科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会 特定胚等研究専門...

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-1- 科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会 特定胚等研究専門委員会(第 90 回) 議事録(案) 1. 日時 平成 27 年 9 月 2 日(水曜日)9 時 58 分~12 時 06 分 2. 場所 文部科学省 17 階 研究振興局会議室 3. 出席者 (委 員)高坂主査、髙山主査代理、阿久津委員、浅井委員 稲葉委員、大西委員、神里委員、知野委員 永水委員、中村委員、奈良委員、三浦委員 (事務局)生川審議官、原課長、御厩安全対策官、丸山室長補佐、神崎専門職 4. 議事 (1) ヒト ES 細胞に関する指針の見直しについて (2) その他 5. 閉会 配付資料 資料90-1-1 ES細胞樹立を含めた国内外の研究の現状と課題(阿久津委員提出資料) 資料90-1-2 ES細胞の分配の現状(国内外)と課題(中村委員提出資料) 資料90-1-3 ES細胞使用研究・使用手続の現状と課題(三浦委員提出資料) 資料90-1-4 ヒトES細胞の使用に関するアンケート調査の結果について(概要) 資料90-1-5 ヒトES細胞の取扱い等の現状について 資料90-2 特定胚及びヒトES細胞等に係る届出等について(報告) 6. 議事 【高坂主査】 それでは、ほぼ定刻となりましたので、ただいまから第90回特定胚等研究 専門委員会を開催いたします。 本日は、大変お忙しい中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。 最初に、事務局の方から、委員の出席状況の確認をお願いいたします。 【丸山室長補佐】 本日は、石原委員、斎藤委員、佐々木委員より、欠席の御連絡を頂い ております。永水委員は遅れて御出席するとの連絡をいただいております。 なお、稲葉委員が本日初めて御出席されていますので、御紹介させていただきます。ど

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    科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会

    特定胚等研究専門委員会(第 90回)

    議事録(案)

    1. 日時 平成 27年 9月 2日(水曜日)9時 58 分~12 時 06 分

    2. 場所 文部科学省 17 階 研究振興局会議室

    3. 出席者

    (委 員)高坂主査、髙山主査代理、阿久津委員、浅井委員

    稲葉委員、大西委員、神里委員、知野委員

    永水委員、中村委員、奈良委員、三浦委員

    (事務局)生川審議官、原課長、御厩安全対策官、丸山室長補佐、神崎専門職

    4. 議事

    (1) ヒト ES細胞に関する指針の見直しについて

    (2) その他

    5. 閉会

    配付資料

    資料90-1-1 ES細胞樹立を含めた国内外の研究の現状と課題(阿久津委員提出資料)

    資料90-1-2 ES細胞の分配の現状(国内外)と課題(中村委員提出資料)

    資料90-1-3 ES細胞使用研究・使用手続の現状と課題(三浦委員提出資料)

    資料90-1-4 ヒトES細胞の使用に関するアンケート調査の結果について(概要)

    資料90-1-5 ヒトES細胞の取扱い等の現状について

    資料90-2 特定胚及びヒトES細胞等に係る届出等について(報告)

    6. 議事

    【高坂主査】 それでは、ほぼ定刻となりましたので、ただいまから第90回特定胚等研究

    専門委員会を開催いたします。

    本日は、大変お忙しい中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。

    最初に、事務局の方から、委員の出席状況の確認をお願いいたします。

    【丸山室長補佐】 本日は、石原委員、斎藤委員、佐々木委員より、欠席の御連絡を頂い

    ております。永水委員は遅れて御出席するとの連絡をいただいております。

    なお、稲葉委員が本日初めて御出席されていますので、御紹介させていただきます。ど

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    うぞよろしくお願いいたします。

    【稲葉委員】 京都大学の稲葉と申します。よろしくお願いいたします。

    【高坂主査】 次に、事務局の方で異動があったということですので、御紹介をお願いい

    たします。

    【丸山室長補佐】 8月4日付けで研究振興局の担当審議官とライフサイエンス課長が交代

    しておりますので、紹介させていただきます。

    生川審議官でございます。

    【生川審議官】 生川でございます。よろしくお願い申し上げます。

    【丸山室長補佐】 原ライフサイエンス課長でございます。

    【原課長】 原でございます。よろしくお願いいたします。

    【高坂主査】 それでは、生川審議官から、一言御挨拶をお願いいたします。

    【生川審議官】 ありがとうございます。おはようございます。今御紹介がありましたよ

    うに、8月4日付けで研究振興局の担当審議官を拝命いたしました、生川と申します。前職

    は大臣官房の会計課長として、文部科学省全体の予算の取りまとめをさせていただいてお

    りましたが、研究振興局では先生方の御指導も頂きながらしっかり頑張っていきたいと考

    えておりますので、是非よろしくお願い申し上げます。

    さて、文部科学省では、平成25年度から再生医療実現拠点ネットワークプログラムにお

    きまして10年間で約1,100億円の集中的な支援を実施するなど、再生医療の実現に向けた取

    組を強化してきたところでございます。さらに、先月には「今後の幹細胞・再生医学研究

    の在り方について」の改訂版を取りまとめて、この分野の研究をより一層強化していくこ

    ととしているところでございます。

    一方で、人間の生命現象に深く迫り、これまで人の力では不可能であったことを可能に

    していくというこの分野の研究におきましては、倫理的な配慮の下に進めていくことが不

    可欠であり、本委員会の役割は極めて重要であるというふうに考えているところでござい

    ます。本日の委員会では、倫理面で慎重な検討あるいは対応が求められておりますES細胞

    に関しまして、今後の指針の見直しについて、御審議を頂く予定となっているところでご

    ざいます。委員の先生方におかれましては、是非活発な御議論を頂きますようお願いを申

    し上げまして、簡単ではございますが、私の御挨拶に代えさせていただきます。

    どうぞよろしくお願い申し上げます。

    【高坂主査】 どうも、審議官、ありがとうございました。

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    原課長も、一言何か。

    【原課長】 審議官と同じく8月4日付けでライフサイエンス課長を拝命いたしました、原

    でございます。前職は、研究開発局の環境エネルギー課長として、気候変動問題とか、再

    生可能エネルギーの担当をしていたわけでございます。ただ、ライフサイエンス課につき

    ましては十数年前に1年間だけ課長補佐として在任していたことがございまして、この分野、

    多少なりとも知っていたつもりではあったのですけれども、実際、来てみると、AMEDの発

    足ですとか、あるいはiPS細胞、それに続く再生医学研究の非常な進展の速さということで、

    10年前から見てもかなり成長の早い分野だというふうに感じております。

    また、引き続き一生懸命勉強して、この分野、生命倫理・安全対策を含めて一生懸命頑

    張っていきたいというふうに思っておりますので、是非、御指導、御鞭撻をよろしくお願

    いいたします。

    【高坂主査】 課長も、どうぞよろしくお願いいたします。

    それでは、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

    【丸山室長補佐】 それでは、配付資料の確認をさせていただきます。議事次第の裏面に配

    付資料一覧があります。各資料の右上に振ってある資料番号として、資料90-1-1から90

    -1-5及び90-2まであります。さらに、机上資料として、ES細胞の使用に関するアンケー

    ト調査の集計表を配付しております。また、ドッチファイルの参考資料集も準備しており

    ます。机上資料と参考資料集はお持ち帰りいただきませんよう、お願い申し上げます。資

    料に不備、不足等がございましたら、事務局までお知らせください。

    審議の円滑な進行のため、頭撮りはここまでとさせていただきます。

    事務局からは、以上です。

    【高坂主査】 ありがとうございました。

    それでは、早速ですけれども、議事に入りたいと思います。先ほど審議官からもお話あ

    りましたように、今期のこの委員会の非常に大事な役目としては、ES細胞に関する指針の

    見直しということになっております。

    まず、ES細胞の樹立であるとか、分配、使用といったものに非常に深く関わっておられ

    る3人の委員よりプレゼンを頂きまして、それに加えて事務局から補足説明をいただいた上

    で、今後、ES細胞関係の指針をどういうふうに見直していくかということについて、きょ

    うはフリーなディスカッションをしていただきたいというふうに考えておりますので、ど

    うぞよろしくお願いいたします。

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    それでは、トップバッターとして、阿久津先生、よろしくお願いします。

    【阿久津委員】 頂いたテーマとしては、「ES細胞樹立を含めた国内外の研究の現状と課

    題」という、かなり大規模なテーマだったのですけれども、期間と特定の国に絞って、発

    表していきたいと思います。よろしくお願いいたします。

    まず、ヒトES細胞のオーバービューとして、簡単に1枚にまとめました。1998年に米国の

    ウィスコンシン大学のトムソン教授らが、ヒトES細胞の樹立を発表いたしました。高い分

    化多能性から再生医療にも期待される中2010年に、ファースト・イン・ヒューマンとして

    人に対する再生医療が米国で始まりました。この最初の例が亜急性の脊髄損傷で始まった

    のですけれども、それが今年度までに6例、網膜疾患に対しては38例、糖尿病で2例の臨床

    試験が実施されています。ここには欧米しか入ってないのですけれども、韓国でも少なく

    とも5症例は行われていますので、それを入れると、世界中では50例以上、臨床・治験が行

    われております。

    一方日本では、ヒトES細胞の指針、まず樹立・使用の指針が平成13年(2001年)に策定

    をされました。2003年に京都大学再生医学研究所から日本で初めてのヒトES細胞の樹立を

    報告し、現在までに京都大学は5細胞ライン。2010年に、2番目の施設として国立成育医療

    研究センターが樹立に成功し、こちらは7つのヒトES細胞の樹立を報告しています。現在、

    日本では合計12のヒトES細胞株が樹立され、文部科学省に登録されているということにな

    ります。

    次のスライドはお手元の資料から抜けてしまったのですけれども、現在、ヒトES細胞に

    よる臨床試験として各施設から報告されている件数です。最初に始まったジェロン社が、

    途中から違う会社で行われるようになり、6例。今年入った症例に対しては、投与細胞数の

    ドーズアップした臨床試験が行われています。あと、網膜色素上皮分化細胞を使った網膜

    変性症に対する臨床試験、2番、3番、4番がそれなのですけれども、こちらは、最初、アド

    バンスト・セル・テクノロジーという会社だったのですけど、Ocata Therapeutics社へと

    社名が変更になり、現在までに、米国とイギリスで、40症例近い臨床試験が行われていま

    す。最後に、6番目のバイオサイト社は、1型糖尿病に対してヒトES細胞からインスリン産

    生細胞を作成し、これをデバイスに封入して、そのデバイスごと移植するという方法の臨

    床試験を行っています。昨年1例、今年はこれまでに1例、これは米国ではなくてカナダで

    行われています。計2症例になります。これ以外にOcata Therapeutics社の臨床試験が韓国

    でも行われており、少なくとも5件は移植が行われています。これまでにヒトES細胞による

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    臨床試験で重大な副作用等の事象は、報告はされておりません。これが、ヒトES細胞を使

    った臨床試験のアップデートということになります。

    これ以降では、臨床応用というよりは、ヒトES細胞を使った手続について、少し詳しく

    見ていきたいと思います。ヒトES細胞については、これまで多くの議論がありましたよう

    に、国によって樹立が認められているもの、使用のみが認められているもの、はたまた触

    ることすら許されない国と、世界中、様々です。米国が初めて樹立して、後ほどお見せす

    る資料でも使用研究が最も盛んであるということもあり、米国を中心に報告していきたい

    と思います。

    米国のNIHに特定のヒトES細胞が登録されていますが、8月現在、351の細胞ラインが登録

    されています。登録されるとNIHの研究グラントによる研究での使用可能な細胞ラインにな

    りますので、全てホームページ上に詳細なデータとともに登録をされています。最近登録

    されたものは、ヒトの特定の遺伝病由来のES細胞がたくさん登録をされています。これは、

    着床前診断により治療に使われなかった胚から作られたES細胞ということになります。

    もう一つ大きな組織、これも国としては同じくアメリカになってしまうのですけれども、

    カリフォルニア再生医療機構(CIRM)が同じように幹細胞の研究全般に対してかなりの額

    の研究費を支出しています。そこでもヒトES細胞の登録を行っています。こちらについて

    は、州独自で審査して認めた細胞ラインとNIHの細胞ライン、さらに、イギリスのUKステム

    セルバンクの細胞ラインと、バイオタイム社という会社のES細胞が登録されています。ち

    なみに、バイオタイム社というのは、先ほど、脊髄損傷の臨床試験をやっている会社、ア

    ステリアス・バイオセラピューティクス社の親会社的な会社になります。このCIRMでは、

    ホームページには載ってないのですけれども、日本のガイドライン下に樹立したES細胞も、

    CIRMの研究費の対象のES細胞、使っていいES細胞ということで認められているそうです。

    これは、CIRMの人から直接お聞きしました。

    こういう形でかなりたくさんのヒトES細胞が登録されています。ここからは米国でヒト

    ES細胞を樹立、使用する研究の手続を説明していきたいと思います。この1枚のスライドは、

    私が、生命倫理専門調査会で、海外でES細胞研究がどのような形で行われているかという

    調査をまとめたものです。

    まず、大前提として、人間を対象とする研究に対して被験者を保護する目的で制定され

    た法律、コモンルールというものがあります。その背景は、ずっと遡るとニュルンベルク

    網領とかジュネーブ宣言まで行くのですけれども、ベルモントリポートというものが出さ

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    れて、それを基に作られたものです。ヒトES細胞、幹細胞の研究にずっとフォーカスして

    いきますと、それを規制する連邦の法律というものはございません。何によるかというと、

    研究費を出すか、出さないかというところでの審査が、大きなポイントになってきます。

    まず、連邦の助成による研究、いわゆるNIHの研究ですが、これに対しては、ディッキー・

    ウィッカー修正条項という、ヒトの胚の取扱いについてまとめた報告があります。これが

    一つの大きな決まりになって、ヒトES細胞の作成や使用ということに対して、2009年にNIH

    がガイドラインを策定しています。研究費対象の基準として新たなES細胞を作る研究には

    お金は出しません。ヒトES細胞/iPS細胞を霊長類の胚盤胞へ、いわゆる動物性集合胚です

    が、キメラ胚を作成する研究とか、生殖系へ寄与する可能性のある状況で動物へ移植し繁

    殖させるような研究には、NIHのお金は出しませんよというものです。

    そのほかには、研究費という観点からすると、州の助成金とか民間の基金というのもか

    なりの大きな研究費なのですけれども、それは、ナショナル・アカデミー・オブ・サイエ

    ンス(NAS)がヒトのES細胞のガイドラインを策定しており、それに非常に細かく書かれて

    います。その中では、例えば、先ほどの霊長類の胚盤胞への移植、生殖系への寄与をする

    かどうか、もう一つは高次中枢(神経)へ発生する研究などは禁止はしていないのですけ

    れども、よくよくきちんと多方面から検討が必要としています。

    こういったガイドラインを受けて、各機関では、ESCROと略しますが、最近は「E」が消

    えてSCROと言っていますが、あとIRBですね。あとは、大抵は動物を使用する研究を行いま

    すので、Institutional Animal Care and Facilities Committees(IACUC:動物実験の審

    査委員会)での審査を受けてくださいということになります。米国ですと自由にどんどん

    できているという印象を受けるかもしれないのですが、そうではないということがこれで

    分かると思います。

    もう一度、少し詳しくまとめたのがこちらです。これは米国の規制なのですけれども、

    まず、連邦法ではヒトES細胞研究に対する規制は行われておりません。もう一度繰り返し

    になりますが、連邦助成による研究にガイドラインがあります。もう一つ、州と民間基金

    による研究に対しては、米国科学アカデミー(NAS)がES細胞のガイドラインを作っていま

    す。これは科学者コミュニティの主導によるというもので、研究機関が責任を持って幹細

    胞研究を行うためのガイダンスという位置付けです。最終的な責任は各機関にあるという

    もので、ここの中でも言っているのですが、ヒトES細胞研究を行う各機関では、ESCROを設

    置して審査してくださいということになります。もう一つは、州によっては禁止している

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    ところもあるのですが、かなり研究をサポートしている州もあります。カリフォルニア州

    であったり、ニューヨーク州であったりですけれども、これは州法で対応したり、研究助

    成金の組織が独自に規則を整備して、研究を行う環境を作っているということになります。

    特にこちらでは、人クローン胚を作ってES細胞研究をやっていいかどうかというところが、

    一つ大きなポイントになっています。全米の中でもこれを認めているのは数少ないのです

    けれども、カリフォルニア州、ニューヨーク州、マサチューセッツ州ですが、実際に行わ

    れているのはそういった州の下で限られた施設ということになります。

    要するに、ヒトES細胞の研究に対して審査に関わる組織ですけれども、大きく分けて、

    IRBとIACUC(動物実験の審査委員会)とESCRO(SCRO)です。それぞれ審査対象というもの

    が、大きく分けると異なっております。IRBは、ヒトの試料(Human subjects)を扱うもの

    です。何もこれはES細胞ばかりじゃなくて、どちらかというとほかのことがメインになる

    のかなという気はします。動物実験に関わる点についてはIACUC(動物実験の審査委員会)、

    胚や配偶子、多能性幹細胞を取り扱う研究についてはESCROが重点的に見るということにな

    ります。審査のポイントは、IRBについてはインフォームド・コンセントや倫理的なことで

    あって、IACUCについては動物の福祉、ESCROについては試料の出どころということもあり

    ますし、もう一つ重要な点は研究の内容ということになります。ESCROはこの中では比較的

    新しい部類のものなのですけれども、この役割は、IRBというのはHuman subjectsを含む研

    究の審査ということになりますが、実際には、ヒトES細胞、例えば樹立されたようなヒト

    ES細胞については、IRBの審査を必要としないケースもございます。ここで「匿名化された

    試料のため」というのを「?」としているのですけれども、これは私個人の理解だったの

    で、間違っているかもしれないなというところで、「?」としました。ヒトES細胞研究とい

    うのは科学的にも専門的な分野を含むため、IRBでは十分に対応できないというケースが出

    てきています。そういった意味でも、科学的にも専門的に見られるような役割を持つESCRO

    というのが出てきています。NAS自体も、ESCROの活用というのを推奨しています。審査の

    対象としては、ヒトES細胞の樹立、ヒトES細胞の使用研究ということになります。

    一方、日本ですけれども、現在、ヒトES細胞を使用する研究ということになると、使用

    する研究機関の中で、使用責任者、機関の長、さらにはその機関内の倫理審査委員会を整

    備していくことになります。現在は文部科学省へ計画の届出をする。こちらについては、

    変更の内容で手続き上何が必要になるか、煩雑さがあるなら今後の課題ということになる

    と思います。使用変更をするときにどれくらいの手続がどの段階まで必要かというのは、

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    文部科学省の担当者の方々がとても分かりやすいガイダンスとして公表しております。当

    初に比べると相当研究者フレンドリーになったように思いますが、この後お話しするよう

    なES細胞の研究の展開ということに合わせると、修正が必要な時期に来ていると思います。

    ざっと手続について眺めてきましたが、ヒトES細胞をめぐる研究の環境でいいますと、

    やはりヒトiPS細胞の報告というのから多能性幹細胞の研究が大きく変わってきたのでは

    ないかと思います。これについては、個人で私が調べ上げるというよりは、つい最近、非

    常によくまとまった論文が出てきました。これはドイツのグループがまとめたものなので

    すけれども、この方々たちは以前からES細胞の研究動向というのをまとめてきたグループ

    です。2015年に、ISSCR(国際幹細胞学会)というのがあるのですが、その学会誌に報告さ

    れています。ヒトES細胞とiPS細胞の研究の状況、動向というのが実際どうなっているかと

    いうのを、PubMedのデータベースを使って報告されている科学研究論文の調査をしていま

    す。2008年から2013年の期間、対象となったものは、ヒトES細胞の論文は2,900件、ヒトiPS

    細胞の論文では1,300件です。もちろんキーワードで探すともっと膨大な数が出るのですけ

    れども、彼らは、内容が科学研究とはちょっと外れたようなものは今回の対象から外して

    おります。実際にES細胞あるいはiPS細胞を使った科学研究のみを対象としています。

    この調査の背景の一つにiPS細胞の研究は世界中で爆発的に進んだのですけれども、もう

    ES細胞は必要ないのではないかと、世界中でそう考える人はたくさんいるのですけれども、

    実際どういう状況になっているのか明らかにするのが、この論文の目的の一つになってい

    ます。

    ヒトES細胞を使った論文を対象としているのですけれども、彼らは、ゴールドスタンダ

    ード論文と言っているのですが、いわゆるES細胞がiPS細胞研究のコントロールとしてだけ

    に使われたような論文、これについて特出しをしています。調べてみると、2,900件のうち

    の401件は、ES細胞が単純にコントロールとだけでしか使われてないような論文ということ

    になります。これをヒトES細胞のゴールドスタンダード論文と名付けています。

    まず、ES細胞の研究の概況ですけれども、2013年までのものを見ますと、安定して論文

    が増えてきています。ここで一回平行になるのですけど、この理由は述べていませんでし

    た。順調に増えています。合計で2,500件、先ほどのゴールドスタンダード論文、いわゆる

    コントロールだけでしか使われてないような論文は抜かしての数字になります。

    国別での比較は、責任著者の所属機関の国を調べております。ここでは2009年で分けて

    いるのですけれども、どうして分けているかというと、ブッシュ大統領からオバマ大統領

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    に代わった時期、ES細胞に対する政策としてはかなり大きな転換があったという年になり

    ます。これで調べてみますと、アメリカが断トツで、ES細胞の論文の40%以上が米国の機

    関からということになります。2009年で分けても、実はそんなに差がないのですね。2009

    年以前に私も米国にいたのですけれども、ああいった規制があったにもかかわらず、国内

    ではかなり活発にヒトES細胞の研究は行われていました。実際に論文の数で見ても、変わ

    りがないということになります。国の動向で言いますと、2009年以前に、最初の頃から活

    発だった、イスラエル、シンガポール、スウェーデンというところが、2009年以降には、

    ちょっと論文数としては下がってきています。逆に、後半の方からスタートした国、ドイ

    ツ、フランス、スペインというのが、論文数としては伸びてきています。日本については、

    7番目の位置。これはヒトES細胞の論文数になります。

    一方、iPS細胞研究の同じような動向です。これは、2009年、2010年から、爆発的に論文

    がたくさん出ております。合計で1,376報です。2007年にヒトのiPS細胞を山中先生と米国

    のグループが報告したのですけれども、これはESのときもそうだったのですが、樹立報告

    の論文が出て3年以降にかなり数としては増えていきます。同じように、iPSもどんどん増

    えていっているということになります。同じように国別の論文数ですけれども、米国がES

    細胞と同じようにかなり報告数が多くて、2番目に日本が来ております。

    次は、ES細胞の研究概況として、引用数、いわゆるインパクトが高い論文ってどのくら

    い出ているのですか、どの国からどの程度出ているのですかというものをまとめた図です。

    これは引用数で割っております。これで見ても、アメリカ、オランダから出ている論文と

    いうのが、かなり引用数が高いのが分かります。平均より若干数値が下がったところに日

    本が来ております。これはヒトES細胞についてです。

    一方、ヒトiPS細胞の論文数も、インパクトのある論文ということでまとめられています

    けれども、これも米国がトップです。次に、スペイン、イギリス、カナダとなっています。

    平均は数値で言うと19.4ということになります。日本はこの数値で言うと14ということで、

    この論文の中でサプライジング・ファインディングということで述べられていたのは、日

    本からの論文は思いのほかインパクトが少ないですよというのが驚きとして、これはアン

    ダーパフォーマンスだということで彼らは報告をしています。ただし、ここの中にはパイ

    オニアの論文は含まれてないのですね。山中先生とか米国のグループの、ヒトiPS細胞を最

    初に報告した論文は含まれてはおりません。

    これはヒトES/iPS細胞を使用した基礎研究のものですけれども、これは細胞数じゃなく

  • -10-

    て論文数ですね。年次変化でヒトES/iPS細胞の論文数の変化を見ているのですけれども、

    iPSが出た以降も、ヒトES細胞についての論文数は、下がるということはなくて、同じよう

    な数でずっと来ております。iPSの数は上昇しています。大体、ES細胞とiPS細胞おのおの

    毎年500報ぐらいということになります。ES細胞とiPS細胞ともに使われた論文というのも、

    同じように増えてきているということになります。

    次に、ここではヒトES細胞とヒトiPS細胞がともに使用された研究論文というのを対象と

    しております。点線で示されているのが、いわゆるゴールドスタンダード論文、ES細胞が

    単なる対象として使われた論文ですけれども、これは、当初はすごく高い割合でしたが、

    年々、下がってきております。世界中の方々がiPS細胞の対象として用いるヒトES細胞のリ

    ストというのが、こちらになります。ほとんどの場合、最初に作られたウィスコンシン大

    のヒトES細胞のラインが使われています。H9とH1というのがそれになりますけれども、大

    部分、この細胞ラインがコントロールとして使われているということになります。その他

    の細胞では、日本の京大のラインも頑張っておりまして、5%程度、京大のヒトES細胞株が

    ゴールドスタンダードの細胞として使用されております。ヒトES細胞は世界中で1,000以上

    は樹立されていると思うのですけれども、ゴールドスタンダードのES細胞となりますと、

    本当に、片手でほとんど終わってしまう細胞数となります。

    ここから最後の方にかけて、もう一つ、重要な点になります。iPS細胞ができてもヒトES

    細胞は数としては使われなくなってはいないというのがこれまでの報告なのですけれども、

    じゃあどのような研究で使われているかというのを示したのが、これ以降の表になります。

    まず、ヒトES細胞を使った研究の領域ということになりますと、ヒトの発生に関わるも

    のが非常に大きな割合を占めております。あとは、未分化の分子機能、メカニズムとか、

    大きくざっくり言いますと、ヒトの初期発生ですとか、特定の組織への分化誘導に対する

    研究というのが、非常に高い割合を占めているということになります。

    一方、ヒトiPS細胞の研究領域ですけれども、これは疾患研究に対する研究が非常に大き

    な割合になっております。あるいは初期化の研究ですね。疾患研究や初期化の研究という

    ことになります。

    ヒトESとiPS細胞研究動向ですが、ヒトES細胞についてはヒトの発生を背景に持った研究

    というのが大きな割合を占めておりまして、iPS細胞は疾患研究。両方を用いたものも当然

    使われておりまして、多能性幹細胞の培養のシステムとか、ゲノムの改変を行う研究につ

    いては、双方使った研究というのが高い割合になっているということになります。

  • -11-

    これがまとめになります。ヒトES細胞を中心に見たまとめなのですけれども、iPS細胞が

    報告された後も、ヒトES細胞に関する論文というのは安定して報告されている。少なくと

    も減少はしていないですよ、ということになります。研究の中身については、ヒトES細胞

    /iPS細胞は、その樹立由来、ヒトES細胞はヒトの胚、発生を背景に持った多能性幹細胞と

    いうこともあるのですけれども、その特性に合わせたそれぞれ好まれる分野でそれぞれが

    使われて研究が進んでいるということが分かります。ヒトES細胞というのは、特定の細胞

    の使用頻度がとても高いのですけれども、パイオニア論文に使用されているということも

    ありますし、研究費補助の仕組みというのも、登録されているものに対して研究費が出ま

    すので、これも選択に影響しているのかなということになります。

    この報告については2013年までのことなのですけれども、それ以降というのも研究の流

    れというのが変わってきていまして、iPS細胞については、バンク化というのが世界中で大

    きなトピックとして研究が進んでおります。もう一つは、ゲノム編集の技術が2013年以降

    にかなり進んできましたので、これに対する、この研究の分野の影響というのが絶対出て

    いるということになります。ES細胞に対してのCRISPR/Cas9というものの研究報告というの

    がかなり増えてきているという印象はあるのですが、これは詳細には調べてないので数値

    として出せていません。ゲノム編集等によるユニークな特性を持った細胞というのが出て

    きますので、それについてはバイオリソースとして世界共通として汎用的に、共同研究を

    通じて使用されるケースというのが今後活発になってくるのではないかということが予想

    されます。

    以上になります。どうもありがとうございました。

    【高坂主査】 阿久津先生、ES細胞の研究の現状、国際的な現状も踏まえて御説明を頂き

    まして、本当にありがとうございました。

    ヒトES細胞に関する指針の見直しについてこれから議論をする上で、今、ES細胞を使っ

    た研究はどういう現状なのかということを御説明していただいたということですが、まと

    めて後ほど討論したいと思うのですが、ここで阿久津先生にスペシフィックな御質問はご

    ざいませんでしょうか。ちょっとここで確認しておきたいという御質問、ございますか。

    阿久津先生、一つ教えていただきたいのですが、再生医療新法が成立された後に、ヒト

    に使え得る、臨床に使え得るような細胞の樹立というのは、現状はどうなっているのでし

    ょうか。

    【阿久津委員】 現状は、機関としても、かなり突っ込んで検討はしております。ただ、

  • -12-

    今度は法律も関係してきますので、ガイドラインも新しくなりましたし、あるいは世界的

    な動向というのも、大げさかもしれないのですけれども、世界福祉に役立つような形で樹

    立は行っていきたいと考えておりますので、関係機関とともに、そういったものを踏まえ

    て進めてはおります。

    【高坂主査】 ほかにございますか。ないようでしたら、次のプレゼンテーションに移り

    たいと思います。

    次は、ES細胞の分配のところで非常に重要な役目を担っていただいております理研BRC

    の中村先生の方から、プレゼンをお願いいたします。

    【中村委員】 理化学研究所バイオリソースセンターの中村と申します。よろしくお願い

    いたします。

    今御紹介いただきましたように、我々、日本で樹立されたヒトES細胞の分配機関、樹立

    した先生から細胞をお預かりして、それを使用希望研究者に提供するという事業をお引き

    受けしております。今、日本では、分配機関は我々のところだけであります。

    これまでの経緯ですが、平成20年4月1日に、分配機関となることを大臣から認めていた

    だきました。これは、平成15年ぐらいから準備を始めて、5年ぐらいかけてようやく認めて

    いただいたということで、認めていただきました後に、先ほど阿久津先生の発表の中でも

    出てきました、京大再生医学研究所、中辻先生と末盛先生が作られたKhES-1、2、3、4、5

    とありますが、平成20年、平成22年に、それぞれ寄託を受けました。そして、阿久津先生

    が作られたSEESの1、2、3を、平成23年9月に寄託を受けております。それから、先ほど阿

    久津先生がおっしゃっていたSEES4から7も樹立されておりまして、今現在、寄託手続を進

    めているところであります。加えまして、もとのES細胞以外、加工ES細胞もES細胞と同等

    の扱いをするということになっておりますので、もとのES細胞と同様な手続を経まして、8

    株、名前が書いてありますが、もとになったのは阿久津先生が作ったSEES3というヒトES

    細胞ですが、それに由来する加工細胞8株の寄託を受けるということを、先月、大臣の確認

    を受けました。加工細胞の作成者は慶応大学、寄託者は慶應大学ということです。

    これまでに私どもから分配した状況です。この6機関が全てです。平成20年から行ってい

    る割には少ないという印象を持たれるかと思いますが、我々ももっと提供があるのではな

    いかと思って一生懸命準備をして分配機関になったのですが、分配機関になった前年度に

    ヒトiPS細胞の樹立が発表されまして、先ほど阿久津先生のお話ではヒトES細胞を使った研

    究も着実に増えているということですが、やはり日本においてはiPS細胞を使った研究の方

  • -13-

    が研究者層としては飛躍的に増えたということが背景にあって、ヒトES細胞に関しては、

    京大や阿久津先生から直接入手された研究者もいると思うのですが、我々のところから提

    供したのはこの6件です。

    我々のところから提供するに当たりましては、文科省からこれらの機関が使用機関とし

    て認められましたという御連絡を受けて、あとは普通の細胞を提供するのと全く同様な提

    供同意書を得て提供するというもので、我々、これを提供するに当たっては、特に大きな

    時間を要するとかいうことはないというものです。

    ここからが今後検討していただきたいという点で、後でアンケート調査の中に出てくる、

    私もその中に一アンケート回答者として書いていることで、それをここで発表させていた

    だくのは恐縮なのですが、今、加工細胞の扱いについて、国内に関しましては、第二十三

    条で「使用機関は、ヒトES細胞の分配又は譲渡をしてはならない。ただし、使用機関にお

    いて遺伝子の導入その他の方法により加工されたヒトES細胞を当該使用機関が分配又は譲

    渡する場合及び第七条に規定する場合については、この限りではない」ということで、加

    工細胞を国内の研究者に提供する、あるいは第七条というのは臨床利用機関に対する分配

    ですが、その場合は、加工細胞に関して言えば、加工細胞作成機関が国内の研究者に分配

    してよいということになっております。

    一方、海外提供に関してですが、海外使用機関に対する分配の手続、第二十条、これは、

    「分配責任者は」ということで、主語が分配責任者、今現在、私ども又は樹立した研究者

    なのですが、加工細胞の作成者は、海外への提供は許容されていないということになって

    おります。つまり、樹立ES細胞に関しての分配方法としては、(1)樹立機関自身が分配す

    る、(2)分配機関に寄託して、分配機関が分配する、この二通りがあります。国内分配も

    海外分配も、(1)と(2)、どちらも可能という趣旨になっております。一方、加工ES細胞

    の場合は、(1)作成機関自身が分配する、(2)分配機関に寄託して、分配機関が分配する、

    二通りありますが、国内分配は(1)も(2)も可能なのですが、海外に関しては、(2)の

    分配機関からのみが可能ということになっています。

    需要が大きい細胞株でありましたら、我々分配機関で大量培養を実施することが適切と

    思われますが、そうでない場合には、国内分配は可能であるのと同様に、加工細胞株の作

    成機関自身が海外にも分配できる仕組みを検討していただくことが必要ではないかと考え

    ております。なぜかと申しますと、先ほど8株ありましたが、あれはSEES3という細胞に4

    種類の遺伝子を入れて、一つの遺伝子を入れたものに関して2株ずつ寄託を受けているので

  • -14-

    すけれども、慶応大学の先生の計画書ですと、これから1,000種類の転写因子により加工細

    胞を作りますと言っていまして、我々、寄託を受けて全て培養して提供するということは

    物理的にもかなり大きな負担になりますので、樹立者自身は必ず作った細胞を10本とか20

    本保存しているはずですので、それを直接、利用希望者に提供するということを可能にし

    ていただいた方が、コスト的に考えても適切ではないかと思います。また、作業としても、

    我々、8月に加工細胞の寄託の大臣の確認を頂きましたけれども、寄託の意向を受けてから

    我々の倫理委員会にかけて大臣の確認を受けてという、そこでもかなり時間を要しますの

    で、加工細胞を使いたいという海外の研究者がいましたら、なるべく速やかに提供してあ

    げる方が研究の進展には有益かと思いますので、そういう点からも、加工細胞作成者自身

    が提供できる仕組みを検討していただければと思っております。

    以上です。

    【高坂主査】 中村先生、ありがとうございました。分配機関としての立場から、ES細胞

    に関する指針の見直しはこういったポイントでやってほしいという要望も、御説明いただ

    いたと思います。

    今の御説明の中で、加工ES細胞とか、第七条とか、いろいろ難しい言葉が出てきたので

    すが、これは後ほど資料90-1-5を使って事務局の方から分かりやすく御説明いただける

    と思いますので、後ほどこれはディスカッションしたいと思います。

    それでは、引き続きまして、実際に使用していただいている立場ということですが、東

    京大学の場合ということで、三浦先生の方からプレゼンをお願いいたします。

    【三浦委員】 東京大学の三浦です。よろしくお願いいたします。

    私が所属していますライフサイエンス研究倫理支援室で、ES細胞を含めたバイオサイエ

    ンス研究のコンプライアンスとか指針の遵守等に関わる研究の支援を行うとともに、一部

    の申請については審査に関わる業務というのも行っています。そうしたことから、我々の

    体制や現状の説明を求められたと思っております。

    本学の状況について、まず御説明いたします。本学の体制ですが、総長の下に担当理事

    を委員長としますライフサイエンス委員会というものがあります。本学は大きい組織です

    ので、学部間で齟齬がないよう、大学としての統一性を持たせるために、こうした全学組

    織の専門委員会、遺伝子組換え、研究用微生物、動物実験と、倫理審査、再生医療等の委

    員会もここに設置し、こうした委員会の構成をとっております。学部にはそれぞれ、具体

    的な申請に対する審査をする委員会が、別に設けております。例えば医学部とか医科学研

  • -15-

    究所であれば、倫理審査委員会とか、ヒトゲノム解析研究の委員会、もちろんIRB自体もこ

    の中にはあります。この中で、ヒトES細胞の審査に関わる委員会として、倫理審査専門委

    員会があります。これは基礎研究についてですが、その臨床応用に対応する再生医療等専

    門委員会もここの中に置いています。両方の委員会を兼ねる委員も、1名選任しております。

    続きまして、委員会の変遷ですが、平成14年にヒト生殖クローン専門委員会の名称でで

    きました。発足当時は、ヒトES細胞の使用に関わる審査のみを行いました。幾つかの学部

    でヒトES細胞の使用を申請していたが、この委員会で一括して審査を行うこととし、学部

    ごとに委員会を設置しませんでした。当初は15人ぐらいの委員から構成され、日程調整、

    運営、議事録・申請書の作成にかなり時間がかかったというふうに伺っております。

    その後、支援体制を整備しまして、専任教員を配置して、後にこれは私が所属するライ

    フサイエンス研究倫理支援室になりました。書類の作成、支援、相談も含めて、担当する

    ようになりました。

    そのうち、法人化したことと、ヒトの指針が新しくなってきたということと、あと、人

    を対象とする研究、様々な分野で行われている研究があり、医学部とか臨床現場のみなら

    ず、文系も含めて様々な倫理審査を必要とするケースが出てきました。その受け皿をどう

    しても作らなきゃいけないことがありました。それも学部に設置するのではなくて、一つ

    大きく、大学の本部に設置しましょう、既存のものは既存のものとして学部で運営すると

    して、大学全体で一つ作りましょうとなりました。そこを、もともとあったヒト生殖クロ

    ーン専門委員会を改組しまして、人を対象とする研究全般も審査できるような、そうした

    組織にしましょうというふうなことが平成21年に行われまして、それが倫理審査専門委員

    会となっています。もちろんヒトES細胞の使用に関わる審査も従来どおり行われているわ

    けですが、この委員会を改組した際に各学部から代表者から募りましたところ、委員が20

    名近くになりまた。それでは委員会として機能的ではないことから、経験のある委員が審

    査するような委員会の開催調整をしまして、従来行ってきた委員のノウハウを継続するよ

    うな体制をとっております。

    審査の現状と課題ということなのですが、私の私見というふうなことと理解していただ

    ければよいかと思います。

    支援体制が整備されたことで、豊富な参考例が活用されて、完成度が高い計画書が作成

    されるようになってきました。よって、審査の段階で記載に関わることでたたかれること

    とかはなくなって、ほぼすんなり審査できるようになってきた。すなわち、申請する側で

  • -16-

    は、基準の適合性や研究責任者・研究者の要件をほぼクリアした状態で提出してきている。

    スムーズに委員会運営ができるようになってきているというのがあります。

    審査の段階でどのようなことになっているかというと、研究の目的とか必要性、科学的

    な妥当性、これは専門的であるので、どうしても医学又は生物学の専門家で議論されるこ

    とが多い。この委員会の特徴としては、五つのカテゴリーの委員が選任されるというふう

    なことになっているかと思います。医学、生物学、法律、生命倫理、一般という五つのカ

    テゴリーなのですが、どうしても専門的なところになると医学や生物学の専門家で議論さ

    れることが多いというのがあります。

    研究目的や方法がパターン化されてきている。今まで出てきてないような目的や方法を

    行うところがあまりなくなってきている。ですから、画一化してきているというのが、印

    象としてあります。

    あと、法律及び生命倫理の論点がどうしても乏しくなってしまっている。基礎研究であ

    るので、例えば使用実績のない海外樹立のヒトES細胞の導入とか、インフォームド・コン

    セントのとり方とか、入念に見てもらうことがあるのですが、そうしたことがまずなくな

    ってきている。インフォームド・コンセントを必要とするようなケースとか、知財とか、

    法に関わる論点というのがどうしても見付けにくいというふうなことがありました。あと、

    委員会で審査する点として、倫理的に使用が許されないようなケース、倫理的に使用がで

    きるかどうかが論点としてあるのですが、基礎研究の場合、倫理的に使用が許されないケ

    ースというのは、まずはない。もともと禁止されていること、胚に移植するとか、そうし

    たことはしてないわけですが、どういった点が倫理的に使用を許されないのかが見当たら

    ない。同じようなことがiPS細胞で行われているというふうなこともあり、なかなか許され

    ないケースが見当たらない。法律とか生命倫理の委員の方に参加していただくのですが、

    どうしても議論となる論点が少ない。せっかく出席してもらっているのですが、ちょっと

    申し訳ないなと思うことがたまにあったりします。

    そうしたことから、審査自体も、計画の内容の確認とか、適切な使用に関する宣誓とい

    った意味合いだけになってきているような印象を持っております。

    これは、追加で作成したものなのですが、ヒトES細胞の審査とヒトiPS細胞の審査が、本

    学ではどのようにして行われているかを比較しております。ヒトES細胞の審査の場合は、

    研究の計画書を作成する段階で支援をし、委員会で審査をします。直接ヒアリングを行っ

    て審査をして、その後、文部科学省に届出を行って、受理された後に細胞を入手して使用

  • -17-

    開始という流れになります。

    一方、ヒトiPS細胞の場合は、本学の機関で樹立をして使用する場合は、学部にある倫理

    審査委員会にてヒアリングをする場合もありますし、委員2人を選任しまして、その委員が

    ヒアリングをして、委員会にそのことを報告して審査を行う場合もあります。直接あるい

    は間接というふうな言い方をしております。そこで審査をして、オーケーが出た段階で責

    任者がインフォームド・コンセントをとって、細胞を樹立して使用を開始する、こうした

    流れになります。ほかの機関で既に樹立している場合は、倫理審査自体、「人を対象とする

    医学系研究に関する倫理指針」にも迅速審査が可能となっていますので、この方法で委員

    会にかからずに、委員会に報告することで入手することも可能かというふうに思います。

    そうした手続をして、細胞を入手して使用開始というふうになります。

    もう一つ、本学では特定胚の使用を行っていますので、特定胚の使用のときにはどうだ

    ったかですが、真ん中にある樹立と使用のところで学部で審査をしました後に、使ったiPS

    細胞を、左の「ヒトES細胞の場合」と書いている、ラインでも審査した。iPS細胞の樹立の

    方は学部で審査をして、それを使って動物性集合胚を作成する段階については、左の方の

    ラインを使って審査をしたとなっております。

    以上です。

    【高坂主査】 ありがとうございました。東京大学でのES細胞の使用についての手続、こ

    ういったものを御説明いただいたというふうに思います。

    いかがでしょうか。先ほどの中村先生と今の三浦先生のプレゼンに、スペシフィックな

    御質問はないでしょうか。よろしいですか。

    それでは、事務局の方で幾つか、アンケート調査であるとか、調べていただいておりま

    すので、資料90-1-4と5を使って、事務局の方から御説明をお願いいたします。

    【御厩安全対策官】 それでは、まず資料90-1-5の方から御覧いただきたいと思います。

    今回、文部科学省でES細胞を日本で使用している全ての責任者61人にアンケートをとった

    のですけれども、その結果を御報告する前に、制度の現状について、簡単に御説明したい

    と思います。

    まず表紙ですが、日本地図にES細胞研究の実施機関をプロットしております。樹立機関

    が2、分配機関が先ほどの中村先生のところの1、使用機関が42で、69の計画が今走ってお

    ります。今回、その69の計画の責任者にアンケートをいたしました。

    1枚おめくりいただきまして、ES細胞の使用手続、基礎研究に用いる場合の手続です。ま

  • -18-

    ず、使用計画書を作ります。使用計画書には、11の項目について記載していただきます。

    新たにES細胞を使いたいという場合は、機関の中で倫理審査委員会にかけていただいて、

    その上で国に届出をしていただくと。指針に適合しているということで届出が受理された

    後、機関の長が使っていいと了承を出す、そういう仕組みになっております。

    計画を変更する場合の手続ですけれども、こちらの方は倫理審査委員会に付議をして、

    長の了承を経た後で国に届出をする、了承後速やかに届出をすることを求めております。

    例えば(4)の研究者に関する変更については、研究者の氏名、業績、略歴、使用計画にお

    いて果たす役割を変更する場合は、倫理審査委員会への付議は不要だが、報告はしなさい

    ということになっております。長の了承は、研究者の変更の場合も必要でして、了承後、

    速やかに国に届出をしてくださいということにしております。なお、運用上、「速やか」に

    というのは、原則1か月以内ということで運用しております。これがなかなか厳しいという

    意見が、後ほど御報告しますけれども、多く出てまいりました。

    次に、ES細胞の分配の流れですけれども、ES細胞そのものにつきましては、樹立機関か

    ら使用機関に直接分配するか、あるいは、先ほどの中村先生のところの分配機関に寄託し

    て、そこから分配するかという、二通りの流れがあります。使用機関からほかの使用機関

    に直接分配することは認めておりません。

    次に、加工したES細胞ですけれども、こちらについては、加工を施した機関が国内の別

    の使用機関に渡すことは認めておりますけれども、海外の使用機関に直接渡すことは認め

    ておりません。海外の機関に渡したい場合は、元になるES細胞を提供してもらった分配機

    関あるいは樹立機関に戻して、そこを経由して海外に分配してくださいというルールにな

    っております。海外の場合、適用される法令やガイドラインが異なることなどもありまし

    て、より慎重に対応しようとして、こういう取扱いにしてきたわけでございます。

    最後、分化細胞につきましては、これはES細胞に由来するものですよということを通知

    すれば、ほかの研究機関などに直接渡すことが可能です。この場合、受け取った機関は国

    の指針の対象にはなりません。

    次に、4ページですけれども、今回のアンケートの回答の中で、ES細胞に関する規制をiPS

    と同じ程度に緩和してほしいという意見が複数出ております。そこで、iPSの使用に適用さ

    れる法令・指針がどうなっているのかということを、ごく簡単にまとめたものです。まず、

    再生医療や治験に使いたいということですと、昨年新しくできた法律が適用になります。

    これらには使わないということでしても、動物性集合胚の作成に使う、すなわち動物の受

  • -19-

    精卵にヒトのiPSを入れる場合には、クローン技術等規制法の体系で規制されます。そうい

    うことはしなくても、iPS細胞を分化誘導させて生殖細胞を作る場合には、倫理指針があり、

    国への届出等を求めております。しかし、それ以外のヒトを対象とする研究に使う場合に

    ついては、国への計画等の届出等は必要ないと、そういう仕組みになっております。特に、

    学術的な価値が定まって広く利用されている細胞を用いる場合については、機関の中でも

    倫理審査を不要にしている場合が多いと認識しております。ゲノムの解析ですとか、ある

    いはそのほかの人を対象とする医学系研究に、まだ評価が定まってないようなiPS株を使う

    場合には、ゲノム指針あるいは医学系指針が適用になりますが、ただしこれは機関内だけ

    の手続で行うことができ、国への計画届出等は必要ないということでございます。

    一方で、ES細胞については、最後の5ページにありますように、再生医療・治験、あるい

    は動物性集合胚の作成に使う場合、これはiPSと同じく法規制の対象になりますが、それ以

    外のいかなる目的に使用する場合であっても、全て国の指針が適用されて届出等が必要だ

    ということでございます。これをiPS並みに緩和してほしいと、そういう意見が何人かの使

    用責任者から出ております。

    続きまして、アンケート調査の結果の概要ですけれども、資料90-1-4を御覧いただき

    たいと思います。ES細胞の使用責任者61人、全員から回答を頂きました。設問は七つ設け

    ました。

    まず、質問1は、研究者の異動の手続です。現在、研究者が異動するたびごとに届出が必

    要になっている訳ですが、これについて現状をお聞かせくださいということで、まず研究

    者の人数、さらには研究者の追加又は削除が年間どれぐらいあるか聞いております。

    まず、①の研究者の人数につきましては、最も少ないところはゼロ、すなわち使用責任

    者が単独でES細胞を扱っているというケース。最も多いのが152人ということで、京都大学

    の山中先生が使用責任者になっている研究計画でございます。ただし、このグラフを見て

    明らかなとおり、5人以下のところが大半、過半数を占めております。

    1枚おめくりいただきまして、②研究者の追加・削除は年間どれぐらいの頻度で行われて

    いるのかということですが、これも、グラフを見ていただきますと、年1回のところが最も

    多く、45.4%となっております。一方で、年に10回異動があったプロジェクトもございま

    す。これは先ほどの152人のプロジェクトでございます。次に、年間どれぐらい研究者が入

    れ替わるのかということですけれども、中央値は1ということですが、最多は70、先ほどの

    152人のプロジェクトでございます。こういう大規模なところは、異動のたびごとに、届出

  • -20-

    等が発生するので大変だということで、御意見があるところでございます。

    次に、3ページですけれども、質問2、研究者の異動に関し、困難な点や改善を望む点が

    あれば、教えてくださいという設問でございます。これは自由記述で書いていただいたの

    ですけれども、望む点があるという方は28人(46%)ということで、内容別に整理します

    と、①国への異動届出自体を廃止してほしいという意見が7件。うち、研究者を単に削るだ

    けの場合は、届出は要らないのではないかという意見が2件、国が指定した標準的な細胞を

    扱う場合は、届出は廃止していいのではないかという意見が1件、ございました。

    さらに、②ですけれども、異動届出はよいとして、期限を緩和してほしいという意見が

    10件。うち、年間1回にまとめて届出をさせてほしい、あるいは異動後3か月以内に緩和し

    てほしいという意見が、それぞれ3件ございました。

    また、③異動届出の効率化を求める意見として、例えば、業績や職名を細かく書かせて

    いるものを、業績については主要な1編ですとか、職名については主な所属・部署だけです

    とか、そういうふうに簡略化してほしい、オンラインの申請を導入してほしい、機関内の

    倫理審査委員会に報告する手続を廃止してほしいという意見が、それぞれ2件。研究者に共

    通IDを振り、これまでどういう研修を受けていたのかを統一的に把握できるようにしてほ

    しい、自分の機関に異動してきた人の履歴を一々把握しなくてもよくなるようにしてほし

    いという意見が、1件ございました。

    その他8件ですが、まず、届出受理までの時間短縮ですが、これは、文部科学省が、届出

    を受理しました、不備はありませんと確認するまでの時間を短縮してほしいと。今のとこ

    ろ平均で12日ほどかかっているのですけれども、それを短縮してほしいという意見が2件。

    あとはそれぞれ1件ずつ、様式変更した場合はメールで教えてほしい、古い様式を使ってし

    まっても許してほしい、海外の研究者に対する英文での説明資料ですとか様式を整備して

    ほしい、ほかの機関で受けた研修歴も、自分の機関で行った研修歴として引き継げるよう

    にしてほしいと。これは今の制度でも可能なのですけれども、そういう意見もございまし

    た。使用責任者が異動した場合に、研究に停滞が生じないような配慮をしてほしいという

    意見や、これはここになじむのか判然としないのですけれども、ES細胞の細胞培養室とし

    てどういう基準が必要なのか、もう少し細かく例示してほしいという意見もございました。

    意見がないとした人の中でも、コメントを書いている人がありました。3件ほどですけれ

    ども、書類作成は重要で今後も継続すべき、簡単な届出で済む、人数が少ないので問題な

    い、ということで比較的小規模のプロジェクトの責任者からの意見でございます。

  • -21-

    次に、4ページの質問3と4は、共同研究について聞いております。質問3は、共同研究の

    実施状況でして、共同研究を実施しているという計画は、19計画(27%)となっておりま

    す。共同研究の相手先の機関数で見ますと、1機関のところがほとんどでございます。

    質問4では、ほかの機関と共同研究を行うに当たって困難な点や改善を望む点があればと

    聞いております。改善を望む点があるとした方が、15人(25%)。内訳でまとめますと、手

    続を一括化してほしいという意見が6件。今の制度ですと、共同研究を実施する機関ごとに、

    全ての機関で届出をしてくださいということになっているのですけれども、代表機関で一

    括申請するのを認めてほしいという意見が2件。自分の機関で倫理審査委員会を設置せずに、

    ほかの共同研究先の倫理審査委員会で審査してもらえるようにしてほしいという意見が2

    件。ただしこれは、後ほど御説明しますけれども、今の制度でもできますし、そうしてい

    るケースもございます。次に、研究者の受入機関のみでの手続にしてほしい、あるいは研

    究者の所属機関のみでの手続にしてほしい、これは正反対の意見なのですけれども、そう

    いう意見もございました。例えば、A大学の施設にB大学の研究者がやって来て研究される

    ようなケースです。A大学、受入れ側の手続だけにしてほしいという意見と、送り出し側、

    研究者が所属しているB大学での手続だけにしてほしいという意見がそれぞれ出ておりま

    す。

    次に、細胞移動の円滑化ということで、事前通知なく分化細胞を利用できるようにして

    ほしいなどの意見が出ております。先ほど中村委員からもありましたような、国内外、特

    に国外への加工ESの分配の円滑化に関する意見もございました。

    その他としまして、共同研究先や加工ES細胞を追加する場合の計画変更手続をもう少し

    簡素にしてほしいなどの意見が出ております。下から2番目の他機関における研究受入体制

    の整備ですとか、一番下の学内における研究計画の一本化というのは、機関の内部での実

    情から、こういう意見が出ているものと思われます。

    次に、5ページですけれども、加工ESについて、作成の実績と予定、分配の実績と予定を

    聞いております。それぞれごとにあり・なしの結果は表のとおりです。特にこれから問題

    になってまいりますのが、加工ESの分配予定ですが、国内に分配する予定があるという計

    画が8あります。この場合は加工した機関が直接分配できるのですけれども、海外への分配

    のほうは、今は樹立機関か分配機関に戻した上でやるという、そういう煩雑な手続になっ

    ており、これを今後どうするのかということが論点になってまいりますが、予定している

    計画が3つあるという状況でございます。

  • -22-

    次に、6ページですが。倫理審査委員会について、聞いております。ES細胞専用の審査を

    行うものとして設置をしているところが29、一方、先ほどの東大の場合もそうかと思いま

    すが、そのほかの研究も審査しているというところは40。

    倫理審査委員会の委員の平均的な構成ですけれども、委員数は11で、女性委員比率が27%、

    外部委員比率が45%。指針上は、男女両方とも2名以上、外部委員2名以上が最低基準なの

    ですけれども、実態はこうなっております。専門別の委員数も、先ほど三浦委員からお話

    がありましたとおり、五つのカテゴリーで1人以上出してくださいということなのですが、

    生物学・医学で合計6人、法律・倫理・一般で合計6人ということで、若干、生物学・医学

    の方が多くなっている状況でございます。

    倫理審査委員会の設置状況ですけれども、自分の機関に設置しているのが65、ほかの機

    関の倫理審査委員会にお願いしているのが4であります。これはいずれも企業でありまして、

    共同研究先の大学にお願いして倫理審査をしていただいているということです。これは今

    の制度でも可能でございます。

    最後、質問7ですけれども、そのほか望むことがあればということで、自由記述で書いて

    いただいております。書かれた方は29人。内訳で最も多いのが、手続の簡素化・迅速化と

    いうことで19件。うち、倫理的に問題がない範囲で少しでも簡素化してほしいというのが6

    件、iPS細胞と同様の手続をというのが3件、オンライン手続2件、本当に細かい変更につい

    ては変更手続をやらなくてもいいように、既に分配実績のあるような細胞は学内だけで手

    続を踏めばいいように、現場の実情に合った管理の簡素化を、という意見。さらには、ES

    細胞のルールとして、個体作成や人格変容に関わる研究の禁止や使用者の登録・廃止以外

    の規制は全て取り払うべきではないかという意見や、異動手続を1年以内に緩和してほしい、

    事前に研修や細かい履歴の届出を求めているけれども、OJTでやらないとこの分野の培養は

    なかなかうまくいかないので、事前にそういうことを届け出させても余り意味がないので

    はないかという意見もございました。最後の承認作業の迅速化というのは、先ほどと同じ

    く、文部科学省で受理するまでの時間を迅速化してほしいという意見だと思われます。

    ②のところは、教育研修・情報提供等の充実ということで、規制の見直しというよりは、

    どういう手続なのかということを構成員に説明するときのテキストの作成や動画配信、サ

    イト情報やガイダンスの整備、お互いの情報交換の場の設定、諸外国の状況の公表などを

    充実させてほしいという意見です。これはしっかりやっていきたいと思っております。

    ③は、加工ESの分配ということで3件。これは先ほどの中村委員のお話に尽きているかと

  • -23-

    思われますけれども、特に海外への分配についてでございます。

    最後の、8ページを御覧いただきますと、④で、これも、指針そのものというよりは、ES

    細胞研究というのは重要だからしっかり推進すべきだという意見が、4件ございました。

    その他7件ということで、ある程度ハードルがあるのはやむを得ないという意見や、研究

    者の履歴の把握は個人情報保護の観点からの検討が必要だという意見、ES細胞樹立の方の

    規制は現状どおりでいい、樹立計画の変更に関する審査の簡素化を、キメラの作成などの

    倫理的な問題については十分な対策をという意見、あるいは、ES指針は今、行政指針とい

    うことで法的実効力はないわけですけれども、法整備が必要だという意見もありました。

    さらに、学内事情でなかなか申請が困難な場合の対応策の考慮をしてほしいという意見も

    ありました。

    アンケートの概要は、以上でございます。実際これにどう対応していくのかということ

    ですけれども、この後、先生方から頂く御意見も併せて、次の委員会の際に、対処方針の

    案を整理して、お諮りしたいと思っております。

    以上でございます。

    【高坂主査】 ありがとうございました。ヒトES細胞の取扱いの現状について、参考資料

    で御説明いただいた点と、それから、非常に膨大になりますが、ヒトES細胞の使用に関す

    るアンケート調査についてまとめていただいたのが1-4という形で、問題点を抽出してい

    ただいたと思います。

    一つちょっと分からなかったところがあったのですが、アンケート調査の結果について

    の6ページの倫理審査委員会、ここでの要望というのはどういうものが多かったのですか。

    人数はもっと少なくていいのではないかとか、そういう類のことですか。

    【御厩安全対策官】 それはありませんでした。倫理審査委員会に報告しなければいけな

    い事項を減らしてほしいといった意見はあったのですけれども、構成要件自体の緩和につ

    いての意見はありませんでした。

    【高坂主査】 分かりました。

    まず、90-1-5、取扱い等の現状についてというところで、意見として最も多かったの

    は、ヒトES細胞の使用に係る手続を簡単にしてほしいと。特に、研究者の入れ替えのとき

    の報告といったようなところを考えてほしいと。それから、先ほど中村先生が御指摘にな

    られた、加工ES細胞の取扱いについて、特に海外も含めた分配のところの見直しをしてい

    ただきたいと。それから、ヒトES細胞の法令・指針をiPS並みにしてほしいというような、

  • -24-

    そういったところもございます。要望が非常に多岐にわたっておりますが、一言で言えば

    手続の簡素化ということになるのではないかと思うのですが、今の資料を御覧になって、

    あるいは先ほどの3人の先生のプレゼンをお聞きになって、きょうはフリーディスカッショ

    ンで行きたいと思いますので、御自由に思っているところをおっしゃっていただければと

    思います。特に、実際に使用されている、あるいは樹立されている先生には、強い希望も

    ございますでしょうし、今のアンケート調査も踏まえて、御指摘を頂ければありがたいと

    いうふうに思います。

    まず、阿久津先生、いかがですか。

    【阿久津委員】 今回、こういった調査結果、アンケートを行っていただいて、現状見直

    しし具体的に検討するきっかけ、具体的な修正も含めた機会を与えていただいて、本当に

    ありがとうございます。

    まずは、使用研究で言うと、研究者の変更での了承後速やかな報告というのは、手続上

    ちょっとしんどいのは実際あります。

    あともう一つは、中村先生のも関係するのですけれども、加工ES細胞の海外への分配と

    いうのは、実際に行った施設から海外へ渡すというのが一番スムーズに行きますので、こ

    れが今はできないというのがかなり、問題というか、研究の進行を妨げているというよう

    な形になっていますので、これはどうにかしていただきたい。分配機関、何ラインも中村

    先生のところに行っても、パンクするだけですので、実際できないと思います。かといっ

    て、樹立機関に戻して、樹立機関がやれと言われても、実際上、これも相当厳しいと思い

    ますので、そこはちょっと御検討いただきたいというふうに思います。

    【高坂主査】 ありがとうございました。

    新しく委員になられた先生がいらっしゃるので確認をしておきたいのですが、加工ES細

    胞とES細胞の分化細胞の違いというのを、中村先生、明確に御説明いただけますか。

    【中村委員】 ES細胞は、神経、筋肉、いろんな組織・細胞に分化して、それを応用する

    ということに使われる細胞ですけれども、例えば、神経、筋肉、血液等の多分化能を失っ

    たような細胞、これを分化細胞と言いますが、こういった細胞になった場合にはもうヒト

    ES細胞としての扱いは不要だということですが、一方、加工細胞、例えばES細胞にマーカ

    ー遺伝子、ノーベル賞をもらったGFPという緑の蛍光色素がありますが、あれをただ発現さ

    せただけの細胞、これは多分化能を持っていますので、ほとんどES細胞と同じものと考え

    ていいです。それから、遺伝子を1個2個入れた程度のES細胞、これもES細胞と同様に多分

  • -25-

    化能を持っていますから、これも大もとのES細胞と同様に扱うということになっています。

    さらに、先ほど阿久津先生のお話に出てきましたが、今後、CRISPR/Cas9というゲノム編集

    技術でES細胞に関しても相当たくさんの加工細胞ができてくると思います。そういった加

    工細胞も多分化能を持っていますので、大もとのES細胞と同等の扱いをしましょうという

    ことで、今後、研究の進展に伴って加工ES細胞はすごく膨大になると思いますので、これ

    は作成者自身が提供できるシステムを構築していただければと思っております。

    【高坂主査】 ありがとうございました。

    これは次回も含めてしっかり議論をしていきたいと思うのですが、その前にいろいろ御

    意見を伺っておきたいのですが、研究者の変更の届出を緩和してほしいというのは非常に

    リーズナブルで、私も当然そうだろうと思うのですが、この点についてはいかがですか。

    今は、使用責任者については絶対必要であると。研究者については、機関の長の承認、あ

    るいは国への届出、両方とも必要であると。ただし、1か月以内にしなさいというようなル

    ールがあるということなのですが、それについて、厳し過ぎるのではないかというような、

    いろんな御意見があると思うのですが、まず、研究者の変更について、的を絞って御議論

    いただきたいと思います。いかがでしょうか。

    どうぞ。

    【阿久津委員】 やっている方としては言い訳になるかもしれないのですが、どうしても

    研究者の変更というと年度末とか年度初めというところになってきてしまって、研究者側

    もそうなのですけれども、例えば、これを機関で担当しているような事務の側も、その人

    自体も移動になるということがあって、後手後手になってしまうという状況があります。

    これは私たちの機関だけじゃないと思うのですね。何も悪気があってそうしているわけじ

    ゃないのですけれども、そういう状況があるということを御理解いただければと思います。

    【高坂主査】 どうぞ。

    【浅井委員】 質問なのですけれども、私、大学で倫理委員会の方をずっとやっている者

    で、研究者の立場ではないのですが、研究者の方が変更になることで、実際に研究の進行

    とか質に大きな変化は起きるのでしょうか。それとも、ほとんど支障なく行くのでしょう

    か。ちょっとそこを教えていただけたらと思います。

    【阿久津委員】 研究責任者以外の実際に研究する方々の中でどなたが変更になるかとい

    うところも、各研究計画によって異なると思うのですけれども、当然、主たる研究メンバ

    ーのときにはやはり、研究進行上、遅滞するというのは考えられます。それ以外であれば、

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    特に大きなディスアドバンテージはないと思います。

    【高坂主査】 知野委員、どうぞ。

    【知野委員】 質問ですが、研究者の名前、要するに人が替わったことを届ける手続は、

    かなり煩雑なものなのでしょうか。というのは、最近、届けが遅れる例が目立っています

    が、こちらから見ていますと、人が替わったというのを届けるだけなら、もっと早くすれ

    ばいいのになあと思っておりました。このアンケートの要望を見ますと、1年延ばしてくれ

    ということになると、年度でまた人が替わってしまうなどの問題も出てくるので、少し説

    得力が一般的な目で見ると薄いように感じるのですが、その辺の大変さについて教えてく

    ださい。

    【高坂主査】 研究者の変更というのは、変更された方がまた研修を受けるということも

    必要なのですね。ですから、届出は別として、技術的にもしっかりとした方を従事させた

    いという思い入れがあって、そういった意味もあって、現状ではちゃんと届出をしなさい

    ということになっているのですね。

    どうですか、阿久津先生。使われている立場として、今の知野委員からの御質問は。そ

    んなに大変なのですかと。(笑)

    【阿久津委員】 大変じゃないと言うと、それはあんたが怠慢だろうということになっち

    ゃうのですけど、2点ありまして、書面上だけの手続ですと簡単にできるでしょうというこ

    とになってしまうのですけれども、今、高坂先生がおっしゃいましたように技術的な面も

    含めて、研究上ながれてはいますが、どうしても漏れてしまうという現状があります。済

    みません、答えにならなくて。

    【知野委員】 最近の流れを見ていますと、遅れてしまいましたという届出が続いている

    ので、じゃあルールを変えようというのだと、いま一つ説得力が弱いように感じました。

    【高坂主査】 確かに。

    どうぞ。

    【稲葉委員】 私自身は、ES細胞を使っているわけではないのですけれども、生命科学の

    実験研究者です。その立場からいくと、やはり煩雑さというのは否めないと思うのですね。

    異動される場合も、抜けられるというのであれば、その機関において記録さえきっちり残

    っていれば、それは1年後でもいいのではないかと思うのです。ただし、その方が抜けられ

    てほかに移られるというようなときには両方が速やかに手続をとられる必要はあると思い

    ますし、どういう立場で研究に携わられるか、携わっていらっしゃるのかによって、扱い

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    は当然変わってきてもいいのではないかと思うの�