建物の構造ヘルスモニタリングに関する基礎的研究...nobuki morikiyo kei...

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53 1.はじめに 2011 年東北地方太平洋沖地震では、首都圏でも超高層建 物を中心に大きな揺れが発生し、揺れによる不安から構造 体に損傷がない建物でも在館者の避難・帰宅が進むことで、 多くの帰宅困難者が発生した。これを機に、地震時の建物 管理や帰宅困難者対策を目的として、建物が安全であるこ とを即時に発信する技術である構造ヘルスモニタリング 1) が注目され、その技術を取り入れたシステムが普及してき ている。当社においても、地震時の即時的な構造健全性の 判定や、万が一の大地震時の損傷推定による支援を目的に、 構造ヘルスモニタリング技術の導入提案を行っている。 本報告では、当社が展開する構造ヘルスモニタリングの 概要を示した上で、即時的な構造健全性の判定で必要とな る応答推定方法の精度の検証について示す。また、構造ヘ ルスモニタリングシステムを導入した建物での応答推定方 法の精度検証等の計画について紹介する。 2.構造ヘルスモニタリング概要 2.1 構造ヘルスモニタリングの概要と構成 構造ヘルスモニタリングは、建物にセンサーを設置して 地震時の揺れなどを観測し、その観測値を分析・解析する ことにより、建物の揺れの大きさや構造健全性を判定する 技術である。構造ヘルスモニタリングシステムの構成例を 図1に示す。設置したセンサーで観測された時々刻々の揺 れは、データ通信と給電を兼ねたLANケーブルを経由し て収録装置、パソコンに蓄積される。地震の発生を検知す ると、観測値から層間変形(角)を算出し、設計時の耐震ク ライテリアとの照査にて即時に構造健全性を判定し、パソ コンへの表示やクラウドサーバを用いたメール配信などで 結果を関係者に通知するシステムである。 当社では、上記のような構造ヘルスモニタリングシステ ムを、主に一般的な規模の建物(高さ 50m 以下程度の事務 所ビルなど)に設置することを念頭に置いている。地震時 の建物の揺れ・変形の大きさを正しく測るためには、すべ ての階にセンサーを設けることが理想である。しかし、対 象とする規模の建物では、コストの制約からセンサー数を なるべく少なくし、建物頂部と基部の2箇所に設けること などが考えられる。その場合には、センサー非設置階の応 答値が推定に依存し、建物の揺れ・変形が弾性域を大きく 超えないことが前提となるため、大変形時の損傷推定は精 度を保証できなくなる。そこで、即時に構造健全性の判定 を行う「即時診断」に加えて、万が一の大地震時に地震応 答解析により建物の損傷推定を行う「詳細診断」の2段階 構成としている。以下では各診断技術の概要を示す。 2.2 即時診断 即時診断は、地震発生直後の建物の構造健全性を即時に 判定し、建物が安全であることや避難検討を要することな 建物の構造ヘルスモニタリングに関する基礎的研究 Fundamental Study on Structural Health Monitoring of Buildings 要旨 地震発生時に構造健全性を発信する技術として構造ヘルスモニタリングが注目されている。当社においても、地震時 の即時的な構造健全性の判定を中心に、構造ヘルスモニタリングの研究を実施してきた。本研究では、即時的な構造健 全性の判定で必要となる応答推定方法の精度の検証を行った。応答推定方法は、固有値解析から得られるモード比によ る方法と時刻歴応答解析から得られる応答比による方法を比較した。また、精度はそれぞれの方法によって算定した中 間階の推定値と観測値との関係、観測入力地震動での時刻歴応答解析による解析値との関係により検証した。その結果、 1次モードが支配的で弾性挙動が想定される建物を対象とすれば、精度の良い推定が期待できるが、超高層建物など高 次モードが無視できない建物、ひび割れの発生などにより振動特性が変化しやすいRC造建物などでは、簡易な推定方 法では限界があり、さらに検討・検証が必要と考えられる。実建物における検証として、構造ヘルスモニタリングシス テムを導入し、応答推定の高度化などを目的とした観測計画についても紹介する。 キーワード:構造ヘルスモニタリング 地震観測 モード比 応答比 時刻歴応答解析 層間変形 森清 宣貴 *1 成島 慶 *1 関谷 英一 *2 藤井 睦 *1 Nobuki Morikiyo Kei Narushima Eiichi Sekiya Atsushi Fujii *1 技術研究所 *2 設計本部 建築設計第2部

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Page 1: 建物の構造ヘルスモニタリングに関する基礎的研究...Nobuki Morikiyo Kei Narushima Eiichi Sekiya Atsushi Fujii *1 技術研究所 *2 設計本部 建築設計第2部

― 53 ―

1.はじめに

2011 年東北地方太平洋沖地震では、首都圏でも超高層建

物を中心に大きな揺れが発生し、揺れによる不安から構造

体に損傷がない建物でも在館者の避難・帰宅が進むことで、

多くの帰宅困難者が発生した。これを機に、地震時の建物

管理や帰宅困難者対策を目的として、建物が安全であるこ

とを即時に発信する技術である構造ヘルスモニタリング 1)

が注目され、その技術を取り入れたシステムが普及してき

ている。当社においても、地震時の即時的な構造健全性の

判定や、万が一の大地震時の損傷推定による支援を目的に、

構造ヘルスモニタリング技術の導入提案を行っている。

本報告では、当社が展開する構造ヘルスモニタリングの

概要を示した上で、即時的な構造健全性の判定で必要とな

る応答推定方法の精度の検証について示す。また、構造ヘ

ルスモニタリングシステムを導入した建物での応答推定方

法の精度検証等の計画について紹介する。

2.構造ヘルスモニタリング概要

2.1 構造ヘルスモニタリングの概要と構成

構造ヘルスモニタリングは、建物にセンサーを設置して

地震時の揺れなどを観測し、その観測値を分析・解析する

ことにより、建物の揺れの大きさや構造健全性を判定する

技術である。構造ヘルスモニタリングシステムの構成例を

図1に示す。設置したセンサーで観測された時々刻々の揺

れは、データ通信と給電を兼ねたLANケーブルを経由し

て収録装置、パソコンに蓄積される。地震の発生を検知す

ると、観測値から層間変形(角)を算出し、設計時の耐震ク

ライテリアとの照査にて即時に構造健全性を判定し、パソ

コンへの表示やクラウドサーバを用いたメール配信などで

結果を関係者に通知するシステムである。

当社では、上記のような構造ヘルスモニタリングシステ

ムを、主に一般的な規模の建物(高さ 50m 以下程度の事務

所ビルなど)に設置することを念頭に置いている。地震時

の建物の揺れ・変形の大きさを正しく測るためには、すべ

ての階にセンサーを設けることが理想である。しかし、対

象とする規模の建物では、コストの制約からセンサー数を

なるべく少なくし、建物頂部と基部の2箇所に設けること

などが考えられる。その場合には、センサー非設置階の応

答値が推定に依存し、建物の揺れ・変形が弾性域を大きく

超えないことが前提となるため、大変形時の損傷推定は精

度を保証できなくなる。そこで、即時に構造健全性の判定

を行う「即時診断」に加えて、万が一の大地震時に地震応

答解析により建物の損傷推定を行う「詳細診断」の2段階

構成としている。以下では各診断技術の概要を示す。

2.2 即時診断

即時診断は、地震発生直後の建物の構造健全性を即時に

判定し、建物が安全であることや避難検討を要することな

建物の構造ヘルスモニタリングに関する基礎的研究

Fundamental Study on Structural Health Monitoring of Buildings

要旨

地震発生時に構造健全性を発信する技術として構造ヘルスモニタリングが注目されている。当社においても、地震時

の即時的な構造健全性の判定を中心に、構造ヘルスモニタリングの研究を実施してきた。本研究では、即時的な構造健

全性の判定で必要となる応答推定方法の精度の検証を行った。応答推定方法は、固有値解析から得られるモード比によ

る方法と時刻歴応答解析から得られる応答比による方法を比較した。また、精度はそれぞれの方法によって算定した中

間階の推定値と観測値との関係、観測入力地震動での時刻歴応答解析による解析値との関係により検証した。その結果、

1次モードが支配的で弾性挙動が想定される建物を対象とすれば、精度の良い推定が期待できるが、超高層建物など高

次モードが無視できない建物、ひび割れの発生などにより振動特性が変化しやすいRC造建物などでは、簡易な推定方

法では限界があり、さらに検討・検証が必要と考えられる。実建物における検証として、構造ヘルスモニタリングシス

テムを導入し、応答推定の高度化などを目的とした観測計画についても紹介する。

キーワード:構造ヘルスモニタリング 地震観測 モード比 応答比 時刻歴応答解析 層間変形

森清 宣貴*1 成島 慶*1 関谷 英一*2 藤井 睦*1

Nobuki Morikiyo Kei Narushima Eiichi Sekiya Atsushi Fujii

*1 技術研究所 *2 設計本部 建築設計第2部

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鴻池組技術研究報告 2019

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どの情報の建物オーナーや建物管理者への伝達を担うもの

である。

各センサーで観測された加速度記録、および設計時の解

析モデルから計算される建物の固有モードを使用し、非観

測階の絶対加速度、および加速度の積分により得られる変

位に基づいて各階の層間変形角を算出する。この層間変形

角について、損傷限界(構造体の一部に損傷が生じるレベ

ル)、および安全限界(構造体に損傷が生じ、避難の検討が

必要なレベル)に相当する閾値を建物毎にあらかじめ設定

しておくことで、地震による建物の変形がどのレベルまで

達したかを即時に判定する。

診断結果はパソコン上に視覚的に表示したり、クラウド

サーバを用いてメール配信したりすることで、建物オーナ

ーや建物管理者が即時に診断結果を確認し、この結果に基

づいて建物利用者に対して「安全」「避難要」などの情報を

早急に知らせることが可能となる。

2.3 詳細診断

詳細診断は、たとえば即時診断において損傷限界の閾値

を超える結果が出た場合、あるいは建設地における震度階

が「5 強」以上であった場合に、地震応答解析等による詳

細な検討を行い、損傷状況を推定するものである。

即時診断において損傷限界の閾値を超える結果が出た場

合などは、地震により建物に何らかの構造的被害が生じて

いる可能性があり、仕上げ材に隠れた構造躯体の損傷を把

握するために詳細検討を行う必要がある。詳細診断には即

時性はないが、強震時に得られたデータに基づき、3 次元

フレームモデルを用いた地震応答解析等を行うことで、部

材単位での構造健全性や損傷状態をより詳細に推定するこ

とができる。

鉄骨造建物を対象とした詳細診断の一例を図 2 に示す。

同図(a)は各柱梁部材におけるヒンジ発生状況を示してお

図2 詳細診断の一例

(a) ヒンジ発生箇所

(b) 鉄骨梁端溶接接合部の破断に関する検討

最大塑性回転角 両側の累積塑性 破断限界塑性 破断限界累積塑性

maxθp(rad) 回転角 ∑θp(rad) 回転角 θs(rad) 回転角 ∑θpl(rad)10 X3a通り Y4-Y5 0.001 0.000 0.030 0.150 OK9 Y3通り X1'-X2 0.006 0.000 0.030 0.150 OK8 Y5通り X1'-X3 0.007 0.000 0.030 0.150 OK7 Y2通り X4-X5' 0.010 0.004 0.030 0.150 OK6 Y5通り X1'-X3 0.013 0.006 0.030 0.150 OK5 X1a通り Y6-Y7' 0.014 0.016 0.030 0.150 OK4 X1a通り Y6-Y7' 0.013 0.009 0.030 0.150 OK3 X1a通り Y6-Y7' 0.014 0.012 0.030 0.150 OK2 X1a通り Y6-Y7' 0.013 0.007 0.030 0.150 OK

層 対象部材 判定

●:ヒンジ発生箇所

図1 構造ヘルスモニタリングシステムの構成例

モニター収録装置

(計算)

詳細診断

事前に設定した

閾値を超えた場合

最上階

中間階

最下階

PoE-HUB(給電機能付きHUB)

センサー

センサー

センサー

即時診断

小破

大破

家具・什器一部転倒

天井一部損傷 事前に設定した閾値の例

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建物の構造ヘルスモニタリングに関する基礎的研究

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り、ヒンジ発生の有無や塑性化の程度などを把握すること

ができる。また同図(b)は、各部材毎に鉄骨梁端部の最大塑

性回転角や累積塑性回転角等を算出し、溶接接合部の破断

や局部座屈の危険性を判定した結果を示している。詳細診

断により建物の損傷箇所等をあらかじめ把握することで、

地震被害を受けた後に行われる現地調査の簡素化や調査結

果の信頼性向上、合理的な補修・補強計画の策定に活用可

能となる。

3.非観測階の応答推定方法の検討

実際の構造ヘルスモニタリングシステムでは、コストや

設置スペースの制約からすべての階にはセンサーを設けず、

建物規模に応じて一部の階に設置することが多い。その場

合、観測階から非観測階を推定する方法とその精度が課題

となる。ここでは、導入しようとするシステムでの推定方

法を念頭に、既往の地震観測で得られた記録を用いて推定

精度について検討を試みた。

3.1 観測建物と記録

検討対象とした観測記録は、鉄骨造(CFT柱)40 階建

物 2) (以下、建物A)での 2018 年までの 20 年間に得られた

微弱な地震も含む全202記録、およびRC造31階建物 3) (以

下、建物B)での 2018 年までの 29 年間に得られた同様の全

223 記録である。両建物とも推定の基準となる最上階、最

下階に加え、推定先とする中間階にも観測点を有する。

3.2 推定方法

3.2.1 モード比を用いる方法

モード比を用いる推定方法(図3(a))は、設計時の固有値

解析から得られる固有モードを用い、観測点(既知点)に対

する非観測点(推定点)のモード振幅比を観測点の応答のモ

ード成分に乗じ、変形に寄与する次数域を合成して非観測

点の応答とする推定方法である。後述の試行的に導入した

システムで用いる最もシンプルな推定方法に相当する。モ

ード次数は、建物A、建物Bの規模を考慮し、3次までと

した。算出は周波数領域で行う。固有値解析での振動モデ

ルは1層1質点の多質点系モデルである。非減衰での固有

モードであるため、位相関係は同相か逆相のみとなる。建

物Bでは、ロッキング応答が無視できないので(頂部・1

次モード応答のロッキング成分が 10%超過)、ロッキングモ

デルでの固有値解析により、基礎回転を考慮したモード振

幅比を用いることになる。

3.2.2 応答比を用いる方法

応答比を用いる推定方法(図3(b))は、設計時に入手可能

な時刻歴応答解析(多質点系弾塑性振動モデル)による各

階の応答波形から観測点と非観測点の周波数領域での応答

比を求め、観測点(既知点)の観測波形と応答比との周波数

領域での積を時間領域に戻すことで非観測点(推定点)の応

答とする方法である。応答比の算出方法は、振動論での入

出力の伝達関数に同じである。ここでは、伝達関数

H=Sio/Sii,Sio:クロススペクトル,Sii:入力パワースペ

0.1

1

10

0.1 1 10

増幅

振動数(Hz)

1999.08.212000.10.062011.03.112011.07.052018.06.18

1次 2次3次

EW方向

0.01

0.1

1

10

0.1 1 10

増幅

振動数(Hz)

26F/40F

EW方向

12F/40F

-180

-90

0

90

180

0.1 1 10

位相

差(deg)

振動数(Hz)

12F/40FEW方向

26F/40F

0.01

0.1

1

10

0.1 1 10

増幅率

振動数(Hz)

26F/40F

EW方向

12F/40F

-180

-90

0

90

180

0.1 1 10

位相

差(deg)

振動数(Hz)

12F/40F

EW方向

26F/40F

(a) モード比 (b) 応答比

図4 建物卓越振動数と設定推定関数の例(建物A)

モード境界の振動数

上と同じ振動数

図3 非観測階の推定方法

観測階と非観測階推定関数=モード比 ⇐固有値解析

(a)モード比による方法

推定関数=応答比 ⇐時刻歴応答解析

(b)応答比による方法

観測階

(基準階)観測階(基準階)

観測階

非観測階の応答

=観測階(基準階)の応答

×推定関数

センサーあり

センサーあり

センサー

なし

観測階 (基準階)

モード比-1 0 1

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鴻池組技術研究報告 2019

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クトル,i:観測点(既知点),o:非観測点(推定点)として

いる。応答比による方法では、モード比を用いる方法での

非減衰のモード振幅では表せない各層間の位相差を考慮で

きる。また、たとえば入力レベルをひび割れ点超過とする

ことで、非線形特性を推定関数に反映できる期待がある。

時刻歴応答解析の入力波としては、応答比スペクトルを安

定させ、また、広帯域となるように、告示波相当スペクト

ル形状、ランダム位相、300 秒間以上の入力を用いた。入

力レベルは履歴モデル第2折れ点以下程度の応答を目標と

して数種設定した。

3.3 推定結果

3.3.1 モード比による方法の推定関数

モード比による推定方法について建物Aで用いた推定関

数(伝達関数)の例を観測の最上階/最下階の伝達関数と合

わせ、図4(a)に示す。同図中には一点鎖線で設定した各次

帯域の境界を示している。各次の振幅(増幅率)はモード比

率そのものであるが、境界とする振動数には任意性があり、

本検討では、試算を経て、観測伝達関数の谷よりやや低振

動数側に設定している。位相は 0 か 180 度のみとなる。

3.3.2 応答比による方法の推定関数

応答比による推定方法について、建物Aで用いた応答比

の伝達関数を図4(b)に示す。応答比の生成の際、時刻歴応

答波形に対して移動データ窓による平均化と重めの平滑化

(Hanning)で特定帯域に生じることのある急峻な増幅や減

衰を防いでいるが、その影響・効果については今後の課題

である。

3.3.3 応答波形例

建物Aでの 2011 年東北地方太平洋沖地震の本震記録に

ついて、最上 40 階、中間 26 階、最下部 B1 の加速度記録原

波、モード比による方法での推定値(最上 40 階を基準とす

る中間 26 階と 12 階の応答変位)と観測値(積分による B1

-6

0

6

20 30 40 50 60 70 80変位

(cm

)

Time(sec)

26階 EW方向

-観測 -モード比 -応答比

図7 高次成分の再現性(2018/6/18大阪府北部,建物A,26階)

(a) 2011/3/11東北地方太平洋沖 (b) 2018/6/18大阪府北部

図6 建物Aの応答比による推定例

-10

0

10

30 60 90 120 150 180 210 240 270 300変位

(cm

)

Time(sec)

- 観測 Max.-6.63cm(158.36sec)

26階 EW方向

- 推定 Max.-6.60cm(158.35sec)

-10

0

10

30 60 90 120 150 180 210 240 270 300変位

(cm

)

Time(sec)

- 観測 Max.-2.766cm(158.35sec)

12階 EW方向

- 推定 Max.-2.772cm(158.35sec)

-10

0

10

0 30 60 90 120 150 180変位

(cm

)

Time(sec)

- 観測 Max.-4.64cm(42.14sec)- 推定 Max.-5.11cm(33.54sec)

-10

0

10

0 30 60 90 120 150 180変位

(cm

)

Time(sec)

- 観測 Max.-3.56cm(42.20sec)- 推定 Max.-3.49cm(42.25sec)

図5 建物Aの記録とモード比による推定例

(a) 2011/3/11東北地方太平洋沖 (b) 2018/6/18大阪府北部

-40

0

40

30 60 90 120 150 180 210 240 270 300加速

度(c

m/s

ec2 )

Time(sec)

- 観測 Max.+38cm/sec2(158.33sec)

40階 EW方向

-40

0

40

30 60 90 120 150 180 210 240 270 300加速

度(c

m/s

ec2 )

Time(sec)

- 観測 Max.+23cm/sec2(158.36sec)

26階 EW方向

-40

0

40

30 60 90 120 150 180 210 240 270 300加速

度(c

m/se

c2 )

Time(sec)

- 観測 Max.-9cm/sec2(125.24sec)

B1階 EW方向

-140

0

140

0 30 60 90 120 150 180加速

度(c

m/s

ec2 )

Time(sec)

- 観測 Max.+137cm/sec2(24.96sec)

-140

0

140

0 30 60 90 120 150 180加速

度(c

m/s

ec2 )

Time(sec)

- 観測 Max.+128cm/sec2(24.67sec)

-140

0

140

0 30 60 90 120 150 180加速

度(c

m/se

c2 )

Time(sec)

- 観測 Max.+108cm/sec2(24.27sec)

-10

0

10

30 60 90 120 150 180 210 240 270 300変位

(cm

)

Time(sec)

- 観測 Max.-6.63cm(158.36sec)

26階 EW方向

- 推定 Max.-6.29cm(158.33sec)

-10

0

10

30 60 90 120 150 180 210 240 270 300変位

(cm

)

Time(sec)

- 観測 Max.-2.77cm(158.35sec)

12階 EW方向

- 推定 Max.+2.54cm(160.10sec)

-10

0

10

30 60 90 120 150 180 210 240 270 300変位

(cm

)

Time(sec)

- 観測 Max.-9.84cm(158.35sec)

40階 EW方向

- 推定 Max.-9.85cm(158.35sec)

-10

0

10

0 30 60 90 120 150 180変位

(cm

)

Time(sec)

- 観測 Max.-4.64cm(42.14sec)- 推定 Max.-4.98cm(42.09sec)

-10

0

10

0 30 60 90 120 150 180変位

(cm

)

Time(sec)

- 観測 Max.-3.56cm(42.20sec)- 推定 Max.-3.66cm(39.72sec)

-10

0

10

0 30 60 90 120 150 180変位

(cm

)

Time(sec)

- 観測 Max.+9.83cm(43.42sec)- 推定 Max.+9.82cm(43.42sec)

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建物の構造ヘルスモニタリングに関する基礎的研究

― 57 ―

階との相対変位)を図5(a)に、同様に、2018 年大阪府北部

の地震記録について同図(b)に示す。すべて EW 方向である。

また、同じく建物A、2記録について、応答比による方法

での推定応答変位と観測値を図6に示す。図7には、これ

らのうち、近距離の地震で高次モードが卓越した 2018 年記

録の 26 階応答波形を拡大して示す。

全体として、モード比による方法、応答比による方法と

も推定値は観測値の傾向を十分に捉えているが、モード比

による方法では、図7の時刻 40~50 秒に顕著にみられる2

次周期成分のように、最上階と中間階との位相ずれは再現

しにくい。応答比による方法では、高次の位相ずれを含め

て観測値をおおむね再現できるが、応答比の伝達関数スペ

クトルで鋭い輝線となる成分が、時刻歴では短周期のノイ

ズとなることがあり、応答比スペクトルの安定性が課題で

ある。なお、40 階の推定値(推定関数増幅率 1.0)には、フ

ーリエ変換・逆変換に伴い観測値と微小差が生じる。

3.3.4 各記録と推定値の関係

多数の観測記録を対象とした推定値(応答変位時刻歴最

大値)と観測値の関係について、モード比による方法での建

物Aの場合を図9に、建物B(中間観測階 16 階)の場合を図

10 に、また、応答比による方法の建物Aの場合を図 11 に、

それぞれ示す。各図(b)の横軸「最大応答」は、最上階の最

下階との相対変位最大値である。微小地震など、建物応答

が極めて小さい場合には推定精度が低下するので推定結果

0.001

0.01

0.1

1

10

100

0.001 0.01 0.1 1 10 100

推定

値(c

m)

観測値 (cm)

~1995/1/17 (39記録)

1995/1/17~ (184記録)

EW方向 223記録

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

1.8

0.01 0.1 1 10 100

推定

値/観

測値

最大応答(cm)

~1995/1/17 23記録

1995/1/17~ 86記録EW方向

期間 記録 平均 標準偏差

<1995 5個 1.010 0.042≧1995 40個 0.911 0.047

( 応答>0.3cm )

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

1.8

0.01 0.1 1 10 100

推定

値/観

測値

最大応答(cm)

~1995/1/17 23記録

1995/1/17~ 86記録NS方向

期間 記録 平均 標準偏差

<1995 6個 0.967 0.023≧1995 41個 0.888 0.040

( 応答>0.3cm )

(a) 推定値/観測値の比(全202記録・EW) (b) 応答規模等と推定比(最大応答0.03cm以上,左:EW,右:NS)

図9 モード比による方法の推定精度(建物A)

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

1.8

0.01 0.1 1 10 100

推定

値/観

測値

最大応答(cm)

26F26F(高次卓越)12F12F(高次卓越)

NS方向

位置 平均 標準偏差

26F 1.021 0.05112F 1.070 0.115

( 応答>0.5cm (35記録) )

0.001

0.01

0.1

1

10

100

0.001 0.01 0.1 1 10 100

推定

値(c

m)

観測値 (cm)

26F

12F

EW方向 202記録

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

1.8

0.01 0.1 1 10 100

推定

値/観

測値

最大応答(cm)

26F26F(高次卓越)12F12F(高次卓越)

EW方向

位置 平均 標準偏差

26F 1.017 0.05412F 1.062 0.088

( 応答>0.5cm (35記録) )

(a) 推定値/観測値の比(全223記録・EW) (b) 応答規模等と推定比(最大応答0.03cm以上,左:EW,右:NS)

図10 モード比による方法の推定精度(建物B)

(a) 推定値/観測値の比(全202記録・EW) (b) 応答規模等と推定比(最大応答0.03cm以上,左:EW,右:NS)

図11 応答比による方法の推定精度(建物A)

0.001

0.01

0.1

1

10

100

0.001 0.01 0.1 1 10 100

推定

値(c

m)

観測値 (cm)

26F

12F

EW方向 202記録

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

1.8

0.01 0.1 1 10 100

推定

値/観

測値

最大応答(cm)

26F26F(高次卓越)12F12F(高次卓越)

EW方向

位置 平均 標準偏差

26F 1.001 0.04112F 0.992 0.057

( 応答>0.5cm (35記録) )0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

1.8

0.01 0.1 1 10 100

推定

値/観

測値

最大応答(cm)

26F26F(高次卓越)12F12F(高次卓越)

NS方向

位置 平均 標準偏差

26F 1.010 0.03112F 0.990 0.064

( 応答>0.5cm (35記録) )

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鴻池組技術研究報告 2019

― 58 ―

の利用には応答規模などでの選択が必要と考えられる。高

次成分の強弱も推定に影響していることがうかがわれる。

1次モードが支配的な建物では、シンプルな推定方法であ

ってもその誤差は 10%程度となることが期待できる。高次

モードが卓越する建物では、位相差を考慮することで推定

精度の向上が期待できる。なお、建物Bは、1995 年の強震

を受けて卓越振動数がかなり低下し、その強震応答の前後

で推定値/観測値の比の傾向がやや異なるが、強震前の推

定関数をそのまま用いても推定精度の極端な悪化にはなら

ないことがわかる。また、図示していないが、応答比によ

る方法で入力を告示稀の1~5倍に変えた推定関数でも推

定精度に極端な差は見られていない。

3.3.5 全階推定値と時刻歴応答解析の応答結果

モード比による方法(図○○印)、応答比による方法(図

●●印)を用い、建物Aの全ての階について相対変位と層間

変形角を求め、時刻歴応答解析の結果(図××印)と併せて、

図 12 に示す。解析モデル、解析条件は文献 4)に示す設計

時のモデルである。対象記録は、最上階の相対変位が 0.5cm

程度の小地震および前出の2記録である。推定した相対変

位・層間変形角の高さ方向の分布形状は、時刻歴応答解析

と同じ傾向となっているが、大きさは必ずしも一致してい

ない。時刻歴解析のうち、観測階の解析値が観測値と整合

する解析結果では、全階の推定値ともおおむね整合する傾

向にある。応答解析は、解析条件、特に減衰の設定によっ

て結果が変わりやすく、推定結果の良否判断に直接使いに

くいが、両者全体の傾向には矛盾がなく、推定結果は妥当

と思われる。また、高次成分の多い記録に対しては、明瞭

ではないが、位相差が考慮された応答比による方法が時刻

歴応答解析と特に層間変形において整合が良い。

図 12 と同様に、建物Bについての推定・解析結果を図

13 に示す。応答比による方法のみを示しており、推定関数

の入力を告示稀の 1 倍、2 倍、5 倍(凡例それぞれ L1,L1×

2,L2)としている。解析モデルは文献 3)に示している。図

12 と同様、観測階の解析値が観測値と整合する解析結果で

は、全階の推定値ともおおむね整合している。前述のよう

に、入力レベルを変えた推定関数を用いても推定結果には

0.00 0.05 0.10 0.15層間変形角 (×1/100rad.)

EW_L1EW_L1x2EW_L2NS_L1NS_L1x2NS_L2解析EW解析NS

13579

111315171921232527293133

0 10 20 30 40

相対変位 (cm)

EW_L1EW_L1x2EW_L2NS_L1NS_L1x2NS_L2解析EW解析NS観測

0.00 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 0.60 0.70層間変形角 (×1/100rad.)

EW_L1EW_L1x2EW_L2NS_L1NS_L1x2NS_L2解析EW解析NS

13579

111315171921232527293133

0 2 4 6 8 10

相対変位 (cm)

EW_L1EW_L1x2EW_L2NS_L1NS_L1x2NS_L2解析EW解析NS観測

13579

111315171921232527293133

0 2 4 6 8 10

相対変位 (cm)

EW_L1EW_L1x2EW_L2NS_L1NS_L1x2NS_L2解析EW解析NS観測

0.00 0.05 0.10 0.15層間変形角 (×1/100rad.)

EW_L1EW_L1x2EW_L2NS_L1NS_L1x2NS_L2解析EW解析NS

図 13 入力レベルを変えた応答比による方法の全階推定値と時刻歴応答解析との比較(建物B)

(a) 1995/1/17 兵庫県南部(観測最大) (b) 2011/3/11 東北地方太平洋(1次卓越) (c) 2018/6/18 大阪府北部(高次も卓越)

図12 モード比・応答比による方法の全階推定値と時刻歴応答解析との比較(建物A)

(a) 1999/8/21和歌山県北部(小地震) (b) 2011/3/11東北地方太平洋(1次卓越) (c) 2018/6/18大阪府北部(高次も卓越)

02468

101214161820222426283032343638404244

0 0.5 1 1.5

相対変位 (cm)

02468

101214161820222426283032343638404244

0.000 0.010 0.020

層間変形角(x1/100rad.)

02468

101214161820222426283032343638404244

0 5 10 15

相対変位 (cm)

02468

101214161820222426283032343638404244

0.000 0.083 0.167 0.250

層間変形角(x1/100rad.)

02468

101214161820222426283032343638404244

0.000 0.083 0.167 0.250

層間変形角 (x1/100rad.)

02468

101214161820222426283032343638404244

0 5 10 15 20 25

相対変位 (cm)

観測値EW時刻歴解析EWモード合成EW応答比EW観測値NS時刻歴解析NSモード合成NS応答比NS

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建物の構造ヘルスモニタリングに関する基礎的研究

― 59 ―

大きく影響していない。これは、推定値が最上階では観測

値に固定され、かつ、中間階の分布はほぼ1次モード形に

支配されるためである。層間変形の推定精度については、

実測による検証も必要と考える。

3.4 推定方法検討のまとめ

非観測階の応答を推定する構造ヘルスモニタリングシス

テムは、1次モードが支配する建物であれば一定の推定精

度が期待できると考えられる。ただし、層間変形は直接的

には未検証であり、非線形現象を含めて、今後もデータの

蓄積と検証が必要と思われる。

4.実建物での検証計画

構造ヘルスモニタリングシステムの導入例を紹介する。

導入した建物は都内に建つ鉄骨造 9 階建物で、現在もシス

テムの検証を継続している。

以下にシステムの特徴を示すとともに、図 14・図 15・写

図15 変位計取付け詳細 図14 観測機器配置

地震計

地震計

変位計

変位計

(a) 収録機器等設置状況 (b) 地震計設置状況

(c) 変位計設置状況 (d) 変位計設置状況(端部)

写真1 観測機器設置状況

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鴻池組技術研究報告 2019

― 60 ―

真 1 に観測機器の概要を示す。

· 即時診断ツールとして白山工業社製の被災度判定

支援システム「VissQ」5)を採用

· 地震計を全階に設置

· 直接層間変形を計測するための変位計を設置

· クラウドサーバを活用することで、地震後、建築主

関係者がメールや web 接続により、即時に被災度判

定結果を確認したり、閲覧したりすることが可能

全階での加速度計測と一部の階での層間変形の直接計測

により建物の詳細な挙動を把握でき、観測値と応答推定値

の詳細な比較が可能になる。今後は、非観測階の応答推定

方法の高度化検証や詳細診断の精度向上に活用し、研究開

発にフィードバックすることを計画している。

5.おわりに

本報告では、当社が展開する構造ヘルスモニタリングの

概要を示し、即時診断で必要となる応答推定方法の精度の

検証について示した。また、構造ヘルスモニタリングシス

テムを導入した建物での応答推定方法の高度化や損傷推定

検証の計画について紹介した。

非観測階の推定方法の検討によれば、1次モード支配で

弾性的な挙動が想定される建物がモニタリングの対象であ

れば、精度の良い推定が期待できるが、超高層など高次モ

ードが無視できない建物、ひび割れの発生などにより振動

特性が変化しやすいRC造建物などでは、簡易な推定方法

では限界があり、さらに検討・検証が必要と思われる。

実建物での検証計画については、応答推定の高度化や詳

細診断の精度向上を目的に計測を実施している事例を紹介

した。全階での加速度計測と一部の階での層間変形の直接

計測により建物の詳細な挙動を把握でき、観測値と応答推

定値の詳細な比較が可能になるため、非観測階の応答推定

方法の高度化検証や詳細診断の精度向上が期待できる。

今後、実建物の観測記録を活用し、検証を行うことで、

推定手法の適正化・合理化をはじめとした構造ヘルスモニ

タリング技術の高度化を目指したい。

謝辞

3 章で用いた地震観測記録は、UR 都市機構様との共同観測によ

り得られたものです。また、4 章で紹介した建物は、日鉄興和不

動産様、白山工業様と共同観測を実施しています。ここに記して

感謝の意を表します。

参考文献

1) 中村充:建築構造物のヘルスモニタリング、計測と制御、第

41 巻、第 11 号、pp.819-824、2002.11

2) 井川望、藤井睦、伊藤真二、黒木安男、太田崇士:高層建物・

免震建物における地震・風観測とその評価、鴻池組技術研究

報告、Vol.13、pp.71-76、2003.3

3) 住宅・都市整備公団、鴻池組:1995 年兵庫県南部地震 高見

フローラルタウン 15 号棟超高層 RC 造集合住宅の地震応答記

録からの耐震性に関する調査報告、1996.3

4) 成島慶、森清宣貴、永野正行、田沼毅彦、小田聡:大阪府北

部地震の強震観測記録に基づく大阪湾沿岸部に建つ超高層

建物の地震応答解析 (その 2) 強震観測記録を用いた地震応

答解析、日本建築学会大会(北陸)、2019.9(投稿中)

5) 白山工業株式会社 VissQ:https://www.hakusan.co.jp/prod

ucts/bosai/vissq-pro.html