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東久留米市の財政分析 ~平成 27 年度決算で見る現状と課題~ 平成 28 年 10 月 東 久留米市企画経営室

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東久留米市の財政分析

~平成 27 年度決算で見る現状と課題~

平 成 2 8 年 1 0 月

東久留米市企画経営室

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目 次

東久留米市の財政について 1

◎ 市政施行後の決算推移 ~財政構造はどのように推移してきたのか?~ 1

◎ 平成 27 年度普通会計決算 6

◎ 歳出経常経費充当一般財源等の状況 9

◎ 歳出構成について ~ 一般財源 10,000 円の使い道 ~ 11

歳入歳出決算額の直近 10 年間の推移から見る現状と課題 13

◎ 主な歳入の状況 13

◎ 人件費 16

◎ 物件費 18

◎ 維持補修費 20

◎ 扶助費 22

◎ 補助費等 24

◎ 繰出金 26

◎ 投資的経費 28

◎ 公債費 30

経常収支比率の現状認識と臨時財政対策債の取り扱いについて 33

◎ 経常収支比率の現状認識 33

◎ 歳入歳出経常一般財源等の比較からみる現状分析 35

◎ 臨時財政対策債について 36

◎ 臨時財政対策債借入れ抑制の検討 39

基金の現状認識について 41

◎ 財政調整基金 41

◎ 特定目的基金 42

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東久留米市の財政について

◎ 市政施行後の決算推移 ~財政構造はどのように推移してきたのか?~

上のグラフは平成 27 年度決算まで、普通会計ベースでの過去 46 年間の推移です。

前半は人口の急増に伴い、中盤にかけてはバブル景気等にも乗り、歳入歳出決算規模は年々

増加しています。特に、行政センター(市庁舎)建設のピークとなった平成 8 年度には、歳出

決算規模が 370 億円台となりました。しかしながら、平成 12 年度以降は、人口が増加しつ

つも決算規模は横ばいの状況であり、平成 20 年度までおよそ 330 億円台での推移が続きま

す。

平成 21 年度は、国の経済対策(定額給付金等)といった単年度の特殊要因があったことに

より、歳入、歳出ともに大きく増加し、平成 22 年度には子ども手当の創設や、生活保護費の

増、都市計画道路整備事業の増加などにより、更に増加しました。

その後、平成 23 年度においては、社会保障関係経費の増加があったものの、定員管理計画

による職員数の減少や地域手当支給率の減少などによる人件費の減少、公債費などの減少によ

り、歳入、歳出ともに前年度より減少し、平成 24 年度においても、やはり社会保障関係経費

は増加したものの、定員管理計画に基づく定数削減や退職手当負担金率の引下げなどによる人

件費の減少、普通建設事業費の減少などにより、前年度より更に減少しています。

平成 25 年度及び平成 26 年度では、社会保障関係経費の増加に加え、東京国体の開催や、

6 つの選挙が執行されたことに伴う時間外勤務手当の増加による人件費の増加、消費税率の引

き上げに係る国の経済対策費の増加などにより、再び増加する結果となっています。

平成 27 年度は、歳入では、消費税率引き上げによる影響の平年度化に伴い、地方消費税交

付金が大きく増加し、歳出では、減税補填債のほとんどが償還完了したことに伴う公債費の減

少や普通建設事業費が減少となる一方で、前年度決算剰余金のうち、当年度に償還している繰

越金、財政調整基金への法定分積立等を除いた額を公共施設等整備基金へ積立てたことによる

積立金の増加、また、引き続く社会保障関係経費の増加、国の経済対策を活用したプレミアム

付き商品券の発行により歳入歳出ともに前年度より増加する結果となりました。

この推移を、別の視点から分析すると、次のようになります。

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上のグラフは、人口の推移に対して、歳入では市税のみ、歳出では人件費(特別職の報酬や

一般職員の給料、退職金、共済費などに要する支出)・扶助費(社会保障の一部として各種法

令に基づき、金品、物品などの給付に要する支出)・公債費(借入金返済に要する支出)から

なる、義務的経費(地方自治体の経費のうち、法令や性質上、支出が義務づけられており、市

の裁量で削減することが難しい経費)のみで比較したものです。

これを見ると、決算の推移とは若干異なり、市税は平成 5 年度まで堅調に増加していますが、

平成 9 年度以降、人口はほぼ横ばいであるのに対し、市税は平成 16 年度まで減少しています。

その後、税制改正などにより少しずつ増加していたものの、ピークである平成 5 年度と比較

すると大きく下回っており、平成 21 年度以降は、日本経済の低迷により減少傾向にありまし

た。平成 25 年度は、宅地開発の影響による固定資産税の増加や、税源移譲による市たばこ税

の増加などにより増加に転じ、平成 26 年度においても前年度と同様に固定資産税が増加し、

さらに、日本経済の景気回復基調の影響などによる市民税の増加などにより、前年度に引き続

き増加しています。しかし、平成 27 年度では、前年度に引き続き固定資産税の増加がある一

方で、都市計画税の税率引き下げによる減少や、個人所得の落ち込みにより前年度を下回る結

果となっています。

一方、義務的経費の推移を見てみると、介護保険制度の創設に伴い、一部の事務経費が一般

会計から特別会計へ移行されたため、平成 12 年度に若干の減少はあるものの、それ以外は増

加傾向にあります。平成 24 年度は、扶助費が依然として増加する中、定員管理計画に基づく

職員定数削減や退職手当負担金率の引下げによる人件費の減少や公債費の減少により、平成

23 年度と比べて減少しましたが、平成 25 年度は扶助費の増加に加え、東京国体の開催や 5

つの選挙が執行されたことに伴う時間外勤務手当の増加による人件費の増加、地方債の繰上償

還を行ったことによる公債費の増加により増加に転じ、平成 26 年度においては人件費や公債

費が減少する中、消費税率の引き上げに係る国の経済対策である臨時福祉給付金や子育て世帯

臨時特例給付金の給付による増加、新たな認可保育所の開園による保育運営費(管内)の増加

などによって扶助費が増加しています。平成 27 年度においても、公債費が減少する一方で、

新たな認可保育所の開園による保育運営費(管内)の増加や、子ども・子育て支援新制度の開始、

その他社会保障経費の増加などにより扶助費が大幅に増加し、前年度に引き続き増加となって

います。

また、市税と義務的経費を比べてみると、平成 10 年度までは市税の方が義務的経費を上回

っていました。しかしながら、平成 11 年度以降は義務的経費の方が市税より大きくなってお

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り、その差は拡大傾向にあります。

これまで、その差がピークであった平成 5 年度では、市税収入の方が義務的経費より 34億

4,286 万 8 千円上回っていましたが、平成 11 年度以降は義務的経費の方が上回っており、

平成 27 年度は 39 億 3,583 万 3 千円上回り、その差のピークを逆転する結果となりました。

20 年前と比べて、市税は 4,090 万 4 千円減少し、義務的経費は 54 億 8,707 万 8 千円増

加しており、市税と義務的経費に視点をあてた場合、市の財政状況は 55 億 2,798 万 2 千円

悪化したということになります。

義務的経費の中でも扶助費は、支出額の約 3/4 は国庫支出金や都支出金などの特定財源が

充当されるため、市税の全てが義務的経費に充てられているということではありませんが、義

務的経費が増加し続けると、他の市民サービスに充てられる財源が少なくなるという点からも、

財政の硬直化を生む大きな要因となっています。

では、この義務的経費が増加の一途をたどっている要因はどこにあるのでしょうか。

上のグラフは、人口と義務的経費を構成している人件費、扶助費、公債費を比較したもので

す。

人件費は平成 9 年度の 97 億 9,899 万 1 千円をピークに、年々減少していることが分かり

ます。平成 22 年度に大きく減少していますが、これは、職員人件費の抑制に加え、消防事務

を東京消防庁に事務委託したことによるものです。更に、平成 23 年度には、職員数の削減に

加え、地域手当の支給率の見直しを行い、前年度より 2 億 962 万 1 千円減少し、平成 24 年

度には、定員管理計画に基づく職員定数削減や退職手当負担金率の引下げなどにより、前年度

より4億 9,775 万 7 千円減少しています。平成 24年度以降は、東京国体の開催や選挙が執

行されたことに伴う時間外勤務手当の増加等により、若干の変動はあるものの、概ね横ばいで

推移しています。

一方で、扶助費は人口の伸びにほぼ比例してきましたが、平成 19 年度以降の伸び幅は非常

に大きく、平成 19 年度には 60 億円台、平成 21 年度には 70 億円台、平成 22 年度には 90

億円台となり、平成 23 年度には、ついに 100 億円を超えました。平成 27年度においても、

障害福祉サービス費や生活保護費の増加に加え、子ども・子育て支援新制度の開始、新たな認

可保育所の開園による保育運営費(管内)の増加などにより、前年度と比べ 7 億 3,417 万 2

千円増加の 124 億 1,542 万 1 千円という結果となっています。

扶助費が増加している状況は、社会経済状況の低迷に加え、高齢化が進んだことなどによる

地域社会全体の担税力の低下傾向と、社会保障関係経費の支出が増加し続けている、厳しい現

状を表しているとも言えます。

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上のグラフは、平成元年度からの 65 歳以上人口と扶助費内訳の推移ですが、平成 12 年度

から介護保険制度が創設され、老人福祉費の多くが介護保険特別会計に移行されたため、介護

保険特別会計への一般会計からの繰出金も計上しています。

これを見ると、65 歳以上人口が大きく増加していることに加え、児童福祉費や生活保護費

の増加が目立つことがわかります。平成元年度と比較すると、平成 27 年度は 65 歳以上人口

が約 4 倍、児童福祉費が約 7 倍、生活保護費が約 6 倍となっており、扶助費全体の決算額で

は、約 6 倍に増加しています。

公債費の推移については、次のように見ることができます。

上のグラフは、地方債の借入れと償還(公債費)、地方債現在高の推移です。

地方債には、施設建設や道路整備などの投資的経費に対する財源としての普通地方債と、経

常的な一般財源の補てんとして活用することができる臨時財政対策債等があります。

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これを見ると、平成 2 年度から平成 8 年度までの間、投資的経費が 60 億円を超えており、

平成 4 年度には 110 億を超え、建設事業のピークであったことが分かります。これに伴い、

地方債の借入れも増加し、平成 7 年度は 48 億 1,010 万円、平成 8 年度は 52 億 700 万円

を借りているため、地方債現在高も大きく増加しています。

また、平成 13 年度からは地方交付税の振り替わり措置である臨時財政対策債制度が創設さ

れましたが、平成 15 年度以降、この借入れが増加したことにより、平成 17 年度まで地方債

現在高は再び増加しています。このため、公債費(元利償還)も増加傾向となり、平成 19 年

度以降は 30 億円台の返済で推移しています。また、平成 22 年度では、旧保健福祉センター

及び、消防事務委託に係る地方債の繰上償還を行っているため、前年度より増加しています。

現在は、地方債償還元金(返済する元金)以上に新規の借入れを行わない、プライマリーバ

ランスを保持する管理を行い、現在高の着実な減少に努めていますが、平成 27 年度において

も、過去の借入れに対して依然として約 26.3 億円と多額の返済(元金と利子の合計額)とな

っています。これは、現在の財政状況を硬直化させている一要因となっています。

また、社会経済状況の影響により市税や地方譲与税、税連動交付金などの歳入が減少した場

合、減少分のうち地方交付税により補われなかった分については、その振り替わりである臨時

財政対策債の発行による借り入れに頼らざるを得ないという現状も、後年度の公債費を増加さ

せる要因となっています。

このような義務的経費の増加は、その他の経費に対する予算配分にも大きな影響を及ぼして

おり、毎年度の予算編成において課題の 1 つとして挙げられている状況です。

【参考 1:地方債残高の推移】

【参考 2:歳出性質別経費の用語説明】

項  目 説     明

人件費 特別職の報酬や一般職員の給料、退職金、共済費などの支出

扶助費 社会保障の一部として各種法令に基づき、金品、物品などの給付に対する支出

公債費 借金返済に対する支出

物件費 施設の光熱水費、消耗品や備品購入、各種の委託料などの支出

維持補修費 道路や学校などの公共施設の修繕に使った支出

補助費等 一部事務組合、各種団体などへ負担金、補助金としての支出

積立金 各種の基金(市の預金)に資金を積み立てた支出

投資及び出資金、貸付金 財団法人などへの出資金や各種の資金の貸し付けに使った支出

繰出金 特別会計に対して、各種の事業資金としての支出

投資的経費 道路、学校などの公共施設の建設、改良などの整備への支出

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◎ 平成 27 年度普通会計決算

【歳入】 (単位:千円)

【歳入の概況】

家屋の新築棟数の増加による固定資産税の増加がある一方で都市計画税の税率変更に伴う

都市計画税の減少などにより、平成 27 年度の市税は前年度より 1 億 1,305 万 6 千円の減少

となっています。

また、一般財源(使途が限定されず、自由に使えるお金)の根幹となる、市税、地方譲与税、

税連動交付金、交通安全対策特別交付金、地方特例交付金、地方交付税の合計(平成 27 年度

227 億 9,638 万 4 千円、平成 26 年度 219 億 6 万円)は、前年度より 8 億 9,632 万 4 千

円増加しており、10 年前の平成 17 年度からは 24 億 7,238 万 8 千円増加しています。

市税16,584,595

地方譲与税・

税連動交付金・

交通安全対策

特別交付金・

地方特例交付金

3,271,259

地方交付税

2,940,530

国都支出金

12,323,715

地方債

1,932,800

その他

2,632,384

平成27年度

歳入39,685,283

市税

16,697,651

地方譲与税・

税連動交付金・

交通安全対策

特別交付金・

地方特例交付金

2,149,783

地方交付税

3,052,626

国都支出金

11,933,128

地方債

2,380,600

その他

2,555,171

前年度は・・・

平成26年度

歳入38,768,959

市税

15,287,488

地方譲与税・

税連動交付金・交通安全対策

特別交付金・

地方特例交付金

2,894,592

地方交付税

2,141,916

国都支出金

6,512,224

地方債

2,652,600

その他

5,804,871

10年前は・・・

平成17年度

歳入35,293,691

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【歳出】 (単位:千円)

【歳出の概況】

人件費(平成 27 年度 54 億 7,664 万 1 千円)は、国勢調査の実施に伴う報酬の増加や、

期末勤勉手当支給月数の改定に伴う期末勤勉手当の増加などにより、前年度より 1 億 3,868

万 2 千円の増加、平成 17 年度との比較では、27 億 490 万 1 千円の減少となっています。

扶助費(平成 27 年度 124 億 1,542 万 1 千円)は、障害福祉サービス費や生活保護費の

増加に加え、子ども・子育て支援新制度の開始、新たな認可保育所の開園による保育運営費(管

内)の増加などにより、前年度と比べ 7 億 3,417 万 2 千円増加し、平成 17 年度より 69 億

7,813 万円の増加と、約 2.3 倍となっています。扶助費の大部分は法律により支出が義務付

人件費

5,476,641

扶助費

12,415,421

公債費

2,628,366

物件費

6,294,503

補助費等

4,052,635

繰出金

4,647,205

投資的経費

1,720,255

その他

1,143,598

平成27年度

歳出38,378,624

人件費

5,337,959

扶助費

11,681,249

公債費

2,849,585

物件費

6,060,140

補助費等

4,264,712

繰出金

4,484,063

投資的経費

1,940,628

その他

983,403

前年度は・・・

平成26年度

歳出37,601,739

人件費

8,181,542

扶助費

5,437,291

公債費

2,848,369

物件費

5,216,128

補助費等

2,744,570

繰出金

3,977,713

投資的経費

2,596,248

その他

2,480,835

10年前は・・・

平成17年度

歳出33,482,696

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けられているものであり、その経費の約 3/4 は国や都の支出金を財源としていますが、市の

負担も 38 億 5,004 万 8 千円(平成 17 年度は 16 億 9,626 万 6 千円)と、財政を硬直化

させる大きな要因になっています。

また、物件費は、需用費や備品購入費など事務費の抑制に努める一方で、社会保障税番号制

度に係るシステム修正委託や、小学校給食調理業務委託などの委託料の増加により、前年度と

比べ 2 億 3,436 万 3 千円増加しています。

市ではアウトソーシングを進めてきており、委託料などの物件費は、その進捗とともに増加

していくと見込んでいますが、これにより、後年度の職員人件費や臨時職員賃金などの人的な

コストを抑制していく効果があります。

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◎ 歳出経常経費充当一般財源等の状況

【経常経費充当一般財源等の概況】

事業の中には、経費全額を市税や地方交付税等からなる一般財源(使途が限定されず、自由

に使えるお金)により実施しているものもあれば、そのほとんどを国や都からの補助金などの

特定財源(使途が限定されているお金)により実施しているものもあり、一概に、「経費が多

額の事業だから一般財源も多く使われている」、「経費が少額の事業だから一般財源はほとんど

使われていない」とは言えません。

一般財源は、経費が増加している扶助費などの経常的事業のほか、新たな事業や施設整備な

どの臨時的事業の財源としても活用しており、新たな行政需要に対応するためにも、その管理

をすることは必要なことです。

そこで、上のグラフは、「経常的に支出されている経費のうち、市税を中心とした一般財源

がどれぐらい使われているか(経常経費充当一般財源等ベース)」を比較してみたものです。

歳出総額に差はありますが、経常的な事業費(支出)には、概ね 210 億円前後の一般財源

が使われています。そのうち人件費の経常経費充当一般財源等は、平成 27年度で 48 億 50

万 3 千円と、前年度より 1,459 万円の減少、10 年前の平成 17 年度より 25 億 4,109 万 8

千円の減少となっています。

また、公債費(借金の返済)も、普通建設事業などの財源として借入れを行う普通地方債に

ついて、毎年度、地方債償還元金(返済する元金)以上に新規の借入れを行わない管理(プラ

イマリーバランスを保持する管理)による成果として、平成 17 年度と比べ 2 億 2,314 万 4

千円減少し、前年度と比べると、これまで毎年約 3 億円の償還のあった減税補填債の大部分が

償還完了となった影響により公債費総額は、2 億 2,436 万円減少しています。

一方、物件費(施設の光熱水費、消耗品や備品購入、各種の委託料など)の経常経費充当一

般財源等については、消耗品や備品購入などを予算時から抑制し、平成 21 年度までは年々減

少傾向にありましたが、平成 22 年度以降は増加傾向にあります。

平成 27 年度においては、公金統合収納事務委託の皆増や、小学校給食調理業務委託の増加

人件費

7,341,601千円人件費

4,815,093千円

人件費

4,800,503千円

扶助費

1,695,816千円扶助費

3,422,048千円

扶助費

3,849,948千円

公債費

2,848,369千円 公債費

2,849,585千円

公債費

2,625,225千円

物件費

3,177,283千円 物件費

3,494,633千円

物件費

3,599,247千円

補助費等

1,798,611千円

補助費等

3,137,578千円

補助費等

2,850,138千円

繰出金

1,734,204千円

繰出金

3,181,456千円

繰出金

3,243,076千円

その他

229,668千円

その他

175,464千円

その他

159,912千円

平成17年度 平成26年度 平成27年度21,075,857千円 21,128,049千円18,825,552千円

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などにより、前年度と比べて 1 億 461 万 4 千円の増加となり、経常的な物件費については、

業務の委託化が進む限り、増加傾向は変わらないものと想定されます。

また、扶助費は前年度より 4 億 2,790 万円の増加、平成 17 年度より 21 億 5,413 万 2

千円の増加となっているほか、高齢化や医療費の伸びなどにより、繰出金は、平成 17 年度よ

り 15 億 887 万 2 千円の増加となっています。この繰出金は法定繰出金が多くを占めていま

すので、抑制することは難しい側面があります。

今後の特別会計のあり方を含め、扶助費の増加は大きな課題となっています。

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◎ 歳出構成について ~ 一般財源 10,000 円の使い道 ~

下記は、10 年前の平成 17 年度と比べて、平成 27 年度、平成 26 年度(前年度)の「市

税を中心とした一般財源が、どのような内訳(構成割合)で使われているか」、歳出決算額の

うち、各経費に占める一般財源の割合を、10,000 円の内訳に置き換えてみたものです。

【10,000 円の使い道① 経常的経費・臨時的経費】

経常的経費は、平成 17 年度は一般財源 10,000 円のうち約 77%、平成 26 年度は約 86%、

平成 27年度においては約 85%となっています。

平成 27年度は、臨時的経費については積立金や補助費等などの増加により、前年度に比べ

4 億 6,711 万円増加し、経常的経費については補助費や公債費が減少したものの、物件費や

扶助費などが増加した結果、前年度に比べ 5,219 万 2 千円増加しています。その結果、使っ

た一般財源の総額を 10,000 円に置き換えてみると、前年度より臨時的経費に使った一般財源

の額は 159 円増え、経常的経費の額は 159 円減る結果となりました。

しかしながら、経常的経費に使われた一般財源の割合は依然として多く、東久留米市におけ

る財政の硬直化の程度は引き続き厳しいものであり、大きな課題の 1 つとなっています。

経常的経費

7,690円

経常的経費

8,647円経常的経費

8,488円

臨時的経費

2,310円

臨時的経費

1,353円臨時的経費

1,512円

平成17年度 平成26年度 平成27年度

Page 14: 東久留米市の財政分析 - Higashikurume...4,286 万8 千円上回っていましたが、平成11 年度以降は義務的経費の方が上回っており、 平成27年度は39億3,583万3千円上回り、その差のピークを逆転する結果となりました。20

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【10,000 円の使い道② 一般財源に占める経常的経費の内訳・臨時的経費】

一般財源に占める経常的経費の内訳を分析すると、人件費(平成 17 年度 2,999 円→平成

27 年度 1,928 円)と、公債費(平成 17 年度 1,163 円→平成 27 年度 1,055 円)は減少

傾向にあります。

一方、高齢化や社会経済状況の低迷、医療費の増加などにより、扶助費(平成 17 年度 693

円→平成 27 年度 1,547 円)や、特別会計の運営のために支出する繰出金(平成 17年度 708

円→平成 27 年度 1,303 円)は増加傾向にあり、経常的経費の割合を増加させる要因となっ

ています。

その結果、平成 27 年度での経常的な維持補修費は、10,000 円に占める内訳では 64 円に

なっていますが、一般財源の大幅な増加を見込むことが難しい中、このような状況は、老朽化

が進む施設の定期的なメンテナンスによるライフサイクルコストの抑制という観点からも大

きな課題です。

人件費

2,999円 人件費

1,976円人件費

1,928円

扶助費

693円扶助費

1,404円

扶助費

1,547円

公債費

1,163円 公債費

1,169円

公債費

1,055円

物件費

1,298円 物件費

1,434円物件費

1,446円

補助費等

735円

補助費等

1,287円補助費等

1,145円

繰出金

708円

繰出金

1,305円繰出金

1,303円

維持補修費

64円投資・出資・貸付金

0円

維持補修費

94円投資・出資・貸付金

0円

維持補修費

72円投資・出資・貸付金

0円

臨時的経費

2,310円

臨時的経費

1,353円臨時的経費

1,512円

平成17年度 平成26年度 平成27年度

Page 15: 東久留米市の財政分析 - Higashikurume...4,286 万8 千円上回っていましたが、平成11 年度以降は義務的経費の方が上回っており、 平成27年度は39億3,583万3千円上回り、その差のピークを逆転する結果となりました。20

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歳入歳出決算額の直近 10 年間の推移から見る現状と課題

地方公共団体の財政状況を表す指標として、経常収支比率や財政健全化法に基づく 4 指標な

どがありますが、東久留米市の平成 27 年度決算結果は、経常収支比率は前年度より数値が改

善し、財政健全化法に基づく 4 指標についても、実質公債費比率、将来負担比率ともに前年度

より数値が改善しています。

財政指標の数値が改善したことは一定の成果のように見えますが、これは、償還元金以上の

借入れを行わない管理などにより公債費が減少していることなどが要因となっている一方で、

経常収支比率については、多額の臨時財政対策債の発行による比率算出における分母の増大が

影響しているものでもあり、依然として、実態としての歳入歳出状況が好転しているとは言い

難い状況にあります。

そこで、最近 10 年間の主な歳入歳出決算額の推移(普通会計決算額ベース)を分析し、現

状と課題を考察してみます。

◎主な歳入の状況

市税は三位一体改革に伴う税制改正により、平成 19 年度に大幅に増加しましたが、世界的

な経済状況の悪化とその後の低迷による個人や法人の所得額の減少や、少子高齢化による生産

年齢人口の減少などにより、平成 21 年度から平成 24 年度までは減少傾向にありました。

その後も少子高齢化による担税世代の減少などは変わらないものの、平成 25 年度には宅地

開発に伴う家屋の新築棟数の増加などによる固定資産税の増加や、税源移譲による市たばこ税

の増加などにより、前年度と比べて 2 億 3,558 万 1 千円の増加となり、平成 26 年度におい

ても前年度と同様に固定資産税が増加し、さらに、日本経済の景気回復基調の影響などによる

市民税の増加などにより、4 億 8,994 万 2 千円増加しましたが、平成 27 年度は、固定資産

税の増加傾向が続く一方で、個人所得の減少や、都市計画税の税率を引き下げた影響により、

1 億 1,305 万 6 千円減少する結果となりました。

主な歳入の推移(単位:千円)

18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度

市 税 15,598,589 16,582,428 16,645,020 16,474,822 16,212,243 16,167,863 15,972,128 16,207,709 16,697,651 16,584,595

地方譲与税 960,379 242,441 232,938 218,511 212,253 206,340 193,427 184,135 175,566 184,509

税連動交付金 1,710,047 1,701,846 1,471,283 1,372,113 1,388,897 1,361,892 1,369,564 1,522,067 1,885,882 3,000,727

地方特例交付金 463,486 93,208 228,939 213,002 191,673 180,890 93,494 96,262 88,335 86,023

地方交付税 1,614,416 1,892,611 2,220,484 2,196,273 2,951,413 3,180,665 3,266,628 3,296,918 3,052,626 2,940,530

臨時財政対策債等 1,282,600 1,012,200 948,100 1,471,500 2,190,000 1,831,400 1,890,000 2,159,000 1,940,000 1,490,000

計 21,629,517 21,524,734 21,746,764 21,946,221 23,146,479 22,929,050 22,785,241 23,466,091 23,840,060 24,286,384

※1 税連動交付金…ここでは、利子割交付金、配当割交付金、株式等譲渡所得割交付金、地方消費税交付金、自動車取得税交付金に加え、

   交通安全対策特別交付金も含めた合計としています。

※2 臨時財政対策債等…減税補てん債(平成18年度まで借入。平成19年度に制度廃止)、臨時財政対策債(平成13年度~)の合計。

0

5,000,000

10,000,000

15,000,000

20,000,000

25,000,000

18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度

臨時財政対策債等

地方交付税

地方特例交付金

税連動交付金

地方譲与税

市 税

千円

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税連動交付金については、前年度と比べて 11 億 1,484 万 5 千円増加しており、これは消

費税率の引き上げの平年度化に伴う地方消費税交付金の増加によるものです。

地方交付税(普通交付税)は標準的な行政運営を行うのに必要な財源を確保するものとして

交付されるため、一般財源である市税や税連動交付金が減少すると増加する仕組みとなってい

ます。また、臨時財政対策債は、地方債という性質をもちながらも普通交付税の振り替わりと

され、地方財政法第 5 条の特例的な扱いとして発行が認められているものです。

このため、普通交付税と臨時財政対策債を足し合わせたものが実質的な交付税とも表現され、

共に地方自治体の財源不足を補うものとされています。

平成 21 年度以降はこの実質的な普通交付税が大きく増加していますが、これは扶助費の増

加などにより基礎的な行政運営経費が増加していること、景気の低迷により地方自治体が全国

的に疲弊してきていることから、地方財政措置による交付税の増加がなされたことによるもの

です。平成 26年度以降は、景気の回復基調や消費増税の影響により減少傾向となっています。

【参考】決算における市民 1 人当たりの市税 26 市比較

平成 27 年度

平成 26 年度

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000円

141,594

26市平均 170,679円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 144,368円

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000円

143,335

26市平均 171,021円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 145,018円

Page 17: 東久留米市の財政分析 - Higashikurume...4,286 万8 千円上回っていましたが、平成11 年度以降は義務的経費の方が上回っており、 平成27年度は39億3,583万3千円上回り、その差のピークを逆転する結果となりました。20

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平成 25 年度

市民 1 人あたりの市税決算額を多摩 26 市で比較すると、平成 25 年度は 21 位、平成 26

年度は 20 位、平成 27 年度は 21 位に位置しています。

また、平成 27 年度の 141,594 円は、26 市平均 170,679 円より 29,085 円下回り、近

隣 5 市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 144,368 円より 2,774

円下回っています。

平成 27 年度において前年度より 1,741 円減少しているのは、都市計画税の税率引き下げ

による影響が主な要因として考えられます。

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000円

139,230

26市平均 166,633円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 143,231円

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- 16 -

◎ 人件費

人件費は労働の対価として支払われる経費を指し、市長をはじめとする特別職や議員の報酬、

職員の給料、各種委員会の委員報酬、退職手当組合に支払った負担金などが含まれます。

人件費は大部分が経常経費であり市の歳出総額に占める割合も大きいことから、その改善が

求められてきました。

こうした状況を受け市では、国の公務員制度改革に基づく東京都人事委員会勧告に準拠し、

給与制度の適正化を進めてきました。また、第 1 期から第 4 期までの東久留米市定員適正化(管

理)計画(平成 10 年度から平成 27 年度)では、平成 9 年度では、1,019 名であった職員数が

平成 27 年度では 597 名へと、総体での人件費の削減に向け取り組んできました。平成 28

年度以降は、東久留米市財政健全計画[実行プラン]に沿って職員給与の適正化を図っていきま

す。

上のグラフでは、平成 21 年度と平成 22 年度の人件費決算額を比較すると 16 億 983 万

3 千円と大きく減少しています。これは上記の給与制度の適正化と定員適正化計画が達成され

たことの他に、平成 22 年度から消防事務を東京消防庁へ委託したことにより、消防職員が皆

減となったことなどが要因となっています。平成 27 年度においては、社会保障税番号制度に

係る時間外勤務手当の増加や、東京都人事委員会勧告に基づく期末勤勉手当支給月数の増加、

国勢調査実施に伴う調査員報酬の増加、厚生年金一元化に伴う負担金の増加などにより、前年

度より 1 億 3,868 万 2 千円増加する結果となりました。この結果を平成 18 年度と比較する

と、26 億 3,394 万 2 千円の減少となっています。

次のグラフは多摩 26 市の状況を示したものですが、平成 27 年度の東久留米市の市民 1 人

当たりの人件費は前年度と同じ 25 位となりました。平成 27 年度は決算額では前年度より

936 円増加しているものの、東久留米市は依然として低い水準にあります。

8,110,583 8,076,484 8,006,8667,754,597

6,144,7645,935,143

5,437,386 5,477,775 5,337,959 5,476,641

7,317,710 7,259,885 7,254,752 7,129,680

5,629,0225,411,597

4,943,695 4,912,077 4,815,093 4,800,503

18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度

決算額 経常経費充当一般財源等 単位:千円

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【参考】決算における市民 1 人当たりの人件費 26 市比較

平成 27 年度

平成 26 年度

平成 25 年度

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

26市平均 54,172円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 51,791円円

46,758

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

26市平均 54,049円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 51,696円円

45,822

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

26市平均 54,562円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 51,708円円

47,056

Page 20: 東久留米市の財政分析 - Higashikurume...4,286 万8 千円上回っていましたが、平成11 年度以降は義務的経費の方が上回っており、 平成27年度は39億3,583万3千円上回り、その差のピークを逆転する結果となりました。20

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◎ 物件費

物件費は、施設の光熱水費、消耗品や備品購入、各種の委託料などに使ったお金です。

この物件費の決算額は、アウトソーシング化(施設の管理運営などを、市が直接行わず、民

間に委託すること)による経常的な委託料の増加や、各年度での緊急的な施設修繕や備品の購

入状況等によっても変化するものです。

平成 21 年度は、国が経済対策として行った地域活性化交付金を活用して、小・中学校の教

育備品を整備したことにより一時的に増加し、平成 14 年度以来の 56 億円台となり、平成 23

年度には、児童館の指定管理委託を1館から 3 館に拡大したほか、小学校給食調理業務委託を

2 校拡大したことなど、経常的な委託料の増加により、再び 56 億円台になりました。平成 23

年度以降は毎年度増加しており、平成 27 年度には社会保障税番号制度に係るシステム修正委

託や、小学校給食調理業務委託などの委託料の増加により、前年度と比べ 2 億 3,436 万 3 千

円増加の 62 億 9,450 万 3 千円となっています。

物件費として支出されるのは事務費、委託費、備品購入費などであり、市民に直接的に給付

する扶助費、補助費等とは若干性質が異なります。そのため、市の歳出を抑制するには事務を

効率化する、各課で使用する消耗品の節減に努めるなどして物件費の抑制を図ることが一つの

方策となります。

そうすると、決算額に占める物件費の割合が小さい自治体は、歳出の精査、抑制が進んでい

て、割合の大きい自治体はそうではないかのような印象をうけますが、一方で、自治体が本来

所掌すべき事務を整理し、アウトソーシングによる民間活力の導入と、それによる経費削減を

積極的に行っている団体は物件費が増加するため、物件費の大小のみで判断することは難しい

と言えます。

それでは、本市の取り組み状況を過年度からの推移でみますと、物件費の経常経費充当一般

財源は平成 18 年度を除いて、平成 14 年度以降、平成 21 年度までは減少を続けてきました。

これは事務経費の縮減に努めてきたことによります。平成 18 年度の増加は、複数の施設で指

定管理者に管理運営業務を委託したことによるもので、同様に、平成 22 年度は、生涯学習セ

ンターに係る管理運営業務を指定管理者に委託などにより増加、平成 23 年度は児童館に係る

管理運営業務委託の拡大などにより増加、平成 24 年度は予防接種委託の拡大などにより増加、

平成 25 年度は図書館の地区館に係る管理運営業務を指定管理者に委託したことや、不燃ごみ

の収集運搬委託を拡大したことなどにより増加しています。

平成 26 年度は閉園に伴う保育園給食調理業務委託費の減少や、さいわい福祉センター管理

運営委託費などの減少により、前年度と比べて 2,795 万 8 千円減少しましたが、平成 27年

度においては、小学校給食調理業務委託の拡大や公金統合収納業務の委託などにより前年度と

比べて 1 億 461 万 4 千円の増加と再び増加に転じており、今後もアウトソーシング化が進む

限り、増加傾向に変わりはないものと想定されます。

物件費の抑制は重要な課題であり、アウトソーシング化に際しては、その他の経費の節減効

果も含め、長期的な視点により事務の効率化を図ることが大事であると考えます。

5,304,3225,499,071

5,175,069

5,641,8845,333,710

5,600,761 5,660,3885,956,082 6,060,140

6,294,503

3,380,0233,115,039 2,983,485

2,564,7212,778,459

2,970,2853,235,389

3,522,591 3,494,633 3,599,247

18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度

決算額 経常経費充当一般財源等

Page 21: 東久留米市の財政分析 - Higashikurume...4,286 万8 千円上回っていましたが、平成11 年度以降は義務的経費の方が上回っており、 平成27年度は39億3,583万3千円上回り、その差のピークを逆転する結果となりました。20

- 19 -

【参考】決算における市民 1 人当たりの物件費 26 市比較

平成 27 年度

平成 26 年度

平成 25 年度

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

90,000

100,000

26市平均 54,820円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 49,539円円

53,740

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

90,000

100,000

26市平均 53,390円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 48,170円円

52,021

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

90,000

100,00026市平均 50,969円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 46,359円円

51,165

Page 22: 東久留米市の財政分析 - Higashikurume...4,286 万8 千円上回っていましたが、平成11 年度以降は義務的経費の方が上回っており、 平成27年度は39億3,583万3千円上回り、その差のピークを逆転する結果となりました。20

- 20 -

◎ 維持補修費

維持補修費は、道路や学校などの公共施設の補修(修繕)などに使ったお金です。

この維持補修費は、予算編成時点からの抑制基調と執行段階での抑制努力により年々減少し

ていましたが、平成 22 年度決算額は 1 億 9,762 万 6 千円と前年度と比較して増加していま

す。これは国が経済対策として各自治体に交付した地域活性化・経済危機対策臨時交付金、地

域活性化・きめ細かな臨時交付金を活用して市内施設の改修事業などを行ったことによるもの

です。

平成 27 年度においては、スポーツセンター吸収式冷温水器整備工事、市庁舎等諸工事、学

童保育所諸工事の減少などにより、前年度と比べて 1,395 万 6 千円減少しています。

市内の各施設は建築年数が経過し、老朽化が進んでいるため、毎年一定程度の維持補修は欠

かせないものとなっています。更に、教育施設などの公共施設は、災害発生時の避難場所に指

定されていることや、定期的な維持補修により施設の耐用期間を延伸させることで、大規模な

施設改修を行うよりも財政負担が軽減されるケースがあることなどを考慮すると、計画的に施

設の補修を行うことが重要であり、この施設の補修を行うための財源確保と、財源措置が必要

となります。

280,715

175,323

150,789

131,470

197,626

174,122

197,475184,056

195,178181,222

254,393

121,868133,019

117,218129,963

150,290158,565

170,694 175,204159,912

18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度

決算額 経常経費充当一般財源等 単位:千円

Page 23: 東久留米市の財政分析 - Higashikurume...4,286 万8 千円上回っていましたが、平成11 年度以降は義務的経費の方が上回っており、 平成27年度は39億3,583万3千円上回り、その差のピークを逆転する結果となりました。20

- 21 -

【参考】決算における市民 1 人当たりの維持補修費 26 市比較

平成 27 年度

平成 26 年度

平成 25 年度

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,50026市平均 1,992円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 1,156円円

1,547

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,50026市平均 2,038円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 1,187円円

1,675

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,50026市平均 1,911円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 1,090円円

1,581

Page 24: 東久留米市の財政分析 - Higashikurume...4,286 万8 千円上回っていましたが、平成11 年度以降は義務的経費の方が上回っており、 平成27年度は39億3,583万3千円上回り、その差のピークを逆転する結果となりました。20

- 22 -

◎ 扶助費

扶助費は、社会保障の一部として法令に基づき、生活の維持を図る目的で、金品、物品など

を給付するために使ったお金であり、自治体が単独で行っている扶助も含まれます。

上のグラフのとおり、扶助費の決算額は年々増加しています。

これは少子高齢化を背景として社会保障関係経費が全般的に増えているためであり、東久留

米市固有の事由というよりは全国的に同様の状況にあると言うことができます。

平成 22 年度の決算額は、前年度と比較して 21 億 2,306 万 8 千円と大きく増加していま

すが、子ども手当の支給が開始されたことにより、それに関する事業費が 18 億 98 万 1 千円

であることから、増加した要因の大部分を占めています。

また、平成 23 年度の決算額は、前年度と比較して 8 億 4,488 万 8 千円増加し、101 億

4,744 万 2 千円と、100 億円を超えました。

平成 27 年度の決算額は、前年度と比較して 7 億 3,417 万 2 千円多い 124 億 1,542 万 1

千円と、引き続き大きく増加しています。これは、新たな認可保育所の開園による保育運営費

(管内)や子ども・子育て支援新制度の開始に伴う性質別の取り扱いの見直しが行われたこと

による増加が大きいものの、障害福祉サービス費、生活保護費などが依然として増加している

状況についても変わりなく、平成 18 年度の決算額と比較すると、約 2 倍の額となっています。

扶助費は市民生活に直結し、国の法令に基づき行われているものが多いことなどから、各扶

助の内容を変更することは難しいうえ、ここ数年は社会経済状況に回復基調がみられるものの

高齢化などを要因に、扶助の対象者は増加傾向にあり、歳出を抑制するのが困難な状況にあり

ます。

5,596,2756,142,402

6,567,2927,179,486

9,302,554

10,147,44210,531,665

10,925,77611,681,249

12,415,421

1,857,187 2,067,829 2,219,289 2,331,8832,730,559 2,864,888 3,093,893 3,283,389 3,422,048

3,849,948

18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度

決算額 経常経費充当一般財源等 単位:千円

Page 25: 東久留米市の財政分析 - Higashikurume...4,286 万8 千円上回っていましたが、平成11 年度以降は義務的経費の方が上回っており、 平成27年度は39億3,583万3千円上回り、その差のピークを逆転する結果となりました。20

- 23 -

【参考】決算における市民 1 人当たりの扶助費 26 市比較

平成 27 年度

平成 26 年度

平成 25 年度

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

160,000

円 26市平均 107,150円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 108,810円

105,999

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

160,000

円 26市平均 103,305円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 105,197円

100,273

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

160,000

円 26市平均 97,847円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 98,724円

93,856

Page 26: 東久留米市の財政分析 - Higashikurume...4,286 万8 千円上回っていましたが、平成11 年度以降は義務的経費の方が上回っており、 平成27年度は39億3,583万3千円上回り、その差のピークを逆転する結果となりました。20

- 24 -

◎ 補助費等

補助費等は、一部事務組合、各種団体などへ負担金、補助金として支払ったお金です。

東久留米市では、様々な団体支援、補助、助成を行っていますが、補助金の支出にあたって

は、東久留米市共通業務運用指針に基づき、妥当性(客観性があり、根拠のあるもの)、公平

性、透明性の高いものでなければならないというのが基本的事項です。

平成 21 年度に実施した定額給付金は事業規模も大きく、それが皆減となったことで平成

22 年度の補助費等の決算額は前年度と比較して減少となりましたが、一方で、経常経費充当

一般財源等の額は増加しています。

これは平成 22 年度から消防事務を東京都に委託したことに伴い、事務委託に対する東京都

への負担金が皆増となったことによるものです。

消防事務の東京都への委託は、大規模災害が発生した際に迅速に対応できる体制を整えるこ

とを目的として行われたものであり、事業額の増減のみでその意義を図るべきものではありま

せんが、事業費の比較を行うのであれば負担金が増加した一方で消防職員の人件費が減少して

いるため、事業費に大きな違いは無いと言うことができます。

平成 27 年度においては、国への返還金、子ども・子育て支援新制度の開始に伴う子育て家

庭福祉員運営費等補助金や幼稚園等就園奨励費補助金などの減少により、前年度と比べて決算

額は 2 億 1,207 万 7 千円減少し、経常経費充当一般財源等についても 2 億 8,744 万円減少

しています。

補助費等は、一部事務組合負担金等に対する負担金が大部分を占めているため、この負担金

額の増減に、補助費等の動向も大きく影響されますが、一部事務組合等に対する負担金は義務

的な要素が強いため、その改廃を論ずることは難しい一面があります。

一方で、補助交付金の中でも国や都の補助金を伴わない、市が独自に行っている補助金は、

東久留米市共通業務運用指針に照らし合わせて妥当であるか、時代のすう勢と照らし合わせて

必要なものであるか、といった視点から定期的に見直しを行う必要があります。

2,703,2502,919,740 2,819,205

4,805,487

4,326,4214,195,810 4,139,142 4,183,154 4,264,712

4,052,635

1,906,518 1,897,651 1,924,312 2,012,245

3,418,1243,261,546 3,287,857

3,138,011 3,137,578

2,850,138

18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度

決算額 経常経費充当一般財源等

Page 27: 東久留米市の財政分析 - Higashikurume...4,286 万8 千円上回っていましたが、平成11 年度以降は義務的経費の方が上回っており、 平成27年度は39億3,583万3千円上回り、その差のピークを逆転する結果となりました。20

- 25 -

【参考】決算における市民 1 人当たりの補助費等 26 市比較

平成 27 年度

平成 26 年度

平成 25 年度

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

円 26市平均 38,608円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 36,951円

34,600

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

円 26市平均 36,135円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 34,797円

36,609

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

円 26市平均 36,054円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 34,116円

35,935

Page 28: 東久留米市の財政分析 - Higashikurume...4,286 万8 千円上回っていましたが、平成11 年度以降は義務的経費の方が上回っており、 平成27年度は39億3,583万3千円上回り、その差のピークを逆転する結果となりました。20

- 26 -

◎ 繰出金

繰出金は、特別会計(一般会計とは別に設けられる、独立した経理管理が行なわれる会計)

が安定した運営ができるように、一般会計から特別会計へ各種の事業資金として支出するもの

です。

平成 18 年度は下水道事業特別会計において資本費平準化債の借入れを行ったことにより、

繰出金が全体として例年より大きく減少しましたが、平成 19 年度は増加に転じています。し

かしながら、平成 17 年度以前の水準以下に抑えられたのは、国民健康保険特別会計の経営努

力による繰出金の減少があったことなどによります。

経常経費充当一般財源等については、平成 19 年度に下水道事業特別会計繰出金の経常経

費・臨時経費区分の取り扱いについて大きな見直しが行なわれたこともあり、大きく増加して

います。

下水道事業特別会計では、平成 19 年度と平成 20 年度の 2 カ年で公的資金補償金免除繰上

償還を活用し、高利率から低利率への地方債の借換えを行いました。この際、借換えを行った

地方債に関して 2 年間の元金償還の据置期間を設けたため、平成 20 年度、21 年度の下水道

事業特別会計繰出金は減少したものの、平成 22 年度、23 年度は据置期間の終了に伴い増加

しています。平成 24 年度は公債費に係る繰出し分の減少により繰出金は減少し、平成 25 年

度には公債費に係る繰出し分の減少に加え、下水道使用料の改定による使用料収入の増加など

があり、繰出金は更に減少しました。平成 27 年度においても公債費に係る繰出し分の減少が

続いていることから、繰出金は減少しています。

一方、平成 27 年度の国民健康保険特別会計繰出金は、国民健康保険税を改定し、国民健康

保険特別会計の貯金である運営基金を取り崩したものの、医療費などが増加したため、前年度

より 1 億 2,666 万円増加しています。今後においても医療費の動向によっては、引き続き経

営努力をしてもなお、繰出金の増加が懸念されます。

また、後期高齢者医療特別会計繰出金、介護保険特別会計繰出金は平成 26 年度と比較して

増加していますが、これは高齢化が進む中で医療費などが増加していることが背景にあると考

えられます。

国民健康保険特別会計繰出金をはじめとした民生費の繰出金については、扶助費と同様に今

後の増加が懸念される一方で、毎年度、特別会計への繰出金の合計で、数億円規模での不用額

が生じています。

そのため、予算編成の段階から対象増の見込み等をより精査していくことや、特別会計は原

則として独立採算制であるという観点からも、歳出に見合った適正な料金を設定することで、

法で定められた額を超える繰出金を抑制し、他の事業に活用できる一般財源をより多く捻出す

る努力が必要です。

3,189,426

3,802,379 3,748,9623,557,500

4,242,157 4,249,5484,366,504 4,414,089 4,484,063

4,647,205

1,772,309

2,437,681 2,471,275 2,505,8012,725,453 2,827,868 2,936,298 3,037,161

3,181,456 3,243,076

18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度

決算額 経常経費充当一般財源等 単位:千円

Page 29: 東久留米市の財政分析 - Higashikurume...4,286 万8 千円上回っていましたが、平成11 年度以降は義務的経費の方が上回っており、 平成27年度は39億3,583万3千円上回り、その差のピークを逆転する結果となりました。20

- 27 -

【参考】決算における市民 1 人当たりの繰出金 26 市比較

平成 27 年度

平成 26 年度

平成 25 年度

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000円 26市平均 41,713円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 41,076円

39,676

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000円 26市平均 40,359円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 40,340円

38,492

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000円 26市平均 38,702円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 39,439円

37,918

Page 30: 東久留米市の財政分析 - Higashikurume...4,286 万8 千円上回っていましたが、平成11 年度以降は義務的経費の方が上回っており、 平成27年度は39億3,583万3千円上回り、その差のピークを逆転する結果となりました。20

- 28 -

◎ 投資的経費

投資的経費は、施設の建設や大規模な改修、道路の整備、大型備品の購入などに係る臨時的

な事業に使ったお金です。

最近の 10 年間では平成 18 年度が一番多く、次いで平成 23 年度となっています。平成 18

年度は、課題の 1 つでもあった行政センター(市庁舎)の用地購入に係る地方債を繰上償還に

より完済したほか、市道 110 号線の整備や南沢森の広場の用地を購入したことなどにより多

くなっており、平成 23 年度は、小・中学校普通教室空調機設置工事、東久留米市保育所緊急

整備事業補助金、中学校体育館耐震補強工事の皆増、都市計画道路東 3・4・5 号線、東 3・4・

20 号線整備事業が前年度と比べて 3 億 2,276 万 1 千円増加したことなどにより多くなって

います。

平成 27 年度においては市道 207 号線整備事業、都市計画道路東 3・4・5 号線整備事業、

都市計画道路東 3・4・20 号線整備事業、小山小学校及び南町小学校校舎棟大規模改造事業

などが減少したことにより、前年度と比べて 2 億 2,037 万 3 千円の減少となっています。ま

た、これに要した一般財源の割合を比較すると、平成 25 年度は 14.6%、平成 26 年度は

15.8%、平成 27 年度は 19.0%、となっており、投資的経費に占める国庫支出金を始めとし

た特定財源の割合が高い状況がうかがえます。

投資的事業の実施にあたっては多くの財源が必要となるため、市の一般財源のみでは事業を

実施することは困難です。このため国や都の補助金を有効活用することはもとより、それと合

わせて地方債を活用することも重要になってきます。

公共施設は、将来においても利用されることから、地方債の活用は、公債費という形で、そ

の建設費に対する資金を世代間で公平負担するという意味合いもあります。

しかしながら、公債費は単年度の事業費に対する支出を数年に渡り先送りしているとも捉え

られ、計画性の無い活用は、後年度の義務的経費を単に増加させる要因になります。

このことから、投資的事業の実施にあたっては、その年度に集中しないよう、年度間の地方

債の借入額に十分な注意を払う必要があります。

3,245,897

1,564,289 1,610,980

2,037,539

2,360,300

2,709,968

2,086,884

2,634,731

1,940,628

1,720,255

18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度

決算額 単位:千円

Page 31: 東久留米市の財政分析 - Higashikurume...4,286 万8 千円上回っていましたが、平成11 年度以降は義務的経費の方が上回っており、 平成27年度は39億3,583万3千円上回り、その差のピークを逆転する結果となりました。20

- 29 -

【参考】決算における市民 1 人当たりの投資的経費 26 市比較

平成 27 年度

平成 26 年度

平成 25 年度

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

90,000

円 26市平均 37,555円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 27,033円

14,687

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

円 26市平均 35,385円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 26,442円

16,659

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

円 26市平均 31,837円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 23,071円

22,633

Page 32: 東久留米市の財政分析 - Higashikurume...4,286 万8 千円上回っていましたが、平成11 年度以降は義務的経費の方が上回っており、 平成27年度は39億3,583万3千円上回り、その差のピークを逆転する結果となりました。20

- 30 -

◎ 公債費

公債費はプライマリーバランス(償還元金以上の借入れを行わない)を保持した借入れを行

ってきたことにより、平成 17 年度までは減少傾向にありましたが、平成 15 年度以降に借り

入れた臨時財政対策債の元金償還開始等により、平成 18 年度から平成 20 年度までの間は前

年度と比べて増加しています。

平成 21 年度は前年度と比べて減となりましたが、平成 22 年度は消防事務委託に関連して

消防施設の地方債の繰上償還を行ったことや、旧保健福祉センターの地方債を繰上償還したこ

となどにより前年度比 1 億 5,215 万 4 千円の増加となっています。その後、平成 24 年度ま

では前年度と比べて減少していましたが、平成 25 年度には増加に転じ、平成 26 年度におい

ては、さいわい福祉センター整備事業債の減少や、前年度に行った下里の資源選別場整備事業

債の繰上償還分が皆減となったことなどにより、前年度と比較して 1 億 5,550 万 6 千円再び

減少しました。

平成 27 年度はプライマリーバランスによる管理、減税補てん債の償還の減などにより 2 億

2,121 万 9 千円の減少となりました。

東久留米市の近年の特徴としては、公債費のうち普通地方債分が占める割合は減少し、赤字

地方債である臨時財政対策債分が占める割合が増加傾向にあります。これは同時に地方債残高

においても建設事業債が減少し、臨時財政対策債が増えているといった状況を表しているわけ

ですが、臨時財政対策債はあくまで地方債の特例であり、建設事業債のように資産の形成につ

ながるものではなく、普通交付税の振り替わりとして市の運営経費を補うための資金を借金す

るものであるため、これが増加することは好ましいことではありません。

【参考 1】 普通地方債 償還元金と借入額の推移

2,884,001

3,185,8163,218,676

3,137,696

3,289,850

3,070,011

2,968,2853,005,091

2,849,585

2,628,366

2,884,001

3,185,8163,215,913

3,137,6963,094,419 3,070,011

2,968,2852,927,515

2,849,585

2,625,225

18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度

決算額 経常経費充当一般財源等 単位:千円

1,765,9851,809,015

1,699,0201,617,036

1,750,796

1,493,348

1,364,788 1,353,407

1,109,965 1,088,173

489,100

316,200

434,200

967,700

256,600

548,200

416,900344,100

440,600 442,800

18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度

償還元金 借入額 単位:千円

Page 33: 東久留米市の財政分析 - Higashikurume...4,286 万8 千円上回っていましたが、平成11 年度以降は義務的経費の方が上回っており、 平成27年度は39億3,583万3千円上回り、その差のピークを逆転する結果となりました。20

- 31 -

【参考 2】 決算における市民 1 人当たりの公債費 26 市比較

平成 27 年度

平成 26 年度

平成 25 年度

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

円 26市平均 20,801円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 25,256円

22,440

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

円 26市平均 22,616円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 27,134円

24,461

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

円 26市平均 23,045円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 27,684円

25,815

Page 34: 東久留米市の財政分析 - Higashikurume...4,286 万8 千円上回っていましたが、平成11 年度以降は義務的経費の方が上回っており、 平成27年度は39億3,583万3千円上回り、その差のピークを逆転する結果となりました。20

- 32 -

【参考 3】決算における市民 1 人当たりの地方債現在高 26 市比較

平成 27 年度

平成 26 年度

平成 25 年度

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

350,000

400,000

円 26市平均 207,901円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 237,845円

212,467

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

350,000

円 26市平均 208,691円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 237,875円

217,039

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

350,000

円 26市平均 211,284円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 239,266円

218,285

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経常収支比率の現状認識と臨時財政対策債の取り扱いについて

◎ 経常収支比率の現状認識

財政構造の弾力性を示す指標である経常収支比率とは、毎年度の経常的な収入のうち、人件

費や公債費など経常的な支払いにどのくらい使ったかを示した数値です。

この数値が低いと、市の独自判断での市民サービスを行うことがより可能となり、ゆとりあ

る財政運営ができているということになります。

東久留米市においては、平成 27 年度決算では 92.2%と、平成 26 年度の 94.3%から 2.1%

改善したものの、依然として高い状況にあります。

【臨時財政対策債を加えた場合の経常収支比率 26 市比較】

一般的には、「80.0%を超えると弾力性を失いつつある」といわれており、経常収支比率を

改善するには、地域経済の活性化による、市税をはじめとした新たな自主財源の確保や、抜本

的な経常的支出の見直しが大きな要素となります。

しかしながら、1,718 市町村のうち、29.5%となる 506 団体が経常収支比率 90.0%以上、

0.5%となる 9 団体が 100.0%以上(※平成 28 年 9 月 30 日付、総務省資料「平成 27 年

度市町村普通会計決算の概要(速報)」による)といった状況や、多摩 26 市の平均が 89.5%

であるとともに、26 市全ての団体が 80.0%を超えている現状となっています。

さらに、交付税の振り替わり措置である臨時財政対策債が平成22年度より制度改正され、

臨時財政対策債の急増への対応として、財政力の弱い地方公共団体に配慮し、財政調整機能を

強化する観点から、新方式を導入しました。この結果、財政力指数等から見た財政力の弱い団

体は、臨時財政対策債発行可能額が相対的に減少し、普通交付税の伸び率が高くなりました。

また、借入額は、経常収支比率を算定する分母に加えられるため、「発行可能額の中でより多

く借入れた団体は、借入れなかった団体に比べ経常収支比率が良くなる」という結果も多く見

られるようになりました。

あくまでも普通交付税の振り替わり措置であり、また、各年度の元利償還金は理論上、交付

税算入されるものではありますが、自己責任の上で活用するものという制度であるため、後年

度の公債費を増加させる要因でもある臨時財政対策債については、各自治体において、できる

限り借入額を抑制する傾向も見られます。東久留米市においても、平成 26 年度には発行可能

額 20 億 4,070 万 7 千円に対して借入額を 19 億 4,000 万円に抑え、平成 27 年度におい

ても発行可能額 15 億 9,603 万 4 千円に対して借入額を 14 億 9,000 万円に抑えましたが、

仮に、東久留米市が発行可能額全額を借り入れた場合の経常収支比率は 91.8%となり、平成

70.0%

75.0%

80.0%

85.0%

90.0%

95.0%

100.0%26市平均89.5、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均91.2

92.2

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27 年度決算の結果である 92.2%より 0.4%改善されるといった側面もあります。

また、経常経費には生活保護費や障害福祉サービス費など、法に基づき給付が義務付けられ

ている費用もありますが、これらは、対象者が増加すれば、経常的な支出も増加し、結果とし

て経常収支比率が悪化する要因に直結するものであるため、一般的に、経常収支比率を市の計

画だけで下げていくことや、これらの対象者の増加による影響などを、指標ありきで機械的に

一律削減することはできません。

一方で、経常収支比率を算定する上での分母にあたる、歳入経常一般財源等の視点から考え

ても、約 1/4 を占める地方交付税や地方特例交付金、地方譲与税や税連動交付金の増減によ

って経常収支比率は影響を受けますが、今後、臨時財政対策債への振り替えが増加して地方交

付税が減少するという可能性が無いとは言えず、また、地方交付税制度と税制改正の影響には

一定の相関性はあるものの、年度によっては乖離が大きい場合もあるなど、状況によってはそ

の影響が非常に大きくなることから、経常収支比率だけを捉えて財政状況を判断することはで

きないと言えます。

【臨時財政対策債を加えない場合の経常収支比率 26 市比較】

平成 27 年度では、分子である歳出経常経費充当一般財源等は前年度から 5,219 万 2 千円、

0.2%増加すると共に、分母である歳入経常一般財源等(臨時財政対策債を加えない分母)に

ついても、税連動交付金などの増加により、前年度から 10 億 1,874 万 8 千円、5.0%増加

しているため、臨時財政対策債を加えない場合の経常収支比率は、前年度の 103.3%から

98.6%と、4.7%改善しているものの、依然として高い水準にあります。

これは、高齢化や社会経済状況の低迷に伴う生活保護費の増、更なる制度拡充等の影響によ

る児童福祉費の増など扶助費の増加に加え、特別会計への繰出金の増加も大きな要因となって

います。今後も扶助費や、医療費等の増加に伴う特別会計への繰出金の増加は避けられない状

況にあり、行財政改革や執行抑制努力による人件費、物件費等の削減効果により、扶助費の増

加分をカバーしてもなお、経常収支比率を 90%以下に改善することは大変難しいばかりか、

歳入の大幅な減少等によっては、臨時財政対策債を含めた経常収支比率においても、再度

100%を超える懸念もあります。

そのため、更なる歳入の確保や、全庁的な歳出の執行抑制努力が必要であるとともに、予算

編成段階においても、ゼロベースからの積み上げによる精査や、一般財源捻出のための創意工

夫が重要となっています。

0.0%

20.0%

40.0%

60.0%

80.0%

100.0%

120.0%

26市平均92.4、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均96.898.6

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◎歳入歳出経常一般財源等の比較からみる現状分析

【臨時財政対策債を加えた歳入経常一般財源と歳出経常経費充当一般財源の比較】

上記の表は、経常収支比率の分母、分子となる歳入経常一般財源と歳出経常経費充当一般財

源の比較です。

現在の経常収支比率の考え方である、歳入経常一般財源に臨時財政対策債借入額を加えた場

合では、全ての年度で歳入が歳出を上回っています。特に、平成 26 年度は歳入が 12 億 7,209

万 1 千円歳出を上回っています。

平成 27 年度は、差額が大きかった前年度よりさらに増加し、歳入歳出の差引が 17 億 8,864

万 7 千円となりました。これは一見すると、「経常的な一般財源収入で経常的な支出を賄えた

上、臨時的な経費に約 17.9 億円の一般財源を使用できる」とも考えられますが、交付税の振

り替わり措置とはいえ、地方債である臨時財政対策債を 14.9 億円(平成 18 年度は約 11.2

億円)借入れた結果でもあり、仮に、臨時財政対策債を借入れない場合には、次のようになり

ます。

20,116,815

20,166,02920,355,514 20,453,412

21,654,73621,398,468 21,298,728

21,991,38522,347,948

22,916,696

19,404,583

20,122,862

20,221,279

19,813,428

20,506,162

20,556,485 20,623,98220,991,438 21,075,857 21,128,049

18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度

臨財債を加えた歳入経常一般財源 歳出経常経費充当一般財源 単位:千円

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【臨時財政対策債を加えない場合での歳入経常一般財源と歳出経常経費充当一般財源の比較】

上記のとおり、臨時財政対策債を加えない場合では、平成 18 年度から平成 26 年度の間、

歳出が歳入を超過しており、経常的な一般財源収入では経常的な支出を賄いきれていない現状

が浮き彫りになっていました。平成 27 年度では 10 年ぶりに歳入が歳出を上回りましたが、

歳出経常経費充当一般財源の増加以上に、地方消費税交付金が約 11億円増加したことにより、

歳入経常一般財源の額が増加したことが要因であり、歳出経常経費充当一般財源の額は、翌年

度以降も増加することが見込まれるため、再び、臨時財政対策債に頼らざるを得ない状況に推

移することが見込まれます。

◎ 臨時財政対策債について

臨時財政対策債は、国の地方交付税特別会計の財源が不足し、本来、地方交付税として交付

するべき財源が不足した際、直接的な地方交付税交付額を減じて、その補てんとして地方自治

体に地方債を発行させる制度です。

これは、従来、国の地方交付税特別会計が不足した際、国が借入金により地方財源不足の補

てんを行っていましたが、これを地方自治体が直接に借入れを行う方式に切り替えるため、平

成 13 年度から 3 カ年の制度として発行されたことが始まりです。

しかし、その後、この制度は延長、更に延長と現在まで続いています。

臨時財政対策債の元利償還金は、その全額を後年度の基準財政需要額に理論的に算入される

ため、実質的な地方交付税の代替財源と言われています(ただし、普通交付税不交付団体の場

合には、基準財政需要額に算入されても普通交付税としての歳入がないため、元利償還は市の

持ち出しとなります)。

これは、財源不足に対しての地方交付税を地方公共団体に「前借り」させておき、「後払い」

するものと捉えることもできますが、臨時財政対策債に対する課題点として、償還経費は後年

度の地方交付税に理論的に算入されるものの、あくまでも地方債であることに変わりはなく、

地方自治体の地方債残高が増加する要因にもなっており、また、義務的経費である公債費が増

加している要因にもなっています。

臨時財政対策債は、あくまで「発行が可能」なものであって「発行しなければならない」わ

けではありません。

臨時財政対策債をどの程度発行するかは、あくまで地方自治体の裁量となります。

このため、交付税の振り替わりであると同時に、地方自治体の責任と判断で発行されるもの、

という視点もあることは留意すべきであり、26 市の中には、全く発行しない団体や、発行可

能額に満たない額で発行する団体もあります。

東久留米市の現状では、全く発行せず財政運営を行うことは大変厳しい状況ですが、平成

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27 年度では発行可能額 15 億 9,603 万 4 千円に対して、14 億 9,000 万円の発行に留め、

前年度に引き続き抑制に努めました。

【参考 1】市民 1 人当たりの臨時財政対策債発行可能額 26 市比較

【参考 2】市民 1 人当たりの臨時財政対策債借入額 26 市比較

しかしながら、発行可能額から抑制したとはいえ、約 15 億円の大きな借金は、後年度の一

般財源の使い方に縛りをかけてしまうのは事実です。

平成 27 年度で借入れた臨時財政対策債の元利償還予定を見ると、当該年度から利子償還が

始まり、平成 31 年度から平成 46 年度までの間は、毎年度約 8,900 万円の返済が義務付け

られています。

普通建設事業などの財源として借入れを行う普通地方債について、プライマリーバランスを

保持する管理を行ってきた成果として、公債費は減少傾向にあり、また、東久留米市が普通交

付税の交付団体である限り、元利償還金は後年度の普通交付税で措置されるものではあります

が、平成 31 年度から平成 46 年度までの 16 年間、各年度の一般財源のうち約 8,900 万円

は、今回借入れた借金の返済に充てなければならず、その分、維持補修工事など他の経常的事

業や、臨時的な事業などの財源が少なくなってしまう、ということになります。

そのため、臨時財政対策債に依存しなければならない現状においても、臨時財政対策債も含

めたプライマリーバランスを注視して、臨時財政対策債の発行額を判断していく必要があると

考えています。

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平成27年度に借り入れた臨時財政対策債の償還予定

単位:円

元 金 利 子 合 計

平成27年度 0 308,709 308,709

平成28年度 0 2,908,308 2,908,308

平成29年度 0 2,934,600 2,934,600

平成30年度 20,722,923 2,934,600 23,657,523

平成31年度 86,337,692 2,830,104 89,167,796

平成32年度 86,507,212 2,660,584 89,167,796

平成33年度 86,677,153 2,490,643 89,167,796

平成34年度 86,847,512 2,320,284 89,167,796

平成35年度 87,018,294 2,149,502 89,167,796

平成36年度 87,189,498 1,978,298 89,167,796

平成37年度 87,361,128 1,806,668 89,167,796

平成38年度 87,533,180 1,634,616 89,167,796

平成39年度 87,705,661 1,462,135 89,167,796

平成40年度 87,878,569 1,289,227 89,167,796

平成41年度 88,051,904 1,115,892 89,167,796

平成42年度 88,225,671 942,125 89,167,796

平成43年度 88,399,869 767,927 89,167,796

平成44年度 88,574,497 593,299 89,167,796

平成45年度 88,749,560 418,236 89,167,796

平成46年度 88,925,059 242,737 89,167,796

平成47年度 67,294,618 66,805 67,361,423

合 計 1,490,000,000 33,855,299 1,523,855,299

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◎ 臨時財政対策債借入れ抑制の検討

東久留米市では、臨時財政対策債に依存しなければならない財政状況下においても、借入れ

の抑制を検討しています。

上の表は、9 月補正後の予算額をベースに借入れの抑制を試算したものです。

平成 28 年度の予算で試算すると、公債費のうち元金償還額 22 億 995 万 1 千円から、9

月補正後の普通地方債発行見込額 6 億 1,100 万円を除くと、プライマリーバランスを保持す

ることを前提とした発行可能額は 15 億 9,895 万 1 千円となりますが、平成 28 年 7 月に普

通交付税の算定結果として示された臨時財政対策債振替相当額(発行可能額)は 13 億 7,862

万 4 千円であるため、これが臨時財政対策債の発行限度額となります。9 月補正後の歳入予算

では、臨時財政対策債を 13 億 7,000 万円としていることから、発行限度額より 862 万 4

千円抑制することとなります。

単位:千円

平成28年度 平成27年度 平成27年度

(9月補正後予算) (9月補正後予算) (決算)

公 債 費 の う ち 元 金 償 還 額 A 2,209,951 2,331,474 2,333,100

普 通 地 方 債 発 行 額 B 611,000 683,800 436,300

プ ラ イ マ リ ー バ ラ ン ス から 見た臨 時 財 政 対 策 債 発 行 可 能 額

A-B=C 1,598,951 1,647,674 1,896,800

普 通 交 付 税 算 定 結 果 に お け る臨 時 財 政 対 策 債 振 替 相 当 額

D 1,378,624 1,596,034 1,596,034

臨 時 財 政 対 策 債 発 行 限 度 額( C と D と で 少 な い 方 の 額 )

E 1,378,624 1,596,034 1,596,034

臨時財政対策債歳入予算 (決算 )額 F 1,370,000 1,590,000 1,490,000

臨 時 財 政 対 策 債 発 行 抑 制 額 E-F=G 8,624 6,034 106,034

地 方 債 発 行 額 合 計 B+F=H 1,981,000 2,273,800 1,926,300

プ ラ イ マ リ ー バ ラ ン ス から 見た地 方 債 発 行 抑 制 額

A-H=I 228,951 57,674 406,800

単位:千円

平成28年度 平成27年度 平成27年度

(9月補正後予算) (9月補正後予算) (決算)

公 債 費 の う ち 元 金 償 還 額 A 2,209,951 2,331,474 2,333,100

普 通 地 方 債 発 行 額 B 826,100 690,300 442,800

( う ち 繰 越 明 許 費 分 ) 215,100 6,500 6,500

プ ラ イ マ リ ー バ ラ ン ス から 見た臨 時 財 政 対 策 債 発 行 可 能 額

A-B=C 1,383,851 1,641,174 1,890,300

普 通 交 付 税 算 定 結 果 に お け る臨 時 財 政 対 策 債 振 替 相 当 額

D 1,378,624 1,596,034 1,596,034

臨 時 財 政 対 策 債 発 行 限 度 額( C と D と で 少 な い 方 の 額 )

E 1,378,624 1,596,034 1,596,034

臨時財政対策債歳入予算 (決算 )額 F 1,370,000 1,590,000 1,490,000

臨 時 財 政 対 策 債 発 行 抑 制 額 E-F=G 8,624 6,034 106,034

地 方 債 発 行 額 合 計 B+F=H 2,196,100 2,280,300 1,932,800

プ ラ イ マ リ ー バ ラ ン ス から 見た地 方 債 発 行 抑 制 額

A-H=I 13,851 51,174 400,300

プライマリーバランスから見た臨時財政対策債発行額の試算

(参考)繰越明許費分を含めた場合

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この試算を、前年度に設定した繰越明許費分の普通地方債発行予定額を含めて計算した場合、

プライマリーバランスから見た地方債発行抑制額は減少します。

しかし、その反面、この繰越明許費分は設定した年度の計算において既に考慮しているため、

その年度の決算におけるプライマリーバランスから見た地方債発行抑制額は増加することに

なります。

また、繰越明許費分は 3 月末に確定するため、設定した翌年度の当初予算のプライマリーバ

ランスの計算には含めることができないことからも、プライマリーバランスを保持するための

計算には前年度に設定した繰越明許費分を含めないことが妥当であると考えます。

この試算を平成 27 年度の決算で計算してみると、15 億 9,603 万 4 千円がプライマリー

バランスを保持することを前提とした発行限度額となりますが、実際に発行した額は 14 億

9,000 万円で、1 億 603 万 4 千円の抑制となっています。

この借入れを行うことが決算剰余金を生み、平成 27 年度も財政調整基金の取り崩しを行わ

ずに済んだ要因の一つとも言えますが、歳入不足を補うための年度間の財源調整や災害等の緊

急時に対応するために財政調整基金を一定程度確保しておく必要がある反面、地方債を多く借

入れることによる後年度の義務的経費(地方債償還元金)の増加は、財政の硬直化につながっ

てしまいます。また、財政運営において地方債に過度に依存してしまうことは、財政規律の観

点から決して良いことであるとは言えません。

こうした点を踏まえ、今後もプライマリーバランスの保持に努めることを基本として、財政

調整基金の残高にも考慮しつつ、臨時財政対策債の借入れを抑制していくことが必要です。

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基金の現状認識について

◎財政調整基金

財政調整基金は、市の歳入不足を補う際(年度間の調整財源的な機能)や、災害等の緊急時

に対応するために積み立てられています。家計でいう「将来、何かあった時のために」と積み

立てている「普通預金」のようなものであり、平成 28 年 9 月補正後における、平成 28 年度

末での財政調整基金残高見込みは(今後の年度間調整財源を考慮しない場合で)、約 32 億

5,600 万円となっています。

この、「災害等の緊急時への対応」に必要な額というのは、災害の要因・場所・規模などに

より異なるため、「いくらストックがあれば大丈夫」とは言い切れないものです。

基金を積み立てるには、毎年度の歳入確保、歳出抑制努力により、決算剰余金を生みだすこ

とが必要ですが、生活保護費をはじめとする扶助費や、特別会計への繰出金などが増加傾向に

あることから、今後において多額の剰余金を期待することはできません。

また、当初予算と実際に収入される地方譲与税や税連動交付金との乖離が生じ、それを補う

財源として、財政調整基金を取り崩さざるを得ない状況が生じる可能性があります。

加えて、今後も地方交付税制度が十分に機能せず、歳入一般財源を補てんするために、臨時

財政対策債制度が継続される可能性は高く、後年度の義務的経費増加(公債費増加)を避ける

ために臨時財政対策債を発行可能額全額の借入れをせず、一定の借入れ抑制を行った場合には、

その穴埋めとして財政調整基金を取り崩さざるを得ない状況も生じてきます。

【参考1】平成 27 年度決算における市民 1 人当たりの財政調整基金現在高 26 市比較

【参考2】平成 27 年度決算における財政調整基金現在高の標準財政規模比 26 市比較

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

円 26市平均 25,657円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 22,741円

31,838

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

% 26市平均 12.7%、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 11.9%

16.7

Page 44: 東久留米市の財政分析 - Higashikurume...4,286 万8 千円上回っていましたが、平成11 年度以降は義務的経費の方が上回っており、 平成27年度は39億3,583万3千円上回り、その差のピークを逆転する結果となりました。20

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◎特定目的基金

家計でいう「旅行のため」「学資資金」「自動車を買うため」と目的を持って積立てている預

金に相当するものは、「特定目的基金」といい(公共施設等整備基金、みどりの基金等)、これ

ら特定目的基金は、条例で定めた使途以外には使えません。

基金が豊富にあれば、当然のことながら、それを財源として様々な事業を行うことも可能で

すが、特定目的基金の残高は、平成 27 年度末現在で約 19 億 7,900 万円であり、市民1人

あたりの残高で見ると、東久留米市は多摩 26 市の中では少ない状況であることがわかります。

また、特定目的基金のうち、施設の整備等に活用するための基金である公共施設等整備基金

の残高を見ると、平成 27 年度末現在で約 4 億 7,500 万円(平成 28 年 9 月補正後における、

平成 28 年度末での残高見込みは約 7 億 8,300 万円)という状況になっています。

さらに、これら特定目的基金の中には、現在、具体的な活用計画が定まっていない基金もあ

り、それらの基金を活用するための考え方を検討していく必要もあります。

【参考1】平成 27 年度決算における市民 1 人当たりの特定目的基金現在高 26 市比較

【参考 2】平成 27 年度決算における特定目的基金現在高の標準財政規模比 26 市比較

このように、財政調整基金、特定目的基金ともに課題がありますが、基金残高が少ない現状

は、歳入面に結びつく基金運用や、現金が不足したときに、一時的に基金から一般会計へ借入

れる(一時繰替)ための財源ストックが少ない、という意味からも、大きな課題となっていま

す。

一時的な財源不足の際に基金から一時繰替ができない場合には、金融機関からの一時借入れ

を行わざるを得ないことになりますが、たとえ短期でも、借入れに対する利子の支払いが生じ、

歳出の増加につながってしまうのです。なお、平成27年度は、基金残高の増加に伴い、一時

繰替の運用により一時借入れを行うことはありませんでした。

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

円 26市平均 47,339円、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 27,169円

16,902

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

80.0

90.0

% 26市平均 22.6%、近隣5市(小平市、東村山市、清瀬市、西東京市、東久留米市)平均 14.2%

8.9

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平 成 2 8 年 1 0 月

東久留米市企画経営室

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