厚生労働科学研究費補助金(子ども家庭総合研究事...

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H16 厚科子ども家庭周産期ネット藤村班 厚生労働科学研究費補助金(子ど 家庭総合研究事業) 総括研究報告書 指標と ーク 手法を 用い 高い 提供す 「周産期母子医療セ ーネ ーク 」の 構築に 関す 研究 (H16-子ど -032) 主任研究者 藤村正哲 大阪府立母子保健総合医療セ 分担研究者 楠田 聡、大野 勉、三科 潤、上谷 良行、田村 正徳 1

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Page 1: 厚生労働科学研究費補助金(子ども家庭総合研究事 …nrn.shiga-med.ac.jp/DOC/NRNcommon/hokokusho/H16… · Web view総合周産期母子医療センターにおけるフォローアップ外来の実態に関するアンケート調査を行い,ハイリスク児フォローアップの問題点を検討した.統一フォローアッププロトコールの普及率が低いこと,フォローアップ外来の担当医が不足している

H16 厚科子ども家庭周産期ネット藤村班

厚生労働科学研究費補助金(子ど も 家庭総合研究事業)

総括研究報告書

ア ウ ト カ ム を 指標と し ベ ン チ マ ーク 手法を 用い た 質の 高い ケ ア を 提供す る

「周産期母子医療セ ン タ ーネ ッ ト ワ ーク 」の 構築に 関す る 研究(H16-子ど も -032)

主任研究者 藤村正哲 大阪府立母子保健総合医療セ ン タ ー

分担研究者 楠田 聡、大野 勉、三科 潤、上谷 良行、田村 正徳

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H16 厚科子ども家庭周産期ネット藤村班

     

研究要旨 本研究で は 、わ が 国の 中核的周産期医療施設に お け る 最新医療の 標準化を 行う 。母子保健の 課題で あ る 罹病率・死亡率・発達障害発症率・成長発達予後等を ア ウ ト カ ム 指標と す る 。共同臨床研究を 設定し て 、臨床研究計画と 質の 高い ケ ア の 達成を リ ン ク する 方法の 開発を 進め る 。長期予後改善に 有効で あ る と さ れる 治療法を 取り 上げ 、エ ビ デ ン ス 確立臨床研究を 実施す る 。研究成果を 世界に 向け て 情報発信す る こ と に よ り 、わ が 国の 優れ た 周産期指標を 支え る 有効な 治療法の 普及に 貢献す る 。効果的な ラ ン ダ ム 化比較試験を 実施す る た め 、「新生児臨床研究ネ ッ ト ワ ーク 」組織の 蓄積し た 実績と 経験を 活用し 発展させ る 。

全国極低出生体重児の 約30% が 登録さ れ た デ ータ ベ ース が 完成し た 。医療水準の 高い 施設と そ う で な い 施設の 差を 分析し た 。医療費を 、医療水準、施設、予後別に 検討す る こ と で 、効率的な 新生児医療の 提供体制を 検討し た 。

重度発達障害原因と し て の 低酸素性虚血性脳症を 取り 上げ 、臨床試験に 不可欠な 、即時イ ン タ ーネ ッ ト 登録と 症例振り 分け ・層別化、有害事象登録の シ ス テ ム 開発に 取り 組み 、「脳低温療法オ ンラ イ ン 登録シ ス テ ム 」を 完成さ せ た 。

多施設ラ ン ダ ム 化比較試験に お け る 児の 予後評価の 為に 必要な 、フ ォ ロ ーア ッ プ 体制を 構築し 、統一プ ロ ト コ ールを 用い た 健診を す べ て の 参加施設で 実施で き る よ う に準備し た 。平成16 年度に 詳細な 実態調査を 行っ た 。在宅医療の 支援、福祉に 関連す る 支援な ど 「支援マ ニ ュ ア ル 」作成を 開始し て い る 。

1990 年か ら 全国の 新生児集中治療施設の 協力を 得て 実施し て いる 超低出生体重児の 長期予後調査を 継続し た 。前年度集計し た 結果をも と に さ ら に 解析を 進め た 。さ ら に 1990 年か ら 5 年ご と に 実施し て い る 全国的な 新生児医療実態調査を 2005 年に 実施す る 準備を 進め た 。ま た 、人口動態統計を 用い 、周産期関連医療の 人口ベ ース 評価を 経年・地域別に 行っ た 。小児科医・一般産科医・助産師・看護師向け の 新生児心肺蘇生法の 研修プ ロ グ ラ ム の 作成と研修シ ス テ ム の 構築と そ の 効果に 関す る 研究を 実施した 。                    

   

A.研究目的            1.わ が 国の 中核的周産期医療施設に お け る 最新医療の 標準化を 行う 。2.そ れ に よ っ て 、妊娠の

初期か ら 出産、新生児医療、育児支援を 通じ て と ぎ れ な く質の 高い ケ ア が 提供さ れ

る 体制の 構築・向上に 直接的に 寄与す る 研究を 目的 と す る 。

3.母子保健の 課題で あ る 罹病

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率・死亡率・発達障害発症率・成長発達予 後 等 を ア ウ ト カ ム 指 標と す る 。 4.多施設臨床試験の イ ン フ ラと 技術の 蓄積を 進め 、新生児学に お け る エ ビ デ ン ス確立研究を 推進し 、国際的標準化に 資す る 。

研究課題総合周産期母子医療セ ン タ ー ネ ッ ト ワ ー

の 構築ク 、1. 多施設 化比較試験の 実ラ ン タ ゙ ム

施 (新生児臨床研究ネ ッ トワ ーク ・NRN )

藤 村 正 哲 ( 主任)

2. 総合周産期母子医療セ ン タ ー ネ ッ トに お け るワ ー ク 、 施設テ ゙

構築ー タ ヘ ゙ ー ス 解析・法に よ る 標準ヘ ゙ ン チ マ ー ク

化 楠 田 聡( 分担)3. 新生児の 予後全国調査ハ イ リ ス ク

上 谷良行( 分担)

4. 総合周産期母子医療セ ン タ ー ネ ッ トに お け るワ ー ク 、 フ ォ ロ −

体制の 構築ア ッ フ ゚多 施 設 化 比 較 試 験 にラ ン タ ゙ ム

お け る 児の 予後評価三科 潤( 分担)

5. 仮死 児 に 対す る 脳 低 温 療 法ラ ン ダ ム 化 比 較 試 験 によ る 脳障害の 軽減 

大 野   勉 ( 分担)

6. 小児科医 一般産科医 助産師 看・ ・ ・護師向 け の 新 生 児心肺蘇生 法の 研修 の 作成フ ゚ ロ ク ゙ ラ ムと 研修 の 構築シ ス テ ム と その 効果に 関す る 研究 田 村

正徳( 分担)                 B.研究方法            1. 主体的に 挑戦で き る

よ う な 共同臨床研究を 設定し て 、研究エ ン ド ポ イン ト を ア ウ ト カ ム 指標と し 、「臨床研究の 実施」 と 「質の 高い ケ ア の 達 成」を リ ン ク さ せ る 。

2. 予備的仮説で 新生児・乳幼児の 罹病・死亡率改善と 長期予後改 善に 有効で あ る と さ れ る 治療法 を 取り 上げ 、有効な 医療で あ る 根拠を 実証す る た め の エ ビ デ ン ス 確立臨床研究を 実施 する 。

3. 本研究参加施設に お いて 行わ れ る 多施設ラ ンダ ム 化比較試験に お け る児の 予後評価の 為に 必要なフ ォ ロ ア ッ プ 体制を 構 築 し 、key ageに は 、ハ イリ ス ク 児フ ォ ロ ーアッ プ 研究会に よ り 作成され た プ ロ ト コ ール を用い た 健診を す べ て の参加施設で 実施で き る よう に す る 。

4. 参加施設の 入院患者共通デ ータ ベ ース を 整備 す る 。デ ータ ベ ース か ら 算出さ れ る 指標の 優秀な 施設 を も っ て 「ベ ン チ マ ーク 」と し 、多施設に お け る 取り 組み に 共通目標 を 与え る 。

研究組織1. 総合周産期母子医療

セ ン タ ー の 指定を 受け た 機関の 新生児部門担

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当者  約38 施設2. 当 班 が NRN と

し て 計画・実施す る 多施設ラ ン ダ ム 化比較試験等に 参加す る 機関の新生児部門担当者 約70施設(1 .と 重複)

3. 関連研 究 課 題 を 担当・支援す る 専門家

 約10 名4. 研究運営組織①諮問委員会、分担研究者会議②研究班会議  

周 産 期 医 療 セ ン タ ー ネッ ト ワ ーク 班

新生児臨床研究ネ ッ ト ワーク 班

個別課題の 臨床試験班5. 研 究 コ ー デ ィ

ネ ーシ ョ ン大阪府立母子保健総合医療セ

ン ター・臨床試験支援室医師2 名(50%) 、看護師1 名

(30%) 、心理士1 名(50%) 、事務1 名

(30%)                 

C.研究結果            1. 臨床試験実施ガ イ ド ラ

イ ン を 整備し た 。多施設ラ ン ダ ム 化比較試験の 全国 展 開 を 図る コ ー デ ィネ ーシ ョ ン セ ン タ ーと デ ー タ 安全モ ニ タリ ン グ 組織を 整備し た試 験 の イ ン タ ー ネ ット 環境を 整備し た 。直ちに 試験実行が 可能と な った 。総合周産期母子医療セ ンタ 全− 38 施 設 の 参加を 得

ら れ る 目処が 立っ た 。

2. 全 国 極 低 出 生 体 重 児 の 約30% が 登録さ れ た デ ータ ベ ース が 完成し た 。医療水準の 高い 施設と そう で な い 施設の 差を 分析し た 。医療費を 、医療水準、施設、予後別に 検討す る こと で 、効率的な 新生児医療の 提供体制を 検討し た 。 デ ータ ベ ース 項目に は各参加施設の 医療水準を 評価で き る 項目、必要と した 医療費を 評価で き る 項目等が 含ま れ て い る 。さ ら に 、わ が 国の 新生児医療の 水準と 欧米諸国のそ れ と の 比較が 可能なよ う に 設計し た 。この 患者デ ータ ベ ース を用い て 、全国42 の 参加施設か ら デ ータ を 収集した 。そ の 結果、全国の 極低出生体重児の 約30% を カバ ーす る 患者デ ータ ベース が 作成で き た 。この デ ータ ベ ース を 用い て 、種々の 評価方法を 検討中で あ る 。

3. 重度発達障害原因と し ての 低酸素性虚血性脳症に 対する 脳低温療法の 多施設ラ ンダ ム 化試験の た め に 、サ イ ト に お け る 即時イ ン タ ーネ ッ ト 登録と 症例振り 分け ・層別化、有害事象登録の シ ス テ ム 開発に 取り 組み 、「脳低温療法オ ン ラ イ ン 登録シ ステ ム 」を 完成さ せ た 。

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実 施参加施 設 の 同 定 、参加施 設の 技量の 標 準 化 の た めの 研修、国内で の 仮死児や新 生 児 脳 症 の 発 生 率 と 管理法の 実態調査、諸外国 で 行 われ て い る こ の 治 療 法の 多施設ラ ン ダ ム 化試験の 比較検討を お こ な って い る 。

4. 多施設ラ ン ダ ム 化比較試験に お け る 児の 予後評価の 為に 必要 な 、フ ォロ ー ア ッ プ 体 制 を 構 築し 、統一プ ロ ト コ ールを 用 い た 健診を す べて の 参加施設で 実施で きる よ う に 準備し た 。本邦の 総合周産期母子医療セ ンタ 全− 38 施設に お け るフ ォ ロ ー ア ッ プ 体 制の 詳細な 実態調査を 実施した 。最も 実施が 困難な 発達検査へ の 心理士派遣な どを 含め て 、全38 施設で 、3歳の 統一フ ォ ロ ーア ップ 健診実施体制を つ く る準備を 行っ た 。フ ォ ロー ア ッ プ 外来に お ける 児 と 家族へ の 支援マニ ュ ア ル 作成の 全体計画を 作成 し 、在宅医 療 、 障 害 児の 地域支援、地域に お ける 医 療 ・ 保 健 ・教育の 連携等の 部分を 作成し た 。

5 . 1990 年か ら 全国の 新生児集中治療施設の 協力を 得て実施し て い る 超低出生体重児の 長期予後調査を 継続した 。前年度集計し た 結果をも と に さ ら に 解析を

進め た 。さ ら に 1990 年か ら 5 年ご と に 実施して い る 全国的な 新生児医療実態調査を 2005 年に 実施する 準備を 進め た 。ま た 、人口動態統計を 用い 、周産期関連医療の 人口ベ ース 評価を経年・地域別に 行っ た 。

6. 小児科医・一般産科医・助産師・看護師向け の 新生児心肺蘇生法の 研修プ ロ グ ラ ムの 作成と 研修シ ス テ ムの 構築と そ の 効果に 関す る 研究を 実施し た 。欧米の 新生児心肺蘇生法の ガイ ド ラ イ ン と 研修教材を 比較検討し 、米国小児科学会に よ る 「NRP-Textbook of Neonatal Resuscitation 」と「NRP デ モ ビ デ オ 」が 教材と し て す ぐ れて い る と 判定し 米国小児科学会と 交渉し て 、2006 年に 予定さ れ て い る 新版の 翻訳権を 獲得し た 。大阪・広島・埼玉・長野に て「AHA 心肺蘇生国際ガ イ ドラ イ ン 2000 」に 準拠した 手技や 研修方法を 用いた 新生児心肺蘇生法講習会を 実施し 、そ の 効果を 評価検討し た 。NRP instructor を 養成す る た め に 米国ハワ イ 州Kapiolani 母子医療セン タ ー新生児科部長Ken Nakamura と 井上信明医師の協力を 得て 、同病院で 主催す る NRP 講習会に 日本人医師を 受け 入れ る 体制を 整備し 、既に 26 名が 受講した 。

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D.考察 本研究の 意義に つ い て は次の よ う に 考え て い るわ が 国の 周産期医療の 体制整備は 総合周産期母子医療セ ン タ ーお よ び 地域周 産 期 母 子 医 療 セン タ ーを 中心に 進め ら れて い る 。 体 制整備と 平行 して 必要な こ と が セ ン ターの 医療内容の 充実と 健や か親子21課題の 達成で あ る が 、そ れ を 個々の 医 療機関 に 委ね て お く だ け で は 十分で な い 。既に 総合周産期母子医療セ ン タ ーを 全国配置す ると い う 基盤整備が 進 行 中 であ り 、 こ れ ら の 医 療機関が 共同し て 課題に 取り 組み 、死亡率と 発達予後改善の 継続的な改 善 を 図る こ と が 可能とな っ て い る 。 そ う した 保健・臨床課題を 恒常的に 提示し 遂行し て ゆ く こ と によ っ て 初め て 、機関整備が形だ け に 終わ る こ と なく 、実効性あ る 医療を 展開する 基点整備に 結実し て ゆ くと 考え ら れ る の で ある 。 医療標準化を 達成す る た めに 臨床部門の 主体的参加・協力を得る こ と は 容易で は なく 、単純に 施設別デ ータ を 調査し て 比 較 提示す る だ けで は 、臨床部門の 意欲的取り 組み を 誘導す る イ ン セ ンテ ィ ブ と し て 不十分 であ る 。一方、臨床部門が 既に 課題と し て 認識し て お り 、従っ て 主体的に 挑戦で き るよ う な 共同臨床研究を 設定し

て 、研究エ ン ド ポ イ ント を ア ウ ト カ ム 指標とし 、臨床研究計画と 質の 高いケ ア の 達成を リ ン ク する 方法が 極め て 有効で ある 。そ の た め に は 予備的仮説で 新生児・乳幼児の 罹病・死亡率改善と 長期予後改善に 有効であ る と さ れ る 治療法を 取り 上げ 、有効な 医療で あ る根拠を 実証す る た め の エビ デ ン ス 確立臨床研究を 実施す る 。研究成果を 世界に 向けて 情報発信す る こ と に より 、わ が 国の 優れ た 周産期指標を 支え る 有効な 治療法の普及に 貢献す る 。効果的な ラン ダ ム 化比較試験を 実施する た め 、「新生児臨床研究ネッ ト ワ ーク 」組織の 蓄積した 実績と 経験を 活用し 発展させ る 必要が 大き い 。 

E.結論              各分担研究は 相互に 関連し つつ 、平成16 年度の 目標は ほぼ 達成し た 。そ れ ぞ れに い く つ か の 課題が 明ら か と な っ て き た が 、い ず れ も 平成17 年度に はそ の 解決に 取り 組む 予定であ る 。研究の 基本方針と 方法に 問題点は 認め ら れ ず 、予定の 研究を 進め る こ と によ っ て 、目的の 達成は 可能で あ る と 考え ら れ る 。

F.研究発表〔主任分〕

学会発表1. 藤村正哲.  こ れ か ら の

NICU が 備え る べ き 条件

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―総合周産期母子医療セ ン ターの 総括―.第26 回日本医学会総会  2003 年4 月 福岡  シン ポ ジ ウ ム

2. Fujimura M. Estudios colaborativos en investigacion pediatrica: Multicenter-Clinical-Trials-Neonatal Research Network JAPAN-. XIII Curso Internacional "Pediatria 2003". Lima, Peru.2003年3 月

3. Fujimura M. Permaturos extremos. XIII Curso Internacional "Pediatria 2003". Lima, Peru. 2003 年3 月

4. Fujimura M.Dysplasia bronchopulmonar. XIII Curso Internacional "Pediatria 2003". Lima, Peru. 2003 年3 月

5. 藤村正哲.小児治験・臨床試験推進の た め に : 転機の 年に .第24 回日本 臨 床薬理学会。 シン ポ ジ ウ ム 。12 月、横浜。

6. Fujimura M, Sumi K, Kitajima H, Nakayama M. Lung Injury in utero and Neonatal Chronic Lung Disease. Sixth World Congress of Perinatal Medicine. Osaka 2003年9 月

7. Fujimura M, Kusuda S, Negishi H, Tsuruhara T, Takeuchi T on behalf of The Neonatal Mutual Cooperative System Osaka. Regionalization of Neonatal Intensive Care: Twenty-five years of the Neonatal Mutual Cooperative System in Osaka. Sixth World Congress of Perinatal Medicine. Osaka .2003 年9 月

8. Fujimura M, Sumida Y, Kitajima H. Survival and risk of disability in

infants born less than 24 weeks of gestation. Invited Lecture. Fetus as a Patient Convention. Nov. Manila, Philippines. 2003年11 月

9. Fujimura M, Kitajima H, Sumida H, Nakano H , Kanazawa T. Perinatal factors which affect the cognitive function of school age children born in extremely preterm. . Invited Lecture. Fetus as a Patient Convention. Nov. Manila, Philippines. 2003年11 月

10. Fujimura M, Kitajima H, Nakayama M, Arai H. Lung injury in utero and neonatal pulmonary emphysema. . Invited Lecture. Fetus as a Patient Convention. Nov. Manila, Philippines. 2003 年11月

11. Masanori Fujimura, Yutaka Sumida, Hiroyuki Kitajima. Survival and risk of disability in infants born less than 24 weeks of gestation. The Fetus as a Patient-Fukuoka. 2004 年 4 月 Plenary Lecture.

12. 藤村正哲.周産期医療体制につ い て .新生児外科医療シス テ ム 研 究会 特別講演2004 年6 月 大阪

13. 藤村正哲、中西秀彦、南 宏尚、辻章志、和田 浩、多田羅竜平、楠田 聡、根岸 宏邦.新生児医療と ア ウ ト カ ム の 変遷.第40 回日本周産期・新生児医学会 2004 年7 月 東京。

14. 藤村正哲.小児医療・小児救急提供体制の 改革ビ ジ ョ ン .第23 回日本蘇生学会 2004 年9

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月 18 日  シ ン ポ ジ ウム  大阪

15. 藤 村 正 哲.新 生 児 医 療 の 到達点と こ れ か ら の 課題。第6回未熟児新生児医療研究会.特別講演2004 年10 月 大阪。

16. Fujimura M, Sumida Y, Kitajima H. Survival and risk of disability in infants born less than 24 weeks of gestation. Invited Lecture. . 54th Annual Meeting of the Korean Pediatric Society. Oct 2004. Seoul, Korea.

17. Fujimura M, Kitajima H, Sumida H, Nakano H , Kanazawa T. Perinatal factors which affect the cognitive function of school age children born in extremely preterm. . Invited Lecture. 11th Annual Meeting of the Korean Society of Neonatology. Oct 2004. Seoul, Korea.

論文1. 藤村正哲、北島博之、住田 裕、隅 清彰、 金澤忠博。   予 後 に 視点を お い た 超低 出 生 体 重 児の ケ ア .日本未熟児新生児学会雑誌 2003;15:1-14.

2. 和田和子、平野慎也、船戸正久、藤村正哲、乾 幸治.新生児溶血性黄疸に 対す る ガ ン マ グロ ブ リ ン 療法の 現状と問題点  日本未熟児新生児学会雑。誌 2003;15:45-50.

3. 藤村正哲。こ れ か ら の 新生児医療と そ の あ り 方。産婦人科治療 2003;87:121-127.

4. 金澤忠博、安田 純、糸井川直祐、南 徹弘、北島博之、藤村正哲 超。低出生体重児の 精神発達予後。日本未熟児新生児学会2003:15:21-33.

5. 藤村正哲.米国に お け る 小児医薬品オ フ ラ ベ ル 問題へ の 取り 組み .日本小児科学会雑誌2003;107:1306-1316.

6. 藤村正哲。新生児医療に お ける off-label use.  周産期医療 2003;33:23-29.

7. 中西範幸、平野慎也、青谷裕文、楠田聡、藤村正哲.CONSORT声明に 基づ く 新生児を 対象とし た ラ ン ダ ム 化比較試験の 文献的考察.日本医事新報第4154 号 2003

8. 中澤 誠、藤村正哲他.日本小児科学会の 考え る 小児医療提供体制.日児誌2004;108:533-541. 藤村正哲.「小児医療、特に 新生児医療に 人材を 確保す る ため に 」 。 日本 医師 会雑 誌 2004;131:1591-1596.

9. 藤村正哲.「小児医療に 人材を確保す る た め に 」―小児科医不足に ど う 対応す るか ー。大阪府立母子保健総合医療セ ン タ ー 雑 誌 2004;19:11-15.

10. 藤村正哲.こ れ か らの 小児医療の 整備と 周産期医療.周産期医学 2004;34:1486-1491.

11. 藤村正哲、平野慎也、青谷裕文.小児科・小児外科領域に お ける 臨 床 試 験 ― Neonatal Research Network.  小児外科 2004;36:878-885.

12. 中澤 誠、藤村正哲、桃井眞理子、安田 正。 「小児医療提供体制の 改革ビ ジ ョ ン 」―わ が 国の 小児医療・小児救急医療体制の 改革に 向け て 。日本医事新報 No.4200, 2004 年10 月23 日号、p53-58

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13. 藤村正哲.周産期医療発展の ため の 問題点―若手産科小児科医師 確 保 に 向 け て の 対 策 ま と め 。日本周産期・新生児医学会雑誌 2004;40:712-713.

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厚生労働科学研究費補助金(子ども家庭総合研究事業)

分担研究報告書

分担研究 施設 構築 解析 法による標準化データベース ・ 、ベンチマーク分担研究者 楠田 聡 東京女子医大母子総合医療センター

研究協力者 佐久間 泉、加部一彦、青谷裕文、猪谷泰史、市場博幸、松浪 桂

     

研究要旨 全国の主要な周産期母子医療センターに入院

したハイリスク新生児(出生体重1500g以下)の共通デ

ータベースを作成した。作成されたデータベースに

2003年出生のハイリスク新生児を登録し、その予後、施

設間の差、予後に関与する因子の分析を行った。

    

 

A.研究目的            

 全国の主要な周産期母子医療センターに

入院するハイリスク新生児の共通データ

ベースを作成する。そして、データベー

スから算出される指標の差を分析し、治療

の標準化に取り組む。それによって妊娠初

期から乳幼児まで質の高いケアを提供で

きる「周産期母子医療センターネットワー

ク」を構築する。   

                  

B.研究方法            

 研究初年度は共通データベースを構築し、

2003年出生のハイリスク新生児(出生体

重 1500g以下)のデータを登録する。登

録されたデータを生命予後、合併症の出現

率、入院期間等について施設間で比較する。

そして指標の優秀な施設をもってベンチ

マークとし、参加施設の共通目標を与える。

また、指標の差異を生じる背景を統計学的

に分析する。

 収集データの入力、整理は株式会社イー

ビーエムズに委託する。また、分析用の専

用ソフトの作成も同社に依頼する。

(倫理面への配慮)

ハイリスク新生児データベースは個人情

報を除いて構築し、データの非連結匿名化

を図る。

                  

C.研究結果            1.共通データベースの構築

共通データベースは、本年度は比較的リ

スクの高い出生体重 1500g以下の新生児

を対象とした。また、データベース自体

は、米国 の National Institute of Child Health and Human Development の

Neonatal Research Network、同じく米

国の Vermont Oxford Network、英国の

British Association of Perinatal

11

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H16 厚科子ども家庭周産期ネット藤村班

Medicine の Network を参考とし、デー

タの国際比較が可能な構造とした。また、

医療資源と予後の分析が可能なように 、

DPC 病名も入力項目とした。一方、施設

規模についてもデータベースを作成した。

その結果、施設では 15項目、ハイリスク

新生児では 80項目からなる共通データベ

ースが構築された(表 1、2)。

2.周産期母子医療センターの選択

データベースを構築する対象は、平成

16年 4月時点で総合周産期母子医療セン

ターとしての指定を受けている 38 施設及

び同等の機能を有する周産期母子医療セン

ター 4 施設、計 42 施設とした(表 3)。

これらの施設から出生体重 1500g以下の

ハイリスク新生児で 2003年出生の児のデ

ータを収集した。2005年 2月 14日時点

で約 1400 例のハイリスク新生児のデータ

が登録された。最終的には約 2000 例にな

ると予測され、これは 2003年の出生体重

1500g以下のハイリスク新生児の約 30%に相当する。

3.収集データの解析(27 施設)

1)施設別登録数

 施設別の登録数を示す(図 1)。施設規

模としては約 10倍の差が認められた。

2)体重別死亡率

 図 2 に体重別死亡率を示す。出生体重が

600g を超えると生存退院する確率は約

80%以上となった。

3)施設別死亡率

 図 3 に施設別の死亡率を示す。死亡率は

施設間の較差が大きく、死亡退院無しの施

設から 30%以上の施設まで広く分布した。

4)リスク補正後の施設別死亡率

死亡率は入院する児の出生体重に大きく

依存するので、各施設の出生体重別の入院

数に合わせて死亡率を補正した。補正後の

施設別の死亡率を図 4 に示す。補正を実施

しても、施設間の死亡率の較差が認められ

た。この死亡率の差の要因を分析する必要

が認められた。

5)施設別入院日数

 NICU退院時の修正在胎期間を施設別に

図 5 に示す。NICU退院時の平均修正在胎

期間は 33~70週と広く分布した。この施

設間の差についても検討が必要である。

D.考察

 現時点で登録されているデータを用い

て検討を行った。データは全国の出生体重

1500g以下の児の約 20%を代表している。

ただし、対象施設が総合周産期母子医療セ

ンターなので、比較的大規模な施設での分

析と言える。体重別の死亡率の分析では、

出生体重が 600g以上であればほぼ 80%以上の生存退院率であり、国際的にも優れ

た予後と考えられる。

 一方、施設間の予後、入院日数に関して

は、大きな較差があり、今後この差を生じ

る要因を検討する必要がある。また、合併

症に関してもデータベースがすでに完成

しているので、今後これらの要因につい

ても分析可能である。

E.結論               全国の総合周産期母子医療センターを中

心に 計 42 施 設 を対象 と し て 出 生 体 重

1500g以下のハイリスク新生児のデータ

ベースを構築した。症例数はおよそ 2000例となるデータベース規模で、全国の約

12

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H16 厚科子ども家庭周産期ネット藤村班

30%を対象としている。このデータベー

スの分析の結果、本邦のハイリスク新生児

の予後は良好であった。しかし、施設間に

は較差が見られており、今後この差を生

じる原因を検討することが重要と言える。

13

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表1 施設データベース

周産期母子医療センターネットワーク共通データベース Ver1.5(出生体重 1500g以下、2003年版)

施設データ入力用

  項目名 データ 備考

101 施設 ID(Facility:id)           

       

1001

報告年月日(Facility:info:date)        200 /   / 施設データ報告日

       

1010

種別(Facility:class)1:総合周産期母子医療センター

2:地域周産期母子医療センター

3:その他

 

1011

設立母体(Facility:provider)1: 国 立 、 2:独立 行政法人、

3:公立、4:私立、5:その他国公私立の別

       

1012

新生児病床数(Facility:bed:total)   病的新生児を収容する病床数

1013

NICU数(Facility:bed:NICU)   保険認可の NICU数 

1014

MFICU数(Facility:bed:MFICU)   保険認可の MFICU数 

     

1015

医師数(Facility:staff:doctor)   NICU常勤医師数

1016

看護師数(Facility:staff:nurse)   新生児病床勤務常勤看護師数(総数)

1017

臨床心理士(Facility:staff:psychologist) 1:はい、2:いいえ 臨床心理士の勤務

       

1101

外科疾患(Facility:staff:surgery 1:はい、2:いいえ 外科疾患の治療

1102

心 臓 外 科 疾 患

(Facility:staff:cardiosurgery)1:はい、2:いいえ 心臓外科疾患の治療

1103

脳外科疾患(Facility:staff:neurosurgery) 1:はい、2:いいえ 脳外科疾患の治療

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1104

眼科疾患(Facility:staff:ophtalmology) 1:はい、2:いいえ 未熟児網膜症の治療

       

1105

フォローアップ体制(Facility:followup) 1:はい、2:いいえフォローアップ研究会のプ

ロトコールに従って実施

表2 症例データベース

周産期母子医療センターネットワーク共通データベース Ver1.5(出生体重 1500g以下、2003年版)

101  施設 ID(Facility:id) 項目名およびデータ入力 備考

201患者ID(Patient:id)

A 母体情報

301 母 年 齢 (Maternal:age) 歳

302妊娠回数(Maternal:gravida)(今回を含まず)      回

303 分娩回数(Meternal:parity) (今回を含まず)              

304 母 体 基 礎 疾 患 (Maternal:Comorbidity:main)( 基 礎 疾 患 の あ る 場 合 ) .   

ICD10

B 妊娠合併症

401胎児数(Pregnancy:multiple)     

402 出 生 順 位 (Pregnancy:multiple:order) 番目

403膜性(Pregnancy:plurarity)(多胎の場合)  1:一絨毛膜、2:二絨毛膜以上

404糖尿病(Pregnancy:DM)(GDMを含む耐糖能の異常) 1:はい、2:いいえ

405妊娠高血圧・子癇発作(Pregnancy:hypertension) 1:はい、2:いいえ

406 臨床的絨毛膜羊膜炎(Maternal:CAM:clinical) 1:はい、2:いいえ

407 組織学的絨毛膜羊膜炎(Maternal:CAM:pathological) 1:はい、2:いいえ

408 組織学的絨毛膜羊膜炎分類(Maternal:CAM:pathological:grade)(CAMの場合) 1:Ⅰ度、2:Ⅱ度、3:Ⅲ度

C 分娩情報

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501早期破水(LaborDelivery:PROM) 1:はい、2:いいえ

502 母体ステロイド投与(LaborDelivery:steroid) 1:はい、2:いいえ

503胎児心拍異常(LaborDelivery:NRFS) 1:はい、2:いいえ

504胎位(LaborDelivery:presentation) 1:頭位、2:その他

505 分娩様式(LaborDelivery:mode) 1:経腟、2:経腟(吸引、鉗子)、3:帝王切開

D 新生児情報

602入院時生後日数(Neonatal:admission:day)      日

603 性別(Neonatal:sex) 1:男、2:女、3:不明

604院外出生(Neonatal:outborn) 1:はい、2:いいえ

605 母体紹介(Neonatal:inborn)(院内出生の場合)    1:外来紹介、2:緊急母体搬

送、3:いいえ

606在 胎 期 間 週 (Neonatal:GA:wk) 607   日 (Neonatal:GA:day) 週  日

608 ア プ ガ ー 1 分 (Neonatal:ap1) 点

不明は

99609 ア プ ガ ー 5 分 (Neonatal:ap5)

不明は

99610蘇生時酸素使用(Neonatal:resuscitation:oxygen) 1:はい、2:いいえ

611蘇生時気管内挿管(Neonatal:resuscitation:intubation) 1:はい、2:いい

612 出 生 体 重 (Neonatal:birthweight) g

613 出生時身長(Neonatal:length)                   .

cm614 出生時頭囲(Neonatal:HC)                    .

cmE 新生児呼吸器疾患

701 RDS(Pulmonary:RDS) 1:はい、2:いいえ

702空気漏出症候群(Pulmonary:airleak) 1:はい、2:いいえ

703肺出血(Pulmonary:hemorrhage) 1:はい、2:いいえ

704胎便吸引症候群(Pulmonary:MAS) 1:はい、2:いいえ

705 新生児遷延性肺高血圧症(Pulmonary:PPHN) 1:はい、2:いいえ

706 酸素投与日数(Pulmonary:oxygen)(酸素投与を中止した生後日数)

投与中は

999入力

707 CPAP 使 用 日 数 (Pulmonary:CPAP) 日

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708人 工 換 気 使 用 日 数 (Pulmonary:MV) 日

709 HFO使用(Pulmonary:HFO) 1:はい、2:いいえ

710肺 サ ー フ ァ ク タ ン ト 投 与 回 数 (Pulmonary:STA) 回

711一 酸 化 窒 素 吸 入 療 法 日 数 (Pulmonary:NO) 日

712慢性肺疾患(Pulmonary:CLD) 1:はい、2:いいえ

713慢性肺疾患病型(Pulmonary:CLD:type)(慢性肺疾患の場合)1:Ⅰ、2:Ⅱ、3:Ⅲ、4:Ⅲ´、5:

Ⅳ、6:Ⅴ、7:Ⅵ

714慢性肺疾患ステロイド療法(Pulmonary:CLD:steroid)(慢性肺疾患の場合のステロイド療法)1:はい、2:い

いえ 

715慢性肺疾患修正36週(Pulmonary:CLD:36wk) (慢性肺疾患の場合、修正36週での酸素投与)1:はい、2:い

いえ 

F 新生児循環器疾患

801動脈管開存症(Cardiac:PDA)(症候性のPDA)         1:はい、2:いい

802 PDAに対するインダシン投与(Cardiac:PDA:indacine)(症候性PDAの場合)    1:は

い、2:いいえ

803 PDA結紮術(Cardiac:PDA:surgery)(症候性PDAの場合) 1:はい、2:いいえ

851晩期循環不全ステロイド療法(Cardiac:adrenal:steroid) 1:はい、2:いい

G 新生児神経疾患

901 新生児けいれん(Neurologic:seizure) 1:はい、2:いいえ

902 脳室内出血(Neurologic:IVH) 1:はい、2:いいえ

903 脳室内出血重症度(Neurologic:IVH:grade)(IVHの場合) 1:Ⅰ度、2:Ⅱ度、3:Ⅲ度、4:Ⅳ度

904 脳室内出血後水頭症(Neurologic:IVHhydrocephalus)(IVHの場合) 1:はい、2:いいえ

905 脳室周囲白質軟化症嚢胞性(Neurologic:cPVL) 1:はい、2:いいえ

906 低酸素虚血性脳症(Neurology:HIE) 1:はい、2:いいえ

H 新生児感染症

1001

子宮内感染症(Infection:intrauterine) 1:はい、2:いいえ

1002敗血症(Infection:sepsis) 1:はい、2:いいえ

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1003抗菌薬使用(Infection:antibiotics) 1:はい、2:いいえ

I 新生児消化器疾患

1101

中心静脈栄養(Gastrointestinal:hyperalimentation) 1:はい、2:いいえ

1102壊死性腸炎(Gastrointestinal:NEC) 1:はい、2:いいえ

1103特発性消化管穿孔(Gastrointestinal:perforation) 1:はい、2:いいえ

J 聴覚スクリーニング

1201聴覚スクリーニング(Hearing:screening:result) 1:正常、2:異常

K 未熟網膜症

1301

ROP病期(ROP:stage)(最重症時の病期)      1:Ⅱ、2:Ⅲ前期、3:Ⅲ中期、4:Ⅲ後期以上

1302

ROP治療(ROP:Tx) 1:はい、2:いいえ 

L 診断

1402

DPC病名(Diagnosis:DPC)                      . ICD10

1411先天異常(Diagnosis:malformation) 1:はい、2:いいえ 

1412先天異常疾患名(Diagnosis:malformation:disease)(先天異常を合併する場合) 手引表1からコード入力

疾患

code

1413

手術(Diagnosis:malformation:surgery) (先天異常に対する手術) 1:はい、2:いいえ

M サマリー

1501

経 腸 栄 養 100ml/kg/day(Summary:feeding:100) 日

N 退院情報

1601退院時生後日数(Discharge:day)     日

1602

死亡退院(Discharge:death) 1:はい、2:いいえ

1603剖検(Discharge:autopsy)(死亡退院の場合) 1:はい、2:いいえ

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1604

死亡原因(Discharge:causeofdeath:code)(死亡退院の場合) 手引表2からコード

入力

死亡

code

1605退院先(Discharge:home) 1:自宅、2:その他

1606転送先(Discharge:transfer)(自宅以外への退院の場合) 1:出生病院、2:他院NICU、3:自院小児科、

4:他院小児科、5:障害児施設、6:乳児院

1607

HOT(Discharge:oxygen) 1:はい、2:いいえ

1608気管切開(Discharge:tracheostomy) 1:はい、2:いいえ

1609退院時体重(Discharge:weight)                  g

1610退院時身長(Discharge:length)                    .

cm161

1退院時頭囲(Discharge:HC)                    .

cm

表3 参加施設-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

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釧路赤十字病院岩手医科大学仙台赤十字病院福島県立医科大学附属病院獨協医科大学自治医科大学群馬県立小児医療センター

埼玉県立小児医療センター

埼玉医科大学総合医療センター

東京女子医科大学愛育病院日本大学帝京大学

昭和大学

日本赤十字社医療センター

東邦大学

都立墨東病院

神奈川県立こども医療センター

山梨県立中央病院

長野県立こども病院

長岡赤十字病院富山県立中央病院静岡県立こども病院

聖隷浜松病院

名古屋第一赤十字病院国立病院機構三重中央病院京都第一赤十字病院奈良県立医科大学附属病院大阪府立母子保健総合医療センター

愛仁会高槻病院

大阪市立総合医療センター

兵庫県立こども病院

倉敷中央病院

県立広島病院国立病院機構香川小児病院愛媛県立中央病院

聖マリア病院

久留米大学

北九州市立医療センター

福岡大学熊本市民病院沖縄県立中部病院

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-----  ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

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図 1 施設別症例数

図 2 出生体重別死亡退院率

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図3 施設別死亡率

図4 リスク調整後の施設別死亡率

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図5 施設別の NICU退院時修正在胎期間

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厚 生 労 働 科 学 研 究 費 補 助 金 ( 子 ど も 家 庭 総 合 研 究 事

業 )

分 担 研 究 報 告 書

ハ イ リ ス ク 児 の フ ォ ロ ー ア ッ プ 体 制 構 築 に 関 す る 研 究

分 担 研 究 者   三 科   潤   東 京 女 子 医 科 大 学 母 子 総 合 医

療 セ ン タ ー   助 教 授

研 究 要 旨 : 周 産 期 医 療 の ア ウ ト カ ム を 評 価 す る 為 に は 、

優 れ た フ ォ ロ ー ア ッ プ デ ー タ が 不 可 欠 で あ る 。 総 合 周

産 期 母 子 医 療 セ ン タ ー に お け る フ ォ ロ ー ア ッ プ 体 制 構

築 を 目 的 に 、 本 年 度 は そ の 基 礎 資 料 を 得 る た め の 調 査

を 行 っ た が 、 共 通 の プ ロ ト コ ー ル に よ る 健 診 を 実 施 し

て い る の は 38 施 設 の 内 、 50% に す ぎ な い こ と が 判 明 し

た 。 全 総 合 周 産 期 母 子 医 療 セ ン タ ー を 退 院 し た 極 低 出

生 体 重 児 が 、 共 通 の プ ロ ト コ ー ル に よ る 3 歳 の フ ォ ロ

ー ア ッ プ 健 診 を 受 け ら れ る 体 制 を 作 る た め の 方 策 を 検

討 し た 。 ま た 、 フ ォ ロ ー ア ッ プ の 質 を 高 め る た め に 、

フ ォ ロ ー ア ッ プ 外 来 で の 診 断 お よ び 支 援 の マ ニ ュ ア ル

を 作 成 す る 。 こ の う ち 、 初 年 度 は key-age の フ ォ ロ ア ッ−プ デ ー タ ベ ー ス 、 健 診 マ ニ ュ ア ル 、 地 域 全 体 で の ハ イ

リ ス ク 児 フ ォ ロ ア ッ プ 体 制 確 立 、 在 宅 医 療 マ ニ ュ ア−ル 作 成 、 地 域 に お け る ハ イ リ ス ク 児 早 期 支 援 、 障 害 児

( 者 ) 地 域 療 育 等 支 援 事 業 の 活 用 等 の 地 域 福 祉 機 関 と の

連 携 . フ ォ ロ ー ア ッ プ に 利 用 で き る 社 会 資 源 活 用 等 に

つ い て 検 討 し た 。

研 究 協 力 者 :

安 達 み ち る   東 京 女 子 医

科 大 学 リハビ リ テ ー ション 科

            主 任 技 師

岡 本 伸 彦     大 阪 府 立 母

子 総 合 保 健 医 療 セ ン タ −            発 達 小 児 科

北 村 真 知 子   大 阪 府 立 母

子 総 合 保 健 医 療 セ ン タ −            臨 床 心 理 士

河 野 由 美     東 京 女 子 医

科 大 学

母 子 総 合 医 療 セ ン タ

  講 師−斎 藤 佐 和     筑 波 大 学 障

害 学 系   教 授

佐 藤 和 夫     国 立 病 院 機

構 九 州 医 療 セ ン タ ー

            小 児 科   部

佐 藤 紀 子     愛 育 病 院 小

児 科   部 長

側 島 久 典     川 崎 医 科 大

学 新 生 児 科   教 授

高 田   哲     神 戸 大 学 医

学 部 保 健 学 科   教 授

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田 中 真 也     大 阪 府 立 母

子 総 合 保 健 医 療 セ ン タ −中 村 友 彦     長 野 県 立 こ

ど も 病 院 新 生 児 科   部 長

永 田 雅 子     名 古 屋 第 二

赤 十 字 病 院   臨 床 心 理 士

鍋 谷 ま こ と   淀 川 キ リ ス

ト 教 病 院 小 児 科   医 長

船 戸 正 久   淀 川 キ リ ス

ト 教 病 院 小 児 科   医 務 部

本 間 洋 子     自 治 医 科 大

学 小 児 科   助 教 授

宮 田 広 善     姫 路 市 総 合

福 祉 通 園 セ ン タ ー   所 長

渡 辺 と よ 子   墨 東 病 院 総

合 周 産 期 母 子 医 療 セ ン タ

ー    

            新 生 児 科

部 長

A . 研 究 目 的

周 産 期 医 療 の ア ウ ト カ

ム 評 価 で 最 も 重 要 な 点 は

治 療 後 、 数 年 以 上 後 の 発

育 ・ 発 達 ・ 神 経 機 能 ・ 行

動 評 価 を 客 観 的 指 標 に 基

づ い て 実 施 す る こ と で あ

る 。 本 研 究 参 加 施 設 に お

い て 行 わ れ る 多 施 設 ラ ン

ダ ム 化 比 較 試 験 に お け る

児 の 予 後 評 価 の 為 に 必 要

な 、 フ ォ ロ ー ア ッ プ 体 制

を 構 築 し 、 key age に は 、

ハ イ リ ス ク 児 フ ォ ロ ー ア

ッ プ 研 究 会 に よ り 作 成 さ

れ た プ ロ ト コ ー ル を 用 い

た 健 診 を す べ て の 参 加 施

設 で 実 施 で き る よ う に す

る 。 ま た 、 フ ォ ロ ー ア ッ

プ の 質 を 高 め る た め に 、

フ ォ ロ ー ア ッ プ 外 来 で の

診 断 お よ び 支 援 の マ ニ ュ

ア ル を 作 成 す る 。

B . 研 究 方 法

本 年 度 は 、 フ ォ ロ ー ア

ッ プ 体 制 構 築 の た め の 、

基 礎 資 料 を 得 る た め に 、

ハ イ リ ス ク 児 の フ ォ ロ ー

ア ッ プ に 関 す る ア ン ケ ー

ト 調 査 を 全 て の 総 合 周 産

期 母 子 医 療 セ ン タ ー 38 施

設 を 対 象 に 行 っ た 。 37 施

設 (97.4%) の 回 答 を 解 析 し

た 。

ま た 、 診 断 お よ び 支 援 の

マ ニ ュ ア ル 作 成 を 準 備 し 、

そ の 一 部 を 作 成 し た 。 以

下 の 項 目 の 内 、 (1) 〜 (5) に

つ い て 検 討 、 作 成 し 、 (6)以 下 の 事 項 に つ い て は 作

成 を 準 備 し た 。

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(1)key-age のフォロ アップデータベース、−マニュアルは平成 15年度中村班作成のもの

を活用する。

(2)地域全体でのハイリスク児フォロ アッ−プ体制確立の検討:(例)長野県のハイリス

ク児フォロ アップ体制−(3)在宅医療マニュアル作成:(例)大阪府小

児在宅医療システム検討委員会

(4)地域におけるハイリスク児早期支援:

(例)神戸市「YOYO クラブ」

(5)地域福祉機関との連携.フォローアップに

利用できる社会資源活用:(例)障害児(者)地域療育等支援事業の活用

(6)発達課題別健診マニュアル

(脳性麻痺、AD/HD、高機能自閉症、学習障

害等)

(7)学童期のフォローアップ健診の検討

(8)フォローアップ外来における児と保護者

への支援策

(9)フォローアップ率向上のための方策

(10)ボーダーライン児・軽度発達障害児およ

び保護者への外来での支援

(11)虐待・ネグレクト症例への外来での対応

と支援

(12) 地域保健機関との連携の改善。

(13) 地域保育・教育との連携

C.研究結果

フォローアップ体制に関する調査結果

(1)フォローアップ研究会の統一プロトコー

ルを用いているのは約 50%であった。1歳 6か月,3歳健診での実施率が高く、6歳以上

の実施率は低かった。

(2)フォローアップ率は超低出生体重児の 3歳で約 80%,6歳で 70%,1000〜1500gの極低出生体重児では3歳で 60%,6歳で

45%であり,6歳で低下する。

(3)フォローアップは新生児病棟勤務の医師

が兼務している施設が殆どであり,小児神経

科医などの専門医師の不足を感じている。ま

た、40%の施設ではフォローアップに関わる

心理士は全くいない。これらの施設ではプロ

トコールで定められた発達・知能検査が施行

されていない。

(4)フォローアップの結果をデータベースに

入力する人的・時間的余裕がない

(5)50%以上の施設で育児支援のための地域

ネットワークの必要性を認識しているが実際

にはできていない。また、育児支援として活

用できる資源についての情報が不足している。

フォローアップ健診の診断・支援マニュアル

作成

・key-age(修正 1歳 6か月、3歳、6歳、

小学 3年)のフォロ アップデータベース、−マニュアルは平成 15年度中村班にて作成の

ものを活用する。

・地域におけるフォローアップ体制の構築:

長野県の場合(研究協力者:中村友彦)

 長野県は広く、定期的な検診のためにこど

も病院に通ってくるのは、時間的にも経済的

にも家族、子どもに負担は大きい、急性期を

こども病院で過ごした後は地域の病院に転院

して、その病院より育児指導、在宅支援を受

けて退院し、家庭医的役割も地域の病院が果

たしているので、発達フォローアップも地域

の医療機関ならびに保健所で実施することが

重要と考え、「極低出生体重児フォローアッ

プ事業・信州モデル」を県の事業として構築

した。地域と連携したフォローアップ体制の

構築のために、県の保健師に個別発達検査を

してもらうことにより退院後のフォローアッ

プを地域医療機関と保健所が連携した連携シ

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ステムを県の事業として構築するよう提案し

開始となった。

・地域におけるハイリスク児の早期支援:神

戸市の場合(研究協力者:高田 哲)

 NICU退院後のハイリスク児を支えるため

に、神戸市と協力して、極低出生体重児のた

めの親子教室「YOYO クラブ」を運営してき

た。 神戸市及び周辺地域に居住する該当者の

40-50%がこのプログラム(2年間、20回)

に参加し、参加者からはその意義が高く評価

されている。一方,児童虐待は、このような

センター方式の育児支援事業に参加しない家

族の中に生じることが多い。

平成 15年度に親子教室への参加を呼び掛け

た 156 組のうち、「参加」の返信がなかった

92 組に対して、1)不参加の理由、2)フォ

ローアップの現状、3)親子教室に対する意

見・要望などを中心に電話インタビューを試

みた。あらかじめ調査の主旨を説明して、同

意の得られた 66 組(71.7%)から回答が得

られた。21 組は不在等で連絡が取れず,5 組

はインタビューを拒否した。在胎週数が少な

く出生体重が軽い児の家族がより多く参加し

ていた。不参加者のうち 63 組は病院に定期

受診し,47 組は保健師の訪問を受けていた。

一方、不参加の親子には、参加したいにもか

かわらず参加できない例も存在し、その中で

多胎児をもつ家族が目立った。三胎以上にな

ると全く参加した親子はいなかった。

・地域における在宅医療の支援体制:大阪府

の場合(研究協力者:船戸 正久)

 医療技術の急速な発達と共に、従来病院で

行っていた酸素療法や人工呼吸法などが在宅

医療として行なえるようになった。それと同

時に児と家族の QOL と、それを地域で支え

る支援体制の構築が益々重要な時代となって

きた。

 大阪府医師会勤務医部会では、1992年に

小児の在宅医療システム検討委員会を設置し

こうした問題を総合的に検討することを始め

た。93年には「大阪府における小児のハイ

テク在宅医療実態調査」を実施、94年には

その調査に基づき「小児のハイテク在宅医療

の二次調査」を実施した。その調査から在宅

医療に対する総合的な支援体制の不備が指摘

された。96年には「家族の QOL の実態調

査」を実施し、家族の QOL 支援の重要さを

指摘した。98年には第 2回の実態調査を行

い、小児の在宅医療が年々増加している現状

が捉えられた。99年には愛の輪基金からの

助成を受け、大阪養護教育と医療研究会にて

「養護学校における医療的ケアに関するアン

ケート調査」を実施した。その結果大阪府下

における養護学校における一般教諭の医療的

ケアの問題がクローズアップされた。それを

支援する医療的バックアップや研修会への希

望が大きいことがわかった。そのアンケート

に基づき、2000年には「小児の在宅生活を

支える医療的ケアマニュアル」(大阪府医師

会発行)の本を発刊、さらに 02年にはこの

本を基に大阪府医師会・大阪府教育委員会合

同製作の「医療的ケアマニュアルビデオ」を

製作した。現在講習会や研修会などで使用で

きる「医療的ケア人形」を製作中である。

 本研究班では、そうした基礎的研究を基に

具体的に、医療従事者だけでなく、家族や一

般的な人々にも理解できる「小児の在宅医療

マニュアル」を作成する。

・地域福祉機関との連携.フォローアップに利

用できる社会資源活用(研究協力者:宮田広

善)

 フォローアップは「育児支援」の立場を明

確にする必要がある。利用できる社会資源活

用としては、施設としては、保健所・保健セ

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ンター、保健センターの育児教室、児童デイ

サービス事業、障害児通園施設、肢体不自由

児入所施設等があり、福祉制度としては、障

害児(者)地域療育支援事業があり、これは

療育等支援施設事業と療育拠点施設事業から

なる。療育等支援施設事業は人口 30万人程度の地域(障害保健福祉圏域という)に、2ヶ所程度の施設を指定する。現在、全国で約

600ヶ所の施設が受託して活動している 事。業の内訳は、大きく2つに分けられている。(1)地域生活支援事業

コーディネーター(ソーシャルワーカー、ケ

ースワーカーなどと呼ばれることもある)を

配置し、障害のある子どもや親、障害のある

人から相談を受け、問題の解決を図ったり福

祉制度の利用を進めたりして、地域での生活

を支援する。訓練などの専門的技術が必要な

場合、次の「療育支援事業」や地域の専門機

関(病院など)の利用につなげていくことも

ある。

(2)訪問・外来・施設支援などによる療育支援

施設がもっている診断や検査、訓練などの

「専門機能」を、外来(施設に来ていただい

て提供する)、訪問(家庭や地域の公民館な

どに出かけて提供する)、施設支援(保育所

などに入園している場合に保育所の保育士等

に研修などを実施して子どもとの関わり方な

どを指導する)などの方法によって提供する。

D.考察総合周産期母子医療センターにおけるフォ

ローアップ体制に関する検討:

総合周産期母子医療センターにおけるフォロ

ーアップ外来の実態に関するアンケート調査

を行い,ハイリスク児フォローアップの問題

点を検討した.統一フォローアッププロトコ

ールの普及率が低いこと,フォローアップ外

来の担当医が不足していること,心理士が不

在のため発達知能検査ができないこと,フォ

ローアップの地域化はほとんど進んでいない

こと,育児支援として活用できる資源につい

ての情報が少ないことが明らかとなった.フ

ォローアップ体制の調査結果から周産期医療

のアウトカム指標として活用でき,全総合周

産期母子医療センターで実施可能なフォロー

アップの具体的な実施案として,総合周産期

母子医療センターを退院した出生体重 1500g未満のすべての児が、新版 K式発達検査を含

むフォローアップ研究会プロトコールによる

3歳健診を受けられる体制を作る。

地域におけるフォローアップ体制の構築:県

内で出生する極低出生体重児がすべて同じく

フォローアップでき、その結果を療育、教育

体制の整備につながるような地域におけるシ

ステム作りを行う。

地域におけるハイリスク児の早期支援:早期

支援プログラムは参加者からはその意義が高

く評価されているが、これまでの不参加者へ

の調査により、参加したいにもかかわらず参

加できない例も存在し、その中で多胎児をも

つ家族が目立った。今後、センター方式の教

室と保健師による訪問指導による在宅支援を

組み合わせて支援していく必要があると考え

られた。

地域における在宅医療の支援体制:基礎的研

究を基に、NICU退院後の児の在宅医療の支

援のために、医療従事者だけでなく、家族や

一般的な人々にも理解できる「小児の在宅医

療マニュアル」を作成する必要がある。

・福祉と医療の連携体制:フォローアップと

連携・協力すべき福祉・保健・教育について

の情報を提示した。次年度以降は具体的な連

携方法や利用方法などについて検討する。

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E.結論 フォローアップ体制の調査結果から周産期

医療のアウトカム指標として活用でき,全総

合周産期母子医療センターで実施可能なフォ

ローアップの具体的な実施案として,平成

17年度に総合周産期母子医療センターを退

院した出生体重 1500g未満のすべての児が、

新版 K式発達検査を含むフォローアップ研究

会プロトコールによる 3歳健診を受けられる

体制を作り、平成 18年度にフォローアップ

健診を実施し予後調査を行う。また、フォロ

ーアップ外来における診断および支援マニュ

アルを完成させる。

F.健康危険情報

なし

G.研究発表

論文発表

1) 三科 潤.新生児の診察法. 小児科学 第

9版(五十嵐隆編)東京.文光堂;2004.pp70-792) 三科 潤.新生児聴覚スクリ ニング− .日本

小児科学会雑誌 2004;108(12):1449-14533) 三科 潤.新生児の聴覚スクリ ニング− .小児内科 2004;36(12):1938-19424) 三科 潤.新生児聴覚スクリ ニングの理念−と実際. ENTONI 2004;33(1):9-145)三科 潤.新生児聴覚スクリ ニングの現状−と 今 後 の 課 題 . 発 達 障 害 医 学 の 進 歩

2004;16:61-68

学会発表

1)三科 潤:新生児聴覚スクリ ニング− . 第32回日本マス・スクリーニング学会教育講

演,仙台,20042)三科 潤:低出生体重児の成長と発達. 第

18回小児成長障害研究会,東京、20043 ) Mishina J.: Newborn hearing Screening in Japan. The first Japan-China-Korea Pediatric Forum. Tokyo. 20044) Mishina J.: Newborn hearing Screening in Japan. The 5 th Asia-Pacific Regional Meeting of International Society for Neonatal Screening. Shanghai. 2004

H.知的財産権の出願・登録状況

なし

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厚生労働科学研究費補助金(子ども家庭総合研究事業)研究報告書

分担研究報告書

ハイリスク児のフォローアップ体制構築に関する研究

地域と連携したフォローアップ体制の構築に関する研究

分担研究者 三科 潤 東京女子医科大学母子総合医療センター 助教授

 研究協力者 中村友彦 長野県立こども病院総合周産期母子医療センター新生児科 部長

研究要旨:地域と連携したフォローアップ体制の構築のために、県の保健師に個別発達検査をし

てもらうことにより退院後のフォローアップを地域医療機関と保健所が連携した連携システムを

県の事業として構築するよう提案し開始となった。県内で出生する極低出生体重児がすべて同じ

くフォローアップでき、その結果を療育、教育体制の整備につながるようなシステム作りを行い

たい。

A.研究目的            

 長野県は広く、定期的な検診のためにこど

も病院に通ってくるのは、時間的にも経済的

にも家族、子どもに負担は大きい、急性期を

こども病院で過ごした後は地域の病院に転院

して、その病院より育児指導、在宅支援を受

けて退院し、家庭医的役割も地域の病院でし

て頂いているので、発達フォローアップも地

域の医療機関ならびに保健所でして頂くこと

が重要と考え、「極低出生体重児フォローア

ップ事業・信州モデル」を県の事業として構

築した。 

B.研究方法

 長野県では、約20年前より、保健所でハイ

リスク児の個別発達検査を保健師が行うこと

を目的に、10年以上の実務経験のある県保健

所所属の保健師を年に1 2人、新版− K式の発

達検査技術習得のための研修派遣をしており、

2004年末、県の保健所で勤務している保

健師の1/3がその研修終了者であり、各地域保

健所には複数の新版K式発達検査のできる保健

師が配置されていた。ハイリスク新生児の育

児支援には地域の保健師の支援が不可欠であ

る。医療機関からの依頼で、1才半、3才の新

版K式の発達検査を地域保健所で保健師が行い、

その結果を医療施設へ連絡し、必要があれば

さらに市町村の保健師にフィードバックし育

児支援、療育施設と連携したフォローアップ

を行う地域医療機関と県—市町村の保健所が

連携した「極低出生体重児フォローアップ事

業・信州モデル」を2004年10月から長野県

の事業として開始するよう提案した。

(倫理面への配慮)

長野県立こども病院の倫理・運営規定に従っ

て施行した。

C.研究結果

 父母向けに、極低出生体重児に特徴的な疾

患や、今後の育児での注意する点、フォロー

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アップ検診の意義、地域の支援体制を記載し

た極低出生体重児専用の育児手帳「たいせつ

なきみ」を作成し、県内で出生した極低出生

体重児すべてに退院する医療機関より配布し

てもらうようにした。各保健所の保健師には

「極低出生体重児保健指導指針」を作成し配

布し(図3)、私達は各保健所を訪問して、極

低出生体重児のフォローアップの現状、意義

を伝え、各地域周産期センター、高度周産期

医療施設で実際に発達フォローをしている小

児科医にもその意義を説明しシステムを円滑

に運用できるようお願いし、長野県で出生し

た極低出生体重児が「すべて、いつでも、ど

こでも、同じ」個別発達フォローができるシ

ステムを作成した。その結果2005年2月現在、

4地域周産期医療センター、20高度周産期医

療施設すべてが、このシステムに参加してお

り、「急性期は総合周産期母子医療センター、

地域周産期センターで、慢性期、発達フォロ

ーは地域の医療機関・保健所で」の体制が整

いつつある。今後フォローアップから脱落し

ないようなシステム作りとフォローアップ結

果の台帳管理を行っていきたい。

D.考察

極低出生体重児フォローアップ事業・信州

モデルの課題

1.療育への継続

 今回の個別発達検査を行うに当たって、療

育の現場からは異常があると診断された児に

対して、十分な療育をおこなう、体制、施設

人員が絶対的に不足している現状を整備して

からでなければ、「検査をして異常児をみつ

けることだけでは無責任だ」との意見もあっ

たが、総合周産期母子医療センターの情報セ

ンター機能の一つとして、県内で出生したす

べての極低出生体重児のフォローアップ状況

を台帳管理することによって、何人の児が、

どこで、どのような療育が必要かを正確に把

握でき、そのデータを元に、「どのような職

種の療育担当者がどこで何人必要で、どの位

の規模の施設が何カ所必要か」と具体的に行

政に訴えていくことができると考えている。

2.教育への継続

 今回の検診は、1才半、3才に限り、就学前

(6才)、学童期(9才)の検診については、

今後の課題である。3才検診までで発見され

なかった学習障害などを発見するためにフォ

ローアップ研究会で推奨する WISK III の検

査のできる医療機関、行政機関は長野県内で

は限られており、今後教育機関とも連携した

「極低出生体重児フォローアップ事業・新信

州モデル」を構築していきたい。

E.結論              

 長野県では「急性期は総合周産期母子医療

センター、地域周産期センターで、慢性期、

発 達フォロー は地域の 医 療機関 ・ 保 健所

で!」の体制が整いつつある。今後フォロー

アップから脱落しないようなシステム作りと

結果の台帳管理を行い、さらに療育、教育に

つながるシステムを構築していきたい。 

F.健康危険情報

特になし

G.研究発表            

1. 論文発表            

1. 中村友彦 低出生体重児、ベッドサイドの

新生児の診かた、南山堂、2004、207-2242. OSUKE IWATA,TOMOHIKO NAKAMURA,OSUKE IWATA, SACHIKO IWATA, MASANORI TAMURA, SHINNICHI HIRABAYASHI, NOBORU FUEKI, YOSHIAKI KONNDOU, HIDEKI KIHARA Periventricular low intensities on fluid

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attenuated inversion recovery imaging in the newborn infant: Relationships to chronic white matter lesions. Pediatrics Intermational 2004; 46: 141-1493. OSUKE IWATA,TOMOHIKO NAKAMURA,OSUKE IWATA, SACHIKO IWATA, MASANORI TAMURA,SHINNICHI HIRABAYASHI, NOBORU FUEKI, YOSHIAKI KONNDOU, HIDEKI KIHARA Periventricular low intensities on fluid attenuated inversion recovery imaging in the newborn infant: Relationships to the clinical date and long-term outcome. Pediatrics Intermational 2004; 46: 150-1574. 中村友彦 慢性肺障害防止のための新生児へ

の早期ステロイド投与の効果と問題点.日本周

産期 新生児医学会雑誌・ 2004; 40: 697-6995. Zhang Erquan,Tomohiko Nakamura, Takehiko Hiroma,Takeshi Sahashi, Atsuko Taki, Tatsuya Yoda. A Randomized Control Study of Airway Lavage with Exogenous Surfactant with or without Chest Physiotherapy in an Animal Model of Meconium Aspiration Syndrome Pediatrics Intermational (in press)

2. 学会発表            

1. 山崎和子、中村友彦. 長野県版ハイリスク新

生児フォローアップシステムの構築 日本周産

期 新生児医学会雑誌・ , 第 40巻第 2号・300・

20042.中村友彦. 極低出生体重児フォローアップシス

テム信州モデル. 第 113回長野県産科婦人科医

会学術講演会, 2004,10,24(長野)   

(発表誌名巻号・頁・発行年等も記入)

                  

H.知的財産権の出願・登録状況  

1. 特許取得          

 特になし

2. 実用新案登録         

 特になし

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厚生労働科学研究費補助金(子ども家庭総合研究事業)研究報告書

分担研究報告書

ハイリスク児のフォローアップ体制構築に関する研究

神戸市における極低出生体重児親子教室の概略と今後の課題〜教室に参加できない親子の現状〜

分担研究者 三科潤 東京女子医科大学母子総合医療センター助教授

研究協力者 高田 哲     神戸大学医学部保健学科   教授

研究要旨:NICU退院後のハイリスク児を支えるために、私達は神戸市と協力して、極低出生体重児

のための親子教室「YOYO クラブ」(2年間、20回のプログラム)を運営してきた。神戸市及び周辺

地域に居住する該当者の 40-50%がこの事業に参加し、参加者からはその意義が高く評価されている。

一方,児童虐待は、このようなセンター方式の育児支援事業に参加しない家族の中に生じることが多

い。平成 15年度に親子教室への参加を呼び掛けた 156 組(修正 6ヶ月から 2ヶ月、神戸市内居住者

は全例)のうち、「参加」の返信がなかった 92 組に対して、1)不参加の理由、2)フォローアップ

の現状、3)親子教室に対する意見・要望などを中心に電話インタビューを試みた。あらかじめ調査

の主旨を説明して、同意の得られた 66 組(71.7%)から回答が得られた。21 組は不在等で連絡が取

れず,5 組はインタビューを拒否した。参加群と不参加群には在胎週数と出生体重に違いがあり、在

胎週数が少なく、出生体重が軽い児の家族がより多く参加していた。不参加者のうち 63 組は病院に

定期受診し,47 組は保健師の訪問を受けていた。一方、不参加の親子には、参加したいにもかかわ

らず参加できない例も存在し、その中で多胎児をもつ家族が目立った。平成 15年度の当教室の案内

対象には双胎 27 組、三胎 10 組、四胎1組が含まれており、参加群、不参加群に占める多胎の割合に

は有意差は認められなかったが、三胎以上になると全く参加した親子はいなかった。今後、センター

方式の教室と保健師による訪問指導を組み合わせていく必要があると考えられた。

A.はじめに

 低出生児では、NICU退院後も発達に関する両

親の不安が強く、地域の中での育児支援の体制

作りが不可欠である。私達は、地域の自治体、

大学、医療施設と協力して、センター方式の親

子教室「YOYO クラブ」を運営してきた。現在

では 130 組前後の極低出生体重児の家族がこの

教室に通っている。しかし、このような教室に

参加したくてもできない親子も多く、参加して

いない親子に対する育児支援が今後の課題とな

っている。そこで、当教室からの案内を出した

家族を対象に電話インタビューを行い、参加し

ていない親子の現状と不参加の理由について検

討してみた。

 

B. 教室(YOYO クラブ)の概要

 最初に、私たちが神戸市で実施している極低

出 生 体 重 児 とそ の家族に を対象 と した教室

(YOYO クラブ)の概要を紹介する。

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1.教室の歩み

当初、本教室は神戸大学と神戸市総合児童セ

ンターとの共同事業として開始されたが、平成

9年度から兵庫県立こども病院の周産期医療セン

ターを退院した子ども達にも対象を広げた。平

成 10年度からは、神戸市社会福祉協議会の委託

事業として予算化され、神戸地域の NICU基幹病院(神戸大学附属病院、兵庫県立こども病院、

神戸中央市民病院、済生会兵庫県病院)を退院

したすべての極低出生体重児の両親に案内を出

すようになった。現在では、東播磨地域の NICU基幹病院である加古川市民病院を退院した極低

出生体重児の両親にも案内を出しており、神戸

市だけではなく、阪神地域、東播磨地域から多

くの親子が参加している。

2.教室案内の方法

 各 NICU基幹病院から対象となる子ども達の

基本情報を知らせてもらい、入院していた病院

の NICU 病棟責任者と連名で家族に教室を案内

している。また、里帰り分娩や出生後に神戸市

内に転居してきた家族に対しては、神戸市公報

に掲載するとともに、各区の保健部が行う乳幼

児健診で教室の案内がなされている。教室は、2

年間、20回のプログラムを用意しており、現在

は、平成 15、16年度生合わせて 152人の極低出

生体重児(130 組の親子)が本教室に参加してい

る。

3.教室のクラスの編成と実施場所

 教室は、修正 6ヵ月から 2歳 6ヵ月までの 4 ク

ラスに分けられ、神戸市総合児童センター内に

ある育成室で開かれている。

4.教室のプログラム

教室のプログラムは、①親子での遊びのプロ

グラム(写真 1)、②親同士の話し合いのプログ

ラム(写真 2)からなっている。親子での遊び

では一緒に体を動かしたり、粘土遊びやおもち

ゃ作りなど親子が共同で作業を行う機会を増や

すようにしている。大形遊具を用いた遊びや七

夕飾りの作成など季節に応じて親と乳幼児が楽

しく過ごせるプログラムを工夫している。また、

自宅で親が子どもと遊ぶ時の参考となるように

絵本の読み聞かせや歌の時間も設けている。

さらに、夏休みの親子プール教室や動物園へ

の遠足などの屋外行事も設けて、母親以外の家

族の参加を促している。

写真 1 親子での遊び

親子で歌を歌いながら遊んでいる。会は子ど

も達の「お名前呼び」から始まる。

写真 2 母親同士の話し合い

専門家を交えて母親同士が育児に関連した

様々な問題を話し合う。感情を共有できる仲間

の存在は大きい。

5.教室のスタッフ

教室の運営は、医療関係者だけではなく、福祉

や教育に関する多様な専門家集団が協力して行

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なっている。毎回、小児神経科医、幼児教育者、

臨床心理士、保母、ケースワーカー、音楽指導

員、NICU スタッフなど約 20名が参加している。

また、医学部保健学科、発達科学部、幼児教育

科からも多くの学生・大学院生がボランテイア

として参加している(写真 3)。

写真 3 学生も一緒になって参加する。

 学生達は子ども達と遊びながら,発達の観察

ポイントを覚えていく。

6. 保育士、保健師、児童指導員の合同研修

 平成 15年度より、症例カンファレンス形式の

多職種による合同研修を行うようにしている。

実際の症例を取り上げ、様々な観点から育児支

援の方法を見直している。

7.ハイリスク児育児支援事業の成果

現代社会においては、子育て期の母親には孤立

感が強く、過剰なまでの育児情報に振り回され

て不要な不安を抱くことが多い。特に通常の出

産と異なった経験をもつ家族は、地域の育児グ

ループにも参加できない場合が多い。

 2年間、会に参加した家族のアンケートから

は次のような利点が指摘されている。

1)良く似た境遇の仲間と感情を共有できる。

2)様々な専門家集団によって見守られていると

いう安心感がある。

3)連続的な成長観察に基づいてアドバイスを受

けることによって、発達上の問題や障害を受け

入れやすい。

4)仲間同士の交流や自助グループ結成のきっか

けとなる。

 一方、参加した NICU スタッフからは、患

者・家族に視点をおいた看護のあり方を考える

きっかけとなったとの声が寄せられている

C. 調査の対象及び方法

 平成 15年度に親子教室から案内を郵送した

156 組の極低出生体重児親子を対象とした。前

述した神戸市内の 4つの周産期医療基幹病院並

びに東播磨地区の基幹病院から送付された紹介

用紙によって、子ども、家族に関する基本情報

を収集した。さらに「参加」との返信がなかっ

た 92 組の母親に対して、半構成式の電話インタ

ビューを実施した。66 組(71.7%)が電話イン

タビューに同意し、回収率は 71.7%であった。

21 組とは、転居、不在等によって連絡がつかず、

5 組はインタビューを拒否した。案内対象には

双胎 27 組、三胎 10 組、四胎1組が含まれてい

た。保健師の訪問状況については、家族からの

聞き取りと共に、神戸市内の各保健センターに

設けられた「子育て支援部」を通じて確認した。

D. 結果

1. 参加群と不参加群の比較

 参加群と不参加群を比較すると、参加群に在

胎週数が短く出生体重が軽い児が多かった。一

方、両群に占める多胎の割合には有意差は認め

られなかったが、三胎以上では、教室に参加し

た親子はなかった。また、不参加群より参加群

の方が神戸市内に居住している割合は有意に高

かった。また、教室に参加する大きな要因の一

つに自宅からの距離があることが明かとなった。

(表1)

表 1 参加群と不参加群の比較

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参加群

n:67(58

組)

不参加群

n:122(98

組)

在胎週数30週未満

30週以上

46 人

68.7 %

59   人

48.4 %

P<0.01

21  人

31.3 %

63 人

51.6 %

出生体重1,000g 未

1,000g 未

31  人

46.3 %

34  人

27.9 %P<0.05

36  人

53.7 %

88  人

72.1 %

胎児数単胎

多胎

46  組

79.3 %

72  組

73.5 %N.S

12  組

22  %

26  組

26.5 %

居住地 神戸市内

神戸市外

36  組

62.1 %

37 組

37.8 %P<0.01

22 組

37.9 %

61  組

62.1 %

2. 電話インタビューの結果

1)親子教室への不参加の理由

  「 遠 い 」 が 最 も 多 く 66 組 中 23 組

(30.3%)、次いで「双子や三つ子といった多

胎で あ る た め連れ て 行くの が 大変」 15 組

(19.7%)が多かった。また、「上の子がいて

外出しにくい」11名(14.5%)も目立った。そ

の他、母親の仕事復帰や児の健康状態などがあ

げられていた(表 2)。

表 2 不参加の理由

理由                 組数

遠い                  23

多胎のため連れて行くのが大変      15

上の子がいて外出しにくい        11

仕事復帰している。           10

心配事がない               9

保育所に入所               7

交通手段がない              4

体調不良                 3

平日のため                3

まだ外出を控えている           3

2)親子教室に対する意見・要望

 「遠い、あるいは三つ子といった理由で参加

できなかったが、ぜひ参加したかった。」とい

う声が7組から聞かれた。参加したかった理由

としては、他の極低出生体重児の親子との交流

や心配事に対する相談があげられた。多胎児の

母親の中には、参加時の外出ボランティアを求

める者も存在した。また、親子教室を平日では

なく、土日に開催してほしいという意見も聞か

れた。

3)フォローアップの現状

 病院の定期受診は、66 組中 63 組(95.5%)

が受診していると回答し、残りの3組は定期受

診を終了していた。保健所からの家庭訪問につ

いては、66 組中 47 組(71.7%)が訪問あり、

8組(12.1%)が保健所からの連絡はあったが

訪問はなし、7組(10.6%)は連絡・訪問のい

ずれもなかったと回答した。育児サークルなど

への参加状況については、参加しているのは 66組中 10 組(15.2%)であった。双子の育児サ

ークルに参加している母親からは、「双子でも

小さく生まれた子は少ないので、少し違和感を

覚えた。」という感想が聞かれた。

4)子どもの発達について

 多い項目順に、①心配・問題なし、順調に育

っている、②児の健康、③育児、④発達、⑤乳

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児健診に関してであった。児の健康については

視力の問題など低出生体重児であることに起因

する内容も多かった。育児の点では、とくに多

胎児の母親の発言が目立ち、「三つ子が動き出

したので大変。」「双子の離乳食の進め方が違

い、1日6回作って食べさせている。」といっ

た育児の苦労が語られていた。

E. 考察 神戸市は人口約 150万人の政令指定都市で、

私達が運営する親子教室は市内に居住するすべ

ての子ども達をその対象に含んでいる。また、

阪神間に大規模な周産期医療施設がないことよ

り、周辺都市に住む極低出生体重児も神戸市内

の周産期施設に搬送されることが多い。私達は、

これらの極低出生体重児の親子にも教室の門戸

を開いている。今回の調査結果より、親子教室

には、より小さく生まれ発達上のリスクの高い

児をもつ家族の方が参加していることが確認さ

れた。一方、不参加の親子には、親子教室に参

加したいにもかかわらず参加できない人たちも

存在し、その中では多胎児をもつ家族が目立っ

た。平成 15年度の当教室の対象には双胎 27 組、

三胎 10 組、四胎1組が含まれ、多くは不妊治療

を受けていた。15年度生の中には三胎以上の親

子の参加はなかった。また、双胎の場合でも、

両親揃って参加したり、祖母が一緒にくる場合

が少なくなかった。多胎児の育児では、人手が

ないと外出そのものが困難な状況と推察された。

また、外出に限らず、多胎児を育てる母親の育

児負担が想像以上に大きく、周囲のサポートを

必要としていた。今後、保健師を中心とした家

庭訪問の充実とともに、ボランティアなどによ

る外出支援の制度も必要である。多胎児の育児

経験者や育児に悩んでいる母親同士をつなげる

といった工夫も求められる。不妊治療の普及に

つれ、多胎児の占める割合が増加している現状

からも、これらの家族を対象とした育児支援は

今後ますます重要になると考えられた。

F. 結論1.センター方式の育児支援では、個別の家庭訪

問を組合わせることが必要である。

2.低出生体重児の育児支援においては、多胎児

の支援を充実させていく必要がある。

G. 論文及び学会発表

論文

1)医師は食育にどう関わるか .高田哲.小児

科臨床 57:(12 )2397-2403、2004.

学会発表

1)極低出生体重児の視知覚発達の特性.常石秀

市, 高田哲, 上谷良行, 松尾雅文第 46回日本小児神経学会(2004.7,15-17 東

京)

2)模倣動作「バイバイ」の発達について 松井

学洋 , 高 田 哲 .  第 51 回日本小児 保 健 学会

(2004.10.28-30 盛岡)

3)センター方式の極低出生体重児親子教室〜参

加できない親子の現状と課題〜 

山尾純子、高田哲. 第 51回日本小児保健学会

(2004.10.28-30 盛岡)

4)高機能広汎性発達障害児に対する「心の理

論」高次テストのコンピューター・ソフト開発

伊藤斉子、高田 哲 第 50回小児神経学会近畿

地方会(2004.11.27 大阪)

5)極低出生体重児の動作模倣「バイバイ」の発

達 .松井学洋,高田哲, 中富利香.第 49回日本

未熟児新生児学会(2004.12,5-7 横浜)

6)極低出生体重児の父親の母子への関わりと家

族形成〜早期育児期において〜中富利香、高田

哲第 14回日本新生児看護学会(2004.12,5-7 横浜)

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厚生労働科学研究費補助金(子ども家庭総合研究事業)

分担研究報告書

ハイリスク児のフォローアップ体制構築に関する研究

小児の在宅医療と医療的ケア

−小児の在宅医療マニュアル作成に向けて

    分担研究者  三科 潤 東京女子医科大学母子総合医療センタ 助教授−    研究協力者  船戸正久   淀川キリスト教病院小児科   医務部長

    研究協力者  鍋谷まこと  淀川キリスト教病院小児科    医長

    研究協力者  玉井普    淀川キリスト教病院小児科    部長

研究要旨:医療技術の急速な発達と共に、従来病院で行っていた酸素療法や人工呼吸法などが在

宅医療として行なえるようになった。それと同時に児と家族のQOLと、それを地域で支える支

援体制の構築が益々重要な時代となってきた。

 大阪府医師会勤務医部会では、1992年に小児の在宅医療システム検討委員会を設置し、こう

した問題を総合的に検討することを始めた。93年には「大阪府における小児のハイテク在宅医療

実態調査」を実施、94年にはその調査に基づき「小児のハイテク在宅医療の二次調査」を実施し

た。その調査から在宅医療に対する総合的な支援体制の不備が指摘された。96年には「家族の

QOLの実態調査」を実施し、家族のQOL支援の重要さを指摘した。98年には第2回の実態調査

を行い、小児の在宅医療が年々増加している現状が捉えられた。99年には愛の輪基金からの助成

を受け、大阪養護教育と医療研究会にて「養護学校における医療的ケアに関するアンケート調

査」を実施した。その結果大阪府下における養護学校における一般教諭の医療的ケアの問題がク

ローズアップされた。それを支援する医療的バックアップや研修会への希望が大きいことがわか

った。そのアンケートに基づき、2000年には「小児の在宅生活を支える医療的ケアマニュア

ル」(大阪府医師会発行)の本を発刊、さらに02年にはこの本を基に大阪府医師会・大阪府教育

委員会合同製作の「医療的ケアマニュアルビデオ」を製作した。現在講習会や研修会などで使用

できる「医療的ケア人形」を製作中である。 本分担研究班(三科班)では、そうした基礎的研

究を基に、具体的に医療従事者だけでなく、家族や一般的な人々にも理解できる「小児の在宅医

療マニュアル」を作成する予定である。

A.研究目的

 人工呼吸療法など医療技術の急速な進歩は

今まで生存不可能であった超重症児の長期生

存を可能にした。同時にこうした児がQOL(生命の輝き)を保ちながら生活するためには、医

療的ケアを含んだ地域の支援体制の構築が重

要となってきた。そのことはこうした重症児

の「より良い生と死」を含んだトータルケア

を考えなければならない時代になったことを

意味する。特に家庭や学校など地域における

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医療的ケアの問題は、もっとも大きな緊急課

題となっている。こうした現状の中今までの

我々が行ってきた基礎研究を振り返り、当分

担研究班(三科班)における「小児の在宅医

療と医療的ケア」の問題を分析し、最終的に

「小児の在宅医療マニュアル」作成に向けて

準備をすることを目的する。

B.研究方法

 大阪府医師会勤務医部会に設置された小児

の在宅医療システム検討委員会での過去12年間の活動と成果を分析し振り返ると同時に、

今後の「小児の在宅医療マニュアル」作成の

ための準備と考察を行なう。

C.研究結果

 大阪府医師会勤務医部会では、1992年小児

の在宅医療システム検討委員会を組織し、医

療技術の進歩に伴い増加しつつある小児のハ

イテク在宅医療の調査や研究を行ってきた。

まず大阪府下の病院小児科にアンケート調査

(1993年、1998年)を行い、在宅酸素療法、

在宅人工呼吸、在宅腹膜灌流、在宅中心静脈

栄養などハイテク在宅の推移を調べた。その

結果この5年間に全体で106例から196例(約

1.8倍)に増加していた。さらに1998年には、

「大阪養護教育と医療研究会」の参加者にア

ンケートを行い、特に養護学校における医療

的ケアの現状と医療関係者に対する要望につ

いて調査した。その結果、養護学校に医療的

ケアを必要とする児が増加し、学校の一般教

諭や養護教諭が医療的ケアに深く関わらざる

得ない状況が捉えられた。その内容は、経管

栄養(鼻腔チューブ、胃瘻チューブ)、口腔

内吸引、導尿、その他気管内吸引、酸素投与

薬剤吸入などであった。また医療関係者への

支援希望の内容は、研修会開催、主治医の指

導、緊急対応、病院実習、実技指導などであ

った。また学校医からの指導を希望する声も

あった。さらに2000年には、大阪府教育委員

会の協力を得て、大阪府下の養護学校におけ

る救急搬送の実態を調査した。その結果養護

学校での生徒数は減少傾向にあるが、医療的

ケアを必要とする児童は年々増加していた。

にもかかわらず病院への救急搬送数は大きく

変化ないか、減少傾向にあった。その原因も

痙攣、呼吸障害、外傷などが主であった。医

療的ケアと関係する例は11例であったが、職

員の医療的ケアと直接関係するものは1例もな

く、むしろ詰痰、導尿など医療的ケアができ

なかったために搬送する症例であった。

 こうしたアンケートをもとに、小児の在宅

医療システム検討委員会では、広げよう愛の

輪基金の助成を受けて「小児の在宅生活支援

のための医療的ケアマニュアル」を作成した

(2000年)。さらにこの本をもとに大阪府医師

会・大阪府教育委員会合同で、実際的な「医

療的ケアマニュアル」のビデオを製作した

(2002年)。2004年から大阪府医師会では、

勤務医部会で行っていた「小児の在宅医療シ

ステム検討委員会」を、府医師会直属の「小

児の医療的ケア検討委員会」に格上げし、学

校医を含んだ委員会として再編成した。現在

その委員会の下に「医療的ケア人形製作小委

員会」を組織し、研修会で利用できる医療的

ケア人形を製作の検討を行っている。

D.考察2003年度予算化した文部科学省のモデル校

における3行為(経管栄養、口腔内吸引、導尿

介助)の実践から、厚生労働省研究班におい

て「盲・聾・養護学校におけるたんの吸引等

の医学的・法律的整理に関する取りまとめ」

の報告書を作成した。それに基づき、厚生労

働省・文部科学省は、盲・聾・養護学校にお

ける看護配置の下で一般教員の医療的ケア

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(胃瘻栄養、鼻腔内吸引を含む)への参加を

認める通達を行った。そのための条件として

親の依頼、学校内手続き、医師の指示と指導

研修会の受講などが挙げられている。同時に

法的解釈として違法性の阻却をその根拠とし

た。すなわち形式的には医師法17条違反に該

当するが、当該行為の目的が正当であり、手

段が相当であるなどの条件を満たしている場

合は、違法性が阻却されると解釈をした。さ

らに新たな課題として、盲・聾学校や普通学

校における医療的ケアの問題、通学バスにお

ける医療的ケアの問題、校外学習時の医療的

ケアの問題など、まだ看護配置のない状況で

の医療的ケアをどうするかが次の大きな課題

となっている。さらに学校卒業後の通所施設

入所施設など介護施設における医療的ケアも

大きな問題となっている。とくにこうした介

護施設における医療的ケアの取り組みは皆無

といって過言ではない。また在宅で家族の

QOLを支えるナイトケアやレスパイトケアの

問題もまだ手がつけられていない。今後学校

医を含む医師会や看護協会が教育委員会と協

力して研修会などを開催し、こうした医療的

ケアを必要な児童を支える家庭や現場への支

援体制の構築が重要となると思われる。

 本分担研究班(三科班)では、小児の在宅

医療と医療的ケアの一般的な理解を深めるた

めに、医療従事者だけでなく、具体的に家族

や一般的な人々にも理解できる「小児の在宅

医療マニュアル」を作成することが重要であ

る。

E.結論1)大阪府医師会勤務医部会の設置された小

児の在宅医療システム委員会の活動を振り返

り分析した。

2)小児の在宅医療の発達と共に、子どもと

家族のQOLを支える地域の支援体制と医療的

ケアの問題が益々重要となってきた。

3)当分担研究班は、小児の在宅医療と医療

的ケアの一般的な理解を深めるために、医療

従事者だけでなく、具体的に家族や一般的な

人々にも理解できる「小児の在宅医療マニュ

アル」を作成する予定である。

G.研究業績

1.論文発表

1)船戸正久:学校ににおける看護配置と医

療的ケア. 大阪養護教育と医療研究会、

活動報告第7集、大阪養護教育と医療研究会

大阪、2005;pp3-35(1月発刊).2)斉藤利雄、船戸正久:小児の在宅医療に

おけるこころの問題に関するアンケート

調査、脳と発達、 2004;36(4):284-288.3)船戸正久、他:大阪府医師会・大阪府教

育委員会合同制作の「小児の在宅生活支

援のための医療的ケアマニュアル」ビデオ. 大阪医学、2004;37(3):20-25.4)船戸正久、他:長期人工呼吸療法を要す

る超重症児のQOLと転帰. 日児誌、2003;107(9):1224-1229.5)船戸正久:超重症児の在宅での医療的ケ

ア と QOL.   障 害 者問題 研 究 、 2003;31(1):21-29.6)船戸正久、他:後障害が予想される児の

周産期医療支援.   周産期医学、2001; 31:826-830. 7)船戸正久、他:在宅酸素/人工呼吸療法 . Neonatal Care春季増刊号、2001;177:234-240. 8)船戸正久、他:小児の在宅生活を支える

ための医療的ケアマニュアル. 大阪医

学、2001;35:1-5.9)船戸正久、他:新生児期におけるハンデ

イキャップ児への対応. 周産期医学、

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2000; 30:317-321

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厚生労働科学研究費補助金(子ども家庭総合研究事業)

分担研究報告書

ハイリスク児のフォローアップ体制構築に関する研究

「総合周産期母子医療センターにおけるハイリスク児フォローアップに関する調査研究」

分担研究者 三科 潤 東京女子医科大学母子総合医療センター 助教授

研究協力者 河野由美 東京女子医科大学母子総合医療センター 講師

研究要旨:総合周産期母子医療センターにおけるフォローアップ外来の実態に関するアンケート調査

を行い,ハイリスク児フォローアップの問題点を検討した.統一フォローアッププロトコールの普及

率が低いこと,フォローアップ外来の担当医が不足していること,心理士が不在のため知能発達検査

ができないこと,フォローアップの地域化はほとんど進んでいないこと,育児支援として活用できる

資源についての情報が少ないことが明らかとなった.アウトカム指標となる予後評価とハイリスク児

の育児支援のために総合周産期母子医療センターにおけるフォローアップ体制の整備が早急に必要で

ある.

A.研究目的

 全国の周産期医療システムの整備に伴い総合

周産期母子医療センターからは多くのハイリス

ク新生児が退院するようになってきたが,これ

らの児の受ける医療支援,社会的支援の整備は

新たな課題となってきている.フォローアップ

された結果の予後についての情報を周産期の医

療現場へのフィードバックはより良い医療を行

う上で必須である.

 これまでに極低出生体重児を対象として,ハ

イリスク児フォローアップ研究会のプロトコー

ルによる統一された健診とそのデータベース化

の推進を行ってきたが,実施は十分ではなく,

施設間,地域間での情報交換に制限が生じてい

る.本研究では総合周産期母子医療センターに

おけるハイリスク児のフォローアップの実態調

査を行い,その問題点を検討した.

B.研究方法

 ハイリスク児のフォローアップに関するアン

ケート調査を全ての総合周産期母子医療センタ

ー 38 施設を対象に行った.アンケート調査票に

は施設名,フォローアップの担当者名を記入し

てもらい,郵送法により回収を行った.回答の

得られた 37 施設(1 施設のみ返答なし)の結果

につき解析した.

 

C.研究結果

1.総合周産期母子医療センターにおけるフォ

ローアップ体制に関するアンケート調査

アンケート調査の内容と調査結果の詳細は資料

1のとおりであった.

2.アンケート調査結果のまとめ

アンケート調査結果から総合周産期母子センタ

ーのフォローアップ体制の問題点は以下のよう

にまとめられる.

1) 約 50%の施設では統一したプロトコールを

用いていない.1歳半,3歳の低年齢の時期では

プロトコールを用いているが,高年齢では行っ

ていない施設もある.(表 1)

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2) フォローアップ率は超低出生体重児の 3歳で

約 80%,6歳で 70%,1000~1500g の極低出

生体重児では3歳で 60%,6歳で 45%であり,

6歳で低下する.

3) ほとんどの施設でフォローアップは新生児病

棟勤務の医師が兼務しており,小児神経科医な

どの専門医師の不足を感じている.

4) 心理士がフォローアップに関わっている施設

は約 30%であり,40%の施設ではフォローアッ

プに関わる心理士は全くいない状況であった.

これらの心理士のいない施設ではプロトコール

で定められた発達・知能検査が施行されていな

い.

(表 1)5) フォローアップの結果をデータベースに入力

する人的・時間的余裕がない

6) 半数以上の施設で育児支援のための地域ネッ

トワークの必要性を認識しているが実際にはで

きていない.

7) 育児支援として活用できる資源についての情

報が不足している.

D.考察 総合周産期医療施設におけるフォローアップ

外来の現状を調査した結果,外来の担当は新生

児病棟担当の医師がほとんどで人数も十分でな

く,医師にとって負担となっていること,臨床

心理士,PT などのコメディカルの関わる割合も

低く,統一したプロトコールでの評価,障害を

もった児へのより適切な対応などが十分に行え

ない状況にあることが明らかとなった.

 より質の高い医療を提供するためには,高度

な周産期医療の現場となる総合周産期母子医療

センターは,その医療の結果である児の予後を

正しく評価する必要があることは明らかである.

まずすべての総合周産期母子医療センターの医

療者(特にフォローアップに関わる新生児医

師)は医療のアウトカム指標となる予後評価と

施設を退院するハイリスク児の発達・育児支援

のために共通したフォローアップシステムの構

築が不可欠であることを認識しなければならな

い.アンケートの中で一部の施設では独自のフ

ォローアップを行っているとの回答がみられた

ことからも,各施設の独自のフォローアップと

平行して行えるよう,共通の手法を用いて評価

する項目を選択,実施してくことが必要と考え

られた.

 現在半数の施設で使用しているハイリスク児

フォローアップ研究会健診プロトコールは,共

通のプロトコールとして最も望ましいプロトコ

ールと考えられるが,全施設で全ての Key ageを対象に実施することは実際的には困難な状況

である.一部の年齢のみ行っている施設(8 施設),プロトコールによるフォローアップを開始する

予定の施設(5 施設)が相当数あることからも,ハ

イリスク児フォローアップ研究会健診プロトコ

ールを活用し,一部変更するなどして共通した

プロトコールとすることが現実的であると考え

られた.

 以上のアンケート結果から周産期医療のアウ

トカム指標として活用でき,全総合周産期母子

医療センターで実施可能なフォローアップの具

体的な実施案として,以下のような案を提案し

た.

アウトカム指標のためのフォローアップ健診

(案)対象: 総合周産期母子医療センターを退院し

た出生体重 1500g未満のすべての児

方法: ハイリスク児フォローアップ研究会健

診用紙(3歳用)に従う.新版 K式発達検査法

を行う.3歳〜3歳半頃に実施する.

この案では心理士の不足のために発達検査がで

きない施設において検査が実施できれば 38 施

設中大多数の施設で実施できる可能性がある.

ただし発達検査のために,検査のみ他施設へ依

頼する,心理士を派遣するなどの対応が必要と

なり,各施設に応じた最適な方法を検討する必

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要がある.

 一方,フォローアップは各々の児の発達・育

児支援を提供するものでなければならない.こ

れらの支援を行うための資源活用についての情

報を共有することが,フォローアップの向上に

つながり,予後評価も可能となる.フォローア

ップをうける児,保護者が得られる支援の具体

的内容(各施設で可能なもの,保健所などの社

会的資源を活用したもの)をいくつかのニーズ

に分けてマニュアル化することを次年度以降ひ

きつづき本研究班で検討していく予定である.

E.結論 総合周産期母子医療センターにおけるハイリ

スク児のフォローアップの実態に関するアンケ

ート調査を行い,問題点を検討した.アウトカ

ム指標となる予後評価と施設を退院するハイリ

スク児の発達・育児支援のために統一したフォ

ローアップシステムの構築が早急に必要である.

F.研究発表

1.論文発表

1)河野由美,三科潤:フォローアップ,予後

(研修医のための周産期医療 ABC-新生児編) 周産期医学 34(8), 1293-1297, 2004

2.学会発表

1)河野由美,三科潤,渡部とよ子,本間洋子,

佐藤紀子:極低出生体重児の 1歳 6 カ月健

診における発育と発達−4 施設 574名の出生

体重別検討 第 107回日本小児科学会総会,

岡山,日児誌 108(2), 163, 20042)Kono Y, Mishina J, Hara H, Takamura T,

Sakuma I, and Nishida H:Survival and long term neurodevelopmental outcome of extremely premature infants less than 28 weeks gestational age; Is SGA a risk factor? The 21st International symposium on Neonatal Intensive Care. Milan, 2004

表 1 ハイリスク児フォローアップ研究会健診プロトコールの運用と Key age の発達・知能検査

施設名 健診プロトコール 1歳 6 カ月 3歳 6歳 9歳 検査施行者

1 知らない 遠城寺式 遠城寺式

WPPSI、田中ビネー、

津守・稲毛式 WISCIII医師、(5歳以上)心理士

2 全ての Key age を実施 K式 K式 WISCIII WISCIII 臨床心理士

3 全ての Key age を実施 K式 K式 WISCIII WISCR 心理士

4 全ての Key age を実施 K式 K式 WISCIII WISCIII 心理士、PT

5 全ての Key age を実施

K式,津守・稲毛式

K式,津守・稲毛式

K式、

津守・稲毛式 WISK-R 臨床心理士

6 全ての Key age を実施 K式 K式 WISCIII WISCIII 臨床心理士

7 全ての Key age を実施 K式 K式 WPPSI WISCIII 臨床心理士

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8 全ての Key age を実施 K式 K式 WISCIII WISCIII 心理士

9 全ての Key age を実施

K式または

遠城寺式

K式または

遠城寺式 WPPSI WISCR 臨床心理士

10 全ての Key age を実施 K式 K式 WISCIII WISCIII 心理士

11 全ての Key age を実施 遠城寺式 遠城寺式

WISCIII, WPPSI,K-ABC

WISCII, 田中ビネー, K-ABC 医師

12 一部の key age のみ実施 K式 K式 K-ABC K-ABC 臨床心理士

13 一部の key age のみ実施 K式 K式 K式 WISCIII 臨床心理士

14 一部の key age のみ実施

K式または

遠城寺式

K式または

遠城寺式     医師

15 一部の key age のみ実施 KIDS K式 WISCIIIWISCIII ( 予

定) 臨床心理士

16 一部の key age のみ実施   K式 WISCIII WISCIII 発達心理士

17 一部の key age のみ実施

K式,津守・稲毛式

K式,津守・稲毛式 WISCIII WISCIII 心理士

18 一部の key age のみ実施 稲毛式 K式 WPPSI WISCIII 臨床心理士

19 一部の key age のみ実施 K式K式、

田中ビネー WISCIII WISCIII 臨床心理士

20フォローアップ健診はしてい

るが発達検査はしていない

津 守 ・ 稲 毛

式、遠城寺式

遠城寺式、

田中ビネー

WISCIII、田中ビネー WISCIII 心理士

21 実施予定である

遠城寺式、

その他

遠城寺式、

その他 WISCR   臨床心理士

22 実施予定である          

23 実施予定である 遠城寺式 遠城寺式 WISCIII WISCIII発達心理士、

医師

24 実施予定である K式 K式 WISCIII WISCIII 臨床心理士

25 実施予定である 津守・稲毛式 津守・稲毛式 WISCIII  

臨床心理士、

医師

26 実施したいが開始時期は未定 遠城寺式 遠城寺式     医師

27 実施したいが開始時期は未定 津守・稲毛式 津守・稲毛式    医師

28 実施したいが開始時期は未定 津守・稲毛式 津守・稲毛式津守・稲毛式   医師

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29 実施したいが開始時期は未定 遠城寺式 遠城寺式 田中ビネー    

30 実施したいが開始時期は未定

K式,津 守 ・ 稲 毛

式、遠城寺式

K式、

遠城寺式     臨床心理士

31 実施したいが開始時期は未定 遠城寺式

K式、

遠城寺式     臨床心理士

32 実施したいが開始時期は未定 津守・稲毛式 津守・稲毛式 WISCIII WISCIII

医師、

言語療法士

(WISCIII)

33 実施したいが開始時期は未定 津守・稲毛式 津守・稲毛式    心理士、医師

34 実施したいが開始時期は未定 遠城寺式 K式     心理士

35 実施したいが開始時期は未定 津守・稲毛式 津守・稲毛式津守・稲毛式   医師

36

独自のフォローアップを行っ

ているので研究会プロトコー

ルの実施予定はない

K式,津 守 ・ 稲 毛

式、

遠城寺式

K式,津守・稲毛

式、

遠城寺式 津守・稲毛式   医師

37

独自のフォローアップを行っ

ているので研究会プロトコー

ルの実施予定はない 津守・稲毛式 田中ビネー WISCIII   臨床心理士

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資料 1: 総合周産期センターにおけるフォロ アップ体制に関する実態調査 − (結果) 

病院名 (平成 16年 6月現在の 38 施設中 37 施設より回答,未回答:1 施設 )

診療科名  ( )  

新生児科責任者名 (           )

フォロ アップ担当責任者名− (           )              

フォロ アップ担当心理士名− (           )

1.貴院では、どのような児をフォロ アップの対象にしていますか?−  (1) NICU退院児すべて     21  (2) 超低出生体重児

  (3) 極低出生体重児

  (4) 神経学的障害発生のリスクが高い児  16  (5) 先天異常児  

  (6) その他         

  (7) フォロ アップは自院で行っていない( − 0        へ委嘱している)  

  

2.フォロ アップが必要なハイリスク児は年間何例くらいですか?−    ( 約  50〜100   例、  この中、超低出生体重児 10〜60 (25) 例

        median(150 例)        1000g〜1499g  10〜60 (31) 例

3. 低出生体重児のフォロ アップのプログラム(受診時期、内容、期間など)を決めていますか?  −    (1.決めている  2.決まっていない)  回答なし

17 16     4

4.フォロ アップの期間は − 超低出生体重児   (5〜20 (9) 歳まで)

1000g 〜1500g  (3〜15 (6)  歳まで)

               低出生体重児    (1.5〜15 (3) 歳まで)

 極低出生体重児の学齢期健診を実施していますか?  (はい、いいえ)

 学齢期健診はどのような時期に実施していますか   23   14                  (通常の診察で、学校の休暇時、土曜日、日曜日、その他)

          11    11    1    0 

5.フォロ アップの頻度は: 退院後− 1歳まで  (1〜4 (1〜3) )か月毎

              1歳から 3歳まで  (2〜18 (6) )か月毎

              3歳以降    (6〜36 (12) )か月毎 

6. 極低出生体重児のフォロ アップ率(大体の)についてお答え下さい。− 超低出生体重児  3歳  約(20〜100 (80) )%、 6歳 約(10〜100 (70) )%

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      1000g 〜1500g   3歳 約(20〜100 (60) )%、 6歳 約(5〜100 (45) )%

7.フォロ アップ率を上げるための工夫をしていますか?  (はい、いいえ) − 無回答

  内容:     18  16   3NICU卒業生の会,退院時に計画表を渡す,バースデーカードで案内,

往復はがき,手紙,電話で案内

電話相談,予防接種, 台帳・カンファレンスで漏れをチェック

8.key-age の健診対象者を呼びだしていますか? (はい、いいえ)

   12  25  「はい」の場合、呼びだし作業をする人は (医師、事務、その他) 心理士

   3  1   4  49.貴院の NICU退院児のフォロ アップ外来について−  32(1)フォロ アップ専門の外来を設けている    − 週 (1〜5 (3) ) 回 又は 月 ( 6 ) 回    総計で 1枠半日を 1単位とすると  週 (1〜10 (3) ) 単位       週 (10〜70 (30) ) 名受診  3 (2)一般小児科診療の中で行っている      週 (10〜30 (10) ) 名受診

  フォロ アップ外来担当の医師は− 重複回答

   35 新生児科医 (病棟兼務) (1〜10 (3) 名、週延べ 2〜20 (9.5) 時間)

   9 新生児科医 (外来専任) (1〜2 (2)  名、週延べ 2〜15 (6.5) 時間)

   6 外来担当小児科医     (1〜4 (1)  名、週延べ 3〜9 (4)  時間)

   12 小児(発達)神経科医   (1〜3 (1)  名、週延べ 1.5〜12 (3.5) 時間)

   2 上記以外の場合      (眼科医,小児精神科医 )

               

10.医師以外のフォロ アップチ ムの職種、人数を記入して下さい。 − − (例 臨床(or 発達)心理士、PT など) 

心理士 (1〜5名) 20 施設, PT (1〜5名) 7 施設,OT (1名) 1 施設,ST (1名) 2 施設

保健師 (1名) 3 施設,病棟/NICU看護師 (1名) 3 施設,口腔外科医師 (1名) 1 施設

栄養士 (1名) 1 施設, 

      なし・無回答 12 施設 

11.フォロ アップ担当の臨床(− or 発達)心理士は、

 12 (1)常勤 (   名、週当たり延べ    時間フォロ アップに従事)− 9 (+3) (2)非常勤(   名、週当たり延べ    時間)

 15 (3)いない

 1 無回答

    (4)フォロ アップ担当の臨床(− or 発達)心理士は、 

    (1.現在の人員で充分 2.現在の人員では不十分 3.必要だが得られない 4.不要である)無回答

6  13      10   0     8

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12.貴院で次の年齢の児に対し、精神発達検査・知能検査に主として用いている検査は何ですか 結果 表

    1歳 6か月 (新版 K式、津守・稲毛式、遠城寺式、その他              )

    3歳    (新版 K式、津守・稲毛式、遠城寺式、田中ビネ 、その他        ) −    6歳    (WISCIII、WPPSI、田中ビネ 、− J-MAP、K-ABC、津守・稲毛式、その他   

    9歳    (WISCIII、田中ビネ 、− J-MAP、K-ABC、その他            )

  精神発 達 検査・知能検査を 施 行 し て い る の は ( 臨 床 ( or 発 達 )心理士、 医師、 そ の他

 ) 

13.「ハイリスク児フォロ アップ研究会」作製のフォロ アップの健診プロトコ ルについて− − − 結果 表

2 (1)知らない

10 (2)全ての key age を実施している. 8 (3)一部の key age のみ実施している.1(+1) (4)フォロ アップ健診は行っているが、発達検査は実施していない− . 5 (5)実施予定である.  開始予定(

10 (6)実施したいが、開始時期は未定  

       実施出来ない理由

1(+1) (7)独自のフォロ アップを行っているので、研究会作成プロトコ ルの健診実施予定はない− −

14.貴院のフォロ アップ体制は− 11 (1)大体整っている  

 25 (2)整っていない(何が不足ですか フォローアップ専任医師,心理士,外来時間,診察場所

 1 無回答 サポート体制

15.貴院のフォロ アップ体制の問題点、今後整備すべき点があれば、挙げて下さい− . フォローアップ専任医師,小児神経医師がいない,各自が独自の方法

心理士

データの生理,管理,フィードバック

フォローアップ率をあげるための工夫,年長児のフォローアップ,転院後のフォロー

地域とのサポート体制の構築

16. フォロ アップのデータは− 6 (1)フォロ アップ研究会・中村班作成のファイル(− Filemaker Pro)に入力している

15 (2)フォロ アップ研究会の健診はしているが、健診用紙に記入しており、データはコンピュ− −タ 入力していない−

 5 (3)独自のデータベースを作っている

 9 その他 カルテへの記載のみ,これから作る予定

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 y 無回答     

  データベース作成に関して、ご意見がありましたらご記入下さい

個人情報の保護,利用目的の明確化,

同一患者を縦断的にみられるように,カルテにはれるよう

17.退院後の支援のための地域のネットワーク(二次医療機関、保健センター、療育機関等との)について

12 (1)地域の支援ネットワークを作っており、稼働している

     参加機関(保健所,療育施設,地域周産期センター

支援マニュアルを作っていますか?   (あり、なし)

      4 819 (2)ネットワークは必要だが、現在出来ていない

3 (3)ネットワークは必要だが、作成は困難な見通しである

     理由:大学の力,施設間格差

1 (4)不要

2 無回答

18. 総合周産期センタ のフォロ アップ機能として、どような機能が望ましいと考えますか− −8 (1)総合周産期センタ にフォロ アップ部門を設け、地域周産期センタ 退院児のフォロ アップ− − − −

も行う

17 (2)発達検査、視力・聴力検査など地域周産期センタ で行えない検査は、総合周産期センタ に− −依頼できるようにする  

10 (3)自院のフォロ アップだけで、手一杯である      −  1 (4)地域の保健所・保健センタ がフォロ アップを行うほうがよい− −

  4 (5)その他(小児神経科医がいて療育も可能な施設でのフォローが望ましい,自院の患者を自院

で完結が望ましい,保健所との連絡が不可欠,信州モデル,(1)の中に行政をとりこんでいく

19. 貴院で退院児対象の早期支援として実施しておられる事業をご記入下さい。

NICU退院児の会

母児集団のお遊び,体操指導(1歳半〜3歳)

親子教室

地域の支援ネットワークの定期会,カンファレンス

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厚生労働科学研究費補助金(子ども家庭総合研究事業)

分担研究報告書

ハイリスク児のフォローアップ体制構築に関する研究

障害児通園施設の立場からハイリスク児のフォローアップを考える

分担研究者 三科 潤 東京女子医科大学母子総合医療センター助教授

研究協力者 宮田広善 姫路市総合福祉通園センター   所長

Ⅰ.療育施設からみた「ハイリスク児のフォロー

アップ」について

1.何のためのフォローアップか? 

1)「育児支援」のためのフォローアップ

NICU退院後のフォローアップについては

「育児支援」の立場を明確にする必要がある。

出産直後のもっとも母子密着が必要な時期にN

ICUへの長期入院によって分離されており、

母親の「育児不安」は小さくない。加えて、

「未熟児を出産したことへの罪悪感」「障害の

発生への不安」などが加われば、さらに育児不

安は増大する。

障害の早期発見はフォローアップの「重要な

課題」ではあるが「急ぐべき課題」ではない。

療育施設の立場からすれば、母親の不安を増大

させるような「神経学的チェック」を優先させ

過ぎるフォローアップは避けるべきである。

かつて言われたように、障害は「超早期に発

見されれば治る」というようなものではなく、

発見を急ぐより母親をはじめとする家族の安心

感や子育てへの意欲を優先させる方が、今後の

親子関係に好影響をもたらし、児の発達にも望

ましいと考えられる。ましてや、フォローアッ

プ率の向上を目指したり、障害発生の調査を優

先させたりするような診療姿勢は慎むべきであ

る。

2)障害発見後の支援について

不幸にも障害が発見された時には、「障害の

告知」「障害の理解への支援」が担当医の重要

な責務になる。前述したように、療育施設への

紹介は、親の理解と納得が前提となるべきであ

り、そのために少々時間がかかろうとも努力が

必要である。親の気持ちに寄り添ったカウンセ

リングの提供が課題となるが、機能的に困難で

あれば、保健センターの保健師などとの協力体

制などを構築していく必要がある。その後の育

児への支援を実施するためにも、フォローアッ

プ担当医と地域の保健師や療育施設の職員らと

のネットワーク構築が不可欠である。

また、地域で「療育機能」が確保できない地

域においては、後述する「障害児(者)地域療

育等支援事業」のコーディネーターなどに相談

して、地域資源を発掘し利用することが必要で

ある。

このようにフォローアップ担当医は、日常的

に地域の保健・福祉機関の職員との交流を築き、

子どもをとりまく育児支援の環境的整備を図る

責任がある。

3)「支援」の手段なしに「発見」に力点を置

くリスク

上記のような「育児支援」「療育(発達支

援)」のバックアップがないところで、「障害

の発見」「障害の告知」が行われることは、親

の不安や医療不信を招くリスクが高い。障害の

ない場合においても、本来「育児不安」の大き

いグループであるという意識をもって関わる必

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要がある。育児不安や育児の疲労などに丁寧に

関わるカウンセリングマインドが弱ければ、親

の不安は、究極の場合「育児放棄」や「虐待」

につながる危険があることを担当医は念頭に入

れて対応する必要がある。

2.担当医に求められるカウンセリングマイン

ドやホームハンドリング指導能力

 フォローアップ診察は、「神経学的チェッ

ク」「発育のチェック」などに終始することが

ないよう、注意が必要である。

多くの親は育児に困り、疲れている。そのた

め、親は「哺乳のさせ方」「抱き方」その他の

具体的な指導を求めていることが多い。現実に

困っていることへの具体的な指導や親と共に考

える医師の姿勢がなければ、診察そのものに魅

力を感じさせられない。「フォローされる必要

性=安心感」を親に実感してもらえる姿勢が求

められる。

実際に障害児施設に通っている親に聞くと、フ

ォローアップ診察の際に医師に言われた「~ヵ

月後に来て下さい」というような指示などに疑

問や不信をもっていることが多い。

診察時には、医師自身がカウンセリングマイ

ンドをもって親の不安に付き添い、育児の指針

を与える努力が必要である。また、障害の可能

性があったり、発達の遅れが認められたりする

時には、親に対して「どの部分が気になるの

か」「次に来院するまでにどのようなことをし

ておけば良いのか」などを教えられる知識や技

術を磨くことが必要だ。できれば、病院や近隣

施設の理学療法士や心理士などが診察場面に同

席したり、担当医師が必要最低限の育児指導や

ハンドリングの知識を持ち合わせたりしておく

ことは必要である。

またそのためには、日常的に心理士や保育士

療法士との連携をつくっておく事が必要である。

Ⅱ.ハイリスク児のフォローアップに利用でき

る社会的資源について

1.保健所・保健センター

1)保健師との連携・協力

早期産児は保健センターの保健師による新生

児訪問の対象になる。

保健師は地区担当が決まっているなど、医療

機関側からも対象となるハイリスク児の担当が

特定できる。そのため、「ドロップアウトした

児」「虐待が心配される児」「家庭レベルでの

育児支援が必要な児」などについては、保健師

との連携がとれれば、家庭訪問などによるフォ

ローが依頼できる。

また、保健センターでも乳幼児健康診査(以

下、「乳健」)を実施しており、プライバシー

についての保護者の了解は必要だが、「ドロッ

プアウト児」に対するフォローアップ診療との

情報交換は今後検討が必要かと考えられる。

2)育児教室

保健センターの乳健で遅れが発見された児に

対して、定期的に保健師を中心にフォローアッ

プと共に育児支援を実施している市町村が多い。

最近では、乳児健診等に保育士、心理士を雇い

上げる場合に賃金などの補助が受けられる制度

がある(育児等健康支援事業、例えば人口 30万人以上 100万人未満の都市では 200万円/年)。

この育児教室との協力体制がとれれば、脳性麻

痺などの後障害を診断した後の親への相談機能

だけでなく、「気になる児」のフォローアップ

や育児指導にも利用できると思われる。

2.障害児施設など

1)児童デイサービス事業

地域での障害児の育児支援や保育保障のため

の事業。全国で 670ヶ所以上設置されており、

人口過疎の地域にも展開している。保育所など

に併設されることも多く、健常児とのふれあい

も経験することができる。社会福祉法人だけで

なく、最近ではNPO法人による設置や小児科

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診療所に併設されることもある。多くは保育士

中心の障害児の育児支援であり、理学療法士な

どの専門職がいないことが多い点と小規模であ

る点を念頭に入れておく必要がある。

また、現行では支援費制度によって運営され

ており、利用の前に「障害認定」が必要である

ため、障害確定前の子どもについては利用しに

くいのも難点である。

2)障害児通園施設

(肢体不自由児、知的障害児、難聴幼児)

児童福祉法で規定される障害児の施設であり

多くの施設は就学までの障害児の通園療育を実

施している。それぞれの施設が対象とする障害

については専門性をもった育児支援や保育、機

能訓練などが提供される。

しかし、未だに措置制度による施設であるた

め、児童相談所からの措置がなければサービス

の利用ができず、フォローアップ外来などと適

時的に連携できない点で問題がある。

その他、定員枠以外の子どもへの育児支援が

困難であることや、障害種別に分けられている

ために、重複障害児や障害名の特定がされてい

ない子どもに対する的確な発達支援ができない

施設も少なくない。そして、最近問題になって

いる「軽度発達障害児(高機能自閉症、注意欠

陥/多動性障害、学習障害など)」については、

専門性や経験について課題が残っている。

しかし、肢体不自由児通園施設には医療職

(医師、看護師、理学・作業療法士・言語聴覚

士など)が配置されており、脳性麻痺などの診

断や機能訓練だけでなく、肢体不自由児以外の

知的障害や軽度発達障害児などの診断や指導な

どにも対応できる施設も多くなっている。加え

て、NICU退院後の重度・重複障害児につい

て、NICUと協力して家庭での医療的援助へ

の支援にも対応できる施設も多い。

肢体不自由児通園施設には外来診療を開いて

いる施設も多く、障害の確定に基づく措置以前

の診断や機能訓練にも対応できるため、適時性

のある育児支援や発達支援が期待できる。

3)重症心身障害児(者)通園事業(A型15

名定員:全国 42ヶ所、B型5名定員:全国 161ヶ所、いずれも平成 15年 12月時点)

A型には医師・医療職(看護師、理学・作業

療法士、言語聴覚士など)が配置されているが、

成人の重症心身障害の人を中心として運営され

ているところが多く、フォローアップ外来との

連携の面では難しい場合も多い。B型について

は、小規模で保育職や指導員が主体で運営され

ていることが多く、地域によってはフォローア

ップ診療との連携は取りにくい可能性がある。

しかし、この事業は医療機関への併設も可能

であり、かつA型で約 4,000万円/年、B型で

約 2,000万円/年と補助金額も大きい。そのた

め、重症心身障害を遺してNICUから退院す

る児へのアフターフォローの手段として、NI

CUをもつ医療機関が設置することも念頭に入

れても良いのではないだろうか。

4)肢体不自由児(入所)施設(全国 66 施設)

 整形外科中心の施設が多く、育児支援に対応

しにくいところも多い。しかし、最近では小児

科や精神科が設置されている施設もあり、外来

診療で脳性麻痺以外の診療にも対応できるとこ

ろは増加している。

3.施設以外の福祉制度など

1)障害児(者)地域療育等支援事業(別添資

料参照):障害認定不要

障害児(者)地域療育等支援事業は、「障害

のある子どもの発達支援」や「障害のある人の

地域生活への支援」を「(定員 障害の種別、年、齢制限などの)施設の枠」にとらわれず柔軟に

実施することを目的として、平成 8年 4月から全国で実施されている事業である。

障害児(者)地域療育等支援事業は、下記の2

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つの事業から成り立っている。(1)療育等支援施設事業

人口 30万人程度の地域(障害保健福祉圏域とい

う)に、2ヶ所程度の施設を指定する。現在、

全国で約 600ヶ所の施設が受託して活動してい

る。事業の内訳は、大きく2つに分けられている。①地域生活支援事業

コーディネーター(ソーシャルワーカー、ケ

ースワーカーなどと呼ばれることもある)を配

置し、障害のある子どもや親、障害のある人か

ら相談を受け、問題の解決を図ったり福祉制度

の利用を進めたりして、地域での生活を支援す

る。訓練などの専門的技術が必要な場合、次の

「療育支援事業」や地域の専門機関(病院な

ど)の利用につなげていくこともある。

②訪問・外来・施設支援などによる療育支援

施設がもっている診断や検査、訓練などの

「専門機能」を、外来(施設に来ていただいて

提供する)、訪問(家庭や地域の公民館などに

出かけて提供する)、施設支援(保育所などに

入園している場合に保育所の保育士等に研修な

どを実施して子どもとの関わり方などを指導す

る)などの方法によって提供する。

(2)療育拠点施設事業

都道府県や政令指定都市に1ヶ所、より高い

レベルの療育機能をもつ施設が「支援施設」の

中から指定を受ける。

拠点施設 は、「支援施設」が困った時に専「 」門的な機能を提供したり、「支援施設」の職員

に対して研修や情報提供を実施したりする。

[参考:障害児(者)地域療育等支援事業の概要]

[参考:拠点施設-支援施設-地域機関の関係]

  

1.療育等支援施設事業(概ね人口30万人に2カ所設定)

① 地域生活支援事業② 療育支援事業・在宅支援訪問療育等指導事業

(巡回相談、訪問による健康診査)・在宅支援外来療育等指導事業・施設支援一般指導事業

2.療育拠点施設事業(都道府県・指定都市圏域に1カ所設定)

・施設支援専門指導事業・在宅支援専門療育指導事業

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拠点施設

支援施設

共同作業所 学校 障害児デイサービス 保育所

支援施設 支援施設 支援施設

療育支援・情報提供など

調整・専門技術の提供など

その他

:都道府県・指定都市域に1ヶ所設置

:障害保健福祉圏域に2ヶ所設置

Ⅲ.参考資料この章では、今後のフォローアップに利用した

り協力・連携するべき事業や制度についての情

報を述べる。

1.障害の発見にかかわる主な制度

 我が国において障害の発見にかかわる主な制

度としては、母子保健法に基づいて市町村が実

施している「乳幼児健康診査」や、学校保健法

に基づいて市町村教育委員会が実施している

「就学時の健康診断」がある。

1)乳幼児健康診査

 乳児については、市町村が定めた方法で健康

診査を受けることができ(4か月、7か月、10ヶ月健診など)、必要に応じて、精密検査が行

われている。

 幼児については、1歳6か月児健康診査と3

歳児健康診査の実施が市町村に義務づけられて

いる。

(1)1歳6ヶ月児健康診査

 1歳6ヶ月健康診査については、満1歳6ヶ

月を超え満2歳に達しない幼児を対象としてい

る。幼児初期の身体発育、精神発達の面で歩行

や言語等の発達の標識が容易に得られるように

なる1歳6ヶ月児に対して健康診査を実施する

ことにより、運動機能、視覚、聴覚等の障害、

精神発達の遅滞等障害のある幼児を早期に発見

し、適切な指導を行い、障害の進行を未然に防

止するとともに、生活習慣の自立、虫歯の予防、

幼児の栄養及び育児に関する指導を行い、もっ

て幼児の健康の保持及び増進を図ることを目的

としている。

 健康診査の種類は、一般健康診査、歯科健康

診査、精密検査である。一般健康診査の項目は

次のとおりである。

  ①身体的発育状況

  ②栄養状態

  ③脊柱及び胸郭の疾病及び異常の有無

  ④皮膚の疾病の有無

  ⑤四肢運動障害の有無

  ⑥精神発達の状況

  ⑦言語障害の有無

  ⑧予防接種の実施状況

  ⑨その他の疾病及び異常の有無

  ⑩その他育児上問題となる事項(生活習慣

の自立、社会性の発達、しつけ、食事、事故

等)

一般健康診査の結果、心身の発達異常、疾病等

の疑いがあり、より精密に健康診査を行う必要

がある場合、各診療科別に専門医師による精密

検査が行われる。また、精神発達面については、

児童相談所において精神科医及び心理判定員等

による精密健診が行われる。

(2)3歳児健康診査

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 3歳児健康診査については、満3歳を超え満

4歳に達しない幼児を対象としている。幼児の

成長・発達の個人差異が比較的明らかになり、

保健、医療による対応の有無が、その後の成長

に影響を及ぼす3歳児に対して健康診査を実施

することにより、視覚、聴覚、運動、発達等の

障害、その他疾病及び異常を早期に発見し、適

切な指導を行い、障害の進行を未然に防止する

とともに、虫歯の予防、発育、栄養、生活習慣、

その他育児に関する指導を行い、もって幼児の

健康の保持及び増進を図ることを目的としてい

る。

 健康診査の種類、精密検査の対応は、1歳6

ヶ月児健康診査と同様である。一般健康診査の

項目は次のとおりである。

 ①身体発育状況

 ②栄養状態

 ③脊柱及び胸郭の疾病及び異常の有無

 ④皮膚の疾病の有無

 ⑤眼の疾病及び異常の有無

 ⑥耳、鼻及び咽頭の疾病及び異常の有無

 ⑦四肢運動障害の有無

 ⑧精神発達障害の有無

 ⑨言語障害の有無

 ⑩予防接種の実施状況

 ⑪その他の疾病及び異常の有無

 ⑫その他育児上問題となる事項(生活習慣の

自立、社会性の発達、しつけ、食事、事故等)

 なお、母子保健法においては、市町村におい

て、1歳6か月健康診査と3歳健康診査のほか

乳幼児に対する健康診査の実施を勧奨しなけれ

ばならないとの規定があり、この規定に基づき、

4か月、7か月、10か月などの乳児期や5歳

児健診を実施している自治体の例もある。

2)就学時の健康診断

 就学時の健康診断は、小学校等への就学予定

者を対象に行われており、その実施が市町村教

育委員会に義務付けられている。市町村の教育

委員会が就学予定者の心身の状況を把握し、小

学校等へのはじめての就学に当たって、保健上

必要な勧告、助言を行うとともに、適正な就学

を図ることを目的としている。

 就学時の健康診断における検査の項目は、次

のとおりである(学校保健法施行令第2条)。

 ①栄養状態

 ②脊柱及び胸郭の疾病及び異常の有無

 ③視力及び聴力

 ④眼の疾病及び異常の有無

 ⑤耳鼻咽喉疾患及び皮膚疾患の有無

 ⑥歯及び口腔の疾病及び異常の有無

 ⑦その他の疾病及び異常の有無

 就学時の健康診断後の対応として、市町村教

育委員会は、担当医師及び歯科医師の所見に照

らして、治療を勧告し、保健上必要な助言を行

うこととなる。また、義務教育の就学の猶予、

免除、又は盲学校、聾学校、養護学校への就学

に関する指導を行う等、適切な措置をとること

となる。

2.障害の発見や相談・支援にかかわる主な機

関とその役割

 障害の発見や相談・支援にかかわって、福祉、

保健、教育、就労の関係各機関があり、ここで

それら各機関の役割等を紹介する。

①市町村保健センター

 市町村保健センターは、市町村における地域

保健対策の拠点として、住民に対する健康相談、

保健指導、健康診査その他地域保健に関して必

要な事業を行うことを目的としている。

 市町村保健センターにおける児童福祉関係業

務の主なものは、次のとおりである。

 ア 乳幼児に対する保健指導

 イ 乳幼児に対する訪問指導

 ウ 1歳6ケ月児健康診査、3歳児健康診査

などの乳幼児健康診査

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②保健所

 保健所は、公衆衛生行政の機関として、児童

福祉及び母子保健や身体障害者等の福祉の分野

で大きな役割を果たしている。主に都道府県や

政令指定都市が設置主体となっている機関であ

る。保健所には、医師、歯科医師、薬剤師、獣

医師、診療放射線技師、臨床検査技師、管理栄

養士、保健師などの職員が置かれている。

 保健所における児童福祉関係業務の主なもの

は、次のとおりである。

 ア.児童や妊産婦の保健について正しい知識

の普及を図ること。

 イ.身体に障害のある児童の療育について指

導を行うこと。

 ウ.疾病により長期にわたる療育が必要な児

童の療育について指導を行うこと。

 エ.児童福祉施設に対し、栄養の改善その他

衛生に関し必要な助言を行うこと。

③福祉事務所

 福祉事務所は、社会福祉行政の機関として生

活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法、知

的障害者福祉法、老人福祉法、母子及び寡婦福

祉法のいわゆる福祉六法に定める援護、育成、

更生の措置を担当している。福祉事務所には、

査察指導員、現業員、身体障害者福祉司、知的

障害者福祉司等の職員が配置されている。

 福祉事務所における児童福祉関係業務の主な

ものは、次のとおりである。

 ア.児童の福祉に関し、必要な実情の把握に

努めること 

 イ.児童の福祉に関する事項について相談に

応じ、必要な調査を行うとともに、個別的また

は集団的に必要な指導を行うこと。

④児童相談所

 児童相談所は、児童福祉の機関として、各都

道府県、政令指定都市に設置が義務づけられて

いる。相談所の構成員は、ソーシャルワーカー

(児童福祉司・相談員)、心理判定員、医師

(精神科医、小児科医)その他専門職員がおり、

児童に関する様々な相談に応じ、専門的な角度

から調査、診断、判定を行い、それに基づいて

児童や保護者に対して必要な指導や児童福祉施

設入所当の措置を行う。

 児童相談所においては、知的障害、肢体不自

由、重症心身障害、視覚障害、聴覚障害、言語

障害、自閉症等の障害のある児童に関する相談

が行われている。

⑤児童福祉施設

 乳幼児健康診査等において障害が発見された

後の対応として、その後に専門的な療育や相談

が行われる場として児童福祉施設がある。

 障害のある子どもに関連する児童福祉施設と

しては、通園施設として知的障害児通園施設、

難聴幼児通園施設、肢体不自由児通園施設、入

所施設として知的障害児施設、自閉症児施設、

盲児施設、ろうあ児施設、肢体不自由児施設、

肢体不自由児療護施設、重症心身障害児施設及

び国立療養所重症心身委託病床、国立療養所進

行性筋萎縮症児委託病棟がある。

 通園施設は、昭和54年の養護学校教育の義

務制を契機に、通園施設は原則として就学前の

幼児を対象とすることとなり、早期療育の場と

して位置付けられている。

⑥盲学校、聾学校、養護学校

 盲学校、聾学校、養護学校においては、それ

ぞれ視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自

由、病弱の子どもに対して、幼稚園、小学校、

中学校、高等学校に準ずる教育を行うとともに、

その一人一人の障害に基づく種々の困難を改

善・克服するために必要な知識、技能を養うこ

とを目的として、きめ細かな教育が行われてい

る。

 多くの盲・聾学校の幼稚部においては、教育

機関としての役割だけでなく、乳幼児期の子ど

もやその保護者を対象とした早期からの教育相

談が行われている。盲・聾・養護学校において

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は、今後、地域における特別支援教育のセンタ

ー的機能の中核的な役割を担うことが期待され

ており、早期からの教育相談の充実が求められ

ている。

⑦特殊教育センター

 特殊教育センターにおいては、特別支援教育

の振興を図ることを目的に、障害のある子ども

の教育、就学、進路などの各種相談、盲・聾・

養護学校や小・中学校等で障害のある子どもの

教育に携わる教員を対象にした研修、特別支援

教育に関する調査研究や理解啓発などが行われ

ている。

3.障害種ごとにみた主な障害の発見や相談

  障害の発見や相談にかかわる現状について、

障害種ごとにその主なものを紹介する。

①視覚障害

 先天性の場合は、新生児及び6ケ月健康診断

で発見される場合が多い。保護者が子どもへの

授乳時に視線が合わないことや眼の位置が不自

然であることなどに気付くこともある。

 視覚障害の発見後、症状が重い場合は、大学

病院や地域の医療センターなどの医療機関で治

療が行われる。地域の医療センターや病院に受

診後は、療育機関を紹介される場合が多いが、

盲学校の幼稚部を紹介されることもあり、そこ

で教育相談等が行われる場合もある。

②聴覚障害

 新生児聴覚スクリーニング検査の試行的実施

により、生後間もない時期(1週間~数週間程

度)での聴覚障害の発見が可能になった。

 聴覚障害の発見後の関連機関としては、医療

機関(再検査等を実施する病院で確定診断)、

難聴幼児通園施設があげられ、相談に応じてい

るが、聾学校においても乳幼児教育相談等が行

われている。

③知的障害

知的障害がある幼児は、一般に、医療機関の診

断等を経て、児童相談所での療育手帳の交付や

保健所等での相談が実施され、その後知的障害

通園施設等で必要な対応が行われる。

④肢体不自由

 肢体不自由の子どもの場合、病院から保健所

に連絡が行き、保健師による支援が開始される

ことが多い。また、健康診断時の所見等から医

師や保健師から肢体不自由児通園施設が紹介さ

れ、早期からの療育が始まることもある。

⑤病弱・身体虚弱

 小児期に発症する慢性疾患は、病院等で発見

され、必要な対応がなされることが多い。

 保健所では、フェニールケトン尿症等の先天

性代謝異常や先天性甲状腺機能低下症など、小

児慢性特定疾患の子どもへの生活面での指導や

養育上の支援を行っている。就学期になると、

小・中学校の院内学級や病弱養護学校に入学す

る場合もある。

⑥学習障害、注意欠陥多動性障害、高機能自閉

症、アスペルガー症候群

 障害の目立ちにくさや理解の不足等から、他

の障害と比べてその発見が難しい。しかし、早

期の発見は早期からの適切な支援につながるこ

とから、1歳6ヶ月児健康診査、3歳児健康診

査や就学時の健康診断における早期発見に十分

留意することが求められている(発達障害者支

援法)。

幼稚園段階では、例えば「気になる子」とい

うことで、学習面や行動面からの配慮が行われ

ている場合がある。一般的に小学校では通常の

学級に在籍していることが多く、学校において

その実態把握が行われるとともに、教育委員会

に設置された専門家チームによる評価と指導プ

ログラムの作成が行われている。

4.「障害者基本計画」及び「重点施策実施5

か年計画」について

 「障害者対策に関する新長期計画」が平成1

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4年度で終期を迎えることに伴い、平成14年

12月24日、平成15年度を初年度とする新

たな障害者基本計画が閣議決定された。また、

同日、基本計画の前期5年間において重点的に

実施する施策及びその達成目標並びに計画の推

進方策である「重点施策実施5か年計画(いわ

ゆる「障害者プラン」)」が決定された。

Ⅳ.まとめ

障害児通園施設の立場から、フォローアップと

連携・協力すべき福祉・保健・教育についての

情報を提示した。

次年度には、具体的な連携方法や利用方法など

について考察したい。

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厚生科学研究費補助金(子ども家庭総合研究事業)

分担研究報告書

アウトカムを指標としベンチマーク手法を用いた質の高いケアを提供する「周産期母子医療センターネットワーク」の構築に関する研究

「2000年出生の超低出生体重児 3歳時予後の全国調査集計結果」

分担研究者 上谷良行 兵庫県立こども病院小児科部長

主任研究者 藤村正哲 大阪府立母子保健総合医療センター病院長

研究要旨: 1990、95年出生の超低出生体重児 3歳時予後調査の横断的調査として 2000年出生超

低出生体重児 3歳時予後調査を行った。脳性麻痺は 16.3%と前回調査と差はなかった。総合発達評価

では 22.2%が異常判定で、前回に比して上昇していた。両眼失明の頻度は 0.6%と前回より減少して

いた。反復性呼吸器感染症の頻度は低下しているが、在宅酸素療法の実施頻度はやや増加傾向であっ

た。施設規模と予後との関係では、出生体重 750g未満の症例の脳性麻痺発症頻度が施設規模で差が

認められる傾向があり、施設の規模はやはり予後に影響する可能性がある。今後より詳細な検討が必

要である。

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A.研究目的

我が国においては、出生数の減少が顕著で

大きな社会問題にまで発展している一方、出

生体重 2500g未満の低出生体重児、中でも出

生体重 1000g未満の超低出生体重児の出生数

は 1980年の 1490人から 2000年には 2866人と約 2倍に増加している。このように増加

してきた低出生体重児の新生児死亡率は、日本

小児科学会新生児医療調査小委員会の 5年ごと

の調査で出生体重 1000から 1500gの児では

1980年で 20.7%であったものが 2000年に

は 3.8%と低下し、500から 1000gの児にお

いてさえも 1980年には 55.3%の新生児死亡

率が 1995年には 15.2%と大きく低下してい

ることが明らかになった。このことは超低出

生体重児で救命される児の絶対数が著明に増加

することであることから、これらの児の予後

について大いに関心が高まり、1990年出生の

超低出生体重児の 3歳における予後の全国調査

が 1993年に実施され、はじめて我が国にお

ける現状が明らかになった。この結果を踏ま

え、1995年に実施された日本小児科学会新生

児医療調査小委員会による調査に登録された超

低出生体重児を対象に 3歳時予後についての

全国調査が再び実施され、1990年出生児に対

する調査結果との比較検討がなされた。今回

昨今の 周 産 期 医 療 の 進歩を見極 め るべく、

2000年出生超低出生体重児に関して 3歳時予

後の全国調査を再度実施し、これまでの成績

との比較を試みた。

B.研究方法

 調査対象は(表 1)のごとくである。2000年に我が国で出生した 1000g未満の超低出生

体重児 2866人のうち、日本小児科学会新生児

医療調査小委員会が 2001年に実施した 2000年出生のハイリスク新生児全国調査に登録さ

れた超低出生体重児 2798人について、本研究

班で 3歳時の予後調査を実施した。この 2798例のうち生存退院した症例のある全国主要新生

児 医 療 282 施 設 を対象 に調査し た と ころ、

180 施設(63.8%)より回答を得た。生存退

院症例数は 1771 例で、そのうち 960 例の調

査票を回収した(54.2%)。この 960 例のう

ち退院後に死亡した 28 症例および転居転院で

追跡不可能となった症例、健診時期が 30ヶ月未満や健診項目が記入されていなかった症例

等 142 症例を除外した 790 症例について最終

的に検討対象とした。

 調査方法は、基本的に前回、前々回の全国調

査と同様に実施した。調査項目は、 a)身体計

測値;身長・体重・頭囲、b)脳性麻痺の有無及

び部位分類、c)視力障害・聴力障害・てんかん

の有無、d)在宅酸素療法、反復性呼吸器感染症、

喘息の有無、e)行動異常、f)総合発達評価であ

る。今回は行動異常として自閉傾向を見る参考

のために名前を呼んで振り向く、視線をあわ

せるか否かを問うた。また、総合発達評価に

ついては、従来と同様に日常社会生活に大き

な支障を来たすかどうかに主眼をおいて脳性

麻痺・視力障害・精神発達遅滞の 3項目で行っ

た(表 2)。精神運動発達評価は遠城寺式乳幼

児分析的発達検査を用い、対人関係・発語・言

語理解の 3項目の項目別 DQ を修正月齢で判定

した。遠城寺式乳幼児分析的発達検査が実施で

きなかった症例は、津守・稲毛式あるいは新

版K式など他の発達評価方法を用いて判定した

主治医評価を採用した。解析は歴年齢 30ヶ月以上の判定のあるもののみを対象とした。

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C.研究結果

1.予後調査の背景 (表 3、表 4)

 男女比は 0.86:1 で女児が多く、平均在胎

週数は 26.7週、平均出生体重は 783gであっ

た。1990年、95年出生児を対象として実施

した前々回、及び前回調査に比して院内、院外

出生の比率では院外出生の比率が低下してい

る。これは院内出生の内、母体搬送の占める割

合が上昇していることによると考えられる。

さらに多胎の占める頻度も 23%と急激な上昇

が見られた。

 この背景を総合発達評価の結果によって比較

すると(表 4)、男児では総合発達評価で正常

と判定される率が女児に比して有意に低い。

出生場所による予後への影響はほとんど見ら

れなかった。また、正常判定の児は境界、異

常判定の児より平均出生体重が大きかったが

多胎が予後が悪いという傾向は見られなかっ

た。

2.障害発生率の推移(表 5、6)

総合発達評価

 総合発達評価において境界と判定された症例

の比率は 18.2%、異常は 19.6%)であった。

今回の結果は 1990年出生児を対象とした前々

回の調査結果 (境界: 10.9%、異常:

14.1%)、1995年出生児を対象とした前回調

査結果(境界:14.9%、異常:14.9%)に比

して境界、異常判定とも増加していた。

②脳性麻痺

 790 例中 129 例(16.3%)に脳性麻痺がみ

られたが、そのうち 64 例 50%は自立歩行が

不可能な脳性麻痺であった。この結果は前回調

査と大きな差はない結果であったものの、

前々回調査時の頻度に比べて有意に増加してい

た。

③視力障害

 両眼とも失明したものは 0.6%で、前々回調

査に比べて有意に減少していた。片眼失明は

なく、弱視と診断された児も 6.1%で、過去の

調査に比べて変化はなかった。

④聴力障害、てんかん

 聴力障害は 2.4%、てんかんは 3.7%に認め

られたが、過去の調査結果と差は認められな

かった。

⑤呼吸器疾患

 在宅酸素療法を実施しているものは 5.1%に

認められ、前回、前々回調査よりやや増加傾向

であった。呼吸器感染症を繰り返す症例は

4.4%と過

去の調査より明らかに減少していた。喘息は

7.2%にみられ、大きな頻度の変化はなかった。

このように前回調査と同様に慢性肺疾患と関連

して呼吸器系の問題点を残している症例が依

然として多いことが明らかとなった。

3.出生体重による障害発生の比較(表 7)

 出生体重 750g以上と未満に分けて障害の

発生率について比較した。まず出生体重 750g未満の 症 例数は 310 例 で あ り 、 全 体 の

39.2%を占めている。この数字は過去二回の

27.2%、32.2%より有意に高い数字であり、

出生体重の小さい未熟性の強い症例の占める割

合が大きいという背景があることを念頭に置

いて全体の解析結果を判断する必要がある。

 総合発達評価では、750g未満群で明らか

に境界、異常判定の頻度が高くなっている。

しかし、脳性麻痺の頻度は 750g未満群で高

い傾向にはあるが有意な差ではなかった。視

力障害全体の頻度は 750g未満群で有意に高

く、在宅酸素療法、反復性呼吸器感染症の頻度

も明らかに 750g未満群で高値であった。そ

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の他の項目に関しては体重群による差は見ら

れなかった。

4.出生体重、在胎週数による総合発達評価、脳

性麻痺の頻度の推移(図 1〜4)

 出生体重 100gごと、在胎週数 1週ごとに

総合発達評価で境界、異常と評価された症例の

頻度をみると、出生体重が大きくなるにつれ

て境界、異常評価の頻度が低下する傾向にある

(図 1)。在胎週数の推移による比較では、在

胎 29〜30週までは週数の増加によって境界、

異常の頻度が低下するものの、31週より大き

くなると逆にその頻度は増加傾向に転じた

(図 2)。この傾向は脳性麻痺の頻度の推移で

も同様にみられた(図 3、4)。また、これは

以前に小児科学会新生児委員会で集計した 5年ごとの超低出生体重児の新生児死亡の割合の出

生体重、在胎週数による推移のグラフと極め

て類似したものであった。

5.施設規模による脳性麻痺の頻度の比較(図

5)

超低出生体重児の年間入院数が 20 例以上であ

る施設を A ランク、19〜10 例の施設を B ラン

ク、10 例未満の施設を C ランクとして、施設

の規模により脳性麻痺の発生率を比較すると

全体では施設規模による差は認めなかったも

のの、出生体重 750g未満の症例で比較する

と A ランクの施設では、B、C ランクの施設に

比して脳性麻痺の発生頻度は有意差はないも

のの低い傾向にあり、施設の規模もある程度

予後に影響することが再確認された。

D.考察 今回 2000年出生超低出生体重児の 3歳時予

後の全国集計を、過去 2回に引き続いて実施

した。過去の調査でも指摘されているが、調

査票の回収率が 54%と低いため、本当に超低

出生体重児全体を反映しているかどうかの問

題がある。これは全国調査という大規模な調

査の限界であるかも知れない。

 過去に比べて総合発達評価で異常と判定され

る率が上がっていることが明らかとなったが

脳性麻痺の頻度が著明に増加していることは

なく、両眼失明の率が下っていることを考え

ると、精神発達上の問題のある児の頻度が明

らかに増加しており、それが総合発達評価で

の境界、異常の頻度を上昇させる要因になっ

ていると考えられる。今回の検討対象となっ

た児は過去 2回の調査に比べて有意に平均出

生 体 重 が 少 な い こ と ( 783±141g vs 810±133g vs 825± 113g) より、未熟性の

強い児が多い集団を見ていることも予後を悪

くする要因のひとつと考えられる。

 また、在宅酸素療法の頻度がやや増加して

いるが、反復性呼吸器感染症の頻度は低下傾向

であり、一定の重症度以上の症例は依然とし

て存在するが、慢性肺疾患の様相も少し変化が

見られてきた可能性がある。

 以前の調査での成績によると、規模の大き

な施設の方が予後に関する指標は良いことが

示されているが、今回の成績でもその傾向が

みられた。脳性麻痺に関して、特に出生体重

の少な い 重 症 な 症 例 に限って 検 討 す る と 、

750g未満の症例では規模の大きな施設での発

生率が一番低く、規模が小さくなるにつれて

発生率が上昇することが示された。総合発達

評価ではその傾向は見られなかったため、精

神発達と運動発達ではその障害発症要因に差が

ある可能性があると考えられた。

E.結論

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2000年出生超低出生体重児 3歳時予後の全

国調査の集計を行った。その結果、総合発達評

価で境界もしくは異常と判定される児の頻度

が増加していたが、脳性麻痺の頻度はあまり

変化なく、両眼失明の頻度は低下していた。出

生体重の小さい児の頻度が増加していること

もその要因であろうが、今後詳細に検討を加

え、児の予後を改善するための方策を考える

必要がある。さらに追跡率を向上させること

も今後の課題である。

最後に本調査にご協力いただいた全国の新生

児医療施設の方々に深謝致します。

F.研究発表

論文発表

上谷良行、大野勉、三科潤、多田裕、中村肇:超早産児の長期予後. 日本周産期新生児医学

会雑誌 40(4)、763-767 2004上谷良行、大野勉、三科潤、多田裕、中村肇 : 超低出生体重児予後の全国調査. 日本未熟児新

生児学会雑誌 16(1)、19-22 2004上谷良行:極低出生体重児の発達評価. 小児

の精神と神経 44(1) 29-30 20042.学会発表

1)上谷良行:シンポジウム「超早産の病態、

予後及び予防への展望」超早産児の長期予後

第 40 回日本周 産期 新生 児医 学会学術集会

2004年 7月 東京

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表2 3歳時の総合発達評価の判定基準

異常:1)2)3)のいずれかに該当するとき1)自立歩行が不可能な脳性麻痺2)両眼失明3)精神発達遅滞;2項目のDQ<70+1項目のDQ<80

境界:1)2)3)のいずれかに該当するとき1)自立歩行が可能な脳性麻痺2)片眼失明3)精神発達遅滞;1項目のDQ<70+1項目のDQ<80

または3項目のDQ<80正常:上記に該当しないとき

DQ:遠城寺式の対人関係・発語・言語理解で評価

ELBW数

全NICU数

回答NICU数

NICU退院数

3 歳 follow up

1995

2610

283

146

1088

757

1990

2291

265

182

1208

853

表1 調査対象

2000

2866

282

180

1784

790

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表 4 総合発達評価による対象児の背景の比較

    全体 正常 境界 異常    790 例 491 例 144 例 155 例

男女 男 367*205

56% 77

21% 85 26%

  女 423 28668% 67

16% 70 19%

出生場所 院内(搬送なし) 153 10468% 20

13% 29 19%

  母体搬送あり 535 32060%

113

21%

102 19%

  院外 102 6766% 11

11% 24 24%

平均在胎週数 *26.7±2.

27.0±2.4 26.3±2.

25.9±2.2

表3 超低出生体重児3歳時予後調査の背景

調査数

男:女

院内:院外(母体)

多胎

1990

853

401:452

584:269(373)

145(17%)

1995

757

341:416

641:116(457)

130(17%)

2000

790

367:423

688:102(535)

179(23%)

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4 2

平均出生体重783±141

*809±135

739±132

746±149

単胎多胎 単胎 611 38162%

112

18%

118 19%

  多胎 179 11061% 32

18% 37 21%

*p<0.01

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聴力障害

てんかん

反復性呼吸器感染

喘息

在宅酸素療法

1995

2.1%

3.8%

8.1%

9.2%

3.7%

表6 超低出生体重児の障害発生率の比較(2)

1990

2.2%

4.3%

11.1%

8.0%

3.6%

2000

2.4%

3.7%

4.4%

7.2%

5.1%

総合発達評価境界異常

脳性麻痺

視覚障害両眼失明片眼失明弱視

1995

14.9%14.9%

14.3%

1.2%0.7%5.0%

表5 超低出生体重児の障害発生率の比較(1)

1990

10.9%14.1%

12.0%

2.2%0.6%5.5%

2000

18.2%19.6%

16.3%

0.6%0.0%6.1%

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7 表 出生体重による障害発生率の比較

2000年出生 1995年出生 1990年出生 全体 <750g ≧ 750g 全体 <750g ≧ 750g 全体 <750g ≧ 750g

総数 790 100% 310 39. 2% 480 60. 8% p 757 100% 244 32. 2% 513 67. 8% p 853 100% 232 27. 2% 621 72. 8% p総合発達評価

正常 491 62. 2% 158 51. 0% 333 69. 4%p<0. 001 531 70. 1% 169 69. 3% 373 70. 6% ns 640 75. 0% 156 67. 2% 484 77. 9% p<0. 01境界 144 18. 2% 74 23. 9% 70 14. 6% 113 14. 9% 31 12. 7% 61 16. 0% 93 10. 9% 34 14. 7% 59 9. 5%異常 155 19. 6% 78 25. 2% 77 16. 0% 113 14. 9% 44 18. 0% 69 13. 5% 120 14. 1% 42 18. 1% 78 12. 6%

脳性麻痺 計 129 16. 3% 57 18. 4% 72 15. 0% ns 108 14. 3% 32 13. 1% 76 14. 8% ns 102 12. 0% 37 15. 9% 65 10. 5% p<0. 05自力歩行 可能 65 8. 2% 29 9. 4% 36 7. 5% 53 7. 0% 16 6. 6% 34 7. 2% 40 4. 7% 15 6. 5% 25 4. 0%

不可能 64 8. 1% 28 9. 0% 36 7. 5% 55 7. 3% 16 6. 6% 42 7. 6% 62 7. 3% 22 9. 5% 40 6. 4%視力障害 計 71 9. 0% 39 12. 6% 32 6. 7% p<0. 01 52 6. 9% 25 10. 2% 32 5. 3% p<0. 05 71 8. 3% 28 12. 1% 43 6. 9% p<0. 05

両眼失明 5 0. 6% 4 1. 3% 1 0. 2% 9 1. 2% 5 2. 0% 4 0. 8% 19 2. 2% 10 4. 3% 9 1. 4% p<0. 05片眼失明 0 0. 0% 0 0. 0% 0 0. 0% 5 0. 7% 2 0. 8% 3 0. 6% 5 0. 6% 2 0. 9% 3 0. 5%両眼弱視 32 4. 1% 18 5. 8% 14 2. 9% 23 3. 0% 11 4. 5% 12 2. 3% 47 5. 5% 16 6. 9% 31 5. 0%片眼弱視 16 2. 0% 4 1. 3% 12 2. 5% 15 2. 0% 7 2. 9% 8 1. 6%

聴力障害 19 2. 4% 10 3. 2% 9 1. 9% 16 2. 1% 4 1. 6% 12 2. 3% 19 2. 2% 8 3. 4% 11 1. 8% nsてんかん 29 3. 7% 13 4. 2% 16 3. 3% 29 3. 8% 8 3. 3% 21 4. 1% 37 4. 3% 13 5. 6% 24 3. 9% ns在宅酸素療法 40 5. 1% 24 7. 7% 16 3. 3% p<0. 05 28 3. 7% 20 8. 2% 8 1. 6%p<0. 001 31 3. 6% 17 7. 3% 14 2. 3% p<0. 001反復性呼吸器感染 35 4. 4% 20 6. 5% 15 3. 1% P<0. 05 61 8. 1% 23 9. 4% 38 7. 4% 95 11. 1% 30 12. 9% 65 10. 5%喘息 57 7. 2% 21 6. 8% 36 7. 5% 70 9. 2% 22 9. 0% 47 9. 4% 68 8. 0% 8 3. 4% 60 9. 7% p<0. 01中枢神経奇形 6 0. 8% 4 1. 3% 2 0. 4% 11 1. 5% 6 2. 5% 5 1. 0%染色体異常 4 0. 5% 2 0. 6% 2 0. 4% 4 0. 5% 0 0. 0% 4 0. 8%

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図図11 出生体重別総合発達評価出生体重別総合発達評価

01020304050607080

全体 499~ 599~ 699~ 799~ 899~ 999~

境界異常

出生体重、g出生体重、g

%%

図図22 在胎週数別総合発達評価在胎週数別総合発達評価

0

10

20

30

40

50

60

70

全体 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33~

境界異常

在胎週数、週在胎週数、週

%%

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図図33 出生体重別脳性麻痺の頻度出生体重別脳性麻痺の頻度

0

5

10

15

20

25

30

35

全体 499~ 599~ 699~ 799~ 899~ 999~

歩行可能歩行不可能

出生体重、g出生体重、g

%%

図図44 在胎週数別脳性麻痺の頻度在胎週数別脳性麻痺の頻度

0

10

20

30

40

50

60

全体 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33~

歩行可能歩行不可能

在胎週数、週在胎週数、週

%%

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図図55 施設規模による脳性麻痺の頻度の比較施設規模による脳性麻痺の頻度の比較

0

5

10

15

20

25

30

全体 750g未満 750g以上

AランクBランクCランク

出生体重出生体重

%%

AAランク:ランク:ELBWELBW入院数入院数>20>20例、例、BBランク:ランク:1010?? 1919例、例、CCランク:<ランク:<1010例例

P<0.08P<0.08

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厚生科学研究費補助金(子ども家庭総合研究事業)分担研究報告書

周産期医療およびその周辺関連システムに対する人口ベース評価の試み

分担研究者 上谷良行 兵庫県立こども病院小児科部長研究協力者 武田康久 山梨大学大学院医学工学総合研究部社会医学講座助教授

本邦における周産期医療およびその関連周辺領域においては、総合周産期母子医療センターを中心とした医療体制の整備が進む一方で、それらが基本的に都道府県単位の事業システムであることから、より広域を単位としたポピュレーション・べースでの評価はほとんどなされていない。また、これらの各地域ブロックもしくは都道府県内における域内格差の程度についても検討は行われていないため、今後における効率的かつ効果的システム整備方針を策定する上で基礎データとなりうる地域間比較評価指標を人口動態統計等の既存ナショナルデータを2次活用することにより開発することを試みる。

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Ⅰ.研究の目的 

周産期関連医療およびその周辺システムの人口

ベースでの評価方法の開発を人口動態調査結果

およびその他の公的2次統計資料を用いて目指

す。人口動態調査の各小票データを用いて周産

期死亡、新生児死亡、乳児死亡及び死産等をア

ウトカムとした各種解析を行うことにより、周

産期医療水準の1断面を population base で俯

瞰し、地域特性に応じた周産期医療体制の構築

に関する施策立案に向けた基礎資料とすること

を目的とする。

Ⅱ.研究の方法

0.人口動態統計の目的外使用申請および基本

データセットの作成

平成7~16年の人口動態統計死亡票における

データから乳児死亡例を抽出し、当該死亡児の

出生票上のデータを個人単位で連結した後、こ

れに同統計死産票から得られた死産例を加えて

基本データセットとする。当該児が多胎であっ

た場合は、生産・死産を問わず、当該多胎同胞

内での共通 ID(多胎同胞 ID)をそれぞれ付し、

当該多胎同胞内構成員全員(生存・乳児死亡・死

産を問わず)とのデータリンケージを行う。

1.ハイリスク児の生後1年以内生存分析、死

産児の在胎期間分布・周産期死亡児の在胎期間

+出

生後生存期間分布に関する分析

 生後1年以内死亡児の死亡票(出生票とデー

タリンケージ)から得た低出生時体重、早期産

及び多胎等からなるハイリスク群の生後1年以

内死亡

状況を観察する。すなわち、各ハイリスク群の

生後1年間の生存曲線を経年または各地域(都

道府

県、地域ブロック等)で描画し、それらの差を

比例ハザードモデルで評価する。

 また、死産票から得た妊娠 22週以後死産例、

及びこれに生後1年以内死亡児の死亡票(出生

票とデータリンケージ)から得た早期新生児死

亡例を加えた周産期死亡例をそれぞれ対象とし

た解析を実施する。妊娠 22週時点を開始点とし、

死産もしくは早期新生児期死亡を終了時点とし

た生存曲線を経年別または各地域(地域ブロッ

ク、都道府県等)別に描画し、それらの差を同

様に検定する。

2.都道府県および地域ブロック特性等の把握

2次医療圏別(必要に応じて市町村別)の各種

出生・死亡統計等から各都道府県および全国 12地域ブロック特性に関する因子(ecological factors)を抽出する。

一例として、域内医療資源分布の格差を念頭に

置いた周産期死亡分布格差指標案を以下に示す。

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ここで Y軸は、ある一定期間(例えば1年間)

内に一定地域(例えば都道府県)内において発

生した周産期死亡数の蓄積%、X軸は、同様に

当該地域内出生数の蓄積%を示す。これらにつ

いて、当該都道府県内の各2次医療圏別のデー

タからグラフにプロットし、その後、当該2次

医療圏の上位エリアである各都道府県別に点を

結ぶことにより各都道府県固有のカーブがそれ

ぞれ描画される(この場合、Region A-C は、

それぞれ都道府県を示す)。Region C は、各2

次医療圏における出生数に対する周産期死亡数

の比について都道府県内格差が大きい(すなわ

ち、出生規模当たりの周産期死亡規模の2次医

療圏間格差が大きい)都道府県と考えられる。

一方で、Region A は、出生規模に対する周産期

死亡規模がどの2次医療圏でも同一な、都道府

県内格差の認められない都道府県と考えられる。

なお、これらの分布格差指標等については、地

域別に観察する他に、経年的に観察することに

より当該地域における経年変化(改善状況)に

ついてのモニタリングが可能となるため、新た

な継続的観察指標となり得る可能性も予測され

る。

3.地域特性因子を考慮に入れたハイリスク児

生命予後の観察、シミュレーション

1.の解析等において、出生時体重、妊娠週数

等の個人(対象児)レベルの因子だけでなく、

2.で規定 し た地域特性 因 子 (ecological factors) 等をモデルに組 み込んだ multilevel model を解析フレームとした解析を行う。この

際、アウトカムを説明する地域特性因子の1つ

として特に域内(例えば都道府県内、地域ブロ

ック内)医療資源分配格差に注目する。この場

合、単に域内における周産期医療センター設置

数等の量的指標(域内均一状態を前提とし、域

内での「偏り」については考慮されない地域別

指標)にとどまらず、その質的指標として地域

内(都道府県内、地域ブロック内等)での施設

分布格差等を取り上げ、これらの因子がアウト

カムに及ぼす影響を定量化する。また、その過

程でこれらの施設設置分布を仮想的に変化させ

ることにより、如何にアウトカムを改善させら

れるかをシミュレートする。これにより、単に

1医療圏あたりの設置数等で全国一律に規定さ

れている設置基準をより現実に即した(すなわ

ち、各地域におけるベースラインとしての周産

期死亡状況等の現状に基づいた)効率的な目標

値へシフトさせうる可能性も考えられる。

4.長期入院児の予後(退院)状況観察(前年

研究からの継続)

 患者調査データから、いわゆる長期入院児を

抽出し、退院をアウトカムとした生存曲線を経

年、地域(都道府県、地域ブロック等)別に描

画した後、それらの差を比例ハザードモデルに

て評価する。また、この際、3.と同様に地域

特性因子の1つとして、これらの長期入院児対

応施設の域内分布格差指標(都道府県別、地域

ブロック別等)、または長期入院児の転帰に関

The Extent of Perinatal Death Disparities among Places

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

Cumulative % of birth

Cum

ulat

ive

% o

f per

inat

al d

eath

Region A (No disparity)

Region B (Low disparity)

Region C (High disparity)

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する格差指標(以下、参照)等についても解析

モデルに組み込んだmultilevel analysis を実施

する。

ここで Y軸は、ある一定期間(例えば1年間)

内に一定地域(例えば都道府県)内において発

生した長期在院児数の蓄積%、X軸は、同様に

当該地域内の退院児数の蓄積%を示す。これら

について、当該都道府県内の各2次医療圏別の

データからグラフにプロットし、その後、当該

2次医療圏の上位エリアである各都道府県別に

点を結ぶことにより各都道府県固有のカーブが

それぞれ描画される(この場合、Region A-C は、それぞれ都道府県を示す)。Region C は各2次医療圏における長期入院児数に対する退

院児数の比について都道府県内格差が大きい

(すなわち、長期入院児数規模当たりの退院転

帰児の規模の2次医療圏間格差が大きい)都道

府県と考えられる。一方で、Region A は、長期

入院児数の規模に対する退院児数の規模がどの

2次医療圏でも同一な、都道府県内格差・2次

医療圏間格差の認められない都道府県と考えら

れる。

Ⅲ.まとめ及び計画進捗状況

人口動態統計データを用いるため、総務省に対

して統計法に基づく統計の目的外使用に関する

申請を行う必要があり、現在、当該統計を直接

所管する厚生労働省に対して本申請に関する照

会を行っている。同統計における妊娠週数、出

生時体

重、胎数、多胎出生例の同胞の転帰、出生後1

年以内予後、死産状況、その他社会的因子等を

含む各種データを複数年にわたって得ることに

より、前項で示した周産期医療状況の経年変化

および各医療圏等における特質等について統計

学的に評価すると共に、それらの結果と病院ベ

ースの既存データとの関連についても評価・検

討を行う予定であり、解析スキームを含めた詳

細な計画を申請書案と共に作成中である。

また、人口動態統計を含めた各種ナショナルデ

ータは、集計後一般に公開されており、それら

の中には全国レベルのみならず、地域レベル

(都道府県、2次医療圏等)での集計結果を包

含するものも存在する。前項(Ⅱの2.等)で

示した地域レベル指標を算出するにあたり、保

管統計表を含めたこれらの公表データの収集を

進めて、基本データセットの作成、データクリ

ーニングを実施している。

Discharge-Hospitalization (or Survival-Death) Disparitiesamong Places

0

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20

30

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50

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0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

Cumulative % of Discharge (or Survival)

Cum

ulat

ive

% o

f Hos

pita

lizat

ion

(or D

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)

Region A (No disparity)

Region B (Low disparity)

Region C (High disparity)

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The Extent of Perinatal Death Disparities among Places

0

10

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90

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0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

Cumulative % of birth

Cum

ulat

ive

% o

f pe

rina

tal d

eath

Region A (No disparity)

Region B (Low disparity)

Region C (High disparity)

Discharge-Hospitalization (or Survival-Death) Disparities among Places

0

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100

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

Cumulative % of Discharge (or Survival)

Cum

ulat

ive

% o

f Hos

pita

lizat

ion

(or D

eath

)

Region A (No disparity)

Region B (Low disparity)

Region C (High disparity)

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厚生労働科学研究補助金(子ども家庭総合研究事業)

分担研究報告書

アウトカムを指標としベンチマーク手法を用いた質の高いケアを提供する

「周産期母子医療センターネットワーク」の構築に関する研究

分担研究名:周産期医療水準向上のための仮死児の脳障害予防対策の検討

第2報:低酸素性虚血性脳症に対する脳低温療法―諸外国の報告の分析

      

(分担研究者)大野 勉  埼玉県立小児医療センター保健発達部長

(研究協力者)鬼本博文  埼玉県立小児医療センター未熟児新生児科副部長

研究要旨:新生児の低酸素性虚血性脳症に施行された脳低温療法の 9つの報告 1)- 9)を分析・検討し、

また埼玉県立小児医療センター NICU(以下当センター)のプロトコールとも比較した。選択基準では、

全ての報告で脳症の症状が組み込まれており、そのほか在胎週数、アプガースコア、血液ガス所見、

蘇生処置の項目が認められた。当センターでは、他の報告と比べ選択基準に血中 lactate を採用して

いることに特徴があった。低温方法では、全身冷却と選択的頭部冷却、低温導入は生後6時間以内で

あり、体温モニターの部位はほとんどが直腸であった。目標体温は 32~35℃であり、低温維持期間

は 72 時間が 7つ、48 時間が 2つの報告で、復温に要する時間は、1または 2 時間で 0.5℃のスピー

ドであり、当センターとの相違は、体温モニターの部位、低温維持期間、復温に要する時間であった 。

副作用としては、重篤なものはなく対症療法で改善可能であり、また予後に関しては脳保護効果があ

るため、大規模な RCT を施行することを推奨していた。脳低温療法はその方法論においてまだ確立

していない治療法であるが、安全に施行でき脳保護効果がある治療法である。今後、これまでの脳低

温療法の臨床的また基礎的報告を検討し、さらに日本に適した RCT を組み立てる必要があると考える。

A. 研究目的

 新生児の脳障害は、心・脳循環系の破綻から

低酸素や脳虚血が起こり、脳障害へと進展して

いく。その脳障害の原因となる代表的な疾患が、

成熟児や成熟児に近い新生児に起こる仮死とそ

れに続発する低酸素性虚血性脳症(HIE)である。

今まで保存的にしか対応できなかった HIE によ

る新生児の脳障害に対しても、脳傷害機転が起

こった後におこる重篤な二次性脳障害(遅発性

神経細胞壊死やアポトーシス等)を防ぐ脳蘇生

のひとつが脳低温療法である。現在諸外国にお

いて新生児脳低温療法に関していくつかの pilot

study が報告され、また多施設共同無作為割付

試験(RCT)の結果も報告され始めてきた。し

かし、脳低温療法は未だに確立した治療とはい

えず、我が国において臨床応用を確立するため

には RCT の実施が必要となる。今回、諸外国の

脳低温療法の pilot studyや RCT の報告を分析

し、どのような方法で脳低温療法が施行され、

またそれに伴う副作用や効果について検討する

ことを目的とした。

B. 研究方法

 これまで新生児 HIE 症例に施行された脳低温

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療法の報告の内、35℃以下の体温で脳低温療法

が施行され、対象の選択基準、低温方法、低温

導入時間、低温期間、復温時間、副作用などが

記載されている9つの文献 1)-9)を分析対象とし

た。多施設の RCT が5つ(その内神経学的予後

が記載されている文献が2つ)、多施設で脳低

温療法が施行された文献1つ、pilot study 2つ、

後方視的分析1つであった。検討項目は、対象

の選択基準、冷却方法、脳温の指標としている

部位、低温導入時間、低温期間、復温時間、副

作用、神経学的予後(RCT の2文献)について

行った。また埼玉県立小児医療センター NICUにおける脳低温療法の選択基準、低温方法、副

作用(21 例)について諸外国の報告と比較検討し

た。

C. 研究結果及び考案

Ⅰ.諸外国の文献の分析

1,選択基準(表1):9つのすべての文献で基準

を定めているのは、脳症の神経学的症状であり、

2つ以上の症状または HIE の程度が中等度以上

Sarnat 分類 2 度以上などとなっていた。在胎週

数の基準を定めているのは 8つの報告で、すべ

て 35週以上でありその内半数が 36週、また在

胎週数の基準のない報告では最小の在胎週数症

例は 34週であった。出生体重に関しては2つの

報 告 のみ であった が、除外項目に 出 生 体 重

1800g以下 or未満または在胎週数の 10パーセ

ントタイル未満などが含まれている報告もあっ

た 。 アプガ ー スコアや 血液ガス 、 fetal distress、人工換気などの蘇生処置の記載、値

に関してはさまざまではあるが、それらをいく

つか組み合わせて基準としている報告や、血液

ガスに関しては臍帯血または動脈血、生後1時

間以内と 1 時間以後などで基準値が異なる報告

が 7つに認められた。脳の生理的活動性をみる

脳波などを基準に含めている報告は 2つのみで

あった。

2,低温方法に関連する項目(表 2):脳低温導入

開始時間はすべて 6 時間以内と一致していた。

冷却方法は、全身冷却が 6つ、選択的頭部冷却

が 2つ、また1つの報告で症例により両者のど

ちらかの方法で冷却していた。体温モニターの

部位は、直腸が 8つで食道が 1つの報告であっ

た。目標とする体温は、32~35℃の範囲であっ

たが、全身冷却に比べ選択的頭部冷却が高く体

温を保つ傾向にあった。低体温維持期間は、72時間が 7つ、48 時間が 2つの報告であった。復

温は、1 時間に 0.5℃ずつが 5つの報告と最も

多く、1 時間で 0.5℃以下が 3 つ、2 時間で

0.5℃ずつが 1つの報告であった。

3,副作用(表 3):徐脈はすべての報告にみられ

るがほとんど循環系に影響を与えないため経過

観察となっている。低カリウム血症、低血圧、

血小板減少や凝固異常、PPHN は、それぞれ対

症療法にて改善している。その他いくつかの副

作用が報告されているが、いずれも中等度であ

り対症療法で改善しているため、すべての報告

では安全性は現在の所大きな問題はないとして

いる。ただし、2つの報告で PPHN に対して一

酸化窒素吸入療法を施行しており、低体温前に

吸入酸素濃度が 50%以上必要とする児に関して

は、PPHN に注意深い観察が必要としている。

4,予後:生後 12ヶ月での発達予後の報告 1つ、

18ヶ月での発達予後が1つ報告されている。死

亡と生後 12ヶ月の時点での重篤な運動障害は、

平温群に比べ低温群で有意に少なかった。生後

18ヶ月の時点で低温群と平温群で発達予後に有

意差はなかったが、その内 subgroup の分析と

して、aEEG の基礎波の異常の程度が中間のグ

ループと重篤のグループに分け、それぞれにお

いて低温群と平温群で検討した結果、異常が中

間のグループのみ低温群で発達予後が平温群よ

り有意に良好であった。その他生存の有無と

MRI での短期予後による1つの報告では、HIEの Sarnat 分類 3 度ですべて予後が悪いとの報告

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がみられた。

Ⅱ、当センターにおける脳低温療法プロトコー

ル、副作用と諸外国の報告との比較

1,選択基準(表 4)と低温方法(表 5):諸外国の

報告と大きく異なるのは、選択基準の(4)の②で

血中 lactate の項目があること、低温方法では、

体温モニターの部位が鼻咽頭であること、低温

維持期間の設定が定まった期間でなく前大脳動

脈の resistance index の値により決定している

こと、そして復温は 1日 0.5℃ずつと極めてゆ

っくりとしたスピードで施行していることがあ

げられた。

2, 副作用:諸外国の報告と同様 徐脈は出現す

るも循環動態に影響はみられなかった。低血圧、

低カリウム血症、凝固異常や PPHN は認められ

なかったが、鼻咽頭温が 32~33℃に低下する

と血性気管吸引液となった症例が 3 例、不整脈

が 1 例に出現したが、鼻咽頭温を 34℃まで上昇

することにより改善した。また復温時に CRP 10mg/dlまで上昇した症例が 1 例認められたが

抗生剤の投与により改善した。痙攣は、全例に

筋弛緩薬を投与しているため認められず、喘鳴

や頭皮の浮腫も認められなかった。

Ⅲ.考案1,選択基準:低酸素虚血性脳症の脳低温療法

であるため胎内で胎児が低酸素虚血状態となっ

た指標、出生後に脳症の症状や呼吸循環状態悪

化の指標などが選択基準に組み込まれている。

脳波は脳の活動性または発達予後を予測する上

で優れた指標であるが、必ずしもどの施設でも

簡便・迅速に施行できる検査でなく、かつ脳低

温療法は生後6時間以内に開始しなければなら

ない時間の制約があるために、諸外国の 9つの

報告の中でも 2つしか選択基準に組み込まれて

いなかった。また当センターの選択基準の特徴

として血中 lactate が組み込まれていることに

ある。Lactate は、嫌気性代謝により産生され

る低酸素虚血の gold standard であり、またメ

イロンの投与の影響を受けない。新生児仮死に

おいては、しばしば産科にてメイロンの投与が

なされるため、pHやBE は信頼性が乏しくなり、

また近年血液ガス分析装置にて簡便に lactateが測定可能になってきた。血中 lactate と新生

児仮死児の予後との関連の文献も散見され、今

後検討を加えていきたい。

2 , 低 温 方 法 : 低 酸 素 性 虚 血 性 脳 症 の

therapeutic time window の関係上、生後 6 時

間で脳低温療法を導入することですべての報告

は一致していた。冷却方法に関しては、全身冷

却と選択的頭部冷却があるが、それぞれ一長一

短があるといわれ評価は定まっていない。体温

モニターの場所に関しては、諸外国では8つの

報告が直腸温を使用しているが、当センターは

鼻咽頭温を体温モニターとしている。鼻咽頭温

の欠点として、人工換気の加温の影響が指摘さ

れているが、温度プローベの位置を工夫するこ

とにより脳温と極めてよい相関があると考えて

いる。低体温の目標温度は、諸外国の報告では

32~35℃の範囲であったが、冷却部位や体温モ

ニターの部位によっても異なるため、至適温度

は示されていない。低温維持期間に関しては、

多くは一律 72 時間としているが、その根拠は示

されていない。脳症の程度や持続時間は児によ

って異なるため、当センターでは脳動脈血管の

vasoparalysis を反映すると報告されている

resistance index の値の回復を指標としている

が、今後さらに検討する予定である。復温のス

ピードは、諸外国では 1 時間または 2 時間に

0.5℃ずつであるが、当センターでは 1 日に

0.5℃の復温としている。急激な復温は、脳浮腫

の再燃の危険性があるため緩徐な復温がより安

全な方法ではあるが、それだけ低温の期間が延

長し副作用などが増加する危険性も含むため今

後検討する必要があると考える。

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3,副作用:現在のところ低体温による重篤で

危険性の高い副作用がなく、対症療法で対応可

能なためすべての報告では大規模な RCT の実施

を推奨している。しかし、低体温導入時や維持

期に体温の変動が大きくなると思わぬ危険性が

発生することもあり、現在治療法が確立してい

ない脳低温療法の実施に当たっては、細心の注

意をはらって施行する必要がある。

4,予後:2つの RCT の報告により脳低温療法

は、脳保護効果がある可能性を強く示唆してい

るが、出生後の脳症の程度により限界があるこ

とも示唆され、今後の検討がまたれる。

 以上のことより、脳低温療法はその方法論に

おいてまだ確立していない治療法であるが、安

全に施行でき脳保護効果がある治療法である。

今後、これまでの脳低温療法の臨床的また基礎

的報告を検討し、さらに日本に適した RCT を組

み立てる必要があると考える。

文献

Shankaran S, Laptook A, Wright LL: Whole-body hypothermia for neonatal encephalopathy: Animal observations as a basis for a randomized, controlled pilot study in term infants. Pediatrics 110: 377-385, 2002Jacobs SE, Stewart M, Inder TE, Doyle L,et al: Feasibility of a pragmatic randomized controlled trial of whole body cooling for term newborns with hypoxic-ischemic encephalopathy. The cool cap trial. Hot topics 2002 in neonatology, 2002,Washington.Battin MR, Penrice J, GunnTR, et al: Treatment of term infants with head cooling and mild systemic hypothermia (35.0℃ and 34.5℃) after perinatal asphyxia. Pediatrics 111: 244-251, 2003

Eicher DJ, Wagner CL, Katikaneni LP, et al: Moderate hypothermia in neonatal encephalopathy: Efficacy outcomes. Pediatr Neurol 32: 11-17, 2005Gluckman PD, Wyatt JS, Azzopardi D, et al: Selective head cooling with mild systemic hypothermia to improve neurodevelopmental outcome following neonatal encephalopathy. Hot topics 2004 in neonatology, 2004,Washington.Debillon T, Daoud P, Durand P, et al: Whole-body cooling after perinatal asphyxia: a pilot study in term neonates. Dev Med Child Neurol 45: 17-23, 2003Compagnoni G, Pogliani L, Lista G, et al: Hypothermia reduces neurological damage in asphyxiated newborn infants. Biol neonate 82:222-227, 2002Azzopardi D, Robertson NJ, Cowan FM, et al: Pilot study of treatment with whole body hypothermia for neonatal encephalopathy. Pediatrics 106: 684-694, 2000Thoresen M, Whitelaw A: Cardiovascular changes during mild therapeutic hypothermia and rewarming in infants with hypoxic-ischemic encephalopathy. Pediatrics 106:92-99,2000

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表1 選択基準

脳症の症状が2つ以上or HIE moderate (Sarnat分類など)以上

9脳症の症状

2

6

5

7

8

8

2

8

n

BE

pH

脳波or脳機能モニター(1)、aEEG(!)脳波等

10分間の蘇生(4)、5分以上の蘇生(1)、蘇生が必要(1)

蘇生処置(人工換気など)

1つの文献を除き、定義の記載はなしFetal distressの所見

-10、-12、-13、-14、-16以下or未満

7.0以下or未満(7)、7,1未満(1)血液ガス

10分後5点以下(5)、5分後5点以下or未満(3)Apgar score

2000g以上(2)出生体重

35週以上(2)、36週以上(4)、37周以上(1)、成熟児(1)

在胎週数

具体的項目例(n)選択基準の項目

脳症の症状が2つ以上or HIE moderate (Sarnat分類など)以上

9脳症の症状

2

6

5

7

8

8

2

8

n

BE

pH

脳波or脳機能モニター(1)、aEEG(!)脳波等

10分間の蘇生(4)、5分以上の蘇生(1)、蘇生が必要(1)

蘇生処置(人工換気など)

1つの文献を除き、定義の記載はなしFetal distressの所見

-10、-12、-13、-14、-16以下or未満

7.0以下or未満(7)、7,1未満(1)血液ガス

10分後5点以下(5)、5分後5点以下or未満(3)Apgar score

2000g以上(2)出生体重

35週以上(2)、36週以上(4)、37周以上(1)、成熟児(1)

在胎週数

具体的項目例(n)選択基準の項目

n:文献数

表2 低温方法に関連する項目

0.5℃/h(5)、0.5℃/h以下(3)、0.5℃/2h(1)復温に要する時間

72時間(7)、48時間(2)低体温維持期間

全身冷却:32~34℃(1)、33± 0.5℃(1)、33~34℃(3)33.5~34.5℃(1)、34.5℃(1:食道温)

選択的頭部冷却:34.5と35℃(1)、34~35℃(2)

目標体温

直腸温(8)、食道温(1)体温モニターの部位

生後6時間以内(9)低温導入開始時間

全身冷却(7:一部重複)選択的頭部冷却(3:一部重複)

冷却方法

0.5℃/h(5)、0.5℃/h以下(3)、0.5℃/2h(1)復温に要する時間

72時間(7)、48時間(2)低体温維持期間

全身冷却:32~34℃(1)、33± 0.5℃(1)、33~34℃(3)33.5~34.5℃(1)、34.5℃(1:食道温)

選択的頭部冷却:34.5と35℃(1)、34~35℃(2)

目標体温

直腸温(8)、食道温(1)体温モニターの部位

生後6時間以内(9)低温導入開始時間

全身冷却(7:一部重複)選択的頭部冷却(3:一部重複)

冷却方法

n:文献数

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表3 副作用

痙攣、喘鳴、頭皮の浮腫、大きい体温のばらつきその他

一酸化窒素吸入療法で改善PPHN

一部の報告でみられるが、血小板や新鮮凍結血漿の輸血で改善

血小板減少、凝固異常

低温中にみられることがあるが、昇圧剤やvolumeの投与にて改善、

低血圧

一部の報告でみられるが、輸液療法にて改善低カリウム血症

全ての報告でみられるが、臨床的に問題なし徐脈(一部QT延長)

痙攣、喘鳴、頭皮の浮腫、大きい体温のばらつきその他

一酸化窒素吸入療法で改善PPHN

一部の報告でみられるが、血小板や新鮮凍結血漿の輸血で改善

血小板減少、凝固異常

低温中にみられることがあるが、昇圧剤やvolumeの投与にて改善、

低血圧

一部の報告でみられるが、輸液療法にて改善低カリウム血症

全ての報告でみられるが、臨床的に問題なし徐脈(一部QT延長)

表4 当センターの選択基準

(1) 在胎35週以上、かつ出生体重2000g以上(2) Apgar score≦ 6 (5分)、かつmoderate HIEまたはsevere HIEに該当(3) 出生後の蘇生に人工換気(マスクバギングを含む)を要する(4) ① ②次の と のどちらかを満たす

①臍帯動脈血又は生後1時間以内の動脈血でpH<7.0(メイロン投与前)②生後1時間以降の血中lactate値が8mmol/L以上、20mmol/L未満

(5) 脳低温療法開始予定が出生後6時間未満

(1) 在胎35週以上、かつ出生体重2000g以上(2) Apgar score≦ 6 (5分)、かつmoderate HIEまたはsevere HIEに該当(3) 出生後の蘇生に人工換気(マスクバギングを含む)を要する(4) ① ②次の と のどちらかを満たす

①臍帯動脈血又は生後1時間以内の動脈血でpH<7.0(メイロン投与前)②生後1時間以降の血中lactate値が8mmol/L以上、20mmol/L未満

(5) 脳低温療法開始予定が出生後6時間未満

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表5 当センターの低温方法

1日0.5℃ずつ復温復温に要する時間

最低72時間は維持し、復温開始は前大脳動脈のresistance Index 0.6以上で復温開始

低体温維持期間

℃34目標体温

鼻咽頭温体温モニターの部位

生後6時間以内低温導入開始時間

選択的頭部冷却冷却方法

1日0.5℃ずつ復温復温に要する時間

最低72時間は維持し、復温開始は前大脳動脈のresistance Index 0.6以上で復温開始

低体温維持期間

℃34目標体温

鼻咽頭温体温モニターの部位

生後6時間以内低温導入開始時間

選択的頭部冷却冷却方法

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厚生労働科学研究費補助金(こども家庭総合研究事業)

分担研究報告書

小児科医・助産師・看護師向けの新生児心肺蘇生法の研修プログラムの

作成と研修システムの構築とその効果に関する研究

分担研究者:田村 正徳 埼玉医科大学総合医療センター小児科教授

研究要旨:北米と我が国の新生児心肺蘇生法の手順と器材の比較検討を行った。北米の

NRP の教材の翻訳権を得るとともに、我が国独自の教材作成のため新生児心肺蘇生の実

際のビデオ記録の収集・検討体制を構築した。全国アンケート調査から講習会方式が

蘇生法習得に最も効果的と判断し、モデル施設にて講習会を実施し、受講生の修得度を評

価しながらより効果的な研修プログラムの開発を進めた。NRP の情報提供と継続学習シ

ステムとして Web Based Training site を Internet 上に構築する準備を開始した。

A.研究目的

 仮死とその後遺症の発生を減少させるた

めに幅広い周産期医療関係者が新生児心肺

蘇生法を習熟出来る研修プログラムと研修

体制を構築する。

B.研究の方法

 動物実験・ビデオ検討会・アンケート調

査・講習会の開催・ワークショップを通し

て以下の 6 分野の研究を実施する。a) EBM を踏まえた標準的な新生児心肺蘇生

法のマニュアルの作成、b) 適切な薬剤や

蘇生器具・装置の選定と使用手順に関する

研究、c) 研修用教材の開発、d)小児科

医・一般産科医・助産師・看護師向けの研

修プログラムの開発、e) 研修講習会の実

践と評価法の開発、f)全国的な研修システ

ムの構築とその評価法の開発。(倫理面への配慮:動物実験は、各施設の倫理委員会

の指示・推奨を遵守し、動物愛護に努めた。

蘇生時の撮影については、個人のプライ

バシーの保護に配慮し、家族の同意を得た

上で実施した。)C.研究成果

 欧米の新生児心肺蘇生法のガイドライン

と研修教材を比較検討し、「AHA心肺蘇生と救急心血管治療のための国際ガイドラ

イン 2000」をベースにした米国小児科学

会による「NRP-Textbook of Neonatal Resuscitation」と「NRP デモビデオ」が

教材としてすぐれていると判定し、米国

小児科学会と交渉して、2006年に予定さ

れている新版の翻訳権を獲得した。NRPで推称されている薬剤と医療機器をリス

トアップし、

本邦における承認状況、問題点について調

査した。家兎を用いた実験で、北米と日本

の胎便吸引法を比較検討した。我が国独自

の教材開発のため主要施設での新生児心肺

蘇生法の実際のビデオ検討システムを構築

した。我が国の NICU の新生児心肺蘇生法

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修得状況に関するアンケート調査結果から

講習会プログラムの開発が急務と判断し、

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研究協力員の所属する施設や地区医師会や

新生児認定看護師研修者等の協力の下に大

阪・埼玉・長野・広島にて「AHA心肺蘇生国際ガイドライン 2000」に準拠した手

技や研修方法を用いた新生児心肺蘇生法講

習会を実施し、その効果を評価し、効果的

なプログラム内容の開発を行った。第 49回日本未熟児新生児学会学術集会において

研究協力員とともに「新生児心肺蘇生法の

標準化」のワークショップを行い北米の

NRP との比較ならびに我が国での蘇生講

習会プログラムとして準備すべき事項を

検討した。また同学会において特別講演を

行った Niermeyer教授を交えた検討会で

NRP2006 に関する最新の情報を収集した

NRP instructor を養成するために米国ハ

ワイ州 Kapiolani 母子医療センター新生児

部長 Nakamura と井上信明医師の協力を

得て、同病院で主催する NRP講習会への

日本人医療スタッフの受け入れをあっせ

んし、26名の医師・看護師が受講した。

子 ど も 家 庭 総 合 研 究推進 事 業 と し て

Nakamura部長を招聘し埼玉・長野・大

阪で NRP 関連の講演と講習会指導を受け、

我が国に適合した NRP の推進方策の共同

研究を行った。

D.考察 NICU責任者を対象とした全国調査から

も新生児心肺蘇生法の標準化とその効果的

な研修プログラムの開発と研修システム

の構築は急務であり、16年度の当班の研

究はその目標に向け着実な第一歩を踏み出

したと言える。今後、この方面での先進国

である北米のモデルを参考にしながら、

我が国の文化・社会・医療体制に適合した

研修プログラムの開発と研修システムの

構築を推進する必要がある。

E.結論1.新生児心肺蘇生法の標準化に向けて北米

と我が国での心肺蘇生法の手順と器材を比

較検討した。2.北米の NRP の教材の翻訳

権を得た。3.新生児心肺蘇生のビデオ記録

の編集を開始した。4.我が国の心肺蘇生研

修に関する全国アンケート調査を行った。

5.モデル施設にて講習会を実施し、受講生

を評価しながらより効果的な研修プログ

ラムの開発に着手した。6.NRP の情報提

供と継続学習システムとして Web Based Training site を Internet 上に構築する準

備を進めた。

F.健康危険情報:無し。

G.研究発表

Ⅰ.論文発表

1.田村正徳,佐橋剛・"NRP の日本への導入

の展望(新生児の蘇生~標準化に向けて

の動き )" ・ Neonatal Care ・ 2004 ・

223(17)巻 7号・99-1002.井上信明,田村正徳・"NRP の実際と効果

(新生児の蘇生~標準化に向けての動き)"・Neonatal Care・2004・223(17)巻7号・100-104

3.田村正徳・医療機器の安全な使用を考え

る・周産期医学・2004・34巻 4号・

433-4344.田村正徳 ,近藤乾 ,佐橋剛 ,井上信明・

Neonatal Resuscitation Program に

基づく新生児心肺蘇生・第3回呼吸ケア

セミナー(テキスト)・呼吸器ケアセ

ミナー実行委員会・2004・73-795.田村正徳・新生児の呼吸不全・救命医学

9月臨時増刊号 呼吸管理のすべて・へ

るす出版・2004・1437-1447

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Ⅱ.学会発表

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1.田村正徳・新生児蘇生プログラム-

Neonatal Resuscitation Program(NRP)- ・ SS セ ミ ナ ー 2005 ・

2005.01.16・東京都,2.田村正徳・新生児の蘇生法・第 12回日

本 新 生 児 看 護 学 会 教 育 講 演 会 ・

2004.10.30・大阪府

3.田村正徳・新生児蘇生プログラム-

Neonatal Resuscitation Program(NRP)・第9回川越新生児臨

床カンファランス・2005.2.15・川越

4.M.Tamura・Guidelines for Healthcare Providers and Parents to Follow in Determining the Medical Care of Newborns with Severs Disease,・Hot topics 2004 in neonatology・2004.12.13,・Washington,DC

5.田村正徳・ワークショップ:新生児の蘇

生法の標準化・第 49回日本未熟児新生

児学会・2004.12.7・横浜市

6.田村正徳・新生児蘇生の現状と新しいN

RP

(NeonatalResuscitationProgram)・第3回東京新生児研究会・2004.11.06・

東京都

7.田村正徳,近藤乾・本邦における新生児

蘇生教育の現状 ―NICU からアンケート-・第 40回日本周産期・新生児学会・

2004.7.13・東京

8.近藤乾,田村正徳・我が国における新生

児蘇生法の問題・第 49回日本未熟児新

生児学会・2004.11.7・横浜

9.田村正徳・NRP紹介:AHA2000 国際

ガイドラインに基づく新生児心肺蘇生

法・第3回愛媛県新生児医療研究会・

2004.10.23・松山市

10.田村正徳・Neonatal Resuscitation Program(NRP)の紹介・日本母性衛生学

会総会・2004.09.16・東京都

11.田村正徳・NRPに基づく新生児蘇生

法・第24回埼玉産婦人科看護研修学院

卒後研修会・2004.08.29・さいたま市

12.田村正徳・新生児、乳児呼吸器疾患の

特徴とケア 呼吸窮迫症候群・肺炎・

MAS・第 44回 臨床呼吸機能講習会・

2004.08.25・福岡市,13.田村正徳,近藤乾,佐橋剛,井上信明・

Neonatal Resuscitation Program に

基づく新生児心肺蘇生・第3回呼吸ケア

セミナー・2004.08.08・さいたま市

14.Masanori Tamura ・ HFO AND INO THERAPY IN NEONATAL INTENSIVE CARE UNIT,・The 13th Congress of the Western Pacific Association of Critical Care Medicine ・

2004.06.11・SEOUR,KOREA

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書籍 著者氏名 論文タイトル名

書籍全体の 編集者名

書 籍 名

出版社名 出版地

出版年 ページ

田村正徳 新生児・乳幼児・小児の呼吸管理のポイント

監修 :沼田克雄編集 : 大 村昭人 ,安本和正

入門 呼吸療法 改定第2版

克誠堂出版

東京 2004 198-208

田村正徳 先天性横隔膜ヘルニアへのアプローチ

市 川 光 太郎 ,柳澤正義

小児科外来診療のコツと落と し 穴 (5) 小児救急

中山書店 東京 2004 180-182

雑誌

発表者氏名 論文タイトル名 発表誌名 巻号 ページ 出版年

田村正徳佐橋 剛

“NRPの日本への導入の展望(新生児の蘇生~標準化に向けての動き)”

Neonatal Care

223(17) 巻7号

99-100 2004

田村 正徳井上 信明

“NRPの実際と効果(新生児の蘇生~標準化に向けての動き)”

Neonatal Care

223(17) 巻7号

100-104 2004

田村 正徳 医療機器の安全な使用を考える

周産期医学 34巻4号 433-434 2004

田村 正徳 新生児の呼吸不全 救命医学呼吸管理の すべて

9月臨 時増刊号

1437-1447

2004

講演

発表者氏名 演題 会合名 講演日 場所

田村正徳 新生児・乳児の呼吸管理 第9回3学会合同呼吸療法認定士認定講習会

2004.9 東京都大田区

田村正徳 AHA 国際ガイドラ イ ン2000に基づいた新生児の心肺蘇生とNRP普及活動

日本未熟児新生児学会教育セミナー

2004.8 大阪

田村正徳 新生児蘇生プログラム-Neonatal

Resuscitation Program(NRP)-

SSセミナー 2005 2005.01.16 東京都千代田区

田村正徳 新生児の蘇生法 第 12回日本新生児看護学会教育講演会

2004.10.30 大阪府中央区

田村正徳 NRP紹介:AHA2000国際ガイドラインに基づく新生児心肺蘇生法

第3回愛媛県新生児医療研究会

2004.10.23 愛媛県松山市

田村正徳 Neonatal Resuscitation

日本母性衛生学会総会学

2004.09.16 東京都新宿区

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Program(NRP)の紹介田村正徳 ハイリスク新生児とその

家族への支援の重要性平成 16年度母子保

健指導者講習会2004.09.08 長野県松本市

田村正徳 NRPに基づく新生児蘇生法

第24回埼玉産婦人科看護研修学院卒後

研修会

2004.08.29 埼玉県さいたま市

田村正徳 新生児、乳児呼吸器疾患の特徴とケア 呼吸窮迫症候群・肺炎・MAS

第44回 臨床呼吸機能講習会

2004.08.25 福岡県福岡市

田村正徳近藤乾佐橋剛井上信明

Neonatal Resuscitation Programに基づく新生児心肺蘇生

第3回呼吸ケアセミナー

2004.08.08 埼玉県さいたま市

Masanori Tamura

HFO AND INO THERAPY IN NEONATAL

INTENSIVE CARE UNIT

The 13th Congress of the Western Pacific Association of Critical Care

Medicine

2004.06.11 SEOUR,KOREA

田村正徳 新 生 児 の蘇生 につい て AHA2000 に沿った新生児心肺蘇生法と NRP 導入の意義

千葉県周産期研究会 2004.01.28 千葉緑区

田村正徳 ワークショップ:新生児の蘇生法の標準化

第 49回日本未熟児新生児学会

2004.12.7 神奈川県横浜市

田村正徳 新生児蘇生の現状と新しいNRP(Neonatal

Resuscitation Program)

第3回東京新生児研究会

2004.11.06 東京都

田村正徳 重篤な疾患をもった新生児医療をめぐる話し合い

のガイドライン

成育医療研究(13公-4)主催市民公開シンポジウム

2004.01.10 東京

学会発表

発表者氏名 演題 学会名 日時 場所

M.Tamura Guidelines for Healthcare Providers and Parents to Follow

in Determining the Medical Care of

Newborns with Severe Disease

Hot Topics 2004 in Neonatology

2004.12.13 Washington,DC

田村正徳近藤乾

本邦における新生児蘇生教育の現状-NICUアンケートから-

第40回日本周産期・新生児学会

2004.07.13 神奈川県横浜市

近藤乾田村正徳

我が国における新生児蘇生法の問題

第49回日本未熟児新生児学会

2004.11.07 神奈川県横浜市

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厚生労働科学研究費補助金(班研究事業)分担研究報告書

小児科医・助産士・看護師向けの新生児心肺蘇生法の

研修プログラムの作成と研修システムの構築とその効果に関する研究

-本邦における新生児仮死の発生頻度と新生児蘇生教育の現状に関する研究-

研究協力者 近藤乾 埼玉医科大学総合医療センター 新生児

分担研究者 田村正徳 埼玉医科大学総合医療センター 小児科教授

研究要旨:我が国における新生児仮死の発生頻度、新生児蘇生教育の現状について調査し

た.文献検索の結果、わが国では全国的なあるいは地域ベースの仮死統計がきわめて不足

していることがわかった.全国主要NICUに行なったアンケート調査では、正期産児

の 11.2%が新生児仮死で入院していた.仮死児の院内出生率は、軽症 72.9%、中等症

69.7%、重症 54.7%と重症になるほど低かった.新生児蘇生教育の現状に関する調査で

は、蘇生教育用のテキストやマニュアルを使用している施設は 20%以下であった.また、

蘇生教育は分娩室や NICU における実践という形でおこなわれていた.NICU責任者の多

くは、このような蘇生教育は決して望ましいものでなく、わが国の医療環境に適した蘇

生法の標準化と地域ごとの講習会が必要であると考えていた。

                            

A.研究目的

わが国では、新生児の半数以上が産科クリ

ニックで出生しており、この比率は年々

増加している.いっぽう新生児仮死の予後

は、分娩室における蘇生法により大きく影

響される.これまで、我が国における新

生児の蘇生は、もっぱら経験をつんだ小児

科医や新生児科医、一部の麻酔科医の手に

ゆだねられてきた.重篤な新生児の蘇生

には、高度の知識と熟練された手技が必要

と考えられてきたためである.しかし、

出生時に少なくとも用手換気を必要とする

重症仮死の3分の2以上は、出生前の予測

が不可能である.しかも、仮死の重症度が

高いほど院

外出生の割合が高くなる.したがって、熟

練した医師が立ち会うことのできる蘇生

の機会は限られており、結果的に多くの仮

死児が新生児専門医の立ち会いなしに出生

している.このような現状を改善するた

めには、わが国の全ての分娩施設に於い

て適切な蘇生が行えるような新生児心肺蘇

生システムを構築する必要がある.この

研修システムを全国的に展開するために

は、蘇生法の標準化が必要である.また、

蘇生教育の効果を評価するためには、蘇生

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教育の前後で新生児仮死の発生頻度や予後

への影響を調べる必要がある.このため、

我々は我が国における新生児仮死の発生状

況を調査す

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るとともに、現在行なわれている新生児

蘇生教育の現状について調査した.

B.研究方法

1.新生児仮死の統計に関する調査

我が国における新生児仮死の統計に関する

文献検索を行なった.新生児仮死、発生率、

予後、統計などを組み合わせてこの 10年間においてインターネットまたは医学で

検索を行なった.     

2.NICU入院患者に占める新生児仮死

の比率

NICU入院患者に占める新生児仮死の比

率を調べるために、わが国の主要施設に

199 施設にアンケート調査を行ない 98 施

設(49.2%)から回答を得た.調査項目

は、全入院患者数、院内出生率、正期産児

の重症度別入院数(表1)である.

3.新生児蘇生教育の現状

現在行なっている蘇生教育の現状に関する

アンケート調査を行なった.わが国の主

要施設に 199 施設にアンケート調査を行

ない 124 施設(62%)から回答を得た

(図1).調査内容は、施設の設立母体、

新生児蘇生用のテキストやマニュアル使

用の有無、新生児蘇生教育の方法、現在の

蘇生教育に対する満足度、標準的なガイド

ラインの必要性、今後の新生児蘇生教育の

ありかたなどである.

倫理面での配慮

アンケートは、仮死に関する調査及び蘇生

教育の現状に関する調査には個人に関する

情報は含まれていないため、倫理的問題は

ないと考えられる.

C.研究結果

1.新生児仮死の統計に関する調査

検索の結果、調査の目的、仮死の定義、調

査規模などばらばらであり、わが国の新

生児仮死の発生率、重症度、予後の現状を

把握するのは困難であった.前方視的研究

は産科側から行なわれた1遍のみであっ

た.

2.NICU入院患者に占める新生児仮死

の比率

98 施設における全入院患者は 25335人で

あった.このうち院内出生率は 70.6%で

あった.正期産児の仮死患者数は軽症

1790名、中等症 974名、重症 64名であ

った.仮死の重症度別に院内出生率をみる

と軽症 72.9% 、 中 等 症 69.7% 、 重 症

54.7%と重症になるほど院内出生率は低

かった.

3.新生児蘇生教育の現状

新生児蘇生教育用のテキストマニュアル

の有無に関する質問では、有りは 23 施設

18.9%であった.主たる教育法に関する

質問(重複回答可)では、分娩室やNIC

U入院時の蘇生における実践を通じてが

115 施設と大部分を占めていた.その他

ではテキスト 51 施設、人形 49 施設、ス

ライド 22 施設の順であった.

NICU責任者の 83.9%はこのような蘇

生教育法は不適切であると考えており、

97.5%が標準的な新生児蘇生のガイドラ

インが必要であると考えていた.蘇生教

育の普及法については地域ごとの講習会の

開催が重要であるとの回答であった.

D.考察

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新生児仮死の三分の二は出生前の予測が困

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難である.また、わが国では新生児の半数

が産科クリニックで出生している.した

がって、新生児仮死の発生率や予後の改善

のためには小児科医・一般産科医・助産

師・看護師に対する研修システムの構築が

必要である.この研修システムの効果を

評価するためには、研修システム開始前後

における仮死の発生率や予後に関する基礎

データの比較を行なうべきである.イン

ターネットで行なったオンライン検索で、

わが国では全国的なあるいは地域ベース

の仮死統計がきわめて不足しており、今後

質の高い疫学調査が必要であると考えられ

た.

NICUに入院した新生児仮死例における

調査では、重症例ほど院外出生率が高いと

いう結果であった.個々の症例における

検討は行なっていないのでその理由につ

いては不明であるが、蘇生法や搬送法にお

ける問題点も否定できない.個々の症例に

おける出生時の状態、蘇生法、予後の調査

が必要かも知れない.

新生児蘇生教育の現状に関する調査では、

実践を通した教育が主体で、系統的な研修

システムを採用している施設は皆無であ

った.今後、全国的に研修システムを展開

していくためには標準的なガイドライン

の作成が不可欠である.NICU責任者に

対するガイドライン標準化の是非につい

ての質問では、全員が必要であるとの回答

であったが、ガイドラインの標準化の可

能性を危惧する意見もあった.しかしな

がら、AAP、AHAの推奨する国際ガイ

ドラインが多くの controversial な問題を

含みながらも、ともかくも合意を得て

Neonatal Resuscitation Program の形

で実践され、結果的に著しい効果を上げて

いる事実に注目する必要がある.コンセ

ンサスが得られないからまとめられない

ではなく、コンセンサスの得られる範囲

でまとめるという作業も必要になろう.

研修プログラムの普及法に関する質問で

は、地域ベースの講習会でなければ参加で

きない、あるいは効果を上げることはで

きないであろうとの回答であった.

E.結論

全国規模および地域ベースの新生児仮

死に関する十分な疫学調査がないため、

その調査が必要である.

重症仮死ほど院外出生の比率が高かっ

た.院外施設のスタッフに対する蘇生

教育が必要である.

我が国の NICU では新生児心肺蘇生の

標準的なテキストがなく、したがっ

て、実践を通した蘇生教育をおこなっ

ている.このような現状にNICUの

責任者は満足していない.今後は標準

化されたガイドラインの作成と、地

域単位での心肺蘇生の講習会が必要で

ある.

   

F.健康危険情報

アンケート調査であり、健康に関する危

惧は考えられない.

       

G.研究発表

学会発表

1.近藤乾 田村正徳

本邦における新生児蘇生法教育の現状  -NICU アンケート調査から- , 第 40回日本周産期・新生児学会・東京

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2.近藤乾 田村正徳

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我が国における新生児蘇生法の問題点

第 49回日本未熟児新生児学会 横浜

H.知的財産権の出願・登録状況

  特になし

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図1 アンケート回答施設

回答施設

設立母体 施設数総合病院 61大学病院 38一般小児 13小児専門 10その他 2合計 124

設立母体総合病院

大学病院

一般小児

小児専門

その他

表1 正期産児の仮死の定義

軽~中等度仮死アプガール点 4~6点 または酸素+刺激、あるいは一時的にマスク&バッグで用手換気

重症仮死患者数アプガール点 1から3点または気管内挿管あるいはマスク&バッグで用手換気、一時的に心臓マッサージ

最重症仮死アプガール点 0点または気管内挿管あるいはマスク&バッグで用手換気、かつ、心臓マッサージ5分以上

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厚生労働科学研究費補助金(子ども家庭総合研究事業)

分担研究報告書

小児科医・一般産科医・助産師・看護師向けの新生児心肺蘇生法の研修プログラムの

作成と研修システムの構築とその効果に関する研究

研究協力者 長野県立こども病院総合周産期母子医療センター新生児科

中村友彦、広間武彦

分担研究者 田村 正徳 埼玉医科大学総合医療センター小児科教授

研究要旨:MAS 予防効果について、日本の現在の手技と NRP が推奨する手技の検証

A.研究目的            

 MAS 動物モデルを使用し、日本の従来

の胎便を回収する手技(挿管したまま気管

内チューブで胎便を吸引)とNRPが推奨す

るMeconium aspiratorを使用した回収手技で

の気管内からの胎便の回収量の違いを比較

した。   

                  

B.研究方法            

 MASモデルの 8羽の日本成熟家兎を無

作為に3つの群に振り分け、気道内の胎便

の回収量を比較した。

Group 1:気管内チューブ群(6.5 Frサ

イズ)(n=1)

Group 2:気管内チューブ群(8 Frサイ

ズ)(n=4)

Group 3:Meconium aspirator群(n=4)

手技:体重2.0-2.2Kgの日本成熟家

兎計9羽を麻酔した後(ケタラール10

mg/kg、xyladine 5mg/kg、筋肉内投与)、

麻酔の持続投与のために両側耳静脈を24

ゲージカテーテルで留置した。動物は実験

を通して常に仰臥位にした。大量麻酔と筋

弛緩薬を投与し自発呼吸を停止させた。家

兎に気管上部より20%胎便(10mL/

kg)をゆっくり注入し気管結紮した。胎便

は満期産成熟児(15人)の初回胎便を2

0%に蒸留水で希釈して混合したものを使

用した5), 6), 7)。胎便注入後直ちに気管切開し

4Frサイズの気管チューブ(Mallinkrodt

Inc. St. Louis, Missouri., USA)を挿入し、

その後それぞれの群の手技で胎便を吸引・

回収し、回収量を測定・比較した。

吸引手技:

G 1と2:挿管チューブ挿入後、6.5また

は 8Fr.サイズのサクションカテーテル

(Argyle®:日本シャーウッド株式会社)

を挿管チューブの先端より 5mm深く挿入

し、3秒間吸引を施行した。

G 3:挿管チューブ挿入後、気管チューブ

に Meconium aspirator を直接接続し、3秒

間かけて吸引しながら挿管チューブを引

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き抜いた。

いずれのグループも吸引器の吸引圧力は

チューブ閉塞時に100mmHgになるよう

に設定した。      

(倫理面への配慮)

長野県立こども病院実習室運営委員会の倫

理・運営規定に従って施行した。

C.研究結果            

 G 1では、胎便が粘調のため気管チュ

ーブ内で胎便が閉塞してしまい、ほとん

ど胎便は回収できなかった。

G 2では胎便回収量は1.15±0.1

1 mL (n=4)であった。

G 3では胎便回収量は1.38±0.1

7 mL (n=4)であった。

G2とG3の間ではp = 0.08で有意差は

なかった。

D.考察              

 重篤な MAS 発症予防のために児の気

管・肺内に混入した胎便を回収することは

理論上好ましいと思われるが、現時点では

その有効性については明らかではない。

 Meconium aspirator を使用するとわずか

な差ではあるが気管吸引チューブ使用時よ

り気道内からの胎便回収量が多かった。お

そらく胎便の粘調度が高い場合にはより内

径が大きい挿管チューブそのものを吸引

した方が胎便回収に有利と考えられる。し

かし回収された胎便は投与量に比し非常に

わずかな量であり、どちらの手技を選択

しても、おそらく気管内の一部の胎便し

か回収はできないものと思われる。しか

も回収された胎便の量の差は有意でなく極

わずかであること、またそのわずかの回

収量の差が臨床的に明らかな効果として現

れるかについては大きな疑問がある。ま

た NRP の推奨する手技では、抜管しなが

ら胎便を吸引することにより、早期に人工

陽圧呼吸を必要とする児に対し再挿管を必

要とし、人工呼吸サポート開始までに要す

る時間を多く必要とする可能性が高い。ま

た気管・気管支・肺胞内に入ってしまった

胎便のより多くの回収が真に必要なら、出

生時の吸引のみでは不十分で、挿管・人工

呼吸サポートの上サーファクタント洗浄

等施行する方がより効果的と思われる。

    

E.結論              

 現時点では日本の新生児医療現場におい

て、日本が今まで施行していた蘇生処置か

らNRPの推奨するMeconium aspiratorを使用

した手技に変更する根拠は乏しいと思わ

れる。ただし羊水が胎便で混濁している

児への蘇生時にはできるだけ大きいサイ

ズのチューブを選ぶことが望ましいと思

われる。また胎便吸引時の吸引機の吸引圧

設定に関してはさらなる検証が必要と思

われる。   

F.健康危険情報

特になし

G.研究発表            

1. 論文発表            

1.中村友彦 低出生体重児、ベッドサイド

の新生児の診かた、南山堂、2004、207-2242 金子 克、中村友彦、新生児 小児の・ECMO および血液浄化における臨床工学

技士の役割、周産期医学、2004;34:

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459-4713. OSUKE IWATA,TOMOHIKO NAKAMURA, SACHIKO IWATA, MASANORI TAMURA, SHINICHI HIRABAYASHI, NOBORU FUEKI, YOSHIAKI

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KONDOU, HIDEKI KIHARA Periventricular low intensities on fluid attenuated inversion recovery imaging in the newborn infant: Relationships to chronic white matter lesions. Pediatrics Intermational 2004; 46: 141-1494. OSUKE IWATA,TOMOHIKO NAKAMURA, SACHIKO IWATA, MASANORI TAMURA, SHINNICHI HIRABAYASHI, NOBORU FUEKI, YOSHIAKI KONDOU, HIDEKI KIHARA Periventricular low intensities on fluid attenuated inversion recovery imaging in the newborn infant: Relationships to the clinical date and long-term outcome. Pediatrics Intermational 2004; 46: 150-1575.中村友彦 慢性肺障害防止のための新生児

への早期ステロイド投与の効果と問題点.日本周産期・新生児医学会雑誌 2004; 40: 697-6996.Zhang Erquan,Tomohiko

Nakamura,Takehiko Hiroma,TakeshiSahashi,AtsukoTaki,Tatsuya Yoda A Randomized Control Study of Airway Lavage with Exogenous Surfactant with or without Chest Physiotherapy in an Animal Model of Meconium Aspiration Syndrome Pediatrics Intermational (in press)

2. 学会発表            

1.中村友彦. 慢性肺障害防止のための新生

児への早期ステロイド投与の効果と問題

点. 日本周産期 新生児医学会雑誌・ , 第

40巻第 2号・212・20042. 滝敦子、中村友彦. 動物実験からみた呼

気炭酸ガスモニターの問題点. 日本周産

期 新生児医学会雑誌・ , 第 40巻第 2号・

241・2004   

                  

H.知的財産権の出願・登録状況  

1. 特許取得          

 特になし

2. 実用新案登録         

 特になし

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研究成果の刊行に関する一覧表

書籍

著者氏名 論文タイトル名書籍全体の 編集者名

書  籍 名

出版社名 出版地 出版年 ページ

中村友彦 低出生体重児 河野寿夫 ベッドサイドの新生児の診かた

南山堂 東京都 2004年 7月

207-224

中村友彦 新生児の兆候-黄疸-

五十嵐隆大薗惠一高橋孝雄

今日の小児診断指針

医学書院 東京都 2004年 7月

360-363

論文発表

発表者氏名 論文タイトル名 発表誌名 巻号 ページ 出版年

金子 克、中村友彦

新生児 小児の・ ECMO および血液浄化における臨床工学技士の役割

周産期医学 第 34巻第 4号

459-471 2004年 4月

中村友彦 山崎和子

長野県立こども病院におけるパリビズマブ投与依頼の実際

Practical Report Vol.3 2004年 6月

中村友彦 総合および地域周産期母子医療センターの連携はいかにあるべきか

平成 15年度厚生労働科学研究(子ども家庭総合研究事業)報告書 主任研究者 中村肇

133 -134

2004年 3月

中村友彦 ハイリスク新生児の重症度判定法とその対応に関するガイドライン作成の研究

平成 15年度厚生労働省 成育医療研究・委託事業研究報告書   主 任 研 究 者 田村正徳

52-54 2004年 3月

TOMOHIKO NAKAMURAOSUKE IWATASACHIKO IWATAMASANORI TAMURASHINICHI HIRABAYASHINOBORU FUEKIYOSHIAKI KONDOU HIDEKI KIHARA

Periventricular low intensities on fluid attenuated inversion recovery imaging in the newborn infant: Relationships to chronic white matter lesions

Pediatrics Intermational

46 141-149 2004年

TOMOHIKO NAKAMURAOSUKE IWATASACHIKO IWATAMASANORI TAMURASHINICHI HIRABAYASHINOBORU FUEKIYOSHIAKI KONDOU ERIKO HIZUMEHIDEKI KIHARA

Periventricular low intensities on fluid attenuated inversion recovery imaging in the newborn infant: Relationships to the clinical date and long-term outcome

Pediatrics Intermational

46 150-157 2004年

中村友彦 慢性肺障害防止のための新生児への早期ステロイド投与の効果と問題点

日本周産期・新生児医学会雑誌

第 40巻第 4号

697-699 2004 年 12月

学会発表鈴木昭子 中村友彦 新生児唾液中 lgA量ならびに

MRSA 保菌に関する検討(ポスター)

日本小児科学会雑誌

Vol.108

273 2004年 2月

中村友彦 慢性肺障害防止のための新生児への早期ステロイド投与の効果と問題点

日本周産期・新生児医学会雑誌

第 40巻第 2号

212 2004年 6月

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滝敦子 藤巻英彦栗原伸芳 石田岳史 松澤幸恵 鈴木昭子 山崎和子 清水健司 依田達也 中村友彦

動物実験からみた呼気炭酸ガスモニターの問題点

日本周産期・新生児医学会雑誌

第 40巻第 2号

241 2004年 6月

石田岳史 中村友彦清水健司 鈴木昭子 松澤幸恵 滝敦子 山崎和子 馬場淳川目裕 南勇樹

十二指腸閉鎖/狭窄を有した新生児 19 例の臨床的スペクトラムの検討

日本周産期・新生児医学会雑誌

第 40巻第 2号

270 2004年 6月

中村友彦 馬場淳広間武彦

液体保育器の可能性 第2報液体保育器を用いた体温管理

日本周産期・新生児医学会雑誌

第 40巻第 2号

302 2004年 6月

鈴木昭子 石田岳史 藤巻英彦 清水健司 栗原伸芳 松澤幸恵 滝敦子 山崎和子 中村友彦

血液浄化療法を行った先天性代謝異常症 9 例の検討

日本周産期・新生児医学会雑誌

第 40巻第 2号

459 2004年 6月

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厚生労働科学研究費補助金(班研究事業)

分担研究報告書

小児科医・一般産科医・助産師・看護師向けの新生児心肺蘇生法の研修プログラムの

作成と研修システムの構築とその効果に関する研究に関する研究

—日本版Neonatal resuscitation program 普及活動推進に向けたホームページの作成—

研究協力者 佐橋剛 宮城県立こども病院 新生児科部長

分担研究者 田村正徳 埼玉医科大学総合医療センター 小児科教授

研究要旨:アメリカの新生児心肺蘇生法を日本へ導入するに際し、新生児周産期分野へ正

確な情報と意義を伝えるための方法を考えた。学会発表、雑誌発表を重ね、多くの新生児

科医から理解を得た。今後教育資料(ビデオ)の開発、ホームページの開設を図る。

A.研究目的            

アメリカの新生児心肺蘇生法の導入の意義

を明らかにし、周産期分野への理解、知識

を深め、日本の周産期医療への導入を図る。

  

B.研究方法            

学会、関連雑誌へ新生児心肺蘇生法の紹介

を行い、日本でのこの分野の関心を上げる。

またプロバイダー、インストラクターの

教育方法を研究し、日本でも教育材料の制

作する。 

また NRP日本の独自のホームページを開

設しその知識をひろめ活動の円滑をはか

ることを計画している。

(倫理面への配慮)

教育材料(ビデオ)制作時の患児のプラバシ

ーに配慮し、事前に両親に説明、同意を得

た。

C.研究結果            

下記に記載する書籍への掲載、学会での

NRP の紹介を行った。また、発表時超低

出生体重児の蘇生時の編集後のビデオを示

した。新生児科医の反応は良好であり今後

新生児心肺蘇生法の日本への導入が進むた

めの一助となった。

ホー ムページの基礎構想は 確 立 さ れ 、

2005年 3月下旬までに掲載予定である。

以下ホームページ掲載予定内容を示す。

☆Neonatal resuscitation programの日本での取り組み

埼玉医科大学総合医療センター 小児科、

白馬呼吸モニタ リ ングフォー ラ ム

C.O.O.1)佐橋 剛 田村 正徳 1) 現在新生児仮死の治療について脳低温療

法が注目を浴びている。しかしまだ諸外

国でもEBMが確立されておらず、治療適

応は慎重に考慮されなければならないの

が現状である。しかし一方で、日本の

NICUでは、新生児蘇生の方法について統

一された指針がなく、各施設により蘇生方

法や器具が異なり、スタッフの教育もま

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ちまちである。まして新生児科のいない

総合病院や、開業産科医での新生児蘇生が、

十分に行われて

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いる可能性は非常に少ない。

Neonatal resuscitation program(NRP)は 、 American Academy of Pediatrics ( AAP ) と American Heart Association(AHA)で行われている教育プ

ログラムである。EBM に基づき、新生児

の蘇生方法をマニュアルにし、新生児科医

をはじめ、小児科医、産科医、看護師、助

産師に浸透させる目的で作られている。新

生児蘇生の方法を統一しその方法を広く理

解させることで、周産期に従事する医療者

の多くが、出産時の新生児の侵襲をできる

だけ減らし、適切な対応が可能となるだ

ろう。NRP は米国で行われているマニュ

アルでそのまま日本の状況にあうわけで

は な い 。 そ こ で 日 本 版の Neonatal resuscitaition program を作り全国に普

及する活動を始める取り組みを開始した。

1.米国の NRP を理解する。米国のマニュ

アルの日本語化し教育用にする。

2. 日本での各施設での蘇生方法について

検討する。;第 5回白馬フォーラムでの各

施設の新生児蘇生法のビデオチェックを

すると同時に将来の教育用教材としてのビ

デオ作成することを目的としている。

3. 日本の状況に適した日本版 NRP の作製

に取り組む。

4. 蘇生時に用いる必要な器具について適

切であるか、また使い方を十分に理解さ

れているかを検討する。

5. 日本における新生児蘇生の現状につい

て評価する。

6. チューターを養成し研修活動を行う。

始めに、埼玉医科大学総合医療センターの

近隣産科医、助産師を集めて講習会を行う。

7. NRP の活動の評価を行う。今後、当学

会、新生児学会、未熟児新生児学会、白馬

フォーラムの協力を得て新生児蘇生の教育

プログラムの作成、普及に努めていく予

定である。

☆新生児心肺蘇生法の意義と紹介

新生児心肺蘇生法とは

Neonatal resuscitation program(NRP)は 、 American Academy of Pediatrics ( AAP ) と American Heart Association(AHA)で作られ、全世界に拡

がりつつある新生児蘇生教育プログラム

です。種々のケースに合わせた仮死の心肺

蘇生法をビデオと人形を用いた模擬訓練で

教育するプログラムです。2000年 8月に

改訂された AHA 国際心肺蘇生ガイドライ

ンに基づいて、新生児の蘇生方法をマニュ

アル化し、新生児医療に携わるすべての医

師、看護師、助産師に浸透させる目的で作

られています。その目標は、すべての分

娩において最低一人は新生児の初期蘇生が

できるスタッフを配置出来るような体制

を準備することです。更には仮死が発生

した時に気管内挿管、薬剤投与を含めた完

全な蘇生ができる人が即座に対応出来る体

制作りが最終目標です。

NRP の目的

未だに新生児科専門医のいない施設での分

娩数は多く、そうした施設で仮死が発生し

た場合には、適切な処置をうけられない

まま死亡したり、新生児医療施設に搬送さ

れても重篤な後遺障害を残すことも少な

くないと考えられます。新生児仮死の治療

は、早期に適切な蘇生が行われることが最

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重要と考えられますが、多くの周産期医療

施 設 で さ え 、 新 生 児 蘇生 の 方 法 は

evidenceに基

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づいて標準化されているとはいえません。

また全国的な規模では、小児科医、産科医、

助産師などに対する新生児蘇生の教育シス

テムも確立されていません。これを解消

するためにこのプログラムは作られてい

ます。

新生児蘇生のフローダイアグラム(図 1)

新生児蘇生のための準備、シナリオによ

る練習。蘇生器具だけでなく人材、手順ま

での準備の重要性を学ぶ。救急蘇生法の要

点は同じであり、蘇生するための技術、器

具に日頃から習熟するだけでなく、その

プロトコールを何度も練習し緊急時に瞬時

に対応できるように身につけておくこと。

また蘇生症例により十分な器具、人員の対

応が可能になるように万全の配慮をした

準備の重要性を身につけることが大切で

ある。

NRP の教材の充実点

細かな蘇生器具の使用方法の説明や、実際

の挿管の視野などを示すビデオにより初

心者でも要点をつかむことができるよう

になっている。またこれにより蘇生器具

の見直しや準備方法を再認識することが期

待される。早急に日本語訳の教材が供給さ

れることが望まれる。

日本に NRP を導入する意義

・新生児蘇生法の標準化

EBM に基づいた蘇生を標準化することで

新生児蘇生法の統一した概念を育てる

新生児蘇生法の教育方法のシステム化、標

準化をすることで一貫した教育が可能と

なりより良い教育用のテキスト、ビデオ

が活用できるようになる。インストラク

ターを経験することで、より良い医療教育

方法を修得することができる。

・新生児蘇生ができる人材の育成

教育コースによりインストラクター、プ

ロバイダー(NRP の教習を修了した人)

を育て、新生児蘇生を理解した人材を増や

す。

・蘇生時のチームワーク形成

統一した蘇生プロトコールによりどこで

も、誰でも即座にチームの一員として治療

に参加できる。

・蘇生方法の質の改善

蘇生方法を習熟し、さらに蘇生法の EBMを学ぶことでさらに質の改善を図ること

ができる。また今後改訂される新しい蘇

生治療方法を容易に、いち早く広めること

ができる。

・新生児蘇生の院内から地域連携までのネ

ットワークの再編

病院内での蘇生チームの連携にとどまら

ず、院外での統一された蘇生プロトコー

ルによる連続性のある治療が可能となり

さらに地域連携を見直す契機となること

が望まれる。

NICU に入院する重症新生児の症例を減ら

すことができる。NICU 不足、新生児科医

不足の地区に有効であり、NICU の入院数

を減らすことが可能。

最後に

この新生児心肺蘇生法のプログラムは非常

に良くできており、教材も充実していま

す。できるだけ日本でもこのプログラム

を広く活用されることを望みます。

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☆研修医のための周産期医療の ABC-新生

児編 分娩立ち会いと蘇生のための準備

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 NRP(neonatal resuscitation program の勧め

日本の異なる施設で新生児蘇生の経験を積

まれた先生方が、急に同じチームで蘇生を

行うことになると、どれが今までと同じ

やり方でどの点が異なるかは、十分に話

し合い、何回も蘇生に立ち会わなければ

お互いのやり方を理解し統一することが

できないだろう。そのうえどの方法が実

際に優れているかを決めることは非常に

困難である。

 実際、新生児蘇生は瞬時を争う事態を扱

うことが非常に多く、立ち止まって何が

よいかと考えるゆとりがあれば、それほ

ど重症ではなくどの治療方法を選んでも

差し支えないことが多い。緊急時の対処は、

救急室(ER)と同様に、医療チームとして

誰もが、患者の状態に応じて次にどの治療

を行うかの共通認識を備えていれば、処置

が滞りなく進み、迅速な治療が行える。治

療途中にどの治療がエビデンスがあるか

などと議論する暇はない。そのためマニ

ュアル化された蘇生方法や蘇生準備が必要

となる(すくなくともマニュアルを作る

ときは最新のエビデンスに基づいたもの

である必要がある)。当然その蘇生方法を

常に練習しチームで習熟している必要が

ある。しかしマニュアルは当然時間とと

もに古くなりエビデンスと反することが

多く出てくる。それを常に最新のものと

するためには、新しい治療やエビデンス

に基づいた治療を検討をし続ける必要が

ある。それには多くの時間が費やされて

しまう。

アメリカの最新の新生児マニュアル(例え

ば ,Manual of Neonatal Care(5th

ed),Lange Neonatology(5th ed), Care of the high-risk Neonate (5th ed))は、ほと

んど NRP に準拠した新生児蘇生法を説明

している。つまりこれは NRP の蘇生方法

に統一していくことにアメリカの NICU 施

設のほとんどが合意していると考えても

よいだろう。そこで、NRP を各施設が採

用することになればどうだろうか。この

NRP は 4-5年毎に常にエビデンスに基づ

いた最新のものに改訂される。また教育

用の教材が充実し自主学習も簡単である。

これを多くの施設が採用すれば、異なる

施設で働いていた医師も常に共通の最新の

エビデンスに基づいたマニュアルを使用

する新しい医療チームを作ることが可能

である。これからの新生児科医や、新生児

の蘇生を学ぶ医療スタッフに取って大き

な恩恵が得られ最終的に新生児医療の質の

向上につながると考えられる。

これから説明する新生児蘇生の準備は

NRP のプログラムにそって説明する。し

かしいまだ日本ではあまり採用されてい

ない方法については強く勧めることはし

ないという姿勢で行う。

総論

すべての出産に、基本的な新生児蘇生を身

につけた人が立ち会うべきである。すべ

てのハイリスク分娩には新生児蘇生に習熟

した人が、必ず、新生児蘇生担当の専任ス

タッフとして立ち会うべきである。さら

に、より重篤な児が出産となるハイリス

ク分娩には、必ず新生児の蘇生に習熟した

複数のスタッフが立ち会うべきである。

正常分娩でも、蘇生に習熟したスタッフが

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いつでも駆けつけられる状態にしておく

べきである。

分娩室での蘇生は、新生児の環境が急激に

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胎内から胎外へと変化するなかで、新生児

の呼吸と循環が速やかに効果的に順応する

ことを助けることにある。

現在最高の治療水準に必要とされるのは、

周産期の生理と蘇生の基本についての知識

を身につけていること。必要とされる技

術を習熟していること。医療チーム内の他

のメンバーの役割の理解し、特別なケース

においても各々が行う対応が正確に予想で

きる。こうした資格は、AAP/AHA の NRPによって与えられている。

蘇生のゴール

熱の喪失を最小に抑える。(乾燥と保温)

正常な呼吸と肺の拡張の確立(吸引、体位

による気道の確保、必要なら陽圧換気)

動脈の酸素分圧の増加(ルーチンの酸素投

与は必要ないが時に酸素投与を必要とする

ことはある)適切な心拍出量の支持

II.出生前の情報

出生時に蘇生が必要となるような新生児に

適切な準備をするには予想が必要である。

ハイリスク分娩を合併する周産期の状態

理想的には産科医が分娩前に新生児科医に

知らせるべきである。新生児科医は妊娠記

録とハイリスク分娩に至った事象をチェ

ックし、予測される特殊な問題に備える

べきである。もし時間があれば、予測さ

れる問題についてあらかじめ両親と話し

合っておくべきである。

分娩前の危険因子

母体糖尿病

PROM

妊娠性高血圧

過期産

貧血または同種免疫  

多胎妊娠

胎児、新生児死亡の既往

妊娠週数と体重の不均衡

妊娠中期、後期の出血

母体の薬剤使用

母体の感染症合併

母体の薬乱用

母体の心臓、腎臓、肺、甲状腺、神経疾患

胎児奇形

胎児の活動性の消失

羊水過多、羊水過小

周産期のケアを全く受けていない

母親が 16歳未満、 35歳以上

分娩中の危険因子

緊急帝王切開

胎児徐脈

鉗子、吸引分娩

non-reassuring FHR patterns骨盤位、その他の異常

全身麻酔

早産

子宮テタニー

急墜分娩

出産の4時間前の麻酔剤の使用

絨毛羊膜炎

羊水混濁

破水(出産前 18 時間以上)

臍帯脱出

遷延分娩(24 時間以上)

胎盤早期剥離

第 2 期遷延

前置胎盤

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III装備の準備

”蘇生のイメージをしながら準備をしよう”

分娩室についたら、搬送用クベースが暖か

くまた電源が刺してあり、酸素ボンベが

満タンであるのを確認する。産科医、麻酔

科医、母、父(そこに居れば)に自己紹介

する。妊娠分娩記録を再度確認し、最新の

情報を得る。

もし蘇生室が NICU に近接していなければ、

搬送用のインキュベーター(バッテリー

稼働、酸素ボンベを備えた)を分娩室の近

くに用意しておく。

ラヂアントウォーマー

出産前にウォーマーを暖め、チェックし

ておく必要がある。新生児を包むタオル

などが乾燥し暖かくなっていることを確

認する。

極低出生体重児のような低体温になりやす

い場合は、部屋の温度を上げ、必要ならヒ

ートランプを追加するべきである。

新 生 児 蘇 生 に は ABC の 前 に T (temperature)がある。つまり新生児の体

温を維持するための環境を整えておかな

くて は い け な い 。 (p48, Care of the high-risk Neonate)酸素 (100%) 供給をつけ、流量を 5-8L/min に設定する。*蘇生開始時の投与酸素

濃度は未だ議論は多いが NRP 2000 は

100%を推奨している。

酸素供給から蘇生用バッグまでの気密性が

保たれているかを確認し、ポップオフバ

ルブがうまく作動するかを確認する。蘇

生用バッグ;圧開放弁か圧モニター付き新

生児蘇生バッグ(90%以上の酸素投与が可

能なもの)顔マスクが適切なサイズである

かを確認する。

吸引装置が作動し圧()を確認する。吸引カ

テーテル(5Fか 6F,8F,10Fか 12F)を出

生体重にあわせて用意する。

聴診器を用意する。

喉頭鏡のライトが点灯するかを確認し、

ブレードのサイズが適切であるかを確認

する(未熟児用:No 0,成熟児用:No1,超低出生体重児用:No 00)。補充用

のバッテリーがあるかも確認しておくの

がよい。

挿管チューブを準備する。

胎児の推定体重から予測されるチューブサ

イズのものをあらかじめ準備する。また

挿管するときのチューブの深さもあらか

じめ確認しておく。

もしも臨床的にそれ以上の蘇生が必要と予

想されるならば、臍静脈カテーテル用の

トレイを準備しておく。 臍血管カテーテ

ルセット(滅菌手袋、剃刀か鋏、ポピドン

ヨード液、臍テープ、臍血管カテーテル

{3.5F,5F}三方活栓)薬剤の準備

エピネヒリン(10倍希釈ボスミンを 1mlシリンジに吸って置く)循環血液増量用に等張性輸液として生食か

ラクチックリンゲル液(100-250ml)重炭酸塩(メイロンを 2 倍希釈してお

く)

ナロキサン(0.4mg/mlか 1.0mg/ml のア

ンプル)生理食塩水(20ml 2バイアル)をフラッ

シュ用に準備する。

生食 20ml 2バイアル

シリンジ(1,3,5,10,20,50ml)SpO2モニター(呼吸心拍モニターで分娩

室から持続的に監視することは時にモニ

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ターのリードを有効的に装着することが

難しくて使用が制限される。)

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蘇生のために使用される薬剤

投与ルート

挿管チューブ

蘇生室でボスミンを投与するルートとし

ては一番早く投与できるルートである。

チューブが閉塞または位置が不良の場合は

吸収が悪い

臍静脈

3.5F もしくは 5F のカテーテルを臍静脈

に挿入し、血液がよく引けるところまで

挿入(深さは通常 5cm未満にする)。肝

血管や門脈への迷入を避けるため蘇生薬剤

を投与する場合は深く挿入しない。

他のルート

末梢静脈、骨髄

薬剤

エピネフリン(ボスミン)蘇生中、十分な換気、酸素化、胸骨心臓マ

ッサージを適切に施行されていても心拍

が 60 未満ならばボスミンを投与する 。

1;10,000 エピネフリン(日本では、ボス

ミンは 0.1%で最初から 1000倍に希釈さ

れている)を 0.1-0.3ml/kg を経静脈的も

しくは挿管チューブより投与する。

循環血液増量液;蘇生に反応しない場合は

循環血液の低下を疑う。

O(-)血液 10ml/kg、乳酸リンゲル液、生

理食塩水 10ml/kgナロキソン;分娩4時間以内に麻薬をもち

いた母親から出生した児に呼吸抑制がある

場合に使用する。

重炭酸塩(メイロン、ジューソニン);上

記の治療に反応しない長時間続く心肺停止

の場合では、十分な換気と循環が確立して

からのみ 0.5mEq/ml溶液で 1-2mEq/kgを2分以上かけてゆっくり静注する

アトロピン、カルシウム

新生児仮死には以前使用されていた薬であ

るが、AAP/AHA ではもはや使用に対して

推奨していない。現行のエビデンスは、

分娩室での蘇生に対して有効性を示してい

ない

Universal Precautions(普遍的予防策)

蘇生処置は母体の血液や羊水に暴露する可

能性が高いため、Universal Precautionsに従い、臍帯が切断され、新生児についた

体液が拭き取られ、タオルで覆われるま

では帽子、グローブ、眼鏡(ゴーグル)、

防水性のガウンを身につける。

IV技術の習得

蘇生器具の使い方に習熟する。

ジャクソンリース(流量膨張式バッグ)

とアンビューバッグ(事故膨張式バッグ)の利点、欠点

PEDICAP などの使い方。基本的モニター

の設定方法。

NRP などの教材で学ぶ。

実践的な知識を提供される。

蘇生人形などで練習する。

まずは人形から胸骨心臓マッサージの練習、

挿管の練習をして器具や動作の確認を行う。

先輩の蘇生手技を見る。

実際の蘇生現場から先輩など手技を見て学

ぶ。

実際に蘇生を行う。

先輩の指示にまず従い、経験を積み、謙虚

に学ぶ姿勢を持ち続ける。

V蘇生の基本的な流れフローダイアグラム

NRPの基本的なフローダイアグラムを示

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す。心拍数 100 と 60、無呼吸がキィポイ

ント。

新生児蘇生の成功の鍵は、3つのステップ

である。まず新生児を評価する。次に何を

なすべきを決定する。そして行動に移す。

行動に移した後は再度評価する。このサイ

クルを繰り返すことである。

評価の基本 の 3つのサイ ン は 、呼吸

(respiration)、心拍数、皮膚色である。

こ れ は 蘇 生 の ABC ( 気 道 、 呼 吸

(breathing)、循環)の指標である。呼吸

(respiration)は気道と呼吸(breathing)のサインである。心拍は循環のサインであ

る。皮膚色は、これら ABC 3つすべての

サインである。蘇生チームのどのメンバ

ーも評価のポイントを理解し、蘇生のア

ルゴリズムに従って評価、決定、行動をし

なくてはいけない。新生児蘇生の標準化さ

れた手法では、すべてのメンバーが同じ

決定樹に従うことで個々の対応が協調した

ものになる。評価、決定、行動のサイクル

が実際の蘇生で速やかに行われれば、多

くの治療が同時に効果的に進むだろう。

アプガースコアは、1952年ヴァージニ

ア・アプガーによって作られ、出生後数分

の新生児の状態の客観的で感度が高い評価

方法を提供した。アプガースコアは、新生

児蘇生の3つの基本(呼吸、心拍、皮膚

色)に二つの神経要素(反射、筋緊張)を

加えたものである。スコアの評価は、1 分

後と 5 分後と 7点以上になるまでの5分

毎である。蘇生は多く 1 分前より始まる

ので、アプガースコアは、蘇生の指標と

しては有用ではない。しかし蘇生中に新

生児の状態を評価するアプガースコアは、

特に蘇生の処置とそのタイミングを順を

追って説明するには非常に有効である。

VI蘇生時の特別な配慮

家族の継続的ケア;ハイリスク分娩に立ち

会う場合は、母親と家族に前もって自己紹

介し、予想される事態を説明して家族の信

仰や蘇生処置の範囲に関する家族の希望も

聴いておくことが望ましい。蘇生に関わ

っているスタッフは出来るだけ早く両親

に児の状態を伝える。また両親が児にで

きるだけ接触できるように配慮する。

蘇生の中止;出生直後から 10 分間心停止

が続いていた児では重度の障害の無い救命

はほとんど期待できないので、15 分間の

蘇生処置で自発循環が回復しない場合に、

蘇生を中止することは理にかなっている。

表-1;蘇生用の機材と薬品

吸引装置

バルブシリンジ

機械的吸引装置とチューブ

吸引カ テ ー テル( 5F か 6F,8F,10F か12F)

8F栄養チューブと 20ml シリンジ

胎便吸引装置

バッグとマスク類

圧開放弁か圧モニター付き新生児蘇生バッ

グ(90%以上の酸素投与が可能なもの)顔マスク(未熟児・新生児用のサイズ、ク

ッションの縁取りがあるのが望ましい)

流量計(10L/分)付きの酸素とチューブ

気管内挿管セット

直式の喉頭鏡(未熟児用:No 0,成熟児

用:No 1)

喉頭鏡の予備の電球と電池

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気管内挿管チューブ(内径2.5, 3.0, 3.5,

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4.0mm)

スタイレット(必須ではない)

気管内挿管チューブを固定するテープなど

アルコール綿球

呼気炭酸ガス検出器(必須ではない)

ラリンゲアルマスク(必須ではない)

薬品

エピネヒリン(10倍希釈ボスミンを 1mlシリンジにすって置く)循環血液増量用に等張性輸液として生食か

ラクチックリンゲル液(100-250ml)重炭酸塩(メイロンかジューソニンを 2倍希釈しておく)

ナロキサン(0.4mg/mlか 1.0mg/ml のア

ンプル)生食 20ml 2バイアル

10%糖水 200ml5F の栄養チューブ(必須ではない)

臍血管カテーテルセット(滅菌手袋、剃刀

か鋏、ポピドンヨード液、臍テープ、臍血

カテーテル{3.5F,5F}三方活栓)シリンジ(1,3,5,10,20,50ml)針(25,21,18ゲージ)その他

手袋と防護用品

ラヂアントヲーマー

硬い蘇生板

計測用時計(必須ではない)

暖かいリネン類

聴診器

テープ

心拍モニター(+電極)、パルスオキシメ

ーター(+プローべ)

口咽頭エアウェイ

☆日本版NRP導入の意義

宮城県立こども病院 新生児科

佐橋 剛

医療の質の改善プロジェクト

(アメリカ)Evidence Based Medicine医療事故対策

JCAHO 2004 推奨

医療機関は、周産期領域は、さらに効果的

に協同し、意思疎通をとるチームトレーニ

ングを行うスタッフがハイリスクの場面

に遭遇した場合により良い対応ができる

ための臨床的訓練を行う医療チームに到達

度の評価報告を受ける NRP のガイドライ

ンとは First NRP Textbook は新生児領域

の専門家の合意に基づいて認められた実践

方法について述べられている。(1987)

NRP (2000) 次にエビデンスが認められ

た新しい方法のみガイドラインに付け加

えられた。また、以前に認められた方法

が有害である可能性がある場合と効果がな

いことがわかった場合は除外した(2000)

2006 ガイドラインの制作手順

International Liaizon Committee on Resucitation Neonatal Deligation Meeting December 6-7,2003

Process for Reaching Consensus文献のレビューを行い、個人個人でワーク

シートを作成する。

結果を ILCOR に提出する。メンバーでの

相違点を議論し、一つの推奨項目を作成す

る。次回の E2-2005 で推奨項目を確認し

発表する。

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日本に NRP を導入する意義

1.新生児蘇生法の標準化

EBM に基づいた蘇生を標準化することで

新生児蘇生法の統一した概念を育てる

2.新生児蘇生法の教育方法のシステム化

標準化をすることで一貫した教育が可能と

なりより良い教育用のテキスト、ビデオ

が活用で  きるようになる。インスト

ラクターを経験することで、より良い医

療教育方法を修得することができる。

3.新生児蘇生ができる人材の育成

教育コースによりインストラクター、プ

ロバイダー(NRP の教習を修了した人)

を育て、新生児蘇生を理解した人材を増や

す。

4.蘇生時のチームワーク形成

統一した蘇生プロトコールによりどこで

も、誰でも即座にチームの一員として治療

に参加できる。

5.蘇生方法の質の改善

蘇生方法を習熟し、さらに蘇生法の EBMを学ぶことでさらに質の改善を図ること

ができる。また今後改訂される新しい蘇

生治療方法を容易に、いち早く広めること

ができる。

6.新生児蘇生の院内から地域連携までのネ

ットワークの再編

病院内での蘇生チームの連携にとどまら

ず、院外での統一された蘇生プロトコー

ルによる連続性のある治療が可能となり

さらに地域連携を見直す契機となること

が望まれる。

7.NICU に入院する重症新生児の症例を減

らすことができる。

NICU 不足、新生児科医不足の地区に有効

であり、NICU の入院数を減らすことが可

能。

1.EBM に基づく新生児蘇生法広める EBMという言葉を知っているがどう実践する

のか理解している人は少ない。例えばガ

イドラインがどのように作られているか

この NRP は数少ない EBM を利用した医学

の実践モデルであり、数年毎に EBM に基

づき改訂されている。

NRP は EBM の意義を医療従事者に教えま

た恩恵を与えてくれる。

2.新生児蘇生法の教育方法のシステム化

標準化をすることで日本中で一貫した教育

が可能となる。より良い教育用のテキス

ト、ビデオが活用できるようになる。

蘇生の教育トレーニングは、

1.成人教育(adult education)の方法に基づ

2.現実の場面に近い設定で行う

3.トレーニングされる人たちに合わせて行

4.シナリオベースで、進行がよく、イン

タラクティブであるべき。

NRP に参加した効果

four dimensionsから結果の評価

参加者が満足する(幸福感と自己達成感)

実践能力の向上(知識と技術)

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実践した結果(行動の変化、チームワー

ク)

新生児の成績(生理学的基準に基づき疾病

発症率、死亡率の低下)

2.NRPを介して医療教育の改善を図る

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NRP のインストラクターを育成すること

で、インストラクターを経験することで、

より良い医療教育方法を修得することがで

きる。

adult education を理解し、徒弟制度的教

育から現代的教育方法への転換を図る

3.新生児蘇生ができる人材の育成

教育コースによりインストラクター、プ

ロバイダー(NRP の教習を修了した人)

を育て、新生児蘇生を理解した人材を増や

す。

4.蘇生時のチームワーク形成

チーム医療の概念と実践方法を学ぶ

ER シリーズのようなチーム医療の実践

統一した蘇生プロトコールによりどこで

も、誰でも即座にチームの一員として治療

に参加できる。

5.蘇生方法の質の改善

蘇生方法を習熟し、さらに蘇生法の EBMを学ぶことでさらに質の改善を図ること

ができる。また今後改訂される新しい蘇

生治療方法を容易に、いち早く広めること

ができる。

6.新生児蘇生の院内から地域連携までのネ

ットワークの再編

病院内での蘇生チームの連携にとどまら

ず、院外での統一された蘇生プロトコー

ルによる連続性のある治療が可能となり

さらに地域連携を見直す契機となること

が望まれる。

7.NICU に入院する重症新生児の症例を減

らすことができる。

NICU 不足、新生児科医不足の地区に有効

であり、NICU の入院数を減らすことが可

能。

8.新生児医療に興味を持つ人を育てる

NRP が、小児科研修教育プログラムに組

入れられればより多くの人に新生児の現

場を触れる機会を作ることができ、新生児

医学に興味を持つ人が増える可能性がある。

9.学会レベルでの蘇生に関する興味が増し

より多くの研究が増える

アプガースコア

蘇生は多く1分前より始まるので、アプ

ガースコアは、蘇生の指標としては有用

ではない。しかし蘇生中に新生児の状態を

評価するアプガースコアは、特に蘇生の

処置とそのタイミングを後で順を追って

説明するには非常に有効である。

☆ILCORE 新生児グループのワークシー

トトピックス

1.蘇生中の酸素濃度は 100%を使用するの

2.分娩室での初期換気方法 吸気圧と吸気

時間について現在のガイドラインから変

更する必要があるか

3.分娩室での CPAP を行うことについて

4.分娩室での胎便の対応について

5.蘇生の開始と中止に関するもの

6.循環血液増量剤

7.体温管理体温が不安定になるのを避ける

戦略 重篤な仮死の治療としての適切な低

体温の管理

8.炭酸ガス検出

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9.ナロキソンの使用

10.気管内挿管の代替法

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11.資源が限られている場合の分娩室での

蘇生法

12.蘇生後の治療

International Liaison Committee on Resuscitation (ILCOR)

1992年に設立され、主な世界中の蘇生の

ため組織の集合体を形成している。

the American Heart Association (AHA), the European Resuscitation Council (ERC), the Heart and Stroke Foundation of Canada (HSFC), the Australian and New Zealand Committee on Resuscitation, the Resuscitation Councils of Southern Africa (RCSA), the Inter American Heart Foundation (IAHF).

ILCOR の目的

世界中の心肺脳蘇生のすべての問題を議論

し連携を計るフォーラム

蘇生に関するデータがない、論争のある

領域について科学的研究を促進する

蘇生に関するトレーニングと教育の情報

を広める

国際的な科学的データを集め、レビューし、

共有する機構を作る

国際的な合意を反映した蘇生についての特

殊な問題について適切な声明文を作る

日本版NRP のホームページ掲載予定事項

1.NRP の紹介、説明

2.本研究会の活動内容

3.今後の日本版NRP の予定

4.各学会のリンク、アメリカの NRP のリ

ンク

5.講習会の予定(本格的な活動開始後はイ

ンストラクターコース、プロバイダーコ

ースの予定表、予約)

6.NRP の Q&A7.インストラクターへの新しい知識の普

D.考察              

アメリカの新生児心肺蘇生の導入には、誤

解と知識不足より困難と思われたが、新生

児科医の中で非常に関心が高いことが実感

できた。しかし、これからインストラク

ターを養成する段階で、統一した日本での

基本的な適用方法、細かな蘇生法の適用、

教育方法の調整をする必要がある。

ホームページを利用することで、NRP の

普及、円滑な活動が可能となると考えられ

る。

E.結論

これまでの学会発表より、NRP の正確な

知識と意義について日本の周産期、新生児

分野で理解されたと考えられる。これは

新生児心肺蘇生の日本への導入の一助とな

る。

F.健康危険情報

特になし。

G.研究発表            

1.論文発表            

佐橋 剛. 新生児心肺蘇生法の意義と紹

介.

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岡村 州博編. 周産期救急のコツと落とし

穴. 中山書店.日本. 2004; 210-211佐橋 剛. 分娩立ち会いと蘇生のための準

備周産期 2004;augustvol.34No.8:1201-1206

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2.学会発表            

Neonatal Resuscitation Program(NRP)の日本での取り組み(示説)第 40回日本新生児学会・東京  

NRP導入の意義

第 49回日本未熟児新生児学会・横浜

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書籍

著者氏名 論文タイトル名書籍全体の

編集者名書 籍 名 出版社名 出版地 出版年 ページ

佐橋 剛 新生児心肺蘇生法

の意義と紹介

岡村 州博 周産期救急の

コツと落と

し穴

中山書店 日本 2004 210-211

雑誌

発表者氏名 論文タイトル名 発表誌名 巻号 ページ 出版年

佐橋 剛

田村 正徳

分娩立ち会いと蘇生

のための準備

周産期医学  august vol.34 No.8

1201-1206

2004

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厚生労働科学研究費補助金(子ども家庭総合研究事業)

分担研究報告書

小児科医・一般産科医・助産師・看護師向けの新生児心肺蘇生法の

研修プログラムの作成と研修システムの構築とその効果に関する研究

  分担研究者 田村 正徳 埼玉医科大学総合医療センター小児科教授

研究協力者 木下 洋 関西医科大学小児科

研究要旨:研修講習会の実践を行いその適切な適切な評価を行う

A. 研究目的

 本研究では、わが国の一般的産科施設に

おける新生児心肺蘇生法の標準化とその実

践のための研修プログラムの作成と研修

システムの構築およびその効果の評価方

法の開発を行う。それによってすべての

分娩に標準的な新生児心肺蘇生法に習熟し

た医療スタッフが最低1人は関わる体制を

確立し、我が国で出産・出生するすべての

母児に対して「快適で安全なお産と子ども

の健やかな成長」が担保される公平で質の

高い周産期医療を提供出来る体制の構築に

寄与することを目標とする。      

 研究内容として、平成 16年度藤村正哲

班分担研究者田村正徳の研究協力員(木下

洋)は、小児科医・一般産科医・助産師

 ・看護師向けの研修プログラムの開発と

その評価、および研修講習会の実践とその

評価とを担当した。

 本研究の目的は、新生児心肺蘇生法を標

の準化し、すべての分娩に標準化した新生

児心肺蘇生法に精通した医療スタッフが立

ち会える体制を確立することである。そ

ためには、分娩に関わる医療スタッフに

対して、それぞれの職能に応じた範囲内

での新生児心肺蘇生法の知識と技術の修得

とを支援するための効果的な研修プログ

ラムの開発と我が国の周産期医療体制に適

合した全国的な研修システムの構築が必要

である。       

 これにより、周産期医療施設のみならず

一般産科診療所や助産所でも安全にお産の

できる体制を国民に提供することが可能

となる。我が国における新生児心肺蘇生の

標準化の必要性を啓蒙し、研修プログラム

を構築することが本研究の目的である。

B.研究方法

 北米では米国小児科学会が中心なって

NRP (Neonatal   Resuscitation Program)という教育研修プログラムが開

発されおり、それをもとに実習方式の講

習会が行われている。本年度は、大阪で大

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阪府医師会・大阪新生児診療相互援助シス

テム(NMCS)・大阪産科診療相互援助シ

ステム(OGCS)が大阪府内、「AHA心肺蘇生国際ガイドラ

イン 2000」に準拠した手技や研修方法を

用い

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て、新生児蘇生講習会を実施した。大阪府

医師会では講習会開催に用いるための手技

解説書「新生児蘇生」を印刷、配布した

(編集責任者:木下洋)。

 本研究では、我が国の実情に合わせたさ

らなる手技の検討と全国的な新生児心肺蘇

生方法の標準化とを検討した。また、成人

学習における研修会の効果を高めるため

の方策を模索し、医療現場での実践に役立

つ教育プログラムの開発を研究した。さ

らに、新生児心肺蘇生講習会参加者のセル

フ・エフィカシーに配慮することがきる

指導者を養成するための研修プログラム

開発の準備・検討を行った。

C.研究成果

 新生児心肺蘇生講習会は、医師および助

産師を対象として平成 16年6月5日と同

年9月4日に大阪府医師会館で開催した。

米国で実践されている NRP 同様、シナリ

オに基づいた実技講習(メガコード)に重

点をおき、参加者のセルフ・エフィカシ

ーに配慮した講習会開催で受講者の技術向

上に効果を得た。平成 16年 12月、大阪

新生児相互援助システム(NMCS)ニュー

スに新生児蘇生講習会開催の意義とこれま

での講習内容、参加方法についての解説文

を掲載し、大阪府内の医療関係者に配布し

た。

1.新生児蘇生講習会のプログラム

 医師2名、看護師あるいは助産師2名で、

1グループを4名に配属し、5ステーショ

ンで実習を行った。各ステーションには

指導書1名と補助指導者1名を配属した。

シナリオ症例による実習では、会場タイ

ムキーパー1名を配備した。実技細目評価

表を作成し、受講者相互に評価を行い、一

つ一つの蘇生行動の適切性を判定するとと

もに、蘇生行動の重要性を評価者自らも認

識できるプログラムとした。

a.「新生児の蘇生」のアルゴリズム(講

演)(15 分)。

b. 実技実習(蘇生器材の適切な使用

法)(40 分)(1グループ4人)。

1)バルブシュリンジによる口腔

   内吸引

2)酸素ボンベ/流量計の使用法

3)マスク&バッグ(マスクバルブ

   バッグ)を用いた換気法

4)麻酔バッグ(ジャクソンリース

   回路)を用いた換気法

5)新生児の心臓マッサージ法

6)気管挿管

c. シナリオ症例による新生児蘇生実

習:個別班別実習(83 分)。   

d. 全体評価および終了証授与と参加

者感想(各自 30秒)。

 

2.シナリオに基づく新生児蘇生実習の課

題と進行

最初に解説アナウンスを行った後、シナ

リオ症例に基づいた蘇生実習を1回5分以

内、1人あたり3シナリオを行った。1

クール目と2クール目との合計9回の蘇生

手技では、毎回の蘇生手技について指導者

が評価表記載とフィードバックとを行い、

3クール目では、参加者が評価表記載とフ

ィードバックとを行った。受講者自らも

評価者となることにより、蘇生アルゴ

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リズムのさらなる理解と、自ら修得した

技術を他人に指導する経験を得る実習進行

を開発した(表1)。   

 (表1)班別個別実習の進行    (1〜5班共通)

回数 実施者 介助者 シナリオ

 1

 2

 3

 4

 5

 6

 7

 8

 A

 B

 C

 D

 A

 B

 C

 D

1 仮死

2 MAS

3 Sleeping1 仮死

2 MAS

3 Sleeping1 仮死

2 MAS

1〜8回目(5 分+準備1分)x8 5分間休憩

 9

10

11

12

 A

 B

 C

 D

3 Sleeping (評価者CD)

1 仮死  

(評価者AD)

2 MAS 

(評価者AB)

3 Sleeping (評価者BC)

  3クール目は参加者評価、

フィードバック(1分) 

(5 分+1分+準備1分)x 4

受講者はシナリオの基づく新生児蘇生実

習を行うことにより、実際の医療現場で遭

遇する新生児仮死症例に対応する積極的行

動を身につけることが可能となった。受

講者全員が、5分以内に蘇生ができる手技

を体得し、予期せぬ事例の発生に自らが対

応できる技術を他の医療スタッフにも伝

達可能となった。修了証を授与することで

入門コース修了の自覚を得、さらなる蘇生

研修と指導コースのプログラム受講者の

モチベーションを高め、セルフ・エフィ

カシーの高い周産期医療者を開発すること

が出来た。講習会受講希望者が非常に多く、

平成 17年度は年4回の開催を予定してい

る。

平成 16年 12月5日、日本未熟児新生児

学会で我が国における新生児心肺蘇生の標

準化についてワークショップを行い、北

米における NRP との比較ならびに我が国

での蘇生講習会開催のために準準備すべき

事項について検討した。平成 17年 2月19日、米国の新生児心肺蘇生の実際と我

が国の本研究の準備状況とを比較検討する

ために、新生児相互援助システム講演会を

関西医科大学附属病院で開催し、米国ハワ

イ州 Kapiolani 母子医療センター NRP責任者 Ken Nakamura部長を招聘して講演

と実習のデモンストレーションと効果的

な講習会方法の検討会を行った(産科医、

小児科医、助産師、看護師、計 70名)。

D.考 察

 我が国の実情に合った新生児蘇生法のマ

ニュアル作成と講習会用の研修プログラ

ムの試作品を開発し、新しい方法による講

習会を実施するとともに研修システムの

構築を準備する必要がある。

 このためには、一般産科医・助産師・看

護師向けの研修プログラム開発にあたっ

て、下記の行動目標を立てる必要がある。

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1. 一般産科医・助産師・看護師が適切な

講習時間帯・地域・費用で受講できる。

2. 参加者それぞれのセルフ・エフィカシ

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に配慮した成人学習のプログラムを受講

きる。            

3. シナリオで体得した技術と判断とを医

療現場で実施できる。

4. 参加者は、客観的かつ形成的に評価を

受けることができる。

5. 参加者は、受講後に他の医療スタッフ

の指導を実施できる。

6. 参加者は、到達目標に達した場合は修

了証を受領することができる。

7. 入門コースを修了した参加者は、指導

者養成コースを受講することができる。

このような講習会を開催することで、医

療現場スタッフの新生児蘇生訓練に対する

セルフ・エフィカシーを高め、周産期医療

施設のみならず一般産科診療所や助産所で

も安全にお産のできる体制を国民に提供す

ることが可能となる。

E.結 論

 受講者の行動目標を達成するために、具

体的方策を策定することが、継続研究課題

として求められる。我が国の周産期医療施

設に勤務する産科医師・助産師・看護師の

実情に合った研修プログラム作成は、繰り

返し試行される講習会とその評価および具

体的方策の検討により作成することが望ま

しい。

F.健康危険情報

   特になし。

G.研究発表

1.論文発表

1 木下 洋、北島博之、金 太章,

清水郁也、西原正人、松尾重樹、

南 宏尚、根岸宏邦、末原則幸: シナリオに基づく新生児蘇生講習

会—産科医・小児科医・助産師・

看護師への講習会開催法の研究—. 周産期医学、(投稿中).

2.学会発表

1 木下 洋、北島博之、金 太章、

清水郁也、西原正人、松尾重樹、

南 宏尚、根岸宏邦、末原則幸: 大阪における新生児蘇生講習会の

取組み. 日本周産期・新生児医学

会雑誌、2004; 40(2): 330.

2 木下 洋: 大阪での新生児講習会

の実際—北米における NRP講習会 との比較—. 日本未熟児新生児学

会雑誌、2004; 16(3): 101.

H.知的財産権の出願・登録状況

1.免許取得

特になし。

2.実用新案特許

特になし。

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厚生労働科学研究費補助金(子ども家庭研究事業)

分担研究報告書

効果的な講習方法の開発に関する研究 -1-

研究協力者  中嶋 諭、内田 美恵子 長野県立こども病院新生児科        

木下 洋 関西医科大学小児科

分担研究者  田村 正徳 埼玉医科大学総合医療センター

研究要旨:今回、NRP に基づく講習会を行った。講義 60 分、シナリオ実習および実技実

習 105 分行い、終了後、対象者にアンケート調査を行った。調査結果の分析より、学習

意欲は高いが、現任教育の現状にばらつきがある・シナリオ実習を中心とした学習効果

は高い・教育プログラムと研修システムを検討する必要がある・等が示唆された。  

A.研究目的

 出生時に呼吸を開始するのに手助けが必

要とされる新生児は約 10%いると言われ

ているが、新生児蘇生に関する標準的なガ

イドラインや教育的プログラムはない。

 北米では、新生児蘇生法の教育・研修プ

ロ グ ラ ム Neonatal Resuscitation Program(以下 NRP)が行われているが、

我が国でも、NRP を導入する気運が高ま

っている。

 本研究目的は、 NRP に基づいた講習会

を開催し、新生児蘇生に関する現状やシナ

リオ実習を含む講習プログラムについて

検討することである。

B.研究方法

講習会は、長野県新生児看護セミナー(以

下セミナー)において開催した。セミナ

ー参加者は、セミナーに参加を希望した長

野県内の看護師・助産師 57名である。

セミナーの内容は、NRP インストラクタ

ーによる講義とシナリオおよび個別実技

実習とした。

講義は 60 分。内容は、全 7領域に渡るN

RPテキストに沿って、PCプレゼンテー

ションを行った。

シナリオおよび実技実習は 105 分。参加

者を各グループ 10人、6つのグループに

配属し、シナリオ実習では、さらに、グ

ループ内で 3人程度の小グループに分け、

ローテーション方式で行った。

シナリオ実習は 3 ステーションを設置

し、各ステーションに補助指導者 2名配置した。NRP のアルゴリズムに沿って、イ

ンストラクターが作成したシナリオを 3シナリオ準備し、各小グループ 15 分間ず

つ実習した。

実技実習は、気管内挿管介助、心臓マッ

サージ、マスクバックの各項目別にステ

ーションを設け、各ステーションに補助

指導者 1名配置した。グループ毎、各項目

それぞれ 15 分ずつ実習した。

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セミナー終了後、一部記述式のアンケート

調査を行った。アンケートの内容は

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①回答者のバックグラウンド②新生児蘇

生法に関する現状と今後の希望③今回の講

習に関する評価④今後の方策に関すること

とした。

倫理的配慮として、アンケートは無記名

とし、調査前に本研究の目的、および回答

は自由意志で、回答の有無に関わらず不利

益を生じないことを説明した。

C.研究結果

ア ン ケ ー ト回収率 は 57.9%(N=

33)。看護職の平均経験年数は 7.52年。

職種は看護師 66.6%、助産師 33.3%であ

っ た 。 現 在 の 所 属 は 産 婦 人 科 が

43%、NICU18%、小児科産婦人科混合病

棟 15%、小児科病棟 15%、その他の混合

病棟 9%であった。

『新生児蘇生法を学習し身につけること

は必要ですか』に、必要が 97%。理由は

「出生時に関わることが多い」がほとん

どであった。

『所属における新生児蘇生法の学習会の

企画の有無』については、新生児蘇生法の

学習会がないとの回答と蘇生法自体の学習

会がないとの回答を合わせると 48%であ

った。

『今回の講義時間』については、適当が

76%、短い 21%であった。

『シナリオ実習の時間』については

適当・短いが 50%ずつだった。理由につ

いては「内容・参加者数から妥当」「自信

がついた」「じっくり取り組みたかっ

た」「1回しかできなかった」といった意

見であった。

『実技実習の時間』については、67%が短いとの回答であった。「挿管に立ち合

ったことがない」「心臓マッサージの実

習が初めて」「マスクバックはエアー漏

れで換気できなかった」等の意見もあっ

た。

『新生児蘇生法についてさらに学習した

いと思うか』に対し、したいとの回答は

89%であった。理由については「身に付

け実践したい」 「知識・技術不足」「蘇

生に関わることが少なく忘れてしまう」

といった経験不足が上げられていた。

『同様の講義・実習への参加希望の有

無』には、参加したいとの回答が 100%であった。

D.考察本研究の対象者は、現在の所属が産婦人

科 43%であり、アンケートにも「出生時

に関わることが多い」と回答しており、

新生児蘇生法の知識・技術習得の必要性は

認識され、学習意欲の高さが伺われる。し

かし、一方では、蘇生法の学習会がないと

の回答が 48%であり、現任教育の現状に

ばらつきが考えられる。

蘇生法を「身に付け実践したい」が、

「知

識・技術不足」 「蘇生に関わることが少

なく忘れてしまう」 といった経験不足を

懸念しており、このことは、新生児蘇生時

におけるケアの質に影響を与えるものと

考えられる。

今回のセミナーでは、講義時間について

は適当との回答が多いが、シナリオ・個別

シナリオ実習や実技実習時間については5

~7割近い回答者が短いと答えている。こ

れは、参加者の『実技を中心にした教育プ

ログラム』へのニーズの現れであると考

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えられる。

また、体験し難い、蘇生法の学習には

Advanced Cardiac Life Supportな

ど多くのマニュアルでも、「実際の場面

を想定した、シミュレーションの学習効

果は高い」

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とされており、確実な知識・技術の習得

のために、実技を中心とした学習プログ

ラムは有効であると考える。

AHA心肺蘇生国際ガイドライン 2000では、全ての分娩に必ず 1名以上の新生児

蘇生法に精通した医療スタッフが蘇生に専

念できる体制を整えるべきであると推奨

している。対象の知識・技術・経験などに

応じ、内容は勿論、開催頻度も含めた教育

プログラム・研修システムの構築が必要

と考える。

E.結論

①今回、NRP に基づいたセミナーを行っ

た。

②新生児蘇生法に関する学習意欲は高い

が、教育の現状にはばらつきがあり、知

識や修練度も異なっている。

③新生児蘇生は体験し難く、シナリオ実

習を中心とした学習効果は高いと考えられ

る。

④新生児蘇生法について統一した指針は

なく、教育プログラム・研修システムを

検討していく必要がある。

F.健康危機情報

 無し

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厚生労働科学研究費補助金(子ども家庭研究事業)

分担研究報告書

効果的な講習方法の開発に関する研究-2-

研究協力者 内田美恵子 野村雅子 清水健二 長野県立こども病院新生児病棟

木下洋  関西医科大学小児科

分担研究者 田村正徳 埼玉医科大学総合医療センター小児科

研究要旨:平成 16年度新生児集中ケア認定看護師研修課程受講者を対象に、講義内容の

事前学習、講義、ビデオ視聴、実習で構成された講習を行い、講習前後で同一内容の筆記

テストにより評価した。その結果、「看護師が実際に行う処置の技術に関するもの」な

どは正解率が 80%以上であったが、「患者の状態の判断」「医師が行う処置」などは正

解率が低かった。また、プレテストで正解率が最下位の「心臓マッサージ」が講習後に

は上位の成績であり、講義に加え実習を行った効果であると考えられた。

A.研究目的

平成 16年度新生児集中ケア認定看護師

研修課程受講者を対象に、講義内容の事前

学習、講義、ビデオ視聴、実習で構成され

た講習を行い、講習前後で行った同一内容

の筆記テストにより講習の評価を試みた。

               

                  

B.研究方法

【対象】

平成 16年度新生児集中ケア認定看護師

研修課程受講者 30名新生児集中ケア認定看護師研修課程とは、

日本看護協会が定める認定教育課程の一部

門で、新生児集中ケア部門で通算 3年以上

の実務経験を有するなどの条件を満たし

た看護師または助産師が所定の教育を受け

る、新生児集中ケア分野のスペシャリス

ト育成のための教育課程である。

【方法】

アメリカ小児科学会作成の NRP問題集

から、NRP のテキストに沿った全 7領域、

合計 30 の問題を作成した。7領域に渡る

スライド原稿 60枚分を講義用資料として

事前に配布し、一読した上で受講すること

を義務付けた。

受講当日の講義開始前に 15 分間のテス

ト(プレテスト)を施行した。その後、

スライドを使用した講義を 2 時間半行い、

続いてアメリカ小児科学会作成の NRP ビ

デオ教材を 30 分かけて説明した。昼食を

はさんで 3 時間の実習を行った。

実習は、レールダル社製蘇生人形 5 体を準

備し、2人1組となり 3 組が蘇生人形 1 体

を使用して行った。実習内容を表1に示す。

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対象者は、①~⑦の蘇生手技を個別に練

習したのち MEGA CODE(シナリオ)に

したがって、蘇生を実演し講師による評価

を受けた。

表 1 実習内容

① 新生児の状態の評価

② 新生児の気道確保

③ 酸素投与

④ マスク andバッグ(自己膨張型バッ

グ)

⑤ 心臓マッサージ(サム法と2フィンガ

ー法)

⑥ 挿管

⑦ 薬物投与

翌日、プレテストと同じ内容で 15 分間

のテスト(ポストテスト)を行った。テ

ストは以下のような領域の内容で構成し

た。

Lesson1 蘇生の概要:4問Lesson2 蘇生時の最初のステップ:7問Lesson3 マスクバッグの使用:7問Lesson4 心臓マッサージ:3問Lesson5 気管内挿管:4問Lesson6 薬剤投与:3問Lesson7 特別な配慮:2問【倫理的配慮】

ポストテスト施行時に、本研究の目的と

試験結果は個人の識別ができないような方

法で処理し研究目的以外には使用しないこ

と、同意しない場合でも研修には支障がな

いことを説明し書面にて同意を得た。

                  

C.研究結果

1.プレテスト

① 各人の平均点は 23.9点(30点満点)、

各問題 の 正解率 の平均は 83.2% 100点は 0人であった(表 2)。

② 領域別正解率は、特別な配慮が 100%で続いて蘇生の概要 88.4%、薬剤投与

86.7%・気管内挿管 85.7%・マスクバ

ッグの使用 81.3%、蘇生時の最初のス

テップ 77.1%、心臓マッサージ 63.3%であった。

③ 全員が正解した問題は 4領域 5問で、

内容は次の通りであった。

・ 蘇生の概要: 1 問 (・成熟児における

出生後の呼吸・循環の変化の順番)

・ 蘇生時の初期のステップ: 1 問 (・呼

吸を促すためにしてはいけない方

法)

・ マスクバッグの使用: 1 問 (・臍動脈

の触診にて 6秒間に 9回数えた場合

の心拍数)

・ 特別な配慮: 2 問 (・胎便に覆われた

児が出生後、蘇生室にて陽圧換気を施

行中、急速に酸素化の悪化をきたし、

呼吸音が一側性に減弱した状態で最も

考えられる病態はなにか? ・適切な

蘇生努力にも関わらず心拍のない状態

が何分続くことが蘇生中止を考慮する

目安となるか?)

④ 正解率が 80%未満であった問題は 6領域 12問で、内容は次の通りであっ

た。

・ 蘇生の概要: 1 問 (・出生時に自発呼

吸をはじめるのに何らかの手助けが必

要な割合は何%か?)

・ 蘇生時の最初のステップ: 4 問 (・乾

かし、背中をこする等の刺激に無反応

で呼吸をしない児の蘇生で最も効果的

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なものは何か? ・蘇生時のポジショ

ニングとして適当なものはどれか?

出生後 児を暖め、体位を整え、気道、を確保し、刺激し、必要に応じて酸素

投与を行われました.次のステップが

必要かどうかを

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決めるために評価する項目は何か?

  気道確保(吸引)に関する記述で正し

いものはどれか?)

・ マスクバッグの使用: 2 問

(・自己膨張式バッグ(アンビュー)

の不利な点はなにか? ・陽圧換気の

初期の段階で、換気回数は 1 分間どれ

くらいが適当か?)

・ 心臓マッサージ: 3 問 (心臓

マッサージの際に必ず一緒に行う蘇生

行為は何か?・心臓マッサージを施行

する際、陽圧換気の回数は何回か?

 ・陽圧換気と心臓マッサージを施行

開始後、どれくらいで心拍数を再評価

するか?)

・ 気管内挿管: 1 問 (・1回の

挿管操作の タ イ ム リミッ ト は何秒

か?)

・ 薬剤投与: 1 問 (急性循環血

液量低下時のボリューム投与量として、

体重 2.4kg の児にどのくらいの量を投

与するか?)

⑤もっとも正解率が低かった問題は 2領域 2問で正解率は 46.7%、内容は、

・ 蘇生時の最初のステップ: 1 問 (乾か

し背中をこする等の刺激に無反応で呼吸を

しない児の蘇生で最も効果的なものは?)

・ マスクバッグの使用: 1 問 (陽圧換気

の初期の段階で、換気回数は 1 分間どれく

らいが適当か?)であった。

表 2 プレ及びポストテストの成績

2.ポストテスト

①各人の平均点は 27.8点(30点満点)、

各問題の正解率の平均は 96.2%で、100点は 11人であった(表 2)。

② 領域別 正解率 は 、特別 な配慮が

100%、次いで心臓マッサージ、マスクバ

ッグの使用、気管内挿管、蘇生の最初のス

テップ、薬剤投与、蘇生の概要の順で、す

べて 90%以上であった。

③全員が正解した項目は 6領域 12問で内

容は次の通りである。

・蘇生の概要: 2 問 (・新生児の蘇生時の

評価でまず必要なバイタルサイン ・成熟。児における出生後の呼吸・循環の変化の順

番)

・蘇生時の最初のステップ: 3 問 (・呼吸

を促すためにしてはいけない方法は?・

出生後しっかりと呼吸をしてしかも十分

な心拍数があるが、全身性のチアノーゼ

もある児のベストな最初の処置は? 出生

後 児を暖め、体位を整え、気道を確保し、 、

刺激し、必要に応じて酸素投与を行われま

した.次のステップが必要かどうかを決

めるために評価する項目は何か?)

・マスクバッグの使用: 2 問 (陽圧換気の

初期の段階で、換気回数は 1 分間どれくら

いが適当か? 蘇生における改善のサイ

ンとして間違っているものは何か?)

・心臓マッサージ: 1 問 (陽圧換気の回数

は何回か?)

・気管内挿管:2問(・挿管チューブが正

しい位置にあるサインはどれか?・1回の挿管操作の タ イ ム リミッ ト は何秒

か?)

・特別な配慮: 2 問 (・胎便に覆われた児

が出生後、蘇生室にて陽圧換気を施行中、

100点 平均点 正解率プレテスト 0人 23.9

点83.2%

ポストテスト 11人 27.8点

96.2%

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急速に酸素化の悪化をきたし、呼吸音が一

側性に減弱した状態で最も考えられる病態

はなにか? ・適切な蘇生努力にも関わら

ず心拍のない状態が何分続くことが蘇生中

止を考慮する目安となるか?)

④ 正解率が80%未満であった項目は、

蘇生の概要(・出生時に自発呼吸をはじめ

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のに何らかの手助けが必要な割合

は?)であった。

⑤ もっとも正解率が低かった問題は、蘇

生の概要(・出生時に自発呼吸をはじ

めるのに何らかの手助けが必要な割合

は何%あるか?)で、76.7%であっ

た。

3.プレ及びポストテストの問題別およ

び領域別正解率の変化(別紙参照)

① 6領域で正解率が 5~34.5%上昇した。

② 正解率が上昇した項目は 6領域 19問でその内容は次の通りであった。

・蘇生の概要: 2 問 (新生児の蘇生時の評

価でまず必要なバイタルサイン。 出生

後、約 30秒間陽圧換気を施行したが、心

拍数は 55回/分であった.次にすべき事

は何か?)

・蘇生時の最初のステップ: 5 問 (乾かし、

背中をこする等の刺激に無反応で呼吸をし

ない児の蘇生で最も効果的なものは何か?

出生後しっかりと呼吸をしてしかも十分

な心拍数があるが、全身性のチアノーゼ

もある児のベストな最初の処置は何か?

出生後 児を暖め、体位を整え、気道を確、保し、刺激し、必要に応じて酸素投与を行

われました.次のステップが必要かどう

かを決め る た め に評価す る項目は何

か?)

・マスクバッグの使用: 6 問 (・胃チュー

ブ挿入に関して正しいものはどれか?・

流量膨張式バッグの利点として正しくな

いものはどれか?・自己膨張式バッグの

不利な点はなにか?・陽圧換気の初期の段

階で、換気回数は 1 分間どれくらいが適当

か?・マスクバッグでの陽圧換気が数分以

上となった際に必要なことは何か?・蘇生

における改善のサインとして間違ってい

るものは何か?)

・心臓マッサージ: 3 問 (・心臓マッサー

ジの際に必ず一緒に行う蘇生行為は何

か?・心臓マッサージを施行する際、陽圧

換気の回数は何回か?・陽圧換気と心臓マ

ッサージを開始後、どれくらいで心拍数

を再評価するか?)

・気管内挿管: 2 問 (・挿管チューブが正

しい位置にあるサインはどれか?・1回の

挿管操作のタイムリミットは何秒か?)

・薬剤投与: 1 問 (・急性循環血液量低下

時のボリューム投与量として、体重 2.4kgの児にどのくらいの量を投与するか?)

③ 正解率に変化がなかったのは 5領域 8問で、内容は次の通りであった。

・蘇生の概要: 2 問 (・出生時に自発呼吸

をはじめるのに何らかの手助けが必要な

割合は何%か? ・成熟児における出生後

の呼吸・循環の変化の順番)

・蘇生時の最初のステップ: 1 問 (・呼吸

を促すためにしてはいけない方法)

・気管内挿管: 1 問 (・挿管がうまくいか

ずタイムリミットを過ぎてしまった.次

にすることは何か?)

・薬剤投与: 2 問 (・エピネフリン(ボス

ミン)の適当な投与ルートはどこか?・早

産児に対し、過剰のエピネフリンや急速

に重炭酸ナトリウムを投与することで起

こりうる合併症は何か?)

・特別な配慮: 2 問 (・胎便に覆われた児

が出生後、蘇生室にて陽圧換気を施行中、

急速に酸素化の悪化をきたし、呼吸音が一

側性に減弱した状態で最も考えられる病態

はなにか?・適切な蘇生努力にも関わらす

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心拍のない状態が何分続くことが蘇生中止

を考慮する目安となるか?)

④正解率が下降した問題は 3領域 3問で、

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その内容は

・蘇生時の最初のステップ: 1 問 (・呼吸

を促すためにしてはいけない方法)

・マスクバッグの使用:1問(・臍動脈の

触診にて 6秒間に 9回数えた場合の心拍

数)

・気管内挿管:1問(・挿管の適応として

正しいのはどれか?)

⑤ 最も正解率が上昇した問題は、マスク

バッグの使用(陽圧換気の初期の段階で、

換気回数は 1 分間どれくらいが適当か?)

で、46.7%から全員正解の 100%(上昇

率 53.3%)になった。

4.最も正解率が下降した問題は、気管内

挿管(挿管の適応として正しいのはどれ

か?)で、96.7%から 86.7%へ 10%下降した。

                  

D.考察

 プレテストでの正解率を問題別に見て

みると、正解率が 80%を超えていたもの

は教科書的な知識や看護師が実際に行う処

置の技術に関するものであった。一方、正

解率が 80%未満のものは、「患者の状態

を判断する」ことや「主に医師が行う処

置」「医師の指示で行われる行為」であり、

経験はあるが正確な数値等の理解がされて

おらず、正解率が低い傾向にあるのでは

ないかと考えた。また、領域別では、‘心

臓マッサージ’の領域は全ての問題で正解

率が低く、このことからも、実際に経験

していない事柄や経験が少ない処置につ

いては十分な知識を持っているとはいえ

ない。

 ポストテストでは、ほとんどの問題で

正解率は上昇し、正解率は 90%を超える

結果となった。今回の対象は、新生児看護

に少なくとも 3年以上携わった経験者で

あり、新生児の解剖生理や蘇生についてあ

る程度の基礎知識を持っていると考えら

れる。そのため、今回のような 2 時間半

の講義、30 分のビデオ視聴、3 時間の実

習といった比較的短時間の講習でも正解率

がほぼ 90%を超える結果になったのでは

ないかと考える。しかし、‘蘇生の概要’の

領域の、蘇生が必要な新生児の割合を問う

問題の正解率が上がらず、講義前後でとも

に低い結果であった。これは看護師の統計

学的な分野にうとい面の表れではないか

とも思われる。また実習では、はじめに

主にマスクバッグと心臓マッサージの手

技を全員が練習し、次にシナリオにそっ

て蘇生手技を実演し、指導者より評価を受

けた。技術面での指導に加え蘇生の実演の

評価を受けることは、受講生にとっては

自らの技術の習得度の確認ができ、適切に

その技術が行えているかを確認できる良

い方法であると考える。このように講義

に加え実習を行ったことが、プレテスト

では領域別平均正解率以下であった‘マス

クバッグの使用’‘心臓マッサージ’の領域の

正解率が上位を占める結果となった大きな

要因ではないかと考える。

 NRP は、即席の蘇生チームによっても

世界中の新生児が同様の蘇生が受けられる

ように考えられたプログラムであり、今

後対象となりうる者には蘇生が必要な新生

児に関わった経験が少ない看護者もいる

と考えられる。今回の対象者のように経験

があっても正解率にはばらつきがみられ

たことからも、経験が少ない者に講習を

行う場合は、蘇生の技術のみではなく新生

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児の解剖生理といった基礎知識を確認しな

がら、必要に応じて反復した講習や重点項

目を考慮するなどしてすすめる必要があ

るのではないか

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と考える。

E.結論

1.平成 16年度新生児集中ケア認定看護

師研修課程受講者 30名を対象に調査を行

った。

2.講習は、講義内容事前配布による事前

学習、講義、ビデオ視聴、実習の順に行っ

た。

3.講習前後に同様の内容のテストを行っ

た。

4.プレテストは、受験者の平均点は

23.9点(30点満点)で、各問題の正解率

の平均は 83.2%であり、ポストテストは、

それぞれ平均 27.8点、正解率 96.2点で

あった。

5.プレテストの領域別正解率は、特別な

配慮を除くと、すべて 90%未満であった。

6.心臓マッサージの領域はプレテスト

の正解率は最も低く 63.3%であったが、

講習後には 97.8%となり、特別な配慮を

除くと、領域別では最も高い正解率と上昇

率 34.5%を示した。   

F.健康危険情報

無し

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厚生労働科学研究費補助金(子ども家庭総合研究事業)

分担研究報告書

小児科医・一般産科医・助産師・看護師向けの研修プログラムの開発と

その評価に関する研究

研究協力者 茨聡、丸山英樹、徳久琢也、松井貴子、丸山有子 

鹿児島市立病院周産期センター

分担研究者 田村正徳 埼玉医科大学総合医療センター小児科

研究要旨:日本各地に周産期センターが整備され、母体搬送や新生児搬送が推進され、周

産期医療システムの整備が行われてきており、かなりの数の早産症例や先天異常合併症例

の新生児蘇生は、周産期センターにおいて行われてきていると考えられる。しかしなが

ら、出生直前まで異常を認めなかった分娩においても、新生児は、出生時に、呼吸不全を

はじめとする様々な適応不全を呈しやすく、救命救急処置を必要とする頻度が高い。

出生時に適切な救命救急処置が行われなければ、死亡する可能性は高く、仮に一命を取り

留めたとしても、重篤な中枢神経障害を残す可能性が高いため、新生児を取り扱う医療従

事者は、新生児の適切な救命救急処置を修得する必要がある。

そこで、新生児の適切な新生児蘇生法(Neonatal Resuscitation Program:NRP)が全

国に普及すれば、新生児死亡率および心身障害児が減少する効果が期待される。

現在、日本における全分娩数の約50%は、有床産科診療所で行われており、出生時に新

生児専門医が立会っている機会は非常に少ないと考えられる。そこで、適切な新生児蘇生

法の一般産科医療施設スタッフへの普及は、今後の重要な課題と考えられ、その新生児蘇

生法の普及のあり方についての検討が重要であることがクローズアップされた。

A. 研究目的

日本各地に周産期センターが整備され、母

体搬送や新生児搬送が推進され、周産期医

療システムの整備が行われてきており、

かなりの数の早産症例や先天異常合併症例

の新生児蘇生は、周産期センターにおいて

行われてきていると考えられる。しかし

ながら、出生直前まで異常を認めなかっ

た分娩においても、新生児は、出生時に、

呼吸不全をはじめとする様々な適応不全を

呈しやすく、救命救急処置を必要とする頻

度が高い。出生時に適切な救命救急処置が

行われなければ、死亡する可能性は高く、

仮に一命を取り留めたとしても、重篤な中

枢神経障害を残す可能性が高いため、新生

児を取り扱う医療従事者は、新生児の適切

な救命救急処置を修得する必要があり、新

生児の適切な新生児蘇生法(Neonatal Resuscitation Program:NRP)が全国に

普及すれば、新生児死亡率および心身障害

が減少する効果が期待される。そこで、

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どのような対象者にどのような内容で普

及していくべきかを検討した。

B.研究方法

平成2年から平成14年までの、出生の

場所(病院、診療所、助産所、自宅その

他)の変化を母子保健の主なる統計(1)

の資料から検討した。

C.研究結果

1)平成2年(総分娩数 1221585人):

病院 55.8%、診療所 43.0%、 助 産所

1.0%、自宅・その他 0.1%2)平成7年(総分娩数 1187064人):

病院 54.5%、診療所 44.4%、 助 産所

0.9%、自宅・その他 0.1%3 )平成 1 2年( 総 分娩数 1190547人):病院 53.7%、診療所 45.2%、助産

所 1.0%、自宅・その他 0.2%4)平成 14年( 総 分娩数 1153855人):病院 52.3%、診療所 46.5%、助産

所 1.0%、自宅・その他 0.2%であり、日本における分娩の約半数が、小

児科医や新生児科医が常駐していない一般

の産科診療所で行われており、その割合も

微増してきていた。

D.考察現在、日本における全分娩数の約50%

は、有床産科診療所や助産所で行われてお

り、出生時に新生児専門医が立会っている

機会は非常に少ないと考えられる。そこ

で、適切な新生児蘇生法の一般産科医療施

設スタッフおよび助産所スタッフへの普

及は、今後の重要な課題と考えられ、その

新生児蘇生法の普及のあり方についての検

討が重要であることがクローズアップさ

れた。

E.結論適切な新生児蘇生法の普及とその効果を

確実なものとするためには、病院勤務の

新生児科医、産科医、小児科医に対する普

及だけでなく、一般産科医療施設スタッフ

や助産所スタッフへの普及が今後の重要な

課題と考えられる。そのためには、周産

期における中枢神経障害発生のメカニズム

およびその早期診断法(胎児心拍数モニタ

リングなど)を加味した出生直後におけ

る新生児の適切な救急蘇生法(Neonatal Resuscitation Program:NRP)の解説書

や教育用ビデオを作成し、それを使った

教育を行っていく必要があることが明ら

かとなった。

参考文献

(1)母子保健の主なる統計 江井俊秀

母子保健事業団、平成16年

F.健康危険情報

特になし

G.研究発表

1.論文発表

1)茨  聡 新生児低酸素性虚血性脳症

に対する脳低温療法 日本新生児学会雑誌

39,4,568-572、20032 ) Kobayashi K, Ibara S, Maruyama H, et al  Study on Body Temparature Monitoring During Brain Hypothermia in Newborn Infants with Severe Hypoxic-Ischemic Encephalopathy. Hypothermia for Acute Brain

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Damage .Springer,-Verlag Tokyo . 164-167 ,20043 ) Kumazawa K, Ibara S, Kobayashi K, et al. Changes of Blood Glutamate Levels in Hypoxic Ischemic Encephalopathy Patients Undergoing Brain Hypothermia. Hypothermia for Acute Brain Damage . Springer,-Verlag Tokyo . 320-324 ,2004

2.学会発表

なし

H.知的財産権の出願・登録状況

1.特許取得:特になし

2.実用新案登録:特になし

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厚生労働科学研究費補助金(子ども家庭総合研究事業)

分担研究報告書

小児科医・一般産科医・助産師・看護師向けの研修プログラムの開発と

その評価に関する研究

-NRP 研修修了者の継続学習システム構築-

研究協力者 加部一彦 愛育病院新生児科

分担研究者 田村正徳 埼玉医科大 学総合医療センター小児科教授

A.研究目的            

 NRP 研修修了者に対する効果的な継続

学習の目的

 NRP 研修の修了者は、研修終了後も必

要な知識と技能を定期的に更新する必要が

あり、あらかじめそのための学習システ

ムを構築しておく事が必要である。専門職

を対象とした「知識と技能」の定期的な更

新のためには、講義形式など一方向性の講

習会形式では充分な成果が挙げられない事

がすでに判明しており、成人学習理論に基

づいた複数の継続学習システムを用意す

る必要がある。また、効果的な「継続学

習」のためには、学んだ事を実践する機会

を持つ事だけでなく、学んだ事を他に教

育する機会を持つ事も効果的であり、その

ために、NRP 研修は我が国でもプロバイ

ダーとインストラクターの 2つのコース

を設定する事が望ましい。

 「継続学習」の方法として、継続学習の

ための講習会開催に加えて、全国どこから

でも、いつでもアクセスできる方法も用

意されるべきである。 

                  

B.研究方法            

 NRP 研修修了者に対する「継続学習」

の方法

 NRP 研修が全国的に普及した暁には、

全国各地に居住する多人数の研修修了者が

「いつでも」、「容易」に最新の知識を学

習する事ができる仕組みが必要であり、

そのためには、全国的に著しいスピード

で普及しているブロードバンドを利用し、

インターネット上に NRP継続学習のため

の WBT(Web Based Training) site を

設ける事が適当と思われる。

 加えて、定期的に全国各地で講義と実習

形式の学習会を開催し、ネット上での学習

と合せて、継続学習の成果が確実になる工

夫が必要であろう。

C.研究結果            

WBT を目的 と し た NRP 継続学習 e-Learning site 構築に向けての研究課題

NRP 研修修了者の継続学習システム構築

と評価に関しては、今後、以下の点につい

て引き続き検討が必要である。

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#運営などシステム面に関して

 e-Learning site の運営主体:

 NRP 研修に対して、最終的に「どこ」

の「だれ」が責任を持つのか。継続学

習システムの運営責任は、NRP 研修を実

施 す る団体 が 合 せ て負う も の と す る

のがも最も適当と考えるが、どの様な団

体がそもそも NRP 研修自体をになって行

くのかの議論を先行して行なう必要があ

ると考える。

 e-Learning site のサーバーの設置と保

守管理、その cost負担:

 e-Learning site を運営するに際しては

サーバー な ど の ネ ッ ト ワ ー ク 関連の

運営と、e-Learning system自体の運営

を行なう必要がある。サーバーの運営に関

しては、独自のサーバーを持つ方法、既存

のレンタルサーバーなどを利用する方法

があり、いずれが望ましいのか検討する

必要がある。

 e-Learning site に関して、一から独自

に構築する方法もあるが、すでにいくつ

も のソフト ベ ン ダ ーから e-Learning manegement system が 発売さ れ て お

り、それらを合せて比較検討する必要が

あろう。その際には、継続学習システム

の維持運営に必要なコストの算出と、それ

をどの様に負担して行くのかの議論を併

せて行なって行く事が必要である。

 #継続学習のためのコンテンツ作成

  e-Learning site の「中味」に相当す

るコンテンツも、実際の NRP の内容に則

し、かつ、実践的な学習ができる内容を十

分に練り上げる必要がある。また、ここ

でもその様なコンテンツの作成およびア

ップデートを行なってゆくシステム(人、

運営、cost など)について、合せて検討

を行なう必要があろう。

E.結論              

 今後の研究計画

 H17年度:e-Learning のためのテスト

サイトの立ち上げ、おおまかなコンテン

ツの作成。継続学習システムの管理運営に

関する検討

 H18年度:e-Learning site の試験公開

と、運営体制の構築