児童のよりよい生活習慣の確立を目指して · ア...
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実 践 記 録
児童のよりよい生活習慣の確立を目指して
~「生活リズム」「運動」「排便」を切り口に
取り組んだ3年間の実践~
<平成23年度 学校保健委員会 ~みんなで楽しく、「きときと夢体操」を踊ろう~>
富山市立熊野小学校
養護教諭 田中 郁恵
目 次
P
1 研究主題設定の理由 1
2 研究の仮説 2
3 研究の内容と方法 2
(1) 仮説1について
(2) 仮説2について
4 研究の実践とその考察 2
○ 実践事例1 平成21年度 学校保健委員会 2
「朝から元気な熊野っ子!~ぐっすり寝て、もりもり食べ、のびのび体を動かそう~」
○ 実践事例2 平成22年度 学校保健委員会 5
「心も体も元気になろう!~体を動かすと、いいこといっぱい!!~」
○ 実践事例3 平成23年度 学校保健委員会 8
「毎日すっきりうんちで、朝から元気な熊野っ子!」
5 研究のまとめ 11
(1) 解明されたこと
① 仮説1について
② 仮説2について
(2)今後の課題
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● 研究主題
1 研究主題設定の理由
前任校において、19年度「朝ごはん」、20年度「生活リズム」を核として、児童のよ
りよい生活習慣の確立を目指して、全校体制で年間を通して取り組んできた。年間を通し
てテーマに基づいた実践を行い、家庭とも連携を図りながら取り組むことで、子どもたち
に規則正しい生活を送ることの大切さを、実感を伴う体験を通して気づかせることができ
た。また、基本的な生活習慣の定着を図るには、一回きりの実践ではなく、継続すること
が大切であり、課題でもあると感じた。
二年前、現任校に赴任した。どの学校の子どもたちにおいても、生涯を通じて健康に過
ごすための基礎は小学校時代にあるとの思いがあり、学童期における基本的な生活習慣の
確立が何よりも大切であるという考えは変わらない。現任校においても、年間を通して一
つのテーマのもと健康教育を進めていき、児童のよりよい生活習慣の確立を目指して、継
続して取り組んでいきたいと考えた。21年度は、子どもたちのあいさつの元気がないこ
とが気にかかり、生活習慣の乱れも関係しているのではないかという同僚からの問題提起
もあり、「生活リズム」を学校保健委員会のテーマに取り上げた。
基本的な生活習慣を身に付けるには、健康の三原則である「食事」「睡眠」「運動」それ
ぞれが大切である。また、それぞれが関連し合っており、どれか一つだけ優れていても健
康とはいえないし、どれか一つでも欠けていても健康とはいえない。ただ、どれか一つを
改善しよう、よりよくしていこうと努力することで、他の項目も連動して改善されていき、
さらによりよい生活につながると考える。
子どもたちに、規則正しい生活をすることが、学校での学習にもよい効果を発揮し、よ
りよい生き方にもつながり、毎日が楽しく充実したものになるということを実感させたい。
また、毎日を明るく前向きに、元気いっぱいに過ごしてほしい、そんな子どもたちがもっ
と増えてほしいという願いがある。毎年大きなテーマを一つに絞り、掲げることで、より
深くテーマについて子どもたちと共に学び合い、健康な生活を考え、実践していくことが
できるのではないかと考えた。22年度は「運動」、23年度は「排便」を切り口にして、
養護教諭が全校児童に働きかけることができる学校保健委員会を中心に、児童保健委員会
の児童や家庭の協力のもと、本研究を進めた。
児童のよりよい生活習慣の確立を目指して ~「生活リズム」「運動」「排便」を切り口に取り組んだ3年間の実践~
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2 研究の仮説
3 研究内容と方法 (1)仮説1について
(2)仮説2について
4 研究の実践とその考察
◎ 学校保健委員会テーマ構想に当たって(児童の実態から) <補助資料2>
本校の児童は、21年6月に実施した「とやまゲンキッズ作戦」の結果によると、10
時までに寝ている児童(低・中学年)が93.5%、10時半までに就寝している児童(高
仮説1 学校保健委員会を中心として、全校体制で子どもの基本的な生活習慣にかかわ
る健康課題に取り組むことにより、一人一人が自分の生活を振り返り、見直し、
自分自身の健康の目当てをもち、実践に向けての意欲をもつことができる。
仮説2 家庭の理解と協力を得ながら、基本的な生活習慣の定着を図る継続的な取り組
みを進めることにより、子どもたち自身が主体的によりよい生活習慣を確立しよ
うという実践意欲が高まり、実感を伴う実践を行い、習慣化を図ることができる。
実践事例1 平成21年度 学校保健委員会 <補助資料1>
「朝から元気な熊野っ子!~ぐっすり寝て、もりもり食べ、のびのび体を動かそう~」
① 自分の生活を振り返り、見直す場の工夫
ア 生活リズム実態調査から(実践事例1)
イ とやまゲンキッズ作戦の活用から(実践事例2)
ウ 排便に関するアンケートから(実践事例3)
② 知識、理解を深め、行動化に結び付く学習過程の工夫
ア 児童保健委員会の学校保健委員会への積極的な参画から(実践事例1、2、3)
イ 学校三師、学校栄養職員の専門性を生かした指導から(実践事例2、3)
① 家庭と連携し、習慣化を図る工夫
ア 生活リズムチェックカード(2回目)の取り組みから(実践事例1)
イ 「のびのび体を動かそう!ウィーク」の取り組みから(実践事例2)
ウ 元気パワーアップウィークの取り組みから(実践事例3)
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学年)が88.9%であり、夜型の生活で就寝時刻が遅くなっている児童はそれほど多く
はないのが現状である。また、朝ごはんを食べている児童は95.6%で、ほとんどの児
童が朝ごはんを食べてきている。しかし、登校時の様子を見ていると、あいさつの声が小
さく、朝から元気がない児童の姿も見られたりするのが現状である。
21年度の児童会の全校的な取り組みである「あいさつ運動」により、朝から元気いっ
ぱいにあいさつをする児童が増え、毎週火曜日の体力つくり活動(マラソン)を開始した
ことにより、外で思いっきり体を動かす児童が増えてきている。この学校保健委員会をき
っかけに、規則正しい生活リズムを確立し、朝から元気いっぱいに学校生活を過ごす子ど
もたちが増えてほしいという願いをもち、テーマを設定した。
【仮説1】について
① 自分の生活を振り返り、見直す場の工夫
ア 生活リズム実態調査から <補助資料3~5>
学校保健委員会の事前の活動として、5日間生活リズムチェックカードをもとに、
就寝時刻、起床時刻、朝起きたときの気分、朝ごはんの様子、運動(遊び)の様子、
排便の様子の6項目について調査を行った。チェックカードには、5日間を振り返っ
ての感想と保護者からのひとことメッセージ、学校医の先生方への質問も併せて記入
できるようにした。
平日と休日に分け、学年別に集計を行った。学年が上がるにつれて就寝時刻が遅く
なり、睡眠時間も短くなっていること、早寝早起きができている児童ほど、起きたと
きの目覚めがスッキリしていて、朝ごはんも、もりもりとしっかり食べることができ
ていることが分かった。また、朝に排便がある児童と朝に排便がない児童の二極化が
見られることが明らかになった。その他、朝排便があったりなかったりする児童や、
朝はほとんど排便がなく、昼間や夜などに排便がある児童、2~3日に一度排便があ
る児童など、その子にとっての排便のリズムがあることが分かった。
休日の夜は、平日の夜よりも遅く寝て、朝も遅く起きている傾向にあり、休日は平
日の睡眠時間が短かった高学年の児童も、9時間以上睡眠時間を確保できている児童
が多く、目覚めもスッキリしている児童が多かった。また、平日も休日も、変わりな
く朝ごはんをもりもり食べて、元気に体を動かしている児童が多いという実態が明ら
かになった。この生活リズム実態調査結果を、学校保健委員会の資料として保護者に
知らせると同時に、全校児童にも、全校の結果としてまとめたデータを、学校保健委
員会で養護教諭が発表することで、自分の生活を振り返り、見つめ直す材料として活
用した。
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② 知識、理解を深め、行動化に結び付く学習過程の工夫
ア 児童保健委員会の学校保健委員会への積極的な参画から <補助資料6.7>
児童保健委員会の子どもたちは、自分たちの寸劇とクイズを通して、全校児童に規
則正しい生活の大切さを伝えたいと考えた。規則正しい生活をしているあきこさん、
不規則な生活をしているすぐるさんの生活の様子を寸劇で演じ、最後に自分がどちら
の生活に近いかを全校児童に問いかけた。また、自分の生活を振り返りながらクイズ
に参加してもらえるよう、クイズの内容を吟味し、規則正しい生活を送ることの大切
さについて、豆知識も伝えながら発表した。
学校保健委員会後に、児童が振り返りカードに児童保健委員会の発表や学校医の話
などから感じたことを感想に書いている。
【仮説2】について
① 家庭と連携し、習慣化を図る工夫
ア 生活リズムチェックカード(2回目)の取り組みから <補助資料8>
学校保健委員会開催後に、学んだこと
を実践につなげることをねらいとし、「ぐ
っすり寝て、もりもり食べてのびのび体
を動かそう!ウィーク」として、2回目
の生活リズムチェックを5日間実施した。
事前の活動で行った1回目と内容はほ
ぼ同じであるが、事後のチェックカード
は、寝る時刻と起きる時刻の目標を立て
て取り組むことができるよう、記入でき
る欄を設けた。また、今回も5日間を振
り返っての感想を記入し、保護者からのひとことメッセージを記入してもらった。
保護者の方から見守られ、励まされることで、より規則正しい生活をしていこう
という意欲が高まり、目標が達成できた喜びが自信にもつながると考える。それ以
上に、子どもたち自身が、5日間目標をもって取り組むことで、よりよい生活習慣
☆ 生活リズムを守ることで、元気な体になることが分かった。 (1年 A児)
☆ 早寝早起きをして、朝しっかり食べて学校へ行くとどういう気分になるか、食べずに
行くとどうなるかがよく分かったので、これから早寝早起きをして、元気に学校へ来る
ようにしたいです。 (4年 B児)
<生活チェックカード(2回目)>
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を身に付けることのよさを実感してもらいたいという願いもあった。子どもたちの
中には、実体験から、そのことに気づくことができた感想を記している児童もいる。
保護者のひとことメッセージには、子どもを認め、励ます内容が多くあった。子
どもたちのよりよい生活習慣の確立には、家族の理解と協力が不可欠である。今回、
事前・事後と2回生活リズムチェックカードを活用して取り組むことにより、規則
正しい生活の定着に向けての働きかけが、家庭にも浸透し、協力を得やすかったの
ではないかと考える。
▲ 残された課題 <補助資料9>
学期毎に実施している「とやまゲンキッズ作戦」の21年6月と11月の結果を
比較してみると、就寝時刻や朝ごはんの数値が、開催後の11月は下がっていた。
時期的な問題もあるが、外遊びの数値も下がっており、1日のテレビ視聴やゲーム
の時間の増加が目立った。継続して健康教育に取り組む必要性や、他の面から健康
な生活を考えていかなければならないという課題が残った。
◎ 学校保健委員会テーマ構想に当たって(児童の実態から)
21年度の残された課題をもとに、22年度のテーマを考えた。21年度から実施して
いる毎週火曜日の体力つくり活動で定期的に体を動かしたり、なかよし班(全校縦割りグ
ループ)でのイベントなどで、楽しく体を動かしたりする機会が増えたことにより、子ど
もたちがいきいきと元気に、異学年とも交流しながら活動することが増えてきた。学校保
健委員会で「運動」をテーマに取り上げることで、さらに自ら進んで楽しく体を動かして
遊んだり運動したりする子どもたちが増え、心身ともに元気いっぱいに学校生活を過ごし
てほしいという願いをもち、テーマを設定した。
☆ 今週はマラソンや公園でいっぱい体を動かして、ぐっすりねれました。(2年 C児)
☆ もりもり食べて、毎日授業に集中できました。 (4年 D児)
実践事例2 平成22年度 学校保健委員会 <補助資料10>
「心も体も元気になろう!~体を動かすと、いいこといっぱい!!~」
☆ 寝るのも食べるのも運動も大好きで、元気に過ごせているのも毎日の生活がもとに
なっているのですね。これまでと同じように、生活リズムや習慣を続けていきましょ
うね。 (4年 保護者)
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【仮説1】について
① 自分の生活を振り返り、見直す場の工夫
イ とやまゲンキッズ作戦の活用から <補助資料11~14>
22年度11月に実施したゲンキッズ作戦の集計結果をもとに、クロス集計を行い、
外遊びとの関係性をグラフで表した。外でよく遊んでいる児童は、就寝時刻が早い傾
向にあり、夜ぐっすり眠れている割合が高く、イライラすることがあまりない傾向に
あることが分かった。また、外でよく遊んでいる児童は、外であまり遊んでいない児
童よりも、テレビやゲームの時間が短い割合が高い傾向がみられた。この結果を学校
保健委員会で養護教諭が発表し、子どもたちに本校の実態を伝えるとともに、参観し
ている保護者にも外遊びを推奨する理由を伝えることができた。子どもたちの中には、
この結果から、外遊びをもっとしようという思いをもった児童もいる。
② 知識、理解を深め、行動化に結び付く学習過程の工夫
ア 児童保健委員会の学校保健委員会への積極的な参画から<補助資料15~17>
当初は、児童保健委員会によるプレゼン発表と、なかよし班で楽しく体を動かそう
タイムでの、体じゃんけんとジグザグ通り抜けゲームの司会進行を計画し、準備を進
めていた。しかし、インフルエンザの流行に伴い、体育館での開催を取りやめ、テレ
ビ放送による各教室での視聴となったため、プレゼン発表と体じゃんけんゲームのみ
の発表となった。
運動が体や心にもたらす効果について、全校児
童に分かりやすく伝えることができた。また、体
じゃんけんでは、全校児童が楽しく参加できるよ
うにかけ声をかけ、テンポよく行うなど工夫を凝
らした。特に低学年の子どもたちには好評で、か
らだ全体を使って遊ぶことの楽しさを味わうこと
ができたようである。
イ 学校三師の専門性を生かした指導から
学校保健委員会において、学校医の越村先生、学校薬剤師の蔵本先生に、児童保健
委員会の質問に答えていただく形式で話をしていただいた。学校医の越村先生からは、
成長ホルモンの話につなげて、セロトニン神経の話をしていただいた。朝、太陽の光
☆ 学校保健委員会では、外であんまり遊んでいない子は、ゲームの時間が長いと聞い
たので、これからは外で遊ぼうと思います。 (4年 E児)
<体じゃんけんゲームの様子>
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を浴びることが大切であること、朝ごはんをゆっくりかんで食べることや、朝、元気
にあいさつをすること、ラジオ体操などリズミカルな運動をすることが、心身の健康
にもよいということを教えていただいた。蔵本先生からは、スキャモンの発育曲線を
もとに、小学生は神経が一番発達する特別な時期であり、いろいろな運動やスポーツ
をバランスよく経験することが大事であるということを教えていただいた。
学校三師から直接話を聴く機会は大変貴重であり、先生方の知識や経験に基づく、
説得力のある言葉は、子どもたちにとって大変影響力があるのだということを、子ど
もたちの感想から感じることができた。また、学校保健委員会後に行われた学年懇談
会では、学校保健委員会の蔵本先生から話があったスキャモンの発育曲線をもとに、
学年においての体育の授業での取り組みや、全校的な取り組みである体力つくりにつ
いても関連づけながら話をすることができたと、体育主任より報告を受けた。
【仮説2】について
① 家庭と連携し、習慣化を図る工夫
イ のびのび体を動かそう!ウィークの取り組みから <補助資料18>
学校保健委員会開催後に、「のびのび体を動かそう!ウィーク」を設定し、5日間
家庭の協力のもと取り組みを行った。学校保健委員会での学びを生かして、自分の
目当てを立てるとともに、睡眠・朝ごはん・運動(遊び)・今日の気分について自分
の生活を振り返り、よりよい生活の実現に向けて、全校児童がチェックカードをも
とに取り組んだ。22年度は、自分の目当てを明確にして取り組む方法を取り入れ
たことにより、自分から進んで目的をもって取り組もうとする姿がみられた。また、
子どもたちの5日間を振り返っての感想では、運動の気持ちよさや、体を動かすこ
とで体が温かくなることを実感することができたこと、睡眠や朝ごはん、運動が関
連し合っていることに気づいたことを書いている児童もいる。
☆ ぼくたちが今一番成長する時ということが分かったので、ちゃんと食べて、動いて、
寝る、この3つを続けたいと思います。 (3年 F児)
☆ ぐっすり眠ると、運動も張り切ってできて、ごはんをしっかり食べるとバランスよ
く1日を過ごせました。 (2年 G児)
☆ 体を動かすと、とても元気が出るし、友だちとの会話も多くなったので、これから
も、どんどん体を動かして、元気を出して生活したいです。 (3年 H児)
☆ まさに今が成長期の子どもに、よい睡眠、よい食事を心がけ、運動したり、毎日楽
しく過ごしたりすることが大事だと気づきました。 (2年 保護者)
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▲ 残された課題
22年度の学校保健委員会は2月開催であり、季節柄室内で遊ぶことが多い時期
でもあり、なかなか外遊びの行動化につなげるのは難しかった。しかし、子どもた
ちだけでなく、保護者にも、運動することのよさや、小学生の時期にいろんな運動
や遊び、スポーツを経験することが大事であるという、こちら側が意図して伝えた
かったメッセージを伝えるよい機会となった。習慣化を図るチェックカードは、学
校保健委員会後だけでなく、定期的に実施する方がより効果的ではないかと感じた。
◎ 学校保健委員会テーマ構想に当たって(児童の実態から) <補助資料20~24>
2年間、規則正しい生活リズムを確立し、朝から元気いっぱいに過ごす熊野っ子が増え
ることを目指し、生活リズムチェックを学校保健委員会後に実施し、家庭の協力も得なが
ら取り組んだことで、就寝時間や朝ごはん、運動(遊び)等の項目は数値が上回ってきて
いる。しかしながら、「とやまゲンキッズ作戦」の結果からは、「毎日大便をしている」児
童は21年度(6月)60.1%、22年度(6月)60.8%、23年度(6月)61.
0%と、横ばいで、毎年市平均を下回っている。
23年度は、22年度の残された課題をもとに、毎学期毎に実施している「とやまゲン
キッズ作戦」後に、「元気パワーアップウィーク」を実施することにした。「睡眠」「朝ごは
ん」「運動(遊び)」「排便」「今日の気分」の共通項目の他、自分の目当てを立てて一週間
取り組み、よりよい生活習慣が身に付くよう、家庭の協力も得ながら取り組んでいる。
一学期に1回目を実施したところ、ゲンキッズ作戦の結果から自分の目当てを立て、よ
かったところやがんばれたところを家族の人に褒められたり、励まされたりすることで、
よりよい生活習慣を続けていこう、これからも毎日元気に過ごそうという意識が高まって
きている。23年度は毎日規則正しい生活を送り、気持ちよく排便する習慣を身に付け、
朝から心身ともに元気に学校生活を過ごしてほしいという願いをもって、「排便」をテーマ
に設定した。また、21年度に保護者から「学校保健委員会で学校医の先生から学校での
男児の排便は、個室に入らなければいけないので、しにくいというお話がありましたが、
うちの子は和式のトイレでは排便できないようです。最近は家のトイレが洋式なので、他
にもそんなお子さんがいるのではないでしょうか。」というご意見をいただいたことも理由
の一つである。
実践事例3 平成23年度 学校保健委員会 <補助資料19>
「毎日すっきりうんちで、朝から元気な熊野っ子!」
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【仮説1】について
① 自分の生活を振り返り、見直す場の工夫
ウ 排便に関するアンケートから <補助資料25~27>
本校児童の排便状況について、ゲンキッズ作戦の項目以外について全校児童を対象
に児童保健委員会がアンケートを作成し、集計を行い、結果を学校保健委員会で発表
した。熊野っ子は、毎日排便をする時間帯がばらばらであるが、健康的と言われてい
る「つるりんバナナうんち」が出る児童が約半数おり、毎日気持ちよく排便がある児
童も約半数いる現状である。しかし、やわらかめうんちやかためうんち、毎日形状が
定まっていない児童も半分近くおり、いつも気持ちよく排便があるときと、そうでな
いときがある児童も半分近くいるという実態が分かった。児童保健委員会の発表を聞
いて、自分の排便の様子を、全校児童の排便の様子と比較している児童もみられた。
② 知識、理解を深め、行動化に結び付く学習過程の工夫
ア 児童保健委員会の学校保健委員会への積極的な参画から <補助資料28>
児童保健委員会の子どもたちと、学校保健委員会の場で、全校児童に毎日すっきり
うんちが出る秘訣を、どのように伝えたらよいか話し合ったところ、毎日すっきりう
んちが出る子どもとそうでない子どもの生活の違いについて、劇を通して伝えたいと
いう意見にまとまった。劇のシナリオは、児童保健委員会の子どもたちが考えたオリ
ジナルである。また、学校保健委員会の最後の振り返りタイムではインタビュアーを
したり、児童運動委員会とともに行った「みんなできときと夢体操を踊ろう!」では、
ステージ前で全校児童を前にきときと夢体操を踊っ
たりと、本校の学校保健委員会において大きな活躍
の場となっており、児童保健委員会の子どもたちも、
全校児童や参観された保護者の方々、先生方に、保
健委員会の劇が分かりやすかったと褒められ、成功
体験を味わうことができた。このことは、子どもた
ちの自信にもつながり、成長を感じることができる
場にもなっている。
また、保健委員会の劇を見て、自分の生活を見直すことができてよかったと感想に
書いている児童や、排便は一日の生活にもつながるということに気づくことができた
と書いている児童もおり、保健委員会の全校児童への働きかけが功を奏したと言える。
☆ ほとんどの人が、毎日うんちが出ていたので、ぼくも、もりもり食べて、つるりんバ
ナナうんちを出そうと思いました。 (4年 I児)
<児童保健委員会の劇の様子>
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イ 学校三師、学校栄養職員の専門性を生かした指導から <補助資料29>
テーマが「排便」ということもあり、学校三師だけでなく、学校栄養職員からも専
門的な立場で話をしていただいた。学校医の越村先生からは、早寝早起きをして、朝
ごはんを食べることで胃反射が起き、うんちがすっきり出て、勉強をがんばろうとす
る神経が働くことを教えていただいた。しかし、夜遅くまで起きて食べたりしている
と、朝、胃反射が悪くなって、うんちが出にくくなり、お腹の神経と勉強をがんばろ
うとする神経がバランスを崩してしまうことも話していただいた。蔵本薬剤師からは、
ご自身の小学校時代のトイレの話をもとに、学校でうんちがしたくなった時は、恥ず
かしがらずに学校のトイレを使おう、また友達がうんちをしている時は、温かく見守
ろうというメッセージを伝えられた。横畑栄養職員からは、小腸の長さを実際にロー
プを使って例えられ、モップを小腸のひだに例えられながら、子どもたちの視覚に訴
えながら話をしていただいた。小腸のひだひだの間にあるうんちを取ってくれるのは
食物繊維であり、食物繊維は豆、穀類、きのこ、野菜、果物、海草に多く含まれてい
ること、みんなが好きな肉や魚ばかり食べているとうんちが出ないことを、子どもた
ちの好き嫌いの実態にもふれながら話をしていただいた。3人の先生方のメッセージ
は子どもたちにしっかりと伝わり、腑に落ちた指導であったことが感想から感じるこ
とができた。
また、学校保健委員会後に、「ぼく、後館のトイレ(和式)でうんちができないんだ。」
と悩みを打ち明けてくれた6年男児がいた。なかなか恥ずかしくてオープンに話せな
い話題である排便のことを、子ども自ら語ってくれたことに嬉しさを感じると同時に、
学校の和式トイレで排便できない子も少なからずいるという現状も把握することがで
きた。
【仮説2】について
家庭と連携し、習慣化を図る工夫
ウ 元気パワーアップウィークの取り組みから <補助資料30>
今年度2回目の元気パワーアップウィークを、学校保健委員会開催後に設定し、
7日間チェックカードをもとに取り組んだ。1学期にも同じ内容で取り組んでいる
こともあり、子どもたちにもチェックカードが浸透しており、家庭の理解と協力も
得やすくなってきた。今年度から休日も平日と変わりなく、健康な生活をしてほし
いという願いから、休日を含む一週間としたが、日数の長さに不満が出ることもな
☆ うんちのことがよく分かったし、なんですききらいしたらだめなのかがわかった。
(2年 J児)
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く、全校児童、保護者に理解を得て
快く取り組んでいただくことができ
た。低学年の児童でも、◎の数や△
の数で自分ががんばったところや、
もう少しがんばらなければならない
ところに気づくことができたと感想
に記入している児童が多くいた。
保護者の中には、子どもがチェッ
クカードをつけることで、普段あま
り意識していない子どもの排便状況に驚かれ、野菜をもっと多く料理に取り入れた
いと感想を書かれる方もおられた。
家庭と連携して取り組むチェックカードは、子どもたち自身の習慣化を図るだけ
でなく、保護者にも子どもの生活の様子を伺い知ることができる貴重な資料となっ
ていると感じた。元気パワーアップウィークは、三学期のゲンキッズ作戦実施後に、
今年度3回目の実施を予定している。
5 研究のまとめ (1) 解明されたこと
① 仮説1について
・ よりよい生活習慣の確立に向けて、学校保健委員会を中心として全校児童に
働きかけることにより、保護者の理解と協力を得やすく、家庭において取り組
みやすい環境を整えることができた。
・ 学校三師や学校栄養職員など、専門性を生かした指導を取り入れることで、
子どもたちの理解を深めることができた。
② 仮説2について
・ 定期的にチェックカードを活用することにより、よりよい生活をしていこう
という意識を高めることができるとともに、子ども自身が健康の目当てに取り
組むことで、自分の生活が充実したものになることを実感することができた。
(2) 今後の課題
基本的な生活習慣の確立に向けて、毎年繰り返して指導していく必要性を感じ
ているが、子どもたちや保護者にとって過度の負担になることなく、家族そろっ
て楽しく取り組むことができるように、さらなる工夫が必要である。
<元気パワーアップウィークチェックカード>