200 209HFSC325 0 22 122 150 156 158 157 153 154 158 162 168HFSC226 0 18 87 162 177 180 166 161 167 180 188 194OPC 0 47 203 223 237 246 273 296 310 338 355 372

自己収縮ひずみ(times10-6)

自己収縮(コンクリート)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 10 20 30 40 50

材齢(日)

自己収縮ひずみ(times10-6)

HFSC424

HFSC325

HFSC226

OPC

図 23 コンクリートの自己収縮ひずみの変化

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24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

-38-

Page 31: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

24 考 察

セメントペーストの自己収縮ひずみを比較するとHFSCは OPCよりも自己収縮ひずみが大きかったさらに 3種類の HFSCで比較するとフライアッシュを多く含むものの自己収縮が小さいことがわかったHFSC226 のペーストでの自己収縮ひずみはOPC と同等であったペーストでの実験結果はシリカフュームを 20含む HFSCでは自己収縮ひずみは同一配合の OPC に比べて大きくなるがフライアッシュを60混入することによりOPCとほぼ同等になることがわかったフライアッシュには自己収縮を低減する効果があるものと推定される自己収縮の時間的変化を見て

みるとHFSCでは若材齢での自己収縮ひずみの発生が大きいがOPCは比較的緩やかにひずみが生じているのが特徴であるこれはHFSC に混合されたシリカフュームが早期に反応することに伴って急激なひずみの増大が生じるものと推定される HFSCコンクリートの自己収縮ひずみはすべて OPCより小さくなったこの結果はペーストにおける自己収縮ひずみの試験結果と逆の結果となっている OPCを用いた水セメント比 30のコンクリートの自己収縮ひずみ試験においても28日材齢で 300times10-6の値が得られており6)今回のOPCを用いたコンクリートの自己収縮ひずみの値と大きな差は認められないまたHFSCの間ではペーストほどの顕著な差は見受けられずどのHFSCもほぼ同じような挙動を示している したがってコンクリートにした場合HFSC の自己収縮ひずみは OPC に比べ小さくなると考えられるペーストで見られた若材齢での急激なひずみの増大はコン

クリートでは見られなかったコンクリートで小さくなった原因としてHFSC コンクリートにおいてペースト部分では OPCに比べ大きな自己収縮を生じるがHFSCは強度発現が遅いためにクリープも大きく骨材の間で生じたペーストの収縮変形がク

リープで緩和されやすいことがコンクリート全体の収縮を小さくしているものと考

えられる 今回の試験から一般に使用する高流動コンクリートや吹付けコンクリートとした

場合HFSCの自己収縮ひずみはOPCより少ないと考えられる

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3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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JNC TJ8400 2003-063

352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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JNC TJ8400 2003-063

おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

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JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 32: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

3 コンクリートの間隙水の影響によるベントナイトおよび岩石の変質試験

31 使用材料

使用材料を表 31に示す

表 31 使用材料

仕 様 備 考

ベントナイト Na型モンモリロナイト クニミネ工業社製 クニピアF reg

花崗岩(釜石産) 60mesh(250microm)以下に粉砕

凝灰岩A 60mesh(250microm)以下に粉砕 岩石

凝灰岩B 60mesh(250microm)以下に粉砕

普通セメント(OPC) 40 太平洋セメント社製

シリカフューム(SF) 20 エルケム社製 マイクロシリカ 983-VSB 低アルカリ性 セメント (HFSC)

フライアッシュ(FA) 40 関西電力 高砂産

Ca(OH)2溶液 試薬特級 脱イオン水に試薬を溶解

32 試験ケース

低アルカリ性セメント(HFSC)のリーチング水を用いた試験を平成 12年度に開始した試験ケースを表 32に示す

表 32 低アルカリ性セメントのリーチング水による変質試験

No 試 料 浸せき液 設定 pH

液固比 養生 温度 ()

pH調整 浸せき期間(試料数)

41 100

42 80

43

ベントナイト

50

44 花崗岩

45 凝灰岩A

46 凝灰岩B

低アルカリ

性 セメント

(HFSC)の リーチング水

11 10001

80

目標 pH11 720日(各 1体)

pH 測定を 2~4週ごとに行いpH105以下になった場合はpH11に調整する

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養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

-30-

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

-31-

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

-32-

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

-33-

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

-34-

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

-35-

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

-36-

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【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

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17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 33: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

養生温度は反応促進を目的として 5080および 100としたこれは地下数百 mに建設される貯蔵施設の温度が約 50程度と予測されることと100以上に設定すると圧力を大気圧以上に加えることになりベントナイト変質の化学反応が実際

とは異なる可能性があることを考慮して設定した 33 試験方法

試験はまず低アルカリ性セメントのリーチング水を作製し次にベントナイトお

よび岩石試料を浸せきした所定の期間が経過した後試料の固相と液相について各

種分析を実施した

331 低アルカリ性セメントのリーチング水の作製

低アルカリ性セメントのリーチング水の作製ではポゾラン反応を十分に促進する

ために 20で 28日間養生を行った後55の恒温水槽内で 60~70日間養生した作製したリーチング水の化学組成を表 33に示す

表 33 リーチング水の pHと化学組成 濃 度 (mgL)

pH CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

108 115 40 17 ND 64 89

332 試料の浸せき

試料の浸せき方法は以下のとおり実施した ①ベントナイトまたは岩石を 1g(110乾燥質量として)秤量した各アルカリ溶液をメチルペンテン樹脂製の容器(容量 2L)1L を入れ窒素ガス雰囲気中においてベントナイトまたは岩石が溶液中で十分に分散するよう徐々に添加した

②50と 80の試料は樹脂容器を密閉して所定温度の恒温槽に入れて養生した100の試料は樹脂容器に冷却管をつなぎオイルバスに入れて養生した

③リーチング水を用いた試験では約 2~4週ごとにpHを測定しpH105を下回った場合はCa(OH)2溶液を加えてpH11に調整した

333 浸せき後の試料分析

試料の固相および液相の分析方法は以下のとおりとした ①養生終了後遠心分離機を用いて試料を固液分離した ②固相は80エタノールで洗浄(撹拌遠心分離)しアセトンで脱水(撹拌遠心分離)した後RH60のデシケータ中で調湿した

③調湿後の固相試料についてX線回折熱分析メチレンブルー吸着量試験およ

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び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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JNC TJ8400 2003-063

【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

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JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

-38-

Page 34: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

び SEM観察を行ったなおメチレンブルー吸着量はベントナイト試料のみ実施した

④液相については限外ろ過して原子吸光法によってろ液の化学組成を求めた 分析方法と装置および条件を表 34に示す

表 34 分析装置と条件

分析方法 装 置 条 件 粉末法(不定方位)

X線回折

リガク RINT 1500W 18KW縦型 対陰極

X線回折装置

管 球 電 圧 スリット スキャン速度

CuKα

40KV 12 ゚-12 ゚015mm-045mm 2 ゚min

熱 分 析 マックサイエンス

DTA-TG 分析装置 2000型

Ref 熱 伝 対 昇温速度 試 料

Al2O3

PR 20min 10~30mg(セミミクロ)

SEM観察 日本電子 JSM-5600

加速電圧 倍 率 蒸着方法

15~20KV 150~5000倍 金 蒸 着

化学組成分析 (原子吸光法)

日立 偏光ゼーマン原子吸

光分光光度計 Z6000 定量下限値

Na005 mgL K 005 mgL Ca003 mgL

Mg003 mgL Al 010 mgL Si 015 mgL

メチレンブ

ルー 吸着量

- M100メチレンブルー滴定法 (試料を超音波で水中に分散させて滴定)

34 試験結果

341 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

(1) X線回折

低アルカリ性セメントのリーチング水による試験7)(以下「低アルカリ試験」と

称する)の浸せき日数 720 日の試料についてX線回折分析による鉱物の同定結果を表 35 に示す表には浸せき日数 120 日および 360 日の試験結果を併記した未処理試料については平成 12 年度の測定値を記載したさらに平成 7 年度~9年度に実施した水酸化カルシウム溶液による変質試験8)(以下「Ca(OH)2試験」と

称する)との比較検討を行った

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(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

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JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 35: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

(i) 低アルカリ試験

①モンモリロナイトの回折強度はすべての温度条件(50 80 100)で浸せき日数とともに低下した回折強度が低下した原因としてはCaCO3の生

成に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベン

トナイトの溶解変質が生じている可能性が考えられる ②石英の回折強度はすべての温度条件で特に変化は認められなかった ③すべての温度条件で炭酸カルシウムの生成が認められ浸せき日数とともに

回折強度が増加した ④養生温度 100浸せき日数 360日の試料で混合層鉱物(d=38Å)の生成が認められたが720日ではピークが消失した

(ii) 低アルカリ試験とCa(OH)2試験との比較

①低アルカリ試験におけるモンモリロナイトの回折強度の低下はCaCO3の生成

に伴う分析試料中のベントナイト含有量の減少とアルカリ溶液によるベント

ナイトの溶解が考えられるCa(OH)2試験においてもモンモリロナイトの回

折強度の低下が認められたCaCO3の生成量が少ないことからモンモリロナ

イトの回折線強度の低下は主に溶解に起因すると考えられる ②混合層鉱物の生成が高温条件(低アルカリ試験100(360 日)Ca(OH)2

試験pH11580(180360720 日)で認められたしかし低アルカリ試験では 720日に消失した

③低アルカリ試験では温度がモンモリロナイトの変質に及ぼす影響はさほど

認められなかった一方Ca(OH)2試験では温度pHが高いほど二次鉱物の生成が進行した pH125の場合80および 100のケースにおいてトバモライト系(CSH)と CASH系鉱物の生成が顕著であった一方50のケースではCSH系鉱物がわずかに生成したものの CASH 系鉱物は生成しなかったただし50のみアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成した

温度 80の場合pH125のケースで CSH系および CASH系鉱物の生成が認められた一方pH115 および pH105 のケースではこれらの鉱物は認められなかった

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表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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【参考文献】

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研究rdquo地盤工学誌(1998)

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サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

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ならびに基準(案)rdquo(1987)

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7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

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pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

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17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 36: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

表 35 リーチング水によるベントナイト変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

M (モンモリロナイト) No 浸せき液 設定

pH

養生 温度 ()

浸せき 日数 (日) 強 度

(CPS) 判 定

Q 石英

33Å

C CaCO3

30Å

Mx 混合層 鉱物 38Å

クニピア Freg(未処理試料) 平成 12年度測定 5000 +++ plusmn

430 - -

120 5600 +++ plusmn 280

++ 4300 -

360 4400 ++ plusmn 208

+++ 6000

+ 660

41 100

720 2100 ++ plusmn 214

+++ 9600 消失

120 4000 ++ plusmn 350

++ 4500 -

360 2700 ++ plusmn 227

+++ 6500 - 42 80

720 2000 ++ plusmn 238

++++ 11000 -

120 4100 ++ plusmn 390

++ 3800 -

360 1800 ++ plusmn 301

++++ 11000 - 43

低アルカリ

性セメント

(HFSC) のリーチング

11

50

720 1200 ++ plusmn 286

++++ 12000 -

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

(2) 熱分析

未処理試料では 120付近と 700~800付近に吸熱ピークが出現した120付近のピークはモンモリロナイトの層間水の脱水によるもので未処理試料は Na 型のためピークが一重であるが浸せき試料では Ca 型に変化したことを示すピークが 180~200付近にも出現したまた700~800付近のピークはモンモリロナイトの結晶水の脱水に起因するこれら2つのピークは浸せき試料では明瞭に現れなかった

これは浸せきによって生成した炭酸カルシウムによる稀釈と考えられる浸せき試

料において 800付近に現れた吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解を示す 養生温度 100と 80の試料について380付近に発熱ピークが出現したこの発熱反応に伴う重量変化は比較的小さくその原因として炭酸塩鉱物の相転移の可能性

が考えられるが詳細は明らかでない 熱重量測定(TG)による各温度区間の質量変化を110乾燥質量に対する質量減少率()として算定した結果を表 36に示す(なお110乾燥質量は室温~110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) ①すべての温度条件で110~250の質量減少比は未処理試料に比べて大幅に増

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JNC TJ8400 2003-063

加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

-38-

Page 37: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

加したこのことはモンモリロナイト層間中の交換性陽イオンの置換により

ベントナイトが Na型から Ca型に移行したことを示唆している ②250~500の重量減少率は養生温度が高いほど若干増加する傾向を示した ③すべての温度条件で500~800の減少量が未処理試料に比べて著しく増加していたこれは主として炭酸カルシウムの生成に起因するものである

④110~1000の質量減少率の合計はいずれの温度条件でも浸せき日数とともに増加しており炭酸カルシウムを含めたモンモリロナイト以外の鉱物が増加して

いることを示唆している

表 36 温度区間ごとの質量減少率

試料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理試料 136 05 08 63 08 219 120日 88 37 19 142 02 290 360日 72 33 21 174 28 329 No41 100

720日 61 28 36 206 103 433 120日 100 40 10 122 01 272 360日 79 32 09 160 25 304 No42 80

720日 61 25 22 211 74 393

120日 85 57 08 99 01 250 360日 68 24 07 162 48 308 No43 50

720日 54 26 12 218 63 373 質量減少率とは110乾燥質量に対する減量比()を意味するここで110乾燥質量は湿潤質量から 110までの質量減少量を差し引いた値とした

平成9年度の試験データ

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JNC TJ8400 2003-063

(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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JNC TJ8400 2003-063

(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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JNC TJ8400 2003-063

(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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JNC TJ8400 2003-063

342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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JNC TJ8400 2003-063

(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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JNC TJ8400 2003-063

(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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JNC TJ8400 2003-063

(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

-33-

JNC TJ8400 2003-063

表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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JNC TJ8400 2003-063

352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

-35-

JNC TJ8400 2003-063

おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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JNC TJ8400 2003-063

【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

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JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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JNC TJ8400 2003-063

(3) メチレンブルー吸着量

メチレンブルー吸着量試験の結果を表 37 に示す表中のメチレンブルー吸着量比とは未処理試料のメチレンブルー吸着量を 100とした場合の比率である表にはCa(OH)2試験のpH115 における試験結果(360 日)モンモリロナイトとCaCO3のX線回折強度を併記した いずれの温度でも120 日~360 日にかけてメチレンブルー吸着比が著しく低下したこれに対してモンモリロナイトの X 線回折強度はさほど低下していないことから吸着比の低下はモンモリロナイトの溶解よりもむしろ炭酸カルシウムの生成

量の増加に伴う試料の希釈に起因していることが考えられる Ca(OH)2試験(pH115)では80の吸着量は 50よりも少なく高温になるほどモンモリロナイトの溶解が進行したこれに対して低アルカリ試験においては各

浸せき日数の吸着比が温度条件に関わらず類似していたこれよりpH11の環境下では温度条件がモンモリロナイトの溶解に及ぼす影響は小さいと推察される

表 37 メチレンブルー吸着量試験の結果 X線回折強度

試 料 メチレンブルー

吸着量 (meqg)

メチレンブルー 吸着量比

() モンモリ

ロナイト CaCO3

低アルカリ試験 (平成12年度測定) 142 100 +++ ―

クニピア FregCa(OH)2試験

(平成7年度測定) 19 100

120日 123 87 +++ ++ 360日 039 28 ++ +++ 100 No12 720日 032 23 ++ +++ 120日 132 93 ++ ++ 360日 044 31 ++ +++ No13 720日 038 27 ++ ++++ 80

Ca(OH)2試験 pH115 360日 11 58

120日 131 92 ++ ++

360日 042 29 ++ ++++ No14

720日 042 29 ++ ++++ 50

Ca(OH)2試験 pH115 360日 18 95

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(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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JNC TJ8400 2003-063

おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

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JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 39: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

(4) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として未処理試料および浸せき日数720 日の各試料の SEM 写真を写真 31~34に示す いずれの養生温度についても浸せき日数とともに炭酸カルシウムと考えられる

微細な粒状体が増加した720 日の試料については粒状体組織が著しく増加しベントナイト特有の薄片形状はほとんど確認できなかった炭酸カルシウム以外の二次

鉱物として高 pH 溶液の変質試験で確認された針状結晶などは認められなかった養生温度がベントナイト試料の表面形態に及ぼす影響は小さかった

写真 31 未処理試料の SEM写真

(クニピアFreg) 写真 32 No 41の SEM写真

(リーチング水100720日)

写真 33 No 42の SEM写真 (リーチング水80720日)

写真 34 No 43の SEM写真 (リーチング水50720日)

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(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

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JNC TJ8400 2003-063

(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

-31-

JNC TJ8400 2003-063

(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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JNC TJ8400 2003-063

(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

-33-

JNC TJ8400 2003-063

表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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JNC TJ8400 2003-063

352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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JNC TJ8400 2003-063

おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

-36-

JNC TJ8400 2003-063

【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

-38-

Page 40: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

(5) 液相の分析

液相の pH および化学組成の分析結果を表 38 に示す元素濃度は酸化物に換算して示した浸せき 120日および 360日の結果を同表に併記した ①Ca濃度 全ての温度条件において 120 日の液相中にほとんど存在せず固相中にのみ存在していたが360日で再び液相中に現れた100および 80の試料では浸せき日数ともに Ca濃度が増加したが一方50の 720日の試料についてはCaは検出されなかった

100と 80でCa濃度が増加した原因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2

溶液からのCa供給量が炭酸カルシウムやカルシウム水和物の生成によるCa消費量を上回ったことが考えられる一方50の場合は炭酸カルシウムの析出が支配的であることが予想される

②Si濃度 全ての温度条件について360日から 720日にかけて Si濃度が減少した前述の X 線回折や SEM 観察では珪酸カルシウム水和物(CSH)の生成は明確に認められなかったものの液相中の Si濃度の減少はCSHもしくはCASHの生成を示唆している可能性がある

表 38 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン濃度(酸化物換算) (mgL) 試 料 浸せき

液pH 液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 101 946 324 ND 89 10 ND 56 ND 360日 93 933 640 42 79 19 ND 48 05 No41 100 720日 87 925 1112 115 85 28 017 29 ND 120日 106 975 181 ND 86 76 ND 56 ND 360日 100 936 462 13 78 15 ND 50 10 No42 80 720日 96 903 925 39 88 23 ND 33 ND 120日 108 1078 110 ND 75 45 ND 41 ND 360日 104 1180 283 38 62 13 ND 36 33 No43 50 720日 105 1359 619 ND 50 14 ND 19 ND

ND不検出

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JNC TJ8400 2003-063

342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

-30-

JNC TJ8400 2003-063

(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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JNC TJ8400 2003-063

(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

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JNC TJ8400 2003-063

(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

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JNC TJ8400 2003-063

表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

-34-

JNC TJ8400 2003-063

352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

-35-

JNC TJ8400 2003-063

おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

-36-

JNC TJ8400 2003-063

【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

-38-

Page 41: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

342 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

(1) X線回折

X線回折分析による鉱物の同定結果を表 39に示す (i) 花崗岩

浸せき試料の回折強度を未処理試料と比較した場合特に石英と長石類の回折

強度の低下が著しいことが認められた多量の炭酸カルシウムの生成による試

料の稀釈と鉱物のアルカリ溶解が原因として考えられる 浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した炭酸カルシウム以

外の二次鉱物の生成は特に認められなかった (ii) 凝灰岩

花崗岩と同様に浸せきによって全ての鉱物の回折強度が低下した特に長

石類の回折強度が著しく低下した 花崗岩と同様に浸せき日数とともに炭酸カルシウムの回折強度が増加した

炭酸カルシウム以外の二次鉱物の生成は特に認められなかった凝灰岩Aでは

360日に混合層鉱物(面間隔 d=38Aring)生成が認められたが720日で消失した

表 39 リーチング水による岩石変質試験のX線回折データ

試 料 構 成 鉱 物

No 岩種 設定 pH

温度 ()

浸せき 期間 (日)

M モンモリロナイト

15Å

Q 石英 33Å

F 長石 32Å

Mi 雲母

101Å

A 角閃石 85Å

Ch 緑泥石 71Å

C CaCO330Å

新規鉱物

38Å - - 未処理 - +++

9200 ++++ 14200

++ 4200

++ 2600

plusmn 370 - -

120 - ++ 4700

+++ 5600

++ 2800

++ 2200

plusmn 320

++ 1800 -

360 - ++ 2800

+++ 8800

+++ 5900

++ 1300

plusmn 400

+++ 5400 -

44 花崗岩 11 80

720 - ++ 3400

++ 3900

++ 2400

++ 1100

plusmn 290

+++ 9800 -

- - 未処理 plusmn 480

++ 3300

++ 4200

plusmn 190

plusmn 210 - - -

30 plusmn 460

++ 2200

++ 3500

plusmn 180

plusmn 350 - ++

1300 -

360 plusmn 360

++ 2900

++ 1300

plusmn 140

plusmn 180 - ++

4600 +

650 45

凝灰岩

A 11 80

720 plusmn 460

++ 950

++ 2800

plusmn 220

plusmn 260 -

++++ 11000

消失

- - 未処理 plusmn 260

++ 1200

++ 4300 - plusmn

110 plusmn

120 - -

30 plusmn 270

+ 950

+++ 5900 - 消失 plusmn

120 +

880 -

360 plusmn 230

+ 640

++ 1800 - - 消失 ++

4500 - 46 凝灰岩

B 11 80

720 plusmn 360

++ 1200

++ 3400 - - -

++++ 12000

数字は各構成鉱物の回折強度(CPS)回折強度の値から下記の 5段階に判定した 500未満plusmn500~1000+1000~5000++5000~10000+++10000以上++++

-30-

JNC TJ8400 2003-063

(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

-31-

JNC TJ8400 2003-063

(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

-32-

JNC TJ8400 2003-063

(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

-33-

JNC TJ8400 2003-063

表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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JNC TJ8400 2003-063

352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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JNC TJ8400 2003-063

おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

-36-

JNC TJ8400 2003-063

【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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Page 42: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

(2) 熱分析

TG曲線から求めた各温度区間の 110乾燥質量に対する質量減少率()を表 310に示す(110乾燥質量は室温から 110までの質量減少量を湿潤質量から差し引いた値とした) いずれの試料についても380付近の発熱ピークと 800付近の吸熱ピークが認められた380付近の発熱ピークについては重量変化がさほど生じていないため炭酸カルシウムの相転移の可能性がある一方800付近の吸熱ピークは炭酸カルシウムの分解によるもので明らかな重量減少が認められた 花崗岩の未処理試料では580付近に石英の相変化を示す吸熱ピークが確認されていたが浸せき試料では経時的に認められなくなった石英が一部溶解したことに起

因すると考えられる 凝灰岩の未処理試料について120付近にモンモリロナイトの層間水の脱水と考えられる吸熱ピークが認められたが360 日以後はほとんど認められなくなった浸せき試料のモンモリロナイトのX線回折強度は未処理試料のそれとほぼ同等で経時

的にも変化していないしたがって吸熱ピークの減少の原因としてはモンモリロ

ナイトの溶解よりもむしろ多量の炭酸カルシウムの生成による試料の希釈効果の

影響が大きいと考えられる

表 310 温度区間ごとの質量減少率

試 料 常温~ 110

110~ 250

250~ 500

500~ 800

800~ 1000

合計 ()

未処理 00 00 02 01 01 04 120日 01 01 07 49 27 85 360日 00 00 26 165 03 194

花崗岩 No44

720日 02 03 39 174 78 297 未処理 54 41 06 43 04 148

30日 20 16 14 32 00 82 360日 30 13 11 142 02 198

凝灰岩A No45

720日 28 12 43 172 133 388 未処理 26 11 12 11 00 60

30日 13 08 12 28 00 61 360日 18 10 32 144 05 209

凝灰岩B No46

720日 11 09 29 170 136 354

平成 12年度のデータ

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JNC TJ8400 2003-063

(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

-32-

JNC TJ8400 2003-063

(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

-33-

JNC TJ8400 2003-063

表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

-34-

JNC TJ8400 2003-063

352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

-35-

JNC TJ8400 2003-063

おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

-36-

JNC TJ8400 2003-063

【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

-38-

Page 43: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

(3) 電子顕微鏡観察

走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果として花崗岩の SEM写真を写真 3536凝灰岩 A の SEM写真を写真 3738凝灰岩 B の SEM写真を写真 39310に示す花崗岩の浸せき試料端部は未処理試料に比べると若干丸みを帯びているものの鉱

物の溶解は明瞭に認められない凝灰岩では浸せき試料の粒子表面に多数の微細な付

着物が認められた表面の組織が粗くなっているなど鉱物の溶解を示唆する形態変

化が認められた

写真 35 No44の SEM写真

(花崗岩未処理) 写真 36 No44の SEM写真

(花崗岩リーチング水80720日)

写真 37 No45の SEM写真 (凝灰岩 A未処理)

写真 38 No45の SEM写真 (凝灰岩 Aリーチング水80720

日)

写真 39 No46の SEM写真 (凝灰岩 B未処理)

写真 310 No46の SEM写真 (凝灰岩 Bリーチング水80720

日)

-32-

JNC TJ8400 2003-063

(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

-33-

JNC TJ8400 2003-063

表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

-34-

JNC TJ8400 2003-063

352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

-35-

JNC TJ8400 2003-063

おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

-36-

JNC TJ8400 2003-063

【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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JNC TJ8400 2003-063

(4) 液相の分析

液相の pH および化学組成を表 311 に示すなおイオンまたは元素濃度を酸化物に換算して示した浸せきに伴うイオンまたは元素の挙動を以下にまとめる

(i) Ca濃度

全ての岩石試料について浸せき日数とともに液相中の Ca 濃度が増加した 液相中のCa2+イオンは斜長石などの鉱物の溶解で放出されたり炭酸カル

シウムやカルシウム水和物(CSHCAHなど)として固定されることによって変動するCa濃度が増加した主な要因としてpH調整のため添加されたCa(OH)2からのCa供給量が炭酸カルシウムの析出によるCa消費量を上回ったことが考えられる

(ii) Na K濃度

全ての岩石試料についてNa K濃度は浸せき期間とともに多少増加する傾向を示したいずれの元素も外部から供給されることはないため濃度増加は

長石類などの鉱物の溶解を示唆している (iii) Si濃度

全ての岩石試料において浸せき後しばらくは Si 濃度が初期濃度を下回りその後 360 日で濃度が著しく増加した360 日から 720 日にかけて濃度が再び減少した

Si濃度は珪酸塩鉱物の溶解や二次鉱物(例えば珪酸カルシウム水和物 CSH)の生成によって変動する360 日までは石英や長石類の溶解に伴い液相中のSi濃度が増加しその後液相中の Caと反応して CSHが生成沈殿したものと推察される

(iv) Al濃度

全ての岩石試料について360 日の液相中に Al が検出されたが720 日では検出できなかったこれより360 日~720 日にAl が液相中の Ca Si と反応してアルミン酸カルシウム水和物(CAH)が生成したことも考えられる

-33-

JNC TJ8400 2003-063

表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

-34-

JNC TJ8400 2003-063

352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

-35-

JNC TJ8400 2003-063

おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

-36-

JNC TJ8400 2003-063

【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

-38-

Page 45: 株式会社 大林組JNC TJ8400 2003-063 JNC TJ8400 2003-063 February, 2003 Applicability of low alkaline cement for construction and alteration of bentonite in the cement (Ⅱ)(Summary)

JNC TJ8400 2003-063

表 311 pH調整で添加した CaO量と液相の化学組成

各種イオン酸化物換算濃度 (mgL) 試 料

浸せき

液 pH

液量 (mL)

CaO 累積 添加量 (mg) CaO Na2O K2O MgO SiO2 Al2O3

初期値 (平成12年度測定) 108 1000 - 115 40 17 ND 64 89

120日 107 980 171 50 46 10 ND 26 ND 360日 99 937 464 23 46 18 ND 36 09 No

44 花崗岩 720日 97 912 937 69 48 23 ND 22 ND 30日 97 981 63 ND 44 11 ND 57 ND

360日 99 975 551 25 50 20 ND 82 06 No 45

凝灰岩

A 720日 88 838 882 55 50 21 017 57 ND 30日 99 990 68 ND 44 10 ND 55 02

360日 99 981 526 22 50 20 ND 70 02 No 46

凝灰岩

B 720日 87 817 877 52 53 22 017 52 ND

ND不検出

35 まとめ

本研究は低アルカリ性セメントの浸出液にベントナイトおよび岩石を浸せきし

てベントナイトと岩石の変質挙動を把握することを目的とした本年度は平成

12 年度に試験を開始した試料のうち浸せき日数 720日の試料について固相の X線回折熱分析SEM 観察およびメチレンブルー吸着試験(ベントナイトのみ)

液相の化学組成について調査を行ったこれらの調査結果を以下にまとめる

351 低アルカリ性セメントのリーチング水によるベントナイトの変質試験

①X線分析ではいずれの養生温度でもモンモリロナイトの交換性陽イオンのNa+

からCa2+への変化と炭酸カルシウム(CaCO3)の生成が認められたさらに

養生温度 80の 360 日浸せき試料で認められた混合層鉱物と思われるピークが720日では検出されなかった

②熱分析においてはモンモリロナイトのCa化とCaCO3の生成は確認されたが新

規鉱物の生成を示す結果は認められなかった ③メチレンブルー吸着量はいずれの養生温度でも減少していた主な原因として

CaCO3の生成により固相中のベントナイトが稀釈されたことが考えられる ④電子顕微鏡観察では炭酸カルシウムと考えられる粒状組織が支配的となりベ

ントナイト特有の薄片組織が明確に認められなかったまた二次鉱物の析出を

示唆するような針状結晶などは認められなかった ⑤液相の化学組成については温度条件に関わらず 720 日の Si と Al の濃度が 360日に比べて低下しておりCSHや CAHの生成が示唆された

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JNC TJ8400 2003-063

352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

-35-

JNC TJ8400 2003-063

おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

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17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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352 低アルカリ性セメントのリーチング水による岩石の変質試験

①X線分析ではすべての試料で炭酸カルシウムの生成が確認された凝灰岩Bに

ついては360日の試料で生成が認められた新規鉱物のピークが720日では検出されなかった

②熱分析ではすべての浸せき試料について炭酸カルシウムの生成が確認された

それと同時に380付近に炭酸塩の相転移の可能性を示唆する発熱ピークが認められた

③電子顕微鏡観察において各岩種ともに粉末試料の細粒化や表面の劣化が認め

られた ④液相成分の分析から720 日の Si および Al の濃度が 360 日に比べて減少したことが判明したこれよりCSHや CAHなどの二次鉱物の生成が示唆された

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おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

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【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

JNC TJ8400 2003-063

17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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JNC TJ8400 2003-063

おわりに 本研究を通じて次の結論を得た 低アルカリ性セメント中の鉄筋腐食促進試験に関して HFSCを用いたコンクリート中ではpHが低下するために塩素イオンを固定化する能力が低下しまた鉄筋も腐食しやすい環境になるので鉄筋の腐食が進行しやす

い環境にあるHFSCを鉄筋コンクリートに使用した場合OPCの含有率によって異なるが4年から 20年で腐食ひび割れの発生する結果となった 自己収縮に関して コンクリートではHFSCの自己収縮ひずみのほうが OPCより小さいまたフライアッシュ混入率が高くなるほど自己収縮ひずみは小さくなる自己収縮低減のために

フライアッシュの混入が効果的であることがわかった ベントナイトの低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して XRD 試験から固相中にCa ベントナイトへのイオン交換と炭酸カルシウムの生成が認められたSEM観察ではベントナイトの薄片組織が消え炭酸カルシウムの粒状結晶が生成しているのが認められたpH11以下ではイオン形の変化は生じるもののベントナイト自体が pH10 程度であることからベントナイトの溶解や二次鉱物の生成は抑制されることが明らかとなった 岩石の低アルカリ性セメント浸出液中での 720日間の変質試験に関して すべての岩石において炭酸カルシウムの生成が認められた花崗岩では二次好物

の生成として微細な結晶が確認された凝灰岩 A では溶解に伴うエッチピットが生じた

-36-

JNC TJ8400 2003-063

【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

2002-013 (2003)

10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

-37-

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17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

TJ8400 2000-34(2000)

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【参考文献】

1)久保博他ldquoベントナイト系緩衝材のコンクリート間隙水による長期変質の基礎

研究rdquo地盤工学誌(1998)

2)入矢桂史郎他ldquo低アルカリ性コンクリートの実用性試験及び変質評価rdquo核燃料

サイクル機構 業務委託報告書JNC TJ8400 2002-038(2002)

3)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の腐食防食に関する試験方法

ならびに基準(案)rdquo(1987)

4)土木学会ldquoフライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案)rdquo(1999)

5)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「施工編」rdquo(2002)

6)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート診断技術 03rdquo(2003)

7)岸谷孝一他編コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害(Ⅰ)技法堂出版

(1986)

8)入矢桂史郎他ldquo幌延深地層研究センターにおけるコンクリート材料の施工性に

関する研究rdquo核燃料サイクル開発機構 業務委託報告書JNC TJ8400

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10)日本コンクリート工学協会ldquoコンクリート構造物の補修工法研究委員会報告(Ⅲ)rdquo

pp226-227(1996)

11)関 博他ldquoコンクリート構造の寿命予測に関する一考察rdquoコンクリート工学年

次論文報告集Vol12No1pp569-574(1990)

12)土木学会ldquoコンクリート標準示方書「構造性能照査編」rdquo(2002)

13)近松竜一他ldquo高流動コンクリートの低収縮化に関する基礎的研究rdquoコンクリ

ート工学年次論文報告集Vol19No1(1997)

14)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究rdquo動力炉核燃料開発事業団

研究委託内容報告書PNC TJ1201 97-001(1997)

15)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(Ⅱ)rdquo動力炉核燃料開発

事業団 研究委託内容報告書PNC TJ1201 98-003(1998)

16)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究(3)rdquo核燃料サイクル開発

機構 研究委託内容報告書PNC TJ8400 99-007(1999)

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17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

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17)入矢桂史郎他ldquo人工バリア材の変質に関する研究-硝酸塩およびセメントから

の浸出物の影響-rdquo核燃料サイクル開発機構 研究委託内容報告書JNC

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