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第Ⅰ部 茶生産に係る基礎情報および 国内外のWFP等算定・活用事例の収集

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第Ⅰ部

茶生産に係る基礎情報および

国内外のWFP等算定・活用事例の収集

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第Ⅰ部 茶生産に係る基礎情報および国内外のWFP等算定・活用事例の収集

1

第Ⅰ部 目次

1. 茶の基礎情報................................................................................................ 2

1.1. 国内外における日本茶の生産状況 ........................................................................... 2

国内における茶の需給状況 .............................................................................. 2 1.1.1.

国外における茶の需給状況 .............................................................................. 5 1.1.2.

1.2. 日本茶の分類.......................................................................................................... 10

1.3. 茶園管理の概要 ...................................................................................................... 17

定植から摘採まで ........................................................................................... 17 1.3.1.

茶園管理の技術 ............................................................................................... 19 1.3.2.

2. 国内事業者へのヒアリング ........................................................................ 22

2.1. ヒアリングの目的 .................................................................................................. 22

2.2. 製茶メーカーへのヒアリング結果 ......................................................................... 22

2.3. 飲料メーカーへのヒアリング結果 ......................................................................... 26

3. 国内外における茶・コーヒーに係る WFP等の算定事例の収集................... 29

3.1. 事例 1:コーヒーと紅茶を対象とした CFP と WFP の算定事例 ......................... 29

3.2. 事例 2:全球レベルでの茶の WFP 比較の事例 .................................................... 31

3.3. 事例 3:立地の違う茶園における CFP 比較の事例 .............................................. 32

3.4. 事例 4:緑茶飲料の消費形態に着目した CFP 算定事例 ....................................... 34

3.5. 事例 5:インドにおける紅茶の有機栽培と慣行栽培の環境影響評価の事例 ........ 36

3.6. 事例 6:グアテマラにおけるコーヒーの環境影響評価事例 ................................. 38

4. 欧州における環境フットプリント事業の動向............................................ 39

4.1. 環境フットプリント事業の概要 ............................................................................ 39

4.2. コミュニケーションの位置づけ・狙い、検討状況 ............................................... 40

4.3. コミュニケーションの活用例 ................................................................................ 41

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1 茶の基礎情報

1.1 国内外における日本茶の生産状況

2

1. 茶の基礎情報

1.1. 国内外における日本茶の生産状況

国内における茶の需給状況 1.1.1.

日本国内では、2010 年には 85,000t 生産されている。

消費量は、国民一人あたりでみると 700~800g 程度で横ばいとなっている。(図表

1-1、図表 1-2、図表 1-3)。

緑茶飲料の購入動向をみると、茶葉の一世帯あたりの購入金額は減少傾向である一方、

ペットボトルを含む緑茶飲料は 2004 年には茶葉を上回り、増加傾向となっている。(図

表 1-4)

輸出額は増加傾向にあり、2012 年と比べて 1.5 倍に増加しており、主な輸出先はアメ

リカが占め、日本茶の主要な安定市場となっている。

農林水産省は、2020 年までに茶の輸出額を 150 億円(2012 年比 3 倍)に拡大す

ることを目標としている(図表 1-5)。

図表 1-1 生産量及び作付面積の推移3

3 農林水産省,お茶をめぐる事情(平成 27 年 1 月時点版)

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

栽培面積

(ha)

荒茶生産量

(t)

年次

荒茶生産量

栽培面積

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1 茶の基礎情報

1.1 国内外における日本茶の生産状況

3

図表 1-2 緑茶の需給状況(グラフ)4

図表 1-3 緑茶の需給状況

年度 国内生産

量(t)

輸入量

(t)

輸出量

(t)

国内消費量

(t)

一人あたり消

費量(g)

(参考)

国内生産量/

国内消費量

S40 75,874 920 4,653 72,141 727 105%

45 90,944 9,063 1,531 98,476 941 92%

50 105,446 8,860 2,198 112,108 1,002 94%

55 102,300 4,396 2,669 104,027 889 98%

60 95,500 2,215 1,762 95,953 793 100%

H 元 90,500 2,854 635 92,719 752 98%

5 92,100 5,481 305 97,276 780 95%

10 82,600 6,399 652 88,347 698 93%

11 88,500 12,047 755 99,792 788 89%

12 89,300 14,328 684 102,944 811 87%

13 89,800 17,739 599 106,940 840 84%

14 84,200 11,790 762 95,228 747 88%

15 91,900 10,242 760 101,382 794 91%

16 100,700 16,995 872 116,823 915 86%

17 100,000 15,187 1,096 114,091 893 88%

18 91,800 11,254 1,576 101,478 795 90%

19 94,100 9,591 1,625 102,066 799 92%

20 95,500 7,326 1,701 101,125 792 94%

21 86,000 5,863 1,958 89,905 705 96%

22 85,000 5,906 2,232 88,674 692 96%

23 84,100 5,393 2,387 87,106 682 97%

24 88,000 5,473 2,351 91,122 715 97%

25 84,800 4,875 2,942 86,733 682 98%

4 全国茶生産団体連合会・全国茶主産府県農協連連絡協議会資料より、みずほ情報総研作成。

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

S40 50 60 5 11 13 15 17 19 21 23 25

単位

(t) 国内生産(t)

輸入量(t)

輸出量(t)

国内消費量(t)

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1 茶の基礎情報

1.1 国内外における日本茶の生産状況

4

図表 1-4 茶系飲料の消費推移5

図表 1-5 日本茶の輸出の状況6

5 総務省家計調査より、みずほ情報総研作成 6 農林水産省(2015)平成 27 年度茶の輸出拡大方針

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014

一世帯あたり支出金額(円

/年)

緑茶 紅茶 他の茶葉 茶飲料

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1 茶の基礎情報

1.1 国内外における日本茶の生産状況

5

国外における茶の需給状況 1.1.2.

世界の茶生産状況を見ると、最も生産量が多いのは中国、次いでインドであり、日本

は世界 10 位の生産国である(図表 1-6)。

茶の消費量が多いのは、生産量も多い中国、インドである(図表 1-7)。

一方、一人あたり消費量を見ると、最も消費量が多いのはクウェートで、次いで

アイルランド、イギリスが多い。この他、カタールやトルコ等、中東・アフリカ

地域で一人あたり消費量が多い傾向がある(図表 1-8)。

日本の主要輸出国である米国で、緑茶輸入実績が最も多い国は中国であり、日本は 2

位となっている(図表 1-9)。

在米の日本茶インストラクターや、全米茶業協会会員を対象としたアンケート結

果7では、米国において日本茶を主に飲用する場所は家庭内、次いで日本料理店が

多く、また飲用方法はティーバッグが最も多いことが示されている(図表 1-10 図

表 1-11)。

また、米国において日本茶が好まれる理由としては、「美味しいから」、「健康に良

いから」、「リラックスするから」等が挙げられている。

他国産の緑茶と比較して、日本産緑茶が有する優位性としては、「品質(旨味(ア

ミノ酸含有量))」や「文化性」が挙げられている。

図表 1-6 世界の茶生産国(上位 10 か国)8

※表中の緑のデータバーは、生産量の大小を示す。

7 平成 26 年度茶学総合研究センター実績報告書(4)茶の高付加価値化とマーケティング 8 FAOSTAT(http://faostat3.fao.org/download/Q/QC/E)より、みずほ情報総研作成

2011 2012 2013

1 中国 1,640,310 1,804,655 1,939,457

2 インド 1,095,460 1,135,070 1,208,780

3 ケニア 377,912 369,400 432,400

4 スリランカ 327,500 330,000 340,230

5 トルコ 221,600 225,000 212,400

6 ベトナム 206,600 216,900 214,300

7 インドネシア 150,200 143,400 148,100

8 イラン 103,890 158,000 160,000

9 アルゼンチン 92,892 82,813 105,000

10 日本 82,100 85,900 84,800

生産量(t)順位

国名

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1 茶の基礎情報

1.1 国内外における日本茶の生産状況

6

図表 1-7 国別茶の消費量(上位 25 か国)9

図表 1-8 国別茶の一人あたり消費量(上位 25 か国)

9 市川園 HP(http://museum.ichikawaen.co.jp/knowledge/oversea.php)

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1 茶の基礎情報

1.1 国内外における日本茶の生産状況

7

図表 1-9 米国における緑茶輸入実績(2011 年)10

国名 数量

数量

シェア 金額

金額

シェア 単価

トン % 千 USD % USD/kg

①中国 13,570 69.8 44,330 39 3.27

②日本 1,419 7.3 31,164 27 21.96

③カナダ 337 1.7 10,524 9 31.23

④ドイツ 701 3.6 4,629 4 6.60

⑤インド 606 3.1 3,512 3 5.80

⑥モロッコ 158 0.8 3,350 3 21.20

⑦スリランカ 356 1.8 2,851 3 8.01

⑧台湾 327 1.7 2,536 2 7.76

⑨イギリス 119 0.6 1,297 1 10.90

⑩フランス 21 0.1 666 1 31.72

その他 1,820 9.4 9,064 8 4.98

計 19,434 - 113,924 - 5.86

10 農林水産省(2014)茶の輸出戦略(参考資料)

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1 茶の基礎情報

1.1 国内外における日本茶の生産状況

8

図表 1-10 日本茶を主に飲用している場所の比率 7

※調査数:米国 60、台湾 35

図表 1-11 日本茶の主要な飲用方法の比率 7

※調査数:米国 37、台湾 36

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1 茶の基礎情報

1.1 国内外における日本茶の生産状況

9

図表 1-12 中国の国別輸出量(緑茶)11

図表 1-13 中国の国別輸出量(紅茶)11

11 日本中国茶協会 HP(http://chinatea.org/sanchi_seisan.html)

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1 茶の基礎情報

1.2 日本茶の分類

10

1.2. 日本茶の分類

日本茶は、製造方法、産地、品種、製造の時期・季節等の観点から分類される(図表 1-14)。

図表 1-14 日本茶の分類

分類方法 概要

①製造方法による分類 主に以下3つに大別される

不発酵茶(緑茶)

半発酵茶(ウーロン茶)

発酵茶(紅茶)

②産地による分類 産地ごとに分類される。

(静岡茶、鹿児島茶、伊勢茶等)

③品種による分類 現在、農林水産省「農林認定品種データベース12」には、57 品種

が登録されている

やぶきた(日本の栽培面積の約 75%を占める代表品種)

ゆたかみどり(やぶきたに次いて栽培面積が多い煎茶用品種)

おくみどり(鹿児島、京都を中心に九州・近畿地方で主に栽

培される煎茶用品種)

さみどり(碾茶・玉露用品種。京都の奨励品種) 等

④製造の時期・季節によ

る分類

摘み取った時期(茶期)により分類される。静岡県の場合は以下。

一番茶(4 月中旬~5 月中旬)

二番茶(6 月中旬~7 月中旬)

三番茶(7 月下旬~8 月上旬)

四番茶・秋冬番茶(9 月下旬~10 月上旬)

① 製造方法による分類

発酵方法の違いによって、緑茶等の不発酵茶、ウーロン茶等の半発酵茶、紅茶等の発

酵茶の 3 つに大別される(図表 1-15)。

生産・加工方法の違いの観点からは、図表 1-16 に示すように分類される。

図表 1-15 発酵方法に違いによる茶の分類13

発酵方法 例 概要

不発酵茶 緑茶 製造の第一工程で加熱により茶葉中の酸化酵素の活性を止める

のが特徴。

加熱方法としては、日本独特の蒸気で蒸す方法や九州地方の一部

や中国で用いられている釜炒りの方法がある。

発酵が行われないため、茶葉の緑色がよく保存され緑茶と呼ばれ

る。

発酵茶 紅茶

酸化酵素の活性を十分利用して製造したもの。

お茶を揉む前に、葉をしおれさせ後に湿度の高い部屋で充分に発

酵させるため茶葉タンニンの酸化重合の結果、黒褐色となり、紅

茶と呼ばれる。

半発酵茶 ウーロン茶等 お茶を揉む前に葉をしおれさせる工程はあるものの、途中、釜な

どで炒り酸化酵素の活性を止めている。

12 http://www.agropedia.affrc.go.jp/agriknowledge/hinshu 13 (財)静岡県茶業研究所(http://shizuoka-cha.com/)もとに、みずほ情報総研が一部加工。

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1 茶の基礎情報

1.2 日本茶の分類

11

図表 1-16 茶の名称・定義14

名称 定義

煎茶 茶葉(自然光下で栽培し、摘採した茶葉)を蒸熱、揉捻、乾燥して製造

したもの

深蒸し煎茶 煎茶と同様な製造であるが、茶葉の蒸し時間を煎茶の 2 倍以上の時間で

製造したもの

玉露 一番茶の新芽が伸び出した頃からよしず棚などに藁や寒冷紗などで茶

園を 20 日前後覆い、ほぼ完全に日光を遮った茶園(「覆下園」)から

摘採した茶葉を煎茶と同様に製造したもの

かぶせ茶 摘採前7日前後に藁や寒冷紗などで覆った茶園から摘採した茶葉を煎

茶と同様に製造したもの

番茶又は川柳 新芽が伸びて硬くなった茶葉や古葉、茎などを原料として製造したもの

及び 茶期(一番茶、二番茶、三番茶など)との間に摘採した茶葉を製

造したもの

玉緑茶(グリ茶)又

は釜炒り茶

煎茶と同様な製造であるが、揉捻の工程のうち精揉工程を省略して製造

したもの。(グリ茶ともいう。) 釜炒り茶は、製造工程で茶葉を蒸熱に

代えて炒って製造したもの

粉 茶 荒茶の仕上げ工程でふるい分けされた粉末状の茶で、20 号篩下、60 号

篩上のもの。荒粉、切断された葉を含む。

芽 茶 煎茶や玉露の仕上げ加工の工程で篩分けされた芽先のもの

茎茶又は棒茶 荒茶の仕上げ工程において、木茎分離機などで選別された茶の茎や葉

柄、又は荒茶の 仕上げ工程で篩分けられた赤茎を言う。

ほうじ茶 煎茶や番茶などを強い火で焙って製造したもの

玄米茶 煎茶や番茶に焙った米を加えたもの米の割合は、製品全体の重量の 50%

以内とする

抹 茶 覆下栽培した茶葉を揉まずに乾燥した茶葉(碾茶)を茶臼で挽いて微粉

状に製造したもの

粉末茶 茶を粉末にしたもの。ティーバッグ又はそのまま飲用する他、食品加工

用の原料になるもの

抹茶入り玄米茶 玄米茶に抹茶を加えたもの

○○(入り)××茶 ××茶(主原料)に○○(従原材料)を加えたもの

(入り)は、省略して可。

固形茶 粉茶に水を加えて固めたもの

インスタントティー 緑茶から水溶性固形成分を抽出し、これを濃縮、乾燥し、粉末状又は粒

状にしたもの

14公益社団法人日本茶業中央会「緑茶の表示基準」

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1 茶の基礎情報

1.2 日本茶の分類

12

② 産地による分類

日本の主な茶産地を図表 1-17 に、都道府県別摘採面積および荒茶生産量を図表 1-18

~図表 1-20 に示す。

荒茶生産量及び摘採面積ともに、静岡県が全国の 40%以上を占める。

主に煎茶(蒸し製法)を生産している。県内産地は、当部、静岡、藤枝、磐田、

浜松の 5 つに分類される。

鹿児島県は、静岡に次ぐ茶産地であり、年間摘採回数は 3 回(一部では 4 回)と 10a

あたりの荒茶生産量では全国で最も多い15。

平坦な茶園が多いことから機械化が進んでおり、常用型摘採機導入面積率は 86%

(全国は 40%、平成 19 年度実績)である16。

図表 1-17 日本の主な茶産地と銘柄17

15 茶大百科 1 巻,日本の茶産地 16 (社)鹿児島県茶生産協会(http://www.kagoshima-cha.or.jp/about/aspect.shtml) 17 全国茶生産団体連合会・全国茶主産府県農協連連絡協議会

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1 茶の基礎情報

1.2 日本茶の分類

13

図表 1-18 平成 26 度における都道府県別荒茶生産量及び栽培面積

順位 都道府県 荒茶生産量(t) 摘採面積(ha)

1 静岡 33,100 16,600

2 鹿児島 24,600 8,080

3 三重 6,770 2,840

4 宮崎 3,870 1,260

5 京都 2,920 1,410

6 福岡 2,170 1,450

7 奈良 1,810 653

8 佐賀 1,350 830

9 熊本 1,300 1,180

10 愛知 908 499

- その他 4,268 4,756

全国合計 83,066 39,558

図表 1-19 平成 26 年度における荒茶生産量上位 10 県

図表 1-20 平成 26 年度における茶摘採面積上位 10 県

静岡40%

鹿児島30%

三重8%

宮崎5%

京都3%

福岡3%

奈良2%

佐賀2%

熊本1%

愛知1%

その他5%

静岡42%

鹿児島20%

三重7%

福岡4%

京都3%

宮崎3%

熊本3%

佐賀2%

奈良2%

埼玉2%

その他12%

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第Ⅰ部 茶生産に係る基礎情報および国内外のWFP等算定・活用事例の収集

1 茶の基礎情報

1.2 日本茶の分類

14

③ 品種による分類

品種別の栽培面積上位 5 品種を図表 1-21、図表 1-22 に示す。

全国の栽培面積の約 8 割を「やぶきた」が占め、次いで「ゆたかみどり」「おくみ

どり」の順に栽培面積が多い。

図表 1-21 品種別栽培面積(平成 19 年度)18

順位 品種名 栽培面積(ha)

1 やぶきた 36,505

2 ゆたかみどり 2,488

3 おくみどり 946

4 さえみどり 818

5 さやまかおり 746

その他 4,232

全国合計 45,733

図表 1-22 全国における品種別栽培面積のシェア

やぶきた(茶農林 6 号)19

日本茶の代表品種であり、甘みのある濃厚な滋味と優雅な香気が特徴といわれる。

一方、耐病性、特に炭疽病や輪斑病および網もち病には弱く、適切な防除が必要

な品種と言われる。

1945 年に静岡県の奨励品種に選定され、1953 年には農林省登録品種に指定されている。

栽培面積の 50%以上が静岡県で栽培され、次いで鹿児島県、三重県での栽培面積が多

い。

18 農林水産省(2007)平成 19 年産特産農作物生産実績 19 伊藤園 HP

(http://www.ocha.tv/how_tea_is_made/plants_and_breeds/plants_and_breeds_japanesetea/)

やぶきた80%

ゆたかみどり5%

おくみどり2%

さえみどり2%

さやまかおり2%

その他9%

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1 茶の基礎情報

1.2 日本茶の分類

15

ゆたかみどり

「やぶきた」よりも 5 日早生。やぶきたに次いで 2 番目に栽培面積が大きい品種であ

る。

被覆栽培の新芽を深蒸しで製造することが多く濃厚な水色と味が特徴で、生産量の約

95%は鹿児島県で生産されている20。

おくみどり

「やぶきた」より、8 日晩生。濃緑色の色沢で、さわやかですっきりした香味のくせの

ないのが特徴。

寒暖の差が大きい地域では裂傷型凍害に注意が必要と言われる 19。主な生産地は鹿児島

県、京都府、宮崎県。

さえみどり

旨味が強く、渋味が少ない高品質の早生品種。幼木期はやや弱いので、定植には充実

した苗を用い乾燥、寒害等に十分注意する必要がある。

鹿児島県を中心に栽培され、近年栽培面積が拡大傾向にある21。

さやまかおり

濃厚な香気が特徴で、カテキン含量の多い品種。埼玉県茶業試験場で育成された。静

岡県、埼玉県で主に栽培されている。

20 市川園 HP(http://museum.ichikawaen.co.jp/knowledge/variety.php)

21 野菜茶業研究所(2006)野菜茶業研究所が育成した注目の茶品種

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1 茶の基礎情報

1.2 日本茶の分類

16

④ 製造の時期・季節による分類

茶の摘み取り時期を「茶期」という。摘採樹の生長周期を図表 1-23 に、地域別平均茶

期を図表 1-24 に示す。

図表 1-23 摘採樹の生長周期22

図表 1-24 地域別平均茶期23

22 茶大百科 2 巻,生育と生理・生態 23 (株)静岡県茶通信直販センターHP(https://www.cha-tsuhan.co.jp/user_data/column06.php)

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1 茶の基礎情報

1.3 茶園管理の概要

17

1.3. 茶園管理の概要

定植から摘採まで 1.3.1.

茶樹の繁殖は、挿し木によって行う。定植から茶葉が摘採可能となるまでには 6~8 年

要するといわれており、安定した品質や収穫量を得るためには、定植後 5 年が必要と

言われている。

茶樹は、毎年 2~3 回の新芽摘採や数年ごとの更新処理を行いつつ、通常は 30~40 年間

経済的な栽培を実施可能である。また、適切な栽培を実施していれば、これ以上の栽

培も可能である24。

国内における茶樹の樹齢別の茶園面積をみると、樹齢 30 年以上の茶園が全国の 30%以

上で最も多い。

老園化した茶園においては、根系の老化、土壌の保肥力・保水力の低下により品質・

収量低下が懸念されており、茶園の若返りによる品質・生産力の向上が期待されてい

る。

24 茶大百科 2 巻,生育と整理・生態

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1 茶の基礎情報

1.3 茶園管理の概要

18

図表 1-25 茶園の一年間の主な管理25

25 伊藤園 HP(http://ocha.tv/how_tea_is_made/cultivation/yearly_schedule/)

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1 茶の基礎情報

1.3 茶園管理の概要

19

茶園管理の技術 1.3.2.

(1) 寒害対策

低温や寒風によって茶樹に発生する障害のことを「寒害」という。

茶樹は、気温が-10~13℃で茶葉が褐変し、-15℃以下になると葉や枝が枯死する。

寒害の減収率を図表 1-26 に、寒害対策技術を以降に示す。

図表 1-26 寒害の減収率推定(%)26

被害程度 一番茶 二番茶 三番茶 症状

落葉 5~30 0~10 0~5 落葉したもの

葉枯れ 5~30 0~15 0~10 葉の一部または全部が枯れたもの

枝先枯れ 8~40 0~20 0~15 樹幹面に近い小枝が枯れたもの

枝枯れ 100 100 30~50 枝内の小枝まで枯れたもの

株枯れ 100 100 40~60 地上部のみ枯死

枯死 100 100 100 地下部まで枯死

① 防霜ファン

防霜ファンとは、霜が降りるときに発生する気温の逆転現象に着目した技術であり、

地上の暖かい空気を下方向(茶樹付近)に送風することに着目した方法である(図表

1-27)。

行政指導により普及が進み、最もコストが低く安全性が高いとされている。

図表 1-27 防霜ファンによる凍結防止のイメージ27

② 散水氷結法

ドイツで考案された防霜対策技術であり、気温が低下して凍霜害を受ける様なときに

スプリンクラーで散水し、茶に付着した水分が凍って潜熱を放出することを利用して

新芽を零度に保つ方法である。

26 木村政美(2006)茶園管理 12 カ月 27 農研機構野菜茶業研究所(2014)茶における防霜ファンの気温差制御技術について

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1 茶の基礎情報

1.3 茶園管理の概要

20

重ねて凍結させることで効果が表れるため、保温効果を出すには 3mm/h の散水が必要

となる。

日の出後の気温が 5℃上昇して、葉の表面に付着した氷が滑り落ちるまで散水を続

けるために、1 時間あたり 3~4t/10a の水を要するため、水源の確保と経済的負担

がデメリットである。

基本的には、鹿児島県等を中心に導入されている技術である。

③ 棚掛け被覆

被覆法は、茶株を被覆して茶株面や地面からの放射熱を吸収し、逆放射して芽の温度

が低下するのを防ぐ方法である。

茶株の周りに高さ 2m 程度の被覆架台を設置し、保温性の高い黒い資材(黒または灰色

の光線透過率 40%以下のもの、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビニロ

ン等の素材の寒冷紗シート)で被覆する。

労力とコストがかかる事、防除の際に設置した支柱が妨げとなるため、普及率は低い。

図表 1-28 棚掛け被覆の様子

④ トンネル被覆

簡易な被覆法として、支柱を株面から 40 ㎝の高に弧状に立てて、光線透過率 80%程

度の白の寒冷紗シートで被覆する方法である。

保温効果は③の棚掛け被覆よりも低く、強い霜害を受ける地域には適していない。

図表 1-29 トンネル被覆

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1 茶の基礎情報

1.3 茶園管理の概要

21

(2) 干害対策

気温が上昇して雨量が少ない真夏の季節に被害が懸念される。

茶の生育温度は 20~28℃であるため、気温 30℃以上となると生育が抑制される。

茶園では三番茶を摘採すると翌年の芽数が増えるため、次の一番茶の収量が増加する。

しかし、干害が発生しやすい時期は、この三番茶の摘採時期と重なるために、干害被

害を受けると翌年の一番茶の収量に影響を及ぼす恐れがある。

① 灌水対策

干ばつ被害が多発する地域では、スプリンクラーや灌水パイプ他を設置している茶園

もある。

灌水する場合、水量は 20t/10a/回(20mm/回)必要で、朝または夕方に実施する。

同量の水を数回に分けて灌水する方法もあり(間断灌漑)、この場合は 4t/10a/回を 4~5

日間で実施する。

② 土壌水分の蒸発防止対策

土壌からの自然蒸発を防止する目的で、敷き草等によりマルチを行う。

茶園の若返りを目的として数年に一度実施される「更新」作業時に刈り取られた

茶葉や枝が、そのままマルチの役割も果たす。

また、静岡県で実施される「茶草場農法」は、秋から冬にかけて茶園周辺にある

「茶草場28」から刈り取ったススキやササを、茶園の畝間に敷く伝統的農法がある。

図表 1-30 茶草場農法の様子29

28 「茶草場」とは、茶園周辺にモザイク状に分布する半自然草地を示している。 29 掛川商工会議所 HP(http://kakegawa-kankou.com/chagusaba/about/index.html)

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第Ⅰ部 茶生産に係る基礎情報および国内外のWFP等算定・活用事例の収集

2 国内事業者へのヒアリング

2.1 ヒアリングの目的

22

2. 国内事業者へのヒアリング

2.1. ヒアリングの目的

国内茶製品業者に対して、茶生産における品質向上・環境対策等の“こだわりの取組”

の概要、WFP の活用方法に関する意見を聞くため、国内の製茶メーカー及び飲料メーカー

にヒアリングを実施した。

2.2. 製茶メーカーへのヒアリング結果

荒茶工場における水の使用状況について (1)

直接的に使用する水は、蒸し機で充てる蒸気として、生葉 1 ㎏あたり 120ml である。

蒸し時間は、120 秒程度である。摘採時期によって生葉の水分が違うため、蒸し時

間等を微調整するが、そこまで大きな違いはない。最終的には、含有水分 5%程度

で出荷する。

蒸し機の稼働日数は、一番茶で 30 日、二番茶で 25 日、三番茶で 7~14 日、秋冬番茶

で 30 日程度である。この期間、蒸し機は毎日水で洗う。

当該製茶メーカーの荒茶工場自体の稼働日数は、1 年あたり 100 日程度である。これは、

摘採時期の異なる様々な地域の農園から搬入された生葉を加工するためである。

一般的に、共同荒茶工場等の稼働日数は 1 年あたり 40 日程度である。設備投資の

半分は国の補助金を利用。残り半分は自らの生産によって賄い、約 7 年で償却す

る。(個人で荒茶工場を持つ茶農家でも、約 1 億円規模の施設を有している。)

荒茶工場の設備規模としては、小規模なもので 1台あたり 60㎏(1 回に生葉を揉める量)、

大規模なもので 1 台あたり 200~240 ㎏(1 回に生葉を揉める量)である。

その後の揉捻、中揉、精揉工程を経て乾燥し、荒茶になるまで約 2 時間 30 分程度

を要する。

今回ヒアリングを実施した製茶メーカーは、後者を 4 台保有している。

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第Ⅰ部 茶生産に係る基礎情報および国内外のWFP等算定・活用事例の収集

2 国内事業者へのヒアリング

2.2 製茶メーカーへのヒアリング結果

23

茶畑(農園における水・エネルギーの使用実態について) (2)

JGAP30および Global GAP の認定を受けている。

Global GAP への対応として、契約農家には、農薬散布量、灌水量、液肥使用量等

について、1 年のトータルでの使用量を、茶園面積とともに提出いただいている。

また、防霜ファンの電気料についてもデータをとっている。

荒茶工場では、重油、LP ガス、電気料金、使用水量については、その使用量のデータ

をとっている。

その他の茶園においても、基本的に使用量のデータはとっているものと考えられ

る。

Global GAPや JGAPを導入した経緯・問題意識 (3)

現在は、契約農家のうち約 100 件が GAP にもとづく管理を導入している。

GAP 制度を導入するメリットとしては、GAP を導入している茶農家の方か品質管

理の点で信頼できるという点がある。例えば、農薬の用量・用法をしっかり守る

という意識が高い。

もう一つのメリットとしては、生産者同志のネットワークが強固なものとなる点

である。互いに情報共有が進んでいるため、製茶メーカーからの問い合わせに対

して、迅速に対応いただける。

これらのネットワークを通じて、新たな品種や作業工程の検討等につなげていけ

ると考えている。

Global GAPや JGAPの活用方法 (4)

Global GAP では、一般消費者に販売する際にラベリングできない。

ただし、JGAP では(仕上茶までの認証を取得していれば)その規制がないこと、

環境保全や食品安全の向上を目的としていることから、「生産者限定・特別シリー

ズ」として、一部商品を販売している。

この商品は、主に首都圏の消費者からの需要がある。「顔が見える野菜」と同じ感覚で

あろう。地元の消費者は、知り合いの茶生産者から直接購入する等している人が多い

と思われるため、このシリーズの需要は少ない。

品質を高めるための工夫 (5)

これまでは、生葉の品質は鑑定士が判定していたが、自動判定機(近赤外分光分析機)

を導入することにより、10 段階評価を定量的に生産者に示すことができるようになっ

た。これによって、生産者が評価に対して安心・納得する一つの基準となった。近年

30 GAP とは、農業生産工程管理(GAP:Good Agricultural Practice)を示し、農業生産活動を行う上で

必要な関係法令等の内容に則して定められる点検項目に沿って、農業生産活動の各工程の正確な実施、記

録、点検及び評価を行うことによる持続的な改善活動のこと。JGAP は、農場や JA 等の生産者団体が活

用する農場・団体管理の基準、認証制度を示す。

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2 国内事業者へのヒアリング

2.2 製茶メーカーへのヒアリング結果

24

では、おおむね 3~5 等級に収まるようになってきた。(品質が安定化した。)

自動判定機では、窒素含有量、アミノ酸含量、タンニン、繊維、水分等を測定可

能で、ほとんどの荒茶工場は導入している。

施肥に関して、以前は堆肥を製茶メーカーから契約農家に配布していたが、茶農家の

高齢化が進み、堆肥をまく労力が不足していること、機械化できないことなどから、

現在配布はしていない。

高齢化がすすみ、労力不足から、夏場の施肥を辞めてしまう茶園もある。なお、茶園

では現在も一部は堆肥を使用している。

高齢化に伴う労力不足の対策として、一番茶の収穫前に 8 月下旬まで効果が持続

する緩効性肥料を用いて、夏場の施肥を省力する農家も近年は増えてきた。

品質向上の取組として、技術指導のほか、資材等は会社で準備して貸出する等を行っ

ている。また、防除のタイミングや、農薬を共同購入することで、廉価で契約農家が

利用できる工夫等を行っている。

肥料や農薬では、地域ごとに農協が異なる。撒きやすさ、土質、各地域の栽培サ

イクル等で肥料の種類が異なる。

技術指導については、会員の茶農家を回って生育調査を実施し、年 1 回の勉強会を開

催している。

剪定方法によって味に違いが出ることがある。茶樹の育て方には、大きく分けて

芽重型と芽数型があり、芽重型は品質が良くなるが栽培が難しい。(芽重型は、一

本の茶樹にできる新芽の数を減らし、一つ一つの芽を大切に育てるために、芽が

上に向かって伸びやすい。)

自社契約農家の茶園共進会では、品質や茶園面積の増加率等の観点から審査が実施さ

れ、賞金も出している。

有機栽培等、環境配慮にこだわった農法について (6)

有機栽培は、管理にかかる労力が大きい割に収量が小さいこと等もあり、扱っていな

い。

肥料を使用したほうが収量も確保でき、美味しいという印象である。そのため、

収量も少なく品質も低下することから価格に反映できない有機栽培については、

メリットが見いだせない。

日本茶製品のマーケット動向についてのご意見 (7)

海外向け商品が今後伸びるのでないか。日本では売れなくなっている傾向があるので、

アメリカ等の海外への輸出が今後増えるのでないかと考えている。

この際留意すべき点としては、残留農薬の基準が大きく異なる点である。アメリ

カや欧州等では茶を生産していないことから、他の作物の基準が適用される等、

基準が非常に厳しい。

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第Ⅰ部 茶生産に係る基礎情報および国内外のWFP等算定・活用事例の収集

2 国内事業者へのヒアリング

2.2 製茶メーカーへのヒアリング結果

25

そのため、海外に輸出しているような日本茶は、有機栽培による緑茶が、業界と

しては多いのでないか。

輸出をふまえた農薬の使用方法について、現在自社茶園で試験栽培中である。茶園で

技術が確立できれば、契約農家に対して普及することを考えている。

以前は価格面で、海外への輸出は障壁があったが、技術が向上したことや、現在

は円安であること等が輸出の追い風となっている。

会長の信条として、「安くても不味いものは売らない」としている。

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第Ⅰ部 茶生産に係る基礎情報および国内外のWFP等算定・活用事例の収集

2 国内事業者へのヒアリング

2.3 飲料メーカーへのヒアリング結果

26

2.3. 飲料メーカーへのヒアリング結果

ペットボトルの節水技術の取組を始めた経緯・問題意識 (1)

強度を維持したままペットボトル容器を軽量化できないかという点である。

従来は、薬剤を用いて消毒していたが、消毒しきれないキャップ部分は熱消毒を

行っていた。

熱消毒をすることでボトリングする茶の品質が低下することもあり、品質確保の

観点から、熱を使わず、かつ省資材で軽量化可能な技術を導入した。

茶殻のリサイクルに係る取組を始めた経緯・問題意識 (2)

茶殻の大部分が産業廃棄物として処理されていたが、茶殻に含まれるカテキンの抗菌

性・消臭効果に期待し、これを有価物にできないかという観点から検討が始まった。

今後の方向性としては、廃棄物でなくリサイクルに回す割合を徐々に増加させていく

予定である。

茶飲料の製造時に発生する茶殻は相当量の含水量があることから、茶殻を乾燥させ、

運搬するコストとエネルギーを考えると、有価物にして 10 円でも売れる方が良い。

産業廃棄物として処理すると、1t あたり 5,000 円のコストがかかる。

現在、紙製品(ペーパーナフキン、段ボール等)や繊維製品(バスタオル等)を中心

にリサイクルされているが、プラスチックとして自動販売機の筐体に使用することで、

これまで自動販売機が景観になじまないとされていた寺社仏閣でも自動販売機の設置

が進んだ。

そのため、まずは廃棄物処理に係る省エネルギーを第一の目的としつつ、茶殻に含ま

れるカテキンの抗菌性を生かした試料として再利用できないかという観点で取り組ん

だものである。

図表 2-1 茶殻リサイクルシステムにより開発されたリサイクル製品の例

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2 国内事業者へのヒアリング

2.3 飲料メーカーへのヒアリング結果

27

茶産地育成事業について (3)

茶産地育成事業では、農地集約が重要である。そのため、基本的には平坦な圃場が育

成事業の対象となる。

例えば九州では、飼料や野菜を栽培しても、価値が出ないような地域があった。(耕

作を行ってはいるものの、実態としてはほとんど農地として機能していない土地

を示す。)

また、茶園にとって水管理は重要であり、灌漑設備があらかじめ整備されている点も

重要である。

例えば、大分県のタバコの廃作跡地では灌漑設備が整っている他、一部では点滴

施肥が可能である等条件が整っている。

海外ではオーストラリアにも展開している。

オーストラリアの茶園で収穫した茶葉は、ほとんどを日本国内で消費する。

一部をオーストラリア国内と、アメリカへの輸出用に使用しているが、アメリカ

へは、まだ現地でボトリングする程の需要もないため、国内で製造したペットボ

トル飲料の状態で輸出している。

なお、オーストラリアでは灌水による塩分集積等の被害は出ていない。

品質を高めるための工夫 (4)

茶飲料にとっては、味と香りのバランスが重要であり、摘採する芽の熟度管理が重要

である。そのため、環境面よりも効率的な施肥をすることの方が優先される。

まだ自社では実用化はしていないが、土壌をセンシングして窒素成分の含有量を

測定し、茶園の中でも場所ごとに施肥管理を行うなどの技術を開発している。

カーボンや水等の環境影響を製品表示することについてのご意見 (5)

現時点で、商流の末端である消費者から、環境影響表示に係るニーズはない。

カーボンフットプリントの取組が始まった時期に、一時的にエネルギー量等のデ

ータを整備はしたが、製造工場の規模も大小様々あることから、現在は個々に基

礎データの蓄積は行っていない。

緑茶製品を生産するにあたって、ライフサイクルごとにデータを取得するほどの

必要性がないと認識している。

また、ペットボトル飲料やリーフ等、製品形態の違いによって、どの程度環境影

響が異なるかという点を定量評価した経験はない。

環境影響が小さい茶園があったとしても、やはり基本的には品質が良い茶を購入

するため、排出する CO2 が小さいことを第一の理由に契約することはない。

研究ベースでは、県の研究所等と共同して、茶園あたりにどの程度の CO2 固定効果が

あるか等を研究している。

30 年で 1ha あたり 92t 蓄積可能との結果も出ている。この研究によって蓄積され

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第Ⅰ部 茶生産に係る基礎情報および国内外のWFP等算定・活用事例の収集

2 国内事業者へのヒアリング

2.3 飲料メーカーへのヒアリング結果

28

た知見は、将来的に必要となった際に活用して対応する方針である。

社会的評価という意味では、環境影響を評価する意義を理解しているが、実際のとこ

ろ茶は環境負荷が大きい作物であると認識している。

茶園から発生する N2O 等は温室効果を有しており、荒茶工場でも基本的には生茶

を乾燥させるために水分を飛ばすエネルギーを使用する。

このような実態を定量評価し、WFP 等の表示をつけることで、むしろ環境に悪い

という負のイメージがつくことを懸念している。

茶園では、点滴灌漑等の導入によって、どの程度灌水で用いる水量を節約できるかと

いう取組も実施しているが、消費者から「結局は環境に悪いのではないか」と指摘さ

れたときに、どのように対応するのかが、まだわからない。

日本茶製品のマーケット動向についてのご意見 (6)

粉末茶やティーパック等の業務用茶の需要が増えるのでないか。手軽に作って、手軽

にごみ処理できるという点が魅力であろう。

また、昔に比べて格段に茶葉の品質と加工技術が向上したことからも、農家もリ

ーフでの販売でなく、加工した茶製品に茶葉を使用することに対して納得するよ

うになった。

海外の消費者が日本茶に期待していることとしては、安心・安全であること、健康的

であること(甘くないゼロカロリー飲料)等であり、「ジャパン・ブランド」として和

食の一部と捉えられているのでないか。

欧州地域ではまだ製品を販売していないが、東南アジアではシンガポールを中心に販

売網を確立しようとしている。工場はインドネシアに設置し、駐在事務所はベトナム

に置くなどを想定している。

なお、日本と海外の工場で、生産・加工方法による大きな違いはない。

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第Ⅰ部 茶生産に係る基礎情報および国内外のWFP等算定・活用事例の収集

3 国内外における茶・コーヒーに係る WFP 等の算定事例の収集

3.1 事例 1:コーヒーと紅茶を対象とした CFP と WFP の算定事例

29

3. 国内外における茶・コーヒーに係る WFP 等の算定事例の収集

茶の WFP 評価にあたり、WFP 評価に係る先行事例を収集・整理した。

なお、海外の事例を収集するに当たっては、茶に関する WFP は算定事例が少ないことが

予想されたため、コーヒーを対象品目とした事例も収集対象に含めた。

同時に、WFP の算定事例も事例が少ないことから、カーボンフットプリント(以下、CFP)

の算定に係る事例も対象とすることとした。

3.1. 事例 1:コーヒーと紅茶を対象とした CFP と WFP の算定事例

図表 3-1 事例 1 の概要

文献名 コーヒーと紅茶を対象としたカーボンフットプリントとウォーターフットプリント

著者 山本裕己、中山卓三、徳武真理子、伊坪徳宏

出典・発表年 第 6 回日本 LCA 学会研究発表会講演要旨集,2010

対象国・地域 紅茶:スリランカ、コーヒー:ブラジル

概要 コーヒーと紅茶を対象として、栽培から消費までにおける CFP と WFP の算定を行

ったもの。

評価手法

WFN の手法を用いて評価している。

水の直接的使用量は、FAOSTATから得られる国別年間収穫量と、AQUASTAT

で得られる国別年間降水量から推定。

直接水消費量は、AQUASTAT で得られる蒸発散量と FAO の作物係数から推

定。

灌漑用水は考慮しない。

水の汚染量については、窒素 N の一律排水基準から換算。

間接的水使用量及び消費量については、ヒアリングに基づき得られた一次デ

ータから、「水使用・消費量データベース」原単位表を用いて換算。

システム境界

評価対象は、ホットコーヒー1 杯(180ml)及びティーパックティー1 杯(180ml)。附

属品として、紙カップ、マドラー、砂糖、ミルクを含む(図表 3-2)。

図表 3-2 事例 1 が想定するシステム境界

システム境界1次データ 2次データ 範囲外

コーヒー栽培(国外)

国外加工

紙カップ紅茶栽培(国外)

国外加工

国内加工国内加工

マドラー ミルク 砂糖

配送拠点(倉庫)

店舗調理(照明や備品等は範囲外)

廃棄

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第Ⅰ部 茶生産に係る基礎情報および国内外のWFP等算定・活用事例の収集

3 国内外における茶・コーヒーに係る WFP 等の算定事例の収集

3.1 事例 1:コーヒーと紅茶を対象とした CFP と WFP の算定事例

30

評価結果の概要

水の総消費量は一杯あたり、コーヒー231L 、紅茶 5L。

WFN による評価結果との違いについては、WFN が全球平均を求める一方、本調査で

はモスバーガーの原料調達先(紅茶:スリランカ、コーヒー:ブラジル)が対象とな

っている事等を指摘している。

各栽培日数は、ヒアリングをもとに設定している。

紅茶の栽培日数は 17 日となっているが、一杯分の茶葉を収穫するに必要な栽培日

数で換算しているものと考えられる。

図表 3-3 WFP 算定結果

g-Water/cup

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第Ⅰ部 茶生産に係る基礎情報および国内外のWFP等算定・活用事例の収集

3 国内外における茶・コーヒーに係る WFP 等の算定事例の収集

3.2 事例 2:全球レベルでの茶の WFP 比較の事例

31

3.2. 事例 2:全球レベルでの茶の WFP 比較の事例

図表 3-4 事例 2 の概要

文献名 The water footprint of coffee and tea consumption in the Netherlands

著者 Chapagain et al.

出典・発表年 Ecological Economics Volume 64, Issue 1, 15 October 2007, Pages 109–118

対象国・地域 世界の主要なコーヒー及び紅茶の輸出国

概要 オランダ社会における WFP 算定のため、世界の主要なコーヒーと紅茶の輸出国

における WFP を評価、比較したもの。

評価手法

WFN の手法を用いて評価している

各国のコーヒー及び紅茶の年間必要水量(annual crop water

requirements)は、FAO の CROPWAT モデルを用いて推計。

国別の気象データについては、各国の首都のデータとなっている。

実際にコーヒー及び紅茶が栽培された地域は首都ではなく、またその地域の

気象条件は首都とは異なることを認識してはいるが、全球レベルで栽培地域

を特定して気象条件を入手することは困難なことから、首都の気象データを

各国の代表値として扱っている。

各国の単位面積あたり生産量は、FAOSTAT から引用。

評価結果の概要

本事例においても、「世界の茶生産の 78%が紅茶である」として、紅茶を対象に評価を

実施している。

評価対象は、ホットコーヒー1 杯(140ml)及び紅茶 1 杯(125ml)。

本事例の算定結果に基づくと、紅茶(Standard cup)で 11.4m3/kg(11.4L/g)である

(図表 3-5)。

本事例では、紅茶 1 杯あたり 1.5~3g の茶葉を使用すると想定し、水の総消費量

は 34L と算定している。

図表 3-5 WFP 算定結果

Virtual water content

of the dry

ingredient

(m3/kg)

One cup of tea or coffee

Dry product

content

(g/cup)

Real water

content

(l/cup)

Virtual water

content (l/cup)

Coffee ―Standard cup

of coffee 20.4 7 0.125 140

―Weak coffee 20.4 5 0.125 100

―Strong coffee 20.4 10 0.125 200

―Instant coffee 39.4 2 0.125 80

Tea ―Standard cup of tea 11.4 3 0.250 34

―Weak coffee 11.4 1.5 0.250 17

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3 国内外における茶・コーヒーに係る WFP 等の算定事例の収集

3.3 事例 3:立地の違う茶園における CFP 比較の事例

32

3.3. 事例 3:立地の違う茶園における CFP 比較の事例

図表 3-6 事例 3 の概要

文献名 茶栽培における温室効果ガス排出の LCA 評価

著者 増田清敬、富岡昌雄

出典・発表年 農業経営研究,2011

対象国・地域 滋賀県

概要

LCA を用いて、茶栽培における温室効果ガス排出を算出し、省力化と規

模拡大が可能な平坦地体系と、立地条件を活かした高品質茶生産が可能な

山間地体系を比較したもの。

評価手法

耕地面積 10a あたりでのインベントリデータを整理。既存文献から推計。

燃料からの CO2 直接排出は、農業環境技術研究所(2003)「LCA 手法

を用いた農作物栽培の環境影響評価実施マニュアル」より引用

電力からの CO2 間接排出は、稲葉敦(2009)カーボンフットプリント

-LCA 評価手法で作る、製品別「CO2 排出量見える化」のしくみ-

より引用

燃料、肥料、農薬、被覆資材、製茶加工、出荷資材からの CO2 間接

排出は、南斉・森口(2006)産業連関表による環境負荷原単位データブ

ック-LCA のインベントリデータとして-より引用。

施肥量等は、滋賀県(2002)農業経営ハンドブック―担い手育成のため

の農業経営指標集―より引用。

システム境界

平坦地における茶園作業体系と、山間地における茶園作業体系を比較している。

茶園の更新作業、たい肥施用、深耕作業等に係る資材・エネルギー量は、一年あたり

で按分している。

図表 3-7 事例 3 が想定するシステム境界

燃料電力肥料農薬

被覆資材(平坦地)

主な茶園作業

平坦地体系 山間地体系

施肥・中耕 施肥

(同時処理) 中耕

防除

摘採

秋整枝 秋春整枝

栽培管理

防霜

茶樹更新・中切り(1回/15年)

茶樹更新・深刈り(1回/5年)

堆肥施用・深耕(1回/5年)

生葉運搬運搬(一、二番茶および

親子番茶)

燃料

作物残渣

製茶加工作(共同工場・法人経営体等に委託)

製茶加工サービス出荷資材

荒茶

システム境界

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3 国内外における茶・コーヒーに係る WFP 等の算定事例の収集

3.3 事例 3:立地の違う茶園における CFP 比較の事例

33

評価結果の概要

環境影響を比較評価する基準として、荒茶収量 1kg と荒茶粗収入 1 万円とした。

農業分野の LCA では収量を機能単位とする例が多いが、本事例においては、平坦

地と山間地の立地条件の違いによる茶の品質および収量への影響を評価すること

を目的として、荒茶粗収入も機能単位に加えている。

評価結果によると、収量あたり CFP は平坦地体系の方が小さいが、収入あたり CFP

は山間地体系の方が小さい結果となっている。

温室効果ガスの排出源としては、施肥による窒素投入、製茶加工および防霜対策時に

係るエネルギー投入の順に重要であることが示されている。

図表 3-8 平坦地体系及び山間地体系によるカーボンフットプリントの評価結果

区分

荒茶収穫あたり 荒茶粗収入あたり 寄与率

(kgCO2eq/kg) (kgCO2eq/万円)

平坦地体系 山間地体系 平坦地体系 山間地体系 平坦地体系 山間地体系

エネルギー

軽 油 0.18 0.35 1.21 1.50 2.9% 4.1%

ガソリン 0.36 0.45 2.36 1.92 5.7% 5.2%

混合油 0.04 0.06 0.29 0.25 0.7% 0.7%

オイル 0.03 0.03 0.16 0.14 0.4% 0.4%

電 力 0.48 1.25 3.14 5.40 7.6% 14.7%

資材生産等

燃 料 0.09 0.11 0.56 0.49 1.4% 1.3%

化学肥料 0.41 0.54 2.69 2.32 6.6% 6.3%

有機肥料 0.14 0.19 0.95 0.82 2.3% 2.2%

農 薬 0.18 0.23 1.16 1.00 2.8% 2.7%

被覆資材 0.01 0.00 0.09 0.00 0.2% 0.0%

製茶加工 1.51 1.57 9.90 6.75 24.1% 18.4%

出荷資材 0.03 0.03 0.22 0.13 0.5% 0.4%

窒素投入

化学肥料 1.08 1.41 7.08 6.09 17.2% 16.6%

有機肥料 1.29 1.68 8.44 7.26 20.5% 19.8%

作物残渣 0.44 0.61 2.89 2.63 7.0% 7.2%

合計 6.28< 8.51 41.14> 36.7 100.0% 100.0%

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3 国内外における茶・コーヒーに係る WFP 等の算定事例の収集

3.4 事例 4:緑茶飲料の消費形態に着目した CFP 算定事例

34

3.4. 事例 4:緑茶飲料の消費形態に着目した CFP 算定事例

図表 3-9 事例 4 の概要

文献名 容器の使用状況を考慮した緑茶・コーヒー飲料のマイボトルの使用に着目して

著者 梶川崇,山川肇

出典・発表年 第 6 回日本LCA学会研究発表会講演要旨集(2011 年3月)

対象国・地域 日本国内

概要

緑茶およびコーヒー飲料について、消費形態に着目して以下を想定し、パターンごとに

GHG 排出量を推計し、マイボトル利用による環境負荷削減効果を定量評価した事例。

①マイボトルまたは湯呑みで消費されるパターン

②500ml または 2L のペットボトルで消費されるパターン

マイボトルの使用にあたっては、「繰り返し使用」が、全体として環境負荷軽減につな

がると示唆されている。

評価手法

積み上げ式による推計

原単位は JEMAI-LCA Proおよび産業環境管理協会の日本フォーラム 2009年度版

4 版を使用。

プロセスデータは、茶製造工程、抽出・充填工程、マイボトル製造工程およびそれ

らに関係する輸送はヒアリング調査を実施して収集・設定。

窒素施肥量は、各都道府県別施肥基準を各産地の荒茶生産量で按分して、

52.9kg_N/10a としている。(ただし、肥料製造部分における負荷は計上していな

い。)

農薬と水消費については評価対象外。

なお、栽培時の肥料・農薬・用水などに係る製造・使用時のデータは評価には含ま

れていない。

マイボトルは週 3 回 5 年間の使用を想定して 7000 回、湯呑は既存文献からの引用

で 7300 回と想定。

システム境界

評価対象は、機械設備などの建設にかかる固定資本分を含めず、製品・容器包装の製

造、輸送、消費、再使用・再利用、廃棄物処理に係る分を含めている。

評価項目は、化石燃料消費量、温室効果ガス排出量(GHG 排出量)、廃棄物処分量と

し、影響領域は、化石燃料資源消費、地球温暖化、廃棄物処分。

図表 3-10 茶(マイボトル利用)のシステム境界

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3 国内外における茶・コーヒーに係る WFP 等の算定事例の収集

3.4 事例 4:緑茶飲料の消費形態に着目した CFP 算定事例

35

図表 3-11 茶(PET ボトル)のシステム境界

評価結果の概要

500mlのペットボトル緑茶飲料と、マイボトルを 1回のみ利用した場合を比較すると、

ペットボトルの GHG 排出量が 2.7kg-CO2 少ない。

しかし、11 回以上マイボトルを利用すると逆転すること(ペットボトル緑茶飲料より

もマイボトルの GHG 排出量が少ない)が示唆。

図表 3-12 GHG 排出量の算定結果

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3 国内外における茶・コーヒーに係る WFP 等の算定事例の収集

3.5 事例 5:インドにおける紅茶の有機栽培と慣行栽培の環境影響評価の事例

36

3.5. 事例 5:インドにおける紅茶の有機栽培と慣行栽培の環境影響評価の事例

図表 3-13 事例 5 の概要

文献名 Life cycle assessment of drinking Darjeeling tea Conventional and organic

Darjeeling tea

著者 Geneviève Doublet, Niels Jungbluth

出典・発表年 ESU-services Ltd Practical training report, 2010

対象国・地域 インド北部のダージリン地方

評価方法

インドにおける慣行栽培と有機栽培による紅茶(ダージリンティー)生産に係る LCA

評価の事例

紅茶が主に消費される形態としてティーバックを想定している。ティーバッグ1つ

あたりに含まれる茶葉は 1.75g と仮定、250ml のお湯を注ぐとして、これをカップ

1杯あたりの評価単位としている。

評価範囲は、雑草管理を含む茶園での茶葉生産から、消費者までの流通を含む。(最

終消費者は EU 域内の消費者を想定している。)

評価シナリオとしては、以下 5 つを想定している。

1.オーガニック栽培の紅茶(ティーバッグ)

2.オーガニック紅茶と普通の紅茶ミックスの茶番(大容量パッケージで販売される

茶葉)

3.2 のうち、小売業者を介せず販売されるもの

4.慣行栽培による紅茶(ティーバッグ)

5.慣行栽培による紅茶(大容量パッケージで販売される茶葉)

有機栽培と慣行栽培が実施される地域は同じ、茶葉乾燥の工程も同じとする。ただ

し、乾燥時の向上は混入を防ぐためサイトを分けている。

影響評価は、ecologi-cal scarcity method 2006、CFP、non-renewable cumulative

energy demand の 3 つの指標で評価。

インベントリデータは既存文献から収集。(主に、Tea Research Association

(TRA))

評価結果の概要

オーガニック紅茶の方が、有機肥料等によるメタンガス排出が大きいために、茶葉栽

培時の負荷量が大きい結果となっている。

紅茶の栽培方法にかかわらず、ティーバックで飲んだ方が、カップ 1 杯あたりの CFP

が大きい傾向がある。

図表 3-14 CFP 算定に係るインベントリデータ(g CO2 /cup)

Carbon footprint Very high Typical Very low

(good)

organic,

loose

organic,

tea bag

conventional

,loose

conventional

,tea bag

oranic, loose,

no distr

Cultivation and

harvest 5.6 2 1.4 5.1 5.1 3.0 3.0 5.1

Processing 10.2 3.3 0.8 6.6 6.6 6.6 6.6 6.6

Transport 1.9 0.8 0.6 0.9 1.2 0.9 1.2 0.8

Packaging 10 2.3 1.3 0.4 3.6 0.4 3.6 0.4

Retail / Distribution

and selling 0.3 0.3 0.3 1.1 2.2 1.1 2.2 0.0

Preparation of cup 142 31 15 33.0 33.0 33.0 33.0 33.0

Total 170 39.7 19.4 46.9 51.6 44.9 49.5 45.9

source Nigel Melican (2009) SIMAPRO CML GWP 2007; July 20 2010

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第Ⅰ部 茶生産に係る基礎情報および国内外のWFP等算定・活用事例の収集

3 国内外における茶・コーヒーに係る WFP 等の算定事例の収集

3.5 事例 5:インドにおける紅茶の有機栽培と慣行栽培の環境影響評価の事例

37

図表 3-15 CFP 算定結果

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3 国内外における茶・コーヒーに係る WFP 等の算定事例の収集

3.6 事例 6:グアテマラにおけるコーヒーの環境影響評価事例

38

3.6. 事例 6:グアテマラにおけるコーヒーの環境影響評価事例

図表 3-16 事例 6 の概要

文献名 Life Cycle Assessment of Coffee Production

著者 Ben Salinas

出典・発表年 Franklin W. Olin College of Engineering report, 2008

対象国・地域 グアテマラ・Finca Vista Hermosa 地域

(27000 本植栽(30~55 年生)、年間生産量約 40,000 ㎏、)

評価手法

グアテマラ・Finca Vista Hermosa 地域における green coffee 生産に係る環境影響

を評価した事例。

評価にあたっては、Eco-Indicator 99 を使用している。

コーヒー園での栽培から輸出するまでを評価対象としているが、各ライフサイクル

における「直接的な物資投入」のみを評価しており、本事例において肥料や農薬に

よる影響は含めていない。

また、コーヒー園の寿命は 30~55 年であり永年作物であることを指摘しているが、

植栽時の影響(茶園でいえば定植から摘採可能な時期と考えられる)は評価に含め

ていない。

LCA 評価にかかる一時データについては、コーヒー生産者からのヒアリング、ま

たは既存文献に基づき収集・整理している。

ボストンまで輸送され、エスプレッソとして消費されることを想定して以下の輸送

経路を設定している。

評価結果の概要

全環境影響のうち 39%が輸送(Transport)による影響とされている。

コーヒー園における環境影響は、輸送(Transport)による影響の約 1/30 であること

が示されている。

ただし、本事例においては、全てのライフサイクル間接的な影響は含まれていない。

この点については、結果の解釈に注意が必要と考えられる。(例えばコーヒー園で

の肥料や農薬は評価に含まれない。)

図表 3-17 ライフサイクル段階別の影響評価結果

Brewing Transport

RoastingGrowing/Processing

Transportの内訳

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第Ⅰ部 茶生産に係る基礎情報および国内外のWFP等算定・活用事例の収集

4 欧州における環境フットプリント事業の動向

4.1 環境フットプリント事業の概要

39

4. 欧州における環境フットプリント事業の動向

4.1. 環境フットプリント事業の概要

欧州委員会により、「製品」、「サービス」、「組織活動」の環境影響評価手法として検討

が進められている事業。

複数の環境影響領域を対象としたマルチクライテリア手法であり、その影響領域

と推奨される評価手法は図表 4-1 に示すとおりである。

2013 年より、算定のガイドラインを用いた事業者によるパイロットテストの募集が始

まった(図表 4-2)。

図表 4-1 Product Environmental Footprint (PEF)が対象とする影響領域31

影響領域 影響評価モデル インパクト評価の単位

気候変動 Bern model kg CO2 equivalent

オゾン層破壊 EDIP model kg CFC-11 equivalent

生態毒性(淡水水生生物) USEtox model CTUe (Comparative Toxic Unit for

ecosystems)

人毒性(発がん影響) USEtox model CTUh (Comparative Toxic Unit for

humans)

人毒性(非発がん影響) USEtox model CTUh (Comparative Toxic Unit for

humans)

粒子状物質 RiskPoll model kg PM2.5 equivalent

放射線影響 Human Health effect model kg U235 equivalent (to air)

光化学オキシダント LOTOS-EUROS model kg NMVOC equivalent

酸性化 Accumulated Exceedance model mol H+ eq

富栄養化(陸域) Accumulated Exceedance model mol N eq

富栄養化(淡水) EUTREND model fresh water: kg P equivalent

富栄養化(海水) EUTREND model marine: kg N equivalent

資源消費(水) Swiss Ecoscarcity model m3 water use related to local scarcity of

water

資源消費(鉱物、化石燃料) CML2002 model kg antimony (Sb) equivalent

土地改変 Soil Organic Matter (SOM)

model Kg (deficit)

図表 4-2 パイロット事業の採択製品・産業32

時期 採択されたパイロット事業の製品・産業分類

1st wave ・14 製品分類(電池・蓄電池、装飾用塗料、冷温水供給パイプ、家庭

用液体洗濯洗剤、IT 機器、革製品、金属板、靴(革製除く)、太陽光発電、

文房具、断熱材、T シャツ、UPS(無停電電源装置)、紙(中間財))

・2 産業分類(小売業、銅製品製造業)

2nd wave ・11 製品分類(ビール、コーヒー、乳製品、家畜用飼料、食用魚、食

肉、未調理パスタ、容器入りの飲料水、ペットフード(犬・猫用)、オ

リーブオイル、ワイン)

31 EUROPEAN COMMISSION(2012)Product Environmental Footprint (PEF) Guide をもとにみずほ

情報総研作成 32 経済産業省(2015)ワークショップ「欧州環境フットプリントとマルチクライテリア評価の動向」資料

「環境フットプリントにおける各パイロットの検討状況」より引用

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第Ⅰ部 茶生産に係る基礎情報および国内外のWFP等算定・活用事例の収集

4 欧州における環境フットプリント事業の動向

4.2 コミュニケーションの位置づけ・狙い、検討状況

40

図表 4-3 主要各国・主要メーカーの参加状況 32

各パイロット 主要メーカー

企業数

EU 加盟

EU 非加

盟国 合計

ビール Heineken(オランダ)等 4 0 4

コーヒー Nestlé (Nespresso + Nestec)(スイス)等 2 2 4

乳製品 Bel Group(フランス)、Danone(フランス)等 6 1 7

家畜用飼料 EWOS AS(ノルウェイ)、Sanders (アメリカ)等 8 3 11

食用魚 Marine Harvest ASA(ノルウェイ)等 2 4 6

食肉 Danish Crown Group(オランダ)等 4 1 5

未調理パスタ F. Divella S.p.A(イタリア)等 6 0 6

容器に入った飲

料水 Danone Waters(フランス)等 3 0 3

ペットフード

(犬・猫用) Nestlé Purina PetCare Europe(スイス)等 4 1 5

オリーブオイル Acesur(スペイン) 等 5 0 5

ワイン Pernod Ricard Winemakers Spain(スペイン)等 3 1 4

4.2. コミュニケーションの位置づけ・狙い、検討状況

環境フットプリントにおけるコミュニケーションについては、以下の文書が公表され

た。

BACKGROUND DOCUMENT FOR THE TESTING OF COMMUNICATION

VEHICLES IN THE ENVIRONMENTAL FOOTPRINT PILOT PHASE

2013-2016(環境フットプリントのパイロットフェーズ 2013-2016 におけるコミ

ュニケーション手段の試験運用のための背景文書)33

消費者に対するコミュニケーションは以下に示す事項を前提としている。

消費者は、品質や価格に基づいて購入を決定し、その後で環境面等のその他の要素に注目

すると位置づけ。

環境パフォーマンス情報については、消費者が必要不可欠と認識している当該製品の特長

が変更されない限り、購入の判断に影響を及ぼすこと

したがって、消費者はより高い環境またはエネルギー性能を備えた製品に対しては、より

高い金額を支払う意思があること。

ただし、環境意識の高い製品に対する購入意欲があり、それを明言するものの、実際に購

入するのは少数であること(価値観と行動のギャップ)。

* これらは、環境フットプリント事業の実施に先駆けて、欧州域内で実施された消費者に対する意識調査

等により得られた知見である。

33 http://ec.europa.eu/environment/eussd/smgp/ef_pilots.htm

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第Ⅰ部 茶生産に係る基礎情報および国内外のWFP等算定・活用事例の収集

4 欧州における環境フットプリント事業の動向

4.3 コミュニケーションの活用例

41

環境フットプリント事業におけるコミュニケーションの狙いとしては、以下に示す事

項が示されている。

信頼できる比較可能で明確な環境情報の提供を通じて、消費者(B2C)および取引先

(B2B)が、より一層十分な情報に基づいた選択を行うことができるサポート

消費者に向けて、PEF プロファイルにおける製品の魅力向上、あるいは PEF に基

づいたライフサイクルでの環境性能の向上に寄与

より一層のグリーン消費に寄与

特に製品に関連した環境問題に対する意識の向上

製品の環境性能の向上(当該製品に関連した主要な環境問題にターゲットを絞り

製品設計を改善、ライフサイクルでの環境性能に基づいた競争の実現)

4.3. コミュニケーションの活用例

上記の背景文書においては、行動科学的知見に基づくコミュニケーションの方法が紹

介されている。

基本的な考え方としては、「各々の購入に関連した個人のフットプリントに焦点を

合わせて、平均的な消費者や、最も環境にやさしい消費者に対し、それぞれのパ

フォーマンスがどのような位置づけとなるか、情報提供すること」等があげられ

ている。

例えば、店舗で購入した際の領収書に対して、“Well done! Your cart is greener

than that of our average buyer.(お見事!あなたのカート(買い物カゴ)は、当

店の平均的なお客様と比較してグリーン度 B(中級、良)です。)”等と表示するこ

と等が例示されている。

このような例示は、以下の消費者の行動概念に基づいたものである。

①同じ店舗で購入している他の客が、どのように行動しているかに言及する

②「最も良い」環境パフォーマンスに対して、各人のパフォーマンスがどのような位置づけになる

かを情報提供することにより、「グリーン消費」に対する取組みを継続する

③各人のパフォーマンスを高めるためにどうするかの情報を提供し、「最も良い」環境パフォーマン

スとなるサポートをする

コミュニケーションの具体的手段として「性能ラベル」があるが、欧州の消費者にお

いては性能等級として、A~G で示したもの(A が最高ランク)等の理解が進んでいる

ようである。

性能ラベルは、以下に示すような要件が要求されている。

想定しうる性能等級を記述したうえで、当該製品の性能がどれに相当するか明確

に特定すること。

当該製品の環境性能として最大 3 つの影響領域を示し、それを伝える最低限の文

字(もしくは等級)を特定すること。

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4 欧州における環境フットプリント事業の動向

4.3 コミュニケーションの活用例

42

欧州消費者における環境影響の製品ラベルに対するアンケート

欧州域内における環境フットプリント事業に関する消費者アンケートでは、異なるデザ

インで環境影響を表示した製品について、消費者の志向を検証している(図表 4-4)。

図表 4-4 欧州の消費者アンケートで用いられた製品ラベルの概要34

No 環境フットプリント

の表示デザイン 説明 No

環境フットプリン

トの表示デザイン 説明

1

製品の統合的な環境影響

を A~E の五段階で表示

(凡例として環境影響の

程度をデータバーで表示)

2

製品の統合的な環境影響を A

~E の五段階で表示

(凡例として環境影響の程

度をデータバーで表示)

バーコードリーダーにより、

オンラインで詳細情報の確

認可能

3

統合的な環境影響は表示

せず、各クライテリアの環

境影響を A~E の五段階

で表示(凡例として環境影

響の程度をデータバーで

表示)

4

製品の統合的な環境影響と、

各クライテリアの環境影響

を A~E の五段階で表示

(凡例として環境影響の程

度をデータバーで表示)

5

製品の統合的な環境影響

を A~E の五段階で表示

(凡例として環境影響の程

度をデータバーで表示)

各クライテリアの環境影

響を定量スコアで表示

6

製品の統合的な環境影響と、

各クライテリアの環境影響

を星の数で表示

欧州の消費者アンケート結果の概要

「良い/悪い」といった表現の方が「影響が少ない/より影響がある」という表現よりも

簡単にわかりやすい。

No.6 のように星の数で表示すると、その数の意味が分かりにくいため混乱する。

No.3 等統合表示がないものは、消費者が「温暖化」、「大気汚染」「水質汚染」等の各ク

ライテリアについて理解する必要があるため、総合的に勘案して当該製品による環境

負荷が多いかどうかの判断が難しい。

データバー等の凡例があると、統合指標の「A」は B~E よりも環境影響が少ないとい

うことがわかりやすい。

製品カテゴリーの違いによって、消費者が気になるクライテリアは異なる。

34 European Commission – DG Environment(2012)Study on different options for communicating

environmental information for products Final report

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第Ⅰ部 茶生産に係る基礎情報および国内外のWFP等算定・活用事例の収集

4 欧州における環境フットプリント事業の動向

4.3 コミュニケーションの活用例

43

食品および飲料製品に係る環境影響は、「(自然環境の)富栄養化」と「(人への)

健康影響」と密接に関連していると認識。

No.5 のように定量データが示されているラベルに対しては、年齢層によって意見が異

なる傾向がある。若年層では数値の意味を深く理解せずとも、製品ラベルの信頼性が

向上するという意見が多い。

当該調査から得られる欧州域内の消費者のラベルに対する志向の考察を図表 4-5 に整理

した。

図表 4-5 当該調査から得られる消費者のラベルに対する志向の考察

製品が環境に対してよいのか悪いのか、シンプルにわかる方が良い。(統合指標があ

ると良いという傾向も同様の観点と考えられる。)

そのため、等級等で示す場合はその等級が持つ意味が分かるように凡例がある

と良い。

また、各クライテリアの“絶対値表示”は、数値そのものよりもラベルの“信

頼性の向上”という観点で効果がある可能性がある。

食品および飲料製品に対しては、「(自然環境の)富栄養化」と「(人への)健康影響」

への関心が高い傾向。