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CEFR B1 言語活動・能力を考えるプロジェクト 2011 年度活動報告書 Project on Language Activities and Competences of the CEFR B1 level Activities' report of 2011 2012 年 3 月 CEFR B1 プロジェクト・チーム

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CEFR B1

言語活動・能力を考えるプロジェクト

2011 年度活動報告書

Project on Language Activities and Competences of

the CEFR B1 level

Activities' report of 2011

2012 年 3 月

CEFR B1 プロジェクト・チーム

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目次

はじめに ................................................................................................................................................. 3

B1 プロジェクト 2011 年度 参加メンバー ................................................................................... 4

■第一部 書く産出活動の考察

一章 概要

活動目標とデータ収集の方法・考察の視点 ................................................................ 東伴子 5

二章 言語能力

一節 語彙能力

B1 レベル学習者の語彙使用の観察と分析 ............................................................. 牛山和子 10

―コミュニケーション活動のための語彙の習得と指導法の考察に向けて―

語彙に関する考察 .......................................................................................... ルメトル真紀子 14

二節 文法能力

CEFR 文法的正確さの考察 ..................................................インゲボルグ・ヴェルプランク 17

―文法と語彙の直訳に関する分析―

三節 正書法の能力

CEFR B1 レベルの正書法に関する考察 ........................................................................ 吉田睦 23

―形式と語彙を中心に―

CEFR B1 レベル 正書法の把握に関する考察 ........................................................ 永田道子 29

―カタカナ語に注目して―

三章 社会言語能力

社会言語的な適切さに関する考察 ...................................................... クララ・ベルマンス 35

B1 レベルの「社会言語的な適切さ」について ..................................................... 竹内泰子 40

―文体・レジスター・丁寧さ―

社会言語学的観点からの考察 ........................................................................... Gretl Van Ourti46

―ネーティブ・スピーカーに対しどんな不快感・違和感を与える可能性があるか―

第四章 言語運用能力

一節 ディスコース能力

CEFR B1 レベル一貫性と結合性に関する考察 ........................................................ 櫻井直子 50

―「主題」「結論」の提示形式から―

B1 レベルにおける一貫性と結束性の考察 ............................................................. 武山恵奈 57

―接続詞に関して―

二節 言語運用能力・機能的能力

CEFR B1 レベルにおける「变述の正確さ」の考察 .................................................... 東伴子 64

―機能的言語使用の観点から―

■第二部

学習者の言語活動に関するアンケート .................................................................. 櫻井直子 69

―行動中心アプローチに基づくカリキュラムの構築に向けて―

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資料1 学習者言語活動調査 結果 ................................................................................... 76

資料2 カリキュラム試案 ................................................................................................... 82

今後の活動目標 ................................................................................................................................... 86

付録:分析データ ............................................................................................................................... 87

編集担当:東・櫻井

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はじめに

「CEFR B1 言語活動・能力を考えるプロジェクト」(2010 年 3 月~進行中) の 2 年目の活動

が終了し、この報告書第 2 号を出すことができた。

当プロジェクトは、ルーヴァン・カトリック大学(ベルギー)とグルノーブル・スタンダ

ール大学(フランス)による国境を越えた共同プロジェクトであり、把握しにくいとされて

いる CEFR の B レベルを、学習者の言語行動、言語活動を実際に調査・観察することにより

明確にし、CEFR の行動主義に基づいたカリキュラムを構築することを目標としている。

CEFR では、口頭での産出、書く産出、聞く受容、読む受容、やりとりという 5 技能が提示

されているが、初年度は、口頭やりとりに焦点を当てて言語活動の観察を行い、B1 の口頭

やりとり能力に関する考察を行った。本年度は書く産出活動に注目し、学習者の書いた産出

物の観察を出発点とし、B1 レベルの学習者の書く産出能力というものについての幅広い理

解を試みた。昨年度の活動に続き、カリキュラム構築に向け、今年度はより広範な学習者言

語活動調査を実施し、その結果からカリキュラムの試案を考えた。いずれの活動も、CEF の

原典を常に参照し、記述文の解釈を試みながら行った。

2 年目は、1 年目の連携によってメンバーで共有できた CEFR、B1 レベルへの理解を共通

認識に活動を行い、より深い分析・考察が行えたのではないかと感じている。

言語活動調査では欧州でご活躍のたくさんの先生方の温かいご協力をいただいた。プロジ

ェクトメンバー一同、心から御礼申し上げる。

最後となったが、このプロジェクトは国際交流基金の助成なしではここまで到達できなか

った。心より感謝申し上げる。

2012 年 3 月

CEFR B1 言語活動・能力を考えるプロジェクト

代表 櫻井直子

東 伴子

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B1 プロジェクト 2011 年度 参加メンバー

牛山和子 Kazuko USHIYAMA

Université Stendhal-Grenoble 3 グルノーブル スタンダール 第三大学

ヴァンウルティ・グレーテル Gretl VAN OURTI

Katholieke Universiteit Leuven ルーヴァン・カトリック大学

ヴェルプランク・インゲボルグ Ingeborg VERPLANCKE

Katholieke Universiteit Leuven ルーヴァン・カトリック大学

櫻井直子 Naoko SAKURAI

Katholieke Universiteit Leuven ルーヴァン・カトリック大学

竹内泰子 Yasuko TAKEUCHI

Université Stendhal-Grenoble 3 グルノーブル スタンダール 第三大学

武山恵奈 Ena TAKEYAMA

Katholieke Universiteit Leuven ルーヴァン・カトリック大学

久常順子 Junko HISATSUNE

Katholieke Universiteit Leuven ルーヴァン・カトリック大学

永田道子 Michiko NAGATA

Université Stendhal-Grenoble 3 グルノーブル スタンダール 第三大学

東伴子 Tomoko HIGASHI

Université Stendhal-Grenoble 3 グルノーブル スタンダール 第三大学

ベルマンス・クララ Klara BELMANS

Katholieke Universiteit Leuven ルーヴァン・カトリック大学

吉田睦 Mutsumi YOSHIDA

Université Stendhal-Grenoble 3 グルノーブル スタンダール 第三大学

ルメトル真紀子 Makiko LE MAITRE

Université Stendhal-Grenoble 3 グルノーブル スタンダール 第三大学

(50 音順)

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第一部 書く産出活動の考察

一章 概要

活動目標とデータ収集の方法・考察の視点

東伴子

1 活動目標

当プロジェクトを立ち上げたきっかけの一つは「B1 という掴みにくいレベルは何かを解明

するためには、B1 に相当すると判定できる、様々なタイプの学習者の言語行為を実際に観

察し、そこから記述文を具体的に捉え直す」というアプローチの実践であった(CEFR B1 言

語活動・能力を考えるプロジェクト 2010 年度活動報告 :16)。2010 年度活動は口頭やり取

りをテーマに選び、ビデオ観察を元に考察を行ったが、本年度は「書く産出活動」に焦点を

当て、B1 レベルの学生の書いたデータの観察・分析を通して、B1 レベルとは何かを考え、

その特徴、必要な指導要項を明らかにすることを目標に掲げ活動を行った。

2 観察データ

2.1 データのテクストタイプの決定と実施方法

1 年目と同様、ルーヴァンとグルノーブルで各大学の学生に共通のタスクを与え、その活

動結果のデータを全員で観察することにした。どのようなテクストを書かせるか CEFR のグ

リッドを参照しながら検討し、テクストタイプの異なる 2 種類の産出活動をさせることにし

た。以下、表 1 にタスクのテーマとそれを選んだ主な論拠、およびデータ収集方法を示す。

表1 データ概要

タスク 1 タスク 2

テーマ 日本に留学中、日本の大学新聞に自分

の国のもので、日本人に紹介したいも

のに関する記事を書くよう依頼され

た。

日本に留学中、先生に旅行のお土産を持

って来たが、不在だったためお土産を残

し、置手紙を書く。

テ ク ス ト

タイプ

特定の相手に対して書いたものではな

いが、読み手層が想定でき、レポー

ト、エッセー(吉島・大橋 2004/2008 :68)

などに近い、ある程度の長さを持つテ

クスト。

特定の相手に向けた短いテクスト。記

録 、 メ ッ セ ー ジ ( 吉 島 ・ 大 橋

2004/2008 :88)に近い。手紙と同様、開

始部、終了部の挨拶、慣例表現なども含

む。

選 ん だ 論

「一連の短い別々になっている要素を一

つの流れに結びつけることによって、

自分の関心が及ぶ身近な話題について

結束性のある簡単なテクストを書くこ

とができる」(吉島・大橋 2004/2008 :65)

「単純につなぎあわせたテクストで感

情や反応を記述し、経験したことを書

く こ と が で き る 」 吉 島 ・ 大 橋

2004/2008 :65)に適合。「大学新聞の記

事」を通して文のつなげ方、説明の仕

方、感情の伝達、読み手配慮などを見

ることができる。

「自分の日常生活の中で重要な役割を果

たす友人たち、サービス関係者、教師や

他の人々に、直接伝える情報を簡単なメ

モに書き、重要と分かる点を分かるよう

に伝えることができる」 (吉島・大橋

2004/2008 :88)に適合。

短い手紙形式のため、特に社会言語的能

力を見ることができる

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実施方法 辞書使用可・下書き可

400 字詰め原稿用紙配付(1~2 枚)

時間 40 分

辞書使用不可

無地のメモ用付箋紙(12x7,5cm) 1 枚配付

時間 10 分

それぞれのタスクは、担当の教師が授業中に行った。タスクの指示文は、フランス語・オラ

ンダ語版を作成し、学生の母語を使ってタスクの指示を行った(指示文は本稿末参照)。

対象とした学生は、ルーヴァン大学の日本語科の 2 年生(B1)、および参考として 3 年生

(B2)、グルノーブル大学の日本語・英語・経済専科の 2 年生を中心に 3 年生(A2 ~B1)・

マスター1 年(B1+~B2)、および非専攻者コースの学生(口頭レベル A2 ~B1)である。学生

にはプロジェクトの趣旨を説明し、産出物をデータとして使用する了解を得た。

2.2 データ収集・レベル判定

以上の手順でルーヴァンから 27 人、グルノーブルから 30 人の利用可能なデータが集まっ

た。それらのデータをメンバー全員で共有し、各自観察・考察を行った。次に各機関の分科

会で考察・レベル判定を行った。当然この段階では双方の機関の判定にずれが出た。その後、

合同会議で共通の認識を持つために話し合い、レベル判定の調整を行い、考察の方法につい

て検討した。

判定に先がけ、挙げられた主な問題点、確認事項は次のとおりである。

実際の産出活動との 条件のずれ

実際に大学新聞への記事の執筆を受けたら、その場で書くのではなく考える時間がある。

今回は「レベル判定」の必要があったため、授業中にテーマを与えその場で書かせ、十分

推敲する時間がなかったのは確かである。前もって「自国のものを日本人に紹介する」こ

とについて考えさせ、そのテーマについての考えを活性化をしておくことを考えたが、

実行できなかった。そのため、アイデアが沸かず、途中までしか書かなかった学生もい

た。書く早さも「書く産出能力」と関連していると推測できるがそれに相当するグリッド

はなかった。(口頭レベルでの「流暢さ」に当たるのだろうか)

言語能力・談話構成能力

部分的によくても、また内容的におもしろくても、初歩的なレベルでの文法、表現の誤

用が多いと B1 と判定できない。つまり「ある程度の言語能力」が保証されてから、ディス

コース能力などの判定となる。逆に言語的には適切な能力を持っていると思われる学生

でも構成が悪く、伝えたいことが明確でない場合は B1.1(B1 の始めのレベル、後述)であ

ると判定した。ディスコース能力に関しては、学習言語の言語能力とは別に、母語での

ディスコース能力との関連性が考えられた。

テーマの適切さと難易度の差

大学新聞に適しないテーマを選んだ学生がいるが、言語能力、内容から B1 と判断した。

論説文のような文体で書いた学生がいたが、これは大学新聞の記事として適切であろう

か。また、テーマの抽象性などにより、タスク遂行の難易度にかなり差が出ることに気

づいた。「学生生活の日常」や「日常的な食べ物」について書かれたものは、「町の歴史的説

明」、「宗教関係の習慣」の説明と比べるとタスクが簡単である。また、簡単な内容を選

んだ学生は、その分言語的間違いが尐ないが、そのようなテーマ選択が、言語能力の限

界に関連した「回避」ストラテジーによるものなのか、その他の「一般的能力」(吉島・

大橋 2004/2008 :107)と関連しているのかの判断が難しい。

作文に関しては、伝わってくる度合いなどからかなりの差が見られたため、B1 をさらに

次の 3 段階に分けるという作業を行った。

B1.1 :A2 +から B1 に入ったばかりのレベル。言語的能力はある程度あっても脈絡

のないテクストの場合はここにはいる。

B1.2 :繋げて書ける。伝えたいことがわかる。典型的な B1 と言える。

B1.3:B1.2 で既に獲得している言語能力、談話構成能力に加えて、分析的な視点で、

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自分の感想、感情、意見などが生き生きと表現できる。B2 へ移行中のレベルと言え

る。

話し合いの結果、典型的 B1(B1.2) と判定できるためには次の要素を満たしていること

が必要であることを確認した。

ある程度正確で適切な言語能力がある。

通じる。意味不明の部分があまりない。

流れにそって、順番に伝えられる。

報告ができる(置手紙)

巻末に作文と置手紙のレベル評定一覧表、B1 および考察に使用したデータの縮小版を掲載

した。

3 考察に向けて : 関連項目の決定

今回のデータ分析は、「能力」別に行い、さまざまな観点から「B1 の書く産出活動」とい

うものを捉え直すというアプローチを取った。そして、各能力に特化した指導法を提言する

ことを目標にした。コミュニケーション言語能力には 言語能力、社会言語能力、言語運用

能力がある。言語能力は語彙能力、文法能力、正書法の能力等に分けられ、言語運用能力は

ディスコース能力と機能的能力などに分けられる。このような要素を検討した結果、今回は

書く産出活動に特に関連していると考えられる以下の項目を選択し、考察の出発点とした

(表 2 参照)。

語彙能力

文法能力

正書法の能力

社会言語能力

一貫性と結束性(ディスコース能力)

变述の正確さ(機能的能力)

次節から CEFR のコミュニケーション言語能力に沿って考察を行ってく。各考察では、

CEFR の記述文の捉え直しにより B1 学習者に何ができるのかを具体的に考え、次にデータ

の観察から考察する。最後に B1 レベルの指導項目の提案を行う。以下、考察の文中の事例

に表示されている番号(ex. G12, L7)は巻末に記載されているデータ番号に当たる(G はグ

ルノーブル、L はルーヴァン)。

<参考文献>

吉島茂・大橋理枝(他)訳編(2004/2008)『外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ参

照枞』朝日出版

櫻井直子・東伴子(編)(2011)『CEFR B1 言語活動・能力を考えるプロジェクト 2010 年度

活動報告書』B1 プロジェクトチーム http://japanologie.arts.kuleuven.be/node/8566/

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表 2 書く産出活動分析に関連したCEFRグリッド

記述はグリッドから B1 のものを取り出して記載している。

「1/」は B1 を、「2/」は B1+を示す。左側の能力を方略を用いて活動に結び付けている

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資料1 タスク指示文

研究の目的の説明と協力依頼文

オランダ語版

Binnen het kader van een onderzoek naar CEFR B1 niveau schrijven, uitgevoerd door de

universiteit van Grenoble en de K.U.Leuven, Japanologie, hadden we graag beroep gedaan op

jullie medewerking. Gelieve de onderstaande twee schrijfopdrachten uit te voeren. Nadien worden

de teksten gebruikt voor interne analyse. Hartelijk dank.

フランス語版

Dans le cadre d’une recherche sur l’écriture au niveau B1 dans le référentiel CEFR menée par les

universités de Grenoble et de Leuven (Belgique), nous voudrions bien faire appel à votre

coopération. Merci bien d’avance d’exécuter les deux tâches marquées ci-dessous. Dès lors, les

textes écrits seront employés pour des buts d’analyse interne.

学校新聞への記事執筆に関する指示文

オランダ語版

Je bent een buitenlandse student aan een universiteit in Japan. Je schrijft een artikel voor de

plaatselijke Japanse universiteitskrant waarin je één (en slechts één) thema van

België/Frankrijk/Europa voorstelt. Bijvoorbeeld één gewoonte, één gerecht, een muziekgroep,

een plaats, …. of een vergelijking van één thema tussen twee culturen.

フランス語版

Vous êtes étudiant étranger à une université au Japon. Vous écrivez un article pour le journal

universitaire local japonais. Dans l’article vous devez introduire un seul thème de

Belgique/France/Europe, comme par exemple une habitude, un repas, un groupe de musique, un

lieu, etc. ou faire une comparaison sur un seul thème entre deux cultures.

置手紙作成に関する指示文

オランダ語版

Je bent een buitenlandse student in Japan en hebt een reis gemaakt. Naar Japanse gewoonte heb je

een souvenir (おみやげ) meegebracht voor jouw docenten. Je gaat naar het kantoor van de

docenten, maar zij zijn er niet. Je laat een geschreven bericht achter voor hen, samen met het

souvenir.

フランス語版

Vous êtes étudiant étranger au Japon et vous avez fait un voyage. Vous avez amené un souvenir (お

みやげ) comme font les Japonais habituellement, pour vos professeurs. Vous allez à leur bureau

pour l’offrir, mais ils sont absents. Alors, vous écrivez un message à vos professeurs et vous

laissez ce souvenir.

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二章 言語能力

一節 語彙能力

B1 レベル学習者の語彙使用の観察と分析

―コミュニケーション活動のための語彙の習得と指導法の考察に向けて―

牛山和子

1. B1 レベルの語彙能力 CEFR の Can-do 記述から

本稿では B1 レベルの書き言葉における語彙能力を観察対象とし、吉島・大橋(訳・編)

『外国語教育 II 外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ共通参照枞』(2004/2008)

(以下 CEFR とする)で語彙に関して触れている部分の読み直しを全体的な尺度や話し言葉

に関して書かれている箇所も含めて行う 1 。読み直しの範囲に話し言葉について触れている

部分も入れたのは、話し言葉と書き言葉にはそれぞれに固有な側面があると同時に、コミュ

ニケーション活動として共通する側面もあるということ、そして、CEFR においては書き言

葉に関する can-do 記述が話し言葉に比べて尐ないという事情を考慮してのことである。

CEFR で語彙能力に焦点を当てて書かれているのは、第 5 章内の語彙能力(5.2.1.1 pp.118-

121)の項目で、「語彙能力は、言語の語彙知識と、その語彙を使いこなす力で、語彙的な要

素と文法的な要素からなる」と記載されている。語彙的な要素としては、「定型表現」(挨拶、

諺、格言など)、「定型句」(固定化された比喩的表現、ある語の基本義をベースとする強調

語 例:石頭)、「固定句」、「固定表現」(複合助詞など 例:~に対して)、「固定化された

連語」(例:頭を丸める)、「単一語」(多義性をもつ語もある)が挙げられ、文法的な要素と

しては、数量詞、指示詞、人称代名詞、疑問詞・関係詞、所有代名詞、前置詞(後置詞)、

助動詞・語法助動詞、接続詞、心態詞(例:「…ね」 「もう…」 「…さ」)が挙げられている。

また、B1 レベルがどのぐらいの語彙力を持っているか、どのぐらいそれらを使いこなす能

力があるかについては「使用語彙領域」と「語彙の使いこなし」という Can-do 記述があり、B1

レベルの使用語彙領域は「家族、趣味や関心、仕事、旅行、時事問題など、本人の日常生活

に関わる大部分の話題について、多尐間接的な表現を使ってでも、自分の述べたいことを述

べられるだけの語彙を持っている」(p.121)となっているが、話す能力も含めて CEFR の記

述に見られる B1 と B1+の違いの一つは、扱えるテーマの幅(ジャンル別の語彙とその量)

にあるようだ。また、B1 では語彙量の不足のため、間接的な表現に頼る傾向が指摘されて

いる。B1 の語彙の使いこなしに関しては、「複雑な考えや、非日常的な話題や状況に関して

何かを述べようとすると、大きな誤りをすることがあるが、初歩的な語彙は使いこなせる」

(CEFR 2004 年度版p.122 参照)と記載されている。語彙に関しては、更に、5.2.1.3 意味

的能力の項目がある。「意味的能力は、学習者が持っている意味の組織構造についての意識

や把握の能力に関わるもの」とされ、語彙意味論の範疇から、CEFR では「単語と全体のコン

テクストとの関係」(指示、コノテーション)と「一般的な個別概念」(語彙間の関連:同意

語・反対語、上位概念・下位概念、連語、部分-全体関係)を挙げている他、「文法意味論」、

「語用意味論」からも意味能力を測ることができる(p.127)としている。また、語彙の運用

に関しては 4.4.1.3 に「補償」という Can-do 記述があリ、B1 に関しては「伝えたい概念に類似

した意味を持つ、簡単な言葉を使い、聞き手にそれを正しい形に「修正」してもらうことがで

きる。母語を学習対象言語の形に変えて使ってみて、相手に確認を求めることができる」

(p.69)と書かれている。この記述から、書く産出活動において必要とする語彙が見つから

ない時は、意味の近い単語を使う、母語を翻訳して使うといったストラテジーが見られると

予測される。

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語彙能力に関連する興味深い記述はこの他にもあるが、本稿では語彙能力を先に述べた「補

償」、「使用語彙領域」、「語彙の使いこなし」 及び、語彙の「一般的な個別概念」がどのよう

に使われているかを中心にデータの観察と分析を行う。

2. 分析と考察

2.1 データ・資料

本稿で語彙の分析資料として観察するのは、学校新聞への投稿記事として書かれた作文で、

プロジェクトチームによって B1 レベル(B1.1、B1.2、B1.3)と判定されたものである。作

文のテーマとして特に多かったのは、国や街の名物(食べ物・飲み物)を題材としたもので

あったので、このテーマでの分析(ルメトル)とそれ以外のテーマの分析(牛山)に分けて

データ観察を行うこととした。

2.2 分析方法

データは計 18 本(B1.1 8 本、B1.2 9 本、B1.3 1 本)で、分析は各作文の語彙的な要

素、文法的な要素(前項 1)のすべてにわたって、学生が使用した語彙・表現を観察し、語

彙選択の的確さを 3 つのカテゴリーに分けていくという作業から始めた。カテゴリーの内訳

は、「語彙の選択が適切なもの」、「意味はわかるが語彙の選択がやや不自然、または不適切

であるもの」、「語彙の選択の誤り、または理解が難しいもの」の 3 つである。ただし、初級

レベル前半の助詞のエラーや表記上の誤り(例: *クリスト(キリスト))などは「变述の正

確さ」や「正書法」では問題となるが、語彙の誤用事例としては本稿では取り扱わない。

2.3 分析結果と B1 レベルの語彙能力に関する考察

学生が選んだ作文のテーマ(巻末資料参照)は、クリスマスや復活祭など自国の習慣に関

するもの、観光名所の紹介、音楽や漫画などについて自国と日本を比較したものなどが多か

ったが、携帯電話や自分の住んでいる町の汚染、フランスの建築様式などといったやや抽象

的な話題をテーマとした作文もあった。しかし、総じて言えば、「第一次世界大戦」(L23)

をテーマとした作文を除き、「使用語彙領域」は先に述べた B1、B1+レベルの Can-do 記述に

にほぼ合致するものであるといえる。 B1 プロジェクトメンバーから最も高い評価 (B1.3)

を受けたのは、データ N° L2 の「ベルギーのクリスマス習慣」という作文で、語彙選択の正確

さや豊かさ、文章の読みやすさ、また情報を正確に伝えている点がよい評定へとつながった

と思われる。L2 の *カテゴリーの 2 つのエラーは、「家族の皆さんと(訂正例:家族のみん

なと)」 、「年中(訂正例:年間を通して / 一年の間に)」というもので、読み手の理解を妨

げることのないものであった。紙面の関係もあり、学習者の語彙の不適切な使用をすべて提

示することはできないが、以下に B1 レベルとしてまだ不安定といえる B1.1 の作文と B1 の

安定したレベルである B1.2 の作文とに分けて、それぞれに特徴的なエラーを紹介する。

2.3.1 B1.1 の語彙使用

2.3.1.1 「補償」の例

B1.1 の作文では、「伝えたい概念に類似した意味を持つ、簡単な言葉を使い、聞き手 [読

み手] にそれを正しい形に修正してもらうことができる」([ ]内は筆者)という「補償」(前

項 1)の例がいくつか見られたが、語だけでなく文レベルで構文や表現を直さなければいけ

ないようなエラーが多く観察された。その中からいくつか例を挙げる。括弧内は筆者による

訂正例である。

L11 * よくその日に授業がない(その日に授業がないことが多い)

L12 * トレーニングを教えてあげます(トレーニングをする機会を与えて / 提供していま

す)

X 興行があまり大きくない(エージェントが歌手を支援する企画・プロモーションの

規模

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が小さい)

L13 * アドベンチャーなどがあって、ベルギーに比べて、あまりなくて(アドベンチャ

ーなど

があるが、ベルギーにはあまりないので)

G14 * 欲しかったら(そうしたければ / 希望すれば )

G20 * 汚染になってきます(汚染が問題になってきています)

G21 * たくさん細部があります(細部にも工夫が見られます)

* よく色があります(たくさんの色が / いろいろな色が使われています)

ただ、以下の例のように学生が使用した語の方が上位概念や抽象的な語である場合もあった。

L11 * 遊具(おもちゃ)

X 「SAINT・NICOLAS」という人から演繹された(「SAINT・NICOLAS」という人 / 聖人

の名に由来する)

L13 X 描き方は尐し安易で(描き方はシンプルで)

上記以外の「補償」の例としては、母語からの翻訳(「補償」ストラテジーの使用(前項 1)

と思われる例が一例ではあるが見られた。

G20(母語からの翻訳と思われる例)

X 私によって(私は)

2.3.2 B1.2 の語彙使用

2.3.2.1 「補償」の例

B1.2 レベルの学習者の作文にも以下のように B1.1 と同じような「補償」の例が見られる が、

B1.1 と比べると、文レベルで直さなければいけないものは尐ない。

L10 * 名物(有名な建物 / 歴史的建造物)

L18 * 国には(各国には) * 自分の(自国の)

L23 * 国様(王様・国王)

G24 * いつもは(通常) * 第一回の(最初の) * 子供用の(子供向けの)

2.3.2.2 「一般的は個別概念」 - 「語彙間の関連」に関するエラーの例

上記のような例はあるものの、B1.2 に特徴的なエラーは「一般的は個別概念」(前項 1)に

ある「語彙間の関連」の中の同意語の使用に関わるものではないかと思われる。また、同意語

ではないが、類義語や類義表現、表記の近い語が使われる場合もあるようだ。その他、ここ

では取り上げないが、接続詞や母語からの翻訳と思われる語彙の不適切な使用も見られた。

L18 * コンテストにかつと希望している(コンテストに勝ちたいと思っている)

* 隣の国を支える(隣の国を応援 / 支援する)

L19 * 物語からのアントワープ(物語に出てくるアントワープ)

* 伝説によって(伝説によると)

L23 * 景色は(目に映る光景は)* 世の中の歴史の中で(世界の歴史の中で)

G1 * 最初的に(元々/ 元々は) * クリスト教人達(キリスト教徒)* 歴史中の(歴史上の)

これらの事例は、実は CEFR B1+の「補償」のストラテジーに関連する現象(「直接当ては

まる言葉は思い出せないが、そのものの具体的な特徴を定義できる。自分の言いたかったこ

とを、類似の意味を持つ表現を使って言い換えることができる。(後略)」 p.69)で、B1.1 レ

ベルよりコミュニケーション能力が高くなっているといえる。しかし、これは同時にこの部

分を B1.2 の語彙指導のポイントの一つと捉えて補強していかなければならないことを示唆

していると言える。

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3. 指導に向けての提言

CEFR では、(語彙の)意味はコミュニケーションの中心を成すものと捉え、意味の構築に

は語としての「形態」と「意味」の両方が必要で(pp.127-128)、どのような学習アプローチを取

るにしても学習者はこの二つ(知識と運用力)を学ばなければならないとしている。日本語

は世界の言語の中でも語彙のカバー率が低く(玉村 1987 in 佐藤 1999 : 171)、同じ内容のコ

ミュニケーションを理解・表現する為に、他の外国語より多くの語彙を学ばなければならな

い言語であると言われている。それは、同じ意味の言葉を和語・漢語・外来語という異なる

方法で表現できる日本語の豊かさにもよる。分析結果でも漢語と和語の選択ミスや外来語を

使ったほうがわかりやすくなる例(分析 2.3.1.1)などが見られたが、作文指導の際には和

語・漢語・外来語をどのように使い分けるかを具体的な場面を想定して学習者に提示してい

くことが重要であろう。分析の結果からもうひとつ言えることは、類義語学習の必要性(分

析 2.3.2.2)である。類義語の指導法としては、学生が取り組む課題遂行に必要なキーワード

をいくつか選び、それらをもとに類義語マップなどを作成する方法を提案したい。学習者が

主体となる活動の方が、語彙と意味の結びつき(タグ付け)も強まり、語彙の習得を促進す

ると考えるからである。

また、B1 レベルの学習者の語彙力とその運用力を伸ばすためには、CEFR 5.2.3.2 の「機能

的能力」に記載されている「マクロ機能」(p.140)(例:描写、説明、指示)別の語彙指導が

有効かと思われる。まだ作文中の全てのマクロ機能を確認してはいないが、データ観察の過

程で、「描写」(事実・現実の描写、心情の描写)、「説明」(定義する、わかりやすく言い換

える、詳細な説明をする、因果関係の説明)、「比較」、「例示」、「評価」(例:「とても」、「す

ごく」などの副詞)、「変化」、「対比」(例:接続詞など)、「意見」、「提案」などのマクロ機能

とそれに関連する語彙の使用が観察された。これらのコミュニケーション機能を場面別・デ

ィスコースジャンル別の語彙と関連付けて提示していくことも、B1 レベルとしての語彙力

を高め、B2 レベルへとステップアップしていくための一助になるのではないかと考えてい

る。

_______________________________

1 CEFR 5.2.2.6 「方言や訛り」に伴う語彙の問題には本稿では触れない。

<参考文献>

佐藤政光(1999)「日本語学習者の語彙習得に関する調査研究」 明治大学人文科学研究所紀

要 第 44 冊:169-180.

山内博之(編)(2008)『日本語教育スタンダード試案 語彙』ひつじ書房

吉島茂・大橋理枝(訳・編)(2004),(2004/2008)『外国語教育 II 外国語の学習・教授・評

価のためのヨーロッパ共通参照枞』Common European Framework of Reference for Language :

Learning, Teaching, Assessment 朝日出版社.

国際交流基金(2010)『JF 日本語教育スタンダード』国際交流基金 Council of Europe (2001) Common European Framework of Reference for language : Learning,

Teaching, Assessment, Cambridge University Press.

Division des Politiques Linguistiques Strasbourg (2005), Cadre européen commun de référence pour

les langues : Apprendre, Enseigner, Evaluer, Conseil de l’Europe / Editions Didier, Paris.

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語彙に関する考察

ルメトル真紀子

1 B1 レベルの「語彙能力」

CEFR の「使用語彙領域」(吉島・大橋 2004:121)のグリッドを見てみると B1 は「家族、

趣味や関心、仕事、旅行、時事問題など、本人の日常生活に関わる大部分の話題について、

多尐間接的な表現を使ってでも、自分の述べたいことを述べられるだけの語彙を持ってい

る。」である。つまり、A2 レベルではまだ「馴染みのある状況や話題」に限られていた語彙

の幅も B1 レベルになると「本人の日常生活に関わる大部分の話題」について既知の言葉を

使い表現できるまで広がってくることが分かる。次に、「一般的な使用可能言語の範囲」(吉

島・大橋 2004:118)のグリットを見ると、「語彙的な幅の狭さのために発言内容に繰り返し

が生じたり、なかなか内容を言語化できなかったりすることもある」としても挙げられてい

る。語彙の知識の狭さがコミュニケーションの幅の広がりに影響を与えていることは否めな

いだろう。そこで語彙の知識自体が言語使用者のコニュニケーション活動の際にどのように

表れているのかを観察することにより B1 レベルと判定された基準は何か、そして学習者が

自分の表現したいことをより正確に自然に表すことができるようにするためにどのような手

助けができるのかを探る目的で今回の考察を行った。

2 分析と考察

2.1 方法

日本の学校新聞に自分の国の何かを紹介するという課題で学習者が書いたデータ記事のう

ち、B1 レベルと判定されなかったものも含めるとルーヴァン側では約 3 割、グルノーブル

側では半数以上が食べ物や飲み物に関するものであったことが目に留まった。テーマを絞り

同類の語彙を比較することにより B1 レベルの特徴が見つかるのではないかと仮定し分析を

始めた。文化や習慣などさまざまなテーマで書かれた学校新聞記事のデータの中から、「コ

ミュニケーションのテーマ」(吉島・大橋 2004:53)の分類にもある食べ物と飲み物に関する

記事に限定し分析に利用することにした。B1 レベルと判定された 1記事の中、ルーヴァン側

8 本とグルノーブル側 10 本、計 18 本の飲食物に関わる記事の語彙をリストにまとめ比較分

析した。

2.2 語彙知識の幅と使い方についての分析と考察

記事を書いた学習者がなぜそのテーマを取り上げたのかが分かるキーワードの語彙を取り

上げリストにまとめてみたところ、テーマを説明するのによく使われている語彙として「有

名」「好き」「習慣」「伝統」「特徴的」「専門料理」「人気」「名物料理」「大切」「特産物」「代

表」「地域的な料理」が挙がった。「有名」が一番多く 8 本、ついで「好き」が 5 本、「習慣」

と「伝統」が各 2 本の記事の中に見られた。そのうち「有名」「好き」「習慣」「大切」「専門」

「料理」については初級で提示される語彙なのですでに知っていたものと思われる。しかし

「特徴的」「名物」「地域的」については初級レベルで扱われることが尐ない語彙であるため

辞書で調べた可能性が高いと考えられる。上記のうち他の語彙に置き換えた方が適切と思わ

れたものを以下に挙げてみよう。

例 1 「有名」

資料番号 学習者が使った記事中の語彙 提案例

L7、L24、L27 有名な食べ物

名物 L17 有名なもの

L27 有名なごはん

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資料 L7、L17、L24、L27 で学習者が使った「有名な食べ物」「有名なごはん」「有名なもの」

に関して、「有名」という既知の語彙にとどまらずもう一歩進んだレベルの「名物」という

語彙があることを提案できる。ここでは「一般的な使用可能言語の範囲」(吉島・大橋

2004:118)の B1 グリッドで示されている「語彙的な幅の狭さ」が見受けられるが「使用語

彙領域」(吉島・大橋 2004:121)の B1 グリッドにあるようにいくらか「間接的な表現」にな

ってはいるものの言いたいことを伝えることはできている。

例 2 「好き」

資料番号 学習者が使った記事中の文と語彙 提案例

G27 フランスではいちばん好きな食物はパンで

す。

好まれている食べ物

愛されている食べ物

資料 G27 で学習者が書いた「いちばん好きな食物」では「Maîtrise du vocabulaire(語彙の把

握 2)」(Conseil de l’Europe 2001: 89)の B1 グリッドで示されているように基本的な語彙はで

きているものの漠然とした表現であるため学習者の言いたいことが明確に伝わってこない。

ここでは A レベルでは指導されないことの多い「好む」「愛する」という語彙を提案できる。

例 3 「特徴的」

資料番号 学習者が使った記事中の文と語彙 提案例

L6 各国は様々な特徴的な習慣がある。 特有の習慣

特色のある習慣

資料 L6 では「特徴的」という中上級レベルの語彙を使用している。理解可能ではあるが

「特有の」や「特色のある」という語彙で表現できることを提案できる。辞書を引いたが的

確な語彙を選べなかった可能性がある。同義語や語彙の選択の問題であるといえよう。

例 4 「専門料理」「名物料理」「名物」

資料番号 学習者が使った記事中の文と語彙 提案例

G2 山の中にあるこの寒い所では様々の温かい

専門料理 3が見つけられます。

名物料理

地方料理

G22 チョコレートケーキがフランスの名物料理のことみんなは知っているから、~。

名物

名菓

G25 世界で一番のフランスの名物はパンです。 有名

資料 G2 は母語の影響で直訳になっている例といえよう。資料 G22 でチョコレートケーキを

「名物料理」としているが、ケーキは確かに料理して作るものだが料理というよりも菓子な

ので単に「名物」または「名菓」の方が適している。資料 G25 は文脈にうまく合っていない。

「名物」をそのまま使えるよう文の構成を変えるか語順を変え「名物」のかわりに「有名」

を使うということが提案できる。資料 G25 は前出の例1と逆のパターンで「名物」という

B1 レベルの語彙を学習者が使ってみてはいるが文脈にうまく合っていない。このケースは

語彙知識の広さと使う能力の関係を示す例である。例 3 と例 4 については B1 レベルとして

十分な語彙を使っているが語彙の選択にもう一歩の例であった。B1 レベルではより的確な

語彙使用が求められている。今回学習者が実際どの語彙で辞書を利用したかということまで

確認できないが、自分の語彙知識の中や辞書から的確な語彙を選び出すことが容易ではない

ことが B1 レベルの学習者の資料を分析して見受けられた。

3 指導のポイント

今回の分析と考察により、語彙知識の幅が辞書の助けを借りて広くなったとしても、場面

に合った使い方が難しいことがわかった。そこで学習者が辞書で語彙を調べる際、より適切

な語彙を選択できるように例文を見て語義を理解すること、そして新しい語彙に出会った時

には同義語とその例文も参考にしてニュアンスや使い方の違いをつかみ使えるようになるこ

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とが B1 レベルを熟達して次のレベルに進むために必要なことだとわかった。教師は新しい

語彙をただ提供するのではなく、同義語があり使い方が難しそうな語彙に関しては特に、同

時にその語彙を使った例を学習者に挙げてもらい、使い方が適切かどうかを確認することが

できる。また新出語彙に関連する語彙も時間の許す限り紹介することができるだろう。教師

の役割の一つとして、学習者が自分で語彙を選ぶことのできる力のある、より自立した学習

者になれるよう、語彙能力の幅を広げる手伝いをすることが大切なのではないだろうか。

___________________________________________

1. 「A と B1.1 の揺れ」と判定された記事も含む。

2. 「語彙の把握」は筆者が加筆。

3. 学習者が実際に書いた文は「~様々の暖い専門料が見付けられます。」だが理解可能なので

この例では「暖い」と「専門料」の誤りは問題として扱わない

<参考文献>

Conseil de l’Europe, Division des Politiques linguistiques (2001) Cadre européen commun de

référence pour les langues, Didier.

吉島茂・大橋理枝他 訳編(2004)『外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参

照枞』朝日出版

国際交流基金・日本国際教育協会 著編(2004)『日本語能力試験 出題基準 改訂版』凡

人社

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二節 文法能力

CEFR 文法的正確さの考察

―文法と語彙の直訳に関する分析―

インゲボルグ・ヴェルプランク

1 CEFR B1 レベルの文法的正確さ

このプロジェクトのために B1 レベルの学習者が書いた作文を読んでみると、スムーズに

書けた作文もあれば、不自然だと思った作文もあった。なぜ不自然なのかと詳しく観察し、

その原因の一つは直訳ではないかと思われたのがこの考察のきっかけである。日本語能力が

Aレベルで、オランダ語母語話者の学習者の作文には母語の影響で直訳があることに、以前

作文の授業を担当していたときから気づいていたが、今回、フランス語母語話者、それから

B レベルではどうかを調べることにした。

CEFR には B レベルの文法的正確さ(5.2.1.2 文法能力)について「馴染みのある状況では、

割合正確にコミュニケーションを行うことができる。多くの場合高いレベルでの駆使能力が

あるが母語の影響が明らかである。誤りも見られるが、本人が述べようとしていることは明

らかに分かる。(B1+)」、それから「比較的予測可能な状況で、頻繁に使われる「繰り返し」

やパターンのレパートリを、割合正確に使うことができる。(B1)(吉島・大橋 2008:124)」

と記述されている。B1 に到達した学生の大学新聞への記事の作文における母語からの影響

を誤用分析してみると、「母語の影響が明らかである」ケースは多く、またそれは文法にだ

けではなく、語彙にも関係があることがわかった。むしろ、文法より語彙選択間違いのせい

で誤解が起きやすいようであった。

2 文法

分析した作文は B1 と評定された 38 の大学新聞記事のための作文である。その分析から分

かったことは、B1 レベルの学習者は基礎文型表現の知識があるが、同時に頭の中のアイデ

アを母語で考えている。その上、オリジナリティが好きで、独創性を持ちたいが、それに当

たる適切な文型の知識は足りないケースが目立った。

母語影響のためにあった文法の間違いを下記に文法項目別に分けて、表にしたものを示す。

紙面の関係で一例ずつ示すにとどめる。

2.1 助詞

フランス語、オランダ語の文法に助詞がないので、B レベルでも助詞の間違いがある。ま

た、助詞の間違いの原因はこのレベルではより長い文を書いて、文が複雑になってしまうた

めであろう。多いのは母語では前置詞になるもの、「も」の文中の位置、独特な日本語の文

型と関係があるもの様々である。

表 1 助詞に関する母語の影響に関連がある例 1

そのワインはフランスに全部のレストラン

にあって[…] G3

キリスト教の国には有名です。G7

日本にほとんどの歌手は日本語で歌う[…]

L12

フェスチバルはドイツにあった。L18

En, dans (in) →フランスの/では

→キリスト教の国では

→日本では

→~で

バーで一杯のみに行く。L16 Ze gaan een pintje drinken in een

bar (they go to drink a beer in a bar) 目的+移動動詞

→~へ~

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お米を作るもうヨーロッパの方法がありま

す。G23

En Europe il y a aussi des méthodes

pour faire du riz.

(In Europe there are also ways of

making rice)

「も」の位置

→ヨーロッパにもお米

を作る方法がありま

す。

フランスには、日本にもボージョレヌーボ

ーの広告[…] G3

En France, ainsi qu’au Japon

(In France, just as in Japan) →フランスにも日本に

も…

フランスでいろいろな建築のスタイルがあ

ります。G21

En (in) →~には/では 又は

「~は~が」

アトミウムの高さは百二メートルで […]

L10

De hoogte van het Atomium is...

(the height of the Atomium) →「~は~が」

(母語にない文型)

昔から各町が自分のビール醸造所があっ

て、[...] L20

Van vroeger heeft ieder dorp 主語zijn eigen brouwerij... (Every

village 主語 has its own brewery)

母語では主語になるが

日本語では主語ではな

い。 →「~に~があ

る」

授業か勉強したあとで、学生は[…] L16 Na de les of de studie (After lesson

or study...) ‘or’ は必ず「 か」では

ない

2.2 文レベルの問題

特に母語の can 動詞からの誤用、また「~る・~た・~ている」に関わる間違いが多い。

表 2 母語の can動詞の影響の例

たまごの全部を見つかったら、チ

ョコレートを食べることができま

す。G7

On peut manger…

(We can eat them) →見つけたら

→食べます / 食べてもいいです

パーティーはよく早朝までかかる

かもしれません。L15

De feestjes kunnen soms tot ‘s

ochtends vroeg duren.

(Parties can sometimes last

until...)

→~こともある

何回(あそこに)行ってもまだ全部

(を)見ません G21

… on ne voit pas tout

(we don’t = cannot see all) →見られません か 見ていませ

表 3 アスペクトに関する母語の影響の例

フランスではいろいろなワインを作り

ます。G3

On fait… (They make wine) →~ています

フランスに来るとき食べてみたいと思

います。G22

Quand ils viennent en

France (When they come to

France)

→~来たとき~(フランス語では

未完了形)

(学生は)[…]必要だと思う。 L15 Ze denken / vinden dat…

(They think that…) →~思っている

世界中の人の多くはこの食べ物を食べ

るのが大好きだと思っています。L22

Ik denk dat… ( I think

that…) 主語=書いた人(世界の人ではな

い)→思います。

2.3 指示詞・直示・省略

指示詞の誤用があるが、それだけではなく、直示・省略にも関係がある。つまり、日本語

では不要なのに学習者が指示詞を使用した例もある。それは母語にその場合には指示詞が必

要だからである。

表 4 指示詞・直示・省略に関する母語の影響の例

日本に様々な男の歌手のグループがある。しかし、ベ

ルギーにそのことが全くない。L12

Die dingen (those things) →そういう

たくさん細部があります。それから、何回あそこに行

ってもまだ全部見ません。G21

y (there) 不要

→何回行っても

日本のまんがより大きくて、もっと高いです。G24 Plus cher (more expensive) 不要/比較の文型

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2.4 その他

第一言語からの直訳のため不自然になっているテクストを分析すると、原因として 1 つ

の文に情報を多く入れすぎること、それから日本語の独特な文構成が直訳の文とはあわない

ことが挙げられた。後者には、文頭と文末が合わないことなどが含まれるが、最も目立つ要

因は語順である。

表 5 語順に関する母語の影響の例

その地方の一つだけのチーズでは

ない。G29

Ce n’est pas le seul fromage de la

région

(It is not the only cheese in this region)

→その地方には他のチーズも

ある。

ヨーロッパ人に何がベルギーの有

名なものだかと聞いたら[…]L17

Als je aan Europeanen vraagt wat er

bekend is in België (When you ask a

European what is famous in

Belgium…)

→ベルギーでは何が有名かと

ヨーロッパ人に聞いたら…

ほとんどの建物は大学の建物でだ

いたいの住んでいる人は学生だ。L16

Bijna allen die er wonen... (Almost

everyone living...) →ほとんどの建物は大学の建

物で、住んでいる人はだいた

い学生だ。

3 語彙の選択

CEFR にはコミュニケーション言語能力(5.2.1.1 語彙能力)の B1 レベルの「使用語彙領

域」には、語彙知識の広さと、その知識を使いこなす能力に関し、「家族、趣味や関心、仕

事、旅行、時事問題など、本人の日常生活に関わる大部分の話題について、多尐間接的な表

現を使ってでも、自分の述べたいことを述べられるだけの語彙を持っている。(吉島・大橋

2008:121)」、「語彙の使いこなし」には「語彙的な正確さは一般的に高い。多尐の混乱や間

違った単語の選択もコミュニケーションを邪魔しない範囲である。(B1+)」、「複雑な考えや、

非日常的な話題や状況に関して何かを述べようとすると、大きな誤りをすることがあるが、

初歩的な語彙は使いこなせる。(B1)(吉島・大橋 2004:122)」2と記述されている。

これらの直訳による誤用の原因は何かと考えると、学習者が持っている語彙が足りない、

つまり幅が広くないためバリエーションがないためだと言える。または場面によって適当な

語彙を使った経験が学習者にないため、例えば日本語の「パーティー」は’party’だけではな

く、広い意味の「~会」(飲み会 L15、など)としても使用されている。 それで、知らな

い言葉を辞書で引いたり(下記 3.1)、知っている言葉で言い換えたり(下記 3.2)する。語

彙選択の間違いのために、尐々不自然に感じるが意味が(大体)通じる場合(例.「~ぐら

い」の代わりに「~ごろ」G3)もあるが、直訳し過ぎ・語彙選択の間違いのために誤解が起

きること、つまり日本語教師以外の日本語母語話者には理解できない場合もある。例えば

G27 の「パンの賞はあまり高くないんです」では「値段」の代わりに「賞」が使われており、

これはフランス語では両方とも prix であることから生じた間違いである。

3.1 辞書が適切に利用できない例

表 6 辞書で調べた語彙が文脈に合わない例

(フォアグラ)を特別な行事のために

予約します。G16

Réserver pour une occasion spécial (reserve for some special occasion)

→(フォアグラ)は特

別なときしか食べませ

ん。

チーズを融解して、... G2 Fondre (melt) →溶かして

ボージョレヌーボーのためにたくさん

広告をして祝い事を組織します。 G3

On organise

(they organize…) 組織不要

→祝い事をします

色々な変種があります。(G27、パンの

話)

variétés (varieties) →種類

たくさん遊具を見付けるんだ。L11 Ze vinden er heel wat speelgoed.

(they find/ discover lots of →おもちゃが置いてあ

る。

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playthings) 遊具:speeltuigen になる

機械 G2 machine →器具

「単純な要求に対応できるだけの語彙を持っている」A レベルより、B レベルではより詳

しく説明ができるように語彙の知識が必要だ。その語彙を知っていなければ、辞書を引いた

り、例文を読みながら適切な語彙を選んだりすることが必要になる。辞書の使い方に関して

CEFR には 4.4.4.3 仲介と方略に「修正 辞書や同義語辞典を参照すること(吉島・大橋

2008:92)」、及び 4.5.2.2 受容に「特に書き言葉のテクストの場合、次のような参照資料など

の補助物の正しい利用によって、理解が容易になる:辞書、シソーラス、電子辞書、など

(吉島・大橋 2008:97)」とだけ記述されている。もちろん使用の辞書にぴったり合う例文

がない場合もあるし、特にオランダ語の場合、例文付きの蘭和辞典はないため、媒介語を介

さざるを得ないので、正確さが低くなる。さらに、媒介語の辞書を引くと、空似言葉 (false

friends) の危険もあり得る。

3.2 知っている語彙で工夫する

CEFR には産出的言語活動の方略(4.4.1.3)には「簡単な言葉を使って、大体同じことに

なるように言い直したり、過度に一般化してみたり、言い換えてみたり、言いたいことの部

分を取り出して説明したり、L1(第一言語)の表現を「外国語化する」ことを試みたりする

のである(補償)。(吉島・大橋 2008:67)」と記述されている。学習者は知っている語彙を

使って言い換えたりするが、母語の直訳の影響で間違って使う場合もある。

つまり、既習の語彙を意識せずに新たな場面で使い、直訳の問題が起きる。

表 7 語彙は既習だが、直訳のため使用場面に合わない例

たくさん遊具を見付けるんだ。L11 Ze vinden er heel wat speelgoed.

(they find/discover lots of

playthings)

→おもちゃが置いてあ

る。

「わがポテトのほうがおいしい」とよ

く聞こえる。L17

Men hoort vaak... (we often hear

that...) →...と言われている

... 家族にいて、一緒に楽しんでいま

す。G7

Être en famille (be in one’s

family) →家族で、~

母語に対していくつも日本語訳がある場合、適切な言葉を選ぶのが難しい。

表 8 漢語、副詞などが必要になってくる例

去年勝ったから

フェスチバルにかつ

このコンテストはかちにくい L18

Winnen (to win) →コンテストで優勝するか入賞す

ぜひ~と答えられる L17 Zeker en vast (surely) →ぜったい、必ず

4 指導法への提言

母語からの影響による間違いを改善するために、同じテーマ・語彙に関する受容活動と産出

活動を取り入れた二方向の指導が必要である。一例として、第一言語を日本語に翻訳させる

時は、同じテーマ・語彙に関する日本語のテキストを読ませるなどの活動が提案できる。他

の例としては、文型・語彙の選択に注意させながら、日本語母語話者の話を聞かせたり文章

を読ませたりする、または、同じテーマについて話す活動、書く活動をさせるなどが考えら

れる。つまり受容活動から産出活動へ、同じ語彙を(文法と共に)4 つの技能で集中的に学

習し、応用させることにより、その語彙使用の正確さが上がる。学習者が興味を持っている

分野のものが効果があるだろう。

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4.1 文法指導

直訳による文法の間違いの原因として考えられのは次の点である。

- 日本語の文の構造が第一言語と違っている

- 言いたいことに関して知っている文型が不十分

- 日本語の文型・表現を知っていても、その文型を基にして考えているわけではない。作

文に使うアイデアなどは母語で考えている

- 文型の通りではなく、頭の中に浮かんでいることを自分の思った通りに、自分の好きな

ように、オリジナリティを付け加えて伝えたい。

直訳の間違いについて考えさせるために、指導法として次のことが考えられる。

- テンス・アスペクトの練習として分析した作文のテーマのように学生新聞などのための

話、ストーリーを書かせる。頭の中の書きたいことを文型・表現に合わせる練習をさせる。

分析、指導法は語彙・文法に分けたが、語学能力は文型・表現・語彙選択・文法正確さの組

み合わせなので、レベルを高めるために学習者が書きたいことを適切な表現・語彙に合わせ

る活動が必要であろう。

- 文型反復練習を行う文法直訳法、オーディオリンガル・メソッドによる練習は文法構造

を理解させ、文型定着するのに意味があるが、その文型が正しく言えても、適切な時点、場

面で使えないと意味がない。そのため、場面別で練習させる。

- 指示詞・直示、テンス・アスペクト、省略などの文法間違いに注意させるために翻訳さ

せるのは B1 レベルでも意味がある。ただ、こういう項目に関しては文脈が大切なので、単

文より複文、パラグラフの翻訳の練習が適切である。上記にも述べたように学習者の興味範

囲、または翻訳の目的、社会へのリンクなどが必要である。例えば、学習者の好きな料理の

作り方、自国のニュース、スポーツ試合の記事など、学習者の興味からスタートすることが

大切だと思われる。

4.2 語彙指導

- 語彙を直訳するのではなく、場面ごとに適切な語彙が使えるようになることが必要であ

る。

- 文脈ごとに適切な語彙が自立して使用できるように辞書の引き方の指導も必要だ。例え

ば、辞書での説明を読みながら例文を作らせることなどである。ここでも、短文より前後関

係のあるコンテキストの中での応用練習が望ましい。(上記 3.1 に関して)

上記 3.2 に関しては次の活動が考えられる。

- 直訳に頼らないために語彙の定義を学習者に自分で書かせたり、定義に当てはまる語彙

を書かせたりする。

- また、類義語に関する、学習者の母語からスタートして、連語をリストアップする。動

詞の例:オランダ語ですべて nemen (take) になっても、日常生活に必要な「シャワーを浴び

る」、「写真を撮る」、「薬を飲む」、「電車に乗る」など使われる日本語の動詞は様々である。

- レベルを高めるのに必要になってくる漢語動詞、副詞、慣用句などの場合、母語でもだ

いたい同じ意味のものをマインドマップかリストアップさせて、コンテキストでの練習を行

う。

- 直訳を避けるために、副詞を適切な動詞とともに連語で覚えさせる。例えば「ほとんど」、

「約」、「およそ」、「だいたい」、「たいてい」、などは意味的に近く、翻訳も似ているので混

乱しやすい。量・頻度別に分け、文脈のある例文をたくさん出したり練習させたりすると効

果があるのではないかと思う。また、日本語(の発音で)似ている「是非」、「絶対」などは

一緒に使用する動詞と連語として覚えさせる。

- 直訳を避けるために第一言語の連語と日本語の連語の違いを理解させ、決まり文句で覚

えさせる。

- 特に漢語使用に関して、母語にはない漢字の重要さを考えさせる必要がある。例えば、

第一言語の food に関する語彙は分析した L17, L25, L27, G27, G28 などにほとんど「食べ物・

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ご飯」いわゆる和語になっていたが、漢語にすると「料理」以外に「食事・主食・和食」な

どもあるということに気づかせる。漢字・発音の知識があると語彙にバリエーションを付け

やすくなり、直訳ではなく、もっと自然な日本語の文になるであろう。

______________________________

注 1 表の読み方:一番左の欄は太字で学習者の間違いとレフェレンス番号(Gはグルノーブルの、

Lはルーヴァンの作文)、2 欄目は直訳(仏か蘭、括弧に英語)、3 欄目はコメント・→の後は訂

正の提言 2「語彙の使いこなし」という項目は 2008 版にはない 。

<参考文献>

石黒圭(2007)「よくわかる文章表現の技術Ⅴ文体編」, 第 3 講『翻訳的発想-翻訳調の文体

-』, 明治書院

成山重子(2009)「日本語の省略がわかる本」, 明治書院

野田尚史等(2002)「日本語学習者の文法習得」, 第 8 章『効果的な練習の方法』, 大修館書

吉島茂/大橋理枝(他)訳・編 (2008), 「外国語教育Ⅱ 外国語の学習、教授、評価のため

のヨーロッパ共通参照枞」, 朝日出版社

Nederlandse Taalunie 訳 (2008) 「Gemeenschappelijk Europees Referentiekader voor

Moderne Vreemde Talen: Leren, Onderwijzen, Beoordelen 」( オ ラ ン ダ 語 版 )http://taalunieversum.org/onderwijs/publicaties/gemeenschappelijk_europees_referentiekader/

gemeenschappelijk_europees_referentiekader.pdf

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三節 正書法の能力

CEFR B1 レベルの正書法に関する考察

―形式と語彙を中心に―

吉田 睦

1 CEFR B1 レベルで求められる正書法とは

1.1 CEFR における正書法

産出活動の一つである「書く」活動は、読解活動と合わせて、職業・教育の場面において

目標言語で情報を得て自己表現ができるようになるために不可欠な活動である。しかし、会

話やコミュニケーションを中心としたコミュニカティブなカリキュラムで学んできた学習者

にとっては、既存の知識を書記言語へ移行することは、容易でないことが予想される。特に、

中級レベルにあたる CEFR B1 レベルでは、口頭能力においてストラテジーや非言語表現を

交えて効果的な伝達ができるようになってゆく反面、書記言語で同内容を達成することはま

だ難しく、学習を進める上で書く活動が妨げになる者も見受けられる。

CEFR において、正書法は「正書法の能力」「読字能力」として紹介され、その指導に関し

「(話したり書いたりする)言葉の種類との関連における正書法や正音法の必要性や、テク

ストを話し言葉から書き言葉に変換したり、書き言葉から話し言葉へ変換する必要性」を考

慮するべきだと述べている(吉島・大橋訳, 2004:p.130)。

またレベル別の記述を見ると、B1 レベルの記述は「読者が理解できる、ある程度の長さ

の文章を書くことができる。綴りや句読点、レイアウトなどは、ほとんどの場合読者を混乱

させない程度に正確である。」と示されている(吉島・大橋訳, 2004:p.129)。A2 レベルでは

「日常的な話題に関する短文の書き写し」「音声を正確に文字にすることができる」など機

械的な産出について触れられているが、B レベルになると、自ら文章を作り上げる能動的な

産出が求められている。さらに B1 と B2 レベルの違いに関しては、B1 レベルで、綴りや句

読点、レイアウトなどが「読者を混乱させない程度に」正確であることを求めているのに対

し、B2 では、標準的な書き言葉の慣習に従いながら、かなり正確な正書法の使用が求めら

れている。

前述の「指導の必要性」と合わせて全体を見ると、CEFR B1 レベルの書き言葉に関しては、

話し言葉で出来ていたコミュニケーションをいかに適切に書き言葉へ変換できるかという点

にターゲットがあるように考えられる。話し言葉では、抑揚やジェスチャー、強調表現など

を使って聞き手と双方向にコミュニケーションを補足していた学習者が、書き言葉ではどの

様な表現を通して工夫することができるのか、この過程において正書法が大切になってくる

のではないだろうか。

1.2 日本語の正書法と B1 レベルの学習者

正書法は、CEFR の中で「文字テクストの受容および創造の際に必要であり、文字テクス

トを構成する記号に関する知識と、それを使う技能である」と示されている(吉島・大橋訳,

2004:p.129)。

日本語における正書法の議論のなかでは、語彙を正しく表記できるかという点に焦点が当

てられることが多い。世界の言語に使用されている文字を大別すると、表音文字と表語文字

に分けられ、アルファベットやひらがな・カタカナは表音文字にあたり、視覚的に語彙を認

知しやすいと考えられる。一方で、漢字などの表語文字は、文字が意味と直接結びついてお

り、意味や概念が分からないと発音に結びつかないことがある。こうした文字と音の対応の

規則性の程度は、「正書法深度(小森, 2006)」と呼ばれ、浅い正書法としてイタリア語や日

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本語の仮名、深い正書法として中国語や日本語の漢字があげられる。一つの語の中にひらが

な・カタカナ・漢字が混在する日本語は、正書法深度の浅い仮名と正書法深度の深い漢字の

両方を読む過程で、一般に複合的かつ並列的な処理が必要であると考えられる。特に、母語

が比較的浅い正書法であるヨーロッパ言語学習者には、既知語彙や伝達内容を日本語で文字

化するだけでも、大きな負担があるといえる。

更に、塚田(2007)は、日本語の書き言葉における「創発つづり(invented spelling)」を

提示し、「まだ知らない語のつづりを、書き手がもっているつづりの体系や知識に基づいて

つづろうと試みた結果」と述べている。特に、音節文字である日本語においては、拗音、長

音などの特殊音について、創発つづりの傾向が見られるという(例:ドッチボール→ドーチ

ボール、バーベキュー→バーベきゅ)。母文化に関する語彙を外来語で示すことが多い B1 レ

ベルの学習者も、文字習得に関して似た過程を踏んでいると考えることができる。

2 CEFR 記述による正書法の項目

次に、CEFR がいう正書法が日本語の中で、具体的に何を指しているのかを検討する。

CEFR 内には、正書法・正音法両項目において、アルファベット表記において使えることが

望ましいとされる記述が9点示されている。

正書法の能力に関しては、1)各文字の大文字・小文字の活字体および筆記体、2)略語形

を含めた正しい単語の綴り方、3)句読点とその慣習上の使い方、4)印字上の慣習とさまざ

まなフォントの種類、5)よく使われる語標記号(例えば@、&、$など)、が指摘されてお

り、正音法の能力として、6)綴りの習慣に関する知識、7)辞書をひく力とその中で使われ

ている発音の表記に関する慣習の知識、8)文の区切りやイントネーションを表すために使

われる書記法、特に句読点の使い方に関する知識、9)文脈から曖昧な部分(例えば、同音

異義語、統語的な曖昧さなど)を判別する力、が挙げられている。しかしながら、これらは

日本語の表記体系を前提としておらず、日本語に対応した分析観点を設けることが重要であ

る。

日本語の書き言葉に関する記述は、網羅的ではないが、国語教育・日本語教育の各資料中

にいくつかの項目として取り上げられている。以下に、参考文献で取り上げられていた正書

法の事項を示す(稲垣, 1986、石黒・筒井, 2009、門脇・西馬, 1999、倉沢・森久, 1993、野

田・森口, 2003)。

・ひらがな・カタカナ・漢字の適切な使用

・外来語の適切な表記、その他正確な語彙表記

・句読点を打つ位置や頻度

・縦書・横書、段落分け、マスの使い方

・…、重ね文字(々、ヶ)、英数字、!/?/「」等の記号

・ひらがなカタカナ文字の混合、文書全体の漢字使用バランス、書き言葉としての語彙

選択

・擬音語・擬態語

3 対象資料

本考察で対象としたデータは、ルーヴァン大学・グルノーブル大学で収集した「大学新聞

用の記事」(ルーヴァン 27 例、グルノーブル 30 例)、「置手紙」(ルーヴァン 27 例、グルノ

ーブル 30 例)の二種類の書き言葉資料のうち、B1 レベルと判断した資料である。「大学新

聞用の記事」では、原稿用紙一枚程の分量のなかで、トピックとなるキーワードを適切に取

り上げ、正確に伝えることが求められる。一マスずつ文字を埋めていくため、一枚(または

一行)の文字数に制限があり、カタカナ語、アルファベット、語彙の強調表現等の表記には

工夫が必要となる。「置手紙」は、短い文章のなかに、挨拶、置手紙をした状況、お土産の

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内容、自分の名前という情報を盛り込むということから、レイアウトの工夫が必要である。

用紙は、罫縦書き・横書きの両方に使用でき、宛先や自分の氏名の順序、挨拶表現と本文の

位置など、一枚の紙をどの様に使うかという工夫が必要となる。

口頭コミュニケーションが重視されている CEFR のレベル判定のなかで、書き言葉につい

ての記述は尐ない。特にヨーロッパ言語と大きく異なる日本語表記の特徴については、学習

者の具体的な資料に立ち返り、詳細に検討してく必要がある。考察では B1 レベルの学習者

が、日本語の文字・記述のルールをどのように理解しているか、具体的な例とともに見てゆ

く。

4 結果と考察

「大学新聞用の記事」は、原稿用紙を使った文章作成であり、用紙の使い方に関する特徴

が多く見られた。また文化紹介という目的に際し、母文化に関する使用している語彙の使用

が増え、語彙表記の誤りが目立った。また B1 レベルで目標とされる「ある程度の長さの文

章を書く」という点に関しては、段落分けなどを通して構成を工夫しているものが多かった。

一方、「置手紙」は、罫線のないメモ用紙を使用したことで B1、B2 の記述に出てくる

「レイアウト」について観察することができた。伝言という目的に合わせ、宛先や日付の記

入など、各自の工夫が見られた。以下に 4.1 形式、4.2 語彙に分けて、特徴的に観察された観

点を示す。

4.1 形式

4.1.1 用紙

原稿用紙を使って長い文章を書く場合、縦書・横書、段落、マスの使い方、英数字等に関

して、原稿用紙の一般的な描き方の規則が適用される。ヨーロッパ言語学習者にとって、原

稿用紙は身近ではなく、題名・段落の空白マスを設定していない(G7,14,16 等)、名前を用

紙の上部に書いてしまう(G1,2)、などが見られた。他にも、誤りではないが用紙を横書き

に使用する(L2,4,5,6 等)、1マスに複数の文字を書く(例:「た-く-さん」を 3 マスに書く

(L4)、Vol-au-vent を 3 マスに下から上に向かって書く(L27))、また欧米書式の影響か、段

落始めに 1 マスではなく複数マスを落としてしまうもの観察された(G3)。原稿用紙におけ

る正書法は細かな知識が求められるが、用紙を使うことで文字と文字を繋げずにはっきりと

分けて書くことができ、音の捉え方や語彙の正確さを理解しながら、日本語の文字構成を再

度意識づけられるのではないだろうか。

また置手紙の場合は、原稿用紙のようにマスを意識する必要がなく、また縦書・横書を問

わず、各自のレイアウトで表現されていた。置手紙は、B1 レベルが経験するシチュエーシ

ョンとして、比較的可能性が高いと考えられ、学習した文型を活用して工夫を凝らすことが

できる。無地のメモ用紙は個性や母文化を反映する場合があるが、短い文章であるからこそ、

情報の配置によって伝わりやすさが変わってくることを意識できるとよいと考える。

4.1.2 記号

日本語表記における記号は、特に原稿用紙の場合に規則的なものとなる。G1 では、6 行

目・9 行目に「」が見られるが、横書きの影響か左右が逆になっている(他に G2,3,24)。ま

た( )と文字を同じマスに記入したり(G1)、句読点の位置がマス内の右下に見られる

(G1,2)など、原稿用紙の記入方法に関する点が指摘できる。他にも句点が欠如している

(L12)、行の頭に来ている(G16,27)、句点がピリオド(.)になっている(L14)、などが見

られた。

記号に関して、特に縦書きの場合に、「」や句読点の位置、…などの使用法に迷うことが

多い。学習者が目にする日本語のテキストも横書きである場合が多く、手紙を書く、詩や俳

句を書く、すでに原稿用紙に書かれたものを読む等の活動を通して、縦書きのシステムに触

れる機会が設けられるとよいと思う。

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4.1.3 書き言葉の適切性

口頭では B1 レベルの日本語能力であると判定された学習者も、書き言葉において、しば

しば印象が低くなる場合がある。その理由の一つに、語彙や文型は正しく使用できていても、

書き言葉としての適切性が十分でないことがあると考えられる。新聞記事の中には、「~な

らないし。(L2)」と文が途中で終わっていたり、「っと答えると思います。(G3)」「~いま

すか。~ですよ。(G3)」など口頭表現に近い表現が見てとれた。また置手紙においては、メ

ッセージの冒頭で「おはようございます(こんにちは)先生」と話し言葉が反映していたり

(G16, 23, 28)、「!」の使用(G22, G29, G30)などが見られた。これらについては、正書法

と合わせて、社会言語学的な考察が必要であり、社会言語学的な適切さについて述べたベル

マンスの報告も参照されたい。

B1 レベルにおいて大きな議論となるのは、話し言葉でうまくコミュニケーションが取れ

ていた学習者に、書き言葉でも同様のレベルが求められるかという点である。耳を通して習

得するタイプの場合、目を通して学ぶ者よりも、書き言葉に誤用が見られる場合がある。ま

たインターネットで日本のサイトを閲覧する、日本人の手書きの文章を見る機会があるなど、

それぞれの学習環境からも大きな影響を受けると思われる。教師としては、板書や配布物な

ど、学習者のインプットに関わる文書を見直し、色々な機会を通して意識を促すことができ

れば効果的である。

4.2 語彙

4.2.1 カタカナ語

「新聞記事」資料では、自分の文化や意見を述べるという内容から、外来語が多く使用さ

れ、前述した塚田(2007) が示す特殊音節文字(長音・促音・拗音・拗長音)の困難さが

多く見られた。例えば、L19,G7 のロマ(=ローマ)や G1 のマルジ・グラ(=マルディ

(ー)・グラ)など、日本語のカタカナ表記とは異なる箇所が見られている。他にも、L7 の

ポテート(=ポテト)、L18 のフェスチバル(=フェスティバル)など、既知語彙の産出の誤

りも見られ、口頭では伝達可能であるが、カタカナとして正確に文字にすることが難しい例

が観察された。これらカタカナ語に関しては、同じく正書法について考察した永田の報告に

も詳述されている。

4.2.2 口頭コミュニケーションで得た音声知識の表記

資料では、口頭コミュニケーションにおいて頻出する語彙に関して、表記の誤用が観察さ

れる例が見られた。口頭では無理なく産出可能な語彙であっても、書き言葉への移行の段階

で、類似音との混同や長・促音の追加や不足が見られている。以下は「大学新聞用の記事」

の資料から得られた例である。

G1 最初的に(=最終的に)

G2 もえてる(=燃えている)

L9 ぜっひ(=ぜひ)

L12 またく(=まったく)、しっている(=している)

L13 ずーと(=ずっと)

L24 一っつ(=一つ)

L17 じがいも(=じゃがいも)

わがの(=我々の、自分の国の)

L19 切て(=切って)

口頭で使用頻度が高い語彙であっても、誤って定着していたり、小森(2006)のいう正書

法深度の程度により、書き言葉で小さい音のミスや言い間違えが起こりやすいと思われる。

通常の一斉授業のなかでは、学習者一人一人の細かな音を判断することが難しく、書き言葉

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のインプットが尐ない環境では、学習者自身も誤用に気づく機会が尐ないと考えられる。し

かしこれらが文章の中でキーワードや強調として使われる場合、わかりにくさやミスコミュ

ニケーションの原因になることが予想される。B1 レベルでは、まだ完璧な正書法を求めら

れてはいないが、一つ一つの誤りを訂正する過程を踏むことで、語彙力・語彙の精度が向上

していくのではないだろうか。

4.2.3 ひらがな・漢字の誤用

B1 レベル学習者にとって、既知語彙の全てを漢字で表記するのは難しい。しかし、関系

(=関係)、有明(=有名)など、類似音や既習の漢字を組み合わせて表記に挑戦している箇

所が見られた。また既に習得済みのひらがなに関しても、「う」と「ら」など形が似ている

ものや、「ま」と「も」など音が近いものに関して、表記違いが観察された。以下の資料は、

「大学新聞用の記事」から見られた例である。

ひらがなの音

L5 ちんせい(=賛成)

L6 知うれて(=知られて)

G3 でま(=でも)

同じ音の漢字

L2 関系(=関係)

L7 有明(=有名)

類似意味、形が似ている漢字

L10 六月後(=六ヶ月後)

L15 然もない(=何もない)

L16 末家(=実家)

込んでいない(=混んでいない)

L17 借から(=昔から)

L19 太(=犬)

L22 界世中(=世界中)

L23 国様(=王様)

漢字仮名交じり文の場合、分かち書きをすべて覚えるのは難しく、上記の例のように尐し

ずつ推測しながら書けるようになるのが望ましいと感じる。塚田(2007)が、「創発つづり

(invented spelling)」を示したように、自ら語彙と向き合い、文字規則を推測し、実践して

みることで、語彙の知識や産出能力を大きく広げてゆけるのではないだろうか。

5 結論にかえて

本考察では、ルーヴァン大学、グルノーブル大学の両大学の学習者の資料を対象に、

CEFR B1 レベルの学習者の正書法について考察した。欧州の複言語主義の言語環境で「口頭

能力」や「達成可能な行為」を中心としたレベル判定が提示されている中、「書く」活動に

焦点を当てることで、口頭コミュニケーションとは異なる角度から B1 レベルに向き合うこ

とができた。特に、日本語による直筆テキストを日頃目にすることのない学習者にとっては、

置手紙一枚であっても、どの様に書けば正確に伝達することができるのか、工夫を重ねる必

要がある。この様な具体的な書き言葉の資料を観察することを通して、日本語の理解や使用

について改めて議論することが大切であると認識した。

またレベル判定について、口頭能力では B1 と判断された学生も、書き言葉資料において

レベル判定が落ちてしまう例が見られ、書き言葉への移行や適切な語彙使用の難しさが明ら

かになった。また書き言葉の産出では、ジェスチャーや話し方など他のコミュニケーショ

ン・ストラテジーによる日本語能力の補填ができず、文と文の繋がりやカタカナ語の多用な

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どによって、読み手に分かりにくい印象を与えてしまったと考えられる。

B1 レベルの学習者は、既存の日本語知識を使用して、新しい日本語のテキストを読んだ

り、日本人と交流したりと、日本語使用の機会が広がっていく段階にある。そのため口頭能

力だけではなく、書き言葉を見て理解・伝達できるようになると、自分の日本語能力を積極

的に広げられるのではないだろうか。正しく書くということを過度に求める必要はないが、

語彙の選択や書き方によって意味や印象が変化したり、適切な情報伝達を行うことができる

という点に気づくことができれば、今後の日本語学習に大きく役立つのではないかと感じる。

今回の貴重な資料をもとに、今後も B1 レベル学習者の日本語能力について、更なる分析を

進めていきたいと思う。

<参考文献>

石黒圭・筒井千絵(2009)「留学生のためのここが大切文章表現のルール」スリーエーネッ

トワー

稲垣滋子(1986)「日本語の書き方ハンドブック」くろしお出版

門脇薫・西馬薫(1999)「みんなの日本語初級やさしい作文」スリーエーネットワーク

倉澤栄吉・森久保安美(1993)「作文教育の実践指導 第 1 巻作文指導の原理と方法」学習研

究社

倉澤栄吉・森久保安美(1993)「作文教育の実践指導 別巻作文の練習学習」学習研究社

小森和子(2006)「第一言語と第二言語における正書法深度の相違が第二言語としての日本

語の単語認知と文章理解に及ぼす影響」ICU 日本語教育研究 3, pp.33-47, 国際基督教大学

塚田泰彦(2007)「国語科入門期における創発つづりの教育的意義」全国大学国語教育学会

発表要旨集 113, pp.209-212, 全国大学国語教育学会

野田尚史・森口稔(2003)「日本語を書くトレーニング」ひつじ書房

藤原宏・長谷川孝士・八田洋彌(1982)「小学校作文指導実践事典」教育出版

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CEFR B1 レベル 正書法の把握に関する考察

―カタカナ語に注目して―

永田道子

1. グリッドの解釈と考察のポイント

1.1 正書法の把握 - CEFR のグリッドから -

CEFR は正書法の把握の B1 レベルを「読者が理解できる、ある程度の長さの文章を書く

ことができる。綴りや句読点、レイアウトなどは、ほとんどの場合読者を混乱させない程度

に正確である(吉島・大島 2008:129)としている、また使用語彙の領域に関しては「家族、

趣味や感心、仕事、旅行、時事問題など、本人の日常生活にかかわる大部分の話題について、

多尐間接的な表現を使ってでも自分の述べたい事を述べられるだけの語彙を持っている」

(前掲 p121)としている。つまり、B1 レベルの学習者は自身に身近なテーマであれば、読者

が理解できる文章が書け、語彙の綴りも大抵の場合は混乱を招かぬほど正確に書けることが

求められると言える。

1.2 考察のポイント

分析にあたって正書法のグリッドから、理解を妨げる要素、混乱を招く要素は何かと考え

た時に一番に思いついたのは、正書法を一緒に担当する吉田、また筆者自身勘違いをした大

学新聞の記事に登場する「フリーツ」という単語である。両者ともに「フルーツ」の事だと

解釈していたが、他の学生の作文を読んで「フリーツ」が「フリッツ」、日本でいう「フラ

イドポテト」の事だという事にようやく気が付ついた。つまり綴りのミスが誤解を招いた例

である。

また、CEFR では複言語主義を理念として言語使用者の能力を「言語別にバラバラに分か

れているのではなく、使用する言語全てを包含する複言語と複文化の能力だ」(前掲 p182)

と定義している。さらに複言語主義を具体的に、「(外国語を学ぶ際に構築する)新しいコミ

ュニケーション能力の成立には全ての言語知識と経験が寄与するし、そこでは言語同士が相

互の関係を築き、また相互に作用し合っているのである。」(前掲 p4)と説明している。英

語の基本語彙を習得している学習者にとって、その知識を日本語の外来語の大半を占める英

語起源の語彙習得に活かすにはどうしたらいいのだろうか。どういった問題があるのかを調

査し、指導法の手がかりをみつけるために B1 学習者のカタカナ語に注目することにした。

1.3 カタカナ語の分析方法

B1 レベルの学生のカタカナ語における正書法の問題点はなにかを探るために、学習者の

誤用を分析する。分析対象は自文化を紹介するというタスクの性質上、カタカナ語の使用が

求められると推測される大学新聞の記事とし、合同会議において B1 と評定されたグルノー

ブル 14 本、ルーヴァン 18 本、計 32 本とした。

2. 事例分析

2.1 特殊音節に関する誤用

カタカナ語の誤用を見ていると、原語を日本語の音韻体系に従って表記する事の難しさが

観察された。特に特殊音節である長音と促音、拗音の表記の誤用が多く見られたことから、

その特徴を各特殊音節ごとに考察する。

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1) 長音にみられる誤用

カタカナ語表記で一番多かった誤用は、長音の表記である。B1 の学習者においても、長

音を含むカタカナ語を正しく綴るのは困難であることが分かる。誤用をみてみると例 3 のチ

ーズフォンデュのように、自国の郷土料理に関する語彙、例 7 のスマーティーズという商品

名など特殊性が高く、教科書では取り扱われていない未習の語彙に起こると考えられるので

はないか。日本語化されたカタカナ語彙に触れたことがない場合、長音の過剰や不足などに

みられる問題は、学習者が何かしらを基に日本語化しようとした結果であると言えるが、長

音があるのかないのか、どこにあるのかが不確かである事が観察される。

I. 長音の過剰

1. ポテート (L7) ← ポテト

2. ポテトー (L24) ← ポテト

3. チーズフォンデュー (G14) ← チーズフォンデュ

II. 長音の不足

4. ロマ (L19, G7) ← ローマ

5. チョコレト (L24) ← チョコレート

6. フランダス人 ( L24) ← フランダース人

7. スマーティズ (L22) ← スマーティーズ

8. クリムチーズ (G29) ←クリームチーズ

III. 長音と促音の入れ代わり

9. チョコレット (L24) ← チョコレート

VI. 長音の位置のずれ

10. ボージョレ (G3) ← ボジョーレ

11. カローリ (G28) ← カロリー

2) 促音にみられる誤用

次に、長音の問題と同じく、原語を日本語化の表記のルールに従って綴る事の困難さに関

係があると考えられる、促音の誤用についてみてみることにする。促音の誤用にも、例 15

のように長音との入れ代わりがみられ、一拍があることは認識しているものの、それが長音

なのか促音なのかを正しく綴る事の困難さが観察される。

I. 促音の過剰

12. フレンッチ・フライズ (L24) ← フレンチフライ

II. 促音の不足

13. リラクス (L5) ← リラックス

14. フリツ (L7, L27) ← フリッツ

III. 促音と長音の入れ代わり

15. フリーツ (L6) ← フリッツ

3) 拗音にみられる誤用

I. 子音の変化

16. フェスチバル (L18) ← フェスティバル

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17. マルジ (G1) ← マルディー

分析の結果から、特殊音節のカタカナ表記に誤用が多くみられたが、問題の改善のために

どのような指導法が考えられるだろうか。

坪根らは外来語表記のルールを教える事に対して、学習者から「ルールを知りたい」また

教師から「規則について教えるのが効果的」であるという意見が多かったという調査結果を

まとめている。(坪根ほか 2001)CEFR がいう、母語や既習の外国語が相互に作用して新し

いコミュニケーション能力を構築していくという複言語主義の立場にたつと、カタカナ語の

大部分を占める英語の語彙の知識を日本語の語彙習得に活かすために、英語の発音を日本語

化するルール 1 を覚えるというのも一つの手段といえるだろう。しかし、坪根らが指摘して

いるように英語の発音を日本語化させる規則はかなり広範囲に渡り、種類が多いため、学習

するには容易ではないと考えられる。また英語が母語でない学習者にとっては、外国語であ

る英語の語彙を日本語化するルールを記憶するというのは難しいかもしれない。

また坪根らは続けて規則比較的新しく入ってきた語や日本語にない音を含むカタカナ語

(ウェハース、クェスチョン、イヤホーンなど)の表記のゆれについても言及している。そ

れらの事をふまえて「ある程度の語彙が入った時点で基本的なルールを示し、その上で原語

の発音とは異なる場合もあることを指摘し、日本語の語彙として定着させることを考えるべ

きではないだろうか」としている。(坪根ほか 2001)

B1 の正書法のグリッドに、ほとんどの場合は読者を混乱させない程度正確とあるが、著

者が「フリーツ」を「フルーツ」の事だと取り違えた、促音と長音の入れ代わりの例のよう

に、どういったカタカナ表記の誤用が誤解を招きやすいかを調査し、まずはそれを避けられ

るだけのルールを明示的に指導するといった方法が考えられるが、さらなる研究が求められ

る。

2.2 不注意に起因すると考えられる誤用

1) 濁点、半濁点のミス

濁音、半濁音の誤用は、音韻に関する誤用とは違った現象が観察できるかもしれない。例

18・19 は作文の中で複数回、カマルグ、チーズと正しく綴っているが、そのうち一か所のみ

濁点がないという誤用が見られた。これは、ケアレスミスである可能性が高いのではないだ

ろうか。例 20 にも濁点の不足、また 21 のように半濁点を濁点と記した誤用が見られるが、

例 18・19 に観察されるように、音韻体系の複雑さに起因する誤用というより、ケアレスミ

スである可能性が考えられるのではないだろうか。

I. 濁点の不足

18. カマルク (G23) ← カマルグ

19. チース (G28) ← チーズ

20. ファンタシー (L13) ← ファンタジー

II. 半濁点と濁点の入れ代わり

21. ヨーロッバ (L13) ← ヨーロッパ

2) 「ソ」と「ン」、「ツ」と「ソ」の書き分けに関する誤用

I. 「ソ」と「ン」

22. コソテスト (L18) ← コンテスト

23. オラソダ語 (L26) ← オランダ語

II. 「ツ」と「ソ」

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24. ユーロビヅョン (L18) ← ユーロビジョン

3) ひらがなとの混同

I. 「ゃ」と「ャ」の表記ミス

25. シゃピュイ (G2) ← シャピュイ

4) 他の仮名との取り違えの可能性が考えられる例

I. 他の仮名と混同した表記ミス

26. ポテトピュール (L17) ← ピューレ

27. フライドテ゜テト (L27) ← フライドポテト

5) 原語をローマ字表記に基づいてカタカナ表記した例

I. Annecyという原語のローマ字「ne」の部分を「ネ」と表記したミス

28. アネシー (G20) ← アヌシー

A1 の正書法のグリッドに「当人の住所、国籍やその他の個人的な情報を正確に書くこと

ができる」(前掲 p129)とあるが、例 21 ヨーロッパ、例 23 オランダ語、例 25 シャピュイ

(本人の姓)にみられるように、学習者にとって身近であるはずの語彙に表記のミスがみら

れる。B1 レベルに達していると考えられる学生であっても、既習語彙をミスのないよう注

意を払って正確に表記するというのは困難であるようだ。既習語彙の表記ミスを防ぐにはど

のような指導法が考えられるだろうか。

CEFR では産出的言語活動の方略の項目で、モニタリングと修正をレベル別に提示してい

る。B1 のグリッドには「自分が使った言語形式が正しいかどうか確認することができる」

(前掲 p69)とある。B1 レベルとは、ここに見られたような不注意によるミスがないか注意

を払い始める時期なのかもしれない。B1+のグリッドには、「指摘があれば誤解を招くような

表現や自制などの混乱を修正できる」(前掲 p69)とあり、モニタリングを働かせてケアレス

ミスに気が付くよう指導し、自己修正ができるよう導くことが大切ではないだろうか。

2.3 ルールの過剰般化が考えられる誤用

1) 語原が英語のカタカナ語のルールで表記したことによる誤用

29. クリスト教 (L2, G2) ← キリスト教

30. マッセル (L27) ← ムール貝

31. ビールガーデン (L20) ← ビア(ヤ)ガーデン

2) L1 もしくは L2 の影響が考えられる誤用

32. ルーバンス (L19) ← ルーベンス

33. パスクア (G7) ← イースター

例 29 はクリスマスやクリスという英語の固有名詞の表記をキリスト教にも適用した可能

性が考えられる。例 30 はマッセルという英語名を使っているが、日本での通称であるムー

ル貝はフランス語+日本語という由来と構造が複雑であり、中々推測が難しい単語かもしれ

ない。また例 32 は画家のルーベンスの事をフランス語の発音でルーバンスと表記している。

それから例 33 はフランス語 pâques をラテン語 pascha か何か他の既習の外国語風に書こうと

した様子がうかがえる。学習者は、既習言語である英語や、L1 また L2、L3 の語彙を使って

表現しようとしているが、外来語の由来は複雑で知識として習得する以外推測が難しい例が

ある。既知語彙の知識を日本語でのコミュニケーション能力の習得に活かそうとしている学

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習者の試みが観察されるが、これこそ CEFR の掲げる複言語主義の概念ではないだろうか。

では、既習言語の知識をカタカナ語の習得に活かすにはどうしたらよいだろうか。中山らは

カタカナ語の語彙教育について、物理的制約の多い中で必要度の高いものを取り上げるため

には、基本語彙の選定が必須であると述べている(中山ほか 2008)B1 の使用語彙の領域に

ある「家族、趣味や感心、仕事、旅行、時事問題など、本人の日常生活にかかわる大部分の

話題」(前掲 p121)のために、また分析対象である大学新聞のように自文化を紹介するタスク

のために必要な基礎語彙の選定、そしてその基礎語彙が定着するための指導法を考えていか

なければならないのではないか。

例 17 のマルジグラや多くのフリツの例にもあるように母語の発音をカタカナ表記する際

にエラーが生じる場合が多い。CEFR が挙げている産出的言語活動の方略の補償の B1 のグ

リッドには「母語を学習対象言語の形に変えてみて使ってみて、相手に確認を求めることが

できる」(前掲 p69)とあり、母語を日本語化(カタカナ表記)しようとしている学習者の様

子と重なる。教師として、学習者の達成方略による試みに十分にフィードバックを与えてき

たかということを考えなければないのではないだろうか。

B1 の学習者の特徴として例 17「マルジ・グラというのはなんでしょうか」といいますと、

と新しい情報であることを提示し、説明を加えたり、例 14 のフリッツの場合はフライドポ

テトと言い換えたりといった読み手を配慮したストラテジーが挙げられる。学習者は、母語

の発音を基準にしたカタカナ表記が、読み手に伝わらない可能性があることを考え、読み手

に自分の言いたい事を伝えるために説明を加えたり、英語名も併記したりという配慮をスト

ラテジーとして使っている。前述した「フリーツ」はそれが何であるかを説明するという読

み手への配慮が欠けたために、誤解を招いた例であると言える。語彙を正しく綴る指導は当

然であるが、自文化紹介というタスクの性質上、読み手が理解できるように十分な説明をす

るという指導も、必要となる。また教師が学習者の文化を知らない読み手として、説明が不

十分な点などのフィードバックをする事も重要である。

3. まとめ ―指導項目への提言―

B1 の学習者のカタカナ語の綴りに発生する誤用を観察してきたが、学習者が身近なテー

マであれば、読者が理解できる文章が書け、語彙の綴りもほとんどの場合混乱を招かぬほど

正確に書けるようになるためには、どう指導したらよいのか、また複言語主義に基づいたカ

タカナ語の習得の可能性について事例分析をもとに考えてきた。

教師として振り返らなければならない事は、まず日本の文化を受容するだけでなく、学習

者が大学新聞の記事でとりあげていた観光地や郷土料理、もしくは歴史について日本語を使

って発信するというタスクを十分にやってきたかという事ではないだろうか。その視点に立

って、B1 レベルとして、自文化を語るための必要度の高い基礎語彙を選出し、定着を目指

すタスク作成が求められるだろう。

それから、既習の語彙においても誤用や不注意によるミスが見られたが、作文を書き終え

た後に、ミスがないか必ず確認する習慣を教師が指導することが大切である。また文章を書

くときに既習の言語知識を生かして、読み手に伝わるように書くには、どうしたらいいのか、

常に学習者に考えさせる機会を持つことが大切であろう。モニタリングと修正のグリッドの

B1 と B2 の違いは、修正に指摘が必要か、もしくは学習者自身で意識的にモニタリングし、

自身で修正ができるかという事である。B1 の学習者が自立した言語使用者となるよう、ま

た複言語主義の概念を日本語でのコミュニケーションに活かせるよう、方略の面でも教師の

支援が大切なのではないだろうか。

1 坪根らは『日本語かな入門』の中の「外来語の表記のしかた」を引用して、外来語表記のル

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ールをまとめている。誤用が多くみられた長音と促音のルールについて挙げてみる。

長音のルールは以下の通りである 1)-ar,-er,-ir,-ur,-or,(例 :car)、 2)-ee-,-ea-,-al,-oa-,-ou-,-au-,-oo-

,( 例 :speed) 、 3)-all,-al,-ol,( 例 :call) 、 4)-w,-y, ( 例 :show) 、 5)-a-e,-o-e,-u-e,( 例 :case) 、 6)-ation,-

otion,(例:inflation)、7)-ire,-ture,(例 :hire),促音のルールは以下の通りである 1)-ck,(例:back)、2)-x,-

tch,-dge,(例:tax)、3)-ss,-pp,-tt,-ff,(例 :massage),4)-at,-ap,-et,-ep,-ip,-op,-og,-ic,-ot,etc.(例:mat), 5)母音が

重なるもの-oo-,-ea-,-ou,-ui-,(例:book)

<参考文献>

国際交流基金(1976)『日本語かな入門』凡人社

坪根由香里、鈴木理子、阪本史代、神谷道夫(2001)「学習者から見た効果的な語彙の指導

法・

学習法―アンケート結果よりー」、『小出記念日本語教育研究会論文集』第 9 号

中山恵利子、陣内正敬、桐生りか、三宅直子(2008)「日本語教育における「カタカナ教育」

の扱われ方」、日本語教育、138 号、pp.83-91

吉島茂・大橋理枝 他(訳) (2008) 外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枞、

朝日出版社

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三章 社会言語能力

社会言語的な適切さに関する考察

クララ・ベルマンス

1 CEFR の B1 の記述文

まず、CEFR の B1 の記述文から「B1 のレベルの学習者が何ができるか」「B1 のレベルと

して何が求められているか」という点を考察した。

CEFR には、一般的な、書かれた言葉でのやり取り B1 に「直接的に関連のある簡単な情

報を求めたり伝えたりする個人的な手紙、覚書を書くことができ、自分が重要だと思う点を

相手に理解させることができる。(吉島・大橋訳:2008、p87)」と記述されている。記録、

メッセージ、書式 B1 には「自分の日常生活の中で重要な役割を果たす友人たち、サービ

ス関係者、教師や他の人々に、直接伝える情報を簡単なメモに書き、重要と考える点を分か

るよう伝えることができる。(前掲 p88)」とある。これらの内容から、次のことがわかった。

1) B1 レベルの学習者が簡単なメモ、手紙を書くことができる。

2) 教師に簡単なメモを書くことができる。記述文には「敬語」という言葉はないが、

日本語で教師に何かを書く際には、敬語は欠かせないであろう。つまり、教師に簡

単なメモを書くと課題は、ヨーロッパの言語で行うより日本語での方が難しいと思

われる。

3) 読み手に自分が重要と考える点を理解させることができる。置手紙の場合は、誤解

を招かず、教師がそれを読んだら、学習者が何を伝えたかったかということが明確

であることが必要である。その上、置手紙に不必要な情報を書かないことは大切で

ある。

CEFR には、「社会言語能力は言語使用の社会次元に対処するために必要な知識と技能であ

る(前掲 p130)。」とあり、社会言語的な適切さ B1 に関しては、「中立的な、ごく一般的な

言葉遣いで、幅広い言語機能を遂行し、対応できる。明示的な礼儀習慣を認識しており、適

切に行動できる。標準言語の文化と当人自身の文化との間の、習慣、言葉遣い、態度、価値

観や信条について、最も重要な違いに対する認識があり、それを配慮することができる。

(前掲 p135)」と記述されている。これらの内容から次のように考えた。

1) 「中立的な、ごく一般的な言葉遣いで」と記述から、当初、敬語が含まれないでは

ないかと考えた。しかし、グリッドの中には「習慣。言葉遣い、態度(…)につい

て認識があり」と書かれている。日本語では目上の人に手紙などを書くときは、敬

語が欠かせないため、敬語は日本の習慣、言葉遣い、態度の一つの要素として解釈

している。

2) 日本文化の「明示的な礼儀習慣」には、待遇表現も含まれるだろう。そして「礼儀

習慣を認識する」というのは、B1 レベルの学習者は待遇表現を意識しなければなら

ないが、まだ使いこなすまでには至っていないと解釈している。

B1 の記述文からどのレベルまでの待遇表現が求められているか分からないため、B2 の記

述文も参照した。CEFR には社会言語的な適切さ B2 に関しては、「公式の言葉遣いでも、く

だけた言葉遣いでも、その場や会話の参加者に応じた適切な言葉遣いで、はっきりと理解で

きる。礼儀正しい言葉遣いで、自分自身の述べたいことを自信を持って言うことができる

(前傾 p135)」、「母語話者との対人関係を維持できるが、その際、当人の意図に反して母語

話者がおかしがったり、いらつくことはなく、また母語話者が当人と話す際、母語話者同士

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の場合と違った話し方をしなくてすむ。言語化する際に深刻な誤りを起こすことなく、いろ

いろな場面で自分自身の述べたいことを表現することができる。(前傾 p135)」と記述され

ている。これらの内容から次のように考えた。

1) 「その場や会話の参加者に応じた適切な言葉遣い」、「礼儀正しい言葉遣い」、「深刻

な誤りを起こすことなく」、「いろいろな場面で」と書いてあることから、B2 の学習

者がほとんどの場面で適切に待遇表現を使うことができると解釈している。つまり、

B1 の学習者のように敬語を意識して、使おうとしていることだけではなく、間違わ

ずに使うことができるということである。そこで、その下のレベルである B1 の学習

者には謙譲語と尊敬語の基本的な敬語使用が理解でき、使おうとすることが求めら

れていると考えた。

2) 「母語話者がおかしがったり、いらつくことはなく」というのも B1 レベルと違うと

ころである。B1 の学習者の待遇表現の使い方によって、母語話者が違和感を感じた

りすることもあるだろう。母語話者の違和感に関しては、同じく社会言語能力つい

て考察した Van Ourti の報告にて考察されている。

2 結果と考察

2.1 分析目的と対象

分析目的は B1 レベルの学習者が目上の人に対して違和感がある表現を使っているかどう

か、それからどんな表現を使っているか調べることである。そこで、分析対象は、プロジェ

クト・メンバーが B1 レベルとして判定した 30の置手紙である。

2.2 分析方法と考察結果

先述したとおり、B1 の学習者はお土産の習慣や置手紙に使われる表現、言葉を理解でき、

簡単な置手紙を書くことができる。そこで、置手紙の中から目上の人に対しての表現として

違和感があるものを取り出し、それを敬語とそれ以外の表現に分け、その原因を考察した。

さらに、敬語が使用されていないのにもかかわらず相手に好感を与えている事例を取り出し、

その原因を考察した。

2.2.1 敬語

まず、敬語使用で違和感がある置手紙の考察を行った。

【事例 1】おめしあがりください(L10)

【事例 2、3】おめしあがってください(L11、 L14)

その原因は過剰敬語だと思われる。文法的に間違いと言えるが、日本でレストランなどへ

行くと「お召し上がりください」という過剰敬語がよく使われている。B1 の学習者がそれ

を聞いたことがあって、置手紙に書いたと考えられる。

【事例 4、5】お買いしました(L5、 L6)

【事例 6】お置きします(L8)

【事例 7】お置きしました(L9)

この事例では学習者が敬語意識があるが、謙譲語を不適切に使っている。先生のために買

ったり、置いたりしたので、自分を低める謙譲語を使うのがよく分かる。しかし、「買う」

「置く」という動詞は一般的に謙譲語で使えないため、「買ってまいりました」、「お持ちし

ました」のような違う動詞に置き換えることを教える必要があるだろう。

【事例 8】これはおきなわからのおみやげでございます(L23)

「でございます」という表現は客に対して使われる表現である。したがって学生と先生の

場面には適切ではない。

2.2.2 それ以外の表現

まず挨拶表現としてどんな表現が使われたかを調べた。分析した 30 の置手紙の中で 23 の

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データが「先生/先生方」「先生/先生方へ」「(名前)先生」で始まる。それは先生への置手

紙には適切な始まりであろう。一方、6 のデータは「こんにちは」(G1、G、G11、G28)「お

早うございます」(G13、G22)で始まっている。多尐不自然だが、先生との距離を近くする

ために、わざと友人へ手紙やメールを書いているように使っている可能性もある。

最後の挨拶にいろんなバリエーションが見られる。

【事例 9、10、11】「どうぞよろしくお願いします」(L1、L5、L6)

【事例 12】「また授業でお願いします」(L8)

それは先生によく使われる表現であるが、置手紙には必要ではないと思う。むしろお土産に

関しての言葉、例えば「どうぞ召し上がってください」(L23)、「どうぞ食べてください」

(G2)、「どうぞお使いください」(L9)のような表現のほうが適切であろう。

【事例 13】「また今度先生」(L7)

【事例 14】「次の授業まで!」(L11)

【事例 15】「では、またあとで」(G11)

【事例 16】「またらいしゅう!」(G15)

【事例 17】「じゃあ、また来年!」(G22)

先生への置手紙を書いた経験がない学習者も多かったと思う。したがって、普段友人へ書い

ているメールのように挨拶表現を使って、または話し言葉と同じように書いているデータが

多かった。

【事例 18】「またあいましょう。さようなら」(G5)

【事例 19】「あえなくてざんねんですけど、またあいましょう。さようなら」(G7)

【事例 20】「左様なら!」(G13)

「さようなら」を書いている人は 3 人である。その表現はまた近いうちに会う人には使用し

ないという点を理解していないようである。また、普通ひらがなで書かれる表現であるのに

漢字で書いた事例 20 もあった。

【事例 21】「それでは、ごぶじで」(G1)

「御無事」というのは、相手が危険や災害に遭いそうなときに使われるので、またすぐ授業

で会う先生に対して不適切な表現である。

次にいくつか違和感がある表現の考察を行った。

【事例 22】田中先生はワインが大好きから私は先生に買ってさしあげました。(G4)

【事例 23】先生へ、先週、東京に旅行しましたよ。先生の一番好きな店にも行ったので、

先生におみやげを買ってきました。(G20)

【事例 24】後であげたいと思います。(G1)

【事例 25】このおみやげを上げたいんです。(G15)

いずれも A レベルで習う表現(好き、~たい形)だが、目上の人に対して使えないことを理

解していない。

自分の名前に「さん」を付けた事例もあった(L7、L8)。知識で分かっているはずだが、

丁寧に話そうとしたことから起きた不注意による間違いだと思われる。

【事例 26】このおはしは旅行から持ってきた先生方へのおみやげで、どうぞお使いくださ

い。写真もとってきたんですが、先生方のご都合がよろしい日付を教えていただけますか。

おしらせをお待ちしています。(L12)

この事例は、最初の文のみであれば、手紙としての機能を果たしていた事例である。しか

し、次に文を読むと学生が先生に無理に写真を見せたい気持ちが伝わり先生に失礼な言い方

になる。

【事例 27】先生おはようございます!

今いませんからちょっとメッセジを書きます。昨日、日本から帰りました。東京の留学は楽

しかったです!クリスマスの休みに、鳥取に行きました。「名探偵コナン」の町です。知っ

ていますか。だからちょっとおみやげをもってきます。このかがみはかわいいですね!

じゃあ、また来年!(G22)

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この事例には不必要な情報が多いと思う。事例 26 も 27 も置手紙の意図に合わないため、

受け取った人が尐し当惑してしまうかもしれない。

2.2.3 敬語は不使用で好感度が高いもの

敬語が使用されていないのに好感を与えている事例を考察した。

【事例 28、29、30】どうぞ食べてください(G2、 G29、 G30)

【事例 31】食べて見てください(G11)

目上の人への置手紙なので、尊敬語を使うべきであるが、「どうぞ」をつけたり、「-みて

ください」 という表現を使ったりするので、「食べてください」より丁寧な表現になって

いる。その上、意図的に敬語を使わないことによって、先生との距離を縮めて親密度の高い

置手紙を書きたかった学習者もいたと思う。また、ここではルーヴァン大学とグルノーブル

大学の学習者の違いが見られる。ルーヴァンの学習者のほうが敬語意識が強く、グルノーブ

ルの学習者はより友人に対しての置手紙のようにフレンドリーな感じが出ていることが多い。

このように敬語使用には各国の教育事情や習慣が影響を与えるのではないだろうか。

石黒(2004、p108)は「敬語は目的ではなく手段です。人間関係を円滑にする手段です。」、

「コミュニケーションにおいて重要なのは、相手を不愉快にさせないことです。」と述べて

いる。こう考えると、置手紙の読み手を不愉快にさせなければいいわけである。日本の社会

には敬語が欠かせないものであると言えるが、学習者が敬語を文法的に間違っても、敬語意

識があり、失礼にならない程度であれば、ほとんどの教師が不愉快な思いをしないと思う。

次の事例は敬語が使用されていなく成功した置手紙である。

【事例 32】 先生、これは日本で買ったおみやげですが。つまらないものですが、どうぞ。

(L18)

「どうぞ」で終わっているが、それだけでも丁寧な感じが出る。先生への気持ちが伝わって

失礼にならないので、B1 レベルの学習者には成功した置手紙になると思う。「つまらないも

のですが」という表現は L2 と L25 も使っている。尐し硬い表現になるが、日本文化の礼儀

習慣を意識して、そういう表現を理解していることが必要であると思う。

2.2.4 置手紙の成功した事例

置手紙の成功した事例を2つ比べる。

【事例 33】 先生へ

これはならの旅行のおみやげです。つまらないものですが、このおかし、どうぞめしあがっ

てください。(L25)

【事例 34】○○先生へ、

いつもお世話になっております。つくえにおいていましたふくろにはフランスから持って来

たおみやげです。お口ににあうかどうかわかりませんがどうぞ食べてください。(G2)

事例 33 には「つまらないものですが」という硬い表現と「どうぞめしあがってください」

という尊敬語を適切に使っている。教科書にありそうな例で、学生が先生との距離をとって

いる。それに対して、事例 34 には「お口ににあうかどうかわかりませんがどうぞ食べてく

ださい」という文があるから、先生との距離が事例 33 より近く感じる。事例 34 は最後に尊

敬語を使わないけれども、「いつもお世話になっております」と「お口にあうかどうかわか

りません」という日本文化でよく使われる表現を使っているから、CEFR の記述文の「言葉

遣い」を十分理解していることがわかる。

3 指導項目の提言

以上のことから、B1レベルの学習者には次のような指導項目を考えた。

1)敬語の使い方。謙譲語と尊敬語を使う場面を説明する。多様な場面でのロールプレイを

練習させる。それから、どんな動詞が謙譲語で使えるか教える。例えば、いろいろな動詞を

出して、学生にどんな動詞を謙譲語で使っていいかどうか考えさせる。

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2)「です」の謙譲語の形として「でございます」を教える際、どんな場面でだれに使える言

葉か教える必要がある。

3)相手を不愉快にさせないために、どんな内容のものなら書いてもいいか、どんな語彙・

表現を使ったらいいか指導する。日本文化の習慣、価値観、信条を説明する。本調査のデー

タから適切なものと不適切なものを紹介し、その理由を説明する。

4)待遇表現の使い方によって、相手との距離感が変わるということを理解させる。

5)置手紙の形の指導。手紙のように最後に日付を書く必要がない。モデルとなる置手紙を

読ませる。

6)書き言葉と話し言葉の違い、特に挨拶表現について説明する。そして、「さようなら」は

近いうちにまた会える人に使わないこと。

7)A レベルで習う~たい形は主語にしか使えない。目上の人に~たい表現を使いたいとき

に、どんな表現に置き換えられるか教える。

<参考文献>

石黒圭(2004)「よくわかる文章表現の技術 III -文法編-」、明治書店

小川誉子美、前田直子(2003)『日本語文法演習 敬語を中心とした対人関係の表現-待遇

表現-』スリーエーネットワーク

吉島茂/大橋理枝(他)訳編 (2008), 『外国語教育Ⅱ 外国語の学習、教授、評価のための

ヨーロッパ共通参照枞』朝日出版社

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B1 レベルの「社会言語的な適切さ」について

―文体・レジスター・丁寧さ―

竹内 泰子

1 記述の解釈と観察・考察のポイント

本稿では B1 レベルの書く産出活動の中での「社会言語的な適切さ( correction

sociolinguistique)」について考察する。まず、「社会言語的」とは何を指すのだろうか。共通

参照枞日本語版(吉島・大橋 2004:130)の「社会文化能力」の定義では「言語使用の社会的

次元」という表現が使われており、この概念と近いと考えられる。本稿では、言葉や表現が

目標言語(この場合日本語)の社会の中でどのように使用されているかに関する知識、また、

言語の使用がどのように対話者間の社会的関係を作り上げるかを理解し、適切に行動する能

力等を指すと捉え、考察を進める。

1.1 B1 レベルの特徴

参照枞(ibid.:135)によると、社会言語能力に関しては、A2 レベルでは「簡単な形で」情

報交換や情報請求、意見表明など「基本的な言語機能を実行」すること、また、「礼儀正し

い言葉遣いで、短い社交的な会話を行う」のに対し、B1 では、「中立的」・「一般的」な言葉

遣いで「幅広い言語機能を遂行」できるとされる。また、文化に関しては、A2 では「最も

簡単な、一般的な表現」、「日常的に使われる挨拶や呼びかけ」などを効果的に、しかしおそ

らく形式を模倣するようなやり方で使用できるレベルであるのに対し、B1 では「明示的な

礼儀慣習を認識」し、「目標言語の文化と当人自身の文化との間の、習慣、言葉遣い、態度、

価値観や信条について、最も重要な違いに対する認識があり、それを配慮する」とあり、目

標言語の文化をより深く理解し、異文化間の違いも意識して行動するとされる。しかし、B1

レベルでは、このような意識はあっても、実際にそれを言語使用の場面、特に表現の面で十

分に反映させることができるほどの能力には至らない。参照枞(ibid.:135)にもあるように、

「B2 より上のレベルになると、言語使用者は、その場の状況や、その場に加わっている人

に対して、社会言語的にふさわしい言葉で自分の言いたいことを適切に表現することができ

るようになり/・・・/言葉の使用域や慣用句についてもより自由が利くようになる」(強調は

筆者)1。B1 はそのような段階に至る前の、過渡期的段階と捉えることができる。

1.2 データの観察にあたって

学生の言語使用を観察するにあたり、上記の B1 のグリッドの中で、以下の点にまず注目

した。

- 与えられたタスクの「言語機能」をどのように遂行しているか。

- 具体的にどのような言語使用が B1 レベルに特徴的と思われるか。

また、グリッド中の記述について、以下の点を明らかにする目的で考察した。

- 「中立的な、ごく一般的な言葉遣い」とは何にあたるか。

- 「明示的な礼儀慣習」、日本語の文化と学習者の言語の文化の間の「最も重要な違い」に

対する認識がどのように表れているか。

2 考察

2.1. タスク 1《置手紙を書く》

このタスクでは、社会言語的観点からは、目上の相手に向けたメッセージを相手に失礼の

ないように書くことが要求される。その際に、日本語で礼儀正しい手紙を書くための「明示

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的な礼儀慣習」「習慣、言葉遣い」等に関する学習者の理解が観察できると考え、特に文

体・レジスター、敬語使用、およびポライトネス・ストラテジーに注目して観察した。その

際、参考として 4 人の日本語母語話者に同じタスクをしてもらった。

2.1.1. 「中立的な、ごく一般的な言葉遣い」

例 1 G11

東先生、こんにちは。^^

これは小さいおみやげです。ながのの名物です。私はこれを大好きです。

食べてみて下さい。

では、またあとで。

この例では、デス・マス体を使用し、特に敬語表現は使用されていない。しかし、置手紙

の機能は十分に果たしており、好感を与えることにも成功しているという点で、「タスクを

遂行」できていると言える。この例から、デス・マス体が「手紙」というジャンルのテクス

トにとって「中立的な言葉遣い」であると同時に、丁寧さという面でもひとまず適切なレジ

スターであることが分かる。B1 の最初の段階の表現レベルと考えられるのではないだろう

か。ただ、実際は、デス・マス体のみの使用で事足りるケースは限られている。デス・マス

体と敬語が適度に混ざっているほうがより「一般的」であり 2、B1 レベルとしてより幅広い

状況に対応できるだろう 3, 4。

2.1.2 敬語の使用

敬語の使用は多くの例に見られたが、間違いや、間違いではないが違和感のある例も多く

観察された。これは B1 レベルの特徴と言えるかもしれない。学習者は敬語、広くは待遇表

現一般という「言葉遣い」に関する知識があり、使おうという意識もあるが、実際それらを

十分使いこなすレベルには達していない。

例 2 L2

先生へ

先週、私は北海道へ行きました。

北海道はとてもきれいで、楽しかったです。

買い物に行った時、これをみつけたんです。つまらないものですが、先生がいただくとうれ

しいです。

いつもお世話になって、ありがとうございます。

まだ授業でお目にかかります。

例 3 L23

これはおきなわからのおみやげでごさいます。

どうぞめしあがって下さい。

例 2 では、学習者は自分の旅行の経験を語りつつ、先生におみやげを買ってきたことを感

謝の言葉と共に述べており、置手紙としての機能は十分遂行している。敬語(「お目にかか

ります」)も使用しており、まだ間違いはあるものの(「先生がいただく」)、日本語では相手

との人間関係や行為の授受を言語的にマークするという社会的な「言葉遣い」についての意

識が観察できる。

例 3 では、敬語として「ございます」(例中では「ごさいます」と表記)が使用されてい

る。若い学生が先生に対して使う表現としては、間違いではないがやや違和感がある。「ご

ざいます」は、商店やホテルなど、客と従業員との間の仕事上での会話、といった場合によ

く使われるレジスターであり、日常的な手紙文で、書いた人が学生であるという状況におい

ては、やや不適切と言えよう。

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2.1.3 ポライトネス・ストラテジー

相手に好感を与え人間関係をよりよくするためのストラテジーには大きく分けて二つある

と言われている。大まかに言えば、一つは、自分を低く表現し、距離をとることで相手を立

てる方法、もう一つは、相手への好意や相手と近づきたいという意志を積極的に表現する方

法である。

例 1(G11)では、お土産について「私はこれが大好きです」と自分の好みを積極的に表して

相手と近づくストラテジーをとっている 5。学生からのメッセージと考えれば、このような

素直さは相手に好感を与えるのではないだろうか。他には、「ならの有名なおかしです」

(L11)等、相手へのお土産の価値を強調して相手への好意を示すストラテジーも見られた。

それに対して、お土産を「つまらないもの」と表現してへりくだる例 2(L2)や「何か小さ

い物を持ってまいりました」(L22)等の表現は、前者のストラテジーにあたる。文化的知識

として「つまらないもの」のような表現が慣用的に使われることは知っておくべきである。

ただ、日本人の中でもこういった表現をやや偽善的と感じ、好感を持たない話者がいること

も知っておく必要があろう 6。

次は今回の考察でレベル判定の対象となった学生の例ではない 7 が、社会言語的な面で興

味深いので引用する。

例 4

こちらは私がフランスでお買いしたおみやげです。先生がたがいらっしゃいませんでしたの

で、こちらにおいておきました。どうぞえんりょしないで開いて下さい。

この例の「どうぞ遠慮しないで開いてください」という表現に違和感があるのは、先生と

学生との間で「遠慮しないで」と言える立場にいるのはどちらか、という点が社会的・文化

的に決まっているためである。言い換えれば、「遠慮しないで」という表現を適切に使える

ようになるために、既に社会・文化的な理解が必要なのである。

学習者は、どうして、どのようにこれらの表現が使われるのかについて考えることで「目

標言語の文化と当人自身の文化との間の、習慣、言葉遣い、態度、価値観や信条について、

最も重要な違いに対する認識」(吉島・大橋 2004:135)を深めることができよう。

2.1.4 日本語母語話者の例

以上の点をもう尐し深く考察するために、学習者の日本語使用を観察するという本稿の目

的からはややそれるが、ここで日本語母語話者の置手紙の例を見てみよう。参考として 4 人

の日本語母語話者に同じ置手紙のタスクをお願いした。以下にそのうちの一つを引用する。

例 5(20 代女性、大学生)

フランスから一時帰国しています。おみやげのヌテラを置いていきます。パンにぬって食べ

てくださいね。またお目にかかるのを楽しみにしています!

この例は前出の例 1(G11)と比較すると興味深い。この例では、最後の一行を除いては例 1

と同様にデス・マス体で、動詞「食べる」も敬語になっていない。ポライトネスのストラテ

ジーは相手に積極的に好意を示すものである(終助詞「ね」も親しさを示している 8)。これ

らの特徴から、先生と時には友達のように親しく接する今の女子大生の姿が想像される。た

だし、最後の一文のみ敬語表現(「またお目にかかるのを」)が使われていることに注目した

い。デス・マス体と敬語を混ぜて使用し、最後の部分でスピーチレベルを丁寧な方向にシフ

トさせることで、礼儀正しさを保っている。「友達」のように「先生」と接するこの話者の

規範意識(我々の持つ「先生」と「学生」の規範意識とは違うかもしれない 9)が観察され

ると共に、敬語使用の方略としての重要性が確認できるだろう。

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2.2 タスク 2:《大学新聞用の記事》

大学新聞に自国のものごと(場所、物、習慣など何でもよい)の中で日本人に紹介したい

ものについて自由に書く、というタスクである。機能としては、「事物を紹介する」「描写・

説明する」などが考えられる。

2.2.1 新聞記事における「中立的な、ごく一般的な言葉遣い」

口頭では、ダ体は相手との親しさを示す標識だが、書いたものの場合は親しさを指標しな

い「中立的な」言葉遣いとなりうる。「新聞記事」というジャンルでは、「ごく一般的な言葉

遣い」はダ体であろう。これは文体がどのように使われているかに関する社会文化的知識で

ある。また、今回のタスクの場合、「同じ学生に向けて書く」という対等な関係にあるもの

同士のコミュニティー意識を前景化すれば、「デス・マス体」も十分使える。コーパスの中

にはこの他、よりくだけた友達言葉で書いているもの(日本語のレベルが低く意味不明な部

分が多かったため、B1 とは判断されなかった)、やや論文調のデアル体を使ったものがあっ

た。語学のレベルにかかわらず、様々なレジスターがあることを学習者は知っていて、使っ

てみようとする。特に日本に滞在したことのある学習者はこの意識が強いようだ。

今回データを観察するにあたって、大学新聞用の記事を書く、というタスクを遂行するた

めに必要な社会言語的要素として、文体・レジスター、およびスピーチレベルの操作に特に

注目した。事物の紹介、説明、描写といったタスクを遂行するために、学習者は、日本語の

書き言葉がどのように使われているのかについての知識を動員して、文体や話し言葉・書き

言葉等のレジスターをコントロールしなければならない。また、新聞記事では、一見、口頭

でのコミュニケーションや手紙等のテクストのようなインターアクティブな性格はもたない

ように思われるが、読者配慮のために読者に呼びかける必要性が出てくる場合があり、そこ

でも文体・レジスター・スピーチレベルを適切に処理しなければならない。以下に、B1 レ

ベルの学習者がどのようにこれらの要素を処理しているか見ていく。

2.2.2. 事例と観察

例 6:G2「ラクレットって何?」

(書き出し)フランスのアルプスの中にはサボワという地域があります。/・・・/

伝統的はラクレットチーズをもえてる木炭で融解させていたんですが現在は/・・・/

(末文)さて皆様フランスに来たらぜひラクレットを食べて見てサボワの伝統を体で経験し

てください。

例 7:L25「ブルージュ、ベルギーのヴェニス」

(書き出し)ベルギーでは有名な町というのはブリュッセル、アントワープ、ゲントだけど、

ブルージュというの町を知っているか。/・・・/

ブルージュはベルギーのヴェニスだと言われている。それは古いたて物とれきしが多い町だ

からだ。

例 8:L9「ベルギーのチョコレート」

(書き出し)ベルギーに聞くと、初めて思い出すのは/・・・/フリツなどである。/・・・/

(末文)ベルギーに行くとき、ぜっひあちこちでのみせで食べてみてください。

例 9:L13「ベルギーと日本を比べて、まんがの違い。」

(書き出し)ベルギーではまんがが「STRIPS」と呼ばれている。/・・・/(末文)一度、ベ

ルギーやヨーロッバの「STRIPS」を読みきかけがあったら、ぜっひそれを読んで欲しい。

例 10:L18「ユーロビジョンソングフェスチバル」

(末文)各国は自分の文化を見せることができるから、面白い。(本文終了)

家で使っている辞書は WARAN WIKIです。今、辞書がありません。

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例 6 は、全体の文体はデス・マス体である。しかし、タイトルに「ラクレットって何?」

と口語体の文を持ってくることによって、読者と近づき、興味を引きつけるのに成功してい

る。レジスターをうまく操作した例である。ただ、この学習者は文中に所々話し言葉が混ざ

ったり(「燃えてる木炭」「させていたんですが」)、逆に「溶かす」のかわりに「溶解させる」

を使う等、レジスターに関してはまだ完全に自由に使いこなすことはできていない。

また、終了部では、最後の一文で「さて皆様」「ぜひ/・・・/体験してください」と読者に

呼びかけている。デス・マス体を選択し、常に読者に配慮することで、ラクレットを「紹介

する」というタスクをうまく遂行していると言える。

例 7 はダ体で書かれた例である。例の後半に見られるように、語学力は十分あり、文体や

レジスターのぶれも見られない。興味深いのは、最初の文で読者を配慮し呼びかけようとし

ているが、その際に、「知っていますか」を「知っているか」とダ体にそのままパラフレー

ズしたために丁寧さを欠いてしまっている点である。この場合、「ご存知だろうか」「知って

いるだろうか」のような、読み手に直接質問を投げかけない「・・・ダロウカ」の形にする

べきである。このように、書いた日本語は話す日本語にそのまま対応しないことがあるとい

う点は言語の使用のされ方の知識として大切かもしれない。

例 8 はスピーチレベルがシフトしている例である。全体の文体にはデアル体が選ばれてお

り、最後の一文を除いては文体の混用も見当たらない。しかし、「文化の紹介」というタス

クをふまえ、最後に読者に呼びかけるときだけ「食べてみてください」とマス体になってい

る。文体の統一を優先するなら、例 9 のように「・・・してほしい」の形を使うところであ

る。

このような文体の混在は、日本語母語話者の間でも、例えば出版物のあとがきの中の謝辞

の部分によく観察される。その点では、この例のマス体使用も適切と言えるかもしれない。

いずれにしろ、この学習者はマス体の持つ、相手に呼びかける機能、インターアクティブな

性格を的確につかんでいると言える。さらに、読者に対しては書き言葉においても丁寧さを

加えようという意識もあることが分かる。

例 10 も文体の使い分けの例である。この学習者は本文ではダ体を使用しているが、本文

終了後に一行空けて、家で使っている辞書名と、今この文を書くにあたっては辞書を使わな

かったというメッセージを書いている。つまり、この部分は「大学新聞の記事」ではなく、

教師にあてて書いた私信であり、そこだけはデス・マス体で丁寧さを出しているのである。

このように例を観察すると、B1 レベルの学習者は、文体についての使い分けに気をつけ

ており、様々なレジスターや丁寧さの表現についても十分意識があるが、的確な使い分けが

常にできるほどのレベルには至っていないことが分かる。そのため、文中に異なった文体が

混在したり、レジスターのミスなどが観察されたりすることがある。

3 結論に代えて − 文体・レジスター・丁寧さ 指導のポイント

以上の観察から、B1 レベルの学生の書く活動について、社会言語的観点から以下のよう

な指導のポイントを考えた。

- 様々な文体やレジスターに触れさせる。学習者が既に持っている知識を活用し、ある文

体からどんなことが分かるのか、どんな言葉がどんなレジスターに属するのか、などについ

て考えさせる。

- 同じ話者同士が様々なジャンルの発話場面で(書く活動も含む)どのような文体を選ぶ

か観察させる。例えば、手紙の場合は口頭よりあらたまる傾向がある点等に注目させる。

- 同内容の文を、シチュエーションを変えて様々な文体・レジスターに書き換える。

- デス・マス体からダ体、デアル体等へのパラフレーズ(逆の方向も可)を練習する。

- 「遠慮する/遠慮しない」など、文化的な読みが必要な語彙をクローズアップし、背景に

ある価値観について考えさせる。

最後に、今回の考察を通して、教師が持っている言語感覚を常に検証し、社会の変化と共

に起こる規範意識のゆれに敏感になる努力が必要だと再確認した。その上で、例やモデルと

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してどのような要素を学習者に提示していくのかよく考えることが大切だろう。

___________________________________

1 共通枞日本語版(吉島・大橋(他)訳編 2004)では「目標言語の文化と当人自身の文化との間

の(中略)最も重要な違いに対する認識があり、それを配慮することができる(強調は筆者)」

となっており、表現の面で言葉をうまく操作できる、という意味に感じられたが、フランス語版

では「/…/ en recherche les indices([それらの文化的な違いに関する]手がかりを探そうとす

る)」という表現が使われており、受容のときの理解により重点が置かれている印象がある。こ

れは自由に表現ができるようになる段階を B2 以降とする共通枞の記述と合致する。 2 2.1.3 を参照。

3 鈴木(1997)が指摘するように、日本語では「普通体世界」と「丁寧体世界」を規範のやや異

なる二つの表現世界として分けて捉えることができる。実際の「丁寧体世界」での言語表現で、

話者が大人の場合は、デス・マス体と敬語は共に敬意をマークする手段として常に併用される。

日本語教育では、形が平易で丁寧さも最低限保証できるデス・マス体をまず学習し、その後普通

体や敬語を順次習っていくため、学習者にとっては「普通体」と「敬語なしのデス・マス体」と

「デス・マス体+敬語使用」の三つの段階が意識されると考えられる。教育の面ではこの点を考

慮に入れて指導する必要があるだろう。 4 指導の際には、手紙というジャンルの場合は全体的に丁寧度が一段上がる傾向があるという点

(口頭のコミュニケーションではダ体を使うような親しい間柄でも、手紙の場合はよりあらたま

ったデス・マス体を併用する、普段デス・マス体で比較的親しい関係の場合も手紙では敬語を使

ったフォーマルな表現が混ざる、など)に注意が必要だろう。 5 冒頭の挨拶のあとの顔文字の使用にも先生への親しみの表現が観察される。

6 「つまらないものですが」という表現を相手に対して失礼とする見方はいわゆるマナー本やマ

ナー解説サイトにも散見される。例えば、http://www.seikatu-cb.com/manner/miyage.html 7 この例は参考として採集したデータ中にあったものであるため、巻末にデータは記載されてい

ない。 8 この例での「ね」の使用は女性的な言葉遣いという印象を与える。今回は資料の性格上男性語、

女性語については触れなかったが、これもレジスターのひとつとして意識化する必要があるだろ

う。 9 社会の変化に伴う規範意識の変化は、海外で日本語を教える我々にとっては特に注意すべき点

だと考える。敬語の導入の際、話者同士の社会的な関係として「先生と学生」がしばしば使われ

るが、現在の実際の言語使用とどのくらい合致しているのだろうか。

<参考文献>

鈴木睦 (1997)「日本語教育における丁寧体世界と普通体世界」『視点と言語行動』(田窪行則

編)くろしお出版; 45-76.

吉島茂・大橋理枝(他)訳編 (2004)『外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ参照枞』

朝日出版

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社会言語学的観点からの考察

―ネーティブ・スピーカーに対しどんな不快感・違和感を与える可能性があるか―

Gretl Van Ourti

はじめに

ベルギー人の学生は日本語を話している時に日本語のネーティブ・スピーカーに対して何

か不快感か違和感をあたえているのではないかと非常に心配しているようである。私は日本

学科の一年生の会話の授業を担当している。学生に何度も「先生、これを言うと、失礼では

ないでしょうか」とたずねられた。私自身も日本語のノン・ネーティブ・スピーカーである

のでその心配は理解できる。日本の文化をまだそれほど体験したことがない B1 レベルのベ

ルギーの学習者は日本の文化、習慣や日本語に対しての社会言語能力はまだ発達段階にある

のでネーティブ・スピーカーとコミュニケーションをする時に不快感・違和感を与えること

があると思われる。しかしこれは単に考察を行った結果からではなく、実際に日本語を教え

た経験から分かったことである。 従ってこの考察では B1 レベルで日本語を書くとどんな不

快感・違和感を与える可能性があるかについて更に調べてみることにした。

1 CEFR の B1 の社会言語的適切さのグリッドを参照すると

1.1 「明示的な礼儀習慣」とは?

「Can perform and respond to a wide range of language functions, using their most common

exponents in a neutral register. Is aware of the salient politeness conventions and acts appropriately. Is aware of, and looks out for signs of, the most significant differences between the customs, usages,

attitudes, values and beliefs prevalent in the community concerned and those of his or her own.」(p.122)

「中立的な、ごく一般的な言葉遣いで、幅広い言語機能を遂行し、対応できる。明示的な礼儀習慣を認識しており、適切に行動できる。目標言語の文化と当人自身の文化との間の、習

慣、言葉遣い、態度、評価観や信条について、最も重要な違いに対する認識がある、それを

配慮することができる。」(p.135)

「Kan een breed scala van taalfuncties uitvoeren en beantwoorden met de meest voorkomende

exponenten in een neutraal register. Is zich bewust van de belangrijkste beleefdheidsconventies en

handelt dienovereenkomstig. Is zich bewust en let op tekenen van de belangrijkste verschillen in

gewoonten, gebruiken, houdingen, waarden en overtuigingen tussen de betrokken gemeenschap en die

van hem of haar zelf.」(p.113)

「明示的な礼儀習慣」という言葉の意味をもっと理解したかったので、オリジナルの英語の

記述とオランダ語で翻訳された記述を読みなおすことにした。英語では 「 the salient

politeness conventions」である。「salient」という単語の意味を確認することにした。英和電子

辞書によると「顕著」、「目立つ」、「重要」というような意味である。 和英の辞書によると

「明示的〔な〕」のは「explicit」、また 「明白な」、 「明確な」 という意味である。

「salient」という語彙はオランダ語で「de belangrijkste 」に翻訳されている。それは「一番

重要な」という意味である。「explicit」と「重要」は違う意味であるが CEFR に書いてある

「salient」、「belangrijkste」、「明示的な」という語彙は「重要な」という意味に理解してもよ

いのではないだろうかと思われた。

私たちのデータから、「明示的な礼儀習慣」に関して考えた。すぐ頭に浮かんできた礼儀

習慣は丁寧体と普通体の適切な使い方と書き言葉と話し言葉の違いを意識しているかという

ことであった。客観的な基準として吉田 (2005)「たのしい日本語作文教室I」に目を通すこ

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とにした。「話し言葉には、書き言葉と違う特徴がいくつかある。話し言葉を適度に用いれ

ば、文章に柔らかさや親近感が出てくるとは言うものの、書き言葉の原則を理解しないまま

に使いすぎると、やはり正式感に欠ける文になり、場合によっては読む人の心証を害するこ

とになろう。」(p.20)

それに基づいてデータを分析して、話し言葉を使いすぎていないかどうか確認することにし

た。

それによって話し言葉を使いすぎているからといって不快感・違和感を与える原因にはなら

ないということが分かった。それから次の考察を行った。

2 考察

2.1 考察の方法

グルノーブル大学学生が書いた新聞記事と置手紙をデータとして利用することにした。な

ぜなら私はそれらの学生を知らないからである。さらに B1 レベルの学習者の目標である

CEFR の社会言語的適切さに関して B2 の記述を読みなおすことにした。

「Can express him or herself confidently, clearly and politely in a formal or informal register,

appropriate

to the situation and person(s) concerned. Can with some effort keep up with and contribute to group

discussions even when speech is fast and colloquial. Can sustain relationships with native speakers

without unintentionally amusing or irritating them or requiring them to behave other than they would

with a native speaker. Can express him or herself appropriately in situations and avoid crass errors of

formulation.」(p.122)

社会言語学的な観点から見てデータのどこが不自然か、どこが変か、というような幅広いこ

とを調べてみることにした。データの考察は日本語のネーティブ・スピーカー(35 歳、女

性医師)と共に行った。B1 と B2 のグリッドの記述とB1としての能力を特徴付けるものは

何かという考察を常に念頭に置き、必要に応じて次のことについて話し合った。

語彙に関して、語彙選択や使い方などが不自然か。

びっくりさせるあるいは笑ってしまうほど日本語らしくない文があるか。

文法に関して、変な接続詞と変な助詞の使い方などがあるか。

テキストを読んだとき、失礼だなあと思うところがあるか。

意味が通じないところがあるか。理由は何か。

文体は自然か不自然か。

一般的な印象としてこのデータは新聞記事になれるか。置手紙としては大丈夫か。

この考察を行うにあたってこのデータだけでは不十分であるかもしれないと考えられたが今

回は初めての考察だったのでこのように行った。考察の方法にも不十分があるかもしれない

が今回取りうる最善の方法を選択した。

2.2 考察結果と指導のポイント

2.2.1 大学の新聞記事に関して

B1 レベルの書く活動ではどんな不快感・違和感を与える可能性があるかということに関

して、データの考察を行った。日本語のネーティブ・スピーカーはデータとした記事に対し

て不快感・違和感というよりはむしろ日本語ができないという印象を持った。ネーティブ・

スピーカーが読む人の心証を害するとした記事は二つのみであった。以下がその例がである。

例1:(G3)「変なことは日本には、フランスよりボージョレヌーボーは人気です。」

インフォーマントは学生が「変」という語彙を使ったため読者が非難されているように感じ、

適切な言い方は「面白いことは…」あるいは「興味深いことは…」という言い方であろうと

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述べた。この例は定型表現(CEFR 5.2.1.1 )をしようとして直訳してしまった誤りであろう。

B1 レベルにありがちな間違いだと考える。礼儀上の習慣に関して、誤解を起こさないため

に B1 レベルの学習者にどの言葉、どの表現やどんな態度などが自分の文化と日本の文化に

非難されているような感じをさせるか提示するのは大事なのではないかと思う。

例2:(G28)「したがってフランスではチーズはよく食べされています。しかし外国人はあまり好きではありません。みえかたは「チーズは悪いにおいがして、とてもむかつくだと言っています。だから外国人はチーズをあまり食べていません。」

これに対しては、インフォーマントは学生が断定的な言い方をしているのでちょっと不快感

を感じ反論したくなると感想を持った。この例は CEFR に書いてある回避的・消極的な礼儀

(CEFR 5.2.2.2)に関係がある。人によって異なると思うが断定的な表現をすると相手を怒らせ

たりいらいらさせたりする可能性がある。例2のような断定的な表現は B1 レベルの特徴で

はないと思う。このような意見の言い方は学生の実存論的能力に関係があるかもしれない

(CEFR 5.1.3)。B1 レベルの学習者にも独断的な表現を避けるようにコミュニケーションの

ストラテジーなどを説明することが有効ではないかと考える。日本語で意見を述べるテクス

トにどうやって微妙なニュアンスを表せるか B1の学習者に教えるのは大事だろう 1。

普通体と丁寧体が混在している記事は尐なかったがその記事に対してインフォーマントであ

るネーティブ・スピーカーは不快感は感じなかったがただ唐突な感じがしただけだと述べた。

たとえば G30 のテキストにはじめから終わりまで「ます形」と「です形」が使われている。

しかし突然一度だけ「ハムやサラミ人気がある。」と書いてある。むやみに混在がみられた

記事も一つあった(G25)。このテキストに対してこのネーティブ・スピーカーはとても読み

づらいと述べた。B1 レベルの学習者に、このような情報なども伝える必要がある。

2.2.2 置手紙に関して

敬語が適切ではない手紙が多かった 2。インフォーマントのネーティブ・スピーカーによる

と、この置手紙が外国人によって書かれたということが分かれば、敬語の間違い許容できる

人もいるし、不快感・違和感を感じる人もいるかもしれない、ということだった。私は敬語

が適切ではない置手紙は不快感・違和感を与える可能性があると思う。つまり明示的な礼儀

習慣を認識しているかもしれないが、適切に行動できるようになるために指導が必要であろ

う。どうやって指導すればいいか考えてみた。書けるようになるためには B1 レベルの学習

者には前もって正しいテクストを聞かせたり読ませたりするべきだろうと思う。そのあとで

定着のためにドリル形式の書く練習をさせることなどが有効なのではないかと考える。

2.2.3 B1 レベルの学習者の特徴と指導項目

この考察から出てきたのは次の通りである。テキストのスタイルに合わせて語彙が硬すぎる

か、若者の言葉であるかなどを判断するのは B1 レベルでは非常に難しいと思う。たとえば

次のような文に対してインフォーマントは次のような印象を述べた。「各地方は固有なパンが有する」(G25)。「固有」はアカデミックな感じであり「有する」は法律的な感じである。

「フランスの各地方にはそれぞれ特徴的なパンがあります。」という文のほうが自然である。

また、次の例では若者言葉が使われている「みえ方はチーズは悪いにおいがして、とてもむかつくだと言っています。」(G28)「むかつく」は若者の言葉である。「くさいにおいがする

ので、とてもむかむかすると言う人もいます。」という文のほうが自然である。学習者にど

う指導すればいいか考えてみた。微妙なニュアンスはまだ全部説明できないだろうと思うが、

B1 レベルの学習者に様々な文体(ジャンル)を紹介して文体と言葉遣いとの関係を提示するな

どが有効なのではないかと考える。いわゆる「意識させる練習」が必要であるだろう。それ

に関して、やりとりする文章を書く技能、チャットや電子メールなども練習するのにいいの

ではないかと思う。

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49

3 最後に

B1 レベルでテクストを作成するとネーティブ・スピーカーに対して違和感・不快感を与え

る可能性がある。しかし、同時に「性格にも関連した個人的要因である」実存論的能力

(CEFR 5.1.3)を意識化させ、方略(CEFR4.4.1.3)を使ってスムーズにコミュニケーション

が行われるように指導する必要があるだろう。例えば、その相手に「日本語がまだ上手じゃ

ありません。失礼なことを言っているかもしれません。直していただけるとうれしいです」

というようなことを前もって言っておくのが有効なのではないかと思う。そのような言葉は

自分の話し相手や日本文化に対する善意を示すことになるからだ。それは CEFR 5.2.2.2 に書

いてあるネガティブ・ポライトネス「あいまいな言い方を使う」、英語で「using hedges」に

関係があるかもしれない。

______________________________________

1 B1 プロジェクトの 2010 年度活動報告書の文型マップ p.76

2 Belmans と Takeuchi の報告書参考

<参考文献>

(2002) Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment,

Cambridge University Press,

(2004)「外国語教育 II 外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枞 Common

European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment」, Goethe-Institut

Tokyo,

(2006) Gemeenschappelijk Europees Referentiekader voor Moderne Vreemde Talen: Leren,

Onderwijzen, Beoordelen Common European Framework of Reference for Languages: Learning,

teaching, assessment」, Nederlandse Taalunie,

吉田妙子、(2005)「たのしい日本語作文教室 I」、大新書局

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第四章 言語運用能力

一節 ディスコース能力

CEFR B1 レベル一貫性と結合性に関する考察

―「主題」「結論」の提示形式から―

櫻井直子

1 B1 レベルの書く産出活動における一貫性と結合性 ―CEFR のグリッドから―

CEFR には B1 の一貫性と結合性として「短めの、バラバラで単純な要素をいろいろ使っ

て、ポイントを直線的に並べ、結びつけることができる(吉島・大橋 2004:139)」と記述

されている。また、書く産出行動に関しては、総合的な書く活動 B1「一連に短い別々にな

っている要素を一つの流れに結びつけることによって、自分の関心が及ぶ身近な話題につい

て結束性のある簡単なテクストを書くことができる(前掲:65)」、レポートやエッセイ B1

「関心のある話題についての短い、簡単なエッセイを書くことができる。自分の専門範囲の

日常的もしくは非日常的な事柄について、事実の情報を蓄積した上で、総括し、報告できる。

また、それに対して、ある程度の自信を持って自分の意見を提示することができる。(前

掲:66)」、一般的な、書かれた言葉でのやり取り B1「具体的な話題だけでなく、抽象的な

話題についても情報や意見を伝えることができる。自分が必要だと思う点を相手に理解させ

ることができる(前掲:87)」、自己評価表書くこと「身近で個人的に関心のある話題について

つながりのあるテクストを書くことができる。(前掲:28)」とある。これらの内容から、B1

レベルの書く産出活動における一貫性と結合性の能力を次のように考えた。

日常的な話題・自分の専門の話題について、多尐抽象的でもばらばらの要素をポイ

ントに沿ってならべ、結束性のある直線的なテクストを書くことができる

しかしながら、上記の規定だけでは一貫性・結合性を考察するために重要不可欠である

「どのように 文がつなげられるのか」という点に関しては明瞭ではない。そこで、テクス

トの産出活動を記述している次のグリッドも参照した。全体的な尺度 B1「身近で個人的に

も関心のある話題について単純な方法で結べ付けられた、脈絡のあるテクストを作ることが

できる(前掲:25)」、長く一人で話す: 論拠を述べること B1「ほとんどの場合、明確な議論

ができ、他人がついていくのに苦労しない(前掲:62)」、聴衆の前での講演 B1「ほとんど

の場合、聴衆が難なく話についていける程度に、はっきりとしたプレゼンテーションをする

ことができ、また要点をそこそこ正確に述べることができる(前掲:64)」。この中で重要と

思われるのは特に「脈絡のあるテクスト」という記述であるが、英語・仏語・蘭語ではそれ

ぞれ、simple connected text (簡潔で筋の通ったテクスト) un discours simple et cohérent(簡潔

で首尾一貫した談話)een eenvoudige lopende tekst(単純な順を追ったテクスト)と記述され

ている 1。これらの記述から、さらに、次の能力も求められていると考えた。(邦訳:筆者に

よる)

複雑な文章構成ではないが、読み手に自分が伝えたいことがわかるよう、複雑では

ないが、論理的な流れをもち、主題・結論など話のポイントが順序だてて提示され

ているテクスト(脈絡のあるテクスト)を書くことができる

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2 実際の活動での一貫性と結合性 ―伝わらない作文データの分析から―

前節では B1 レベルの一貫性と結合性とは何かを考察し、能力記述を試みたが、その記述

が妥当であるかどうか実際の書く産出活動である作文データを分析し検討した。

2.1 分析方法と結果

分析対象データは、B1 と評定された「大学新聞への記事」のデータの中で両大学合同会

議において「1 文 1 文は正確で A レベルとはいえないが、脈絡・構成がないため言いたいこ

とが伝わらず、B1 に入ったところ」と判断された G14「携帯電話」と L13「ベルギーと日本

を比べて、マンガの違い」である。分析項目は、テクストの順序だての重要要素である主題

と結論に焦点をあてて下記の 4 点とした。その結果を表 1 にまとめる。

1. 主題を提示しているか。どこに提示しているか。

2. テクストの構成・段落間のつながり。

3. 主題に対する自分の意見・理由を提示しているか。どこに提示しているか。

4. 改善点

表 1 G14・L13 の分析結果

G14 L13

1

主題の提示なし。

タイトルには「携帯電話」とあるが、携帯電

話の何について述べたいのか具体的な提示が

ない。

テクスト冒頭にも提示がない。

タイトルに提示

日本のまんがとベルギーのまんがの比較

ただし、結論と合っていない。

2

段落構成がない。

テクストの流れ:

日本とフランスの普及現状→契約の値段→

日本の携帯→携帯はコミュニケーションに必

4 段落構成

1 段落:ベルギーのまんが

2 段落:日本のまんがとそれに対する高評価

3 段落:日本のまんがから日本語を始めた経験

4 段落:読み手にベルギーのマンガを推薦する

3

携帯電話に対する自分の意見がはっきり示さ

れず、否定的な意見(電波のため危なそう

だ。素材は汚染源だ。)、肯定的な意見(今後

携帯は必要なものでコミュニケーションは過

去より便利になる)が示される。 読み手は

伝えたいことがわからない。

読み手は、タイトルから主題は両国のまんがの

比較と考える。そして、テクストの進行から日

本のまんがの方がいいという結論を予測する

が、最後にベルギーのまんがを読むように勧め

られることから、予測が裏切られる。従って、

結局何が伝えたいのかわからなくなる。

4

携帯電話の何が言いたいのか主題をまず考

え、それに合う結論を明示する

比較をしたいのか、ベルギーのまんがの魅力を

紹介して読んで欲しいのか、主題を明確に決

め、それに基づく結論をはっきり打ち出す

2.2 分析結果の考察

この2つのデータの分析から、どちらも「伝えたいこと」の絞込みが不十分であることが

テクストの一貫性と結合性を阻害していることが明らかになった。つまり、一貫性・結束性

があり相手に言いたいことが伝えられるテクストを書くためには、まず「伝えたいこと」を

具体的にはっきりとさせなくてはならない。次に主題とそれに対する結論や意見が読み手に

伝わるように順序だてて明記する必要がある。今回の考察だけでは一般化はできないものの、

前節の能力記述の妥当性をある程度裏付けるものと判断してもいいのではないかと考える。

次に、その主題と結論の提示の仕方としてどのような形式があるのかに関して検討した。

石黒(2006: 4-7)は下記の 2 つの提示形式を挙げている。

1. 中心的重要情報がはじめに伝えられる形式

前ぶれ文・先行オーガナイザーを文頭におくもので、論文・レポート・新聞など、情

報を迅速・正確に伝える実用的な文章によく使われる。読み手の処理としてはトッ

プダウン型の処理が働く

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2. 中心的重要情報が最後に伝えられる形式

小説・エッセイ・クイズなどで、謎解きなど、読みながら理解を楽しむ文章向きで

あり、読み手にはボトムアップ型の処理が働く。

1 にある「前ぶれ文」とは、これから述べる情報の枞を提示する文であり、「先行オーガナ

イザー」とは、文章の先頭に置かれ、文章の内容の組織化に役立つ情報のことである(前

掲:4)。そして、実用的な文章を書くためにはあとに続く内容を組織化するような先行オー

ガナイザーを、前ぶれ文という形で示すことが重要(同上)としている。

3. 実際の活動での提示形式 ―作文データの分析―

2 節で挙げた 2 つの提示形式の特徴は何か、また、学習者に指導していく上でどちらの形

式のほうが適しているのか、作文データを観察し分析した。

3.1 分析の方法と内容

分析対象の作文 は、大学新聞記事の作文データの中で、B1 と評定されたグルノーブル 14、

ルーヴァン 18、計 32 である。そして、分析内容は下記 3 点とした。

1. どちらの形式か どのようなテクストの流れになっているか

2. 作文の主題と結論(伝えたいこと)は何か

3. 結束性・一貫性に関する改善点

3.2 分析結果と考察

1)主題・結論が明示されている作文はトップダウン型が多い

全 32 の中で主題・結論の明示に成功していると判断できた作文は 24 あったが、その中で、

前節にあげた形式 1「中心的重要情報がはじめに伝えられる形式」(以後 トップダウン型)

のものが 19 あり、前節の形式2「中心的重要情報が最後に伝えられる形式」(以後 ボトム

アップ型)のものは 5 のみであった。それぞれの形式のデータ例としては、トップダウン型

G28「フランスのチーズ」・L5「ベルギーのブルージュ」、ボトムアップ型 G7(タイトルな

し)・L20「ビールを 2 本ぐ(ママ)ださい」 が挙げられる。その中で、ボトムアップ型の上記 2

つの成功例を見ると、G7 は「みなさん、パスクアと言う休みの日を知っていますか」、L20

は「皆、ビールが好きですか」と読み手への語りかけからテクストを始めており、読者の興

味を引くような書き出しとなっている。それに対して、トップダウン型のテクストは、G28

はフランスのチーズに関して、L5 はベルギーの観光地であるブリュージュについて、書き

手が順次、説明を与えていく説明文である。

表 2 トップダウン型・ボトムアップ型 提示例

L5「ベルギーのブリュージュ」 L20「ビールを 2 本ぐださい」

1 トップダウン型

冒頭にブルージュの位置を出し「海のにお

い」で読者をひきつける。

地理、匂い、建物、食べ物、公園、語りかけ

ボトムアップ型

冒頭に質問を提示して今後の展開を暗示。

「ビールが好ですか。日本大学生にそれを

聞くと、答えはいつも「はーい」です。」

2 ブリュージュ紹介。読み手をブリュージュに

誘う

ベルギービール紹介。結論はない

3 接続詞を用いて段落のつながりをつけた方が

いい

冒頭で読者をひきつけ展開に注目させてい

る。

タイトルからひきつけ文章力がある。しか

し最後にタイトルと関連づけた結論が必

要。

このことから考えると、「理解の枞組みを作り上げていくところに読む楽しみがある(石

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黒 2006:7)」ボトムアップ型のテクストを書くためには、読者を最後の結論までひきつけて

いく構成力と、その書き方にふさわしい主題が必要であり、日本語能力とは異なる文章力が

求められている。この読者をひきつける構成力に関しては、CEFR 創作のグリッド(吉島・

大橋:66)を参照すると、C1 「読者にふさわしい(…)的確な構成と展開を持つ(…)テ

クストが書ける」C2「読み手を完全に引き込むことができる」という記述がある。従って、

この能力は B1 では熟達することは求められていないと考えられる。

以上のことから、トップダウン型の成功例が多かったのは、その形式の方が書きやすく脈

絡のあるテクストが構成しやすいためではないかと結論付け指導の参考とすることにした。

2)主題の説明が必要な場合、社会的な主題の場合はトップダウン型の方がわかりやすい

データの中には、ボトムアップ型を試みたが、成功しなかった例も見られた。その中に、

主題が一般的な事柄ではないためその定義や説明が必要なもの、および、社会問題などが主

題のものがあった。前者の例として L18「ユーロビジョンソングフェスチバル」、後者の例

としては G20「アヌシーと公害」がある。

表 3 トップダウン型に変えたほうがいいデータ例

L18「ユーロビジョンソングフェスチバル」 G20「アネシーと公害」

1 ボトムアップ型

参加手順、優勝ポイント、フェスティバル

説明

ボトムアップ型

地理、自然、公害、車使用に反対する

2 ユーロビジョンソングフェスティバルの紹介

進行の仕方、このフェスティバルはどんなも

のか

アネシーの美しさと公害への懸念が主題。

結論として、車使用に反対している

3 この祭りは日本人に既知情報でないので最

後の定義づけを冒頭に持ってきたほうがい

い。

タイトルから社会的な説明文が期待されトッ

プダウン型の方が読みやすい

まず L18 の主題は eurovision song festival と呼ばれる音楽祭で、第 1 段落では実際に行われ

ていること、参加者の動機を説明し、最後の段落で eurovision song festival の定義を示してい

る。しかし、欧州以外の人間にはあまり馴染みのないものであり、まず、主題の説明がない

と内容理解が難しく実際理解できない人もいた。次に G20 だが、冒頭ででアヌシーの説明が

なされ、最後に公害問題への懸念と意見が提示されている。しかし、もし公害問題への提言

が重要であれば説明文の形式であるトップダウン型を採用し、まず、意見を明示しそのあと

に自分の意見の根拠となる事柄を示したほうが、読み手への説得力が増すように思われる。

以上のことから考えて、上記のような主題の場合は、ボトムアップ型ではなく、トップダ

ウン型で書いた方がわかりやすいと思われた。

3)「主題」が明示されても事実、意見の羅列では伝わらない

データの中には「主題」がわかるが、まとまりのない羅列であるため内容理解がしにくい

ものもあった。一例として G16(タイトルなし)、G22「チョコレートケーキ」が挙げられる。

G16 は「フォアグラ」が主題だが、要点がばらばらに提示されているため煩雑な印象を

受ける。そこで、例えば、フォアグラの説明、フランス人の食べ方、読み手への語りかけと

いうように、順序だてた流れがあれば非常によくなると思われる。G22 は、チョコーレート

ケーキのレシピ、いつ作られているか、食べ方、自分の気持ちについて書かれており、ある

程度まとまりがあるが、テクスト自身には段落構成がなかった。そして、読んだ印象として

だらだらとしたテクストで内容がわかりにくいという印象を持った人が多かった。そこで、

レシピと食べ方を 1 つにまとめ、作られる機会と気持ちをまとめるなどして段落構成を施す

と読み手に内容が伝わりやすくなるであろう。

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表 4 事実の羅列で伝わりにくいデータ例

G16(タイトルなし) G22「チョコレートケーキ」

1 トップダウン型

フォアグラとは、生産地、食べる時期、値

段、食べにくい、語りかけ

トップダウン型

レシピ、作る機会、個人的な好み、食べ方、

語りかけ

2 フォアグラ紹介。一度買ってみて欲しい チョコレートケーキ紹介。外国人に食べて欲

しい

3 言いたいことはわかるが、フォアグラの説

明・フランス人の食べ方・読み手への語りか

けという構成があればよい

段落構成をあるといい。中心文を決め、内容

でまとまりをつける。第 1 文が前置き文。そ

の後、レシピー、食べる機会、食べ方、最後

に語りかけ

つまり、脈絡のあるテクストを書くためには、内容を考えた後、提示順序を考え、段落構

成が必要であろう。

4) 目的意識を持ち、読み手への配慮があると生き生きとした文章になる

内容はわかりやすいが、読後感に何か物足りなさを感じるものもあった。その原因を考察

すると読み手への語りかけが足りないためではないかと思われた。

例として L10「ベルギーの観光地のアトミウム」と L16「ルーヴァン」を挙げる。L10 は

トップダウン型のテクストであり、その中でアトミウムが作られた経緯、文化財第 1 号に認

定されたこと、また建物のデザインが分子構造をとっていること、訪問もできることが詳細

に述べられているが、最後に、書き手の意見がないため「結局、だから何がいいたいのか」

という無味乾燥な印象を受けてしまう。最後に、自分がアトミウムに対してどう思っている

のか、あるいは、読み手へ訪問を奨励するなどの語りかけがあるとそれが解消され読後感も

よくなると思われる。また L10 も、トップダウン型のテクストでルーヴァン市の地理的な位

置、特徴を順次示しているが最後にここの特徴として、「世界で 1 番長いバーと呼ばれてい

る」という点が書かれている。この点は読み手の興味を引く点であるが、その後に書き手が

このことについてどう考えているのか、読み手へ何を伝えたいのかがなく、未完成感、物足

りなさ感を否めない。そこで、最後に、バーに関連した読み手への語りかけを加えると文章

が生き生きとしてくると思われる。あるいは、「世界で 1 番長いバー」を主題として構成し

なおし、「書き出しに世界で一番長いバーはどこか知っていますか」のような読み手への問

いかけを冒頭に入れたボトムアップ型テクストにすることも考えられる。

表 5 読み手への語りかけがあるとよくなるデータ例

L10「ベルギーの観光地のアトミウム」 L16「ルーヴァン」

1 トップダウン型

建築経緯、デザイン、訪問

トップダウン型

地理、特徴

2 アトミウムの紹介

結論はない

ルーヴァン紹介

世界で一番長いバーと呼ばれていることを示

3 無味乾燥な印象があるため最後に読者への

語りかけや自分の感想を加えるとよいので

結論が興味を引く内容なのでボトムアップ型

にして解答を最後に載せたら生き生きとする

のでは

テクストを書くという活動にも会話と同じようにコミュニケーション活動であることを認

識し「正しく書く」だけでなく、「何のために書くのか」「誰に書くのか」を意識して書く事

が重要であると思われる。

5) 脈絡・読み手配慮があるテクスト は読みやすく読後感もいい

1) から 4) のポイントを押さえ書かれているテクストがデータの中で一つあった。それは

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G2「ラクレットって何?」である。内容は、ラクレットがどの地方の料理か、その特徴とレ

シピ、食べ方と楽しみ方、読み手への語りかけというトップダウン型の構成になっており、

その料理を知らない人でもラクレットを楽しんで食べている人々の模様が目に浮かび、是非、

味見してみたくなる文章である。しかし、残念な点としては段落構成を持っていない 1 段落

のテクストである。1 文目の冒頭に 1 マスあけているので段落意識はあると思うが、複段落

を構成する意識がなかったように思われる。複段落を意識化して、書く産出を行えばさらに

熟達度が増すと考えられる。

表 6 脈絡があり読み手配慮のあるデータ例

G2

1 トップダウン型 ラクレット提示 調理法 ラクレットの魅力 語りか

2 ラクレット紹介 是非味わって欲しい

3 描写に優れ、構成もはっきりしているが複段落の意識がないのが残念

4. 指導項目の提言 ―分析結果から―

4.1 指導案

以上のことから、B1 レベルの書く産出活動において、一貫性・結合性のあるテクストを

書くには、羅列されただけの塊のあるテクストではなく、読み手に伝えたいことを念頭に置

いた、脈絡のあるテクストの産出が求められていることがわかった。また、その活動を遂行

する際に、考慮すべきいくつかの点も明らかになった。その点を踏まえた指導案を下記に示

す。

まず、書く前に「伝えたいことを明確」にし主題と結論を明確にさせる。

次に、テクストの形式としてはボトムアップ型とトップダウン型があることを説明

し、それぞれの形式のテクストのモデル文を参考に産出活動をする。

その上で、自分が採用する形式を決めその形式に則ったテクストの作成を行う。そ

の際に、トップダウン型のテクストの方が説明文の場合は書きやすいこと、特に、

主題に定義や説明が必要であったり社会問題である場合はトップダウン型のほうが

適切であることを踏まえさせる。

その次に、言いたい内容を羅列してみて、どの要素とどの要素がが一つの段落を構

成するか、そして、その段落はどのような順番で提示すれば伝わりやすいかを考え

させる。

最後に、「伝えたいこと」を意識した読者への配慮として語りかけを入れること。

この語りかけは、トップダウン型の場合最後に、ボトムアップ型の場合最初に入れ

ることが効果的ではないかと思われる。

4.2 意識化の重要性と指導法

また、データ G2 のようにほかの能力が優れていても 1 段落しかないテクストも見られた。

その原因が複段落の意識がなかったことであると考えると、一貫性と結合性のあるテクスト

を産出するためには「意識化」が非常に重要であると考えられる。一方、脈絡をつけるため

に必要な段落構成などの指導に対し、「正しく書く」ためには文法と語彙を勉強すればいい

という消極的な態度を取る学習者もいる。そのような学習者をどう意識化していくのか。や

はり、意識化の第一歩は教師の繰り返しの説明から始まるのではないだろうか。下記に説明

内容の一例を提示したい。

書くという行為にも常に目的があり、その目的を達成するには「正しく書く」から

「相手に伝わるように書く」という考え方のシフトが必要である。

「相手に伝わるように書く」ためには一貫性と結合性が求められ、具体的には主

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題・結論の提示、段落構成のあるテクストを書かなくてはいけない。

CEFR には「言語構造的知識と技能、学習能力の役割は言語別のものではなく、複数

の言語間の横断、転移が可能なのである(吉島・大橋 2004:183)」、「知識と技能

は、特に『同族の』言語間で自然に転移する可能性がある(「同族の」言語の場合

に限るわけではないが)(同上)」と記述されている。つまり、日本語、フランス

語/オランダ語は同族言語間ではないので「自然に」転移しにくいことはあっても、

「意識する」ことによって能力の転移は可能であるということである。そこで、学

習者に、母語に受けた書くことに関する教育を喚起させ、日本語を書くときに活用

するよう呼びかけたり、日本語で構成力をつけることによって他言語にもその能力

が肯定的に働く可能性があることを示すことができるのではないだろうか。

______________________________

1. 英語版 p24:http://www.coe.int/t/dg4/linguistic/Source/Framework_EN.pdf

フランス語版 p25:http://www.coe.int/t/DG4/Portfolio/documents/cadrecommun.pdf

オランダ語語版 p27:http://taalunieversum.org/onderwijs/publicaties/gemeenschappelijk

_europees_referentiekader/gemeenschappelijk_europees_referentiekader.pdf

<参考文献>

石黒圭(2006)『よくわかる文章表現の技術 4 発想編』明治書院

甲田直美(2009)『文章を理解するとは』スリーエーネットワーク

谷口篤(2001)「文章理解ー私たちはどのように文章全体の意味を理解しているのかー」,森

敏昭(編)『おもしろ言語のラボラトリー』pp.75-97,北大路書房

吉島茂・大橋理枝(他)訳編(2004)『外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ参照枞』朝日出版

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B1 レベルにおける一貫性と結束性の考察

―接続詞に関して―

武山恵奈

1 CEFR「書く活動」における「一貫性と結束性」

CEFR では B1 の総合的な書く能力をを次のように定義している。「一連の短い別々になっ

ている要素を一つの流れに結びつけることによって、自分の関心が及ぶ身近な話題について

結束性のある簡単なテクストを書くことができる」(吉島・大橋訳:2008、p.65)。A2 が「簡

単な表現や文を書くことができる」レベルであるのに対し、B1 では文章レベルでの結束性

が求められる。

本稿では、57 の大学新聞記事から結束手段の1つである「接続詞」を拾い出して A~B1 の

使用実態を調査するとともに、B1 に共通する特徴を考察することにした。なお、接続詞の

拾い出し作業に当たっては、石黒(2009b)の接続表現一覧および接続表現の種類別出現頻

度表を参考にした。接続詞の誤用に関してはどこまでを許容範囲とするか悩んだが、「読者

を混乱させない程度に正確で」(前掲:p.129)、意味を完全に取り違えているのでない限りは

採用することとした。

2 結果と考察

2.1 例示の接続詞「たとえば」

今回、最も使用頻度が高かったのは「たとえば」(22 回)であった。CEFR の「一貫性と

結合性」のグリッドには「たとえば」に関する記述は見られないが、実際にはこの接続詞は

A レベルの学習者にも積極的に使用されている。しかし、A レベルの作文 1 を実際に見てい

くと、「パンの食べる方がいろいろある。例えば、朝ご飯でバターつきのパンを食べられる。

パンの上にジャムも使える。主菜とか副食ものソースとパンを食べられる」と例だけをダラ

ダラと列挙するもの(G18)、「ワインは大じものです。たとえば、ともだちに招待されると

きおいしいワイン瓶をおくらなければ」(G6)のように、「たとえば」の係り方に問題がある

もの(先行文脈とつながっていない)、など、読み手に意味は理解できるものの微妙な違和

感を与えるものが尐なくない。

これに対して B1 レベルでは、「お米を作るもうヨーロパの方法があります。たとえばパエ

リアとリゾットです。」(G23)「フランスでは、よく豚肉を食べています。たとえば、ハムや

サラミは人気がある。」(G30)のように単語レベルではあるが複数の例が示されたり、「ユェ

ヴゲーニは若者にも中年の人にもポピュラーである。それは多分歌の面白いテキストと関係

がある。例えば、『Kannibaal』-『人食い人種』-という歌で『一人であるのは、人食い人

種に全然便利じゃないな。』と歌われています。」(L26)のように、より具体的な例が示され

たりするようになる。しかし、後続文でさらなる説明を加えることは尐なく、例を示して終

わりということが多いので、内容に応じてもう尐し具体的な説明を加えたり、まとめたりす

ることが大切になるのではないかと思われる。たとえば、「地方によってチーズはとても違

います。例えばオベールニュの特産物はサンネクテールです」(G28)は具体的な例を示すこ

とには成功しているが、「地方差」を示すには尐なくとも複数の場所を提示する必要がある。

一方、「サンネクテール」という特定のチーズのことを取り上げたいのなら、もう尐し具体

的に説明しないとその意図は伝わらない。何のために例を示すのか、その例によって読み手

のイメージを具体的にできるのかどうか、ということを意識しないと B2 の「明瞭で詳細な

テクストを書く」(前掲:p.65)ことは難しいのではないだろうか。なお、例としてあげられ

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るものはカタカナ語であることが多い(書き手にとって身近なものであるせいだと思われる)

が、それが日本人の読者にとっても馴染みのあるものかどうか、また例として挙げたカタカ

ナ語が正確であるかどうかということへの配慮も必要である。

詳細性という点も関しては、先の「パエリアとリゾット」の例のような、単語単位で複数

の例を挙げるような場合は特に注意を促したい。というのは、例を増やすだけでは内容の具

体化にはつながらないからである。先の「パエリアとリゾット」を例にとれば、最も重要な

点である「米を使った料理」であるということが作文の中でうまく説明できていない。ここ

での「たとえば」は、語彙不足を補うために使用しているような印象である。例示で補うの

は一つの補償ストラテジーとも言えるが、学習者が例示に頼りすぎることのないよう、例を

使わず説明してもらうような練習が必要かもしれない。

最後に、例示のバラエティについて付記しておく。「たとえば」と同じ系列のものとして

「具体的には」「実際」「事実」などが挙げられる(石黒、2008)が、置き換えることができ

ないものが多いので、接続詞以外の例示方法(「~のように」「~など」)の提示も必要であ

ると思われる。

2.2 逆接の接続詞 「でも」「しかし」「だが」「けど」2

逆説は「たとえば」とは対照的に、「でも」「しかし」「しかしながら」「だが」等、様々な

バリエーションが認められる。用法別にまとめると、逆接の使用頻度が最も高くなる。石黒

(2009b)が「多くのジャンルにおいて、接続表現の 1 位が逆接での接続表現である」と指

摘しているのも頷ける。

表2 「逆接」レベル別使用者数(人)

レベル 学生数 でも しかし だが けど

~A2 16 名 1 ‐ ‐ 1

A2 / B1.1 5 名 5 ‐ ‐ ‐

B1.1 15 名 2 4 ‐ 1(けれど)

B1.1/B1.2 8 名 3 3 ‐ ‐

B1.2 9 名 ‐ 3 1 1(けれども)

B1.3 2 名 ‐ ‐ 1 ‐

合計 55 名 3 11 10 2 3

表 2 は「逆接」の接続詞のうち出題頻度の高かったものを、レベル別に示したものである。

評価が機関によって異なるものは、A2 / B1.1 のように示し、「けど」「けれど」「けれども」

は1つにまとめた。

ここで注目すべきは「でも」から「しかし」への移行である。CEFR では、A2 で「『そし

て』『しかし』『なぜなら』などの簡単な接続詞でつなげた簡単な表現や文を書く」ことがで

きるとされている(前掲:p.65)。だが、市川(2010)が指摘するように、「しかし」はもとも

と「書きことば的で、話しことばでは改まった場面で使用される」接続詞であるから、ここ

での「しかし」は「でも」のほうが適当ではないだろうか。

B1.2 以上に「でも」が出現しなくなるのは、このレベルの学習者に「しかし」が書き言葉

的であるという意識が働いているためではないかと考えられる。B1.2 以上になると、「だが」

の使用も認められる。

とはいえ、今回の課題が学生新聞の記事であったことを考えると、わざわざ「でも」を

「しかし」に変える必要はなかったかもしれない。身近で個人的なことを(ことに丁寧体で)

書く場合に「しかし」や「だが」を使うと、その部分だけが硬すぎて、文章全体から浮いて

しまう。B1 では「使える」接続詞が増えていくが、文体等のバラつき(アンバランスさ)

は最後まで残るように思われる。それは、たとえば、(「接続詞」ではないが)「~けど」が

B1.3 まで認められることなどからもうかがえる。

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2.3 並列の接続詞「そして」「それから」「また」

表 3 「並列」レベル別使用者数(人)

レベル 学生数 そして それから また

~A2 15 名 5 2 -

A2 / B1.1 5 名 1 - -

B1.1 15 名 2 2 -

B1.1/B1.2 8 名 2 1 1

B1.2 9 名 1 1 1

B1.3 2 名 1 - -

合計 54 名 12 6 2

CEFR において「そして」は「基本の接続表現」「簡単な接続表現」(前掲:p.31、p.139)と

呼ばれている。そして、日本語学習では「一番最初に習う接続詞」(市川、2010)であり、

今回の作文でも、A レベルから積極的に使用されていた。しかし、実際には、B1 レベルで

もうまく使いこなせていない例が尐なくない。たとえば A2/B1.1 の「フランスで隈無くパン

を買うできます。そして、アメリカでアメリカ人がパンを好きになる。」(G25)は「そして」

があってもなくてもうまくつながらない例であるが、読み手は接続詞によって次の内容を予

測するため、余計に混乱してしまう。また、B1.1/B1.2 の「第一回の BD は19世紀にスイス

人を描かれた。そして、一九九〇年に子供用の新聞で小さい BD を出されました。」(G24)は、

「そして」でつなぐにはあまりにも時間の開きが大きすぎ、うまくつなげられずに終わって

いる。

市川(2010)は「2 文接続の文を作らせると、ほとんど間違いが見られない。そのため、

教師も学習者も『そして』は習熟した接続詞であると考えてしまう。しかし、学習者がある

一定の文章をまとめる時には、2 文の、または、それ以上の文と文との関係がつかめないこ

とが多く、したがって、自分がよく知っている(と思っている)『そして』を多用してしま

う傾向がある」と述べ、「そして」の難しさを指摘している。B1 に求められるのは「結束性

のある簡単なテクスト」(前掲:p.139)であるから、「そして」も文章単位で練習することが必

要であろう。

省略できる「そして」もある。B1.2 や B1.3 などになると文全体に流れができるが、「アト

ミウムの高さは百二メートルで、九つのスチールの球からなっている建物である。そして、

その球の中を歩けて、一番高い球から見ると、ブリュッセルの印象的な眺めが見える」

(L10)という文は、後述部分に指示詞があるので、「その球の中は歩けて」だけで十分である。

「そして」には「最後に一つ、大切な情報を付け加える」(石黒、2008)ニュアンスが含ま

れるため、注意が必要である。

2.4 順接の接続詞「だから」「したがって」「それで」「そのため」など

表 4 「順接」レベル別使用者数(人)

レベル 学生

だから したがって それで そのため その結果

~A2 15 名 2 ‐ - ‐ ‐

A2 / B1.1 5 名 1 ‐ 1 ‐ 1

B1.1 15 名 (1) 「それから」と表

‐ ‐ ‐ 1

B1.1/B1.2 8 名 2 1 ‐ 1 ‐

B1.2 9 名 - ‐ 1 2 ‐

B1.3 2 名 ‐ ‐ ‐ ‐ ‐

合計/54 人中 54 名 5 1 2 3 2

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ここでは、CEFR の「なぜなら」に相当すると思われる「順接」の接続詞を取り上げたい。

CEFR 表 3 の一貫性の A2 の記述で「簡単な接続詞」(前掲:p.31)の1つとして「なぜなら」

が挙げられているが、「なぜなら」は硬い表現で、身近なことを話すのに適した表現とは言

いがたい。今回の作文の中には 1 例も見当たらなかった。同じ CEFR の「一貫性」の項では

同じものが「~だから」と訳されているので、この「なぜなら」は必ずしも「なぜなら」で

ある必要はなく、同じグループの接続詞、あるいは「~から」「~ので」などの接続表現の

ことであるとみなしてよいだろう。

「だから」はもっと使用頻度が高いのではないかと予想していたが、接続助詞などで代替

できるためか、それほど多くはなかった。これは、接続詞の使用を避けられるということで

もあるので、接続詞の指定をした上で作文を書かせるなど、接続詞もまた正しく使えるよう

教師側が意識して指導する必要がある。誤用を訂正する際にも、接続詞を変えてしまうので

はなく、最初に選択した接続詞を生かすためにはどうしたらいいかということを考えるのも

1 つの方法だろう。

「だから」は異なるジャンルで幅広く利用できる接続詞であるが 4、形が似ていることか

ら「それから」と混同されやすく 5、また、前後の関係がわかりにくい例が見られる。「それ

から」との混同は「(建物について)たくさん細部があります。それから、何回あそこに行

ってもまだ全部を見ません。」(G21 )のように B1.1 の作文にも認められるので、注意が必要

である。一方、B1 レベルになると「さんかする国はユーロビジョンソングコンテストが外

交的なことだと思っているから、隣の国を支える。だから、このコンテストは隣の国があま

りない国にとってとてもかちにくい。」(L18)のように、「見え見えの後続文脈ではなく、読

み手にとってちょっと意外な後続文脈」(石黒、2008)に成功している例が認められる。「だ

から」はかなり幅広く使用できるので、「それで」や「そのため」などのように後文の形に

制約があるものは、「だから」が使えるようになってから(この段階で)重点的に教えたほ

うが効果的かもしれない。山内(2009)も OPI の調査結果を元に「『それで』は、上級での

使用の多さが際立っていますね。初級ではなく、中級で力を入れて教えたほうがいいのでは

ないかと思います」と述べている。これは口頭表現に関する調査であるが、作文にも共通す

るものがあるように思われる。

ところで、「順接」という意味では同じグループに属するが、「だから」とは系列(用法)

が異なる接続詞である「すると」が 2 例認められたことにも言及しておきたい(G25、L23)。

いずれも正用には至っておらず、B1 でもまだ難しいという印象を抱く。B1.2 の「しかし、

ベルギーの国様はドイツの要請を断った。その時、ベルギーの王国は中立国であったので。

すると第一次世界大戦が始まった。」(L23)の「すると」は客観的な事実だけを述べており、

また、新しいこと(大戦)が起きているという意味では使えそうであるが、「要請を断った

ことで、いきなり世界規模で大戦が始まった」いうニュアンスになってしまい、読み手にか

なり強引な印象を与える。この例の場合には「すると」を「それで」などにすることによっ

て解決できるかもしれないが、「すると」を生かすために、要請を断ったことに対する相手

側の反応を述べるなど、より具体的な情報を補うことも可能である。むしろそのほうが、B2

の「明瞭で詳細なテクストを書くことができる」(前掲:p.65)ということにつながるので

はないかとも思われる。

2.5 B1 から出現する接続詞

上記以外のもので、B1 から出現し、複数の学習者に使用されている接続詞にも言及して

おきたい。置換の「つまり」と話題を転換する接続詞(「さて」「ところで」「それにしても」)

である。

「つまり」は、単語の言い換えと文での言い換えの 2 種類がある。「フレンチ・フライズ

つまりフランスのフライズと言われる」(L24)は一見成功しているように思われるが、「フ

レンチ・フライズ」は正しい日本語ではなく、「つまり」では日本人に通じない可能性があ

る。単語を言い換える場合には特に、「つまり」の前が母語(や英語)にならないように注

意すべきである。

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また、わざわざ説明しなくてもわかるようなことには「つまり」を使わないことも大切で

ある。石黒(2008)は「読み手の理解レベルを低く見られているような印象を受けるおそれ

がある」と指摘しているが、「ベルギーの地域的な料理もある。つまり、ベルギーのそれぞ

れの州によって他の特別な料理の作り方、味や食材があることである。」(L7)というような

例はそれに該当するのではないだろうか。

B1 は「流暢ではないが、言い換えを使いながら表現するだけの語彙」を有するとされる

(前掲:p.31)が、やや否定的に言い換えれば、本来さがしている言葉そのものは知らない

ことが多く、あることを説明するのに何通りもの言い方ができるわけではないことになるだ

ろう。したがってこのレベルで使うと、どこかにぎこちなさが残るのは当然だろうと思われ

る。「つまり」は語彙を増やすことと推敲することでかなり改善できるのではないだろうか。

一方、話題を転換する接続詞は、同系列をひとまとめにして数えても出現数はさほど多く

ない。作文で使用するためには、ある程度の長さの文章が書けなければならず、それまでの

流れを踏まえなくてはならないことから、B1 の「短めの、単純で、バラバラな成分をいろ

いろ結び合わせて、直線的に並べて、繋がりをつける」(前掲:P.139)以上の能力が必要に

なるように思われる。たとえば、「ところで、チョコレートは皆さんに知られているかもし

れない」(L7)は、文は正確であるが、内容的には不自然である。というのは、すでにチョ

コレートについては言及されており、ここで新しい話題として提供する必要がないからであ

る。B1.3 の「そし冬中で外に風がふったり雪がふったりする時はともだちといっしょに食べ

て白ワインを飲んで、うれしいです。さて皆様フランスに来たら、ぜひラクレットを食べて

見てサボワの伝統を体で経験してください」〈G2)も読者への呼びかけの際に「さて」が使

われており使い方は似ているが、これまで説明してきたラクレットの話を踏まえたうえでの

「さて」であり、話題の転換にうまく成功している。このグループの接続詞は、B2 に近い

レベルになると安定してくると言えるのではないだろうか。

2.6 B1 における「しかも」「それに」「そのうえ」―累加-

ここでは、出現数は多くなかったものの、興味深いと思われるものについて言及したい。

接続詞「しかも」「それに」「そのうえ」である。使用者の間では同系列または同じ接続詞を

繰り返し使用する例が認められるため(G4、G14)、このグループの接続詞は、学習者によ

ってその使用頻度に差が出やすい接続詞と言えるかもしれない。

このグループの接続詞は A レベルから認められるが、B1 になってもうまく使いこなせな

いことが多いように思われる。「私は二千三年で十三歳で父に最初の携帯を特ってもらった。

当時にとても若かったが現在、ふつうになってきた。その上、十年前メールが無制限じゃな

くてけいやくがとても高かった。」(G14)「しかし、ベルギーにそのことがまたくない。有名

になるため、ベルギーで、テレビ番組は人気がある。例えば『アイドル』や『X FACTOR』

など。それに、ベルギーの歌手はよく英語で歌うが、日本にほとんどの歌手は日本語で歌う

ことにしっている。」(L12) などは、添加したいという意図は伝わるが、うまく前文とつなげ

られていない例である。市川(2010)は「『また』『そして』が前文と関係なく追加すること

ができるのに対して『それに』はあくまでも前文を踏まえて後文で追加するという意識があ

る。その点では『そのうえ』に似ている」と指摘しているが、これらの接続詞もまた前項の

ものと同様に「短めの、単純で、バラバラな成分をいろいろ結び合わせて、直線的に並べ」

(前掲:p.65) る以上の能力が求められると言えるのではないだろうか。このグループの接

続詞は、文章に説得力を持たせることが期待できるので、B2 に向けて積極的に使用させる

とよいと思われる。

ちなみに、このうちの「しかも」に関して石黒(2008)は「累加の接続詞のなかで難しい

のは『しかも』でしょうか」と述べている。しかし、実際の作文では予想外の効果が認めら

れた。「サンネクテールは私が一番好きなチーズです。しかも夏でサンネクテールを作る農

家でバイトします。」(G29)は正用ではないが、強調的な意味合いが加わることで書き手の喜

びが伝えられる。ただし、書き手自身は意図していなかった可能性があるため、このように

強調的な意味合いを持つ接続詞は、注意が必要であろう。

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2.7 接続詞が出現しない作文

接続詞が全く出現しない作文についても触れておきたい。B1.2 判定を受けた作文の中にも

接続詞を使用しない例が見られた(L25)が、「それは」などの指示詞、接続助詞(「~から」、

「~の」(名詞化)など、様々な結束手段を利用していた。接続詞は多ければいいというわ

けではないので、使いすぎるきらいがある学習者には特に、よく推敲させること、接続詞以

外の結束手段を使う練習をさせることも効果的ではないかと考える。

3 まとめ

B1 の作文についての全体的な印象は次のとおりである。B1.1 までは接続詞の選択がかな

り雑な感じであるが、B1.2 以上になると、接続詞が整理され、基本的な接続詞の使用に関し

てはかなり安定してくる。また、同じ接続詞の繰り返しも尐なくなる。B1.3 になると基本の

接続詞に頼らず、書き手の工夫(オリジナリティ)が生きてくる 6。その一方で、「直線的」

以上の能力が求められる場合には使っても成功しないことが多い。

B1 が B2 に近づくためにどうすればいいかということを接続詞(接続表現)に絞って言う

なら、使える接続詞(接続表現)を増やすこと、そして 2 文ではなく文章をまとめる練習に

重点を置くこと、読み手を想定すること(内容の適切さを考えること、話が飛ばないように

注意すること)などが必要なのではないかと考える。文体やスタイルに多尐ばらつきがあっ

たとしても、結束性が保てるかどうかということが大切だろうと思われるので、様々な接続

詞に挑戦して、文章に深みや広がりを持たせられるようにできるとよいのではないだろうか。

_____________________________

注 1 巻末データには含まれていない。

2 接続詞の分類は、石黒圭(2008)『文章は接続詞で決まる』(光文社新書)を参考。

3 合計数が調査数と異なるのは、判定不可等の理由から除外した作文があるため。表2、表3も

同様。 4 石黒(2009b)の「接続表現の種類別出現頻度」によると、シナリオで 2 位、コラムで 4 位、エ

ッセイで 5 位、小説で 7 位、社説で 21 位。 5

G13(だから→それから)G21(それから→だから) 6 「つまり」「というのは」(L 2) 「だが」「さて」(G2)など。

<参考文献>

Council of Europe、吉島茂/大橋理枝(他)訳・編 (2008) 『外国語教育Ⅱ 外国語の学習、

教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枞 Common European Framework of Reference for

Languages: Learning, teaching, assessment』朝日出版社

庵功雄(2000)『初級を教える人のための日本語文法ハンドブック』(スリーエーネットワー

ク)

庵功雄(2001)『中級を教える人のための日本語文法ハンドブック』(スリーエーネットワー

ク)

石黒圭(2008)『文章は接続詞で決まる』光文社新書

石黒圭(2009a)『よくわかる文章表現の技術Ⅰ‐表現・表記編- 〔新版〕』明治書院

石黒圭(2009b)「接続表現のジャンル別出現頻度について」一橋大学留学生センター紀要12:73-85

石黒圭(2009c)「接続詞の機能領域について」言語文化 46:76-94

市川保子(2000)『続・日本語誤用例文小辞典‐接続詞・副詞‐』(凡人社)

市川保子(2010)『日本語誤用辞典』スリーエーネットワーク

国際交流基金(2002)『日本語能力試験出題基準〔改訂版〕』凡人社

友松悦子・和栗雅子(2007)『中級日本語文法要点整理ポイント 20』(スリーエーネットワ

ーク)

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日本教育学会(2005)『新版 日本語教育事典』(大修館書店)

山内博之〔2009)『プロフィシエンシーから見た日本語教育文法』ひつじ書房

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二節 言語運用能力・機能的能力

CEFR B1 レベルにおける「变述の正確さ」の考察

―機能的言語使用の観点から―

東伴子

1 B1 レベルの「变述の正確さ」とは

1.1 位置づけ

CEFR の提唱するコミュニケーション言語能力は、言語能力・社会言語能力・言語運用能

力から成り立っており、言語運用能力 1 は、さらにディスコース能力と機能的能力に分けら

れる (本章 概要 表2参照 )。本稿で扱う「变述の正確さ」 2(仏語 précision ; 英

語 propositional precision)は、「意図した意味を明らかにするために考えや事柄を言語化でき

る力」(吉島・大橋 2004/2008:143)と定義され、機能的能力の一部に位置づけられる。言語

学習者/使用者の機能的な成功を決定する機能的能力には、「流暢さ」と「变述の正確さ」

という二つの質的要因が提示されているが、前者は口頭での産出に特化され、後者は口頭と

筆記の両方に関わるものである。

1.2 B1 レベルにできること・できないこと

「变述の正確さ」のグリッド(5.2.3.2, 吉島・大島 2004/2008:143)から、B1 をその前後のレ

ベルの記述と照らし合わせ、B1 の具体的なイメージを確認してみよう。発話内容に関して

比較すると、A2 レベルでは「馴染みのある事柄・型にはまった事柄」であり、それ以外の

内容だと伝えられず妥協すると記述されている。一方 B1 の内容は「直接関わりのあること3」

であり、型にはまった内容のみならず、ある程度不測の事態にも対処でき、妥協しないで表

現できる割合が増えると解釈できる。つまり、B1 レベルの中核となる情報内容は「自分が

最も大切だと思う点」「自分が主張したい主な点」の記述であり、状況に応じて比較的自由

に、自己表現が可能になるレベルだと言えよう。これは B1 の「自立した言語使用者」(3.4

吉島・大島 2004/2008:25)という記述とも繋がる。一方、B1 レベルの産出テクストの質的な

レベルを同グリッドからみると、「正確さ」(B1+)、「詳しさ」(B2)、「精確さ」(C1)には欠

けるが「簡単かつ分かりやすい形で相手に理解させることができる」と記載されている。つ

まり、課題達成に必要な機能を言語化するだけの言語能力を持っているが正確さには欠ける

能力である。

1.3 マクロ機能・ミクロ機能

CEFR の機能的能力(5.2.3.2, 吉島・大橋 2004/2008:139)は、単一の発話の機能的な使用

に関するミクロ機能と、発話の連続で構成されているディスコースやテキストの機能的な使

用に関するマクロ機能を区別している。ミクロ機能は、Threshold1990 に整理されている

「同意」「提案」など、主に一文のスピーチアクトに該当するものであり、マクロ機能には、

「描写」、「説得」など、ミクロ機能を組み合わせて遂行する行為が提示されている 4。

2 分析と考察

2.1 分析の方法

以上の点を踏まえ、本稿では、「先生に置手紙を書く」、「日本の学校新聞に自分の国の何

かを紹介する」という 2 種類の書く産出活動のデータを考察する。各データにおける言語使

用の機能的側面に焦点を当て、B1 レベルの学生がどのように機能を遂行しているか、どの

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ような問題点が観察できたかを考えていきたい。質的な能力である「变述の正確さ」は、正

誤で判断するのではなく、理解しやすさなどを連続体として捉える。また、どのように B1

~B1+とレベルが向上していくかも視野に入れ、その指導法について考察を加える。

2.2 置手紙の分析

2.2.1 タスクとしての置手紙と B1 レベル

前述のように B1 を A2 と区別する点のひとつは「型にはまった事柄以外でも対応可能」

という能力であるが、今回学生に課した置手紙を書くというタスクはその能力の達成度を確

かめることのできるタスクである。なぜなら、「先生にお土産を持っていったが、不在だっ

たため、お土産と置手紙を残す」という予測不可能の事態における行為であり、またメモや

置手紙を残すという産出活動は、準備・計画の時間がなく場合によっては辞書も使わずその

場で「手早く書く」という即興性を求められる言語活動だからである。そのような産出条件

でどの程度機能的に目的を達成するようなものが書けるのだろうか。

CEFR の自己評価表によると「直接必要のある領域での事柄なら簡単に短いメモやメッセ

ージを書くことができる。短い個人的な手紙なら書くことができる。例えば礼状など(吉

島・大橋 2004:28)」という言語活動は A2 レベルに分類されている。置手紙も A2 にできる

活動なのだろうか。置手紙は一種のメッセージではあるが、 (1)置いてある品物について説

明 (2)なぜ置いていくかの説明 (3)品物を贈ることを表明するなど、複数の機能を含む活

動であり、A2 より上のスキルが要求されると考える。また今回は先生への手紙ということ

で社会言語的側面を考慮した言語選択も必要である。非言語行為(贈る)に付随する言語行

為なので置手紙の意味が全く伝わらないということはないであろうが、一番言いたいことが

何なのかはっきりわからない、理解に時間がかかるということは起こりうる。

2.2.2 ミクロ機能からの考察

マクロ機能的観点からは、B1 と判定された置手紙は、上記の(1)と(2)が開始部と終了部には

さまれた構成になっており、このような構成を作れるということは言語差を越えた「一般的

能力」(5.1, 吉島・大橋 2004/2008:107)に依存していると思われる。しかし、タスクの達成度

から考えると、分かりやすさ、正確さに問題が生じる例も観察され、それはミクロ機能の言

語化に問題があるのではないかと考える。以下 5 つの事例から置手紙というタスク達成に必

要な機能表出はどのような言語形式と関連しているかを考察したい。

【事例 1】先生へ、(開始部)旅行から帰ってきました。そして、これは京都から持って来

たおみやげです(1)。どうぞ召し上がってください(3)。 名前(終了部)(L9)

【事例 2】○○先生へ いつも御世話になっております。(開始部)つくえにおいていまし

たふくろはフランスから持って来たおみやげです(1)。お口にあうかどうかわかりませんが、

どうぞ食べてください (3)。名前(終了部)(G2)

【事例 3】先生へ(開始部)休みに旅行へ行った時、先生におみやげをお買いしました(1)。

今、先生はいらっしゃいませんけどそのおみやげをお受けになってください(2)(3)。どう

ぞよろしくお願いします。名前(終了部)(L2)

【事例 4】こんにちは先生!○○です(開始部)。休みで京都を見学し、たくさんお寺を見

ました。楽しかったです。先生におまもりを買いていただきます(1)、きょういんしつに行

きますが、先生はいませんからここにおいていきます(2)。どうぞ受け入れてください(3)。

名前(終了部)(G28)

【事例 5】先生へ(開始部)きのうは京都へ行ってきました。それから おみやげを持ってき

ました。小さい能の面です。えんげきがとても好きです。能はとてもおもしろいと思います。

でも、分かることがちょっとむすかしいですね(1)。名前(終了部)(G21)

先生の部屋に残した物が何であるかを説明する発話文には、自分の経験を語る機能 (事例

3,4)とまた置いてあるものが何であるかを説明する機能 (事例 1,2)の 2 種類が見られた。

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どちらも可能だが、事例 1、2 のように連体修飾構文 (京都から/フランスから持って来たお

みやげ) を駆使すれば、経験を明示しつつ品物についての説明ができる。連体修飾構文は、

複数の機能を効果的に遂行するための方略的な構文であることがわかる。また、「帰ってき

た」「持って来た」のような補助動詞の利用も、過去のできごとと現状のリンクが明示化さ

れる方略的な言語リソースであり、B1 レベルの学生が活用するとよい項目であると思われ

る。

事例 5 は、文法的には理解を妨げるものはないが、機能として(1)が長すぎ、置手紙という

より絵葉書などの形態にずれこみ、書き手の一番言いたいことが理解しにくい。また、物を

贈る行為を明示化するために、ほとんどの置手紙には「~てください」という依頼形式で、

勧めるモダリティ機能の発話文が含まれている。対面場面では必ずしも言語化しないが置手

紙のときは、この機能を付け加えたほうが受け取る側も「安心感」がある。事例5のように、

「おみやげ」という語彙使用により贈与する意図は理解できるとしても、最後に勧める機能

がないとテキストの全体的な意図が理解しにくい。

さらに、事例 3 の「先生におみやげをお買いしました」のように形態論的知識(お V する)

はあっても語用論的に適切に使えない例、事例4の「先生におまもりを買いていただきます」

のようにおぼろげな概念(「いただきます」がポライトネスに関連した表現である)は持っ

ていても正確な形式を把握していない例などを鑑みると、言語知識・意識と言語運用能力の

ギャップが B1 の特徴ではないかと思われる。B1+、B2 に進むためには、人間関係の状況に

応じて「正確に言語化する能力」を習得する必要があるだろう。

2.3 学生新聞への記事

これは、自分が一番興味のあることを紹介するというテーマであるから、B1 の学習者に

は遂行できるタイプのタスクである。ここでは、書き手の一番伝えたいこと、強調すること

が伝わりやすい、伝わりにくいケースを取り上げ、学生たちの言語の機能的使用について考

察する。

2.3.1 あると理解を助ける機能

開始部と終了部に、読み手を意識した発話機能を使った事例が多かった。確かに学校新聞

に載せる紹介記事のように読み手の存在感の強い産出活動では、働きかけの機能も重要にな

ってくる。以下 4 つの事例はどれも開始部分に読み手配慮が行われ、終了部分も同じテーマ

で締めくくっている例である。

【事例 6】みなさん、パスクアという休みの日をしっていますか(開始部)。~ パスクワ

にはかぞくにいて、いっしょにたのしんでいます(終了部)。(G7)

【事例 7】サンネクテールと言うのはチーズのひとつな種類です。そのチーズはオーベルニ

ュ地方だけで作くられています(開始部)。~ サンネクテールは私が一番好きなチーズで

す。しかも夏でサンネクテールを作る農家でバイトします(終了部)。(G29)

【事例 8】(タイトルは「ラクレットってなに?」) フランスのアルプスの中にはサボワと

いう地域があります(開始部)。~ さて皆様フランスに来たらぜひラクレットを食べてみ

てサボワの伝統を体で経験してください(終了部)。(G2)

【事例 9】(判定 A レベル)

きょう、とくべつのフランスのたべものについてあしゃべりしたいだおあもいます。ラビホ

ルていうパスタです!そのたべものはグルノーブルのちかくにたべられます(開始部)。~

もんだいはおおみやげにおもうとむりんですから、ゆくりフランスでたべてね!(終了部)

(事例の全文記載なし)

【事例 10】(判定 A レベル)

きょうはゆうめいなフランスの物語についてしょうかいします。このストーリーはおうしの

ほじさま*というのはサンテギュベリのかいった物語です。(開始部)。~ フランス語をべ

んきょうしたら、この物語をよまなければならないです。(終了部)(事例の全文記載なし)

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*ほしのおうじさま

「~という」という言語形式を駆使して日本人読者の認知的状況を考慮している例 (事例 6,

7,8)、「知っていますか」などのように直接呼びかける形式を選んでいる例 (事例 6)が

挙げられる。事例 8 は、タイトルがすでにインターアクション機能を持っており、終了部も

「さてみなさん」と読者に呼びかけ、本人の主張したいことが強く感じられる。一方、事例

8 と事例 9 の書き手は、日本語専攻でなく、学習時間も尐ないため言語的は A レベル判定で

あるが、口頭コミュニケーション技能は比較的高い。産出テキストも理解しにくいものだが

敢えてここに載せた。両方とも開始部にメタディスコース機能の文を選び、終了部にも読み

手に働きかける形のインターアクション性の強いテキストを作っており、言語の不明瞭さと

は対照的に読者配慮度の高い構成となっている。全体の傾向として言えるのは、言語的能力

(語彙文法)が不足している学生は、このような働きかけ機能を多用しているということだ。

~ね、~よなど対人性の高い終助詞の使用も多い。口頭のやり取りに慣れているが、書く産

出活動のノウハウはないということと、線的に事柄を繋げてテキストを構築していくのが難

しいため、インターアクション性の強い発話形式を取り入れるのではないかと思われる。こ

れは自分達の不足するスキルを補完するための方略である。読み手への働きかけ機能を取り

入れること自体はポジティブであるが、B1 レベルでは、書き言葉には話し言葉とは違った

タイプの対話形式もあることに気づかせ、読み手を意識しながらも独話形式でテキストを構

築していく指導が必要ではないかと思われる。

2.3.2 理解を妨げるケース ‐ L1 と L2 の言語形態と言語機能のずれ

B1 の学生が書いたものには、文法的には正しいのだが語用論的な意味が曖昧で、全体的な

理解を妨げるケースが目立つ。ここでは、数例観察された、評価のモダリティー表現(なけ

ればならない・てもいい)に関する問題について考察を行う。

【事例 11】フランス人はよくチョコレートケーキを食べます。美味しくてレシピが簡単だか

らです。バターとブラックチョコレートを溶けらなければなりません。それから卵や砂糖や

小麦粉を混ぜらなければなりません。そして、チョコレートとバターを入れなければなりま

せん。(…) (G22)

事例 11 はレシピの説明であるが、レシピが簡単だと述べた後で、手順を~なければなりま

せんという形式で述べるのはプラグマティックなレベルで論理的ではない。そのような言語

選択行為は次のように説明できるだろう。フランス語ではレシピの説明に下記のような言語

形態を使用することがある。Puis il faut verser les différents ingrédients contenus dans la recette,

ensuite il faut mélanger l’ensemble …(次にレシピのいろいろな材料を入れてください。その

後で全体を混ぜてください)

« Il faut »という非人称構文は義務をあらわす構文だが、現場状況に応じて二次的意味として、

レシピーでの「指示」や、強く「助言」をするという機能がある。しかし、このような機能

を意識せず、 « Il faut =なければならない» というスキーマをあらゆる状況で使用する学習

者が多い。同じことが 「~てもいい」 (許可) と« pouvoir » (可能を表す助動詞)の間でも起こ

ることがある。可能性を表現するときに「~ができます」でなく「~てもいいです」を使う

学習者が多いのは、L1 と L2 の言語形式の同等性に引きずられて、機能の同値関係を考えな

いからである。B1 レベルでは L1 から L2 への表面的な語彙の入れ替えから、機能的に同

等な言語表現を考える訓練が必要であると考える。

3 指導に向けての提言

以上の考察から、B1 レベルの指導において次の点を強調する必要があるのではないかと

考える。

B1 レベルの学習者は、型にはまった会話やテキストではなく、日常生活で起こりうる身

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近なさまざまな状況に対応できる能力が求められる。置手紙などに関しては、ある程度慣習

的なフォーマットを教えることは有意義であるが、不測の事態でも状況に応じて自分を表現

する方向で指導する必要があるだろう。そのためには、既習の言語知識を状況に応じて駆使

できることが必要になる。既習事項を強調し、特定の構文(連体修飾など)を使えば、実際の

言語使用状況でどのような機能が遂行可能なのか意識させるのが大切である。

CEFR の第六章では学習者の言語運用能力を伸ばすためにいくつか教授法の提案がされて

いるが、その中で、「機能、対話のパターン、談話構造を明示的に教え練習する」(吉島・大

橋 2004:169)という提示がある。今回のデータ考察から、このような活動は特に B1 レベルに

適した活動であるという確信を持った。また、「与えるテキストを尐しずつ複雑にし、それ

を L1 から L2 に訳させることによって、順次複雑なテクストを産出させる」(吉島・大橋

2004:169)と言う活動も有効なのではないかと考える。いわゆる「直訳」をしがちな学習者に、

常に言語使用のコンテクストを念頭に置き L1 とL2の機能的同等性を考えさせる習慣をつ

けるのは B1 の学習者にとって大切なことである。例えば辞書を使って、コンテクストにあ

った語彙、表現、などの言語形態を選択させる練習もよいだろう。

最後に、B1 レベルでは、語彙、形態論、統語などの言語知識の習得そのものよりも、既

習事項を状況に応じて正確に適切に使用する能力の育成に焦点を置き、活用できる方略の習

得、またさまざまなスキーマの活性化などにも力を入れるべきであろう。

________________________

注 1

言語運用能力はフランス語では compétence pragmatique(語用論的能力)である。フランス教育

省関連 Eduscol のウェブサイトではこの能力を「行動主義的アプローチや話者が特定の目的を遂

行するためのディスコース方略を参照し、話者と発話場面を結び付けるものである(拙訳)」

(éduscol )と定義している。 2 規範的な意味での「文法の正確さ」(吉島・大橋 2004/2008 :124)(仏語 correction grammaticale,

英語 grammatical accuracy)とは異なることに注意したい。 3 フランス語版では « une information simple et d’intérêt immédiat » (Conseil de l’Europe 2001 : 101)

であり、発話現場に関連のある情報と解釈できる。 4 CEFR では、ミクロ機能とマクロ機能についての記述は詳しくされていないが、ミクロ機能と

はある機能を遂行するのにどのような構文が使えるか、マクロ機能とはある機能を遂行するのに

どのようなミクロ機能が組み合わせられるかを考えるための概念と解釈してよいだろう。

<参考文献>

Beacco, J-C. et al. (2011) Niveau B1 pour le français – Un référentiel, Didier.

Conseil de l’Europe (2001) Cadre européen commun de référence pour les langues, Didier.

Kerbrat-Orecchioni, C. (2001) Les actes de langages dans le discours, Nathan.

Tagliante Ch. ( 2005) L’évaluation et le cadre européen commun, CLE International.

Van Ek, J.A, Trim, J.L.M. (1991) Threshold 1990, Cambridge.

宮崎和人他(2002)『モダリティ』, くろしお出版.

吉島茂・大橋理枝 他(訳) (2004/2008) 『外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通

参照枞』, 朝日出版社

Eduscol http://eduscol.education.fr/cid45678/cadre-europeen-commun-de-reference.html (2012 年 2

月閲覧)

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第二部

学習者の言語活動に関するアンケート

―行動中心アプローチに基づくカリキュラムの構築に向けて―

櫻井直子

1 アンケートの目的と概要

1.1 カリキュラムの基本方針

CEFR は、「行動中心主義(吉島・大橋2004:9)」を採用し、CEFR の理論的背景として詳

細に説明している。(前掲:9-10)その考え方をまとめると、次のようになるだろう。まず、

学習者を「社会的存在」と捉え、行動領域の中で課題を遂行・完成することを要求されてい

る社会成員と見なしている。そして、その社会的存在である学習者は、各自の能力を駆使し

て課題遂行のための言語活動を行い、その際、テクストの産出、あるいは受容という言語処

理に携わる。その言語活動は言語学習も含む包括的なものと捉えている。その活動で作られ

るテクストは生活領域、テーマに関連し、さらに、課題を遂行する際には、最も有効と思え

る方略を使っている。

また、CEFR によると、一般的な言語教育の重点は、学校教育の段階によって異なるとさ

れている(前掲:182)。つまり、小学校レベルでは一般的能力、中等教育ではコミュニケー

ション言語能力の形成と発展が、一方、成人(1学生・社会人)レベルでは、習得した能力

が具体的な場で機能することが目標となっている。しかし、CEFR は「これら二つを相反す

るものとして扱うのではなく、相互に関係するものと捉え、二つが実際には相補的であるこ

とを示そうとする(同上)」立場を取っている。

前者の目的を言語構造的能力の発達、後者の目的を言語運用能力の向上と捉えると、両者

は分けられるものではなく表裏一体のものと解釈した。そして、これらの CEFR の考え方を

カリキュラムに反映するに当たって、「学習者が社会で遂行すべき課題を抽出し、それを生

活領域・テーマに分け、その課題遂行に必要である言語知識を指導項目として取り上げてい

く」という方針に基づき、カリキュラムの構築にあたることにした。

1.2 言語活動アンケートの必要性

上述の立場からカリキュラムを作成するにあたり、実際に学習者が日常生活においてどん

な課題に直面しているのか知る必要があった。そこで、学習者の日本語使用場面に関する言

語活動調査を実施することにし、そのアンケート作成に取り掛かった。できるだけ多くの学

習者の言語活動を調べるため量的調査が適切と考え、データ処理の簡便さからオンラインア

ンケート形式を採用した。2010年11月・12月にプレ・アンケートを行いその結果を本調査へ

の参考とした(2010年度活動報告書参照)。

1.3 本アンケート調査の実施

CEFR を常に参照することを心がけ、プレ・アンケートでは生活領域・テーマとして

J.A.van Ek ,J.L.M.Trim(1998)の The objective:extended characterisation にある23の日常生活で

遭遇可能な場面(前掲:12-19)を用いた。しかし、プレ・アンケートの結果、アンケート

票への反省点として、類似場面の違いがわかりにくい、例示に具体性が欠けている、また例

示されている活動が現代的でない、「活動の経験がある」という回答だけだったためどの言

語活動かわからない、また現在多く行われているインターネット上の活動が含まれていない

などが挙がった。そこで、これらの点を踏まえアンケート票を次のように作り直した。

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まとめられる場面は1つにして16の場面に絞り、Domain とした。

場面の表現を簡潔にしわかりやすくした

回答は各技能ごとに経験したことがあるかを答える形式にした

現代の生活に合った活動例を各場面の各技能に加えた。

その際に、CEFR のグリッドを見て、B1の活動と思われるものをきるだけ優先的に記載

し、具体化するにあたって Liemberg E.& Meijer (2004)も参照した。

仲介活動1に関しては別立てにして、カリキュラム作成の参考にすることにした。

欧州での日本語教育では来日経験のある学習者とない学習者、また今後日本に行く可能

性がある学習者とない学習者がいる。そのため、構築予定のカリキュラムには日本での

活動だけでなく、積極的に欧州での活動を加えることにしている。それは CEFR の「行

動中心」の考え方に沿ってカリキュラムを作成するのであれば、欧州の学習者が遭遇す

る可能性が高い通訳・翻訳などの仲介活動を取り入れる必要が出てくると考えたためだ。

アンケートは結果の信頼性を保持するため、簡便性に留意し回答者の負担を減らすようプ

ロフィール以外は書き込みをなくしクリックだけで回答できるようにした。さらに、スクロ

ールを最小限にするために具体的な活動例はポップアップで自動的に表示した。 そして、

2011年10月から12月にかけてオンラインで調査を行った。オンラインアンケート画面の一部

を下記に提示する。

図1 アンケート冒頭依頼文

図2 プロフィール調査場面

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図3 アンケート回答画面 一部

図4 活動のところにポップアップで活動例を表示

2 アンケート調査の結果と考察

2.1 調査の実施

このアンケートは2011年10月から12月にかけて実施した。学習者を成人(学生や社会人)

と設定したため、調査対象を高等教育機関、成人向け言語教育機関に絞り、中等教育機関は

含めなかった。また、欧州の学習者の実態を知りたかったためさらに欧州の機関とした。欧

州25機関の協力を得、調査を行った。

2.2 調査結果と考察

調査の全回答数614人で、そのうち滞日経験者は246人、滞日未経験者は368人であった。

プロジェクトでは、調査結果をこの3つのカテゴリーに分けて集計し、分科会・合同会議で

意見交換を行った。意見交換では、実際に学習者が日本語で言語活動を行った頻度に着目し、

その具体的な活動内容を考え、その活動をどのようにカリキュラム、教室活動へ結び付けて

いけるかを検討した。以下、言語使用順に出された考察を示す。(調査結果の詳細は本稿末

の資料1を参照されたい。)

最も日本語使用経験が多かったは domain15の communication during free-time であった。

300~400人で回答者の半数以上にあたり、4技能にバランスよく多かった。インターネット

の活動も257人と多い。インターネット上の具体的な活動はフェイスブック、メール、ネッ

トでのレシピ検索、スカイプでの会話、ドラマ視聴などが挙げられるだろう。学生の言語使

用場面はこの個人的領域に集中しているので、カリキュラム作成時にもこの分野に関する活

動・教材を開発する必要があると思われる。また、友達言葉・若者言葉がこの活動から自然

に導入されていることが予想されるので、待遇表現などレジスターも含めて、誰が誰にどの

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場面で使用する表現かなどという運用に関する指導が求められるように思われる。読み・書

きという筆記活動の比率も他の Domain と比べて高い。実用的なもの、さらには、小説や

様々な趣味に関する雑誌なども考えられる。教材作成時にはインタビューを行い教材として

取り入れるものを明らかにすることが必要であろう。また、この Domain では滞日経験のな

い人のほうがインターネットでの活動が多い。オンラインゲームなどが考えられるがこの点

もインタビューなどでさらに調査したい。

次に多いのが Domain12の educational services as a student であった。これも4技能バランス

よく回答されている。事務の人との会話、日本人教師・日本人チューターとの会話、母語の

違う学生同士の会話などが想定できる。この Domain は昨年の試行アンケートの際には尐な

かったが、これは本調査では例として教室活動に近いものも挙げたためであろう。

次は、Domain16のパーティーの場面。これは話す・聞くの口頭活動が中心であった。着い

たときの挨拶、遅れたときの詫び、帰る際のお礼の言い方などの表現を指導項目として挙げ

られるだろう。また、何を持っていくか、時間通りに行ったほうがいいのかなど社会的慣習

に関する情報も教える。簡単なスピーチの活動として、留学が終わってお別れ会での短いス

ピーチは学習者に最も身近な活動となるのではないか。また、結婚式の日本・欧州比較のよ

うな意見交換も学生の興味を引くように思われる。さらにスピーチでの忌み言葉を学ぶ、寄

せ書きを書くという活動も教室活動に組み入れられよう。一方、この場面でのインターネッ

ト活動もある。ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)などを用いた活動だろうと予

想される。

次は Domain 5と Domain 6の食事とショッピングとなった。これも口頭活動が多い。ただ

買い物の場面では「読む」も38パーセントある。商品の紹介を比較検討する、機能・値段な

どを比べるといった活動が考えられる。また、買い物に関するインターネット活動は

Domain15と Domain12に次いで、3番目に多い。オンラインショッピングにおいては、商品に

関する情報、購入、支払い方法、発送法などに関する情報を読み取る必要がある。書く活動

としては、SNS を活用したお勧め商品を紹介する、以前持っていたものと比べてどこがいい

というような意見文を書く活動が考えられる。また、アフターサービスに関する情報をサイ

トで読み取る活動は、テクスト自体は難解だが、情報取りという活動なら B1の学習者でも

可能であろう。またメールで、問い合わせる、苦情を言うなどのタスクも必要に応じて活動

として加える。また、オンラインショッピングは、滞日経験のない学習者も活動経験がある

としており、学習者の動機付けも高く、活発な教室活動になると思われる。まず、日本語の

キーワードで該当サイトを探すことから始める。最近のサイトはどこまでが広告でどこが実

際のコンテンツかわかりにくい場合も多いので、日本語での情報探しのよい練習になる。特

に、自立した言語使用者を目指す B レベルの学習者にとって、自分の欲しいものを探し出し

注文するというタスクはこのレベルの言語活動として適していると思われる。

次は Domain 8の美術館・劇場での活動経験が多かった。「書く」以外は30パーセント以上

であった。具体的な活動として作品の紹介・パンフレット、および、美術館に関する情報を

読む活動があるだろう。また、この Domain では滞日経験のない学生も仲介活動を行ってい

る。その内容を考えると、切符購入や道案内だけでなく、作品の説明なども含まれ B1の活

動として適当なものが考えられる。また、B1の課題の一つであるレジスターの意識化にも適

した場面であるため、カリキュラムの作成時に加味したい。また、この分野では語彙の指導

も重要になる。従来、寺・浮世絵など日本文化に付随する語彙の指導は行われていたが、欧

州の文化に関する語彙指導は充分に行われてきたとは言えない。一例として、鐘楼・広場・

市庁舎・修道院・湖・大聖堂・運河などが挙げられる。また、地名・人名をカタカナ語でど

う書くのかという課題は促音・長音の位置など難しい場合が多い。また、欧州語では道路を

大きさによって言い分けているが、それも日本語の「大通り、通り、道路 石畳」のどれに

当たるか、さらに、塔の名前一つにしても「エッフェル塔・東京タワー・スカイツリータワ

ー」と呼称が決まっており、自分の国・地域の観光地、美術館を案内する課題は語彙能力に

頼るところが大きいと考えられる。中には、辞書を調べてもコンテクストがないとはっきり

わからない場合もある。例えば「水が溜まっている場所」は「沼・池・湖」があるが、日本

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語と欧州語ではそのニュアンスに違いがある。このような点はコラムとしてカリキュラムに

入れられるのではないか。

最後に回答は多くないが4技能どれもバランスがとれている Domain 11と Domain14も見た。

これら、医療場面・仕事場面では4技能が必要であるということがわかる。またこれらの場

面では具体的で特定の語彙が必要となる。学校や会社で健康診断を受ける可能性も考えられ

るので問診表に持病を記載するなどの課題が挙げられる。また、滞在経験がない学習者の回

答にも口頭コミュニケーションの経験があるとしたものがあった。授業の活動以外に欧州で

の指圧院などでのコミュニケーション活動が考えられる。

次に仲介活動に注目して考察した。ここで、滞日体験のある学習者にもない学習者に共通

して一番多かったのは domain15の communication during free-time であった。日本で日本人と

活動をする、あるいは、休暇で欧州に来ている日本人と一緒に何かする、日本語が話せない

家族との仲介などが考えられるだろう。次も両者に共通して Domain 12であった。これらの

場面をカリキュラムに組み込むことが必要だと考えられる。その後は Domain 5/6で食事・買

い物の場面も両社に共通して多いが、Domain 8美術館・博物館の場面、Domain16パーティー

の場面は滞日経験者には Domain8の方が多いが、滞日経験がない学生は Domain16の経験の

方が多かった。

3. カリキュラム試案

これらの結果を考慮に入れ、カリキュラム試案の策定を始めた。

3.1 カリキュラムの形式

カリキュラム策定に当たり、下記の点を確認し作成に着手した。

このカリキュラムは CEFR を基づいて構築する。そこで、CEFR を参照して作成したア

ンケート票の Domain をテーマとして用いること

前年度の活動から、学習者のニーズ、機関の特徴にはばらつきがあり、それによって

指導内容が大きく変わることがわかっているため、テーマごとのモジュール方式を導

入し、機関の形態(クラス形式・個人形式)、学習者の目的(留学・仕事・趣味など)

に応じて、教師が適宜選び取れるようなカリキュラムの作成を目指すこと

具体的な教室活動を検討する際に、CEFR を参照して、B1レベルの活動になることを

念頭に置くこと

1.3で述べたように、学習者の言語使用場面・活動から構築するためアンケートの結果

も参照し、学習者の実際の言語活動から外れないように心がけること

従来の教科書は日本での活動が中心になりがちであったが、日本に行ったことがない

学習者、また、行くことがないかもしれない学習者も念頭に置き、欧州での言語活動

をカリキュラムに組み込むこと

3.2 カリキュラム試案の作成

まず、アンケート票の16の Domain をその場面での日本語使用者数、及び、活動例を見な

がら、ほかの Domain と一緒になるもの、単独のものに分けて、10のテーマ(公的機関で、

生活の準備、旅行、消費社会、余暇、健康、教育、仕事、式典/集まり、食文化)を設定し

た。そして、各テーマが1つのモジュールと考え、そのモジュールの場面で B1レベルの言

語活動を考え教室活動例を検討した。その後、それらのばらばらの活動を場面ごとにまとめ

ていった。まとめる際には、CEFR 表5「言語使用の外的コンテクスト:能力記述文のカテゴ

リー(吉島・大橋2004:48)」を参照した。

また、仲介活動に関しても、当初、様々な意見が出されたが、どの活動であってもそれを

仲介活動として教室活動を行うことは可能であることに気づいた。そこで、具体的な仲介活

動の設定は、カリキュラムに指導項目を含めていく次の段階で、アンケート結果を参照して

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適宜加えていくこととした。カリキュラムの試案はまだ着手したところではあるが、本稿末

に参照として資料2として載せた。

3.3 CEFR の文脈化に求められるもの

本年度のカリキュラム試案の策定の経験と、昨年2010年度に行ったカリキュラム作成の行

き詰まりの経験から、CEFR を文脈化してカリキュラムを作成する際に求められるものが見

えてきた。

初年度の活動の一環として、2010年6月に2日間にわたって合同でカリキュラム作成を行っ

た。まず、カリキュラムのテーマの設定を検討し、CEFR 4.2で挙げている14のコミュニケー

ションのテーマ(吉島・大橋:53-54)を採用することした。そして、シュミレーションと

してプロジェクトメンバー16名が4つのグループに別れ、14のコミュニケーションのテーマ

から1つのテーマを選びカリキュラム作成を試みた。まず、それぞれそのテーマで考えられ

る課題を決め、その課題が日本で遂行される場面と欧州で遂行される場面を設定した。その

後、課題遂行に求められる言語活動を CEFR4章を参照しながら書き込み、同時に、指導項

目を CEFR5章から抽出し加えていった。(2010年度活動報告書:10-12)しかし、この活動か

ら、設定した課題が学習者に必要なものかどうかわからない、グループごとにばらばらの活

動を行っても結果として言語活動が網羅されるのかどうかわからない、カリキュラムの内容

が本当に B1レベル相当か明確でないため各グループで作成したものが同じレベルかどうか

わからない、などの意見が出され行き詰ってしまった。その最も大きな原因は、カリキュラ

ム作成を各人が自分の知識・経験を拠り所として行ったことに起因していたと思われる。

一方、今回のカリキュラム試案では、上記のような疑問を持つことなく作業が進められた。

その要因を検討してみると下記の点が挙げられるだろう。

それぞれが CEFR を読み込みその理解を深めており、カリキュラムに対する共通の目

的意識があったこと

産出活動の分析をそれぞれ行っていたことから B1レベルの理解が深まっていたこと

全ての活動が様々な連携を保ちながら行われたことによって多面的な視点からの検

討に基づき活動が実践されたこと2

アンケート票からモジュールテーマを絞り込んだため、メンバー全員が、カリキュ

ラムの大枞を認識できたこと

学習者の言語活動調査の結果を踏まえたため、選び出した課題が学習者が社会で遂

行することを求められる言語活動と確証が持てたこと

以上のことから、CEFR の文脈化には、その理念を理解し常に立ち返り参照すること、そ

して、いろいろな立場から言語教育を考え多様な可能性に対応できるよう考えていくこと、

及び、学習者の産出物を細かく分析し現実の言語活動から離れず常に目を向けていくことが

不可欠だろうと考える。

4. カリキュラムの完成に向けて

カリキュラム完成には現在策定中のカリキュラム試案(資料2)に指導項目を選定し加え

ていく必要がある。それはある課題(教室活動案)を遂行するために必要な言語能力、つま

り、表現・文型・語彙などとなる。今後、その指導項目を考えるにあたって、2つの視点が

必要であると考えている。1つの視点は、カリキュラムの各課題が B1レベルの熟達度でどの

ように達成されるのかを鑑みて指導項目を抽出する視点である。もう1つの視点は選定した

指導項目全体を見渡し、B1に必要と考えられる項目を充分に満たしているかを検討する視点

である。

プロジェクトでは昨年度から「表現文型マップ」の制作に着手している(2010年度報告書

参照のこと)。そのマップには、表現文型が、A から C のレベルごとに、言語機能別に分類

されている。今後、既に行った学習者の口頭産出能力・筆記産出能力の分析結果、来年度実

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施の口頭受容能力・筆記受容能力に関する実験とその分析結果を、日本語教育という観点か

ら見直して、このマップに織り込んでいく予定である。このマップの作成を通し、言語活動

と B1レベルの熟達度を考えた網羅的な指導項目の選定が行えるのではないかと考えている。

そして、プロジェクト最終年である2014年にはいくつかのモジュールに関してだけでも教材

を含めたカリキュラムの完成を目指したい。

謝辞

アンケート調査を実施するにあたり、たくさんの先生方の温かいご協力をいただきました。

心よりお礼申し上げます。

_____________________________

1.仲介活動はあまり馴染みのない用語だが、CEFR では次のように定義されている。「受容的活動、

産出的活動のどちらの場合でも、書き言葉でも口頭でも、何らかの理由で直接の対話能力を持た

ないもの同士の間のコミュニケーションを可能にする(吉島・大橋:15)」活動で、「第三者が直

接入手できない原資料が表現するものを、翻訳、通訳、書き換え、要約または記録の形で与える

のである(同上)」。さらに、CEFR は仲介活動を、受容的言語活動、産出的言語活動、(言葉の)

やり取りと並ぶ言語活動の一つと規定した上で、その重要性を「仲介の言語活動は既存のテクス

トの再構成であり、現代社会における通常の言語機能の中でも重要な位置を占める。(吉島・大

橋:15)」と明示している。

2.連携の成果については櫻井(2011)参照のこと

<参考文献>

櫻井直子・東伴子(編)(2011)『CEFR B1言語活動・能力を考えるプロジェクト 2010年

度活動報告書』B1プロジェクトチーム http://japanologie.arts.kuleuven.be/node/8566/

櫻井直子(2011)「『CEFR(言語のための欧州共通参照枞)B レベルの言語活動・能力を考え

るプロジェクト』における連携とその成果」『WEB 版実践研究フォーラム報告』日本語

教育学会 http://www.nkg.or.jp/kenkyu/Forumhoukoku/2011forum/2011_P12_sakurai.pdf

吉島茂・大橋理枝(訳編)(2004)『外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ参照枞』

朝日出版 Liemberg E.& Meijer (Ed)(2004),Taalprofielen, Nationaal Bureau Moderne Vreemde Talen

van EK J .A. & Trim J.L.M. (1998)Threshold 1990,Cambridge University Press

Page 78: CEFR B1 言語活動・能力を考えるプロジェクト - KU Leuvenjapanologie.arts.kuleuven.be/bestanden/B 1 project.pdfKatholieke Universiteit Leuven ルーヴァン・カトリック大学

76

資料1 学習者言語活動調査 結果

(資料 1.1 全員、資料 1.2 滞日経験あり 資料 1.3 滞日経験なし)

This survey has been filled out by 614 students.

資料1.1 all

Domains

Have you ever used Japanese in

this domain performing

speaking, listening, writing (e.g.

form, letter, e-mail) or reading

activity?

Have you ever

helped a person

using Japanese in

this domain (e.g.

interpreting,

translating, guiding

etc)

Have you ever used

Japanese on the

internet in this

domain e.g. looking

for information or

doing online

activities etc.

1. Contacts with officials:

immigration, custom

officers, security officers

at the airport or at a town

office etc.

Speaking 194 students (32%)

71 students (12%) 125 students (20%) Writing 85 students (14%)

Listening 189 students (31%)

Reading 124 students (20%)

2. Contacts with officials:

police, traffic wardens

Speaking 122 students (20%)

33 students (5%) 21 students (3%) Writing 21 students (3%)

Listening 132 students (21%)

Reading 49 students (8%)

3. Arrangements for

accommodation : as

visitor e.g. at a hotel, at a

travel agency etc.

Speaking 184 students (30%)

75 students (12%) 140 students (23%) Writing 96 students (16%)

Listening 179 students (29%)

Reading 153 students (25%)

4. Arrangements for

accommodation:e.g. for an

apartment, a house, a

student dormitory, a host

family

Speaking 132 students (21%)

51 students (8%) 101 students (16%) Writing 97 students (16%)

Listening 139 students (23%)

Reading 128 students (21%)

5. Arrangements for meals

e.g. at a restaurant

Speaking 268 students (44%)

136 students (22%) 89 students (14%) Writing 39 students (6%)

Listening 245 students (40%)

Reading 200 students (33%)

6. Shopping

Speaking 266 students (43%)

117 students (19%) 168 students (27%) Writing 66 students (11%)

Listening 245 students (40%)

Reading 234 students (38%)

7. Using transport e.g. at a

rent-a-car company, at a

trainstation, at a gasstation

etc.

Speaking 156 students (25%)

67 students (11%) 67 students (11%) Writing 21 students (3%)

Listening 155 students (25%)

Reading 127 students (21%)

8. Visiting public places:

museums, theatres,

stadiums, discos etc

Speaking 196 students (32%)

83 students (14%) 102 students (17%) Writing 24 students (4%)

Listening 209 students (34%)

Reading 190 students (31%)

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77

9. Using public services:

at a post office or a bank.

Speaking 184 students (30%)

44 students (7%) 60 students (10%)

Writing 103 students (17%)

Listening 179 students (29%)

Reading 152 students (25%)

10. Using public services:

public telephone, internet

café, international call

office

Speaking 92 students (15%)

15 students (2%) 28 students (5%) Writing 33 students (5%)

Listening 100 students (16%)

Reading 72 students (12%)

11. Medical services: at

the doctor’s, hospital,

dentist’s, pharmacy, etc.

Speaking 117 students (19%)

23 students (4%) 16 students (3%) Writing 60 students (10%)

Listening 118 students (19%)

Reading 83 students (14%)

12. Educational services:

as a student

Speaking 309 students (50%)

128 students (21%) 193 students (31%) Writing 295 students (48%)

Listening 321 students (52%)

Reading 306 students (50%)

13. Educational services:

as a parent at a school,

music school,

sportscentre, arts

academy, etc.

Speaking 35 students (6%)

16 students (3%) 14 students (2%) Writing 16 students (3%)

Listening 31 students (5%)

Reading 25 students (4%)

14. Communication at

work: regarding

employees, employers,

student jobs or applicants

for a job.

Speaking 85 students (14%)

29 students (5%) 45 students (7%) Writing 61 students (10%)

Listening 83 students (14%)

Reading 80 students (13%)

15. Communication

during free-time

Speaking 402 students (65%)

186 students (30%) 258 students (42%) Writing 339 students (55%)

Listening 400 students (65%)

Reading 350 students (57%)

16. Communication at a

party as a host or a guest

(at home, a reception,

wedding ceremony, etc.)

Speaking 234 students (38%)

77 students (13%) 36 students (6%) Writing 60 students (10%)

Listening 211 students (34%)

Reading 81 students (13%)

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78

This survey has been filled out by 614 students.

資料1.2 experience in Japan

Domains

Have you ever used Japanese in this

domain performing speaking, listening,

writing (e.g. form, letter, e-mail) or

reading activity?

Have you ever

helped a person

using Japanese

in this domain

(e.g.

interpreting,

translating,

guiding etc)

Have you ever

used Japanese on

the internet in

this domain e.g.

looking for

information or

doing online

activities etc.

1. Contacts with officials:

immigration, custom

officers, security officers

at the airport or at a town

office etc.

Speaking 173 students (28%)

51 students (8%) 87 students (14%) Writing 71 students (12%)

Listening 158 students (26%)

Reading 95 students (15%)

2. Contacts with officials:

police, traffic wardens

Speaking 109 students (18%)

28 students (5%) 15 students (2%) Writing 15 students (2%)

Listening 110 students (18%)

Reading 35 students (6%)

3. Arrangements for

accommodation : as

visitor e.g. at a hotel, at a

travel agency etc.

Speaking 161 students (26%)

62 students

(10%) 115 students (19%)

Writing 83 students (14%)

Listening 141 students (23%)

Reading 117 students (19%)

4. Arrangements for

accommodation:e.g. for

an apartment, a house, a

student dormitory, a host

family

Speaking 115 students (19%)

42 students (7%) 74 students (12%) Writing 84 students (14%)

Listening 114 students (19%)

Reading 96 students (16%)

5. Arrangements for meals

e.g. at a restaurant

Speaking 203 students (33%)

102 students

(17%) 59 students (10%)

Writing 20 students (3%)

Listening 183 students (30%)

Reading 138 students (22%)

6. Shopping

Speaking 212 students (35%)

91 students

(15%) 79 students (13%)

Writing 24 students (4%)

Listening 191 students (31%)

Reading 145 students (24%)

7. Using transport e.g. at a

rent-a-car company, at a

trainstation, at a gasstation

etc.

Speaking 139 students (23%)

62 students

(10%) 60 students (10%) Writing 17 students (3%)

Listening 134 students (22%)

Reading 107 students (17%)

8. Visiting public places:

museums, theatres,

stadiums, discos etc

Speaking 162 students (26%)

62 students

(10%) 71 students (12%)

Writing 15 students (2%)

Listening 166 students (27%)

Reading 135 students (22%)

9. Using public services:

at a post office or a bank.

Speaking 163 students (27%)

38 students (6%) 55 students (9%) Writing 89 students (14%)

Listening 155 students (25%)

Reading 130 students (21%)

10. Using public services:

public telephone, internet

café, international call

Speaking 78 students (13%)

13 students (2%) 22 students (4%) Writing 24 students (4%)

Listening 79 students (13%)

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79

office Reading 53 students (9%)

11. Medical services: at

the doctor’s, hospital,

dentist’s, pharmacy, etc.

Speaking 92 students (15%)

19 students (3%) 13 students (2%) Writing 46 students (7%)

Listening 92 students (15%)

Reading 60 students (10%)

12. Educational services:

as a student

Speaking 152 students (25%)

62 students

(10%) 80 students (13%)

Writing 139 students (23%)

Listening 151 students (25%)

Reading 141 students (23%)

13. Educational services:

as a parent at a school,

music school,

sportscentre, arts

academy, etc.

Speaking 21 students (3%)

12 students (2%) 7 students (1%) Writing 7 students (1%)

Listening 17 students (3%)

Reading 12 students (2%)

14. Communication at

work: regarding

employees, employers,

student jobs or applicants

for a job.

Speaking 61 students (10%)

21 students (3%) 26 students (4%) Writing 44 students (7%)

Listening 58 students (9%)

Reading 49 students (8%)

15. Communication

during free-time

Speaking 208 students (34%)

103 students

(17%) 116 students (19%)

Writing 163 students (27%)

Listening 205 students (33%)

Reading 174 students (28%)

16. Communication at a

party as a host or a guest

(at home, a reception,

wedding ceremony, etc.)

Speaking 145 students (24%)

43 students (7%) 17 students (3%) Writing 38 students (6%)

Listening 136 students (22%)

Reading 49 students (8%)

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80

This survey has been filled out by 614 students.

資料1.3

no experience in Japan

Domains

Have you ever used

Japanese in this domain

performing speaking,

listening, writing (e.g. form,

letter, e-mail) or reading

activity?

Have you ever helped a

person using Japanese

in this domain (e.g.

interpreting, translating,

guiding etc)

Have you ever used

Japanese on the

internet in this

domain e.g. looking

for information or

doing online activities

etc.

1. Contacts with

officials: immigration,

custom officers,

security officers at the

airport or at a town

office etc.

Speaking 21 students (3%)

20 students (3%) 38 students (6%) Writing 14 students (2%)

Listening 31 students (5%)

Reading 29 students (5%)

2. Contacts with

officials: police,

traffic wardens

Speaking 13 students (2%)

5 students (1%) 6 students (1%) Writing 6 students (1%)

Listening 22 students (4%)

Reading 14 students (2%)

3. Arrangements for

accommodation : as

visitor e.g. at a hotel,

at a travel agency etc.

Speaking 23 students (4%)

13 students (2%) 25 students (4%) Writing 13 students (2%)

Listening 38 students (6%)

Reading 36 students (6%)

4. Arrangements for

accommodation:e.g.

for an apartment, a

house, a student

dormitory, a host

family

Speaking 17 students (3%)

9 students (1%) 27 students (4%)

Writing 13 students (2%)

Listening 25 students (4%)

Reading 32 students (5%)

5. Arrangements for

meals e.g. at a

restaurant

Speaking 65 students (11%)

34 students (6%) 30 students (5%) Writing 19 students (3%)

Listening 62 students (10%)

Reading 62 students (10%)

6. Shopping

Speaking 54 students (9%)

26 students (4%) 89 students (14%) Writing 42 students (7%)

Listening 54 students (9%)

Reading 89 students (14%)

7. Using transport e.g.

at a rent-a-car

company, at a

trainstation, at a

gasstation etc.

Speaking 17 students (3%)

5 students (1%) 7 students (1%) Writing 4 students (1%)

Listening 21 students (3%)

Reading 20 students (3%)

8. Visiting public

places: museums,

theatres, stadiums,

discos etc

Speaking 34 students (6%)

21 students (3%) 31 students (5%) Writing 9 students (1%)

Listening 43 students (7%)

Reading 55 students (9%)

9. Using public

services: at a post

office or a bank.

Speaking 21 students (3%)

6 students (1%) 5 students (1%)

Writing 14 students (2%)

Listening 24 students (4%)

Reading 22 students (4%)

Page 83: CEFR B1 言語活動・能力を考えるプロジェクト - KU Leuvenjapanologie.arts.kuleuven.be/bestanden/B 1 project.pdfKatholieke Universiteit Leuven ルーヴァン・カトリック大学

81

10. Using public

services: public

telephone, internet

café, international call

office

Speaking 14 students (2%)

2 students (0%) 6 students (1%) Writing 9 students (1%)

Listening 21 students (3%)

Reading 19 students (3%)

11. Medical services:

at the doctor’s,

hospital, dentist’s,

pharmacy, etc.

Speaking 25 students (4%)

4 students (1%) 3 students (0%) Writing 14 students (2%)

Listening 26 students (4%)

Reading 23 students (4%)

12. Educational

services: as a student

Speaking

157 students

(26%)

66 students (11%) 113 students (18%)

Writing

156 students

(25%)

Listening

170 students

(28%)

Reading

165 students

(27%)

13. Educational

services: as a parent at

a school, music

school, sportscentre,

arts academy, etc.

Speaking 14 students (2%)

4 students (1%) 7 students (1%) Writing 9 students (1%)

Listening 14 students (2%)

Reading 13 students (2%)

14. Communication at

work: regarding

employees,

employers, student

jobs or applicants for

a job.

Speaking 24 students (4%)

8 students (1%) 19 students (3%) Writing 17 students (3%)

Listening 25 students (4%)

Reading 31 students (5%)

15. Communication

during free-time

Speaking

194 students

(32%)

83 students (14%) 142 students (23%)

Writing

176 students

(29%)

Listening

195 students

(32%)

Reading

176 students

(29%)

16. Communication at

a party as a host or a

guest (at home, a

reception, wedding

ceremony, etc.)

Speaking 89 students (14%)

34 students (6%) 19 students (3%) Writing 22 students (4%)

Listening 75 students (12%)

Reading 32 students (5%)

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82

資料2 カリキュラム試案

*アンケート票どの Domain から作成したかを記載

**CEFR 表5「言語使用の外的コンテクスト」(吉島・大橋2004:48-49) 場所・イベントを参照

***仲介活動は実際にカリキュラムを作る際アンケートで多かった domain で入れる

モジュール

テーマ

場面** 授業活動例

モジュール 1

公的機関で

Domain 1/2*

市役所 ビザの延長をする

職員とのやりとり

必要書類の読みと書き込み

保証人とのやりとり

税関 申告する

税関申告書の記載

空港の税関でのやりとり

日本の滞在先を書く(日本の都道府県アドレスの書き方)

読み教材:日本の持ち込み可能なもの(パンフレット)

オンライン・タスク:日本の税関のルールを調べる

警察 盗難の報告

紛失物届け

交通事故の記載(レポート)

モジュール 2

生活の準備

Domain 4/9

不動産屋 不動産屋のオンラインで物件を探す

実際に見に行く

不動産屋で契約(やりとり・書く・読む)

引越し 引越し業者とのやりとり

どこにおくか指示する

破損物・紛失物のクレームをする

引越し前のそうじについて

そうじ用語

読み教材:ロボット「ルンバ君」

アパートのルールを読む

自分で(業者に頼んで)内装をする

内装用語を覚える

道具の名前を覚える

日本自動車連盟に登録して日本で運転ができるようにする

オンラインで用紙をダウンロード

郵便局

送った荷物が届かないから相談に行く

どの方法が一番安い送り方か聞く

電気・ガス・水道・電話(固定電話・携帯電話)の契約をする

携帯電話のパンフレット・サイトを見て安いの捜す

ホームステ

ホストファミリー自己紹介の手紙・メール

自分をどう見せたいか考えて書く

家電製品の使い方

教えてもらう

その家庭の災害災害対策を聞く

コンビニ 読解テキスト「日本社会におけるコンビニの役割」

送金できる・社交の場・バイトの場

オンライン投票「どのコンビニのがおいしい?」

サイトで調べる・自分でアンケートする→結果を発表へ

宅急便

用紙の書き込み

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83

モジュール 3

旅行

Domain 3/7/10

宿泊

クレーム

3 人部屋を予約したのに一人部屋だった

禁煙室じゃなかった など

旅行会社 パンフレットを見て旅行を決める

キャンセルの手続きをする

交通 夜行バス

オンラインで調べる

予約する

出着場所を調べる

切符の変更

後ろに座席を倒すときの一言

電車・路線バス

間違って乗ってしまったから係りに相談する

アナウンスを聞く

ガソリンスタンド

エリンのビデオ

読解「日本のガソリンスタンドのサービス」

インターネ

ットカフェ

日本語設定の語彙:起動・終了 印刷など

旅行ブログを作る

情報収集 道路情報

天気予報

花粉情報

さくら開花情報

時刻表を調べる

モジュール 4

消費社会Domain 6

広告 広告媒体の紹介:雑誌、新聞、つり革広告、テレビなど

同じ製品のいろいろな会社の宣伝を見比べる

テレビCMと雑誌のCMなどを見る

CM の 2 つの形式を比べて意見交換

例:いいぞ、買おう vs お客様お買い上げください

どのCMが好きか、理由は何か?

キャッチコピーを考える

セールスマンになる 売り込みロールプレイ

テレビCMをやってみる

広告と本体の違い

経験を発表して意見交換

オンライン

ショッピン

サイトを見て、サイトのカテゴリーや捜し方を意見交換

実際に検索して自分の欲しいもののサイトを捜す。

教師が指示したものを捜す

支払い方法・返品に関することを調べる

買い物 100 円ショップ

読解テキスト「100 円ショップの他の店への影響」

「日本の産業の空洞化」全て外国製品

テレビショッピング

音を聞かせて何を売っているか当てさせる

クレーム・

返品

買ったものが壊れた

保証書を読む

クレームの手紙・メールを書く

店とやり取りをする

コメントす

facebook などに載せる

オンラインショッピングサイトに投稿する

モジュール 5

余暇Domain8/15

美術館

博物館

オーディオガイドを聞く

テキストを読む

自分が興味あるものの紹介文を書いて発表

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84

ベルギー・フランスの芸術家の名前をカタカナで書く

開館日・時間・行き方・料金を調べる

観光 日本人に自国の観光地で/美術品を説明する

日本語サイトを見て観光名所用語を調べる

趣味 スポーツ・ゲーム

日本人に(実物を見せながら)やり方を説明する

○○クラブの会員に勧誘する

自分の趣味をアピールする

かるた・福笑いなどをクラスで行う。

相撲・武道等スポーツの日本語のビデオを見せて意見交換

漫画・小説・映画・音楽

自分の好きなものを紹介する

友達言葉・キャラクター語の使い方を習い意識化する

日本の映画・音楽を見たり聞いたりして、意見交換

読解「ネットカフェ・漫画喫茶・カラオケボックス」

モジュール 6

健康 Domain11

病院・薬局

薬の出し方・健康保険・プライバシー・ホームドクターなどの医

療制度の違いを考える

持病の語彙を調べて問診表への記入する

擬態語など表現をを使って詳しく症状を説明する

医者と患者のロールプレイ(定型・問題がある場合)

薬・サポーター・体温計・化粧品などを買う

薬の説明書を読む

健康管理

健康を保つために何をしているか経験談をいう

アジア的な治療法(針・指圧)、代替療法(ホメオパティー)、ヨ

ガ、スポーツなどについて調べたり意見交換

アレルギー

アレルギーの原因を意見交換

花粉情報を聞く

日本のマスク 写真・テキスト

食べ物の材料を知る

食生活と生活習慣病

肥満症・摂食障害(過食症・拒食症)

ダイエット

受験生の夜食・キットカットなど間食・夜食に関して習慣の違い

を考えたり、読んだりする。

モジュール 7

教育Domain12/13

学校で 先生にレポート・論文のトピックを説明する

先生にメールや置手紙を書く

先生にアドバイスをもらう

クラスで発表して、質疑応答をする

留学 推薦状を頼む

研究計画書を書く

自己紹介文を書く

自分の資格・言語能力を記述して、説明する

入学許可書を読む

サマーコー

ス・カルチ

ャースクー

調べる(オンライン・パンフレット・電話)

申し込む(オンライン・電話・実際に行く)

プライベートレッスンの時間変更を依頼する

苦情を言う

モジュール 8

仕事 Domain14

求職 求職情報を読む

アルバイトなどの派遣会社に登録

サイトに載せる自己紹介文を書く

履歴書の書き方

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85

面接で簡単に自分の志望動機・セールスポイントを言える

アルバイトを探すために情報を書いて貼る

労働許可書を取る

申請書を読んで書き込む

問い合わせる

二人から依頼があった

時間の調整・値段交渉

職場 電話でお客さんと話す

出張者・お客さんに工場を案内したり製品を説明する

会議のビデオを見て内容のアウトラインを理解する

オンラインで新入社員用のビデオを見て練習してみる

モジュール 9

式典・集まりDomain 16

準備 招待状を送る、または返信する(手紙・メール)

お祝いを準備する(品物・お金)

カード・寄せ書きを書く

会場で 受付で記帳をしてご祝儀・香典を渡す

各式典の忌み言葉を調べる

乾杯の機能を比較する(日本は食べ始めていいサイン)

非言語コミュニケーションを学ぶ

賞のもらい方やお辞儀の仕方

結婚式のスピーチを聞く

読解テキスト「日本の結婚式」「日本のお見合い事情」

「引き出物や香典返し」

日本の結婚式のビデオを見せる

合コンで・ランチタイムで・ホームパーティーで初対面の人と何

を話すか、何も話さないか意見交換をする

モジュール 10

食文化 Domain

5

外食産業 メニューを翻訳する

訪問客の希望を聞いていろいろなレストランのサイトを見て情報

を得る

レストランで注文と違うものが来て、遅くて苦情をいう。

お弁当・駅弁など調べて紹介

料理教室 レシピを読んだり聞いたり、紹介したりする

名物料理の紹介

大学新聞に紹介記事を書く

日本人に紹介(日本の大学とのビデオコンフェランス)

行事と食べ物

講義を聞いてメモを取る→意見を言う

意見の言い方の指導

ファストフードに関する意見交換

鯨を食べることについて

工場見学 ビール工場

チコリ農場

日本人の工場で日本語で聞く

日本人を案内する

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86

今後の活動目標

このプロジェクトの最終目標は CEFR に沿った B1 レベルのカリキュラム作りであり、そ

のカリキュラムは様々な機関で活用できるように汎用的なものを目指している。そこで、現

段階での出来上がり図は Threshold 3 The objective (p12)の場面に沿ったモジュール的なものに

なるのではないかと考えている。また、そのカリキュラムには CEFR が言語活動として挙げ

ている受容活動(口頭・筆記)、産出活動(口頭・筆記)、相互活動(口頭・産出)、仲介

活動(口頭・筆記)を網羅することも目指している。本年度は、書く産出活動に焦点をあて

た分析と、学習者の言語活動調査を行ったが、来年度は、受容活動である「読む」「聞く」

に関しての分析と考察を行いたいと考えている。既に、実験方法と実験材料の選定を始めて

おり、2012年 5 月には具体的な活動を開始する予定である。

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87

付録:分析データ 1. 作文データ「大学新聞記事」

1.1 グルノーブル大学 データリスト・データ

1.2 ルーヴァン大学 データリスト・データ

2. 置手紙データ「先生にお土産を渡す」

1.1 グルノーブル大学 データリスト・データ

1.2 ルーヴァン大学 データリスト・データ

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作文資料 大学新聞記事 グルノーブル作文データ タイトル 評定 G1 マルジ・グラは何ですか B1.2 G2 ラクレットって何? B1.3 G3 フランスのワイン B1 G4 プロバソースの地方。 A G5 ロマンの町 A G6 (記載なし) A G7 (記載なし) B1.1 G8 (記載なし) A G9 (記載なし) A G10 (記載なし) A G11 (記載なし) 評定不能 G12 (記載なし) A G13 ラクルト A G14 携帯電話 B1.1 G15 (記載なし) A G16 (記載なし) B1.1 G17 未提出 G18 パンとフランス人 A G19 (記載なし) A G20 アネシーと汚染 B1.1 G21 建築 B1.1 G22 チョコレートケーキ B1.1 G23 (記載なし) B1.1 G24 フランスのバンド・デシネ B1.1 と B1.2 の揺れ G25 (記載なし) A と B1.1 の揺れ G26 (記載なし) A G27 フランス人とパン A と B1.1 の揺れ G28 フランスのチーズ B1.1 と B1.2 の揺れ G29 サン・ネクテール B1.2 G30 豚肉 B1.2 評定不能は、途中で執筆を諦めた、課題の趣旨から明らかにずれてしまい同じ基準が使え

ないという理由で評定ができなかったもの

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作文資料 大学新聞記事 ルーヴァン作文データ タイトル 評定 L1 ベルギー 評定不能 L2 ベルギーのクリスマス習慣 B1.3 L3 私の使った辞書です 評定不能 L4 ザ・ベースボール A と B1.1 の揺れ L5 ベルギーのブルージュ B1.2 L6 ベルギーの一つ一つの特徴的な食べ物 B1.1 と B1.2 の揺れ L7 ベルギーの食べ物について B1.1 と B1.2 の揺れ L8 ベルギーのルーヴァン A L9 ベルギーのチョコレート A と B1.1 の揺れ L10 ベルギーの観光地のアトミウム B1.1 と B1.2 の揺れ L11 ベルギーの習慣について B1.1 L12 ベルギーと日本の音楽を比べるとどう違う。 B1.1 L13 ベルギーと日本を比べて、まんがの違い B1.1 L14 ベルギーと日本と比べて、音楽 A L15 ベルギーの木曜日 A と B1.1 の揺れ L16 ルーヴァン B1.2 L17 ベルギーとじがいもを食べる習慣 B1.1 と B1.2 の揺れ L18 ユーロビジョンソングフェスチバル B1.1 と B1.2 の揺れ L19 ベルギーのアントワープ B1.2 L20 ビールを 2 本ください B1.1 L21 ルーヴァンカトリック大学 A L22 フリツのこと A と B1.1 の揺れ L23 第一次世界大戦 B1.2 L24 ベルギーの有明な食べ物 B1.1 L25 ブリュージュ、ベルギーのヴェニス B1.2 L26 ベルギーのバンド・・ユェヴゲーニ B1.1 L27 ベルギーのフライドポテトとマッセル B1.1

 

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置手紙資料 グルノーブル置手紙データ 評定 G1 B1 G2 B1 G3 A G4 B1 G5 B1 G6 A G7 B1 G8 A G9 A と B1 の揺れ G10 A G11 B1 G12 A G13 B1 G14 A G15 B1 G16 A G17 A G18 A と B1 の揺れ G19 A G20 B1 G21 B1 G22 B1 G23 A と B1 の揺れ G24 A G25 A G26 A G27 A G28 B1 G29 B1 G30 B1

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置手紙資料 ルーヴァン置手紙データ 評定 L1 B1 L2 B1 L3 A と B1 の揺れ L4 A と B1 の揺れ L5 B1 L6 B1 L7 B1 L8 B1 L9 B1 L10 B1 L11 B1 L12 B1 L13 B1 L14 B1 L15 A と B1 の揺れ L16 B1 L17 A と B1 の揺れ L18 B1 L19 A と B1 の揺れ L20 A L21 A と B1 の揺れ L22 B1 L23 B1 L24 A L25 B1 L26 A L27 A と B1 の揺れ

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