事業再生人材育成講座 - minister of economy, trade …...事業再生人材育成講座...

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事業再生人材育成講座 経済産業省 平成16年度 起業家育成・経営人材プログラム導入促進事業 テーマ⑥: 事例紹介(その4) グローバル法律事務所 所長 弁護士 大阪府中小企業再生支援協議会 プロジェクトマネージャー 『中小企業の再生に向けた取り組み』 ~ 大阪府中小企業再生支援協議会のスキームと実例 ~ 皆さんこんにちは。私は大阪府中小企業再生協議会のプロジェクトマネージャーをしておりま す、弁護士の磯川正明です。 本日はテーマ⑥事例紹介(その4)として『中小企業の再生に向けた取り組み』につき~大阪 府中小企業再生支援協議会のスキームと実例~についてご紹介させて頂きます。

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事業再生人材育成講座

経済産業省

平成16年度 起業家育成・経営人材プログラム導入促進事業

テーマ⑥: 事例紹介(その4)

グローバル法律事務所 所長 弁護士 礒 川 正 明

大阪府中小企業再生支援協議会 プロジェクトマネージャー

『中小企業の再生に向けた取り組み』

~ 大阪府中小企業再生支援協議会のスキームと実例 ~

皆さんこんにちは。私は大阪府中小企業再生協議会のプロジェクトマネージャーをしております、弁護士の磯川正明です。

本日はテーマ⑥事例紹介(その4)として『中小企業の再生に向けた取り組み』につき~大阪府中小企業再生支援協議会のスキームと実例~についてご紹介させて頂きます。

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 目 次

1.はじめに  ①産業活力特別措置法(2003年)改正  ②リレーションシップバンキングと事業再生・地域再生2.大阪府中小企業再生支援協議会のスキーム

①一次対応②二次対応、再生支援決定③関係・他行との調整(バンクミーティング)

  ④再生計画完成後のフォロー3.再生支援(二次対応)企業の決定基準4.再生計画作成支援の基本

①再生計画における基本要素②最適スキームの選択

5.再生の実例  ①複数金融機関によるリスケジュールの調整の実例  ②金融機関による無税償却を条件とする債権放棄の実例  ③信用金庫のDDS活用による再生の実例

それでは本日の講義内容についてご紹介します。

まず始めに産業活力特別処置法の改正とリレーションシップバンキングと事業再生・地域再生についてご紹介させて頂きます。

次に大阪府中小企業再生協議会のスキームについて紹介させて頂きます。

三番目に再生支援・二次対応の決定の基準について説明させて頂きます。

その次に再生計画作成の基本について説明させて頂きます。

最後に再生の実例として大阪府中小企業再生会で取り上げました三例についてのご紹介をさせて頂きます。

以上が本日の講義目次でございます。

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1. はじめに

 ①産業活力特別措置法(2003年)改正

 ②リレーションシップバンキングと事業再生・地域再生

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

はじめに、産業活力特別処置法は2003年に改正され中小企業向けの支援が強化されました。これを受け、中小企業再生支援指針が公表された訳です。

地域の経済活力や、雇用について大きな役割を果たす中小企業の再生を行うためには、地域の中小企業者の連携による早期発見・早期着手が重要だと強調されています。

従来から存在した自力再生支援のための政策支援処置や、産業再生機構や整理回収機構の活用、政策金融機関のDIP融資・保証に加えて中小企業再生支援会の設立、中小企業綜合事業団の中小企業再生ファンドの形成が追加されました。

これら中小企業再生をより確実なものにするため、各都道府県に2003年始めから順次、中小企業再生支援協議会が設立される事となりました。

再生支援協議会は多種多様で地域性が強いという日本の中小企業の特殊性に着目し、支援機関や金融機関などの中小企業の関係者からの支援や地域別ネットワークを活用した再生案を提案しています。

またそれだけでなく、各地域ごとの協議会が提携し連絡を取り合うことにより具体的再生事例、有効な情報などの相互提供が行われこれを利用することにより多くの情報提供を可能にしています。

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1. はじめに

②リレーションシップバンキングと事業再生・地域再生

リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムの公表

(1)平成15年3月、金融庁は中小・地域金融機関(地方銀行、 第二地方銀行、信用金庫、信用組合)を対象として「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」を公表した。

   

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

次に、リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムが平成15年3月金融庁から発表されました。

金融庁は、中小企業地域金融機関、地方銀行・第二地方銀行・信用金庫・信用組合を対象としてリレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムを公表しました。

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1. はじめに

②リレーションシップバンキングと事業再生・地域再生

(2)アクションプログラムにおける平成16年度までの「集中改善期間」中に中小・地域金融機関が取り組むべき活動項目

①中小企業金融の再生に向けた取組み

②各金融機関の健全性の確保、収益性の向上等に向けた取組み

③アクションプログラムの推進体制の構築

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

アクションプログラムにおきましては中小企業金融の再生に向けた取り組み各金融機関の健全性の確保、収益性の向上に向けた取り組み、アクションプログラムの推進体制の構築の3分野について、平成16年までの集中改善期間中に中小金融機関が取り組むべき活動項目を具体的に示しています。

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1. はじめに

②リレーションシップバンキングと事業再生・地域再生

創業・新事業支援機能等の強化

取引先企業に対する経営相談・支援機能の強化

早期事業再生に向けた積極的取組み

新しい中小企業金融への取組みの強化

顧客への説明態勢の整備、相談・苦情処理機能の強化

進捗状況の公表

   

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

具体的には下に書いてある通り、創業・新規事業支援機能の強化、取引先企業に対する経営相談とか支援機能の強化、それから、早期事業再生に向けた積極的な

取り組み、新しい中小金融への取り組みの強化、顧客への説明体制の整備、相談・苦情処理機能の強化、進捗状況の公表と、このように6つの項目を加えております。

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1. はじめに

②リレーションシップバンキングと事業再生・地域再生

 すべての過剰債務取引先に徳政令を与えよというわけではない。①適切な再建計画を前提とし取引先企業のモラルハザードの防止と両立した形が整う場合には、②プリパッケージ型事業再生や私的整理ガイドラインを積極活用した債権放棄を含む再生支援に踏み込むべきであり、③その場合には、企業再生ファンドの組成、デット・エクイティ・スワップ(DES)、DIPファイナンス等の活用、「中小企業再生型信託スキーム」など整理回収機構(RCC)の信託機能の活用、産業再生機構の活用、といった多くの再生支援のための選択肢が用意されているので、そのなかから取引先にふさわしい支援形態をとりなさい。そのためには、④中小企業再生支援協議会の取組みに協力することにより早期事業再生支援にふさわしい事業者を見出すとともに、⑤事業の再生可能性を見極め、再生支援手法を選択し、外部の専門家への橋渡しができるようなターンアラウンド・スペシャリスト(企業再生支援人材)を早期に育成しなさい。これがアクションプログラムのメッセージの意図するところ。

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

具体的な部分については読んでいただければ、わかると思うんですけど、この中で事業の再生可能性を中小企業については早期見極めて、再生支援手法を選択し、外部の専門家への話が出来るようなターンアラウンドスペシャリストを早期に養成するのと共にですね、4の項目の中で中小企業再生支援組合に協力することにより早期事業再生にふさわしい事業者を見出すこと、というような形でリレーションシップバンキングの中でも再生支援協議会について触れられております。

以上、再生支援協議会についての根拠となる今回の改正についてお知らせしたわけです。

それで、大阪府の中小企業再生支援協議会は、これを受けまして2003年の3月に立ち上げました。

2004年12月までの相談件数は213件。

うち、二次対応案件は22件、完了案件は4件というのが現在までの状況ですけども2005年の3月末までには12件の完成案件を予定しております。

以上が今までの実績でございます。

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2.大阪府中小企業再生支援協議会のスキーム

 ①一次対応

  図1 一次対応の流れ

企  業

金融機関

協議会

三期決算書等必要書類を持参

・各種アドバイスで終了

・専門家及び商工会議所の他の相談課等の紹介

・再生支援決定(二次対応)

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

大阪府中小企業再生協議会のスキームについてご紹介させて頂きます。

スキーム図は別紙の通りです。

まず、一次対応と二次対応に分かれます。

一次対応は相談窓口での相談であり、再生支援に適する案件と相談・アドバイスで終わるケースに分かれます。

相談アドバイスで終わるケースは多種多様ですが、新規融資の相談等の場合、商工会議所の他の相談課等を紹介します。

また、すでに破綻状況にあり再生不可能と判断した場合、法的手続きを決断させる後押しをする場合もあります。

単なる経営改善の相談の場合はアドバイスまたは専門家の紹介もさせて頂いております。

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2.大阪府中小企業再生支援協議会のスキーム

 ②二次対応、再生支援決定

  (1.5次対応を前提とする場合もある)

     図2 二次対応の流れ

事案に適した専門家チームの結成

・財務分析・収益計画見直し

再生計画書作成

メインバンクに協力要請

デューデリジェンス正確な数字の把握

(メインバンクの担当者に入ってもらう場合もある)

・協議会が支援。・あくまで企業が主体。

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

次に二次対応なんですけれども、二次対応再生支援の決定。再生支援企業にするかどうかの決定基準は大変難しいものがあります。

この判断基準は後に述べる事としますが、二次対応再生支援決定した場合、直ちに事案に適した専門家チームを結成します。専門家チームは基本的に公認会計士、税理士の会計専門家二名と弁護士一名の合計三名の専門家チームを基本にします。

しかし、メインバンクとの関係を特に密にする必要がある事案のときはメインバンクの担当者にチームに加わってもらう場合もあります。

また、経営改善が必要と判断した時は、その企業の業界に精通した中小企業診断士にチームに参加してもらう場合もあります。

子会社などが関連している企業でかなり規模が大きな企業に関しては公認会計士を2名追加し4名とする場合もあります。

子会社などが関連している企業で、かなり規模が大きな企業に関しては公認会計士を2名追加し4名とするケースもあります。

大阪府中小企業再生支援協議会の二次対応のスタートは、まず財務分析・収益計画見通しを中心目的として、その前提となる正確な数字の把握のためデューデリジェンスを実施します。

これと平行してメインバンクに意向徴収し、協力要請をします。

デューデリジェンスの結果が出た時点でメインバンクにその旨を伝え、再度意向徴収をします。

その結果も踏まえプロマネ・サブマネと再生チームの合同会議で基本スキームの決定をします。

これを企業メインバンクに再度伝え、基本承諾を得て企業が主体となった再生計画書の作成をするわけですけれども、基本的には再生支援協議会が中心になった形の再生計画書の作成になる場合が多いです。

中小企業の場合、なかなかそれだけの能力が無いので必然的に再生支援協議会が主体となった再生計画書を作成することになります。

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2.大阪府中小企業再生支援協議会のスキーム

③関係・他行との調整(バンクミーティング)

デューデリの結果を前提とした再生計画案を事前に各行に送付。その後、各行からの質問、要望を聞き、調整できるものはし、バンクミーティングを開催。

但し、第一回バンクミーティングで全行の同意が得られない場合は再度調整し、第二回バンクミーティングを行う。

④再生計画完成後のフォロー

再生計画案の実行性を確保するため、再生支援企業には月次決算を必ず実行してもらい、3ヶ月に一度その報告を受け、実効性につきトレースするようにしている。

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

この後、関係他行との調整に入るわけですけども、事前にメインバンク以外の他行さんですね、他の金融機関に対して再生計画書を送付します。

と共に協力要請をします。

十分に検討して頂いた後、第1回バンクミーティングをします。

バンクミーティングでは再生計画書の説明とともにこれに対する他行の意見も聞きます。他行全ての同意を得られない場合はその理由を明確にしてもらい調整できるものは調整します。その結果、第二回バンクミーティングでは全行の同意を取るようにします。

数字を前提とする公正かつ中立的な立場の第三者機関としての再生計画案であるということを十分理解して頂いて、その内容についても見当を十分して頂ければ、我々の計画書自身が説得力ある再生計画書であれば、全行の同意は必ず得られるものであると私は確信しております。

そのためにも、再生計画書は公正かつ中立的であり合理性があり経営者責任なども考慮した説得力あるものでなければなりません。

我々は企業経営者から依頼を受け、企業経営者のために企業再生するものではなく、企業自身の社会的存在意義・雇用者の雇用確保を目的とするものであること、対象企業を再生させる必要性がある、また再生させる合理性と計画の実現可能性の十分な説明があれば必ず合意は得られるものと確信しております。

現に今まで難航したことはありましたが最終的な合意を得られなかったケースはありません。

再生計画完成後の最終的なフォローアップについても我々は取り組んでおります。

合意を得られた再生計画書について企業に実行してもらうわけですけども実行の進捗状況については三ヶ月に一度、報告を受け、フォローしております。

以上が大阪府中小企業再生支援協議会のスキームでございます。

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3.再生支援(二次対応)企業の決定基準

• 持ち込み経路別の相談企業数と二次対応案件数

• 判断基準

• 再生支援困難な企業

  

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

次に再生支援二次対応の企業の決定基準を申し上げますけれども、その前に大阪府中小企業再生支援競技会に持ち込まれた相談案件と二次対応案件について少し説明をさしていただきます。

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大阪府中小企業再生支援協議会「相談持ち込み経路別企業数」

1.一次対応の内訳

一次対応持込先「合計」

企業本人金融機関商工会議所RCC

一次対応持込先「15年度」 一次対応持込先「16年度」

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

図3

企業本人金融機関商工会議所RCC

企業本人金融機関商工会議所RCC

平成16年12月31日現在  (単位:社)

2.50%20.75%11.41%3RCC

0.00%00.75%10.47%1商工会議所

28.75%2310.53%1417.37%37金融機関

68.75%5587.97%11780.75%172企業本人

100.00%80100.00%133100.00%213合 計

構成比16年度構成比15年度構成比合計 

見ていただければわかると思うんですけれども、平成15年度16年度の比較におきまして、まず一次対応の件数で企業・本人から持ち込まれたもの、それから金融機関からの持ち込み、商工会議所からの紹介・持ち込み、RCCからの持ち込みと、だいたい持ち込み経路としてはこのような形になるわけです。

各々の数字については、そこに書いてある通りでございます。

この部の中で持ち込み案件が平成15年16年との比較において、金融機関からの持ち込みが増えてるってことを事を確認していただきたいと思います。

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大阪府中小企業再生支援協議会「相談持ち込み経路別企業数」

1.二次対応案件の内訳

平成16年12月31日現在  (単位:社)

6.67%114.29%19.09%2仕入先

6.67%10.00%04.55%1RCC

13.33%242.86%322.73%5政府系金融機関

46.67%714.29%136.36%8金融機関

26.67%428.57%227.27%6企業本人

100.00%15100.00%7100.00%22合 計

構成比16年度構成比15年度構成比合計 

二次対応持込先「合計」

企業本人金融機関政府系金融機関RCC仕入先

二次対応持込先「15年度」 二次対応持込先「16年度」

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

図4

企業本人金融機関政府系金融機関RCC仕入先

企業本人金融機関政府系金融機関RCC仕入先

次に図2の二次対応案件について見ていただきたいと思うんです。

これについても15年度16年度との比較をさしていただいております。

これにこの部分についてもやはり金融機関持ち込み案件が16年度は7件、15年度は1件でございましたけれども、7件と増えております。

という事はやはり金融機関から持ち込まれた案件は二次対応に行く確率が高い。

何故ならば金融機関が意識されて再生支援協議会の中で再生をお願いしたいという形で持ち込まれる案件でございますので、やはり一応の精査を受けているという事で二次案件に上がる確率が高いと、この事がこの図から読み取れると思います。

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3.再生支援(二次対応)企業の決定基準

   財務上の問題(キャッシュフローの不足等)を抱えている、もしくは抱える懸念のある企業であって、事業(もしくは一部の事業)の将来性の見通しの明確化が可能であり、再生の実現可能性が高いと考えられるが、比較的多数の関係者等の調整に困難がある。

• 再生の必要性

• 再生の可能性

• 定量分析と定性分析をふまえての総合判断

• 経営者のモラルハザード

の相関関係で判断

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

次に二次対応の企業の決定基準について説明させて頂きます。

一般的な言い方をしますと財務上の問題、キャッシュフローの不足等を抱えている、もしくは抱える懸念のある企業であって事業、もしくは一部の事業の将来性の明確化が可能であり再生の実現性が高いと考えられる。

また比較的多数の関係者の調整に困難がある。

このような企業の再生支援の決定という事になるわけですけども、これはあまりにも抽象的すぎますので、我々のところでは先程スキームで紹介しましたように一次対応・窓口相談、これは1回、2回、3回くらいのところで、再生に決めるか再生企業にするかどうかを決定させて頂いている訳で、そんなに沢山の資料があるわけではございません。

ただ、今言った基準を元にして、まず企業の再生の必要性、それから再生の可能性、この二つの相関関係で判断をするという事になります。

分析としましては、定量分析と定性分析のこの二つを基本として相互判断をすると。

また、経営者のモラルハザードについても十分検証をしながら判断すると。

このような形をとっております。

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3.再生支援(二次対応)企業の決定基準

  困難な企業

• 債務超過が続き、売上の増加、利益の改善が見込まれない企業

• 財務面では、年商以上の借り入れがある企業

• 収支面では、営業利益段階で3年以上の赤字の企業

• キャッシュフロー面では、経常収支が三期連続して100パー    セント未満(支出超過)の企業

  経営者の資質から見てみると

• 経営者の定性面に問題がある→平気で嘘をつく、無責任、社業に身を入れない、公私混同が著しいなど。

• 経営者があきらめている、やる気がない

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

再生が困難な企業という形では、債務超過が続き売上の増加・利益の改善が見込まれない企業、財務面では年商以上の借り入れがある企業、収支面では営業利益段階で3年以上の赤字の企業、キャッシュフロー面では経常収支が3期連続して100%未満支出超過の企業、このような企業に関しては再生困難、我々は取り上げにくい、このように判断いたします。

それから定性面の経営者の資質の面から見ますと、経営者の定性面に問題があると、平気でうそをつくとか面談をさせて頂いて短時間の判断になるんですけど、よってきたる原因のところ、かなり無責任であるとか社業に対しての身の入れ方が足らないとか公私混同があるとか、それから経営者自身に、あまり積極的に前向きの態度が見られない、やる気が無い、このような経営者の場合、また、事情徴収させていただく中で経営者自身の能力に関しても我々は判断させて頂いております。

このような形で基本的には再生するべきかどうか、再生二次案件に上げるかどうかを判断させていただく訳ですけども、先程も言いましたように、だいたい2回もしくは3回の面談で決定する事になります。

定性面につきましては一応3期の決算を持ってきていただいて見させていただく形を取っております。

それと会社案内等ですね、企業の実態が解るもの等を持ってきて頂いて大まかに企業を掴むような形での判断をさせて頂いております。

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4.再生計画作成支援の基本

 ①再生計画における基本要素

現時点の基本認識

ここに至った原因

P/Lの再生

B/Sの再生

キャッシュフロー認識

経営改善

企業価値判断‥‥‥‥‥

経営者責任

生産価値

将来キャッシュフローによるDCF法

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

再生計画の作成支援における基本についてご説明申し上げます。

先程もいいましたように、中小企業の場合、独自に再建計画等を作成する能力に欠けている企業が大変多くございます。

したがいまして、再生計画書の作成におきましては、再生支援協議会が逆の立場として逆に中心になるというケースが多いです。

この場合に基本的には我々の所はチームで再生計画の作成をしていただく訳ですけれども、その基本になる部分については次のようなものがあると私は考えております。また、チームにもこの旨を伝えております。

まず、基本要素といたしましては、やっぱり現状認識が一番重要である、というふうに考えております。

現状認識の部分につきましては、数字を基にした現状認識をすると、この意味でもデューデリデンスをまず最初にしていただきます。

で、その中で、ここに至った原因、結局支援を要請しなきゃいけない企業ですから、支援を要請しなきゃいけない事になった原因ですね、この原因分析を充分にしていただくと、いう事を次にしていただきます。それから、これは一番重要な問題だと思うんですけれども、P/Lの再生、です。P/Lの再生無くて再生はありません、ありえません。結局、収益がキッチリと出る企業でないと再生という事は考えられない訳ですから、P/Lの再生については一番重要な問題として考えていただいております。

で、当然B/Sも傷んでいる場合が多いんですけども、BLの再生の部分につきましては、やはりそのP/Lの再生があってBLの再生があるというふうに私は考えております。

その中で、キャッシュフローの認識ですね、これもが、もう大きな要素になってきます。あの、まずその企業自身がですね、P/L収益がキッチリ出る企業にさすためには、企業によってはかなりの経営改善と言う部分と取り入れていかなければP/Lの改善にはならないと、いうような部分もございます。

そのためには、経営改善についてのアドバイス、もしくは実行すべき計画の提案等をさせていただきます。

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で、次の企業価値判断の部分なんですけども、これは全ての再生計画に必要かどうかは別ですけども、特にあのRCC案件ではですね、特に大阪の場合には金融機関の破綻によって債権がRCCに行ったというような企業先もたくさんありまして、RCCから卒業したい、もしくはRCC自身もこの企業についてはもうRCCから卒業してもらってもいいと、こういうような事案におきましては、企業価値判断というところが中心になります。

これについても、再生支援協議会、公平な第三者機関としてその部分を計画して、企業とRCCとの中間に入ってそれをすると、その事によって企業再生をさすと、この場合に企業価値判断という事は重要な要素になってきます。

その場合の2つの要素がございまして、当然の事として継続企業でございますので、企業価値判断においては、キャッシュフローによるDCF法が基本的な考え方になるんですけども、それと清算価値ですね。

この2つを合せた形での価値判断を我々は基準に置いて提案させていただくと、このように考えております。

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4.再生計画作成支援の基本

 ①再生計画における基本要素

メインバンクも再生に同意が基本

債権者側・債務者側いずれにも偏らない公正かつ

 中立的な第三者機関として、説得力ある再生計画

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

それと、もう一つ経営者責任。モラルハザードの事からしましても、これをキッチリと計画書の中に入れると、こういう事を心がけております。

それと、再生支援協議会の場合には、基本的な要素はメインバンクとの同意、が基本となっております。

従いまして、早い時期にメインバンクとの協議もさせていただいて、メインバンクの同意を得てやるという事です。

今のその8つの要素の中で、やはり我々再生支援協議会は債権者側・債務者側いずれにも偏らない、公正かつ中立な第三者機関としての、説得力ある再生計画を作るという事を基にしております。

またチームの皆にもそのことを充分認識してもらったうえで再生計画書を作成してもらうようにしております。

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4.再生計画作成支援の基本

 ②最適スキームの選択

内科的‥‥

外科的‥‥

・新資金導入    ・リスケジュール

・借入金の圧縮   ・業務改革

・管理会計の導入

・債務免除  ・DES   ・DDS

・営業譲渡+清算

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

それでは、最適スキームの選択という項目についてご説明申し上げます。

基本的にはどのようなスキームを取るのかと、再生においてどのような、この企業においてどのスキームが一番適切かと、これ一番難しい部分なんですけども、私は最適スキームの分野として、まず内科的な部分と外科的な部分に分けられると考えております。

内科的な形としては、新規資金の導入とかリスケジュール、これ組み合わせの部分もございますけども、このような部分。

それから一部資産等の売却によって債務の圧縮を図ると。

それと業務改革を図ると。

それから管理会計の導入をしていただくと、まぁこの内科的部分の組み合わせによってスキームを作る場合、これが内科的なスキームだと思っております。

で、これではもうどうしようもないという部分については、金融機関からの支援をようせいするという形で、債務免除、それからDES、それからDDS、それから営業譲渡プラス特別清算と言うスキーム、これもございます。

どのようなスキームでこの企業にとっては再生が一番適切なスキームであるのかと、この判断はとても難しいところですけども、今言いましたように、かなりその金融機関の見方も変わってきておりまして、今まで無かったDDS、デッド・デッド・スクワップというような形の再生手法についてもですね、金融機関が協調してそれに協力していただけると、このような形になっている事から、かなりその再生についてのスキームの幅は広がっていると、私は思っております。

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5. 再生の実例

 ①複数金融機関によるリスケジュールの調整の実例

 

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

※添付資料1 をプリントアウトしてお手元に用意してください。

それでは、大阪府中小企業再生支援協議会が実際に取り組んだ事例について御紹介申し上げます。

まず1番目の事例は、複数金融機関によるリスケジュールの調整の実例であります。

スキームチャートは次の通りです。

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5. 再生の実例

 ①複数金融機関によるリスケジュールの調整の実例 

<事例>

1.企業の現状等

 A社は、飲食業を営む企業(資本金2,000万円、従業員160名、年商7億5,000万円)。昭和62年に創業し、平成12年8月に現在地に店舗を移転し、その後、平成13年6月、平成14年10月に相次いで新店舗を出店し、業務拡大を行った。 しかしながら、各新店舗の業績は当初の予定を下回るものであり、却って既存店の資金繰りを圧迫する結果となってしまった。

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

後でこのスキームチャートについては御紹介申し上げますが、事例は、この会社はA社と呼びます。

飲食業を営む企業です。

資本金2000万円、従業員160名、年商7億5000万円の企業です。

昭和62年に創業し、現在の大阪御堂筋に店、本店を移転し、その後平成13年6月、14年、平成14年10月に、相次いで新店舗を出店し、業務拡大を行いました。

しかしながら、新店舗の業績は計画予想よりも大きく下回るものであって、かえって既存店の資金繰りを圧迫する結果となってしまいました。

このような状況で、私共の再生支援会に相談があった訳です。

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5. 再生の実例

 ①複数金融機関によるリスケジュールの調整の実例 

2.経営状況分析

 ・財務状況 直近3期の決算報告書を検証

 ・借入先  4行

 ・実質的財務状況の把握

  前々期B/Sは債務超過にはなっていないが、支援チームで財務  諸表・証憑類の精査を行った結果、実質的債務超過となっていた。  協議会の指示で前期B/Sで修正を図り実態が表現された。

 ・上記分析の結果を踏まえた債務者区分の推定等→破綻懸念先

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

当協議会は、三期の決算書と、それからこの企業自身のコアの部分、これはあの守秘義務の関係がありますのでどういうコアであるかは説明は省略させていただきますけども、コアの部分がかなり良いということから再生支援を決定させていただきました。

早速支援チームを作りました。個別チームとしては、このケースでは先程言いました税理士さん公認会計士さんのチームと共に、飲食業に詳しい中小企業診断士さんも入っていただきました。

財務諸表の精査と再構築の計画書、再生計画案の制作にとりかかりました。

経営の状況分析については、前々期のB/S、バランスシートは債務超過にはなっていませんでした。

しかし、支援チームで財務諸表の精査を行った結果、実質的な債務超過となっていました。協議会のほうで指示いたしまして全期のB/Sで修正を図り、実態が把握されることになりました。

先程もいいましたように、実質的な債務超過という事でございます。

この企業は、各金融機関に対しては、約定返済をキッチリと継続しておりました。

このため、多分各金融機関はこの会社に対する債務者区分の判断としては正常先になっていたと思います。

しかしながら、私共のほうでデューデリをやりました結果、この企業は買掛金の支払いをかなり遅延させている。それから、店の基本である家賃についても遅延をしている。

それから社会保険料も遅延。

このようなところのしわ寄せによって、逆にこれをする事によって金融機関に対しては精一杯の返済を続けてきたと、こういうような実態が判明致しました。

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5. 再生の実例

 ①複数金融機関によるリスケジュールの調整の実例

3 再生計画策定支援

 ~経緯~

 平成15年3月、当協議会に対し再生支援の相談があった。

 当協議会の指導を受け、新店舗のうち不採算店を直ちに閉鎖し、一方、当協議会としても、当社が将来的に正常な資金繰りに戻ることが財務内容等から確認できたことから、平成15年4月、当社に対する再生支援を正式に決定した。

 そして、当協議会は、再生支援決定を受けて、税理士、中小企業診断士による個別支援チームを立ち上げ、財務諸表の精査と再生構築計画等、再生計画案を作成した。

 その後、政府系金融機関及び関係金融機関とのバンクミーティングの開催や個別交渉等、調整を重ねた結果、各関係機関から当社に対する再生支援の協力を取り付けることができた

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

我々はこの結果をまず各金融機関にキッチリした数字を示すことによってお知らせしますと共に、金融機関に対して再生支援の協力を要請いたしました。

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5. 再生の実例

 ①複数金融機関によるリスケジュールの調整の実例

 <再生計画策定支援の骨子>

 次の計画を実施することにより、滞留買掛債務の早期解消を図り、さらに2年以内の資金繰りの正常化と債務超過の解消を図る。

1.滞留買掛債務解消のための政府系金融機関及びメインバンク(保  証協会)からの新規運転資金を確保する。

2.既存借入金のリスケジュールを実施し資金繰りの安定化を図る。

3.財務管理の強化を図り、関係機関に対する収支状況及び金融取引  状況を定期的に報告し、関係機関との関係を正常化させる。

4.当協議会が示した再構築計画書に基づく事業を実施し、売上高の  増加と利益の確保に努める。

5.さらなる経費削減及び新規店舗の出店の拡大事業を当面凍結し、  企業努力による返済減資、キャッシュフローを確保する。

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

再生計画案の骨子は次の計画を実施することによって滞留買掛債務の早期解消を図り、さらに2年以内の資金繰りの正常化と債務超過の解消を図ると言うことです。

一番目に滞留買い掛け債務の解消のため、政府系の金融機関および形の上でメインになっておりました、保証協会が形の上ではメインになっていたんですけども、これの組替え等によって保証協会の御協力を得て、新規資金の導入に成功致しました。

金額は8000万でございましたけども、まずこの確保をさしていただきました。

それから既存の借入金についてのリスケジュールを実施して、資金繰りの安定化を図ると。

財務管理の管理を図り、関係機関に対する収支状況おより金融取引情報を定期的に報告し、関係機関との関係を正常化させると。

このような形で考えました。

それと共に一番やはり重要なのは企業のキャッシュフローを確保することにあります。

この企業の再構築案を示すと共にこれの実施を要求致しました。

基本的には売上金の増加と経費削減という部分でございますけども、このために今までかなり経理のほうがあまりよく出来ていなかった部分がございまして、各店舗ごとの管理会計をキッチリしていただくと。

それと月次をキッチリと、月次決算をキッチリしていただくと。

この2点を要求致しました。

特に固定費の部分については、かなり経費削減の可能性のある、特に仕入れの部分について、無駄な仕入れでロスにしてる部分がある、このような点の見直しもお願い致しました。新規出店については、当面凍結させていただくと。

売上増大と固定費の削減、これも中心になる話なんですけども、返済原資のキャッシュフローを確保するためにこの部分について踏み込んだ形で中小企業診断士さんの意見書も入れた計画書を作成させていただきました。

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5. 再生の実例

 ①複数金融機関によるリスケジュールの調整の実例 

<結語>

1.協議会、支援チームが短期間に財務諸表の精査・分析を実施し、再生の方向性を示したこと及び作成された再生計画書・再構築計画書の内容が詳細かつ正確であったことにより、関係機関から高い評価を得られ調整がスムーズに行えた。

2.その結果、新規協調融資、メイン銀行(保証協会)から新規・借換融資が確保でき、各取引金融機関からリスケジュールの支援を得た。

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

この計画書を基にしまして、政府系の金融機関、関係金融機関とのバックミーティングを開催させていただいた訳ですけども、2回のバックミーティングで調整が全てでき、再生の協力が得ることが出来ました。先程も言いましたけれども元に戻りますと、このスキームは新規資金の導入とリスケジュールという事でございます。

リスケジュールの内容は、2倍、返済期間を2倍に延ばしていただくという形を取らしていただきました。新規資金の導入におきましても、リスケジュールの同意におきましても、我々の方とすれば計画書の中で経営者責任を明確にしていただく、即ち経営者の報酬をカットしていただく、それから今後は家賃、高額家賃の減額の交渉もしていただく、等々、計画書の中に全てを盛り込みましてキャッシュフローの計画算を作らせていただきまして、各金融機関にお示しさせていただけたと、この事がリスケジュールの同意を得た大きな要素だと考えております。

リスケジュール、いわゆる再生の中では先程言った内科的方法ですけれども、基本的に各金融機関に対して債権放棄等の支援を求めると言うものでなく、返済はすべてやりますよと、

ただ、返済期間についてのリスケジュールのお願いという事で、この事が出来て企業のデフォルトから守ると言う方法は、金融機関にとっては一番協力しやすい方法だと思います。簡単な事例のように見えますけども、本件事例を完成させて思った事はやはりキッチリとしたデューデリの結果等、を早期にやれたと、それから現実的な数字、将来のキャッシュフロー数字をキッチリと示すことが出来た。それから経営改善計画をキッチリと作ることが出来た。それを基にした再生計画書ができたと。

でこういう事を金融機関に示すことができた事から、各金融機関からの評価を得てリスケジュールもスムーズにできたと考えております。

また、この計画書を基にしてこれを信頼して頂いて新規協調融資ができたと思っております。

したがいまして、新規資金の導入、リスケジュールという内科的方法であっても、正確なデューデリを前提とした再生計画書がありきと私は思っております。

それが無ければリスケジュールの調整をしたところでなかなか取引金融機関の同意を得にくいのではないかと、このように考えております。これが一番目の事例でございます。

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5. 再生の実例

 ②金融機関による無税償却を条件とする債権放棄の実例

 

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

※添付資料2 をプリントアウトしてお手元に用意してください。

それでは、大阪府中小企業再生支援協議会が取組みました二番目の事例について紹介申し上げます。

本事例は金融機関による無税償却を条件とする債券放棄の実例でございます。

スキームチャートを見ていただきたいと思います。

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5. 再生の実例

 ②金融機関による無税償却を条件とする債権放棄の実例

<事例>

 当案件の債務者企業(B社)は、大手国内電機メーカーとのつながりが深く、当該メーカーの近隣に、本社事務所及び制御機器工場を所有している。また、液晶基盤の製造技術を有していたため、当該メーカーからの要請により、九州に子会社を設立、製造工場を建設して、当該メーカーほか数社へ液晶関係の電子部品を納入し、経営は順調に推移していた。

 

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

まずこの会社はB社と呼びますけども、大手国内電器メーカーとの繋がりが深く、当該メーカーの近隣に、本社事務所及び制御機械工場所有しておりました。

また、液晶基盤の製造技術を有していたため、当該メーカーからの要請により、九州に子会社を設立し、製造工場を設立しました。

当該メーカーほか数社へ液晶関係の電子部品を納入し、経営は順調に推移していました。

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5. 再生の実例

 ②金融機関による無税償却を条件とする債権放棄の実例

 しかし、昨今の液晶事業の競争激化により、当該メーカーの液晶部門が他の大手電機メーカーの液晶部門と統合したため、B社は液晶部門から撤退せざるを得なくなり、平成15年7月に子会社の工場従業員を解雇し、子会社自体も清算に向かっていた。当然、子会社の債務を保証していた親会社であるB社へ、損失のしわ寄せが至り、実質的な債務超過状態に陥った。

 九州の子会社は清算し、工場はB社が取得した。しかし、B社は子会社の債務の引継により、3億円強の債務超過となった。

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

しかし、昨今の液晶事業の競争激化により、当該メーカーの液晶部門が他の大手電機メーカーの液晶部門と統合されたために、B社は液晶部門から撤退せざるを得なくなり、平成15年7月に子会社、九州の子会社ですけども、これを閉鎖する事になりました。

工場従業員を解雇し、子会社自体も清算に向いました。

当然、子会社の債務について保証していた親会社であるB社へ、損失のしわ寄せがより、実質的な債務超過会社になったという事例です。

九州の子会社を清算した結果、一応B者がこの工場を取得しましたけれども、B社は子会社の債務の引継いだ事により、3億円強の債務超過となってしまいました。

再生支援についてこの段階での相談がありました。

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5. 再生の実例

 ②金融機関による無税償却を条件とする債権放棄の実例

 <再生計画策定支援の骨子>

 B社は一行取引であったことから、メインバンクと話し合いに入った結果、長年の取引先であり、経営者の人柄・企業の実力等から債権放棄を含めた支援協力の同意を取り付けた。

 しかし、メインバンクの債権放棄を取り付けはしたものの、「債権放棄額について、税務上の無税償却を行うことができれば放棄する」との条件付で、この無税償却の可否を大阪国税局へ照会するための資料を、協議会にて作成することとなった。

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

B社は一行取引、一つの銀行での取引でありましたことから、メインバンクとの話し合いにまず入りました。

まず我々の方ではチームを構成してデューデリをかけると共にメインバンクとの話し合いに入ったわけです。

メインバンクの意向は、長年の取引先であり、経営者の人柄・企業の実力等から債権放棄を含めた支援をしてもよい、協力の同意を取り付ける事ができました。

ただ、債券放棄については、債券放棄はしてもよいが税務上の無税償却を行うことができるのであればこの債券放棄に同意すると、条件付きでありました。

この事から我々は事業計画を作成し、金融支援額について精査し、メインバンクとの間で合意をすると共に、無税償却について国税局へ紹介する事となった訳です。

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5. 再生の実例

 ②金融機関による無税償却を条件とする債権放棄の実例

<無税償却の条件及びポイント>

 法人税基本通達9-6-1

 1.再生型の法的手続きによる債権放棄

 2.清算型の法的手続きによる債権放棄

 3.関係者の協議決定による債権放棄

 4.回収不能という形での書面通知による債権放棄

 

【参照:国税庁HP】 http://www.nta.go.jp/category/tutatu/kihon/houjin/09/09_06_01.htm

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

御承知の通り、法人税基本通達9-6-1で、債権放棄による貸し倒れ損失について無税での償却ができる場合については、1、再生型の法的手続きによる債権放棄、すなわち会社更生、民事再生によって裁判所によって決められた債務整理により切り捨てられる部分についてのものについては、貸し倒れ損失処理をする事はできるとされている事、また、2の清算型の法的手続きによる債権放棄についても同じく認められている、これはまぁ破産等でございます。それと3として関係者の協議決定による債権放棄という事で債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の債務整理を定めているものと、またその2として行政機関または金融機関、その他第三者の斡旋による当事者間の協議により締結された締結で、その内容が1に準ずるものという形であります。

ただそれともう一つ4として、3年から5年の長期間に渡って債務超過が続いて回収不可能という形で、債権放棄を書面によってすると、この4つの形態についてしか、債券放棄による貸倒損失についてはありません。

そこで、我々再生支援協議会が作成した債券放棄について無税償却を一律できないかという形で、経済産業省と国税との間で協議を持って頂きましたら、結論とすれば一応、各案件ごとに審査させていただく。

十分にその再生支援の主旨を理解した上で協力はさせていただくけれども、案件毎の処理とさせていただくという結論になった訳です。

この事案が無税償却という形で大阪府再生支援協議会から国税の方に持ち込んで、無税償却について許可をいただくという第一号案件となった訳です。

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5. 再生の実例

 ②金融機関による無税償却を条件とする債権放棄の実例

<無税償却の条件及びポイント>

 無税償却の照会は、個別案件として扱われるため、審理課への照会を要する。

 1.損失負担の必要性

 2.支援者にとって損失負担等を行う相当な理由はあるか

 3.再建計画(支援内容)の合理性

 4.損失負担額(支援額)の合理性

 5.代表者及び役員の経営責任

 6.株主責任

 7.支援者の範囲の相当性

 8.負担割合(支援割合)の合理性

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

ところでこの無税償却の条件については、なんでもかんでもオーケーという訳ではありません。

我々が国税と協議させていただいた経験に基づいて、この事を御説明させていただきたいと思います。

まず再生支援協議会は事前に国税の方に持ち込みをさせていただくと共に、国税からは金融機関からの無税償却についての申し入れをしてほしいと、こういう形になりました。

形式はそのように無税償却をお願いする金融機関から国税へ持ち込むと、こういう形になります。そこで、その部分につきまして重要な部分については8項目あります。

1番目は損失負担の必要性です。

この会社をもとにして説明させていただきますと、この会社の場合には平成17年3月末において私共のデューデリの結果をふまえますと、子会社からの保証債務の引き継ぎを含めまして3億2700万の債務超過になるという事が判明しました。

この事によって金利および元金による返済の負担が財務内容を圧迫して自力による再生が困難であると、16年4月以降資金繰りが急迫しており、保証買付融資を受けたメインバンクのプロパ融資については金利をまず3~2%に減免していただき、さらに元本部分についても返済額の緩和処置を取っております。

このままの数字を続けたとしても、債務返済までには約26年かかるという、このような状況になっておりました。

このような形態の企業である事から、この企業の再生の為には、金融機関からの支援が必要である。

このように判断させていただき、支援者にとっても損失負担等を行う相当な理由はあるかに、という事を検討判断した訳です。

支援の必要性が十分有ると、特に再建策を講じる事無く倒産等の法的整理を行った場合、メインバンクの損失総額は破産清算の場合2億8500万程度のロス見込みとなります。

今回の免除額は2億5000万でございますから、この事からしましても清算をするより再建をする方が経済合理性が有ると言う事ができます。

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さらに法的整理によれば、たとえ再建型の法的整理であったとしても事実上の倒産等として報道され倒産と言うレッテルを張られ、企業価値が毀損する事は明らかであります。

また、逆に私的整理であれば風評被害を防げますし、企業イメージの劣化を防げます。

私的整理は金融機関による債券放棄の合意のみを対象としており、他の取引先等に対しては何ら迷惑をかける事なく、今後も営業活動について支障をきたす事がないという事で、私的整理としての金融支援、債券放棄と言う金融支援については相当な理由がある。

このような形で説明をさせていただきました。

さらにこのB社はメーカーの主力協力会社であり、かなり高い技術力を持っております。当該会社の電子部品が円滑に納入できない時には、最終納入メーカーのダメージも大きいと共に、B社の電子部品のユニット製造ラインには地元の零細業者約50社が、部品の納入および人員の派遣約150名をしていたわけですけれども、法的整理により清算型倒産手続きとなった場合には、連鎖倒産等の悪影響を及ぼす恐れがあります。

支援する事に相当な理由があると言う事ができます。

この事を十分な説明資料を付けて説明させていただきました。

次に支援者にとって損失負担等を行う相当な理由があるかという事ですけれども我々再生支援協議会の方で会社側と十分な打ち合わせをし、今後の事業計画を立てさせて頂きました。もともとこの企業は経常利益は黒字で安定的に推移しており、メーカーからの安定受注、それと九州の子会社を使った工場を取得しましたので、使った新規の開発による受注増加も計画上でありました。この計画を中に落とし込む事で今度比較的順調な売上が見込まれ、これについても十分な検証をさせていただいたうえで、将来キャッシュフローについて再建計画書を作らせていただきました。

債券の回収の確実性というものに対する合理的な数字をもって再建計画を作成しました。この事を国税にも示しました。次いで、損失負担額の合理性です。損失負担額、支援額の合理性についてはこれについてもこの会社の再建計画において、我々公平な第三者としてキッチリと精査させていただいた数字をもって、経営危機を回避するための必要最小限の数字をはじき出し、十分吟味した上でその損失額を提案させていただいております。

これについても資料等を添付し、説明をさせていただきました。この会社の基本的な経営改善の具体的なものを少し話させていただきます。まず、工場資産等の売却、それから一部不要な不動産の売却、それから不採算品目の取扱いについての縮減、人員整理リストラ計画についても入れさせて頂きました。

それから液晶の撤退についてメーカーの方から一部保証金をいただきましたけれども、これについても再弁済に当てて圧縮をさせていただきました。

現経営者の持っている個人資産の不要な部分についても売却によって返済をさせていただきました。

これとメーカーからの継続的な受注内容の確認、それから新規開発先よりの受注についても見通しをたてました。

このような綿密に返済計画のこのような形で返済計画の中に綿密にこのようなものを落としこんで返済予定、いわゆる将来キャッキュフローについての計画を作成させていただきました。

次に、代表者及び役員の経営責任について、です。

代表者および役員の経営責任については、まず第一に役員の報酬を半分にしていただきました。

また、将来支給される退職金請求権については経営者責任として事前に放棄していただく、という形をとりました。代表者自身が持っている別荘、これは厚生、会社の厚生、福利厚生施設として持っていたんですけども、これについても売却をしていただいて、返済に充当する、という形をとりました。

以上、経営者責任としてこのような形の経営者責任の提案をさせていただき、実行していただきました。

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ただ、経営者の代表者の交代という部分については、この代表者自身がメーカーとの繋がりが深いと共に、メーカーとの間で大きな働きを果たしており、逆に代表者を降りていただくとギクシャクするという事もありまして、代表取締役の解任という形はとりませんでした。それから株主責任のぶんにつきましては、大多数の株式を代表者本人とその一族で持っておられましたけれども、基本的には株主責任として減資をして第三者増資をするという形を取るのは、通常株主責任の取り方なんですけども、この会社の場合には第三者のよる出資を貰うという事はかなり困難な状況という事もありまして、一応減資手続きはおこないませんでした。

ただし、丁度その長男さんとの間での後継者問題もありましたので、一株あたり1円という形で株主を長男に移転するという形で処理をさせていただきました。

次に、支援者の範囲の相当性ですけども、この場合は取引金融機関はほぼ一行でしたので、一行からの債券放棄の同意を得ますといいという事で、この範囲については今回の場合には問題になりませんでした。

次に負担割合、支援割合の合理性ですけれども、これについても再建計画を実施する際の債券放棄額について債権者と債務者と支援協議会の間で十分な検討をさせていただきました。

その数字については先程も言いましたように、この企業が再生するための必要最小限の支援であるという数字を我々の方で出させていただきましたので、この数字の合理性についての資料等を提供して、国税の方にもこの部分を納得していただきました。

以上が無税償却についての国税に無税償却をお願いする場合に必要な要素についてお話しさせていただいた訳ですけれども、債権者等の間で無税償却、債券放棄をするから無税償却を認めてくれと、何が何でもという訳じゃないという事は御理解願ったと思うんです。基本的にはやはりちゃんとした再建計画書、それからキッチリしたデューデリを踏まえた数字を前提にした支援額の妥当性、相当性、先程言った8つの条件を合理的な資料を付けて説明できるという形での無税償却の承認を得る事が重要だと思います。

この点でやはり一応私的整理のガイドラインというものを意識した形での計画書が必要だと、私は考えております。

以上、第2案についての無税償却についての御紹介を申し上げました。

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5. 再生の実例

  ③信用金庫のDDS活用による再生の実例

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

※添付資料3 をプリントアウトしてお手元に用意してください。

次に、第3の事例について説明させていただきます。

信用金庫のDDS活用による再生の実例でございます。

最初にスキームチャートを見て下さい。

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5. 再生の実例

  ③信用金庫のDDS活用による再生の実例

 <事例>

 C社は、昭和33年11月に建具店として創業の後、昭和46年アール状サッシ製造工場を設置し、昭和50年10月に法人化した。その後、工場、配送センター等を次々と設置し、会社設立以来、現社長の父親が経営を行ってきたが、平成15年9月に長男が社長を引き継いだ。

 事業としては、特殊サッシ、オーダー系トップライトの製造・販売が主たる事業であり、大手サッシメーカー6社及びその他主要建材企業との取引が中心である。工場設置以来、メーカーの加工協力店として技術、品質の指導を受けつつ独自の曲げ加工技術改良を重ね、特許なども取得するとともに独自のブランドを築き、バブル経済及び建築意匠の多様化の波により右肩上がりで成長してきた。しかしながら、バブル経済崩壊後、建築投資の冷え込みの影響を受け同業者との製品価格競争も激化し、特殊製品の付加価値が下がる状況に陥り徐々に売上が減少していた。

 

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

DDSにつきましては他の講義で説明が有ると思いますのでDDSの詳しい内容についてはここでは触れません。

いわゆる資本的劣後再建という形式ですけれども、金融機関からの再生支援についてある一定債券部分を劣後にするという事であり、劣分にする部分と再生計画中に支払う部分とに分けて、劣分にする部分を再生計画中のものについてはキッチリと再生計画を作成すると、それを実行していただくという形の提案になるわけです。

従いまして、重要な問題はこのDDSの場合にはどの部分を劣分にするか、どの部分を再生計画中に支払いするか、それをしっかり実現していくための再生計画を作るというのは重要な要素となります。

本件の場合、この図のように、この会社は資本金2000万円、売上高が12億円、従業員が90名という会社であります。この会社は昭和33年の11月に建具店として創業されました。

その後、昭和46年にアール状サッシ製造工場を設置し、昭和50年10月に法人化をした会社です。その後、工場、配送センター等を次々と設置し、会社設立以来、現社長の父親が経営してきましたが、15年9月に長男が会社を引き継いだと、こういう会社です。

事業としては特種サッシ、オーダー系のトップライトの製造販売が主体です。大手サッシメーカーの大手サッシメーカー6社から、その主要建材企業からの取引が中心でありまして、この工場設置以来メーカーの加工協力店として、技術・品質の指導を受けつつ、独自の曲げ技術・加工技術の改善を重ねて、特許等も取得するというように独自のブランドを築き、バブルの経済期には建築意匠の多様化等の波に乗り、右肩上がりで成長してきました。しかしながら、バブル経済崩壊後建築意匠の多様化の冷え込みによりまして、また同業他社も出てきて製品価格の低下というような事で特殊製品の付加価値が下がる状況におちいり、徐々に売上が減少しここに至ったと、こういう状況でございます。

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5. 再生の実例

  ③信用金庫のDDS活用による再生の実例 

 C社の危機的な状況は数年前から兆候が見られていたが、会社、金融機関ともに問題を先送りにし抜本的な対策をしなかったこと。さらに、平成5年に購入した本社工場の含み損が7億8千万円となり、資産状況に大きな影響を与えたことのが、資金調達の道を途絶えさせ、経営が行き詰る大きな原因となったといえる。

 ここにきて、メインバンクの支援も限界となり、債務圧縮による抜本的な財務・経営改善を図るべく、当協議会への相談となった。

 

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

この企業は最初に相談を受けて決算書等の精査をしました結果、約13億円の負債総額。

逆におおざっぱに資産の方は4億ぐらい、約8億くらいの債務超過という会社でした。

このままではこの会社は基本的には債務者区分の中では破綻懸念もしくは実質破綻の会社と言う事ができると思いました。

ただし、この相談を受けた時に私達の方とすればこの会社自身がもっている技術力、それから製造工場、それと若い社長のやる気等を感じまして、社会的にもこの会社は潰してしまうにはもったいないという事で再生可能性の部分はかなり低かったんですけども、再生さす必要性というものに重点をおきまして再生の決定をさせていただきました。

まずメインバンクの方にその相談を持ちかけましたところ、メインバンクは古い付き合いであるという事で支援についての同意をしてくれました。

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5. 再生の実例

  ③信用金庫のDDS活用による再生の実例

<再生計画策定支援の骨子>

 次の計画を実施することにより、7年以内の資金繰りの正常化と債務超過を解消する。

①財務面

・メインバンクはDDS(資本的劣後)の手法により債権9億円の処理を行う。

・サブ行の債務については、保証協会分についてはリ・スケジュールとしその他の債権については売却により処理する。

・営業キャッシュ・フローの改善に努める。

②事業面

・工場の集約、人員配置等改善を行いコストの削減を図り、利益の確保に努める。

・営業および受注管理の徹底を図り、受注キャンセルをなくすことにより売上減少を食い止める。

・計画したアクションプランを経営者をトップとして社員全員で確実に実行する。

テーマ⑥: 事例紹介(その4)中小企業の再生に向けた取り組み

で、この会社の再生についてのスキーム作りにかかった訳ですけども、まずデューデリから入りこれをもとにして我々とすればDDSという手法を取らせていただく事にしました。

先程も言いましたように、メインバンクの債券は13億のうち約12億、あと1億は他行3行にありました。これがこの会社の債務実態でした。

従いまして、ほぼ9割以上ですね、の部分はメインバンクであり、メインバンクさんとの間でDDSができれば他行さん、他行3行についてはほぼついてきていただけるであろう、こういうような判断のもとにこのスキームを作成および実行に入らせていただきました。ただ、通常のDDSの場合には一応5年以内を一応の基準としてますけども、この企業の場合特に支援金融機関は信用金庫であるという事から、5年では少し厳しいという事で7年を資金繰りの正常化と債務超過を解消する期間として我々は設定させていただきました。これをもとしにて計画を作らせていただきました。

これと共に事業面ではかなり散らばった工場がありましたので工場を集約していただき、本社の中で事業が集約できると、こういう形を提案させていただきまた実行していただきました。

それと人員配置についても改善を提案させていただきました。

コスト削減を図って利益を確保していただくという事業面での改革案を、かなり若い社長との間で詰めました。

また、営業及び受注管理の徹底、特にこの企業の場合には受注キャンセルというものがかなりあったんですね。

それを無くすための方策として提案させていただき、受注キャンセルによる売り上げ減少を止めると。

それから経営者自身トップセールスマン、セールスとして動いていただくという事によっての受注を確保すると、その辺の事をキッチリ利益計画のもとで見積もりをとって受注をしていただくというような形のものも入れさせていただいて、細かいアクションプランを作る事を若い経営者と一緒にさしていただきました。

これを実行していただくという形で取り組みました。

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計画アクションプランについては十分な形でフォローアップ、バックアップをさせていただくという事もさしていただいました

この結果実行性を前提としてある一定の収益についての見通しを我々の方でたてる事ができました。

将来キャッシュフローにつきましてはできるだけ客観的合理性を持った上で我々が見させていただき、数字を作らせていただきました。

これをもとにしますと7年での正常化、それ以外の返済可能額を正常化、またそれの返済可能額を引き出して、それ以外のものにつきましてはDDSに、劣後にしていただくという形で信用組合の方の承諾を得ました。

最終処理につきましては、まだこの事例については完成案件と言う事はできません。

という事は、最終的なDDSの契約等にはまだ至っておりません。

但し合意はもういただいております。債券のうち9億を劣後させていただくという形と、サブ行につきましては保証境界分についてはリスケジュールとして長期化していただくという形での合意をいただきました。

それ以外の2行については無担保債券でありました事から、サービスサーに売却をしていただいて債務免除、一部支払い債務免除を受けるという形での処理をさせていただくという形での合意を得る事ができました。

以上、この組み合わせによってこの事業の再生を図ったという事例でございます。

今も言いましたように、DDSを採用する場合にとって一番重要な問題は計画によって5年、もしくは7年、まぁ今回の場合は7年ですが5年計画によってきちんとその間の返済ができるというキャッシュフローの計画書ですね、

それと劣後にする部分をどこで分けるのか、どういう形でそういう部分を作るのかというのが一番重要な要素だと、DDSの事例では私は思っております。

以上で私の講議は終わります。

中小企業の再生に携わられる皆様方の参考になればという事で講議をさしていただきました。今後ますます中小企業の再生についてはスペシャリストが必要な時期に来てるんじゃないかと私は思いますので、是非参考にしていただきまして皆様の一助となればと思います。以上でございます。