第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50...

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第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基礎資料 令和元年5月20日 経済産業省 資料5

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第四次産業革命に向けた産業構造の変化と方向性

に関する基礎資料

令和元年5月20日

経済産業省

資料5

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1

1.第4次産業革命と経済社会システムの変革

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2

汎用技術(GPT)が生産性上昇をもたらすまでの調整期間

汎用技術(GPT)が生産性上昇効果をもたらすには、会社・組織のあり方や教育システムなど、経済社会システム全体の再構築が必要となる。

米国におけるIT化の普及過程では、一定の調整期間を経て、大きな生産性上昇をもたらしたと言われている。

米国のIT化期間における労働生産性伸び率(1971-2017)

(注)米ドル、PPPベースの就業者・時間当たり労働生産性。破線部はHPフィルターにより平滑化したもの。(出所)OECD stat を基に作成。

-1.0%

-0.5%

0.0%

0.5%

1.0%

1.5%

2.0%

2.5%

3.0%

3.5%

4.0%

19

71

19

73

19

75

19

77

19

79

19

81

19

83

19

85

19

87

19

89

19

91

19

93

19

95

19

97

19

99

20

01

20

03

20

05

20

07

20

09

20

11

20

13

20

15

20

17

IT化の「調整期間」

「調整期間」後に生産性が上昇

再び伸び率が停滞

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3

日本におけるIT化期間の生産性伸び率

一方、同期間における日本の労働生産性の伸び率は概ね低下傾向にあり、大きな生産性上昇が観察できない。

日本ではIT化の普及に伴う経済社会システムの再構築が進まず、調整期間が長引いている可能性。

日本のIT化期間における労働生産性伸び率(1971-2017)

(注)米ドル、PPPベースの就業者・時間当たり労働生産性。破線部はHPフィルターにより平滑化したもの。(出所)OECD stat を基に作成。

-2.0%

0.0%

2.0%

4.0%

6.0%

8.0%

10.0%

19

71

19

73

19

75

19

77

19

79

19

81

19

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19

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19

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19

91

19

93

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95

19

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01

20

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20

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20

07

20

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20

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20

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15

20

17

伸び率の低下

近年、下げ止まり

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4

リーマンショック前の生産性の伸び率

リーマンショック前の2001年から2007年は、米国・英国は高い労働生産性の伸び。

2.11%2.04%

1.36% 1.33%1.24%

0.99%

-0.01%-0.10%

0.40%

0.90%

1.40%

1.90%

2.40%

米国 英国 日本 ドイツ フランス カナダ イタリア

時間当たり実質労働生産性の年平均伸び率(2001-07年)

(出所) OECD stat を基に作成。購買力平価ベース(2010年米国ドル基準)

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0.96% 0.96%

0.89%

0.80%

0.52%

0.31%

0.18%

0.00%

0.20%

0.40%

0.60%

0.80%

1.00%

1.20%

日本 カナダ ドイツ フランス 米国 英国 イタリア

5

日本の生産性の「伸び率」は先進国で最高

(出所) OECD stat を基に作成。購買力平価ベース(2010年米国ドル基準)

先進諸国で労働生産性の伸び率が低下したこともあり、 2011年から2017年は、日本がG7諸国の中で最も高い労働生産性の伸び率となった。

時間当たり実質労働生産性の年平均伸び率(2011-17年)

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6

日本の生産性の「絶対水準」は低い

一方、労働生産性の絶対水準は、日本はG7諸国の中で最下位。

100 94 93

78 76 75

65

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

米国 ドイツ フランス カナダ 英国 イタリア 日本

時間当たり実質労働生産性の対米国比水準(2017年)

(出所) OECD stat を基に作成。購買力平価ベース(2010年米国ドル基準)

(%)

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7

2010年代の米国における成長産業

2010年代の米国の経済成長は、情報・通信業(ICT)がけん引。

各産業における経済成長への貢献度(2010-2016年)

(横軸:実質GDPに占める割合、縦軸:実質付加価値の伸び率)

(出所)OECD Statisticsを基に作成。

建設

卸・小売業

飲食・宿泊業

情報・通信

金融

不動産

医療・社会福祉

社会サービス

(医療・福祉以外)

紙・紙製品

金属製品

その他製造業

機械設備

電気・ガス・熱供給

運輸業

輸送機械

化学・石油・石炭製品

繊維製品

食糧品

鉱業

農業

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8

2010年代の日本における成長産業

(出所)OECD Statisticsを基に作成。

2010年代の日本の経済成長は、情報・通信業ではなく、製造業等がけん引。

各産業における経済成長への貢献度(2010-2016年)

(横軸:実質GDPに占める割合、縦軸:実質付加価値の伸び率)

建設

卸・小売業

飲食・宿泊業

情報・通信

金融

不動産

医療・社会福祉

社会サービス

(医療・福祉以外)

紙・紙製品

金属製品

その他製造業

機械設備

電気・ガス・熱供給

運輸業

輸送機械

化学・石油・石炭製品

繊維製品

食糧品

鉱業

農業

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9

先進国企業のマークアップ率の推移

米国や欧州企業は、2010年以降、急速にマークアップ率が上昇する一方、日本企業は2010年以降も低水準で推移。

(注)「マークアップ率」とは、分母をコスト(限界費用)分子を販売価格とする分数であり、製造コストの何倍の価格で販売できているかを見るもの。この値が1のとき、販売価格はちょうど費用をまかなう分だけを捻出していることになる。

同質的な製品・サービスによるコスト競争ではなく、高付加価値化が課題。

先進国企業のマークアップ率の推移

(出所)Diez, Leigh, and Tambunlertchai (2018) 「Global Market Power and its Macroeconomic Implications」を基に作成。

米国

欧州

日本

(年)0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

1980 1990 2000 2010 2020

(注) トムソン・ロイター社の上場企業データベースにおける1980~2016年、46.5万件のデータ(日本企業は8万件、米国企業は13万件)を使用した分析。

企業のマークアップ率(倍)

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10

米国では、マークアップ率の高い企業が登場

米国では、マークアップ率の低い企業が減少する一方、第四次産業革命などの結果、マークアップ率の高い企業が増加。

米国企業におけるマークアップ率の分布

-1980年 -2016年

マークアップ率(倍)

20

15

10

5

0

0 2 4 6 8

マークアップ率が低い企業の減少

マークアップ率が高い企業の増加

マークアップ率が著しく高い企業の登場

企業割合(%)

(注)グラフは、米国企業のマークアップ率の密度関数を示す。

(出所)Diez Leigh, and Tambunlertchai (2018) 「Global Market Power and its Macroeconomic Implications」を基に作成。

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11

米国以外の先進国でも、同様の傾向

米国を除く先進国においても、企業のマークアップ率の分布は同様の変化。

先進国企業におけるマークアップ率の分布

(出所)Diez, Leigh, and Tambunlertchai (2018) 「Global Market Power and its Macroeconomic Implications」を基に作成。

(注)グラフは、米国をのぞく先進国32か国(日本を含む)における、マークアップ率の密度関数を示す。

-1980年 -2016年

0

0

10

20

30

2 4 6 8 10

マークアップ率が低い企業の減少

マークアップ率が高い企業の増加 マークアップ率が著しく高い企業の登場

企業割合(%)

マークアップ率(倍)

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0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

0 1 2 3 4 5 6 7 8

12

日本では、マークアップ率が高い企業の登場率は依然として低い

日本においてもマークアップ率が高い企業が登場しつつあることは一定程度確認できるが、その変化の幅は海外と比して非常に低い。

日本企業におけるマークアップ率の分布

(出所)Diez Leigh, and Tambunlertchai (2018) 「Global Market Power and its Macroeconomic Implications」を基に作成。

(注)グラフは、日本企業のマークアップ率の密度関数を示す。

-1980年 -2016年企業割合(%)

マークアップ率が低い企業の減少

マークアップ率が高い企業の増加

マークアップ率(倍)

マークアップ率が著しく高い企業は登場せず

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13

米国企業における産業別のマークアップ率

(出所)De Loecker et al.(2018)「The Rise of Market Power and the Macroeconomic Implications」を基に作成。

米国企業の産業別のマークアップ率を推計した分析によると、情報通信業で最も高く、製造業や専門技術業がそれに次ぐ。

米国における産業別マークアップ率(2016年)マークアップ率(倍)

2.14

1.94

1.66

1.381.28

1.16 1.12 1.111.01

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

情報通信業

製造業(化学・石油等)

専門技術業

製造業(機械・器具等)

運輸業

建設業

卸売業

保険衛生・社会事業

小売業(スーパー等)

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14

米国企業のマークアップ率

企業別のマークアップ率を見ると、アマゾンやアップルは1.5倍程度。

4.59

3.55 3.29

2.27 2.23

1.53 1.50 1.50 1.35

0.00

0.50

1.00

1.50

2.00

2.50

3.00

3.50

4.00

4.50

5.00

ファイザー

ジョンソン&ジョンソン

インテル

マイクロソフト

アルファベット

(グーグル)

AT&T

アマゾン

アップル

GE

(出所)De Loecker et al.(2018)「The Rise of Market Power and the Macroeconomic Implications」を基に作成。

米国における企業別マークアップ率(2016年)マークアップ率(倍)

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15

日本企業におけるマークアップ率

(出所)松川勇(2018)「情報技術の利用とマークアップの分析」を基に作成。

日本企業のマークアップ率を推計した分析によると、総じて低水準にとどまる。

特に非鉄金属や機械製造等では、売値が費用を下回っている。

1.13 1.06 1.03 1.02

0.95 0.95 0.94 0.92 0.92 0.92 0.90 0.84

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

鉄鋼

繊維

輸送用機械

金属製品

非鉄金属

化学

汎用機械

生産用機械

業務用機械

電子部品

電気機械

情報通信機械

日本の製造業における産業別マークアップ率(2007~2012年)

マークアップ率(倍)

売値 < 費用売値 > 費用

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16

企業間におけるマークアップ率の異質性

(出所)松川(2018)「日本の製造業におけるITの利用がマークアップに及ぼす影響」

日本企業のマークアップ率の分布を見ると、いずれの産業でも高い企業が存在しており、企業の異質性が確認できる。

0 1 2 3 0 1 2 3

80

60

20

0

200

150

50

0

企業数

企業数40 100

日本の製造業における産業別マークアップ率の分布(2007~2012年)

情報通信機械 輸送用機械

マークアップ率(倍) マークアップ率(倍)

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17

米国では「労働市場の両極化」が進展

(注)各職業に係る総労働時間(就業者数に労働時間を乗じたもの)のシェア伸び率であることに留意。(出所)Autor(2019)「Work of the Past, Work of the Future」

米国では、専門・技術職等の高スキル職や、医療・対個人サービス等の低スキル職で就業者が増加する一方、製造や事務等の中スキル職が大幅に減少。

こうした現象は、労働市場の両極化(Polarization)と呼ばれている。

米国における職業別就業者シェアの変化(16-64歳)

医療・対個人サービス職

清掃・警備サービス職

運転・手仕事職

製造職

事務職

販売職

技術職

専門職

管理職

低スキル 中スキル 高スキル

20%

0%

-20%

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-45.0%

-25.0%

-5.0%

15.0%

35.0%

医療・対個人

サービス職

清掃・警備

サービス職

運転・手仕事職

製造職

事務職

販売職

技術職

専門職

管理職

1985-1995

1995-2005

2005-2015

18

日本でも「労働市場の両極化」が確認できる

日本でも、専門職・技術職等の高スキル職と、医療・対個人サービス等の低スキル職が増える一方、製造等の中スキル職が減少。

ただし、今のところ、日本では、米国に比べて事務職の減少幅が小さい。

職業別就業者シェアの変化

(出所)総務省「国勢調査」より経済産業省作成。(参考)Daron Acemoglu, David Autor, 「Skills, Tasks and Technologies: Implications for Employment and Earnings」 (2010)を参考に職業を分類。

前頁の米国の分析と異なり、職業者数のシェア変化であること、全年齢が対象であること、清掃・警備職には自衛官を含む(米国は軍人を除外)ことに留意。

低スキル 中スキル 高スキル

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0%

5%

10%

15%

20%

25%

10

0万

円未

10

0~

19

9万

20

0~

29

9万

30

0~

39

9万

40

0~

49

9万

50

0~

69

9万

70

0-9

99

万円

10

00

万円

以上

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

10

0万

円未

10

0~

19

9万

20

0~

29

9万

30

0~

39

9万

40

0~

49

9万

50

0~

69

9万

70

0-9

99

万円

10

00

万円

以上

19

日本の所得カーブの変化

(出所)総務省「就業構造基本調査」を基に作成。

過去25年間の所得カーブの変化を見ると、男性では300万~700万円の割合が低下する一方、200万円未満の割合と、700~1000万円の割合が増加。

一方、女性では、全体的に所得が上昇。

所得階級別の割合変化(60歳未満)

2017年

1992年

2017年

1992年

男性 女性

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20

日本の就業構造の変化

(出所)総務省「国勢調査」、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」を基に作成。賃金水準は、フルタイム労働者の2017年度の「きまって支給する現金給与額」に12月を乗じた額に、「年間賞与その他特別給与額」を加えることにより算定。(医療業・保健衛生は、それぞれの賃金に労働者数で加重平均した値)。1995年の社会保険・社会福祉・介護事業の人数は、産業分類の改定前である「社会保険・社会福祉」の数字を使用。

就業構造の変化を見ると、賃金水準が中位の製造業、建設業、卸売業等が減少する一方、賃金水準が低位の介護事業が増加。

他方、賃金水準が高位の専門・技術は微減、情報通信業は微増。高スキル職の拡大が十分でない。

産業別就業者数の変化(1995-2015年)(万人)

-53 万人

251 万人

-21 万人

-292 万人

92 万人

-361 万人

-237 万人

37 万人

-55 万人 -4 万人

-500

-400

-300

-200

-100

0

100

200

300

宿泊業・

飲食サービス業

社会保険・社会福祉

・介護事業

運輸業・郵便業

卸売業・小売業

医療業・保健衛生

製造業

建設業

情報通信業

金融業・保険業

学術研究、専門・

技術サービス業

629万円

628万円

616万円

531万円

502万円

488万円

453万円

352万円

495万円

358万円

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21

米国では「学歴による賃金差」が拡大

(出所)Autor(2019)「Work of the Past, Work of the Future」。左図は18歳-64歳の実質の週給。右図は、総労働時間のシェア。

米国では、大学卒に比して大学院卒の賃金が顕著に増加。学歴別の賃金差が拡大。

また、大学・大学院卒の就業者シェアは一貫して増加。

学歴別の就業者構成学歴別の賃金推移(男性)

大学院卒

大学卒

大学中退

高校卒高校中退

大学院卒

大学卒

大学中退

高校卒

高校中退

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22

日本でも「学歴による賃金差」が確認できる

(出所)右図は厚生労働省「賃金構造基本統計調査」、左図は総務省「就業構造基本調査」を基に作成。左図は名目値、右図は就業者シェアであることに留意。

日本でも、大学・大学院卒とそれ以外の賃金差が拡大。

また、大学・大学院卒の就業者シェアも拡大。

1.00

0.90

1.00

1.10

1.20

1.30

1.40

1.50

1.60

1.70

1.80

19

80

19

82

19

84

19

86

19

88

19

90

19

92

19

94

19

96

19

98

20

00

20

02

20

04

20

06

20

08

20

10

20

12

20

14

20

16

35.3%

7.4%

45.6%

43.3%

6.8%

17.8%

12.3%

30.9%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1982 1987 1992 1997 2002 2007 2012 2017

学歴別の就業者構成学歴別の月収推移(男性)

大学・大学院卒

高専・短大卒中学卒

高校卒

大学・大学院卒

高専・短大卒

高校卒

中学卒

Page 24: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

23

日本における大学院卒と大卒の比較

(出所)左図は森川(2013)「大学院教育と就労・賃金:ミクロデータによる分析」、右図は厚生労働省「賃金構造基本統計調査」を基に作成。

実証研究によれば、日本の大学院卒の給与水準は、年齢を重ねるごとに大きくなる傾向にあり、大学卒と比べて約3割の賃金プレミアムが存在。

また、近年、大学院新卒者の初任給は、大学卒との差が拡大。

新卒者の初任給の比較各学歴における年齢別賃金カーブ

大学院卒

大学卒

学歴計

25

~2

9歳

30

~3

4歳

35

~3

9歳

40

~4

4歳

45

~4

9歳

50

~5

4歳

60

~6

4歳

70

歳~

55

~5

9歳

65

~6

9歳

224.5

239.9

200.3

210.1

180

190

200

210

220

230

240

250

2010 2018

大学院卒(修士)

大学卒

(千円)

2.4万円

3.0万円

Page 25: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

24

米国においては、大学院卒の生涯賃金は文理を問わず学部卒よりも高い

米国では、理系大学院卒、文系大学院卒ともに学部卒よりも生涯賃金が高い。

文系は、特に博士課程の増加分が高く、理系博士の増加分と同程度以上。

米国における大学院卒の生涯賃金増加(対学部卒)

(出所)US Census Bureau 「American Community Survey 2010」

16% 17%

26% 27%24%

13%9%

17% 18%

28%25%

51%

38%

45%

29%

42%

32%

58%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

数学・コンピュータ

工学

物理学

ビジネス

社会科学

芸術

コミュニケーション

文学

心理学

理系大学院■修士 ■博士

文系大学院■修士 ■博士

Page 26: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

25

日本では、理系進学の年収への影響が確認されている

日本では、理系進学は年収に好影響を与えることが統計的に確認されているが、文系進学については確認されていない。

大学院進学が年収に与える影響(対学部卒)

(出所)太田、萩原(2016)「大学卒業時の選択の短期的、長期的効果」を基に作成。

理系修士 文系修士

約10%

約5%

明確な相関は確認されていない

(注)同一年齢の学部卒者との比較結果を示している。

Page 27: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

1.6

31.5

6.7 6.8 9.2

1.5

36.1

6.8 9.0

11.7

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

日本 米国 ドイツ フランス 英国

4.8

15.2

5.4 3.1

5.6 4.8

25.5

7.4

3.9

7.5

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

日本 米国 ドイツ フランス 英国

26

修士号取得者数の国際比較

(出所)科学技術・学術政策研究所「科学技術指標2018」を基に作成。

修士号取得者の数を比較すると、近年、先進諸国では増加傾向に。

日本では文系・理系ともに修士号取得者数が少なく、横ばい傾向。

1年間における修士号取得者数の国際比較

(万人) (万人)人文・社会科学系 自然科学系

20082014

2008

2014

Page 28: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

0.2

2.0

0.6 0.4 0.5

0.2

2.4

0.7 0.4

0.7

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

日本 米国 ドイツ フランス 英国

1.3

3.8

1.8

0.7

1.2 1.2

5.0

2.1

0.7

1.5

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

日本 米国 ドイツ フランス 英国

27

博士号取得者数の国際比較

(出所)科学技術・学術政策研究所「科学技術指標2018」を基に作成。

博士号取得者の数を比較すると、近年、先進諸国では増加傾向。

他方、日本では文系・理系ともに博士号取得者数が少なく、近年は減少傾向。

1年間における博士号取得者数の国際比較

(万人) (万人)人文・社会科学系 自然科学系

20082014

2008

2014

Page 29: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

28

世代における学歴構成の変化

(出所)総務省「平成29年就業構造基本統計調査」を基に作成。

世代別の学歴構成を見ると、若年層ほど高学歴化。

49 %

46 %

42 %38 %

36 %38 %

41 %

36 %

27 %

24 %

18 % 18 %

15 %

0

10

20

30

40

50

60

25

~2

9歳

30

~3

4歳

35

~3

9歳

40

~4

4歳

45

~4

9歳

50

~5

4歳

55

~5

9歳

60

~6

4歳

65

~6

9歳

70

~7

4歳

75

~7

9歳

80

~8

4歳

85

歳以

42 %

35 %

29 %

22 %

16 %14 %

14 %12 %

7 %5 %

3 %3 %2 %

0

10

20

30

40

50

60

25

~2

9歳

30

~3

4歳

35

~3

9歳

40

~4

4歳

45

~4

9歳

50

~5

4歳

55

~5

9歳

60

~6

4歳

65

~6

9歳

70

~7

4歳

75

~7

9歳

80

~8

4歳

85

歳以

各世代の大卒・大学院卒比率(2017年時点)

男性 女性(%) (%)

Page 30: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

91%

41%

75%

23%

96%

51%

80%

34%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

15-59歳 60歳以上 15-59歳 60歳以上

男性 女性

29

学歴と就業率

(出所)総務省「就業構造基本調査」を基に作成。

大学・大学院卒は、非大卒に比べ、就業率が高い傾向。

特に高齢期でその差は拡大。

非大卒

大学・大学院卒

学歴別の就業率(2017年)

Page 31: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

30

米国における都市と地方の大卒・大学院卒シェア

(出所)Autor(2019)「Work of the Past, Work of the Future」。

米国では、1950年には、都市と地方で学歴に差異は見られなかったが、近年、大学卒・大学院卒が都市圏に集中する傾向。

地域別の大卒・大学院卒シェア(対人口比)

1950年時点の人口密度(対数)

1950年時点の人口密度(対数)

1950年時点の人口密度(対数)

シェア

都市部地方部 都市部地方部 都市部地方部

30%

20%

10%

0%

30%

20%

10%

0%

30%

20%

10%

0%大学院卒

大学卒

Page 32: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

31

米国における都市と地方の学歴賃金差

(出所)Autor(2019)「Work of the Past, Work of the Future」。大学卒等には大学院卒及び大学中退を含み、高校卒等には高校中退を含んでいる。

米国では、非大卒層における賃金差が都市・地方間で縮まっており、都市の「賃金プレミアム」が消滅しつつある。

地域別の学歴別賃金(時給)

非大卒層における都市の賃金プレミアムが減少

都市部地方部

人口密度(対数)

都市部地方部

人口密度(対数)

時給(対数)

時給(対数)

大学卒等

高校卒等

大学卒等

高校卒等

Page 33: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

32

日本における地域別の職業分布

(出所)総務省「国勢調査」、総務省「社会・人口統計体系」を基に作成。都道府県をプロットしたもの。なお、低スキル職は「健康・対個人職」、「清掃・警備職」、「運転・手仕事職」を、中スキル職は「製造職」、「事務職」、「販売職」を、高スキル職は「技術職」、「専門職」、「管理職」を集計したもの。

地方部ほど低スキル職のシェアが高く、都市部ほど高スキル職のシェアが高い。

一方、中スキル職では、顕著な傾向は見られない。

地域別のスキル別労働シェア(2015年)

低スキル 中スキル 高スキル

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.030.0

35.0

40.0

45.0

50.0

55.0

5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0

可住面積人口密度(対数) 可住面積人口密度(対数) 可住面積人口密度(対数)

シェア

シェア

シェア

(%) (%) (%)

都市部地方部 都市部地方部 都市部地方部

Page 34: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

33

2.「組織」の変革の方向性

Page 35: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

0.5%

0.9%

0.0%

0.1%

0.2%

0.3%

0.4%

0.5%

0.6%

0.7%

0.8%

0.9%

1.0%

20

08

20

09

20

10

20

11

20

12

20

13

20

14

20

15

20

16

20

17

20

18

20

19

34

我が国の新規上場は増加傾向

(出所)左図:日本はデロイト・トーマツ「IPO市場の動向」、米国はRitter(2018)「Initial Public Offerings: Updated Statistics 」を基に作成。右図:日本取引所の資料を基に作成。(マザーズ時価総額を東証1部・2部時価総額で除した比率)

我が国の新規上場会社数は、近年増加傾向。

東証1部・2部と比較したマザーズの時価総額の大きさを見ても、近年増加傾向。

市場別新規上場会社数ベンチャー市場の時価総額

(東証1部・2部との対比)(社)

0

50

100

150

200

250

20

08

20

09

20

10

20

11

20

12

20

13

20

14

20

15

20

16

20

17

20

18

米国

日本

Page 36: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

我が国でも事業法人によるスタートアップ企業への投資が拡大

(注) CVCは、事業法人(金融機関を除く。)が設けたベンチャーキャピタルをいう。また、スタートアップ企業は、独自の技術や製品・サービス、ビジネスモデルを持つ等の特徴を有する日本国内の未上場企業をいう。

(出所)ジャパンベンチャーリサーチ「Japan Startup Finance 2017」(2018年3月15日基準)、「国内スタートアップ資金調達動向2018」(2019年2月21日基準)

近年、国内スタートアップ企業への投資額が拡大。

事業法人による直接のスタートアップ企業への投資(Corporate Venture Capital)が徐々に拡大しつつある。CVCの拡大に期待。

国内スタートアップ企業への投資主体(億円)

606

1963

17

211

33

278

321

1404

491

625

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

5,000

20

08

20

09

20

10

20

11

20

12

20

13

20

14

20

15

20

16

20

17

20

18

その他

ベンチャーキャピタル

(CVC以外)

金融機関

CVC

事業法人

35

Page 37: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

36

最近の米国では、スタートアップ企業の出口は、IPOではなく、既存企業に買ってもらうこと

(注) ここでの「M&A」は、経営権の移転を伴う売却をいう。(出所)一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター「ベンチャー白書」を基に作成。

最近のスタートアップ企業の出口は、日本は新規上場(IPO)の件数が多いのに対し、米国では既存企業に買収してもらうこと(M&A)が多く、これは既存企業の内部資本市場を活用した成長を考えているもの。

116 122 92 79 102 43 86 58

36

918

41

941

73

845

47

827

0

200

400

600

800

1,000

1,200

日本 米国 日本 米国 日本 米国 日本 米国

2014年 2015年 2016年 2017年

IPO

M&A

ベンチャー投資先のIPO・M&A件数(件数)

Page 38: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

607 社

68 社

414 社

535 社

0

200

400

600

800

1,000

1,200

NASDAQ マザーズ・JASDAQ

赤字上場 黒字上場

37

米国のベンチャー市場では赤字上場が多い

2000年以降の新興市場における上場企業数を比較すると、米国では59%が赤字上場であり、投資先行型の資金調達が普及。日本では、赤字上場は11%にとどまる。

このため、既存企業からの投資は特段に重要。

新規上場企業数(2000年-2018年)社数

(注)赤字上場の割合は、2000年以降に新規上場し、2017年末時点で上場を継続していた企業のうち、データが得られたものが対象。上場年の営業利益が0以下を赤字上場、0より大きかった企業を黒字上場企業としている。

(出所)各種データベースを基に作成。

1,021社

603社

Page 39: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

0.0%

1.0%

2.0%

3.0%

4.0%

5.0%

6.0%

7.0%

8.0%

19

82

19

83

19

84

19

85

19

86

19

87

19

88

19

89

19

90

19

91

19

92

19

93

19

94

19

95

19

96

19

97

19

98

19

99

20

00

20

01

20

02

20

03

20

04

20

05

20

06

20

07

20

08

20

09

20

10

20

11

20

12

20

13

20

14

20

15

20

16

38

日本における企業の開廃業率

日本においては、経済全体の開業率は、2010年代に上昇傾向にある。

ただし、経済全体の廃業率は、2010年代には緩やかに低下傾向。

日本における企業の開廃業率

(出所)厚生労働省「雇用保険事業年報」のデータを基に作成。

開業率

廃業率

Page 40: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

39

マークアップ率と企業の投資行動は逆U字の関係にある

企業のマークアップ率と企業投資は逆U字の関係にあることが指摘されている。

同質的なコスト競争は、企業投資を減退させ、将来的な競争力を落とす可能性。

(出所)Aghion et al. (2005) 「Competition and Innovation: an Inverted-U Relation」Diez, Leigh, and Tambunlertchai (2018) 「Global Market Power and its Macroeconomic Implications」を基に作成。

米国における企業のマークアップ率と投資率の関係

(注)グラフは、企業のマークアップ率と企業の投資率(前期資本ストックに占める今期資本支出の割合)の関係を示す。データ期間は1980-2016年。点線は90%信頼区間。

0 2 4 6 8

投資率(%)

0

5

10

15

マークアップ率(倍)

Page 41: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

-7

-5

-3

-1

1

3

5

7

19

90

19

91

19

92

19

93

19

94

19

95

19

96

19

97

19

98

19

99

20

00

20

01

20

02

20

03

20

04

20

05

20

06

20

07

20

08

20

09

20

10

20

11

20

12

20

13

20

14

40

米国上場企業の労働生産性の上昇要因

(注) 5年後方移動平均により平滑化した値であることに留意。(出所)中村・開発・八木(2017)「生産性の向上と経済成長」、Hogen et al.(2017)「Large Firm Dynamics and Secular Stagnation: Evidence from

Japan and the U.S.」を基に作成。

米国の上場企業の労働生産性の上昇は、既存企業の構造改革がけん引。

労働生産性の要因分解(米国上場企業)

既存上場企業の要因

新規上場企業の要因

上場廃止企業の要因

(%)

労働生産性伸び率

Page 42: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

-3

-1

1

3

5

7

9

19

90

19

91

19

92

19

93

19

94

19

95

19

96

19

97

19

98

19

99

20

00

20

01

20

02

20

03

20

04

20

05

20

06

20

07

20

08

20

09

20

10

20

11

20

12

20

13

20

14

41

日本上場企業における労働生産性伸び率の要因

(注) 5年後方移動平均により平滑化した値であることに留意。(出所)中村・開発・八木(2017)「生産性の向上と経済成長」、Hogen et al.(2017)「Large Firm Dynamics and Secular Stagnation: Evidence from

Japan and the U.S.」を基に作成。

日本の上場企業の労働生産性の上昇も、既存企業の構造改革がけん引したが、2010年代は、むしろマイナス要因に。

労働生産性の要因分解(日本上場企業)

既存上場企業の要因

新規上場企業の要因

上場廃止企業の要因

(%)

労働生産性伸び率

Page 43: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

51

100

214

45

100

210

0

50

100

150

200

250

300

350

400

下位5% 中央値 上位5%

40

100

342

45

100

268

0

50

100

150

200

250

300

350

400

下位5% 中央値 上位5%

42

企業間の生産性格差

(注) それぞれの中央値を「100」として比較したもの。生産性は、全要素生産性(TFP)。(出所)内閣府「平成29年度 年次経済財政報告」における分析(経済産業省「企業活動基本調査」を用いたもの)を基に作成。

同一業種内でも、生産性の高い企業と低い企業の格差が存在。

特に、非製造業は、上位企業とそれ以外の企業との乖離が大きい。

企業における生産性水準(2014年)

製造業 非製造業

大企業

中小企業

大企業

中小企業

Page 44: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

43

生産性格差の要因

(注) ここでの経営の質とは、企業に対する質問への回答(生産目標の設定の有無やその期間、パフォーマンス評価方法など)を基に算定した「マネジメント・スコア」を指す。(出所)Bloom et al. (2017)「WHAT DRIVES DIFFERENCES IN MANAGEMENT?」を基に作成。

米国の製造業を対象にした実証研究では、企業間の生産性格差の要因は、経営の質が最も大きく、研究開発投資やIT投資がそれに次ぐとされている。

企業における生産性(TFP)格差の要因(上位10%-下位10%)

18.1%16.9%

7.5%

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

14%

16%

18%

20%

経営の質 研究開発支出 労働者当たりIT投資

Page 45: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

44

日本企業の経営スコアは米国企業に比べ、成果に応じた処遇・昇進といった人事面での低さが目立つ

米国企業と比べ、日本企業の経営スコアは、評価システム自体ではなく、成果の低い者の厳しい処遇や、成果の高い者の高い昇進、優秀層の高い処遇といった人事面での経営力の弱さが目立つ。

日米企業の経営スコア(全体・項目別)

日本

米国

経営スコア

(全体)

成果の低い者

への厳しい処遇

優秀層の処遇

成果の高い者

の昇進

成果の

計測と共有

(注) 製造業を対象とした分析であることに留意。対象期間は、2004年~2014年。米国企業:N=1564、日本企業:N=178(出所)Bloom, Lemos, Sadun, Scur, Van Reenen(2014)「THE NEW EMPIRICAL ECONOMICS OF MANAGEMENT」を基に作成。

Page 46: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

45

イノベーションがもたらす利益の分配

(出所)Aghion and Akcigit et al. (2018)「On the Returns to Invention Within Firms:Evidence from Finland」を基に作成。。

フィンランドを対象とした実証研究によると、イノベーションがもたらす利益は、発明者8%、企業家45%、ホワイトカラー22%、ブルーカラー26%の割合で分配される。

企業がリスクをとってイノベーションを成功すれば、多くの関係者で所得が上昇する。

イノベーションがもたらす利益の配分

7.9%

44.6%21.8%

25.7%

<研究概要>①フィンランド統計局の、1988年から

2012年の間の雇用主・従業員のパネルデータ

②ヨーロッパ特許庁の特許出願データのうち、出願者の住所がフィンランドにあるもの

等を用い、イノベーションを起こした企業の関係者にどのような所得の上昇がもたらされるかを分析

ブルーカラー

ホワイトカラー

企業家

発明者

Page 47: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

46

オープンイノベーションは、企業の生産性を高める

(注) 「研究開発を実施していない企業」を「100」として比較したもの。対象は、1997-2007年の製造業のデータ。生産性は、全要素生産性(TFP)。(出所)Ito and Tanaka(2013)「Open Innovation, Productivity, and Export : Evidence from Japanese firms」を基に作成。

製造業を対象にした実証研究では、研究開発を実施する企業の方が生産性が高い。

特に、社内研究開発とオープンイノベーションを同時に行う企業では、研究開発を行わない企業の7倍以上の生産性となっている。

100

175

759

0

100

200

300

400

500

600

700

800

研究開発

実施せず

社内研究開発

のみ実施

社内研究開発と

社外研究開発を

同時に実施

非輸出企業

100

193

728

0

100

200

300

400

500

600

700

800

研究開発

実施せず

社内研究開発

のみ実施

社内研究開発と

社外研究開発を

同時に実施

輸出企業

企業における生産性水準

Page 48: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

0 0.5 1 1.5 2 2.5

競合企業

起業家・スタートアップ企業

大学・公的研究機関

競合企業

起業家・スタートアップ企業

大学・公的研究機関

47

我が国のオープンイノベーション

日本企業は、大学・公的機関とのオープンイノベーションでは欧米企業と遜色ないが、起業家・スタートアップ企業や競合企業とのオープンイノベーションでは遅れている。

78

47

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

欧米企業 日本企業

オープンイノベーションの実施率 オープンイノベーションのパートナー(%)

問題・課題の設定段階

問題・課題の解決段階

日本企業

欧米企業

日本企業

欧米企業

(注) 右図:横軸の点数は、企業に、オープン・イノベーションに費やした時間と、パートナー別の時間を質問し、その割合を点数化した上で、回答者の平均値を算定したもの。(0=0%、1=0超~25%未満、2=25~50%未満、3=50~75%未満、4=75%以上)

(出所)米山、渡部、山内、真鍋、岩田(2017)「日米欧企業におけるオープン・イノベーション活動の比較研究」を基に作成。

Page 49: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

48

日本の企業年齢は国際的に高い

日本は先進諸国に比較すると企業年齢11年以上の古い企業が多い。

(注) 対象は従業員50人未満の企業。諸外国の数値は2001-2011年の数値。(出所)池内健太他 (2019) 「日本における雇用と生産性のダイナミクス:OECD Dynemp/MultiProdプロジェクトへの貢献と国際比較」, RIETI Discussion Paper

(近刊)を基に作成。

企業年齢の分布

5.0 6.611.5 9.0 6.9

13.922.4 22.8 20.5

12.5 16.75.2 2.31.9 9.5

7.75.2

18.1 17.616.7

15.517.5

15.87.2

7.8 1.8 7.0

9.8

20.8 18.519.2

20.2

21.3

74.083.9

78.8 79.8 78.471.1

38.6 41.0 43.551.8

44.5

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1996 2001 2006 2009 2012 2014 英国 フランス 米国 イタリア カナダ

日本 諸外国

11年以上

6-10年

3-5年

0-2年

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0

2

4

6

8

10

12

14

0 3 6 9

12

15

18

21

24

27

30

33

36

39

42

45

48

51

54

57

60

63

66

69

72

75

78

81

84

87

90

93

96

99

10

2

10

5

10

8

11

1

11

4

11

7

12

0

49

日本企業は企業年齢が古いと利益率が低下

米国企業は、企業年齢にかかわらず、利益率(ROA)は一定水準。

日本企業は、企業年齢が古いほど、利益率(ROA)が低下。既存企業の構造改革に課題。

企業年齢と利益率(ROA)の関係(%)

(企業年齢)

米国企業

日本企業

(注) 1978年-2015年までの上場企業(金融・保険・不動産業を除く。)のROAを集計したもの。(出所)YAMAGUCHI, NITTA, HARA, SHIMIZU(2018)「Staying Young at Heart or Wisdom of Age: Longitudinal Analysis of Age and

Performance in US and Japanese Firms」

Page 51: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

小規模 中規模 大規模 巨大規模

専業日本 8.8% 5.9% 6.5% 7.0%

米国 -0.5% 11.4% 7.7% 10.4%

準専業化日本 7.4% 5.3% 6.2% 6.2%

米国 4.7% 11.5% 10.7% 7.8%

準多角化日本 6.2% 5.7% 5.2% 4.7%

米国 9.9% 9.2% 8.3% 8.6%

多角化日本 5.1% 5.4% 5.4% 3.0%

米国 -15.2% 9.0% 11.0% 13.7%

50

規模・多角化度別の利益率の国際比較

(注)調査対象企業は、日本はTOPIX対象銘柄、米国はNYSE総合指数構成銘柄。「多角化度」は、売上高構成比率が最大の事業以外の売上高が、全体の売上高に占める割合。米国の「規模(売上高)」は、1USD=100円により円換算して区分。

(出所)経済産業省委託調査。Bloombergデータを元にデロイト トーマツ コンサルティング作成。

米国企業は、大規模化と多角化により、利益率(ROS)が上昇する傾向。

日本企業は、大規模化・多角化が進むほど、利益率(ROS)が低下する傾向。既存企業の内部資本市場(Internal Capital Market)の活用効率に差がある可能性。

規模

多角化度

規模(売上高)小規模 : ~500億円中規模 : 500億円~5,000億円大規模 : 5,000億円~2兆円巨大規模 : 2兆円~

多角化度専業 : ~10%準専業化 : 10%~30%準多角化 : 30%~50%多角化 : 50%~

日米企業の規模・多角化度別の営業利益率(2000-2012年平均)

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9.3

27.4

38.7 38.9 37.3

30.8 28.7

29.7

2.0 3.4

5.7

9.0 8.5

15.0

23.4

26.2

0.9 2.7

5.1

9.1

12.6 14.8

18.3 20.1

0.1 1.2

5.2

25.6

34.0

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

1985年 1990年 1995年 2000年 2005年 2010年 2015年 2017年

日本 米国 ドイツ 中国

51

日本の自動化投資(ロボット稼働台数)は減少傾向

(注) マニュピレーティングロボット(自動制御によるマニュピレーション機能等を持ち、各種作業をプログラムによって実行する機械)の数字。米国は、2000年までカナダ、メキシコとの合算値であり、中国は1995年以前はデータがないことに留意。

(出所)「ロボット産業需給動向 2018年版(産業ロボット編)」、(一社)日本ロボット工業会資料(元データはInternational Federation of Robotics)を基に作成。

日本の産業用ロボットの稼働台数は、2000年代以降、減少傾向。足下では微増。

一方、米国・ドイツは増加し続けており、自動化投資で追いつかれつつある。

産業用ロボット稼働台数の推移(万台)

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52

経営学における企業の構造変革の成功要件

米国の経営学では、既存組織が新規事業の創出に成功するためは、「既存事業とは異なるマネジメント」が必要と言われている。

(出所)平成30年度経済産業省委託調査「イノベーション経営の普及に係る調査研究」を基に作成。

クレイトン・クリステンセン氏ハーバード・ビジネス・スクール教授

エリック・リース氏ハーバード・ビジネス・スクール客員起業家

イノベーションのジレンマ(1997年)

既存事業で有効な「プロセス」と「優先順位」が新規事業では失敗をもたらす

新規事業創出には、既存組織の「資源」の一部を利用し、既存組織とは異なる「プロセス」と「優先順位」を持つ体制が必要

資源

プロセス

優先順位

資源

プロセス

優先順位

既存事業持続的イノベーション

新規事業破壊的イノベーション

共有しない

共有しない

一部利用

スタートアップ・ウェイ(2017年)

既存事業と新規事業のマネジメントでは、構成要素である「人」「文化」「プロセス」「責任」が異なる

新規事業創出には、組織内に新規事業の体制を用意し、起業マネジメントを行う必要がある

ビジョン、目的、人材投資、長期的視点

既存事業のマネジメント

新規事業のマネジメント

持続可能な成長、継続的イノベーション、継続的変革

基礎

成果

責任

プロセス

文化

責任

プロセス

文化

人共通する価値真実の追究、規律

エクセレンス、継続的改善

マネジメントの構成要素が異なる

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53

大企業における事業変革の兆し

(注) 上場企業・資本金3億円以上の非上場企業5,085社(有効回答数238社)に対するアンケート調査。(出所)日本生産性本部(2018)「イノベーションを起こすための工夫に関する企業アンケート」を基に作成。

近年、大企業においては、本体ビジネスから独立した形式(出島形式)によるイノベーションの取組が広がりつつある。

企業幹部向けのアンケートでは、約2割が「出島」を設置。ただし、約半数は「国内で社内」に設置。

「出島」の設置の有無

設置している22.7%

設置していない76.9%

不明0.4%

「出島」の設置場所

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

国内で社内53.7%

国内で社外37.0%

国外18.5%

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54

事業変革における「両利きの経営」の重要性

近年の経営学では、既存企業のイノベーションを成功させるためには、収益を生み出す成熟事業とリスクを抱える新規事業の双方を抱え、「知の深化」と「知の探索」の両面を推進する「両利きの経営」が重要と言われている。

(出所)オライリー、タッシュマン(2016)「両利きの経営」(監訳・解説:入山(2019))を基に作成。

チャールズ・オライリー氏(スタンフォード大学経営大学院教授)

マイケル・タッシュマン氏(ハーバード・ビジネス・スクール教授)

知の探索(冒険的な新規事業の推進)

知の深化(大規模な成熟事業の推進)

「両利き」の状態

目先の利益に捉われた場合には・・・

知識の幅を拡げつつ、深化させる「バランス」が重要

成功の罠

両利きの経営(2016年)

既存企業のイノベーション成功させるためには、

・既存事業の効率化と漸進型改善(知の深化)・新規事業の実験と行動(知の探索)

の両者を同時に行う「両利きの経営」が必要。

その理由としては、

① 既存企業の事業運営は、事業が成熟するに伴い「深化」の実施に偏る傾向があること② 「探索」の実施には、既存の組織能力と資産の活用が重要であること

が挙げられている。

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55

3.「人」の変革の方向性

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56

兼業・副業の増加

(出所)総務省「就業構造基本調査」を基に作成。

副業を希望する者は、近年増加傾向。

他方、実際に副業がある者の数は、横ばい傾向。

(万人)

330

255 262

234

268

325 331346

368

424

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

1997 2002 2007 2012 2017

副業がある者

副業を希望する者

副業がある者、希望する者の推移

Page 58: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

57

多様な働き方を望む個人はシニアでも増えてきている

兼業・副業などの多様な働き方を望む個人が増えてきており、若者のみならず、ミドルシニアも含め、年齢層に関わらず増加してきている。

年代別の副業希望者割合(追加就業希望者数/有業者)

(出所)総務省「就業構造基本調査」を基に作成。

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兼業・副業は他業種での経験を積む機会にもなっている

「医療・福祉」では同じ業種内で副業を行うことが多い。他業種においては、本業とは異なる業種での副業を行う者が多く、多様な経験を積む機会となっている。

58(出所)総務省「平成29年就業構造基本調査」を基に作成。(注)副業者数上位6業種に限定。

同業種

51.0%

同業種

30.8%

同業種

32.3%

同業種

41.5% 同業種

28.7% 同業種

14.4%

13.0%

19.4% 16.5%

16.9%

21.1%

22.2%

9.5%

16.0%14.8%

13.3%

19.5%

19.3%

7.9%

7.6% 12.4%

10.1%11.2%

16.9%

7.8%

6.8%6.4%

8.6%7.6%

4.8%

2.0%

4.7% 3.4%

1.8% 4.3%

3.4%

8.8%14.7% 14.2%

7.8% 7.7%

18.9%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

医療・福祉 卸売業・小売業 その他サービス業 教育・学習支援業 宿泊業・飲食サービス業 製造業

その他

製造業

医療・福祉

その他サービス業

卸売業・小売業

宿泊業・飲食サービス業

計21万人 計20万人 計19万人 計12万人 計10万人計11万人

製造業

その他

その他サービス業

宿泊業・飲食サービス業

医療・福祉

教育・学習支援業

その他

卸売業・小売業

製造業

教育・学習支援業

その他サービス業

医療・福祉

その他

製造業

医療・福祉

宿泊業・飲食サービス業

教育・学習支援業

その他

製造業

その他サービス業

宿泊業・飲食サービス業

教育・学習支援業

卸売業・小売業

その他

その他サービス業

宿泊業・飲食サービス業

教育・学習支援業

卸売業・小売業

医療・福祉

卸売業・小売業

業種別における副業の業種の割合

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59

兼業・副業により本業の仕事の効率上昇やモチベーションアップにもつながる

副業を行うことにより、本業への貢献意識や集中力、効率性、モチベーション等について、9割の副業者が本業に支障がないと回答。2割の副業者は本業へのモチベーション等が高まっていると回答。

14.4

18.1

17.2

23.1

22

21.3

74.1

74.8

75.1

66.5

68.4

72.9

11.5

7.1

7.7

10.4

9.6

5.8

本業の会社への忠誠心

本業の業務の目標達成意識

本業の職場への貢献意識

本業の仕事のモチベーション

本業の仕事での集中力

本業の仕事での効率性

高まった 変わらない 低下した

(副業者n=1,082)

本業への意識

本業での状態

(出所)パーソル総合研究所「副業の実態・意識調査」(2019年2月)を基に作成。

副業による本業への変化

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60

兼業・副業が本業での賃金に与える影響

日本では、副業経験は、管理職や専門・技術職などの主に思考・分析能力が必要な仕事に従事する従業者の本業での賃金を高めることが指摘されている。

また、ボランティアも同様の傾向がみられるが、副業に比べて、その効果は限定的。

副業経験が賃金に与える影響(対 副業経験なし従業者)

-6%

13%

36%

-10%

0%

10%

20%

30%

40%

運動

タスク

コミュニケーション

タスク

思考・分析

タスク

ボランティア経験が賃金に与える影響(対 ボランティア経験なし従業者)

-1%

1%

7%

-10%

0%

10%

20%

30%

40%

運動

タスク

コミュニケーション

タスク

思考・分析

タスク

明確な相関は見られず

明確な相関は見られず

(出所)Kawakami (2019) 「Multiple job holding as a strategy for skills development」を基に作成。元データは、慶應家計パネル調査(2004-2016年)。

(注)グラフは、副業(ボランティア)を始めた従業者の、副業経験(ボランティア経験)を持たない従業者と比較した、賃金の増加分を示している。なお、ここでの「賃金」は、本業の1時間当たり賃金を、「運動タスク」は主に運動能力が求められる仕事(製造・建築作業、運輸・通信事業等)、「コミュニケーションタスク」は主に対人能力が求められる仕事(サービス職、販売職等)、「思考・分析タスク」は主に思考能力・分析能力が求められる仕事(管理職、専門・技術職、情報処理技術職等)を表す。

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61

兼業・副業の促進は起業促進にも繋がる

スウェーデンではハイテク産業の起業家のうち、4割が副業で起業している。

また、本業で起業した者6割のうち、2割は副業の起業後に本業になった者である。

本業で起業し

た者

1225人

56%

副業で

起業した者

966人

44%

副業で起業を経由した者

約20%

スウェーデンのハイテク産業の起業家の内訳(起業をしている者2,191人調査)

(注)1994年にスウェーデンのハイテク産業に新規就業した44,613人のうち、2001年時点で起業している者2,191人に調査。(出所)Folta, Delmar, Wennberg(2010)「Hybrid entrepreneurship. Management Science」を基に作成。

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62

米国における「ギグ・エコノミー」の進展

米国では、新しい就業形態により、インターネットを通じて短期・単発の仕事を請け負い個人で働く者が増加しており、「ギグ・エコノミー」と呼ばれている。

高齢者であるほど割合が高く、近年、顕著に増加。高齢者の就業機会の拡大に貢献。

6.7%

10%

14.1%

7.1%

10.4%

15.1%

6.4%

14.3%

23.9%

0

5

10

15

20

25

30

16-24 25-54 55-75

1995 2005 2015

新しい就業形態(Alternative Work Arrangements)

割合の推移(1995年-2015年)(%)

(注)新しい就業形態(Alternative Work Arrangemets):フリーランス、請負等(出所)Katz and Krueger(2016) 「THE RISE AND NATURE OF ALTERNATIVE WORK ARRANGEMENTS IN THE UNITED STATES, 1995-2015」を基

に作成。

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63

日本においても、フリーランサーはミドル・シニアが中心

日本における「フリーランサー」の年齢構成を見ると、40代以上のミドル・シニアが半数以上を占める。

「フリーランサー」の年齢構成

(注)ランサーズ株式会社が行ったアンケート調査(2018年2月に実施)。対象は過去12ヶ月に仕事の対価として報酬を得た全国の20~69歳の男女。有効回答数は3,050人、そのうちフリーランスは1,550人。ここでのフリーランスの定義は、①副業型すきまワーカー(1社のみ雇用あり、副業あり)、②複業系パラレルワーカー(2社以上と雇用あり、常時雇用もしくは一時雇用でプロ意識を持つ者)、③自由業系フリーワーカー(雇用関係がないが、プロ意識を持つ者)、④自営業系独立オーナー(働き手が1名の法人経営者)の合計。

(出所)ランサーズ「フリーランス実態調査2018年版」

12.1%

21.6%

26.5%

23.6%

16.2%

20代60代以上

30代

40代

50代

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19 34

36

24

20 19

8

21 6

11 16

8 5

9 18

39

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1985年 2015年

日本における「雇用的自営等」の増加

(注)「雇用的自営等」は、「伝統的自営業」「士業等」以外の雇人のいない業主(人)。なお、「雇用的自営等」の「その他」には、デザイナーや写真家、事務従事者等が含まれる。

(出所)総務省「国勢調査」より作成。「雇用的自営等」の区分は、山田久「働き方の変化と税制・社会保障制度への含意(平成27年9月 政府税制調査会資料)」による。

我が国においても、「雇用的自営等」が増加している。

「雇用的自営等」の推移

1985年 ⇒ 2015年

学習塾講師 ▲8万人

合計 128万人

(万人)

保健・医療従事者 +4万人

その他 +21万人

運搬等従事者 +13万人

販売従事者 ▲1万人

サービス従事者 ▲12万人

建設等従事者 +15万人

合計 164万人

技術者 +5万人

64

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65

個人事業主・フリーランスの満足度は高い

会社員よりも個人事業主・フリーランスの方が満足度が高い。特に「達成感/充実感」「スキル/知識/経験の向上」は大きく差がついている。

(出所)プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス白書2019」を基に作成。

0 20 40 60 80 100

達成感/充実感

スキル/知識/経験の向上

仕事上の人間関係

就業環境(働く時間/場所など)

プライベートの両立

収入

社会的地位

非常に満足 満足

個人事業主・フリーランスと会社員の満足度比較

個人事業主・フリーランスn=869会社員n=1,030

47

45.2

31.8

27.1

17.5

11.6

39.2

非常に満足 満足

(%)

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66

企業の学びへの投資額は低い水準に留まる①

企業の人材投資(OJT以外)は国際的にみて低い水準。

人材投資(OJT以外)の国際比較(対GDP比)

(出所)宮川(2018)「生産性とは何か」を基に作成。

2.3

1.7

1.5

2.3

1.1

0.4

2.1

1.9

1.21.1 1.1

0.1

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

米国 フランス ドイツ 英国 イタリア 日本

1995-2004 2005-2012

(%)

Page 68: 第四次産業革命に向けた 産業構造の変化と方向性 に関する基 …0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 フ ァ イ ザ ー ジ ョ ン ソ ン

2.04%

2.21%2.36%

2.16%

1.58%

1.28%

1.53%

1.76%

1.36%

1.27%0.31%

0.34%

0.38%

0.36%

0.27%

0.29%

0.28%

0.33%

0.25%0.24%

0.20%

0.25%

0.30%

0.35%

0.40%

0.45%

0.50%

1.00%

1.25%

1.50%

1.75%

2.00%

2.25%

2.50%

1983年 1988年 1993年 1998年 2003年 2008年 2013年

対労働費用総額(左軸)

対現金給与以外の労働費用(右軸)

67

企業の学びへの投資額は低い水準に留まる②

日本の企業の人材・教育訓練費(Off-JT)は長期的には下落傾向にある。

企業の人材・教育訓練費(Off-JT)

(注) 企業の人材・教育訓練費を労働費用で割った値。(出所)平成28年第15回経済財政諮問会議資料を参考に、厚労省「就労条件総合調査」等から作成(1983年は「労働者福祉施設制度等調査」、1985~1998年は「賃金労働

時間制度等総合調査」)より作成。企業の労働費用総額、労働費用総額から現金給与を除いた額に対する、教育訓練費の割合。