低体温療法時における薬物動態の変化と その変動要因の解明 ·...

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- 1 - 低体温療法時における薬物動態の変化と その変動要因の解明 薬剤学講座 (薬剤学研究室) 岡崎 円香 ―目次― 緒言 2 実験方法 4 (1)動物実験 4 (2)モデル薬物の定量 5 (3)速度論的解析 6 (4)統計学的処理 8 結果および考察 9 Ⅰ 低体温時と正常体温時における phenolsulfonphthalein 体内動態の比較 9 Ⅱ Phenolsulfonphthalein の体内動態に対する投与量の影響 15 Ⅲ 低体温時における FITC-dextran 体内動態の変動 19 Ⅳ 低体温時における indocyanine green 体内動態の変動 22 結論 26 謝辞 27 引用文献 28

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低体温療法時における薬物動態の変化と

その変動要因の解明

薬剤学講座 (薬剤学研究室) 岡崎 円香

―目次― 緒言 2

実験方法 4

(1)動物実験 4

(2)モデル薬物の定量 5

(3)速度論的解析 6

(4)統計学的処理 8

結果および考察 9

Ⅰ 低体温時と正常体温時における phenolsulfonphthalein

体内動態の比較 9

Ⅱ Phenolsulfonphthalein の体内動態に対する投与量の影響 15

Ⅲ 低体温時における FITC-dextran 体内動態の変動 19

Ⅳ 低体温時における indocyanine green 体内動態の変動 22

結論 26 謝辞 27 引用文献 28

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緒 言

脳は高度な精神活動を営み、呼吸や循環などの基本的な生命維持に必要な働

きを統合する重要な臓器である。そのため、脳重量は体重の 2 %に過ぎないに

もかかわらず、心拍出量の約 16 %の循環血量を受け、全身の約 20 %の酸素と

65 %のブドウ糖を消費している(1)。極めてエネルギー需要の大きい神経細胞

は、酸素とブドウ糖の供給源としてだけでなく、生成した代謝物や熱を運び去

る冷却水としての機能を循環血液に全面的に依存している。

脳梗塞、頭部外傷、心筋梗塞などの疾患により頭部の虚血が起こると、神経

細胞機能障害や細胞死に至り、痴呆、知覚障害、半身不随などの後遺症が残る

場合が多い。虚血による神経細胞死のメカニズムとしては、虚血時に神経細胞

から過剰に遊離されるグルタミン酸による細胞死へのカスケードや、循環不全

によるエネルギー障害、フリーラジカルの発生などの関与が明らかとなってい

る(2, 3)。

そこで、虚血による神経細胞機能障害や細胞死に対する治療薬剤として、

1990 年代にはグルタミン酸受容体拮抗作用や遊離阻害作用を持つ薬剤の開発が

行われた。しかしながら、虚血時に神経細胞外に蓄積するグルタミン酸濃度が

高いために大量投与を余儀なくされ、またこれらの薬剤の多くは有機アニオン

系薬剤であるため、腎臓において重篤な障害を招く結果となった(4)。一方、

Busto らはラットの体温を 33 C 前後に低下させることで、虚血による神経細胞

機能障害や細胞死を防ぐことができることを 1989 年に報告した(5)。その後

1990 年代前半には、低体温療法が脳蘇生、頭部外傷、脳虚血においても有用で

あることがラット、イヌ、ヒトにおいても示された(6-11)。薬剤開発の失敗お

よび低体温療法の有用性の実証を受けて、1990 年代後半になり低体温療法のヒ

トへの本格的な適応が開始された。

しかしながら、低体温療法においては、不整脈、感染症、血液凝固異常など

の副作用が起こることがある(12-14)。これらの問題点を解決するために、抗

不整脈薬や抗生物質などが投与されているものの(15)、その投与は正常体温

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時と同じスケジュールに沿って行われているのが現状である。低体温時には、

生理学的、生化学的な変化が起こっていることが十分に予想される。低体温療

法時におけるフェニトイン血中濃度の上昇(16)など、薬物体内動態が変化す

る可能性を示唆した報告もあり(17-19)、薬物体内動態の変動に起因する副作

用発現の可能性を十分に把握する必要がある。

そこで本研究では、低体温療法時における薬物の適正使用のための基礎的指

針を得ることを目的として、体表面から冷却することで体温を 32 C に維持した

低体温ラットを作製し、排泄過程の異なるモデル薬物の体内動態を低体温ラッ

トと正常体温ラットにおいて比較し、低体温療法時における薬物体内動態の変

化とその変動要因の解明について検討した。

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実験方法

(1) 動物実験

Wistar 系雄性ラット(270~300 g)を用い、飼育中は水および飼料(固型飼

料 MF; オリエンタル酵母工業)を自由に与えた

Sodium pentobarbital 麻酔下(50 mg/kg i.p.)、低体温ラットについては、保冷

剤を用いて体表面から冷却することで、体温を 32 C まで低下させ、実験終了

時まで維持した。正常体温ラットでは heat lamp を照射し、実験終了時まで 37

C を維持した。

ラットの左大腿部動脈にヘパリン(ノボ・ノルディスク A/S)を満たした血

液採取用ポリエチレンチューブ(内径 0.5 mm, 外径 0.8 mm; Dural Plastics)を

挿入した。また、腹部正中線にそって約 3 cm 開腹し、胆管にポリエチレンチ

ューブ(内径 0.28 mm, 外径 0.61 mm; Becton Dickinson & Co.)を挿入した。な

お、体温の測定は直腸に体温計を約 4 cm 挿入して行った。

Phenolsulfonphthalein、Fluorescein isothiocyanate-dextran、および Indocyanine

green をそれぞれ等張リン酸緩衝液(pH 7.4)、PBS(pH 7.4 等張リン酸緩衝

液:生理食塩水=1:1, v/v)あるいは注射用蒸留水に溶解させた。その後、26G

1/2”の針付きシリンジ(日本メディカル・サプライ)を用いて、薬液(0.1

ml)を頚静脈より瞬時に投与した。薬物投与直後より、血液および胆汁を経時

的に採取し、実験終了時に膀胱より尿を採取した。血液サンプルは採取後直ち

に 15,000 rpm で 5 分間遠心(M-15-3; 佐久間製作所)し、上清部分の血漿を採

取し定量に供した。

今回用いた薬物、略称、分子量および投与量を以下に示している。

・Phenolsulfonphthalein(PSP, Mw 354; ナカライテスク)5, 10, 20 mg/ml 0.1 ml

・Fluorescein isothiocyanate-dextran(FD-4, Mw 4,400; Sigma)10 mg/ml 0.1 ml

・Indocyanine green(ICG, Mw 775; 第一製薬)2, 10, 20 mg/ml 0.1 ml

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(2) モデル薬物の定量

• PSP

PSP の定量は Hart と Schanker らの方法(20)に従って行った。血漿中 PSP

の未変化体濃度は、血漿サンプル 0.1 ml に 1 M NaOH 2 ml を加え、560 nm にお

ける吸光度を測定し(紫外可視分光光度計 UV-1600; 島津製作所)、算出した。

胆汁サンプルについては、生理食塩水を用いて適宜希釈し、その 0.1 ml に 2 ml

の生理食塩水を加えて、未変化体の定量用に 1 ml を分取し、残りをグルクロン

酸抱合代謝物定量用とした。未変化体定量用のサンプル 1 ml に 1 M NaOH 3 ml

を加え 560 nm における吸光度を測定し、PSP の胆汁中未変化体濃度を算出し

た。抱合代謝物定量用のサンプルに 2 M HCl 1 ml を加え、30 分間沸騰水浴中で

加水分解させて未変化体にした。加水分解したサンプル 1 ml を分取し、1 M

NaOH 3 ml を加え 560 nm における吸光度を測定し、PSP の総濃度(未変化体+

抱合代謝物)を算出した。得られた総濃度から未変化体濃度を差し引いて、

PSP のグルクロン酸抱合代謝物濃度とした。尿のサンプルについては、生理食

塩水で適宜希釈し、胆汁と同様の操作を行い、PSP の未変化体およびグルクロ

ン酸抱合代謝物濃度を算出した。

• FD-4

FD-4 の定量は Kurtzhals らの方法(21)を参考にして行った。血漿および尿

サンプルは、PBS を用いて希釈し、その 0.1 ml に PBS 2 ml を加え、励起波長

489 nm、蛍光波長 515 nm における蛍光強度を測定し(分光蛍光光度計 RF-

1500; 島津製作所)、FD-4 の濃度を算出した。

• ICG

ICG の定量は、今回使用したジアノグリーン注(インドシアニングリーン注;

第一製薬)の添付文書および Kimura らの方法(22)を参考にして行った。血

漿サンプルは、0.1 %(w/v)BSA 含有生理食塩水を用いて希釈し、805 nm にお

ける吸光度を測定し(紫外可視分光光度計 UV-1600; 島津製作所)、ICG の濃

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度を算出した。胆汁については、3,000 rpm で 5 分間冷却遠心後、沈殿物を除い

た上清部分について血漿サンプルと同様の操作を行い、ICG の濃度を算出した。

(3) 速度論的解析

• モーメント解析

PSP、FD-4 および ICG の静脈内投与後の血漿中濃度-時間曲線を以下の式<

Eq. 1, 2>に従ってモーメント解析した。

0 pp dtCAUC <Eq. 1>

p0 pp AUC/dtCtMRT

<Eq. 2>

ここで、t は時間(min)、Cp は血漿中濃度(µg/ml)であり、AUCp は血漿中

濃度-時間曲線下面積(µg/mlmin)、MRTp は平均滞留時間(min)である。

また、PSP、ICG の胆汁中排泄速度-時間曲線を以下の式<Eq. 3, 4>に従っ

てモーメント解析した。

dt /dtdXAUC0

bb

<Eq. 3>

b0 bb AUC/dt/dtdXtMRT

<Eq. 4>

ここで、dXb/dt は胆汁中排泄速度(µg/min)であり、AUCb は胆汁中排泄速度

-時間曲線下面積(µg)、MRTb は平均胆汁中排泄時間(min)である。PSP に

ついては、未変化体(AUCb,f, MRTb,f)と代謝物(AUCb,m, MRTb,m)のそれぞれ

についてモーメントパラメータを算出した。

モーメントパラメータは Yamaoka らの方法(23)に従い、terminal phase 以前

の測定点に対しては、台形公式を適用し、terminal phase に相当する部分に対し

ては、最小二乗法によって一次速度式にあてはめた後、無限時間までの値を算

出した。

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• コンパートメントモデル解析

PSP、FD-4 静脈内投与後の血漿中濃度-時間曲線に対しては、2-コンパー

トメントモデルに基づき、非線形最小二乗法プログラム MULTI(24)を用い、

以下の式<Eq. 5, 6, 7>に当てはめて速度論的パラメータを算出した。

t-21

t-21

cp e-KeK

V

DC

<Eq. 5>

el2112 KKK <Eq. 6>

el21 KK <Eq. 7>

ここで、t は時間(min)、D は投与量(µg)、Cp は血漿中濃度(µg/ml)、K12、

K21 はコンパートメント間の移動を表す一次速度定数(min-1)、Kel は消失速度

定数(min-1)、Vcは体循環コンパートメントの分布容積(ml)である。なお、

、は式<Eq. 6, 7>を満たす複合速度定数(min-1)である。

• クリアランスによる解析

肝臓あるいは腎臓における薬物処理能力を、組織クリアランスの概念に基づ

いて評価するため、PSP、FD-4、ICG の胆汁排泄クリアランス(CLb)を式<

Eq. 8>より、代謝クリアランス(CLm)を式<Eq. 9>より、尿中排泄クリアラ

ンス(CLr)を式<Eq. 10>よりそれぞれ算出した。

finitep,

bb AUC

XCL <Eq. 7>

finitep,

mm

AUC

XCL <Eq. 8>

finitep,

rr AUC

XCL <Eq. 9>

ここで、Xb、Xm、Xrはそれぞれ静脈内投与後 4 時間までの胆汁中総排泄量

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(µg)、代謝総排泄量(µg)および尿中総排泄量(µg)を表し、AUCp,finiteは投

与後 4 時間までの血漿中濃度-時間曲線下面積(µg/mlmin)である。

(4) 統計学的処理

動物実験はいずれも 4 例以上行い、平均値および標準誤差を算出した。有意

差検定は、Student t-test(unpaired)を用いて行った。その際、p 値が 0.05 以下

の場合に有意差があるものとみなした。

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結果および考察

Ⅰ 低体温時と正常体温時における

phenolsulfonphthalein 体内動態の比較

低体温療法時には、不整脈や感染症などの副作用を防ぐ目的で、様々な薬物

の投与が行われている。しかし、低体温時の薬物動態について、これまで系統

的に検討されていないために、低体温療法を施行されている患者に対しても、

正常体温時と同じ一般的な投与スケジュールに沿って薬物が投与されているの

が現状である。

したがって、低体温時の薬物動態が明らかになり、適正な薬物投与が可能と

なることで、低体温療法に伴なう副作用を低減できると考えられる。そこで本

章では、体温低下による薬物動態の変化を検討するために、モデル薬物として

PSP を選択し、正常体温時(37 C)および低体温時(32 C)における PSP の

体内動態を比較した。

モデル薬物として選択した PSP は、臨床において腎機能検査薬として用いら

れている。ラットにおいては、尿細管分泌による排泄と(25)、肝臓で代謝さ

れ抱合代謝物として胆汁排泄を受けるため、尿細管分泌および肝臓での薬物代

謝能に対する体温低下の影響を同時に評価できるという利点がある。

ラットを sodium pentobarbital 麻酔下で体温を 37 C あるいは 32 C に1時間

維持した後、PSP 1 mg を静脈内に投与した。投与後、各時間における血漿中お

よび胆汁中の PSP 濃度と、投与 4 時間後の尿中の PSP 濃度を測定した。

PSP 1 mg をラットの静脈内へ投与した後の血漿中濃度-時間曲線を Fig. 1 に

示している。低体温ラットにおいて投与直後より、正常体温ラットと比較して

血漿中濃度は著しく高い値を示し、その後も血漿中からの消失に遅延がみられ

た。PSP の血漿中濃度は両群において二相性の消失パターンを示し、相の消

失速度定数(min-1)は、それぞれ 0.021 min-1(37 C)および 0.013 min-1(32

C)と算出され、有意差は見られなかったものの、低体温ラットにおいて低下

する傾向が見られた。

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0 60 120 180 2400.01

0.1

1

10

100

Time (min)

Pla

sma

con

cen

trat

ion

g/m

l)

******* * *

* * * *

● : 32 ℃○ : 37 ℃

Temp.

0 60 120 180 2400.01

0.1

1

10

100

Time (min)

Pla

sma

con

cen

trat

ion

g/m

l)

0 60 120 180 2400.01

0.1

1

10

100

Time (min)

Pla

sma

con

cen

trat

ion

g/m

l)

******* * *

* * * *

● : 32 ℃○ : 37 ℃

Temp.

● : 32 ℃○ : 37 ℃

Temp.

Fig. 1 Plasma concentration profiles of PSP at a dose of 1 mg after i.v. administration to rats under body temperatures of 37 C and 32 C. Curves show the simulated functions based on the pharmacokinetic parameters shown in Table 1. Each point represents the mean S.E. of results from six experiments. *P < 0.05, **P < 0.01, significantly different from the result for 37 C.

静脈内投与後の PSP の血漿中濃度-時間曲線(Fig. 1)に対して 2-コンパー

トメントモデルに基づき、非線形最小二乗法プログラム MULTI を用いて当て

はめ計算をし、算出した速度論的パラメータを Table 1 に示している。低体温

ラットの全身クリアランス(CLtotal)は正常体温ラットの約半分に低下した。

また、低体温ラットの体循環コンパートメントの分布容積(Vc)は、正常体温

ラットより有意に減少した。薬物の分布に影響を与える因子としては、血流量、

体内水分量やタンパク結合率などが考えられる。29 C の低体温時には、心拍

出量が正常体温時の約 40 % に低下するという報告がある(26)。今回の検討で

低体温ラットの Vcが低下した理由としては、心拍出量の減少に伴なう血流量

の変化が推察される。

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Table 1 Pharmacokinetic parameters for plasma concentration profiles of PSP at a dose of 1 mg after i.v. administration to rats under body temperatures of 37 C and 32 C.

K12 K21 Kel Vc Vp CLtotal

Body temp. (min-1) (min-1) (min-1) (ml) (ml) (ml/min)

37 C 0.134 0.147 0.044 36.1 34.5 1.51 ±0.042 ±0.052 ±0.007 ±2.5 ±3.2 ±0.14

32 C 0.159 0.128 0.030 28.3* 34.7 0.86** ±0.023 ±0.014 ±0.003 ±1.2 ±3.3 ±0.09

Each value is the mean S.E. of results from six experiments. *P < 0.05, **P < 0.01, significantly different from the result for 37 C.

PSP の未変化体(A)およびグルクロン酸抱合代謝物(B)の胆汁排泄速度-

時間曲線を Fig. 2 に示している。PSP 未変化体の胆汁中排泄速度については、

投与後 60 分以降から低体温ラットが正常体温ラットを有意に上回った。一方、

低体温ラットにおける PSP 代謝物の胆汁中排泄速度は、正常体温と比較して有

意差は見られなかったが、ピークが低くなった。

Bili

ary

exc

reti

on

rat

e (µ

g/m

in)

Time (min)0 60 120 180 240

(B) Metabolite

0 60 120 180 2400

2

4

6

8(A) Free

● : 32 ℃○ : 37 ℃

Temp.

********

*

*

Bili

ary

exc

reti

on

rat

e (µ

g/m

in)

Time (min)0 60 120 180 240

(B) Metabolite

0 60 120 180 2400

2

4

6

8(A) Free

● : 32 ℃○ : 37 ℃

Temp.

● : 32 ℃○ : 37 ℃

Temp.

********

*

*

Fig. 2 Biliary excretion rate profiles of free PSP (A) and its metabolite (B) at a dose of 1 mg after i.v. administration to rats under body temperatures of 37 C and 32 C. Each point represents the mean S.E. of results from six experiments. *P < 0.05, **P < 0.01, significantly different from the result for 37 C.

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PSP を静脈内投与後 4 時間までの未変化体(A)およびグルクロン酸抱合代

謝物(B)の胆汁中への累積排泄量(% of dose)を Fig. 3 に示している。正常

体温ラットの PSP 未変化体の胆汁中への累積排泄量は、投与後 120 分からほぼ

一定値に達した。一方、低体温ラットにおいては投与後 240 分においても、緩

やかに増加しており、持続的な胆汁中への排泄が認められた(Fig. 3A)。PSP

の代謝物については、有意差はないものの、低体温ラットにおける累積排泄量

は正常体温ラットよりも低下した(Fig. 3B)。

0 60 120 180 2400

10

20

30

40

50

*****

Time (min)

0 60 120 180 240

(B) Metabolite

● : 32 ℃○ : 37 ℃

Temp.

(A) Free

Cu

mu

lati

ve a

mo

un

t in

bile

(%

of

do

se)

0 60 120 180 2400

10

20

30

40

50

*****

0 60 120 180 2400

10

20

30

40

50

*****

Time (min)

0 60 120 180 240

(B) Metabolite

● : 32 ℃○ : 37 ℃

Temp.

0 60 120 180 240

(B) Metabolite

● : 32 ℃○ : 37 ℃

Temp.

● : 32 ℃○ : 37 ℃

Temp.

(A) Free

Cu

mu

lati

ve a

mo

un

t in

bile

(%

of

do

se)

Fig. 3 Cumulative biliary excretion of free PSP (A) and its metabolite (B) at a dose of 1 mg after i.v. administration to rats under body temperatures of 37 C and 32 C. Each point represents the mean S.E. of results from six experiments. P < 0.05, **P < 0.01, significantly different from the result for 37 C.

Table 2 には PSP を静脈内投与後の血漿中濃度-時間曲線(Fig. 1)および胆

汁中排泄速度-時間曲線(Fig. 2)に対してモーメント解析した結果を示してい

る。モーメント解析は複雑なモデルに依存せず、体内動態に関する平均的かつ

巨視的なパラメータを比較的簡便に算出することができる。正常体温ラットと

比較して、低体温ラットにおいて血漿中濃度-時間曲線下面積 AUCp の増大、

平均滞留時間 MRTp の延長が認められた。また、未変化体の胆汁中排泄速度-

時間曲線下面積 AUCb,f は増大し、平均胆汁中排泄時間 MRTb,f は延長した。

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Table 2 Moment parameters for plasma concentration and biliary excretion rate profiles of free PSP and its metabolite at a dose of 1 mg after i.v. administration to rats under body temperatures of 37 C and 32 C.

AUCp MRTp AUCb,f MRTb,f AUCb,m MRTb,m

Body temp. (µg/mlmin) (min) (µg) (min) (µg) (min)

37 C 788.6 49.8 333.6 49.5 241.8 84.5 ±70.9 ±4.7 ±25.7 ±2.9 ±34.5 ±8.4

32 C 1487.9* 95.1* 482.3** 88.2* 216.8 117.7 ±227.0 ±15.7 ±34.6 ±12.0 ±47.1 ±18.5

Each value is the mean ± S.E. of result from six experiments. *P < 0.05, **P < 0.01, significantly different from the result for 37 C.

Fig. 4 には PSP を静脈内投与後 4 時間までの未変化体の胆汁中、尿中累積排

泄量、および胆汁中と尿中に排泄された代謝物累積排泄量を示している。低体

温ラットにおける累積排泄量については、正常体温ラットと比較して、未変化

体の尿中排泄量および代謝物排泄量に減少が見られた。一方、胆汁中への未変

化体の排泄量は増加した。肝臓と腎臓は排泄器官としての重要な役割を担って

おり、薬物などの排泄に関して互いに代償的な機能を有することが報告されて

いる(27, 28)。今回の低体温ラットにおいて、尿中排泄速度と代謝速度が低下

し、代償的に未変化体の胆汁中への排泄速度が増加したと考えられる。

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0

10

20

30

40

50

■ : 32 ℃: 37 ℃□Temp.

Bile Urine Metabolite

Rec

ove

ry (

% o

f d

ose

)

**

0

10

20

30

40

50

■ : 32 ℃: 37 ℃□Temp.

■ : 32 ℃: 37 ℃□Temp.

Bile Urine Metabolite

Rec

ove

ry (

% o

f d

ose

)

**

Fig. 4 Recovery in 4 hr of free PSP (bile or urine) and its metabolite (bile and urine) at a dose of 1 mg after i.v. administration to rats under body temperatures of 37 C and 32 C. Each bar represents the mean ± S.E. of results from six experiments. **P < 0.01 significantly different from the result for 37 C.

ここまでの検討より、静脈内投与された PSP の体内動態は、正常体温ラット

と低体温ラットにおいて異なることが明らかとなった。ラットにおいて、PSP

は腎臓での尿細管分泌と肝臓で代謝を受け体内より消失する(20, 25)。PSP の

腎臓での尿細管分泌および肝臓中の薬物代謝酵素によるグルクロン酸抱合は、

いずれもエネルギーを必要とする能動的な過程である。体温の低下に伴ないエ

ネルギー量が減少したため、これらの排泄能が低下したものと推察される。

Page 15: 低体温療法時における薬物動態の変化と その変動要因の解明 · ついては、未変化体(AUCb,f, MRTb,f)と代謝物(AUCb,m, MRTb,m)のそれぞれ

- 15 -

Ⅱ Phenolsulfonphthalein の体内動態に対する投与量の影響

前章において、PSP のラットにおける体内動態が低体温時において大きく変

動することが明らかとなった。また、その変動が尿細管分泌や代謝などの飽和

現象が存在する消失過程の変化に起因する可能性が示唆された。そこで本章で

は、さらに詳細な変動要因を解明するために、PSP の投与量を変化させた場合

の、正常体温時と低体温時における体内動態の比較を行った。

Fig. 5 は、PSP を 0.5、1、2 mg の 3 種類の投与量でラットに静脈内投与した

時の血漿中濃度-時間曲線を示している。0.5 mg の低投与量では、低体温ラッ

トと正常体温ラットにおける PSP の血漿中濃度はほぼ一致したのに対して

(Fig. 5A)、2 mg の高投与量においては、1 mg の結果と同様に、低体温ラット

において PSP の血漿中からの消失に遅延が見られた(Fig. 5C)。

Time (min)

0 60 120 180 2400.01

0.1

1

10

100

Pla

sma

con

cen

trat

ion

g/m

l) (A) 0.5 mg

▲ : 32 ℃△ : 37 ℃

Temp.

**

0 60 120 180 240

(B) 1 mg

● : 32 ℃○ : 37 ℃

Temp.******* * * *

* * *

0 60 120 180 240

(C) 2 mg

■ : 32 ℃□ : 37 ℃

Temp.**

************** **

* ***

Time (min)

0 60 120 180 2400.01

0.1

1

10

100

Pla

sma

con

cen

trat

ion

g/m

l) (A) 0.5 mg

▲ : 32 ℃△ : 37 ℃

Temp.

**

0 60 120 180 2400.01

0.1

1

10

100

Pla

sma

con

cen

trat

ion

g/m

l) (A) 0.5 mg

▲ : 32 ℃△ : 37 ℃

Temp.

▲ : 32 ℃△ : 37 ℃

Temp.

**

0 60 120 180 240

(B) 1 mg

● : 32 ℃○ : 37 ℃

Temp.******* * * *

* * *

0 60 120 180 240

(B) 1 mg

● : 32 ℃○ : 37 ℃

Temp.

● : 32 ℃○ : 37 ℃

Temp.******* * * *

* * *

0 60 120 180 240

(C) 2 mg

■ : 32 ℃□ : 37 ℃

Temp.**

************** **

* ***

0 60 120 180 240

(C) 2 mg

■ : 32 ℃□ : 37 ℃

Temp.

■ : 32 ℃□ : 37 ℃

Temp.**

************** **

* ***

Fig. 5 Plasma concentration profiles of PSP at doses of 0.5 (A), 1 (B) and 2 mg (C) after i.v. administration to rats under body temperatures of 37 C and 32 C. Curves show the simulated functions based on the pharmacokinetic parameters in Table 3. Each point represents the mean ± S.E. of results from six experiments. *P < 0.05, **P < 0.01 significantly different from the result for 37 C.

各投与量における静脈内投与後の PSP 血漿中濃度-時間曲線(Fig. 5)に対

して、2-コンパートメントモデルに基づき、非線形最小二乗法プログラム

MULTI を用いて当てはめ計算し、速度論的パラメータを算出した(Table 3)。

Page 16: 低体温療法時における薬物動態の変化と その変動要因の解明 · ついては、未変化体(AUCb,f, MRTb,f)と代謝物(AUCb,m, MRTb,m)のそれぞれ

- 16 -

投与量 0.5 mg においては、正常体温ラットと低体温ラットとの間に速度論的パ

ラメータの差異はほとんど認められなかったのに対して、1、2 mg の投与量で

は、正常体温ラットと比較して、低体温ラットにおいて、CLtotalは約半分に有

意に低下した。また、低体温ラットの Vcは、いずれの投与量においても有意

な減少が見られた。

Table 3 Pharmacokinetic parameters for plasma concentration profiles of PSP at doses of 0.5, 1 and 2 mg after i.v. administration to rats under body temperatures of 37 C and 32 C.

K12 K21 Kel Vc Vp CLtotal

Dose Body temp. (min-1) (min-1) (min-1) (ml) (ml) (ml/min)

0.5 mg 37 C 0.122 0.126 0.043 34.0 35.1 1.47 ±0.015 ±0.019 ±0.006 ±0.7 ±4.2 ±0.23

32 C 0.131 0.143 0.049 28.6* 25.5 1.34 ±0.017 ±0.012 ±0.008 ±1.7 ±1.7 ±0.16

1 mg 37 C 0.134 0.147 0.044 36.1 34.5 1.51 ±0.043 ±0.052 ±0.008 ±2.5 ±3.2 ±0.14

32 C 0.159 0.128 0.030 28.3* 34.7 0.87** ±0.022 ±0.014 ±0.003 ±1.2 ±3.3 ±0.09

2 mg 37 C 0.135 0.154 0.051 37.9 40.0 1.93 ±0.015 ±0.032 ±0.004 ±1.6 ±7.6 ±0.10

32 C 0.104 0.083 0.029* 32.8* 42.9 0.96** ±0.009 ±0.009 ±0.005 ±1.2 ±4.3 ±0.14

Each value is the mean ± S.E. of result from six experiments. *P < 0.05, **P < 0.01, significantly different from the result for 37 C.

PSP を静脈内投与後の血漿中濃度-時間曲線(Fig. 5)および胆汁中排泄速度

-時間曲線に対してモーメント解析した結果を Table 4 に整理している。コン

パートメントモデル基づいて解析した結果(Table 3)と同様に、投与量 0.5 mg

においては、正常体温ラットと低体温ラットとの間で各モーメントパラメータ

にほとんど差異は認められなかった。一方、投与量 1、2 mg では、正常体温ラ

ットと比較して、低体温ラットにおいて AUCp は約 2 倍に増大し、MRTp およ

Page 17: 低体温療法時における薬物動態の変化と その変動要因の解明 · ついては、未変化体(AUCb,f, MRTb,f)と代謝物(AUCb,m, MRTb,m)のそれぞれ

- 17 -

び MRTb,f に有意な延長が見られた。

Table 4 Moment parameters for plasma concentration and biliary excretion rate profiles of free PSP and its metabolite at doses of 0.5, 1 and 2 mg after i.v. administration to rats under body temperatures of 37 C and 32 C.

AUCp MRTp AUCb,f MRTb,f AUCb,m MRTb,m Dose Body temp. (µg/mlmin) (min) (µg) (min) (µg) (min)

0.5 mg 37 C 457.2 61.6 174.8 60.8 142.2 81.2 ±103.8 ±19.0 ±33.4 ±11.2 ±28.5 ±14.5

32 C 452.1 48.3 163.6 55.3 79.8 70.2 ±56.0 ±8.4 ±14.2 ±3.5 ±11.4 ±5.9

1 mg 37 C 788.6 49.8 333.6 49.5 241.8 84.5 ±70.9 ±4.7 ±25.7 ±2.9 ±34.5 ±8.4

32 C 1487.9* 95.1* 482.3** 88.2* 216.8 117.7 ±227.0 ±15.7 ±34.6 ±12.0 ±47.1 ±18.5

2 mg 37 C 1252.2 51.6 584.4 47.2 471.8 67.2 ±79.1 ±6.5 ±75.5 ±3.7 ±88.6 ±6.7

32 C 2590.5** 104.8* 814.4 73.9* 381.6 105.3 ±354.8 ±18.3 ±103.9 ±10.8 ±31.9 ±18.6

Each value is the mean ± S.E. of result from six experiments. *P < 0.05, **P < 0.01, significantly different from the result for 37 C.

Fig. 6 では、各投与量の PSP を静脈内投与後 4 時間までの胆汁中、尿中、お

よび代謝物として胆汁中と尿中に排泄された累積排泄量を、投与後 4 時間まで

の血漿中濃度-時間曲線下面積 AUCp,finiteで割ることで算出した各排泄クリア

ランスを示している。血漿中濃度で補正した排泄クリアランスを求めることで、

異なる投与量間における薬物の処理能力を評価することができる。投与量 0.5

mg においては、低体温ラットと正常体温ラットの間で、各排泄クリアランス

に顕著な違いが認められなかったのに対して、投与量 1、2 mg では、正常体温

ラットと比較して、低体温ラットにおいていずれのクリアランスも低下し、特

に、尿中排泄および代謝クリアランスの低下が顕著であった。

Page 18: 低体温療法時における薬物動態の変化と その変動要因の解明 · ついては、未変化体(AUCb,f, MRTb,f)と代謝物(AUCb,m, MRTb,m)のそれぞれ

- 18 -

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

CLb CLr CLm CLb CLr CLm CLb CLr CLm

Cle

aran

ce (

ml/m

in)

***

**

(A) 0.5 mg (B) 1 mg (C) 2 mg

■ : 32 ℃: 37 ℃□Temp.

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

CLb CLr CLm CLb CLr CLm CLb CLr CLm

Cle

aran

ce (

ml/m

in)

***

**

(A) 0.5 mg (B) 1 mg (C) 2 mg

■ : 32 ℃: 37 ℃□Temp.

■ : 32 ℃: 37 ℃□Temp.

Fig. 6 Biliary, renal and metabolic clearances of PSP at doses of 0.5 (A), 1 (B) and 2 mg (C) after i.v. administration to rats under body temperatures of 37 C and 32 C. Each bar represents the mean ± S.E. of results from six experiments. *P < 0.05, **P < 0.01, significantly different from the result for 37 C.

PSP を 0.5、1、2 mg の 3 種類の投与量で静脈内投与した結果、低体温ラット

において投与量の増大に伴なう尿中排泄および代謝クリアランスの大きな低下

が認められた。低体温ラットにおいて投与量に依存した薬物動態変化が見られ

たことから、低体温時には飽和性を有する排泄能が低下していることが示唆さ

れた。これらの結果より、低体温療法時において、適切な投与量の設定の必要

性が示された。

Page 19: 低体温療法時における薬物動態の変化と その変動要因の解明 · ついては、未変化体(AUCb,f, MRTb,f)と代謝物(AUCb,m, MRTb,m)のそれぞれ

- 19 -

Ⅲ 低体温時における FITC-dextran 体内動態の変動

前章において、PSP の体内動態が低体温時と正常体温時で大きく異なること

が示された。また、投与量の増大に伴なった排泄クリアランスの減少が見られ

たことから、能動輸送や代謝などの飽和性を有する消失過程への影響の可能性

が示された。そこで本章では、受動拡散に基づく消失過程への体温低下の影響

を検討するために、糸球体ろ過により排泄される FITC-dextran の低体温時と正

常体温時における体内動態について比較した。FITC-dextran は薬理作用がなく、

分子量の異なる FITC-dextran の体内動態に関する情報が明らかにされている

(29, 30)。今回の検討では、平均分子量が 4400 の FD-4 を選択した。

ラットの体温を 37 C あるいは 32 C に 1 時間維持した後、FD-4 1 mg を静脈

内に投与し、各時間における血漿中濃度と実験終了時の尿中の薬物濃度を測定

した。FD-4 1 mg を静脈内投与後の血漿中濃度-時間曲線(Fig. 7)は、正常体

温ラットおよび低体温ラットいずれにおいても二相性の消失パターンを示し、

その血漿中濃度はほぼ一致した。

0 60 120 180 2400.01

0.1

1

10

100

Time (min)

Pla

sma

con

cen

trat

ion

g/m

l)

● : 32 ℃○ : 37 ℃

Temp.

0 60 120 180 2400.01

0.1

1

10

100

Time (min)

Pla

sma

con

cen

trat

ion

g/m

l)

● : 32 ℃○ : 37 ℃

Temp.

● : 32 ℃○ : 37 ℃

Temp.

Fig. 7 Plasma concentration profiles of FD-4 at a dose of 1 mg after i.v. administration to rats under body temperatures of 37 C and 32 C. Curves shows the simulated functions based on the pharmacokinetic parameters shown in Table 5. Each point represents the mean ± S.E. of results from six experiments.

Page 20: 低体温療法時における薬物動態の変化と その変動要因の解明 · ついては、未変化体(AUCb,f, MRTb,f)と代謝物(AUCb,m, MRTb,m)のそれぞれ

- 20 -

FD-4 の血漿中濃度-時間曲線(Fig. 7)に対して 2-コンパートメントモデ

ルに基づき、非線形最小二乗法プログラム MULTI を用いて当てはめ計算し、

算出した速度論的パラメータを Table 5 に示している。正常体温ラットと低体

温ラットとの間に、いずれのパラメータにおいても差異はほとんど認められな

かった。

Table 5 Pharmacokinetic parameters for plasma concentration profiles of FD-4 at a dose of 1 mg after i.v. administration to rats under body temperatures of 37 C and 32 C.

K12 K21 Kel Vc Vp CLtotal

Body temp. (min-1) (min-1) (min-1) (ml) (ml) (ml/min)

37 C 0.272 0.102 0.097 14.1 38.6 1.37 ±0.031 ±0.013 ±0.007 ±0.6 ±3.3 ±0.12

32 C 0.185 0.077 0.107 13.3 33.0 1.44 ±0.005 ±0.006 ±0.005 ±1.2 ±3.3 ±0.09

Each value is the mean ± S.E. of result from six experiments.

FD-4 を静脈内投与後 4 時間までの尿中累積排泄率、および尿中累積排泄量と

AUCp,finite から算出した尿中排泄クリアランス(CLr)を Table 6 に示している。

正常体温ラットと低体温ラットいずれにおいても、投与後 4 時間で投与量の約

80 %が尿中に排泄された。さらに、尿中排泄クリアランスは正常体温ラットと

低体温ラットでほぼ同じ値を示した。したがって、FD-4 の体内動態に関しては、

正常体温ラットと低体温ラットとの間でほとんど変化は認められないことが明

らかとなった。また、FD-4 の投与量が 0.5、5 mg の場合においても、同様の傾

向を示した。

Page 21: 低体温療法時における薬物動態の変化と その変動要因の解明 · ついては、未変化体(AUCb,f, MRTb,f)と代謝物(AUCb,m, MRTb,m)のそれぞれ

- 21 -

Table 6 Urinary recovery in 4 hr and renal clearance of FD-4 at a dose of 1 mg after i.v. administration to rats under body temperatures of 37 C and 32 C

Urine CLr Body temp. (%) (ml/min)

37 C 77.2 1.00 ±5.0 ±0.11

32 C 81.7 1.06 ±2.0 ±0.09

Each value is the mean ± S.E. of result from six experiments.

FD-4 は、糸球体毛細血管内圧を駆動力としている輸送系である糸球体ろ過に

よって、速やかに排泄される(30)。体温を 28 C に低下させたラットにおいて

腎血流が正常体温時の約 50 % 低下し、腎血流の変化に伴ない、糸球体ろ過機

能も約半分に低下したという報告(31)もある。しかし今回の検討では、低体

温時と正常体温時における FD-4 の体内動態に違いが見られなかった。これは、

腎血管系に恒常性維持のための自己調節機能があり、この調節機能の範囲内で

は全身循環系の変動から、糸球体ろ過機能を一定に保とうとする働きがあり

(32)、本研究で設定した 32 C は自己調節機能の範囲内であったためと推察さ

れる。したがって、低体温療法時において、糸球体ろ過を主な排泄経路とする

薬物の体内動態はほとんど変化しないものと予測される。しかし、32 C 以下

の低体温や FD-4 よりも分子量が大きな薬物では、体内動態が変化する可能性

も十分に考えられるため、今後さらに検討が必要である。

Page 22: 低体温療法時における薬物動態の変化と その変動要因の解明 · ついては、未変化体(AUCb,f, MRTb,f)と代謝物(AUCb,m, MRTb,m)のそれぞれ

- 22 -

Ⅳ 低体温時における indocyanine green 体内動態の変動

ICG は静脈内投与後血管外へほとんど分布せず、肝臓へ選択的に取り込まれ、

代謝を受けずに胆汁中へ排泄されることが知られている(33)。副作用も少な

いため、肝機能を把握するための臨床的検査として、ICG 負荷試験は広く行わ

れている。そこで、肝臓における薬物排泄能に対する体温低下の影響を見るた

め、正常体温時と低体温時における ICG の体内動態を比較した。

各投与量の ICG をラットの静脈内に投与し、各時間における血漿中濃度およ

び胆汁中の薬物濃度を測定した。ICG 0.2、1、2 mg を静脈内投与後の血漿中濃

度-時間曲線を Fig. 9 に示している。すべての投与量において、正常体温ラッ

トと低体温ラットのいずれにおいても ICG は血漿中から速やかに消失した。正

常体温ラットと比較して、低体温ラットにおける ICG の血漿中濃度は高い値を

示し、血漿中からの消失に遅延が認められた。また、投与後初期における血漿

中濃度の差より、低体温ラットでは、正常体温ラットと比較して ICG の肝取り

込み速度が低下していることが示唆された。

0 20 40 600 20 40 60

*

**

**

*

(B) 1 mg

● : 32 ℃○ : 37 ℃

Temp.

Pla

sma

con

cen

trat

ion

g/m

l)

Time (min)0 20 40 60

0.01

0.1

1

10

100

**

**

***

*

(A) 0.2 mg

▲ : 32 ℃△ : 37 ℃

Temp.**

*

*

**

*

(C) 2 mg

■ : 32 ℃□ : 37 ℃

Temp.

0 20 40 600 20 40 60

*

**

**

*

(B) 1 mg

● : 32 ℃○ : 37 ℃

Temp.

● : 32 ℃○ : 37 ℃

Temp.

Pla

sma

con

cen

trat

ion

g/m

l)

Time (min)0 20 40 60

0.01

0.1

1

10

100

**

**

***

*

(A) 0.2 mg

▲ : 32 ℃△ : 37 ℃

Temp.

▲ : 32 ℃△ : 37 ℃

Temp.**

*

*

**

*

(C) 2 mg

■ : 32 ℃□ : 37 ℃

Temp.

■ : 32 ℃□ : 37 ℃

Temp.

Fig. 9 Plasma concentration profiles of ICG at doses of 0.2 (A), 1 (B) and 2 mg (C) after i.v. administration to rats under body temperatures of 37 C and 32 C. Each point represents the mean ± S.E. of at least four experiments. *P < 0.05, **P < 0.01, significantly different from the result for 37 C.

Page 23: 低体温療法時における薬物動態の変化と その変動要因の解明 · ついては、未変化体(AUCb,f, MRTb,f)と代謝物(AUCb,m, MRTb,m)のそれぞれ

- 23 -

Fig. 10 A および 10 B は、ICG 1 mg を静脈内投与後の胆汁中排泄速度-時間

曲線および胆汁中累積排泄率をそれぞれ示している。低体温ラットにおける投

与後初期の ICG の胆汁中排泄速度は、正常体温ラットと比較して有意に低いも

のの、投与後 60 分以降は逆に高くなった(Fig. 10 A)。また正常体温ラットで

は、投与後約 120 分で投与量の約 80 %が胆汁排泄されたのに対して、低体温ラ

ットでは、投与後約 180 分で 80 %に達し、投与後 240 分においても累積排泄量

の増加傾向が見られた(Fig. 10 B)。他の投与量(0.2、2 mg)においても、同

様の傾向が認められた。

0 60 120 180 2400

5

10

15

20

25

*** **

** ** ****

**

***

● : 32 ℃○ : 37 ℃

Temp.

(µg

/min

)

0 60 120 180 2400

20

40

60

80

100

***

**

**

**

**

*

(% o

f d

os

e)

Time (min)

(B) Cumulative excreted amount in bile

(A) Biliary excretion rate

0 60 120 180 2400

5

10

15

20

25

*** **

** ** ****

**

***

● : 32 ℃○ : 37 ℃

Temp.

● : 32 ℃○ : 37 ℃

Temp.

(µg

/min

)

0 60 120 180 2400

20

40

60

80

100

***

**

**

**

**

*

(% o

f d

os

e)

Time (min)

0 60 120 180 2400

20

40

60

80

100

***

**

**

**

**

*

(% o

f d

os

e)

Time (min)

(B) Cumulative excreted amount in bile

(A) Biliary excretion rate

Fig. 10 Biliary excretion rate profiles (A) and total cumulative excreted amount in bile (% of dose) (B) of ICG at a dose of 1 mg after i.v. administration to rats under body temperatures of 37 C and 32 C. Each point represents the mean ± S.E. of at least four experiments. *P < 0.05, **P < 0.01, significantly different from the result for 37 C.

Table 7 には ICG を静脈内投与後の血漿中濃度-時間曲線(Fig. 9)、および胆

汁中排泄速度-時間曲線(Fig. 10 A)に対してモーメント解析した結果を示し

ている。いずれの投与量においても、低体温ラットの AUCp は、正常体温ラッ

トと比較して有意に増大した。また、平均胆汁中排泄時間 MRTb についても、

低体温ラットにおいて著しい延長が見られ、胆汁排泄が遅延し持続的に ICG が

Page 24: 低体温療法時における薬物動態の変化と その変動要因の解明 · ついては、未変化体(AUCb,f, MRTb,f)と代謝物(AUCb,m, MRTb,m)のそれぞれ

- 24 -

排泄されていることが示された。

Table 7 Moment parameters for plasma concentration and biliary excretion rate profiles of ICG at doses of 0.2, 1 and 2 mg after i.v. administration to rats under body temperatures of 37 C and 32 C.

AUCp MRTp AUCb MRTb Dose Body temp. (µg/mlmin) (min) (µg) (min)

0.2 mg 37 C 52.7 43.4 149.6 55.3 ±2.6 ±0.8 ±4.3 ±2.2

32 C 131.2** 63.4 162.0 110.8** ±6.0 ±14.3 ±7.5 ±6.0

1 mg 37 C 191.8 21.8 903.6 45.8 ±12.5 ±5.3 ±60.5 ±7.0

32 C 424.7** 45.6 964.4 96.8** ±30.3 ±10.0 ±36.5 ±5.5

2 mg 37 C 709.1 76.8 1846.3 55.9 ±158.0 ±22.9 ±39.4 ±7.9

32 C 1315.1* 68.5 1766.4 117.7** ±135.3 ±8.5 ±38.7 ±6.9

Each value is the mean ± S.E. of at least four experiments. *P < 0.05, **P < 0.01, significantly different from the result for 37 C.

Fig. 11 には、ICG を 3 種類の投与量で静脈内投与後 4 時間までの胆汁中累積

排泄量と AUCp,finiteから算出した胆汁排泄クリアランスを示している。いずれ

の投与量においても、正常体温ラットと比較して低体温ラットにおける胆汁排

泄クリアランスは有意に低い値を示した。

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0

1

2

3

4

5

6

0.2 mg 1 mg 2 mg

Bili

ary

clea

ran

ce (

ml/m

in)

***

**■ : 32 ℃

: 37 ℃□Temp.

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0.2 mg 1 mg 2 mg

Bili

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: 37 ℃□Temp.

0.2 mg 1 mg 2 mg

Bili

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ml/m

in)

***

**■ : 32 ℃

: 37 ℃□Temp.

■ : 32 ℃: 37 ℃□Temp.

Fig. 11 Biliary clearance of ICG at doses of 0.2, 1 and 2 mg after i.v. administration to rats under body temperatures of 37 C and 32 C. Each bar represents the mean ± S.E. of at least four experiments.

ICG は、有機アニオン系トランスポーターを介して、血液中から肝細胞内を

経由して能動的に胆汁中へ移行することが知られている(34, 35)。能動輸送は

エネルギーを必要とする輸送系であり、酸素欠乏や低温によって輸送が阻害さ

れることが知られている(36)。本研究で低体温として設定した 32 C の条件に

おいても、肝臓での能動輸送が阻害されている可能性が示された。現在、低体

温療法として主に施行されていのは、mild hypothermia(34-35 C)と moderate

hypothermia(30-33 C)の温度範囲である。本研究の結果より、低体温療法中

に投与される抗生物質、抗不整脈薬、抗痙攣薬などの中で、能動輸送を介して

体内に移行する薬物では、低体温時の体内動態が正常体温時とは大きく異なる

ことが推察される。

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結 論

本研究では、低体温療法時の体内動態の変化および変動要因の解明を目的と

して、3 種類のモデル薬物を用いて基礎的な検討を行った。FD-4 に関しては、

低体温時と正常体温時で体内動態に差異は認められなかった。このことから、

糸球体ろ過などの受動拡散に基づく消失過程へ、体温の低下はほとんど影響し

ないことが示唆された。一方、尿細管分泌と肝臓での代謝を受ける PSP および、

胆汁中へ能動的に排泄される ICG では、低体温ラットにおいて薬物の血漿中か

らの消失に遅延がみられ、各排泄クリアランスが有意に低下した。また、PSP

では、投与量に依存したクリアランスの低下が見られた。

以上の結果より、代謝や尿細管分泌によって消失する薬物に関しては、低体

温療法時に高濃度で体内に長時間滞留し、薬理効果の増強や予想外の副作用が

発現する危険性が十分に考えられる。また、最近は相乗効果を期待して、低体

温療法とグルタミン酸受容体拮抗剤やカルシウム拮抗剤との併用療法も研究さ

れており(37, 38)、低体温療法時の薬物投与は今後、盛んになると考えられる。

したがって、低体温療法時の薬物動態に関する基礎的知見に基づいて、臨床で

の適切な薬物投与設計を実現できることが期待される。

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謝 辞

終わりに臨み、本研究に際して終始御懇篤なる御指導、御鞭撻を賜りまし

た長崎大学薬学部 中村純三教授、西田孝洋助教授、川上茂助手、並びに神戸

大学医学部附属病院薬剤部 栄田敏之助教授、長崎大学医学部附属病院薬剤部

佐々木均教授、中嶋幹郎助教授に衷心より深甚なる謝意を表します。

さらに、実験の一部に御協力頂いた赤城聡子学士、石村智子氏に深く感謝い

たします。また、種々の有益な御助言と御指導を頂いた長崎大学薬学部薬剤学

研究室員一同に深く感謝いたします。

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