安田幸世*写真1・あじっぱ (筆者慢影) 2013年度の利用者数は893,154 人で、...

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「貸出キット」の現状 一九州国立博物館「きゅうばっく」について一 .はじめに 博物館の教育活動は近年活発に議論されて おり、筆者も博物館の教育活動、特に他の教 育機関等に博物館の資料や教材を貸し出す活 動に、興味を持っている。 九州国立博物館(以下、九博)では、学習 支援キット「きゅうばっく」とし、う名称で教 材資料の貸し出しを行っている。筆者は「きゅ うばっく」にはデザイン性や博物館と学校と の連動性に特徴があると考えた。そこで九博 にきゅうばっくの調査をお願いし、実施する ことができた。本稿はその調査報告であり、 本稿のおおよその内容は、調査で得た情報を 基にしている。きゅうは。つくの事例を紹介す ることにより、今後の資料貸し出しの発展に 寄与できればと考えている。 2. きゅうばっくについて 1.九博の概要 九博は、東京、京都、奈良に次ぐ 4 番目の 国立博物館として、 2005 (平成 17) 10 に開館した。福岡県の大宰府市に位置し、太 宰府天満宮に隣接する。独立行政法人国立文 化財機構と福岡県立アジア文化交流センター が連携協力して管理運営を行っており、他の 国立博物館と異なる 2 つの行政が共同に運営 する体系をとっている。独立行政法人国立文 化財機構九州国立博物館が主に展示機能と 博物館科学機能を、福岡県立アジア文化交流 安田幸世* 1 九州国立博物館組織図(九博 HP より転載) ぺ::耳目 ;Ja 一同時百 ..,.,晶弘凋島鳳企アジアヌ化玄5" シ.附4 革新倉冒する. センターが、情報機能と交流機能、教育普及 機能を担当している(図1)。 いわゆる常設展示室である“文化交流展示 室"は「日本文化の形成をアジア史的観点か ら捉える」というコンセプトの下に、「海の道、 アジアの路(みち) Jをテーマに据え、日本 とアジア諸国との文化交流の歴史に焦点をあ て、大きく 5 つのテーマで展示が構成されて いる。 1 階のエントランスホールに位置する“あ じっば"は、様々な国の「いろ」、「かたち」、「も ょう」、「におし、」を五感で楽しむ体験型展示 室である。子どもが初めて博物館に出会う場 所として、また、親子が一緒に楽しめるよう に展示内容やデザインが工夫されている。 常設展示室である文化交流展示室や特別展 示とは異なり、無料となっている。九博に足 を運べば誰もがあじっぱに用意されているそ ノに触れて五感を利用し、文化交流を体験で きるようになっている。 九博は“学校より面白く、教科書よりわか り易い"教育活動を目指しており、五感で体 感できる展示や、独自の教育普及プログラム を展開している。 *明治大学大学院文学研究科臨床人間学専攻博士後期課程 n v ηL

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Page 1: 安田幸世*写真1・あじっぱ (筆者慢影) 2013年度の利用者数は893,154 人で、 201 4 年3月31日現在の開館以来の総入館者数は、 11 ,662,018人である。E

「貸出キット」の現状一九州国立博物館「きゅうばっく」について一

, .はじめに

博物館の教育活動は近年活発に議論されて

おり、筆者も博物館の教育活動、特に他の教

育機関等に博物館の資料や教材を貸し出す活

動に、興味を持っている。

九州国立博物館(以下、九博)では、学習

支援キット「きゅうばっく」とし、う名称で教

材資料の貸し出しを行っている。筆者は「きゅ

うばっく」にはデザイン性や博物館と学校と

の連動性に特徴があると考えた。そこで九博

にきゅうばっくの調査をお願いし、実施する

ことができた。本稿はその調査報告であり、

本稿のおおよその内容は、調査で得た情報を

基にしている。きゅうは。つくの事例を紹介す

ることにより、今後の資料貸し出しの発展に

寄与できればと考えている。

2. きゅうばっくについて

1.九博の概要

九博は、東京、京都、奈良に次ぐ 4番目の

国立博物館として、 2005(平成 17)年 10月

に開館した。福岡県の大宰府市に位置し、太

宰府天満宮に隣接する。独立行政法人国立文

化財機構と福岡県立アジア文化交流センター

が連携協力して管理運営を行っており、他の

国立博物館と異なる 2つの行政が共同に運営

する体系をとっている。独立行政法人国立文

化財機構九州国立博物館が主に展示機能と

博物館科学機能を、福岡県立アジア文化交流

安田幸世*

図1 九州国立博物館組織図(九博HPより転載)

ぺ::耳目;Ja一同時百..,.,晶弘凋島鳳企アジアヌ化玄5"シ.附4革新倉冒する.

センターが、情報機能と交流機能、教育普及

機能を担当している(図1)。

いわゆる常設展示室である“文化交流展示

室"は「日本文化の形成をアジア史的観点か

ら捉える」というコンセプトの下に、「海の道、

アジアの路(みち)Jをテーマに据え、日本

とアジア諸国との文化交流の歴史に焦点をあ

て、大きく 5つのテーマで展示が構成されて

いる。

1階のエントランスホールに位置する“あ

じっば"は、様々 な国の「いろ」、「かたち」、「も

ょう」、「におし、」を五感で楽しむ体験型展示

室である。子どもが初めて博物館に出会う場

所として、また、親子が一緒に楽しめるよう

に展示内容やデザインが工夫されている。

常設展示室である文化交流展示室や特別展

示とは異なり、無料となっている。九博に足

を運べば誰もがあじっぱに用意されているそ

ノに触れて五感を利用し、文化交流を体験で

きるようになっている。

九博は“学校より面白く、教科書よりわか

り易い"教育活動を目指しており、五感で体

感できる展示や、独自の教育普及プログラム

を展開している。

*明治大学大学院文学研究科臨床人間学専攻博士後期課程

nv ηL

Page 2: 安田幸世*写真1・あじっぱ (筆者慢影) 2013年度の利用者数は893,154 人で、 201 4 年3月31日現在の開館以来の総入館者数は、 11 ,662,018人である。E

写真 1・あじっぱ (筆者慢影)

2013年度の利用者数は 893,154人で、 2014

年 3月 31日現在の開館以来の総入館者数は、

11,662,018人である。

E きゅうぱつくの概要

きゅうばっくは九博のコンテンツをベース

にして製作された学習支援ツールで、ある。学

校の授業の中で博物館に関係のある資料を活

用しても らうことを目的としている。製作す

るにあたり、

①本物に触れる感動を味わって欲しい

②学習内容に対する理解を深めることがで

きる

③実際に博物館に足を運びたくなる

といった 3つの観点を取り入れている。さ

らに「見て読んで楽しむJ、「モノに触れるJ、

「作ってみる」、「パズルゲームで遊ぶ」とい

う4つの体験ノくリエーション(キーワード)

を設定している。

現在のところ 13種類のセットが製作され

ており、開館当初に製作された第 l弾「きゅ

うばっく j と、第 l弾の経験を活かして作ら

れた第 2弾「きゅうばっく LiteJ の 2種類

に分けられる(表 1 以下、第 l弾「きゅうばっ

く」を第 l弾、第 2弾「きゅうばっく LiteJ

を第 2弾とし、「きゅうばっく Jと表記する

ときは、両方を指す)。

表 1 きゅうばっく一覧

第 1弾 第 2弾

「純文人、海へ」 「土器のいろいろ」

「稲づくりから国づくりへ」 「青銅器のし、ろいろ」

「遣唐使の11寺代」 「誕生 !!中国文明」

「あ じっぱ五感」 「高麗の文化J

「あじっぱ韓国」 「イス ラームの祈りJ

「モンゴノレの馬頭琴」 「さまぎまな穀物J

一一一一一一 「さまぎまな香辛料J

貸出対象者は、小学校 ・中学校 ・高等学校

などの教育機関、社会教育関係団体、博物

館 ・歴史資料館、青少年教育施設、及びアジ

ア文化交流センタ一所長が認めた者である。

借り受ける際には、まずきゅうばっくの貸し

出し予約状況を電話等で確認を行い、借り受

ける日の 2週間前までに、予約の手続きをと

る必要がある。予約後は 1週間以内に FAX

で申込書を送付し、審査の後、貸出許可書が

FAX等で送付される。貸出方法は貸出日に

直接受け取りであるが、直接の引き取りが不

可能な場合は宅配便の利用も可能とする。た

だし、配送料は利用者負担である。貸出期間

は2週間以内で、宅配便を利用する際の輸送

機関は貸出期間に含まれている。キットの利

用後は、使用報告書をキット内に添付し、返

却することとなっている。キットの返却方法

は借り受ける際と同様で、直接の返却もしく

は宅配便の利用である。

3 きゅうぱつくの調査から

1.調査概要

調査内容は「アンケー ト調査」、「聞き取り

調査」、「借用調査Jの3つの方法を行った。

アンケート調査の内容は、以下に挙げる 4

つのテーマに分けた。

1.貸出キッ トの企画 ・製作

2.貸出キ ットの運用

3.キットの内容

4.特徴的な内容、その他

r 1.Jは、貸出キ ット事業を行う キッカケ、

- 30一

Page 3: 安田幸世*写真1・あじっぱ (筆者慢影) 2013年度の利用者数は893,154 人で、 201 4 年3月31日現在の開館以来の総入館者数は、 11 ,662,018人である。E

目的、参考にした館、構想メンバーについて

である。12.Jは、貸出キ ットの意義、 期待

する効果、実際の効果、担当者について、運

用の際について気を付けたこ とである。13.J

は、キットのテーマや、個数、改善点、今後

の展望についてである。14.J は、今回調査

を行う上で選定した理由にもあたる特徴的

で、参考にすべきと考えたデザイン性や、学

校と九博の展示との連動についてであった。

聞き取り 調査はアンケート調査を基に、

きゅうぱつくの実物も利用しながら進め、借

用調査は実際にきゅうぱっくを借り 、使用し

てみることを行った。

写真 2 聞き取り調査風策 (筆者織影)

E 第 1弾の製作について

九博の開館準備段階に製作の構想、がなさ

れ、製作されたのが第 l弾である。製作契機

は“博物館が有する文化財の情報を学校に提

供できないか" という学校との連携の模索で

ある。製作企画は、九博の教育普及担当者が

行った。製作にあたっては製作会議を、九博

の教育普及担当者 l名、九博の学芸部門関係

者 l名、外部のデザイナー ・プランナー 3名

の計 5名で、行った。

きゅうばっくは九博を利用する際の事前 ・

事後の両学習機会で利用可能なように、常設

展示とあじつばからテーマが選ばれている。

常設展示室からは「縄文人、海へJI稲づく

りから国づくりへJI遣唐使の時代」の 3テー

マ、あ じつばからは「あじっぱ五感JIあじっ

31

ぱ韓国」の 2テーマで、 言十5テーマが選ばれ

ている。これら5テーマに対して、「見て読

んで楽しむJ、「モノに触れるJ、「作ってみるJ、

「パズ‘ルゲームで遊ぶ」といった 4つの体験

バリエーショ ン(キーワード)が設定されて

いる。

きゅうばっくは学校との連携を主の目 的と

して企画されているため、容易に学校で利用

される こと が念頭に置かれている。製作に際

して、国立民族学博物館の貸出キットであ

る、「みんばっく Jが参考にされた。一方で、

みんばっくが研究者の研究領域に特化した内

容と捉え られた点は、容易に学校教育のカ リ

キュラムで利用されることが想定されていな

いと考えられ取り入れられてはいない、ただ

学校教育で利用される ことは想定して学校の

教科単元での利用方法に注意して製作されて

いるものの、 一斉授業に使われることは想定

されていないという。

キットの外装は、第 l弾は頑丈なプラス

チック製のトランクケースで製作されてお

り、それぞれ 2セットずつ用意されている。

宅配便の配達サイズでいわゆる 160サイ ズで

ある。

製作費は、あじっぱの展示物製作や他の教

育活動等との合同の予算であるため、第 l弾

の製作そのものにあてられた予算は分からな

いが、合わせて 913万 5000円であった。

さて、第 l弾は第 2回キ ッズデザイン賞「コ

ミュニケーションデザイン部門賞Jを受賞し

ている。キッズデザイ ン賞は、次世代を担 う

子どもたちの健やかな成長発達につながる社

会環境の創出のために、さまざまな企業 ・団

体が業種を超えて集い合う NPO団体である

特定非営利活動法人キ ッズデザイ ン協議会が

設けている賞である。キッズデザイン賞は、

「子どもが安全に暮らすJI子どもが感性や創

造性豊かに育つJI子どもを産み育てやすい

社会をつくるJための製品 ・空間 ・サービス

で優れたものを選び、広く社会へ伝える こと

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写真 3 第1弾トランクケース外観 (筆者婦影)

を目的としている。このキッズデザイン賞を

受賞したことは、先述の通り、きゅうぱつく

の特徴であると考えた、きゅうばっくのデザ

イン性が一般的に受けし、れられているといえ

る。製作段階で、特に気を付けていたわけで

はなかったが、九博ではコミュニケーション

部門で受賞していることからきゅうぱっく自

体の中身のコンセプトで受賞したと、考えら

れている。

ill. 第 2弾の製作について

第 2弾は第 l弾を運用していく上で表面化

した課題点や要望が反映され、製作されてい

る。第 l弾の製作キーワードから「パズルゲー

ムであそぶ」を除き、実物や実物が再現され

たモノ(レプリカ等)が入れられた。学校で

の利用の際に使用しないと考えられるそノ

は、製作の当初から入れないようにと注意が

払われている。また、第 1弾では一斉授業に

使われることがあまり想定されていなかった

が、第 2弾では学校の一斉授業のなかでも利

写真4第2弾ジェラルミンケース外観 (筆者撮影)

用できるように配慮されており、学校教育に

おける単元授業に沿って製作されている。製

作会議メンバーは九博の教育普及担当者 l名

と、学校の先生 3名の計 4人であった。九博

の教育普及担当者は福岡県の学校の教員であ

る。よって、第 2弾の製作会議メンバーで、あ

る4人全員が、学校の教員であったこととな

る。

キッ トを収納するケースは第 l弾と異な

り、ジェラルミンケースである。大きさは

100サイズから 160サイズで、キットの種類

によ って異なる。第 l弾と同様に、予算は他

の活動と合同で、 670万円程度であった。

N 運用について

きゅうばっくは、九博交流課の教育普及担

当が主に担当する。先述の通り教育普及担当

は福岡県立アジア文化交流センターが運営し

ている。教育普及担当者は 2人おり、 1人が

主担当となり、もう l人が副担当として、フォ

ローをしている。さらに両担当が不在の際に

は、非常勤の職員が対応を行っている。きゅ

うばっく専属の担当者ではなく、学校連携事

業における「広報.PRJ、「研修J、「出前授業J、

「職場体験J等の業務もこなしている。

きゅうばっくを維持していく上で、資料の

清掃代や衣服等のクリーニング代、小さな補

修代などがかかる場合があるが、実際にか

かっても数万円程度である。そのため、きゅ

うぱつくの維持費として毎年度の単独での予

算化はしていない。内容物などはあらかじめ

予備を製作段階で用意している。

きゅうばっくは児童 ・生徒や学校の現状に

応じ、学校現場の先生方に柔軟に活用しても

らいたいと考えており、各アイテムの解説や

使い方を掲載している活用マニュアルを用意

している。 しかし利用者が主体となって自 由

に利用してもらいたいため、授業での活用方

法は、敢えて掲載していない。きゅうばっく

を利用することで何かを感じ取ってもらうた

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めに、内容には気を付けている。

きゅうばっくを詰めるため

ムベ」ジの活用」、

の学校へのチラ

として、

る語

、「竿校教育

関係の研修J、「研修会J、等念行っている。

し、「学校教育関係の研修J実施時にチ

ラシを見たことがあるかを研修の参加者にラ

ブ ところ、チラシの周知状況は 2割

たという。

v.鷺匿と室主果

学校が博物館に来館するためには、近くの

学校であれば徒歩で比較的容易に来館できる

が、少しで、も距離が遠くなると浴車をどはじめ

を借りるなど、移動手段や金

どの多くの条件をクヲアしなければな

らないむ博物館が学校等に出向いて出前授業

うこ ξもあるが、探遣する博物館銀IJの人

じめとした輯限がある。きゅう iまっく

の製作には少しでも博物館告と利用してもらえ

るようにという目的も、込められおり、貸出

:¥'-ットを貸し出すこと自体に常識があると、

られている。さらに、災い今ットの製作

はおのずと博物館を科活用してもらえること

につながると九博で誌考えている。

がきゅうばっくに期待する讃呆は、

-e"ゅうばっくのそノ(内容物〉に興味を持っ

てもらい、九博に本物を見i之、来館してもら

うことである。先述の通り、学校が間体で来

ことはとても関離であっても、家朕や、

友主露関士で来舘してもらうこと ること

告と考えている。長い自で見れば、博物館はも

ちろんのこと、九博は人文系の簿物舘のため、

特に鑑史等に興味を持ってもらえることへの

も含めている。

利用後のアンケートから実際の利用効果を

うかがってみると、「子供たちの興味関心が

ったJr熱心に触っていたJといったこ

とが、挙げられる。そしてきゅうばっくのリ

ピーターとなっている学校の先生もおり、こ

のことは、きゅうばっくが利用する学校の先

自の活的を達成できる薄物鑓ツー

ルの 1つとなっているということのあらわれ

であろう。九博はアンケートやきゅうばっく

のリピータ…の存荘から、九博ではきゅう

ばっくは、博物館という機関自体や資料であ

るそノに興味関心を高めるきっかけとなって

いると感じている。そしてリピータ

するということは、きゅうばっくがあ

良く辞儀されている誌拠であると考えてい

る。この良い辞傾を増やすことは、ロコミで

の利用者会場やすことにもつながり、

利用したことのある人から影響を受け、きゅ

うばっく会利用するにいたった例もある。

きゅうばっくは当初九州全域のみに貸出範

囲を隈定していたが、 2011 (平成 23)

からは全E惑に季Ij用範麗を広げて費出会狩って

いる。

VI. t昔用翻ままから

利用者が借り受けてどのように利用してい

るかを体験するために、実際に借用をおこ

なっ

五感」、

44

つじあは

f

、#。つ

さう「、

ゆぎたし

、ろいろj の4種類で¥第 15挙と

25挙から 2縁類ずつ借患した。

( 1) rあじっば3i感J 第 H挙)

a. 目的とテーマ

九博 lFのあじっぱで扱う各閣の文化や大

-味覚・触覚で理解する体験

キットとなっている。基本的な考え方として

r1.五藤会議して各菌文犯の特徴を学ぶJr2.

アジア各欝の文犯の共通点・

るj の 2,採が挙げられている。

の擦に利用できるように

内容物の活用マニニネアルは、学習指導婆領と

の対応筒所が殺げられており、

科、 6年生 n投3'ltの中の日本の役筈JUJげられていて、他に社会科・

- 33 -

Page 6: 安田幸世*写真1・あじっぱ (筆者慢影) 2013年度の利用者数は893,154 人で、 201 4 年3月31日現在の開館以来の総入館者数は、 11 ,662,018人である。E

時間、選択教科で主に使用される ことを想定

していることが、マニュアノレから伺うことが

できる。

b.内容物について

内容物は、次の通りである。

亜細亜のお箇/3E細Eの独楽 /亜細亜

のあいさつ/匂いに関するアイテム(調味

料)/ 3E細亜の味と匂いを極めろカー

ド)/亜細亜の楽器/民俗音楽の本と CD

/ 活用マニュアル

「亜細亜のお面Jは日本、中国、韓国のお

面 3種類である。「亜細亜の独楽j は日本、

韓国、中国、インドネシアの独楽 4種類であ

る。この 2種類のアイテムは「かぶってみよ

う・まわしてみよう」というタイトルが付け

られ、実際に体験する ことで、日本のモノと

の相違点が分かる学習ツールとなっている。

r3E細亜のあいさつ」は r~ こんにちは~~あ

りがとう ~J というタイトノレがつけられ、マ

グネット盤と各国の挨拶が書かれた“あいさ

つピース" (8枚 lセット)で、ピースにか

かれた挨拶を声に出すことで、アジアの基本

的な挨拶が分かる学習ツールとなっていて、

中園、韓国、タイ、インドネシアの「こんに

ちはJrありがとう」が書いてある。

「亜細亜の味と匂いを極めろ !Jは、調味

料や代表的な料理をとおして、アジアの食文

化を理解する学習ツールで、ある。「匂いに関

するアイテム(調味料)Jとして 6個の調味

料瓶が入っており、匂いを嘆ぐことができる。

「味に関するアイテム」として、は韓国、中国、

タイ、インドネシアの食文化に関する説明と、

代表的な料理のレシピを載せたカード、が入っ

ている。

「亜細亜の楽器Jはパーランク一、ソゴ、

アンクルンの 3種類の楽器であり、アンクル

ンについては組立が難しいため、組立方法

シー トI枚がつく 。

「亜細亜の音を聴こう Jは『世界の民族音

楽① ・②』の本 2冊である。本には CDがつ

写真 5・「あじっぱ五感」の肉容物 (筆者撮影)

き、韓国、中国、タイ、インドネシア以外の

アジアの国の音楽が聴ける。この 2点は「楽

器に触れ、音楽を聴くことで、アジアの音と

音楽を体験できる学習ツール」となっている。

( 2) r遣唐使の時代J(第 l弾)

a. 目的とテーマ

遣唐使船の公開を通じて、当時の日本と唐

との交流の全容、遣唐使の果たした文化的な

役割を学習することのできる体験キットであ

る。r1遣唐使船に乗った人々の視点を学ぶ」、

r2 遣唐使による交流の姿を浮彫りにする」

の2点を学ぶことを目的としている。

b.内容物について

内容物は、次の通りである。

動物あてクイズ/遣唐使船たんけん ・発

見指令書/遣唐使すごろく/遣唐使人物

紙芝居『鑑真和上』 ・ 『菅原道真~/いろは

仮名文字合わせカード/水晶/璃瑠/銀

銭/香木/漢籍/鏡/白瑠璃椀/あし

ぎぬ/貝匙/海老錠/鴛鴛唐草文錦/

遣唐使の積荷を分類しよう/絵本『もろこ

しのたからもの』

「動物当てクイズ(カード)Jは遣唐使船よ

りもたらされた正倉院宝物のなかに描かれて

いる動物をクイズ形式で学ぶ学習ツールで、

10枚のカー ドが入っている。「遣唐使船たん

- 34一

Page 7: 安田幸世*写真1・あじっぱ (筆者慢影) 2013年度の利用者数は893,154 人で、 201 4 年3月31日現在の開館以来の総入館者数は、 11 ,662,018人である。E

写真 6: r遣唐使の時代」の内容物 (筆者爆影)

けん ・はっけん指令書(カード)Jは、九博

文化交流展示室(第 8室)の遣唐使船コーナー

に関する問題がだされている。この 2点は文

化交流展示室と連動した内容となっている。

「遣唐使船すごろく」は、布製のゲームボー

ドI枚と、サイコロ、コマ 4個で構成されて

おり、遣唐使がたどった航海路をすごろくで

辿ることで、遣唐使船の航海の大変さを学ぶ

学習ツーノレで、ある。

「遣唐使人物紙芝居『鑑真和上』及び『菅

原道真.nJは、遣唐使船にまつわる 2人を学

ぶ学習ツールとなっている。紙芝居という形

態から、クラス単位での活用ができるように

なっている。

「し、ろは仮名文字合わせカード」は仮名文

字についてカード形式で学ぶ学習ツールで、あ

り、習熟段階に応じての使用をお願いしてい

る。

「海をわたった宝物」は 11種類のモノで構

成され、遣唐使が持っていったモノ、持ち帰っ

たモノが体験できる学習ツールで、ある。詳細

は「水品」は 3点、「璃瑠Jは 3点、「銀銭j

は復元資料 30枚 1つづり、「香木jは白檀チッ

プ(ケース入り)、「漢籍」は 1巻で解説シー

トl枚、「鏡」は復元資料J1枚、「白瑠璃椀」

は復元資料 l点、「あしぎぬ」は復元資料 l

枚、「貝匙」は復元資料 l点、「海老錠」は復

元資料 l点、「鴛鴛唐草文錦Jは l点である。

すべてを使って体験することが、活用マニュ

アルに明記されている。文化交流展示室(第

8室)に遣唐使の積荷を再現したコーナーと、

連動している。

「遣唐使の積荷を分類しよう(ボー ド)Jは

遣唐使船よりもたらされた品々がどこに由来

するものであるかを学ぶ学習ツーノレで、クラ

ス単位での活用が可能である。

絵本『もろこしのたからもの』は、遣唐使

について書かれた絵本である。

( 3) r青銅器のいろいろJ(第 2弾)

a. 目的とテーマ

日本の弥生時代に登場した銅剣や銅矛、古

境時代の銅鏡なとeの形状を手に取ってみられ

るもので、剣 ・文 ・矛の違いや、時代による

形の変化に注目できるように製作している。

b 内容物について

内容物は、次の通りである。

中細形銅剣/細形銅文/中細形鋼文/

中広形銅文/広形鋼矛/三角縁神獣鏡/

実物大マグネット

写真6: r青銀器のいろいろ」の内容物のマグ才、ッ卜(筆者撮影)

、、辱‘「銅剣や銅矛」などの 5点は、各々出土し

たモノを 3次元計測し、若干縮小して 3Dプ

リンターで製作した 3次元コピー物である。

「三角縁神獣鏡」は、典型的な背面の文様

を施した復元品である。

「実物大マグネットJは、銅剣等の写真デー

タを実物大のカラー印刷をしたものである。

印刷紙はマグネット加工がなされており、学

校では黒板等に貼ることができ、 3次元コ

ピー物と比較ができるようになっている。

(4) rさまざまな香辛料J(第 2弾)

a. 目的 ・テーマ

ローマ帝国や大航海時代の交易商人たちを

- 35一

Page 8: 安田幸世*写真1・あじっぱ (筆者慢影) 2013年度の利用者数は893,154 人で、 201 4 年3月31日現在の開館以来の総入館者数は、 11 ,662,018人である。E

写真 7 さまざまな香辛料の肉容物 (筆者撮影)

駆り立てる原動力であった、インド原産のコ

ショウやモルッカ諸島原産のクロープなどの

香辛料の香りを確かめられるパックである。

b 内容物について

内容物は、次の通りである。

ナツメグ ・メース/コショウ / グロー

プ/シナモン

ナツメグ ・メースのみ 2点入っており、そ

れ以外は、各 l点ずつの 5点である。蓋付き

のプラスチックケースに入っており、蓋をあ

けることで、匂いが唆げるようになっている。

4 おわりに

本稿は、筆者が行った九博の学習支援キッ

ト「みんばっく j の調査報告である。

きゅうばっくは、学校に利用してもらうと

いう目標の下に企画製作され、博物館が有す

る資源、を有効活用し、体験して感じてもらう

ことを目 的としている。そのため企画や製作

段階で学校の先生がメンバーに入っているこ

とは、有意義なことであろう。

きゅうばっくは展示との連動が明確であ

り、学校が博物館に行く際の事前事後で利用

しやすい形態となっていると考えられる。さ

らに、きゅうばっくは貸し出すだけではなく、

出前授業や来館した際の展示見学前のオリエ

ンテーション等でも利用することもある。

現在も教材会社では用意が出来ないモノ、

博物館ならではのそノを提供する、という目

標を持ち、「きゅうぱっく」の研究 ・開発が

行われている。

しかし実際に利用してみると、これまで課

題で挙げられるように、第 1弾の箱は大きく

て、重く、使い勝手が悪い。利用するに際し

て、人を選ぶことになっている。利用に対す

る自由度を広げるために利用方法が書かれた

マニュアル的なものはないが、これまでの事

例等を紹介してもよいと感じた。

九博は今後のきゅうばっくの展望として、

当初の製作計画にあったとおり、常設展示全

ての展示テーマに対応したキットを、製作す

る必要があると考えている。 しかし、当初の

計画通りにキットを製作して今後利用しても

らえるかの リサーチは必要で、製作計画の変

更もありうるとする。

先述のとおりきゅうばっくは、近年利用範

囲を当初の九州全域から全国に広げている。

そのことも影響し、きゅうぱつくの利用者

は、増加している。このことは、博物館利用

の lつの方法として、きゅうばっくが受け入

れられていることをしめしているのではない

だろうか。さらに、きゅうばっくの活性化は、

九博全体の活性化にもつながっているであろ

フ。

九博全体に良い循環をもたらすことが、

きゅうぱっくを九博の一事業として行ってい

く意義にもなっていくであろう。

[謝辞 ]

本稿は、九州国立博物館のご厚意により調

査が行えた結果である。特に釜瀬進一郎氏を

はじめとする交流課教育普及担当の方々に、

日々の多忙な業務の合間に時間を割し、ていた

だし、たおかげである。ここに記して感謝申し

上げる。

なお、本調査報告は r2013年度明治大学

大久保忠和考古学基金j の成果である。

[聞き取り調査日程等 ]

-聞き取り調査日 2013年 9月 12日

・対応者:釜瀬進一郎 氏

co

qJ

Page 9: 安田幸世*写真1・あじっぱ (筆者慢影) 2013年度の利用者数は893,154 人で、 201 4 年3月31日現在の開館以来の総入館者数は、 11 ,662,018人である。E

【参考文献等 I

永井真佐美 2008["Backyard九州国立博物館

九州国立博物館の挑戦 2学習貸出キット

「きゅうばっく JJ ~社会科教室.] No.48日

本文教出版 (Web版)

安田幸世 2013["博物館の学習支援キットー

「貸出キットJに注目して一J~明治大学学

芸員養成課程紀要 26.]

西日本新聞 2010年 8月 24日「五感使って歴

史を学ぶ石器、土器、鏡・・・教材セッ

ト 授業で活用広がる 九州国博でも貸し

出し 本物に触れ教科書身近に」

九州国立博物館「博物館からのお知らせ 九

州国立博物学校貸し出しキット『きゅう

ばっく』第 2回キッズデザイン賞「コミュ

ニケーションデザイン部門賞j 受賞

http://www.kyuhaku.jp/news/news_080822 .

html (2015年 1月閲覧)

KIDS DESIGN AWARD 2013 ["九州国立

博物館学校貸出キット「きゅうばっく」

http://www.kidsdesignaward.jp/search/

detail_081 058 (2015年 1月閲覧)

ふくおかインターネットテレビ ["[RKB)

学校で博物館を体験きゅうばっく ~J

http://webtv.pref.fukuoka.lg.jp/ja/movies/

detaiV1648 (2015年 1月閲覧)

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