第4章 本校の心理・発達検査, アセスメントリスト …- 60 -...
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本校では,重度・重複障害者が多く在籍しており,それぞれの児童生徒の実態
に応じた適切な指導を行うために,児童生徒の実態把握に特に努めています。
この章では,本校で所蔵している実態把握や指導の手立てとなる心理・発達検
査,アセスメントリスト,書籍等を紹介します。
1 KIDS乳幼児発達スケール
2 AIMS(アルバータ乳幼児運動発達検査)
3 MEPA-R,MEPA-Ⅱ
4 遠城寺式乳幼児分析的発達検査法
5 津守式乳幼児精神発達診断法
6 デンバー発達判定法
7 ポーテージ早期教育プログラム
8 PEDI (リハビリテーションのための子どもの能力低下評価法
9 Chailey姿勢能力発達レベル
10 重度・重複障害児のコミュニケーション学習の実態把握と学習支援
11 LCスケール(言語・コミュニケーション発達スケール)
12 WISC-Ⅲ
13 フロスティッグ視視覚発達検査
14 S-M社会生活能力検査(Social Maturity Scale)
15 障害の重い子の早期発達診断 新訂版
第4章 本校の心理・発達検査,
アセスメントリスト等について
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本校にある心理・発達検査,アセスメントリスト一覧
1
名称 KIDS乳幼児発達スケール
対象年齢 0歳1ヶ月~6歳 11 ヶ月の乳幼児
検査領域・
特色など
乳幼児約 6,000名によって標準化され
た新しい検査である。
乳幼児の自然な行動全般から発達をと
らえることができ,場所・時間の制限を受
けずにどこでも短時間で診断できる。検査
時間は 10~15分程度。
1 運動/体全体の大きな動き
2 操作/手指などの意図的な動き
3 理解言語/言葉の理解
4 表出言語/話すことのできる言葉
5 概念/状況依存によらない言語的理解
6 対子ども社会性/友だちとの協調行動
7 対成人社会性/大人との関係,特に親子関係
8 しつけ/社会生活における基本的なルール
9 食事/衛生感覚や食事の基本的なルール
2
名称 AIMS(アルバータ乳幼児運動発達検査)
対象年齢 18 ヶ月までの乳幼児
検査領域・
特色等
1 検査方法が観察のみによるもので採点方法が容易である。
2 評価時間は 20~30分で,子供の状況が良好であれば 10分程
度で評価可能。
3 小児の特性に詳しくない検者でも評価が可能。
4 結果をパーセンタイル※で表すことで,対象児の保護者にも比
較的その結果を理解しやすい。
5 評価表に記載されているイラストの項目は具体的な指針となるこ
となどである。「神経成熟理論」と「システム論」の2つの運動発達理論の考察が AIMSの
理論的基礎となっている。
6 検査を通じて「姿勢」,「体重負荷」,「抗重力運動」を重視した項目の解説を理解するこ
とで,運動発達の理解を深めることができる。
※下からの順位(percentile)
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3
名称 MEPA-R,MEPA-Ⅱ
対象年齢 0か月から 72 ヶ月までの発達年齢
検査領域・
特色等
MEPA-R(ムーブメント教育プログラムアセス
メント),MEPA-Ⅱ(感覚運動発達アセスメン
ト)からなる。MEPA-Ⅱの方が重度・重複障害
者のアセスメントとしては活用しやすい。
どちらも,乳幼児の運動発達を軸にして,感覚
運動スキル,コミュニケーションの発達(笑い
声,人に対する発声等を含む対人的な反応,
聴覚による反応,追視反応などの環境とのかかわりや物とのかかわり,言語・社会性・情緒に
関するもの)を含めた総合的なアセスメントとして活用することができる。
<検査項目>
・ MEPA-R(姿勢,移動,技巧,受容言語,表出言語,対人関係)
・ MEPA-Ⅱ(姿勢,移動,操作,コミュニケーション)
参考書籍:重度重複障害児(者)の感覚運動指導①②③ 【編著】小林 芳文/上原則子 コレール社
4
名称 遠城寺式乳幼児分析的発達検査法
対象年齢 0歳から4歳7か月
検査領域・
特色等
<検査領域 6領域>
移動運動,手の運動,基本的習慣,対人関係,発語,言語理解
・0歳児から使用でき各機能を分析的に評価できる。
・グラフ化でき発達の課題が分かりやすい。
・検査法が簡単で短時間でできる。
・発達をいくつかの領域に分けてテストして,それぞれの領域に
ついて評価を出すことで分析的に乳幼児の発達状況をとらえるこ
とができる。
・精神面のみでなく身体的発達も含めて,全人的に発達状況を
分析的にとらえることができる。
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5
名称 津守式乳幼児精神発達診断法
対象年齢 乳幼児向け(0-7歳)
検査領域・
特色等
438項目からなる間接検査の質問紙法の発達
検査であり,子供の心身発達レベルを「運動・探
索・社会(大人との関係・子どもとの関係)・生活習
慣(食事・排泄・生活習慣)・言語」の5領域から総
合的かつ網羅的に発達内容について測定するこ
とができる。検査時間は 20分程度。
6
名称 デンバー発達判定法
対象年齢 0歳~6歳
検査領域・
特色等
乳幼児の相対的な発達の遅れや早さを簡便に評価できる発達判定法である。
この発達スクリーニング法の記録票は,子供が年齢が上
がるにつれて発達する種々の行動を「個人-社会」,「微細
運動-適応」,「言語」,「粗大運動」の4分野に分類し,それ
ぞれの行動について 25%~90%成率を示す標準枠を階
段状に図示してある。そのため,発
達の個人差とともに行動発達の時
系列的変動が明瞭に示されている
ため,スクリーニングの方法として
のみならず,子供の発達を示す教
材としても利用されている。
7
名称 ポーテージ早期教育プログラム
対象年齢 0歳~6歳
検査領域・
特色等
発達療育を「乳児期の発
達」,「社会性」,「言語」,「身辺
自立」,「認知」,「運動」の六つ
に区別されている。そして,各
領域ごとに達成されることが望
ましい行動目標が,平均的な発達の子供のデータをもと
に,発達系列に従って発達年齢0歳から6歳まで全部で
576項目,色分けされた領域別に配列され,チェックリスト
になっている。
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8
名称 PEDI (リハビリテーションのための子どもの能力低下評価法)Pediatric Evaluation of Disability Inventory
対象年齢 6か月~7歳6ヶ月以下までの子ども
検査領域・
特色等
Costerらの「子どもにおける障害の概念的モデル」をもとに,特定
のスキル要素を遂行する能力と,機能的活動に必要な介助量の両
方を測定することを考慮して開発されたものである。このモデルで
は,機能障害と能力低下の中間的要素として機能的制限が位置づ
けられている。機能的制限とは,機能的活動における能力(capabili
ty)の制限であり,子供の発達段階との関係が深い。これに対し,能
力低下は,遂行(performance)の制限ととらえることができ,環境や
社会の影響が大きい。
PEDIでは,能力と遂行を明確に区別し,機能的制
限と能力低下の2つのレベルで評価することが大きな
特徴である。
<検査項目>セルフケア,移動,社会的機能
9
名称 Chailey姿勢能力発達レベル
対象年齢 運動障害を持つあらゆる年齢の人
検査領域・
特色等
書籍『脳性まひ児の 24時間姿勢ケア』において示されている。
体重負荷・運動・対象性という要素を基盤とした姿勢能力の発達に
関する評価法である。臥位・座位・立位について豊富なイラストで段階
別に整理されており,観察法でありながら信頼性が高い。
<検査項目>背臥位,腹臥位,床上座位,椅子座位,立位
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10
名称 重度・重複障害児のコミュニケーション学習の実態把握と学習支援
対象年齢 小学校1年生~高等3年生
検査領域・
特色等
書籍であるが,重度重複障害児のコミュニケーションに関する学習
課題と目標を明らかにするための「学習習得状況把握表」が掲載され
ている。学習修得把握表から得られる「子どもたちに共通した情報」に
加え,「その子ども独自の情報」を把握し関連付けることに着目,新た
に「学習把握表」を提案して認知発達に関連した知見をまとめたものと
なっている。
インターネットで,この学習把握表をソフトウェアとして入手できる。
これに児童生徒の実態を記入していくことで,具体的な指導方法が提
示されるデータベースとなっている。(下図)
11
名称 LCスケール(言語・コミュニケーション発達スケール)
対象年齢 0~6歳の乳幼児
検査領域・
特色等
0~6歳の乳幼児の言語コミュニケーション発達を基盤にして作
られた検査法。語彙,文法,誤操作,対人的なやりとり(コミュニケ
ーション)などに関して精査し,LC年齢(言語コミュニケーション年
齢)とLC指数(言語コミュニケーション指数),下位領域である「言
語表出」,「言語理解」,「コミュニケーション」のそれぞれにおけるL
C年齢・LC指数を求めることができる。発達に遅れのある人の言語
発達支援プログラムの立案に役立つ。
イラストの提示と質問への回答,操作を主とする検査法である。
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12
名称 WISC-Ⅲ
対象年齢 5歳0ヶ月~ 16歳 11 ヶ月
検査領域・
特色等
ウェクスラー(David Wechsler)という心
理学者によって開発された検査で国際
的に最も広く使用されている。検査項目
は「耳から情報を受け取って,ことばによ
って応答する(例:口頭で提示された単語
の意味を答える)」言語性検査と,「目から
情報を受け取って,動作によって応答す
る(例:積木を使ってモデルと同じ模様を
構成する)」動作性検査からなっている。
個別式の検査法で, 測定された知能の内容を分析し診断的に理解する。言語性検査,
動作性検査,全検査から全体的知能水準を把握できる。13の下位検査からなっている
・ 言語性検査・基本検査6種類
(知識,類似,算数,単語,理解,数唱)
・ 動作性検査・基本検査7種類
(絵画完成,符号,絵画配列,積木模様,組合せ,記号探し,迷路)
13
名称 フロスティッグ視知覚発達検査
対象年齢 4歳0か月 ~ 7歳 11 ヶ月
検査領域・
特色等
保育所,幼稚園,小学校低学年の子どもの視知覚上の問題点を発見し,視知覚障害に対
する援助の手がかりをつかみ,適切な訓練を行うための検査である。
冊子の検査用紙に鉛筆やクレヨンで記入することを基本としており,肢体不自由児には検査
の際に配慮を要する。
次の5つの視知覚能力に関して,困難のある領域や程度をとら
え,援助・指導の方法を探ることができる。
1.視覚と運動の協応
2.図形と素地
3.形の恒常性
4.空間における位置
5.空間関係
実施時間:30分~40分程度
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14
名称 S-M社会生活能力検査(Social Maturity Scale)
対象年齢 乳幼児(1歳)~ 中学生(13歳)
検査領域・
特色等
領域別に社会生活年齢(SA)と社会生活指数(SQ)が算出され,SAプロフィールを描くこ
とで子どもの社会生活能力の個人内差をとらえることができ,適切な指導の指標となる。
検査用紙にある質問に○印を記入するのみのテストで,保護
者や教師でも簡単に実施することができる。
<社会生活能力の測定領域>
1.身辺自立
2.移動
3.作業
4.意志交換
5.集団参加
6.自己統制
実施時間:20分程度
15
名称 障害の重い子の早期発達診断 新訂版
対象年齢 発達水準が生後3歳0月未満の「障害の重い子」
検査領域・
特色等
記入用紙に◎できる,○ほとんどできる,~不明まで 6段階の印を記入し,後半部分はそ
れを元に整理分析し,現状のまとめと課題まで記述できるようになっ
ているという特長がある。
実施にあたっては,おおまかに発達水準を知るために,事前に
遠城寺式乳幼児分析的発達検査を実施し,本検査の開始項目
の評定を行う。そして,教師・保育士などによる観察,保護者・施設
職員などとの面接,実際の検査の3段階を経て,各領域に含まれ
ている検査項目を評定する。
本検査の結果解釈において,①基礎固めと先取り,②ステレオ
タイプ化の防止と除去,③核とそれに関連付けるべき行動の三つ
の観点からとり行われる。
<検査項目>(合計 331項目)
・副領域の「無条件反射の発現を促す主導的活動」12項目
・主領域の「情意の発達を促す主導的活動」15項目
・「移動の発達を促す主導的活動」86項目
・「手行為の発達を促す主導的活動」83 項目
・「言語の発達を促す主導的活動」100項目
・「生活習慣の発達を促す主導的活動」35 項目