環状イソマルトース(シクロデキストラン)の分子 …...cyclodextrans (cis) are...
TRANSCRIPT
東京工芸大学工学部紀要 Vol.38 No.1(2015)
851
*1 東京工芸大学大学院博士課程後期大学院生、現在上智大学理工学部特別研究員 *2 東京工芸大学工学部生命環境化学科卒業研究生 *3 東京工芸大学工学研究科客員研究員 *4 東京工芸大学工学部生命環境化学科教授
2015 年 9 月 28 日 受理
環状イソマルトース(シクロデキストラン)の分子特性と構造
藤原 章司*1 小澤 開土*2 成澤 俊明*3 高橋 圭子*4
Molecular properties and molecular structure of α-(1,6)-cycloisomaltoses
Shoji Fujiwara*1Kaito Ozawa*2 Toshiaki Narusawa*3 Keiko Takahashi*4
The chemistry of large ring molecules has been very much part and parcel of the development of supramolecular chemistry. Cyclodextrins (CyDs) are typical cyclic oligosaccharide. Cyclodextrans (CIs) are also naturally occurring α-(1,6)-linked cyclic isomaltooligosaccharides, consisting of seven to seventeen glucopyranosyl residues. Three secondary hydroxy groups are situated on one of the edges of the ring, whereas no hydroxy group is placed on the other edge. To indicate the structural characterization of CIs comparing with CyDs, NMR spectroscopy; 1H, 13C NMR and relaxation measurement were studied. Owing to the presence of C6 methylene groups and the absence of hydrogen bonding belt, CIs have high water solubility and flexible ring structure. We also indicate direct evidence that CIs include Congo red molecules.
諸言
シクロデキストラン
環状オリゴ糖は環状構造の内側に種々の物質を取り込
み包接化合物を形成する。代表的分子は D-グルコースが
α-1,4 結合で環状に連なったシクロデキストリン
(Cyclodextrin; CyD)である。CyD は、疎水性相互作用を
駆動力として、空洞の大きさに応じた分子をゲスト分子と
して包接するユニークな特性を有している 1)。包接に伴い、
ゲスト分子の安定化や水溶化をもたらし、食品、医薬品か
ら機能性材料に至るまで、多様な分野で応用展開されてい
る 2)。 CyD 以外にも環状オリゴ糖は存在する。グルコースを
単位構造としたものだけでも、α-1,6、 β-1,2、 β-1,3-環状
オリゴグリコシドが報告されている (Figure 1)3)。α-1,6 結
合した環状オリゴグリコシドは環状イソマルトオリゴ糖
(cycloisomaltooligosuccharide)あるいはシクロデキストラン
(cyclodextran)とも呼ばれ CI と略記されている 4)。α-1,4 結
合環状グルコピラノシド CyD は狭い空洞縁に 1 級水酸基
を広い空洞縁に 2 級水酸基を有しているのに対し、CI は 2級水酸基のみを有している。したがって CyD のような深
く堅固な疎水性空洞を有していない。浅く広くフレキシブ
ルな空洞を有している。CyD は 19世紀末に発見されたが、
CI は 1993 年に発見された 5)。CI はショ糖からデキストラ
ンを合成するデキストラン生産菌と、デキストランを原料
として CI を合成する環状イソマルトオリゴ糖グルカノト
ランスフェラーゼ[EC2.4.4.248]による分子内転移反応によ
って生産されており、現在の CI 生産法では CI-7~CI-12(グルコース残基が 7~12 個)の含有量が 15%程度で、複
数の環状オリゴ糖を含有したまま生産されている。現在の
ところグルコース数が 7 個から 17 個までの CI-7~CI-17 ま
での 11 種類が構造決定されている 6)。CI は CyD 同様、非
還元性糖質で、加熱、酸・アルカリにも強く安定である。
CyD と異なり、等量以下の水に溶解する高い水溶性を有し
ている。さらに、-1,6 結合であるので、-1,4 結合を切断
するアミラーゼや消化酵素にもグリコシド結合は切断さ
れない。即ち、経口摂取しても、体内でカロリー源となら
ない。-CyD を除く CyD; -、-CyD が腸内細菌や消化
酵素でグリコシド結合が切断されて非環状になることを
考えると、-CyD が対象としている比較的大きなゲスト分
子に対する包接能力の検証が望まれるところである。CIは環の大きさにかかわらず、グルコーストランスフェラー
ゼ阻害作用を有し、抗う蝕性を発現することから 7)、様々
な環の大きさの CI と非環状 α-1,6-グルコシドの混合物で
ある CI-plus を主成分とした虫歯防止剤が実用に付されて
いる。さらに、グルコースの 2 位から分岐を有する分岐シ
Figure 1. Various cyclic oligoglucosides.
O
H
H
HO
H
OOHH
H
OH
n
O
H
HO
H
HO
H
HOHH
O
n
‐(1,3)‐linked ‐(1,3)‐linked‐(1,6)‐linked
‐(1,6)‐linked‐(1,4)‐linked ‐(1,2)‐linked
n
O
HHO
H
HO
H
H
O
H
OH
O
H
HO
H
O
H
OHHOH
OH
n
O
H
HO
H
HO
H
OHHH
O
n
O
H
HO
H
O
H
HOHH
OH
n
natural product
artificial product
86
2
クロ
接作
工業
CI中、
特性
本
収ス
ク
トル
(SPの化
る報
2
ロデキストラ
作用を有する
業規模での C研究報告は限
、ビクトリアブ
性を示した報
研究の目的
当研究室では
スペクトル (トル (CD)、核
ル (MS)、表
PR)法などを用
化学修飾 CyD報告および分
Figure 2. 500
Figure 3. 125
ンも酵素を用
ことが報告さ
CI 生産が行わ
限られている。
ブルーの退色
報告があるのみ
的
は、CyD の包
(UV)、蛍光ス
核磁気共鳴スペ
表面プラズモ
用いて解析を
D を合成して
分子構造の報告
0MHz 1H NM
5MHz 13C NM
用いて合成され
されている 8-9)
われていないこ
。CI-10 が pH 色阻害を示した
みである。
包接現象につい
スペクトル、円
ペクトル (NMン共鳴光学
行ってきた 1
きた。CI の系
告は少ない。C
MR spectra of C
MR spectra of
東京工芸大学
れ、フラーレ)。しかしなが
こともあいま
7.0 リン酸緩衝
たことによる包
いて、紫外可視
円偏光二色性ス
MR)、質量スペ
バイオセンサ10-25)。また、種
系統的分光法
CI-7~CI-17
CIs, CyDs and
CI-10 and -
学工学部紀要 Vo
ン包
ら、
って、
衝液
包接
視吸
スペ
ペク
サー 種々
によ
、11
種類
本論
び緩
特性
る、
実験
試薬
した
機器
測定
atom32 回
J-82測定
d D-glucose in
CyD in D2O.
Vol. 36 No.2(20
類の、13C NMR論文では、CI緩和時間を検討
性について報告
誘起円偏光二
験および方法
薬 溶媒、試
た。CI は株式
器 NMR は J定した。標準的
m%)0.75 ml回、13C 核では
20 (日本分光(定した。溶媒は
n D2O.
013)
R が報告され
化学の基礎と
討した。CyD告する。また
二色性につい
法
試薬は特級また
式会社シー・ア
JEOL NM-LA的には約 5 mgに溶かし、30
は 4400 回積算
株)製)を用い
は純水を用い
れているのみで
として、NMRD との相違点に
た、コンゴーレ
いても報告する
たはそれに準
アイ・バイオ製
A500 を用いて
g の CI を重水
0.0 ℃で測定
算した。円偏光
いて、 0.1 mmいた。
である 6)。そこ
R スペクトルお
に着目して Cレッド分子に対
る。
準ずるものを使
製を使用した
て 5 mm試料管
水(ALDRICH 9した。1H 核で
二色性は JASm の石英セルに
こで
およ
I の対す
使用
た。
管で
99.9 では
SCO にて
環状イソマルトース(シクロデキストラン)の分子特性と構造
東京工芸大学工学部紀要 Vol.38 No.1(2015) 87
半経
SHa造を
SC可視
64b8G
結
NM
Cペク
-Cグル
属は
ら行
に示
され
順で
ペク
場シ
的で
の化
の化
磁場
のス
は分
性空
い
グル
う。
○
Figure 4. CO
経験的分子軌
SCIGRESS Mmiltonian AMを最適化し、
IGRESS MO 視化した。計算
bit Intel® CorGB) を用いた
果と考察
R スペクトル
CI-7、CI-8、 クトルをFigu
CyD、および Dルコースは、
は二次元 H-H行った。CI-10示した。1H Nれている。低
で 5-3.3 ppm の
クトルと比べ
シフトと、H6である。また
化学シフト値
化学シフト値
場に観測され
スペクトルで
分子内 2OH-3空洞を有して
る。このため
ルコースとは
。CI は 1 級水
○○○○○○○○
SY spectrum
軌道計算 MO Compact V
1およびPM5分子の三次元
Compact に搭
算機は Dell 製re™ 5400 proc
26-28)。
ル
CI-9、 CI-10ure 2に示した
D-グルコース
-と-体が混
H COSY と C-0 の各スペク
NMR では鋭い
低磁場側から Hの範囲にシグ
べると、アノメ
6, H6’プロトン
、CyD では構
値が依存してい
値に差異がある
れたことを除く
である。α-1,43OH 水素結合
ている。空洞の
め分子のフレ
は異なる化学シ
水酸基を有す
○○○○○○○○
of CI-10.
V1 Pro. によ
5を用いて真空
元構造につい
搭載の描画プロ
製 Precision T74cessor 3.16GH
の重水中にお
た。比較のため
の NMR スペ
混在している。
-H COSY との
トルを Figure いシグナルが 1
H1, H5, H6, Hグナルが観測さ
メリック H1 お
ンの分裂(約
構成グルコース
いるのに対し、
るのみであった
くと、-グルコ
結合で環状構
合ネットワーク
の内部には H3キシビリテイ
シフトとなっ
する 6 位とグリ
○○○○○○○
より Semiempi空における分子
て検討するた
ログラムを用い
400 (WindowsHz, main mem
おける 1H NMRに、-CyD、-
ペクトルも示し
各シグナル
の相関シグナル
4 および Figu1 スピン系で観
H6’, H3, H2, Hされた。CyDおよび H3 の低
0.2 ppm)が特
ス数に H1, H3、CI では H6,た。H1 がやや
コースとほぼ
構造を有する
クを形成し、疎
3, H5 が存在
イが制限され、
っているのであ
リコシド結合
○○○○○○○
F
irical 子構
ため、
いて
s® XP mory
MR ス
-CyD、
した。
の帰
ルか
ure 5観測
H4 の
のス
低磁
特徴
3, H5, H6’や高
同一
CyD疎水
して
、-あろ
して
いる
これ
イを
CI-7きさ
接挙13
され
んど
示し
70.9と比
てい
であ
フト
はア
値と
値の
のシ
つい
と比
きる
緩和
Cプロ
化学
糖を
時間
H3ms、して
空洞
示し
合し
○○○○○○○○
Figure 5. C-H
るので、環化
れは CI が高い
を有するとい
7 の H6, H6’のさにより分子構
挙動などの機能3C NMR にお
れた。構成グル
どない。代表例
した。CI-10 で
98 (C5), 70.42比較すると C1いる。これは Cあろう。C6 エ
トする結果と矛
アノメリック
と相関性があ
の差異に相当す
シフト値から
いて推測がで
比較して環の
るかどうかは確
和時間(T1)CyD、CI とも
ロトンは重複
学シフト値を有
を構成するグル
間 (T1/ms)を示
が約 900 ms、H5 と H6 は
て求められ約
洞壁中央(グ
した。CI-10 の
している H2、
○○○○○○○○
COSY spectru
の影響がスペ
い水溶性を有し
われているこ
のシフト値の差
構造の差異が
能性開発の可
おいては CyD 同
ルコース数に
例として CI-1では 98.35 ppm2 (C2), 66.58 (1 , C4 は低磁場
C1-C6 間でグ
エステル化 Cy矛盾しない。CC1、およびア
り、二面角(ψする 11),16)。修
環全体のグル
きたが、C6 位
歪みやフレキ
確定できなか
に α-グルコー
しているが、
有する(Figurルコース各プ
示した。CyD で
グルコシド結
はシグナルが重
400 ms であっ
リコシド結合
の場合、2 級水
H3、H4 は約
○○○○○○○
um of CI-10.
ペクトルに反映
し、CyD より
ことに矛盾し
差異が小さい
がある可能性を
可能性がある。
同様、6種の
よるスペクト
0 のスペクト
m に C1, 74.15(C6) ppm が観
場に、C6 は高
リコシド結合
yD の C6’シグ
C1- C4 グリコ
アグリコニック
ψ)10°が 2 pp修飾 CyD にお
ルコシド結合
位はメチレン
キシビリテイ
かった。
ース単位で構
H1, H2, H3, Hure 2)。Table プロトンの 17 では広い空洞縁
結合の両端の
重複している
った。疎水性
合周り)、狭い
水酸基を有し
約 1 s で、グリ
○
映されていな
フレキシビリ
ない。ただし
い。これは環の
を示しており、
のシグナルが観
トルの差異はほ
トルを Figure 35 (C3), 74.14 (C観測された。C高磁場に観測さ
合をしている影
グナルが低磁場
コシド結合二面
ク C4 化学シフ
pm の化学シフ
おいては、C1合二面角の範囲
ン基であり、Cについて議論
構成され、H5, H4, H6’は異な
1 に環状オリ
℃における緩
縁に存在する
H1, H4 が約
るため、平均値
性空洞の広い縁
い縁で同様の値
している炭素に
コシド結合両
3
い。
リテ
し、
の大
、包
観測
ほと
3 に
C4), CyDされ
影響
場シ
面角
フト
フト
1,C4囲に
CyD論で
H6なる
リゴ
緩和
H2、500
値と
縁、
値を
に結
両端
88
4
の
コシ
ース
ド結
いる
1は
トン
周囲
値か
これ
を
が
反映
的な
CIてお
運動
-、を
ンの
T
F T
4
H1 と H6 はや
シドの 1 プロ
ス 1 残基あた
結合両端のプ
る可能性があ
17-80 ℃で 1060 ℃におい
ンの T1 値は
囲のプロトン
から直接分子
れまで報告例
とっている-C40 ℃において
映している可
な検討が必要
は分子内水素
おらず、CyD動性を有して
、-、-CyD の
Table 2 に示
の影響を受け
Table 1. T1(H)
igure 4. Dep
Table 2. T1 (C)
環状グリコシド
CI10 6
‐CyD 5
‐CyD 5
‐CyD 6
200
400
600
800
1000
1200
1400
1600
10
T 1(m
s)
環状グリコシド
CI‐7 18
ppm 9
‐CyD 18
ppm 10
‐CyD 17
ppm 10
‐CyD 16
ppm 10
やや短い 700, トンあたりの
たり約 45 ms プロトンの T1 ある。
0 ℃ごとに T1
て H3 が短い
極値を示さな
ンの影響を受け
子の運動性につ
例がない。しか
CyD では、広
て極小値を示
可能性がある。
要である。しか
素結合ネット
D と異なり、
ていると考えら
の室温におけ
した。一般に
けやすく、炭素
of cyclicolig
pendency of T
of cyclicoligo
H1 H2
692.8 913.8 1
501.3 802.4 8
535.6 877.9 1
603.4 828.6 1
30温度
C1 C2
85.766 174.115 18
97.436 71.059 7
81.671 219.787 20
00.429 72.425 7
74.756 188.041 18
01.518 72.710 7
66.115 181.053 18
01.318 72.575 7
350 ms であっ
の緩和平均値は
増加している
は短く分子運
1 を測定した
い値を示したが
なかった。プロ
けやすいので
ついて議論す
かし同じグルコ
広い縁に存在
示す。これは分
証明に至るに
かしながら、
ワークのよる
グルコースと
られる。さら
る炭素の T1 を
にプロトンの緩
素の緩和が分子
gosaccharides
T1 of CI-10 on
osaccharides.
T1 / ms
H3 H4 H
1051 907.1 44
52.5 477.6 33
1044 529.8 32
1125 604.5 37
50 70度(℃)
T1 / ms
C3 C4
82.355 171.652 16
73.083 69.427 6
04.339 204.391 20
71.615 80.313 7
80.958 174.148 17
71.706 80.758 7
82.942 178.232 17
71.956 80.05 7
東京工芸大学
った。各環状
は、環構成グル
る。またグリ
運動が制限され
(Figure 6)。Cが、その他の
ロトンの T1 値で、水溶液中の
ることは難し
コースが環状構
している H2,分子内水素結合
にはさらなる系
極値を示さな
る運動制限を受
と変わらない分
に、CI-7、CIを測定した。結
緩和は他のプ
子の運動性の情
s.
n temperature.
A5,6a) H6’
45.1 347.5 68
35.5 ― 52
23.1 ― 56
70.3 ― 61
90
C5 C6
67.685 96.075 1
69.852 65.67
04.339 118.965 1
71.685 60.89
74.726 107.608 1
71.429 59.845
78.611 100.994 1
71.398 59.845
学工学部紀要 Vo
グリ
ルコ
コシ
れて
CI-10 プロ
値は
の T1 しく、
構造
, H3合を
系統
ない
受け
分子
I-8、結果
ロト
情報
を与
の
察は
され
なか
細な
シク
水酸
る。
その
水性
トを
和時
運動
けて
メリ
は 2中の
色の
る
は全
てい
構造
の酸
が共
コー
その
T
Av.
86.0
20.0
65.2
10.3
H1
H3
H5,6
H6’
H2
H4
Av.
162.9
188.9
166.7
164.7
Vol. 36 No.2(20
Figure7
与える。しかし
T1 がやや長め
はできない。プ
れたが、ほぼ
かった。温度依
な系統的考察が
クロデキスト
-1,4 グリコシ
酸基縁を有し、
さらに二級水
の結果グリコシ
性空洞を形成
を有しているの
時間の結果を総
動性を有し、環
ていないと考え
リック位水酸基
2 位、3 位、4の誘電率を用い
の矢印は双極
(Figure 7, 8)。全て垂直方向に
いる疎水性空洞
造をホスト分子
酸素原子の不
共同して働く配
ース残基は十分
の可能性は高い
Table 3. Dipol
013)
7. Structure of β-C
しながら、ここ
めで、運動性が
プロトンでは環
同じ値で、CI依存性や固体状
が必要である
トランの分子
シド結合した
、グルコース環
水酸基側で水素
シド結合部分
し、空洞軸に対
のであろう。
総合すると、
環状になって
えられる。6 位基間での-1,64 位の 3 つの二
いて MOPAC子モーメント
シクロデキス
に向いている
洞の存在も確
子として機能
対電子あるい
配向性が必要
分なフレキシ
い。
e moment value
CI-7
CI-8
CI-9
CI-10
CI-11
CI-12
CyD (bottom) an
こに示した結果
が低い可能性
環構造との相
I の特質も見
状態での測定
る。
子構造
CyD は一級
環は規則性を
素結合ネット
分がベルト状に
対し交差した
NMR スペク
CI はグルコ
てはいるが Cy位の唯一の一
6 グリコシド
二級水酸基の
で描画した結
トの方向と大
ストランの双
る。CyD の包接
確たる証拠がな
能させるには、
いは水酸基の
要であると考え
シビリテイを有
es of CI calcula
D/debey
6.994
10.251
9.699
13.302
13.561
12.791
nd CI-7 (upper)
果からは、-C性がある以上の
相関性の端緒が
見出すことがで
定なども含めて
級水酸基縁と二
をもって並んで
トワークが生じ
に位置し、深い
た双極子モーメ
クトルの結果と
コース分子に近
yD ほど制限を
一級水酸基とア
ド結合により、
のみ有する。真
結果を示した。
大きさを表して
双極子モーメン
接の駆動力とな
ない。CI の環
グリコシド結
酸素の不対電
えられる。各グ
有しているの
ated by MOPAC
CyDの考
が示
でき
て詳
二級
でい
じる。
い疎
メン
と緩
近い
を受
アノ
CI 真空
。紫
てい
ント
なっ
環状
結合
電子
グル
で、
C.
環状イソマルトース(シクロデキストラン)の分子特性と構造
東京工芸大学工学部紀要 Vol.38 No.1(2015) 89○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
5
Figure 8-1. Top view molecular drawings of CI-7, 8, 9,10,11, and 12 by MOPAC.
90 東京工芸大学工学部紀要 Vol. 36 No.2(2013)
6
Figure 8-2. Side view molecular drawings of CI-7, 8, 9,10,11, and 12 by MOPAC.
環状イソマルトース(シクロデキストラン)の分子特性と構造
東京工芸大学工学部紀要 Vol.38 No.1(2015) 91
コ
コ
れて
な
よる
在で
が高
で応
する
明
接現
する
NCI-来
CI-され
ル
(3.3の変
高
敏
CI-接の
CI-cotの
的な
CI-で、
高い
水溶
が判
ア
グ
非環
唆
成の
○
ンゴ-レッド
コンゴーレッ
ており, かつて
どの極性有機
る自己集合体
ではその毒性
高い β-アミロ
応用されてい
ることが報告
し、この現象
現象は NMR 化
る。 NMR スペク
-plus 存在下、
のシグナルの
-plus の濃度に
れた分子ピー
は集合体特有
3-4.8 ppm) 変変化も観測さ
高温では CR 集
なシグナル観
-plus存在下の
の証拠を得る
-9、CI-10 存在
tton 効果を示
CR が CI グル
な構造をとっ
-7 が最も大き
、その影響も
いとは一概に
溶液中、室温
判明した。CIミラーゼ処理
リコシドであ
環状オリゴグ
している。NMの存在も示唆
Figure 9
○○○○○○○○
ドに対する包
ド (CR; Figuて染料として
機溶媒に易溶で
体を形成し、コ
性のため, 染料
ロイド構造親
いる。-CyD と
告されており 2
象を分子ピーリ
化学シフト変
トルにおいて
naphthyl 基由
のわずかな低
にシフトは依存
ーリング現象は
有のブロー
変化は観測され
れなかった。
集合体の -観測が可能と
のNMRスペク
ことができな
在下、CR は紫
した(Figure 1ルコース基の
っている証拠
きいが、CI を
考慮の必要が
に決めることは
温で CR と規則
I-plus は環状オ
理をしているの
ある。したがっ
グリコシドはCMR シグナル
唆している。
Molecular str
○○○○○○○○
包接挙動
ure 9) は pH 指
て用いられてい
で水中では-コロイド溶液を
料として用い
和性が細胞診
と 2:2 の擬ロ29)、本研究室で
リングと定義し
変化や誘起円偏
て、環状オリゴ
由来のシグナル
低磁場シフト
存した。しか
は観測されず、
ドで、CI-pluれず、紫外可視
スタッキング
となる。 80 クトル変化もわ
なかった。とこ
紫外可視吸収極
10)。複数、少
の不斉環境の影
である。誘起
を等重量濃度で
があり、CI-7 の
はできない。
則的な構造を形
オリゴ糖が 15ので、残りは非
て、CI-plus のCRの ICDを示
ルシフトに反映
ructure of Con
○○○○○○○
指示薬として知
いた。エタノー
スタッキン
を生成する 28)
いられてはいな
診断など研究分
ロタキサンを形
ではその機構
してきた 30-33)
偏光二色性に反
ゴ糖混合物で
ルと biphenyl 基が観測された
かし、CyD で観
、CR 由来シ
s 由来シグナ
視吸収スペク
グが解除され
℃で同様に過
わずかで明確
ころが、CI-7、C極大値に対応
少なくとも 2 分
影響を受け、規
起二色性 (ICDで添加してい
の包接能力が最
しかし、CI が
形成している
5 %程度であ
非環状 1,6-オの ICD の結果
示さないこと
映しない包接体
ngo red.
○○○○○○○
知ら
ール
グに)。現
ない
分野
形成
を解)。包
反映
ある
基由
た。
観測
グナ
ナル
トル
、鋭
過剰
な包
CI-8、した
分子
規則
D)はるの
最も
が、
こと
る。
リゴ
は、
を示
体形
結論
シ
ルコ
よび
CIに矛
双極
合す
ス基
でい
有し
し、
ころ
包接
なく
的相
二級
から
ルコ
究に
結果
は疎
酸基
こと
によ
して
NMの各
H3上が
かっ
Cは 3性分
状機
○○○○○○○○
論と展望
シクロデキス
コシド、CI のびカーボンの帰
のプロトン、
矛盾しないよ
極子モーメン
すると CI はグ
基間の水素結合
いる証拠も得
している事と矛
NMR、紫外
ろ、唯一、円偏
接体形成と断言
くとも CI 構成
相対位置で近接
級水酸基であ
ら盛んに研究
コースから構成
に付されてい
果は(1) CI の疎水性相互作用
基の相互作用、
とを示してい
よる NMR 化
ており、深い
MR シグナルシ
各プロトンは同
および H5 プ
が、CI が CR を
った理由であろ
CI は CyD とは
3 つの 2 級水酸
分子の根幹をな
機能性分子と
Figure 10. In
○○○○○○○○
トランという
NMR スペク
帰属を行った
カーボンの緩
う、半経験的
トを示した。
グルコースに近
合ネットワー
られなかった
矛盾はない。
外可視、円二色
光二色性で包
言するには更
成グルコース不
接しているこ
る。機能性環
されている C成されている
る可能性が高
の空洞は疎水性
用を主な駆動
、さらに環状構
る。これまで
化学シフトは疎
い堅固な空洞
シフトに対応す
同じ環境にあ
プロトンが存在
を包接しても
ろう。 は異なる特徴
酸基である。多
なす相互作用
して CI を機能
duced CD in t
○○○○○○○
う通称を有す
トルを測定し
た。すべてでは
緩和測定を行
的分子軌道計算
NMR スペク
近い運動性を
ークの存在も、
た。CI が非常
ゲスト分子と
色性スペクト
包接体形成の証
更なる検証が必
不斉環境が Cことが判明した
環状オリゴ糖と
CyD が有名で
る CI も CyD と
高い。しかし、
性ではない、(動力としている
構造の制限に
で CyD 化学で
疎水性-親水性
へゆっくり包
する。さらに
ある、具体的に
在している。
も明確な NMR
と可能性を有
多点多重水素
用である。多点
能させるには
the presence o
○
する環状オリゴ
し、全プロトン
はないが、代表
行った。測定結
算で描画を行
クトルの結果を
を有し、グルコ
環状構造が歪
常に高い水溶性
として CR を選
ルで検討した
証拠が得られ
必要であるが、
CR 発色団と規
た。不斉環境=
としては、前世
あり、同じ Dと同様に包接体
本論文で示し
(2) CI の複合
るのではなく、
によるものであ
で提示された包
性バランスに対
包接されるの
に、各グルコー
には空洞内側に
CI は異なる。
R 変化に反映し
有している。そ
素結合は生体機
点多重水素結合
は、グリコシド
of CI.
7
ゴグ
ンお
表的
結果
行い、
を総
コー
歪ん
性を
選択
たと
れた。
、少
規則
=糖
世紀
D-グ体研
した
合体
、水
ある
包接
対応
ので
ース
には
以
しな
それ
機能
合環
ド結
92 東京工芸大学工学部紀要 Vol. 36 No.2(2013)
8
合あるいは水酸基の酸素の不対電子が協同して働く配向
が必要であると考えられる 34,35)。各グルコースは十分なフ
レキシビリティを有しているため、さらなる発展が期待さ
れる。その基礎データとして本研究が寄与すると考えられ
る。
謝辞
本研究の機会を与えていただきました日新精糖株式会
社に深く感謝いたします。
参考文献
1) M. L. Bender, M. Komiyama, Cyclodextrin Chemistry, Springer-Verlag, New York, 1978.
2) ナノマテリアルシクロデキストリン, 日本シクロデキス
トリン学会編, 米田出版 2005. 3) G. Gattuso, S. A. Nepogodiev, J. F. Stoddart, Chem. Rev., 1998,
98, 1919-1958. 4) 舟根和美「シクロデキストラン」p205-210 早川幸男, 中
久喜輝夫編「オリゴ糖の製法開発と食品への応用」シー
エムシー出版 東京 2012 5) T. Oguma, T. Hirouchi, M.Kobayashi, Biosci. Biotechnol.
Biochem.,57, 1225-1227, 1993. 6) K. Funane, K. Terasawa, Y. Mizuno, H. Ono, S. Gibu, T.
Tokashiki, Y. Kawabata, Y. M. Kim, A. Kimura, M. Kobayashi, Biosci. Biotechnol. Biochem., 72, 3277-3280 2008.
7) M. Kobayashi, K. Funane, T. Oguma, Biosci. Biotechnol. Biochem., 59, 1861-1865, 1995.
8) C.-Y. Jina, D.-D. Zhang, T. Oguma, S.-X. Qian, J. Incl. Phenom. Macrocycl. Chem., 1996, 24, 301-310.
9) T. Oguma, H. Kawamoto, Trends Glycosci. Glycotechnol., 15, 91-99, 2003.
10) K. Takahashi, Y. Koizumi, K. Hattori, The Academic Reports of the Faculty of Engineering, Tokyo Institute of Polytechnics, 13, 18 -22, 1990.
11) K. Takahashi, J. Chem. Soc. Chem. Comn., 1991, 929-930. 12) K. Takahashi, Bull. Chem. Soc. Jpn., 66, 540-544, 1993. 13) K. Takahashi and R. Furusho, Polymer J., 28, 458-464, 1996. 14) 今多秀夫 , 服部憲治郎 , 高橋圭子高分子論文集 52,
639-643 , 1995. 15) M. A. Hossain, K. Hamasaki, K. Takahashi, H. Mihara, A.
Ueno, J. Am. Chem. Soc., 123, 7435-7436 2001. 16) K. Takahashi, K. Imotani, M. Kitsuta, Polymer J., 33, 242
-247, 2001. 17) I. Suzuki, Y. Kato, Y. Egawa, J. Anzai, M. Wadamori, H.
Yokomizo, K. Takahashi, J. Mol. Structure, 602-603, 223-231, 2002.
18) K. Takahashi, H. Narita, M. Oh-hashi, A. Yokoyama and T. Yokozawa, J. Incl. Phenomn, Macrocyc. Chem., 50, 121-127, 2004.
19) K. Takahashi, Recent Res. Devel. Chem., 2, 91-103, 2004.
20) K. Takahashi, H. Yokomizo, K. Ishiyama, M. Kitsuta, M. Ohashi, J. Incl. Phenomn, Macrocyc. Chem., 56, 95-99, 2006.
21) K.Takahashi, S. Morimoto, H. Nakamura, T. Narusawa, T. Seki, M. Ooe, K. Aoi, A. Takada, J. Incl. Phenomn., Macrocyle. Chem., 70, 384-396, 2011.
22) 高橋圭子, 蕪木和孝, 成澤俊明, 東京工芸大学紀要, 35, No.1. 87-94, 2012.
23) S. Fujiwara, K. Takahashi, Supramol. Chem., 23, 156-159, 2011.
24) K. Takahashi, K. Andou, S. Fujiwara, Polymer J., 44, 850-854, 2012.
25) T. Suzuki, A. Ei, Y. Takada, H. Uehara, T. Yamanobe, K. Takahashi, Beilstein J. Org. Chem., 10, 2997-3006, 2014.
26) WinMOPAC v3.9, Fujitsu Ltd, Tokyo, Japan, 2004. 27) J. J. P. Stewart, MOPAC2002 v1.5, Fujitsu Ltd, Tokyo, Japan,
2003. 28) M. J. S. Dewar, E.G. Zoebisch, E. F. Healy, J. J. P. Stewart, J.
Am. Chem. Soc., 107, 1985, 107, 3902-3909, 1985. 29) M. Skowronek, B. Stopa, L. Konieczny, J. Rybarska, B.
Piekarska, E. Szneler, G. Bakalarski, I. Roterman, Biopolymers, 46, 267–281, 1998.
30) S. Kobayashi, S. Miwa, I. Tanaka, K. Mikuni, M. Miura, S. Ogawa and K. Takahashi, J. Appl. Glysosci., 55, 173-177, 2008.
31) 森本嵩世 東京工芸大学修士論文 2011. 32) K.Takahahsi, S.Morimoto., 5th Asian Cyclodextrin
Conference(2009), 4th Asian Cyclodextrin Conference(2007) 33) K.Takahashi, Y. Ishizaka, S. Morimoto, 6th Asian Cyclodextrin
Conference (2011). 34) 高橋圭子, 藤原章司, 「シクロデキストリンの科学と技術」
シーエムシー出版, 48-56 2013. 35) 藤原章司 東京工芸大学博士論文 2014.
環状イソマルトース(シクロデキストラン)の分子特性と構造