【水産庁委託】 平成28年度 次世代型陸上養殖の技術開発事業...

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【水産庁委託】 平成28年度 次世代型陸上養殖の技術開発事業 報 告 書 平成 29 年 3 月 一般社団法人マリノフォーラム21 株式会社ジャパンアクアテック JFEエンジニアリング株式会社 I M T エンジニアリング株式会社 平成28年度 次世代型陸上養殖の 技術開発事業

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【水産庁委託】

平成28年度

次世代型陸上養殖の技術開発事業

報 告 書

平成 29 年 3 月

一般社団法人マリノフォーラム21

長 崎 県

株式会社ジャパンアクアテック

株 式 会 社 ワ イ ビ ー エ ム

荏 原 実 業 株 式 会 社

JFEエンジニアリング株式会社

株 式 会 社 リ バ ネ ス

IMTエンジニアリング株式会社

平 成28年 度

次 世代型陸 上養殖の

技 術開発事 業

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<目次>

事業概要

Ⅰ.研究開発の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

Ⅱ.研究開発目標と成果の要約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4

Ⅲ.平成 28 年度の研究内容と結果について

1.技術委員会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

2. 適な閉鎖循環式陸上養殖システムの実証

A.大島グループの研究開発内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9

A-1:低塩分飼育での成長比較・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12

A-2:硝化細菌の生物学的解明及び利用方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17

A-3:機械ろ過方式の検証、物理ろ過の改良、及び酸素溶解方式の改良・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46

A-4:生産コスト低減につながるリモートセンシング&コントロールシステムの開発・・・・・・・・・・54

A-5:事業評価マトリックスの開発・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・65

B.長崎グループの研究開発内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・80

B-1:低コスト化・高生産性を実現する新規ろ過システムの開発・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・82

1)新方式(2極分離型)の電解ろ過装置の開発・実証試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・82

2)電気分解ろ過と生物ろ過を組み合わせたハイブリット型ろ過装置の実証試験・・・・・・・・・・・・94

3)効率的な一次ろ過槽等の開発・改良・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・95

B-2:自然エネルギー等利用による低コスト温度調整システムの開発・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・101

1)地中熱ヒートポンプシステムにおける効率的な熱交換方式の実証試験・・・・・・・・・・・・・・・・・101

2)空気熱ヒートポンプを用いた温度調節システムの実証試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・107

B-3:飼育環境水の測定・評価と自動制御システムの開発・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・109

1)飼育水の水質環境測定および浄化能力の評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・109

2)飼育水環境に連動した統合制御システムの開発・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・115

B-4:市場価値の高いクエ・トラフグを用いた陸上飼育技術の開発・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・116

1)閉鎖循環式陸上養殖によるクエの高成長飼育の実証・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・116

3.養殖試験を通して注意する案件について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・122

Ⅳ.3か年の総括

1.3 か年の成果概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・132

2.各グループの成果概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・133

3.各試験(機械装置、循環系)の特徴整理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・135

4.さらなるコストダウン可能な要素整理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・138

5.総括・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・140

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【事業概要】

平成28 年度次世代型陸上養殖の技術開発事業

1 研究期間

平成 26~28 年度(3ヵ年事業)。ただし、年度ごとの契約

2 研究趣旨

立地を選ばない「陸上養殖」は、持続的な養殖業の確立に向けた養殖場の多様化に資する

ものとして水産基本計画にも位置づけられており、漁村における新たな地域産業の振興や、

専門的な知見が活用できる雇用機会として、養殖業者の積極的参画が期待される。また、世

界の水産物需要が増大する中、海面・内水面に比べて高い生産性を実現し得る陸上養殖に対

する需要は、世界的に高まることが予想され、なかでも「閉鎖循環式陸上養殖」は、飼育環

境を人為的に管理することにより、生産性の高い養殖が可能であるとして注目されている。

しかしながら、我が国では、個々の要素技術は一定レベルにあるものの、施設建設や運転

にかかるコスト高等の問題があり、普及が進んでいない状況にある。このため、閉鎖循環式

陸上養殖のコスト低減等を目指した技術開発を実施し、これにより、新たな地域産業や養殖

業者等の専門的な知見が活用出来る雇用機会としての閉鎖循環式陸上養殖の先進事例を創出

し、将来的には輸出も視野に入れた水産物の安定供給に貢献する。

3 事業内容

適な閉鎖循環式陸上養殖システムの開発・実証

閉鎖循環式陸上養殖のコスト低減等のため、海産魚類の養殖を主たる対象とした実証試験

を通じ、技術開発を行うこととする。昨年度の内容を踏まえ、実用化に向けた更なる技術開

発を進めるとともに、 終年度であることを踏まえ、開発した技術の取りまとめを行う。実

証試験に際しては、以下の点を考慮の上、実施することとする。

1)初期投資費用やランニングコストの低減等に資する新技術やアイデアの導入、及び要

素技術の高度化。

2)これら各技術の有機的・効果的な組み合わせによるコストの低減。

4 研究内容及び実施体制

1.技術委員会

2. 適な閉鎖循環式陸上養殖システムの実証

A.大島グループの研究開発内容(一般社団法人マリノフォーラム21、JFEエンジニ

アリング株式会社、株式会社リバネス、IMTエンジニアリング株式会社)

A-1:低塩分飼育での成長比較

A-2:硝化細菌の生物学的解明及び利用方法

A-3:機械ろ過方式の検証、物理ろ過の改良、及び酸素溶解方式の改良

A-4:生産コスト低減につながるリモートセンシング&コントロールシステムの開発

A-5:事業評価マトリックスの開発

追加試験:低塩分での成長比較

B.長崎グループ研究開発内容(長崎県、株式会社ジャパンアクアテック、株式会社ワイビ

ーエム、荏原実業株式会社)

B-1:低コスト化・高生産性を実現する新規ろ過システムの開発

B-2:自然エネルギー等利用による低コスト温度調整システムの開発

B-3:飼育環境水の測定・評価と自動制御システムの開発

B-4:市場価値の高いクエを用いた陸上飼育技術の開発

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5 達成目標及び期待される成果

持続的な養殖業の確立に向けた養殖場の多様化に資し、高い生産性を実現し得る「閉鎖循

環式陸上養殖」は、コスト高等の問題があり普及が進んでいない。コスト低減等を図った次

世代型の陸上養殖の先進事例を創出し、将来の水産物の安定供給に貢献する。

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Ⅰ.研究開発の目的

本技術開発事業の仕様書にもあるように、世界的に注目され、一部の地域ではビジネス化が進

んでいる閉鎖循環式陸上養殖であるが、我が国では個々の要素技術は一定レベルにあるものの、

高コストが課題となり、普及が進んでいない。 世界的にビジネス化が進んでいる一方、我が国では普及が進んでいない原因は主として以下の

要素であると考えられる。 1.我が国の電気代に代表されるエネルギーコストが高水準であり、システムの運転及び飼育

水の温度調整のためのコストが高くなってしまう。 2.特に飼育水の温度調整コストは、我が国の年間の気温差が大きいこともあり、コスト高に

なってしまう。 3.我が国は地震国であり、また防火/防災などの基準も厳しく、施設整備(建築物のコスト、

機器類の設置コスト、防火/防災対策費)に諸外国と比較し高いコストが必要となる。 4.陸上養殖に必要な機器類は、普及が進んでいる諸国、地域では、安価で効率的な専用の機

器が開発、販売されているが、我が国ではそのような機器を販売するメーカーが殆ど無く、

他産学用(例えば医学用)を転用するなど機器類の価格が高水準になっている。 以上の原因を踏まえ、本技術開発では、主要なコスト高要因に対して、コスト低減方法を取り

入れることで、陸上養殖での生産コストを削減する。 更に、我が国が優れている、リモートセンシングや事業評価マトリックス技術を活用し、世界

的に見ても新規性のある安定した効率的な魚類の養殖方法も開発し、コスト削減を目指す。 この目的を達成するためには、本技術開発に参加する主体のみならず、近年、陸上養殖ビジネ

スへの参入に興味を示して来ている多くの新規参入者(特に新たに陸上養殖用の施設、機器な

どを製造、販売しようとする業者)の知見を集合し、 も効率的な技術の組み合わせによる生

産コストの削減を図り、事業性の高い陸上養殖システムを開発することとする。 本事業に参加する「大島グループ」は、東京海洋大学が中心となっている「陸上養殖勉強会」

と連携を図る。また「長崎グループ」は、これまで県内を中心に産官学の協働での陸上養殖技

術開発の実績がある。これら 2 グループが連携して活動を行う予定である。 なお、現在の陸上養殖システムに比較してのコスト削減効果のチェックと、海面養殖やかけ流

し養殖との生産コスト比較を行う意味で、これまで蓄積データが も多い「トラフグ」を一部

供試するが、将来の戦略的魚種として「クエ」を使った養殖実証実験を行うこととする。

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【Ⅱ.研究開発目標と成果の要約】

<大島グループの目標>

国内外の陸上養殖に関わる、要素技術を検証、評価し、 新のシステムの比較実験を行

う。そこで得られたデータに基づき、各種改良を行い、日本国内における、 適な陸上養

殖システムを検討する。

A-1:低塩分飼育での成長比較

50%、75%、100%海水区を作製し、7ヶ月にわたり低塩分飼育での成長比較試験を行った

が、成長は 75%>50%≧100%となり、低塩分飼育による成長量増大効果が、実用規模で検

証できた。このことは、養殖期間の短縮化とともに陸上養殖を実施する上では新鮮海水を節

約できるという面からも重要な成果と考えられる。

A-2:硝化細菌の生物学的解明及び利用方法

小型水槽における生物ろ過槽立ち上げのモデルを確立し、当該モデルを活用して生物ろ過

早期立上げ試験を行った。今回の試験系では植物利用によるろ過槽の立ち上がり早期化は見

られなかったが、単離された硝化細菌を培養して水槽に添加することにより生物ろ過槽の早

期立ち上がりが確認できた。また、大島水槽及び長崎水槽の生物ろ過槽における細菌叢の変

化を経時的に調査し、生物ろ過槽が成熟すると硝化能を持つ古細菌のポピュレーションが高

まることが判明した。

A-3:機械ろ過方式の検証、物理ろ過の改良、及び酸素溶解方式の改良

酸素溶解方式の改良(高濃度気体溶解装置)

飼育水中の溶存酸素濃度の上昇を目的に、酸素ボンベを酸素供給源とし、高濃度気体溶解

装置を酸素混合器+PSA(酸素発生装置)に追加する試験を行った結果、飼育水中の溶存酸

素量が平均で 11%上昇し、飼育水中の濁度の低減(試験区の平均濁度 0.65、対照区 1.18)

が認められた。ただし、本試験で用いた機種が低容量であったことから、単独運転では酸素

混合器+PSA より溶存酸素量が下回った。水槽容量や飼育密度にあった適切な機種の選定が

必要である。

本試験では酸素源として酸素ボンベを使用したことからランニングコストが高くなった

が、PSA を利用することでコスト低減は可能と思われた。

脱窒槽の評価検証

生分解性樹脂を用いて蓄積される飼育水中の硝酸を脱窒する効果の検証を行い、約 117 日

間運転経過した時点で対照区の硝酸態窒素 320mg/L に対し、試験区は 98mg/L と明確な差が

出ており、脱窒の効果が確認できた。ただし、装置設置にスペースを要すること、ホース内

にバイオフィルムが付着し、流れが閉塞したことから日々のメンテナンスが必要である。

A-4:生産コスト低減につながるリモートセンシング&コントロールシステムの開発

1) リモートセンシング

・水質測定の信頼性を担保するため、笠原理化製センサのキャリブレーションを行った。キ

ャリブレーションの対象は pH 及び DO センサである。

・水質管理の専門家でなくとも水質悪化を即座に判断できるように、グラフへの上限下限値

の表示機能を追加した。

・カメラシステムについては、昨年度に開発した魚体長推定プログラムの改良、水中カメラ

で撮影する水槽内画像の鮮明化を行った。プログラムの改良に関しては、昨年度に実装で

きなかったカメラ・魚体間の距離の算出,魚体の実体長,実体幅を推定する画像処理を実装

し、実際に養殖水槽に設置し、数ヶ月動作させた。水槽内画像の鮮明化に関しては、カメ

ラに貼付された保護フィルムの取り外しやカメラの設置位置の変更によって水槽内の鮮明

な画像を維持することが可能となった。

2)コントロールシステム

・リモートセンシングと連携し、酸素供給量を調整することで溶存酸素濃度(DO)を制御する

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ことを目的とした『分散制御ユニット』を開発した。

伊豆大島陸上養殖実験場(12.5kL 規模の養殖水槽・2系)にて運用試験を実施し、安価

なボード型 PLC(Programmable Logic Controller)での安定的な運用が確認され、閾値

内での DO 制御を実証した。

A-5:事業評価マトリックスの開発

3 年間の実験成果に基づき、100 トン生産のモデルプラントを設計し、その事業性を検証

した。また、前提条件になるクエの要求酸素消費量を測定し、酸素混合装置の性能評価を行

い、ろ過槽の硝化能力評価を行った。モデルプラントを設計するに当たり、3年間の長崎と

大島における実験結果より前提条件を整理した。主要な項目としては養殖密度 10%、生存

率 95%、養殖期間 2年で 50gから 2kg まで養殖、許容酸素濃度 65%以上、増肉係数 1.3、

許容アンモニア濃度 3%以下などである。養殖水槽は 1,800 kL 規模での資産で、大島の事

例を基本とした。モデルプラントの施設費は 7.15 億円で、生産原価は 2,000 円/kg 以下と

なり、生産物を 3,500 円/kg で販売できれば、投資回収は約 7年で達成できることが示唆さ

れた。

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<長崎グループの目標>

大島グループと連携し陸上養殖システム開発を構成する。各要素技術の高度化を図り、既

存施設を用いて低コスト化を実証する。さらに養殖魚種の高付加価値化技術等を開発し、

地域における陸上養殖システムを展開・普及する。

B-1:低コスト化・高生産性を実現する新規ろ過システムの開発

1)新方式(2極分離型)の電解ろ過装置の開発・実証試験

200L 水槽におけるクエの飼育試験では、陽極水流路へカキ殻槽を設置することにより

pH 低下を抑制できた。その後、徐々にカキ殻が減少して pH が低下したため、カキ殻を充

填して pH を上昇させた。また、陰極上部へスパイラルパーツを追加し、陰極表面の流速

を上げることで、スケール析出が抑制できた。

2)電気分解ろ過と生物ろ過を組み合わせたハイブリット型ろ過装置の実証試験

ハイブリット型ろ過装置の試験区 2(20 KL 水槽)では、5~6月に KA 式泡沫分離装置

の導入並びにサイクロンセパレーター及びドレン型沈殿槽の改良を行った。試験終了の

12 月時点ではクエの収容密度が 53 kg/KL になったが、物理ろ過能力が向上し、メンテナ

ンス時を除き、換水率 2.5~5%で飼育できた。アンモニア濃度は概ね 3 mg/L 以下で制御

でき、水質悪化によるへい死はみられなかった。

3)効率的な一次ろ過槽等の開発・改良。

電気分解ろ過装置の試験区 1(20 KL 水槽)では、5~6月に改良型沈殿槽及び KA 式泡

沫分離装置の導入を行った。試験終了の 12 月時点ではクエの収容密度が 52 kg/KL になっ

たが、物理ろ過能力が向上し、メンテナンスの時を除き、換水率 2.5~5%で飼育でき

た。アンモニア濃度は概ね 3 mg/L 以下で制御でき、水質悪化によるへい死はみられなか

った。

B-2:自然エネルギー等利用による低コスト温度調整システムの開発

1)地中熱ヒートポンプシステムにおける効率的な熱交換方式の実証試験

総合水産試験場のクエの飼育試験(試験区 1)において、地中熱ヒートポンプで加温・

冷却を行い、換水率、自然水温と水槽設定水温との差による電力使用量を季節毎に記録

し、3ヶ年のデータを基に 3地域(長崎、東京、北海道)における 100 kL 規模での 適

なヒートポンプ能力や必要な井戸の長さ等を推定した。東京は も井戸の長さが短くなり

(100 m×4 本)、イニシャルコストが低くなった。長崎はランニングコストが も低く、

北海道は井戸の長さが長く、イニシャルコスト及びランニングコストともに掛かる結果と

なった。

民間の陸上養殖事業者のクエの飼育試験において、地中熱ヒートポンプで加温を行った

データを収集し、10 年後の地下入口における 低温度を推定した結果、温度低下は 1℃程

度と小さく、永続的に使えることが分かった。

2)空気熱ヒートポンプを用いた温度調節システムの実証試験

総合水産試験場のクエの飼育試験(試験区 2)において、空気熱ヒートポンプを用いた

加温・冷却を行い、地中熱ヒートポンプの場合と同様にデータを収集し、3地域(長崎、

東京、北海道)における 100 kL 規模での 適なヒートポンプ能力やランニングコストを

推定した。ランニングコストは長崎が低く、北海道が高い結果となった。

なお、ランニングコストに関しては、どの地域においても地中熱ヒートポンプが、冬季

にボイラー加熱をし、夏季に空気熱ヒートポンプ冷却を行った場合よりも低い結果が得ら

れた。

B-3:飼育環境水の測定・評価と自動制御システムの開発

1)飼育水の水質環境測定と浄化能力の評価

物理ろ過系の改良工事が終了した 7月から 12 月にかけて定期的(週 1回程度)に試験区

1と試験区 2の飼育水を採取し、蓄積性溶存物質等の分析を行った。蓄積性溶存物質等は、

継続して蓄積することはなく、増減して推移し、両区とも肉眼による着色(黄色等)が見

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られず、問題なくクエを飼育できた。

2)飼育水環境に連動した統合制御システムの開発

高価なアンモニア自動測定装置を用いず、養殖業者が導入しやすい自動制御システムの

開発に向け、昨年度、試験区 1 用に開発した養殖業者向けの自動制御システムに改良を加

え、稼動試験を行った。水温 23℃で飼育中のクエ(439 尾、平均体重 2.2kg)を用いて、改

良型プログラムを 1ヶ月間稼動したが、問題となる水質異常は発生しなかった。

B-4:市場価値の高いクエ・トラフグを用いた陸上飼育技術の開発

1)閉鎖循環式陸上養殖によるクエの高成長飼育の実証

閉鎖循環式陸上養殖システムによるクエの温度調整(23~26℃)による成長促進試験を

20 kL水槽で行い、種苗から3年で2 kgサイズの目標を達成した。

陸上加温養殖で出荷サイズまで飼育するより生産コストが安い海面飼育との組み合わせ

で、出荷までの期間と生産コストのバランスが良い飼育方法を検討するため、陸上水槽で

1回加温並びに2回加温を行ったクエを沖出しし、種苗から海面飼育しているクエとの成長

等を比較した。1kgサイズには種苗から2年で2回加温と1回加温は成長したが、さらに付加

価値が高い2kgサイズには種苗から3年でいずれも到達しなかった。

民間の陸上養殖業者における半閉鎖循環式陸上養殖(換水率 50%)の加温試験を 30 kL

水槽で、対照として海面飼育も平成 27 年 11 月から行い、成長等を比較した。海面区はハ

ダムシ寄生や、成長が期待できない水温 20℃以下が 5月中旬までみられた影響があり、陸

上加温区が海面区より成長、生残とも優れていた。

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【Ⅲ.平成 28 年度の研究内容と結果について】

1.技術委員会

実証試験や技術開発の基本的方向、本事業の実施や取りまとめに向けた指導や助言及び結果

の総括や評価を受けるため、下記 6名を委員に委嘱し、技術委員会を設置した。委員会は、

実際の普及を念頭に置いた技術開発を行うように、指導を行った。

委嘱にあたっては、発注者と協議を行った。

・国立大学校法人東京海洋大 廣野 育生 教授

・国立研究開発法人水産研究・教育機構 屋島庁舎 山本 義久 グループ長

・一般社団法人大日本水産会 重 義行 専務理事

・株式会社フジキン 超ちょうざめグループ 平岡 潔 グループリーダー

・国立研究開発法人水産研究・教育機構 武井 篤 理事(平成 28 年 8 月まで)

・全国水産加工業協同組合連合会 杉浦 正悟 常務理事(平成 28年 10 月まで)

・第 1回技術委員会

日時:平成 28 年 6 月 13 日 13:30~17:00

場所:(一社)マリノフォーラム21 会議室

委員長に東京海洋大学廣野育生教授を選出したのち計画の協議を行った。

・第 2回技術委員会

日時:平成 28 年 10 月 31 日 13:30~16:30

場所:長崎県水産総合試験場 1階研修室

第 2 回委員会では、計画の進捗報告を各課題担当者から説明を行い、中間検討及び 3 か年の

取りまとめに向けた検討を行った。

・第 3回技術委員会

日時:平成 29 年 2 月 27 日 14:00~17:30

場所:(一社)マリノフォーラム21 会議室

第 3 回委員会では、成果報告を各課題担当者から報告し、取りまとめに向けた検討を行っ

た。

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2. 適な閉鎖循環式陸上養殖システムの実証

A.大島グループの研究開発内容

<技術開発の概要>

大島グループは海水魚の閉鎖循環式陸上養殖システムを実験する 4水槽を持つ施設を平成

26 年度に整備した。この実験システムは、生物ろ過装置、酸素供給装置及びUV付物理ろ過

器(平成 27 年度設備)を具備し、循環ポンプにより育成水槽とシステムを循環させ浄化する

もので、内 2水槽は八角形水槽で、泡沫分離装置により、汚濁有機物の除去ができるシステム

である。残りの 2水槽は円形水槽で、泡沫分離槽を設備してない。平成 27 年度にろ過槽中心

部よりエアーリフトで吸い上げた飼育水を物理ろ過装置に通して、2種の物理ろ過装置の性能

を評価した結果、成績の良かった紫外線ランプ付の試作型物理ろ過器を平成 27 年度後半から

全ての水槽に設備し、濁度の低減に努めた。平成 28 年度は、平成 27 年度に引き続き低塩分飼

育での成長比較試験を行った。また、酸素溶解装置や脱窒装置を設置し、その性能評価を行っ

た。一方、平成 26 年度から引き続き、飼育環境をモニターするリモートセンシング装置やセ

ンシング装置を活用したコントロールシステムの開発を行った。同時に、早期での浄化システ

ムの立ち上げのモデル化に取り組んだ。また、事業採算性を把握し、評価するためのマトリッ

クスの開発を行った。図 A1 に機器配置図、図 A2 にシステム図、表 A1に設置機器の概要書を

記した。表 A2 に各研究テーマの関連表を記した。

図 A1 伊豆大島陸上養殖実験場機器配置図

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図 A2 機器システム図

表 A1 施設・整備概要

大島実験場施設概要名  称 仕 様 数量

 円形育成水槽 円形(φ4.0mx1.2m)、水容量12.5m3(WD=1.0m) 2基

 八角形育成水槽 八角(4x4x1.2m)、水量14.5m3(WD=1.0m) 2基

 生物濾過水槽 円形(φ2.0mx1.2m)、水量3.0m3 (濾材:PP担体、比表面積800m2/m3以上) 4基

 海水循環ポンプ 口径=50mm、200V.0.75KW、270L/分-7.5mH 4台

 エアーレーター 本管φ500mm、分枝管、エアーストーン、 4式

 加温冷却ユニット 冷却器:200V-2.2KW、ヒター:200V-3.0KW、循環ポンプ:φ=40、200V-0.4KW 4式

(酸素供給装置)

 酸素溶解器 アクアテック社Cone for Oxygen φ=610mm ,H=1700mm 4基

 酸素発生器 0.1MPa-6L/分、酸素濃度=90%以上 1式

 高濃度気体溶解装置 大栄製作所 酸素ファイターOD-130 1基

(物理濾過及び機械濾過装置)

 試作型物理ろ過器 自作 UV殺菌灯付 4 台

 プロテインスキマー FSAL-04OP泡沫分離器、循環流量:220-330L/分 2 台

(脱窒装置)

 脱窒槽 カネカ社 生分解樹脂充填 1 台

 ブロワー 0.60m3/分-29.4KPa、口径=40mm 2台

 電気制御盤 ポンプインバータ制御、動力配線他 1式

 海水ストック水槽 8m3レースウエイ水槽、5.0m3タンク 各1基

円形/八角育成水槽循環式システム

付帯設備(共通設備)

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表 A2 設置機器及び実験水槽関連表

実験内容は以下の通り

A-1:低塩分飼育での成長比較

A-2:硝化細菌の生物学的解明及び利用方法

A-3:機械ろ過方式の検証、物理ろ過の改良、及び酸素溶解方式の改良

A-4:生産コスト低減につながるリモートセンシング&コントロールシステムの開発

A-5:事業評価マトリックスの開発

No.1 No.2 No.3 No.4

形状(トン数) 八角形(15) 八角形(15) 円形(12.5) 円形(12.5)

純酸素付加 ○ ○ ○ ○

泡沫分離装置 ○ ○

物理ろ過○(試作型スクリーンボックス)

○(試作型スクリーンボックス)

○試作型スクリーンボックス

○(試作型スクリーンボックス)

ろ材密度 40% 40% 40% 40%

A-1:低塩分飼育での成長比較

75%区 50%区 100%区 100%区

A-3:機械ろ過方式の検証、物理ろ過器の改良、及び酸素溶解方式の改良

試験区(高濃度気体溶解装置、脱窒カラム)

対称区

A-4:生産コスト低減につながるリモートセンシング&コントロールシステムの

開発

カメラ設置各種センサー装

置、コントロールシステム設置

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A-1:低塩分飼育での成長比較

a.実施内容

井上らによれば(平成 27 年度報告書参照)、塩分濃度 34psu(100%海水)と比較して 17psu

(50%海水)での飼育はクエ稚魚の体重の増加量を増大させるということが報告されており、

本施設において平成 27 年度下半期から 50%海水区を作製し、100%海水区と成長比較試験を

実施した。しかしながら、試験期間が短期間であったことや水温下降期に重なったことから

結果が判然としなかった。また、委員会から 50%海水区は成魚の養成には低塩分過ぎるとの

指摘もあり、平成 28 年度は 50%海水区の他、75%海水区を作製し、100%海水区と合わせて

その効果を実用レベルで検証した。

水槽は八角形水槽(15kL)2 面と円形水槽(12.5kL)2 面を用い、No.1 水槽(八角形水槽)を

75%海水区、No.2 水槽(同)を 50%海水区とし、No.3 水槽(円形水槽)と No.4 水槽(同)

を対照区の 100%海水区とした。なお、No.2 水槽は、前年度から引き続き 50%海水区とした

ものであり、No.1 水槽は平成 28 年 3 月 15 日頃から徐々に水道水を添加し、約 1ヶ月かけて

25psu の 75%海水区に調整した。

50%、75%及び 100%海水区の飼育管理につい

ては、塩分濃度の調整以外は全て同じである。試

験終了まで各区の塩分濃度、日間給餌量、飼育水

温の推移を測定するとともに 1 回/月の魚体測定

を行い、試験期間中の増重量、餌料効率を求めた。

また、平成 10 月 28 日に No.1 水槽(75%区)を、

11 月 8 日に No.3,No.4(100%区)を、11 月 16 日

に No.2(50%区)を取り上げ、全尾数の計数と全

重量を計測した。

b.結果と考察

①塩分濃度の推移

図 A-1-1 に塩分濃度の推移を示した。75%海水区(No.1 水槽)には 3月 15 日頃から徐々

に水道水を添加し、4 月中旬には 25psu まで低下させた。以降、前年度からその濃度を維持

している 50%海水区の No.2 水槽とともに海水や水道水の添加を調整し、その濃度を維持し

た。

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②摂餌量と餌料効率

平成 28 年 3 月 1 日から 10 月 16 日までの日間摂餌量を図 A-1-2 と表 A-1-1 に示した。ま

た、増重量と摂餌量から算出した餌料効率を図 A-1-3 に示した。摂餌量は 75%海水区(No.1)、

50%海水区(No.2)が高く、餌料効率も 75%海水区が 0.89、50%海水区が 0.91、100%海水

区が各々0.69,0.65 で、統計的有意差は検出されなかったものの、75%海水区、50%海水区

で高かった。

表 A-1-1 日間摂餌量及び総摂餌量(g)

75%海水区 50%海水区水槽1 水槽2 水槽3 水槽4

平均 2,939.0 2,887.1 2,576.1 2,433.4SD 878.8 925.0 763.1 679.0

総摂餌量 340,921 334,900 298,833 282,274

100%海水区

図 A-1-1 塩分濃度の推移

図 A-1-2 日間摂餌量の推移

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③測定データからの各水槽の成長

3月から 10月までの毎月 17日を目処に各水槽 30尾をサンプリングし測定した平均体重を

図 A-1-4 に示す。各水槽の体重間及び各月の体重間に差があるのかをみるために、この全計

測データを使用し二元配置の分散分析を行ったところ、体重は水槽間で統計的に有意に異な

る結果となった。このため、どの水槽に差があるかチューキー検定を行った。その結果、No.1

水槽(75%海水区)は No.2 水槽(50%海水区)、No.3,4 水槽(100%海水区)よりも有意に

大きく、No.2 水槽(50%海水区)は No.3 水槽(100%海水区)よりも大きく、No.2 水槽(50%

海水区)と No.4 水槽(100%海水区)及び No.3 水槽と No.4 水槽(ともに 100%海水区)で

は、それぞれ差がなかった。

続いて、試験開始の 3月および 10 月の両月について、その計測データを使用し一元配置の

分散分析後、チューキー検定を行った。3 月(3 月 17 日)の各区の平均体重は、75%海水区

図 A-1-3 各区の餌料効率

体重

増加

量/餌

g)

75%海水 50%海水 100%海水

図 A-1-4 測定日毎の各区の平均体重の推移(3/17~10/16)

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が 594.9g(標準偏 217.5)、50%海水区が 588.6g(〃155.9)、100%海水区がそれぞれ 536.3g

(〃155.7)、610.8g(〃222.2)となり、各水槽間に有意な体重差はなかった。一方、 終

測定日の 10 月(10/16)の平均体重は、75%海水区が 1,203.7g(標準偏差 349.6)、50%海

水区が 1,145.5g(〃293.4)、100%海水区がそれぞれ 996.8g(〃280.3)、970.2g(〃352.6)

となり、75%、50%海水区と 100%海水区 No.3 と差はなかったが、No.4 とは有意差が検出さ

れた(図 A-1-5)。10 月のデータをみても低塩分飼育区の成長が優っていた。

④実測値による各水槽の成長

取り上げは全水槽 11 月中旬を予定していたが、飼育水槽の排水パイプ接続部からの漏水や

停電による酸欠死などの事故のため、各水槽の取り上げ日が表 A-1-2 のように異なった。各

水槽の取り上げ時の全尾数と全重量の実測値を表 A-1-2 に示した。実測値による平均体重は、

75%海水区が 1,171.1g、50%海水区が 1,071.0g、100%海水区がそれぞれ 933.0g、938.6g

となり、100%海水区と比較して、75%海水区は約 25%、50%海水区は約 15%の成長量の向

上が認められ、測定データと同様な値となり、測定データによる解析が実際とほぼ合致して

いることが裏付けられた。さらに、75%海水区の取り上げ日は、50%海水区より 20 日間、

100%海水区よりも 12 日間も早く、そのタイムラグを考慮するとその差はさらに大きくなる

と考える。

表 A-1-2 取り上げ時の各区の尾数と総重量(実測値)

図 A-1-5 3 月及び 10 月での各区の成長差

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⑤測定データによる回帰式(日間成長量)からの成長予測

本年度は、昨年度から引き続いた 50%海水区の他、新たに 75%海水区を作製し、低塩分

飼育での成長比較試験を行ったが、仮説通り、毎月の測定データを用いて推定した結果から

や、取り上げ時の実測データからも 75%海水区を筆頭に低塩分区の方が成長量が増大した

結果となった。このため、さらに 75%海水区(水槽 1)、50%海水区(水槽 2)、100%海水

区(水槽 3と 4合わせる)の各計測データを使用し、飼育日数 VS 計測時体重の回帰直線を

それぞれ求め、各海水区の回帰式の傾き(=日間成長量)を比較した。その結果は、実測

値、測定データ同様 75%>50%>100%となった(図 A-1-6)。この回帰式(日間成長量)を

用いて 3月 17~10 月 16 日まで飼育を行った場合の推定体重は、75%区が 1,251.7g、50%

区が 1,170.0g、100%区が 1,073.2gとなり、100%海水区に対して 75%海水区は 25.1%、

50%海水区は 19.4%の増大となっており、実測値と良く合致していることを示すものと思

われる。ただし、統計的に有意であるものの各回帰式の決定係数 R^2 が小さいことから、サ

ンプリング測定の体重のバラツキが大きいことが伺える。

c.今後の課題について

閉鎖循環システムを用いた養殖においては、生産の高効率化のため高密度、高成長及び良

好な環境の維持のため安定的・低コストな新鮮海水の確保が重要な課題と考える。高成長に

ついては、浸透圧調整の代謝にかかるエネルギーを成長に廻すという観点からクエを対象と

した研究規模で低塩分飼育のメリットが謳われていたが、本事業において実用規模でそれが

実証できたといえる。また、これまで、稚魚段階では 17psu(50%海水)の低塩分海水の 適

化が指摘されていたが、成魚段階ではそれよりやや高い塩分濃度の海水が適していることが

明らかになった。この現象は同じハタ類のキジハタにおいても同様な報告があり、これらの

低塩分飼育が高成長につながる結果は、養殖を事業規模で実施する上で重要な課題である養

殖期間の短縮に直結する重要な成果と考える。

一方、閉鎖循環システムを用いて養殖する場合、新鮮海水の入手が困難な立地条件である

ことが多い。この場合、新鮮海水の入手は輸送、人工海水の利用が考えられるが、両者とも

入手が高コストにならざるを得ない。低塩分で養殖できることはこのコストを抑えることが

できる。低塩分飼育は閉鎖循環システムが得意とする長所であろう。ただし、底掃除等によ

る飼育水の流失は少量であるが避けがたく、いくらかの新鮮海水の確保は必要である。また、

緊急の場合にも新鮮海水の確保は必要である。これらのことを考慮すると小規模でも新鮮海

水を確保できる立地・設備条件が好ましいと考える。

図 A-1-6 計測データ(飼育期間-体重関係)から推定した各区の日間成長量

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A-2:硝化細菌の生物学的解明及び利用方法

a.実施内容

陸上養殖においては、低コスト、効率的かつ環境負荷の少ない形で飼育水を浄化する循環

システムが もコアな技術である。閉鎖循環システムにおいては、物理的、化学的、および、

生物学的手法などさまざまな手法を組み合わせて水質の浄化を図る。本課題では、このうち

生物学的手法により水質の浄化を行うシステムに関する研究開発を実施する。特に、魚体に

対して悪影響の大きいアンモニア態窒素を硝化・脱窒する仕組みが求められており、これを

生物学的に実施するシステムを構築することを目的とする。

平成 26~27 年度を通じては微生物叢解析を行うため、サンプル輸送や DNA 抽出手法の検討

を行い、平成 27 年度には大島、長崎水槽のろ材中から DNA を抽出し、次世代シークエンスを

用いたメタゲノム解析を行った。

図 A-2- 1 次世代シークエンスによる細菌叢試験の概要

そこで、平成 28 年度は生物ろ過槽の早期立ち上げ技術の確立を目指し、以下の試験を行う

とともに、大島、長崎水槽の微生物叢の変遷を追跡調査した。まず、大型の水槽では細かい

条件検討を行うために多くの時間とコストを必要とするため、小型水槽を生物ろ過槽の立ち

上げモデルとして活用できるかどうかの検討を行った。基本的実験条件は以下にまとめた。

表 A-2- 1 小型水槽のモデル化試験の諸条件

使用水槽 45cm 水槽(テトラ社製)

水量 27L

塩分濃度 3.5%(100%海水)、(ナプコ社、Instant Ocean)

物理ろ過 薄型高密度マット

生物ろ過 リングろ材(IMT 社より譲渡)

循環ポンプ 7.5L/分

水温 20℃(室温での調整)

エアー 吹出し量 1.0L/分(GEX 製)

DO 4.9 - 5.0mg/L

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図 A-2- 2 小型水槽モデルの模式図

1)試験 A-2-1.小型水槽における生物ろ過槽立ち上げ試験

生物ろ過槽立ち上げの手法として一般的に知られる Fishless cycling 法及び Pilot Fish 法

により、本モデルの一般的な生物ろ過槽立ち上げにかかる時間を検討した。以下の 3 条件で 2

ヶ月に渡り、1週間おきにアンモニア濃度、亜硝酸濃度、硝酸濃度をそれぞれサリチル酸法、ジ

アゾ化法、カドミウム還元法により分析した。水質調査にはポータブル水質分析計 DR-900(HACH)

を用いた。検出プロトコルはメーカー推奨方法に従った。また、ろ材を定期的に回収し、細菌

叢試験に用いた。

1. FishlessCycling 法

5ppm のアンモニア濃度を維持した。

2. PilotFish 法

マダイ稚魚(全長 5cm 程度*3 匹)を飼育した。餌は市販配合飼料のアルテック K-3 を用い、

0.5g/日の給餌を続けた。

3. Negative control

3.5%塩分濃度の人工海水を循環させた。

2)試験 A-2-2.植物による生物ろ過槽立ち上がり補助効果の検討

試験 A-2-1 において良い結果が得られた Pilot Fish 法を軸に、植物は硝酸等を窒素源として

吸収し代謝するため、水質の悪化による水換えの頻度を抑えることことに繋がり、生物ろ過槽

の早期立上げに補助的な効果があるのではないかと考え、飼育水にて植物を生育させる試験を

行った。植物には人工海水(100%海水)でも生育が可能なツブリナを用いた。以下 3 条件で生

物ろ過槽立ち上げにかかる時間を検討した。水質の調査は試験1)A-2-1 と同条件で行った。

1. PilotFish 法 + ツブリナ生育

マダイ稚魚(全長 5cm 程度*3 匹)を飼育した。餌は市販配合飼料のアルテック K-3 を用い、

0.5g/日の給餌を続けた。ツブリナは本葉が 4枚となったものを 2株栽培した。

2. Negative control(PilotFish 法)

マダイ稚魚(全長 5cm 程度*3 匹)を飼育した。餌は市販配合飼料のアルテック K-3 を用い、

0.5g/日の給餌を続けた。

3)試験 A-2-3.硝化細菌添加による生物ろ過槽立ち上がり補助効果の検討

生物ろ過槽は魚群の生育に悪影響を及ぼすアンモニアを除去するため増殖させ硝化細菌を高

密度に増殖させ保持することが重要である。そこで、硝化能を持つ細菌を事前に培養し、水槽

に添加することで硝化能を向上させることができるかを検討した。

1. PilotFish 法 + 培養硝化細菌の添加

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マダイ稚魚(全長 10cm 程度*2 匹)を飼育した。餌は市販配合飼料のアルテック K-3 を用

い、0.5g/日の給餌を続けた。

2. Negative control(PilotFish 法)

マダイ稚魚(全長 5cm 程度*3 匹)を飼育した。餌は市販配合飼料のアルテック K-3 を用い、

0.5g/日の給餌を続けた。

4)試験 A-2-4.大島水槽、長崎水槽の生物ろ過槽中の細菌叢変遷の調査

大島水槽、長崎水槽の生物ろ過層からろ材を経時的に回収し、次世代シークエンサーを用い

て細菌叢の解析を行った。経時比較及び、大島水槽においては定期に的に行う洗浄を海水で行

った場合と水道水で行った場合の影響も比較した。

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b.結果と考察

1)試験 A-2-1.小型水槽における生物ろ過槽立ち上げ試験

以下にアンモニア濃度、亜硝酸濃度、硝酸濃度の経時的変化の結果を示す。

図 A-2- 3 アンモニア濃度の経時変化

図 A-2- 4 亜硝酸濃度の経時変化

0

2

4

6

8

10

0

7

14

21

28

35

42

49

56

63

濃度(mg/L)

経過時間(日)

PilotFish法によるアンモニア濃度の推移

PilotFish

Neg.

0

2

4

6

8

10

0 7 14

21

28

35

42

49

56

63

濃度(mg/L)

経過時間(日)

FishlessCycling法によるアンモニア濃度の推移

FishlessCycling

Neg.

0

2

4

6

8

10

0 7 14 21 28 35 42 49 56 63

濃度(mg/L)

経過時間(日)

PilotFish法による亜硝酸濃度の推移

PilotFish

Neg.

0

2

4

6

8

10

0 7 14

21

28

35

42

49

56

63

濃度(mg/L)

経過時間(日)

FishlessCycling法による亜硝酸濃度の推移

FishlessCycling

Neg.

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図 A-2- 5 硝酸濃度の経時変化

この結果、PilotFish 法では 49 日目を境に亜硝酸濃度は下がったため、この時点で生物ろ過

槽が立ち上がったと考えられる。FishlessCycling 法では PilotFish 法に比べて亜硝酸の濃度

が低いが、57 日目を境に亜硝酸濃度のピークが見られた。実際に硝化能を獲得しているかを調

べるため、ろ材における細菌叢を分析した。結果は試験 A-2-4 に示す。

2)試験 A-2-2.植物による生物ろ過槽立ち上がり補助効果の検討

まず海水においてツブリナがどのように生育するか基礎的な検討を行った。

図 A-2- 6 ツブリナの生育試験概要

播種は真水で行い、21 日まで栽培

処理区1:真水+液肥 400 倍希釈

処理区2:人工海水(28%海水、塩分濃度 1%)+液肥 400

倍希釈

処理区3:人工海水(100%海水、塩分濃度 3.5%)+液肥

400 倍希釈

処理区4:人工海水(100%海水、塩分濃度 3.5%、飼育

水)+液肥 400 倍希釈

照度:8000Lux(フロート上)気温:20℃

本葉 4枚展開しているツブリナをフロートに 3個体植え

付けた。

0

10

20

30

40

50

0 7 14

21

28

35

42

49

56

63

濃度(mg/L)

経過時間(日)

PilotFish法による硝酸濃度の推移

PilotFish

Neg.

0

10

20

30

40

50

0 7 14

21

28

35

42

49

56

63

濃度(mg/L)

経過時間(日)

FishlessCycling法による硝酸濃度の推移

FishlessCycling

Neg.

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以下に生育試験の結果を示す。

図 A-2- 7 草丈の経時変化

図 A-2- 8 葉数の経時変化

以上の結果から、真水と 28%海水は生育に大きな差がない事が分かった。また、100%海水では

生育阻害が起きることが判明した。今回の試験では 100%海水を対象としているため、生育条件

は 適とは言えないが、僅かながら生育をしているためアンモニア等 N 源の吸収能はあると考

えて次の実験を行った。

PilotFish 法を軸に、播種後 21 日のツブリナを飼育水槽上で 2株栽培する試験を行った。ツ

ブリナの栽培数は水槽面積上の都合から決定した。ネガティブコントロールとしては魚を飼育

せず、ツブリナの栽培を同条件で行った。

0

5

10

15

20

25

0 5 10 15 20 25

草丈(cm)

経過時間(日)

真水

人工海水(28%海水)

人工海水(100%海水)

人工海水(100%海水、飼

育水)

0

5

10

15

20

25

0 5 10 15 20 25

葉数(枚)

経過日時(日)

真水

人工海水(28%海水)

人工海水(100%海水)

人工海水(100%海水、飼

育水)

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図 A-2- 9 アンモニア濃度の経時変化

図 A-2- 10 亜硝酸濃度の経時変化

図 A-2- 11 硝酸濃度の経時変化

以上の結果から、49 日目を境に亜硝酸濃度は下がったため、この時点で生物ろ過槽が立ち上

がったと考えられた。今回試験した条件でツブリナの栽培では、生物ろ過槽の早期立ち上げを

補助する効果がなかったと考えられた。やはり高い塩濃度での生育により N 源の資化能が低下

していたことが主な原因として考えられた。また、小型水槽においては十分量の株数を飼育で

きないことも原因として考えられた。今後、低濃度海水を用いた陸上養殖においては物理ろ過

槽や生物ろ過槽、飼育水槽等の場所を活用可能となる可能性もあるため、更なる試験を行うこ

とで効果が得られる事が示唆された。

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

0 7 14

21

28

35

42

49

56

63

濃度(mg/L)

経過時間(日)

PilotFish

Neg.

0

2

4

6

8

10

0 7 14

21

28

35

42

49

56

63

濃度(mg/L)

経過時間(日)

PilotFish

Neg.

0

10

20

30

40

500 7 14

21

28

35

42

49

56

63

濃度(mg/L)

経過時間(日)

PilotFish

Neg.

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3)試験 A-2-3.硝化細菌添加による生物ろ過槽立ち上がり補助効果の検討

以下に平成 28 年 5 月における、日本国内で入手可能な単離された硝化細菌を示す。

表 A-2- 2 入手可能な硝化細菌についてのリスト 属 菌名 由来 培地 培養温度 入手先

Nitro

somon

as

Nitrosomonas europaea

Winogradsky 1892

土壌 NBRC 培地 240 28℃ NBRC

Nitrosomonas sp. 活性汚泥 NBRC 培地 829 35℃ NBRC

Nitrosomonas stercoris コンポスト NBRC 培地 829 30℃ NBRC

Nitrosomonas europaea

Winogradsky (ATCC® 25978™)

土壌 ATCC medium: 2265 26 ℃ /

好気性

ATCC

Nitro

solob

us

Nitrosospira multiformis

(Watson et al.) Head et al.

(ATCC® 25196™)

土壌 ATCC® Medium 929:

Nitrosolobus medium

26 ℃ /

好気性

ATCC

Nitrosospira multiformis

(Watson et al.) Head et al.

(ATCC® 25198™)

土壌 ATCC® Medium 438:

Nitrosolobus medium

30℃ ATCC

Nitrosospira multiformis

(Watson et al.) Head et al.

(ATCC® 25197™)

土壌 ATCC® Medium 929:

Nitrosolobus medium

26℃ ATCC

Nitro

sococ

cus

Nitrosococcus oceani

(Watson) Watson (ATCC® 19707

™)

海水 ATCC® Medium 928:

Nitrosococcus medium

26 ℃ /

好気性

ATCC

Nitro

bacte

r

Nitrobacter winogradskyi

Winslow et al. (ATCC® 25391

™)

淡水もしく

は海水

ATCC® Medium 480:

Nitrobacter medium 203

26 ℃ /

好気性

ATCC

Nitrobacter sp. (ATCC® 14123

™)

淡水もしく

は海水

ATCC® Medium 96:

Nitrobacter Medium B

30 ℃ /

好気性

ATCC

Nitrobacter sp. (ATCC® 51918

™)

土壌 ATCC® Medium 480:

Nitrobacter medium 203

26 ℃ /

好気性

ATCC

Nitrobacter sp. (ATCC® 51948

™)

土壌 ATCC® Medium 480:

Nitrobacter medium 203

26 ℃ /

好気性

ATCC

Nitrobacter sp. (ATCC® 51950

™)

土壌 ATCC® Medium 480:

Nitrobacter medium 203

26 ℃ /

好気性

ATCC

Nitrobacter sp. (ATCC® 51919

™)

土壌 ATCC® Medium 480:

Nitrobacter medium 203

26 ℃ /

好気性

ATCC

Nitrobacter sp. (ATCC® 51922

™)

湖水 ATCC® Medium 480:

Nitrobacter medium 203

26 ℃ /

好気性

ATCC

Nitro

spira

Nitrococcus mobilis Watson

and Waterbury (ATCC® 25380™)

水/汚泥 ATCC® Medium 481:

Nitrobacter medium 204

26℃ ATCC

それぞれの候補から、アンモニアを亜硝酸に代謝するアンモニア酸化細菌については以下 2

種類を選択した。理由も合わせて記す。

• Nitrosococcus oceani (Watson) Watson (ATCC® 19707™)

海水由来であったため。

• Nitrosomonas europaea Winogradsky 1892

日本国内の機関から入手可能である菌の中で、推奨培養温度が も水槽の飼育水の温度に近

かったため。

亜硝酸を硝酸に代謝する亜硝酸酸化細菌については以下 2 種類を選択した。理由も合わせて

記す。