慢性統合失調症患者における 音楽療法とコラージュ...

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人間と科学 県立広島大学保鍵福祉学部誌 7 (1) 155 - 168 2007 慢性統合失調症患者における 音楽療法とコラージュ療法の併用効果 山本映子* 1 木島ほづみ *2 吉岡由美子* 2 宮本奈美子* 1 * 1 県立広島大学保健福祉学部看護学科 * 2 三原音楽療法研究会 2006 9 J=I 12日受付 2006 12 128 受理 抄録 本研究では, 1 要性統合失調症患者に吾楽療法とコラージュ療法を I セッションの中で前後に組み合わせて (併用)実施し,両療法の評価をそれぞれ行うと共に,併用することで得られる効果について検討することを目 的とした。 対象は, A 県中部にある某精神務院女子開放病棟において,音楽療法とコラージュ療法に自由参加した患者 のうち,研究の同意が得られた者 8 名〈平均年齢 58 歳)であった。月 2 1 時間のセッション(前半:音楽療 法/後半:コラージュ療法)を 12 回実施し 精神科の吾楽療法評価表とコラージュ観察評価スケーん及び印象 評定を用いて対象の変化を灘定した。その結果 音楽療法とコラージュ療法の併用が相補的 椙乗的効果をも たらし,コミュニケーション捧害といわれる統合失調症患者に効果的である可能性が示唆された。 キーワード:統合失調症,音楽療法,コラージュ、療法,併用効果 rD Fhu t -

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人間と科学 県立広島大学保鍵福祉学部誌 7(1) 155 -168 2007

慢性統合失調症患者における

音楽療法とコラージュ療法の併用効果

山本映子*1 木島ほづみ*2 吉岡由美子*2 宮 本 奈 美 子 *1

* 1 県立広島大学保健福祉学部看護学科

* 2 三原音楽療法研究会

2006年 9J=I 12日受付

2006年 12月128受理

抄 録

本研究では, 1要性統合失調症患者に吾楽療法とコラージュ療法を Iセッションの中で前後に組み合わせて

(併用)実施し,両療法の評価をそれぞれ行うと共に,併用することで得られる効果について検討することを目

的とした。

対象は, A県中部にある某精神務院女子開放病棟において,音楽療法とコラージュ療法に自由参加した患者

のうち,研究の同意が得られた者8名〈平均年齢 58歳)であった。月 2回 1時間のセッション(前半:音楽療

法/後半:コラージュ療法)を 12回実施し 精神科の吾楽療法評価表とコラージュ観察評価スケーん及び印象

評定を用いて対象の変化を灘定した。その結果 音楽療法とコラージュ療法の併用が相補的 椙乗的効果をも

たらし,コミュニケーション捧害といわれる統合失調症患者に効果的である可能性が示唆された。

キーワード:統合失調症,音楽療法,コラージュ、療法,併用効果

rD

Fhu t-

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人間と科学 県立広島大学保健福祉学部誌 7(1) 155 -168 2007

現在,音楽療法とコラージュ療法は共に芸街療法と

して位置づけられ 夫々に多くの治療的効果があるこ

とが報告されている。村井 (2003) は,精神科治療に

おける音楽療法について, r強の芸術療法やレクリエー

ション療法分野と相携えて 治療手段としての真の市

民権が得られる自が来ることを願う jと,その著書 1)

で述べている。それから今日まで統合的芸街療法と

しての位置づけ 2)や,心理療法を用いての検討 3) 高

音特性に関する研究 4)など,多くの音楽療法家によ

る活動が,精神科入院患者(主に統合失調症患者〉を

対象として展開され急速に発展している。長期入院

中の慢性統合失調症患者にとって 歌唱活動や器楽合

奏,コラージュ制作は楽しい体験であり,それが定期 豆 目的的に楽しみな時間として保証されていることは,それ

だけでも大切なことである。自己表現や自己主張する 慢性統合失謂症患者に音楽療法とコラージュ療法を

I 緒言

場が限られている入読生活の中で,音楽療法では,歌

を歌い,合奏するという活動を利用して,その中で表

現する,選択する,決定する,ルールに従う,他者の

意見や希望を尊重する,持聞や場を共宥する,会話を

楽しむ,好きな音楽に没頭することで気分転換が麗ら

れ,ストレスを発散し,対入交流を促すなどの効果が

期待されている。

一方,慢性化した長期入院患者を対象にして行う集

団コラージュ療法で、も 治療的コミュニケーションづ

くりに有効であること泣,藤田・岡田 (1999) をはじ

め多くの心理臨床家が報告している日告)。山本 (1996)

は,精神看護者の立場で, 1993年から積神科病棟に

おけるレクリヱーション療法として集団で行うコラー

ジュ法を導入し,その活動で得られた効果を報告して

いる 7)。その結果は 杉浦(1994)のあiずる治療的効

果 8) とほぼ同様のものであった。現在では,作業療

法としても多くの病院で実践されている O この集団を

対象としたコラージュ療法で、は 作品を通して表出さ

れた惑情を共有し 感情の浄化(カタルシス)を得る

こと,美意識の満足感や意欲の向上 対人関係の改善

を捉進するなどの効果が期待されてきた。日本では,

f昌人心理療法として生まれ 発畏してきたコラージュ

療法は,集団を対象としても実践され,そこでも大き

な効果を得ているといえよう。

以上,音楽療法と コラージュ療法という 2つの芸

街療法{自己表現療法ともいう)から得られる効果に

ついて述べてきた。広畠コラージュ療法研究会(主宰

者:山本)に所思する筆者らは,対人援助の専門家

(音楽療法士,カウンセラー・コラージュ療法研究家,

精神専門看護師〉として,統合失謂症患者に,村井

〈上述)が願った音楽療法と“椙携えて"実践するも

のとして,集冨コラージュ療法を選択し試みることに

した。音楽とコラージュを 1セッションの中で前後に

組み合わせ,一定期間継続して実施して得られる治療

的効果を検討した報告は 我々の知る限り見当たらな

t '10

なお,吾楽療法とコラージュ療法を選択した理由は,

二つある。①今回の音楽療法の特徴は,重接的に感情

面を刺激すること,その働き iこ誌身体的な動きを倖う

ことから,動的活動と笠置づけた。②コラージュ療法

は,その入の感性でその人の内的世界を表現するもの

で,着席して行い,身体的な動きは余り伴わないため,

静的活動と位置づけた。この 動と静の活動を併用す

ることは,単独療法の効果よりさらに補完的,あるい

は栢乗的な効果が期待できるのではないかと考えたこ

とによる。

1セッションの中で前後に組み合わせて実施し,再療

法の評価をそれぞれ行うと共に 併用することで得ら

れる効果について検討する O

〔用語の定義〕

苦楽療法:音楽の持つ生理的,心理的,社会的働き

を心身の捧害の回毎機能の維持改善に

向けて意図的,計画的に活用して行われ

る治療技法である O

(8本音楽療法学会の定義)

コラージュ療法.collageとは collerと言うフラン

ス語から由来する言葉で,機づけするこ

とを意味する。ピカソ (1912) を初めと

する現代美術の重要な技法の一つであ

るO 雑誌やパンフレット本どの既成イメ

ージをハサミで切り抜き台紙の上で再構

成し,額づけするという,きわめて単純

で明快な方法で品る o 8本では 1987年

頃より個人心理察法として取り入れられ

発展している O

E 研究対象および研究方法

1 研究対象

A県下の某精神病読〈病床数 200)の女子開放病棟

において,作業療法士の声かけにより吾楽療法とコラ

ージュ療法に自由参加した患者のうち,研究内容につ

いて具体的に説明し,研究への協力に同意した慢性統

合失調症患者 8名である O 対象の平均年齢は 58裁で

ある。なお,毎回のセッションの平均参加数法 25名

であった。

鎗理的配車:患者の権利の擁護者である病院管理者

po 戸

hd

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人間と科学 県立広島大学保健福祉学部誌 7(1) 155 -168 2007

に,研究の目的・方法及び患者の安全性・留人情報の

保護について充交配慮する旨を文書と口頭で説明し,

承諾を得た。その後 患者に同様の内容を分かりやす

く口頭で伝え,研究協力について文書での同意を得た。

個人'情報は,研究以外に技用しないことを伝え,特定

されないよう配重ました。

2 研究期跨

2005年 6丹-2005年 11月(6ヶ月間)

3 研究方法

月2冨(2週間に 1田) 1時間のセッションを合計

12回実施した。初回試コラージュ療法のみ, 2回日誌

音楽療法のみを行い 3回目からはセッションの前半

30分で音楽療法,後半 30分でコラージュ察法を行っ

た。従って併吊セッションは羽田である C 研究開始

時,対象患者8名にそれぞれ到達自擦を定め,各自の

最終回に達成震を評価した。なおセッション回数は,

対象特性および病読側の条件を考麗した。再療法を単

独で実施したの誌併用との遣いを見るためである O ま

たセッションの構成については 音楽がコラージュ制

作に与える効果を期待して音楽療法を前半に配置し

た。患者は自由参加であり 各自の好みで一方を選択

することが可能であった。

〔手続き〕

音楽療法:季節の歌の歌唱・トーンチャイムまたは

ミュージックベルの合奏・リクエストに

よる歌唱・手話歌の指導の流れで行っ

た。

コラージュ療誌:治療者が予め,切り抜き(写真や

絵)を入れた箱を準備し,その中から患

者が貼りたいものを選択する「コラージ

ュボックス法J9) ;を用いた。素材内容は,

人物・動物・自然風景〈植物〉 ・食物・

物体(家-建造物を含む)を 5箱に分け

て準備した。他に のり・はさみと台紙

(八つ切り自画用紙)を準語した。教示は,

f箱の中から好きなもの,気になるもの

を選び¥自由に切り抜き,台紙に貼り付

けてくださ poJである。コラージュ制

詐後,台紙の裏面に年月日・名前・題と

感想,一番好きなものを書くよう伝え

た。

音楽療法とコラージュ療法の活動場面で、は,音楽療

法士2名と作業療法士 1名が参加観察し,つ〉精神科の

音楽療法評錨表 10}②コラージュ観察評儲スケーん

(東大式観察評価スケーんを参考に山本が作成)を用

いて評話した。吾楽療法とコラージュ療法の評価及び

コラージュ作品のデータ分析は 大学教員 2名が加わ

り,検討し考察した。また,コラージュ療法の効果の

評定には,作品から受ける評定者の印象も加えた。評

価方法は,以下の通りである O

①精神科の音楽療法評価表の 6項目(産席の取り方

と移動,視線の向け方,活動全般の取り組み方,

体験の表出,役割取得,他メンバーとの対応〉の

A-Dの評価基準に 4-1を罰点、した。得点が

高いほど長い状態である。

②コラージュ観察評価スケーんの各項目〈言語的コ

ミュニケーションヲ非言語的コミュニケーション,

注意・関心,感債〉について下位項昌 5個を 0-

1点、法で評定し加算した。得点が高Ptまど長い状

態である。他に,作者の感想記述欄がある O

③コラージュ作品の印象評定は,今村 (2006)の表

現項目 11) を参考とした。

U 活動経過と結果

対象者誌慢性期にある統合失調症患者であり,残存

する陽性症状(幻覚・妄想、〉は 3名に持々見られたが,

殆どは陰性症状(無為・自開)が前面に出ている状況

であった。従って, 8名の患者に対して,研究期間中

の薬物療法に大きな変更はなかった。分入前の各患者

の精神状態や ADLについては表 1に付記した。結果

は,音楽療法評語表とコラージュ観察評価スケーんで

評価し,夫々の患者の併用セッション初呂と最終毘で

比較した。セッションへの参加状況については,表 2

に示した。なお,参加は自虐意思であり,不参加は診

察や面会などによるものがあり 必、ずしも本セッショ

ンを拒否したものではない。

1 音楽療法評価

患者到の音楽療法評価表による初回と最終屈の比較

を表 3に示した。また初回と最経回の平均の比較は,

図 1に示した。

①「座席の取り方と移動jでは 2点(空席に応じ

て産る)から 4点(自由に選択)に 3名が変化し

た。

②「視線の向け方jでiま 2点(特定の場面でのみ

視隷を向ける) ・3点〈何となく活動の中心に視

隷を向けている)から 4点(関心を持ち活動の中

心に視線を向けている)へそれぞれ 1名計 2名が

変化した。

③「活動全般の取り組み方jでは, 3点(取り組み

方にむらが有る)から 4点(自発的に取り組む〉

ヘ許 3名が変化した。なお, 2名はその逆で 4点

から 3点ヘ変イとした。

④「誌堅実の表出jで誌 3点(事実に伴う感債を他

者の言葉で表現)から 4点(事実に伴う感情を自

分の言葉で表現), 1点(発言なし)から 3点, 2

iFhd

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点(指名や援助で事実だけ述べる)埼玉ら 4点ヘ,

それぞれ1名計 3名が変化した。

⑤「役割取得Jでは, 1点(独自の世界に入り,特

殊な表現) . 2点(指示された事のみこなす〉か

ら4点(積極的に場に適した表現ができる)へそ

れぞれ 1名,また 2点から 3点(指示通り及び自

発的に展開も試みる〉ヘ 2名の計 4名が変化し

た。

⑤「他のメンバーとの交流jでは,全員変化なく 1

点(拒否的,攻撃的)が 2名, 2点、 nまとんど交

流は無い)が 4名であり 位の 2名は 4点、(適切

で無理なく椙手と協調できる〉であった。

2 コラージュ療法評価

患者加のコラージュ観察評価スケーんによる初回と

最終屈の比較を表 4に示した。初田と最終回の平均の

比較は図 2に示した。表 4に見られるように,マイナ

スの変化がみられた者;まいなかった。以下の( )内

は得点、の下位項目を示す。

①「言語的コミュニケーションjは,変化が無かっ

た2名を捻き, 6名で得点、がそれぞれ 1-3点

〈挨拶をする・他の参加者に自ら話しかける・話

題や活動に即した発言が見られる)増加した。

②「非言語的コミュニケーション」は,全員,得点、

がそれぞれ 1-4点(他の参加者への気理りや患

いが見られる・動作や身振りによる表現が見られ

る・笑顔や沼ほえみが見られる・自然な表情)増

力日した。

③「注意・関心J,ま 4名で得点、がそれぞれ 1-2

点〈注意散漫でない・話題や活動から逸れない・

話しかけたら適切に対応する・その場の活動や状

況に興味や関心を示す〉増加し,他の 4名(5点〉

泣初回から,よく集中できていた。

④「感J情jは, 7名で得点がそれぞれ 1-2点(不

安げな様子はない・抑うつ的では立い・イライラ

している様子はない・場に即した感情表出があ

る・自然でくつろいだ感じ)増加し,危の 1名

(5点〉は初回から落ち着いてくつろぎ,場に応

じた感情表出ができていた。

3 目標到達度の評{匝

研究開始時に患者ごとに設定した目標については,

表 3.表4の結果を踏まえて自標到達度の評価を行っ

た(表 1Lその結果 諜状態であった B氏を除く 7

名の患者のうち目標達成が 3名 目標達成に向かつて

成果が克られた者が 4名であった。

4 コラージュ作品に見られる特徴および、音楽療法・

コラージュ療法への参加状況

(#はセッション回数 または その詩に制作され

た作品を表す)

形式・内容分析及び印象評定によるコラージュ作品

の特徴について,患者ごとに継時的な視点、で簡単に述

べた。また患者のセッションへの参加状況についても

併せて付記した。

A氏(作品 7枚)

1作品で貼られた写真は再ーの内容(人間)が多用

された。構成は,並列的記置・搭子状配重から意味の

ある配雷ヘ変化した。題iま,抽象的なものが多く,創

造性がみられた。 #1で法 上段に子どもと大人の演

劇発表会の舞台写真,中段左側にサラダ,右側に肩を

組んだ若いカップル 下段にお雑煮の写真が貼られ

「平和と健康」という回想的な作品であった。 #3(写真1)は,色彩豊かで大きな化粧品の瓶 3個が一

部重なり合って貼られ迫力が惑じられた。 #4は食

べ物が貼られ, 1今・ここJの欲求・願望の表出が感

じられた。 #8より人物橡が現れ実施国数を重ねる

ごとに,子供→若い女性→中年の和服女性へと変北し

た。#12最終回(写真 2)の和服の女性は自己像と

思われた O

吾楽療法#2 (初回)では「歌を歌うことやべんが

楽しかったjと惑想を述べ その後も「歌や楽器が楽

しpJ,1手話が勉強になりました」などの肯定的評価

が書かれた。また, # 3 (併用初回)のコラージュ療

法の惑想、に, 1切り抜きが楽しpJ1コラージュをもっ

と貼りたかったJと書き,それ以降の惑想でも毎回,

「楽しかったjと述べていた。最終回では毘りの参加

者と話しながら耕作していた。

B氏(作品目枚〉

作品の写真は同一内容(人間〉が多く貼られた。構

成は,並列的配震から動きや奥行きがあるものに変化

した。題の多くは写真の映復そのものがつけられた。

#1では女笠・ケーキとカップを並列に配童したo # 3 rブーケJ(写真 3) では 上から大・中・小のブー

ケと花瓶の花,右下に小さな上半身の女性像で動きが

出た。感想に結婚できなかった思いが書かれたが,こ

の持の音楽は「ふるさとJの合奏であり,苦の記憧が

惹起されたことが推測された。 #4-#6は食べ物の

みで食への欲求・こだわりが感じられた o # 8-#

10 は若い女性が続き # 11 r男女仲よく J(写真心

では男性(外由人)が登場し 上部に小さく列車が貼

られて構成に遠近感が見られた。食欲や異性を求める

欲求と願望が表出できたことで 満足惑が得られたと

思われた o # 12 rラブレターJ(写真弓では,中央

に貼られた女性の顔が加の切片で穏されるなど多少の

粗雑さはみられたが 「手紙を書く楽しみjという文

字が入った写真が貼られた。この時は諜的症状のため,

医師から参加を止められたが 最終回だからと出席し

て,二人の音楽療法士に感謝の気持ちを伝えていた。

その思い試作品にも表現されているように感じられ

-158ー

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人間と科学 県立広島大学保鍵福祉学部誌 7(1) 155 -168 2007

たむ「どうも毒りがとう,今司が最後だと思うと,会

えなくなるのが残念でたまらなLリ等と,惑想、用紙 2

枚に躍るような文字でお礼の気持ちが書かれた。

#2以降,気分変動はありながらも音楽療法の感想、

は「楽しかったJr満足したjと肯定的であり, # 5で

は「皆と一緒が楽しpJ,# 8では「曹と一緒に歌う

ことjが楽しかったと書かれた。コラージュ療法で、は

#3以降毎回, r楽しかったJr満足したjと感想を書

き, # 11では fスタイんがたのしそう」との惑想も

あった。

C氏(作品 8枚〉

選ばれた写真は同一内容〈食べ物)の多用であり,

しかも雑誌の頁をそのまま貼るか 西角い切り抜きを

格子状iこ貼るなど 構成力は乏しい。題も写真の素材

そのままが付けられるなど創造性はみられず,作品の

昂象内容とのずれを感じるものもあった。平均切片数

は少なく雑然とした印象からは欲求が整理し切れてい

ない状態が推測された o # 10の作品(写真 6)では

「たのしそうなおかしですjといった題がみられ,楽

しい気分が投影されていた。 #2から感想、に法 f思い

出の歌で楽しかった 歌と楽器がとても楽しかったJと音楽の楽しさが表現され コラージュ制作も #3か

ら, r面白かったJr嬉しかったJrまた,やりたいJfコラージュが楽しかったjと肯定的な項目に多く O

印が付けられた。

D氏(作品 4枚〉

作品の写真に法問一内容(花)が多用され,構成は

並列的または格子状配置であった。題法写真そのもの

が付けられ,想録力はみられない。 #3~#5 を継時

的にみると, D氏の中に漠然としていた花のイメージ

が明確に右り形が整理されていくような印象を受け

た。

f楽器が楽しかったjと#3以降,毎回,音楽の感

想、が述べられた。音楽は好きだが創作活動は苦手と言

い,作品 4枚制作後は音楽療法のみに参加したが,コ

ラージュでも毎回 「楽しかったjと記入していた。

E氏(作品目枚)

選んだ写真は詔一内容の素材を多用していた。貼り

方は,頁そのまま→格子状→物の形を並列的に配置す

る構成へと変化が克られた。題は写真そのものであり,

想像力は乏しかった。 #1は食べ物のみであったが,

# 3 (写真 7) ではドラムと楽しそうに湊奏している

人聞が登場した。 #5・#6は食べ物, # 8で再び人

間が現れ, # 10 ~# 12では幼児から成人女性へと変

化した。 #9は8枚の風景写実が使用され,落ち着き

がみられた o # 12 r町にお出かけJ(写真訟は,女

性がパックを持って動きがある写真であり,外(社会)

へと向かう心が感じ取れた。コラージュを好み,感想、

は#1から毎回「楽しかったJ,r面白かったjなど肯

定的なものであった。歌への言及は#7のみであった

が,作品の変化と並行して, # 7 ~# 8の音楽療法活

動で一番前の席に着き,発言が多くなるなどの積極d性

がみられ,行動の変容が現れた。

F氏(作品 11枚)

構成誌,頁そのままを貼り付けたものが多く,#

7・#8を徐き全て 1枚貼りで 題は無題が多かった

(写真 9: # 5) 0 しかし 1枚貼りでiまあるが,写真作

者の意留を反映するように 美意識や構成内容に変化

があるものが貼られているように感じられた。 #7

7おせちのいろいろJ(写真 10) ・#8 r夏の終わりj

では,季節感・構成力が無かったところへ少しの変化

がみられた。当初言葉数誌少なく表情に動きがなか

ったが,音楽療法場面で#5から歌に合わせて指揮す

る,歌を選曲するなど,参加態度に変化が現れ,#

7・#8で法自主的に参加し 一番前に座って発言す

るなど自に見えて穣極性が増した。コラージュ制作後

の感想、法, # 1から毎回「面白かったJr満足したj

f本当iこ面白かったjと書かれ #8では期途に, r満足したjと歌の感想、も書かれていた。

G氏(作品目枚)

選ばれた写真は同一内容(食べ物〉が多かった。構

成は 1枚を除き並列的,槙子状配置で,粗雑さによる

はみ出しが目立った。題は貼られた写真そのものであ

った。#3 (初回作) (写真 11) は動物のイラストで,

f熊と狐,兎jの写真とその左下に少し離して「狸j

の写真が賠られた。「皆と一緒」と惑想が書かれ,心

理的退行と共同作業(畜楽療法)への欲求がみられた。

# 4 r喫茶タイムjでは多くのお菓子と飲み物が貼ら

れ,ここでも皆と一緒の楽しさが感じられた。 #5で

赤ちゃん, # 6 ~# 8では大人の雰毘気を持つ人物が

登場した。これちの変化から「皆との共同作業」が課

題であった G氏の心的成長が惑じられた。食べ物の

多さは,今の欲求の表現かあるいは愛d情欲求と受け取

れた。

#2以降,コラージュ制作後の感想、は「皆と一緒で

楽しかったJ,r音楽の仲間,一番楽しかったjと記入

された。活動後半から 奇楽療法場面で体を揺らして

楽しそうにリズムを取る様子が見られ,自発性が出る

など,音楽療法評語点数は大きく上昇した。コラージ

ュに対して#3で f“ぬりえ"が楽しかったjと言及

し,その後も「面白かったjとの肯定的な感想が書か

れた。

司氏(作品 7校〉

全作品で入聞の写真のみ使用していた。写真は男女

あり,幼児から成熟した女性〈外人女性も〉まで様々

で,入聞の大きさも大小,静動あり 表情も豊かであ

った。歌手が多い。題は写実の人物の様態そのもので

想像力は惑じられなPo # 1では台紙余白量は 50%

だったが, # 3 (写真 12)では 25%に減少した。笑

顔の人間像を大きく結っているものが多く,対人関係

Qd

に1u

ti

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人間と科学 県立広島大学保提福祉学部誌 7(1) 155 -168 2007

への関心が出たように感じられた。註氏はコラージュ

が大好きで,そのために音楽療法にも参加していた。

#3以降, I貼るのが楽しかったJI面白かったJI満足した」というコラージュの感想が書かれたが,その

中には音楽活動の感想、も半分混じっていた。

V 考察

1 音楽療法とコラージュ療法それぞ、れの効果

村井は「音で心が変わり 心次第で音も違う J12)

と,音楽療法における音楽の目的利用を述べている。

今回,我々が実践した音楽療法は,季節の歌・リクエ

ストによる歌の歌唱と合奏〈トーンチャイム,ミュー

ジック・ベル),手話歌でるった。「歌うことの四つの

ストレス解消法J13)に ①歌うことは声を出すこと。

生理的な'快感を得るには 大きな声を出すことが必要

であり,②歌うことには,溜ったものを吐き出す快感

がある。③歌詞によって言えなかったことも言える。

④歌詞には人間の心を感動させる働きがある,と述べ

られているが,実践しての惑想と一致していた。また,

トーンチャイムの音色は不思議に人の心を和ませ,沈

静させる効果があるが 歌唱と合わせてトーンチャイ

ムの音色を挿入したことは,結果4に克られるように,

歌うことの楽しさ 自分の役割を果たして「皆と一緒

にできたjという一体感と喜びが得られ,精神的立喜

びに繋がったことが誰察された。

音楽療法の治療的要因について久保田は, I和やか

な雰由気作り・音楽を通した交流の活性化及び自己決

定の場の提供・発散と昇華・集団活動の有効性・共感

的理解・今ここでの視点J14) などを挙げている G 吾

楽を媒{本として,治療者が全人格的に患者と関わるこ

とが有用であることは,論を待たない。今回の活動で,

我々も改めてそのことを実感した。

また,今回,状態の悪化で,医師から出痛を止めら

れていた B氏は 最終回で品るからと参加して二人

の音楽療法士に,感想用紙 2枚に罷るような文字で気

持ちを綴った。この日のコラージュ作品(写真 5)は,

治療者との別れを情しむ気持ち 惑謝が表現されてい

たO このことは, I音楽がもっカウンセリング的機龍

の上に,患者を不自由さ,悩み,葛藤から解き放ちた

いという,治療者の真撃な治療的態度が椙乗して,他

活動に決して劣らない音楽療法独自の治療性が発揮さ

れるJ15) ことが実践されたと受け取れないだろうか。

コラージュ療法の治療的意義について,岡田ら

(1997) は, I①実施が簡f更であり,しかも遥花、の幅が

広い,②“今,ここで"の治療者の関与した“自由に

して保護された"環境のもとで夢に似た心象過程を

比較的安全に体験ができ,その生成の過程を治療者が

直接観察できるという点 ③接近の難しPJ患者との関

係っくりが円濯になる 多既成の映橡を用いることか

らも,患者の抱える問題が主題fとされやすく,より亘

接的に異体的に表現されて,治療者もその理解が他の

表現療法に比べるとはるかに容易で,⑤コラージュの

持つ表現特性から,“遊び"の要素が大きく,か立り

侵襲性が低いということ。j泌を挙げた O そして,

“遊び"を通して f象徴形成過程を促進させて,彼ら

の脆弱な自我の再生と修復を よち可能とする事に繋

がる oJ 17) とLサ。これらの治療効果は個人心理療法

としてのコラージュ療法で、得られるものである O 今回

は,治療構造は集団であるが作品は各個人が耕作する

という方法のコラージュ療法で、あり,治療よりもレク

リエーション的な関わりが強い分入であった。しかし,

岡田らの挙げる心理的退行・気持ちの解放・直己表現

と美意識の満足といった治療的要因が今回のセッショ

ンでも欝き,制作後の惑想にみられる「楽しかったJ,「面白かったJ,I嬉しかったJ,IまたやりたpJとい

った肯定的感情が得られたと考える O 否定的な感情の

項目を選んだ者は皆無で、あった。

コラージュ療法の導入結果を見るために,対象であ

る8入の患者には それぞれに自擦〈表 1参照)を挙

げた。統合失調症という毘じ診断名であっても,病塑

や発症後の経験年数などの点から患者は多様で、あり,

「対入交流・コミュニケーション能力の向上jといっ

ても求める内容は同じではないからである。コラージ

ュ観察評価スケーんで法,初回と最終回で得点、の上昇

は見られたが,セッションのどの時点、で誰が何を基準

に評定したかなど 今後に大き右課題を残している。

言えることは,治療者が真撃な態度でコラージュを介

して関わることで患者法落ち着き 守られているとい

う安心惑のなかで自己表現し 惑靖の浄化が図られた

ということであろう O 表出された惑情を肯定的に受容

されることで患者の脆弱な自我の成熟が促進され,コ

ミュニケーションや対人関保能力の向上が可能になる

ことが示唆された。

2 音楽療法とコラージュ療法併用で得られた効果

音楽療法とコラージュ療法を併用した活動で患者 8

入に,コラージュ観察評価スケールの言語的コミュニ

ケーション・非言語的コミュニケーション・注意関

心・感情のほぼ全項目で得点の上昇をみた。また,音

楽療法評価表でも得点、が大きく上昇している患者 (G

氏 'H氏〉がいた。対象ごとに目壊の到達度をみて

いくと,症状悪化を繰り返すB氏を除く 7名に,目標

達成や対人関孫面に何らかの成果がみられた(表 1参

照)。但し,これらの評価は,音楽療法やコラージュ

療法といった摂定された場での観察に基づくものであ

り,自常の生活場面での行動変化に言及したものでは

ない。セッションという意図的;こ構成された場面では

あったが,二つの療法を併用した活動が,意欲や穫極

性の向上・対人交流の活性化・注意力や集中力の向

-160-

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人間と科学 県立広島大学保健福祉学部誌 7(1) 155 -168 2007

上・感情の安定などに有効である可能性が示唆され

た。

次iこ,音楽療法がコラージュ療法に及ぼした影響に

ついて考察する。

本研究では 7音楽とコラージュを併用した#3以降,

対象者全員が作品耕作後の感想で コラージュ療法へ

の肯定的評価と共に音楽療法が「楽しかったJr嬉し

かったJr面白かった」と繰り返し述べていた。また,

コラージュ作品の題名や感想に「たのしそうなおかしj

(c氏・#10・写真 6)や fスタイんがたのしそう j

(B氏・#11) などの表現がみられ音楽療法で喚起

された“楽しさ円といった快感の高まりが余韻として

残り,コラージュ療法の場に'11き続いていることが推

察された。さらに初回・ #1から参加した A ・B ・

E'H氏の #3のコラージュ作品は,エネルギーの

高まり(写真 12)や音楽によって惹記されたイメー

ジ(写真 7) ・記憶からの連想が推察されるテーマ

(写真 3) など,音楽が作品に影響したと思われる変

化がみられた。また G氏では コラージュ詐品(写

真 11)に畜楽療法の中で惹起された「皆で一緒の作

業jへの期待と楽しさが表現されていた。 F氏丘病棟

内での反応は乏しく感情表現も少なかったが(作業療

法士の情報),音楽療法の場で発言が増え積極性が出

てくるにつれて,コラージュ作品に構成力や季節感が

出てくるなどの並行した変化(写真 9→写真 10) を

感じた。

以上から,音楽療法の活動で活性化された惑情の余

韻が,コラージュ療法終了後まで消失し立いで残存し,

楽しい気分がコラージュ制作を促進したり,音楽療法

での情絡的体験が作品に投影されるなど,コラージュ

制作に影響を与えていることが推察された。

また,コラージュ療法が音楽療法に対してどのよう

な意味を持つかについて考察する O 例えば, F氏の場

合,音楽療法場面での積極性の発現という行動変化と,

コラージュ作品の変化が並行して現れた。 E氏の作品

では, # 8で子どもから成人女性へと変化し, # 12

「町にお出かけJ(写真 8)で法 外(社会〉への関心

が窺われる表現が現れた。そして #7~#8 から音

楽療法中に積極性が顕著にみられる右どの行動変容が

観察された。このように コラージュ作品にはその入

の内的世界が投影されており 作品を通して音楽療法

場面における患者理解に役立つことが示唆された。継

時的に見ると A'B'E'F.a氏のコラージュ作

品に何らかの心的変化や成長の現われが感じられた

が,これは個人心理療法で得られる治療効果と同質の

ものと思われる O 今回は 音楽療法の後にコラージュ

療法を実施したので その影響は一方向と受け取られ

易いが,全セッションを通してみると,コラージュ制

作での心的変化が吾楽療法場面の行動変化につながる

可能性が示唆され,併用による両療法は,患者の変北

に関して椙互に無関係で、はないと思われたO コラージ

ュ療法が音楽療法に補完的効果,あるいは,両療法を

併用することで椙乗的である可能性が得られた。

各患者の目標で品った対人関係やコミュニケーショ

ン能力の向上は,今回の音楽療法に参加者向士の交流

機会が少なく,吉楽療法評価項目の rf由のメンバーと

の対応jに変化が見られなかったが コラージュ療法

では対人・コミュニケーション能力を発揮しやすかっ

たことが考えられた。音楽療法の評定のみで法対象理

解が充分とは言えないことが判明した。

E.Eえや H氏はコラージュ制作を好み,その参加吾

的で音楽療法にも出席したが 結果的に音楽療法でも

積極性が高まり,音楽療法評価で意欲・注意集中・自

己表現面の肯定的な変北が得られた。その逆で C

氏 'D氏のように吾楽が好きでコラージュ療法に参

加する場合もあった。 2つの療法を併用することは,

患者にとって,これまで参加していなかったレクワエ

ーションへの参加の機会を増やすことに繋がると考え

るO

な 限界と今後の課題

今回の成果は, 1精神痛読で、女性患者 8事関に試み

た研究であり,結果の普遍牲には限界がある。さらに,

音楽療法とコラ一ジユ療法f併井用で化する;にこは研究を重ねる必要がある。また, 1セッシ

ョン 1詩語内に 2つの異なる療法を実施することによ

る患者の負担惑はどうか 音楽療法とコラージュ療法

の内容(方法や所要時間など)についての検討も必要

である。加えて,評価尺度の問題もある O 今毘,コで

ージュ療法評価スケーんと音楽療法評価表の結果で主

が出た事実から,評価尺度の項目構成について十分仁

検討し,各療法場冨に適した尺度の選択と慣用が必要

でるると考える O

百結論

本研究では,以下のことが示唆された。

1 音楽療法・コラージュ療法を併用した活動が,慢

性統合失調症患者の意欲や積極性の向上・対人交流

の活性化・注意力や集中力の向上・感情的安定など

に有効である可能性がある O

2 音楽療法で活性化された感J請や記憧がコラージュ

耕作に影響を与えている可龍性があり,吾楽活動後

にコラージュ耕作を行うことには意義がある O

3 コラージュ療法で、は作品にその人の心的変化が投

影されるので,経続的に関わりながら作品;こ現われ

る変化を読むこ-とは 患者理解に役立つ。

4 二つの療法の併用は 患者のレクリエーションの

選択肢と参加の機会を増やす。

ーiP0

1i

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人間と科学 県立広島大学保薩福祉学部誌 7(1) 155 -168 2007

5 コラージュ療法と音楽療法の併用は栢補的-相乗

的効果の可能性がある。

6 対人関係やコミュニケーション能力を評{面するに

は,今回使用の音楽療法評価表のみでは充分と言

えない。

立証文献

1 )村井靖見.精神科治療における音楽療法をめぐっ

て.東京,音楽乃友社,98,2003

2)熊本庄二郎.交互法的膏楽療法一統合的芸術療法

としての位置づけ日本音楽療法学会誌ラ 5

(1) : 114-125,2005

3 )市村暁子ラ岸本寿男.精神科入院患者に対する音

楽療法-POMSによる換言す一. B本音楽療法学

会誌, 1(1): 60-65,2001

り熊本庄二蕗,小西慶子.統合失語症患者の高音特

性-無伴奏独唱時の議選択から日本音楽療法

学会誌, 4(1): 87-94ラ2004

5 )藤田晶子.精神病院での取り組み-慢性分裂病者

に見られるコラージュ表現杉浦京子,森谷寛

之編.現代のエスプリコラージュ療法.東京,至

文堂, 110-117,1999

6 )関田敦.分裂病者のコラージュ表現について-

「大コラージュボックス法jの臨床的利用一.杉

滞京子,森谷寛之編.現代のエスプワコラージ

ュ療法.東京,至文堂, 118-131, 1999

7 )山本映子.精神看護におけるコラージュ療法一心

のケアへのアプローチ法として臨床著護研究

への進歩 8.東京,医学書院, 68-78,1996

8 )杉浦京子.コラージュ療法基礎的研究と実捺.

東京,JII島書志, 25-31, 1994

9 )森谷寛之.コラージュ療法の実捺.杉浦京子,森

谷寛之編.現弐のエスプリコラージュ療法.東

京,至文堂, 30-31, 1999

10)久保田牧子.精神科頚域における音楽療法ハンド

ブック.東京,吾楽之友社, 58,2003

11)今村友木子.統合失調症者の特徴を探るーコラー

ジュ表現.大阪,創元社, 84-100,2006

12)村井靖児.上掲 1),17-19,2003

13)村井靖児.上掲 1),14,2003

14)久保田牧子.上掲9),29-33, 2003

15)村井靖児.上掲1),30,2003

16)関田敦,河野荘子.コラージュ表現とその治療的

意義について.名古屋造形芸術大学・短期大学紀

要, 3:61-72, 1997

17)関田敦,河野荘子.前掲 16),71, 1997

ヮ“PO

i

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〉潤~H

設協

調片岡加U

汁特荊繭蹴博物川判明開

目標到達度の評価

愚 膏 A B C D E F G H

ADし自立・装惣と気分 ADL自立・牒と欝を繰 ADLIまぼ自立・が日激常し的 ADしlまぽ自立・日常的 ADし自立良岨襟好雑町でなけ 長く在宅で過ごし社会 ADLIまぼ自立圃独舗や ADしほ1;;[自立・欲求コ変動あ 1)・他者とのコ リ還す・働者との交流 !こ幻覚や妄親 !こ約聴あり、時に大声 れば器、知 時に欝 性が乏しい・最近は反 窓笑、安親、あり・精神 ント口一ルできFない'ミュニケーション良好・ あり聞理解力や手先の

でしト他協暫調と性の|こ交欠流けは頑少聞な で祖語"協・いらいらしゃ 傾向"対人関係は穏や 応が乏しく無為に濁ご 状態が悪化すると大声 対が社人関係は積極的だおしゃれ欄多趣昧で音 巧鰍性あり・音楽や創 すい 調性なく他患 かで仲良しの患者仲間 す.ADL低下しOT活動 を発す・コミュニケー 合性に乏しい・お

患者紹介 楽を好む・OT活動は週 作を好む・精神状態悪 い幽物的欲求が強い・ とトラブルあり"…人 あり・力ラオケや編み の委参加も減少・世楽鑑 ション能力あるが円澗 しゃれで音楽を好む・2凹程度、自主的に拳 く、少OなT活い動がの意参徹加鎖度 官楽や創作を好む圃OTで過ごすこと多い・OT物を好む-表OT情活よ動くには 賞を好む

2で~は3な回い表・情OT良活く動集は中週O γ活動は週3間程度、

D日 は 欲的 活動の番加は澗1間程 活動は週3囲程度参加 澗1"-'2問積 他,情患との交流多く袈度で集中 極的!こ参加 して参加 良く委参加

集団の中で白日袈現し 集聞の交中で場がに適応、し 円滑なコミュニケ}ショ 他者とのコミュニケー 自己犠現の体験の中 自己表現の体験の場を 他慣とのコミュニケー 対人関係を円滑にする

目標 コミュニケーション能力 た対人流できる ン能力の向上と対人交 ションが限れる で感情を発散させる 持つ ションが円滑に取れるを向上させる 流をはかる

音楽では、積極的に場 最終回は醜状態にあ 話題や活動に集中し、 強拶や話しかけといっ 音灘やコラージ、ユに自 反応が乏しく無為に過 場の活動に興味や関 活動に対する集中力"面に即した役割がとれ り、作業療法土や音楽 ず同じことを練り返さ た他者への働きかけ 発的に参加するように ごしていたが、笑顔や 心を示し注意が持続す 自発性・積極性が高ま

るようにな、っ他た者。コラ療、者法場へ士在のに盛気より遣く上話いげなしるかど、け

、場に即した発留が はないが、動作や身振なながり、らそ自の然中なで感楽情し表み出

微笑がみられ自然な るようになり、自発性 リ、場に即した感情袈ージ、ユでは への

他る者 気遣見られた。表リ情ラやッjクス りによる袈現が見ら

表制た靖。作音が在楽通出やるしコよてラ積うー極にジ的なュlっz や積極性が高、まが場みっにたら即。れ出ができるようになっ

気配1)が見られ、自ら し闘然な 笑顔が れ、自然な表情や笑蹴 がで苦ていた。それに リラックスし た。拶初や回話よしりか他け者とへしの話しかけるようになっ が見られた。やや話の 見られるようになり、 が見られるようになっ 伴い、動作や身振りに した感情表出 線 lつた。リラックスし場面 まとまりには欠ける 他者に自ら話しかける

情た。がイとラてイもラよはくななくっ表よる表現や笑顔が増 自己表現するようにな た。動作や島振りによ た雷語的コミュニケー

に即した感情喪出が、で が、聞かけには適切に ようになった。円滑な え、他lが者見へらのれ気た配。りや り、活動性者が増に加した。 る表現や笑顔がみら ションあり、非雷語的

きていたが。ら他多者や場閉 応答していた。過して コミュニケーションとま た。このような非曾輯 思し また 加えて、他 結しか れ、他者!こ操f~をする コミュニケーションが芝

評価 を見な 集が団の中で イライラは見られず ではいかないが、曲者 的コミュニケーションは 的者への挟拶や話し けるなど対人関係での ようになった。非雷語 しかったが、動作やの自己表現で菅てお 場面に即した感情表出 との交流は増え、その 他者とのコミュニケー かけもするようにな 変化がみられた。対目標 的コミュニケーションは 居振りによる表現やリ、コミュニケ…ション ができていた。集団の 場に即した言動がとれ ションの前段階として り、対人関係での積極 達成し、副次的に人 他者とのコミュ二ケー 笑顔がよく見られる能力の向上につながっ

中で場に適交がし、流た他行がの動少患はなるようはになったので 必要な嬰棄であり、目 性が出てきた。目標は 関係での改警もみられ ションを円滑にする為 ようになった。非雷語

ていくと考える。 取れていた 目標達成と考える。 標に向かつて前進して 達成し、対人関保での たと考える。 に必要な袈素セある。 的コミュニケーションは者との対人 いると考える。 密化もあったと帯え 非言語的コミュニケー 対人関係を円滑にすかった。眠状態の影響 る。 ションの増加から目標 る為に欠かせない喪があるため、この結果 達成に向かつて成果が 素であり、みられる変から目標の連成度は あったと唱える。 化から閏標達成に向評価できない。 かつて成果があったと

考える。

表 1

1-' σ3 w

)

訪問

lMgNOO吋

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〉溜作設特

x:不参加0:参加(#)参加状況患者のセッション表 2

# 12 (併用)

# 11 (併用)

#10 (併用)

#9 {併用)

#8 (併用)

#7 (併用)

#6 (併用)

#5 (併用)

#4 (併用)

#3 (併用)

#2 (音楽のみ)

# 1 (コラージユのみ)

セッション

狙同日脚片山仲荊滞蹴世庁特掛川郡

患者名

O O X O O X × X O O O O A

O O O O O X O O O O O O B

O O O O × O × O O O O × c 音楽のみ

O 音楽のみ

O 音楽のみ

O 音楽のみ

O 音楽のみ

O 音楽のみ

O O O O O O × D

O O O O O O O O O O O O E

O O O O O O O O O O O O F

(

)

O O O O O O O O O O O × G

O O X コラージュのみ

O × O X X O O O O H

目印

iHgNOO吋

音楽療法評価袈による評価の初回と最終回の比較

患者名

D

のと一品b闇

パ制一44一1122一222244一2211圃幻ね

ンヌ圃メ他役割取得

24一14一22一22…44一23一23711宍43

体験の表出

-吋,I

a斗

11一44一44一11一34Z・4一13一24--23

の方

般み

全組一

44一44一43一43一34一44一34一34一日

ω

勤り

活取

視線の向け方

44一44一44一44…44一4424一34一日4

腹開の取り方

44一44一44一22一24一44-2454引4

田経四点回終一聞紙川間終一回

H凹終面終一回終

初回取初最初最初盟初回蹴一初岡県初最一初最一初最

院均

川山平一部

rLサ/

評価項目

表3-M宏|

A

G

C

H

E

F

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人間と科学 県立広島大学課健福祉学部誌 7(1) 155 -168 2007

表4 コラージ、ユ観察評価スケー)vによる評価の初呂と最終Eの比較

評{面項自コミュ言ニ語ケー的ション コミュ非ニ言ケ語ー的ション

注意・関心 感寵患者名

A 初E 3 4 5 3 最終回 5 5 5 5

B 初毘 2 3 3 2 最終呂 3 4 5 4

ε 初終昌 、2 4 2

最回 4 4 5 5

D 初酉 G 5 4 最終回 G 4 5 5

E 初自 2 4 3 最終回 5 5 5 5

F 初邑 3 3 5 5 最終回 4 5 5 5

G 初E G 3 3 最終呂 4 5 5

H 初毘 5 O 5 3 最終回 5 3 5 5

Dを除いた 初E 2.3 2 4.1 3 7名の平均 最終回 3.9 4.3 5 4.9

@

⑥ 号座席の取り方

e視線の向け方

③活動全般の取り組み方

④体験の表出

金役割取得

⑤ 他メンバーとの対応

・ー初回

--+-ー最終回

国 1 積神科の音楽療法評価表得点(平均)比較 N=7

5

g 初回

襲撃最終回

4

3

2

O 言語釣コミュニケーシヨン 非言語的コミュニケーシヨン 注意関心 惑?奮

菌 2 コラージ、ユ観察評価スケール得点(平均)比較 N=7

5

po --

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人関と科学 県立広島大学保健福祉学部誌 7(1) 155 -168 2007

写真 1 r美への追求J A氏 写真 2 r良い眺めJ Aま

写真3 rブーケJ B氏 写真4 r男女仲よくJ B氏

写真 5 rラブレターJ B氏 写真6 rたのしそうなおかしですJ C氏

円。ρ0

1i

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人間と科学 県立広島大学保健語祉学部誌 7(1) 155 -168 2007

写藁7 rドラムJ E氏

写真9 無題 F氏

写真 11 無題 G氏

写莫8 r町にお出かけJ E氏

写真 10rおせちのいろいろJ F氏

写真 12r蔀はるみJ H氏

tnhv

i

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Humanity and Science Journal ofthe Faculty ofHealth and Welfare, Prefecturalじniver・sityofHiroshima 7 (1) 155 -168 2007

The Effects of Using Collage Therapy and Music Therapy Together

for Chronic SchizophreniεPatients

EikoYA話AMOTO牢1 Hozumi KIJIMA牢2 Yumiko YOSHIOKA牢2 Namiko班IYAMOTOη

* 1 Department of Nursing, Faculty of Health and Welfare,

Prefectural University of Hiroshima

*2五!lihara五!lusicTherapy Society

Received 12 September 2006

Accepted 12 December 2006

Abstract

This artic1e investigates the combined use of music therapy and collage therapy for chronic schizophrenic patients. The

purpose was to assess each therapy and examine the effects of using them together.

The subjects of the study were eight patients in an open ward for women in a mental hospital in the central part of

Prefecture A. All the subjects participated freely in the therapy and gave their consent to cooperating with this study.

Twelve sessions were held for one hour, twice a month. Changes in the subjects were evaluated using the Music Therapy

Assessment scale for psychiatric patients, the Collage Observation Assessment scale, and the overall impression of the eva1-

uators. Results indicated that the combination of music therapy and collage therapy could have synergistic and complemen-

tary effects for chronic schizophrenic patients with communication disorders.

Key wo rds : schizophrenia, music therapy, collage therapy, effect of using together

-168-