知的財産に関する取組状況調査 報告書(概要版) · 2.10...
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知的財産に関する取組状況調査
報告書(概要版)
平成22年3月
経済産業省北海道経済産業局
〈目 次〉
1 調査の目的
1.1 調査対象 --------------------------------------------------- 1
1.2 調査内容等 ------------------------------------------------- 1
2 企業アンケート調査結果
2.1 企業の調査対象 --------------------------------------------- 2
2.2 知的財産の出願状況 ------------------------------------------ 3
2.3 国の支援制度の認知・利用状況 ------------------------------- 3
2.4 知的財産権の活用状況 --------------------------------------- 4
2.5 権利侵害の警告・訴訟の経験 --------------------------------- 5
2.6 知的財産への取組 ------------------------------------------- 6
2.7 研究開発による知的財産の扱い ------------------------------- 7
2.8 知的財産権にかかる社内の体制 ------------------------------- 8
2.9 知的財産にかかる人材育成 ----------------------------------- 9
2.10 知的財産権を出願したことがない企業の動向 ------------------- 10
2.11 知的財産権に係る企業の相談状況 ----------------------------- 11
2.12 北海道知的財産情報センターの認知度・利用経験 --------------- 12
3 研究機関アンケート調査結果
3.1 研究機関の対象 --------------------------------------------- 13
3.2 知的財産権の出願状況 --------------------------------------- 13
3.3 地益財産権の活用状況 --------------------------------------- 14
3.4 知的財産への取組 ------------------------------------------- 15
3.5 知的財産に係る機関内の体制 --------------------------------- 16
4 支援機関アンケート調査結果
4.1 支援機関調査の対象 ----------------------------------------- 17
4.2 知的財産に係る相談 ----------------------------------------- 18
4.3 知的財産に係る支援活動 ------------------------------------- 19
4.4 北海道知的財産情報センターの認知度・利用経験 --------------- 20
4.5 相談体制と知財担保融資について(金融機関) ----------------- 21
5 知財経営の推進に向けた企業支援のあり方
5.1 本調査結果からみた道内企業の知財経営の取組段階 ------------- 22
5.2 知財経営の推進に向けた企業支援のあり方 --------------------- 24
5.3 道内企業の知財経営促進に向けた取組 ------------------------- 26
5.4 道内企業の知財経営推進に向けた支援機関・研究機関に求められる対応 --- 29
- 1 -
1 調査の目的
北海道経済産業局では、道内における知的財産の創造、保護及び活用の適正かつ円滑
な実現を図るため、「北海道知的財産戦略本部」(当局、北海道など道内の24の知的
財産関係機関で構成(以下、「知財本部」という))において策定する「知財本部アク
ションプラン」に基づき様々な事業を実施している。
この取組をより効果的に展開するため、知財本部事業の効果測定及び次の施策展開に
係る情報把握等を主な目的に、道内企業等の知財に関する取組状況についてアンケート
を実施した。
また、調査検討委員会を設置し、アンケートの調査項目や集計分析方法及びその結果
について評価・検討を行った。
1.1 調査対象
①企業
②商工会議所・商工会
③6圏域センター
④大学・高専・公設試
⑤金融機関(道内に本社を有する銀行・信用金庫・信用組合の本店)
⑥自治体(市町村)
1.2 調査内容等
上記6機関ごとに調査票を作成し、郵送による調査票の送付・回収を行った。
・企業に対しては知的財産への取組状況や施策ニーズ等
・商工会議所・商工会、金融機関、自治体に対しては地元企業の知的財産の取組にど
のように支援を行っているのか、また、支援の強化に対してどのような施策ニーズ
があるのか等
・大学・高専・公設試に対しては知財に対する自らの活動と支援機関としての活動の
両面について
なお、平成19年度に実施した「道内企業の知的財産に関する取組状況調査報告書」
等と比較分析が可能なように調査項目を設定した。
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2 企業アンケート調査結果
2.1 企業の調査対象
図表1 調査の対象と回収数
送付数 有効回答数 回収率
①過去5年間に産業財産権の出願実績
のある道内企業
②研究開発及び産業クラスター計画に
積極的に取り組む道内企業・事業所
③道内本社の製造業(上記以外)
④道内本社の商業・サービス業
(上記以外)
無記名回答
計 5,473 1,396 25.5%
図表2 業種別の構成
[N=1396]
サービス業
11.8%
その他
15.3%
情報・通信業
5.4%
未回答
4.9%
卸売業・小売業
17.4%建設業・建設コンサ
ル
12.2%
金属・機械工業
6.9%
木材・家具関連工業
4.2%
食品関連工業
12.7%
電気・電子関連工業
2.4%
出版・印刷業1.1%
その他の工業5.6%
図表1の①から④の道内企業を対象として、郵送による調査票の送付・回収を
行った。(図表1)
また、業種については製造業のみならず、商業・サービス業の意見を反映させ
るために、幅広い業種を対象とした。(図表2)
2,725 679 24.9%
230 81 35.2%
1,818 401 22.0%
700 219 31.3%
16 -
- 3 -
2.2 知的財産権の出願状況
図表3 知的財産権の出願状況
2.3 国の支援制度の認知・利用状況
図表4 支援制度の認知状況(知的財産の出願がありと回答した企業が対象)
図表5 今後利用したい制度(知的財産の出願がありと回答した企業が対象)
●認知状況 [N=750]
22.8%
20.7%
24.1% 72.3%
75.5%
74.3%
3.6%
3.9%
2.9%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
A.料金減免制度
B.先行技術調査支援
C.早期審査制度
知っている 知らない 未回答
〔N=750〕
60.4%
39.6%
44.5%
14.8%
12.8%
0% 20% 40% 60% 80%
料金減免制度
先行技術調査支援
早期審査制度
いずれも利用しない
未回答複数回答
今次調査では、いずれかの知的財産権の出願がありと回答した企業が54%で平成19年度
調査(いずれかあり:60%)と比べて知的財産の出願状況は減尐している。(図表3)
これは、企業が事業展開に必須の特許のみを選別して出願するようになってきた事や特
許出願を行わず、公開せずにノウハウとして管理する考え方が浸透しつつあること、ま
た、景気の後退が影響しているためと考えられる。
※今次調査の調査対象に、過去5年間知財の出願を行っていない「商業」、「サービス
業」を数多く加えていることも考慮する必要がある。
国の支援制度に関する認知状況では、出願ありと回答した企業の7割以上がいずれ
の制度も知らないと回答している。(図表4)しかしながら、料金減免制度では6割
の企業が「利用したい」と回答している。(図表5)
30.0% (413)社
17.3% (239社)
40.3%(555社)
38.5% (530社)
8.9% (122社)
45.1% (629社)
25.7% (359社)
37.5%(524社)
8.0% (112社)
13.9% (194社)
0% 10% 20% 30% 40% 50%
特許
実用新案
意匠
商標
いずれもない
H19調査(N=1378)
今次調査(N=1396)
いずれかあり H19調査 60% 今次調査 54%@
- 4 -
2.4 知的財産権の活用状況
図表6 登録した権利の利用状況(権利化(登録)した知的財産権がある企業が対象)
(平成19年度調)
(今年度調査)
図表7 登録した権利を利用していない理由
(登録した権利の利用状況が「一部未利用」または「利用なし」の企業が対象)
〔N=324〕
34.9%
18.8%
19.1%
25.3%
18.8%
9.3%
12.3%
0% 20% 40% 60%
自社技術の防衛が目的のため
事業化はさらに技術開発が必要
事業化はさらに資金が必要
事業化しても収益が見込めない
事業環境(業績、経営方針、市場等)が変化した
その他
未回答
登録した権利の利用状況を見ると、特許で約6割、実用新案、意匠、商標で3~4
割の企業が「一部未利用」または「利用なし」と回答しているが、平成19年度調査と
比べると各権利とも、全て利用の割合が高くなっている。(図表6)この理由として
は35%が「自社技術の防衛が目的のため」と回答している。(図表7)
複数回答
39.6%
55.8%
64.6%
59.6%
36.6%
25.5%
22.9%
25.1%
20.3%
15.2%
9.7%
4.2%
5.6%
8.3%
3.6%
3.5%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
特許 [N=227]
実用新案 [N=165]
意匠 [N=96]
商標 [N=463]
全て利用 一部未利用あり 利用なし 未回答
50.7%
40.4%
37.1%
34.0%
42.4%
44.4%
44.3%
46.6%
6.9%
15.2%
18.6%
19.4%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
商標 [N=467]
意匠 [N=99]
実用新案 [N=194]
特許 [N=253]
全て利用 一部未利用あり 利用なし
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警告したことがあ
る21.9%
訴訟を起こしたことがある
8.3%
警告されたことが
ある
23.9%
訴訟を起こされた
ことがある
13.6%
未回答32.3%
警告したことがあ
る23.5%
訴訟を起こしたこ
とがある6.3%
警告されたことがある
6.3%訴訟を起こされた
ことがある6.3%
未回答
57.8%
警告したことがあ
る
19.6%
訴訟を起こしたこ
とがある3.9%
警告されたことが
ある11.7%
訴訟を起こされたことがある
5.9%
未回答
58.9%
警告したことがあ
る26.9%
訴訟を起こしたこ
とがある5.9%
警告されたことがある
35.3%
訴訟を起こされたことがある
3.4%
未回答
28.6%
2.5 権利侵害の警告・訴訟の経験
図表8 権利侵害の警告・訴訟の経験の有無(知的財産権の出願のある企業が対象)
図表9 権利侵害の警告・訴訟の経験(知的財産権別)
(特許)[N=72] (実用新案)[N=58]
(意匠)[N=46] (商標)[N=106]
〔N=750〕
ある
18.1%
未回答5.3%
ない
76.5%
18.1%、136社
「自社技術の防衛を目的」として権利化する企業が多い(図表7)一方で、権利侵
害の警告・訴訟の経験のある企業が18%存在する。(図表8)
- 6 -
〔N=750〕
現在はないが、検
討する予定
22.8%
未回答
3.7%
明文化したものが
ある
3.7% 明文化してないが、存在している
11.6%
検討していない
58.1%
2.6 知的財産への取組
図表10 経営における知的財産の位置づけ(知的財産の出願がありと回答した企業が対象)
42.9%
44.7%
37.5%
37.3%
14.7%
12.8%
2.1%
1.3%
3.9%
2.8%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
H19(N=823)
今次(N=750)
非常に重要 やや重要 あまり重要ではない 重要ではない 未回答 図表11 「知的財産戦略」の策定状況(知的財産の出願がありと回答した企業が対象)
(平成19年度調査) (今次調査)
図表12 知的財産戦略を検討していない理由 図表13 知的財産についての取り組み内容
(知的財産の出願がありと回答した企業が対象)
〔N=436〕
12.8%
12.6%
18.8%
5.3%
5.7%
55.7%
2.5%
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%
知財戦略とは、どのようなものかわからない
策定したいが、どのように進めていいのかわからない
策定したいが、時間と人員が足りない
策定したいが、誰に相談して良いかわからない
その他
必要ない・必要性を感じない
未回答
〔N= 823 〕 策定している 5.0%
未回答 7.4%
現在はないが、 策定する予定
12.8%
策定していない 74.8%
複数回答
経営において、知的財産を重要と捉える企業は「非常に重要」と「やや重要」あわ
せて約8割となっている。平成19年度に実施した調査から大きな変化は生じていな
い。(図表10)
今次調査では知的財産戦略の策定状況について、15%が「存在している」と回答し
ており、前回調査では策定している企業が5%であったことから戦略策定企業が増加
している。(図表11)
策定している
15.3%
〔N=750〕
21.7%
3.2%
21.9%
16.4%
18.7%
18.9%
1.1%
35.7%
5.3%
0% 10% 20% 30% 40%
既存の権利・ノウハウの見直し
パテントマップ等の事業環境の整理
権利・ノウハウの活用方針
研究開発の内容・体制のあり方
保護・管理体制のあり方
会社としての知的財産への基本的な取組方針
その他
特にない
未回答
複数回答
- 7 -
2.7 研究開発による知的財産の扱い
図表14 製品や技術の研究開発による知的財産の扱い
(知的財産権の出願のある企業) (特許・実用新案の出願企業)
図表15 先行技術調査など関連技術・類似技術の調査の実施
(研究開発に取り組んだことのある企業が対象)
図表16 外部との共同研究・委託研究の実施(研究開発に取り組んだことのある企業が対象)
複数回答
製品や技術の研究開発による知的財産の扱いについては、57%の企業が「選別して出願する」とし
ている。特に、特許・実用新案の出願企業に限定すると80%が選別して出願すると回答している。(図
表14)
また、先行技術調査を実施する企業の中では「特許出願時に調査を実施する」と回答する企業が
31%と最も多くなっている。(図表15)
外部との共同研究・委託研究については、9%が「毎年実施している」、14%が「毎年ではないが、
よく実施している」と回答しており、約2割の企業が外部との連携に積極的である。(図表16)
出願したこと
がない
12.1%
未回答
4.8%
選別して出
願する
56.6%
ほぼ全件出
願する
5.2%研究開発に
取り組んだ
ことがない
21.3%
未回答
3.6%
選別して出
願する
79.6%
ほぼ全件出
願する
8.3%
出願したこ
とがない
2.8%
研究開発に
取り組んだ
ことがない
5.7%
〔N=554〕
実施したことがない40.6%
未回答2.5%
毎年実施している8.5%
毎年ではないが、よく実施している
13.7%
過去に何度か実施したことがある
34.7%
〔N=554〕
22.9%
26.2%
31.2%
32.9%
2.9%
0% 10% 20% 30% 40% 50%
研究開発の前に調査を実施する
研究開発の途中で調査を実施する
特許出願時に調査を実施する
調査したことがない
未回答
外部との連携に積極的
22.2%
- 8 -
9.3%
25.0%
25.3%
6.4%
6.9%
8.7%
17.9%
12.6%
20.5%
2.8%
79.2%
57.1%
59.8%
71.9%
89.4%
2.8%
2.3%
1.2%
0.9%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
総数 〔N=750〕
明文化したものがある 〔N=28〕
明文化してないが、存在している〔N=87〕
現在はないが、検討する予定
〔N=171〕
検討していない 〔N=436〕
定めている 現在はないが、今後定める予定 定めていない 未回答
2.8 知的財産にかかる社内の体制
図表17 社内規程・制度の有無(知的財産権の出願のある企業が対象)
(職務発明規定)
(発明報酬に関する制度)
(営業秘密管理規定)
図表18 知的財産権の手続きや管理を担当する専門部署
(知的財産権の出願のある企業が対象)
(平成19年度調査) (今次調査)
〔N=823〕
不明7.8%
親会社・グループ企業が全て行う
3.6%
専門部署がある1.8%
部署はないが、専任スタッフがいる
7.7%
必要に応じて役員・社員が兼務する
70.8%
その他8.3%
〔N=750〕
親会社・グループ企 業が全て行う
3.6%
その他 12.0%
未回答 6.9%
専門部署がある 1.7%
部署はないが、専任 スタッフがいる
8.8%
必要に応じて役員・社 員が兼務する
66.9%
社内規定・制度の有無は、知財戦略の有無によって差が出ている。(図表17)
知財の手続きや管理にかかる社内の体制について、専門部署あるいは専任スタッフが存在す
る企業は11%となっており、平成19年度調査と比べても大きな差はない。(図表18)
10.9%
32.1%
29.9%
8.2%
7.6%
8.4%
17.9%
9.2%
24.6%
78.1%
50.0%
60.9%
66.1%
89.9%1.6%0.9%
1.2%
0.0%
0.0%
2.5%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
総数 〔N=750〕
明文化したものがある 〔N=28〕
明文化してないが、存在している〔N=87〕
現在はないが、検討する予定
〔N=171〕
検討していない 〔N=436〕
定めている 現在はないが、今後定める予定 定めていない 未回答
15.9%
32.1%
29.9%
10.5%
14.7%
14.8%
17.9%
23.0%
32.2%
6.9%
66.0%
50.0%
46.0%
55.0%
76.8%
1.6%
2.3%
1.1%
0.0%
3.3%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
総数 〔N=750〕
明文化したものがある 〔N=28〕
明文化してないが、存在している〔N=87〕
現在はないが、検討する予定〔N=171〕
検討していない 〔N=436〕
定めている 現在はないが、今後定める予定 定めていない 不明
- 9 -
2.9 知的財産にかかる人材育成
図表19 知的財産関連人材の育成・確保への取り組み
(知的財産権の出願のある企業が対象)
〔N=750〕8.0%
6.8%
18.5%
1.1%
1.2%
64.9%
4.1%
0% 20% 40% 60% 80%
研究開発部門の人材を対象として育成
管理部門の人材を対象として育成
経営者自らが知識・ノウハウを取得
知的財産の専門家を中途採用
その他
特に行っていない
未回答
図表20 知的財産関連人材の育成・確保への取り組み(知財戦略策定の有無別)
(知的財産権の出願のある企業のうち知財戦略策定状況の回答があった企業が対象)
20.0%
18.3%
39.1%
0.9%
2.6%
35.7%
0.9%
4.4%
3.7%
9.6%
1.1%
0.5%
79.4%
2.8%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
研究開発部門の人材を対象として育成
管理部門の人材を対象として育成
経営者自らが知識・ノウハウを取得
知的財産の専門家を中途採用
その他
特に行っていない
未回答
明文化,存在している 〔N=115〕
検討していない 〔N=436〕
図表21 知的財産関連セミナーへの参加状況(知的財産権の出願のある企業が対象)
(社内における知的財産関連の研修や勉強会の実施) (外部の知的財産関連セミナーや勉強会等への参加)
複数回答
複数回答
人材育成・確保への取組は、65%が「特に行っていないと」回答する一方、知財戦
略を策定している企業をはじめ、意欲的に取り組んでいる企業も存在する。
(図表19、20)
〔N=750〕未回答
3.2%
毎年実施する2.8%
何年かおきに実施する8.4%
実施したことがない
85.6%
〔N=750〕未回答
3.6%毎年参加する
5.5%
何年かおきに参加する27.9%
参加したことがない
63.1%
- 10 -
2.10 知的財産権を出願したことがない企業の動向
図表22 これまで出願したことがない企業の今後の動向
図表23 知的財産の取組を行わない理由
(今次調査で「わからない」、「取り組む必要がない」と回答した企業が対象)
図表24知的財産権の出願・取得上の問題点
(知財の活用に「積極的に取組みたい」「取組む可能性はある」と回答の企業が対象)
2つまで複数回答
出願をしたことがない企業の今後の動向について、今次調査では2%が「積極的に取り
組みたい」、22%が「取り組む可能性はある」と回答しており、これらの約2割の企業が
今後知的財産権に取り組む可能性が高い企業である。(図表22)
また、44%が「わからない」と回答しているが、その理由として、27%が「具体的な活
用方法がわからない」、26%が「取り組む余裕がない」と回答している。(図表23)
これらの回答を行った企業のうち、取り組まない理由として「ている企業が多くなって
いる。(図表23)
26.3%
27.3%
16.9%
46.8%
3.2%
2.2%
5.4%
1.6%
9.2%
89.1%
5.4%
1.1%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
取り組む余裕がない
具体的な活用方法がわからない
活用にメリットが感じられない
事業活動にほとんど関係がない
その他
未回答
わからない 〔N=278〕
取り組む必要はない 〔N=184〕
2.1%
4.0%
22.1%
27.0%
44.2%
35.9%
29.3%
28.1%
2.4 %
5.0%
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
H19(N=555)
今次(N=629)
積極的に取り組みたい 取り組む可能性はある わからない 取り組む必要はない 未回答
〔N=152〕
47.4%
37.5%
24.3%
59.9%
5.9%
1.3%
0% 20% 40% 60% 80%
権利の利用方法の明確化
発明・アイディア等を生む技術力
発明・アイディア等を生む資金力
出願・取得や管理にかかる費用負担
その他
未回答 複数回答
- 11 -
2.11 知的財産権に係る相談状況
図表25 知的財産の活用に関する悩み
4.1%
18.7%
29.8%
1.1%
13.2%
28.3%
17.3%
16.5%
25.9%
0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35%
未回答
知的財産と関わりがない
特にない
その他
相談出来る専門家がいない
社内での知識・ノウハウが不足
事業化するための資金力が不足
具体化するための技術力が不足
収益性や市場性の判断が難しい
図表26 知的財産に関する相談先
知的財産の活用に関する悩みについて、「社内での知識・ノウハウが不足」、「収
益性や市場性の判断が難しい」とする回答が約3割ある一方で、「特にない」、「知
財と関わりがない」とする回答も目立っている。(図表25)
また、相談経験(相談先)について、何らかの相談をしたことがある企業は回答数
1,396社中729社(52%)であり、相談先は弁理士・弁護士が最も多くなっている。
(図表26)
[N=1,396]
[N=1,396]
複数回答
複数回答
6.7%
25.3%
19.3%
3.4%
0.9%
1.7%
4.2%
3.9%
2.7%
2.8%
7.8%
6.7%
35.9%
0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40%
未回答
知的財産と関わりがない
外部に相談しない
その他
地方自治体
金融機関
教育・研究機関
産業支援機関
業界団体・交流グループ
商工会議所・商工会
北海道知的財産情報センター
親会社・グループ企業の担当
弁理士・弁護士
何れかの相談経験あり
52%
- 12 -
2.12 北海道知的財産情報センターの認知度・利用経験
図表27 「北海道知的財産情報センター」の認知度
図表28 業種別にみた認知度
13.0%
10.7%
22.9%
17.9%
13.5%
20.0%
7.0%
10.3%
13.7%
15.9%
24.9%
26.0%
30.2%
29.5%
29.8%
36.0%
18.5%
23.0%
22.4%
23.2%
53.0%
30.8%
33.3%
37.2%
49.7%
40.0%
67.1%
60.0%
55.3%
49.3%
9.1%
12.4%
13.5%
15.4%
7.0%
4.0%
7.4%
6.7%
8.6%
11.6%
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
総数 〔N=1396〕
食品関連工業 〔N=177〕
金属・機械工業 〔N=96〕
その他の工業 〔N=78〕
建設業・建設コンサル 〔N=171〕
情報・通信業 〔N=75〕
卸売業・小売業 〔N=243〕
サービス業 〔N=165〕
その他 〔N=322〕
未回答 〔N=69〕
活動内容も知っている 名前は聞いたことがある 知らなかった 未回答
図表29 「北海道知的財産情報センター」の利用経験
「北海道知的財産情報センター」の認知度は13%が「活動内容も知っている」、25%が「名
前は聞いたことがある」としており、平成19年度調査時とほぼ変化がない。(図表27)
業種別にみると「金属・機械工業」や「情報・通信業」では他の業種に比べて認知度が高いもの
の、「卸売業・小売業」、「サービス業」では認知度が相対的に低くなっている。(図表28)
また、利用経験については約1割の企業が利用経験ありと回答している。(図表29)
知らなかった
53.0%
未回答
9.1%
活動内容も
知って
いる13.0%名前は
聞いたことがある
24.9%
知らなかった53.8%
未回答
7.1%
活動内容も
知っている13.5%
名前は聞いた
ことがある
25.6%
利用したことがない81.2%
未回答7.4%
よく利用する1.2%
利用したことがある10.2%
(平成19年度調査) (今次調査)
- 13 -
3 研究機関アンケート調査結果
3.1 研究機関調査の対象
図表30 調査の対象と回収数
送付数 回収数 回収率
①公設試験研究機関 66 47 71.2%
②大学・工業高等専門学校 47 34 72.3%
計 113 81 71.7%
3.2 知的財産権の出願・活用状況
図表31 知的財産権の出願状況
【公設試】
60.4%
18.9%
11.3%
39.6%
59.6%
14.9%
14.9%
38.3%
0% 20% 40% 60% 80%
特許
実用新案
意匠
いずれもない
H19調査(N=53)
今次調査(N=47)
【大学・高専】
41.5%
7.3%
9.8%
58.5%
55.9%
5.9%
5.9%
41.2%
0% 20% 40% 60% 80%
特許
実用新案
意匠
いずれもない
H19調査(N=41)
今次調査(N=34)
複数回答
道内に所在する公設試験研究機関及び大学・高専を対象としてアンケートを行
い、それぞれ7割以上の回収率となった。(図表30)
公設試験研究機関、大学・高専ともに、前回調査と比較して知的財産権を出願
していない比率は減尐した。大学・高専における特許出願は14ポイントほど増加
している。(図表31)
- 14 -
3.3 知的財産権の活用状況
図表32 未利用特許の有無(特許登録のある機関が対象)
18.8%
12.9%
65.6%
67.7%
15.6%
19.4%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
H19調査(N=32)
今次調査(N=31)
未利用なし 未利用あり 未回答
図表33 企業で事業化された権利の有無(知的財産権の登録のある機関が対象)
38.9%
41.2%
41.7%
41.2%
19.4%
17.6%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
H19調査(N=36)
今次調査(N=34)
ある ない わからない・未回答
図表34 登録した権利のライセンスの有無(登録のある機関が対象)
登録した特許の活用状況については、この2年の間に出願した機関が増えたこ
ともあり、未利用の特許を有する比率が高まっている。また、権利化した知的財
産を有する機関において、企業で事業化された権利を有する機関は41%にとどま
っており、前回調査からさほど進展していない。(図表33)
未回答
19.1%有り
47.6%無し33.3%
未回答
33.4%
無し66.6%
(特許) (実用新案)
未回答
21.1% 有り42.1%
無し36.8%
(意匠)
[N=21] [N=8]
[N=9]
- 15 -
3.4 知的財産への取組
図表35 知的財産の位置づけ(知的財産権の出願のある機関が対象)
59.2%
63.3%
22.4%
28.6%
14.3%
6.1%
2.0%
0.0%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
H19調査(N=49)
今次調査(N=49)
非常に重要 やや重要 あまり重要ではない 重要ではない 未回答
図表36 知的財産の活用方法(知的財産権の出願のある機関が対象)
32.7%
36.7%
36.7%
42.9%
6.1%
4.1%
14.3%
10.2%
2.0%
4.1%
4.1%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
H19調査(N=49)
今次調査(N=49)
積極的にライセンスや譲渡を進めたい必要に応じてライセンスや譲渡を進めたい権利化にはこだわっていない本部・本所の担当部署の意向に任せるその他考えていない未回答
図表37 関連技術・類似技術の調査の実施状況(知的財産権の出願のある機関が対象)
【公設試】
34.4%
21.9%
59.4%
9.4%
41.4%
27.6%
69.0%
6.9%
0% 20% 40% 60% 80%
研究開発の前に調査を実施する
研究開発の途中で調査を実施する
特許出願時に調査を実施する
調査をしたことがない
H19調査(N=32)
今次調査(N=29)
【大学・高専】
17.6%
0.0%
52.9%
35.3%
11.8%
5.9%
23.5%
5.9%
20.0%
0.0%
50.0%
35.0%
5.0%
10.0%
10.0%
10.0%
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%
研究開発の前に、教員が実施している
研究開発の前に、担当部署が実施している
特許出願前に、教員が実施している
特許出願前に、担当部署が実施している
特許出願後に、教員が実施している
特許出願後に、担当部署が実施している
その他
調査したことがない
H19調査(N=17)
今次調査(N=20)
複数回答
機関の運営における知的財産の位置づけについては、「非常に重要」、「やや
重要」ともに増加している。(図表35)
その活用方法としても、「権利化にはこだわっていない」、「本部・本所・本
校の担当部署に任せる」の比率は減尐し、権利化してライセンスや譲渡を進めた
いとする意向が高まっている。(図表36)
- 16 -
3.5 知的財産に係る機関内の体制
図表38内部の研究者・事務職員向けの研修等の実施状況
(知的財産権の出願のある機関が対象、N=29)
図表39 知的財産の日常の管理状況(知的財産権の出願のある機関が対象)
図表40 知的財産関連の人材確保・育成の状況(知的財産権の出願のある機関が対象)
知的財産権の手続きや管理を担当する部署については、前回調査と比べて大き
な変化はなく、専門部署を有している機関は18%程度であり、必要に応じて研究
者・事務職員等が兼務する体制が多くを占めている。(図表38)
知的財産関連の人材確保・育成については、国等による公的施策が充実してき
たこともあり、組織内部の人材を対象とするのではなく、「知的財産の専門家を
採用」、「外部からのコーディネータを配置」といった外部人材の活用を進める
傾向がみられる。(図表40)
18.4%
30.6%
6.1%
8.2%
14.3%
40.8%
16.3%
18.4%
12.2%
14.3%
10.2%
51.0%
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%
研究開発部門の人材を対象として育成・教員を専任配置してスキルアップ
管理部門の人材を対象として育成
知的財産の専門家を採用
外部からのコーディネーターを配置
その他
特に行っていない
H19調査(N=49)
今次調査(N=49)
2.0%
22.4%
26.5%
10.2%
22.4%
2.0%
34.7%
2.0%
22.4%
32.7%
6.1%
20.4%
6.1%
34.7%
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%
取得権利の侵害にかかる監視
研究開発にあたっての先行技術調査
保有した知的財産の活用方法の検討
活用したい外部の技術・権利の探索
本部・本所が全て行う
その他
特に行っていない
H19調査(N=49)
今次調査(N=49)
10.3 6.9 51.7 24.1 3.43.4
0 20 40 60 80 100 (%)
専門部署がある 部署はないが、専任スタッフがいる
必要に応じて研究者・事務員等が兼務する 本部・本所が全て行う
その他 未回答
複数回答
複数回答
- 17 -
4 支援機関アンケート調査結果
図表41 支援機関調査の対象
送付数 回収数 回収率
①公設試験研究機関※ 68 48 70.6%
②大学・工業高等専門学校 47 34 72.3%
③商工会議所・商工会 199 116 58.3%
④金融機関※ 33 30 90.9%
⑤地方自治体 180 102 56.6%
計 527 330 62.6%
※:①には、旭川産業高度化センター、オホーツク産学官融合センターを含む
④は、道内に本店を有する地方銀行、道内に本店を有する信用金庫・信用
組合
道内に所在する支援機関として、下記図表の①から⑤の各機関に対して調査を
行った。(図表41)
- 18 -
4.2 知的財産に係る相談対応
図表42 地元企業から相談を受ける頻度(機関別)
注
図表43 地元企業からの相談内容
支援機関において、地元企業から相談を受ける頻度は、公設試、大学・高専、
会議所・商工会で2割前後。金融機関や自治体への相談は尐なくなっている。
(図表42)
その相談内容についても、前回調査とほぼ同じ傾向を示しているが、「出願手
続きに関すること」は11ポイント増加している。(図表43)
39.9%
24.0%
7.1%
13.7%
21.3%
20.2%
8.7%
25.7%
51.3%
31.3%
7.8%
13.9%
26.1%
2.6%
22.6%
11.3%
5.2%
0% 20% 40% 60% 80%
出願手続きに関すること
出願内容に関すること
出願後の管理に関すること
他社の権利に関すること
知的財産の活用に関すること
知的財産を担保にした融資に関すること
発明に関すること
知的財産権の侵害に関すること
その他
H19調査(N=183)
今次調査(N=115)
26.4%
27.1%
17.6%
23.5%
21.3%
15.5%
7.3%
10.0%
6.9%
3.9%
67.9%
66.7%
73.5%
73.5%
78.0%
81.9%
88.7%
86.7%
90.3%
95.1%
1.0%
1.4%
3.3%
0.8%
2.6%
0.8%
2.9%
2.9%
3.8%
6.3%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
H19調査(N=53)
今次調査(N=48)
H19調査(N=34)
今次調査(N=34)
H19調査(N=127)
今次調査(N=116)
H19調査(N=124)
今次調査(N=30)
H19調査(N=144)
今次調査(N=102)
毎月いくつかある 年に何回かある ほとんどない 未回答
【公設試】
【大学・高専】
【会議所・商工会】
【金融機関】
【自治体】
- 19 -
4.3 知的財産に係る支援活動
図表44 地元企業向けの支援活動の有無 【機関別】
図表45 支援活動の具体的な活動内容(行っている機関が対象)
地元企業を対象とした知的財産に関する支援活動については、各機関において
「行っている」の比率が増加している。(図表44)
その内容としては、大きな変化はないが、「常時相談を受けている」とする機
関が9ポイント、「研修・セミナー等の開催」が3ポイント増加している。
(図表45)
29.1%
18.6%
8.1%
1.2%
17.4%
51.2%
12.8%
29.3%
28.0%
9.3%
1.3%
20.0%
36.0%
16.0%
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%
弁理士・弁護士の紹介・斡旋
常時相談を受けている
定期的に相談会を開催
不定期に相談会を開催
研修・セミナー等の開催
他の関連機関を紹介
その他
H19調査(N=86)
今次調査(N=75)
81.1%
77.1%
88.2%
85.3%
73.2%
62.9%
75.0%
73.3%
89.6%
89.2%
20.8%
17.0%
8.8%
14.7%
26.8%
36.2%
21.8%
26.7%
9.0%
9.8%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
H19調査(N=53)
今次調査(N=48)
H19調査(N=34)
今次調査(N=34)
H19調査(N=127)
今次調査(N=116)
H19調査(N=124)
今次調査(N=30)
H19調査(N=144)
今次調査(N=102)
行っている 行っていない 未回答
【公設試】
【大学・高専】
【会議所・商工会】
【金融機関】
【自治体】
- 20 -
4.4 北海道知的財産情報センターの認知度・利用経験
図表46 北海道知的財産情報センターの認知度(機関別)
図表47 北海道知的財産情報センターの利用経験 【機関別】
図表48 地域サテライトの認知度(機関別)
88.2%
78.4%
93.5%
86.7%
93.8%
91.2%
19.0%
11.8%
3.2%
13.3%
4.9%
4.9%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
H19調査(N=127)
今次調査(N=116)
H19調査(N=124)
今次調査(N=30)
H19調査(N=144)
今次調査(N=102)
利用したことがある 利用したことがない 未回答
【会議所・商工会】
【金融機関】
【自治体】
北海道知的財産情報センターの認知度は、機関ごとに差があるが、自治体のみ
前回調査時よりも認知度が低下している。(図表46)
また、サテライトの認知度では、自治体以外の機関では約半数程度の認知度と
なっている。(図表48)
34.0%
33.3%
50.0%
55.9%
59.8%
43.1%
46.0%
60.0%
41.7%
40.2%
24.5%
20.8%
20.6%
14.7%
12.6%
8.6%
38.7%
6.7%
37.5%
48.0%9.8%
19.4%
26.7%
12.1%
46.6%
27.6%
29.4%
29.4%
37.7%
43.8%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
H19調査(N=53)
今次調査(N=48)
H19調査(N=34)
今次調査(N=34)
H19調査(N=127)
今次調査(N=116)
H19調査(N=124)
今次調査(N=30)
H19調査(N=144)
今次調査(N=102)
活動内容も知っている 名前は聞いたことがある 知らなかった 未回答
【公設試】
【大学・高専】
【会議所・商工会】
【金融機関】
【自治体】
21.4%
23.5%
22.4%
23.3%
6.9%
17.6%
21.4%
32.4%
38.8%
33.3%
10.8%
26.5%
57.1%
44.1%
37.9%
40.0%
81.4%
54.9% 0.9%
1.0%
3.3%
0.9%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
公設試験研究機関(N=42)
大学・高専(N=34)
商工会議所・商工会(N=116)
金融機関(N=30)
自治体(N=102)
合計(N=324)
業務内容も知っている 名前は聞いたことがある 知らなかった 未回答
- 21 -
4.5 相談体制と知財担保融資について(金融機関)
図表49 地元企業から相談を受ける体制(N=30)
図表50 知的財産の保有状況の位置づけ(N=30)
図表51 知的財産を担保とした融資に関する状況(N=30)
図表52 知的財産を担保とした融資制度を設ける予定がない背景
(融資制度を設ける予定のない機関が対象、N=19)
企業から相談を受ける体制は「原則相談を受けた店舗を窓口として対応している」が40%で最
も多くなっている(図表49)。
また、知財を担保とした融資の状況では、「知的財産を担保とした融資制度がありすでに融資
の実績がある」と「融資制度を設けているが実績はまだない」が0%で、「融資制度を設けてい
るが実績はまだない」が63%となっており(図表51)、その理由としては「対象となりうる融
資先がない」が58%と最も高くなっている。(図表52)
40.0% 23.3% 20.0% 13.3% 3.3%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
原則相談を受けた店舗を窓口として、対応している原則本部(本店)を窓口として対応している相談内容により支店と本部(本店)のどちらかで対応しているその他未回答
30.0% 10.0%56.7%
0.0%
3.3%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
企業評価のうえで重要な評価項目となる企業評価のうえで参考とする程度であるほとんど企業評価に影響しないその他未回答
10.0% 6.7%
0.0%
0.0%
63.3% 16.7%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
知的財産を担保とした融資制度がありすでに融資の実績がある融資制度を設けているが実績はまだない今後の対応にむけて体制を整えている特に融資制度を設ける予定はない分からないその他未回答
57.9% 10.5% 5.3%26.3%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
対象となりうる融資先がない
対応できる人材が不足している
リスクが大きい
その他
- 22 -
5 知財経営の推進に向けた企業支援のあり方
5.1 本調査結果からみた道内企業の知財経営の取組段階
・知財経営のレベルは企業によりまちまちであり、効果的に知財経営の支援を実施
するためには、企業の知財レベルの段階に応じた対応が効果的であると考えられ
る。
・アンケート調査結果などをもとに企業の知財レベルと支援の大きな方向性等につ
いてまとめると以下のようになる。
段階① 知財の出願実績がなく、知財の必要性に気づいていない企業
(方向性)→まず知財の必要性に関する啓発
段階② 出願実績はあるが知財の位置づけが低い企業、出願実績はないが今後知
財の取組を行いたい認識がある企業
(方向性)→知財の必要性に関する啓発とともに、知財活用の考え方、先行
技術調査等の初歩的な課題に応じた相談体制・情報提供等
段階③ ある程度の体制が整備されており、今後知財経営を進めたいと考えてい
る企業
(方向性)→企業の課題に応じた知財活用の考え方・相談体制・情報提供、
社内体制の確立(知財戦略策定)等
段階④ 知財を経営に取り込み、創造・保護・活用を積極的に行っている企業
(方向性)→特許流通アドバイザーなどを活用した知財の流通(ライセン
スなど)への対応
- 23 -
<知財出願がない企業>
全体 知財出願の意向 10頁図表22 ※1
629件 わからないor取組む必要はない (73%:462件)
取組む可能性はある (22%:139件)
積極的に取組みたい (2%:13件)
<知財出願がある企業>
全体
知財の経営における
位置づけ 6頁図表10
※1
知財戦略の策定状況 6頁図表11 ※1
750件 非常に重要、やや重要
(80%:603件)
明文化したものがある (5%:28件)
明文化していないが存在する(14%:85件)
現在はないが検討する予定 (26%:158件)
検討していない (54%:323件)
あまり重要ではない、
重要ではない
(17%:126件)
※1:無回答企業を除く
※2:このうち、段階④は、知的財産について何らかの取組があって(6頁図表1
3)、かつ社内規定を全て整備している(8頁図表17)企業。
段階③は、上記以外の企業。
<全体からみた企業構成>
回答企業全体 1,396件のうち
→段階①の事業者:(35%:462件)
→段階②の事業者:(45%:601件)
→段階③の事業者:(19%:253件)
→段階④の事業者:( 1%: 18件)
※ %は不明分(62件)を除いた数値
段階③、④ ※2
段階③
段階②
段階①
段階②
段階②
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5.2 知財経営の推進に向けた企業支援のあり方
(1)段階に応じた取組課題の検討
・企業の知財経営の段階と今後重点的に取り組む課題の方向性は、以下のようにま
とめられる。
(2)これまで実施された支援事業と取組課題
・北海道知的財産戦略本部でも、平成19年度、平成20年度と知財活用にかかる各種
支援活動を実施している。
・企業を対象とした各種支援の中で、「知財の重要性認識に向けた啓発」に関する
ものについては、アンケート結果で、「知財戦略が存在する企業」、「今後知財
戦略策定を検討する企業」が増加していることから、一定の効果をあげているも
のと推察される。(→P.6 図表12)
・また、「知財の効果的な活用に向けた支援」の面では、アンケート結果で、登録
した権利を「全て利用」する企業の割合が大きく増加しており、知財活用に関す
る支援は一定の効果をあげているものと推察される。(→P.4 図表6)
・一方、「知財の効果的な創造・取得の支援等にかかる相談体制の充実」の面では、
今般の調査結果からは、北海道知的財産情報センター等相談機関の企業の認知度
及び、知財出願のない企業の今後の知財出願意向は向上しているとはいえない状
況であり、知財経営に関する啓発や相談体制の整備の効果が広く行き渡っていな
い可能性がある。 (→P.10 図表22、P.12 図表27)
ア)知財の重要性の認識
イ)知財の効果的な創造・取得
エ)知財の効果的な活用
ウ)社内体制の整備
<取組課題>
段階②
段階③
段階④
段階①
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知財経営の取組課題に応じたこれまでの支援事業
取組課題 これまで実施されてきた支援事業
<企業を対象としたもの>
知財の重要性認識に向けた普及
啓発
→ ・「知財戦略策定支援ガイドブック」、「知財戦略
策定事例集」の作成と活用
・知的財産戦略の重要性に関する意識啓発を目的と
した懇談会、セミナー等の実施 など
知財の効果的な創造・取得の支
援
(研究開発、先行技術調査の実
施、知財出願手続きの速やかな
実施など)
→ ・中小・ベンチャー企業に対する情報提供・相談体
制強化(「知財駆け込み寺」連携事業等。商工会
議所・商工会の経営指導員にも講習会を実施)
・知的財産戦略の重要性に関する意識啓発を目的と
した懇談会、セミナー等の実施
・知的財産戦略策定支援人材による企業の戦略策定
支援
・道内及び首都圏の企業と大学・公設試とのマッチ
ング機会の創出
・「北海道知的財産情報センターサテライト」の開
設や「北海道知的財産情報センター」の機能強化
など
知財の効果的な活用に向けた支
援
(知財のライセンス化、他社・
他機関の知財の活用等)
→ ・道内及び首都圏の企業と大学・公設試とのマッチ
ング機会の創出(HINTにて大学や公設試が有す
る技術シーズの発表会を実施等)
・特許流通アドバイザー制度 など
社内体制の整備に向けた支援
(知財戦略の策定、人材育成・
確保、知財にかかる各種規定の
整備等)
→ ・知的財産戦略の重要性に関する意識啓発を目的と
した懇談会、セミナー等の実施
・知的財産戦略策定支援人材による企業の戦略策定
支援
・知的財産専門人材の育成・確保の推進(セミナー
や派遣事業、支援機関なども対象)
・地域における相談人材の育成(セミナーを実施)
・知的財産教育の推進(小中大学及び教職員を対象
に開催) など
<大学を対象としたもの>
研究成果の権利化、活用促進
知的財産の普及啓発
→ ・大学研究者向け知財研修
・HINTにて大学・公設試が有する技術シーズの発
表会を開催
・知的財産教育支援セミナーを実施
<支援機関を対象としたもの>
知財知識の普及啓発
支援人材の育成
→ ・中小企業大学校にて中小企業支援担当者を対象と
する「知財・ものづくり支援研修」を実施
・知財専門人材育成セミナー、知財駆け込み寺事業
にて、商工会等経営指導員を対象とした講習会を
実施
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5.3 道内企業の知財経営促進に向けた取組
道内企業へのアンケート結果から、知財を重要と位置づけている企業は8割程度
となっており、知財に対する企業の認識は高いことが窺える。しかしながら、知財
戦略策定や知財の活用状況、社内体制等の回答結果からは、実際に知財経営に取り
組んでいる企業は尐数であることが見て取れる。
今後、道内企業の知財経営促進のためには、企業の知財に対する取組状況ごとに
適切な支援を行っていく必要があることから、これまでの検討をもとに、道内企業
を知財経営の段階ごとに分け、知財経営促進に向けた取組みについて、現状認識と
期待される取組を以下のとおり整理した。
(1)知財の重要性の認識に向けた対応(段階①、段階②の企業に特に重要な取組課題)
~まず知的財産に目を向けてもらう~
・知財に関心を持たない企業に対しては、まず、知財経営に目を向けるための
様々な情報発信が必要と考えられる。
・知財経営に取り組むことで、他社との差別化、自社技術・商品の防衛による利
益率やシェア拡大ばかりでなく、エンジニアをはじめとする社員のモチベーシ
ョン・士気の向上など、総合的な経営の高度化につながる。
・知財は企業経営にとって難しい概念ではなく、極めて身近なものであること
(どの会社でも取組むことができること)などを企業側が理解することが必要
である。
・商業・サービス業など段階①および②に数多く存在すると考えられる業種や、
小規模零細企業などにフォーカスを当てた企業の参考となる事例を収集し、意
欲ある企業に情報提供していくことが必要である。
・北海道の産業で重要な地位を占める「食品産業」などにおいても、今後の競争
力向上のため、知財経営に関心を持つ企業を1社でも増やしていくことが重要
であると考えられることから、こうした重点産業に向けた情報発信も必要であ
る。
~多様な機会、経路を利用し情報を発信~
・これまで実施してきた「知財は経営資源として重要な要素」という切り口から
展開する知財普及啓発セミナーの開催に加え、知財の認識を高め、重要性に気
づいてもらうための「知財への入口セミナー」を開催することも必要。
・日頃企業と接する機会の多い商工会議所・商工会、あるいは税理士や中小企業
診断士、金融機関などを経由した企業への啓発も効果があるものと考えられる
ことから、これら支援サイドへの企業啓発への協力を促すことも必要である。
・企業が知財を意識するようになるのは、日常の事業活動の現場で必要性を肌で
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感じたときであり、これまで知財の出願がない企業においても、新たに技術・
商品を開発、あるいは新サービスを開始しようとする場面において、知財の重
要性を認識することが必要である。
(2)知財の効果的な創造・取得に向けた対応(段階②、段階③の企業に特に重要な取組課題)
~制度や相談機関等を認知してもらうための取組~
・アンケートからは国の支援制度を知ったきっかけとして、「行政機関・支援機
関から」、「パンフレット・冊子」に加え「弁理士・弁護士から聞いた」とい
う回答も多い。
・日ごろ企業と密接な「士業」や金融機関に対して情報を提供することで、「士
業」等から企業へ支援制度の説明をしていただくことが効果的である。
~支援制度や相談機関の利用を促進するための取組~
・支援制度や相談機関を知っていても実際の利用につなげていくためには、利用
することによるメリットを企業側に認知してもらう必要があると考えられる。
・北海道知的財産情報センター(サテライト含む)の相談体制の内容をより知っ
てもらうために、例えば、無料相談会やビジネスEXPOなど展示会でセンターに
関する情報発信やサテライトの実演を行うほか、各サテライトで地域企業を集
めたデモなども効果的ではないか。
~知財の取得を目指す企業への直接支援~
・知財の効果的な創造・取得を効果的に行う上で、企業の負担を軽減する施策の
設定も検討の余地があるのではないか。
・例えば明細書の作成にかかる弁理士費用の一部補助、出願前の先願調査に対す
る負担軽減などは企業側のニーズも高いものと考えられる。
(3)知財に関する社内体制の整備に向けた対応(段階③、段階④の企業に特に重要な取組課題)
~これまでの施策は継続的に実施~
・知財戦略の重要性を啓発するセミナーや企業の戦略策定支援(専門家の派遣)
など、これまで実施してきた施策を継続的に実施することにより、「知財戦
略」の策定は今後進むことが期待される。
・知財戦略の重要性の認識は、経営者の意識改革にもつながり、人材育成も進む
ものと考えられる。
~企業内の知財の再整理を行う~
・企業における知財に対する取り組みを再整理することにより、自ずと社内にお
ける知財体制もみえてくる。
・その過程で専門家を派遣することにより、知財戦略や必要な体制づくりが早期
に可能となる。このような企業を成功モデルとして周知することにより、他社
の取り組みを誘発するなどの波及効果も期待できる。
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~組織として知財経営に取組むための取組~
・「研究開発戦略」、「販売戦略」と「知財戦略」の整合性を図ることにより、
総合的な経営戦略を効果的に進められることから、知財戦略の策定を支援する
事業の活用も有効であることを周知していくことが重要である(対象:知財へ
の関心は高いものの、具体的な取組への一歩を踏み出しきれていない企業)。
(4)知財の効果的な活用に向けた対応(段階③、段階④の企業に特に重要な取組課題)
~オープンイノベーションの促進~
・知財を自ら取得するには、研究面などで多大な労力とコストを要する。そのリ
スクを軽減する意味でも、外部の技術・特許を導入することの意義は大きい。
・その1つの手段として特許流通事業がある。こうした事業を通して、知財に対
する意識が高まり、身近に感じられるようになる。また、その効果として経営
の幅も広がっていくと考えられる。
・また、公設試験研究機関等においても、研究成果の移転、共同研究など、地場
企業との結びつきを強めていく方向にあることから、企業側においては、こう
した動きやシーズを外部資源として積極的に取り込んでいくことが期待される。
~幅広い知財活用方法の周知~
・知財の効果的な活用には、自社で実施する以外にも、他社へのライセンスやク
ロスライセンスなど他社と積極的に関わるといった選択肢もある。その点を社
内で検討し、その企業にとって最適な方向を導きだすことが重要となる。
・国の特許流通事業(特許流通アドバイザー制度、特許流通データベース等)の
活用は尐ないことから、知財活用の多様な形態を企業に理解してもらうこと、
また知財戦略の策定などが必要である。
・国内マーケットから飛び出して海外マーケットを狙う企業に対しては、知財保
護等の支援事業の活用が効果的であることを周知していく必要がある。
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5.4 道内企業の知財経営推進に向けた支援機関・研究機関に求められる対応
・アンケート調査結果によると、地元企業から相談を受ける頻度は平成19年度調査
と比べて大きく変化していないものの、「出願手続きに関すること」、「出願内
容に関すること」などに関する相談が増えていることから、道内企業の権利取得
への意識が尐しずつ向上しているものと考えられる。
・企業を対象とした知的財産に関する何らかの支援活動を行っている機関数は、全
体で2割程度であり、商工会議所・商工会では3割程度で、自治体においては1
割に満たない。そもそも知財相談が尐ないことも要因としてあげられる。
・北海道知的財産情報センターの認知度において、活動内容も知っている機関は全
体の3割、商工会議所・商工会でも半数にも満たず、自治体においては1割に満
たない。平成19年度に比較して認知度は高まっているものの、まだまだ十分とは
言えず、まずは支援機関に同センターを周知する必要がある。
・知財に関心を持ちつつある企業に対して、支援機関の役割は大きいと考えられ、
初期段階でそこに気づかずに対応してしまうことにより、その企業の知財経営が
大きな遅れにつながることが懸念される。
・道内企業の知財経営推進に向けては、これら支援機関・研究機関自体が知財経営
の意義を十分認識し、知財に対する相談に対して、既存の支援施策や相談機関な
どを現場で適切にナビゲートできる体制が喫緊に必要であると考えられる。
・企業とより密接に関わる、自治体や商工会議所・商工会などの職員を対象として
知財の基礎的な知識と適切な支援機関を紹介できる人材を育成するため、知財の
専門家等による「出前型」研修事業の実施が効果的ではないか。
・また、大学や高専、公設試験研究機関、商工会議所・商工会でも企業の相談があ
った場合、北海道知的財産情報センター等専門機関や弁理士への紹介など含めて
迅速に対応できるような体制を整備する必要がある(特に公設試、高専、大学等
では特許・実用新案、商工会議所・商工会では商標に関する相談も多い)。