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今さら聞けない資機材の使い方
今回の「今さら聞けない資機材の使い方」を担当させて頂く、北海道の大雪消防組合東消防署の太田です。宜しくお願いします。 大雪消防組合は、北海道のほぼ中央に位置し、美瑛消防署、東消防署、当麻消防署、比布消防署、愛別消防署の5署、職員数110名(3月31日現在)で構成されています(図1)。 東消防署は、東神楽町と東川町の2町を管轄しており、職員27名で日々業務を行っています。東神楽町には道北の空の玄関口である「旭川空港」、東川町には北海道最高峰の「大雪山系旭岳」を有し、四季折々を楽しむため国内外から多くの観光客が訪れる地域です。
図1 大雪消防組合の管内
1 はじめに
今回取り上げるのは「トリアージタッグ」です。当署では航空機災害を想定した、旭川空港消防等他機関との合同訓練、管轄内では季節問わず多くの大型観光バスが行き交うため、定期的にトリアージ訓練を実施しています。訓練中に記載方法が良く分からないという声が上がったので「トリアージタッグ」の記載方法について執筆します。 トリアージタッグが標準化されるまでは、消防や他機関でトリアージタッグは使用されていたものの、それぞれ独自の様式で作成されていたり、識別色ラベルの配列順が異なっているなど、現場で混乱が生じたといわれています。 平成6年に発生した名古屋空港中華航空機墜落炎上事
故、平成7年に発生した阪神・淡路大震災を契機に、大規模災害で複数の救急救助機関が関わる場合を想定し、厚生省(当時)より「トリアージ・タッグの標準化について」(平成8年3月12日付 指第15号)が公表されました。現在、消防をはじめとした全ての救急救助機関が上記を基に作成されたトリアージタッグを使用し、円滑な活動が行えるようになりました。
「トリアージ・タッグの標準化について」
(平成8年3月12日付 指第15号
厚生省健康政策局指導課長)
1.タッグの形状及び寸法 23.2cm(縦)×11cm(横)2.タッグの紙質 水に濡れても字が書けるなど、丈夫なものとし、本体はやや厚手のもの、複写用紙は本体より薄手のものとする。3.タッグ用紙の枚数 3枚とし、1枚目は『災害現場用』、2枚目は『搬送機関用』とし、本体は『収容医療機関用』とする。4.タッグの形式 モギリ式としモギリの幅は1.8cmとする。5.タッグに用いる色の区分 軽処置群を緑色(III)、非緊急治療群を黄色(II)、最優先治療群を赤色(I)、死亡及び不処置群を黒色(0)とする。 モギリ片の色の順番は、外側から緑色、黄色、赤色、黒色で両面印刷とし、ローマ数字のみ記載し、模様や絵柄は記載しない。6.傷病者の同定及び担当機関の同定等に係る記載内容 傷病者の同定の項目については、「氏名」「年齢」「性別」「住所」「電話」とし、外国人の家族や本人が記載することも想定し、これらの項目については英語を併記する。 担当機関の同定等の項目については、「(タッグの)No.」「トリアージ実施月日・時刻」「トリアージ実施者
〔第62回〕 トリアージタッグ 太 田 利 絵
(大雪消防組合東消防署)
愛別町比布町
当麻町
東神楽町
美瑛町
東川町
上富良野町
旭川市
鷹栖町
和寒町
上川町
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氏名」「搬送機関名」「収容医療機関名」とする。 また、3枚目の『収容医療機関用』の裏面の上部には「特記事項」の記人できるスペースを設けることが望ましい。
2 記載方法
当署で使用しているトリアージタッグで記載方法を紹介します。標記の違いはあるかもしれませんが、表面の上部1/3、下部1/3は共通項目として統一されています。表面の中央部1/3、裏面2/3は裁量部分として各メーカーや各機関で仕様が異なる場合がありますので、応援隊等で出動した際には注意が必要です。 当署のトリアージ方法として1次トリアージはSTART変法、2次トリアージはPAT法で実施していますので、これらの順で記載します。
◎タッグ記載の注意点
・簡潔明瞭に記載し、他職種で情報共有できるように略語・専門的過ぎる用語は避ける。
・記載には黒色ボールペンを使用し、複写部分に写るような筆圧で記入する。(水性は滲む恐れがあり、フェルトペンは複写に写らない。)
また、氷点下の場合はボールペンのインクが出ないこともあるので、鉛筆の用意も必要。
・訂正(2重線)、追記(並列または下方)が可能なようにスペースを残し記入。
◎現場到着前(図2)
現場到着前までに分かる情報は事前に記載します。① No.~実施機関別の通し番号 番号だけではなく、複数機関が同時に実施する場合、情報が混合する恐れがあるため、消防名または救急隊名等を併せて記載。② トリアージ実施月日③ 実施者~出動中に実施者を決定し記載④ トリアージ実施機関及び職種
◎1次トリアージ:表面(図2) 1 氏名~不明の場合は「不明」2 年齢~不明の場合は推定年齢3 性別4 住所、電話~時間の余裕があれば記載した方が良いが、迅速性を重視し省略可能。
5 トリアージ実施時刻6 トリアージ実施場所7 トリアージ区分~数字に○を付け、同時に識別色ラベルをもぎる。 ラベルが破損した場合に数字で確認が可能。
図2 現場到着前にやっておくこと
※この後2次トリアージ以後の追加記載があるため、複数
回記入する箇所は上方から詰めて記載します。
◎1次トリアージ:裏面(図3)
・特記事項① トリアージ区分判定の根拠 例)歩行可否、呼吸数、従命反応等② 傷病者の発見場所、救出時の状況など 1次トリアージから医療機関収容まで時間が経過するほど現場状況が不明瞭になるため、受傷機転等を記載しておくことで、医療機関収容後の治療方針に役立つ可能性があり、意識レベル低下時にも重要な情報となる。
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今さら聞けない資機材の使い方62
◎2次トリアージ:表面(図4)
訂正、追記方法について同時に解説します。① 氏名~「消防太郎」と判明。「不明」に2重線を引き訂正。② 年齢~「37歳」と判明。「30代」に2重線を引き訂正。③ 住所・電話番号~個人情報が得られれば、順次記載。④ トリアージ実施時刻~2重線ではなく並列あるいは下方に追記。⑤~⑦ 実施時刻同様に並列あるいは下方に追記。⑧ 症状、傷病名~疑いでも可。⑨ トリアージ区分~Ⅱ(黄)からⅠ(赤)に変化。 Ⅱに×印、Ⅰに〇を付け、同時に識別色ラベルをもぎる。※区分変更があった場合、「変更時間」及び「変更者」を記載。
◎2次トリアージ:裏面 (図5)
追加情報をその都度記載します。① 特記事項~観察所見、処置内容、既往歴、災害弱者等を記載。② 人体図~図にも特記事項に記載した内容等を記載。
図5 2次トリアージ実施内容を太字で表記
◎搬送時(図6)
下記4項目を記載し、指揮本部に1枚目を提出してから搬送開始します。① トリアージ実施時刻(搬送決定時刻)② 実施者(最終確認者)
図3 1次トリアージ、裏面
図4 2次トリアージ実施内容を太字で表記
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今さら聞けない資機材の使い方62
4 おわりに
北海道道北地区MCでは、交通事故等で傷病者が少人数であっても、マンパワーが不足する場合はトリアージを実施するように推奨されています。 交通事故現場でトリアージを実施することは時折ありますが、昨今の自然災害や交通機関の事故、殺傷事件に鑑みると、様々な想定で訓練を実施する必要があると感じています。 今回の内容はあくまで基本であり、所属毎に様々な方針があるかと思いますが、少しでもみなさんの情報・再確認の一助になれば幸いです。
《引用》
1)大友康裕(2017)-標準多数傷病者MCLSテキスト ぱーそん書房
次回は「●●●●●●●●」 の予定です。
著者
氏 名:太おお た
田 りえ出 身:北海道旭川市所 属:大雪消防組合東消防署現 職:庶務係兼消防団事務係拝 命:平成26年4月1日趣 味:映画鑑賞、韓国旅行
③ 搬送機関名④ 収容医療機関名
3 課 題
当署でトリアージ訓練を実施した際に、全体の傷病者数または重症者数が増加するほど、記載漏れが目立つ結果となりました。
・「No.」および「実施機関」を事前に記入
・1次トリアージの必須項目は事前に蛍光ペンで線引き
し積載。現場で該当項目を記入
・2次トリアージでは未記載部分を記入
このような手順にし、一目で分かるようにして救急車に積載しています。
対 策
図6 搬送時内容を太字で表記
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