第2章証券のプライシング - waseda university1 第2章証券のプライシング...

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1 2証券のプライシング ・範囲:P.37~53 ・主な項目:CAPM、市場ポートフォリオ、ベータ ・担当:長谷川、山本 証券市場の均衡と リスク・プレミアムの決定

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第2章 証券のプライシング

・範囲:P.37~53・主な項目:CAPM、市場ポートフォリオ、ベータ・担当:長谷川、山本

1 証券市場の均衡とリスク・プレミアムの決定

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・市場均衡:資産に対する需要と供給が一致する状況で、多数存在する個々の証券の市場同時均衡、すなわち一般均衡を意味する。

・一般均衡を記述するモデルは様々あるが、

その中で最も代表的なCAPMを扱う。

均衡モデルーCAPMとは

資本資産評価モデル(Capital Asset Pricing Model:CAPM)

1. 投資家は平均・分散アプローチに基づく効用関数を持つ。

2. 完全市場(税や取引コストはなし、投資家はプライステイカー)。

3. リスクフリー資産の存在(収益率rFで、いくらでも貸借可能)。

4. すべての資産について、ショートセールの制約なし。

5. すべての投資家の情報は同質的である。

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・(1)の仮定は投資家の選好がポートフォリオの収益率の期待値と分散(=標準偏差)のみに依存し、図1-8のような無差別曲線が描けることを意味している。

・(2)~(4)の仮定は、個々の投資家が最適なポートフォリオを選択する際に、取引についてのさまざまな制約がないことを示している。

・(5)の仮定は、個々の投資家が持つ、個々の証券の収益率の期待値、分散、共分散についての認識が全員一致していることを示している。

これらの仮定により

・すべての投資家の投資機会集合(P.20)および効率的フロンティア(P.30)は、同一となる。

・リスクフリー資産が利用できるので、効率的フロンティアは、図2-1のように、直線となる。

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前章で示した(P.35)ように

リスクフリー資産が利用できるとき、すべての投資家にとっての危険資産の最適ポートフォリオは、接点ポートフォリオとなる。

仮定(5)より、

すべての投資家の効率的フロンティアは同一であるから、接点ポートフォリオ(図2-1ではM)もまたすべての投資家にとって同一。

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では、この接点ポートフォリオMは、どのようなポートフォリオなのか?

すべての投資家が危険資産の最適ポートフォリオとして同じ接点ポートフォリオMを選択するのであれば・・・

→市場均衡においてはその危険資産ポートフォリオには、すべての資産が含まれる必要がある。

なぜなら・・・

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もしある危険資産が接点ポートフォリオに含まれていなければ、すべての投資家の当該危険資産への保有比率がゼロなってしまい、これは市場均衡ではなくなってしまうからである。

したがって

市場均衡のもとでは、この接点ポートフォリオは、市場ポートフォリオと呼ばれるものとなる。

市場ポートフォリオとは・・・

市場に存在するすべての資産を含み、各資産の保有割合がその資産の時価総額の全資産総額に占める割合となっているもの。

まとめると次のようになる。

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市場ポートフォリオ

・市場に存在するすべての危険資産を含む。

・各危険資産の保有割合は、市場全体の時価総額に占める当該資産の時価総額の割合となる。

市場全体の時価総額

の時価総額資産

は、の保有割合すなわち、資産

::

wjiWi

WjWiwi

Wii

Σ

Σ=

・市場ポートフォリオ=効率的ポートフォリオである。

これがCAPMの示す第1のポイントである。

・すべての投資家の最適ポートフォリオは、

市場ポートフォリオとリスクフリー資産の2つの

組み合わせで作ることができる。

→CAPMのもとでのトービンの分離定理。

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システマティック・リスクとアンシステマティック・リスク

・市場均衡では、個々の投資家の最適ポートフォリオ選択と同時に、個々の証券のリスクが評価され、リスク・プレミアムが決定される。

しかし・・・

個々の証券に含まれるリスクのすべてが市場で評価されるわけではない。

だから、

リスクの評価には、リスクを分散化することで無視できるものと無視できないものとに区別する必要がある!!

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リスクの分散化で・・・

・無視できるもの:アンシステマティック・リスク。

市場では評価されずに

リスク・プレミアムはゼロ。

・無視できないもの:システマティック・リスク。

経済全体が直面している

本質的なリスク。

市場で評価され、これが大きい

証券ほどそのリスク・プレミアム

は大きくなる。

・CAPMにおいては、システマティック・リスクは、市場ポートフォリオのリターンと連動する部分となる。

なぜなら

市場ポートフォリオと連動する部分は、分散化によって市場ポートフォリオを保有しても残るからである。

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・システマティック・リスクの大きさは、

CAPMにおける唯一のリスク尺度である「ベータ」で測ることができる。

・それに対して、市場ポートフォリオと連動しない(相関係数がゼロ)リスクは、分散化によって無視することができるため、アンシステマティック・リスクとなる。

リスク・プレミアムの決定ー証券市場線

の標準偏差:

の標準偏差:

係数リオの収益率との相関証券と市場ポートフォ:

の収益率:市場ポートフォリオ

=)(

)(=    

)(+)=(  

すなわち、

アム市場のリスク・プレミ     +ベータ

スクフリー・レート証券の期待収益率=リ

MM

M

MM

M

FMF

R

iRi

iiR

iiRVar

RiRCovi

rREiriRE

i

~

~

~~

~,~]~[~

σ

σ

ρ

ρσσβ

β −

×

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ここで注意すべきことは、

ベータがゼロ(ゼロ・ベータ)の証券のリスク・プレミアムはゼロ。

たとえその証券が危険資産であってもベータがゼロであれば、その期待収益率はリスクフリー・レートと等しくなる。

また、複数の証券で構成されたポートフォリオについても、そのベータを考えることができる。

ポートフォリオのベータが個々の証券のベータの加重平均となる。←これは共分散の定義から示せる。

また、市場ポートフォリオのベータは、定義上1である。

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・ある証券またはポートフォリオのリスク・プレミアムのうち、証券市場線が示すリスク・プレミアムを超える部分をアルファ(α、あるいはジェンセンのα)と呼ぶ。

CAPMの成立時には、

すべての証券、ポートフォリオのリスク・プレミアムは厳密に証券市場線の関係を満たす(アルファ=0)。

これはどんな優秀な投資家でも、リスク(ベータ)に見合う以上の期待収益率を得ることはできないことを意味する。

それに対して

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もしアルファがプラスとなる資産またはポートフォリオがあれば・・・

それはリスク(ベータ)に見合う以上の期待収益率をあげることになる。 Ex.図2-2の点A

このような資産またはポートフォリオがあれば、

「市場が非効率的」あるいは「市場は効率的だがCAPMが不成立」ということを意味する。

リスク全体(トータル・リスク)の分解

証券市場線を用いて、リスク全体をシステマティック・リスクとアンシステマティック・リスクに分解できる。

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i証券の収益率

分とは連動しない残差部:市場ポートフォリオ

)+-(=

iuiurRirR FMFM

~~~~ β+

i証券のトータル・リスク

)()+()=( iuVarRVariiRVar M~~~ 2β

右辺第1項:ベータと市場に連動する部分で分散化で無視できないシステマティック・リスク

右辺第2項:市場ポートフォリオとは無相関である残差の分散で、アンシステマティック・リスク