筋骨格系と柔軟な皮膚触覚センサを持つ乳児型ロボットのずりばい運動...

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大学大学院 マルチメディア 学位 26 2 14 筋骨格系と柔軟な皮膚触覚センサを持つ乳児型ロボットのずりばい運動学習 (ヒューマンインタフェース ) 1 はじめに ロボットに ように らか きをさせるひ して, し,ロボット して学 させるこ えられる. って獲 されていくが,そ ある ある いえる. あり,こ インタラクション を変 させ, に影 えている えられる.それゆえ, ロボティクス メカニズムを するために, に多 ロボットが され,さまざま モデルが されてきた. ずり い運 における インタラクション すこ してい る.まず, ロボット Pneuborn-7III する ける し,こ センサデータを するこ るこ を確 した. に, 覚センサを した によってロボットにずり わせ,学 センサデータを した. 2 柔軟な皮膚触覚センサを用いた動作判別 Time [s] 0 1 2 すりつけ せず みを Time [s] 0 1 2 ふりおろし かす Time [s] 0 1 2 ずり りおろし, に引き せ, げる 1: ロボット Pneuborn-7III わせた する ロボット Pneuborn-7II I 覚センサを けた.こ 1 3 わせた. 1 が, せず みを ある. から かして をこすりつけている. 1 央が, かす ある. い, にたたきつけている. 1 りおろし, に引き せ, げる ある. める, させる, めつつ させる, いう きを っている.ロボット 体幹 にこすりつけ られるこ る. これら けた センサデータを, [1] した.センサデータを CHLAC によって し,グラフにした 2 ある.3 確に された.ここから, から られる いうこ された. 2: 2 によって された各 1 CHLAC 3 柔軟な皮膚触覚センサを装着した状態での ずりばい運動学習 ロボットに 覚センサを した ,ずり い運 を学 させた.学 するパラメータ ,右 ,体幹 ,右 を引き こす ,これら 4 ある.パラメータ ,ロボット けられたカメラ う.カメラ める を運 り, これを する. 3 ように,ロボットにパラメータを れて した えるほ がっており, いるこ かる.またこ き, しているセンサ センサ 大きく ってお り, がより するよう パラメータが獲 されて いる いえる. 3: ずり い運 むにつれ 大が していった. 参考文献 [1] , , , . ンダクタを いた 覚センサ. (), Vol. Vol.76, No.766, pp. pp.1476–1482, 2010.

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Page 1: 筋骨格系と柔軟な皮膚触覚センサを持つ乳児型ロボットのずりばい運動 … · よって駆動するヒト型ロボットアームが研究されている.し

大阪大学大学院情報科学研究科 マルチメディア工学専攻 博士前期課程修士学位論文発表会資料 平成 26 年 2 月 14 日

筋骨格系と柔軟な皮膚触覚センサを持つ乳児型ロボットのずりばい運動学習

石原 慎也 (ヒューマンインタフェース工学講座)

1 はじめにロボットに人間のように複雑で滑らかな動きをさせるひと

つの方法として,人間の動作獲得の過程を解明し,ロボットに適用して学習させることが考えられる.人間の運動能力や認知能力は自身の身体の成長に伴って獲得されていくが,その初期である乳児期の発達は特に重要であるといえる.乳児の身体は成人と比べて未熟であり,このことが乳児と周囲の環境とのインタラクションの質を変化させ,発達に影響を与えていると考えられる.それゆえ,認知発達ロボティクスでは,乳児の発達メカニズムを解明するために,今日までに多くの乳児型ロボットが開発され,さまざまな発達モデルが検証されてきた.本研究では,乳児のずりばい運動の獲得過程における地面

とのインタラクションの重要性を示すことを目的としている.まず,筋骨格系乳児型ロボット Pneuborn-7IIIが四つ這いの姿勢で運動する際に両腕が受ける触覚刺激を計測し,このセンサデータを統計的に処理することで動作の判別が行えることを確認した.次に,柔軟な皮膚触覚センサを装着した状態で,機械学習によってロボットにずりばい動作学習を行わせ,学習中のセンサデータを観察した.

2 柔軟な皮膚触覚センサを用いた動作判別

Time [s]0 1 2

肩屈曲筋

肩伸展筋

肘屈曲筋

肘伸展筋

緊張

弛緩

緊張

弛緩

緊張

弛緩

緊張

弛緩

すりつけ動作:

肘を駆動せず

肩関節の屈伸

のみを行う

Time [s]0 1 2

肩屈曲筋

肩伸展筋

肘屈曲筋

肘伸展筋

緊張

弛緩

緊張

弛緩

緊張

弛緩

緊張

弛緩

ふりおろし

動作:

肘を伸ばし

上下に動かす

Time [s]0 1 2

肩屈曲筋

肩伸展筋

肘屈曲筋

肘伸展筋

緊張

弛緩

緊張

弛緩

緊張

弛緩

緊張

弛緩

ずりばい動作:

腕を振りおろし,

内側に引き寄せ,

持ち上げる

図 1: 乳児型ロボット Pneuborn-7IIIに行わせた動作

本研究で使用する筋骨格系乳児型ロボット Pneuborn-7II

Iに柔軟な皮膚触覚センサを取り付けた.この状態で図 1の3つの周期動作を行わせた.図 1左が,肘を駆動せず肩関節の屈伸のみを行う動作である.腕を肩から手先方向へ交互に動かして腕をこすりつけている.図 1中央が,肘を伸ばし上下に動かす動作である.肘の伸展と肩の伸展を交互に行い,腕を地面にたたきつけている.図 1右は腕を振りおろし,内側に引き寄せ,持ち上げる動作である.肘関節を固める,肩を屈曲させる,肘関節を緩めつつ肩を伸展させる,という動きを順に行っている.ロボットの腕は体幹方向にこすりつけられることになる.これらの動作中に皮膚が受けた刺激のセンサデータを,南

里らの手法 [1]をもとに解析した.センサデータを CHLAC

特徴と主成分分析によって解析し,グラフにしたものが図 2

である.3つの動作は明確に区別された.ここから,皮膚への刺激から豊富な情報が得られるということが示された.

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図 2: 2 つの指標によって分類された各動作 1 周期の平均

CHLAC特徴量

3 柔軟な皮膚触覚センサを装着した状態でのずりばい運動学習

乳児型ロボットに柔軟な皮膚触覚センサを装着した状態で,ずりばい運動を学習させた.学習するパラメータは左腕の屈曲伸展,右腕の屈曲伸展,体幹の左回転,右回転を引き起こす筋,これら 4つの筋の位相である.パラメータの評価は,ロボットの顔面に取り付けられたカメラで行う.カメラ画像内で目標物が占める画素数を運動前と後で差分をとり,これを評価値とする.結果,図 3のように,ロボットにパラメータを入れて評

価した回数が増えるほど,評価値の最大値が上がっており,学習が進んでいることが分かる.またこのとき,皮膚内で反応しているセンサの数とセンサ出力の変化も大きくなっており,腕がより地面と接触するようなパラメータが獲得されているといえる.

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図 3: ずりばい運動学習の結果

学習が進むにつれ評価値の最大が増加していった.

参考文献[1] 中本裕之,伍賀正典,武縄悟,貴田恭旭. 磁気抵抗素子とインダクタを用いた磁気式触覚センサ. 日本機械学会論文集 (C編), Vol. Vol.76, No.766, pp. pp.1476–1482, 2010.

Page 2: 筋骨格系と柔軟な皮膚触覚センサを持つ乳児型ロボットのずりばい運動 … · よって駆動するヒト型ロボットアームが研究されている.し

大阪大学大学院情報科学研究科 マルチメディア工学専攻 博士前期課程修士学位論文発表会資料 平成 26 年 2 月 14 日

ヒト型人工筋駆動ロボットアームの直接教示

栢野 裕次 (ヒューマンインタフェース工学講座)

1 はじめにヒトは,複雑な身体を巧みに操り,精密な動作を適応的に

実現することができる.ロボット開発における目標の1つは,このような動作をロボットで実現することである.ヒト型の運動には,非線形な筋,筋の拮抗配置や二関節筋といった,ヒトの持つ筋骨格構造そのものが,大きな影響を与えていると考えられている.そこで,生体筋と類似した人工筋によって駆動するヒト型ロボットアームが研究されている.しかし,ヒト型アームはモデル化困難な複雑な構造をしているため,運動生成が難しい.これまでに発表者は,直接教示手法を用いた運動生成方法を提案した.しかし,教示時の圧力が一定であるため,過大な張力や筋の緩みが発生し,運動を教えられない場合があるといった問題点があった.そこで,本研究では,これまでに提案した教示手法に対し

て,弾性係数に基づき,運動教示時の圧力を変化させる手法を提案する.最後に,弾性係数に基づき圧力を変化させる手法と,圧力を一定制御する手法による直接教示を,構造が異なる複数のヒト型人工筋駆動ロボットアームに対して行なう.実機実験を通して,制御手法による再現精度の向上を実証する.

2 直接教示直接教示とは,図 1に示すように,教示者がアームを動か

すことによって,アームに任意の運動を獲得させる手法である.アームを構成する各筋の長さが再現されていれば,アームの動き全体を再現することができる.ヒト型アームでは,筋が骨格に巻き付くように設置されており,関節には複数の筋が取り付けられている.このため,長さセンサを搭載することは難しい.直接教示は,計測できない長さの代わりに,筋モデルから,教示時と再生時の圧力と張力の関係を等しくすることで,運動を生成する.筋毎の状態を制御するため,拮抗筋配置や二関節筋を有するヒト型アームにも適用可能である.

図 1: 直接教示とは

3 弾性係数に基づく圧力制御手法これまでの手法における問題点は,教示時の圧力が一定で

あるために,過大な張力や筋の緩みが発生し,教示時と再生時の圧力と張力の関係を保つことができなくなることにあった.そこで,教示時に筋の圧力を運動に合わせて変化する手法を提案する.提案手法は,筋の弾性係数を一定にするように,筋を制御

する.弾性係数が一定であれば,長さと張力には,正比例の関係が保たれる.つまり,計測困難な長さの変化を,計測可能な張力の変化として捉えることができる.弾性係数を一定にする制御式は,初期状態の圧力と張力を F0, P0,再生時の

図 2: 圧力一定手法と圧力変化手法

圧力と張力を Ft, Pt,測定困難人工筋固有の要素をKcとおくと以下の式で表される.

FoPo +KcPo2 = FtPt +KcPt

2 (1)

この式を用いることにより,教示時の弾性係数を,初期状態の弾性係数に保つことができる.また,運動再生時の制御手法は,これまでと同様の手法である.

4 ヒト型ロボットアームへの直接教示提案手法によって,ヒト型人工筋駆動ロボットアームの運

動生成が可能であること,圧力一定制御手法と比べて,運動再現精度が向上することを実証するために,ヒト型の特徴を備えた人工筋駆動の1自由度,2自由度アームを製作した.製作した2自由度アームに対して,初期圧力や教示運動を変えながら,20回の教示実験を行った.測定された関節の角度センサ値から,アーム先端位置の時系列データを算出し,その平均二乗誤差をとった結果を図 3に示す.

図 3: 2手法の平均二乗誤差

結果より,圧力を変化させた手法の方が,再現精度が高いことが分かる.また,2手法の再現精度には差がないとして,有意水準 5%で t検定を行った.p値は 0.53%であり,2つの手法には有意差が存在することが確認された.

5 おわりに本研究では,ヒト型人工筋駆動アームの直接教示におい

て,弾性係数に基づき圧力を変化させる手法を提案した.有効性を検証するために,人工筋駆動アームを製作し,実機実験を通して,提案手法の有効性を検証した.

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大阪大学大学院情報科学研究科 マルチメディア工学専攻 博士前期過程修士学位論文発表会資料 平成 26 年 2 月 14 日

図2:提案システムのアーキテクチャ

図1:歩行者シミュレーションの要素

歩行者シミュレーションに基づくサービスロボットに対する妨害行動の回避システムに関する研究 末廣 芳隆(マルチメディアエージェント講座)

1. はじめに 日常の場における人とロボットの相互作用について,ショ

ッピングモールでサービスするロボットの研究が近年探索的になされている.訪れた人々は,ロボットの存在によって好奇心が刺激され,ロボットの周りに集まりコミュニケーションを試みるが,ときどき執拗にロボットのサービスを妨害することがある.このため,効率的にサービスするためには,サービスの最中に状況に応じて妨害を回避するなどの対策が必要である.

本研究では,歩行者シミュレーションに基づいて将来の妨害行動を予測し,事前に回避するシステムを提案する.また,妨害行動を予測するために,妨害行動の度合いをモデル化する.

2. 妨害行動のモデル化 妨害行動のデータを収集するためにショッピングモール

ATC(大阪南港)でソーシャルロボット Robovie に環境内を移動させる実験をし,環境内に複数配置したカメラと距離画像センサによってビデオ映像と 2 次元平面の人位置データを取得する. 妨害行動をしている人をビデオ映像からコーディングしたところ,すべての妨害行動は子供によって引き起こされていることが明らかになった.妨害行動に影響を与えていそうな要因(同時に妨害している他の子供の人数 child,ロボットのそばにいる時間(秒)interact,親が近くにいるか,その場所での歩行者の流量)と,コーディング結果を基にフィッティングし,影響が小さい要因を排除した結果から,ある子供 c による時刻 t での妨害行動の度合いを以下の式で算出する.

( ) ( ( ( )))(1)

次に,式(1)を用いて歩行者シミュレーション上で,妨害行動の度合いが再現されているかどうかを確認する.図1に歩行者シミュレーションで歩行者の移動を再現するための要素を示す.歩行者エージェントは,統計的に出現場所,出現頻度,グループの構成人数,グループ内の子供の割合に従って出現し,好まれる歩行速度で,サブゴールを経由してゴールを目指して移動する.移動の途中でロボットを視認できる距離に到達した場合,統計的なロボットに近づく人の割合,時間でロボットに近づく.ロボットエージェントへの妨害行動の度合いは,毎ステップごとに算出され,ロボットの移動速度を決定する変数として用い,速度低下の要因として表す.

シミュレーション内の各パラメータ(出現場所など)を前述のデータ収集実験の統計データに合わせてシミュレーションを実行し,妨害行動の度合いを式(1)から算出したところ,コーディング結果の妨害行動発生率とは標準誤差以内の誤差であった.

3. 妨害行動の回避システム 図1に提案するシステムのアーキテクチャを示す.このシ

ステムの主要モジュールはシミュレーションに基づいた行動プランニングである.このモジュールでは,人の位置計測,ロボットの位置計測,人の属性判定によって得られた現在の環境の状態と,事前に取得した歩行者の統計データを基に,ロボットが様々な行動を選択した時の,現在から 60 秒後までの状況をシミュレートする.それぞれのシミュレーションでのロボット

の平均移動速度を算出し比較して,最も移動効率が良い行動を次の行動として選択する.最後に Robot behavior モジュールで選択した行動を実行する.

4. 評価 対比手法:最も距離が遠い地点を次の目的地とする. 評価値:ロボットの平均移動速度,妨害度合いの平均

提案手法 対比手法

平均移動速度[mm/s] 273 243

平均妨害度合い 0.063 0.1354

5. 考察 本システムは,ロボットの移動に関してのみを対象として

いるが,将来的には,会話など違うタスクを扱う状況を考慮するべきである.そのためには,少なくとも状況に応じてパラメータ(ロボットと相互作用する時間など)を調整する必要がある.また状況が異なれば,人の位置情報だけでなく,暴力などのような妨害行動を直接的に観測する必要がある.また妨害の回避の方法として,場所を移動することを扱ったが,別の方法として,妨害が起こったら,警備員を呼ぶなどもあり得る.

妨害に対処する方法として,強い言葉で警告する,迷惑だということを感情で表現する,丁寧な口調で頼むなど,回避するのではなく克服する方法を実験的にいろいろと試したがどれもうまくいかなかった.また十分な配慮のもと,無理やり押しのける行動を試したところ,一度は妨害を止めるが,ロボットよりも自分たちの方が強いと分かると,ロボットを押し返すようになりまた妨害行動をとった.このように力で打ち負かすのは社会に受け入れられないと考えられる.そのため,ロボットがその状況を克服することは簡単ではない.

6. おわりに ショッピングモールでロボットが人々から受ける妨害行動

を回避するシステムを構築し,その効果を確認した.今後は,本システムを用いてフィールド実験し評価する予定である.