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日本粉体工業技術協会規格 SAP 12-10-2010 可燃性粉じん・空気混合気の 最小着火エネルギー測定方法 Test method for minimum ignition energy of combustible dust/air mixtures 制定:2010 3 18 社団法人 日本粉体工業技術協会

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日本粉体工業技術協会規格

SAP 12-10-2010

可燃性粉じん・空気混合気の

最小着火エネルギー測定方法

Test method for minimum ignition energy ofcombustible dust/air mixtures

制定:2010 年 3 月 18 日

社団法人 日本粉体工業技術協会

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SAP 12-10-2010

まえがき (略)

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SAP 12-10-2010

(1)

目 次

ページ

序文··························································································································1

1 適用範囲 ···············································································································1

2 引用規格 ···············································································································1

3 用語及び定義 ·········································································································1

4 測定方法の概要及び測定値の使用目的 ········································································2

5 試験装置 ···············································································································2

5.1 試験装置の概要 ····································································································2

5.2 対向放電電極 ·······································································································3

5.3 火花発生回路 ·······································································································3

6 試験粉体 ···············································································································3

7 測定方法 ···············································································································4

7.1 測定上の留意事項 ·································································································4

7.2 温度及び湿度 ·······································································································4

7.3 最小着火エネルギーの測定 ·····················································································4

7.4 試験装置の性能試験 ······························································································6

7.5 代替試験方法の適合性 ···························································································6

8 測定結果の記録 ······································································································7

附属書(規定) 火花発生回路·····················································································10

1 一般 ····················································································································10

2 火花発生回路例 ·····································································································10

2.1 2 電極システムの高圧リレーによるトリガ ································································10

2.2 3 電極システムによる補助火花トリガ ······································································11

2.3 対向電極対を使用する電圧増加によるトリガ ····························································11

2.4 電極移動によるトリガ ··························································································12

2.5 2 電極システムを用いた変圧器によるトリガ ·····························································12

解説·························································································································14

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白紙

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日本粉体工業技術協会規格

SAP12-10-2010

可燃性粉じん・空気混合気の

最小着火エネルギー測定方法

Test method for minimum ignition energy of

combustible dust/air mixtures

序文

可燃性粉じんが空気中に分散・浮遊し空気と適度に混合しているとき,着火源が与えられると粉

じん爆発を起こす。実際の着火源には電気火花,高温物体,摩擦火花等様々なものがあるが,着火

のしやすさを示す指標である最小着火エネルギーはコンデンサの充電エネルギーを用いた火花放電

を着火源に用いて測定する。最小着火エネルギーは,可燃性粉体を取り扱う産業工程において,粉

じん爆発のリスクアセスメントを行う際に不可欠のものである。

この規格は,海外の同種規格及び国内の実績ある手法を参考に,最新の学術的知見を加味して作

成されたものであり,多様な試験条件を設定することができるように配慮されている。一方で,こ

れは,この規格の正しい理解と活用のためには,利用者に粉じん爆発の基本的な特性(特に,粉じ

んの状態及び放電波形の影響)についての知識が求められることを意味する。

1 適用範囲

この規格は,空気中に分散・浮遊している可燃性粉じんの火花放電による最小着火エネルギーの

測定方法について規定する。測定上の安全・衛生対策をすべて網羅したものではないので,測定に

先立ってそれらの対策を実施することは,この規格の使用者の責任とする。

この規格の測定方法は,燃焼に空気中の酸素の供給を必要としない火薬,爆薬及び火工品類,並

びに,空気と接触しただけで発火する発火性物質又はそれらの混合物には適用しない。

2 引用規格

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。こ

れらの引用規格のうちで,西暦年を付記してあるものは,記載の年の版を適用し,その後の改正版

(追補を含む。)には適用しない。西暦年の付記がない引用規格は,その最新版(追補を含む。)を

適用する。

JIS Z 8817:2002 可燃性粉じんの爆発圧力及び圧力上昇速度の測定方法

JIS Z 8818:2002 可燃性粉じんの爆発下限濃度測定方法

3 用語及び定義

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この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS Z 8817 及び JIS Z 8818 によるほか,次による。

a) 可燃性粉じん 空気中の酸素と発熱反応を引き起こして着火する粉じん。

b) 可燃性粉じん・空気混合気 着火した場合に,燃焼が混合物全体に拡がる可燃性粉じんと空気と

の混合気。粉じん雲ともいう。

注記 混合気の粉じん濃度が,爆発下限濃度以上,かつ,爆発上限濃度以下の範囲にある

場合に着火可能である。

c) 火花放電 電位の異なる一対の電極間で発生する瞬間的な火花を伴う放電。放電は,対向電極対

(導体)を一つの電離経路によって導通させる現象である。

d) 着火 着火源の位置から燃焼帯が伝ぱすること。測定上の定義は,その装置の規格による。

e) 最小着火エネルギー この規格に規定する試験条件において,最も着火しやすい濃度の可燃性粉

じん・空気混合気を着火させる最小の火花放電エネルギー。

f) 試験粉体 最小着火エネルギーの測定に供する可燃性粉体で,爆発容器内において粉じん雲を形

成できるもの。

g) 着火遅延時間 試験粉体を爆発容器内に分散・浮遊し始めた時点から着火源を起動させるまでの

時間。

h) 性能試験用粉体 最小着火エネルギー試験装置の性能試験に用いる粉体。

4 測定方法の概要及び測定値の使用目的

この規格に規定する測定方法は,所定濃度の粉じん雲を爆発容器内に形成し,所定の着火遅延時

間後にコンデンサからの火花放電によって着火し,最小着火エネルギーを測定するためのものであ

る。最小着火エネルギーは,粉じん濃度及び放電エネルギーを変化させて求める。着火遅延時間は,

使用する爆発試験装置に定められた値とするが,着火遅延時間の影響が大きい場合は着火エネルギ

ーが最小となるよう変化させる。

測定値は,測定に使用した試験装置,方法及び試験粉体に特有のもので,物質固有の特性値では

ない。しかし,規定の条件下での測定値と性能試験用粉体の最小着火エネルギー測定値とを比較す

ることによって,可燃性粉じんの火花着火に対する相対着火危険性を求めることができる。また,

試験装置の放電回路を危険性が想定される実回路と等価の回路とすることによって,実装置上の危

険性を評価することができる。最小着火エネルギー又は相対着火危険性は,火花着火による粉じん

爆発の防止対策に役立てることができる。

注記 放電エネルギーを正しく求めることができる場合には,コンデンサからの火花放電以外

の方法で着火エネルギーを測定することができる。この場合は,測定結果の報告書に火

花発生方法又は回路の種類を明記する。

5 試験装置

5.1 試験装置の概要

試験装置は,基本的には爆発容器,対向火花放電電極及び火花発生回路で構成される。爆発容器

は,着火時に,均一で乱れの少ない所定の粉じん濃度を形成できるものとする。このような目的の

ため使用できる爆発容器として,JIS Z 8818 に規定の“落下式試験装置”及び“吹上げ式試験装置”

がある。または,7.5 の適合性があると判定された装置であれば使用することができる。

ただし,これらの装置の対向放電電極は,5.2 の条件を満たすものとする。

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注記 1最小着火エネルギーの測定にあたっては,一般に,爆発が最も激しくなる粉じん濃度を

含む広い濃度範囲にわたって試験を行うので,試験装置は十分な補強又は適切な安全対

策によって防護されたものとする。

注記 2最小着火エネルギーは,爆発容器の容積が 1 L 以上であれば容積には依存しない。した

がって,JIS Z 8817 の附属書に記載の“20L 又は 30L 球形粉じん爆発試験装置”を使用

することができる。

5.2 対向放電電極

電極の材質は,タングステン,ステンレス鋼,真ちゅう又は銅とし,直径は 2.0 ± 0.5 mm とする。

また,電極先端を半球状又は点状とし,電極間げきは 6 mmとする。電極間の絶縁抵抗は十分大き

くし,漏洩電流が発生しないように十分大きくする。

注記 1電極先端を点状にするとコロナ放電を生じ,コンデンサに蓄えられた静電エネルギーの

一部が着火に用いられることなく失われることがある。この損失が無視できない場合に

は,電極先端形状が鋭角となりすぎないように調整する。

注記 2火花放電を発生しにくい試験粉体を扱う場合は,電極間げきを必要最小限な距離に減少

させることができる。ただし,2 mm 以下としない。移動電極によるトリガ作用で放電

を発生させる場合(附属書 2.4 参照)は,移動電極と固定電極の最小間げきを 6 mm と

する。

注記 3通常,絶縁抵抗は,放電エネルギー1 mJ の場合には 1012Ω,100 mJ の場合には 1010Ωを

必要とする。

5.3 火花発生回路

火花発生回路として適切ないくつかの回路を附属書に示す。これらの回路は,5.2 に示す対向放電

電極の条件を満たすものとする。放電回路にインダクタンスを付加する場合は,そのインダクタン

スは 1~2 mH とする。

注記 1測定目的に応じて,インダクタンスの他に任意の値の抵抗若しくは静電容量又はこれら

の組み合わせを付加することができる。

注記 2微少なインダクタンスしか含まない特定の産業工程で発生する静電気放電による着火性

を測定する場合には,インダクタンスコイルを外して測定する。この場合,回路全体の

インダクタンスは 25 µH 以下とする。

6 試験粉体

一般に,最小着火エネルギーは粒子径の減少に伴って小さくなるので,受け入れた試験粉体を,

そのままの状態で試験する他に,使用又は使用予定場所に存在する粉体の最も細かい部分又はそれ

より細かい部分の粒子径を持つ粉体についても試験することが望ましい。

注記 1試験粉体の粒子径が不明の場合は,目開き 75μm のふるいを通過した粉体について試験

を行うことが望ましい。場合によっては,粉砕して粒子径を小さくすることができる。

注記 2 ある種の粉じんの最小着火エネルギーは,含有する水分量とともに大きくなる。また,

水分は粉じんの分散性に影響する。したがって,特に指定がないかぎり,乾燥状態で試

験を行う。乾燥した試験粉体は,密閉容器中で輸送し,デシケータ中に保存する。水分

を含む状態で試験を行う場合は,粉じんの分散状態に注意が必要であり,分散状態が良

くない場合には,酸性白土,軽質酸化マグネシウム,二酸化ケイ素などの分散性改良剤

(JIS Z 8818 参照)を添加する。

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7 測定方法

7.1 測定上の留意事項

7.1.1 粉体の取扱い及び試験場所

試験粉体を扱う前に,粉体及び燃焼生成物の毒性を考慮し,必要な対策を講ずる。試験は,適切

な排気設備の備わった場所で行う。

7.1.2 防護対策

爆発試験において,試験装置が破壊したり,電気的異常が生じた場合に備えて,防護対策を施す

とともに,危険領域では作業を行ってはならない。

7.1.3 感電防止

試験装置は高電圧回路を装備しているので,感電防止対策を講ずるとともに,十分な注意を払っ

て測定を行う。

7.2 温度及び湿度

爆発試験は,次に示す温度及び湿度で実施する。

20 ± 5 °C 及び相対湿度 65 %以下

ただし,関係者間の合意に基づき,他の温度及び湿度で行うことができる。

7.3 最小着火エネルギーの測定

7.3.1 測定準備

試験装置各部を清掃し,点検する。正常であることを確認した後,次の要領によって測定を行う。

a) 試験粉体の装てん 試験装置への試験粉体の装てんは,各試験装置の装てん方法に従う。

b) 粉じん濃度の均一性 装てんした試験粉体の粉じん雲を,各試験装置の爆発容器内に発生させ,

粉じん濃度の均一性が達成されるように,各試験装置の調整方法により各部を調整する。

7.3.2 最小着火エネルギーの計算法

発生した所定濃度の粉じん雲にコンデンサからの火花放電によって着火させる試験を実施し,最

小着火エネルギーを求める。放電エネルギーは,放電回路条件によって,次のいずれかの方法で計

算する。

a) 代数式 放電回路に抵抗器若しくは 1 mH オーダーのインダクタンスのいずれも含まない場合

又は 1 mH オーダーのインダクタンスを含み,かつ,放電エネルギーが概ね 100mJ 以下の場

合,次の式を用いて算出する。

E = 0.5C·(V12V0

2)

ここに, E: 放電エネルギー (J)

C: 放電回路の総静電容量 (F)

V1 及び V0 : 放電前及び後のコンデンサの電圧 (V)

b) 積分式 火花電流及び電圧が測定可能な場合,特に,放電回路に抵抗器を含む場合又は 1 mH

オーダーのインダクタンスを含み,かつ,放電エネルギーが概ね 100 mJ を超える場合は,次の

式を用いて算出する。

0( ) ( )E I t V t dt

ここに, I(t):火花電流 (A)

V(t):火花電圧 (V)

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:放電持続時間 (s)

注記 1 放電回路に抵抗器(通常 10 kΩ以上)を付加すると,放電の際の衝撃波が小さくなり,

かつ,放電の持続時間が長くなるので,多くの粉体は着火しやすくなる。特に,最小着

火エネルギーが大きい粉体への影響が著しい。

注記 2 100 mJ を超える放電エネルギーの場合,火花抵抗が極めて小さくなるので,1 mH オー

ダーのインダクタンスコイルを含むときは,回路抵抗は火花抵抗と比べて無視できなく

なる。また,抵抗器を追加した場合も同様である。このような場合は,電極間げき以外

でも多くの静電エネルギーが消費されるので,代数式では正しい値を算出することがで

きない。

7.3.3 最小着火エネルギーに影響する要因

次に示す項目は,最小着火エネルギーの測定値に影響する可能性があるので,最小値が得られる

よう調整する。また,これらのうち,本規格において設定条件を規定した項目以外の項目について

は装置ごとに検討する。

a) 可燃性粉じん・空気混合気の乱れ(粉じん濃度の時間的・空間的不均一性)

b) 粉じんの含水率及び粒子径分布

c) 粉じん濃度

d) コンデンサの充電電圧

e) 放電回路の静電容量(浮遊静電容量を含む。)

f) 放電回路のインダクタンス

g) 放電回路の抵抗

h) 対向電極の材料及び寸法並びに電極間げき

7.3.4 最小着火エネルギーの測定手順

最終的に報告する最小着火エネルギー測定値は,試験粉体・空気混合気の乱れが最も小さく,着

火にとって最適な濃度の粉じん雲について測定されたものでなければならない。最適な粉じん濃度

は,一度には求められず,繰り返し手順が必要である。例えば,次の手順によって求めることがで

きる。

a) 初めに行う粉じん濃度は,150~500 g/m3 とする。

b) 試験装置に定められた着火遅延時間に設定し,所定の粉じん濃度で試験粉体を確実に着火で

きる火花エネルギーの値から始める。火花エネルギーの値は,段階的に減少させる。その濃度

のままで,例えば,火花エネルギーを約 1/3 又は 1/2 ずつ段階的に減少させ,10 回の試験で 1

回も着火しない火花エネルギー値を求める。この手順を,粉じん濃度を減少又は増加して繰り

返し行う。さらに,グラフに表したとき,濃度毎の最小の火花エネルギーを結ぶ線が放物線と

なるまで繰り返し行う。

注記 試験装置に着火遅延時間が定められていない場合は,120 ms から開始し,最適な値と

なるよう調整する。

c) 最小着火エネルギー(MIE)は,次に示すように,粉じん・空気混合気(粉じん雲)の連続 10

回の着火試験において 1 回でも着火する最小の火花エネルギー(E2)と着火しない最大の火花エ

ネルギー(E1)との間に存在する。

E1 < MIE < E2

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7.4 試験装置の性能試験

最小着火エネルギー測定に用いる試験装置は,使用に際して常に一定の性能を持つ必要がある。

そのための装置の性能試験は,次の方法による。

なお,性能試験は,定期的(例えば,1 年に 1 回。)又は大規模な保守若しくは修理の後に行う。

a) 構成部品の点検

1) 放電エネルギー:コンデンサの静電容量及び印加・発生電圧

2) 放電回路のインダクタンス

3) 放電回路の抵抗

4) 放電回路の静電容量(浮遊静電容量を含む。)

5) 粉じん雲発生装置(着火遅延時間及び分散圧力等)

b) システム全体の性能試験は,次のいずれかの方法によって行う。

1) 性能試験用粉体を用いる方法

表 1 に示す 3 種類の性能試験用粉体を用いて測定した最小着火エネルギーが,同表に示す

許容範囲にある場合,試験装置は適正であると判定する。性能試験用粉体は,使用に先立っ

て常圧,50°C で 24 時間以上乾燥する。

表 1 性能試験用粉体と最小着火エネルギーの許容範囲

性能試験粉体(平均粒子径) 最小着火エネルギーの許容範囲

石松子(31 µm) 5~15 mJ

アントラキノン(18 µm) 2~6 mJ

ポリアクリロニトリル(27 µm) 2~6 mJ

2) 一つ以上の“基準とする粉体”を用いて,一つ以上の異なる試験機関と最小着火エネルギー

値の比較測定を行う方法

“基準とする粉体”の統計的最小着火エネルギー(7.5 b 参照)が,比較値の 3 倍未満,か

つ,1/3 を超える場合,試験装置は適正であると判定する。すなわち,性能試験を行う装置及

び異なる試験機関における“基準とする粉体”の統計的最小着火エネルギーをそれぞれ Es

及び Es(c)とした場合,その比が次の範囲にある場合である。

1/3 < Es/ Es(c) < 3

7.5 代替試験方法の適合性

最小着火エネルギーの測定は,適合性が実証された代替試験装置又は試験方法を用いて測定する

ことができる。代替試験装置又は試験方法の適合性を実証するための方法は,次による。

a) 性能試験に適合する,最小着火エネルギー測定に用いる試験装置(以下,基準装置という。)を

有する他の一つの試験機関と協力し,次の三つの最小着火エネルギー範囲につき,各範囲五種

類以上の異なる“適合性試験に用いる粉体”(15 種類以上の粉体)を用いて比較試験を行う。

ただし,試験装置が,特定範囲の最小着火エネルギーを与える粉体だけを対象とする試験装

置である場合は,一つ又は二つの最小着火エネルギー範囲について,適合性試験を行うことが

できる。

最小着火エネルギー範囲: 1 mJ ~ 10 mJ

10 mJ ~ 100 mJ

100 mJ ~ 1 000 mJ

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また,“適合性試験に用いる粉体”には,金属粉体,天然有機粉体,合成有機粉体,並びに炭

じんの四つのグループについて,各グループから各々二種類以上の粉体を含め比較試験を行う。

b) 着火の確率から,次の式によって統計的最小着火エネルギー(Es)を算出する。着火エネルギ

ーE2は,最低五つの異なる粉じん濃度において測定する。

1])[(

)log](log[log

2

1222

10

EINI

EEEIE

sE

ただし,I[E2]は E2 において着火した粉じん濃度の数,(NI+I)[E2]は試験した粉じん濃度の総数で

ある。

注記 計算例を挙げると,次の通りである。

図 1 に示す結果から,E2 = 30 mJ, E1 = 10 mJ, I[E2]=4 及び(NI+I)[E2]=6 を上記の式に

代入すると,Es = 16 mJ となる。

c) 試験に供したすべての粉体について,代替試験装置又は試験方法で得られた統計的最小着火エ

ネルギーが,基準装置で得られた統計的最小着火エネルギーの 3 倍未満,かつ,1/3 を超える場

合,当該代替試験装置又は試験方法は適合性があると判定する。

○:10 回の試験で着火があった場合,×:10 回の試験でいずれも不着火の場合

図 1 粉じん濃度と放電エネルギーの関係

8 測定結果の記録

この規格によって求めた測定及び計算結果は,通常,次の項目について整理し,記録する(表 2 参

照)。

a) 測定の日時

b) 測定者の氏名

0 500 1000 1500 2000

粉じん濃度(g/m )

1

10

100

1000

放電

エネ

ルギ

ー(

mJ

着火

不着火

E = 30 mJ

E = 10 mJ

2

3

10 mJ<最小着火エネルギー<30 mJ

における着火確率 = 4/6

統計的最小着火エネルギー = 16 mJ2

1

E

Es

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SAP 12-10-2010

c) 試験粉体の名称

d) 試験粉体の条件

1) 試験粉体の種類

2) 試験粉体の採集場所又は入手先等の状況

3) 試験粉体の性状

e) 測定条件

1) 測定室の温度及び湿度

2) 爆発試験装置の種類

3) 火花発生方法

4) 付加回路の値(インダクタンス,静電容量,抵抗)

5) 着火遅延時間

6) 分散空気圧力(吹上げ式爆発試験装置の場合)

7) 火花エネルギーの算出方法(代数式又は積分式)

f) 測定結果

1) 着火の有無,着火しない場合は試験装置で発生できる最大火花放電エネルギー値

2) 最小着火エネルギー(E1 < MIE < E2)

ここに,E1:着火しない最大の火花エネルギー

E2:着火する最小の火花エネルギー

3) 統計的最小着火エネルギー(Es)

(試験装置の性能試験を行う場合又は指定があった場合のみ)

4) 測定結果は試験した粉体だけに関するものであることの表明

5) 発行日並びに技術的責任を負う者の署名及び肩書き又は同等の表示

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SAP 12-10-2010

表 2 粉じんの最小着火エネルギー試験装置による測定結果

発行日: 年 月 日

発行者(技術的責任を負う者の署名及び肩書き,又は同等の表示)

測定の日時 測定者の氏名

試験粉体の名称

試験粉体の種類

試験粉体の取扱場所又は入手先など

成分及び組成

粒度分布

真密度 g/cm3

乾燥の有無 有 無

乾燥条件 温度: °C,乾燥時間: 時間,(水分: %)

ふるい分け条件 ふるい分けなし ふるい分け(目の開き µm)

測定室の温度及び相対湿度 °C, %

爆発試験装置の種類 吹上げ式 落下式 その他( )

火花発生方法又は回路の種類

付加回路の値 , H, F

着火遅延時間 秒

分散空気圧力(吹上げ式装置)

火花エネルギーの算出方法 代数式 (0.5·C·V2) 積分式 (I·V dt)

着火の有無有

無(試験装置の最大放電エネルギー: J)

最小着火エネルギー(MIE)

( E1 < MIE < E2 )

< MIE <

着火する最小の火花エネルギー値 (E2): mJ

着火しない最大の火花エネルギー値(E1 ): mJ

統計的最小着火エネルギー(Es) mJ

備 考

◎ 測定値は,この試験粉体についてのみ有効である。粒子径やその他の要因が変わると測定値は

異なるので,注意されたい。

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SAP 12-10-2010

附属書(規定) 火花発生回路

この附属書は,火花発生回路の設計例について記述したものであり,規定の一部をなす。

1 一般

可燃性粉じん・空気混合気の最小着火エネルギー測定に用いる試験装置の火花発生装置として使

用する火花発生回路 5 例について記述する。いずれの粉じん爆発試験装置を使用しても,ここに例

示した回路のいずれかと組み合わせて使用することができる。ただし,比較的大きい爆発容器を用

いた場合,粉じんの分散中に発生する静電気帯電現象を回避する対策を施し,粉じんの分散が適切

に行うことができるときに限る。

注記 1火花エネルギーの計算においては,電極接続時の浮遊静電容量による静電容量増加によ

って,電極接続前よりもコンデンサの電圧が低下するので,放電回路の全静電容量及び

放電時の電圧を考慮して算出する。

注記 2粉じんの分散中に発生する静電気帯電現象を回避する対策として,分散性改良剤の添加

がある。

2 火花発生回路例

2.1 2 電極システムの高圧リレーによるトリガ

この試験装置の火花発生回路を,附属書図 1 に示す。エネルギーが非常に小さい場合,2 電極シ

ステムの浮遊容量 Cp の大きさはコンデンサ C0 と同等オーダーとなり,無視することができない。

この場合は,Cp は一定とし,次の式によって火花電圧 Vp を算出する。

Vp=V0C0/(C0+Cp)

したがって,火花エネルギーE は,次の式で与えられる。

E=0.5·(C0+Cp)Vp2

V0: 充電電圧,Vp: 放電電圧,C0: 静電容量,Cp: 浮遊静電容量,

Z:付加回路,HVR:高電圧リレー

附属書図 1 2 電極システムの高圧リレーによるトリガをもつ火花発生回路

Z

C0

V0

HVR

Cp

Vp

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SAP 12-10-2010

2.2 3 電極システムによる補助火花トリガ

この試験装置の火花発生回路を,附属書図 2 に示す。重要な構成要素として3電極火花系があり,

主電極である対向電極対と補助電極からなる。対向電極対の間げきは 6 mmとする。充電電圧 V0は,

主電極間で火花橋絡が発生しないような値を選択する。コンデンサ C0 は,間げきでの空気が電離し

なければ放電せず,この電離は補助火花用トリガ回路を起動させることによって達成される。通常,

補助火花は着火コイルの一次巻線へ流れ込む電流の遮断によって発生する。

補助火花のエネルギーは,主放電回路のエネルギーの 1/10 以下に制限する。したがって,5 mJ

以下の主火花エネルギーに対しては,補助火花のエネルギーが小さすぎて空気が電離しないことが

ある。主火花が飛ぶ前に,コンデンサ C0中に充電されたエネルギーは,電極先端から流れるコロナ

電流によって減少するので,特に,火花エネルギーが低いときはその影響を考慮しなければならな

い。主火花エネルギーの計算においては,補助火花のエネルギーは考慮しなくてもよい。

V0: 充電電圧,C0: 静電容量,Z: 付加回路,

CR: 充電リレー,AS: 補助火花用トリガ回路

附属書図 2 電極システムによる補助火花トリガをもつ火花発生回路

2.3 対向電極対を使用する電圧増加によるトリガ

この試験装置の火花発生回路を,附属書図 3 に示す。スイッチ Sw を閉じると,高電圧電源によ

って限流抵抗 Rc(1108~1109 Ω)を介して徐々にコンデンサ C0 が充電され,火花が発生する電

圧値 Vs まで電位が上昇する。コンデンサ C0 の電圧は,減結合抵抗 Rd(1108~1109Ω)を直列に

接続した静電電圧計で測定する。コンデンサ容量又は放電電圧を変えることによって,エネルギー1

mJ 以上の火花を容易に発生させることができる。

この回路を用いた試験手順は,次のようになる。まず,必要な火花エネルギーを決め,適切な静

電容量のコンデンサ及び 10~30 kV の範囲の電圧を選択する。E=0.5·C0·Vs2によって得られる必要な

火花エネルギーの火花が,電極で発生するまで試行して調整する。なお,式中の Vs は火花が発生す

る電圧であり,C0 は高電圧電極における総静電容量である。次に,着火試験を行うために,調整粉

じんの必要量を爆発試験容器に装てんする。Swを閉じて高電圧電源を回路に切り替え,同時に試験

粉体を分散させて,電極間に火花を発生させる。その際の着火の有無を記録する。

吹上げ式粉じん爆発試験装置を使用する場合,粉じん雲の形成と火花発生のタイミングは必ずし

も同調しないため,粉じん濃度の乱れの程度はランダムに分布する。したがって,乱れの程度に応

じて,各火花エネルギーにおいて不着火試験数を最大 50 回まで増さなければならない。

AS

Z

C0

V0

CR

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SAP 12-10-2010

電極間げきは,6 mm 未満にしない。したがって,10 mJ 未満のエネルギーを発生させるためは,

極めて小さなコンデンサ C0 及び高い限流抵抗 Rc(1109Ω)が必要になる。

V0: 火花電圧,C0: 静電容量,Z: 付加回路,

Sw: 高電圧スイッチ,Rc: 限流抵抗,Rd: 減結合抵抗,EV: 静電電圧計

附属書図 3 対向電極対を使用する電圧増加によるトリガをもつ火花発生回路

2.4 電極移動によるトリガ

この試験装置の火花発生回路を附属書図 4 に示す。最初,移動電極は定位置にあり,電極間げき

は十分大きいので破壊電圧に達することはない。充電リレーCR を作動すると,空気圧システムに

より,移動電極 ME は 6 mm の設定最小電極間げきまで急速に移動して,放電火花を発生させる。

火花エネルギーE は,E=0.5·C0·V02 によって計算する。

電極の移動中,コンデンサに充電されたエネルギーは,電極先端から流れるコロナ電流によって

減少する。したがって,この種の火花トリガは,コロナ損失が無視できるほど小さなとき,すなわ

ち,火花エネルギーが 10 mJ を超えるときだけに許容できる。

V0: 充電電圧,C0: 静電容量,Z: 付加回路,

ME: 移動電極,CR: 充電リレー

附属書図 4 電極移動によるトリガをもつ火花発生回路

2.5 2 電極システムを用いた変圧器によるトリガ

この試験装置の火花発生回路を,附属書図 5 に示す。C は,初期電圧 V を持つ放電コンデンサで

ある。40 µF から 1/10 ずつ段階的に減少する一連のコンデンサで,1 kV 以下の可変電圧(400~500 V

が実際的な最小電圧)を印加することによって,広範囲の E=0.5·C·V2 の値が得られる。過渡的な粉

ZC0

CR MEV0

EV

ZC0

V0

Rd

RcSw

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SAP 12-10-2010

じん雲の形成と火花放電とのタイミングが重要な試験装置(例えば,吹上げ式粉じん爆発試験装置。)

において,希望するタイミングで火花放電を開始させるために,コンデンサ Ctr,スイッチ S 及びト

リガ変圧器 T の一次コイルが主要構成要素をなすトリガ回路(附属書図 5)を用いる。スイッチ S

を閉じると,約 15kVのピーク値を有する高電圧パルスがトリガ変圧器Tの二次コイルに誘導され,

火花間げき G を絶縁破壊し,それによって主コンデンサ C の放電を引き起こす。

C 及び V の様々な組み合わせに対して生じる火花エネルギーの総量は,火花間げきにおける電流

及び電圧を時間の関数として測定し,その測定から得られる電力-時間曲線を積分することによって

求められる。ダイオード D は,一方向だけの放電を生じさせる機能をもつ。トリガ変圧器 T の二次

コイルの自己インダクタンスは,1~2 mH とする。

この回路のトリガ機能の主構成要素はインダクタンスであることから,インダクタンスなしで試

験に用いてはならない。

経験上,トリガ火花のエネルギーを 2~5 mJ 未満に低下させることは極めて困難である。したがっ

て,このトリガ回路は,5 mJ を超える火花エネルギーを発生させる場合にだけ使用できる。主火花

エネルギーの計算においては,トリガ火花のエネルギーは考慮しなくてもよい。

C: 主コンデンサ,Ctr: トリガ回路の静電容量,D: ダイオード,

S: スイッチ,T: トリガ変圧器,G: 火花間げき

附属書図 5 2 電極システムを用いた変圧器によるトリガをもつ火花発生回路

CCtr

DV

T

S

G

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解 1

SAP 12-10-2010

可燃性粉じん・空気混合気の最小着火エネルギー測定方法

解 説

この解説は,本体及び附属書に規定・記載した事柄,並びにこれらに関連した事柄を説明するもの

で,規定の一部ではない。

1 制定の趣旨

粉じん爆発は,他の主要な産業災害と比較するとその発生頻度は比較的低いが,被害の甚大さ及

び対策の難しさ等の点から関係業界では極めて重要な問題として認識されており,従来から種々対

策が講じられてきたところである。しかし,近年,工業技術の進歩による粉体の微細化,新素材の

開発等にともない,粉じん爆発を起こす粉体の種類が増加する傾向にある。このような背景のもと,

可燃性粉体の粉じん爆発に関する諸特性のなかでも着火のしやすさを示す指標である最小着火エネ

ルギーの測定に対するニーズはますます高まっている。

これまで国内には,日本工業規格(JIS)又は他の任意規格にも最小着火エネルギーの測定に関する

規定はなく,試験機関等では国際規格(IEC1241-2-3)に準拠した既製の試験装置又は独自に開発した

装置を用いて測定を行っている。しかし,粉体の最小着火エネルギーの測定値は試験装置に大きく

依存するので,別々の試験機関で行った試験結果に整合性がないという事態も予測される。

以上の現状をふまえ,国内における最小着火エネルギーの測定方法の標準化を目的として,本協

会規格が制定された。この規格を定めるにあたり,特に,次の点を念頭において審議した。

(1) 国際規格との整合性の確保

国際的には国際電気標準会議(IEC)方式が主流であるため,その内容を可能な限り取り込む。ま

た,必要に応じて,他の海外規格(米国 ASTM 規格及び欧州 EN 規格)を参考とする。

(2) 国内独自手法への配慮

国内の試験機関等が独自に開発した手法の中には,原理的に粉じん爆発の特性に配慮し,かつ,

長期間の実績があるものがあるので,これを可能な限り取り込む。

2 制定の経緯

最小着火エネルギーに関する海外の規格の代表的規格として IEC 1241-2-3,ASTM E2019-03 及び

BS EN 13821 がある。なかでも IEC 1241-2-3 に準拠した試験装置が実質的な標準として多くの国で

用いられている。一方,国内においては独自方式,特に放電回路に抵抗を付加した試験装置も長期

の使用実績があり,両者のシェアはほぼ拮抗している。これらの試験装置は性能的には優劣をつけ

がたく,むしろ粉じんの性質及び産業工程の条件を考慮して試験方法を決定すべきと考えられる。

しかしながら,このような状況を放置することは利用者に無用の混乱を来すおそれがあるため,

統合的内容を持つ国内規格を制定することを目標として,2005 年 10 月,社団法人日本粉体工業技

術協会 粉じん爆発委員会に,本規格原案作成の作業グループとして,学識経験者,並びに試験機関

及び関連民間企業から選定された者を構成員とする最小着火エネルギー測定規格原案作成小委員会

が設けられた。以後,約 2 年間 7 回の審議を経て,2007 年 11 月原案が完成した。

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SAP 12-10-2010 解説

解 2

3 審議中に特に問題となった事項

審議中,特に問題となった事項は,次の通りである。

a) 付加回路の影響について

コンデンサに蓄積した静電エネルギーを放電ギャップで放電させ,そのエネルギーによって着火

する方式において,その放電に関係する回路(以下,放電回路という。)に含まれる静電容量,イン

ダクタンス及び抵抗によって放電の電流及び電圧波形は異なってくる。たとえば,放電回路に静電

容量(通常は,充電用コンデンサの静電容量)しか含まない場合,放電の持続時間は極めて短く(約

100ns 以下),大電流かつギャップ間の電圧は小さいものとなる。これにインダクタンス(1mH)を付

加すると解説図 1 に示すように,放電電流波形及び電圧は減衰振動波形となり,放電持続時間は約

60µs に伸びる。また,抵抗(25kΩ)を付

解説図2 抵抗(25kΩ)を付加したときの放電電流・電圧波形(放電エネルギー3.19mJ)

加すると解説図 2 に示すように,単調な減衰波形となり,放電持続時間も 120µs と大幅に伸びる。

放電エネルギーが等しくても,放電波形が異なると粉じんの着火しやすさに影響を与えることが

知られている。一般に,インダクタンス(1~2mH)が有る場合の方が無い場合よりも小さな放電エネ

ルギーで着火するので,インダクタンスが有る回路で得られたエネルギー値を標準として用いるこ

とが多い。これは,インダクタンスが無い場合は放電の際に生じる空気の衝撃波が強すぎるため,

粉じんを放電空間から遠ざけてしまうので,粉じんに熱が有効に伝わらないためと理解されている。

抵抗を付加した場合も,インダクタンスを付加したときと同様の効果が認められるが,抵抗の値に

よってもその度合いは異なってくる。なお,インダクタンスと抵抗を同時に付加することは,特別

解説図1 インダクタンス(1mH)を付加したときの放電電流波形(放電エネルギー100mJ)

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SAP 12-10-2010 解説

解 3

な事情がない限り行わない。

注記 解説図 1 及び解説図 2 の波形は一例を示したものであり,付加回路の値によって異なる。

b) 実回路と等価の回路について

本文 4 測定方法の概要及び測定値の使用目的に“実回路と等価の回路”との記述があるが,こ

れは依頼者が想定する工程で発生する放電の回路(実回路)を,これと等価の受動回路素子(抵抗,

インダクタンス及びキャパシタンス)に置き換えた回路ということである。たとえば,漏れ抵抗の

大きな導体からの放電が懸念される場合にはその抵抗値に等しい抵抗を挿入し,大きな金属容器か

らの放電であればそれに見合った静電容量を選択する。しかし,一般的には,試験の依頼者が適切

な回路を選択することは困難であるので,試験機関の試験員等が,依頼者から試験粉体がどのよう

な工程で使用されるものであるかを聴取の上,適切な回路を推奨すべきである。

c) 性能試験において“基準とする粉体”の比較値となる他の試験機関の値について

“基準とする粉体”の比較値となる他の試験機関の値とは,国際的に認知された試験機関が,そ

の試験装置により,基準とする粉体を用いて測定した値とする。このような試験機関として,たと

えば,キューナー社(スイス)がある。

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SAP 12-10-2010 解説

解 4

5 原案作成委員会の構成表

原案作成委員会の構成表を次に示す。

■■社団法人日本粉体工業技術協会 粉じん爆発委員会 原案作成小委員会構成表■■

粉じん爆発

委員会

原案作成

小委員会氏 名 所 属(2008 年 3 月)

(委員長) ○ 榎 本 兵 治 東北大学

(副委員長) ◎ 松 田 東 栄 社団法人産業安全技術協会

(副委員長) ○ 土 橋 律 東京大学

(委員) ○ 井 戸 真 嗣 日揮株式会社

○ 内 山 宇 逸 アマノ株式会社

岡 本 正 行 日本エアー・フィルター株式会社

○ 奥 村 清 志 新東工業株式会社

小 野 和 夫 BS&B セイフティ・システムズ株式会社

加 納 理 株式会社日清製粉グループ本社

○ 北 洞 伸 一 新東工業株式会社

坂 本 浩 株式会社パウレック

○ 島 村 英 生 株式会社環境衛生研究所

清 水 修 ホルビガー日本株式会社

進 藤 健 一 三洋貿易株式会社

○ 隅 田 稔 株式会社ホソカワミクロン

○ 土 屋 仁 志 味の素株式会社

○ 中 田 真 輔 味の素株式会社

永 田 憲 司 ファイク・ジャパン株式会社

○ 荷 福 正 治 独立行政法人産業技術総合研究所

野 口 博 嗣 株式会社栗本鐵工所

○ 長谷川 修 一 アマノ株式会社

肥 塚 和 彦 株式会社栗本鐵工所

福 井 雄 二 ホソカワミクロン株式会社

鉾 田 泰 威 日本フェンオール株式会社

○ 八 島 正 明 独立行政法人労働安全衛生総合研究所

○ 山 隈 瑞 樹 独立行政法人労働安全衛生総合研究所

山 下 治 壽 ホソカワミクロン株式会社

(事務局) 野 出 毅 社団法人日本粉体工業技術協会

藤 井 清 彦 社団法人日本粉体工業技術協会

注記 ◎印は 最小着火エネルギー測定規格原案作成小委員会委員長

○印は 最小着火エネルギー測定規格原案作成小委員会委員を示す。