増え続ける非正規地方公務員の実態と課題hyodo-atsushi.way-nifty.com/seminar/files/hyodo-seminar... ·...
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1
【最優秀論文】
増え続ける非正規地方公務員の実態と課題
―自治体における不安定雇用をなくすためには―
堀内健太
はじめに
公務員といえば、収入は安定していて、クビを切られることは無いといったイメージを
世間一般の方は持っているはずだ。しかし、公務員の中には生活保護の水準に満たない賃
金で、常に雇い止めの危機にさらされながら働いている非正規の公務員が多く存在してい
る。こうした事態は進行しており、公共サービスの質の低下が懸念される。本稿では、非
正規公務員とはどういった存在であるのか、実態を確認し、非正規公務員が増加している
要因を明らかにし、非正規公務員をめぐる問題の解決に何が必要なのか考察する。
1 非正規公務員の実態
1-1 非正規公務員とは
非正規公務員とは国や自治体で働く臨時職員や非常勤職員として雇用されている人のこ
とを指す。
臨時職員とは地方公務員法(地公法)22条 2項または 5項に基づき、正式採用の特例と
して、緊急の場合や臨時の職に関する場合に採用できる。任用期間は六ヶ月の期間で更新
回数一回、最長一年と定められている1。
次に非常勤職員であるが、特別職非常勤職員と一般職非常勤職員の 2 種類ある。公務員
は特別職と一般職に分けられ、特別職に属する以外の一切の職すべてが一般職である。地
公法 3 条 3 項 3 号に基づき任用された非常勤職員は、特別非常勤職員といわれる。ここで
いう特別職の種類として、(a)就任について公選または地方公共団体の議会の選挙、議決
もしくは同委によることを必要とする職、(b)法令または条例、地方公共団体の規則もし
くは地方公共団体の期間の定める規定により設けられた委員及び委員会の構成員の職で臨
時または非常勤のもの、(c)都道府県労働委員会の委員の職で常勤のもの等で、これらに
並んで地公法 3 条 3 項 3 号に「臨時または非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員及びこれ
らの者に準ずる者の職」が規定され、この条文に基づき、特別職非常勤職員として採用さ
れているといわれる2。特別職非常勤職員には地公法が適用されず、労働条件の決定に関し
1 上林陽治『非正規公務員の現在-深化する格差』日本評論社、2015年、22頁。 2 同前、23頁、24頁。
2
ては労働三法が適用される3。
また、賃金や手当について法制度を見ると、臨時職員の場合、地公法が適用されるため、
職務給の原則や給与条例主義の原則など、地公法 24条各項の原則が適用される。これらの
原則の上で、臨時職員は、地方自治法 204条 1項により、給与および旅費支給が受けられ、
204条 2項に列挙されている諸手当も受け取れることになる。その給与や手当の額、支給方
法は自治体の条例で定められなければならない。一方、非常勤職員の場合は、地方自治法
203条の 2に基づき、「報酬」および「費用弁償」を受けられ、その額や支給方法は自治体
の条例で定められる必要がある。しかし、一般職・特別職を問わず非常勤職員は地方自治
法 204条 2項の適用を受けられず、法的には諸手当を受け取れないことになっている 。こ
のことから、何年、何十年と勤務しても、ボーナスも出なければ退職金も支給されないと
いう非正規公務員が数多く存在する。判例として、大分県中津市の中学校で 33年間、非常
勤の図書館司書として働いていた男性が、退職金の支給を求めた裁判で、最高裁は「勤務
時間が常勤職員と同一であっても、採用の形態などから支給対象ではない特別職に当たる」
と判断し、請求を棄却した4 。
図 1 非正規公務員の制度
出所)松尾孝一「地方自治体における非正規職員問題」『青山経済論集』64号、2013年、
61頁(一部省略)。
3 早川征一郎、松尾孝一『国・地方自治体の非正規職員』旬報社、2012年、121頁。 4 http://www.sankei.com/west/news/151117/wst1511170065-n1.html(2016年 12月 23
日閲覧)
区分 特別職非常勤職員 一般職非常勤職員 臨時職員
任用根拠 地公法3条3項3号 地公法17条 地公法22条
地公法 地公法適用なし 地公法適用あり 地公法適用あり
法律の規定なし(面接等による)
競争試験または選考(面接等による)
法律の規定なし(筆記試験、面接等に
よる)
法律の規定なし(通常1年が多い)
6ヶ月以内、最長1年まで
(更新可)
再度の任用は可能(3年または5年の雇用上限を設置する場合がある)
採 用 の 要 件・対象
職員の職に欠員を生じた場合の任命の方法の一つとして、
採用を規定
採用の方法
任期
臨時または非常勤の顧問、参与、 調査員、嘱託員及びこれらの者に準ずる者の職
① 緊急の場合② 臨時の職の場合③ 任用候補者名簿がない場合
3
図 2 非正規公務員への給与等の支給に関する法適用関係
出所)上林陽治「条例による臨時・非常勤職員の処遇の改善」『自治総研』380号、2010年、
52頁。
1-2 非正規公務員の現状
総務省の 2016 年 4 月の調査によると、全国の地方自治体の職員のうち非正規職員は 64
万 4725 人であり、前回調査の 2012年から約 4万 5000人増加したと発表した。正規職員
は 2015年の調査では 273万 8337人であり、全体に対する非正規率は約 19.1%である。ま
た、市町村におけるデータを見る。2016年の非正規職員数は指定都市を含め 48万 9972人
である。正規職員数は 2015年の調査では、123万 8270人であり、全体に対する非正規率
は約 28.4%である。市町村で働く公務員のうち約 3人に1人が非正規公務員なのである。
4
図 3 地方自治体の正規・非正規職員数
出所)各年の総務省「臨時・非常勤職員に関する調査結果について」、「平成 27年地方公
共団体定員管理調査結果の概要」に基づき筆者作成。
注)2016年の正規職員数のみ 2015年の数字。
図 4 自治体区分別非正規公務員の比率
出所)総務省「地方公務員の臨時・非常勤職員に関する実態調査(速報版)」
http://www.soumu.go.jp/main_content/000439015.pdf(2016年 12月 23日閲覧)
職種別に非正規公務員の比率をみると、学童指導員の 92.8%、消費者生活相談員の 86.3%、
図書館員の 67.8%、学校給食調理員の 64.1%、保育士の 52.9%が非正規公務員であり、公
共サービスを非正規公務員が基幹的に担っているといえる。
3,042,122 2,899,378
2,768,913 2,738,337
455,840 499,302603,582 644,725
0
500,000
1,000,000
1,500,000
2,000,000
2,500,000
3,000,000
3,500,000
2005年 2008年 2012年 2016年
(人)
正規職員数
非正規職員数
5
図 5 職種別の非正規公務員分布
出所)自治労「2012年度自治体臨時・非常勤等職員の賃金・労働条件制度調査結果」
非正規公務員が多いにもかかわらず、その処遇は厳しい。時給制では 900 円未満が過半
数を占める。平均の時給 950 円でフルタイム、年間 52 週働いたとしても、年収は約 192
万円であり、ワーキングプアのボーダーラインである年収 200 万円に届かないのだ。この
ような公務員でありながら、年収 200 万円に満たない人は「官製ワーキングプア」と呼ば
れる。
図 6 非正規公務員の時給分布
出所)自治労「2012年度自治体臨時・非常勤等職員の賃金・労働条件制度調査結果」
正規の 4分の 3以上の労働時間である非正規公務員は 61.2%と 6割を超えており、正規
とほぼ同じ労働時間でありながら、年収は 200 万円以下である非正規公務員が多く存在す
ることが分かる。正規とほぼ同じような業務を行っている非正規公務員には正規と均等な
待遇が求められるはずである。
6
図 7 非正規公務員の労働時間別の比率
出所)自治労「2012年度自治体臨時・非常勤等職員の賃金・労働条件制度調査結果」
また、非正規公務員の多くは任期に上限があり、雇用期間の終了が来るたびに更新を繰
り返し、長期間働き続けている方が多く存在する。そのような方々は、更新の際に雇止め
されるのではないかと不安にさらされているのである。
図 8 非正規公務員の雇用上限
出所)自治労「2012年度自治体臨時・非常勤等職員の賃金・労働条件制度調査結果」
昇給について見ていく、非正規公務員の昇給の問題は、実態的に再度任用時に昇給でき
るのかどうかということである。3章でも述べるが、総務省は「同一の職務内容の職に再度
任用され、職務の責任・困難度が同じである場合には、職務の内容と責任に応じて報酬を
決定するという職務給の原則からすれば、報酬額は同一となることに留意すべきである」
と再任用時の昇給について否定している。そして、総務省の調査によると、再度任用時の
報酬・給料の考え方については、「再度任用により職の位置づけが変わることのないので変
更なし」と回答した市町村が圧倒的に多く、多くの自治体で、非正規公務員の昇給や昇格
は行っていないことが分かる。
7
図 9 再度任用時の報酬・給与等の考え方(市町村等)
出所)総務省「臨時・非常勤職員に関する調査結果について(平成 24 年 4 月 1日現在)」
を基に筆者作成。
http://www.soumu.go.jp/main_content/000215168.pdf(2016年 12月 23日閲覧)
非常勤という身分であろうと公務員として働けるのは恵まれているのではないか、とい
うのが世間一般の見方かもしれない。しかし、何年たっても変わらない収入、有期雇用や、
正規との格差など課題は山積みしている。このような実態は、非正規公務員が年々増加し、
公共サービスを基幹的に担っている以上、公共サービスの質の低下につながってしまう。
2 なぜ非正規公務員は増加しているのか
2-1 3つのパターン
非正規公務員の実態について見てきたが、その非正規公務員はなぜ増加しているのかに
ついて考える。統一的な調査がないのでよくわからないが一説によると、1992年には非正
規公務員は 20万~30万人であったとされている5。2016年には約 64万人いるので、20年
で約 3倍に増加したと考えられる。
非正規の拡大の様相は一様ではなく、3つのパターンに分けられる。
① 代替型
急速に非正規公務員が増加しているのには、正規公務員から非正規公務員への置き換え
が進んでいるからである。例としては、保育士が挙げられる。
厚生労働省の社会福祉施設等調査と総務省の定員管理調査を突き合わせて、両者の年度
ごとの差異を算出することにより、常勤的非常勤保育士数を導き出したものが図 7である。
図 10 正規公務員の保育士、常勤的非常勤保育士の推移
5 上林陽治『非正規公務員』日本評論社、2012年、20頁。
再度任用により
職の位置づけが
変わることがない
ので変更なし
再度任用する際
に能力・経験等を
勘案して、より上
位の職に任用し
た場合に報酬も
増額
同一の職種に従
事した経験年数
を勘案して報酬を
増額
その他 母数
特別職非常勤職員 658(85.0%) 15(1.9%) 82(10.6%) 5(0.6%) 774団体一般職非常勤職員 534(75.0%) 16(2.2%) 136(19.1%) 17(2.4%) 712団体臨時職員 1,008(85.9%) 13(1.1%) 121(10.3%) 13(1.1%) 1,173団体
年度 人 増減数 人 増減数 人 増減数2001 125,568 104,516 21,0522010 120,430 -5,138 88,698 -15,818 31,732 10,680
A 公立保育所の専任保育士・常勤保育士
B 公立保育所の保育士
常勤的非常勤保育士
8
出所)上林陽治『非正規公務員の現在-深化する格差』日本評論社、2015年、45頁。
厚生労働省の社会福祉施設等調査の施設従事者は、正規か非正規かにかかわらず、常勤的
に勤務している者を専任者・常勤者として把握する。一方、総務省の定員管理調査が把握
すべき対象は、原則として正規公務員のみである。そうすると、前者の数値から後者の数
値を差し引くと、非正規の常勤的非常勤保育士の人数が導き出される6。図 5から分かるよ
うに、2001年から 2010年にかけて、全国の公立保育所の専任・常勤保育士は 5,138人減
少している。一方、総務省の調査では、15,818人の正規公務員の保育士が減少している。
しかし、常勤的非常勤保育士数は 10,680人増加している。このような正規公務員から非正
規公務員への置き換えは、図書館職員や公立小中学校の教職員などで、顕著に現れている
現象である7。
② 補充型
拡大する行政需要に正規公務員だけでは対応できず、非正規公務員をもって補充すると
いうものである。例としては、ハローワークの労働相談員やケースワーカーが挙げられる。
全国の都道府県労働局およびハローワークでは、リーマンショック以降の雇用対策とし
て、非常勤相談員が 7,600人増加、その後も、10年度、11年度に約 1500人ずつ増員され、
12年度当初、全国のハローワークに勤務する職員は、常勤職員 11,589人に対し、非常勤職
員は 20,176人で、職業紹介関係業務に従事する職員の 3人に 2人は非正規なのである8。
③ 押付型
新たな公共サービス需要に対し、正規公務員を配置するのではなく、最初から非正規公
務員を採用して配置するものである。例としては、消費生活相談員や婦人相談員が挙げら
れる。
2010年 4月、全国の消費生活センターには 3146人の消費生活相談員が配属されている
のだが、内訳に問題がある。正規公務員は 135人、非正規公務員は 2595人で、法人委託、
個人委託が 625人である。つまり、正規 4:非正規 77:委託 19の割合であり、圧倒的に非
正規によって担われているのである9。
消費相談生活業務は、時代とともに大きく変貌したものの、消費者行政発足当初から非
正規公務員によって担われるものと認識されていた。1966年 8月 4日付の国民生活審議会
消費者保護部会「消費者保護組織及び消費者教育に関する中間報告」では、「個別苦情の処
理には豊富な商品知識が必要不可欠であるので、地方公共団体の個別苦情の受付窓口には
日本消費者協会で養成している消費生活コンサルトなどの商品知識の豊富な民間の専門家
を例えば、『非常勤職員』として、配置し、地方公共団体職員と共同で処理に当たらせる等
の措置が望ましい。」と提案している10。
6上林陽治『非正規公務員という問題-問われる公共サービスのあり方』岩波ブックレット、
2013年、42頁。 7 上林、前掲『非正規公務員の現在』46頁。 8 上林、前掲『非正規公務員という問題』43頁。 9 同前、44頁。 10 同前。
9
2-2 非正規増加の 3つの要因
非正規公務員増加には 3つのパターンがあるが、なぜ増加しているのかには 3つの複合
した要因が考えられる。
図 11 地方公共団体の総職員の推移
出所)総務省「平成 27年地方公共団体定員管理調査結果の概要(平成 27年 4月 1日現在)」
http://www.soumu.go.jp/main_content/000391772.pdf(2016年 12月 23日閲覧)
第 1に、定員削減である。地方公務員数のピークは 1994年の 328万 2,492人で、2015
年には 273万 8,337人となっている。約 20年で 54万 4,155人減少している。減少してい
る中、行政分野別にみると警察官や消防員はむしろ増加し、一般行政と教育部門を中心に
減少している11。総務省調査 2012では、最も非正規公務員が多い職種は一般事務職員、2
番目が各種相談員等で構成される「その他(行政職員)」、3番目が教員・講師であることか
ら、正規公務員の減員部門・職種にこそ、非正規公務員が代替して任用されてきたことが
読み取れる12。
第 2に、地方財政の硬直化である。1990年代、バブル経済崩壊後の景気対策に地方財政
が動員されるなかにあって地方自治体では債務が拡大し、さらに不況による租税収入の減
少等により借金依存の財政運営を強いられることになった。歳出においては景気悪化や高
齢化の進展に伴い、生活保護等の社会保障費が急速に拡大した。増大する公債費や社会保
障費の負担を賄うために地方自治体は、人件費を削るしかなかったのだ13。
第 3に行政需要の拡大である。行政需要は 1990年代以降、むしろ高まっている。生活保
11 上林、前掲、『非正規公務員の現在』46頁。 12 同前。 13 同前、47頁。
10
護受給者は増大し、自立を目指す職労支援も高まる。景気後退の中で、収入の減った労働
者の家計では家族も働きに出ざるをえず、この結果、雇用創出事業や職業相談事業への需
要が高まる。共働き世代の増大により保育事業も急速に高まり、都市部を中心に深刻な待
機児童問題が発生している。行政需要の高まりに対して、自治体は人件費拡大圧力につな
がる正規公務員を増やすことはできない14。
これらの 3つが複合して、非正規公務員は増加していると考えられる。
2-3 定員削減の経緯
非正規公務員が増加した要因の一つに定員削減を挙げたが、この定員削減が中でも大き
な要因である。正規公務員の数を減らし続けていては、非正規公務員の増加を止めること
は不可能であろう。では、地方公務員の定員削減とはどのように行われてきたのか。1980
年代から大きく三つの時期に分けて、経緯や背景など詳しく述べていく。
第 1期は 1980年代から地方公務員数がピークの 1994年である。1981年に発足した第二
次臨時行政調査会の提言が定員削減の施策の発端といえる。国鉄や電電公社、専売公社の
民営化を最大の柱とする民営化改革に合わせて、1984年に「行政改革の推進に関する当面
の実施方針について」が閣議決定された15。翌年の 1月には、当時の自治省から各地方自治
体宛に出された通知「地方公共団体における行政改革推進の方針(地方行革大綱)の策定
について」により地方自治体における行政改革の指針として各地方自治体に示された。そ
の主たる内容は、①各地方自治体における行革大綱の策定、②組織の簡素合理化、③給与
の適正化、④定員管理の適正化、⑤民間委託、OA化の推進等であり、定員適正化計画の
策定と実施が求められることとなった16。
地方自治体の職員数は、この地方行革方針の影響により1980年代後半に一時減少したが、
バブル経済の時期にあたる 1989年から再度増加に転じ、1994年のピークに到達している。
第 2期は、1990年代半ば以降の「地方分権」の議論が高まってきた時期である。この時
期には、1995年 5月に成立した地方分権推進法と、同法に基づき発足した地方分権推進委
員会の勧告に沿った形で、「地方分権」改革が進んだ。1996年~1998年にかけて地方分権
推進委員会の勧告(第 1次~5次)が出され、1998年 5月には、この勧告の内容が盛り込
まれる形で「地方分権推進計画」が閣議決定された。そして、同計画は、1999年 7月に成
立した地方分権一括法によって実施に移された。この地方分権一括法により、職員配置や
行政機関設置にかかる各種の必置規制の緩和が関連法の改正を通じて行われ、そのことが
地方自治体の定員削減を促した17。
また、この時期にも、第 1期に続き、国から各地方自治体に定員削減の方針文書が提示
され、それに基づく「定員適正化」が要請されることとなった。1994年に出された「地方
公共団体における行政改革推進のための指針の策定について」や 1997年に地方分権推進委
14 同前、48頁。 15 澤井勝「増大する地方公務員へのニーズと減少する人員」『都市問題』103号、2012年、
50頁。 16 早川、松尾、前掲書、92頁。 17 同前。
11
員会の第 2次勧告を受けて出された「地方自治・新時代に対応した地方公共団体の行政改
革推進のための指針の策定について」である。引き続き定員管理の適正化や地方分権の推
進に伴う必置規制改廃に対応した職員配置を求めた18。
第 3期は、小泉政権下で構造改革が進められてきた 2000年代以降の時期である。2002
年 6月の閣議決定「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」に盛
り込まれた「三位一体改革」で地方財政計画の総額は圧縮された。特に地方交付税は大幅
に圧縮され、2000年度の 21兆 4000億円が 2007年度には 15兆 2000億まで、6兆 2000
億円、29%も削減された19。「三位一体改革」は人員削減を財政面から強いることとなった。
定員削減については、この時期も国から各地方自治体に方針文書が提示され、それに沿
った形で進められた。2005年 3月に「地方公共団体における行政改革の推進ための新たな
指針」により、各地方自体は行政改革と定員削減を国から求められた。この「指針」では、
事務・事業の再編・整理、民間委託等の推進、手当の点検・わたり是正等の給与の適正化
とともに 2005年度から 2009年度までの「集中改革プラン」を策定し公表することや定員
削減目標の明示を要求した。これに従った各都道府県、市区町村がまとめた「集中改革プ
ラン」の取り組み目標は、都道府県が 4.5%減、政令指定都市が 9.4%減、市区町村が 8.6%
減だった。結果、2010年 4月時点での実績はこれを大きく上回った。都道府県は 5.3%減、
政令指定都市が 10.6%減、市区町村は 9.9%減となった20。
以上が定員削減の経緯、背景である。1994年以降、地方自治体の公務員が減少し続けて
いることは、新規採用の抑制や民間委託、そして非正規への置き換えにつながっている。
2-4 公務員数の国際比較
日本は公務員の定員削減が進んでいると述べたが、他国と比べた場合の公務員数はどう
なのか。主要先進国と比較しながらみる。
図 7をみると、国家公務員と地方公務員ともに他の先進国と比べるとかなり少ないこと
が分かる。日本は公務員の数を減らしているが、第 1章で述べたように行政需要はむしろ
高まっている。このまま、もともと少ない正規の職員数を減らし続けることは、ニーズに
応えるために非正規へ代替するという流れを強くすることになる。こうした正規を減らし、
非正規を増やすという悪循環は断ち切らなければならない。
図 12 各国の公務員数(人口千人当たり)
出所)野村総合研究所『公務員数の国際比較に関する調査』を基に筆者作成
18 同前、93頁。 19 澤井、前掲書、51頁。 20 同前。
日本 イギリス フランス アメリカ ドイツ
国家公務員 12.6人 42.4人 53.1人 9.9人 22.3人
地方公務員 42.2人 78.3人 95.8人 73.9人 69.6人
12
3 非正規公務員をめぐる国と組合の動向
3-1 国の方針
非正規公務員の賃金労働条件をめぐる近年の国の政策動向について述べていく。
2009年 4月に総務省は、地方自治体の臨時・非常勤職員と任期付短時間勤務職員の任用・
処遇についての考え方をまとめた通知「臨時・非常勤等職員及び任期付き短時間勤務職員
の任用等について」を各地方自治体に出している。この総務省通知の内容を基に、地方自
治体の非正規公務員の処遇についての国の基本方針をみていく。
① 臨時・非常勤等職員の任用・再度任用についての国の方針
非正規公務員の任用の問題について、総務省の同通知では、「任用根拠の明確化」をうた
い、「臨時・非常勤等職員は、地方公務員法に基づく制度的な位置づけとして、臨時的・補
助的な業務又は特定の学識・経験を要する職務に任期を限って任用するものと解されてい
る」、「臨時・非常勤等職員についての業務の内容や業務に伴う責任の程度は、任期の定め
のない常勤職員と異なると設定されるべきものであることに留意すべきである」、「個々具
体の臨時・非常勤等職員の設定にあたっては、就けようとする職務の内容、勤務形態等に
応じ、いずれの任用根拠に位置づけるかを明確にしておくべきである」として、臨時・非
常勤の任用上の位置づけや職務内容について、以前からの国の方針を確認するものとなっ
ている21。
また、同通知は臨時的任用職員の任期について「地公法第 22条において最長 1年以内と
規定されている」とし、特別職非常勤職員及び一般職非常勤職員の任期についても「原則 1
年以内であると考えられる」としながらも、「成績主義や平等主義の原則の下、客観的な能
力の実証を経て再度任用されることはありうるものである。」としている22。これは、非正
規公務員の任期の定めのない正規公務員への転化は否定するが、その再度任用については
容認しているということである。
② 臨時・非常勤等職員の給与待遇についての国の方針
ここでは給与処遇の問題の中でも重要な昇給についての国の方針について述べる。
非正規公務員の昇給の問題について、上記の総務省通知は、「同一の職務 内容の職に再
度任用され、職務の責任・困難度が同じである場合には、職務の内容と責任に応じて報酬
を決定するという職務給の原則からすれば、報酬額は同一となることに留意すべきである」
とし、再任用時の昇給・昇格を否定している。だがその一方で、同通知は、「なお、毎年の
給与水準の決定に際し、同一又は類似の職種の常勤職員や民間企業の労働者の給与改定の
状況等に配慮し、報酬額を変更することはあり得るものである。」としてベースアップは否
定せず、「また、同一人が同一の職種の職に再度任用される場合であっても、職務内容や責
任の度合い等が変更される場合には、異なる職への任用であることから、報酬額を変更す
ることはあり得るものである」として、職務内容や責任度の変更という条件付きで、再度
21 松尾、前掲書、82頁。 22 同前。
13
任用時における昇給を認めるものとなっている。しかし、地方自治体における実態レベル
では、この通知レベルのやり方すら実施されている例は少ない23。
また、総務省は 2014年 7月 4日に上記の総務省通知を改訂したものを出している。この
2014年の通知では、通勤手当や時間外手当についての適切な取扱い、任用の空白期間と社
会保険等との関係性を明記した厚生労働省通知も引用し、育児など各種休業制度の整備や
業務研修の実施などについても新たに記載する等の2009年の通知から大きな変化といえる
内容もあった24。しかし、非正規公務員にとって大きな課題である雇用の確保・安定に関し
ては改善につながる言及は見られず、一方的な任用替えや雇止めの不安を払拭することに
はつながらなかった。
3-2 組合の方針
次に非正規公務員の賃金労働条件をめぐる組合側の方針として、自治労(全日本自治団
体労働組合)、自治労連(日本自治体労働組合総連合)について述べていく。
① 自治労の方針
自治労は、2009年 8月の第 81回定期大会で決定された運動方針に基づき 2009年 12月
に「臨時・非常勤等職員の処遇改善と雇用安定のための対策委員会」を本部に設置してい
る。この委員会は、2010年 2月まで 5回にわたり検討を行い、その結果を踏まえ自治労は、
「非現業職の非常勤職員への手当支給」、「パートタイム労働法の趣旨の公務員への適用」、
「任期の定めのない短時間勤務職員制度の創設」の 3つを当面の取り組み目標とした。
「パートタイム労働法の趣旨の公務員への適用」については、公務員を適用対象から除外
しているパートタイム労働法の規定を改正することにより地方公務員にもパートタイム労
働法を適用させ、非正規公務員への「均衡処遇」を実現するとしている。「任期の定めのな
い短時間勤務職員制度の創設」については、地方公務員の一般職を常時勤務を要する職と
短時間勤務の職の 2種類とすることにより、任期の定めのない短時間勤務職員を制度とし
て明確に位置づけるとしている25。
② 自治労連の方針
自治労連は、2009年 1月に「臨時・非常勤職員問題検討委員会」を設置し、以後 7回に
わたり検討を行っている。その検討結果を踏まえ自治労連は、以下の 3つを抜本改善策と
した。「本来正規職員を任用すべき職には正規職員を任用できるよう大幅増員すること。そ
して、その職を担っている非正規雇用労働者を正規職員に任用替えすること」、「本格的・
恒常的業務ではあるが勤務時間は短時間の職を担う『均等待遇にもとづく、任期の定めの
ない短時間一般職公務員制度』を確立すること。そして、その職を担っている非正規雇用
労働者を『均等待遇にもとづく、任期の定めのない短時間一般職公務員』に任用替えする
こと」、「非正規雇用労働者を『均等待遇にもとづく、任期の定めのない短時間一般職公務
員』任用替えするにあたっては、該当する非正規雇用労働者全員を、本人の希望にもとづ
23 早川、松尾、前掲書、170頁。 24 野角裕美子「公共サービスを担うすべての非正規労働者の組織化をめざす」『季刊・労働
者の権利』312号、2015年、14頁。 25 早川、松尾、前掲書、172頁。
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き、差別なく、いっせいに、『選考』採用すること」の 3つである26。
そして自治労連は、当面の改善の取り組みとして、「正規募集および正規人員増における
非正規雇用労働者の正規化」、「有期雇用制度の廃止、不当な雇い止め阻止」、「『人事院非常
勤給与指針』の活用と『改正パートタイム労働法』の趣旨の活用」、「賃金における経験加
算、一時金・退職金の支給」等の方針を提起している27。
自治労と自治労連の方針の中で、パートタイム労働法に注目したい。両者ともパートタ
イム労働法を公務員へ適用させることに前向きになっている。パートタイム労働法は、正
規と同等の雇用条件で働いている非正規労働者の正規と均等処遇や正規への転換を推進し
ているが、公務員には適用されない。また、労働契約法では、有期労働契約が繰り返し更
新され、通算 5年を超えた場合、申し込みにより、無期労働契約に転換できるが、これも
公務員には適用されない。民間同様に公務員にも非正規の問題が数多く存在する以上、非
正規公務員を守るような法律は必要であるはずだ。
3-3 非正規公務員の組織化
雇用の安定や処遇改善、格差是正を実現するには、当事者が声を上げることが不可欠で
ある。そのために非正規公務員の組織化は重要である。
自治労は、2015年 8月に石川県で開催した第 88回定期大会において、「第 4次組織強化・
拡大のための推進計画」を機関決定した。この計画は、自治労運動の持続と発展、そして
公共サービスを担う全ての労働者・労働組合を結集するという原点に立ち、「次代の担い手
の育成」、「新規採用者の組織化」、「非正規労働者 10万人組織化」の 3つを最重要課題とし
ている。具体的には、計画の期間(2015年 9月から 2019年 8月までの 4年間)、自治体職
場に既に存在する非正規労働者の 20%を組織化しようという内容である28。
2012年自治労組織基本調査によれば、非正規労働者のうち自治労に加入している組合員
数は 3万 7,704人となっている。組織率を見ると、2009年調査では 6.9%となっているが、
2012年調査では 6.8%と減少しており、非正規公務員の増加に組織化が追いついていない現
状が明らかとなった29。
2014年 2月に早稲田大学メディア文化研究所「公共ネットワーク研究会」が実施した
WEBでの「非正規公務員の実態に関する認知調査」では、民間企業の非正規雇用の実態に
ついては約 7割がその認知をしているのに対し、地方公務員の約 3割が非正規であること
についての認知は 3割強であるなど、非正規公務員の実態が認知されていないことが明ら
かになった。また、年収 200万円に達していない「官製ワーキングプア」の実態認知は 37%、
雇止めのよって非正規公務員が不安定な雇用状況におかれていることの実態認知は 42%な
ど、全てにおいて認知が低いことが分かった30。
世間での認知が低い以上、当事者が訴えかけ世論を喚起していくことをしなければなら
26 同前、173頁。 27 同前。 28 野角、前掲書、15頁。 29 同前。 30 同前。
15
ないのは確かである。その中で、組織率が低いことは、大きな課題である。
3-4 労働組合の取組み
処遇改善への取組みを行った自治体単組を取り上げて具体的に見ていく。事例として東
京都の荒川区職員労働組合(以下「荒川区職労」と表記する)の取組みを見ていく。
荒川区の職員定数は 1983年の 2,446人(一般職常勤職員数)をピークに削減が続き、2009
年度には 1,601人となった。また、非常勤職員の数は 1983年には推定 50人程度であった
が、2010年には 650人と非正規率は約 30%にもなった31。第 2章で述べたように、国が進
めた定員削減が影響し、非正規への置き換えが進んでいることが読み取れる。
荒川区職労は 2001年、区役所内の格差を是正するという目標を初めて掲げて、まず組合
作りに着手し、2003年に図書館と敬老施設の 2職場で非常勤職員を組織する 2つの組合を
結成した。荒川区職労とこの 2つの労組は共同でアンケート調査を実施し、改善要求を出
していった。もともと非正規の雇用年限を設定していない区で、30年を超える長期勤務者
もおり、主な目標は、収入アップと休暇制度などの処遇改善であった。このような取組み
を背景に、2007年 2月に荒川区当局から 3つの労組へ処遇改善案の提示があった32。その
内容は以下のとおりである。
① 能力・技量・責任に応じた職層の新設
能力や技量に応じた役割、担うべき責任に応じた職層を設定し、適切な評価・選考を行
い任用する。同時に職責に見合った処遇への改善。
図 13 荒川区における職制度(荒川区方式)
出所)荒川区職員労働組合「官製ワーキングプア可視化を通した格差是正への一歩」
http://www.jichiro.gr.jp/jichiken_kako/report/rep_aichi33/04/0401_yre/index.htm
(2017年 1月 3日閲覧)
② 所定の勤務時間を超える勤務への対応
事前に勤務時間を変更して対応することを原則とするが、これによりがたい場合には、
超過勤務を命ずることができることとする。超過勤務については、その報酬額を追加して
支給する。
③ 常勤職員に準じた有給休暇等の付与
慶弔休暇(常勤と同等)、夏季休暇(日数増)、病気休暇(制度化と 10日間の有給化)な
31 荒川区職員労働組合「官製ワーキングプア可視化を通した格差是正への一歩」
http://www.jichiro.gr.jp/jichiken_kako/report/rep_aichi33/04/0401_yre/index.htm (2017年 1月 3日閲覧) 32 同前。
見直し後 見直し前一般非常勤(常勤の一般職員に準じた業務) 171,300円 168,600円主任非常勤(常勤の主任主事職員に準じた業務) 202,100円(想定) ―総括非常勤(常勤の係長職員に準じた業務、必要に応じて任用) 250,300円(想定) ―
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どを改善する。
④ 常勤職員に準じた勤務評定の実施
常勤職員に準じた勤務評定を行い、次年度の雇用に係る選考の基礎とする。
⑤ 必要に応じた異動の実施
類似職について必要に応じて異動を行う。
⑥ 必要とされる能力の向上を目指した研修の実施
常勤職員と同様に第一線を担う者として、新任研修、職層や業務に応じ、職務遂行に必
要な研修を実施する。
⑦ 常勤職員に準じた福利厚生
2007年度以降は、荒川区職員互助会の正会員とし、各種サービスの提供を受けられるよ
うにする。
荒川区が求めていたのは、経験に応じた昇給制度と能力に応じた職能制度の複線型であ
った。しかし、総務省や東京都から「長期的継続的勤務を前提とした」昇給制度は認めら
れないという強い圧力があり、上記①のような能力に応じた職層制度となった。昇給制度
が実現しないで選別的職能制度だけを認めることはできないという声が荒川区職労の中で
も強かったが、それでも 30年を超える継続勤務者が一度も昇給していない中で、例え一部
の者であっても報酬の引き上げが実現することが今後の手掛がかりになると考え、荒川区
職労はこの案を受け入れた。また、休暇制度の大幅な改善、常勤並みの勤務評定、人事異
動、研修、福利厚生制度を獲得したことは、まさに常勤と同等であり、将来雇用年限化な
どが導入されそうになった場合の防波堤にもなるという評価もした33。①の制度は「荒川区
方式」とも呼ばれるようになった。
また荒川区職労は、この「荒川区方式」について、より経験給に近づけるための改善を
要求していった。それは、より短時間で次の職層に昇格できるように職層を増やすことで
あった。その結果、2010年 4月から 3層制から 6層制に拡大した。またあわせて、休暇制
度も病休の有給日数拡大、子の看護休暇や短期の介護休暇の有給化など大きな前進があっ
た34。
図 14 荒川区における新たな職層制度(2010年度~)
33 同前。 34 同前。
17
出所)上林陽治「条例による臨時・非常勤職員の処遇の改善」『自治総研』380号、2010年、
76頁。
また 2007年当時は、格差や貧困が話題になり始めていた時期だったが、荒川区職労はマ
スコミ報道を活用し、地方自治体における非正規公務員問題を「官製ワーキングプア」と
して社会的関心を呼び込んでいった。2007年 9月、「自治体にもある格差の現実をみつめ、
均等待遇実現のための荒川集会~非常勤、臨時、派遣、委託労働者の格差是正を~」を開
催し、この集会などを朝日新聞が全国版で取り上げ、その際使用した「官製ワーキングプ
ア」という用語が、その後定着することとなった。そして、全国で雇用や処遇改善に取り
組んでいる当事者や組合と連絡を取り合い、ネットワーク型の運動交流をさらに進め、2009
年 4月 26日には、「なくそう!官製ワーキングプア~反貧困集会」を開催し、事前報道を
はじめ、当日の集会速報、さらにはテレビ局2社による特集番組も組まれ、大きな反響に
繋がった35。
以上、荒川区職労の取組みを紹介したが、「荒川区方式」のような職層制度や休暇、福利
厚生の充実を獲得するなど、非正規公務員の処遇改善の突破口を開いた荒川区職労の取組
みは評価できるものである。また非正規公務員の問題を広く社会に訴え、関心を高めたこ
とも大きい。しかし、非正規公務員の問題はまだまだ多く、組織率や認知度が低いことは
事実である。そうした中、当事者たちが組織化し、自ら声を上げ、運動を続けることは課
題解決に向けた大きな一歩となるはずだ。
おわりに
第 1章で確認した通り、非正規公務員は雇止め、低処遇、正規との格差など数多くの問
題を抱えている。また、その非正規公務員は増加する一方である。その非正規公務員が増
加する背景として、①定員削減、②地方財政の硬直化、③行政需要の拡大が考えられる。
非正規公務員という身分のまま新たな公共サービスの需要に対応し、あるいは、正規公務
員が足りないが故にその補充として、さらには、人件費削減のため正規の置き換えとして、
非正規公務員は増えているのだ。非正規公務員が存在しないと公共サービスが提供できな
い状況になっている以上、非正規公務員が抱える問題の改善に取り組まなければならない。
まず、非正規公務員の増加をこれ以上増やさないためには定員削減に歯止めをかけなけ
ればならない。第 2章で確認した通り、日本の人口あたりの公務員数は他の先進諸国と比
べると大幅に少ない。その中で、さらに正規公務員の数を減らしていくことは、公共サー
ビスの提供において非正規公務員への依存度を高めていく。正規を減らし、非正規を増や
す悪循環を断ち切るには、公務員にもパートタイム労働法のような、正規への転換を推進
するような法整備が必要であるだろう。また、非正規の中には、正規と同じ内容の仕事を
長期間こなしている人も数多く存在する。しかし、正規より低賃金かつ昇給がないのはお
かしい。勤続年数並びに、本人の能力向上に見合った昇給制度を整備することも欠かせな
いだろう。
35 同前。
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問題の改善には、制度を整備することだけではなく、当事者が組織化し、運動を続ける
ことも必要不可欠である。荒川区職労のように当事者たちが行動し、非正規公務員の問題
を世論に広く訴え、処遇改善の実現することは可能である。非正規公務員が結集し、立ち
向かっていかなければならないが、現在の組織率はとても低い。非正規公務員が増加して
いる以上、組織率を高めることも大きな課題になる。