第25回日本臨床細胞学会...
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第25回日本臨床細胞学会 関東連合会学術集会
スライドカンファレンス
呼吸器
自治医科大学附属さいたま医療センター
河野 哲也(CT)
症 例
患 者:70歳代,男性.
既往歴:早期胃癌(4年前にESD施行).
膀胱癌(6ヶ月前にTUR-Bt施行).
経過観察中の胸部XPにて両肺野異常陰影を
認めた.気管支鏡検査では,両側気管支とも
壁外からの圧迫する所見を認めた.
材 料:左気管支キュレット擦過標本.
バーチャルスライド 投票結果(48名)
転移性尿路上皮癌 31名 64.6%
紡錘細胞癌 10名 20.8%
腺癌 5名 10.4%
転移性腺癌 2名 4.2%
有尾状細胞からなる乳頭状構造 多層化を示す重積集団 最外層に多辺形細胞をみる
比較的均一な細胞形態 細胞質内空胞をみる
核縁は薄く,淡明な核クロマチン 核の切れ込みと小型核小体 細胞質は淡く,不均質
細胞像のまとめ
• 大型の乳頭状集団や結合性の低下を示す多くの腫瘍細胞が採取された.
• 単一性で細胞異型の弱い形態.
• 核縁は薄く,淡明な核クロマチンを呈する.
• 核の切れ込みや小型核小体がみられた.
• 細胞質は淡く,不均質である.
• 明瞭な細胞質内空胞が認められた.
細胞学的判定
Class Ⅴ
尿路上皮癌の転移
TBLB検体
膀胱腫瘍
TBLB検体
TBLB検体
膀胱腫瘍と同様な形態を示し,尿路上皮癌の転移と診断された.
【腫瘍部の免疫組織化学染色結果】
CK7(+),CK20(+/-),TTF-1(-)
胸部レントゲン PET-CT
摘出された肺病変 左S6区域切除 右下葉切除
病変の比較(術材) 膀胱腫瘍:TUR-Bt UC G3(>G2),pT1,ly0,v0
郭清したリンパ節に転移はなく,両側病変ともに 尿路上皮癌の転移として矛盾しない組織像であった.
左肺病変 右肺病変
組織像と細胞像の比較
多層化配列
細胞質内空胞
他病変との比較
本 例
本 例
細胞質内空胞と粘液
本 例
肺腺癌
粘液産生充実型
細胞質内空胞:PAS(-)
粘液:PAS(+)
細胞配列
本 例
肺腺癌
肺胞上皮置換型
多層化配列や乳頭状構造
基本はシート状配列
細胞形態
本 例
肺腺癌
乳頭型
有尾状や多辺形
低円柱状から類円形
核の位置
本 例
転移性大腸癌
全層に分布(乳頭状)
集団辺縁に揃う(管状)
核異型
本 例
紡錐細胞癌
異型は弱く,比較的均一
異型は強く,大小不同をみる
尿路上皮癌との比較
本 例:キュレット擦過
腎盂癌の腫瘍圧挫標本
(他症例)
核縁は薄く,淡明な核クロマチンを呈する.核の切れ込みと小型核小体をみる.細胞質は不均質で淡い.
まとめ
• 気管支擦過標本にて観察できた,膀胱癌肺転移症例の細胞像を提示した.
• 核縁は薄く,核の切れ込みを認め,核クロマチンは淡明であった.
• 細胞質は不均質で淡く,細胞質内空胞が認められた.
• 出現する異型細胞集団から組織構築を推測し,上記細胞所見を観察することにより,尿路上皮癌の推定は可能と考える.