永久磁石ハルバッハ配列界磁 の特徴と電気機器への応用 ·...
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Kogakuin University
永久磁石ハルバッハ配列界磁の特徴と電気機器への応用
工学院大学 工学部 電気システム工学科
教授 森下明平
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研究背景
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鉄心のないイノベーティブなモータを開発する必要がある。
◆永久磁石モータ・市場要求・・・小型、軽量、高トルク
・モータに使用される鉄心は、比重が大きく磁気飽和が発生。軽量化、高トルク化に限界がある。
・コギングやトルクリップが発生し、振動・騒音の原因となる。
従来PMモータ
コア(鉄心)
ロータ
ステータ
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ハルバッハ配列とは
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1980年代、Klaus Halbach氏が発明当初、電子ビーム加速器などに利用近年、モータ、リニアモータなどでの利用が増加
S SN
SN N
磁界が磁石両側に広がる
N-S配列
S
S
S
N
N
N
磁石片側に磁界が集中
ハルバッハ配列
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ハルバッハ配列界磁
4-1.5
-1.0
-0.5
0.0
0.5
1.0
1.5
0 90 180 270 360
電気角[deg]
磁束密度[T]
二列ハルバッハ配列
ハルバッハ配列
N・S配列2.0倍
磁界が強まる側を向かい合わせて2列のハルバッハ磁石を配置
各磁石の磁束密度分布
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モータ/発電機の基本構成■ハルバッハ配列界磁を用い、モータ/発電機を構成
ロータハルバッハ配列磁石
ステータコイル
トルクが大きく、低振動。
ハルバッハ配列磁石コアレスモータ/発電機従来PMモータ/発電機
コア(鉄心)
ロータ
ステータ
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研究目的
• ハルバッハ配列界磁を用いたモータ/発電機の電
気設計指針を確立し、最適設計時の機器特性を把握する。
• キーメトリック(コアレス→コイルスペース増大)
出力/重量比
トルク脈動率
定格運転時の効率
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研究成果
• 界磁中の磁束
7図 磁気回路構成
1/2 Hmlm
1/2 Hmlm
Hmlm
1
3
21/2 Hmlm1/2 Hmlm
Hmlm
1/2 R1/2 R
R R
R R
2/a R2/a R
2a R
2a R
2a R
2a R
2a(1-2) R 2a(1-2) R2/a R2/a R
2/a R2/a R
R R
R R
1/2 R1/2 R図 界磁中の磁束線
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研究成果
• ギャップ中の磁束
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lm:PM一辺の長さS:PMの磁路断面積R:PMの磁気抵抗:真空の透磁率
a :ギャップ長/ lmの比 :横向きPM表面から磁気回路垂直部分までの距離/ lmの比 :PM配列から磁気回路ギャップ中の水平部分までの距離/ギャップ長の比
SlR m 0μ
R
lHaaa mm
12212
21
RlHa mm 3
38412232421
12222
aaa
rBaB 2ポールピッチ間のy 方向平均磁束密度: Br:PMの残留磁束密度
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研究成果
• = 0.20, = 0.22 のとき、ギャップ長比a の関数として表されるポールピッチ間平均磁束密度B が磁場解析値と最もよく一致する。
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-2 0 2 4 6 8 10 12-1.5
-1
-0.5
0
0.5
1
1.5
Position (p.u.)
By
(T)
a = 0.25
a = 0.5 a = 1.0
a = 1.5a = 2.0
図 界磁中の縦方向磁束密度分布
図 ポールピッチ間平均磁束密度
ただし、Br = 1.3 (T) のとき
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.50.2
0.4
0.6
0.8
1.0
Gap ratio a
B tT
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研究成果
• ギャップ中にコイルを配置するとき、コイルの磁束鎖交数は、コイルと界磁間のギャップ長の総和とlm との比をr として以下ように表せる。
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2
sin2
sin2π
)(42
sin2
sin22,
2 ddaSBs
lra
ddaSBdNra
c
m
π2 mBaB
図 コイル鎖交磁束
cswlraN m
Bm:最大磁束密度w:素線部コイル幅d:素線部コイル幅の電気角換算値b:ボビン幅:コイル全幅位置の電気角換算値N:コイル巻き回数
d
B m
0 0 level
w wb
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研究成果
• r = 0,a = 1.2の場合の鎖交磁束数を基準とし, r を0 ~ 0.4 まで変化させた場合の鎖交磁束数(a, r)は以下のようになる。
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0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.50.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
Gap ratio a p.u.
a
,r
1.2,
0p.
u.
r = 0r = 0.1
r = 0.2
r = 0.3
r = 0.4
図 磁束鎖交数
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研究成果
• したがって、コイルと界磁の空隙に応じて界磁のギャップ長を永久磁石一辺の長さの1.2~1.5に設定してやれば最大の鎖交磁束数を得ることができる。
• 従来は、界磁ギャップ中で、できるだけ強い磁束が得られ、かつ磁束分布が正弦波状になるよう磁石一辺の長さとギャップ長を大体等しく設定していた。
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応用例1:同期リニアモータ
• デュアルハルバッハ配列コアレスリニア同期モータ
13Mover(Armature coil )
Stator(Halbach arryas)Shield (Iron)
図 応用例1
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応用例1:同期リニアモータ
• リニアモータの構成
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可動部出力軸
支持用ロッド
固定部
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応用例1:同期リニアモータ
• 縦断面
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可動コイル可動部出力軸
永久磁石デュアルハルバッハ界磁
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応用例2:同期発電機
• デュアルハルバッハ配列コアレスリニア同期モータ
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図 試作した発電機
表 試作電機の仕様
Rated output 200 (W) Height 35 (mm)
Line voltage No load: 40 (V0-p)
Rotor diameter 240 (mm)
Rated speed 300 (rpm) Number of coils 24
Phase 3-Y-connection Number of poles 32
Magnet number of pieces Magnet specifications
Outside Inside Sum total Coercive force Remanent
flux density64 64 128 955 (kA/m) 1.3 (T)
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応用例2:同期発電機
• 発電機の構成
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図 ステータ(コイル)
図 ロータ(磁石)
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応用例2:同期発電機
• ロータ製造工程
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ロータフレーム 磁石貼付けジグを組み合わせ
接着剤にて磁石を貼付け 完成したロータ
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新技術の特徴・従来技術との比較
• 従来のコアレスモータ/発電機との比較
– 同じサイズ,同じ電圧でおよそ2倍の出力が得られる。
• 従来の埋め込み磁石同期モータとの比較
– 同じサイズで同等の出力値が得られる。
– 同じサイズで重量が20~30%軽くなる。
– コギングがない。
– トルクリップルが数10分の1に低減
– 巻線の自己インダクタンスLが数100分の1
– 製造時に金型が不要
– 鉄芯が無いためコイルスペースが広い
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巻線損失の低減
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想定される用途• 小形風力発電機
– コギングトルクがない⇒微風からでも発電可能
• 低音域スピーカ用ボイスコイルモータ
– Lが小さい⇒信号に遅れが無い
– トルクリップルがない⇒高調波ノイズが発生しない
• インホイールモータ
– 重量が軽い⇒ばね下重量の低減
• サーボモータ
– トルクリップル,コギングがない⇒高精度位置決めが容易
• DCブラシレスモータ
– 自己インダクタンスが極端に小さい⇒低振動・低騒音20
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実用化に向けた課題
• ハルバッハ配列の製作性が良くない。量産に適した製作方法がまだ見つかっていない。
• 界磁を回転させる場合、遠心力に対する対策が必要。永久磁石を円環で固定する場合、コイルスペースが狭くなる。
• 永久磁石が高価
– 国産ブランド牛肉程度 :1.5~2.0千円/100 g
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企業への期待
• 未解決の量産および価格については、磁石メーカの技術により克服できると考えている。
• コイルのモールド技術を持つ企業または磁石製造メーカとの共同研究を希望。
• 大出力小口径低周波スピーカや高精度位置決め用モータ,インホイールモータ,低回転高トルク発電機を開発中の企業は本技術の導入が開発促進に有効と思われる。
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本技術に関する知的財産権
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• 発明の名称:電磁誘導装置
• 出願番号:特願P2012‐083282• 出願人:工学院大学
• 発明者:森下明平,横山修一
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お問い合わせ先
工学院大学 総合研究所 研究推進課 山岸勉
Tel :042‐628‐4940Fax :042‐628‐4853E‐mail :[email protected]
タマティーエルオー株式会社
産学連携事業部 松永 義則
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Fax : 042‐570‐7241
E‐mail : tech@tama‐tlo.com
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