第8章研究,製造組織,施設の管理 (医薬品分野において)2...
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第8章 研究,製造組織,施設の管理(医薬品分野において)
制作日:2008年12月10日制 作:早稲田大学
平沢 泉
標準化教育プログラム[ 個別技術分野編-化学分野 ]
本資料は,経済産業省委託事業である「平成20年度 国内人材育成等基盤体制強化事業 (標準化に関する教育体制整備)」の成果である。
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研究,製造組織,施設の管理 2
本章では,主として医薬品分野における研究,製造設備,施設の管理に必要
不可欠となっている枠組みに関する国際的な標準化の取り組みについて学習
する。
医薬品開発の効率化を目的とした新薬承認審査の考え方,ガイドラインを
示したICH(日米EU医薬品規制国際会議)を学習する。
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2
GMP,バリデーション,GLPなどの国際規格の中味や考え方について開智する。3
学習のねらい ・・・・・ 第8章 研究,製造組織,施設の管理
3
研究,製造組織,施設の管理 3
1 ICHとは
2 GMPの概念
3 製造管理と品質管理などの決めごと
4 GLPとは
5 バリデーションとは
6 GMP省令で定める構造設備
まとめ
演習問題(A・B)
参考資料
目 次 ・・・・・ 第8章 研究,製造組織,施設の管理
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研究,製造組織,施設の管理 4
1 ICHとは ① ・・・・・ 目的と役割
• ICH : International Conference on Harmonisationof Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use(日米EU医薬品規制調和国際会議)
• 新薬承認審査の基準を国際的に統一し,医薬品の特性を検討するための非臨床試験・臨床試験の実施方法やルール,提出書類のフォーマットなどを標準化する。
• 目的:医薬品開発の効率化
〔出所 : http://www.pmda.go.jp/ich/ichtoha.htm〕
◆ 解説
ICHとは
ICHとは,International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use(日米EU医薬品規制調和国際会議)の略称。日本・米国・EUそれぞれの医薬品規制当局と産業界代表で構成され,他にオブザーバーとして3組織が参加している。
ICHの目的は,各地域の規制当局(日本では厚生労働省)による新薬承認審査の基準を国際的に統一し,医薬品の特性を検討するための非臨床試験・臨床試験の実施方法やルール,提出書類のフォーマットなどを標準化することにより,製薬企業による各種試験の不必要な繰り返しを防いで医薬品開発・承認申請の非効率を減らし,結果としてより良い医薬品をより早く患者のもとへ届けることである。
ICHでは,各地域の専門家により,医薬品の承認に際して必要な品質・有効性・安全性に関わるデータ収集などについてガイドライン(科学的・倫理的に適切と考えられる指針)を作成し,公表している。ガイドラインがICHで合意(調和)に至ると,そのガイドラインを適用した医薬品開発や臨床試験,医薬品申請が各地域で可能となるよう,各国が法的な整備も含めた必要な措置を取る。日本では,ICHで合意されたガイドラインは厚生労働省医薬食品局から通知される。
◆参考資料
1) (独)医薬品医療機器総合機構 : http://www.pmda.go.jp/ich/ichtoha.htm
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研究,製造組織,施設の管理 5
1 ICHとは ② ・・・・・ ガイドライン
• 医薬品の承認に際して,
• 必要な品質・有効性・安全性に関わるデータ収集などについてガイドライン(科学的・倫理的に適切と考えられる指針)を作成し,公表する 。
◆ 解説
ICHの歴史
日本・米国・ヨーロッパでは,医薬品の販売開始前に政府による評価・承認を行うため,それぞれ独自に法制度を整備してきた。特に1960年代から1970年代にかけては,各国で急速に法令やガイドラインが整備され,新医薬品の品質,有効性及び安全性についてのデータ報告・評価の体制が整った。 しかし,新医薬品の品質,有効性,安全性を評価するという基本は共通であったものの,承認申請の際の詳細な技術的要件は地域により異なっていた。製薬企業の国際化に伴い,各地域の規制要件を満たすため,時間とコストのかかる重複した試験を数多く行う必要があった。 そのため,拡大する医薬品開発コストへの懸念を背景に,必要な患者に安全で有効な新医薬品をより早く提供するため,各地域の医薬品承認審査の基準の合理化・標準化が必要となり,1990年4月,日本・米国・ヨーロッパの各医薬品規制当局と業界団体の6者によりICHが発足した。それ以来,ICH運営委員会は毎年2~3回の会合を続けている。また,ICH国際会議も2~3年に1回程度行われている。ICH発足以来,50を超えるガイドラインが合意(調和)に至り,各地域で実施されてきた。新医薬品の品質・有効性・安全性の評価に関わる技術的なガイドラインだけでなく,最近では承認申請資料の形式,市販後安全体制などにもその対象は広がっている。また,ICHに参加していない地域との交流,情報の共有化も進んでいる。
これまでに開催されたICH国際会議
第1回 1991年11月 ブリュッセル第2回 1993年10月 オーランド第3回 1995年11月 横浜第4回 1997年7月 ブリュッセル第5回 2000年11月 サンディエゴ第6回 2003年11月 大阪
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研究,製造組織,施設の管理 6
1 ICHとは ③ ・・・・・ 医薬品の開発に関連する規制
基礎研究
非臨床試験
臨床試験(治験)
承認申請と承認
薬価収載と発売
市販後
医薬品有効成分となる新規物質の合成・発見
新規物質の有効性と安全性の研究(動物が対象)
ヒトを対象とした有効性と安全性のテスト
第Ⅰ相 : 比較的少数の健康な人対象
第Ⅱ相 : 少数の患者が対象
第Ⅲ相 : 多数の患者が対象
企業から厚生労働省への承認申請と(独)医薬品医療機器総合機構による審査を経て承認
厚生労働省による薬価の設定と薬価基準収載
発売後の安全性や使用法のチェック
GLP
GCP
治験薬GMP
承認後
GMP
主な規制
・制度
◆ 解説
医薬品の開発過程でどのような規制があり,どのように対応していくか,図を眺めて理解を深めよう。
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研究,製造組織,施設の管理 7
2 GMPの概念 ①
・ 「GMP(Good Manufacturing Practice)」
・ 「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準」を指す。
・ 【患者さんが安心してその医薬品を使えるために,医薬品製造所が行うべきこと。】
・ 【誰が作業しても,いつ作業しても,必ず同じ品質・高い品質の製品を作るために,行うべきこと。】
◆ 解説
GMPは製品の製造とその品質管理を規制する。一方,GLPは研究開発を規制するものである。GMPはGLPに先立って実施された関係で,製薬会社はGMPに慣れており,GLPはGMPと似た手法で運用される。大きな違いは,対象になる資料とデータである。
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研究,製造組織,施設の管理 8
2 GMPの概念 ② ・・・・・ 目的
GMP=Good Manufacturing Practice(医薬品製造管理及び品質管理に関する基準)
目的:① 人為的な誤りを 小限にする。
② 汚染及び品質低下を防止する。
③ 高い品質を保証するシステムを設計する。
◆ 解説
GMPは,医薬品が常に使用目的に適した品質で製造管理されていることを証明するために開発された規制である。1963年に,米国において,安全性,有効性を含む包括的な医薬品の品質に対する国民の要求に応えるために導入された。米国では,cGMP(current GMP)と呼ばれ,FDAが1996年に大幅改訂し,1998年に交付した。FDAのcGMPが,医薬品製造会社の国際標準になっている。EUのGMPは,加盟国に対する最低限の製造基準として制定された。
◆ 参考資料
1) cGMP : http://www.fda
2) EU規制 : http://dg3.eudra.org
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研究,製造組織,施設の管理 9
2 GMPの概念 ③ ・・・・・ ポイント
1 人による間違いを 小限にする。
2 医薬品が汚染されたり,品質が低下するのを防ぐ。
3 高い品質を保つ仕組みをつくる。
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研究,製造組織,施設の管理 10
2 GMPの概念 ④ ・・・・・ 管理主要項目
・ 従業員,組織,コンサルタント・ 施設や設備の構造・ 文書化及び記録・ 原材料,中間体,製品の管理・ 製造工程内管理・ 試験室管理・ バリデーション・ 逸脱管理,変更管理・ 苦情及び回収の処理
これらのことを法律に従って「確立」,「実行」することがGMPを遵守していることになる。
◆ 参考資料
1) 標準化教育プログラム 個別技術分野編 化学分野 第3章 化合物命名法と国際単位系
2) 標準化教育プログラム 個別技術分野編 化学分野 第4章 試薬の規格
3) 標準化教育プログラム 個別技術分野編 化学分野 第5章 分析バリデーション
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研究,製造組織,施設の管理 11
2 GMPの概念 ⑤ ・・・・・ ハードとソフト
ハード(設備)
1 間違いを防ぐことのできる設備・環境の製造所であること。
2 「衛生的」な設備・環境の製造所であること。
3 「高い品質を保ち続けることができる」設備・環境の製造所であること。
ソフト(決まり事,人の行動)
1 ルールを決めて,その約束事を書類に残す。
2 ルールどおりに毎日清掃する。それを記録に残して証拠にする。
3 ときどき,その内容を見直して検討し,改善していく。
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研究,製造組織,施設の管理 12
2 GMPの概念 ⑥ ・・・・・ 医薬品原薬の製造設備
・ 合成と醗酵 : 化学反応や生化学反応を利用して,目的成分を生成
・ 分離精製 : 不純物,固形分を除去し,濃縮・精製を行い,高純度な結晶を得る。
・ 回分 : 医薬品は,多品種少量なので,回分的に生産する。
・ 不純物の混入,不純物の洗浄性を考慮した設備になる。
◆ 解説
分離精製では,イオン交換,吸着,クロマト分離,膜分離,ろ過など,目的物質を濃縮,又は,不純物を分離する分離単位操作が用いられる。
回分と連続 : 医薬品は多品種・少量生産で,不純物の混入を嫌うので,回分で,2~10m3規模の反応器が用いられる。
不純物の洗浄に各種溶剤を使用するが,この溶剤が不純物として残留する可能性を十分留意する。
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研究,製造組織,施設の管理 13
医薬品
• 医薬品– API (原薬)
• 1~90 wt %
• 有機化合物
– Excipients (賦形剤,補形剤)
• Disintegrants(崩壊剤)
• Fillers(充填剤)
• Lubricants(潤滑剤)
• Buffers(緩衝剤)
• 投与形態– 経口: タブレット, カプセル
– 注射
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研究,製造組織,施設の管理 14
Solution
Intestine
Drug Absorption Process
Disintegration
Granules
DissolutionWettablity
CapsuleTablet
Disintegration
Powder
Absorption
Membrane
Ionic Drug
No-Ionic Drug
Blood
Non-Ionic Drug
Ionic Drug
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研究,製造組織,施設の管理 15
医薬品製造プロセスへの結晶転移の影響
安定型 不安定型
粉砕圧密
粉体流れ
生体適合性
湿度温度
結晶成長
溶解度
崩壊性
溶解
準安定型
Crystal growth
圧密性
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研究,製造組織,施設の管理 16
2 GMPの概念 ⑦ ・・・・・ Process Flow Sheet (プロセスフローシート)
反応器
秤量室 ( Unclassified 100,000 )
貯留槽ドラム
スプリットバルブ
液
液層反応
反応器
晶析
隔離
粉砕と調剤( クラス 100,000 )
ろ過と乾燥隔離
原料
Chute
分離器
ろ過
ドラム
ミル
製品
◆ 解説
青の領域は管理区域で,空気中の浮遊粒子数が厳密に管理されている。
ろ過は遠心ろ過,加圧式ろ過器,乾燥はトレイ型や回転式乾燥機などが利用される。
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研究,製造組織,施設の管理 17
クリーンルームの清浄度
清浄度クラスと言い,米国連邦規格(USA Fed.Std.209E)では,1ft3(立方ft≒28.3 liter)中の微粒子で表します。
累積
濃度
(個
/m
3)
累積
濃度
(個
/ft
3)
粒径(μm)JIS B 9920,ISO14644-1の洗浄度基準
粒径(μm)Fed.Std.209E の洗浄度基準(English)
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研究,製造組織,施設の管理 18
Receiver
Reactor
HEPA filter
HEPA filter
Vacuum PumpCold Trap
Exhaust
Exhaust
Condenser
Rupturedisk
Vacuum Line
Ventilation Line
A
B
C
B-2
B-1
Scrubber
Local airexhauster
HEPA filter
Local airexhauster
HEPA filterCleanArea
Hazard Area
HEPA filter
D
E
Exhaust
2 GMPの概念 ⑧・・・・・ 原薬製造設備の機器構成例~反応釜廻り~
スクラバー
排気
ハザード地域
真空ポンプ
反応釜
清浄な領域
ヘパフィルター
コンデンサー
凝縮液受槽
排気ライン
◆ 解説
空気中に有害物質が流出したり,空気中の微粒子などが製造過程で混入しないように,各種の精密なフィルターが設けられている。
HEPAフィルターとは空気清浄が求められる分野で使用される高性能フィルターで,High Efficiency Particulate Air Filterの略。素材は直径1~10μm以下のガラス繊維のろ紙でできており,JISで『定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率を持ち,かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルター』と規定されている。
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研究,製造組織,施設の管理 19
2 GMPの概念 ⑨ ・・・・・ 異物の混入を防ぐ
<人から持ち込まれる異物を防ぐ>例えば,髪の毛,衣服のほこり,手指の油,話をした時に飛ぶ唾液。
これを防ぐためには帽子をかぶる,衣服は専用の作業着を着る,手指は消毒する。マスクをする。製造行為に必要でないものは持ち込まない。このような「ルール」で人から持ち込まれる異物を防ぐ。
<空気から持ち込まれる微生物や異物を防ぐ>空調の出入り口にフィルターをつける。清潔にしたい部屋と廊下に
圧力の差をつけて廊下から空気が入り込まないようにする(差圧管理)。
片方のドアを開けている時には,もう片方のドアは開けないことにする。このような「ルール」で異物を防ぐ。
<防虫対策という視点>清潔にしたい部屋には,外との窓をなくす,入り口に黄色いカーテ
ンや防虫ランプをつける(黄色は虫が嫌う色なので),ダンボールをそのまま室内に持ち込まないようにする。
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研究,製造組織,施設の管理 20
3 製造管理と品質管理などの決めごと ① ・・・・ ルール
• 製造管理→医薬品を作る作業に関するルール
• 品質管理→出来上がった医薬品の試験検査に関するルール
• 衛生管理→設備や人の清潔・衛生に関するルール,及び人の健康管理のルール
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研究,製造組織,施設の管理 21
3 製造管理と品質管理などの決めごと ②・・・・ 基準書と手順書
• 製造管理基準書,品質管理基準書,衛生管理基準書
• 手順書 : 製品手順書
・製造所からの出荷の管理手順書・変更管理手順書・逸脱管理手順書・品質等に関する情報及び品質不良等の処理手順書
・回収処理手順書・自己点検手順書・教育訓練手順書・文書及び記録管理手順書・バリデーション手順書
◆ 参考資料
1) 標準化教育プログラム 個別技術分野編 化学分野 第5章 分析バリデーション
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研究,製造組織,施設の管理 22
〔出所 : http://www.tokyo-eiken.go.jp/pharma/〕
3 製造管理と品質管理などの決めごと ③・・・・・ ソフトとハード
人による間違いを 小限にする 医薬品が汚染されたり,品質が低下するのを防ぐ
・ダブルチェックできる体制・標準的な決まりや手順を設定
・行った作業は記録に残す・職員への教育訓練など
・作業するに十分な広さ
・仕切り
・設備・工程の標示 など
・職員への衛生教育・作業室の清掃など手順化する・複数品目を同時に製造しない・作業室への立入制限・整理整頓 など
ソフト ハード ソフト ハード
・空気の汚染を防ぐ設備
・各作業室を専用化
・作業室の床・壁・天井は清掃
しやすいものにする など
・自己点検・品質部門と製造部門の独立・設備・機械の定期点検・校正・各工程のバリデーション・品質情報を収集し,製造や品質管理の改善につなげる
・記録の整備 など
・作業室・機械・設備が,製
造工程を考慮し合理的に配置
・必要な試験が適切にできる
・試験設備 など
ソフト ハード
高い品質を保つ仕組みをつくる
◆参考資料
1) 東京都健康安全研究センター広域監視部 : http://www.tokyo-eiken.go.jp/pharma
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研究,製造組織,施設の管理 23
4 GLPとは ① ・・・・・ 目的
GLP=Good Laboratory Practice (優良試験所基準)
目的: 化学物質に対する各種安全性試験成績の信頼性の確保
<経緯>1981年 : OECDにおけるGLP原則制定
(1997年 改訂)1984年(昭和59年)3月 : 化審法でGLP制度を導入
(OECDのGLP原則に整合)
◆ 解説
GMPは,製品の製造とその品質管理を規制する。一方,GLPは研究開発を規制するものである。GMPは,GLPに先立って実施された関係で,製薬会社はGMPに慣れており,GLPは,GMPと似た手法で運用される。大きな違いは,対象になる資料とデータである。
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研究,製造組織,施設の管理 24
• GLP (Good Laboratory Practice : 医薬品の安全性に関する規則)
• ヒト,動物用医薬品の安全性並びに有効性,食品添加物の並びに色素の安全性を証明することを製造者,販売者に義務付ける。
4 GLPとは ② ・・・・・ 主旨
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研究,製造組織,施設の管理 25
4 GLPとは ③ ・・・・・ 制度の運用
試験施設毎に以下項目についてのGLP基準への適合性を確認できて初めてその施設で行った試験の成績を信頼することができる。
・ 運営管理・試験設備・試験計画・ 内部監査体制・ 信頼性保証体制・ 試験結果等
(試験施設が継続して適合性確認を受ける場合は,確認更新が3年毎に必要)
〔出所 : http://www.eisai.co.jp/〕
◆ 参考資料
1) エーザイ株式会社 : http://www.eisai.co.jp/
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研究,製造組織,施設の管理 26
5 バリデーションとは ① ・・・・・ GMP
• 「構造設備や手順,工程が期待される結果を与えることを検証し,これを文書とすることによって,目的とする品質に適合する製品を恒常的に製造できることを目的とする。」
• 使おうとする製造設備が
• 行おうとする製造方法が
→目的とする医薬品を製造するのに, 適な条件であることを科学的に保証すること。
◆ 解説
GLP,GMP規制の分析試験室に対する要求事項の一つがバリデーションである。機器,ソフトウェア,システム,分析法,データをバリデーションしなければならない。バリデーションは一回限りの作業でなく,機器を使い続ける限り必要になる。
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研究,製造組織,施設の管理 27
5 バリデーションとは ② ・・・・・ 科学に保証するとは?
〔出所 : http://www.tokyo-eiken.go.jp/pharma/〕
◆参考資料
1) 東京都健康安全研究センター広域監視部 : http://www.tokyo-eiken.go.jp/pharma
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研究,製造組織,施設の管理 28
5 バリデーションとは ③ ・・・・・ 文書・記録
1 文書で決められたとおりに作業すること。
2 作業した内容や結果を書き込む「記録」はボールペンを使う。
3 空欄のないようにすること。
4 何か調べたときに「問題なし」だったら,「問題なし」という記録を残す。
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研究,製造組織,施設の管理 29
5 バリデーションとは ④ ・・・・・ 法律要件としてのGMP
•平成17年4月1日以降
製造販売業の許可を持つ,取引相手側のライセンスに直接影響するようになった。
★ GMP適合を得ることは,「医薬品の製造販売承認」(つまり他社ライセンス)に必要な条件とされることになった。
→医薬品製造所でGMP不適合となってしまったら,取引相手である製造販売業者のライセンス(承認)の審査がストップしてしまう。
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研究,製造組織,施設の管理 30
5 バリデーションとは ⑤ ・・・・・ GMP組織
〔出所 : http://www.tokyo-eiken.go.jp/pharma/〕
各業務に必要な責任者
各業務に必要な職員
各業務に必要な責任者
各業務に必要な職員
協力
独立関係
管理監督管理監督報告報告
・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・
製造管理者
製造部門 品質部門
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研究,製造組織,施設の管理 31
5 バリデーションとは ⑥ ・・・・・ 薬局等構造設備規則
★ 医薬品を製造したり試験したりするのに必要な設備・器具を備える。
★ 製品や原料,資材が混ざったり汚染されたりすることを防ぐこと。
★ スムーズな作業ができる配置で,清掃や保守が容易にできること。
★ 手洗いやトイレ,着替え場所を有すること。
★ 照明や換気が適切で,清潔なこと。
★ 清浄でない場所から区別されていること。
★ 適切な面積を確保すること。
★ 防虫などのための構造があること。
★ 廃水や廃棄物の処理に必要な設備・器具があること。
★ 有毒ガスを扱う施設では,その処理に必要な設備を有すること。
★ 製品などを他と区別して,衛生的に保管する設備を有すること。
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研究,製造組織,施設の管理 32
6 GMP省令で定める構造設備 ①
1 清掃・保守が(手順書に基づいて)適切に行われている衛生的な設備であること。
2 有毒ガスを扱う施設では,その処理に必要な設備を有すること。
3 作業室は製品の種類や剤形,製造工程に応じて埃や微生物の汚染を防ぐ施設であること。
4 行う作業の内容によって,部屋を区別すること。(秤量作業,調製作業,充填作業,閉そく作業)。他の部屋に行くための廊下代わりにならないようにする。
5 作用の強い一部の医薬品は,作業の部屋を区別したり空調を他と別系統にしたりすること。
6 医薬品の製造に十分な水(質・量)を確保すること。
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研究,製造組織,施設の管理 33
6 GMP省令で定める構造設備 ② ・・・・・ バリデーションの必要性
• 行おうとする製造設備や方法が,目的とする医薬品を製造するのに 適な条件であることを保証すること。→ 試験工程及び点検,原料・資材・製品保管,
製造工程の点検及びデータの記録・保管
◆ 解説
コンピュータ化されたシステムで最も重要な点は,一貫性,機密性,完全性とトレーサビリティである。FDAが査察する時に,最も調査される。システム,ソフトウェア,分析方法,データに関するアクセス権とトレーサビリティも対象になる。記録の削除,変更に対する自動監査証跡も調査対象となる。
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研究,製造組織,施設の管理 34
6 GMP省令で定める構造設備 ③ ・・・・・ 試験工程及び点検
• 試験検査を実施するとき : 試験検査手順書(SOP)データの記録
• 外部の試験検査設備の利用
• 機器の点検と校正
• 試薬・標準品の管理
• 参考品の保管
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研究,製造組織,施設の管理 35
6 GMP省令で定める構造設備 ④・・・・・原料・資材・製品保管
• 保管場所のルールはどのようなものがあるか?保管場所の区別や温度湿度管理など,ルールどおりに行う。
• 区別 : 保管場所は,試験,検査合否判定の前後,製品出荷可否など
• 温度・湿度管理
• 整理整頓
• 清潔
• 保管・出納管理記録
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研究,製造組織,施設の管理 36
6 GMP省令で定める構造設備 ⑤ ・・・・・ 製造工程
• 設備の清掃・保守・洗浄
• 作業ルールを守る
• 衛生的に(作業室への入室)
• 製造工程全般における必要事項を記載した製造指図書
• ダブルチェック(例 : 秤量)
• 品質部門への報告
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研究,製造組織,施設の管理 37
6 GMP省令で定める構造設備 ⑥ ・・・・・ 出荷可否
製造工程,試験工程を終えたら,出荷可否判定を行います。出荷可否判定は,品質部門のあらかじめ指定された適切な人が行う。
a) 製造部門で作成した記録,品質部門での記録など総合的に判断して「製造所としての出荷可否」を判定する。出荷可否判定を行う時のルールはあらかじめ手順書に定めてあるはずなので,その通りに行う。「出荷可」となるまでは出荷することはできない。
b) 「製造業の出荷可否」を判定した後に,製造販売業者が 終的に「市場への出荷可否」を判定することで,製品の流通が可能になる。同一法人で製造業と製造販売業と二つの許可を持つ会社の場合,「製造業の出荷可否」と「製造販売業の市場への出荷可否」が混同されていることが見受けられる。「製造業の出荷可否」を判定した後で,総合的に「製造販売業の市場への出荷可否」を判定するという流れになる。それぞれの「出荷可否」を,混同しないように注意する必要がある。
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研究,製造組織,施設の管理 38
6 GMP省令で定める構造設備 ⑦ ・・・・・ 臨時対応
・ 定められた製造管理や品質管理の方法から外れた作業をしてしまった時には,逸脱管理,定められた製造管理や品質管理の方法を変更するときには変更管理といった臨時対応についても手順書で定める。それぞれの逸脱や変更の内容に対し,品質に与える影響を評価して,その評価結果に合った必要な対応を取ることになる。こうした臨時の出来事に対しても,手順書に従って行動することになる。
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研究,製造組織,施設の管理 39
6 GMP省令で定める構造設備 ⑧ ・・・・・ 製品流通後の対応
・ 製品が流通した後でもGMPで行うべきことはいくつもある。
製品や資材の品質に関する情報を入手したら「品質情報処理」,品質不良などが発生した場合には「回収処理」,定期的に自社の業務を見直す「自己点検」,従業員に対する「教育訓練」がある。また,日常的に文書や記録の管理,必要に応じてバリデーションを行う。これらについても,手順書に従う。
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研究,製造組織,施設の管理 40
まとめ ・・・・・ 第8章 研究,研究組織,施設の管理
研究,製造組織,施設の管理手法として,GMP,GLPを講述した。
ICHなどの国際標準の在り方を背景に,医薬品の品質を保証する決まりが設けられ,そのための標準化が進められている。
この標準化は,①人為的な誤りを 小限にする。②汚染及び品質低下を防止する。③高い品質を保証するシステムを設計する。
ことを目的にしていることに留意したい。
1
2
3
41
研究,製造組織,施設の管理 41
1 ICHの目的と役割について述べなさい。
2 医薬品GMPのポイントを3つ挙げなさい。
3 GLPについて,その目的と意義を記述しなさい。
4 バリデーションを行う上での留意点を挙げなさい。
演習問題 A ・・・・・ 第8章 研究,製造組織,施設の管理
◆ 解説
1 p.4~5を参照
2 p.7~9を参照
3 p.23~25を参照
4 p.28,31を参照
42
研究,製造組織,施設の管理 42
1 GMPの管理項目を3つ挙げて,それぞれについて説明しなさい。
2 医薬品製造設備において,不純物の混入を防止するために取られる対策について記述しなさい。
演習問題 B ・・・・・ 第8章 研究,製造組織,施設の管理
◆ 解説
1 p.10~11を参照
2 p.19を参照
43
研究,製造組織,施設の管理 43
◆ インターネット
1) (株)第一三共 http://www.daiichisankyo.co.jp/
2) (株)エーザイ http://www.eisai.co.jp/
3) (独)医薬品医療機器総合機構 http://www.pmda.go.jp/ich/
4) 健康安全研究センター広域監視部薬事監視指導課
http://www.tokyo-eiken.go.jp/pharma/
参考資料 ・・・・・ 第8章 研究,製造組織,施設の管理