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第2号 発行日 平成302018)年1031北海道師範塾ニュースレター 去る、9月6日の未明、胆振東部を襲った最大 震度7の地震は、死傷者約720人、300棟以 上の建物被害をもたらすなど、各地に大きな被 害をもたらしました。 亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると同時 に、被災された皆様にお見舞い申し上げます。 亡くなられた方々は、16歳の高校生から90歳 を超える方まで様々ですが、一瞬にしてこれから の人生の全てが断ち切られてしまいました。亡く なった本人はもとより、残されたご家族にとって も、その悔しさ、悲しみは如何ばかりかと拝察して います。私も、かつて、24歳の息子を突然亡くし ておりますので、残されたご家族の思いは、少し は理解できるように感じています。 身近な人が亡くなった時、特に若い方が亡く なった時、私たちは、ともすれば「やりたいことが まだまだ沢山あったろうに」とか、「これからが人 生の実りの時であったのに」などと、死によって失 われてしまった先のことに思いがいってしまいが ちです。 これに対して、吉田松陰という方は、留魂録 りゅうこんろく いう書物の中で、「10歳にして死する者は10歳 中自ずから四時あり。20は自ずから20の四時あ り。(10歳で死ぬものは10歳の間におのずと四 季がある。20歳にはおのずと20歳の四季があ る。)」とした上で、「10歳を以て短しとするはけい をして霊 れい 椿 ちん たらしめんと欲するなり。(10歳を以 て短いというのは、ひぐらしを長生きの霊木にしよ うと望むことである。)」と述べています。 私も、人の一生はその長短で推し量るものでは ないのだと思います。たとえどんなに短い一生で あったとしても、そこには、春秋を重ねた重さがあ るのであり、亡くなった方のこれまでの来し方に思 いを致し、静かに胸に留め置くことが大切なので はないかと思っています。 吉田松陰は、30歳という若さで亡くなっていま す。もしも、彼がもっと長く生き、明治という新しい 時代を作り上げる渦中にあったら、日本の姿はど のようなものになったろうかと想像は広がります が、彼自身は、死を目前して「義 きょう の身を以て云 へば、是 れ亦 また しゅう じつ の時なり、何ぞ必ずしも哀しま ん。(私自身の人生からいえば、稲の穂が成熟し て、実りを迎えた時なのである、どうして悲しむこと などあろうか。)」と述べています。これは、覚悟を 持って生きて来た人だからこそいえる言葉なのだ ではないでしょうか。 注1:吉田松陰の言葉の訳は、川口雅昭編「吉田 松陰一日一語」を参照しました。 注2:ひぐらしの寿命は、成虫で2週間から1カ月とい われています。「蛄は春秋を知らず」という言葉もあり ます。 目次: 会長挨拶 北海道胆振地方東 部地震 第16回「夏季講座」 第1講話 第2講話 プレ講座 シンポジウム 【実践発表①】 【実践発表②】 【実践発表③】 3 グループワーク 第7期生の90%が教 採登録 教育keyword 研究紀要投稿要領 学校紹介シリーズ4 5 お知らせとお願い 平成30年度冬季講 座(1次案内) 編集後記 6 北海道胆振東部地震で亡くなられ た方々のご冥福をお祈りすると同時 に、被災された皆様にお見舞い申し 上げます。 北海道師範塾会長 吉田 洋一 北海道胆振地方東部地震 道内で初めて最大震度7を観測し、死者が4 1人に上った胆振東部地震の発生から20日で 2週間が経過した。道内の農林水産業や観光 業、道路など交通網の被害総額は19日までの 判明分で、1千億円を上回っている。学校や史 跡など教育関連の294カ所で新たに確認され た壁のひび割れなどの被害額は、調査中のた め含まれておらず金額はさらに膨らむ見通し。 道教委によると、教育関連で被害があった29 4カ所の内訳は、小中高などの学校が265校、 図書館などの教育施設が20施設、国の特別 史跡・五稜郭跡(函館市)の石垣など文化財の 被害が9カ所。学校施設の損壊は自治体別で 札幌市が最多の168校、胆振管内は26校 だった。(北海道新聞9月20日付け) 教育関連で被害があった294カ所のうち、小中高は265校

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Page 1: 第2号 北海道師範塾ニュースレターkyoshinomichi.jp/newsletter/newsletter_2.pdf第2号 発行日 平成30(2018)年10月31日 北海道師範塾ニュースレター

第2号

発行日

平成30(2018)年10月31日

北海道師範塾ニュースレター

去る、9月6日の未明、胆振東部を襲った最大

震度7の地震は、死傷者約720人、300棟以

上の建物被害をもたらすなど、各地に大きな被

害をもたらしました。

亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると同時

に、被災された皆様にお見舞い申し上げます。

亡くなられた方々は、16歳の高校生から90歳

を超える方まで様々ですが、一瞬にしてこれから

の人生の全てが断ち切られてしまいました。亡く

なった本人はもとより、残されたご家族にとって

も、その悔しさ、悲しみは如何ばかりかと拝察して

います。私も、かつて、24歳の息子を突然亡くし

ておりますので、残されたご家族の思いは、少し

は理解できるように感じています。

身近な人が亡くなった時、特に若い方が亡く

なった時、私たちは、ともすれば「やりたいことが

まだまだ沢山あったろうに」とか、「これからが人

生の実りの時であったのに」などと、死によって失

われてしまった先のことに思いがいってしまいが

ちです。

これに対して、吉田松陰という方は、留魂録りゅうこんろく

いう書物の中で、「10歳にして死する者は10歳

中自ずから四時あり。20は自ずから20の四時あ

り。(10歳で死ぬものは10歳の間におのずと四

季がある。20歳にはおのずと20歳の四季があ

る。)」とした上で、「10歳を以て短しとするは蟪けい

蛄こ

をして霊れい

椿ちん

たらしめんと欲するなり。(10歳を以

て短いというのは、ひぐらしを長生きの霊木にしよ

うと望むことである。)」と述べています。

私も、人の一生はその長短で推し量るものでは

ないのだと思います。たとえどんなに短い一生で

あったとしても、そこには、春秋を重ねた重さがあ

るのであり、亡くなった方のこれまでの来し方に思

いを致し、静かに胸に留め置くことが大切なので

はないかと思っています。

吉田松陰は、30歳という若さで亡くなっていま

す。もしも、彼がもっと長く生き、明治という新しい

時代を作り上げる渦中にあったら、日本の姿はど

のようなものになったろうかと想像は広がります

が、彼自身は、死を目前して「義ぎ

卿きょう

の身を以て云

へば、是こ

れ亦また

秀しゅう

実じ つ

の時なり、何ぞ必ずしも哀しま

ん。(私自身の人生からいえば、稲の穂が成熟し

て、実りを迎えた時なのである、どうして悲しむこと

などあろうか。)」と述べています。これは、覚悟を

持って生きて来た人だからこそいえる言葉なのだ

ではないでしょうか。

注1:吉田松陰の言葉の訳は、川口雅昭編「吉田

松陰一日一語」を参照しました。

注2:ひぐらしの寿命は、成虫で2週間から1カ月とい

われています。「蟪蛄は春秋を知らず」という言葉もあり

ます。

目次:

会長挨拶

北海道胆振地方東

部地震

第16回「夏季講座」

第1講話

第2講話

プレ講座

シンポジウム

【実践発表①】

【実践発表②】

【実践発表③】

3

グループワーク

第7期生の90%が教

採登録

教育keyword

研究紀要投稿要領

学校紹介シリーズ4

5

お知らせとお願い

平成30年度冬季講

座(1次案内)

編集後記

6

北海道胆振東部地震で亡くなられ

た方々のご冥福をお祈りすると同時

に、被災された皆様にお見舞い申し

上げます。 北海道師範塾会長 吉田 洋一

北海道胆振地方東部地震

道内で初めて最大震度7を観測し、死者が4

1人に上った胆振東部地震の発生から20日で

2週間が経過した。道内の農林水産業や観光

業、道路など交通網の被害総額は19日までの

判明分で、1千億円を上回っている。学校や史

跡など教育関連の294カ所で新たに確認され

た壁のひび割れなどの被害額は、調査中のた

め含まれておらず金額はさらに膨らむ見通し。

道教委によると、教育関連で被害があった29

4カ所の内訳は、小中高などの学校が265校、

図書館などの教育施設が20施設、国の特別

史跡・五稜郭跡(函館市)の石垣など文化財の

被害が9カ所。学校施設の損壊は自治体別で

札幌市が最多の168校、胆振管内は26校

だった。(北海道新聞9月20日付け)

教育関連で被害があった294カ所のうち、小中高は265校

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「北海道師範塾は共に学ぶ場を提供する」

平成30年度夏季講座開講式で吉田会長挨拶

プレ講座・シンポジウム 「北海道の教育を考える」 今回の夏季講座から始まったプレ講座。初の試みであ

る今回は、太田副会長と小山内副会長をシンポジストに

迎えてのシンポジウムが行われた。

太田副会長は、ご自身の来歴と教育改革の歴史から

教育現場の働き方改革について提言を行った。小山内

副会長は、コミュニティ・スクールについて説明をしてか

ら提言を行った。今一つコミュニティ・スクールについて

分かっていなかった方も、この説明でかなり理解が深

まったと思う。

この後、会場の参加者との間で意見交流が行われ

た。発言したのは、教師養成講座修了生の浦崎先生と

Page 2 北海道師範塾ニュースレター

開講式 吉田洋一会長講話

阿部豊教授の第1講話

渡辺淳一主幹の第2講話

太田眞先生の提言

第1講話

「学校教育以外で深める学び〜対話 的学びのためのファシリテーション」 北翔大学 阿部 豊 教授

北翔大学教授の阿部豊先生による講話は、系統的・

計画的・組織的な学習である学校教育と、様々な体験

を積ませる学校以外の教育という、二つの教育が健全

な成長には必要…という話から始まった。

この後、「体力に自信のある子は友達も多い」 「地域活

動経験が多い子は人間関係能力が高い」 「読書活動が

多い子は体験活動も多くなる」「読書活動が多い子はボ

ランティア活動にもよく参加する」といった様々なデータ

が示された。これにより、子供の頃の体験が豊かな人ほ

ど、規範意識、職業意識、人間関係能力、文化的な教

養、意欲や関心…が高い傾向だと分かる。最初の話に

あった、二つの教育が健全な成長には必要ということが

裏付けられた訳だ。

最終的な結論としては、様々な能力を身につけるに

は様々な体験が必要…という、ある意味当たり前の結

論となった。しかし、この当たり前のことを実践していくの

は非常に難しい。講話の中では自分で考えて記述した

り、それを周囲の人と交流して検討したりしたので、より強

くその事を感じさせられた。充実した内容の講話だったと

言えよう。

プレ講座における質疑

的と積極的とは違う…という話も興味深かった。積極的

に挙手して発表することだけが「主体的」な姿という訳で

はないそうで、これは成る程と思う。同様に、「対話的」も

人間相手だけではないとも話されていた。本などとの対

話も含まれるとの話で、これは全く考えていなかった内容

であり目から鱗…と感じた参加者も多かっただろう。

実際の授業を考える事については、「指導目標」「指

導事項」「指導方法」という学習指導要領の構成に沿っ

て授業作りをする事の大切さが強調されていた。しかも、

1時間の授業だけでなく、単元で考えていく事が重要だと

も…。そのため、3~5時間の授業をまとめた指導案にな

るだろう…との話で、これは小中学校の現場でも大きく変

わる部分だと思う。

大変興味深く、面白い講話だったが、今後の授業作り

の難しさを感じさせられた。

第2講話

「新学習指導要領を考える」 北海道教育庁学校教育局 渡辺 淳一主幹

北海道教育庁学校教育局参事(生徒指導・学校安

全)主幹の渡辺淳一先生による講話も、自分で考えた

内容を記述したり、周囲の人と互いの意見を交流し合っ

たりするなどの場面が多かった。

講話で印象的だったのが、「今回の学習指導要領で、

高等学校は『授業を変えろ』と言われている」という言葉

だろう。「小中学校は自信をもって今までの実践を深め

てほしい」という言葉もあった。小学校の現場では、「主

体的・対話的で深い学び」という言葉に過剰反応してい

る雰囲気が強かったが、焦ることなく、これまでの実践を

深めれば良いのだと分かりほっとした気持ちになった。

その「主体的・対話的で深い学び」に関しては、主体

宇部先生、そして新十津川農業高校の藤沼先生の3

名。実体験に基づいた良い質問や意見だったが、シンポ

ジストとの対話のようになってしまったのは残念だった。1

人発言すると直ぐシンポジストに戻すのではなく、参加者

からの発言を引き出すようにすべきだったように感じた。

また、最初に発言したのが教師養成講座の修了生

だったこともあり、シンポジストから教えを受ける…という

雰囲気になってしまったのも惜しい。シンポジウムでは誰

もが対等な立場で意見を述べ合わないと、話し合う過

程で内容を深めていくことはできないだろう。

とは言え、今回は初の試み。むしろ、このような課題が

見えて良かったように思う。

《文・写真:齊藤振一郎》

平成30年8月6日、この日は広島原爆忌。最初に黙

祷してから、吉田会長の挨拶が行われた。その中で強

調されたのが「新しい試み」。これまでと違い、藤女子大

学をお借りして会場としたので手作り感が強まったこと。

そして、プレ講座…我々自身の学びの場として考えたこ

とが説明された。それは新学習指導要領の「主体的・

対話的で深い学び」にも通ずるものであり、参加者一人

一人の主体的な意思が学びを深める、共に学ぶ場を

提供したいという熱い思いが前面に出された力強いメッ

セージだった。

小山内仁先生の提言

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教師養成講座修了生の佐藤実咲先生が、今年度

初めてとなる普通学級での実践を発表した。自ら考

える力を高めるため、4月から教科と道徳と特別活動

で取り組んでいる内容から、特別活動に絞っての発

表だった。主な実践は、係活動、飼育栽培活動、帰り

の会で行なっている「輝キング輝クィーン」の3種類。

このうち、「輝キング輝クィーン」は日直が、その日輝

いていた子を1人発表するというものだった。

〈意見交流〉

小学校部会では学級活動について様々な話が出

たが、最終的には係活動に絞って話し合いを深めて

いった。話し合いの結論としては、係活動と言っても

様々な方法があり、どの方法を選ぶかは、その担任が

Page 3

市立札幌新川高校の及川遥香教諭が、「小説『こ

ころ』における思考的な学び」と題して実践発表した。

授業の終着地点としては、主要登場人物3名のう

ちKの自殺の理由は「失恋」ではなく、「K自身が信条

を裏切ってしまったことに耐えられなかったから」とい

うことに気付かせることである。そのために、小説の特

徴や伏線を的確に捉えさせ、視点の切り替えを繰り

返させる中で、自己の考えを持たせるようにした授業

実践の発表であった。

〈意見交流〉

4人程度のグループを組み、評価シートを用いて意

見交流をした。評価シートの構成は、①発表を聞い

た感想②自校に取り入れることが可能な箇所がある

かを問うものであった。なお良くなかった点は、どのよ

うにすれば改善されるのか、自校に取り入れられな

いと感じた場合は、どのように工夫すれば自校に取り

入れることが出来るのか、具体的な方法を提示して

もらい、発表者にとっても更なる改善の機会にしよう

とのねらいで進めた。

〈助言:樋口かおり研究研修主事〉

交流において、文学作品における、「答えが1つに

ならないがために、腑に落ちない生徒」への指導につ

いて悩む場面があった。そこで北海道立教育研究所

研究研修主事の樋口かおり氏より、生徒は答えの定

義を「正解」と捉えていると想像できるが、国語という

教科で生徒に身に付けさせたい力は、言葉と言葉を

結びつけ、読みの根拠となる部分を見つけ、多くの人

が納得出来る答えとなる「納得解」を見つける力であ

ると、助言を頂いた。

《文:ファシリテーター 浦崎菜摘》

第2号

及川遥香先生の実践発表

実践発表① 「考える力」を育てる特別活動~通常学級1年目,1学期の記録 旭川市立北鎮小学校 佐藤 実咲 教諭

どの様な学級システムを作るかにかかっている。つま

り、係活動には担任の教育思想が見えてくると言え

る…いう内容にまとまった。

〈助言:寺本聡校長〉

助言は北見市立美山小学校の寺本聡先生。学級

の仕組みを作るのは教師の責任であり、担任不在で

も、子供たちがイメージして動ける様でなくてはならな

い。できれば、その仕組みは新年度のできるだけ早い

時期、可能なら始業式から3日(黄金の3日間)以内

に作ってしまいたい。また子供を活動させるモノ、時

間、場所が必要となる。更に、チェック機能のシステム

も作り評価していく事が大切になってくる…などの助

言があった。 《文:ファシリテーター 齊藤振一郎》

岩田健吾先生の実践発表②

佐藤実咲先生の実践発表①

石狩市立花川中学校教諭の岩田健吾先生による

実践発表は「生徒指導」についてであった。

今年度から担任をもち、その学級内で起こった事

例をもとに、その対応と今後の生徒への手立てまで

を示している。事例をもとにした具体的な内容であっ

たため、生徒一人一人に踏み込んだものである。そ

の中で、岩田先生が生徒一人一人の理解と信頼関

係構築に向けて日々熱意をもって取り組んでいること

がわかる発表であった。

〈意見交流〉

学生も多く参加した意見交流となった。まず、実践

発表で触れられなかった学級全体の様子から交流

が行われた。その中で、授業によって学級の雰囲気

が変わるという課題が話題に出た。そのような学級の

様子や生徒との関わりの上で、岩田先生は指導に

「一貫性」をもつことを大切にしている。ときに生徒に

寄り添いながら、けじめをもち、生徒と日々体当たりで

ぶつかり、生徒を育てようとする姿勢が伺えた。

〈助言:小山内仁校長〉

八雲町立野田生中学校、小山内校長先生から

は、次のような助言をいただいた。キーワードは「チー

ムで対応する」ことである。例えば、一人の生徒に対

して、複数の教員からの情報を得ること。また、校内

研修を有効に活用することで、学校全体として「一貫

性」をもたせることなど、具体的な方策について助言

をいただいた。さらに、学校内だけでなく、CSの取組

も視野に入れ、保護者やSSW、SCとの連携の重要

性についても助言をいただいた。

《文:ファシリテーター 嶋田 剛》

実践発表② 私の生徒指導~40人の生徒を理解することの難しさ~ 石狩市立花川中学校 岩田 健吾 教諭

実践発表③ 小説『こころ』における思考的な学び 市立札幌新川高等学校 及川 遥香 教諭

中学校部会の意見交流 高等学校部会の意見交流 小学校部会の意見交流

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Page 4 北海道師範塾ニュースレター

中教審の教育課程部会は9月6日、今後の教育政策の方向性をま

とめた報告書「Society 5.0に向けた人材育成~社会が変わる、学び

が変わる~」について意見を交わした。各委員は報告書が示す内容の

推進に賛同する一方、さまざまな課題を指摘した。

「Society 5.0」は、「IoT、ロボット、人工知能、ビッグデータ等の先進

技術を活用することで、新たな価値を創出し、地域、年齢、性別、言

語等による格差なく、多様なニーズ、潜在的なニーズにきめ細かに対

応したモノやサービスを提供することのできる新たな時代」と定義され

ている。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社

会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く新たな社会である。

報告書ではこの新社会に対応しうる人材育成に向けて、

グループワーク

▼「公正に個別最適化された学び」を実現する多様な学習の機会と

場の提供

▼基礎的読解力、数学的思考力などの基盤的な学力や情報活用

能力を全ての児童生徒が習得

▼文理分断からの脱却 ―― の三つの方向性を示した。

また、公正に個別最適化された学びの実現のために、

・医療で用いるカルテのような個人個人の学習の内容を蓄積していく

「スタディ・ログ」から見えてくる自分自身にあった学びとして「学びの

ポートフォリオ」を活用する。

・異年齢・異学年の協働学習を実施していくためにパイロット事業(試

験事業)を行う。

・EdTech(エドテック:Education×Technology)と呼ばれる教育にお

ける様々な新しいテクノロジーを活用した教育の質の向上などの具

体的な施策を提言した。

「Society 5.0の社会」 ~社会が変わる、学びが変わる~

Keyword

夏季講座1日目の第1・第2講話を受け、「主体的・

対話的で深い学び」を実現する授業づくりのための具

体的方策や留意点について、5グループで協議しまし

た。今回のグループワークには、ファシリテーションを導

入しました。ファシリテーターのアイスブレイクで会の雰

囲気も和らぎ、年齢や経験を問わず、参加者全員が

主体的に意見を出し合いました。

個々の考えを付箋紙に書き出し、説明しながら類似内

容毎に分類していきます。その後、分類した視点毎に協

議を深めました。話合い内容は、ファシリテーショングラ

フィックにまとめ、協議内容の「視える化」を図りました。こ

れは、その後の全体交流でも、他グループの人に協議

内容を伝えるのに有効でした。

全体交流では、授業づくりの前提として、安心して話し

たり教え合ったりできる学級づくりの重要性が語られまし

た。さらに、教師主導の指導から児童生徒が主体となる

学びへの、授業の質的転換の必要性も欠かせません。

授業展開においては、個々の課題意識の高まりや、振

り返りにより次の学習につなげることの重要性が話されま

した。教材や導入の工夫により、課題を焦点化させる授

業技術など、教師の授業力向上が不可欠であることも

忘れてはなりません。

全体交流での発表内容から、各グループとも活発な

協議の様子が伺われ、短時間ではありましたが、意義

深い話し合いができたものと思います。

《文:ファシリテーター 松野浩毅》 F・グラフィックにまとめ発表

グループワーク 「主体的・対話的で深い学び」 ファシリテーショングラフィックにまとめ発表

平成31年度北海道・札幌市公立学校教員採用候補者選考検

査第2次合格者が10月16日に発表され、本塾養成講座から18名

が合格した。校種等と合格者の声は次のとおり。

〇小学校 7名 (北海道 2名 札幌市 5名)

〇中学校 6名 (北海道 国語 4名、社会 1名、英語 1名)

〇高 校 2名 (北海道 国語 2名)

〇特別支援 2名 (北海道 中学部 保体1名、高等部 国語1名)

〇栄養教諭 1名 (北海道 1名)

教採2次検査 90%登録の快挙

養成講座では一社会人としての振る舞い方・考え方をご指導い

ただいた。また、週に一度仲間と共に学んだことは、採用試験に向

けて意識を高く持ち続け、勉学に励むことができた。養成講座での

確実な学びが登録に繋がった。諸先生に感謝するとともに諸先輩

に追いつくよう努力したい。 (北海道小学校登録 中村 友香)

1期生 2期生 3期生 4期生 5期生 6期生 7期生

1次合格者数 21 17 15 15 22 24 20

2次合格者数 12 9 9 13 14 13 18

1次合格率 75.0% 80.9% 68.2% 83.3% 91.6% 85.7% 94.7%

2次合格率 42.9% 42.9% 40.9% 68.4% 58.3% 48.1% 90.0%

0.0%

20.0%

40.0%

60.0%

80.0%

100.0%

0

5

10

15

20

25

30

合格者数

養成講座の学びは、採用検査登録のためだけの学びではなく、

教師になり如何に指導をすべきか。学び続けるために初心に返る

ことのできる学びの場でもあります。「初心」即ち、養成講座での学

びが教師としてのスタート地点であることを誇りに思える講座でし

た。 (北海道特別支援学校高等部 国語登録 宮崎 裕也)

養成講座生の喜びの声

第七期講座生修了式

(平成三〇年七月二十一日)

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Page 5 第2号

【学校紹介シリーズ4】 北海道遠別農業高等学校

「遠別農業高校から全国へ」

北海道遠別農業高等学校は留萌管内北部に位置し、留

萌・宗谷管内で唯一、また、日本最北の農業高校として、生

産科学科1間口の農業単置校として設置されています。

現在、全校生徒59名が在籍しており、留萌管内の中学校をはじめ、

北海道全域、本州出身の生徒も本校で学んでいます。

本校では「生産科学コース」と「食品科学コース」に分かれ授業を展

開しています。「生産科学コース」では、大地に挑むエキスパートを目指

し、花やハウス野菜、もち米を始めとする作物の栽培管理実習や羊の

飼育法等を学びます。道立学校では唯一サフォーク種という顔の黒い

羊を飼育しています。

また、「食品科学コース」では、食品加工のスペシャリストを目指し、羊

肉や町の特産品を活用した商品開発・製造を通して、食べることの大

切さや安全性について学びます。最近ではこのコースで製造した加工

品が町役場で行っている「ふるさと納税」制度の返礼品として採用され

ており、昨年度は、この取組が「池上彰のご当地裏事情」で放送され、

全国から注目を集めています。

このような学校で私は、未来の農業界をリードする人材の育成に携わ

れていることに誇りを持っています。

それは、保健体育教師として全校

生徒の健康の保持増進の役割の

一翼を担っているからです。

生徒たちが夢を実現し、健康で長

くその世界で輝くことができるよう

に、今後もスポーツの素晴らしさや

必要性を伝えていきたいです。

(文:教諭 奥 恭平)

本会では、北海道師範塾の規約に基づき、研究紀要を発行していま

す。会員であれば、どなたでも投稿できます。

Ⅰ 投稿について

1 投稿は、教育に関する研究論文、実践研究報告、実践発表とする。

・研究論文:教育に関する調査・実践に関する論文。

・実践研究報告:実践・事例等に関する報告。問題提起・考察がな

された実践内容及び検討事例。

・実践発表:日常の教育活動・実践発表のまとめ。

2 投稿論文は原則として未発表のものとするが、過去の論文に考察

等を加えたものは可とする。

3 投稿者は、投稿論文で紹介する事例等における関係者のプライバ

シーの保護に十分配慮すること。

4 投稿者は、本会会員に限る。

5 原稿締め切りは、概ね以下のとおりとする。

○締切日 毎年1月末日

○発 行 毎年3月末日

Ⅱ 様式について

1 A4版、横書き、2段組、1行22文字、1ページ目のみ36行、2ペー

ジ以降44行。ワープロソフトは、Microsoft Wordとする。

・文字と行数 2段組 文字と行数を指定する

・文字数22 字送り10pt

・行数44行 行送り17.2pt

・余白 上25㎜ 下15㎜、 左20㎜ 右20㎜

2 モノクロで、最小2ページ、最大6ページとする。(註:図版・文献等

を含める。) 6ページに収まらない場合は、担当者に要相談。

3 編集上、偶数ページとし、最終ページの空白はできるだけ少なくし

てまとめること。

4 論文の文体は「である」調とし、常用漢字、現代仮名遣いを用いる。

5 タイトルは16pt太字、センタリング ~ (サブタイトルがあれば、12pt

太字、センタリング) ~ (所属は10pt、1文字分空けて肩書き、1文

字分空け)(「名前」は12pt、7文字分に収めて右寄せ)

6 項番号は、次のとおりとする。

ローマ数字で順に、「Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ・・・」を太文字とする。

7 項番号の順位付けは、次のとおり。

順位付けは、全角で「Ⅰ→1→(1)→ア→(ア)→・」を基本とする。

内容の表現を変える場合には、その限りではない。

下位の項番号は、1文字分を落とさず、アラビア数字「1 2 3・・・」

とする。文頭は、1行の文字数を確保するために、1文字ずつ落とさ

ない。

本文中の段落についても、1行の文字数22文字を確保するため、

項番号ごとに段落を1文字ずつ落とさずにそろえること。

8 文献等からの引用等の扱い

本文中で図書や論文の引用又は参考にした部分がある場合に

は、該当の文末の右上に「○○○1)」のように6ptの大きさの片括

弧番号を挿入するか、文頭に著者名を明記した記述をすること。

最後に【引用・参考文献】の項立てをして、通し番号を付記した引

用・参考文献等を記載すること。

Ⅲ 図表について

1 図表の挿入

図表を挿入する場合は、論文全体の25%程度とし、段組を左右に

またがっても構わない。

2 図表の番号

挿入した図表には、通し番号を付けること。さらに、本文中の挿入

箇所に図表番号をつけ明示すること。

(1)図の場合

図の下部段に【図1 ○○○の○○】または【fig.1 ○○○】と示し

センタリングする。画像についても同様とする。

(2)表の場合

表の上部段に【表1 ○○○の○○】又は【table.1 ○○○】と示し

センタリングする。

Ⅳ 【引用・参考文献】について

本文中で図書や論文の参考にした部分があれば、最後に【引用参

考文献】の項立てをして、通し番号順又は五十音順に記載すること。

研究紀要『北の教師道』投稿要領(2018年3月31日改正)

(注) 送付は、堀川厚志研究紀要編集長あてにお願いします。

アドレスは、[email protected] です。

研究紀要の様式をword形式でWebページに掲載します。

不明な点は、上記アドレスに問い合わせください。

北海道師範塾では毎年研究紀要を発刊しています。この研究紀要

は、他の研究機関のものとは違い、会員である教師の皆さんの日常の

教育実践の結果をまとめた実践報告的なものが中心となっています。

会員の皆さんが研究紀要への投稿を積み重ねていくことは、自分の

教育実践力の向上につながるだけではなく、実践記録集として貴重な

財産となるでしょう。こうしたことから、最近では、教師としての経験の

浅い会員からの投稿も多くなっています。

現在、来年の3月の発刊に向けて原稿を募集していますので、たくさ

んの会員からの投稿を期待しています。

研究紀要の原稿を募集します 次号第7号は来年1月末締め切り

Page 6: 第2号 北海道師範塾ニュースレターkyoshinomichi.jp/newsletter/newsletter_2.pdf第2号 発行日 平成30(2018)年10月31日 北海道師範塾ニュースレター

【編集後記】

〇手作りの「夏季講座」、会員の皆様

のご協力に感謝申し上げます。〇第8

期の教師養成講座も10月27日から受

講生21名で始まりました。〇明年1月

開催の冬季講座の最終案内は、11月

下旬に皆様の手元に届きます。〇強い

揺れはいつまで。余震は依然収まりま

せん。 (ニュースレター編集担当 太田 眞)

北海道師範塾ニュースレター

10:15~11:45 プ レ 講 座

(参加自由)

シンポジウム

「カリキュラム・マネジメントの課題」

教育課程の編成・実施および評価して改善して

いく「カリキュラム・マネジメント」の確立が求められ

ている。提言をもとにシンポジウムを行う。

12:30~13:00 受 付

13:00~13:10 開 講 式 会長挨拶

13:10~14:25 第 1 講 話

「教育の今日的課題を考える~どんな時にいじ

めは深刻化するのか~」(仮題)

北海道大学教育学研究院准教授

加藤 弘通 氏

大規模調査に基づき、教師や親、過去の被害・

加害経験という視点から、どのような場合にいじめ

が深刻化するのかの最新知見をお話いただく。

14:35~16:15

(模擬授業 40分)

(講話 60分)

第 2 講 話

「新学習指導要領を考える~道徳教育の目指

す方向~」(仮題)

札幌市立北野台中学校教諭 磯部 一雄 氏

来年度から中学校も「特別の教科 道徳」(道

徳科)として全面実施される。日本道徳教育学

会会員の磯部先生を講師に、中学生を想定した

模擬授業と教科としての授業内容や指導・評価の

ポイントなどについての講話をいただく。

16:25~17:45 グループワーク 「道徳教育の実践に向けて」

18:20~20:20 教育交流会

9:00~ 9:20 実践発表① 〈小学校教育〉

網走市立潮見小学校 上野 百香 教諭

9:20~ 9:40 実践発表② 〈中学校教育〉

洞爺湖町立虻田中学校 吉岡千紗都 教諭

9:40~10:00 実践発表③ 〈特別支援教育〉

北海道小平高等養護学校 平野 好美 教諭

10:10~11:00 意 見 交 流 実践発表①、②、③ごとに分かれて意見交流

11:20~12:05 指 導 助 言 実践発表に関する指導助言

12:10~12:20 閉 講 式 会長挨拶

11:05~11:20 交流内容発表 実践発表に関する交流内容の発表

1日目(1月5日・土曜日)

北海道師範塾第17回目の定期講座を次の予定で開催します。

平成30年度から新しい学習指導要領が小学校において先行実施となり、3月には

高校の学習指導要領も告示されました。今回も講座テーマを「新学習指導要領を考

える」とし、さまざまな角度から研究していきます。

〇期 日 平成31年1月5日(土)・6日(日)

〇会 場 ホテルライフォート札幌(中央区南10条西1丁目)

〇参 加 費 会員 3,000円 一般 4,000円 学生 2,000円

〇教育交流会 交流会参加費 4,000円

発行者 北海道師範塾会長 吉田 洋一 (北海道社会福祉事業団理事長)

事務局 北海道師範塾事務局長 藤根 収 (星槎道都大学教授) mailto:[email protected]

会費納入のお願い

北海道師範塾は会員相互の勉強会の場と

して活動しているものでありますので、会員の

皆さんには、この会の活動を維持するため

に、お手数ですが毎年5月末日までに年会費

3千円を振り込まれるようお願いします。

〈振込先〉

北海道銀行本店営業部 店番号 101

普通口座 3032781

口座名 北海道師範塾(ホッカイドウシハンジュク)

実践発表者の募集

北海道師範塾の夏季・冬季講座では、会員

による実践発表をもとに学び合う時間を用意

し、毎回、講座の二日目に3名の方に発表をお

願いしています。

次年度の夏季講座(8月9・10日開催予定)

においても、これまで同様、3名の方による実践

発表を頂きたいと考えています。

新人、ベテラン、校種、教科を問いませんの

で実践発表に応募下さるようお願いします。

1月の冬季講座では夏季講座と同様、開講

式の前に自由参加のプレ講座を開催します。

前回の反省から、プレ講座ではシンポジウム

のテーマを一つにしぼり、提言に基づいて発表

したり議論したりしようと考えています。

プレ講座に参加を予定されている方は、「カリ

キュラム・マネジメントの課題」として、自校にお

ける取り組みや課題等をまとめておいてくださ

い。

お知らせとお願い

平成30年度冬季講座(1次案内)

プレ講座参加に係るお願い

2日目(1月6日・日曜日)