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2019.12.07 埼玉県勤労者山岳連盟登山学校

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2019.12.07

埼玉県勤労者山岳連盟登山学校

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雪山入門講座 目次

1.雪山を楽しむ

 雪山のシーズン ・初冬 11月~12月 ・厳冬期 1月~3月 …… 1

         冬~春 3月~5月 …… 2

 雪山の楽しみ方 …… 2

2.雪山の装備(登山)

 登山靴(雪山用)・ピッケル(アックス) …… 3

 ピッケル(アックス)名称 …… 4

 アイゼン(クランポン) …… 5

 ワカンとスノーシュー・ストック・ショベル・スノーソー …… 6

 その他装備/プローブ(ゾンデ棒)/雪崩ビーコン/ウェア …… 7

 雪山装備表 …… 8

3.雪山の計画(登山)計画書作成の重要性  …… 9

4.雪山の初歩技術(登山)雪道の歩き方 …… 9

  雪山の初歩技術(登山)ピッケル(アックス)持ち方/アイゼン(クランポン)の使用法 …… 10

5.雪山のリスク(登山) …… 11

6.雪崩について …… 12

 雪崩の種類 …… 13

 雪崩対策 …… 14

 一の倉沢出合ルート …… 15

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1.雪山を楽しむ

雪山のシーズン

初冬 11月~12月

11月に入ると高山では初冠雪があり本格的な雪の降り始めの季節。一晩で1m以上の積雪

が有ることがある。

この時期から年末にかけては冬型の気圧配置になっても長続きせず周期的に天気は移り変

わります。

寒気の入り方によって状況が著しく変わります。一晩で1m以上の積雪が有ることがあり

ます。この時期は、寒暖差が大きく雪崩の発生も多く見られる。雪崩の起きやすい条件

は、最初の降雪のあと寒気の緩みで気温が上がったり雨が降ったりして雪が解けその後寒

気が強まって気温が下がり解けた雪が凍って氷化した上に多量の降雪が有ったときは注意

が必要。

厳冬期 1月~3月

高山では最も多く降雪が有る季節。西高東低の冬型の気圧配置になると長期間続き山では

断続的な降雪になる。この時期強い低気圧が接近すると山は大荒れ

断続的な降雪によって、雪が一度止んだ夜に表面霜が発達しそこに再び降雪、これを繰り

返す事で何層もの弱層が形成され雪崩の危険が増していく。

太平洋側では好天が続くが南岸低気圧による大雪には注意が必要。

高山では天候が荒れ続けることが多く初心者の入山は控えた方がよい。

2013/1/14 南岸低気圧により関東では大雪 2013/1/15西高東低の気圧配置 関東は晴天

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冬~春 3月~5月

低山から雪解けが始まり、高山でも天候が安定し入山しやすくなり比較的安全に雪山を楽

しめる季節。

初心者はこの時期から雪山を始めて経験を積んで行く事が必要です。

この時期に現れる危険な低気圧が「二つ玉低気圧」です。西から東へ、日本海側と太平洋

側二つで発達しながら移動する低気圧です。

二つ玉低気圧が進んでくると、本州付近が上昇気流の場となり、広範囲で雨雲が発達しや

すい状況になり、このため広範囲での大雨、山では大雪や吹雪など悪天候になる可能性が

大です。雨雲(雪雲)は上昇気流により発生し、それが強いほど強い雨雲(雪雲)に発達

する性質がり、低気圧の中でも二つ玉低気圧には注意が必要です。特に冬場とゴールデン

ウィーク頃は、二つ玉低気圧による天候不良によって遭難事故が発生しておりますので、

事前の天候確認は注意が必要です。

春が進むと雪解けの季節になり雪崩に対する注意を一層怠らない事が必要です。

雪山の楽しみ方

・山スキー

・バックカントリー&スノーボード

・アイスクライミング

・スノートレッキング&雪山登山

等スノーフィールドでは色々な楽しみ方が有ります

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2.雪山の装備(登山)登山靴(雪山用)

アウターの素材で分類すると

①「レザータイプ」

②「プラスチックタイプ」

③「化学繊維タイプ」の3種類に分けられる。

レザータイプ 足になじみやすく柔軟性が有り歩きやすい。通気性が有るので蒸れにく

い。昔の革製とちがい軽量化が計られている。メンテナンスが必要

プラスチックタイプ:完全防水で保温力が高くメンテナンスフリーで扱いやすい。昔とち

がい軽量化が計られている。しかし長期間(5年以上)使用するには自然崩壊のリスクが

有る。通気性能が悪いので内部が蒸れやすい。

化学繊維タイプ:化繊素材の開発が進み、透湿性防水性能が向上しケプラーなどで強化も

計られレザー製よりも更に軽量化が計られている。ただ保温性能はレザータイプより劣

る。

◆雪山用登山靴の特性

雪山用の靴は、夏山用の靴と比べ最も大きな違いは、保温性よりもソールの硬さが違う。

雪山用の靴は雪の上を行動するために作られています。それゆえアイゼンを付けたときの

安定性と、アイゼンを付けていない時に重要となる靴底のエッジの強さを実現するため

に、ソールが非常に硬く作ってあります。このソールの硬さが一番の特性です。

ピッケル(アックス)

用途は、氷雪の斜面で足がかりを作るのに用いるほか、確保の支点(ビレイピン)、滑落

時の滑落停止、グリセード時の制動及び姿勢の維持、アイスクライミング時の手掛かり、

杖代わり、時には雪上でテントのペグとして使ったりもする。

アイスピッケルともいい,英語ではアイスアックス,フランス語ではピオレという。

頭部はブレードとピックよりなり,これにシャフトと石突きがつく。

山岳地帯での縦走用には柄が真っ直ぐで比較的長い60-70cm程度のものが用いられるが、

氷壁などの突破用には30-40cm程度と短めのものが用いられる。

氷壁用のものは、オーバーハングしている局面を考えて柄がカーブしているものもある。

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縦走用:急な傾斜が少ない積雪期登山

用途・滑落時の自己停止、歩行補助ストレートシャフトで軽量

なものが良い。

長さは女性で50~55cm、男性で55~60cmが目安直立し

てヘッドを持ってスピッツェがくるぶしあたりが目安縦走用:

ピッケルバンドは持ち替えることを考慮してショルダータイプ

の袈裟掛けが出来る物で選ぶ。

手首式とスリングの組合わせでも OK

登攀用は手首式で遊動タイプが使いやすい。

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アイゼン(クランポン)

靴底に装着するツアッケという爪のついた金属製の登山用具。氷や氷化した雪の上を歩くた

めに用いられる。

和製登山用語で、ドイツ語のシュタイクアイゼンに由来する。英語ではクランポン。

軽アイゼン:4本爪

軽量コンパクトで土踏まず部分に装着

冬の里山ハイク等に携行

有ると便利だが慣れないと危険

軽アイゼン:6本爪

4本爪に比べると接地面が広く安定する

低山の積雪時や夏の雪渓歩きなどで使用

アイゼン:10~12本爪

急斜面に対応出来るように前に2本爪が水平に出ている12本は10本くらべ氷上歩行時にグリ

ップ力を発揮する歩行技術が必要積雪時に対応している登山靴に装着して使用

装着方法は と がある。

ワンタッチ式:つま先と踵にビンディングで装着するタイプ着脱が簡単ですが装着出来る

登山靴は限られる。

バンド式:バンドで装着するタイプ登山靴の形状を選ばず装着できるが、着脱は手間。柔

らかい靴に締めすぎると血流が悪くなり凍傷の危険がます。緩すぎると外れる危険があり

注意が必要

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ワカンとスノーシュー:積雪時の歩行補助具

ワカン(輪かんじき)は価格も安く計量で持ち運びも嵩張らない、アイゼンを付けたまま装着

可能、それに比べスノーシューは価格も高く(山岳用)嵩張り持ち運びが大変。新雪の深雪歩

行には威力を発揮する。

ストック

雪山では下記以外の場所で使用

・滑落する危険のある箇所/急斜面/技術的に難しい箇所など

ショベル スノーソー

アイゼン

日本の雪は湿気が多いのでアイゼンに雪が付着

して団子状態になりやすいのでスノーブレード

付きの物を選ぶ方がよい。

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その他装備

プローブ(ゾンデ棒)

雪崩などで遭難した際、埋まった人間の場所を特定するため積雪の下を捜索するのに用いる。

継ぎ手式のアルミパイプをつないで2~3mとし、雪下を刺して感触を探る。◇「ゾンデ棒」と

もいう。

雪崩ビーコン(アバランチトランシーバー)

積雪時における登山や山スキーなど、雪崩に遭遇する危険のある場合に携行する小型の機器で

あり、電波の発射及び受信が可能である。「アバランチトランシーバー(Avalanche

transceiver)」とも呼ばれる。同行者が雪崩に巻き込まれ雪の中に埋没してしまった場合、

埋没した人が携行しているビーコンから発射される電波を救助者のビーコンで受信することに

より、埋没した人の位置を探索することができる。

雪崩ビーコンプローブ(ゾンデ棒)

ウェア

雪山登山に必要なウェアのレイヤリングを考える。

雪山登山では、天候による気温の変化と行動による体温変化を考えなければならない。

天候の急変にともなう強風や吹雪等で想像を超える寒さが訪れることもあり、また急な登り

や深雪のラッセル等の運動による体温上昇に対応するためのレイヤリングを準備しなければ

ならない。

レイヤリングの基本は、①ベースレイヤー+②ミッドレイヤー+③アウターレイヤーと3層

のレイヤーに用途を分けて全体の服装を検討しますが、雪山ではさらに細分化したレイヤー

ドを検討する必要があります。

雪山でのレイヤードベースレイヤーには、吸汗拡散性と調湿保温力が求められます。運動時

に出た汗を素早く吸収し拡散させ尚かつ適度な保温力が求められます。

汗戻りによる体温低下は急激な体力低下につながります。

ミッドレイヤーには、保温力と速乾性(汗の処理能力)が求められます。

高い保温性と優れた吸汗蒸散性の機能を備えた素材のものを検討するようにしましょう。

アウタレイヤーには、防水防風透湿性が求められます。蒸発した汗を素早く外部に放出し汗

戻りを防ぐこと、外部からの濡れを防ぐ役割が求められます。

雪山登山では、激しい運動により発生する汗の処理が非常に重要になります。

その為のレイヤードを検討する必要があります。

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雪山登山装備表 (日帰り用・登攀除く)

装備品名 特徴・素材

登山靴 冬季用 アイゼン装着が可能なもの ◎

アイゼン 10本爪か12本爪 事前に登山靴とマッチング必要 ◎

ピッケル 縦走用 一般縦走用・ストレートタイプ ◎

ストック 伸縮式ストック 2本 リングを雪山用にセット ◎

登山用靴下 吸汗速乾性素材 ウールと化学繊維の混紡 ◎

アウタージャケット ゴア等透湿防水素材 ゴア素材が最適。フードの形状が重要。 ◎

オーバーズボン ゴア等透湿防水素材 サイドジッパーでフルオープンするタイプが便利。 ◎

ベースレイヤー 吸汗速乾・伸縮性素材 吸汗拡散性と調湿保温力が求められます ◎

ミドルレイヤー 保温性・吸汗蒸散性 保温力と速乾性(汗の処理能力) ◎

ザック 雨蓋付きタイプ 余裕を持った容量を選ぶ。 ◎

ツエルト 緊急用シェルター もしもの緊急用に必ず携帯する。 ◎

帽子 フリース・ソフトシェル・ウール等 毛糸帽子、耳当て付きキャップ等 ◎

目出帽・ネックウォーマー ウール・化繊等 素肌を外気に触れないようにする為必要。 ◎

グローブ ゴア等透湿防水素材 予備も用意。濡れたら取り替えて使うため。 ◎

ポット テルモス 保温性のある水筒、山専ボトルなら合格。 ◎

ヘッドランプ LED 球切れの心配も無いLEDタイプ ◎

コンパス 方位磁石 プレート型オイルコンパス ◎

地図 地形図1/25000 国土地理院の地形図 ◎

行動食料 おにぎりは凍る心配有り。菓子パン等 ◎

非常食料 ゼリーのような飲みやすく栄養価の高いもの ◎

携帯電話 ◎

時計 生活防水程度 高度計機能があれば便利。 ◎

防寒着 軽量ダウンウエア インナーダウンと呼ばれる薄手のダウンジャケット。 △

ロングスパッツ ゴア等透湿防水素材 雪が靴の中に入るのを防ぐ △

ゴーグル 二重構造 吹雪や寒風、紫外線から目を保護 △

サングラス スポーツサングラス 紫外線から目を保護 △

GPS △

ナイフ 折りたたみ式の小型ナイフ △

ホイッスル 緊急用の笛 居場所を知らせるたりする時に使用。 △

ライター 着火石タイプ △

トイレットペーパー 水溶性 小分けして必要量持参する △

細引きひも 2mm~6mm ナイロンロープ △

常備薬・保険証 適当 必要に応じて用意 △

着替え 下着 下山後のため △

タオル 速乾のタイプ △

ザックカバー △

コンロ・コッヘル コーヒーを入れたりするのに便利。 △

備  考  基本装備-◎・その他-△

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雪山の計画(登山)

計画書作成の重要性

◆ゆとりがある計画か危険が潜んでいないか客観的に判断出来る。

◆メンバー全体が行程を把握し事故を未然に防ぐ事につながる。

◆事故が起きた際の捜索活動に役立つ。

情報収集:現地までの交通手段や積雪状況、登山道の現況、天候の確認などインターネット

やガイドブック、役場等でなるべく精度の高い情報を集める。インターネットの情報の中に

はかなり古い情報や、発信者の技術力の違い等でかなり曖昧なものも有るので注意が必要で

す。

食糧計画:雪山の行動食は栄養価が高く吸収が良く即効性があり、寒さで凍らないものを選

ぶ。おにぎりはよりは菓子パンやパンケーキが食べやすい。ナッツ類やドライフルーツ等も

高カロリーで栄養価が高いので行動食には適している。チョコレートやアメ、エネルギーゼ

リーなども摂取しやすいので非常用に携帯しておくと良いです。

雪山の初歩技術(登山)

雪道の歩き方

暖斜面の基本歩行はフラットフッティング。足裏全体を雪道の傾斜にあわせて置くようなイ

メージで歩く。踏み抜きを防ぐ為極端な蹴りこみやはしない。後続者は先導者の足跡に合わ

せて進む事が必要。歩いた足跡がツボの様になるためツボ足とも言われる。急な勾配の登り

では、つま先を蹴りこむキックステップを使う。ひざを支点にし、登山靴の重さを利用して

多少力を加えて斜面に蹴りこみ体重を移動させながら登る。この時、後ろ足は蹴らないよう

に注意する。急な勾配の下りでは、ピッケルを補助につま先を水平より上げかかとから着地

するキックステップを使う。

手袋(グローブ)

手袋もレイヤードで準備します。

薄手の手袋・・・作業性

中間の手袋・・・保温性

アウター手袋・・透湿性・防水性

強風により飛ばされない工夫が必要

ロングスパッツ

前面又は側面で開閉するタイプが装

着し易い。ゴア製のものが良い

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雪山の初歩技術(登山)

ピッケル(アックス)持ち方

a.ピックを前にして持つ

急傾斜面を登るときにピックを刺して手がかりに出来る反面、滑落時に停止する際ピックを

刺すために持ち替える必要がある為動作がワンテンポ遅れてしまう。

b.ブレードを前にして持つ下りやトラバースの時スリップなどで尻餅、転倒した時に後ろ

向きのピックを打ち込み事で初期停止の動作に入れる。反面急斜面の登りや前のめりに転倒

した場合には対応出来ない。

c.ヘッドを横向きに持つ通常の登下降時には持ち難く不向き。急斜面でシャフトを突き刺

して手がかりにして登るときの持ち方この時ピックは外側に向ける。

これを踏まえると、登りの時はピックが前、下りの時はブレードが前の方が良さそうですが

周囲の状況に対応して持ち方を変えることが必要です。

アイゼン(クランポン)の使用法

装着

事前に靴の長さに合わせて調整をしておく。

バンドの金具は外側になるように調整をしておく取付時は付ける足を上にした体勢で行う。

アイゼンのずれがないか位置の確認をしておくバンドのねじれがないか確認をしておく

ワンタッチアイゼンのビンディングは靴のコバにしっかり入れる。

歩行基本

転倒や滑落の原因でアイゼンの引っかけが多い。スパッツやバンド、爪同士に引っかけて転

倒する人が多い。足を肩幅程度にして足と足の間をこぶし一個分くらい空けて歩行する。足

を普段より高く上げる事を意識して歩行する。アイゼンは凍雪・凍土で使用する物で、基本

はフラットフッティングで前爪以外の全ての爪を接地して歩行する。実際は、爪を凍った地

面に蹴りこむイメージで使用する。

・・登り

フラットフッティングを意識してやや前傾、ガニ股に開くことにより安定してフラットに置

くことが出来、より多くの爪を雪面に刺すことが出来る。斜面の傾斜に合わせ、足首の柔軟

性を活かして小股で歩く。急傾斜では直登は避けやや斜めに登っていくその時谷足を外側に

開く、開く角度は傾斜に合わせて調整する。急傾斜面が長く続く場合ジグザグに登ってい

く。

急勾配の斜面では前爪を利用したキックステップで登っていく。膝を支点にしてつま先を雪

面に蹴りこむ。軟雪では2.3度蹴りこみステップ面を固めながら登っていく。

・・下り・トラバース

下りでは足がガニ股にならないように注意する。急斜面ではジグザグに下降する。登り同様

谷側の足をやや開いて歩く。トラバースでは、谷側の足を傾斜方向に大きく開いて山側の足

はフラットフッティングを意識しながら山側のエッジを効かせる。急勾配の斜面では体の向

きを変え前爪を利用したキックステップを使う。

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雪山のリスク(登山)雪山に潜むリスクを事前に予想する

A 凍傷・低体温症・雪目を予防する

1)レイヤリングを工夫して防寒・保温・防風対策をしっかり行い体温を保つ。ウエアを濡

らさない。

2)ゴーグルや目出し帽、ネックゲーター等で肌の露出を無くす。

指や耳たぶ等が痛み出したら指先を動かしたり手でこすってマッサージしたり血行の促進を

はかる。

3)無理のないゆとりを持った行動予定の計画をたて疲労の蓄積を防ぐ工夫をする。

4)行動中は適度な休憩をとり行動食や水分を充分に摂取する。

5)山行前の体調管理をしっかり行う。

6)サングラスやゴーグルなどで目を紫外線から保護することにより雪目は防げる。

B 転倒滑落を防ぐ

雪面の不安定な足場等での転倒滑落を防ぐ為にはフラットフィティング・キックステップ・

アイゼン歩行等の正しい歩き方を練習し身に付ける事が必要。

ピッケル、ストックを有効に使いこなしバランスを保つ

C 道迷いを防ぐ

日頃から地形図を携帯し、周囲の地形と地形図の比較を考えて読図力を付ける。

GPSや高度計を活用し現在位置を把握しながら進む。先行者のトレースに惑わされない。

パ-ティの分裂に注意する。ホワイトアウトに陥ってしまったら冷静に現在地の把握に努

め、なるべくその場に留まる。GPSが有れば活用し無ければコンパスを使用して多少視界が

晴れてきてから行動する。

D 天候リスクを軽減する

気象情報を活用する。インターネット、ラジオ等を活用し事前に気象状況を把握する。

季節の天気特性を把握しそれを踏まえた計画を立てる。

E 積雪リスクを軽減する

発達した雪庇に注意。回りの地形、立木、岩を注意深く観察して進む状況次第ではロープで

確保し、踏み抜きに注意し、プローブやストックなどを利用して安全確認しながら進む事が

必要になる。雪崩の特性、発生メカニズムを理解し危険を予知できる知識を身に付ける。

弱層テストを行い現況の積雪状況を把握する。アバランチビーコンは必ず装着して入山す

る。

F その他リスクを軽減する

グローブは必ず予備を用意する。薄手・中厚・厚手を組み合わせる。強風などで飛ばされな

い工夫が必要。

パーティを組む仲間は慎重に選ぶ。アクシデントに対応できる仲間とパーティを組む事によ

り雪山登山のリスクを軽減できる。

日常からトレーニングを行い行動体力をつける。

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弱層を形成するもの

1)しもザラメ雪:日中非常に暖かく、放射冷却などで夜に温度が急激に下がると、積雪層

にこもった熱により発生した水蒸気が、積雪表面近くで急激に冷やされ凝結して雪粒が霜に

変化するのである。これがくりかえされることで非常に大きく(3ミリ前後)成長したもの

2)表面霜:積雪表面に空気中の水蒸気が凝結して、キラキラした霜が降りていることがあ

る。これは新雪と勘違いされることもある。

3)雲粒なし降雪結晶:雲粒との衝突が無くきれいな結晶の雪

4)大粒あられ

5)ぬれザラメ雪:新雪は、しだいに結晶(雪粒)同士の接点

が大きくなって硬く結びつき(焼結作用)、しだいに締まっ

て硬い丈夫な「しまり雪」と変化する。「しまり雪」は暖か

くなり水を含むことで粗大化し、「ぬれザラメ雪」に変化する。

ぬれザラメ雪

地表に降雪があり地面との張力と圧縮力のバランスで積雪する

地面と積雪層の間、積雪層の上面に弱層が形成される

雪崩について

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雪崩の種類

雪崩は、一般的に以下の6つの言葉の組み合わせで表現します。

例えば、点発生乾雪表層雪崩、面発生乾雪表層雪崩、面発生湿雪全層雪崩などが典型的な例と

なります。

点発生と面発生

発生の際、ある一点から始まるか、ある範囲が面として動き出すのかで分けます。スラブ(板

状の性格を持った雪層)が形成されていれば、面発生になります。

乾雪と湿雪

雪崩れるが乾いているのか、濡れているのかの違いです。濡れているとは、雪粒の周囲に水が

存在していることを意味します。

表層雪崩と全層雪崩

積雪の雪面に近い上層が雪崩れるものと、積雪の底から積雪すべてが流れるものに分けます。

全層の場合、地面などが露出します。また、これらに含まれない種類もあります。例えば、完

全に水に浸された雪が流下するスラッシュなどがです。

弱層が形成された面に新雪が降り新たに積雪

層が形成される

表層雪崩:古い積雪層の上面に形成された弱

層が起因して積雪層が崩壊し雪崩れる。

全層雪崩:地面と積雪層のバランスがくずれ

積雪層がすべて崩壊し雪崩れる。

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雪崩対策

次のような習慣は危険を避けるのに役に立つ。

地元当局が雪崩危険度を発表しているならば、それを調べて注意しておくべきである。

・以前に通った人の足跡が残っていても、自分自身で安全を確認することなしに、その足跡を

たどって歩いてはいけない。その足跡が付けられた時とは雪の状況が変わっている可能性が高

いからだ。

・地形を観察して、植生が失われていたり傷ついたりしている場所、地上に足掛かりになるも

のが少ない場所、

・雪庇や氷の下などは明らかに雪崩の通り道である。

・他人が雪崩を引き起こすかもしれないので、他人の下を移動する事は避ける。

・入山するときは必ずビーコンを装備装着する。

・場合によっては積雪の状況を把握する為に弱層テストを行う。

弱層テスト:ショベルコンプレッションテスト 弱層テスト:円柱テスト

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Aシリセード Bワカンラッセル

C雪洞

雪のテーブル

トイレ

Dスノーシュー

2020年1月11日スケジュール

1:土合山の家にて着替え

2:講習場所に移動

3:班別会場作り

4:昼食

5:講習開始

1班シリセード→2班ワカンラッセル体験→3班雪洞作成→

4班スノーシュー体験からスタートして各班順番にすべてを体験

6:土合山の家に移動

7:宿にてビーコン体験

8:入浴、夕食

9:懇親会

10:就寝

翌日7:00朝食

7:30出発

Aシリセード

Bワカンラッセル

C雪洞

Dスノーシュー

雪のテーブル作成

トイレ

雪のテーブル

Page 18: 埼玉県勤労者山岳連盟登山学校 2019.12art-axis.com/tozansc24/24yuki.pdf · 雪山入門講座 目次 ... 2013/1/14 南岸低気圧により関東では大雪 2013/1/15西高東低の気圧配置

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土合山の家8:00--マチガ沢出合--一の倉沢出合

--土合山の家--土合駅解散

講座内容:土合山の家から一の倉沢出合を目指

して湯桧曽川沿いトレッキング8:00出発