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( 日 時 ) 2014年 9 月 25 日 ( 木 ) 18

時 30 分 ~ 20 時 50 分

( 場 所 ) 地 域 生 活 支 援 セ ン タ ー

光 3 階 ホ ー ル

( 発 表 者 ) 敬 称 略

長岡 夏子  聖ヨハネ子どもセンター(臨床心理士)長谷中 由季 下田部保育園(保育士)中林 良樹  ゆう・あいセンター(介護職)阿茂瀬 史子 うの花療育園(保育士)長瀬 麻里絵 聖ヨハネ学園(児童指導員)岡田 幸治   記念 (介護支援専門員)ミ ス ・ フ ゙ ー ル ホ ー ム砂田 綾季  地域生活支援センター光(保育士)

以上7名(発表順)

(掲載者)中林 真里 聖ヨハネ学園(保育士)今岡 拓也 聖ヨハネ学園(保育士)榎本 祥子  記念 (介護職)ミ ス ・ フ ゙ ー ル ホ ー ム濱岡 由加  記念 (看護師)ミ ス ・ フ ゙ ー ル ホ ー ム山本 基恵 うの花療育園(言語聴覚士)松倉 佳世 うの花療育園(保育士)関  南  地域生活支援センター光(生活支援員)尾崎 明未 地域生活支援センター光(生活支援員)

 

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3年以上職員研修発表

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「療育の意義をことばにして伝える」

聖ヨハネ子どもセンター

臨床心理士  長岡 夏子

<はじめに>

 私は現在、聖ヨハネ子どもセンターに所属し、臨床心理士として、

第 2 めばえ教室(うの花療育園内)に勤務しています。非常勤職員として、めばえ教室(ゆう・あいセンター内)で 5 年間、そして常勤として第 2 めばえ教室で働き始めて早くも 4 年目となりました。 めばえ教室は乳幼児早期療育事業として高槻市より委託を受けた児

童発達支援事業所です。近年、様々な法人がそれぞれの支援方法で事

業所を立ち上げ始め、ご利用者が事業所を選ぶ時代になっています。

その中で、めばえ教室の特徴は何なのか、何をしているところなのか、

それをきちんと伝えていくことが求められているように思います。今

回、このような発表の場をいただいたのを機に、自分なりに振り返り、

ことばにしてみたいと思います。

<めばえ教室について>

めばえ教室は、心身の発達やことばの遅れに心配のある乳幼児と保護

者のための療育相談機関です。概ね 2 歳の乳幼児と保護者を対象に、個別および集団での遊びや他児との関わりを通して子どもの発達を援

助します。また、保護者に対しても個別およびグループ懇談を通して

相談に応じ、保護者の心理的安定を図るよう努めています。臨床心理

士、言語聴覚士、保育士、看護師など他職種のスタッフがチームを組

み、発達の支援を行っています。週に 1 回、同じ曜日に 10組の親子が半年間または 1 年間、通室されます。

<めばえ教室の療育の実際>

① アンケート結果より めばえ教室には様々な発達の課題を持った子どもさんが通って来ら

れます。保護者の方も様々な悩みを持って不安と期待を抱きながら

通って来られます。年度末に毎年、保護者の方々にアンケートを記入

していただきますが、昨年度の結果では、 “ めばえ教室に参加して ”

また “ めばえ教室の療育プログラムについて ” 、「とてもよかった」

の回答が 7~8 割を占め、「まぁまぁよかった」の回答を合わせると皆さんに「よかった」と評価していただきました。その中で、 “ どのよ

うによかったか ” 、という項目には「スタッフの関わりが丁寧だっ

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た」 83% 、「いろいろ相談できた」 83% 、「子どもの成長が感じられた」 68% 、「子どもの発達がわかった」 57% という点が高い割合を占めています。さらに、 “ 子どもの成長について ” は「ことばが増え

た」 79% 、「参加できることが増えた」 66% 、「興味が広がった」 59% という点が高い割合を示しました。

② 事例よりA くんは、めばえ教室に前期・後期と 1 年間通ってこられた 2 歳児の男の子です。通って来られている経過中に、自閉症の診断を受けられ

ました。めばえ教室では、入室前と前期の終わり、後期の終りにそれ

ぞれ発達検査を実施し、子どもさんの発達の変化を見ます。 A くんは、発達検査を約半年ごとに3回実施しましたが、結果に伸びがほとんど

見られませんでした。全体的には1歳くらいの発達で、特に言語面で

は9か月~10か月ほどの発達を示していました。意味のあることば

は話さず、こちらのことばかけに対する理解も困難な状況でした。 Aくんは集団活動には参加できないものの、広々と走りまわれることを

楽しんで喜んで通って来ていました。しかし、後期の途中から、教室

内に入ることを嫌がり、大泣きしながらの通室になりました。一見、

発達が停滞あるいは後退しているようにさえ見える彼の中で一体何が

起こっていたのでしょうか。     私は、 A くんについて、事例検討会で発表させていただく機会を得ました。事例を発表するにあ

たって、 A くんの1年間の様子を振り返り、資料をまとめることで、A くんの中で起こっていた大きな成長に気づくことができました。しかしそれは、日々の療育や家庭での出来事、お母さんから話されるエ

ピソードの中の小さな変化の積み重ねでした。例えば A くんの遊びのひとつ、 “ 物を並べる ” ということについても、無秩序に並べていた

(集めていた)ものが、放射線状になり、縦や横に並べるようになる、

硬い無機質な玩具からぬいぐるみという柔らかくて擬人化されたもの

を並べるようになるといった変化がありました。また、これまでお母

さんがそばにいなくても探すことがなく、ひとりで走り回って楽しん

でいたのが、家の中でもお母さんの後を追いかけまわすようになった

という変化もありました。それらの変化は、 A くんが人との関わりを求め始めた大きな変化であったと思います。

<考察>

 アンケート結果より、大半のご利用者から、めばえ教室に参加して

「よかった」との評価をいただいており、特に、「スタッフの関わり

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が丁寧」、「いろいろ相談できた」、「子どもの成長が感じられた」

という点が高い割合になっていました。めばえ教室は国の設置基準よ

りもスタッフの数が多く配置されており、集団参加の難しい子どもさ

んに対して専門職スタッフが個別的な関わりをし、個人の発達が促さ

れるよう努めています。また、保護者の話に傾聴し、指導や助言より

も保護者の不安や焦り、不全感といった気持ちの受容に重きを置くこ

とを大切にしており、保護者にとって相談しやすい関係性や気持ちが

楽になるといった心理的な変化が見られるものと思われます。子ども

の成長については、「ことばが増えた」という変化が毎年一番高く

なっています。ことばの遅れを悩みに来室されることが多いめばえ教

室にとって、保護者の実感として療育効果が得られることは、療育者

にとっても励みとなります。また、集団活動に参加できることが増え

たり、興味の幅が広がることは、個々から集団へ世界が広がっていく

2~3 歳の子どもたちにとって貴重な経験の場となっているのだろうと思われます。個別的な関わりと集団としてのプログラム進行を同時に

行えることもめばえ教室の特徴であり、チームでアプローチすること

のメリットであると思います。

 しかし、一方で事例のような変化の見られにくい子どもさんもおら

れます。関わっている際には手ごたえを得にくく、どう関わればよい

のか悩むことが多いです。しかし、その中の小さな変化、子どもの心

の微妙な動きなど、療育者の子どもを見る “ ものさし ” をより細かな

スケールにしてきちんと評価することが大事であると、 A くんとの関わりを通して学びました。また、保護者に対する支援の大切さも再確

認しました。 A くんのお母さんは、 A くんが泣いて教室に入れない日が続くと、「今日入れなかったら心がポキンと折れそうだった」と話

されていました。お母さんも我が子に対してどう関わっていいのか、

我が子が何を考えているのか、どうしたいのかがわからないようでし

た。事例検討会の場で、講師の先生がおっしゃっていたことの中に、

「お母さんがこの子に関わって、 “ 変わった ” という実感が持てるよ

うに支援すること」がありました。療育に通い、 先生が関わると変わ

るけれど、母親にはどうしていいのかわからない、という状況では、

母親は自分が母親であるという自信をなくしていってしまう。 “ この

子の母親は私なんだ ” 、という手ごたえや自信を持ってもらうことも

母子通所であるめばえ教室での大事な役割のひとつだと思います。

 私が関わりを持たせていただいたご利用者の中で、残念ながらめば

え教室のやり方と保護者の方のニーズとが合致せずに退室された方も

いらっしゃいます。しかし、その方の心の根底には子どもの発達に対

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する不安や焦りがあり、その気持ちをしっかり受け止めるという支援

が足りなかったのではないかと考えています。子どもの発達支援につ

いて、様々なアプローチがありますが、めばえ教室で大切にしている

ことは人と人との関係性です。それが、時にはなかなかうまくご利用

者に伝わらないことがあります。短期間で目に見えてわかりやすい効

果を期待されます。しかし、それはやはり子どもの発達に対する不安

や焦りが大きいからだと思われます。そのお母さん方の気持ちに寄り

添い、共に考えていく姿勢はめばえ教室がこれまで大切にしてきた視

点だと思います。さらに、今後、私自身がそれをご利用者に伝えてい

けるように自己研鑽する必要性を感じています。

<おわりに>

 私が発達障がいのある子どもさんに関わるようになった原点は、大

学時代のボランティア活動にあります。そこで職員として働いておら

れた方から学んだことのひとつが、「目の前にいるひとりひとりと向

き合い、大切にする」ということでした。その方も、ボランティアと

して活動した経験を経て、そこで職員をされていた方でした。その姿

勢はそこでこれまで受け継がれてきた基本理念だったと思います。そ

してそれは、ボランティアである私たちひとりひとりも大切にしてい

ただいた、ということでもありました。私がめばえ教室に来た時に、

同じような雰囲気を感じたのを覚えています。子どもやお母さん、そ

して職員ひとりひとりの主体性を大切にしていると感じました。今回

のこの発表を通して、原点に立ち返る機会になったと思います。これ

からも「めばえ教室はいいよ」と言っていただけるよう、ご利用者の

満足度の高い支援を目指して努力したいと思います。

<参考文献>

山上雅子 1997 物語を生きる子どもたち 創元社

高槻市立障害者福祉センター 2012 紀要「めばえ教室のあゆ

み」

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「保育者として子ども・保護者にできること」下田部保育園

保育士 長谷中 由季<はじめに> 私が下田部保育園の職員になってから、はや3年半が経とうとしています。1年目、2年目は5歳児クラスの担任をさせていただき、3年目は2歳児クラスでクラスリーダーを初めて経験させていただきました。現在は、持ち上がりで3歳児クラスのリーダーをさせていただいています。下田部保育園は、現在169名のお子様をお預かりし、37名の職員で連携を取り合いながら保育を行っています。また補助事業として、障がい児保育も行っています。私が担任を受け持ったクラスにも障がいをもつお子様がいます。4年目になった今、気づくことのできた子どもへの対応や自分自身の葛藤、保護者への対応について発表させていただきたいと思います。<1、2年目~自分への気付きと保育の充実~> 1年目で5歳児クラスを担任させていただき毎週のスイミングやサッカー、行事への参加などがあり本当にあっという間の1年間でした。1年目ということで先輩保育士の子どもへの声かけや保護者への対応を日々勉強させていただきました。初めてのことだらけで何をどのようにしてよいのか分からなかった私を見て子どもたちもそれを感じ取ったのか、私の言うことには耳を傾けようとしない子もいました。ある日「先生に怒られても怖くないし」という言葉を耳にし、私はショックを受け悔しい気持ちで一杯になりました。先輩保育士を見て

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気付いたことは子どもたちの遊びの時間に一緒になって思い切り遊んでいたことでした。サッカーの時間には一緒にサッカーを楽しみ、園庭遊びでは真剣に鬼ごっこをして遊んでおられました。そこで私も遊びの中にもっと入り込み、関係を築いていこうと考えたのです。遊ぶときは思いきり遊び、駄目なことをしていたときは分かってもらえるように話すといったことをしたことで子どもたちとの関係が以前より深くなっていったように思います。2年目でもう一度5歳児クラスを経験させていただくことになった

のですがそこで気づいたのは子ども、保護者のクラス全体の雰囲気が全く違うことでした。そこで同じ対応をしていてはいけない、違った伝え方や受け止め方をしなくてはならないと気付きました。また、2年目のクラスには自閉症のKちゃんがいました。同じクラスの子どもたちも、3歳児クラスから毎日を共に過ごしてきた子どもたちばかりなので、何の違和感もなく日々過ごしていました。Kちゃんはパニックになると「きゃー」と泣き叫びくくっていた髪の毛のゴムを取るということがありました。私は、パニックになった時はじめどうしたらよいか分からず、先輩保育士に任せるばかりで、Kちゃんへの対応に戸惑ってしまいました。そんな毎日を過ごすなかでKちゃんのタイミングとは意に反したときに無理に声をかけるとパニックになってしまうことに気が付いたのです。サッカーから疲れて帰園したあと疲れているにも関わらず着替えをして衣服を始末しているときや、午睡時間に子守唄を歌って寝かそうとすると、それがK ちゃんは嫌なときがありパニックになっていました。パニックになったあとは抱っこしてもどう声かけをしても、すぐには収まりませんでした。時間が経って落ち着くのを待ち、気持ちも受け止めながらKちゃんのタイミングで機嫌が良くなるのを待つと、急に笑顔になって髪の毛のゴムを結ばせてくれました。それからは無理に強要するのではなくKちゃんの気持ちをしっかりと受け止めた上で声かけをし、対応していくことが必要であったと感じました。また集団生活の中で友達と共に過ごしたことがKちゃんにとって刺激となり、成長に繋がったのではないかと思います。周りの子どもたちも自然と友達を思いやる気持ちや優しい気持ちが芽生え、支え合うことのできるクラスになっていきました。

K ちゃんの保護者の方はとても教育熱心な方で公文に通わせたり家ではさみの練習をしたり、高槻や枚方の療育センターに行って話を聞かれたりされていました。日々の保育内容は毎日ノートに記入してお母様にお渡しし、またお母様も日々の家での様子を書いてきてくださり情報交換をしていました。ある日保護者の方とのノートに記入漏れ

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が続く日が出てきてしまいました。決して、あってはいけないことですが、業務に追われてしまいお母様がお迎えに来られるまでの間に一日の出来事を書き忘れてしまっていたのです。初めは「大丈夫ですよ」と笑顔でおっしゃられていたお母様も「先生たち、お忙しいですもんね」という一言に変わったときは反省し、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。保護者の方は働きながらも自分の子どもが保育園でどのように過ごしているか気になり、そのノートを心待ちにして下さっていたことに気付いたのです。私が業務に追われていることなど保護者の方には関係ないことです。それ以来、働いて疲れて帰ってきているお母様の気持ちを第一に考え、Kちゃんがその日出来たことやお友達との関わりを伝えるようにしました。するとお母様も笑顔で話をして下さるようになったのです。担任が子どもをしっかりと観て対応していくことと、保護者とのコミュニケーションの大切さは連携していてその両方をまとめた上で「保育」に繋がっているのだと感じました。現在Kちゃんは支援学校に通っています。卒園してからも運動会を見に行かせていただいたりと成長を目で感じることができ、嬉しく思っています。<3年目~自分自身の葛藤と職員連携~> 3年目で2歳児クラスのリーダーをさせていただくこととなりました。担任発表で、初めてのクラスリーダーになると知ったとき嬉しい反面、自分が出来るのだろうかととても不安なスタートでした。2歳児クラスは常勤2名、常勤嘱託1名、非常勤1名の4名で子ども31名の保育を行っていました。初めての乳児クラスに初めてもつ子どもたちということもあり、クラスの1日の流れも分からずただ他の職員に頼ってばかりの日々でした。又、リーダーとしての責任の重さや自分の思いを発信していく場面も以前より増えたのですが、クラスの職員に質問されても曖昧な返事しかできずこのままではいけないと感じていました。そんな日々が続き、「自分はリーダーとしてクラスをまとめられていない」、「自分が出来ることはなんなのだろうか」と悩みました。自分がクラスをまとめられていないもどかしさや悔しさから分からないことも聞けずに日々が過ぎていったのです。以前は、常勤としか担任をしたことがなかった私でしたがクラスの職員の人数も増え、より職員同士のコミュニケーションが大切であることを感じました。乳児クラスは、日々の子どもの様子を毎日午睡時間にノートに記入しお渡ししています。その時間に職員同士でその日の子どもがどのように過ごしていたか、活動を通して達成出来たことなどの情報を共有し良かったことを保護者に伝えていくようにしました。情報交換

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をしていくことで担任同士の中にも温かい雰囲気が生まれ、私自身も笑顔を絶やさずにいたいと改めて思うことができたのです。そのような気持ちの変化から分からないことは先輩保育士に相談して教えていただいたりするようになり、子どもと関わる中で担任が共有し同じ目標をもって、保育に取り組むことができたように思います。<4年目~保護者への対応~> 4年目の今年は、昨年度担任していたクラスを引き続き持ち上がりで担任することになりました。子ども33名を常勤2名、常勤嘱託1名の3名で保育しています。現在のクラスには、昨年度から発達の遅れが気になるYくんがいました。昨年度の前期には言葉がなかなかでず、飛行機のことを「あーさー」と言ったり、船のことを「あーだー」と言っていました。後期になり母親が第二子を出産されることをきっかけに保育園を3ヵ月ほど休まれ、保護者とゆったり関わる時間ができたことでYくんは急激に言葉が増え、保護者もとても嬉しそうにされていました。その時期、Yくんはだんごむしに興味があり、毎朝登園するとまずは玄関の近くにしゃがみこみだんごむし探しをしていました。私が保護者と朝会ったとき、最初は「まただんごむし探してるんです」と笑っておられたのですが、日が経つにつれて「もうだんごむしおしまい!保育園行くよ!」と無理矢理保育園の中に入っていく日もありました。暑い中、第二子を抱っこしての登園やYくんに対しての戸惑いが保護者にもあったのだと思いました。障がい児保育に係る保育士の加配認定申請のために病院の診断書が

必要だったため、ある日お母様に登園された際にその旨をお伝えしたところ、「病名を診断してくださいということですか。侵害です。」と怒って帰られ、私は病院に行ってと言われたことが不快に思われたのだと思いました。夕方お父様から園長に話があると言われ保育園に電話があり、園長が対応して下さったところ『他の保護者も聞いているかもしれない場所で言われたこと』『子どもの前で話をされたことが嫌だったこと』『先生たちは他人で親はいつもピリピリしている』ということが分かってほしかったようです。私は自分の配慮のなさに深く反省をしました。昨年度のクラスから持ち上がりということと4年目になり以前より気持ちに少し余裕がでてきたからか、自分自身が慣れすぎてしまったのかもしれません。このことがきっかけで障がいをもつ保護者の方の気持ちが分かりました。そして保護者への対応は難しくもありますが、日々のコミュニケーションの大切さ・目の前の保護者だけでなく周りの状況もしっかりと見て対応していかなければならないと改めて感じることができました。

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<終わりに>今までの3年間を振り返り、やはり一人ひとりの子どもたちにしっ

かりと目を向け家庭環境や性格も理解し、寄り添っていくことが必要であると感じました。そして、そういった子どもたちをサポートしていくためには職員間での連携を密にし、同じ目標を持ち保育していくことが大切であると思います。保護者の方とのコミュニケーションも引き続き大切にしながら、日々の保育に努めていきたいです。

[ 参考文献 ]・「こうすればできる!発達障害の子がいる保育園での集団づくり・クラスづくり」 福岡 寿 著  筒井書房

『ご利用者を通じて私が学んだこと』

                ゆう・あいセンター  中林良樹

私は、ゆう・あいセンターで勤務させて頂くようになって、準職員時代から数えて10 年目になります。それまでの経歴は、幼児から中学生を対象に体育の指導者として、幼稚園や学校に勤務しておりました。私が、障がいのある方に関心を寄せたのは、知的障がい者更生施設で体育の指導をさせて頂いた事がきっかけでした。初めて施設に出勤した時の事を、今でもはっきり覚えています。

私の中で指導内容の構想が決まらないまま、園生の前に立った時、みんなの目がきらきら輝いていて、「この体育の先生は、何を自分たちにしてくれるのだろう」という興味心や期待感を抱いて真っ直ぐ私を見ているのが分かりました。ひとつひとつの運動が出来る度、喜びを身体いっぱいに表出された

り、次の段階へステップアップしたいという意欲を示されたり、自分の気持ちに真っ直ぐなところが伝わってきました。運動機能で、とても高い身体機能を持った方や、ひとつの運動種目を気に入られ、毎回その運動を行う事で満足される方もおられました。私は、障がいのある方は、とてもピュアな気持ちを持って、私が来

る日を楽しみにしてくれている事を実感しました。振り返ると、「喜んでもらう事」が自分の糧となり、『やりがい』に

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なっていましたので、ゆう・あいセンターで、また障がいがある方へのケアができると思い就職し、現在に至ります。これから私が、ゆう・あいセンターで、ご利用者をお迎えする心構

えと、ニーズを掴む事についての工夫と改善について、事例を含めて発表させて頂き、今までの対人援助職としての振返りをさせて頂きます。

<ご利用者をお迎えする心構え>デイ教室では、グループワークを始める前に「朝の会」を行ってい

ます。各グループのご利用者は週一回の参加となり、一週間ぶりにお会いする事になりますので、そこでお一人おひとりの一週間の出来事を充分にお伺いさせて頂きます。話題を広げ、ご本人の気持ちをできるだけたくさん引き出す様な演出も必要になってきます。:発表の内容(情報)に対して初めて聞くような驚きをお見せして、発表に対しての満足感を得て頂く。

:限られた時間内で 答え ” にたどり着くヒントを提供させて頂く。‟:アイコンタクトやうなずきで、共感を表現させて頂きます。また、「これといった話題がない。」とおっしゃられるご利用者に

は、お召し物や日常のご様子を伺う等、その方の好印象なイメージを引く出す事をねらいにお話しさせて頂いています。「嫌な事があった。」とおっしゃられるご利用者に対しては、持っ

て行きどころのない気持ちに対しての共感と、気持ちを吐き出して頂く事を心がけ、「分かってもらえた」「自分だけではなかった」というポジティブなイメージを持って頂き、グループワークに入ります。些細な会話一つをとってもご利用者が主体であるという事を念頭に

おき、最後までご利用者にお話して頂くようにコーディネートさせて頂いています。

<ご利用者のニーズを掴む>言葉でなく、表情や行動で訴えられるご利用者のニーズを掴む為に

は、ご利用者のあらゆる情報を把握しておく必要があります。なぜならば、より多くの情報を把握する事で、ご利用者の少しの動きや表情から「今、何を望んでおられるか」というニーズに対しての幅広い実践が可能になるからです。その実践と結果にどのような因果関係があるのか(あったか)を推

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察するのが洞察です。その洞察を実践し、どうなったのか情報の共有を行い、それぞれの職員が個性を活かした気づきを集めたものが次の実践になると思います。

<事例Ⅰ:ご利用者情報の認識と確認不足の反省>私が食べ物を切ってご利用者の器に移す食事介助をさせて頂いてい

る時、そのご利用者が食事の手を止め、召し上がられなくなりました。私は、もうお腹が一杯になったと思い込み、片付けようとしました。その時、ご利用者は首を振り、私の顔を見ながら何か訴えられてい

ました。今思うと、「まだ、食事は終わっていません。仲間の話を聞いていたのです!」と言いたかったと思います。それは、食事を忘れるほど周囲のみんなの会話に、関心を寄せられていたのでした。これは私の情報認識の甘さと、ご利用者の気持ちを確かめなかった

事が原因でした。このご利用者の情報を確認すると、①お話を聞く事が好き②話題に

よっては会話に参加したい③食べるモードと会話したいモードを持っておられる。等がありました。この事例より、自分の思い込みでケアを進めるのではなくしっかり

とご利用者の情報を把握し、洞察力を持ってケアをする大切さを実感しました。

<事例Ⅱ:気づきによる関係づくり>長期にわたり通室されているご利用者で、独語を発せられている方

がおられ、私は独語の意味を深く考えた事がありませんでした。教室で演歌曲がBGMとして流れており、ご利用者の様子を伺っている時、独語を止めて、聞き入っておられる時がありました。もしかすると独語の内容は、鼻歌を唄っておられるのかも知れない

と思い、その方とトイレ介助の際、生歌で演歌をお聞かせしたところ、やはり独語を止めてじっと、聞いておられました。同じ様な状況を何度もお見かけするようになり、この方は歌が好きな事が分かりました。それからは、歌を唄ったり、聴いたりする事で関わり方の幅が広が

りました。全体の中でスポットを当ててお言葉がけさせて頂いたり、

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周囲の会話に巻き込んでいく事により、ちらっと、こちらに視線を投げかけて下さるようになりました。この事例で私が実感した事は、ご利用者に関心を持ち、何気ない表

現に対しても「もしかして、○○○ではないだろうか?」という気づきを実践する事の大切さでした。

<事例Ⅲ:安心感を持って頂くケア>配膳された食器の位置を何度も置き換えるご利用者がおられます。始めは、ご自分の食べやすい置き方なのかも知れないと思っていま

したが、それにしては、不自然な置き方が多く、何故このような行動をされるのか、しばらくご様子を伺っていました。すると、ご自分の隣に職員が居ない場合や、職員が席を立った時に、その行動をとられる事が多く見られました。この事から、食器の位置を変えられるのはもしかして、 一人にし‟

ないで欲しい ” という気持ちの表れからかも知れないと思いました。その事を職員に伝え、前もって自助具などの準備を行い、職員の食

事中の無駄な行動を減らし、食事中に席を立たない様にした事で食器を動かされる事が減り、安心して食事を摂って頂く事が出来る様になりました。ご利用者に安心感を得て頂くためには事前にしっかりと準備をして

からケアを提供する事が大切であると改めて実感しました。

これらの事例により以前にも増して、ご利用者に対して多角的な角度から「もしかして、○○ではないだろうか?」という考察を深めるようになりました。その考案を実践する事で、ご利用者の気持ちを知る機会が増えた事が自分の『やりがい』に繋がっていると思いました。

<忘れない為の工夫と実践> ご利用者の所持品を返し忘れるひやりハット事例が続いた事がありました。返し忘れない為にどうすればよいかを考えた時、職員がご利用者の所持品をチェックしやすい様に、ごろ合わせで復唱する方法を思いつきました。所持品の頭文字をじ⇒自助具

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こ⇒コップた⇒タオルか⇒かばんく⇒くつて⇒テーブルこれは、「自己高く=志」「事故高くて」という見方もできるとい

う事です。「じ・こ・た・か・く・て」のワードを職員全員が意識する事で、返し忘れが激減しました。覚えやすい工夫⇒実践⇒結果という形をとる事が今回の成功となっています。

≪ワークライフバランスについて≫仕事とプライベートのワークバランスに於いて、「仕事ができる人

は、遊び方も上手い」という考え方も出来ると思いますが、果たして本当にそうなのでしょうか?確かに仕事とプライベートの境には一線を画する必要はあります。

しかし、私は「仕事ができる人は、遊び方も上手い」と思っています。なぜなら、仕事や遊びに於いて(1 )目標(どうしたい、なりたい)(2 )計画性(その為の準備、順序付け)(3 )実行力(実践、やり遂げる力)がなければ、ダラダラと1 日が過ぎ、自分の生活の中でも張り合いが無くなってしまいます。仕事が忙しかったり、課題に直面していたとしても、私の趣味であ

るゴルフコースに出て、パノラマの大自然の中でプレーする事により、ストレス発散が出来ますし、仕事中にその光景をイメージするだけでも、リフレッシュできたり、次にコースに出る日を楽しみにして、仕事へのモチベーションを上げる事が出来ます。一方で、休日に日用品などの買い物をしている時にでも、プログラ

ムで使用するレク材として採用できるのではないか?ご利用者の自助具として活用できるではないか?という目線で商品を見ている事があったり、商業施設に行った時には、外出行事の目的地として、タイムスケジュールを考えたり、設備面を見てご利用者との過ごし方をイメージする事があります。したがって、私は、プライベートにあってもご利用者に喜んで頂く

事をイメージして実践する事が自然と生活スタイルの中にあり、これ

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まで対人援助職を続けてこられたのも、喜んで下さる人が私にやりがいを与えて下さっていたからと気付きました。 今後も、ご利用者の皆様に喜んで頂けるケアの為に、相手の気持ちに少しでも近づけるよう、「もしかして…」という姿勢を持ち続けたいと思います。今回の発表により、自分自身の物の見方、考え方を振返る事ができ、自分の生き方を再認識することが出来ました。このような機会を与えて頂いた事に感謝致します。

<参考資料>・「目利き力」ぶれない判断力ができる人の47 の習慣  藤巻幸大・仕事は99%気配り  川田修

「食べる」ことの育ちと子どもの育ち~給食場面での対応から見えてきたもの~

高槻市立うの花療育園 保育士 阿茂瀬 史子 

《はじめに》「食べる」という習慣は、私たちが生きていく上で必要不可欠な事

です。園生活の中でも特に給食は、子ども達が楽しみにしている大切な時間です。しかし、偏食を伴う子どもにとっては、決して楽しいだけの時間ではありません。私たち療育者がどのように関わる事が子どもにとって良いのか、どのように工夫すれば変化や成長を遂げる事ができるのか、偏食への対応や取り組み、保護者との協力について考察したいと思います。対象は、「自閉症」(知覚過敏・中度発達遅滞を伴う)A ちゃん。

3 年間通園の過程で、給食を通して見えてきた子どもの様子や家庭での工夫、及び園での取り組みをまとめました。

給食場面の行動と支援入園当初は環境の変化に伴い、不安でお茶さえ飲めず泣き続けてい

たA ちゃんでした。母親と相談してA ちゃんのみの単独通園ではなく、母親と一緒の親子通園をお願いし、A ちゃんにとって周囲の変化を少しでも少なくする為、母親と同じ色の服装をした特定の療育者を近くに配置する等、少しずつ信頼関係を築いていきました。それでも給食には程遠く、お茶しか口にしませんでした。当園では月に一度だけ弁

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当日があるのですが、6 月の弁当でスティックきゅうりを療育室の隅でかじったことが園での初めての食事でした。その後、A ちゃんの見慣れた食材を提供する事が給食への一歩と思い、家庭からの弁当の協力をお願いして、毎日持参していただきました。その甲斐あって、少しずつですが職員が箸で食べさせると口を開けて食べる事が出来る様になりました。療育者の膝の上に座り食べていた時期もありましたが、次第に傍にいる事で椅子に着席して食べるようになり、給食の時間を落ち着いて過ごせるようになりました。

2 年目になり、「食べさせてもらう」から、「自分で食べる」為、箸からスプーンへの移行を開始しました。家庭では手伝うとスプーンで食べていましたので、園の給食でも家庭のスプーンから始めました。スプーンが唇に当たる感触などを懸念しましたが、意外にもスムーズに園のスプーンにも慣れ、自分ですくって食べる事ができ、持参の弁当を完食するまでに至りました。おかずのみならず、給食で提供された乳製品やパン、うどんにも興味を持ちチャレンジする事も出来ました。

3 年目では給食で肉やウインナー、ハム、フライ物に興味が出てくると、自分

から覗き込む事が多くなり、自分で手に取ってかじったり、パンに挟むと食べる事が出来る様になり、他にも自分から汁物を飲むなどチャレンジする姿が見られました。最終的に、毎日食べる食材は決まっていましたが、食べないまでも、給食で提供された食材に顔を寄せて匂いを嗅ぎ、手に取り口へ運ぼうとする等、他の食材に興味を示す事が多く見られた年でした。

給食提供の工夫当園では給食提供の際、子ども達の特性等に合わせて色々な工夫を

行なっており、これらの事から少しずつ食べる事へとつながっています。①大きな食材のカット食材が大き過ぎると噛み切ることができない場合、見ただけで食欲

が失せる事もありますので、一口サイズにカットします。食べやすい大きさだと食べる気持ちになってくれます。もちろん噛み切ることが大切な時期もありますので、その時は大人と一緒に食べてみるなど、頑張る経験も伝えます。② 食事量に合わせて調整給食を残すより、全部食べたという時の方が子どもにとっては嬉し

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い気持ちになります。その為あらかじめ量を減らして、食べきる満足感を得る事が出来る様、配慮しています。これは達成感にもつながります。③ 食べる順番肥満傾向のある子どもや食べ過ぎる子どもに対して、食べる順番や

よく噛む事は大切です。噛まないと飲み込めない食材を先に提供する事で早く食べる事を予防したり、よく噛む為に好きなご飯やおかずを少しずつ提供して、満腹中枢を満たすよう働きかけ、食べ過ぎを防ぎます。④ 最後のデザート(お楽しみ)子ども達が楽しみなデザートは、基本的に最後に提供しています。

「お楽しみあるよ」の声掛けに完食や、苦手な野菜を食べる等、頑張る子どもが多いです。⑤ 器ランチ皿は見た目にかわいらしく、ワンプレートで食材を分けるこ

とが出来て便利ですが、子どもの手には大きすぎて持つことができなくなり、顔を器に近づけて食べる事になります。食育の観点から当園ではランチ皿ではなく、一品ごとに器や皿に盛り付け、手に持つことが出来る様に提供しています。⑥ 盛り付け方、切り方、味付け煮物など、食材が混ざる料理は何が入っているのか認識しづらい事

もあり、食材を器の中で種類ごとに分けたり、別皿に取り分ける事で、見た目に分かりやすく、食べる事が出来る場合があります。分かり過ぎて敬遠する場合は、食材の切り方や大きさを統一して、見た目を同様にしたり、濃い味に絡ませて提供する事もあります。⑦ その他の工夫汁物は汁と具材に分ける、ソースやドレッシングの後がけや別添え、

天ぷらやフライの衣を外す、混ぜご飯や麦ご飯の際に白ご飯の提供、丼はご飯

と具材を分けて別皿にて提供など、食材を別にして見た目をシンプルにします。⑧ 保護者との連携偏食等でどうしても給食を食べる事が難しい場合には、保護者と相

談しながら家庭より食器や弁当箱、食材を持参していただくことがあります。食材としてはこれまでに、パン、餅、ヨーグルト、ふりかけ、海苔…などがありました。

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クラスで給食を食べる事が難しい子どもへの配慮 入園して間もない頃は、初めての環境の変化に戸惑い、クラスに入る事がで

きない子どもや不安で門の前で泣いている子どもがいます。その場合は、泣い

ている場所や廊下、園庭のテラス等に机や椅子、給食を運びその場で食べる事

があります。別室で食べる事もありますが、別室の確保が難しい時には、パー

テーションで空間を仕切ります。数日から半年間ほど続けていくと、クラスの

様子に関心が出てきたり、入室する事が出来たり、給食を食べる事が出来る事

もあります。クラスに入室してからも不安な子どもに対しては、寄り添う事や

気持ちを受け止める事を心掛けています。

考察(1)子どもに合わせて食を進めていく 「食べないこと」は、慣れない場面への不安の表れでもありました。家庭の環境から園生活の環境への変化はA ちゃんにとって、すべての環境が変化する程だったと予想されます。母親にはA ちゃんが安心して過ごす事が出来る様、親子通園や家庭の味をお願いして弁当を毎日持参していただきました。「家で食べ慣れたものを持って来てもらう」ことから、「新しい場面でも食べられる」様になり、大人との関係が安定するに従い、慣れた献立に似ているものを提供する事で、新たな素材への興味がわき、「食べる」へ変化していると考えます。ただ、工夫や配慮だけではうまくいかない場合もあります。食べ慣れたものでも、園の環境が変わると(バイキング給食や親子クッキング)不安が生じ、食べる事ができませんでした。環境だけではなく変わらない食材を提供し、食べる事が出来た経験を積み重ねていく事が大切と考えています。(2)保護者との連携食に対して悩まれている保護者は多く、給食で子どもが一口食べた

事、いつもと様子が違い給食に向き合っていた事等、園での様子を連絡ノートや電話でお知らせすると、一緒に喜んでくださいます。給食

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のレシピを基に家庭のご飯を作り、匂いや食べている様子を見せる事で子どもに安心感を与えて下さる方もいらっしゃいました。保育者と共に子どもの成長を喜び合える関係も保護者にとって必要ではないかと感じます。(3)給食の提供方法や食器等の工夫大人にとっては、当たり前の事でも、子どもにしてみれば、少しの

変化が大きな変化となって、混乱して食べる事が出来ない場合があります。子どもの理解に合わせて 分かりやすく働きかけを行なう事や、 、見慣れた食器、盛り付け方のちょっとした工夫をする事で混乱を防ぎ、食べる事が出来る場合があります。給食の提供方法については、少しでも満足感や達成感を味わうことが出来る様、子どもに応じて「初めから分けて提供」、「子どもの目の前で分ける」など、日々状況や変化を見ながらすすめています。子どもからおかわりの要求やサインがあった時には、なるべく早く提供することを心掛けています。それは、子どもにとって自分の要求やサインが有効であったこと、相手に伝わった経験を積むことが将来、人とのコミュニケーションや自立につながるからです。

まとめ 偏食を伴う子どもに対し、食を進めていくことは大変難しいです。好き嫌いではなく、発達障がいの特性(視覚・触覚・嗅覚などの感覚過敏)としての偏食であることから、一人ひとりの子どもに合わせて取り組む事が大切だと考えています。また、保護者と保育士をはじめ他の職種も一緒に考えながら進めていく事も大切です。保育士が普段療育を行なう中で、子どもと一緒に過ごした事から感じる子ども自身の可能性や少しの変化を給食や偏食への対応に取り入れ、食材への“ 興味” から “ 食べる ” ことへの変化に繋がるよう、今後も偏食等から見える子どものサインや保護者支援に対して、職員が連携を取りながら取り組んでいけるよう努めたいと思います。

※1  言語やコミュニケーションに問題のある子どものために、英国で開発され、世界の40 ケ国で使われている言語指導法

※2  絵カード交換式コミュニケーション・システム( PECS)は、1985 年にデラウエア州で自閉症やその他のコミュニケーション障がいを伴う子どもや大人が自発的にコミュニケーションできるようにするために作られた特別のトレーニングプログラム

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参考文献・資料飯田雅子 1997 、発達に遅れがある子どもの日常生活指導 鉄道弘済会弘済学園 

立山清美・宮嶋愛弓・清水寿代 2010 、自閉症児の食嗜好の実態と偏食への対応に関する調査研究大阪府立大学総合リハビリテーション学研究科紀要 

『私の職場での工夫と改善、その評価』~アタッチメントを築くために~

児童養護施設 聖ヨハネ学園児童指導員 長瀬麻里絵

はじめに 私が聖ヨハネ学園で働かせて頂いて、4年目になります。1~3年目は幼児フロア、4年目の現在は小学生低学年の女児を担当しています。入社当初は、子どもとの関わりに戸惑うことが多くありましたが、子どもの笑顔に支えられながら、現在まで続けることができています。子どもたちの日々の成長を肌で感じることで私自身大きく成長し、また関わりの一つひとつは私にとって大切な宝物となっています。今回は、1年目から現在まで担当させて頂いている児童との関わりについて発表したいと思います。

事例Aちゃん(現在6歳)【入所理由】 父母拘留中、知人宅で生活しており養育者が不在の状況があったため、H23年11 月、緊急一時保護に至る。【性格・特徴】 素直で人懐こく、マイペースな性格です。ごっこ遊びや人形遊び、お絵かき等の遊びが好きです。交友関係は、異性とは仲良く遊ぶことができますが、同性はトラブルになることが多くあります。母への思

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いはあり、「会いたいな」と笑って冗談交じりに伝えることはあっても、泣くなどの寂しさで表現することはありません。本児にとって、家族のことはまだ受け止めきれず、逃避している様子です。負の感情を言葉で伝えにくい分、排泄や肌荒れなど、体調面で表出します。

【入所してからのA ちゃんの日々の生活】 緊急一時保護で入所してきたAちゃんは、フロアへ入ると早々にTVの前に座りアンパンマンを見ていました。知らない場所への緊張感は見られず、今までいたかのような振る舞いに、私は違和感を覚えました。3か月程は日課にものることができましたが、新年度を迎えてからのA ちゃんは、着替え、歯磨き、幼稚園の準備等の日課をこなすことができなくなり、無気力状態となりました。何度声をかけても反応がない生活が続きました。何か伝えたいことがあると、泣いて訴えることも多く見られるようになりました。 また、外出時、気がそれると手を離し、そのままどこかへ行こうとします。名前を呼んでも反応は薄く戻ってこようとしません。誰にでも話しかけ、警戒心が全くありません。

【A ちゃんの行動の背景とは】 上記の様な行動には必ず理由があり、その原因を生育歴から探っていきます。A ちゃんが住む場所が変わっても動じない、誰にでも話しかけ警戒心がないのは、おそらく知人宅で生活する等、住居が点々と変わっていることや父母以外に養育されていた経験からくるものと思われます。 無気力状態となった原因は、自分の置かれている現状を理解できず、母へ会えない気持ちや見通しのもてない生活の不安からくるものではないかと思います。

【A ちゃんに必要なもの】 A ちゃんの生育歴や現状を踏まえると、A ちゃんにとって必要なものは、より安心した環境の中で、ある特定の対象と愛着関係を築くことだと感じました。「愛着(アタッチメント)」とは、親あるいはそれに代わる重要な人との間に繰り返し行われる日常的な世話などを通して、子どもの中に形成される心理的な絆のことであり、さらに、子どもが不安を感じたり、危機的状況に置かれたりするとき特定の人との近接を求めようとする形で自己の生存と安全を確保することです。生まれて6~7か月頃までの赤ちゃんが「泣き」によって表現する

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「お腹すいた」「おむつが濡れた」等の欲求に対して、親あるいはそれに代わる人がいかに応答的で適切な世話を提供できるかどうかが最も重要で、このときの大人の対応がアタッチメントの質を決定し、将来の子どもの対人関係の基礎を形成されると言われます。 

【アタッチメントを形成する上で実践した支援】 A ちゃんとアタッチメントを形成するために具体的に行った支援とA ちゃんの変化について、以下にまとめました。

① 育て直しを行う。  Aちゃんは、入所当初は4歳でしたが実年齢にとらわれず、生まれたての赤ちゃんだと思い、着替え、排泄、歯磨きなどの日課について、全て付き添い、一緒に取り組みました。私が「Aちゃん、お着替えの時間ですよ。一緒に着替えましょうね」と言うと、今まで無反応だったAちゃんは笑顔になりやってもらうことの心地よさを感じていました。

② 外出時は必ず担当職員と手をつなぐ。 外出の際、私はAちゃんと必ず手をつなぐようにし、Aちゃんにとって特定の人とのつながりを視覚・感触で感じてもらうようにしました。この関わりを続けることで、A ちゃんは私と少し離れても姿を見つけ戻ってくるようになりました。

③ 小さなことを褒め、成功体験を増やす。  苦手を克服することも褒めどころではありますが、私が重要視しているものは、当たり前にできていることを言葉で伝え褒めることです。普段できていることを褒めることで、子どもたちが自分を見ていてくれていると安心を感じてくれます。A ちゃんは鉛筆を持てなくなるほど小さくなるまで使い「すごい!A ちゃん、こんなに小さくなるまで鉛筆を大事に使っていたんだね!」と褒められたことがありました。その時のA ちゃんの反応は薄かったのですが、学校の先生に、「鉛筆を大事に使っているとママに褒められた」と喜んで伝えたそうです。私には日常の些細な出来事でしたが、A ちゃんにとって心に残っていた事柄であったのだと感じました。

④ 肯定的な言葉かけを行う。  子どもの良くない行動に対して、「~しなさい」「~はだめ」な

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どの命令的・否定的な言葉ではなく、「~はしていいよ」「A ちゃんは~がしたかったんだね」と肯定的な言葉をかけると、子どもは自分の思いを受容してもらえたと感じることができます。Aちゃんに安心を与えつつ意欲的に行動してもらうために様々な声かけを行いましたが、一番有効だったものは、A ちゃん自身が行動を選択するものでした。

(例)幼稚園の用意をする際、A ちゃんに3つ具体的な行動を提示しました。     (1)「一つ一つ大人と一緒に取り組む。」     (2)「A ちゃんのできること半分と、残りの半分は大人がする。」     (3)「A ちゃんが一人で頑張って、出来たら大人に言いに来る。」  と、3つの中からA ちゃんが選択することで、大人にやらされているのではなく自分自身で行動を決定したことになります。A ちゃんは、自分が満たされる方法を自分自身で選択することで、意欲的に行動することができるようになりました。

【A ちゃんとの関わりで感じたこと】 私は、A ちゃんが入所する以前まで、日課がスムーズこなせること、課題を克服することが支援だと思い、子どもたちに頑張らそうと日々努力してきましたが、うまくいかず空回りしていました。A ちゃんが入所してから3ヵ月後、全て無反応で返され、私の支援方法は一切通用しなくなりました。その時、私の支援は現状にとらわれすぎて、子どもの置かれている背景を理解していないことに気づかされました。A ちゃんの生育歴をもう一度見返し、想像することで、何もできなくてもあなたは愛されるべき存在なのだということが伝わってほしいという感情が私の中で芽生えました。それが私の支援の根本となり、現在でも子どもと関わる上で大切にしていることです。 

今後の課題アタッチメントを形成する上で、ある特定の誰かとの連続した関係

性が必ず必要と思われがちですが、そうではなく、タラーによれば『より安定した養育環境下に移行することで、たとえそこで特定の養

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育者による関わりの連続性が十分ではないとしても、真のアタッチメント関係が築けないということにはならない』と指摘しています。実際に、シフト制で勤務が組まれているため、常に担当職員が傍にいるわけではありません。連続性がなくてもアタッチメント関係を築くことができるのは、担当職員が休みの日でも安心した環境が保障されていることと同時に、愛着対象の内在化ができているからだと思います。私は休みの前日に、「明日何をしていたか、長瀬姉が帰ってきてからお話聞かせてね」と伝えたり、子どもたちが作ったポストがあり、そこに手紙を書いて投函したりするなどを行っています。休み明けに子どもたちから話しを聞き、子どもの生活に連続性をもたせています。担当職員が不在の時でも担当職員を感じることができれば、それは連続した関わりとなりえるのではないかと思われるので、今後も、様々な形で子どもの生活をつなげていきたいです。

おわりに 子どもたちは、様々な事情により児童養護施設で生活していますが、年齢が低いほど、理由も分からず施設入所に至るケースが多いです。職員を拒絶して泣く児童もいますが、A ちゃんのように平然としている場合もあります。しかし、どのような状況でも、知らない場所へきたことの不安は誰しもあります。そのことを念頭におき、我々職員は、施設は安心できる場所であることを様々な方法で子どもたちに伝えていかなければなりません。私が児童の入所初日に行っていることは、「よく頑張ったね」と抱きしめたり、頭をなでたりと、とにかくスキンシップを図ることです。子どもたちは自分が悪いことをしたから、家から別の場所へきたと思うことがほとんどのため、あなたたちは何も悪くない、守られるべき存在なのだということが伝わればという思いで行っています。児童養護施設での支援は、目に見えないものがほとんどで、成果が出ているのか分かりづらいものですが、子どもたちの反応や成長により見えてくることがたくさんあります。できることを一つひとつ着実に行い、子どもたちの生活が一つでも笑顔の多い日々となるようにこれからも関わり続けたいと思っています。

文献:庄司順一・奥山眞紀子・久保田まり編著『アタッチメント~子ども虐待・トラウマ・対象喪失・社会的養護をめぐって』富山大学名誉教授 横山康行氏『「のび太」という生きかた』

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「ご利用者に豊かな生活を送っていただくために」ミス・ブール記念ホーム

介護支援専門員 岡田 幸治“ はじめに ” 私は現在ミス・ブール記念ホーム小規模特養こもれびユニットのリーダーとして働いています。こもれびユニットには10 名(男性2名・女性8 名)のご利用者が生活されています。こもれびユニットのご利用者の平均要介護度3.6 、平均年齢86.4才です(平成26 年8 月1 日現在)。こもれびユニットの担当になって2 年目を迎えていますが、1 年目の反省と課題、それに対して今年の4 月から取り組んできたことの報告をさせていただきたいと思います。“1 年目を振り返って ” 昨年度最後のユニット会議にて、1 年間を振り返ってどうだったか話し合いをしたところ、「お元気だった方が突然亡くなったこともあり、ご利用者が望んでいることを理解するように努め、どうすればいいか考えないといけないと思った」「ユニットで行うレクがあまりできなかった」「ご利用者に楽しんでもらえるようなレク等をもっと考えて実践していきたい」等の意見が挙がりました。 ミス・ブール記念ホームでは施設全体で行う行事として、5 月にはご家族を施設に招いて食事会をする父母の日、8 月は施設最大のイベントである夏祭りを、10 月にはデイサービスのフロアを使った運動会を、12 月にはクリスマス会、1 月は初詣に出かけています。また毎月ボランティアの方がご利用者に楽しんで頂こうと喫茶や合唱クラ

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ブ・書道・朗読などのレクを行いに来て下さっています。そしてユニット内で行なった行事として、4 月と7 月に中庭に出て花見と流しそうめんを、大みそかには夕食後にお酒やお菓子を食べながら年忘れ会を、またご利用者の誕生日月には誕生日会を行ったり、誕生日会とは別にユニットパーティーとしてご利用者の食べたいものをフロアで調理して食べたりしました。 「ハレとケ」という言葉がありますが、施設全体の行事やユニット内で行った誕生日会などの行事を含めて振り返ってみると、ほぼ1 ヶ月に1 度何かしら行事を行っていました。これらの行事は普段行わない行事、いわゆる「ハレの日」の行事であるといえます。ハレの日は特別な行事であるということを考えると、行った回数だけを見ると少ないということはないと思われます。しかし年度末に行ったユニット会議での「希望することをもっとしてあげたかった」「レクが少ない」といった意見がなぜ出てきたのか考えてみると普段の生活を意味する「ケの日」にレク等がもっとしたかったのにできていなかったことが上記のような意見となって出てきたのではないかと思いました。 小規模特養のご利用者は個室を利用され、食事はフロアで皆と一緒に召し上がりますが、それ以外の時間はそれぞれ居室で過ごされたりフロアで過ごされたりと様々です。居室で過ごされるご利用者はテレビを見たり居室の整理をしたりと自分の意思でやりたいことをやって過ごされる方が大半ですが、フロアで過ごされるご利用者は眠られている方が多く、それらの方々に何か楽しんで頂けることがあまりできなかったことも「レクが少なかった」という形で現れたと思いました。また「買い物に行きたい」「運動がしたい」といった個別の希望に対してほとんど対応できなかったことも要因として挙げられると思います。 対応できなかった理由として、昨年度は職員の入退職が相次ぎ、新しい職員の指導に時間を費やすことが多く、日々の業務をこなすことに追われ、気持ちの余裕がなかったことが「ハレの日」の行事(誕生日会など)を行うことで精一杯になってしまい、日常生活(=「ケの日」)をいかに充実した生活を送っていただくにはどうすればいいかということにまで踏み込めなかったと考えました。  “ 新年度からの取り組みについて ” 日常生活の中で少しでも充実した時間を過ごしてもらうためには、まず職員が余裕を持ってレクなどの活動をできる時間帯を作り、その時間帯にご利用者が楽しめることを考えて行うことが必要ではないかと考えました。

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 そこでご利用者の生活スタイルを見ると、昼食後に横になって休まれる方が多いため、10 時の給茶後に職員が2 人いる時にご利用者と関わる時間としました。余裕を持ってご利用者と関わるために、それぞれ分担を決めて一人はレク等を行い、もう一人は排泄介助やナースコール対応を行うように決めて対応するようにしました。ご利用者と中心になって関わる職員は前もって決めておき、その職員がご利用者に楽しんで頂けるレク等を行うようにしました。また運動する機会の提供として、ある施設では食事前にラジオ体操の音楽を流し、もうすぐご飯の時間であると認識してもらうと同時に、身体を軽く動かすことで頭と体がすっきりし、食事を美味しく食べていただけるという情報を聞き、当ユニットでも配膳前の落ち着いている時間に行いたいと考え、昼食と夕食前にラジオ体操を行うようにしました。  “ 新たな取り組みの振り返りと課題について ” シフトの都合上、午前中職員が2 人いない時もあり、毎日レク等をする日は設けることはできませんでしたが、担当を決めている日にはそれぞれ職員がご利用者と一緒にお菓子作りをしたり、ユニット内を飾る作品作り(貼り絵や折り紙など)に取り組んだりとご利用者に楽しんで頂こうという姿勢が出てきました。また食事前に行うラジオ体操も皆さんできる範囲で腕や頭を動かしたりされ、傾眠がちなご利用者もラジオ体操が終わった後はしっかり目を覚まされそのまま食事を召し上がることが増えました。そして新年度からの取り組みについて3 ヵ月後にユニット職員に振

り返ってもらい、どのようにすればもっと良くなると思うかといったアンケートをとりました。出てきた意見として「皆とレクをするとどうしてもできる人とできない人がいるのが気になる」「参加できない人は寝てしまっているのが気になる」「個別でご利用者がしたいことやできることをやってみたい」「天気が良い日には中庭に出て昼食を食べたい」「花や野菜を育ててみるのは?」等の意見が挙がりました。そこでご利用者の生活歴やご家族からの聞き取りを見直してみると「食べることが楽しみ」「漬物を漬けていた」「植物を育てていた」「お花をしていた」といった方が多かったため、中庭にプランターを置いて花とミニトマトの苗を植え、現在も水遣りをご利用者と一緒に行って日々の成長を見守っています。また個別に対応する時間を設ける為に10 時の給茶後以外にも職員が2 人おりフロアが落ち着いている時は施設内を散歩する時間を設け、楽しむまでもいかなくても気分転換になるような機会を作ろうと会議で話し合いました。今回職員が2 人いる時に担当を決めて10 時の給茶後にレク等を行

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うようにしてきました。本来ならばその時のご利用者やフロアの状況を見て、担当者など決めずとも職員が自発的にご利用者が喜んだり楽しんだりできるレク等を行うことが理想であるかと思いますが、他の業務に追われ結局できなかったということにならずに「ご利用者に少しでも充実した時間を過ごして頂きたい」という思いから担当制にして時間帯を決めて取り組んできました。お菓子作りや作品作りなどを中心にしたレクが多かったですが、で

きる方にとっては楽しめるレクであり、今後もこれらのレクが中心となって行われていくと思われます。ただしこの時大切にしたいことは、細かい作業を一緒にすることは困難なご利用者でも、同じテーブルを囲んでフロアの和気藹々とした雰囲気や音や匂いを感じて頂き、また職員はご利用者の気持ちが盛り上がるようなフォローをその都度行うことで一緒に作業するのが難しいご利用者にも楽しんでもらえるように努めていくことだと思います。お菓子作りや作品作りはあくまでもご利用者に楽しんで頂くための手段であって目的ではないということを理解し、いかにこれらのレクを行う過程でご利用者に楽しんで頂けるかが大切であるということを忘れずに実践していきたいと思います。そして我々職員は特に自分の意思を言葉で伝えるのが難しいご利用

者対して、どうすれば充実した時間を過ごして頂けるか職員皆で常に考え、そして実践していけるかが今後の課題と思います。今はまだ余裕がある時にしか出来ていませんが、少しの時間を見つけてご利用者の為にレク等が自然な形で行え、ご利用者の生活が豊かなものになるように努めていきたいと思います。【参考文献】介護レクリエーション大百科 監修 杉 浦史晃 ユーキャン

2012 年みんなで楽しめる高齢者の年中行事&レクリエーション 著者 尾渡順子 ナツメ社 2014 年介護レクリエーションの作り方 著者 島田治子 雲母書房 2008 年

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『発達障がいの子ども達におけるコミュニケーションのトラブルにつ

いて』

地域生活支援センター光保育士  砂田 綾季

はじめに 私が地域生活支援センター光で働き始めて4年目になりました。これまで、身体障がい者の入所ユニット、日中一時支援・短期入所の通所ユニットと経験してきました。そして平成25年7月より放課後等デイサービス事業の開始に伴い配属となりました。放課後等デイサービスとは、障がいのある児童の療育の場であると

ともに放課後や長期休暇の居場所又は、ご家族にリフレッシュして頂く家庭支援サービスとしての役割を担っています。光では、小学校1年生~高校3年生までの児童が、曜日固定制で1

0名定員、金曜日のみ5名定員で通所されています。集団活動でのプログラムの提供や、個々のニーズに合わせた課題や

レクリエーションを通して自立に向けた支援(創作的活動、作業活動、余暇の提供)を行っています。その中でもこの1年を通して子ども達の変化や成長、職員が悩み子

ども達と一緒に考え進んできた子ども達の話を発表させていただきたいと思います。

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子ども達の関係性について 放課後等デイサービスを始めた7月当初は、Aさんを含めた3人のメンバーからスタートしました。それぞれ個性も障がい特性もバラバラで、Aさん以外は、他児と関わるというより各自が一人で遊び、過ごすことが多く、一方Aさんは他児との関わりを求めて一緒に遊ぼうとアプローチしていました。しかし他児からの反応は薄く、物足りなさを感じている様子でした。

職員と一緒に活動は行っていましたが、仲間意識はあまり見られない様子でした。9月よりB君が加わり4人になりました。よく話をするB君にAさ

んは、初回からすぐ興味を持ち、2人で一緒に過ごす場面がよく見られるようになりました。B君とAさんの間には、障がいからくる特性によりコミュニケーションが上手くいかない事も多く、B君が不穏になってしまう場面も見られ、職員間でもどのように間に入っていくべきか悩み話し合う場面もありました。そして11月に入りC君が加わり、5人になりました。B君とC君

は小学校や学童も同じということもあり、もともと仲の良い2人でした。5人になったことにより、デイの雰囲気がガラっと変わり、今まで

仲間意識が薄く、バラバラだった子ども達に変化が見られるようになりました。子どもの障がい特性・Aさん 地域の小学校に通う4年生の女児。療育手帳はB2判定。

広範性発達障がいで主に多動、衝動性が見られる。お姉さん気質で、お世話好き。「自分が一番」や「他の子とは違う」という特別さを好む。思った事はすぐに行動してしまい、相手の気持ちを理解することが難しい。他児との関わりにも興味があり仲良くなろうとするが、コミュニケーション能力の低さから、相手の気を引こうと手が出たり、作り話をしてしまう様子も見られる。

・B君 地域の小学校に通う4年生男児。療育手帳はB1判定。自閉症スペクトラムで順番へのこだわり(1番になりたい等)や

赤信号が待てないというこだわりがある。個々の関わりでは、こだわり面はあまり大きく目立たないが、グループでの活動の場面では、一番への執着等が、課題となる。自分の中のルールを他人や物によって崩される事が苦手で、興味・関心が同じで気の合うC君の存

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在に安心感を持っている。

・C君 B君と同じ小学校に通う4年生男児。療育手帳はB2判定。  自閉症スペクトラムで勝ち負けや順位がつくものが苦手。1番が良い等の順位のこだわりがないので、B君と一緒にいても相手に譲ることが出来る。人を笑わせたり自分達が笑える出来事が好きだが、同級生とは話が合わず、一緒に笑い、楽しさを共有できる存在がB君。そのため真面目に取り組んで欲しい場面であってもB君を楽しませてあげようという気持ちが強くなり、ふざける場面が多く見られる。B君との2人の世界観があるため、他児が中に入ってくることが受け入れられないことがある。

コミュニケーションのトラブルについて 3人は、会話でコミュニケーションを取ることが出来ます。B君、C君が仲良く会話をしている場面を見ると、Aさんも仲間に入ろうと会話に加わるのですが、2人の世界の話について行く事ができませんでした。Aさんが入ってきても2人に仲間意識はなく、3人で会話していてもすぐに2人でどこかへ行ってしまいます。話せば気が合いそうなのに、どうして2人はAさんに興味がないのか気になりました。 そこでそれぞれの障がいの特性やこだわりの部分に関係があるのではないかと考えました。順番にこだわりを持つB君とAさんでは、常にどちらが「一番」でトラブルになることが多く、Aさんの提案した勝ち負けがある遊びは、勝ち負けが嫌いなC君には、遊びたくない内容でした。B君やC君の中では保たれていた均等が、Aさんが入る事により崩されることが受け入れにくい原因の一つではないかと思いました。Aさんは、2人が好きだからと電車の本を借りてきたり、2人が好

きな冗談を言ったりとB君、C君に寄り添おうとしていました。しかし2人からの反応は少なく、そうした2人に対して手が出てしまうというトラブルが発生しました。どんなに辛い事があっても手を出すことはいけないとAさんに話したところ、きちんと自分から謝ることが出来ました。しかしC君は、手を出されたことを許せないという思いが消えませ

んでした。3人の間にまた大きな溝が開いてしまい、どのように関係性を修復したらよいか職員同士でも悩みました。初めは、5人で療育を行っていたのですが、一度トラブルが起こる

と、職員の声は子ども達に届かず、問題がエスカレートしていく一方

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でした。3人での関わりを意図的に減らすことでトラブルは減少しましたが、根本的な問題が解決したわけではなく、3人が揃うと同じようなトラブルが起きていました。

またAさんは、使命感や正義感も強いため、きちんとした場面でふざけるB君、C君を職員のように注意する場面も多く見られました。そのため2人の口から「Aさん嫌い」「一緒にいたくない」という言葉が出てきてしまいました。 3人で仲良く遊びたいというAさんの思いから始まった事が、次第にB君をめぐってC君とAさんとのトラブルが目立つようになりました。会話のスキルが高いC君に反論されてしまうと、言葉が上手に出

ないAさんが手を出してしまうというトラブルが繰り返されました。暴力を受けたC君の気持に寄り添いながら、Aさんへ対しての態

度や悪口は相手が傷付いてしまう事を伝えました。しかし相手の気持ちを理解するということはとても難しく、「C君がした事を反対にAさんにされたらどう思う?」という問いは理解できない様子でした。そこで、「同じことをB君にされたらどう思う?」と聞いてみると、『それは嫌な気持ちになるし、嫌われたくない』と答えました。「その今の気持ちがAさんの気持ちなんだよ」と伝えると、初めは頑なにAさんと仲直りを拒否していたC君が、仲直りのための話し合いに応じてくれました。それをきっかけに、少しずつわだかまりがなくなってきました。

3人が揃った時には、まだまだ職員が間に入り、席に着く時の座席の配置等を配慮しないとトラブルに発展しますが、大きなトラブルにつながる事はなく、3人で楽しそうに会話をする様子も少しずつ見られるようになりました。

子ども達から学んだこと自閉症スペクトラムの特性を持つ子ども達は「社会性」「コミュニ

ケーション」「想像力」といったことが苦手です。特に相手の気持ちになって行動するというのは難しく、対人関係のトラブルとして出てきます。

嫌いなAさんに言われても何とも思わないと答えていたC君も同様の困難を抱えていました。しかし自分が大好きなB君に同じことを言われた場合は「嫌だ」と相手の嫌な気持ちを理解することが出来ました。

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他の子どもにも同じ方法が通用するとは限りませんが、子ども一人ひとりにそれぞれ感じ方があり、色々な方法を試していく事が大切だと感じました。様々なトラブルを経験し、1年間一緒に過ごしてきた3人は、当初

仲間意識もなく、バラバラで自分のことが中心でしたが、相手を意識し相手の声を聞くことで、「この子はこんな事が出来るんだ」と子ども達同士で新しい発見をする場面も見られるようになりました。『発達障害の子のコミュニケーショントレーニング(監修:有光興記)』によると、トラブルの前後の出来事や背景にも目を向け、なぜトラブルになるのかを考えることが大切だとありました。今回のことで、トラブルには「文脈」があり、様々な出来事が子ども達の心に様々な思いを積み重ねた結果トラブルが起こるのだと学びました。

終わりに トラブルが全くなくなることはないかもしれません。上手くいった関わりであっても次も上手くいくというわけではありません。一年が経った今でも子ども達の関わりについての個々の動きや職員の連携について、毎日話し合う内容はつきません。日々の療育の中で、想定外のトラブルが起こることもありますが、

問題に直面した時こそ、まず子ども達をよく見て話を聞くことが大切です。気持ちに寄り添いながらトラブルが起きた原因はなにか?と職員間で話し合い、出来れば子ども達で解決の方向に持っていけるような支援を目指したいと思います。子どもたちは素直です。ストレートに褒められる事や自分が認めて

もらえる事が自信につながり、今後の自立につながります。不適切な行動や対人関係のトラブルもその過程で減っていくのではないかと思いました。今後も子ども達にとって光の放課後等デイサービスが安心できる場

所、来て楽しい場所と思ってもらえるように日々、職員間で協力しながら子ども達の成長を見守り、療育に取り組んで行きたいと思っています。

【引用・参考文献】*『発達障害の子のコミュニケーション・トレーニング』 監修:有光興記*『発達障害の子どもの心と行動がわかる本』 監修:田中康雄

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*『気になる子の「できる」を増やすポジティブ支援 著:前田 卿子

「私の職場での工夫と改善、その評価」

児童養護施設 聖ヨハネ学園

保育士 中林 真理

1 .はじめに

 私が児童養護施設聖ヨハネ学園で勤務させて頂くようになり、4年

目を迎えました。1年目から3年目までは、小学生の男の子を担当し

ていました。今年から小学6年生と中高生を担当しています。 1 年目の時から担当していた子どもが 6 年生になり、一緒に小学 6 年生と中高生が生活しているフロアに異動になりました。今回の研修では、1

年目から担当させて頂いている子ども A 君との関わりについて報告さ

せて頂きます。

 

2 . A 君の性格・特性

  A 君は現在小学6年生です。4歳の時から児童養護施設聖ヨハネ学

園に入所しています。

入所以前から多動傾向がり、気に入らない事があると大声を出し、暴

れる事がありました。落ち着きがなく、集中できにくい等の課題を抱

えていました。入所後も落ち着きのない生活をしており、自分の気持

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ちを伝える事が苦手なため、暴言・暴力で表現することもありました。

また気持ちのやり場がなく、聞いてもらえなかったという気持ちが強

くなると、裸足でグラウンドに飛び出すことなどもありました。子ど

も家庭センターでのドクター受診の結果は「AD H Dの疑い」と言う

ものでした。また小学4年生ぐらいから友人関係のしんどさも出てき

ました。この頃から自分の気持ちをコントロールをして人と付き合う

事や、自分の気持ちを表現する事の難しさが顕著に出てきました。

3 . A 君との関わりについて

 私が A 君を担当する事になったのは、 A 君が小学3年生の時です。

人との距離感が掴みにくく、言葉で思いを伝える事が苦手な子どもで

した。ゲームの話しなど、普段は会話でのコミュニケーションができ

ます。しかしA君が話しにくい事などは、全くと言って良い程会話に

なりませんでした。他児と喧 嘩になってお互いに暴力が出るような事

が 起 きる と、 泣 い て何 も 話 そう とし ませ んで した 。 私 が「 どう した

の?なんで喧 嘩になったの?」と聞いても何も答えてはくれませんで

した。またA君は集中できないため、宿題にとても時間がかかりまし

た。宿題が終わらずプリントを破ったり、泣きながら自分自身を叩く

事もありました。A君が4年生になる頃には、私とA君との関係も築

き始めていました。そのため、A君が自分の気持ちを表現してくれる

事も増えてきていました。ただA君の表現方法はとても独特でした。

声を出さずに口だけ動かして、メッセージを伝えようしたり、足をド

ンドンと足踏みをして伝えようとしていました。私は毎日のようにA

君と過ごし、A君の独特の表現方法に慣れていました。私とA君との

コミュニケーションはスムーズになってきていたため、私は少し安心

していました。普段はしっかりコミュケーションが取れており、A君

が話しにくいような話題でもコミュニケーションが取れるようになっ

た事を嬉しく思っていました。しかし私が休みの日など、A君が他の

職員とのコミュニケーションに困るようになっていました。その時に

私はA君が自分で考えた独特な方法でのコミュニケーションは、私に

伝わるだけでた職員に伝わらない事に気が付きました。A君自身が生

活しにくい状況になっていました。誰にでも伝わる方法を身に付け、

A君が生活しやすいように支援していかなくてはならないと思いまし

た。

4 .ソーシャルスキルトレーニング( SST )について ソーシャルスキルのソーシャルとは、「社会の」「社会的な」、ス

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キル は「 教 育 や 訓 練 に よっ て 獲 得 で きる 能 力 ・ 技 能 」 と言 う意 味 を

持っています。一般的には、「人と(社会)と上手く関わっていくた

めに必要な技能」と捉えられています。教示やモデリングなどの方法

を用いて行うトレーニングの事をソーシャルスキルトレーニングと言

います。(以下 SST と表記)

5 .ソーシャルスキルトレーニング( SST )を受けた A 君

 A君の日々の様子を子ども家庭センターに伝えていく中で、 SST を受ける事が決定しました。A君の特性にあった SST を行うために何度もカンファレスをしました。「自分自身の心と体の状態に気付き、感

情を言葉で伝えられるようにする」と言う目的を持ち、 SST をスタートする事になりました。 SST で学んだ事を生活の場で練習をし、良い行動を増やす取り組みをしました。A君と振り返りを行い、自己評価

をしました。 SST で学んだ事を実践できたとA君が評価した時に、A

君が好きなキャラクター等のシールを表に貼って行きました。シール

を集 める と言 う事 は目 に 見 えて 分 か りや すく 、 こ のや り方 が A 君 に

合っていました。毎月目標のシールの数を決めて、達成したら私とA

君で外出をしました。A君はこの外出を「ご褒美外出」と呼んで、毎

月嬉しそうにしていました。目標とするシールの数をあえて少なく設

定して、達成感を得られるようにしました。

 第1回 SST (平成 24年 10月 11日)内容: SST の説明・自己紹介・リラックス体操・今月の目標につい

 目標:「分からない事があったら聞いてみよう」

第2回 SST (平成 24年 11月 8 日)内容:前回の目標の振り返り・お互い知ろうゲーム・カードを使っ

た SST 学習   今月の目標について

目標:「イライラしたら、おまじないを使ってみよう」おまじない

は “ 数を数える ”

 第3回 SST (平成 24年 12月 13日)  内 容 : 前 回 の目 標 の 振 り 返 り ・ お 互 い 知 ろ うゲ ー ム ② ・ カ ー ドを

使った SST 学習    今月の目標について

 目標:「分からない時、イライラした時に自分の言葉で言う」

 第 4 回 SST (平成 25年 1 月 10日)

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 内容:前回の目標の振り返り・紙飛行機作り・カードを使った SST学習

    今月の目標について

 目標:「机の横に壁を作って勉強をする」

第 5 回 SST (平成 25年 2 月 14日)内容:前回の目標の振り返り・ゴム鉄砲作り・カードを使った SST

学習

   今月の目標について

目標:「嫌な事を言われたり、誘われたら①無視する②職員に言い

に行く」

 第 6 回 SST (平成 25年 3 月 14日) 内容:前回の目標の振り返り・トントン紙相撲を作ろう・カードを

使った SST 学習    今月の目標について

 目標:「したくない事を言われたり、誘われたら “ いや ” と言う」

 

A君は初め人見知りをして、何も話せない状態でした。服で顔を隠

したり、机に顔を伏せたりと全く学習できるような状態ではありませ

んでした。担当の心理士に質問をされても、私の方を向き、声を出さ

ずに口を動かしていました。しかし内容はしっかり聞いていました。

毎日シールを貼る事を楽しみにしていました。私との毎日の振り返り

の時間ができたため、担当職員を一人占めできる時間にもなりました。

第 2 回、 3 回目の時にもまだまだ私に向かって助けを求める事は多く、一人では返事ができていない状態でした。 SST のカードを使っての学習では、間違いを選びたくないという気持ちからか、先に答えを見よ

うとしていました。スムーズなコミュニケーションにはまだなりませ

んが、 SST の学習に対しては楽しいと言った気持ちがありました。心理士と少しずつ話せるようになっている事も A 君自身が実感していま

した。

 第 4 回、 5 回目くらいからだいぶ心理士にも慣れてきて、 A 君が自

ら話しをする事も増えていました。ウォーミンクアップで行う工作を

とても楽しみにするようになっていました。 SST を頑張って学習すれば楽しい事が待っているという事がやる気に繋がっていました。工作

を取り入れたくらいから私に助けを求める事はなくなりました。

 生活の場では私との振り返りの時間を楽しみにしており、毎晩就寝

前に時間を設定していました。 SST の話しだけでなく、その日にあった事など様々な話しをする良い機会になっていました。第 6 回目では、

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来年度も継続するかは分からないため、とりあえず今年度で終わりに

なる事を説明されました。その後「頑張ったねパーティー」と言って

おやつやジュースが出てきました。 A 君はおやつやジュースを食べら

れる事にも喜んでいましたが、みんなに褒められる事にも喜んでいま

した。第 6 回目の振り返りは、平成 25年の 4 月、 A 君が小学 6 年生になったばかりの時に、学園で行いました。もうこれで心理士に会えな

いという事にショックを受けていました。しかしその後も子ども家庭

センターで、心理士に会う事があり、その都度喜んでいます。 SST の学習を通して、心理士との関係を築く事ができました。

 

7 .おわりに

  A 君に対して行った SST を振り返ると、どの程度の効果があったのかは分かりません。ただ、 A 君独特の表現方法は今はなくなりました。

また私以外の職員にも、自分の楽しい事やしんどい事を話せるように

なってきています。まだまだ A 君は自分に自信が持てず、人前で意見

を発表する事はできません。しかし5年生になって、初めて親友と呼

べる友達ができ、6年生になった今でもその友達とは仲良くしていま

す。少しずつではありますが、一人の世界にいた A 君が、人との繋が

りを 大 切 にし てそ の 輪 を 広 げて いっ てい ます 。 今 回 の SST は A 君 に

とって価値のある支援になったと思います。

 課題としては、 SST が必要だと思われる子どもはたくさんいますが、どの子にもできるわけではありせん。学園は必要だと思っている事を

子ども家庭センターに報告し、子ども家庭センターも必要だと思って

実現できます。ハード面での不便さが多くあります。学園の中ででき

る SST は無いのか、それは実施できる内容なのかなどを検討していく事が課題になると思います。

<参考文献>

・上野一彦( 2012)『図解よくわかる ソーシャルスキルトレーニング( SST )実例集』 株式会社ナツメ社

・ 鴨 下 賢 一 ( 2013) 『 学 校 が 楽 し く な る ! 発 達 が 気 に な る 子 へ のソーシャルスキルの教

 え方』中央法規出版 株式会社

「一緒に遊ぶこと、好きから、好かれる職員へ」~下田部保育園での4 年間を振り返って学んだこと~

児童養護施設 聖ヨハネ学園

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保育士 今岡 拓也1.はじめに私が、この法人に就職してから、5 年目を迎えました。1 年目は常

勤嘱託として、下田部保育園で二歳児の担任をさせて頂きました。2年目には正職員として採用していただき、3 歳児の担任、3 年目は全体のフリーとして、4 年目は再度3 歳児の担任、そして5 年目の現在は、児童養護施設聖ヨハネ学園に異動して、小学生(2 年~5 年までの4 名)の担当をさせてもらっています。 たくさんの年齢の児童との関わりの中で、私が感じた事は、「一緒に遊ぶことの大切さ」「子どもが好きから子どもに好かれる職員になる」という二点です。私が経験したこの二点について、述べたいと思います。2.一緒に遊ぶことの大切さ 最初のつまずき保育士として働き始めてから、自分に余裕がなく、毎日のルーティ

ンワークをこなすことに一生懸命になっていました。子どもたちの前に立って、指導をする時、新しい先生ということもあり、興味をもって私の話を聞いてくれていた子ども達でしたが、次第に話を聞いてくれなくなりました。手遊びをしても絵本の読み聞かせをしても、子ども同士でおしゃべりをしている方が多いほどでした。また、二歳児ということもあり、トイレトレーニングもありました。おむつを交換する時、私が名前を呼んでもきてくれない、泣いて嫌がるということもありました。午睡の時も、横で寄り添ったとき、「○○先生がいい」「こっちこんといて」ということも言われました。先輩の職員からは、まだ信頼関係が出来ていないからではないかという話を聞き、信頼関係を築くのにはどうすればいいのかという疑問を持ちました。参加した研修での気づきと学び この頃、保育園に研修の誘いがありました。「外遊び体育指導者 指導認定講習」というもので、遊びを子ども達に伝える指導者を育てるということが目的の研修でした。一か月間、毎週土曜日に指定された保育園に行き、初めて会う子ども達に自分の考えた遊びを伝え、評価と反省を行うものでした。 私以外の参加者は10年目の方、主任を任されている方、体育指導専門の方と各保育園から、ベテランの方が参加しているという感じでした。その中で、まだ保育経験一年未満の私にはすべてが衝撃でした。 私は初めてあう子なのに、話を聞いてくれるのか、遊びが伝わるのか、という疑問を持ちました。しかし、そこに参加していた方々の指

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導は、子ども達の笑顔をたくさん引き出していました。子ども達からも「もっとしたい」「次いつくるの?」という言葉がでるほどでした。どんな遊びを紹介していたかというと、①音(タンバリン・カスタネット等の楽器)が鳴っていない時は歩くまたは走る、鳴ると止まるというもの。(音を意識して運動をする。集中しないとできない。椅子取りゲームと同じ原理)②範囲と時間を決めた鬼ごっこ(範囲を決める:狭く範囲をとることで、いつ捕まるかわからないようにし、遊びに集中できるようにするため。時間を決める:30秒~1 分ほどで区切る事によってだらけないようにするため。)③縄跳びのロープをバイクのハンドルのように持ち、走る。(縄に慣れるための導入、走る事で体力の向上。)④移動式の鉄棒を円形に置いてぶつからない様に下を潜って走る。出来れば前回りをしてから走る。(空間認識を鍛え、危険回避能力を育てる。)など、単純な遊びでした。単純な遊びの中に、子どもにつたえるべきことがたくさんあるという事が分かりました。そして、子ども達と一緒に遊ぶことで、信頼関係が築かれていくのだといくことにも気づくことができました。保育園での実践 研修で学んだこと、気付いたことを、今度は私なりに園での実践に取り組みました。二歳児だったこともあり、もっと遊びのレベルを下げたもので行いました。まず、上記で挙げた①の遊びを行いました。子ども達は最初、ぶつかったり、止まれなかったりしたものの、すぐにできる様になりました。歩くことから始め、ハイハイをする、転がる、走る、スキップなど、いろんな種類の動く動作を取り入れて行った結果、次はどんなことするの?といった反応が見られ、話を聞こうとするようになりました。日々の保育の中でも、話を聞いて考えたり、こういうこと?と考えを行動であらわしたりと小さな変化が現れました。また、一緒に遊ぶことで、笑顔を見せてくれなかった子が、「先生、できる様になったよ。見てて」と笑顔で関わりを求めてくるようにもなりました。一緒に遊ぶことを通して、信頼関係を築くということを実感できました。二年目、四年目 三歳児の担任として一年目で学び、経験したことが、私にとっての基盤になりました。

二年目では私だけが前年度からの持ち上がりで、他の担任は変わりました。そのことで、子ども達が落ち着かない時も増えました。こんな時も、一緒に遊ぶことで、不安を解消し、関係を深めていくことができました。三歳児では①の遊びの発展で、「だるまさんがころんだ」や、イス取りゲームができるようになり、ルールのある遊びを伝えて

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いくことができました。運動会の競技でも運動遊びを取り入れたものを保護者の方に見て頂き、成長を感じたという言葉も頂きました。(跳び箱をのぼり上からジャンプする、平均台を渡る、タイヤ引きをする等。)楽しい時間を共有することで、子どもたちがより好きになり、日々

の保育にも向上心をもって、取り組めるようになりました。3.子どもが好きから好かれる職員になる乳児との関わりを通して 保育士として働き始めて、三年目、フリーとして、全クラスに入っての保育を経験する事ができました。特に多く関わることができたのが0歳、1 歳児でした。まだ言葉の話せない乳児との関わりは私にとって、とても勉強になりました。 言葉で気持ちを伝える事が困難な乳児は、表現がストレートに表れます。人見知りで泣く、ミルクや食事を与えても拒む、おむつ替えや抱っこを嫌がる等です。私は担任ではなく、不定期でクラスの手伝いをする立場だったので、拒まれることが多くありました。 乳児とはどの様に関わればよいかという事を考え、担任の先生の関わりを見てみました。すると、褒める言葉かけがすごく多いという事に気が付きました。積み木を一段積むと褒める、手でご飯を食べたら褒める、コップでお茶が飲めれば褒める等、当たり前と思っていたことをたくさん褒める事で、子どもたちは喜び、何度も同じ行動をして、覚えていたのです。幼児を担任していたころは、出来ない子に注意をするということがありましたが、乳児を経験して、褒める事の大切さに改めて築くことができました。 先輩職員の関わりを実践 私も、もっと乳児と関わりたい、そう思い、先輩職員の関わり方を実践してみました。褒めることを意識した子どもの観察、言葉かけ、私なりにできる体をつかってのふれあい遊びを、こどもの様子をみて関わりを続けました。少しずつの関わりを続けた結果、子どもの方から、私に興味をもち、近寄ってくれるようになりました。 また、クラスという集団にいながらも、関わりは個別なものが多いということにも気が付きました。自分でできる事が限られている乳児には、大人の援助が多く必要になってきます。そのため、個別な関わりをすることにより、子どもはその担任に愛着をもち、安心して一日を過ごすことができる様になっていきます。家庭で考えると、不快な気持ちになった時(空腹、不安、排尿等)、

快の状態にしてくれるのが母親です。乳児は「自分が困ったときに助

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けてくれるのは母親である」ということを理解し、安全基地の確認ときずなの形成に欠くことのできないものになります。保育園では担任の先生が母親の役割になり、安全基地になることで、

他児にも興味をもって関わり、社会性を身につけていく土台を作っていたのです。児童養護施設に異動して 児童養護施設に異動し、児童棟の担当になりました。私の担当は小学校2年生、3年生が2人、4年生の計4人の児童の担当をさせて頂いています。児童養護施設において、担当が変わるという事は、子ども達にとって、深刻な問題です。それは、自分のことを一番に考えてくれる担当職員が、まったく知らない人になるからです。どんな人なのか、と敏感になった子ども達から、たくさんの試し行動がみられました。わがままをいったり、急に甘えたり、ルールをかえて来たり等、毎日違う顔を見せてくる子ども達に、戸惑いました。しかし、これまで、保育園で学んだことをいかし、一緒に遊ぶこと、

自分に興味を持ってもらえるような関わりを意識しました。外でサッカーやドッヂ、バスケットをする、たくさん良い所を見つけてほめる、寝る前には、部屋に行き、添い寝をしたり、マッサージをしたりとスキンシップをとるという事を心がけました。すると、徐々に変化がみられました。子どもたちから声を掛けてくれる、また、過去の話もしてくれるようになりました。幼いころに、両親からもらうべき愛情が満たされなかった子、虐待

に会ってしまった子にとって、スキンシップの重要性を感じました。4.おわりに 保育園での経験を通して、遊びたい、褒められたという気持ちはみんなが共通していることだとわかりました。今後は、気になる行動に目が行きがちですが、いいところを見つけられる目を養い、褒める言葉が多くでるよう、意識していきたいです。子ども達から信頼される保育士として、日々、努力をしていこうと思います。

参考文献子ども虐待への新たなケア    杉山 登志郎   学研「文武両脳」の育て方      林  成之    小学館

認知症ご利用者の睡眠について

ミス・ブール記念ホーム

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介護職 榎本祥子

ミス・ブールに小規模特養ができて今年は3 年目にあたり、私自身は従来型特養から小規模特養に異動になって2年目になります。小規模特養は2 階建で4ユニットから成り、私の所属する春風は2階の西側に位置しています。従来型と違う点は、部屋が個室なのでプライバシーが保たれ、ユニット毎に風呂があり、1ユニットの人数が10 名程度と少ない為、よりきめ細かいケアができることです。今回は春風ご利用者のSさんについてお話したいと思います。Sさ

んは95才、女性。アルツハイマー型認知症の方です。車いすを自走され、つかまり立ちはできますが、歩行はほとんどできません。アルツハイマー型認知症は脳の神経細胞が減少し、脳の委縮が起こることで記憶障害、見当識障害等が起き、不安・焦燥、せん妄、興奮、睡眠障害、抑うつ状態などが見られるようになります。Sさんは人と話をすることが好きで明るく楽しい方なのですが、いつもご家族のことを心配されており、昼夜問わず帰宅願望があるため、夜は一睡もされないことがよくありました。夜に興奮されているときはご自分の子供を探されていることが多く、「淳ちゃん、まさみちゃんどこにいるの?」と大声で呼びながら他のご利用者の居室に入って行かれます。また、真夜中だろうと出口を探してうろうろされ、車いすから立ち上がり転倒されることもよくありました。お年寄りの転倒は骨折や寝たきりにつながるので注意が必要ですが、見守りを強化するにしても、他のご利用者も見なければならず限界があります。Sさんは一旦横になられてもすぐに起きられ、ベッドから車いすに移ろうとされます。ベッド横には足元センサーを置いているので、Sさんが起きられるとすぐに部屋に向かうようにはしているのですが、その時職員が遠い所に居たり、他のご利用者の対応にあたっていると間に合わないことがよくありました。そこでご家族に相談し、ベッドの使用をやめ、畳に布団を敷くという対応に変えさせて頂きました。その後転倒リスクは減りましたが、Sさんはもともと内出血ができやすい方だったので、布団から這って出てこられるようになったことでそれまで以上にひどくなってしまいました。そして一睡もされなかった翌日は決まってハイテンションになり、転倒されて事故につながることが多いことに気付きました。そのような日の夜はさすがに眠られることが多いのですが、今度は反対に眠りすぎて次の日は昼まで起きられず、起きたとしても1 日中傾眠がちになってしまいます。食事もあまり取れず、服薬することも難しくなります。また、今年の2月、左の下腿に血栓が見

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つかったことから血液をサラサラにする薬を飲むようになり、ますます内出血ができやすくなってしまいました。お年寄りの皮膚は薄く、乾燥しやすいので、内出血の所を掻くとすぐに剥離してしまいます。打撲防止にアームカバーをつけていますが、はずされてしまうことも多く、常に内出血ができている状態にありました。不眠により、一旦睡眠のサイクルが崩れると、元に戻るには数日がかかってしまいます。これらのことから、夜間しっかりと安定した睡眠を取ることができればたくさんの問題が解決できるのではないかとの思いが強くなりました。 一般的に、人は年を取ると眠る力が弱くなり、睡眠が浅くなると言われます。重度のアルツハイマーになると連続して1時間の睡眠、覚醒の状態を維持できないともいわれています。そして疲れやすくなる為、早寝、早起き傾向になり、夕方に疲労がたまることによって就寝までに、不安・徘徊・興奮などがみられることが多くなります。そのため昼寝をしてしまい、夜寝られなくなる場合、昼寝をしないような工夫も必要となります。 睡眠パターンを整えるためには次のようなことが有効といわれています。

①就寝環境を整える(室温、照度)②午前中に日光を浴びる③入床・覚醒時間を規則正しく整える④決まった時間に身体運動をする(入床の4 時間以降は避ける)⑤カフェイン・アルコールの摂取は避ける⑥ 痛みや痒みに十分配慮する等があります。

① 就寝環境を整える(室温、照度)人の体は放熱され、体温が下がった時に眠りに入るので、本来は寝る前に風呂に入れたら一番いいのですが、現状では無理なので足浴や手浴を行える時はするようにしています。しかし落ち着かれない状態の時はじっとしていることができないのであまり行えていません。人が眠りに入るのに良いと言われる部屋の温度は夏が25 ~27 度、冬が14 ~20 度と言われているので夏は寝る少し前にこの温度にして寝具を冷やしておき、眠られたら上げるようにしています。香りも眠りに効果があると言われているので、安眠や心を落ち着かせる効果があると言われているラベンダーやスイートオレンジの芳香剤やスプレー

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を使用しています。また寝る前には部屋を少し暗くするようにしています。② 午前中に日光を浴びる 日光を浴びることで、自律神経に影響を与え、交感神経を活発にし、血圧や体温を上昇させて体を覚醒させる効果があります。眠気をもよおすメラトニンというホルモンは、日中に光を浴びることで作られ、夜になって暗くなると分泌を始めます。毎朝、ベランダに干している洗 濯物を職員が取り入れているのですが、その時にSさんも一緒に行って日光浴をしてもらうことにしました。また、ベランダで栽培しているプチトマトを収穫してもらったりもしています。日中は中庭や玄関に咲いている花を見に行く時もあります。機嫌が悪い時も花を見ると穏やかになられることがよくあります。ご利用者は基本的に外に出ることが少なく室内にとじこもりになりがちですが、ユニットの全ご利用者が1 日1 回は外の空気に触れられるような機会を作り、めりはりのある生活を送れるようにしていきたいと思っています。③ 入床・覚醒時間を規則正しく整える 起床時間は朝食に合わせて7 時頃に起きていただいていますが、無理やり起きて頂いても朝食を食べて頂けないと意味がないので、気持ちよく起きられるように、起きる少し前にはカーテンを開け、光を取り入れるようにしています。④ 決まった時間に身体運動をする

Sさんは肩や腕に痛みやしびれを訴えられることが多いので上半身を動かす運動をすることは難しいのですが、日頃から廊下を車いすで自走され、隣のすずらんユニットとの間を行き来されています。また、従来型特養に散歩に行く時もあります。他のユニット職員と会い、話をされると、普段とは違う楽しそうな顔をされることが多いので、よい気分転換にもなっています。⑤ アルコール、カフェインの摂取を避ける 給茶・おやつ時はコーヒー、紅茶も飲まれ、チョコレートもお好きではありますが、夕方以降は麦茶などノンカフェインの飲み物を飲むようにしています。夏場は脱水や脳梗塞を防止するためにも寝る前にお茶を飲んでいただいていますが、不穏な時は水分を取りすぎる傾向にあり、その時は何度もトイレに起きられることがあるので飲みすぎには注意する。⑥ 痛みや痒みに十分注意する 体の痛みや痒みは不眠の原因の1 つです。Sさんは身体の痒みを訴えられることが多いので、就寝前には痒み止めを塗布しています。ま

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た、腕のしびれを訴えられる時は、背中に子供をおぶっているせいだと思われています。このような時は傾聴し、安心できるような声かけをし、肩を温めるなどして痛みを和らげるようにしています。これらの試みの結果、100 %にはまだまだ及びませんが23 時頃ま

でには入眠されることが以前よりは多くなったように思います。頓服薬として向精神薬を飲まれる時もあるので、その効果もあるとは思いますが、以前は服薬しても朝まで眠られないことが多かったです。お年寄りは薬が体内に残りやすく、次の日まで影響が出やすいので安易に使用せずになるべく少なくする方向にしていければと思います。これらの不眠の原因を一つ一つ解決していくのも大切ですが、落ち

着いて過ごして頂く為に一番大切なのは職員の声かけだと思います。Sさんはこちらに入所される前はデイサービスに来られていたので、その時の記憶から「夕方になると家に帰れる」と思われているのかもしれません。しかしSさんの『帰りたい家』というのは昔自分が子供の頃に住んでいた箕面の家であり、現在息子様が住んでおられる高槻の家ではないので、息子様の家に帰れば解決する問題ではありません。日中も帰宅願望は強く、職員が「今日は遅いから泊まって明日帰ったらどうですか」等の声かけに一旦は納得されて「じゃそうするわ」と言われるがその直後に「どこから帰ったらいいの?」とすぐに忘れてしまわれ、同じ質問を何度も繰り返されます。Sさんのお部屋には家から持ってこられたソファや机等が置かれていますが、「ここは私の部屋じゃない」とよく言われます。今後の課題としては、個室という利点を活かしてここが自分の居場所だと思っていただけるような環境作りを行うことと、少しでも安心して生活して頂けるような声かけをすることを目指していきたいと思います。また、今回の問題をユニット職員全員が認識してこの結果につなげていけたように、今後も職員1 人1 人が問題意識を共有して行動し、次の成功体験に結び付けていけたらと思います。

参考文献高齢者に多い不眠のパターン、睡眠障害とその対応 田中秀樹、季刊認知症介護 Vol14,no4認知症高齢者に対するアロマテラピーの睡眠効果に関する2 症例の検討 桑原百合子他 厚生連医誌 第18 巻1 号

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『 地 域 包 括 支 援 セ ン タ ー が 行 う 介

護 予 防 教 室 に つ い て 』

清 水 地 域 包 括 支

援 セ ン タ ー  

    看 護 師   濵 岡

由 加

<はじめに>2025 年には団塊の世代が75 歳以上となり、3 人に1人が65 歳以上、5 人に1人が75歳以上になります。今後、高齢化が進むと医療や介護を必要とする方がますます増加しますが、現在の我が国の医療・介護サービスの提供体制のままでは十分に対応できないと考えられています。このため、住み慣れた地域で長く暮らすことができるよう、医療・介護ともに早急な改革が必要といわれています。その中で介護予防の視点でのとりくみが年々重要視されるようになってきました。介護予防とは、①高齢者が要介護状態等となることの予防または要介護状態等の軽減もしくは悪化の防止を目的として行うもの②生活機能の低下した高齢者に対しては、リハビリテーションの理念を踏まえて、「心身機能」「活動」「参加」のそれぞれの要素にバランスよく働きかけることが重要であり、単に高齢者の運動機能や栄養状態といった心身の機能の改善だけを目指すものでなく、日常生活の活動を高め、家庭や社会への参加を促し、それによって一人ひとりの生きがいや自己実現のための取り組みを支援して、Q OLの向上を目指すものをいいます。清水地域包括支援センターは高槻市より委託を受けて設置されています。地域包括支援センターの4 つの事業① 介護予防ケアマネジメント(介護予防事業に関するケアマネジメ

ント)② 総合相談支援 地域の高齢者が自立した生活を営む上での幅広い

相談に応じ、専門性を発揮した必要な助言や支援を行うための体制を整え、苦情、認知症高齢者、虐待、消費者保護に関する相談

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にも適切に対応する。③ 権利擁護事業 実態把握や相談などから、虐待の防止、権利擁護

を図る必要が生じた場合は、成年後見制度の活用や虐待への適切な対応をとる。

④ 包括的・継続的ケアマネジメント 高齢者の状態の変化に対応した長期継続的なケアマネジメントの後方支援を行う。

<高槻市の介護予防事業について>・一次予防事業…65歳以上の方すべてが対象・二次予防事業…生活機能の低下のおそれがある方が対象(くらし

の元気度チェックリストで運動、栄養、口腔などの項目に該当された方→くらしの元気度チェックリストとは:25 項目の質問項目からなり、生活機能の低下を認め、要支援・要介護状態となるおそれのある65 歳以上の方のスクリーニングテストのこと)。チェックリストは今年度、西暦偶数年生まれの65歳以上の要介護認定を受けていない方約40000人へ郵送。○一次予防事業の内容:・ますます元気クラブ…地域の福祉委員が中心となって実施。高槻市オリジナル「ますます元気体操」を中心に長寿生きがい課や包括支援センターの講話などを開催。高槻市では37 地区中、26 地区が開催されています。・包括支援センター開催の介護予防教室。・出前講座や介護予防イベント、講演会の開催等。・ますます元気体操自主グループの支援:現在120グループ→目標300グループ。・健幸ポイント事業:市が指定する健康づくりや介護予防に関する教室や健診に参加しポイントをためると記念品と交換したり、民間保育園へ寄付することができます。○二次予防事業の内容:ますます元気教室…市内の公民館や老人福祉センターなどで週一回の頻度で3ヶ月間実施する集中講座。1年に3クールあり、二次予防事業対象者に案内を郵送し参加を募っている。運動、栄養、口腔や認知症予防等を中心に介護予防プログラムを実施。参加者には教室開始前にアセスメントの為、地域包括支援センターより訪問面接を行っています。

<清水地域包括支援センターでの取り組み>○元気クラブは圏域内で4地区開催。真上地区・北清水地区は月1回、

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北阿武野地区(南平台)・清水地区は月2回開催。長寿生きがい課のフォローは年5回なので、それ以外の回に地域包括支援センターから健康に関する話題をお話ししています。○ 包括主催の介護予防教室:H25年まではおおむね年4回程度の実施回数でしたが、H26年度より月1回の開催となりました。開催場所は生活支援センター光3階。・H23年度は「誤嚥のメカニズムとその予防法について~歯科衛生士による講演と実習」という内容で1回開催。14名の参加。・H24年度は「若返りヨガ~心も体もリフレッシュ~」として9月~11月に月2回の3か月6回コースで開催。24名の参加。延べ参加数:96名。・H25年度は月1回、6か月間で開催。29名の参加。延べ参加数128名。参加者の地域内訳:《 圏域内 》          《 圏域外 》松が丘1,2丁目  4名    松が丘3,4丁目  8名 真上町       2名    安岡寺町      7 名塚脇        2名    その他       3名 宮之川原元町    1名               西之川原      1名 計        11名       計     18名

合計 29名

 内容)1回目: 楽しくストレッチ・ウォーキング指導+レクレーション    2回目: ますます元気体操+膝痛予防体操    3回目: 音楽療法    4回目: ますます元気体操+腰痛予防体操    5回目: ヨガ風ストレッチ体操    6回目: ますます元気体操+脳力アップ体操・H26年度は4月から毎月開催しています。20名の参加。8 月現在で5 回実施し、延べ参加数77 名。   《 圏域内 》        《 圏域外 》松が丘1、2丁目 4 名       松が丘3,4丁目  11 名塚脇       1 名       安岡寺町      2 名宮之川原元町   1 名                    西之川原      1 名

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計        7 名          計      13 名 合計 20 名参加者の募集については市より、なるべく地域住民の参加が望ましいとのことで、今年度より広報での募集は行いませんでした。北清水地区(松が丘、安岡寺 町)の参加者が多く、真上地区、北阿武野地区(南平台)の参加者はおられません。これはH24 ・25 年度とますます元気クラブで参加周知を行ったためです。真上地区、北阿武野地区でも周知しましたが、会場が遠いという事から参加申し込みはありませんでした。募集方法:昨年度の参加者へのアンケート結果より、継続して行いたいとの意見が多く聞かれたため、これまでの参加者に案内を郵送し、参加を募りました。受付時には案内が届いた方から話を聞き、申し込まれた方もおられました。内容)4 月:ますます元気体操+グループワーク(テーマ:私の健康法)   5 月:ますます元気体操+タオル体操+グループワーク(介護

予防教室でやってみたい・学びたいこと)   6 月:ますます元気体操+呼吸エクササイズ(普段の生活で呼吸を意識しよう)   7 月:笑いヨガ(講師の先生に依頼)

8 月:ますます元気体操+グループワーク(次回の介護予防教室内容を決める)今年度の教室では、元気体操の後に参加者が意見を発表する時間を設けました。なるべく答えやすいテーマを選定し、参加者間のコミュニケーションの場となるようにしました。発言の機会を作ることで自主性を引き出し、今後につなげて行きたいという意図もあります。楽しい教室づくりを心掛け、継続性を持たせるようにしています。今後の課題教室の方向性:包括主催の介護予防教室の位置づけがどのようなものか市から明確なものは提示されていません。元気体操を行うだけでは、地区福祉委員が行っているますます元気クラブと違いがありません。高槻市はますます元気体操を実施する自主グループを300 作ることを目標としています。包括主催の予防教室がその中の1 つであるだけでよいのか、自主グループを作っていくものなのか定まっていない状況です。社会資源として考えるのであれば、圏域の地域課題を踏まえたうえで開催場所や頻度を再検討する必要があります。清水地域包括支援センターの圏域は坂道や階段など勾配が多く、バス停までたどり着

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けない方も多くみられます。そのため通院や買い物などの外出困難となり、閉じこもりになりやすい環境です。また、ひとり暮らし高齢者や高齢者世帯が多く、空き家も増えており地域との関係が希薄になりつつある状況です。歩いて行ける距離で健康な体作りを、と考えると、介護予防教室の開催場所は地域の自治会館レベルになります。そして開催頻度に関しては月1 回ではなく月2 回や毎週の開催も必要となることが考えられます。包括支援センターがすべて実施することは現実的に困難です。圏域の高齢者の方々は健康意識が高く、積極的に取り組まれます。その方々の意識を活かし、身近な地域で介護予防に取り組んでいただけるよう、介護予防教室の参加者および地域に向けて自主グループの啓発を行ってゆきたいと思います。介護予防の取り組みからこれからの地域包括ケアシステムの構築の一助になればと思います。

参考文献:・平成26 年2 月 厚生労働省老健局 全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料より一部抜粋・monthly 介護保険情報H26年7 月号 社会保険研究所発行・地域看護診断 金川克子・多高悦子 編者 東京大学出版会 2011年・科学的な看護実践とは何か( 上 )  薄井坦子 著 現代社 1989年 

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当園で療育を受けた自閉症スペクトラム児の発達について~K式検査からみることばの発達~

うの花療育園 言語聴覚士 山本 基恵1.はじめにうの花療育園の入園児のうち、自閉症スペクトラム児は約7 割を占

め、多くの保護者は、「3 歳になってもことばをしゃべらない」「ことば数が、増えない」 言っていることの理解が出来ない などを心「 」配し、ことばの遅れの改善を求めておられます( 萩尾、2013) 。定型発達の場合、概ね1 歳前後に初語が出現すると言われています(石田宏代、大石敬子編、2008 )。ことばが遅いと言われることの多い自閉症スペクトラム児も初語年齢が1 歳4 ヶ月程度(山本、2012 )と定型発達に沿った発達を示す子もいます。当園に在園する自閉症スペクトラム児の多くは、発達の遅れを伴っ

ており、言語聴覚士(以下ST)は、ことばの発達を支援するために、以下のような指導を行なっています。一人ひとりの子どもとの信頼関係を大切にする中で、子ども達の発達状況を確認しながら、給食場面での摂食指導、個別で実施する聴力検査や構音検査、個別セッションにおける遊びを通じての言語指導や構音練習など、摂食機能の改善やコミュニュケーション能力を向上させる指導を実施しています。今回、3 年間継続して在籍した子どもたちの発達検査の結果から、

STが実施する自閉症スペクトラム児に対することばの指導の方向性を検討し、指導の手がかりを得たので報告します。

2.対象及び方法 対象児は平成19 ~23 年度にうの花療育園に在籍した自閉症スペクトラム児96 名中、3 年間継続して療育を受けた自閉症児スペクトラム児37 名の内、新版K式発達検査 ( 以下K 式 ) が数値化できた16 名(男児13 名、女児3 名)です。入園時の平均年齢3 歳6 ヶ月、卒園時は6 歳6 ヶ月でした。この子どもたちについて、

(1)対象児の入園時(1 年目)の発達水準を正常(70 以上)、軽

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度(51 ~69 )、中等度(31 ~50 )、重度(30 以下)に分類し、①入園時と卒園時の発達年齢の変化 ②入園時と卒園時の発達水準の変化 ③認知・適応領域、言語・社会領域の2 領域の発達水準の変化を調べました。(2)K 式発達検査の各領域の下位検査項目について、①対象児16名の通過率②言語・社会領域の発達水準が改善した7 名の通過率を調べました。

3.結果と考察(1)対象児の発達年齢と発達水準について①入園時と卒園時の発達年齢の変化 入園時の全領域の発達年齢(DA )の平均値は25 ヶ月(2 歳1 ヶ月)、発達指数(DQ )の平均値は52 でした。卒園時についてはDA の平均値は42 ヶ月(3 歳6 ヶ月)、DQ の平均値は57 でした。発達年齢は、入園時は2 歳1 ヶ月、卒園時は3 歳6 ヶ月と変化しました。DQ を見ると入園時、卒園時とも平均DQ は軽度水準で、大きな変化はありませんが、発達水準を保ちながら成長していったと言えます。②入園時と卒園時の発達水準の変化 入園時の発達水準別内訳は、正常 3 名( 19 %)、軽度 4 名(25 %)、中度8 名(50 %)、重度1 名(6 %)でした。卒園時の発達水準の変化は、正常3 名は水準に変化はなく、軽度の4名の内、1 名が正常域に、中度8 名の内3 名が軽度にと16 名中4 名(25%)と発達水準が上昇し、明らかに発達が促進されたといえます。軽度の4 名中1 名が中度へ、中度の8 名中1 名が重度へと2 名 (12.5%) 水準が下降し、発達の停滞が見られました。水準の変化がなかったのは、正常3 名と軽度2 名、中度4 名、重度1 名の計10 名(63%) でした。 16 名中14 名(88%)の子どもが、改善したり、発達水準を保ちながら成長していました。先行研究でも通園施設に通う自閉症スペクトラム児の70%以上が発達水準が卒園時に上昇またはほぼ同水準をたもっている( 萩尾、2000) ことから、幼児期の療育は子どもの発達維持・促進に有効だと考えられます。③認知・適応領域、言語・社会領域の2 領域の発達水準と発達年齢の変化認知・適応領域の入園時の発達水準は、正常域の子どもは順調に発

達 し、 軽 度 の子 どもは、 8 名 中 2 名 (25%) が正 常 域 に、 3 名(37.5%)が同水準、3 名 (37.5 % ) が低下していました。中度の2

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名は、1 名 (50%) が軽度に、1 名 (50%) が同水準でした。重度の3 名は同じ水準でした。認知・適応領域で明らかな改善を見たものは、軽度の2 名と中度の1 名計3 名 (19%) でした。言語・社会領域では、正常域の子どもは同水準でした。軽度の1 名

は正常域になりました。中度の6 名中1 名 (17%) は正常域に、2 名(33%) が軽度に改善、2 名 (33%) が重度に低下しました。重度の6 名中1 名 (17%) は軽度に、2 名 (33%) は中度に改善、残り3 名 (50%) は同水準でした。言語・社会領域は16 名中7 名 (44%) が改善していました。以上のことから、認知・適応領域は軽度 中度に改善するもの・が3 名 (19%) みられたものの、言語・社会領域のほうが7 名 (44%) と多く、2 歳児対象の母子通園施設療育においても言語社会のほうが改善しやすい傾向があり( 西村、2006) 、当園でも同様な結果を得ました。認知・適応、言語・社会領域の発達年齢の変化について、2 領域の

平均発達年齢の変化を見ると、認知・適応領域は正常が入園時 2 歳6 ヶ月、卒園時には5 歳2 ヶ月と2 歳8 ヶ月の伸びを示しました。軽度は入園時2 歳3 ヶ月、卒園時には3 歳11 ヶ月と1 歳8 ヶ月の変化が見られました。中度は1 歳10 ヶ月が2 歳8 ヶ月と10 か月の、重度は10 ヶ月が1 歳7 ヶ月と9 ヶ月の緩やかな伸びでした。重度以外は発達年齢が2 歳を超え、入園時と卒園時に大幅な伸びが見られました。言語・社会領域では、正常が入園時 2 歳10 ヶ月が卒園時5 歳3 ヶ月、軽度が1 歳4 ヶ月が3 歳3 ヶ月と変化しました。中度は1 歳2 ヶ月が2 歳8 ヶ月、重度が1 歳2 ヶ月が1 歳6 ヶ月、言語の伸びは緩やかでした。障がいのある子ども達は、認知発達のほうが言語産出よりも先行することが多いと言われています(小山、2000 )が、認知水準が2 歳を超えていたものが言語発達が促進されやすいと言えます。ことばの遅れが目立っていた軽度、中度の子どもは、認知・適応領

域が、言語・社会領域よりまさっていたことから、先ず認知がのびて、それ追随するように言語は伸びて言ったといえます。このことから、ことばの遅れを有する子どもたちは、先ず、認知 ( 遊び) を伸ばしていくことが言語を発達させることにつながるといえます。

(2) 姿勢・運動、認知・適応、言語・社会領域の各検査項目別通過率の変化①対象児16 名の通過率について全対象児の下位項目通過率、入園時は、K式検査の全領域の発達年

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齢の平均値は2 歳1 ヶ月でした。発達年齢に比べて、50 %未満の通過率を示す項目について姿勢・運動領域はありませんでした。認知・適応領域では1:3 ~1:6 の【2 個のコップ】37 %(6 名)と1:6 ~1:9 の【3 個のコップ】31 %(5 名)、言語・社会領域では1:6 ~1:9 の【身体各部】44 %(7 名)でした。入園時では姿勢・運動領域では【飛び降り】や【交互に足を出す】など発達年齢以上の運動能力があることがわかりました。認知・適応領域では、【積木の塔8 】【入れ子5 個】など物への興味があり、検査道具を直接、手指操作で遂行できるような課題は通過しています。検査者の行動を注視し、指示を理解する課題や目の前のものを使っての模倣力はありますが、注意の集中が出来ない傾向にあります。言語・社会領域では、言語理解は【絵の名称Ⅰ】の物の名称レベルで獲得しているものの、【身体各部】のようなことばによる指示に応じることが難しい傾向にあります。以上のことから、入園時の子どもは、運動発達には遅れはなく、状況を理解し、単純な動作を模倣しています。しかし、ことばを話す子どもは半数以上いるものの、ことばだけの指示に応じにくいといえます。卒園時については、K式検査の全領域の発達年齢の平均値は 3 歳

6 ヶ月でした。姿勢・運動領域については3:0 ~3:6 の【ケンケン】が56%(9 名)の通過率でしたが、依然半数近くが難しいことがわかりました。認知・適応領域では入園時に通過できなかった【 2 個のコップ】94 %(15 名)と【3 個のコップ】88 %(14 名)で通過しています。模倣力がつき、相手の意図を理解したみたてなどの象徴機能の育ち( 【トラックの模倣】 ) や、注意の集中や複数の視覚刺激の記憶力が( 【2 個のコップ】【3 個のコップ】 ) 育っていると言えます。しかし、発達年齢に比べて 3:0 ~ 3:6 の【門の模倣例後】44 %(7 名)が低い通過率となっています。言語・社会領域については、2:0 ~2:3 の【絵の名称Ⅰ5/6 】63%(10 名 ) 、2:6 ~3:0 の【絵の名称Ⅱ5/6 】63 % (10 名 ) 、3:6 ~4:0 の【色の名称4/4 】63%(10 名 ) などが良好でした。発達年齢に比べて通過率の低い課題では3:0 ~3:6 の【表情理解Ⅱ】37 %(6 名)、3:0 ~3:6の【短文復唱】25 %(4 名)、【性の区別】37 %(6 名)、【了解Ⅰ】31 %(5 名)でした。卒園時の子どもは、姿勢・運動領域でみられるような運動能力はさ

らに伸びているものの協応動作が難しい子どもが目立ちます。認知・適応領域では課題への集中時間が増し、やや複雑な模倣力も育っていました。言語・社会領域では、語彙数も増え、視覚的手がかりがないことばによる理解力はついてきましたが、表情理解など相手の感情を

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読み取ったり、ことばで説明をしたりすることはまだ難しい状況と言えます。

1 歳6 ヶ月でことばが全くない子どもは3 歳では50 %、1~4語獲得していた子どもは、70 ~80 %はことばを獲得している ( 平岩幹男、 2006) という先行研究がありますが、当園の子どもたちもことばを獲得したものが多く見られました。しかし、相手の状況を理解し、ことばでやり取りする力は、育ちにくいようでした。子ども達は、基本的信頼関係を持つ人とのコミュニケーションを基盤に、自分の欲求が満たされ、意思が伝わる経験を通して、自分が意図としたことをことばで伝えようとします。そして、1 語発話期から2 語発話期において、遊びが感覚運動的遊びから、物の機能を理解した遊びやふり遊びなどの象徴遊びが出てきます(小山・神土、2004) 。このことを踏まえて、自閉症スペクトラム児の認知機能を伸ばし、それが言語機能の発達を促すとしたら、遊びを通じての療育は、言語機能の促進につながるものと言えます。②言語・社会領域の発達水準が上昇した子ども7 名の各検査項目の通過状況 表4 の通過率 () 内は、この7 名の下位検査項目の通過率を示します。入園時は認知・適応領域では【2 個のコップ】【3 個のコップ】が1名(14 %)と注意の集中が持続しにくい様子がありました。また、言語・社会領域では【指さし行動】が4 名(57 %)、【語彙3 語】が6 名(86 %)、【絵指示】が4 名(57 %)、【身体各部】が3名(43 %)、【絵の名称Ⅰ3/6 】2 名(29 %)とことばが出始めた子どももいましたが、指さしを獲得してもことばでの課題に応じにくい子どもが約半数いました。卒園時に通過率が高かったものは認知・適応領域では【2 個のコッ

プ】【3 個のコップ】が7 名(100 %)で、注意が持続し、人に応じることができ、また、言語・社会領域では【指さし行動】が 7 名( 100 %)、【語彙三語】が 7 名( 100 %)、【絵指示】が 7 名(100 %)、【身体各部】が7 名(100 %)、【絵の名称Ⅰ3/6 】7名(100 %)と指さしを獲得し人とのやりとりのなかでことばを使用する様子が見らます。入園時課題応じにくかった子どもが、指さしやことばを人とのコミュニケーションの中で上手く使用できることで、課題に応じやすくなり、言語・社会領域を向上させることになったのではないかと考えます。

4.まとめ

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①うの花療育園に3 年間通園した子ども達は、88 %以上が、発達水準が向上又は維持されていました。改善しやすいのは、軽度から中度の発達水準の子どもたちでした。②言語発達が、改善しやすい子どもは、入園時の認知・適応領域の発達年齢が、2 歳を超えており、軽度中度の子どもは、認知・適応領域が、言語・社会領域に比べて高いことがわかりました。③認知・適応領域に比べ、言語・社会領域の変化が大きいことがわかりました。④各領域の下位検査項目別通過率の変化から見られる発達の特徴として、子どもたちは視覚的手がかりのある課題には応じやすいが、注意集中が短い傾向にあり、語彙はあるもののことばの指示に応じにくい状況でした。卒園時は集中力がつき、複雑な模倣が可能になり、語彙は増えてきますが、相手の感情を読み取ったり、ことばで説明する力が弱いという特徴が見られました。⑤言語・社会領域の発達水準が向上した子どもについては、指さしと有意味語を獲得し、ことばでの指示に応じやすくなることが分かりました。以上の結果を踏まえて、自閉症スペクトラム児のことばを伸ばすた

めに、STの個別指導の中に遊びを積極的に取り入れ、子どもの発達年齢を考慮したプログラムを作っていこうと思います。

<引用・参考文献>萩尾藤江 2013  うの花療育園10 周年記念誌石田宏代、大石敬子編 2008  言語聴覚士のための言語発達障害学山本基恵 2012  自閉性障害と発達について 日本コミュニケー

ション障害 学会第38 回学術講演会 学会発表より萩尾藤江 2000  子どもは地域で生きるー乳幼児健診を通して子ど

もの発達を考えるー、マママとまま、8巻、アカデミア出版

西村朱美 2006  療育教室に通う2 歳児の発達経過        川野道夫編 人とことばの臨床  法蔵館

小山正編 2000  ことばが育つ条件 培風館平岩幹夫 2006  乳幼児健診ハンドブック 診断と治療社小山正 神土陽子 ・ 2004  自閉症スペクトラムの子どもの言語 ナ

カニシヤ出版

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保護者支援のあり方高槻市立うの花療育園 保育士 松倉 佳世

■はじめにうの花療育園には、対人面に課題を持つお子さんが多く、お子さん

自身から親に関わりを求める事が少ない事や子どもから期待したような反応が返ってこない事で 我が子に受け入れられていない″ という‶悩みを持つ保護者の方もおられます。また、初期の母子療育を受けても、期待したような子どもの変化が見られにくいと、その悩みは更に深まっていきます。このような子どもの保護者に対して、療育者として、どのように保護者の方と向かい合ったらよいか、2 年目に担任を持ったD ちゃんとその保護者の方とのやりとりから学んだ事を発表したいと思います。母親 ( 今回のケースの中では、母親が育児の中心でした) の悩みの中でも特によく話し合った排泄・対人関係の内容とその支援について、連絡帳等のやりとりをもとに整理しました。■D ちゃんについて

D ちゃんは、中度発達遅滞を有する自閉症の女児です。当園に通い始めて2 年目になり、母親への分離不安は見られないものの、母親が園に来た時やバスの送迎時等、母親の顔を見て嬉しそうに駆け寄る姿が見られる様になってきました。排泄面は、紙パンツを使用し、事前・事後の報告はありませんでした。偏食が強く、給食では、ご飯、パンといった主食を好み、調理法によっては肉、魚も食べましたが、療育者が勧めても野菜等は口にしませんでした。睡眠のリズムは乱れがちで、エアコンの音や人の動きに敏感に反応し、深夜に起きてテン

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ションが上がってしまうという様子が見られました。集会や設定活動には、落ち着いて参加する事が難しかったのですが、お絵描きや風船、絵の具あそび等好きな活動には、短時間ではありますが参加する事が出来ました。歌を歌う事が好きで、好きな療育者を見つけると決まった歌を歌い、一緒に歌う事を求めるという形で大人と関係を持とうとする姿が見られました。■母親の悩み(1) 排泄について①排泄に対する母親の悩み母親は、年少時より排尿が自立しない事を気にされていましたが、

D ちゃんのこだわりの強さや緊張の高さからトイレトレーニングは、思うように進んでいませんでした。一定時間膀胱におしっこを溜めておくという身体面の力はついているものの、紙パンツを履いている時にのみ排尿をしていた事や母親の話から推測される様にD ちゃんは排尿する時の感覚を不快なものとして感じている様子が見られました。 年中時には、同じクラスの他の子どもの姿や就学を意識し、焦りを感じ、更に排泄の自立に向けて、母親の気持ちは強くなっている様子が見られました。また、便座での排泄を拒むD ちゃんに対してどの様にトイレトレーニングを進めていったらよいか悩んでおられました。②療育者の対応

D ちゃんの現状から懇談の中で母親と相談し、D ちゃんにとってトイレが  〝嫌な場所 ″ になる事を避ける為に、園のトイレに慣れ便座に座るという経験を積む事から取り組みました。便座に座り続ける事が難しかった為、10 カウントする事を取り入れると〝おしまい″の見通しを持って座る事が出来るようになりましたが、排泄の自立に向けて、便座で排尿するという次のステップに進む事が難しかった事もあり、母親は不安を感じていました。その為、D ちゃんの現状や、なぜD ちゃんのペースで進める事が大切か等を伝えながら懇談の都度、家庭と園での様子を話し合いトイレトレーニングの開始時期を見極めていく事にしました。しかし、その後母親からトイレトレーニングを始めて欲しいという強い要望がありました。感覚の過敏さがあり、トイレでの排泄を拒んでいる姿が見られた事から、布パンツで失敗した際にも混乱するかもしれないという姿が予想された為、D ちゃんが安心できる自宅からトイレトレーニングを始める事にしました。連絡ノートには、連日自宅でのトイレトレーニングの様子が書かれており、トイレトレーニングに集中して熱心に取り組まれている様子と同時に、思うように進まない事からそのイライラした思いをD ちゃんにぶつけ

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る様子を読み取る事が出来ました。その際は、電話で母親の思いを聴き、取り組み方を話し合いました。どの時間なら取り組みやすいかを聴き取りながら一緒に考え、母親もD ちゃんも休憩できる時間をつくるようにしました。後期になるとトイレでの排尿が成功するようになり、母親も排尿の成功に手ごたえを感じていた様でした。③まとめ排泄の自立には、身体の発達や情緒の安定、望ましい食生活、規則

正しい生活から生じる健康管理等と密接に関係しています。(飯田雅子編、2007 )まずは、情緒の安定を図る為、安心できる大人との関係を作り、場を恐れない安定感を築く事から始めました。無理強いしないようにし、大人と楽しく遊ぶ経験を重ねる事から取り組みました。そして、遊びの中では身体作りに繋がる様な遊びや散歩も多く取り入れました。また、トイレトレーニングを始める時には、膀胱の機能が育ってきているか、本人の情緒の安定、模倣のモデルになる大人の存在等を考慮し、始めるタイミングを見極める事も大切であると考えます。

布パンツにおしっこが出た事が子どもにとって、失敗の経験にならない様にし、トイレに座る事が出来た時、おしっこが出た時にはしっかりと褒め成功経験を積む事が出来る様にしました。また、母親には排泄の自立に向け、子どものペースに合わせて取り組んでいく事の大切さを伝え、園と自宅での取り組みを密に連絡し合いました。同じ思いで取り組んでいる事が分かる事で母親は安心されたようでした。(2) 対人面について①対人面に対する母親の悩み入園後も母親への分離の不安が見られず、目を合わせる事も少な

かったD ちゃんですが、徐々に大人が行なう事に注目する事が出来る様になり、D ちゃんから大人に関わりを求める姿や「○○ください」等いくつかのフレーズで要求を伝える姿が見られる様になりました。「D ちゃんの伝えたい事がよく分かる様になって、困る事が減った」と言われる反面、「家事をしている時に何度も『もしもしする』と言いに来てイライラする」という訴えからも分かる様に、お互いの関わりたいと思うタイミングが合わず、母親には、D ちゃんに必要とされている事を実感できなかったり、可愛いと感じる事ができずにいる様子が見られました。②療育者の対応

D ちゃんは、1 人で遊ぶ事が多く、療育者を求める事も少ない子どもでした。その為、園ではD ちゃんと向かい合って遊ぶ事で、大人と

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遊ぶと〝楽しい″ と感じる事が出来るように取り組みました。D ちゃんが繰り返し歌う事を求めてきた時には、その都度D ちゃんと向かい合い、D ちゃんの求める歌を歌いました。そうする中で、特定の療育者を選んで〝歌ってほしい″ と要求する姿が見られるようになりました。歌う事が好きなD ちゃんにとっては、好きな大人に一緒に歌う事を

何度も求める事が、 遊ぼう″ や この人の事が好き″ という表現を‶ ‶意味していましたが、これは周囲の大人にとっては読み取る事が難しく、何度も同じ事が繰り返される為、嬉しい関わりと感じる事が出来難いものでした。母親に対してクラスでは、日々の連絡ノートで細かくD ちゃんの様

子を伝えると共に、園に来られた際には小まめに声をかけ、D ちゃんの言葉や行動の意味を療育者が言葉にして伝えるようにしました。そうする事で、「先生とD の事を話すと、D の事を可愛いと思える様になる。」といったような言葉が母親から聞かれるようになりました。③まとめ 自閉症の子ども達の中には、人との関係がうまくいかない子が多く、相手に伝えたい要求を、相手が分かる様に表現する事が難しいのです。(主婦の友社編 2010 )一方的に要求を出し、その要求に応じても子どもが笑顔にならないと、やり取りのキャッチボールは一方通行になり、子どもの要求は母親の行動を邪魔するものとなってしまいます。そして、母親は子どもの要求に応じにくくなります。しかし、D ちゃんが求めた時、求めた要求に何度も応える事を続けていく事で、Dちゃんの姿に変化が見られ、相手と向き合ったり、相手の誘いに応じる姿も増えてきました。〝大人に応えてもらった ″ 〝受け止めてもらった″ という経験を重ねる事で、相手に伝えたい気持ちが育まれていくのだと思われます。

■保護者支援のあり方体温・睡眠時間・排便の有無等を含め家庭でのお子さんの様子を記入して頂

く連絡ノートは、保護者とのやりとりの入口です。毎日のやりとりから保護者の変化や悩みに気付く事は多く、とても重要なものです。更に、連絡ノートのやりとりだけでなく、直接電話で話をする事で文面だけでは読み取る事が出来ない思いや不安を聞き取る事が出来きます。Dちゃんのケースでも母親と細かに連絡を取る事を重ねていく中で、今まで話される事が無かった思いや不満を話されるようにもなりまし

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た。1つ1つの問題が完全に解消される事は難しいですが、母親の揺れる思いに付き合いながら話を聴き、1 つ1 つ原因を考える中で、Dちゃんがどんな子どもなのか母親自身が気付かれる様子も見られました。今回の経験から療育者である私たちが子どもの事を客観的に見て、

行動の意味を言語化していく事で、保護者が子どもと向き合いやすくするきっかけとなっているのではないかという事を感じました。子どもに〝受け入れられていない″ と感じている保護者の思いを療育者が肯定的に受け止めていく事で、自分の子育てが評価された事を実感し、これから子育ての中でぶつかるかもしれない様々な壁を乗り越えていく力のひとつになっていくのではないかと考えました。保護者の持つ悩みを一緒に考え、保護者自身が子どもの事を言語化出来る様になる事で、当園を卒園してからの進路の中で必要な、子どもの事を〝周囲に発信していく力″ が育っていくのではないかと思います。その為には、まずは療育者が保護者の話をじっくり聞き、ありのままを受け止める事で信頼関係を作り、〝人に聞いてもいいんだ″ 〝助けてもらいながら子育てしてもいいんだ″ と思ってもらう事が大切です。保護者自身に自分の言葉で子どもの事を話してもらう機会を作っていく事が療育者の役割になるのではないかと思います。■最後に Dちゃんが排泄に成功した時、母親からは、〝排泄の成功で初めて我が子に受け入れられた気がした″ といったような言葉が聞かれました。今回のケースでは、母親の思いを尊重し寄り添うという形で、トイレトレーニングに取り組む事で母親にとっては自信につながる結果となりました。保護者支援を行う上で母親の状態に合わせて、支援の方法を考えますが、Dちゃんにとっては、このタイミングでトイレトレーニングを始める事が良い事なのかとても悩みました。療育者である私達は、母親の思いに寄り添う母親のサポーターであ

ると同時に、子ども達の代弁者でもなければならないと思います。ケースによってその対応は様々であり、今後も悩む事は多いと思いますが、今感じている思いを大切に、1人1人の子どもや保護者の方と丁寧に関わっていく事が出来る療育者でありたいと思います。

■まとめ<引用文献>・飯田雅子編  ( 財 ) 鉄道弘済会弘済学園著 2007  発達に遅れがある子どもの日常生活指導3排泄指導編 学研

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・主婦の友社編 2010  主婦の友新実用BOOKS  発達障害の子どもの心が分かる本 主婦の友社

<参考文献>・湯汲英史編 武藤英夫・田宮正子著 2006

発達につまずきを持つ子と身辺自立 大楊社・佐々木正美監修 2012  健康ライブラリー イラスト版 

自閉症のすべてがわかる本 講談社

 

「優先すべき介助とは」地域生活支援センター光

生活支援員 関 南

はじめに 私が地域生活支援センター光で働き始めて4 年目を迎えます。1年目は入所の海ユニットに配属になり、今年の6 月まで勤務していました。7 月からは生活介護の宙ユニットに移動になり、そちらでは自宅から光に通所されているご利用者の支援を行っています。今回は3年間働かせて頂いた海ユニットの事を発表させて頂きます。 まず海ユニットについて説明させていただきます。入所ユニットは花、星、海の三つに分かれていて、自分の配属になった海ユニットは意思疎通が可能なご利用者が7 名と、意思疎通が困難なご利用者が7 名の計14 名のユニットです。意思疎通について 意思疎通とは、一般的には「相手に考えている事を伝え、相互理解、認識の共有のなどを計る事」という意味ですが、光ではご利用者が自分の思っている事を職員に伝えられ、職員の言葉も理解できることを表しています。意思疎通は重度の身体障がいがある光のご利用者にとって容易なことではありませんが、発語ができないご利用者も、様々な方法でご家族や職員に意思を伝えています。 意思疎通の手段として、「yes 」、「no 」を伝える事が基本になり、ご利用者の障がいの程度によって様々ですが、舌を出したら

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「 yes 」出さなければ「 no 」という方法や、手を上に上げると「yes 」手を振ると「no 」という方法もあります。 その他に文字盤を使った意思疎通もあります。文字盤は「あかさたな」と50音で書かれ、「トイレ」など簡単な介助内容について書かれているボードをご利用者と職員に見える位置に置いて、ご利用者の目線を追いながら伝えたい言葉を拾っていく方法です。 私が配属になった海ユニットは意思疎通が可能な方、困難な方と半数ずつとういこともあり、双方の間を取ることが難しく、どちらの介助を優先した方がいいのか、ご利用者一人ひとりが気持ちよく日常生活を過ごして頂くには、どうすればいいのかを日々悩んでいました。なぜ悩んだのか? 意思疎通が可能な方は、自分からニーズを伝える事ができますが、意思疎通が困難な方は自分のニーズを職員に伝える事ができません。そのため介助者は、支援内容が明確な意思疎通が可能な方に支援が偏りがちになってしまいます。食事が終わって手が空いた時にご利用者から「トイレに行きたい」と声をかけられると、その方からのニーズに応えようとして、トイレ介助を行うことは自然の流れですが、ご利用者は1 人ではなく14 名おられ、トイレに行きたいと思っているのは発語の可能な方だけではありません。 私は、排泄介助に入る際にご利用者の1 日の排泄の様子を記録している表(以後、排泄表)を確認し、前回の排泄確認の時に排尿が無かった人や、オムツを使用していない人、障がいや持病の都合でトイレを待てない人を優先的に支援するように努めています。意思疎通が可能な方から「トイレに行きたい」と希望があった時には、上記のように排泄表や他のご利用者の様子を見て、他に優先しなければならない人がいれば、希望のあったご利用者に状況を説明し可能であれば待っていただくことをお願いしています。しかしそれも意思疎通ができる方にとっては、自分の事はいつも後回しだと思ってしまわれる為、私の対応はベストではないと思っていました。 そのような中で、新人職員や実習生は意思疎通が可能な方への介助に特に多く入っていることに気が付きました。理由としては、新人職員の場合自分で判断をすることが難しく、手が空いた時に何をすればいいのか分からないため、言葉で教えてくれる分かりやすいご利用者を優先するからだと思います。1人が偏らないように介助していても、他の職員が気づいていなければ、偏りはなおらないと気付き、職員全員が同じ意識をもって支援を行えるように会

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議の場で情報を共有する必要性があると感じました。K さんとY さんのケース 実際に意思疎通できる方と困難な方とではどのように支援が偏ってしまうのか、事例をもとに説明させていただきます。 K さんについて…脳性麻痺からの重度肢体不自由。意思疎通可能な方で、聞き取りは難しいが発語は可能。余暇活動の時間は居室で音楽を聴く事や、フロアで職員とお話しをしながらテレビを見たりすることが好き。今までは意思伝達装置 ( パソコン) の使用を強く希望するも、操作が困難とのことで使用できずにいたが、タブレットPC を購入し職員の操作にてメールやインターネットのやりとりを行えるようになった。ご本人としては初めてメールでのやり取りが可能になったので、職員にタブレットPC の操作を手伝ってもらうことを強く望んでいた。 Y さんについて…脳性小児麻痺による両上下肢痙性麻痺。意思疎通が困難な方で、笑顔を見せてくれる時もあるが感情は読み取ることが困難。自力で歩行が可能だが、職員の付き添いなしでフロアを歩行中に、転倒し怪我をして以降は、職員の付き添いなしでの歩行はリスクマネジメントの観点からも禁止になった。便秘気味だったが自由に歩行していたときはお腹が刺激されて排便にもつながっていて、自由に歩行ができなくなってからは、職員との歩行の時間がなかなか取れず、結果として以前のように便秘気味に戻っていた。医務からの指示で水分を多めに摂ることと、1 日1 回は歩行の時間を作るように指示がでていた。 海フロアでは、食事の前後にご利用者の排泄確認を行い、その後落ち着いた時間にご利用者の洗濯物をたたみ、トイレにオムツやパットの補充をする環境整備を行います。ご利用者も排泄確認の後は余暇活動ということで、ご自身の居室で過ごされる方やフロアでテレビを見て過ごされる方がいますが、何かをするには職員の支援が必要な方もいました。そんな時に、手が空いた職員がまずK さんに「何かしましょうか」と声を掛けK さんのニーズに答えている場面を多く見かけるようになりました。時間ができたらK さんに声をかけるといった感じなので、Y さんの歩行の支援は忘れてしまう職員が多く、1 日1 回歩けていない日の方が多くありました。それが理由かは分かりませんが、便秘が解消されず、下剤を使用しなければ排便できない日が多くなっていました。私はY さんの歩行を行うように気を付けていましたが、勤務上休みの日もあり毎日は行えません。 私は会議の場で、K さんの支援は余暇支援であるが、Y さんの歩行

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については排便の安定を図る為の支援なので、Y さんの支援を意識して行って欲しいと伝えました。会議の場で自分の意見を伝えることで、職員全員が意識できるようになり、Y さんの歩行が日々の業務の一つとしてルーティン化されてきました。一日の業務の中にY さんの歩行支援を行う担当を決め、担当職員が責任を持って支援を行えるようにしました。 しかし空いた時間にY さんの歩行支援を行うようになったので、K さんのメール作成の支援の回数は少なくなってしまいました。新たな課題と工夫 今回K さんの支援はタブレットPC の操作という余暇支援で、Y さんの方は排便の安定を図るための支援だったので、優先すべき介助が比較的分かりやすいケースでしたが、余暇活動の時間はご利用者の公平性を考えると、とても難しい支援だと考えます。 余暇活動の支援は、ご利用者一人ひとりニーズが異なり、居室で自分の時間を過ごしたいという方もいて、自分で身の回りの事が出来ないご利用者にとって余暇活動支援はとても大切な支援です。日々の生活の方で、余暇活動に当たる時間は限られていて、支援を求めているご利用者に対して公平にしていくためにはどうしていけばいいのかが新たな課題になりました。 ユニットとして、1人ひとりに平等な支援を行えるよう、ドライブや買い物に出かけた人は、その日勤務では無い職員にも周知できるようメールで報告を行うようにしました。その結果、余暇支援の偏りはなくなりましたが、自分が買い物に行きたいタイミングに買い物に行けないと思われるご利用者もいました。その時は順番に回っている事を伝えお詫びすることで納得を頂いています。 意思疎通の可能な方はその場でのニーズの聞き取りも可能ですが、しっかりと信頼関係が築けていないと、本当に望んでいるニーズを引き出すことが難しくなります。意思疎通が困難で表情も読み取りにくい方は、日々の様子をしっかり観察して、表情からいろんな事を読み取る事や、ご家族としっかりコミュニケーションを取って、そのご利用者が好きな事などご家族としてのニーズを知ることも大切な事だと気付きました。優先すべき介助とは 3年間優先すべき介助についていろいろ考えてきましたが、やはり最善の答えは出ていません。しかし自分の中でのルールは決まってきました。意思疎通が困難な方や障がい特性上待つことのできないご利用者を優先的に介助していますが、意思疎通が可能なご利用者にも、

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急ぎの場合や緊急の場合もあるので、その確認を必ず行い、待たせてしまう際はその都度、お詫びと感謝の言葉をかけるようにしました。 また夜間に他ご利用者対応中にナースコールが鳴ってしまった場合、緊急かそうでないかの確認のために急ぎの場合はコールを2回連続で鳴らしていただくようになりました。 施設での生活である以上、そのことで不快な気持ちにさせてしまうかどうかは、職員の声掛けや対応次第で変わります。意思疎通の出来る方、できない方に関わらず、ご利用者1人ひとりが気持ち良く施設での生活を送れるように新人やベテランを問わず、職員の意識を1つにし、ご利用者主体の支援に向けて相手の立場に立った考え方を常に行えるよう取り組んでいきたいと思います。≪参考文献≫人を育む人間関係論―援助専門職者として、個人として 

著者 服部祥子「心穏やかな生活を送って頂く為に」

地域生活支援センター光生活支援員  尾崎明未

はじめに 私は1 年目から現在にかけて入所の花ユニットで働かせて頂き、今年で4 年目を迎えることが出来ました。花ユニットはご利用者、職員共に女性が多く明るく笑顔が絶えないユニットで、私も毎日楽しく働かせて頂いています。 1 年目から今を通して感じているのはご利用者との信頼関係を築く難しさです。今回はご利用者A さんとの信頼関係を築くに当たり私が抱えた問題とその問題を解決する為に行った工夫をお話ししたいと思います。

A さんについて A さんは48 歳の女性です。ダウン症による知的障がいがあり、養護学校を卒業後、作業所へ通われていましたが2006 年に脳梗塞を発症され、左片麻痺が残り、車椅子で生活されるようになり光へと入所されました。右半身は自由に動くので、ご自分で車椅子を操作し、食事も右手を使いご自分で食べられ、絵などもとても上手に描き、パズルも得意な方です。日常では、ご本人の生活のリズムがあり、フロアでパズルをする時

間、職員に話かけお喋りを楽しむ時間、自分のお部屋でテレビやCD

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を楽しむ時間、ご飯を食べる時間などがあります。また、A さんは日常の変化や、初対面の人とのコミュニケーション

が苦手です。私達でも人見知りをする人も少なくないと思います。Aさんも障がい特性上、人への不安が強いのだと考えています。日常の変化を苦手とする理由として、見通しが立たず予想が出来ない事に対しての不安が強くパニック状態になるからだと考えています。

A さんとの関わりでの困難 A さんは新しく入った職員に対して試し行動をされます。私もその試し行動からくるA さんの言動に戸惑うばかりでした。色々な支援の場において強い拒否があり、私に対しての他傷行為がみられました。私はその時の反応にも戸惑いを抱え、その当時は「痛いです。やめてください。」と固い表情で言うしか出来ませんでした。でも、そうすることでさらに、A さんを怒らせてしまい、周りの物を投げるなどパニック状態となり、私にはどうにもできない状態が続いていました。その状況に悩み、何がいけないのか必死に考える毎日でした。先輩

に相談すると、「A さんが不安定な時は無理に関わらずに先輩に代わってもらって、落ち着いて一緒に何か楽しめる時に、沢山関われば良い」と言って頂き、それからは不安定な時は関わらずに、絵を書いたり、パズルが難しくて分からないと言われたときに必ず一緒に遊んだり、考えたりするようにしました。

先輩からのアドバイス A さんが必要とされる時に沢山関わる事で2 年目の終わり頃には少しずつ出来ることが増えてきたものの、いざという時に私の気持ちが伝わらず、支援が上手く行えない事があり、私に向けての他傷行為はまだ残っていました。約1 年の間私なりに沢山遊んで、工夫して関わっていましたが、思う様な成果はなく自分の中で上手く関わる事は無理なのではないか、元々人間的に合わないのではないかなどとA さんとの関わりに悩み、どうしたら良いのか分からずにいました。 その事を先輩職員に相談すると、まだ支援の中でA さんと私には距離を感じるとの事でした。同時にA さんとの関わりで先輩自身が気を付けられている事をお聞きする事が出来ました。

A さんは上手く自分の気持ちを相手に伝える事が苦手です。A さんの問題行動と捉えられる行動は、「職員を困らそう」という気持ちからくる行動ではなく、「上手く言葉に出来ない気持ちからくる表出行動」で、その気持ちに「いかに気付き、声かけや支援が出来るか」が

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重要だと先輩は考えられていました。また、職員が「自分の事をどう考えているか、きちんと見ていてく

れているかどうか」はご利用者も分かると思うという考えを先輩職員から聞くことが出来ました。

考えた事私は先輩の考えを聞くまで、ご利用者の言葉をそのまま受け止めて

言動の意味を考える事はありませんでした。今までの私は1 日の仕事をこなすことに精一杯で、ご利用者の些細な気持ちの変化等に気付くことが出来ずに、ただ生活の支援を行うだけで、心に寄り添った支援が出来ていませんでした。自分は精一杯して、考えているのにどうしてA さんに伝わらないのかと、自分の感情にしか目を向けずに一人よがりな支援しか行えていませんでした。それでは到底、信頼関係は築けません。A さんと上手く関われる先輩と上手く関われない私の大きな違いは言葉に出来ないA さん気持ちに気付いていない事だったのではないかと考えました。障がいの有無に関わらず、どんな方でも自分の事を見てくれていて、

考えてくれているかどうかは相手の言動で必ず感じ取れる部分であると思います。

 実施し、気付いたこと 先輩からのアドバイスを受けてから、自分が今まで上手く関わる事が出来なかった理由を考えた上で、ご利用者の心穏やかな生活を送って頂く為に私が出来る事や自分のご利用者との関わり方について考え直し、少しずつ変えていく事にしました。 ですが、いざご利用者の心に寄り添った支援を行おうとしても、まず自分がどうすべきなのかが分かりませんでした。私が先輩の関わり方を真似して上手く行くかも分かりませんでした

が、状況を変えたいという気持ちが大きかったので、何もしないよりとりあえずは、アドバイスを頂いた先輩の真似をしてみようと思い、先輩と同じように「A さんをしっかり見ている」という気持ちを伝える為に声掛けを増やすことにしました。例えば、夕方のパジャマへの更衣では、いつもなら A さんからパ

ジャマに着替えると職員へ声を掛けて下さりますが、A さんが着替えに来て下さらない様子であれば必ずA さんの居室まで声を掛けに伺い「着替えをしましょう。待っていますね」と伝えました。結果的に必ず一緒に着替えの支援に入るようにしました。その他には、トイレの

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間隔が空けば、排泄伺いの声掛けをしたり、食後の歯磨きの際もA さんは磨けた際に「終わったよ」と必ず職員に向けて洗面所から声を掛けてくださるので、他のご利用者の食事介助等していても、その呼びかけにも必ず答え、仕上げ磨きに伺う様にしました。また、A さんが独り言として流されがちな言葉にも反応するようにしました。それに加え、A さんの様子をよく観察する事にしました。そうする

事で今までは気付けなかった事に気付くようになりました。また気付けた時はA さんの気持ちを私が言葉にして言うようにしました。例えば、A さんがパジャマを脱ごうとされて表情も険しいのに気が付き、伺うと「ボタンが取れている」と言われました。その事がとても気になるようだったので、「ボタンが取れて気になるんですね、他のパジャマに着替えましょう」と声掛けをし、ボタンは私が必ず直すと約束をしました。そうすると落ち着かれ、笑顔が戻りました。また、日常の生活の中で約束をした際には些細な事であっても必ず

守るようにもしました。そういった事を繰り返すうちにA さんの言動には1 つ1 つ意味があるという事に気が付く事が出来ました。

A さんとの関わりの変化粘り強く関わり、関わりの中でのA さんとの約束を果たして行く事

で、少しずつA さんとの関わりが変化していきました。私に向けての他傷行為はなくなり、私に向ける笑顔がとても多くなりました。パジャマの着替えもご自分から「来たよ」と着替えに来て下さるようになりました。何より、私を見るとホッとした表情を見せて下さるのが嬉しく思います。私自身もA さんの事を「怖い」「分かってくれない」としか捉えて

いなかったのが、A さんをよく観察する事で、A さんの行動には意味がある事に気が付き、A さんの気持ちを代弁出来るようになりました。そこで先輩の「A さんの言動は問題行動ではなく、上手く言葉に出来ない気持ちからくる表出行動だ」というアドバイスの意味が分かりました。

A さんの関わりを通して感じたこと・考えた事 A さんとの関わりを通して、障がいの有無に関わらず、信頼関係を構築していくのに必要とする大切な部分は私たちと同じなのではないかと感じました。その上で当初のA さんへの関わりを振り返ると、試し行動に戸惑い、他傷行為に対して「怖い」という気持ちが強く、A さんに見せる表情

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はいつも硬く険しいもので、怯えながら関わっていたのではないかと思います。その事をA さんは敏感に感じ取っていらっしゃったのではないでしょうか。そんなA さんの気持ちを汲み取り、代弁する事が出来ていれば、A

さんの気持ちも落ち着いたのかもしれません。私達も1 人で集中したい時もあれば、寂しくて誰かと関わりたいと

思う時があると思います。そういったA さんの感情の変化に気付き、私達がA さんの気持ちを代弁していくことが心の安定に繋がるのではないでしょうか。

終わりに 光ではご自分の気持ちを言葉や表情で表すことが困難なご利用者が多数おられます。だからこそ、私達支援者は常にご利用者の言動や行動だけに目を向けず、その裏側にある気持ちを考え、寄り添う事が出来るような支援者として成長していきたいと思います。そして、光で生活されている全てのご利用者が心穏やかな生活を送って頂けるよう、より良い支援を目指し自分に出来る事は何か考えていきたいです。

  参考文献

発達と障害を考える本⑤「ふしぎだね!?ダウン症のおともだち」発行所 株式会社 ミネルブァ書房  発行者 杉田啓三  

ダウン症者の豊かな生活発行所 福村出版株式会社  発行者 石井昭男

ダウン症のすべてがわかる本発行所 株式会社 講談社 発行者 野間佐子

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