歯周病と血管系疾患の関わりについて2013冬 187号 17...

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2013冬 187号 17 歯周病は様々な全身疾患に関わっているといわ れています。歯周病が関わっているとされ由全身 疾患のうち主なものは、糖尿病、心臓血管疾患、 脳血管疾患などの血管疾患、肺炎、骨粗鬆症、妊 婦における早産、低体重児出産などです。そのう ち、血管疾患は国民の死亡率の上位に位置する重 要な疾患です。歯周病を解決することで、血管疾 患の罹患率を下げることができるならば、歯科の 立場から国民の健康に大きく寄与することが可能 になります。 厚生労働省平成22年人口動態統計の概況によ ると日本人の死因に占める原因の第2位に心疾患 第3位に脳血管疾患が挙げられており、血管疾患 は日本人の死因に占める代表的な原因の1つであ ると考えられます。心疾患は冠動脈においてアテ ローム性動脈硬化症(粥状硬化)により冠動脈の 狭窄、閉塞から虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞) を引き起こします。脳血管疾患は、脳梗塞が主要 な疾患ですが、脳の細動脈に血栓などが詰まって 先の脳に血流が流れなくなって脳細胞が壊死を起 こすことによって起こります。特に、動脈硬化が あると、動脈壁に沈着したアテロームによってそ の部分の血管が狭くなって脳梗塞のリスクが増し ます。 動脈硬化の形成については、動脈壁の中膜に LDLコレステロールや異物(細菌)が侵入すると、 TNF-αやIL-6などの炎症性サイトカインが放出 されることによって、マクロファージが遊走し異 物をマクロファージが食べて太って死ぬことで泡 沫細胞が蓄積し、プラークを形成します。これに よって血管の平滑筋細胞においてカルシウムなど が蓄積しアテロームを形成し、動脈壁が盛り上が り、動脈の狭窄が生じます。その他の血管疾患と して代表的なものに動脈瘤が知られていますが、 これは動脈にできるこぶで、このこぶは破れやす く大出血をまねいて死に至ることがあります。 その他、日本では少なくなってきましたが、他 のアジアの発展途上国においてはしばしばみら れるとしてバージャー病が挙げられます(図1) バージャー病は、閉塞性血管炎と呼ばれ、四肢の 主幹動脈に閉塞性の血管全層炎をきたす疾患であ り、特に下肢動脈に好発して虚血症状として間欠 性跛行や安静時疼痛、虚血性皮膚潰瘍、壊疽(特 発性壊疽とも呼ばれる)をきたすQOLの低下を 招く血管疾患です。日本における年間の全国推計 患者数は約10,000人(95%信頼区間8,400人~ 12,000人)で、男女比は9.7対1と圧倒的に男性 が多く、推定発症年齢は男女とも30代から40代 が最も多い疾患です。 学 術 歯周病と血管系疾患の関わりについて 大阪歯科大学 歯周病学講座 主任教授  梅田 誠 はじめに 血管疾患の概要 図1 バージャー病患者の足の写真(バングラデッシュシ人) (バージャー病による典型的な潰瘍、足の指の喪失がみられる)

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Page 1: 歯周病と血管系疾患の関わりについて2013冬 187号 17 歯周病は様々な全身疾患に関わっているといわ れています。歯周病が関わっているとされ由全身

2013冬 187号 17

 歯周病は様々な全身疾患に関わっているといわれています。歯周病が関わっているとされ由全身疾患のうち主なものは、糖尿病、心臓血管疾患、脳血管疾患などの血管疾患、肺炎、骨粗鬆症、妊婦における早産、低体重児出産などです。そのうち、血管疾患は国民の死亡率の上位に位置する重要な疾患です。歯周病を解決することで、血管疾患の罹患率を下げることができるならば、歯科の立場から国民の健康に大きく寄与することが可能になります。

 厚生労働省平成22年人口動態統計の概況によると日本人の死因に占める原因の第2位に心疾患第3位に脳血管疾患が挙げられており、血管疾患は日本人の死因に占める代表的な原因の1つであると考えられます。心疾患は冠動脈においてアテローム性動脈硬化症(粥状硬化)により冠動脈の狭窄、閉塞から虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)を引き起こします。脳血管疾患は、脳梗塞が主要な疾患ですが、脳の細動脈に血栓などが詰まって先の脳に血流が流れなくなって脳細胞が壊死を起こすことによって起こります。特に、動脈硬化があると、動脈壁に沈着したアテロームによってその部分の血管が狭くなって脳梗塞のリスクが増します。 動脈硬化の形成については、動脈壁の中膜にLDLコレステロールや異物(細菌)が侵入すると、TNF-αやIL-6などの炎症性サイトカインが放出されることによって、マクロファージが遊走し異

物をマクロファージが食べて太って死ぬことで泡沫細胞が蓄積し、プラークを形成します。これによって血管の平滑筋細胞においてカルシウムなどが蓄積しアテロームを形成し、動脈壁が盛り上がり、動脈の狭窄が生じます。その他の血管疾患として代表的なものに動脈瘤が知られていますが、これは動脈にできるこぶで、このこぶは破れやすく大出血をまねいて死に至ることがあります。 その他、日本では少なくなってきましたが、他のアジアの発展途上国においてはしばしばみられるとしてバージャー病が挙げられます(図1)。バージャー病は、閉塞性血管炎と呼ばれ、四肢の主幹動脈に閉塞性の血管全層炎をきたす疾患であり、特に下肢動脈に好発して虚血症状として間欠性跛行や安静時疼痛、虚血性皮膚潰瘍、壊疽(特発性壊疽とも呼ばれる)をきたすQOLの低下を招く血管疾患です。日本における年間の全国推計患者数は約10,000人(95%信頼区間8,400人~12,000人)で、男女比は9.7対1と圧倒的に男性が多く、推定発症年齢は男女とも30代から40代が最も多い疾患です。

学 術

歯周病と血管系疾患の関わりについて大阪歯科大学 歯周病学講座主任教授 梅田 誠

はじめに

血管疾患の概要

図1 バージャー病患者の足の写真(バングラデッシュシ人)

(バージャー病による典型的な潰瘍、足の指の喪失がみられる)

図1 バージャー病患者の足の写真(バングラデッシュシ人)(バージャー病による典型的な潰瘍、足の指の喪失がみられる)

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大阪歯科大学同窓会報18

 ここで、血管疾患の原因の1つを解決できればその罹患率を下げることが期待でき、国民の死亡率の低下、QOLの改善につながると考えられますが、その原因の1つとして疫学的研究から歯周病の血管疾患に対する関与が報告されました。Beckら(1) によると、歯周病と心冠状動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)の関係を1,147名について18年間追跡したところ、歯周病が重度(歯槽骨の吸収度が20%より大きい)なグループは、歯周病が軽度(歯槽骨の吸収度が20%以下)なグループと比べて心臓発作を起こすリスクが2.8倍でした。また、Wuら(2) は、歯周病と脳血管疾患の関係について9962名について歯周病の程度を調べ、18年間追跡し大脳血管疾患にかかるリスクを調べたところ、歯周病について健常なものに対し、歯周炎では相対リスクが1.66倍でした。 これらの報告は、疫学的に歯周病と血管疾患は関係があることを示しています。

 歯周病の原因は主に歯周病原細菌ですから、歯周病原細菌は血管疾患に関与するかどうかについて研究されました。Deshpandeら(3) は、有力な歯周病原細菌であるP. gingivalis の大動脈および心臓の内被細胞に対する侵入に関して報告しまた。P. gingivalis 381株が牛大動脈内被細胞に付着し、侵入することが示されましたが、P. gingivalis 381株の変異株で主な線毛を欠損したfimA遺伝子に変異のあるDPG3株では、牛大動脈内被細胞への付着や侵入が認められなかったことから、P. gingivalis が内被細胞に侵入することができ、侵入には線毛が必要であることが示されました。 また、歯周病原細菌の病原性から血管疾患への関与の可能性について報告されました。Lourbakosら(4) の研究から、P. gingivalis の重要な病原因子であるジンジパインは、ナノモルレベルの濃度でヒト血小板内の細胞内カルシウムの増加を誘導し、トロンビンと同等の効率で血小板の凝集を引き起こしたことから、歯周病と心臓血管系疾患との関係を説明するものとして注目され

ます。 さらに、P. gingivalis によって動物実験においてアテローム性動脈硬化症を促進したという報告がありますが、Liら(5) は、ApoE ノックアウトマウスに P. gingivalis の生菌の静注を繰り返すことによって、アテローム性プラークを形成したことから、歯周病原細菌である P. gingivalis がアテローム性動脈硬化症を促進することが示されました。 従来の、歯周病が疫学的に血管疾患に関係するという報告は、主に米国でのデータであり、人種、食生活、習慣が異なる日本人でも同様か明らかではありません。さらに、血管疾患に関わる細菌として、有力な歯周病原細菌であるP. gingivalisが注目されています。それなら人種によってP. gingivalis の保菌率(感染率)が異なるか、Umedaら(6) は歯周病原細菌の検出率、白人を基準とした場合の保菌リスクについて、加齢とともに保菌率が高くなるP. gingivalis について加齢10年でオッズ比で1.20倍なのに対し、アジア系は白人と較べ5.74倍も保菌リスクが高かった

(表1)ことを報告しました。このことからアジア系に属する日本人は、白人に比べて口腔内におけるP. gingivalisの保菌率が高いと考えられることから、欧米人よりもP. gingivalis による血管疾患に対する関与の可能性が高くなるでしょう。

 日本人の歯周病患者の口腔における歯周病原細菌の保菌率として大規模集団においていまだ十分疫学的に調査されてはいませんが、近年盛んに使われるようになったPCR法を用いれば、感度が

歯周病と血管疾患に関する疫学的研究

血管疾患との関係が疑われている歯周病原細菌

日本人の歯周病患者および血管疾患患者の口腔における歯周病原細菌保菌率

表1 唾液サンプルにおける 米国ロサンゼルスでの P. gingivalisの検出率の比較、保菌リスク

黒人(49名)

アジア系(48名)

白人(52名)

ヒスパニック系(50名)

人種 検出率(%) P 値 オッズ比

60.8

57.1

32.7

72.0

0.0159

0.0004

0.0001

P. gingivalisの保菌リスク

加齢(10年) 0.0004

2.95

5.74

8.72

1.20

Umeda M, Chen C, Bakker I, Contreras A, Morrison JL, Slots J. Risk indicators for harboring periodontal pathogens. J Periodontol 1998;69:1111‐1118. より抜粋

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2013冬 187号 19

非常に良好であることから、採取が容易な唾液サンプルを用いても口腔内における歯周病原細菌の存在を検索することが可能です(7)。特に、歯周組織破壊の進行が速いタイプの侵襲性歯周炎において、P. gingivalis を主体とした歯周病原細菌が高い頻度で検出されることが報告されています(8)。 また、日本人は、特に歯周病患者でなくても口腔から歯周病原細菌が比較的高頻度で検出されます。Umedaら(9) は親子における口腔からの歯周病原細菌の検出率を報告していますが、成人である親の口腔サンプルから、レッドコンプレックスを構成する有力な歯周病原細菌であるP. gingivalis, Tannerella forsythia, Treponema denticolaの検出率が50%以上であり半数以上がこれらの細菌を保菌していました。そのうち平均10歳以下であるにもかかわらず小児からT. forsythia が25.5%、T. denticola が41.8%と高頻度で検出されました。このように、特に日本人では小児期から口腔内に高頻度で歯周病原細菌が存在しますが、血管疾患患者においては、レッドコンプレックスを構成する3菌種すべて70%以上、特にP. gingivalisは86.6%(表2)とほとんどの血管疾患患者口腔から歯周病原細菌が検出されました。

 血管疾患に罹っている人の口腔内から歯周病原細菌が高頻度で検出されたことから、動脈疾患罹患部位から外科的に切除した検体からDNAを抽出して歯周病原細菌の遺伝子を検出して調べました。栗原らは、動脈疾患患者における動脈瘤部位およびアテローム性動脈硬化病変部位から

の歯周病原細菌の検出頻度を報告しました(10)。歯周病原細菌として、特にP. gingivalis およびT. denticola が高い頻度で検出されました(11)。ここで、P. gingivalisは線毛を有することから生体の細胞に付着、侵入して、口腔から血管局所に運ばれた可能性があります。また、T. denticolaは運動性を有し、組織内へ侵入した可能性があります。

 血管病変部から歯周病原細菌遺伝子が検出されるのなら、これらの細菌は歯周ポケット局所に留まっているのではなく、歯周ポケット内の潰瘍面を通り抜けて、歯周組織内に侵入して病巣を形成するのでしょうか。歯周炎急性症状(急性歯周膿瘍)時には病態が悪化して急速に歯周組織破壊が進むと思われますが、P. gingivalis やT. forsythia などの有力な歯周病原細菌の割合が増加すると報告されています(12)。さらにThihaら(13)は、慢性歯周炎患者(CP)34名、広汎型侵襲性歯周炎患者(GAgP)17名、限局型侵襲性歯周炎患者(LAgP)8名において歯肉縁下プラークと直後の歯周外科手術時に採取した病的歯肉組織における歯周病原細菌の検出を比較しました。被験者として同等の歯周組織破壊の程度のものを選んびましたが(表3)、特に歯周組織破壊の進行の早いLAgPにおいて病的歯肉組織からの検出率が高く、プラークからの検出率より高い値であったことから、これらの細菌は、歯周ポケットの潰瘍面を通過して、歯肉組織内に病巣を形成して存在したと考えられました。

血管疾患罹患部位からの歯周病原細菌の検出

表2 日本人の各集団における歯周病原細菌の口腔

からの検出率

小児(56名) 親(42名) 血管疾患患者(134名)

平均年齢 8.3(歳) 39.5(歳) 65.2(歳)

P. gingivalis

T. forsythia

T. denticola

A. actinomycetemcomitans

P. intermedia

P. nigrescens

C. rectus

7.3 (%) 54.8 (%) 86.6 (%)

25.5 54.8 79.1

41.8 88.1 76.11.8 7.1 3.7

12.7 23.8 57.5

25.5 28.6 57.5

87.2 88.1 79.1

Umeda M, Miwa Z, Takeuchi Y et.al. The distribution of periodontopathic bacteria among Japanese children and their parents. J Periodont Res 2004;39:398‐404. より一部抜粋

(歯周病外来の患者さんではありません)

表3 縁下プラーク、病的歯肉組織中の細菌検出%

CP         GAgP LAgP

P. gingivalis

プラーク 72            50           63

歯肉組織 78            69           88

A. actinomycetemcomitans

プラーク 19             25           38 

歯肉組織 16             38           63

T. forsythia

プラーク 69            44           63

歯肉組織 75            81           75   

*

* p<0.05

歯周病原細菌が組織内に侵入して病巣を形成する可能性

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大阪歯科大学同窓会報20

 歯周病原細菌は血中に入ると速やかに白血球に貪食されると考えられます。それではどうやって白血球に貪食されることなく遠隔の血管壁にたどり着くことができるのでしょうか。 Liら(14) はP. gingivalis と人の血小板を混合し、血小板凝集を確認し、電顕で超微細構造的に観察しました。ここで、rutenium red 染色を行うことで、この、P. gingivalisが血小板と重なっているように見えても、それぞれが染剤によって染色されることで独立しているのか、重なった内部のP. gingivalis が染色されず、外側の血小板のみ染色されているのか精査しました。その結果、P. gingivalis が染色されず、それと重なった血小板が染色されている像が見つかり、これは、P. gingivalis が血小板に取り込まれたことを証明するものでした。このことから、組織内に侵入したP. gingivalis は血流に入って血小板に取り込まれることによって、白血球などの攻撃を受けることなく血流中で末梢の血管に運ばれ、そこで血管病変を引き起こす可能性が示唆されました。 末梢に運ばれたP. gingivalisに関してKubotaら(15) はラットを用いた動物実験モデルにおいて、infusion pumpを用いて血流中に流すことで血栓ができることを示しました。 さらに、Yuら(16) は、ラットを用いた動物実験モデルによってP. gingivalis が血小板の活性を亢進し血液の凝集を促進することを報告しました。このことから、歯周病原細菌であるP. gingivalisがアテローム性動脈硬化症を亢進し、血栓形成に関わることが示唆されました。

 歯周病原細菌がどのような経路で口腔から全身に運ばれていくのかまだ明らかにされていません。現在までのところ、輸送経路の一つと考えられるリンパ系を介して歯周病原細菌が運ばれるかどうか報告されておりません。したが っ て、Rajakarunaら(17) は、 口 腔 か ら 運 ば れた歯周病原細菌がリンパ節に存在するかどうか

検索しました。検体として、66名の頭頸部癌患者の口腔近接のリンパ節標本から細菌DNAを採取しました。採取したDNAに対してリアルタイムPCR法を用いて歯周病原細菌であるP. gingivalis, T. denticola, Aggregatibacter actinomycetemcomitans, T. forsythiaお よ びPrevotella intermedia に特異的な16s リボゾーマルDNAの遺伝子をリアルタイムPCR法によって増幅し検出しました。その結果、リンパ節からP. gingivalis, T. forsythia, P. intermedia が顎下およびオトガイ下リンパ節からそれぞれ18%, 8%, 8%検出され、歯周病原細菌がリンパ系を介して口腔から末梢へ運ばれることが示されました。

 血管疾患に対する、歯周病原細菌の検出、その輸送手段、輸送経路に関しては、解明が進んできましたが、歯周病原細菌感染の宿主の反応に関しても明らかにする必要があります。Chenら(18)は、動脈疾患に対する歯周病原細菌感染の血清学的検索、宿主の炎症性サイトカインレベルの検討を行いました。 被験者として、動脈疾患患者(動脈硬化症患者)25名、対照群として32名について調べました。ここで、対照群の被験者は動脈疾患群と年齢、性別、喫煙率をマッチさせ、 動脈硬化症の既往が無く、ABI検査で末梢の血流が正常であると診断されたもの、過去3ヶ月以内に抗生剤服用の既往が無いもの、6ヶ月以内に歯周治療を受けていないものを選択しました。動脈疾患患者と対照群の

歯周病原細菌の血管組織への輸送手段、血栓形成

動脈疾患患者における歯周病原細菌に対する宿主の反応

歯周病原細菌が口腔から全身へ運ばれる経路

表4 動脈疾患患者と対照群の歯周病の程度の比較

動脈疾患患者 対照群 p値

歯周病 68.0% 31.0% 0.004PD≥4mm 部位% 14.8% 2.6% 0.003

残存歯数 13.2 24.5 <0.001

• 歯周病の基準 : 4分の1分画それぞれに少なくとも1部位、歯周ポケット4mm以上かクリニカルアタッチメントロス4mm以上有す

るもの

CAL≥4mm 部位% 39.0% 13.4% 0.007

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2013冬 187号 21

歯周病の程度を比較すると(表4)、歯周病に罹患していた者は、動脈疾患患者が68.0%であり、対照群の31.0%に対して有意に高い歯周病の罹患率を示しました。また、クリニカルアタッチメントレベルの喪失が4mm以上の部位の割合が、動脈疾患患者が39.0%であり、対照群の13.4%に対し有意に高い歯周組織破壊のレベルを示しました。ここで、動脈疾患患者群と対照群の両群間における歯周病原細菌に対する血清IgG抗体価の比較に関し、動脈疾患患者群のP. gingivalis, T. denticola およびP. intermedia に対する血清IgG抗体価が、対照群より有意に高い結果になりました(図2)。動脈疾患患者に対する炎症性サイトカイン値の内、IL-6およびTNF-αに関して動脈疾患患者の方が、対照群より有意に高い値を示しました(表5)。さらに、動脈疾患に対するロジスティック回帰分析によるリスク分析を行った結果、歯周病はオッズ比(95% CI)で5.45(1.57-18.89)p=0.007と有意なリスク因子になりました。 以上これまでの研究から、動脈疾患と歯周病に関して、1.動脈疾患患者は歯周病の罹患率が高い 2.動脈疾患部位から高率でP. gingivalis

およびT. denticolaのDNAが検出される 3.動脈疾患患者は、P. gingivalis, T. denticola, P. intermedia に対する血清IgG抗体価が高い 4.動脈疾患患者は血液中の炎症性サイトカインレベル(IL-6, TNF-α)が高い という関係が見出されました。

 疫学的には歯周疾患と冠動脈性心疾患との関係は報告されていますが、Sakuraiら(19) は冠動脈性心疾患患者28名において、急性冠症候群

(ACS)15名、 慢 性 冠 動 脈 性 心 疾 患(Chronic CHD)の2群に分けて、それぞれ歯肉縁下プラーク、唾液、血液を採取して口腔および血液サンプル中の歯周病原細菌の検出頻度をPCR法 を 用 い て 調 べ、ELISA法 を 用 い て 歯 周 病 原細菌5菌種に対する血清IgG抗体価を比較しました。急性冠症候群患者5名(33%)におい てA. actinomycetemcomitans が 口 腔 内 から検出されましたが、慢性冠動脈疾患患者からは全く検出されず、有意差が認められまし

動脈疾患患者

対照群

*p<0.05, **p<0.01

図2 動脈疾患患者、対照群間における歯周病原細菌に対する血清IgG抗体価の比較

表5 動脈疾患に対する炎症性サイトカイン値の比較

動脈疾患患者 対照群

IL-6 (pg/ml) 19.60±24.42 3.81±3.58

TNF-α(pg/ml) 1.41±1.03 0.55±0.51

IL-1β(pg/ml) 4.22±4.05 3.10±3.58

**

**

**p<0.01

表6 口腔および血液サンプル中の歯周病原細菌の検出頻度(PCR法)

口腔サンプル 数(%) 血液サンプル数(%)

P. gingivalis 14 (93) 10 (77) 0 0

T. forsythia

P. intermedia

T. denticolaA. actinomycetemcomitans

ACS Chronic CHD ACS Chronic CHD

15 (100) 12 (92) 0 0

12 (80) 11 (85) 4 (27) 2 (15)

5 (33)* 0 1 (7) 0

10 (67) 7 (54) 0 0

*; p<0.05

歯周疾患と冠動脈性心疾患(coronary heart disease, CHD)の関係

図3 歯周病原細菌5菌種に対する血清IgG抗体価

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大阪歯科大学同窓会報22

た(p<0.05)(表6)。この菌においては、血清IgG抗体価においても有意差が認められました

(p<0.05)(図3)。歯周病原細菌のうち特にA. actinomycetemcomitans は急性冠症候群の進行に関与する可能性があります。

 バージャー病は、特に30代の喫煙者に発症する四肢の閉塞性動脈疾患で難治性のバージャー病は四肢の潰瘍・壊死から指や肢の切断にいたることも少なくありません。この疾患は、膝下の動脈、静脈、神経がおかされ、冷感・しびれ・レイノー現象などの神経症状を示します。 バージャー病は、他の動脈疾患と比較して若年時から発症するが同年代の健常者と比較して早期の歯周病の発症が認められることが多いと述べられています(20)。Iwaiら(21) は、バージャー病患者14名における動脈および口腔サンプルからの歯周病原細菌DNAの検出率について、レッドコンプレックスを構成する有力な歯周病原細菌である、P. gingivalis およびT. denticola さらにCampylobacter rectusのDNAが口腔および動脈疾患罹患部位から高い頻度で検出されたことを報告しました(表7)。 これらの細菌がバージャー病の罹患血管から検出されたことから、Chenら(22) は、歯周病原細菌に対する血清IgG抗体価の上昇とバージャー病の関係について、歯周病原細菌による感染がバージャー病に関与するかどうか血清学的に調べました。被験者としてバージャー病患者19名(男性、平均56.6±2.9歳)、対照群として年齢、喫煙をマッチさせた健常者15名(男性、平均54.1±2.5歳)を比較しました。ここで、バージャー病患者は、いずれも若年時に発症してい

ました。それぞれの群ともに歯周病原細菌4菌種(A. actinomycetemcomitans, P. intermedia, P. gingivalis, T. denticola)に対する血清IgG抗体価を比較しました。バージャー病患者群の方が健常者群より有意に高い歯周病の罹患頻度、重症度を示しました(表8)。また、バージャー病患者の方が対照群より有意に高い歯周ポケット4mm以上の部位%、およびアタッチメントロス5mm以上の部位%を示しました(表9)。この結果は、バージャー病患者の方が口腔内に歯周病原細菌の棲家である歯周ポケットをより多く有し、同時に歯周組織破壊も進行し、口腔においてより高頻度に炎症を起こしていたことを示しています。歯周病原細菌4菌種に対する血清IgG抗体価の比較において、バージャー病患者群の方が健常者群と比較してA. actinomycetemcomitans, P. gingivalis, T. denticola に対する血清IgG抗体価が有意に高いという結果になりました。 これらの結果から、バージャー病患者は対照群より歯周病の進行が進んでいたことから、両疾患の関連が示唆されました。さらに、バージャー病患者は歯周病原細菌に対して有意に高い血清IgG抗体価を示したことから、これらの細菌はバー

動脈(%) 口腔(%)

P. gingivalis 35.7 92.9T. forsythia 14.3 92.9T. denticola 85.7 100C. rectus 42.9 100A. actinomycetemcomitans 0 0P. intermedia 21.4 71.4P. nigrescens 14.3 71.4

表7 バージャー病患者14名における動脈および口腔サンプルからの歯周病原細菌DNAの検出率

表9 バージャー病患者および対照群の歯周ポケット及

びアタッチメントレベルの比較

バージャー病患者 対照群 P値

CAL ( > 5mm) % 22.6 % 5.1 % < 0.001

PPD ( > 4mm) % 14.3 % 2.2 % 0.016

•PPD ( > 4mm) % : 歯周ポケット深さ > 4mm の部位%

• CAL ( > 5mm) % : クリニカルアタッチメントロス> 5mmの部位%

残存歯数 20.2 25.7 0.067

(対応のないt-検定)

表8 バージャー病患者および対照群の歯周病の状態

バージャー病患者 対照群 P

歯周病の罹患頻度 (17/19) 89.5 % (4/15) 26.7 % < 0.001

• バージャー病患者19名中2名は歯周疾患のため無歯顎であった

中等度・重度歯周炎 (13/19) 68.4 % (2/15) 13.3% < 0.001

軽度歯周炎 (4/19) 21.1 % (2/15) 13.3 % 1.00

(カイ2乗検定)

歯周病の基準 : 4分の1分画それぞれに少なくとも1部位、クリニカルアタッチメントロス4mm以上有するもの

軽度歯周炎と中等度・重度歯周炎の基準:クリニカルアタッチメントロス4mm以上の部位が10%以上か以下かで分類

歯周病とバージャー病の関係

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2013冬 187号 23

ジャー病罹患部位においてたまたま取り込まれたというより、特異的な歯周病原細菌感染の結果として宿主に認識されたと考えられました。 バージャー病患者数名において歯周病の検査を行い、治療が必要な患者に対して歯周治療を行った結果、歯周病の症状の改善とともにバージャー病の症状の改善が認められました。一例として図4~7で症例を紹介しますが、34歳のバージャー病患者さんの歯周治療(全28歯)を2年半行ったところ、バージャー病の症状が改善しました。

図4、5は初診時のバージャー病患者さんの口腔内の状態です。臼歯部を中心に4~6mmの歯周ポケットが存在し、根分岐部病変も認められていました。歯周治療によって初診時に20部位存在した4mm以上の歯周ポケットはなくなり、それとともに患者さんが5分で歩行時の痛みを感じて歩けなくなっていたのが1時間以上歩けるようになるまでバージャー病の症状が改善しました。 また、日本も含めた先進国においては、バージャー病の罹患頻度は減少していますが、他のアジアの大部分の発展途上国では高い罹患頻度が続いており、バージャー病研究所において、タイやスリランカで共同研究が立ち上がっています。

 血管疾患は日本人の死因に占める代表的な原因の1つであると考えられ、歯に至らなくても

患者の初診時のレントゲン写真図5

図4 治療開始時 図6 治療開始2年後

図5 患者の初診時のレントゲン写真

動揺度 1BOPPD 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 2 2 2 1 2 2 2 2 2 2 2

上顎 7 6 5 4 3 2 1 1 2 3 4 5 6 7PD 4 2 3 3 2 5 4 2 3 2 2 2 3 2 2 2 2 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 3 3 1 2 3 1 3 3 3 4 4 2 4BOP o o o

BOP o oPD 4 6 5 3 3 4 3 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 4 2 2 4 5 4

下顎 7 6 5 4 3 2 1 1 2 3 4 5 6 7PD 4 5 3 4 4 3 3 2 3 2 2 4 3 2 3 3 2 3 3 1 2 2 2 3 3 2 3 3 2 3 3 2 3 3 2 2 3 5 2 3 2 3BOP o o動揺度

歯周治療前

動揺度BOPPD 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 2 2

上顎 7 6 5 4 3 2 1 1 2 3 4 5 6 7PD 2 1 2 2 1 3 2 1 2 2 1 3 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 3 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2BOP

BOPPD 3 3 2 2 2 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 3 3 3

下顎 7 6 5 4 3 2 1 1 2 3 4 5 6 7PD 2 2 2 2 2 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 2 2 2 2 2BOP動揺度

歯周治療後

図7

動揺度 1BOPPD 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 2 2 2 1 2 2 2 2 2 2 2

上顎 7 6 5 4 3 2 1 1 2 3 4 5 6 7PD 4 2 3 3 2 5 4 2 3 2 2 2 3 2 2 2 2 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 3 3 1 2 3 1 3 3 3 4 4 2 4BOP o o o

BOP o oPD 4 6 5 3 3 4 3 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 4 2 2 4 5 4

下顎 7 6 5 4 3 2 1 1 2 3 4 5 6 7PD 4 5 3 4 4 3 3 2 3 2 2 4 3 2 3 3 2 3 3 1 2 2 2 3 3 2 3 3 2 3 3 2 3 3 2 2 3 5 2 3 2 3BOP o o動揺度

歯周治療前

動揺度BOPPD 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 2 2

上顎 7 6 5 4 3 2 1 1 2 3 4 5 6 7PD 2 1 2 2 1 3 2 1 2 2 1 3 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 3 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2BOP

BOPPD 3 3 2 2 2 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 3 3 3

下顎 7 6 5 4 3 2 1 1 2 3 4 5 6 7PD 2 2 2 2 2 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 1 2 2 2 2 2 2 2BOP動揺度

歯周治療後

図7

治療開始時図4 治療開始2年後

図6

歯周治療前

歯周治療後図7

おわりに

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大阪歯科大学同窓会報24

QOLの低下を招く疾患です。血管疾患の原因の1つを解決できればその罹患率を下げることが期待できますが、従来の疫学的研究によると、歯周病が血管疾患に関わることが報告されてきました。ここで、歯周病は歯周病原細菌によって引き起こされますが、歯周病原細菌の内で最も代表的なものの1つであるP. gingivalisはその病原性および動物実験による報告から、血栓形成や、アテローム性動脈硬化症を促進する可能性が報告されました。特に、日本人は欧米人より高率でP. gingivalisを保菌していると考えられ、高感度なPCR法を用いた検出法によって、血管疾患罹患患者口腔からさらに高率にこの菌が検出され、罹患血管検体からも高率に検出されました。歯周病原細菌は、歯周組織破壊の進行が急な部位、侵襲性歯周炎など進行が速い歯周疾患において高率で検出されますが、これらの細菌は、歯周ポケットのみにとどまらず、ポケット内面の潰瘍面を通過、侵入して生体組織内に病巣を形成すると考えられます。そして、リンパ系を介し、血小板に取り込

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まれ生体の白血球などの防御機構からの攻撃を受けることなく末梢の血管に運ばれ、血管疾患に関わる可能性があります。動脈硬化症や大動脈瘤患者においては、健常者と比較して歯周病が進んでおり、動脈疾患病変から歯周病原細菌DNAが検出されるのみならず、これらの歯周病原細菌に対する血清IgG抗体価も高く、高い炎症性サイトカインレベルを示しました。また、急性の心臓血管系疾患においては、侵襲性歯周炎の原因菌とされるA. actinomycetemcomitansの関与が疑われました。同様に、発展途上国で広く蔓延しているバージャー病に関しても歯周病および歯周病原細菌の関与が疑われ、これらの国々における歯周治療が、バージャー病罹患率の改善に寄与することが期待されます。今後、歯周治療による歯周病の改善が血管疾患に寄与するか明らかにしていく必要があります。

(本文の一部は今年度大阪歯科大学中央歯学研究所報に掲載しました。)

558, 2004.⑿ Umeda M, Tominaga Y, He T, Yano K, Watanabe H, Ishikawa I.

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参考文献