発達障害の理解と支援 - 内閣府ホームページ発達障害の理解と支援...

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発達障害の理解と支援 発達障害の理解と支援 発達障害の理解と支援 発達障害の理解と支援 思春・青年の課題から成人思春・青年の課題から成人精神科医 定本ゆきこ 1 発達障害を有し、生きていくこと 発達障害を有し、生きていくこと 生活(社会生活)の中で、大なり小なり生きにく さを感じながら生きていく さを感じながら生きていく生きていくプロセスの中で、時に耐性を上回るス トレスや困難に見舞われることがある。 発達障害あってもなくても ライフサイクルごと 発達障害あってもなくてもライフサイクルごと の課題があり、直面しなければならない。 適切なサポ トがあれば 発達課題をまずまず 適切なサポトがあれば発達課題をまずまず 円滑に乗り越え、危機をやり過ごすこともできる。 2

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Page 1: 発達障害の理解と支援 - 内閣府ホームページ発達障害の理解と支援 思春期期期 期・青年期の課題から成人期へ 精神科医定本ゆきこ 1

発達障害の理解と支援発達障害の理解と支援発達障害の理解と支援発達障害の理解と支援思春期・青年期の課題から成人期へ思春期・青年期の課題から成人期へ期 期 期期 期 期

精神科医 定本ゆきこ精神科医 定本ゆ

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発達障害を有し、生きていくこと発達障害を有し、生きていくこと

• 生活(社会生活)の中で、大なり小なり生きにくさを感じながら生きていくさを感じながら生きていく。

• 生きていくプロセスの中で、時に耐性を上回るストレスや困難に見舞われることがある。

• 発達障害あってもなくても ライフサイクルごと発達障害あってもなくても、ライフサイクルごとの課題があり、直面しなければならない。

• 適切なサポ トがあれば 発達課題をまずまず• 適切なサポートがあれば、発達課題をまずまず円滑に乗り越え、危機をやり過ごすこともできる。

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Page 2: 発達障害の理解と支援 - 内閣府ホームページ発達障害の理解と支援 思春期期期 期・青年期の課題から成人期へ 精神科医定本ゆきこ 1

出⽣

乳児

幼児

学童

⻘年

思春

成⼈⽣ 児

期児期

童期

年期

春期

⼈期

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社会・環境からの影響社会・環境からの影響

情緒 ⾏動 症状情緒,⾏動,症状

(発達) ⼈格?(発達)→⼈格?

⽣物学的基盤

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発達障害への介入と支援発達障害への介入と支援

• 発達障害は、できるだけ早目に対応(支援)を始めたい。を始めたい。

• 予防的に対応すること、早く介入することが大切大切。

• 適切に支援をすることで症状の発症を抑止できることもあるきることもある。

• ライフ・サイクルごとに、ありがちな状態像とラ ク 、あり な状態像周囲や社会との間で起きやすい問題やリスクを知っていることが役立つ。

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• 特に、高機能で、社会の複雑な事情が絡んでいる場合は、症状が形成されて、支援だけでは十分ではない場合も少なくない。

• 早めに医療ケアを求める方がよい。

• 後手後手になると大変。傷が後に尾を引きやすく、回復しにくいので。く、回復しにくいので。

• 一方で、タイミングのよい効果的な介入をすることで 嘘のように速やかに回復し 尾を引かことで、嘘のように速やかに回復し、尾を引かないことも少なくない。

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発達的視点を持った上でのアセスメントを

• 高機能の場合は、青年期・成人期まで未診断のまま経過している場合が少なくないま経過している場合が少なくない。

• 症状は、人生の経過のある時に起こったものだが、そのず と前から「生きにくさ」があ たのではないそのずっと前から「生きにくさ」があったのではないかという視点

生育歴を少し詳しく聴く とで その人の経験してき• 生育歴を少し詳しく聴くことで、その人の経験してきた困難と、症状の背景に発達障害がある可能性を見逃さないこと見逃さないこと

• どのようなライフサイクルを経過してきたか・・

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子どもの社会的存在としての発達とライ テ ジに いてライフステージについて

• 全ての子どもは日々,発達している。全ての子どもは日々,発達している。

• 発達障害があろうがなかろうが

• 次第に社会的存在としてのスキルや在り方を身に付けていく

• それはいつも周りの身近な人々とのやりとりの中でりの中で

• 発達していく過程で,獲得していくものに影響を与えやすい因子としての発達障害

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• ライフステージを見通して支援することが大切である

• 「今ここで」なされる支援は、子どものどのライフステ ジの どのような課題に沿うものなイフステージの、どのような課題に沿うものなのかを意識する

• 学年、学校で自己完結してはならない!

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出⽣

乳児

幼児

学童

⻘年

思春⽣ 児

期児期

童期

年期

春期

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ライフサイクルごとの発達課題ライフサイクルごとの発達課題

• 乳児期・・基本的信頼vs不信乳児期 基本的信頼vs不信

• 幼児期・・自律性vs恥,疑惑

• 学童期・・積極性vs罪悪感

生産性vs劣等感生産性vs劣等感

• 青年期・・同一性vs同一性拡散

• 成人期・・親密さvs孤独

生殖性vs停滞生殖性vs停滞11

ライフサイクルごとの発達課題ライフサイクルごとの発達課題

• どの時期においても、周りの身近なひととのやりとりが重要

• どのように受け止められているか、どのような声かけをされているかな声かけをされているか

• 獲得したものを土台に、次のライフステージに

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発達障害を有する場合発達障害を有する場合、

• 発達していく過程で、ライフルサイクルごとの、課題につまづき、思春期まで持ち越してしまってはいないかと思われることがあるてはいないかと思われることがある

• それぞれの時期、どのような状態像であり、周りとど ようなやりとりがなされ ただろう周りとどのようなやりとりがなされていただろうか・・

• 周りと育ち合ってきた経過を思いめぐらすことがあるがある

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出⽣

乳児

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学童

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年期

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発達障害と二次障害発達障害と二次障害

• 誰にとっても 成長 発達していく過程がある• 誰にとっても,成長,発達していく過程がある

• 子ども側の資質的弱さに気付いた時,それまでの育ち、周囲と育ち合ってきた経過を想像してみるみる

• 子どもは困っていたのではないだろうか、困りの果てに 症状や問題行動が形成されてりの果てに、症状や問題行動が形成されていたのではないだろうか

• そして、ライフサイクルごとの課題につまづき、正しいスキルを獲得し損ねたのではないだろ正しいスキルを獲得し損ねたのではないだろうか 15

生育歴 妊娠 出産時生育歴 妊娠・出産時

• 妊娠,出産時の状況は、聞いておくべきである

• 出産時に何らかのトラブルがあった場合は出産時に何らかのトラブルがあった場合は少なくない(仮死,難産,吸引分娩など)

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生育歴 早期発達歴(乳幼児期)生育歴 早期発達歴(乳幼児期)

• 乳幼児期は,発達障害の特性が最もpureに現れる時期

• できれば,親にも聞きたい

• ものすごく育児が大変だったケースもあれば、手がかからなかったケースもある

• 発達の遅れがあったかどうか(乳幼児健診で何か言ば がわれたか)特にことばの遅れがあったか

• 社会性,対人関係の問題を表す徴候があったか ・・目が合わなかった,呼んでも応えなかった,言葉が話せても会話が成立しなかった,人に関心がなかった,人遊び 集団行動がとれなか た一人遊び,集団行動がとれなかった

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生育歴 早期発達歴(乳幼児期)生育歴 早期発達歴(乳幼児期)つづき

• この頃から(物心ついたときから)人付き合いに苦手意識を感じている場合もある

• 遊びや生活にこだわりがなかったか(収集癖,特定のものに執着,ビデオの観方,ミニカーの遊び方)

• パニックや理由が分からないことで泣き続けたりすることがあったか

• 大きい音が苦手,食べ物の好き嫌いが激しいなど、ある種の感覚に過敏なところはなかったか

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幼児期に陥りやすい問題幼児期に陥りやすい問題

• 育てにくい子,分かりにくい子であるために,親の

育児負担,育児不安が高くなりやすい育 負 ,育 安 高 り す

• 軽度であるゆえに障害の存在に気付かれにくい

• 虐待や不適切な養育を受けることになりやすい• 虐待や不適切な養育を受けることになりやすい

• この頃から、親子関係、家庭での居心地に問題が

出始める場合がある出始める場合がある

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生育歴 小学校時代生育歴 小学校時代

• 障害児学級ではないことがほとんど

• 集団の中で社会性の障害がより明らかになったり自覚されるようになるたり自覚されるようになる

• 表面的には大きな問題がないことも多い

• 孤立が自覚され,このころ(4,5年から)人に馴染めないことを自覚し,悩み始める例も。

• 皆と同じようにできず、身勝手、わがままなどと教師に言われていたことはないかと教師に言われていたことはないか

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生育歴 小学校時代生育歴 小学校時代

• いじめられたエピソードがあるか 何度もある• いじめられたエピソードがあるか、何度もあるか

人の嫌がることを言 たりして対人トラブルが• 人の嫌がることを言ったりして対人トラブルが多くなかったか

• 授業中はどんな様子だったか,集中して聞いていたか、立ち歩きなどはなかったか

• 科目の得意不得意はどうか(数学,国語,社会,体育などに特徴が出やすい)体育などに特徴が出やすい)

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学齢期に見られやすい問題学齢期に見られやすい問題集団,社会生活における不適応が目立ってくる

1)他の子と一緒に行動することができない、

先生の指示に従わない(従えない)友だちが作れない、協調的に振舞えない友 ち 作れな 、協調的 振舞 な身勝手な(に見える)行動、こだわりとパニックわり ック

2)孤立やいじめの対象になりやすい大人による不適切な対応や間違った教育的違 教指導を受けてしまうこともある

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生育歴 中学・高校時代生育歴 中学 高校時代

• 引き続き、クラス内で孤立していたり、いじめられていたりの状況が続いている場合が多いれていたりの状況が続いている場合が多い

• 対人関係の苦手意識を強め始める

• 対人恐怖症状が出始めることもある

不登校 引きこもり傾向になることもある• 不登校、引きこもり傾向になることもある

• 低い自己像、劣等感を強める場合がある低 自 像、劣等感を強 る場合 ある

• 昔の被害体験を繰り返し思い出し、恨みや後悔を抱き始めることもある悔を抱き始めることもある

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生育歴 中学・高校時代生育歴 中学 高校時代

勉 が• 勉強が得意で、高い学力を有しているケースでは、それ程苦痛を感じていない場合もある。

• 何か一つのことに熱中、没頭していたか(化学部 鉄道部 運動部の場合レギュラ になれ部、鉄道部、運動部の場合レギュラーになれなくても真面目に練習)

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生育歴 大学時代生育歴 大学時代

• 対人関係の苦手意識は続く対人関係の苦手意識は続く

• 日常生活の中で、こだわりは続いている

• しかし、学問の専門分野が本人に合っていれば、適応水準はそう悪くない 割合楽に過ごせ、適応水準 そう悪くな 割合楽 過る時期と思われる

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思春期 青年期の難しさ思春期・青年期の難しさ

• 誰にとっても容易ではない思春期の課題、大なり小なり困難が予想される。小なり困難が予想される。

• 特に、未診断、未治療のケースで、思春期・青年期に問題が顕在化することがある期に問題が顕在化することがある。

• それまでの周囲の誤解と適切でなかった対応が積 重なり 問題が理解されな まま積み重なり、問題が理解されないままにストレスが蓄積されていることがある。

• 自己像の問題に深く関わっている。

• 対人関係の深刻な困難を抱えていることが多い。対人関係の深刻な困難を抱えていることが多い。

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思春期心性について思春期心性について

• 思春期は第二次性徴から始まる思春期は第 次性徴から始まる

• 心身の発育や発達のアンバランスな時期

「自分 が 番 心事 自 像• 「自分」が一番の関心事。自己像の問題。

• 自己愛的と同時に自己否定的自己愛的と同時に自己否定的

• 敏感さ、極端さ、不安

対人関係に困難を抱えやすくなる

不安や緊張を高めやすい不安や緊張を高めやすい

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幼児

学童

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(治療的)二者関係の持つ意味(治療的)二者関係の持つ意味

• この時期、子どもたちは非常に依存的になり、自分をまるごと受け入れてくれる二者関係を求める。る 者関係を求 る。

• 同時に、自己主張ができてくるので、大人に対して非常に厳しい目を持つ 身人に対して非常に厳しい目を持つ。身近な大人との葛藤を持つ場合も多い。

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(治療的) 者関係 持 意味(治療的)二者関係の持つ意味(その2)(その2)

依存を受け止め 自己主張も受け止める• 依存を受け止め、自己主張も受け止めることが思春期の二者関係における支援

• 見守ること、認めること、相談に乗ること、モデルになることモデルになること

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Page 16: 発達障害の理解と支援 - 内閣府ホームページ発達障害の理解と支援 思春期期期 期・青年期の課題から成人期へ 精神科医定本ゆきこ 1

居場所と仲間の大切さ居場所と仲間の大切さ

家以外に行くと ろ 自分が存在し• 家以外に行くところ。自分が存在していい

場所があることの大切さ。

• そして、自分の存在を認め、関わりを持って

いる人 仲間がいることの大きさいる人。仲間がいることの大きさ。

居場所と仲間によ て 自分を認められるし• 居場所と仲間によって、自分を認められるし

肯定できる

~「わたしはわたしである」

「わたしはわたしでいい」わたしはわたしでいい」

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発達障害を有する場合発達障害を有する場合、

• 誰にとっても容易ではない思春期の課題、大なり小なり困難が予想される。小なり困難が予想される。

• 特に、未診断、未治療のケースで、思春期・青年期に問題が顕在化することがある期に問題が顕在化することがある。

• それまでの周囲の誤解と適切でなかった対応が積 重なり 問題が理解されな まま積み重なり、問題が理解されないままにストレスが蓄積されていることがある。

• 自己像の問題に深く関わっている。

• 対人関係の深刻な困難を抱えていることが多い。対人関係の深刻な困難を抱えていることが多い。

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Page 17: 発達障害の理解と支援 - 内閣府ホームページ発達障害の理解と支援 思春期期期 期・青年期の課題から成人期へ 精神科医定本ゆきこ 1

ひきず ている外傷体験ひきずっている外傷体験

• 現実場面での失敗体験が積み重なっており、過去 嫌な記憶からなかなか抜け出せな (去の嫌な記憶からなかなか抜け出せない。(フラッシュバック)

• ソーシャルコミュニケーションスキルの拙さのために 対人関係でトラブルを起こしやすい 傷つめに、対人関係でトラブルを起こしやすい。傷つき体験ばかりが重なり癒されたことがない。

• 他者や社会との良好な関わりの経験が乏しい否定的な経験ばかりをしていることが多い。

• 固執性が強いため、被害感がいつまでも続く。33

抱えている問題抱えている問題

• 自分のことを見つめるようになり、劣等感を感じたり自分を責めたり低い自己像に悩んだりするる

• 自分には居場所がないと感じ、周囲の人々や社会との間に大きな距離を感じている社会との間に大きな距離を感じている

• 青年期における新たな課題(進路、就労,友達青年期 新 課題( 路、就労,友関係、異性関係など)に向かい、深刻な不適応感や困難を抱えている感や困難を抱えている

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Page 18: 発達障害の理解と支援 - 内閣府ホームページ発達障害の理解と支援 思春期期期 期・青年期の課題から成人期へ 精神科医定本ゆきこ 1

春期青年期 起 す 症状思春期青年期に起こりやすい問題、症状

• 不登校 ひきこもり

• 職場不適応

• 精神科的問題• 精神科的問題

・・気分障害(抑うつ)、強迫性障害、社会不安障害(対人恐怖) 精神病症状不安障害(対人恐怖)、精神病症状

• 違法行為

• 性的問題

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精神科的問題について精神科的問題について

• 気分障害はうつがほとんど。そうでない場合に比べて、7 8倍う になりやすい7~8倍うつになりやすい。

• 元々強迫的だが、思春期になり強迫症状が顕著に増大することがある。環境不適合・不適応が原因である場合が多い。

• 人を意識するようになってから、人付き合いに苦手意識を持ち、対人恐怖になる場合も多いと思われる。識を持 、 怖 場合 多 わ 。

• たまに精神病様症状を発症することがあり統合失調症と区別がつかない 大概は ストレスをためてのパ症と区別がつかない。大概は、ストレスをためてのパニック。比較的速やかに改善する。

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治療的関わりの実際治療的関わりの実際

• 障害ゆえの生きにくさと,そこから来る苦痛を良く理解していること。それが治療的関わりの第一歩。関わり 第 歩。

• そのためにも、適正な診断による全体的な理解と 面接所見や検査等による障害な理解と、面接所見や検査等による障害特性の正確なアシスメントが基盤になる。

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治療的関わりの実際(その2)治療的関わりの実際(その2)

• 本人の現在と過去に対して、専門的な知識と視点による理解を し 治療的関わ識と視点による理解を示し、治療的関わりを提供するつもりであることを伝える。

• 診断を受けることで正しく自己理解を進められるように援助する その上でこそめられるように援助する。その上でこそ、自分の過去と折り合いが付けられ、未来の自分にある程度の見通しを持 ことがの自分にある程度の見通しを持つことができる。

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治療的関わりの実際(その3)治療的関わりの実際(その3)

• これまでの失敗経験の積み重ねと、ほどほどの距離をとれるように支援。

• 過去の被害的な経験と痛みを真剣に し• 過去の被害的な経験と痛みを真剣に、しかしあっさりと聞く。共感は向けるが、深追いしない追いしない。

• 繰り返し話される場合もあっさりと聞く。理解は示しながらもこだわりを助長しないように。うに。

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治療的関わりの実際(その4)治療的関わりの実際(その4)

• 自己評価を回復できるように支援する。これからは少 も成功体験を積める うれからは少しでも成功体験を積めるように、現実の生活場面において配慮や工夫に努める。

• 本人の特性や得意なことを踏まえた上で• 本人の特性や得意なことを踏まえた上で、望ましい方向での進路や生活の仕方を探る 学校選択 仕事の職種の選定 余暇る。学校選択、仕事の職種の選定、余暇の過ごし方や趣味について、具体的に助言する。

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治療的関わり 実際(そ )治療的関わりの実際(その5)

• 視覚的構造化やスケジュール表の活用など、困りが軽減されるように具体的な支援困りが軽減されるように具体的な支援。

• 家族や学校、職場など周囲の人々の理解を家族や学校、職場な 周囲 人 解を進め支援に前向きになってもらうように、説明や情報交換に努める。明 情報交換 努 。

• 家族はもっとも重要な人たちなので、特に理解を求め本人との関係調整に努めるととも解を求め本人との関係調整に努めるとともに、家族の相談にも乗る。

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治療的関わり 実際(そ )治療的関わりの実際(その6)

• 何を話しても見下されず、批判されないと感じさせることによって、どんなことでも相談できる援助者でいる談できる援助者でいる

• 相談に応じてはなるべく具体的な助言をする 時に応じて仲立ち 指示することも こる。時に応じて仲立ち,指示することも。こちらが臨機応変に。

• 好意的な目で見て,タイミングを逃さずに認めてあげる 誉めること。めてあげる,誉めること。

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家族 の支援について家族への支援について

• 家族は,最も近しい人的環境を形成し、本人の発達促進に関わっている大切な人たち人の発達促進に関わっている大切な人たちである。精神科疾患 治療にお 家族 協力が• 精神科疾患の治療において、家族の協力が得られるか否かで、大分予後が違う。病気のことと、背景の発達障害について、理解を進めてもらいたいめてもらいたい

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家族への支援について(その2)家族への支援について(その2)

• しかし、家族もまた,限界のある人間である。い も理想的な対応ができるとは限らず ストいつも理想的な対応ができるとは限らず、ストレスも強い。抑うつやパニック症状などの症状が出る場合もある。

• 家族もまた,支援を必要としている人たちで家族もまた,支援を必要としている人たちであると認識すべきである。

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Page 23: 発達障害の理解と支援 - 内閣府ホームページ発達障害の理解と支援 思春期期期 期・青年期の課題から成人期へ 精神科医定本ゆきこ 1

家族 の支援について(その3)家族への支援について(その3)

• 家族の負担と不安に配慮した介入が求められる 孤立させてはいけないれる。孤立させてはいけない。

• 抽象的ではなく具体的な助言をする。何より抽象的ではなく具体的な助言をする。何より子どもが良くなる有効な助言が家族を楽にするする。

• 子どもをよく理解する専門家であり、子育てや子どもの支援におけるパートナーとして、ともに困り、小さなことでもともに喜ぶ姿勢がともに困り、小さな とでもともに喜ぶ姿勢が必要である。

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家族への支援について(その4)家族への支援について(その4)

• ただ、思春期の事例については、本人と根深い葛藤のある家族もある。あくまで本人の主治医として、時には対決することもあると主治医として、時には対決することもあると覚悟するべきである。

18歳以降になれば 家族と距離をとること• 18歳以降になれば、家族と距離をとることが良い場合も少なくない。事例によって、本人にとっての家族環境の特徴を見据えて、距離の取り方や関係性のあり方を考慮して距離の取り方や関係性のあり方を考慮していく必要がある。

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家族 支援 (そ )家族への支援について(その5)

• 家族にも発達障害の徴候が認められる場合も少なくない。そうなれば、必要に応じて他機も少なくない。そうなれば、必要に応じて他機関と連携を進め、より多角的で重層的な支援が求められる。が求められる。

• 本人サポートの中心的主体(主に母親)に徴候が認められる場合は 強力で具体的 集候が認められる場合は、強力で具体的、集中的な子育て支援。

その他の家族に徴候が認められる場合は• その他の家族に徴候が認められる場合は、その家族への支援が並行してなされるように助言 支援助言、支援。

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まとめまとめ

• 思春期は、子どもから大人に移り変わっていく誰にとっても容易でない時期。誰にとっても容易でない時期。

• 発達障害を有する場合、少しだけ多くの注意と支援が必要支援が必要。

• まずまずの自己像を持ち、社会における居場まずまずの自己像を持ち、社会における居場所を見出し、自分なりの社会との良好な関係を築くことができるために 思春期・青年期のを築くことができるために、思春期・青年期の支援は求められる。

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青年期から成人期へ青年期から成人期へ

• 自己像や居場所、「自分探し」も大切なのだが、それ以上に実際面での適応水準が問題、それ以 実際面 適応水準 問題になってくる

ストレスをどう回避し どう上手くやっていくか• ストレスをどう回避し、どう上手くやっていくかが重要になってくる

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生活歴 就労について生活歴 就労について

• なかなか就職できないことがある

・面接などがうまくできない

・対人恐怖のために、社会になかなか踏み出せない対 恐怖 、社会 な な 踏 出 な

• 就労場面で上手く仕事ができない

・臨機応変の対応ができない臨機応変の対応ができない

・言われたことしかできず、気がきかない

・優先順位をつけたり手抜きをしながら同時に二つ・優先順位をつけたり手抜きをしながら同時に二つ

三つの仕事ができない

上司や同僚に責められて思い悩む・上司や同僚に責められて思い悩む

• 仕事内容が得意分野にフィットしているとその道の

第一人者になることもある50

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生活歴 結婚について生活歴 結婚について

• 未診断で 結婚している例は多い未診断で、結婚している例は多い

• 相互的関係をとれにくいので、夫婦間トラブルが多かったり 家庭内離婚のケ スは少なくない多かったり、家庭内離婚のケースは少なくない

• ASDの夫だと妻が苦労する

• ASDの妻だと、子どもが苦労する

• 害のないタイプのASDの夫と依存的でない妻の• 害のないタイプのASDの夫と依存的でない妻の組み合わせは上手くいきやすいと思われる

夫婦間の問題が子育てで表面化することがある• 夫婦間の問題が子育てで表面化することがある

51

生活歴 家族との関係生活歴 家族との関係

• 親との関係は 良くなかった場合が多い• 親との関係は、良くなかった場合が多い

• 否定的な態度や言葉を受けてきた記憶が多く残り、今も傷を引きずっていたり強い恨みを抱いているケースもあるるケ もある

• 一方で、親(主に母親)がいたからここまで生きてこれたと思われるケ スも多いてこれたと思われるケースも多い

• 親(多くは父親だが、母親も)の方も、変わっていると思える場合もある

• 祖父母までは遡った方がよい• 祖父母までは遡った方がよい52

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主訴主訴

「う が断然多い• 「うつ」が断然多い

• 対人関係の悩み

人間関係がとれない,コミュニケーションが苦手

対人トラブルが多い対人トラブルが多い

• 不登校,ひきこもり

仕事や家事が上手くできない• 仕事や家事が上手くできない

• 夫婦関係,子育てが上手くいかない

• こだわり,強迫

• フラッシュバック(昔のことを思い出す)フラッシュバック(昔のことを思い出す)

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よく聞かれる訴えよく聞かれる訴え

• 人に,あるいは人と人との間に溶け込めない

• 昔から人に避けられる,嫌われる,変わっていると見られるが どうしてか分からないいると見られるが,どうしてか分からない

• 人の考えていることが分からない

• 予期せぬことが起こるとどうしてよいか分からなくなる,パニックになるなくなる, ックになる

• 急かされると困る

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気分障害について気分障害について

• ASDの人が抑うつ状態に陥るリスクは一般りも相当高よりも相当高い

• 固く生真面目で,融通の利かない性格傾固く生真面目で,融通の利かない性格傾向を持ちやすいので

• 職場や家庭で上手くいかないことが起こり• 職場や家庭で上手くいかないことが起こりやすいので

サポ テ ブな人間関係を持てていない場• サポーティブな人間関係を持てていない場合が多いので

55

気分障害について気分障害について

• 抗うつ剤は有効

• ストレスになっている状況をなるべく回避させてあげることが重要せてあげる とが重要

• 回避できない場合は、工夫とサポートシステムを作るテムを作る

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統合失調症との相違について統合失調症との相違について

被害妄想 幻覚様訴えを示す場合はあり 誤• 被害妄想,幻覚様訴えを示す場合はあり,誤診されることもあると思われるが,多くは心理的に追い詰められての心因反応に追い詰められての心因反応

• PDDの障害特性をよく理解しておれば,症状は了解可能

• 一次妄想(妄想知覚 妄想気分 妄想着想)が次妄想(妄想知覚,妄想気分,妄想着想)があるかないか

• 他の症状があるのかないのか(不安 恐怖• 他の症状があるのかないのか(不安,恐怖,

興奮,生活水準の低下など)

• 生育歴が重要57

統合失調症との相違について統合失調症との相違について

• 統合失調症の合併は当然あると思われるが,その率は一般に比べて高くない。

• 薬物は十分有効• 薬物は十分有効

• ストレスになっている状況を取り除くと,症状は結構早く改善する

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診断をする意味~医療にできることとは診断をする意味~医療にできることとは

薬物によ 症状を緩和する とは きる• 薬物によって症状を緩和することはできる

• 障害特性ゆえの生きにくさや苦痛を理解している存在(ほ と きる場となる)(ほっとできる場となる)

• 日常生活,社会生活の送り方や様々な問題についての具体的な助言の具体的な助言

• 周囲の人たち(家族,学校や職場の人)に説明してあげる(橋渡し役)げる(橋渡し役)

• 診断することで福祉行政システム施策につなぐ

• 福祉、教育、就労支援、地域精神保健、司法等との連携、協力関係の中で、正しいアセスメントをし、方向性の指針を示すの指針を示す

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薬物療法について薬物療法について

• 気分の調整(うつ、躁)、衝動の制御、不安、興奮、不眠等には効果が高い。眠

• 強迫、強迫傾向からくるイライラにも効果があるる。

• 副作用に留意しながら、適切な薬剤と量を選択して使用すれば、大変助けになる。

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使用する薬剤使用する薬剤

• 抗うつ剤・・SSRI 三環系、スルピリド

• 気分調整剤・・炭酸リチウム• 気分調整剤・・炭酸リチウム、

バルプロ酸ナト リウム

精神安定剤 ペ ド ペ ド• 精神安定剤・・リスペリドン、ハロペリドール、

オランザピン、 アリピプラゾール

• 精神刺激薬・・コンサータ、ストラテラ

• 抗不安剤抗不安剤

• 眠剤

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症例から学ぶ(主訴別に)症例から学ぶ(主訴別に)

① 社会参加していけない

② 職場や家庭での不適応② 職場や家庭での不適応

③ 精神科的症状の発症

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