第2章 各訪問先での研修実施記録 - erca.go.jpは11,049 ドルで、asean...

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11 第2章 各訪問先での研修実施記録 1.結団ミーティングとペナンの歴史学習 実施日時 8 月 21 日(日) 9:00~16:00 実施場所 宿泊先会議室 応対者 研修随行員 実施内容 結団ミーティングとして、はじめに、研修生が自己紹介並びに各自のテーマ、課題 について述べ、その後、随行員が自己紹介並びに各自の専門などについて述べた。 続いて、全体スケジュールの説明、研修中の作業についての確認を行い、グループ 作業、研修中の発表準備、研修後の報告書作成などについての説明を行った。 質疑応答、参加者同士の話し合いの後、随行専門家の中村玲子ラムサールセンター 事務局長より、マレーシアにおける湿地保全活動について、話と映像資料にて説明を 受けた。 その後、ジョージタウンにあるペナン歴史博物館を訪問し、東西の民族文化が融合 したペナンの歴史を学習した。 2.在ペナン日本国総領事館訪問 記録担当 1班 実施日時 8 月 22 日(月) 10:00~12:30 応対者 糸井清 在ペナン日本国総領事 谷口裕子 在ペナン日本国総領事館主席領事 実施内容 ●糸井総領事ご挨拶 総領事より日本とマレーシアの関係についてのお話を頂き、研修団側で一人ずつ自 己紹介を行った。 ●谷口主席領事による講義 ・領事館について マレーシアに駐在している日本国大使館はクアラルンプール、日本国総領事館はペ ナン、領事事務所 はコタキナバルに位置している。なかでも総領事館の役割は、領事業務、査証業務、

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第2章 各訪問先での研修実施記録

1.結団ミーティングとペナンの歴史学習

実施日時 8 月 21 日(日) 9:00~16:00

実施場所 宿泊先会議室

応対者 研修随行員

実施内容

結団ミーティングとして、はじめに、研修生が自己紹介並びに各自のテーマ、課題

について述べ、その後、随行員が自己紹介並びに各自の専門などについて述べた。

続いて、全体スケジュールの説明、研修中の作業についての確認を行い、グループ

作業、研修中の発表準備、研修後の報告書作成などについての説明を行った。

質疑応答、参加者同士の話し合いの後、随行専門家の中村玲子ラムサールセンター

事務局長より、マレーシアにおける湿地保全活動について、話と映像資料にて説明を

受けた。

その後、ジョージタウンにあるペナン歴史博物館を訪問し、東西の民族文化が融合

したペナンの歴史を学習した。

2.在ペナン日本国総領事館訪問

記録担当 1班

実施日時 8 月 22 日(月) 10:00~12:30

応対者 糸井清 在ペナン日本国総領事

谷口裕子 在ペナン日本国総領事館主席領事

実施内容

●糸井総領事ご挨拶

総領事より日本とマレーシアの関係についてのお話を頂き、研修団側で一人ずつ自

己紹介を行った。

●谷口主席領事による講義

・領事館について

マレーシアに駐在している日本国大使館はクアラルンプール、日本国総領事館はペ

ナン、領事事務所

はコタキナバルに位置している。なかでも総領事館の役割は、領事業務、査証業務、

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広報文化活動、マレーシアの政治や経済に関わる情報収集の4つである。

・日本とマレーシアの関係

マレーシアとの外交を樹立したのは 1957 年である。東方政策が 1982 年からマレー

シア政府の経費負担で進められ、日本や韓国への研修や留学によって更なる発展を目

指してきた。2012 年からは東方政策 2.0 が進められている。また、親日・知日層が多

いマレーシアが製造業の主要拠点や資源供給国となっていることから、日本企業も多

く進出している。

日本からマレーシアを訪問する人は 2015 年で 48 万人を超えており、査証取得は世

界 2 位となっている。マレーシアから日本を訪問する人も 2012 年から 2015 年の間で

倍増しており、この 2 国間の交流はとても盛んになっているといえる。しかし、日本

ではムスリムへの対応や英語での対応が遅れていることが海外から来る人々を迎える

上で課題となっており、マレーシアに学ぶ点が多くある。ロングステイ希望国を長い

間維持していることの理由には、英語が通じるということが挙げられる。対照的にマ

レーシアの学生が英語圏の国へ留学することも多くなっている。

・マレーシアの政治と経済

マレーシアの政党は、UMNO(統一マレー国民組織)をはじめとする与党が4つ、

野党が5つである。野党連合のなかには、PAS(汎マレーシア・イスラム党 )というイス

ラムの教えに基づく理念を持つ政党もあり、各民族がそれぞれに政党を持っている。

野党が不安定であることから、6 割を占める野党が強権的な政治を行ってきた。マレー

シアの政府系投資ファンド「ワン・マレーシア・デベロップメント( 1MDB)」の汚職

への関与疑惑により、ナジブ大統領の退陣が求められている。

マレーシア経済はゆるやかな成長を見せている。2014 年の統計では 1 人あたりの GDP

は 11,049 ドルで、ASEAN のなかで第3位の中進国である。失業率が低くほぼ完全雇

用であるが、逆に労働者の確保に苦労しており、近隣諸国からの不法労働者が増えて

いることが現状である。最近のマレーシアの若者は 3D(Dirty, Difficult, Dangerous)

を嫌うと言われており、そういった仕事は外国人労働者に頼っていることが多い。サ

ービス業が主要産業であるが、最近では財政赤字やリンギット安が問題となっている。

これらの背景には、原油価格が下落していることや中国経済が低迷していることがあ

る。そのため、石油依存からの脱却がこれからの経済を安定化させる上でのキーポイ

ントとなる。投資先としてのマレーシアの魅力は、親日的な国民が多いこと、英語が

通じること、インフラが整っていること、災害が少ないこと、治安が良いことなどが

挙げられ、その魅力は多岐に渡る。

・マレーシア北部6州について

【ペナン州】

ペナン州は製造業やサービス業がさかんで、 44%は電子機器や電機などの製造業が

占め、医療観光すすんでいることもあり、49.5%はサービス業が占めている。サービ

ス業を高付加価値化していくことが今後の課題である。失業率はマレーシアのなかで

も特に低く、2013 年には 1.7%というデータも出ている。低い失業率も関係している

のかもしれないが、貧困の状態にある人はほとんどいない。ペナン州の産業における

課題は、製造業とサービス業の 2 つの産業に偏りすぎていることであり、これらを多

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様化させていくことが求められている。

また、ペナン州では渋滞の解消を目的として「ペナン交通マスタープラン」という

計画が進められている。総額 270 億リンギットのこの計画では、国や州では賄いきれ

ない財源を企業から確保するため、人工島造成計画も進んでいる。もし人工島が造成

されたら、産業やレクリエーションのために企業に開発権利を与えるという仕組みで

ある。

日系企業は 1970 年代から電子・電気産業を中心に約 160 社がペナン州へ進出してい

る。それらの企業は CSR にも力を入れている。日本の経済協力は、JICA 草の根の無

収水削減技術研修・能力向上プロジェクト、太陽光発電所整備事業、理数科教育強化

研修、障碍者の方のトレーニングの長期ボランティア派遣など様々な面でのサポート

が行われている。神奈川県川崎市との協力により、川崎モデルという低炭素やバイオ

マスについての技術的な交流も行われている。

ペナン島のジョージタウンには、ペナン華僑抗戦記念碑がある。これは第二次世界

大戦のとき、日本軍が 1937 年以降 4 年半にわたって中国への侵略戦争も続けていた頃、

中国を祖国としている華僑の人々が祖国の戦いを支援するために作った、「南僑機工

隊」の人々を慰霊するための記念碑である。日本軍に占領されていた中国の港を避け、

陸路で物資の輸送をするため、3,200 人以上の華僑の人たちが機工としてシンガポール

とペナン島から中国へ向かった。機工とはトラックの運転手と整備士であるが、曲が

りくねった悪路をすすむ機工隊は日本軍の空爆に合い、数百人が爆死している。

この後、残りの北部 5 州についての説明があった。

3.マレーシア理科大学 (USM)RCE ペナン訪問

記録担当 2班

実施日時 8 月 23 日(火) 9:00~11:00

応対者 RCE ペナン

講演者 Dr. Mohammad Zohir Ahmad, Acting Coordinator,RCE Penang

司会者 Dr. Nurul Salmi Abdul Latip, Lecturer

Dr. Asyirah Abdul Rahim, Senior Lecturer

Dr. Nooraida Yakob, Senior Lecturer

Ms. Wan Sharipahmira Binti Moho Zain, Reserch Assistant

Ms. Nur Mohammad Ian Abel Rahim, Asst Curator

Ms. Kamsiah Kamarudin, Admin Assistant

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実施内容

●RCE ペナンの概要と ESD について

RCE ペナンは、共同での研究や社会的学習の取り組みについて、教育のすべての側

面に ESD を導入し、学習に関連するすべてのステークホルダーをサポートしている。

ペナンを含め RCE は当初世界で 7 カ所だったが、現在は 146 カ所にその事務所を置い

ている。RCE のユニットは、RSEN と Sejahtera Club, RCE sejahtera Youth の 3 つ

に分かれ活動している。その共通のテーマは 4Sigs と呼ばれ、その具体的な内容は

Climate change Education; Local Knowledge &Ecosystem; Healthy/Sustainable

Lifestyle; water である。

●RSEN(REGIONAL SEJAHTERA ESD NETWORK)

持続可能な開発のための地域 Sejahtera 教育ネットワーク (RSEN) は、ESD の主

要テーマ別エリアの開発など共同事業に従事しているペナンのローカルおよび地域利

害関係者の動的なネットワークのこと。RSEN は、2014 年 5 月に始まり、現在 40 以

上 (教育機関、地方政府機関と非政府組織 ) と提携して行っている。

※Sejahtera とはマレーシア語で通常「幸福」と訳されるが、平和で調和した様を表

す幅広い意味を持つ言葉である。

RSEN は、以下の 5 つの行動機会を与えている。volunteering opportunity , Joint

Projects, ESD collaboration, Kelab SEJAHTERA, CAPACITY BUILDING である。

また、3 つの core elements と 4 つのテーマを元に活動を続けている。

●Sejahtera Club について

当初は 7 人のメンバーから始まったが、今年 12 名への拡大を目指している。現在の

目標としては、2019 年に Green Flags の称号を獲得することである。

●RCE Sejanhtera Youth

国際的にもローカルにもネットワークをつくりあげることに力を入れ、若者に対し

毎年 Youth Eco Summit を開く。8 月にはオンラインセミナーを開催し、他の ESD と

の国際的な意見交換を通じて、その使命を改めて確認した。

●Youth Eco Summit

オーストラリアのシドニーで毎年開かれる会議で、マレーシアとオーストラリアの

学生・教員のネットワークを築く場として活用されている。

・地域拠点での対話、戦略的思考、意見交換、持続可能性のための機会を設置

・パートナーシップや共同のプロジェクト、イニシアチブを通して ESD への革新的

な知識や手法、プロセスの生成

•教育者の能力の向上を図り、ESD 教育方法論と資源の開発を目指す

•実務家、政策や意思決定者に ESD サポートとアドバイスを提供

・地域レベルでの持続可能性の問題の意識を高めると同時に ESD の長期的な目標を

促進

●持続可能な開発のための教育(ESD)についての概要

ESD は Education for Sustainable Development の略で「持続可能な開発のための

教育」と訳されている。世界には環境、貧困、人権、平和、開発といった様々な問題

があるのが現状である。ESD とは、これらの現代社会の課題を自らの問題として捉え、

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身近なところから取り組むことにより、それらの課題の解決につながる新たな価値観

や行動を生み出すこと、そしてそれによって持続可能な社会を創造していくことを目

指す学習や活動のこと。つまり、ESD は持続可能な社会づくりの担い手を育む教育。

4.国際・国内NGOとの会合

記録担当 2班

実施日時 8 月 23 日(火) 14:30~16:30

応対者 WWF マレーシア Ms. Johleen Koh, Manager, Eco-Institute

ウォーター・ウォッチ・ペナン( WWP)Prof, Dr. Chan Ngai Weng

実施内容

●WWF の概要

1972 年 1 月 13 日に設立。現在ケダ州からサバ州にわたり、約 200 人の職員が働い

ている。近年、野生生物と重要な自然生息地の科学的な調査を重点的に行っている。

そして、保全地域の管理まで拡大して行っている。

WWF マレーシアは 40 年間にわたり、人間と自然の調和を促進するため、マレーシ

アの環境保護・自然保護のため 90 以上のプロジェクトを実施してきた。

初期は、絶滅危惧種の保護野生生物の保護に注目してきた。

今日は、海洋同様、森林保護にも活動範囲を広げた。現在、高原・森林、また川や

海保護等多岐に渡る活動をしている。

また、科学的なフィールド調査、公共への広報活動、産業・経済の、環境教育同様

政治的アドボカシーも引き受けている。

現在、70,000 以上のサポーターが Facebook 上で WWF の活動に興味を抱いている。

また、約 52,000 人の個人サポーターたちが極めて重要なプロジェクトに資金提供して

いる。

・ECO-SCHOOL

学生を対象とした取り組みである。現在は 120 校以上が対象となっている。

・ECO-INSTITUTE

現在教員として働いている人と将来的に教員として働く予定のある人を対象とした

取り組みである。約 40,000 人の教員予定者が 27 個の学会に参加している。

・マレーシアの森林の現状

インドネシア、ブルネイ、マレーシアの三国にまたがる赤道直下の島であるマレー

シアボルネオ島は、地球上の生物種のおよそ 5%が生息していると言われる。

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そこには、アジアゾウやオランウータン、スマトラサイ、ウンピョウといった絶滅

危惧種をはじめ、哺乳類だけでも 222 種を超え、植物に至っては 15,000 種にものぼる。

Sustainable Palm oil Program「持続可能なパーム油」の生産と利用

WWF:大規模な NGO になった理由 1、ロゴマークのブランド力 2、過去の圧胴

活動経歴による評価が高いこと

重点活動:漁業、パームオイル、森林。活動内容は、政策・計画への政策提言 (advocacy)

海洋プログラム:マレーシア最大の海洋公園 マレー半島とサバ・サラワク州トゥン・

ムスタファ国立公園

2016 年 5 月 30 日、設立。ボルネオ島北東部のサバ州沿岸、約 1 万平方キロの海域

で、サンゴ礁やマングローブ、海草藻場が広がる、豊かな漁場がある。WWF マレーシ

アは 13 年間にわたり、政府当局や地域社会と協力し、国立公園の設立に尽力した。今

回の実現は、東南アジアの貴重な海洋生態系を守ると共に、貴重な自然資源の保護と、

地域の持続可能な開発を促進する重要な一歩になると期待されている。

●ウォーター・ウォッチ・ペナン(WWP)の活動

・WWP の設立

社会経済・環境研究所(SERI)の援助で 1997 年に設立された非営利組織である。

環境保護の持続可能性・社会の公平性・経済的生産性・文化の活性化・住民の参加を

ビジョンとして設定し、水資源の賢明な利用を普及させるために設立された。現在は

Dr. Chan Ngai Weng の川の浄化に対するパッションのもと運営されている。

・目的

組織の目的は研究・啓発・保護・保全を促進し、国連のアジェンダ 21 に基づく持続

可能な水資源保護社会を実践することである。WWP は出版物の発行・講演・研究・他

組織との連携などを通して目的達成を目指す。

・世界の自然災害

・干ばつ

・土砂崩れ

・水資源の過剰消費(人口増加による水需要の増加)

・短時間降雨量の増加に伴う洪水の発生

・工業の発達による河川への汚染物質の流出

・ペナン州における水資源の現状

水道水の供給源の 20%はペナン州で賄っており、残りの 80%は他の州に依存してい

る。政府は水道水利用に対して補助金を支出しているが、結果的に水道水料金の低下

を招き、住民による水の過剰消費を助長してしまっている。

ペナン州の住民の多くは川に家庭ごみを投棄するが、これは 97%の水道水が川から

供給されているという事実を知らないからである。

・プロジェクト(一例)

「N-PARK CONDOMINIUM WATER SAVING PROJECT」

住民参加を促し協力することで、N-Park コンドミニアムの水需要を 10%減少させる。

「N-PARK CONDOMINIUM WATER SAVING CAMPAIGN 2009」

WWP が Drainage & Irrigation Department、N-Park Management Corporation、

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PBAPP Sdn Bhd と共催で行った節水キャンペーンで、マレーシア政府の援助も受けて

いる。

「SRI PELITA PRIMARY SCHOOL - TEACHING OUR YOUNG TO BE WATER-WISE」

WWP ボランティアが Sri Pelita 小学校を訪れ、水資源に関する授業を行った。

・課題

WWP は多くの学生ボランティアにより構成されているが、学生の大学卒業とともに

経験を積んだ人材が組織を去ってしまうため、継続的な活動・技術の引継ぎが困難で

ある。

5.ESD ワークショップに参加

記録担当 3 班

実施日時 8 月 24 日(水) 8:40~17:15

応対者 RCE Penang Staff

Dr. Mohammad Zohir Ahmad, Acting Coordinator,RCE Penang

Dr. Nurul Salmi Abdul Latip, Lecturer

Dr. Asyriah Abdul Rahim, Senior Lecture

Ds. Nooraida Yakob, Senior Lecture

CETREE&GT Professor

Dr. Hashimah Mohd Yunus

Ms. Wan Sharipahmira Binti Moho Zain, Research Assistant

Ms. Nur Mohammad Lan Abel Rahim, Assistant Curator

Ms. Kamsiah Kamarudin, Admin Assistant

Ms. Kamdiah, Admin Assistant

USM students: 17 名

Mr. Abdul Basit Amran, Ms. Afina Ab Hamid, Ms. Masjidah Abdullah Sani,

Mr. Mohamad Fazril Ahmad, Ms. Nurul Hanania Mohd Johari, Ms. Nur

Syakirah Zulkefli, Mr. Nazirul Naufal Dimshari, Ms. Nor Azreen Farahani

Maripin, Ms. Nur Amalina Mohad Fadzil, Ms. Nurul Aqilah Kamaruddin, Ms.

Nurul Athira Awang Mansor, Ms. Nurul Raudhah Aziz, Ms. Waheeda Annur

Sani, Ms. Siti Noor Aishah Fauzi, Mr. Syamsul Asyraf Ahmad Sukri, Ms.

Suhaida Sabdi, Ms. Zalikha Mahd Nazri

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実施内容

●ESD ワークショップ

マレーシア理科大学生(17 名程度)とグループに分かれて、RCE ペナンのコーディ

ネーターが与えるテーマについての話し合いを行った。

・アクティビティ1

Q1. Sustainability の定義とは?

Q2. なぜ Sustainability が重要か?

上記 2 つの問いに対しグループ内でディスカッションした後、各グループの代表者

が発表し内容を共有した。

・アクティビティ2

持続可能な開発と生活の質の向上のためには、3 つの P(Planet, People, Profit)を関

連付けて考えなければならない。それぞれを別々に解決しようとし、一つのカテゴリ

ーだけを見ても根本的な解決にはならないため、すべての側面を考慮し、多面的な観

点から考えることが重要である。

アクティビティでは People-Society (Conservation, Housing, Poverty, Customs,

Politics, Medical Care), Planet-Environment (Water, Air, Land-use, Waste,

Pollution, Fish), Profit-Economy (Food, Business and Industry, Local economy, Jobs,

Markets)の3つのカテゴリーの中の 6 つの単語からランダムに一つずつ選択し、 3 つ

の単語をそれぞれを組み合わせて文章を作成した。

・アクティビティ3

まず、各自のコミュニティーで直面する、環境、社会、経済における問題、またそ

れらが組み合わさって生まれる、差し迫った問題は何であるかを列挙した。

さらに、それぞれの問題に対しどのような知識と技術が必要になるかを考えることで、

そのコミュニティー内で持続可能な生活を送るために必要となる、多面的な見方がで

きることを学んだ。

・アクティビティ4

ESD を実施する団体で活動していると仮定し、自分が取り組みたいテーマとそのタ

ーゲットを決め、どのようなアプローチを取るべきかを考えた。

各グループで出たアイディア

・環境汚染の問題とその対策について学ぶ子ども向けアプリケーションの開発

・自動ごみ分別機械の導入

・子どもたちに人気なキャラクターを使用し、リサイクルを楽しんで学べる絵本、

漫画、動画の作成

・貧困削減のための教育支援と子どもたちの文化交流、ホームステイ体験

・自然との関わりが少ない日本の子どもたちを動物園へ連れていき、自然や動物と

触れ合う機会の提供

●CETREE&GE(Center for Education, Training & Research in Renewable Energy,

Energy Efficiency & Green Technology)事務所訪問

・組織概要

2000 年 10 月 2 日に活動開始し、2002 年 7 月 29 日に正式に始動した。役割として、

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次に挙げる活動を通して、RE(Renewable Energy)、EE(Energy Efficiency)、GT

(Green Technology)に対し意識を向けてもらう。

・教育関係者や専門家、生徒、企業陣などに対するワークショップや研修

・社会全体に対する意識向上キャンペーンプログラム

・RE、EE、GT に対し意識を向けてもらうためのマレーシア周辺でのモバイルユニ

ット展示会

・活動の目的と目標

政府のアジェンダ(2009 年 4 月のエネルギー環境技術水省の設立)、USM での RE、

EE、GT に対する教育、様々な水準、関係するセクターにおける有能な働き手を生み

出すことにおける人的資本の重要性をサポートする。

・ビジョン

エネルギーの安全性と持続可能な明日を確実にするために、RE、EE、GT を生活の

中に文化として取り入れていく

・ミッション

マレーシアの専門家、関係機関、学校や一般市民を対象にしたトレーニングと教育

を通して、RE、EE、GT の活動に関する知識の普及と意識の向上を目指す。

・協力団体

マレーシア国内の Green Tech(NGO)や AAIBE(政府機関)、USM(大学)をは

じめ、DANIDA(ドイツ・国際機関)や K.U.A.S(台湾・大学)など海外の団体とも

協力関係を結んでいる。

・主な活動

・学校における ESD の共同教育課程の導入

・ESD に関する本の出版

・ESD に関する国内コンテストの実施

・学内での GT の推進

・小学校の先生と生徒の EE に対する知識と意識の改革

・Mobile Exhibition Unit

CETREE が最も力を入れている活動。環境に優しいエネルギーを学ぶことができる

移動型体験展示バス。バス自体もガソリンやディーゼルを使わずパーム油を使用して

おり、燃費も良い。LED ライトと白熱灯の消費電力の違いを知る展示やラジオメータ

ーの仕組みを学ぶ展示、太陽光電池で動くミニカーなど、環境に配慮したエネルギー

を生み出す技術を実際に体験することができた。マレーシア全土で展示活動を 12 年間

続けている。

・今後の課題

ESD の活動を強化する上で重要となる政府からの信用をさらに得ていくこと、そし

て都会のみではなく地方でも活動を展開していくことが挙げられる。また、活動の効

果とその後も継続して実施されているかを測定するモニタリングを充実させることも

課題である。

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6.ジョージタウンで世界文化遺産保護活動について研修

記録担当 1班

実施日時 8 月 25 日(木) 9:30~16:15

応対者 Mr.Clement Liang, Penang Heritage Trust(PHT)理事

実施内容

ペナン州州都「ジョージタウン」(ユネスコ世界文化遺産)を訪問。Penang Heritage

Trust (以下 PHT)専門調査員の案内によるヘリテージ・ウォークに参加し、ジョージタ

ウンの世界遺産保全活動の説明、見学などを受けた。また、PHT の事務所を訪問、PHT

の概要と活動について講義を受け、質疑応答を行った。

●ジョージタウンの概要

18 世紀後半、当時ケダ州スルタンとイギリス東インド会社との条約により、インド

の植民地として譲渡された歴史的な街。イギリス植民地時代の建物と、様々な文化が

融合した独特の街並みが残っており、2008 年 7 月にマラッカとともにユネスコ世界文

化遺産に登録された。

●Penang Heritage Trust

1986 年に設立された NGO 団体。ペナン島に現存する文化遺産、経済的多様性の保

護と活性化のための活動を行っている。主な活動内容は、文化的多様性の振興、遺産

の保護、地域コミュニティの活性化、持続可能な観光の促進など。

●PHT 専門調査員の案内によるヘリテージ・ウォーク

主な見学先:州政府公舎→コーンウォリス要塞→今上天皇(当時皇太子)が植樹さ

れた木→シティホール→タウンホール→ロガン追悼碑→コンベント・ライト・ストリ

ート→聖母被昇天大聖堂→ペナン州立博物館→セント・ジョージ教会→観音寺→カピ

タン・クリン・モスク→アルメニアン通り→インド人街

●PHT 事務所で講義と質疑応答

<世界遺産登録>

世界遺産リストに登録されるためには、「顕著な普遍的価値」 (Outstanding

Universal Value, 通称 OUV)が有している必要があり、10 ある登録基準のいずれか1

つ以上に合致する必要がある。ジョージタウンの場合は (1)かつて香辛料、錫、ゴムの

生産地として歴史的多様文化性のある貿易の街であり、ヨーロッパ、ユダヤ、中華、

ムスリム、アラブ、インドなどの多民族が共存していた街であること。(2)宗教、慣行、

祭り、芸術、ダンス、音楽、食事など多くの文化・伝統が現存していて珍しい街であ

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ること。 (3)多様文化が折り合う建築物がユニークな景観を持ち、各文化の要素が入っ

ている建物に OUV を有していると認められた。

<建物>

ジョージタウンには、ショップハウスやタウンハウスと呼ばれる 2 階建の建物が

4,600 戸存在し、前者は 1 階がお店で 2 階が住居、後者は 1、2 階とも住居になってい

る。オランダや中国の住宅の知恵や合わさって作られ、漆喰性で住みやすく、光が届

きやすいように工夫されている。また、時代によって装飾が異なり、西洋風や中国風

の装飾が建物に混在する。昔は間口の大きさで税金の額が決められていたため、幅が

狭く、奥行きのある家の作りになっている。

昔は 5 万人いた人口も現在は 9,000 人まで減少した。かつては街の 20%が空き家だ

ったが、世界遺産に登録されたことで空き家の問題は解消された。しかし、世界遺産

に登録されたことで家の価格が上昇し、現在建物の多くは飲食店や商業施設であり、

住宅は比較的少ない。PHT の Liang さんは、「建物は人が住むことこそが重要。お店

ではなく人が住む家が増えてほしい。」と仰っていた。

<生きる遺産>

PHT は、次世代に伝統的な技を伝えることにも力を入れている。PHT は音楽と芸術

で人々の生活を豊かにするために、経済的刺激を与えて、ペナンをもっと活性化、人々

が住みやすい街にすることを目指している。若手芸術家を育て、伝統工芸を伝えるプ

ロジェクトや、オープンミュージアムとして町中で文化遺産を紹介し、街の人々にも

路上の展示会で芸術に触れてもらうイベントも催している。

<課題>

世界遺産登録によって、登録前は年間 100 万人だった観光客は年間 600 万人に増加

した。最近では、クルーズ船の観光客も増えている。一方で、交通渋滞という課題も

抱えている。

<PHT のその他の活動>

PHT はジョージタウンだけでなく、ペナン島全体が活動対象である。最近は特にペ

ナンの交通計画に力を入れており、街の景観が損なわれるという理由でモノレールの

建設に反対している。

参考資料

マレーシア政府観光局公式サイト http://www.tourismmalaysia.or.jp/index.html

Penang Heritage trust http://pht-jp.blogspot.my/

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7.スブラン・プライ市役所訪問

記録担当 2 班

実施日時 8 月 26 日(金) 9:00~10:30

応対者 Mr. Chew Eng Seng, Social Development Department, 他

実施内容

●スブラン・プライ市の概要

英語名はウェルズリー地区。マレーシア、マレー半島西岸、ペナン島の対岸にある

地域である。1826 年ペナン島とともに海峡をイギリスがケダ州のスルタンに割譲させ、

植民地とした。

2011 年には初の女性市議会会長 Datuk Maimunah Mohd Sarih が就任している。

●廃棄物の発生の将来予測とリサイクル目標

ペナン州において食品廃棄量が多く、2020 年には、229,786t/年(630t/日)の発生

量を推計している。今後、インフラ整備等に伴い、建設廃棄物の発生量の増加を予測

しており、2005 年から統計を取っている。2025 年には、1,328,871t/年の発生量を見

込んでいる。これらの廃棄物発生量増加に伴う廃棄物処理が課題の一つである

海洋掘削廃棄物(Marin Clay)は 2020 年までのリサイクル率の目標を掲げており、

食品廃棄物については、2020 年までに 100%のリサイクル率としている。

発生した廃棄物の処理の流れと廃棄物の埋立量・リサイクル量は、一部はリサイク

ル処理されているが、多くは埋め立て処分場に搬入、処分されている。

●川崎市との連携

2013 年環境省「アジアに低炭素社会実現のための JCM 大規模案件形成可能性調査

事業」の枠組みのもとで実施した「Waste to Energy 技術におけるペナン州の低炭素

都市形成技術」における調査・検討結果を受け、川崎市内企業とともに木質系廃棄物

を燃料としたバイオマス発電技術の事業化を目指している。

●「Waste to Energy」について

事業の概要は、分別回収システムから Waste to Energy 技術の活用、最終処分量の

減容化までの一貫した廃棄物管理モデルを構築により、CO2 排出量の削減と環境改善

を図るものである。

事業内容は、①人づくり、②制度づくり、③MRV 方法論づくり、④事業評価の 4 つ

に分類されている。事業実施体制として、スブラン・プライ市、ペナン州政府、

University of Malaysia, Penang Institute と、地球環境センター・川崎市・JFE エン

ジニアリング・ IGES の連携・共同による実証事業の実施を行っている。

参考文献:平成 25 年度アジアの低炭素社会実現のための JCM 大規模案件形成可能性

調査事業 「Waste to Energy 技術によるペナン低炭素都市形成支援事業」

報告書

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8.スリ・ムダ中高校訪問

記録担当 2 班

実施日時 8 月 26 日(金) 11:00~13:30

応対者 Tuan Hj Mohd Noor b. Yusof, Principal

Ms. Nok Hashimhah(teacher), Ms. Rosmiza(teacher), s.Marziah(teacher),

Ms. W wichna(municipal council of ceberang perai), Ms. Nur Amirah bt

mustaffa(student), Ms. Ryan iroina bt mono alhae(student), Ms. Syamin

Amirah bt azhar(student), Ms. Mashitah binti adnan(student),

Ms. Zahirah binti shuib(student)

実施内容

●概要

スリ・ムダ中高校はペナン州のスブラン・プライ市のエコスクールに登録している。

Green Activities 2016:①MK SRI MUDA AQUATIC PONDS, ② INOVATION ROOM,

③GREEN AND 5S CLASS ROOM, ④ZERO WEST AND COMPOST AREA, ⑤MOHT

NOOR HERBS GARDEN, ⑥ INNOVATION STUDIO

Recycle Project:①RECYCLING OIL, ②RECYCLING OF WASTE

●現地訪問

伝統的な演武や歌、踊りを披露していただいた。歌の場面では、本プログラムの参

加者も一緒に「RASA SAYANG」を歌った。校内にある活動現場を視察した際には、

不要になったタオルをセメントで固めプランターを作成する過程の実演が行われた。

その他に学生が花壇で栽培している野菜やおがくずを使って栽培しているキノコにつ

いて説明を受け、視察した。図工の材料としてアイスの棒などを使って学生が作成し

た作品が INNOVATION ROOM に展示されていた。

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9.タマン・パンダン環境資源センター訪問

記録担当 2 班

実施日時 8 月 26 日(金) 14:00~15:00

応対者 Ms. Loh Poh Chen(活動メンバーの一人)

実施内容

●活動内容

Ms. Loh Poh Chen を筆頭にタマン・パンダンの住民が主体となり家庭ゴミの処理を

実践している。活動内容としてはリサイクル・生ゴミの堆肥化・小規模での農作業を

行っている。まず各家庭から出たゴミのうち紙やプラスチックなどのリサイクル可能

な資源は収集ボックスに集め、無償で市に回収してもらっている。食品廃棄物などの

有機ゴミは別の収集ボックスに集め、堆肥化を行っている。その後完成した肥料を販

売(1kg あたり 3RM)し、売上金の 3 分の 1 を外部組織に寄付し、3 分の 2 が設備の

修理費や購入費に充てられる。

●活動経歴

2002 年 1 月 Resource Recovery 発足

2004 年 4 月 Recycle centre 発足

2004 年 Aerobic coposting 開始

2006 年 12 月 Brick method 開始

2008 年 11 月 Grass composting 開始

2016 年 3 月 Compost shed 設置

●現場訪問

タマン・パンダン環境資源センターは華人系が多く住む団地の一角にあり、応対し

ていただいた Loh Poh Chen さんも中華系マレーシア人である。センターの発足は

2002 年にまで遡り、団地の各家庭から出るゴミを再利用しようとし始めたのがきっか

けである。現在では主に、再利用可能なプラスチック・紙類のリサイクル促進、家庭

から出る食品廃棄物のコンポスト化を活動の軸としている。リサイクル製品はセンタ

ーを介して市に回収してもらっている。コンポスト作業では、生ゴミシュレッダーや

好気的分解を促すドラムなどを市から援助してもらうなどの、中規模の設備を導入し

効率的な処理を実践している。

しかし、リサイクル活動を行うにあたりいくつかの問題があり、その一つが住民の

参加率の低さである。団地全体の 357 世帯のうち 40%しかこの運動に参加しておらず、

そのために人手不足が深刻な問題になりつつある。

実際に Chen さんは主婦であるにもかかわらず、一日の大半をこのようなコンポスト

作業やリサイクル促進活動に費やしているという。また、コンポストからの悪臭やゴ

ミの含水率の高さも課題となるという。

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●活動実績

リサイクル実績

年 総量 (kg) 売上げ額 (RM) 寄付額 (RM) 設備維持費 (RM)

2002 27,486 5,441 2,815 2,596

2003 30,066 5,273 3,550 1,723

2004 26,587 5,271 3,220 2,051

2005 23,817 5,030 3,220 1,810

2006 27,48d6 6,839 4,300 2,539

2007 18,715 5,153 3,769 1,384

2008 16,913 3,953 3,636 317

2009 13,131 2,975 1,475 1,500

2010 10,031 2,338 1,375 963

2011 8,640 1,945 1,200 826

2012 7,436 1,766 923 843

2013 8,441 2,207 1,200 1,007

2014 8,387 2,132 700 1,432

2015 7,524 1,790 - 788

2016 8,005 2,000 - -

合計 242,666 54,083 31,383 22,700

この表から年を追うごとにリサイクル回収量が減少していることが読み取れる。

その背景として、住民が自らリサイクルをしてお金を得る方法を学んだことが考えられる。

●種類別ゴミ回収量(2012-2013)

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●コンポスト売り上げ推移

年 ゴミ総量 (kg) 肥料総量 (kg) 売上げ額 (RM)

2007 1,000 30 100

2008 1,000 150 300

2009 1,000 150 300

2010 1,191 404 542

2011 870 439 884

2012 1,976 1,628 3,180

2013 1,441 1,113 2,048

2014 1,476 692 1,039

2015 1,433 1,098 2,088

2016 335 508 984

合計 11,723 6,140 12,065

※このデータは 2016 年 8 月現在のものである。

※食品廃棄物は肥料化することで体積が約 5 分の 1 になる。

10.プルマタン・ニボン村リサイクル・センター訪問

記録担当 2 班

実施日時 8 月 26 日(金) 15:30~16:45

応対者 Mr. Chew Eng Seng, Social Development Department

Mr. Annans Bin Mohd Kassim, Chairman

Mr. Abdul Rahmomn Saad, Volunteer

実施内容

●概要

マレー系の村の住民が主体となっている施設である。村で共同組合を立ち上げ、リ

サイクル製品などを製造し、それらを販売したお金を村の電気・水道代の補助として

利用し村人に還元している。共同組合には 10 人のメンバーが所属し、そのほとんどが

女性である。また、コンポストやそのコンポストで作成された肥料を用いた農業を実

践し、地域での持続可能な生活を目指している。

●現地訪問

不要になった製品からブレスレットやネックレスなどを作製し、5~10RM で販売し

ている。ここでのリサイクル製品の作製には、フィリピンでの作製法を取り入れてい

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る。売上金は、環境活動や住民の生活への還元に利用される。

野菜栽培には、黒の防護ネットで野菜の苗を覆うことで虫や鳥を妨げて、有機農法

を心掛けている。

Mr. Abdul Rahmomn Saad が主導となり、食品廃棄物からバイオガスを得る作業を

行っている。食品廃棄物をインドの NGO から贈られたタンクに入れ、水を張って嫌気

的な環境下で微生物分解を行うことでメタンガスを発生させ、それを調理時に使用し

ている。

11.クアラ・スプタン・マタン湿地林地区の炭焼き工場訪問

記録担当 3 班

実施日時 8 月 27 日(土) 10:15~11:45

応対者 Mr. Goh Seng Kiong, Nature Guide of Port Weld Explorer

実施内容

樹齢 30 年のマングローブの木を使用する。1.5 メートルの高さにカットし、木材の

皮は窯の中のスペースをできるだけ確保するために取り去る。使用する窯はレンガ、

黄色い泥、細かい砂の 3 つで造られている。窯はドーム型で高さは 6.6 メートル、内

部の直径 6.7 メートルである。木は窯の中で垂直に並べ、大きな炎で 8 日間、炎の大

きさを抑えて 8 日間、さらに炎を小さくして 4 日間、その後火を消して 10 日間、合計

1 ヶ月かけて木材を窯内で炭化する。85℃→170℃→360℃の温度変化を伴う。

働く人は煙の色やにおいで炭のでき具合を確認する。はじめに 60 トンあった窯の中

の木は炭化のプロセスで水分が蒸発し 13 トンになる。窯から出る煙を蒸留して木酢酸

が精製され、木酢酸は蚊除けや皮膚病の薬として使用される。 80%は日本に輸出され、

20%はマレーシア国内で使用される。炭は 60%が日本に輸出されている。

炭は 1 パック 4kg で 6 リンギット、木酢酸は 1 本 1 リットルで 10 リンギットであ

る。収益の 3 分の 2 は木酢酸、3 分の 1 は炭である。

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12.マタン・マングローブ・エコ教育センター訪問(1日目)

記録担当 3 班

実施日時 8 月 27 日(土) 12:00~21:00

応対者 Ms. Ginny Choong, Assistant Director,Perak State Forest Department

実施内容

●ペラ州森林局担当者による湿地林の概要説明

マレーシアの 55.3%が森林地域である。

マレーシアではサバ州とサラワク州が最もマングローブ面積が大きく、マレー半島

ではペラ州が一番大きい。マタンマングローブの面積は 40,288ha である。

マングローブは、熱帯、亜熱帯、沿岸地域、塩性湿地、沼地に生息する。マタンマ

ングローブ林は保護地域、生産地域、非生産地域、制限生産地域に分かれる。

生産地域は内陸にあり、生息域の 74.76%を占める。保護地域は沿岸地域に広がる。

マングローブの伐採循環は、植林、補植、第一間伐、第二間伐、最終伐採である。

第一間伐では樹齢 15 年の木、第二間伐では樹齢 20 年の木のエリアで、中心の木から

それぞれ1 .2 メートル、1.8 メートルの周りの木を伐採し、材木に使用される。最終で

伐採するのは樹齢 30 年の木であり、炭の生産に使用される。

炭の生産の目的は、州政府の歳入、エコツーリズムのための観光地化、地元住民の

雇用機会の増加である。

材木の生産の目的は、州政府の歳入、地元住民の雇用機会の増加である。

政府の間伐による歳入は毎年 44 万~66 万リンギット、最終伐採による歳入は毎年 72

万~82 万リンギットである。

マタン・マングローブ・エコ教育センターの入場料は、地元住民が 5 リンギット、

外国からの観光客は 15 リンギットである。地元住民に対する料金はアンケートをもと

に決定されたが、多くの住民がこれを高額であると感じている。一方で海外からの観

光客は安いと感じており、差がある。

●マングローブ・クルーズ

・湿地林観察

・鷲の餌付け観察

・鯉、カブトガニ、フグの養殖場の見学

・赤貝の養殖場の見学

・漁村見学

●漁業を営む住民からの聞き取り調査体験

応対者:Mr. WAHAB(64 歳)、Mr. SHUKOR(47 歳)

質疑応答内容

Q. どの様な種類の魚を捕っていますか?

A. マングローブフィッシュ、淡水エビ、シーバス、その他さまざまな種類の魚が捕れ

ます。ケトゥトゥフィッシュという高級魚が捕れることもありますが、暗いところ

を好む魚のため近年はあまり捕れません。

Q. 1 日の生活は、どの様なものでしょうか?

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A. 川の水位によって捕れる魚の種類が変わるため、毎日決まった時間に漁に出るわけ

ではありません。水位が高い時には海からの魚がたくさんやってくるため、一日に

何度も漁に出ることもあります。水位が低い時にはエビが多く収穫できます。

Q. 村には何人の住民がいますか?

A. 約 300 人です。その内、約 100 人が漁業を営んでいます。また、退職後都会から村

に戻り漁師になる人もいて、一年に約 20 人が新しく漁師になります。漁師ではな

い人はマングローブやヤシの木に関係する仕事に就いています。

Q. 漁獲制限などはあるのでしょうか?

A. 漁獲量の制限はありませんが、水産省に登録し、その省が定めるルールには従わな

いといけません。また、ボートの大きさや漁獲可能地域が指定されています。

Q. 漁業だけで生計を立てることはできるのでしょうか?

A. 昔よりも収穫量が減っているため、漁業だけでは厳しいのが現実です。蛍のツアー

ガイドなどで収入を補っています。収穫量が減少している理由としては、漁師の数

が増えたことと、川の汚染が進んだことが挙げられます。

Q. 観光客に対してどのように感じていますか?

A. 観光客は大いに歓迎します。自分たちの仕事に誇りを持っていて、それを紹介でき

ることは嬉しいことです。副業の蛍ツアーガイドでは平均して一日 40~50 リンギ

ットの収入があります。長期休暇のときは 2~3 倍に増えます。

Q. SHUKOR さんが所属している自然保護団体はどのようなことをしているのでしょ

うか?

A. 主に 3 つあります。村人の収入の向上、マングローブの保護、政府や NGO など様々

なステークホルダーとの連携です。

Q. 蛍ツアー以外の観光業はありますか?

A. はい。生徒の野外体験活動、ホームステイプログラム、伝統的な文化(踊りなど)

の紹介があります。

Q. 自らの仕事に対して、どの様に思われていますか?

A. 誇りを持っています。今回のように遠くから私たちを訪ねて来てくれたり、たくさ

んの人たちに会うことができて嬉しいです。

●ナイト・クルーズ

湿地林内で夜間のホタルの生態観察を行った。現地での観察において、数少ない種

の一つである、 “Pteroptyx tener”の生息が確認された。

米粒ほどの大きさで、雌は二本の筋で光り、雄は三本の筋で光る特性をもつ。

ナイトクルーズ時は、撮影は禁止されていた。このホタルは、コミュニケーション手

段として光を用いているため、フラッシュなどに敏感に反応し、本来の生態を観察で

きなくなるためである。

“Sonneratia caseolaris”という植物を好み、この植物の葉に群れを形成し、点滅を合

わせて光る習性がある。

集団で光るその姿は、まるでクリスマスツリーの光飾りの様であった。

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13.タイピン湖水公園周辺観察

記録担当 1 班

実施日時 8 月 28 日(日) 8:30~9:00

応対者 Ms.Nurul Salmi Abdul Latip (PhD)、School of Biological Sciences

Universiti Sains Malysia

実施内容

●訪問先概要

もともとスズを大量に産出していた地域で、放棄されたスズ鉱山をレクリエーショ

ン公園として花や木が植えられた。湖はスズを掘った跡地だという。スズは、この地

域から鉄道で Port Weld 港に運ばれ、ペナン島に集められ世界中に輸出されていた。

●実施内容

タイピン湖水公園周辺の自然を観察した。

14.マタン・マングローブ・エコ教育センター訪問 (2日目)

記録担当 1 班

実施日時 8 月 28 日(日) 9:30~12:00

応対者 Mr. Pak Abu Flora, Nature Guide, Perak State Forestry Department

実施内容

●訪問先概要

マレー半島北西部のペラ州沿岸に位置するマングローブ保護林である。海岸沿いに

南北 50 ㎞を超えるベルト状の地域で、幅は最も広い所では 13 ㎞、総面積は 40.151ha

である。マレーシアでは最大のマングローブ林である。保護されるようになったのは

1902 年で、1906 年には現在の地域が全て保護区の指定を受けた。

●実施内容

・ペラ州森林局ツーリストガイドによる説明 9:30〜10:00

ペラ州のマタン・マングローブ・エコ教育センターでは、マングローブの機能、重

要性、現在直面している問題点について話を聞いた。

・ペラ州森林局ガイドの案内によるマングローブ林観察 10:00〜12:00

ガイドツアーに参加して、実際にセンター内の湿地林を観察した。湿地林の生態や

問題点について考える機会となった。

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・マングローブ植林作業 12:00〜13:00

植林作業では、ビニールポットに泥を詰め、マングローブの種を植えた。6〜12 カ月

後、マングローブの植林地に植えられる。ペラ州森林局の方と協働して、メンバー各

人が在来種を一本~数本植林した。

<マングローブ>

マングローブは海と陸との接点に存在することから、独特の機能と生態系を有して

いる。通常の森林の機能に加え、魚介類や水棲哺乳類に住処や繁殖場所を提供してい

る。マングローブの重要性について、1)津波、高波から陸地を守る役割、2)野生動物

の住処、3)経済活動(漁業、林業、経済活動、エコツーリズム、教育)が挙げられた。

マングローブ林の直面している問題について、 1)公害、2)石油流出、3)不法伐採、

4)過度な都市開発、5)土地開発、が挙げられた。これらが原因で津波や高潮に対し

て波の影響を和らげてくれる機能や野生動物の生息地が消失しつつある。

マングローブの生態だが、センター内には4種類のマングローブ(Rhizophora、

Bruguiera、Sonneratia、Avicennia)が存在している。その中で Rhizophora は二種

類の系統(Mucponata,Apiculata)があり、Apiculata は加工して木炭に利用されてい

る。日本には、約 7 割が輸出されている。種子(細長い形状)は樹上から落下して地

面に突き刺さりそこから芽吹いていくことが分かった。波に乗って遠い地(スリラン

カ)で芽吹くこともあるらしい。マングローブの中には葉を食用として利用できるも

のもあり、コーヒーなどにも利用されていた。また、湿地林ではサル、リス、オオト

カゲ、マッドスキッパー、カニなどが観察でき、多様な生態系が存在していた。

参考資料

Management of the Matang Mangrove Forest の PDF

www.unepscs.org/Mangrove-Training/20-Matang-Management.pdf

15.マレーシア理科大学(USM)で前半の研修発表

実施日時 8 月 29 日(月) 14:30~17:00

参加者 糸井清 在ペナン日本国総領事

谷口裕子 在ペナン日本国総領事館主席領事

Professor Dato' Omar Osman, Vice-Chancellor, USM

Professor Dr. Azlan Amran, Dean, Graduate School of Business

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RCE Penang Staff

Dr.Munirah Ghazali, Coordinator,RCE Penang

Dr. Mohammad Zohir Ahmad, Acting Coordinator,RCE Penang

Dr. Asyriah Abdul Rahim, Senior Lecture

Ms. Wan Sharipahmira Moho Zain, Research Assistant

Ms. Nur Syazwana Hamzah, Admin Assistant

Ms. Kamsiah binti Kamaruddin

Dr. Aidahmad bin Dewa

実施内容

午前中は各自で発表準備作業。

午後、マレーシア理科大学( USM)にて、日本総領事とマレーシア理科大学副学長の

ご臨席を得て、英語による研修発表を実施した。

16.サラワク州森林局訪問

記録担当 3 班

実施日時 8 月 30 日(火) 14:30~16:30

応対者 Mr. Jack Liam, Deputy Director, Forest Department of Sarawak

Mr. Oscar Johin Ngayop, Assistant Director, Planted Forest Division

Mr. Whera Mazlan, Executive Forester, Planted Forest Division

実施内容

●サラワク州森林局の森林博物館( MUSIAM PERKAYUAN PUSAKA)の見学

サラワク州の森林の種類や森林保護、保護動植物、木材生産についての展示を見学

した。また、熱帯雨林地域に住む動植物についての展示や、サラワク州の森林でのか

つての生活の様子等を再現した展示を見学した。

●サラワク州森林局の概要

サラワク州森林局は資源計画環境省の下にあり、 1919 年に設立された。

ビジョン:熱帯雨林における管理と保全において卓越の域に達すること

ミッション:社会経済的、環境的な持続可能性の実現のために森林資源を管理し開

発していくこと。

森林管理政策の声明では 4 つのポイントを挙げている。①現在および未来の住人の

ために森林を永久的に残す、②PFE(Permanent Forest Estates)の保全管理、③持

続可能な木材の供給、④地元のニーズを優先しそれと共存する形での木材輸出の助長。

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●サラワク州熱帯雨林の概要

サラワク州は東マレーシアのボルネオ島にあり、 1240 万ヘクタールの面積を持つ。

その面積の大半を占める 84%が森林地域であり、そのうち天然の森林は 70%、一度伐

採されたが人間の手により再び森林となった地域は 14%である。サラワク州の熱帯雨

林は全世界の熱帯雨林の 0.15%、ボルネオ島の熱帯雨林の 16%を占める。森林管理は

サラワク州森林局が設立された 1919 年に開始された。

●サラワク州の森林区分

サラワク州の森林区分を以下に示す。フタバガキ混在する丘陵地帯の森林; 77.2%、

泥炭湿地林;6.1%、マングローブ林;0.7%、その他;16%

また、その森林地帯の状態によって、保護形態が異なる。

・PFE(Permanent Forest Estates):持続可能な木材生産のために、公示する地域

・TPAs(Totally Protected Areas) :national parks, nature reserves and wildlife

sanctuaries:生物多様性の保護 (植物群と動物相 )のために、森林伐採を禁じられて

いる地区

・Stateland:森林が完全な状態で残っていない地区。他の土地利用に充てる。 (プラ

ンテーション農業、開拓地、都市化する等 )

それぞれの指定予定地の面積、指定地の面積、サラワク州の森林地帯に占める割合

は、PEFs/6,000,000ha 4,340,000ha 72.2% TPAs/1,000,000ha 600,000ha 60.0%

●人間との関わり

サラワク州の森林資源は多くの雇用機会を創出し、現在 8 万~10 万人がサラワク州

の森林産業に携わる仕事に就いている。直接森林の伐採に携わる仕事から木材を輸送

する仕事など多岐にわたる。森林資源の存続のために、保護森林地区の持続可能な運

営が重要となる。

●結論

・ ITTO(国際熱帯木材機関)の報告書によると、サラワクの熱帯雨林は世界の他のほ

とんどの熱帯雨林よりもよく管理されている。

・保護雨林と持続可能的管理雨林は現存する森林資源の保全の鍵となる。

・サラワク政府はよい森林管理をより競争的に、また森林自体をより経済的に魅力的

にする必要性を認識した。そのため、管理に対する投資と森林関係の製品とサービ

スの支払いを促進し、さらに持続可能な製品の収益が、その製品の実質の費用と利

益を公正に反映することを確実にする。

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17.クチンの歴史的建造物見学

記録担当 1 班

実施日時 8 月 31 日(水) 9:00~12:00

応対者 新井卓治 公益社団法人日本マレーシア協会

森嶋彰 公益社団法人日本マレーシア協会

実施内容

クチン市内の歴史的建造物(Brooke memorial, Guan thian siang ti temple,Kueh

sengonn temple,Tuk pek kong temple,Square tower,Indian mosque)等の見学、散策

を行った。

サラワク州の玄関口となる州都クチンは、サラワク川沿いに広がる人口 60 万人ほど

の都市であり、周辺には白人王統治時代の歴史的な建造物や、モスク、中国寺院、博

物館などが点在しています。また、郊外に一歩足を伸ばせば、珍しい動植物が見られ

る国立公園や保護区、先住民族の文化に触れることもできます。クチンとはマレーシ

ア語で “猫 ”を意味することから、市内には猫にまつわる像や博物館、年に一度の猫まつ

りが開かれることでも知られている。

18.ESD と NGO が行う環境保全活動に関する講義と意見交換

記録担当 1 班

実施日時 8 月 31 日(水) 13:30〜17:00

応対者 新井卓治 公益社団法人日本マレーシア協会

森嶋彰 公益社団法人日本マレーシア協会

実施内容

ESD の考え方や取り組みについての講義を受けた。その中で、マレーシアボルネオ

島サラワク州における地域住民参加による持続的な熱帯雨林再生システムの構築を通

じての ESD の可能性の検証事業が紹介された。広島とサラワクの子どもによる異文化

交流や、森の学校(クラフト作り、大学生と協力して環境事業)、 Youth exchange

program などサラワクと日本との関係が日本マレーシア協会のお陰で進展しているこ

とが分かった。また、NGO を立ち上げるにあたってのお話や、今後自分達が NGO に

どう関わっていくのかを話し合う貴重な時間が過ごせた。

参考資料 マレーシア政府観光局サイトより

http://www.tourismmalaysia.or.jp/region/sarawak/kuching.html

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19.セント・ノバート小学校訪問

記録担当 2 班

実施日時 9 月 1 日(木) 10:30~12:00

応対者 Mr.Assun Gani, Principal, 他

実施内容

●概要

クチン市内の学校数は子どもの数に対して少なく、午前と午後の二部制になってい

る学校もある。セント・ノバート小学校は 12:20 までの一部制である。同学校は 1960

年に設立され、現在では近隣の Kampungs Paon Gahat 村と Tong Nibong 村から 93

人の生徒が通う学校である。12 名の教員がおり、就学前から 6 年生までの生徒を教育

している(2016 年 3 月現在)。

●歓迎セレモニー

・5 年生による舞踊発表

・3 年生による舞踊発表

・幼稚園生 18 人による「キラキラ星」を含め 6 曲の合唱

・研修生らによる「未来へ」の披露

・収穫祭を表現した舞踊の披露

●ESD

マレーシア協会の働きかけで、これから学校で「生物理科」の授業の一環として、

種から苗木をつくる取り組みが行われる予定になっている。これは子どもたちに、木

に対する親近感と成長の過程を自分の肌で感じてもらい、学んでもらうことを目的と

している。他の活動として、2014 年 2 月、三菱商事と日本マレーシア協会・サラワク

州森林局・サラワク大学・地元住民とが協力し、小学校周辺に植樹を行ったほか、2016

年 3 月には日本から小学生を招き、ダンスや伝統文化の披露を通してなどの交流活動

が行われた。

20.アペン保護林訪問

記録担当 2 班

実施日時 9 月 1 日(木) 12:45~14:00

応対者:新井卓治 公益社団法人日本マレーシア協会

酒井和枝 公益社団法人日本マレーシア協会在サラワクコーディネーター

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実施内容

●概要

1995 年より、公益社団法人マレーシア協会が地域住民と協力し熱帯降雨林の再生を

目指し、地道な植林活動を行っている。この地域は、かつて天然林伐採が行われた二

次林で、一部には丘陵地帯も含まれる広大な地域である。同協会は、開発、伐採、焼

畑などによる環境の悪化によって深刻な危機に直面してしまったフタバガキ科在来種

の継続的な植林活動を行うと同時に、地域住民の生活基盤の安定を図るため、アグロ

フォレストリーの導入に取り組んでいる。活動としては、1 ヘクタールに 5m 間隔で

400 本のフタバガキ科の木を植えている。アペン保護林は、1,000 ヘクタールあり、将

来自然公園の登録を目指している。

●アペン保護林に植林活動をする企業活動

・木下工務店

2007 年 4 月から、持続的な熱帯雨林再生に向けた植林活動と複合森林整備を木下グ

ループ社員が参加して実践する場として「木下の森」を創設した。活動面積は 300ha、

植林規模は 60,000 本(1ha あたり 200 本 /ラインプランティング方式 )を予定しており、

フタバガキ科在来種 (エンカバン、カポール等 )を植えている。この活動は、熱帯雨林の

保全と地球温暖化防止に寄与することを目的としている。 また、日本とマレーシアの

国交樹立 50 周年の記念事業として外務省に認定されている。

・三菱商事

1990 年に地球環境室を設置し、その最初の活動として、熱帯林の減少問題に

取り組むことを決め、マレーシア・サラワク州を活動地域に選定し、熱帯林再

生実験プロジェクトを開始。日本国内で画期的な森林再生手法として注目され

ていた宮脇昭博士が進める Is land plant ing 方式を用い、マレーシア国立農業大

学の焼畑跡地の約 50ha に植林を始めた。これまでに三菱商事がマレーシアで植

栽した種数は 91 種、約 30 万本に及ぶ。

・JAC Recruitment

CSR の一環として、世界各国の JAC 各社を通じて自社の収益の中から、一人が入社

するごとに一本分の寄付を行っている。 JAC Recruitment のこの活動は、日本マレー

シア協会「オランウータンの森基金」を通じて行われている。「オランウータンの森

基金」はマレーシアの熱帯雨林の再生・保全だけではなく、その森に生息するオラン

ウータンを始めとしたさまざまな生命を救うことを目的としている。またこのプロジ

ェクトでは地元の人々と協力して活動することによって熱帯雨林保護のための新しい

技術や手法を学んでもらい、熱帯雨林の永続的な再生を確かなものにしている。

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21.セメンゴ自然保護区訪問

記録担当 2 班

実施日時 9 月 1 日(木) 15:30~16:15

応対者:新井卓治 公益社団法人日本マレーシア協会

酒井和枝 公益社団法人日本マレーシア協会在サラワクコーディネーター

実施内容

●概要

セメンゴ自然保護区はマレーシア、ボルネオ島北西部のサラワク州にある自然保護

区である。同保護区は 1920 年に設定され、セメンゴ野生動物センター、植物研究セン

ター、サラワク種子バンク、サラワク生物多様性センター、養樹園の 5 つの施設を含

む 653 ヘクタールの広さを誇る。保護区内は原生林と二次林で構成されており、希少

な動物・植物相を見ることができる。セメンゴ野生動物センターでは、親とはぐれ人

間の手で育てられた 26 頭のオランウータンが自力で森での生活できるよう、リハビリ

テーションが行われている。

●生態

オランウータンはボルネオとスマトラのみに生息し、野生では 30,000〜50,000 頭が

いると考えられている。オランウータンの赤毛は森林にカモフラージュするために最

適な色である。メスは 10〜15 歳で子供を出産し始め、寿命は 45 年以上である。オス

は両手を広げると 2.4m ほどになる。地上 15m ほどの場所に枝と葉を用いて巣を作り、

野生のオランウータンの場合、毎日新しい巣を作る。

●セメンゴ・ワイルドライフ・リハビリテーション・センター

森の中で怪我をしていたり、母親とはぐれてしまったり、あるいは違法なペットと

して飼われていた野生動物を保護するために 1975 年に自然保護区内に設立された。リ

ハビリ後動物たちは、州の指定によりいかなる開発も禁止されている Totally

Protected Areas(TPAs)に返される。

センターは、1000 匹もの危険にさらされた哺乳類、鳥類、爬虫類にいたる多くの種

類の動物の保護に成功した。その中でも、オランウータンのリハビリテーションプロ

グラムによりセンターは有名になった。リハビリテーションは 90 日間をかけて行われ、

十分に良い状態に回復してから野生に帰される。リハビリ後もエサやりは行われるが、

これは保護区周辺の 653 ヘクタールの森林では食料が十分でないためであり、一日の

60%を食事に費やすオランウータンが、生息地が減少したセメンゴの熱帯雨林で生き

ていくためには必要不可欠なものとなっている。センターでは 9-10 時・15-16 時にエ

サやりを行うので、その時間帯には半野生のオランウータンを近くで見ることができ

る。エサはサツマイモやバナナ・ココナッツ・パパイヤ・オレンジ・サトウキビ・ゆ

で卵などが与えられ、森に果物が少なくなる時期には多くのオランウータンがエサを

求めてやってくる。

オランウータンのリハビリが進むにつれて、周りの森の収容力は限界に達し、リハ

ビリテーション活動はクバ国立公園のマタン・ワイルド・センターに移った。保護活

動の成功の結果、セメンゴの今日の役割はオランウータンの生態学と行動の研究のた

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めのセンターへと変わった。と同時に多くのリハビリテーションプログラムを卒業し

た半野生のオランウータンにとっての安全な避難場所でもある。

22.ランデ保護林訪問

記録担当 2 班

実施日時 9 月 1 日(木) 16:30~17:00

応対者:新井卓治 公益社団法人日本マレーシア協会

酒井和枝 公益社団法人日本マレーシア協会在サラワクコーディネーター

実施内容

●観察記録

ランデ保護林は約 80 年前に英国人がその土地の植物種を植林した森である。その植

物種は主にエンカバン・ジャントンであり、種子から油がとれることを理由に植樹さ

れたと考えられている。現在、地域住民はこの油を使わないため、日本マレーシア協

会では住民と連携することで種を確保し、苗木を育てている。またボルネオテツボク

になっている実は、世界一大きなどんぐりと言われている。その他にも野生ショウガ

やこんにゃく等の木も見受けられた。

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23.トン・ニボン村訪問

記録担当 3 班

実施日時 9 月 2 日(金) 10:15~9 月 3 日(土) 9:00

応対者 Mr.Paul Munan 村長、村の人々

実施内容

●村の概要説明

村長さんから村の簡単な説明をして頂いた。

日本からの大人数の団体がトンニボン村にホームステイをするのは初めてであった

そうだ。トンニボン村には 82 家族が住んでおり、住民は現在 424 人である。ビダユ族

のみではなく、カヤン族や中華系の人も住んでおり、多種多様な人種が集まっている

村でもある。この村の主な収入源は胡椒であり、さらにカカオも生産している。米の

生産も盛んだが、村内での消費のみにとどまっている。

私たちがホームステイに来ることは村人にとっても嬉しいものであり、言葉に表せ

ないほどの感謝をしているとの言葉を頂いた。

●奉仕活動

午前は村の公民館で籠作りを体験した。作った籠は買い手が少なく、また原材料の

プラスチックテープは値段が高いため、自分たちで使用するために作っている。デザ

インなどは外からの文化を見て学んだとのこと。独特のデザインと色合いであった。

午後は、男性陣は胡椒とアブラヤシの収穫を、女性陣は籠作りを体験した。

この村の主要な収入源である胡椒は、一年中収穫を行っている。トンニボン村で育

てている胡椒は、全部で五種類である。

ペラー、セントゴアンマン、ラザペラ、サラア、インディア。サラアが最も良い香

りを有し、よく売れるとのこと。胡椒はツル性の植物であるので、光をあてるために、

支え棒を用いて空高く成長する様にしている。また、熟していない胡椒の実は新緑色

で、中の種の色も白色である。これが熟すと、黄色、赤色、黒色の順に色が変わって

いき、中の種の色も黒色になる。これらの熟した実を収穫し、よく晴れている時に、

実を天日干しする。また、胡椒畑では、サントゥン、ロンコス、ブーワンといった、

炒めることで美味しく食べられる植物を紹介して頂いた。

アブラヤシの収穫も体験させて頂いた。大きなナタでアブラヤシの実を刈り取る作

業を実際に行うことで、村の人々の苦労をよく知ることができた。手本を見せてくだ

さった方は、慣れた手つきで見事に実を刈り取られた。

また、この村では一ヶ月に二回の収穫を行っている。アブラヤシは収穫後 24 時間以

内に出荷することで、鮮度が保たれるそうだ。また、野生のリスによる被害が問題と

なっているとのこと。

女性陣は引き続き籠作りを教えていただき、一人一籠ずつ完成させた。

プラスチックテープの色は黄色、緑、青、赤と黒の市松模様、白と茶色のストライ

プ柄など、たくさんの種類があった。その中から、3、4種類を選んで適度な長さに

切ってから、編み込んでいった。想像していたよりも難しかったが、村の女性の方々

は慣れた手つきでとても作業が早かった。ほとんどマレー語しか伝わらなかったが、

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優しく丁寧に教えて頂いた。籠は色や大きさや、デザイン、形も様々なオンリーワン

の物でどれも素敵であった。籠の用途は多様で、畑仕事で使うこともあるそうだ。

●村人の方々による歓迎、夕食、交流

夕食前にはマレー語でお風呂という意味のマンディを体験した。マンディは大きな

桶に溜めてある水をかけ流す感じで、汗をかいた後でのマンディは気持ちがよかった。

夕食は村長さんの家でみんなでごちそうになった。料理は、魚料理や肉料理、ドリア

ンの花やタピオカの葉を炒めたものからカエルを揚げたものまであり、どれも初めて

食べるものであったがとてもおいしかった。

夕食後はビダユ族の伝統的衣装を着させてもらい、村の集会場で伝統的な民族ダン

スを村人と共に踊り、とても楽しい時間を過ごした。私たち日本人は Kiroro の「未来

へ」を歌い、ソーラン節を踊った。「未来へ」はマレーシアで有名な日本の曲のため、

ローマ字読みの歌詞を配るとたくさんの村人が一緒に歌ってくれて嬉しかった。村長

さんの家に再び戻った後は、TUAK という地酒も頂いた。米から作られたお酒で各家

庭オリジナルの味があるそうだ。

●村長さんへの質疑応答のまとめ

・胡椒は市場価格が不安定で肥料代もかかり大変なため、昔の胡椒の農園が放置され

たままになっていることもあり、政府がその土地をアブラヤシにするように促進し

ている。村では、アブラヤシの栽培を行う会社への土地貸しと自分の土地で自ら生

産する二つの方法がある。アブラヤシは胡椒に比べ定期的な安定した収入源なため、

村の生活のためには必要である。ただ、熱帯雨林の伐採が進み、アブラヤシ農園が

増えた結果、最近では周辺で洪水が起こったりするようになった。

・村の小学校では、昔から英語の授業があり、理科と数学は英語で教えられる。しか

し、昔は学校自体に通っていないという人もいたそうだ。英語は学校で学ぶが、村

での生活で使わないため、村の人の多くが忘れてしまっており話せない人が多かっ

た。子どもの多くは中等学校を卒業後、村で農業に携わったり近隣の町で働く人が

多く、高等教育に進む人は少ない。

・政府は複数の収入源を確保するために、新しい作物の栽培を奨励しているが、新し

いことに挑戦していこうという考えがなかなか定着しない。

・村にはおろか、村よりも手前にあるセントノバート小学校周辺にもごみ収集車は来

ないため、ごみの収集システムが機能していない。村の上流のほうでごみを川に捨

てる村人も多く、村の川にはごみがたくさん浮いていた。ごみ収集システムを政府

と共に確立することと、村人の意識を変えることが課題である。しかし、今のとこ

ろ具体的な取り組みは行われていない。ただ、村長さんは村の川にごみがたくさん

浮いていることを恥じている。その気持ちは今後対策を講じる上での原動力になる

はずである。

・村長は世襲制で、現在のポール村長は 3 代目で、11 年間村長を務めておられる。村

長になる以前は役所で働いていたため、政府との交渉がうまくいき、村に電線を引

いてもらうことにもつながったという。 10 年前には電線はなく、村周辺の道路も今

のように整備はされていなかった。2020 年までがポール村長の任期であり、引退後

はクチンに住んでいる娘さんに戻ってきてもらい、村長になってもらう予定だそう

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だ。

・トンニボン村は 1942 年に内陸から現在の村のある地域に祖先が来て開拓をした。昔

はロングハウスに皆住んでいた。1970 年代は 40 家族おり、今は 84 家族にまで増え

た。

・村長さんは今の村での暮らしに満足しているが、将来的には村をもっと発展させた

いと考えている。現在建設中の学校が完成すれば、学校までの道の舗装などが進み、

もっと便利になるそうである。

24.「アペン森の学校」プログラム

記録担当 1班

実施日時 9 月 3 日(土)10:00~13:30

参加者 サラワク州森林局 Mr.Oscar Johin Ngayop, Mr.Kos Ahmud,Mr.Jonathan Lat

日本マレーシア協会 新井卓治、森嶋彰、酒井和枝

マレーシア・サラワク大学 Dr.Effendi Wasli,大学院生 3 名

Balai Ringin 中高校 生徒 35 名

Krait 小学校 Mr.Assun 校長他教員 6 名

St.Norbert 小学校 Mr.Cosmas 前校長他教員 5 名

実施内容

●歓迎の言葉・各団体代表あいさつ

JMA の酒井さんの司会によりこの「アペン森の学校」プログラムが始まった。はじ

めにサラワク森林局アシスタントディレクターの Mr.Oscar Johin Ngayop による歓迎

の言葉を頂いた。その後、各団体代表挨拶で UNIMAS の Dr.Effendi Wasli、Krait 小

学校前校長の Mr.Cosmas にあいさつの言葉を頂き、たくさんの団体の協力によってこ

の植林プログラムが成り立っていることを感じた。

●植林作業

歓迎の言葉・各団体代表あいさつの後、さっそく植林作業に移った。サラワク森林

局の Mr.Jonathan Lat による植林作業の仕方や注意点の説明があった。植えた木は全

て「サラ」という名前の木であった。この「サラ」という木はマレーシアでは「Kapur

Bukit」と呼ばれていて、アペンの森の在来種でこの土地によく合うことや、伐採して

しまった木であることから今回の植林に選ばれている。今回の植林の手順は、すでに

森林局によって決められた植林場所に水と肥料を持って行って、掘ってある穴にまず

肥料を手で一握りほど入れ、木の苗をプラスチックの容器から取り出してその穴のな

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かに入れて土をかぶせ、最後に苗の周りにもう一度肥料をまき、水をかけるというの

が一通りの流れである。植林場所には目印になるように木の棒が刺さっていて、植林

が終わった場所は分かりやすいように苗の入っていたプラスチックの容器を木の棒に

付けておいた。地元の中高生と協力して、ラインプランティングという一列に植林を

行う方法で 1 グループ 10 本以上の植林を行った。

●昼食・もりメイト倶楽部活動紹介

植林作業は 1 時間ほどで終わり、11 時からお弁当を頂き昼食を食べた。お弁当の中

にはご飯と 2 種類の肉のおかずが入っていて、とても美味しかった。 11 時 30 分頃か

らは、もりメイト倶楽部の原田澄さんによる活動紹介が行われた。木で作ったチョウ

チョやロボットなどの展示が行われ、原田さんは森と関わることの大切さを私たちに

伝えてくださり、日本でもこういった活動をされている方がいることを知ってとても

誇らしく思った。

●クイズ・葉っぱ探し・結果発表

森林局の作成したクイズを UNIMAS の大学院生が進行を行い、全員で解いてみた。

生物学的な知識が必要なクイズでとても難しかった。

答え合わせをしている間、酒井さんが中高生達にエンカバンという木の落ち葉を 20

枚見つけてきた人におみやげをあげると言ったら、みんな一生懸命落ち葉を探してい

た。エンガバンという木は在来種ではあるが、一度伐採されてからはその数が少なく

なってしまい、葉っぱを見つけるのも難しいということで酒井さんが選んだ。違う種

類の葉を持ってきてしまった子もいたし、切ってはいけない木の葉っぱを持ってきた

子もいた。一番早かった子はエンカバンの落ち葉を枝ごと持ってきた子だった。おみ

やげは原田さんの持ってきていた小さなサクラの木の板で、渡された子はとても喜ん

でいた。

そしてクイズの結果発表が行われた。同率一位が 3 人いて、全て Balai Ringin 中等

学校の女子生徒だった。最後はじゃんけんで順位を決めた。日本チームも頑張ったが 3

位以内には入れなかった。最後に新井さんのあいさつと研修生代表のあいさつを行い、

プログラムが終了した。

25.マタン野生動物保護センターで研修

記録担当 2 班

実施日時 9 月 4 日(日) 10:00~16:15

応対者 Mr.Siali anak Aban, Manager, Matang Wildlife Centre

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実施内容

●概要

サラワク州には 33 の national park、14 の nature reserve、4 の wildlife sanctuary

が存在している。同センターは、1998 年 7 月 25 日に設立され、クチンから 35km ほ

どに位置し、クバ国立公園(Kubah National Park)内の 180ha の面積を有する。サ

ラワク州政府が管轄し、サラワク森林局が管理を受け持っているセンターであり、野

生動物のリハビリテーションと動物の野生復帰を目的としている。センターの職員は

現在 13 人でその他国内外のボランティアにより、活動を運営している。

●活動内容

親に捨てられた、あるいは捕獲されたオランウータンを保護し、再び自然で生活で

きるようにレクチャーをするオランウータンプロジェクトなどを行っている。またこ

のセンターでは、オランウータンを始めとし、マレーグマ、サンバーシカ、ジャコウ

ネコなどの哺乳類の他にも、サイチョウ、ワシ、コウノトリなどサラワク州に生息す

る鳥類等、様々な絶滅危惧種の保護を行っている。

●研修内容

午前中、Siali さんからセンターの活動についてのお話を伺った。午後、センター内

を散策し、飼育されているオランウータンやサイチョウの観察を行った。その後、木

の枝を用いてオランウータンの寝床を作製しそれぞれの檻に設置した。

保護したオランウータンを野生に返すまでの工程

Admission

Background investigation Register entry

Quarantine

Health check Health care and dietary

Training stage 1

Nursery(center area) age 1-2 yrs old

Training stage 2

Primary school(periphery forest) age 3 yrs old >

Training stage 3

Secondary school (deep forest)

Released and monitoring

Habitat identification Short term/ Long term

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26.青年海外協力隊員の活動現場訪問

記録担当 3 班

実施日時 9 月 5 日(月) 9:00~9:50

応対者 中鉢典子 青年海外協力隊員

実施内容

●青年海外協力隊(JOCV)中鉢典子さんの活動内容

中鉢さんが活動を行っているサラワク州立図書館を訪問。中鉢さんは山形県出身で、

宮城県の高校の国語教師をされている。現職教員特別参加制度を利用して JOCV に参

加されているため、任期は 1 年 9 か月とのこと。昨年 7 月にクチンに派遣され、1 年

ほど経過した。要請内容は青少年活動であり、日本文化を紹介したり、生涯学習とし

て環境や福祉について学ぶイベントの企画運営が主な活動内容である。知識や技術を

学びたい人と、それらを伝えたい人をつなぐ活動を行っている。また、 ”TRAIN the

TRAINERS”を掲げており、教えた後も自分たちだけで活動を続けていけるような仕組

み作りを目指している。クチンには中鉢さん含め 4 人の隊員が派遣されている。

27.トゥンクプトラ小中学校で環境教育プログラムに参加

記録担当 3 班

実施日時 9 月 5 日(月) 10:00~12:30

応対者 中鉢典子 青年海外協力隊員

Ms. Vijaya Menon: Environmental Control Officer, Natural Resources &

Environment Board, Sarawak

Ms. Matty Strydom: Tunku Putra School (Teacher from South Africa)

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実施内容

TUNKU PUTRA SCHOOL を訪問した。この学校は私立のインターナショナルスク

ールであり、教育水準もマレーシア内でもトップクラスである。

隊員による学校での環境教育、実習形式のコンポスト(堆肥)作りを見学した。小

学 6 年生を対象に行われ、10 グループに分かれた 44 名の子どもたちのところに私た

ちが 1 人ずつ入り、一緒にコンポスト作りを体験した。

コンポストは 3 つの工程にわかれる。発酵液作り、土づくり、そしてコンポスト作

りである。発酵液は米のとぎ汁に砂糖を加えて4、5日置き、微生物の増殖を促進す

る。土づくりでは、枯れ葉や草木を細かくし、その後発酵液を加え一週間毎日かき混

ぜ、ハエが来ないように通気性のあるものをかぶせ保存する。そしてコンポスト作り

では、よく混ぜた後、果物の皮や卵の殻を寝かせた土に加える。肉や魚の残飯や骨を

加えると悪臭を放ち、また分解に時間がかかるのでそれらは適さない。良いコンポス

トは握った時に少し固まるくらいの水分を含んでいる。悪臭を放っておらず、表面が

温かくなったらコンポストの完成である。完成までは約 2 か月かかり、それまでは毎

日かき混ぜなければいけない。2 か月後は半分はコンポストとして使用し、残りは新た

に残飯を加え、3 段階目のコンポスト作りの過程を繰り返す。

私たちが生徒と一緒に行ったコンポスト作りでは、分解をより促進するため、すで

に微生物を多く含んだ土を土づくりの段階で加えた。子ども達は、微生物が酵素を生

み出し、その酵素によって、食品廃棄物が植物にとっての栄養に分解されることを学

んだ。

28.サラワク州立図書館の見学と青年海外協力隊との意見交換

記録担当 3 班

実施日時 9 月 5 日(月) 14:00~16:00

応対者 中鉢典子 青年海外協力隊員

実施内容

●サラワク州立図書館を見学

サラワク州にはサラワク州立図書館がクチンとミリにあり、3 つ目となる図書館をシ

ブに建設予定である。

館内の施設は大変充実しており、巨大ステージ完備の多目的室、シアターホール、

理系学生のためのメイキングルーム (撮影機器、3D プリンターなどの充実した設備 )等、

読書スペース以外にも様々な活動が可能である。図書館の外は大きな池があり、朝夕

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にジョギングやエアロビでの利用者が多いとのこと。また、植林活動も行っており、

サラワク州では珍しく、点字を用いて植物の説明文が設けられていた。

一階は子ども向けの読書スペースと、メイキングルーム、多目的室。二階は一般人、

学生向けの読書スペース、シアターホールがある。

図書館の利用者の内、大学生は、研究資料の調達のために訪れる。また、一般の利

用者は、涼みに来ることが多いとのこと。全体として、利用者は大変少ないのが現状

であり、その理由として、マレーシア人はアクティブな体験を好み、読書をするとい

う習慣が根付いていないということが挙げられる。

本の貸し出しも行っており、少ない図書館利用者の内、中華系の人の利用が多いと

のこと。利用者の登録には 1 リンギットかかり、一度登録すればずっと利用可能。 2

週間で 8 冊まで借りることができる。

●中鉢さんとの意見交換

マレーシアと日本では働き方が大きく違う。マレーシアは家族との時間を一番大切

にしており、残業もほとんどしない。ワークライフバランスのとれた生活ができてい

る一方で、勤務中にスマホを触るなど勤務姿勢に問題があることを指摘されていた。

マレーシアは発展がある程度進んだ中進国であるため、環境や福祉の問題が表面化

してきた。

人と話すことを通じて潜在的なニーズを見つけることができる。人とのつながりが

何よりも重要であり、働く上での原動力である。

29.研修発表準備と意見交換

実施日時 9 月 6 日(火) 朝~16:30

実施内容

午前中は各自で研修発表資料作成作業。

午後、宿泊先会議室にて発表資料の進捗報告と意見交換を行った。

初めに、これまでの研修を踏まえて、各自が①環境保全、②持続可能な社会づくり、

③自分が関わってみたい環境協力活動、についてそれぞれキーワードを考え、それを

もとにこれまでの研修で得たこと、印象に残った人やプログラム、国際環境協力分野

で今後どのような活動に関わっていきたいかなど、お互いの考えを聞きながら、研修

内容全体の振り返りと、研修後の報告書作成へ向けた意識づけを行った。

その後、後半の発表準備内容をそれぞれ発表し、随行専門家からのコメントと研修

生同士の質疑応答を行うことで、各自の考えを整理した。

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30.サラワク州森林局で後半の研修発表

実施日時 9 月 6 日(火) 10:00~12:00

参加者 Mr. Oscar Johin Ngayop,Assistant Director,Forest Department of Sarawak

Mr.Jonathan Lat, Forester,他

実施内容

サラワク州森林局にて、同局幹部や専門家のご臨席を得て、英語による研修発表を

実施した。

終了後、ホテルにて修了式を行った。