理工サーキュラー - cst · 海洋再生可能 エネルギーの展望 08...

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02 CST なひと  市原中央高等学校 数学科専任教諭、著作家 栗田正行さん 04 海洋再生可能 エネルギーの展望 08 海洋再生可能エネルギー研究と 理工学部での取り組み 10 私の研究歴 128 新しい化学反応の発見に 夢を託して 物質応用化学科教授 櫻川昭雄 12 学生記者が行く! 022 13  ZOOM UP !! CIRCLE  ワンダーフォーゲル部/国際親善会 14 culture 15 announcement 16 event report + V O L . 4 4 2 0 1 4 . S U M M E R N o . 1 6 1 海のエネルギー

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Page 1: 理工サーキュラー - CST · 海洋再生可能 エネルギーの展望 08 海洋再生可能エネルギー研究と 理工学部での取り組み 10 私の研究歴128 新しい化学反応の発見に

02 CST なひと 市原中央高等学校 数学科専任教諭、著作家栗田正行さん

04 海洋再生可能エネルギーの展望08 海洋再生可能エネルギー研究と理工学部での取り組み

10 私の研究歴128新しい化学反応の発見に夢を託して物質応用化学科教授 櫻川昭雄

12学生記者が行く! 022

13 ZOOM UP !! CIRCLE ワンダーフォーゲル部/国際親善会

14 culture15 announcement16 event report

+

理工サーキュラー

V O L . 4 4 2 0 1 4 . S U M M E R N o . 1 6 1

海のエネルギー

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理 工 サ ー キ ュ ラ ー   N o . 1 6 1 2

 日本大学理工学部(CST)で過ごし

た学生時代を自分の力(+)にかえて、

各界で活躍する卒業生にお話を伺う「C

ST+なひと」。今回は、「マロン先生

の奮闘日記ブログ」や教員を対象とし

た実用書が人気の数学教員、栗田正行

さん(数学科卒)です。

教員挫折

 中学生のとき、塾の先生に「大学受

験が楽だぞ」と言われたのをうのみに

して日大の付属高校に。理工学部数学

科に進学したのも、「公式を使って解

け、答えがはっきりしているから数学

が好き」という何とも安直な理由です。

 両親ともに教員だったので、何とな

く「こういう仕事だな」というのはわ

かっていましたし、子どもの頃から教

員になろうと思ってはいたのですが、

だからといってしっかりと将来を見据

えて何かをしていたわけではありませ

ん。大学時代は「先生になるのだか

ら、その前にほかの世界を見よう」と、

アルバイトに精を出していました。

 卒業後、サポート校(高等学校通信

課程に在籍していたり、高等学校卒業

程度認定試験合格を目指していたりす

る人たちに対して、学習支援をする教

育施設)に勤めたのですが、やはり普

通高校で教えたいと考え、母校で非常

勤講師をしながら教員採用試験にトラ

イしました。晴れて私立の女子校に採

用されたのですが、人間の幅がなかっ

たというか、自分の思い通りにいかな

いことに悩み、誰にも相談しないまま

思い詰め、「自分は先生に向いていな

い」と1年で辞めてしまいました。後

で考えると、誰かに相談していればも

うちょっと頑張れたかもしれません。

この経験から、それ以降は人の話を聞

く耳を持つようになりました。

社会人経験を生かして

 教員を辞め、料理、とくにお菓子作

りが好きだったので、料理の専門学校

に通いました。卒業後は都内のフラン

ス料理店に就職し、パティシエの上司

の下で材料を計量する毎日を送りま

す。当時結婚を考えていたのですが、

仕事もきつく、稼ぎも少なかったため、

レストランを半年で辞めてしまいまし

た。教員の経験を生かし学習塾に職を

得て、翌年結婚。幸運なことに、この

学習塾では社会人として一からたたき

直されました。企業人としての心構え

やスキル、そして生徒や保護者への対

応を学び直すことができたのです。

 学習塾には2年半ほど勤め、自信が

ついたこともあり、「やっぱり先生に

なりたい」という思いが強くなり、も

う一度教員を目指すことにしたので

す。ふたつの高校での勤務を経て、現

職の高校に着任することとなりまし

た。2年前には部活動のひとつとし

て、料理とお菓子作りをする同好会を

立ち上げました。趣味と実益を兼ねた

ようなもので、専門学校時代のレシピ

が生かされています。

 

振り返れば、回り道をしましたが、

市原中央高等学校 数学科専任教諭、著作家

栗田 正行

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それが自分の財産になっています。生

徒に進路指導をするときにも、仕事に

ついて実感を持って話せます。誤解を

恐れずに言えば、教員というのは、世

間一般では当たり前の事柄を知らない

ことがあります。それは知る間もなく

現場に入ってしまうからです。そのた

め、新採の教員を、まずは一般企業に

出向させる私立学校もあるようです。

社会人経験のある人が教員を目指すの

は、視野が広がるので絶対に有利です。

いざ教員になったら、自分が対応する

のはほとんどが企業人である保護者な

わけですから、ほかの世界を知ってい

ることはプラスになると思います。

「教えたい」「伝えたい」

がすべての源

 私は国語が苦手で、大人になるまで

まったく本も読まず、作文も嫌いでし

た。しかし、教員採用試験の勉強のた

めに通っていた図書館で、たまたま手

に取った本が私の人生を変えることに

なります。「本というのは、時間と場

所を超えて著者から学べ、ものすごく

投資効果がある」という一文を読み、

「これはすごい」と思い、その著者の

勧める本を片っ端から読みました。そ

こから読書の習慣がつき、今では買い

物のレジ待ちの間でさえ本を読んでい

ます。

 そのうちに「自分でも本を書きたい」

「自分の培ってきたものを伝えたい」

と思うようになりました。私は専門学

校でも、料理そのものよりも先生の教

え方に注目して講義や実習を受けてい

ました。「料理の先生になるのも良い

な」と思ったぐらい、数学に限らず教

えることが大好きなのです。出版セミ

ナーに通い、そこで出会った編集者の

方に「栗田さんは勉強も育児もしてい

るから、パパのための時間術が書ける

のでは?」と声をかけていただき、1

冊目の本を出版できました。2冊目以

降のテーマは「先生のためのビジネス

書」です。私の強みは現職の教員であ

ることですから、その経験や知識と、

読書やセミナーで得たスキルやマイン

ドをドッキングさせることで、既存の

教育書やビジネス書にはない、独自の

カラーを出しています。

 私の書く本の先にいるのは常に「子

ども」です。パパに向けた本、先生の

ための本、いずれもその先には読者が

接する子どもたちがいます。私自身が

目の前の生徒や保護者を満足させるこ

とはもちろんなのですが、一クラス数

十人ですから限界があります。私の本

を読んだ方が本の内容を実践すること

で、同じ満足度をより多くの人たちに

感じてもらいたいと考えています。私

はまだ無名の、一介の教員に過ぎませ

んが、自分ができることを継続し、自

分のスキルや考え方をもっと多くの人

に、いずれは若い先生方に直接伝えて

いきたいと思っています。

学部長からのメッセージ

理工学部長    

物質応用化学科教授

滝戸

俊夫

 

2014年5月24日12時5分

14秒(日本標準時)、JAXAの

種子島宇宙センターから「だい

ち2号」を搭載したH-

ⅡAロケ

ット24号機が打ち上げられまし

た。このロケットには理工学部

の航空宇宙工学科宮崎研究室で

開発された複合膜面構造物実証

衛星「SPROUT」も搭載さ

れており、打ち上げの36分後に

は無事に宇宙空間へ放たれまし

た。2008年の「SEEDS-

Ⅱ」に続いて、喜びあふれる快

挙です。

 

今から53年前、ソ連の有人宇

宙船「ボストーク1号」で人類

初の宇宙飛行士となったガガー

リン少佐の「地球は青かった」

という第一声に、中学生だった

私はワクワクしたものです。こ

の言葉から、地表は大海原に取

り囲まれていることを実感しま

した。広大な宇宙が未知の世界

であるとともに、地表面の70%

を占める海もまた、解明されて

いるのはわずか5%にすぎない

といわれています。ある意味、

宇宙と海とは同じぐらいのロマ

ンがあふれているのかもしれま

せん。

 

理工学部は2010年に学

部創設90周年を迎え、来たる

100周年を見据えて更なる研

究力向上に邁進すべく、理工学

部の新時代をけん引するプロジ

ェクトとして「理工学部シンボ

リック・プロジェクト形成支援

事業」を発足し、選定された6

つの研究が推し進められていま

す。その中のひとつが「海洋再

生可能エネルギー利用のための

複合浮体システムの研究」であ

り、本特集のテーマである「海

のエネルギー」を現実的に利用

するための方法を探る研究です。

 

宇宙へ、そして大洋へ。理工

学部の多彩な英知を結集したプ

ロジェクトが、広い世界を舞台

に挑戦しています。理工学部で

しか成し得ない研究と業績が、

ダイナミックに躍進し続けるこ

とを期待しています。

理 工 サ ー キ ュ ラ ー   N o . 1 6 13

挑戦の舞台は宇宙へ、

そして大洋へ

1976 年 千葉県生まれ1995年 理工学部数学科入学1999年 卒業、専修学校千葉文理予備学校

数学科教諭2000年 日本大学習志野高等学校数学科

非常勤講師2002年 聖徳大学附属取手聖徳女子中学

校・高等学校数学科専任教諭2003年 退職、辻フランス・イタリア料理

専門カレッジ入学2004年 卒業、㈱ひらまつ入社、半年後に

退社、㈱俊英館入社2007年 日本大学習志野高等学校数学科

非常勤講師2009年 聖徳大学附属取手聖徳女子中学

校・高等学校数学科専任教諭2010年 市原中央高等学校数学科常勤講師2011年 同校数学科専任教諭[著書]『仕事も家事も育児もうまくいく!「働くパパ」の時間術』『わかる「板書」伝わる「話し方」』『効率が10倍アップする!「時間」を生み出す教師の習慣』『9割の先生が知らないすごい話し方50のルール』

くりた まさゆき 「マロン先生の奮闘日記ブログ」

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理 工 サ ー キ ュ ラ ー   N o . 1 6 1 4

1 再生可能エネルギー

化石燃料から生み出したものではなく、地

球上で自然に起こる現象を利用して繰り返

し使えるエネルギー(具体的には、太陽光

発電、風力発電、バイオマスエネルギー、

水力発電、地熱発電・太陽熱発電、潮流発

電など)。2010年度の日本の再生可能

エネルギー(水力を除く)の発電量は総発

電量の約1・2%にすぎない。

2 エネルギー自給率

日本のエネルギー自給率は4・4%。

(2010年、原子力を含めず)

3 メガソーラー

出力1メガワット以上の大規模な太陽光発

電。

4 海洋再生可能エネルギー

洋上風力、波力、潮流、海流、海洋温度差

など、海域において利用可能な再生可能エ

ネルギー。「海洋エネルギー」とも。

5 浮体式洋上風力発電

発電設備を海上に浮かべる風力発電のこ

と。一方、発電設備を海底に固定するのが

「着床式洋上風力発電」。水深50m以下は着

床式、50mを超えたら浮体式を選択するの

が一般的。日本近海は浅い所がなく、着床

式に適した場所が少ない。

表1 各種再生可能エネルギーの将来見通し

洋上風力海洋エネルギー

太陽光 地熱 バイオマス 陸上風力 水力潮流/波力 海流 海洋温度差

設備利用率 30% 40% 75% 30% 15% 60% 60% 20%

現在

設備容量 [GW] 0.03 0 0 0 5 0.5 4.6 2.5 48

発電量 [kWh/年] 30億

2030年

設備容量 [GW] 7.6 40 2.4 6 21 48

発電量 [kWh/年] 200億 40億 10億 125億 74億 370億

2050年

設備容量 [GW] 25 60 3.5 6.5 25 48

発電量 [kWh/年] 675億 163億 100億 600億 108億 438億

木下 健

日本大学

特任教授/東京大学

名誉教授

一般社団法人海洋エネルギー資源利用推進機構

会長

銚子沖の着床式洋上風力発電実証設備独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)提供

再生可能

エネルギーの

可能性

 

いま世界全体ではもちろん、日本ではと

くにエネルギー問題が最重要課題で、再生

可能エネルギー(1)への期待が高まってい

ます。その理由は地球温暖化対策にもあり

ますが、日本の場合はエネルギー自給率(2)

が低いため、化石燃料の輸入ができなくな

ったときに大変なことになるからです。そ

のためエネルギーの多様化が重要なのです

が、多様化の中で何を選ぶかは「安全性」

が非常に大切だろうと思います。ですから

日本では、再生可能エネルギーは最大限に、

かつ最速をもって取り組まなくてはならな

いと考えています。

 

再生可能エネルギーといっても、たくさ

んの種類があります。

 

現在、日本の再生可能エネルギーの主力

は水力ですが、これはもう頭打ちでしょう。

 3・11以来、日本では太陽光が急速に伸

びました。ほかに比べて初期コストが圧倒

的に低く、屋根にソーラーパネルを載せる

だけといった小さな単位で積み重ねていけ

るため、スピード感をもって取り組みやす

いからです。ところがメガソーラー(3)の

ように大型化してくると設置場所に限りが

出てくるため、いままでのようには伸びな

くなります。

 

もともと再生可能エネルギーというの

は、風力がメーンです。しかし日本は島国

で風車を置ける場所が限られているうえ

に、山がちな地形のため空気の流れが乱れ

て風車には不利なため、ヨーロッパと同じ

ペースでは広がりませんでした。今後はも

う少し伸びていくと思います。

 

日本は地熱のポテンシャルがあるのです

が、地熱を得られる場所が国立公園内や温

泉の近くのため、折り合いが難しいので

す。それでも技術でもって折り合いをつけ

て、伸ばしていくことはできます。

 

バイオマスはエネルギー密度が低いた

め、生産地と消費地が近ければ有用ですが、

遠くから運ぶようでは意味がありません。

 

表1は各分野の専門家が集まって作成し

た、各種再生可能エネルギーの発電量の見

積もりです。このままいけば2030年の

目標は何とか達成できると考えています

特集海のエネルギー

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理 工 サ ー キ ュ ラ ー   N o . 1 6 15

6 潮流発電

潮流(潮汐によって起こる水平運動の流れ)

の運動エネルギーを利用し、水車によって

回転エネルギーに変換して発電する方式。

タービンは風力発電と同様、回転軸の方向

によって「水平軸型」と「垂直軸型」に分

けられる。ほかに、物体の振動から発電機

を動かす「振動翼型」も。

が、可能性のある所は全部使い切ってしま

うため、そこから先が問題です。2050

年をターゲットに見据えると、可能性があ

るのは、一言でいえば「海のエネルギー」

です。波力、潮流、海流、海洋温度差、さ

らには洋上での風力といった海洋再生可能

エネルギー(4)に可能性があります。

  

実際的な海のエネルギー利用というの

は、実は日本人が始めました。1964年

に益田義雄さんがつくった航路標識ブイ

です。ブイを夜間にもよく見えるように光

らせるため、その電源に波力を使ったもの

で、これはいまでも世界中で使われていま

す。1970年ごろに起きた第一次石油シ

ョックのときには、海のエネルギーを利用

する研究がイギリスで始まり、その後アメ

リカ、ノルウェーなど世界中で積極的に研

究されるようになりました。

 

日本では波力などを利用するためのプロ

ジェクトが国の主導で行われ、その発電量

は10年間で10倍にもなりました。1999

年まで日本は波力発電で世界をリードして

いましたが、国のエネルギー政策が原子力

に大きくかじ取りされたため、海のエネル

ギーに限らず、日本では太陽光も風力も開

発をやめてしまいました。その後もヨーロ

ッパでは技術開発を続けてきたため、日本

は大きく後れを取ってしまいました。

 

現在、海洋再生可能エネルギーの中心は

洋上風力です。ヨーロッパでは1992年

ごろから陸上風力発電が増え続けました

が、飽和状態になり洋上へと場所を移しま

した。風力発電は陸域から海域へ、さらに

陸に近く水深の浅い所から、陸から遠く水

深の深い所へと移動し、いまヨーロッパの

市場では浮体式洋上風力発電(5)が量産体

制に入ると盛り上がっています。その後を

潮流発電(6)と波力発電(7)が追っています。

 

日本での研究・開発は10年以上も空白期

間があります。しかし日本でも3・11を契

機に本格的に海洋再生可能エネルギーの利

用研究が再開され、2013年11月には福

島沖で浮体式洋上ウィンドファーム(8)の

実証研究事業が始まりました。この大規模

浮体式ウィンドファームで、重電、海洋、

造船、素材など、日本が誇る数々の技術を

強みに10年の遅れを一挙に取り戻そうとし

ています。

  

日本ではコスト面から1999年に自然

エネルギーの開発をやめてしまいました

が、イギリスも1970年ごろから10年

ほど開発を試みた後パタッとやめ原子力

に集中しました。ところが方針が変更さ

れ、2001年に洋上風力発電のラウンド

1(9)が始まりました。陸上風車が大型化

されて経済性が良くなったものの、陸上で

の適地がなくなってきたため沿岸に出るこ

とになったのです。ラウンド2までは着床

式の洋上発電でしたが、ラウンド3では浮

体式の洋上発電が出てきました。沖に出る

と風が強くなり、また風の変動が減って安

定するので、沿岸から沖に出るほど有利な

ことがだんだん実証されてきています。

 

海洋エネルギーの研究には実証試験場

がとても大事なのですが、海中や海上に

構造物を設けると漁業や海運などに影響

があるため、あらかじめ調整済みの実証

海域を設けたほうが実験を円滑に進めら

れます。スコットランドの北にある欧州

海洋エネルギーセンター(EM

EC

)は世界

初の実証試験場として2003年にオー

プンし、世界の海洋エネルギー研究開発

をリードしてきました。また、海での試

験は何をするにもひとつひとつお金がか

かりますから、実物をまず陸上でチェッ

クすることも大事で、そのための試験場

(NA

REC;N

ational Renewable Energy

Centre

)もあります。さらに、プロジェ

クトの支援をしたり、世界中から集まっ

た優秀な学生と一緒にプロジェクトを行

う仕組み(ID

CORE

;Industrial Doctoral

Centre for Offshore Renew

able Energy

もあります。そういった、〈人材育成の仕

組み〉〈プロジェクト支援の仕組み〉〈実証

試験の仕組み〉をトータルで行っており、

大きく見込まれる海洋エネルギー市場を主

導しようという意欲があります。

 

フランスは総出力の80%を原子力に依存

していましたが、3・11をきっかけに60%

にまで下げるよう方針を変更しました。あ

との20%は主として海洋再生可能エネル

ギーでまかなうために、大手の原発メーカ

ーや重工メーカーがその開発に乗り出し、

垂直軸型振動翼型 水平軸型浮体式洋上風力発電設備「ふくしま未来」福島洋上風力コンソーシアム提供

海洋再生可能

エネルギーの

歴史

海外の動向

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理 工 サ ー キ ュ ラ ー   N o . 1 6 1 6

7MWの風車( 

)を年に100基も量産で

きる工場を建設中です。

 

アメリカはもともと石油もあるし、最近

はシェールガス( 

)が話題でエネルギーに

満ちているかと思うのですが、再生可能エ

ネルギーに対してもとても熱心で、風車の

製造は中国と並んで世界トップですし、太

陽光にも海洋エネルギーにも取り組んでい

ます。ヨーロッパに次いで、海洋エネルギ

ーのための実証試験場も始まりました。

 

中国は大気汚染のイメージが強いです

が、それはエネルギーの需要の伸びが急激

なためであり、再生可能エネルギー分野で

は、風車もソーラーパネルもシェアは世界

一です。日本の自動車の製造工場と同じよ

うに、中国では大型の陸上風車が量産体制

で毎日つくられています。海洋エネルギー

利用も進んでいて、洋上にプラットホーム

をつくり風力と波力のハイブリッドでエネ

ルギーを得る計画もあります。ただし中国

は日本より海が少ないので、日本から場所

だけ借りようと考えています。昔は逆の立

場でしたが、いまはそんな時代です。「日

本は技術立国」とあぐらをかいていてはい

けません。

  

日本でも、海洋エネルギーの実証試験場

をつくろうとしています。日本は機械的な

発電技術や造船で培った海中に沈める機器

の密閉技術、貝などがつくのを防ぐ特殊な

塗装など、個々の技

術は最先端です。け

れども欧米に比べ

て漁業権の調整が

難しく、本格的な海

洋エネルギーの研

究・開発には実証試

験場の実現が不可

欠でした。しかし実

証試験場ができる

だけでは不十分で、

例えば関連企業が

集積するエリアを

よく調べて決め、拠

点の港を決め、商用

フィールドの場所

を指定して商用化

の仕組みを構築し、

設置・保守等のため

の特殊船・運用体制

をつくる。これらを

一気に、集中的に整

備してやっていく

ことが必要です。

 

調べてみると、日

本には海洋再生可

能エネルギーのポテンシャルは十分あり、

原子力発電所100基分以上もあります

(表2)。「無いからやらない」という理屈

はありません。経済性も重要ですから、将

来、再生可能エネルギーがどのぐらいの値

段になるかを試算しました。面白いことに、

いずれはどれも同じぐらいの値段になる予

測で、化石燃料と同程度のレベルまでいく

と考えられます(表3)。

 

経済性と同様に大きな問題が、既存の漁

業関係者との兼ね合いです。技術的な解決

はもちろんですが、運用面を工夫すれば、

漁師さんを含む海で働く人と一緒に仕事を

する、あるいは海で働く人の仕事を新たに

つくることができると思います。これまで

は、漁業関係者との折り合いがつかずに事

業計画が頓挫することもありましたが、大

事なことは「当事者になってもらうこと」

日本での

取り組み

表2 日本の離岸距離30km かつ水深100m 以浅の発電ポテンシャル

風力 波力 海洋温度差 海流 潮流 潮汐現状の技術レベルを仮定した発電ポテンシャル[TWh/年] 524 19 47 10 6 0.38

今後の技術開発を仮定した発電ポテンシャル[TWh/年] 723 87 156 10 6 0.38

    発電ポテンシャル[MWh/年]

波力 海洋温度差 海流現状技術 将来技術 現状技術 将来技術

北海道電力 0 → 7,236,461 0 → 244,404 ①津軽 1,234,083 東北電力 0 → 15,651,842 0 → 13,339,728 ②伊豆 0 東京電力 10,696,748 → 25,897,889 19,268,496 → 53,658,504 ③紀伊 8,822,879 北陸電力 0 → 6,731,359 0 → 5,077,296 ④室戸 1,489,997 中部電力 0 0 0 → 5,234,976 ⑤足摺 1,213,164 関西電力 0 → 1,910,293 654,372 → 3,894,696 ⑥トカラ 0 中国電力 0 → 133,240 0 → 4,446,576 ⑦奄美 0 四国電力 0 0 504,576 → 4,706,748 ⑧沖縄 0 九州電力 0 → 9,295,762 4,446,576 → 29,588,652 沖縄電力 8,175,971 → 20,302,351 22,051,548 → 35,651,448

合計 18,872,719 → 87,159,197 46,925,568 → 155,843,028 (①+③) 10,056,962

  出典:NEDO海洋エネルギーポテンシャルの把握に係る業務(平成22年度成果報告書)

7 波力発電

波のエネルギーを利用した発電システム。

多様な発電方式が採用されているが、主な

ものは次のとおり。

10

11

1)Attenuator(アテニュエータ)型

5)Oscillating Water Column(振動水柱)型

4)Oscillating Wave Surge(フラップ)型

7)Rotating Mass(ジャイロ)型

3)Overtopping(越波)型

6)Submerged Pressure Differential(没水差圧)型

2)Point Absorber  (ポイント・アブソーバ)型

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理 工 サ ー キ ュ ラ ー   N o . 1 6 17

です。お金もうけの話だけでは人の心は動

かないもので、再生可能エネルギーを日本

のエネルギー総量の数十%にするために、

さらには安心して暮らせる新しい日本をつ

くるために、自らが当事者になる。そうい

う意味では、海のエネルギーというのは人

間が自然と共存して暮らせる良い種になる

のではないかと思います。

 

海のエネルギーは地域振興とも相性が良

く、またエネルギーの地産地消にも有効で

す。3・11以降の復興事業として波力と潮

流による発電を開発しており、もうすぐ実

用化できる段階です。そのひとつが津波の

被害を受けた岩手県久慈市で、漁港の先で

波を利用し

て起こした

電気で漁港

の製氷施設

を運転する

計画です。

 

大型で大

きな電源の

一部として

大規模な洋

上ウィンド

ファームを

利用した

り、また地

産地消のた

めの小さな

電源として

波力発電や

潮流発電を

利用した

り、海洋再

生可能エネルギーは多様なものを適材適所

で利用することができます。再生可能エネ

ルギー全体でいえることですが、その場所

に適したものを選ぶことが一番の条件で

す。国際的に見ると、異種海洋エネルギー

(風力+波力、風力+潮力といったハイブ

リッド)も出てきています。日本でもこれ

を盛り込んだほうが良いと思いますし、さ

らに国際的なマーケット戦略も考えなけれ

ばなりません。先行するヨーロッパと対抗

するときに、地理的にもメリットがあって

これからの人口増や産業振興を見据えて電

力を必要としている東南アジアとの国際

協力を、戦略的に行う必要があると思い

ます。

  「1.再生可能エネルギーの可能性」で

触れたように、2050年というターゲッ

トで考えると海のエネルギーにシフトする

ことになります。だったらそれまで日本は

別のことをやれば良いじゃないか、と言う

人もいますが、それでは国際競争に負けて

しまいます。いま世界中で使われているソ

ーラーパネルや陸上風力発電用の風車は大

半が中国でつくられていますが、それを

「これからは日本でもつくりますよ」と言

ってもいまさら遅いわけです。先々を見越

してやっていかないといけません。再生可

能エネルギーというのは、技術開発がひと

つ達成したら終わりではなく、新たな技術

開発を次々に積み重ねていくことが必要で

す。言い方を変えると、新たな技術でもっ

て新たな仕事をつくり、雇用をつくる。そ

うした未来へのストーリーが大事です。

 

また、海は無尽蔵にあってしかもタダな

んだから安く済むでしょうと思っている人

もいるようですが、そんなことはありませ

ん。エネルギー密度の低い所から使いやす

い形にするのにはお金がかかります。日本

は海に囲まれているとはいえ設置すれば簡

単に発電できるというわけではなく、エネ

ルギー変換に対する高性能化が必要です。

このことは発電単価に直接かかわってきま

す。初期投資のコストやメンテナンスコス

トに見合った電気の出力がなければ経済的

ではありません。ですから高効率を目指す

設計が大事で、技術の腕の見せ所です。

 

研究開発には、イギリスの例のように

〈人材育成の仕組み〉〈プロジェクト支援の

仕組み〉〈実証試験の仕組み〉が大切です。

そして実用化に向けて日本も海洋再生可能

エネルギーの導入目標を定め、産業界が安

心して取り組めるように、政府は早期に工

程表を提示するべきです。いま開発をして

おけば、2050年には海のエネルギーが

再生可能エネルギーの主要部分を担うこと

になるでしょう。福島沖で行われている浮

体式洋上ウィンドファームの実証実験は世

界初ですが、それは形だけの一番で、本音

はあと5年のうちに世界初「浮体式洋上ウ

ィンドファームの商業化」をしたいところ

です。成功すれば、それに続く波力をはじ

めとする海のエネルギーでも国際競争の参

加資格が得られ、2050年から先の道も

ひらくことができるでしょう。

未来に向けて

表3 再生可能エネルギーの経済性

現在の発電コスト[円/ kWh]

発電コスト目標 [円/ kWh]2015年 2020年 2030年

太陽光 (26~ 40) 23 14 7陸上風力 9~ 15 7~ 11 5~ 8洋上風力 (9~ 15) 12~ 17 8~ 11太陽熱 13~ 30 10~ 15 5~ 17波力 (30~ 50) ~ 40 ~ 20 5~ 10海洋温度差 40~ 60 15~ 25 8~ 13出典:NEDO再生可能エネルギー技術白書(平成22年)

8 ウィンドファーム

風力発電施設を集中的に設置した大規模な

発電施設。

9 ラウンド1

イギリスの洋上風力開発は「ラウンド1」

「ラウンド2」「ラウンド3」の3段階に分

けて進められている。ラウンド1では開発

海域は海岸線に比較的近くかつ水深の浅い

場所が選ばれたが、現在行われているラウ

ンド3は海岸線から離れ、より水深の深い

場所へ移動している。

  7MWの風車

出力7MW(メガワット)の風車は、現状

で世界最大規模。

  シェールガス

地下数百~数千メートルの頁岩層(シェー

ル層)に含まれているガス。主成分はメタ

ンで、LNG(液化天然ガス)と変わらない。

硬い岩盤に高圧の水や化学薬品を注入し、

人工的につくった割れ目からガスを取り出

す「水圧破砕法」の技術が急速に進み生産

コストも大幅に下がった。もっとも生産が

盛んなのは埋蔵量世界2位のアメリカ。 ウィンド・パワーかみす第2洋上風力発電所

株式会社 ウィンド・パワー提供

1011

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理 工 サ ー キ ュ ラ ー   N o . 1 6 1 8

 日本大学理工学部では、2010年度か

らシンボリック・プロジェクト形成支援事

業のひとつとして、海洋利用システム部門

の研究が組織的にスタートしています。日

本国内での海洋空間の大規模利用の実現性

の観点から、各種の要素技術研究を含めた

海洋再生可能エネルギー利用システムを研

究しています。その対象は波力発電、潮流

発電、海上での太陽光発電などです。波力

発電では、前述した振動水柱型波力発電装

置を大型浮体に設置するというコンセプト

での研究も行っています。現実的なコンセ

プトとして、浮体式洋上風力発電に垂直軸

型を適用し、基盤浮体には振動水柱型波力

発電装置を浮体動揺制御と風力発電の起動

用バックアップ電源のために取り付けるシ

ステムの検討を始めています。

 さらに、新潟県海洋エネルギー研究会と

共同で、新潟県粟島における潮流発電プロ

ジェクトを進めています。理工学部と新潟

県海洋エネルギー研究会は、2013年11

月に技術協定契約を締結しました。共同事

業の基本コンセプトは垂直軸可変ピッチ水

車を浮体に取り付けるものであり(図3)、

その実証試験を目指した研究を進めていま

す。2014

年3月にはそ

の予備的トラ

イアル実験と

して、研究会

参加企業で浮

体モデルを製

作し、日本大

学のダリウス

水車モデルを

取り付けた、

     海洋再生可能エネルギー研究と  理工学部での取り組み   海洋建築工学科 准教授 居駒 知樹

理工学部シンボリック・プロジェクト

 「潮流発電」では、潮流という流れのエネルギーを発電に利用します。潮流は、海面の潮汐差によって流れが生じるものですが、潮流の様相は極めて強く海底を含む地形の影響を受けます。北半球では基本的に大陸等の陸の西側で潮汐差が大きく、必然的に潮流速も大きくなります。海峡や島嶼間では流れが集約されるため、2~3m/sを超える、極めて強い流速になる海域もあります。日本では瀬戸内海のいくつかの海峡が代表的です。また、九州西岸の島嶼でも2m/s を超える強い流速が期待できます。イギリスでは6m/s にもなる強力な流速を観測できる海域もありますし、朝鮮半島西岸にも極めて大きな潮汐差と潮流が存在します。 「海流発電」も同様に海水の流れを利用しますが、起因と規模はまったく異なります。ただし、装置の基本技術は極めて近いコンセプトで論じることができるはずです。流れのエネルギー密度(仕事率)は流速の3乗に比例します。流速2m/s で 100m2 の検査面における流れの仕事率は 410kWです。 「海流」と「潮流」の大きな違いとして、潮流は一日で流向が3回反転す

ることが挙げられます(12時間周期で2往復)。当然、海流も局所的な流向の変化はありますが、潮流は完全な反転を繰り返します。このことから、潮流発電用の水車は流向の変化に対応するためのコンセプトが必要であり、「水平軸」水車の場合は水車本体の首を振って反転させる「ヨー制御」が必要です。それに対して、「垂直軸」水車はどの方向からの流れに対しても同一回転方向に水車を回転させるので、流向の変化に対する特別な対策を必要としません。構造的にはそれぞれに一長一短がありますが、日本においては垂直軸水車による研究開発が最も盛んでした。潮流発電方式は、風力発電のように翼のついたタービンを回すことが最も基本的な方式ですが、それ以外にもフラップ式に代表されるような、物体の振動を励起させて発電機を動かす方式もあります(p5脚注「5 潮流発電」参照)。 理工学部電気工学科では、1980 年代に瀬戸内海の来島海峡にて垂直軸水車による国内初の実海域実証試験を成功させています(図2)。現在筆者が実施する、可変ピッチ機構を導入した垂直軸水車は、流向に対する指向性は強くなりますが広い流速域で高トルク

を得られるので、流向を変える潮流中でも長い時間での稼働が可能となります。 水車は海中に固定されるだけでなく、条件によっては浮体に取り付けられますし、実際にヨーロッパでは浮体式潮流発電の実証試験も行われています。浮体式のコンセプトを実現するには、水車の回転に伴うヨー運動の影響や、実海域では浮体動揺を含めた流速変動が水車トルクに与える影響などを把握する必要があります。

図2 

来島海峡でのダリウス型水車設置の様子

図3 

複合型海洋エネルギー

   

浮体システム

発電ユニット

ブレード長:1m

水車直径:1m

潮流発電

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理 工 サ ー キ ュ ラ ー   N o . 1 6 19

 私たちが普段認識する海洋波のほとんどは「風成重力波」と呼ばれる地表の風によって作られた波です。その波(波浪)のエネルギーを利用するのが「波力発電」です。波のエネルギーは波高の2乗と波長に比例しますが、エネルギー密度は波高の2乗と波周期に比例します。単位幅当たりの波の仕事率(エネルギー密度)は、十分深い海域において波高2m、波周期8秒の正弦波であれば 30kW/mほどですが、それぞれが有義値となる不規則な実海面での期待値は、その半分程度の16kW/mとなります(ただし、深さは 100m分の断面が検査面)。 波力発電にはいくつかの方式があります(p6脚注「7波力発電」参照)。最終的に発電機を動かすときに、何を媒体としてそれを動かすのかと、そしてその媒体をどのように作り出すのか、という違いがあります。その媒体のエネルギーに変換するプロセスを「一次変換」といい、媒体が発電機を動かして電力を得るまでの一連のプロセスを総称して「二次変換」といいます。一次変換は、例えば「波のエネルギーを圧縮空気に変換する」とか「油圧に変換する」とかです。それらが「空気タービンを回す」とか「油圧ポンプを動かす」とかして、発電機が発電す

る部分が二次変換です。 波によって物体を動揺させ、それが直接発電装置に仕事をする方式も、いくつかあります。例えば、リニア発電機を採用した場合です。しかしこれも、波のエネルギーを物体の運動エネルギーに変換することが一次変換ともいえます。 海洋建築工学科では、学科創設当初から「振動水柱型波力発電装置」の研究を行ってきました。日本の研究機関としては、その研究の歴史は古いといえます。振動水柱型装置は最もポピュラーな発電方式でした。JAMSTEC(独立行政法人海洋研究開発機構)の「海明」や「マイティーホエール」といった浮体式実証機による実海域実験をはじめ、防波堤に設置した振動水柱型の装置による実証試験などが過去に行われました。現在もイギリス、ポルトガル、イタリアやその他の国々で、この方式での実海域実験が実施あるいは準備されています。近年は、油圧や水圧方式を利用したアテニュエータ型やポイント・アブソーバ型での可動物体方式の研究や、その実証も数多く実施されています。 理工学部では、海洋建築工学科の増田光一教授と筆者が、振動水柱型波力発電装置の一次変換性能の向上に

関する研究を実施してきました。その技術を応用した装置が、2011 年度のNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の実証事業に、民間企業によって採択されています。現在もコンソーシアムのメンバーとして、水槽実験と理論計算による一次変換特性の向上と再現の役割を担っています(図1)。

粟島での実海域えい航試験を実施しました

(図4)。予備試験ではありましたが、流れ

だけでなく波浪による水車回転数変動に関

する貴重なデータが収集されました。今後

は研究会との連携をさらに密にし、潮流発

電の実証試験を目指していきます。

特集海のエネルギー

     海洋再生可能エネルギー研究と  理工学部での取り組み   海洋建築工学科 准教授 居駒 知樹

図1 振動水柱型波力発電実験(2012年に船橋校舎で実施)と、参加する実証プロジェクト

波力発電

図4新潟県粟島での浮体式水車のえい航試験

 海から繋げていく未来

都市空間と海洋環境の融合を目指して

会期:

平成26年7月31日木~平成27年6月30日火

会場:

船橋校舎5号館2階 科学技術史料

センター(CST

MUSEUM)

 理工学部海洋

建築工学科で研

究している海洋

再生可能エネル

ギーについても

さらに詳しく、

わかりやすく展

示解説します。

 

第11回特別展 

日大理工のちからⅦ

日本大学理工学部科学技術史料センター船橋キャンパス 5号館2階 / 月曜日~土曜日 午前10時~午後5時 / 休館日:日曜・祝日www.museum.cst.nihon-u.ac.jp

日本大学理工学部科学技術史料センター船橋キャンパス 5号館2階 / 月曜日~土曜日 午前10時~午後5時 / 休館日:日曜・祝日www.museum.cst.nihon-u.ac.jp

第11回

特別展

日大理工のちからⅦ

海洋建築工学科

後援:船橋市教育委員会 、理工学部校友会 、理工学部校友会海洋建築部会

海から繋げていく未来 都市空間と海洋環境の融合を目指して

平成 26 年

7月 31 日 木平成 27 年

6月 30 日 火

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理 工 サ ー キ ュ ラ ー   N o . 1 6 1 10

1-1. FIA(一般的な型) 1-2. FIA(反応カラム組み込み型) 2. HPLC(高速液体クロマトグラフィー)

PCRs

:ポンプ:キャリヤー:反応溶液

SRCD

:試料導入器:反応カラム:検出器

Rec.W:記録計:廃液

PMS

:ポンプ:移動相:試料導入器

SCD:分離カラム:検出器

Rec.W:記録計:廃液

P

P

P

C

RS1

RS2

S SD

Rec.

W C

RS

RCW MP

P

D

Rec.

SSC

WP D

Rec.物質応用化学科

教授 櫻川

昭雄

新しい化学反応の発見に夢を託して

研究者の道へ

 中学生の頃から興味があった考古学

に研究の手法が似ている分析化学を卒

業研究に選んだことが、研究者への道

に進む機会を与えてくれた。分析化学

研究室では、故内海喩先生(元名誉教

授)ならびに故奥谷忠雄先生(元名誉

教授)が卒研生の指導にあたられてい

た。当時はようやく機器分析が広く世

間に普及しはじめた頃でもあったが、

研究室の一員となり与えられた研究テ

ーマは、川崎市や三重県の四日市市で

問題になっていた大気汚染物質である

二酸化硫黄の新規微量分析法の開発

で、使用する機器は分光光度計のみの

シンプルなものであった。研究は順調

に推移したが、水俣病で知られる水銀

を試薬として用いることに難点があっ

たので、大学院への進学を契機に研究

テーマを変更することになった。両先

生から骨のある研究テーマに挑戦する

よう提案され、与えられたテーマは微

量亜硝酸イオンの間接接触分析法の開

発である。少々専門的になるが、硝酸

酸性でチオシアン酸第二鉄錯イオンの

オレンジ色は、触媒として作用するヨ

ウ化物またはヨウ素酸イオンが存在す

ると一定時間後に退色し、その時間の

長さが亜硝酸イオンの濃度に関係する

化学反応を利用するものであった。こ

の方法では時間とともに吸光度が減少

するので反応時間を厳密に管理するこ

とが肝要であるが、ガラス器具の取り

扱い方に代表される分析技術の熟練も

不可欠で、この研究を通して培われた

技術が、その後の研究者としての人生

に大いに役立っている。苦労も多かっ

たが、吸光度を測定する時間を変える

だけで、サブppbからppmまでの

四桁分のダイナミックレンジ(定量範

囲)をもつ優れた方法が開発でき、修

士論文として提出した。修士課程の修

了と同時に助手に採用され、新しい化

学反応の発見とともに接触(触媒が関

係する)反応を利用する化学分析法の

開発で学位の取得を目指すことになっ

た。その後の六、七年間の研究で、ハ

ロゲンイオンをはじめとして硫黄化合

物、窒素化合物やリン化合物の定量分

析法を開発して、十報ほどの論文を書

くことができた。論文の数はそろった

ものの、理学的な内容の研究が大半で

あったため、その後の二年間は工学博

士の学位を得るために必要な研究を行

うことになった。学位を取得すること

ができ、これまで以上に新規性や独創

性のある研究をしたいと考えたが、簡

単にアイデアが浮かぶはずもなく、奥

谷先生が指導されていた原子吸光分

析(AA)や高速液体クロマトグラフ

ィー(HPLC)の研究を手伝いなが

ら、新しいテーマを模索することにな

った。

フローインジェクション分析

(FIA)との出会い

 1980年代の日本はバブル経済の

真っただ中にいた時期でもあり、好況

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理 工 サ ー キ ュ ラ ー   N o . 1 6 111

図1 流れ分析の例

1-1. FIA(一般的な型) 1-2. FIA(反応カラム組み込み型) 2. HPLC(高速液体クロマトグラフィー)

PCRs

:ポンプ:キャリヤー:反応溶液

SRCD

:試料導入器:反応カラム:検出器

Rec.W:記録計:廃液

PMS

:ポンプ:移動相:試料導入器

SCD:分離カラム:検出器

Rec.W:記録計:廃液

P

P

P

C

RS1

RS2

S SD

Rec.

W C

RS

RCW MP

P

D

Rec.

SSC

WP D

Rec.

で人手不足が深刻であった。製品管理

で利用される化学分析の需要は、製品

が出来上がってから分析する「後追い

分析」から少しでもリスクを避けるた

めの「現場(オンサイト)分析」への

移行や「自動分析化」であり、その方

法の一つが流れを利用する分析技術で

ある(図1)。そこで、多成分の同時

分析が可能なHPLCに着目したが、

既にこの技術の研究は多方面で行われ

ていて、これから参入するのは困難の

ように見受けられた。一方、FIAは

基本的な研究は行われていたが、研究

する余地は多く残されていたので、先

駆者の方に相談しながらこの研究を始

めた。FIAとは試料導入部、化学反

応部及び検出部をテフロン製で内径が

0・5㎜程度のチューブで接続し、チ

ューブ内を流れる間に生成した反応

物を検出して化学分析する方法であ

る。この流れ系を組み立てるのに使

用するパーツはHPLCと共通であ

り、これまでの経験を生かすことがで

きた。単純な流路の組み合わせでの研

究は進んでいたので、AAの研究から

ヒントを得た反応の場を反応カラムと

する新しい構想のFIAを研究するこ

とにした。カラムにクロム酸バリウム

(BaCrO4

)の沈殿粉末を詰め、硫酸

イオンとクロム酸イオンの置換反応を

利用した硫酸イオンの定量法を皮切り

に、シアン化物やフッ化物イオンなど

の陰イオンを中心にそれらの定量法を

開発し発表した。その後、キトサンの

表面のアミノ基を利用して多種類の酵

素をキトサンに修飾し、その固定化酵

素をカラムに充塡して調製した反応カ

ラムを組み込んだFIAで臨床検査や

生体関連試料に適用できる分析法を開

発した。この研究は今でも循環式のF

IAと組み合わせて、環境に優しい分

析法として続けている。また、最近で

は(一社)日本鉄鋼協会のスキルフリ

ー分析研究会から誘いを受け、鉄鋼中

に存在する介在物のスキルフリー分析

を研究している。鉄鋼の特性に微量の

介在物が影響することから、これらの

分析技術の開発は重要になっている。

また、鉄鋼会社の品質管理部門では、

高度な分析技術を身に付けた技術者の

激減や人員削減の影響が深刻である。

研究会では大学で化学の勉強をしてい

ない人でも簡単に化学分析ができる技

術開発をテーマとしているが、実際の

鉄鋼分析は非常に難しく、分析化学を

経験している者でも簡単には正確な定

量値が得られないのが現状である。

今後の分析化学に思いを寄せて

 機器分析の多くは物理的な現象を測

定するもので、比較分析なので標準物

質がないと定性・定量分析は不可能で

あり、とくに最近の装置はブラックボ

ックス化も著しい。今でも化学反応へ

の関心は高いが、自分の目で確かめな

がら測定ができる化学反応に基づいた

分析法は、一般的に感度や利便性の点

で劣るため主役の座を追われつつあ

る。また、装置を入手できれば目的成

分の正しい分析値が誰にでもすぐに得

られるという思い込みや、測定原理な

ど関係なくデータさえ得られれば良い

という考え方が、世間を席巻している

ように感じられる。時代の流れで致し

方ないが、今の分析化学の研究内容は

化学であって化学ではないものも多

く、科学技術の支え役である分析化学

を目指す人や、化学反応に夢を託す人

が減ってきているのも気がかりな点の

一つである。

さくらがわ あきお1950 年9月 埼玉県に生まれる1976 年3月 日本大学大学院理工学研究科工業化学専攻修士課程修了1976 年4月 日本大学理工学部助手(工業化学科勤務)1991 年4月 日本大学理工学部専任講師(工業化学科勤務)1997 年4月 日本大学理工学部助教授(工業化学科勤務)2001 年4月 日本大学短期大学部(船橋校舎)教授(応用化学科勤務)2006 年4月 日本大学理工学部教授(物質応用化学科勤務)

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理 工 サ ー キ ュ ラ ー   N o . 1 6 1 12

 

2014年5月24日12時5

分14秒(日本標準時)に、超

小型人工衛星『SPROUT』

( SPaceResearchOnUnique

Technology )

が「だいち2号」

(ALOS-

2)の相乗り小型

副衛星としてH-

ⅡAロケッ

ト24号機で種子島宇宙センタ

ーから打ち上げられました。

SPROUTは大きさ約20㎝

立方、質量7・1㎏の衛星で、

宇宙空間で薄い膜面を展開す

ることがメーンミッションで

す。膜を広げて空気抵抗を大

きくすることで、大気圏まで

落下させて燃え尽きることが

でき、近年問題となっている

スペースデブリ(宇宙ゴミ)

対策に膜面が有用であると実

証することをミッションとし

て掲げています。

 

私は打ち上げ後に行われる

記者会見にSPROUTチー

ムの代表として参加するため

に、種子島宇宙センターに行

きました。午前中から各新聞

社の取材対応をして、SPR

OUTのミッションの意義に

ついて聞かれました。記者の

方々は必ずしも衛星に関する

知識がある人たちばかりでは

ないため、SPROUTのミ

ッションの素晴らしさを伝え

ることの難しさを実感しまし

た。取材対応後は、打ち上げ

関係者や記者の方々とともに

竹崎展望台にて打ち上げを見

学しました。映像とは異なり、

現場で見る打ち上げの音や振

動は、実際に見た人にしかわ

からない感動がありました。

また、自分の手掛けた人工衛

星が目の前で打ち上がってい

く様に、感動と同時に衛星が

動作するか不安を覚えました。

衛星放出時刻からは、SPR

OUTが無事に放出され電波

が出ているのか不安で、何度

も地上局にいる開発メンバー

と連絡をとりました。海外の

アマチュア無線家からの報告

や、さらには日本大学の地上

局がSPROUTと通信をし

て正常に動作していることが

確認され、本当にホッとしま

した。記者会見には、ほかの

相乗り小型副衛星の代表者で

あるRISING-

2の高橋

先生(北海道大学)やUNI

FORM-

1の秋山先生(和

歌山大学)、SOCRATES

の松本様(AES)とともに

登壇しました。記者会見は、

各衛星の概要と現状報告、そ

の後に質疑応答といった形式

で進んでいきました。私は今

までカメラのフラッシュをた

くさんに浴びながら話す機会

などなかったので緊張しまし

たが、多くの人にSPROU

Tの魅力を伝えるために自分

が発表できたことは、良い経

験となりました。

 

この打ち上げ成功により、

2008年に打ち上げられて

現在も運用中のSEEDSに

続き、SPROUTは日本大

学で2機目の衛星となりまし

た。今後、2015年1月に

予定している世界初の複合膜

面構造物の展開を成功させ、

宇宙インフレータブル構造が

今後の宇宙開発に必要な基盤

技術に成り得る有用な技術で

あることを内外にアピールし、

当該分野の技術発展に大きく

寄与したいと思います。

超小型人工衛星『SPROUT』 打ち上げ成功!

2014 年5月 24 日

学 生 記 者 が 行 く !

学生記者013

学生記者022

宇宙構造物システム研究室(宮崎研

究室)に所

属しています。自分の携わった人工

衛星で地球

を撮影することを夢に開発してきま

した。

三田恭平航空宇宙工学専

博士前期課程2年

打ち上げ当日の日大地上局(船橋校舎)打ち上げの様子©JAXA実際の衛星

『SPROUT』のポスター

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理 工 サ ー キ ュ ラ ー   N o . 1 6 113

ワンダーフォーゲル部

 ワンダーフォーゲルというのは、山登りをするだけではなく自然の中に入っていき普段は見られない景色を見る、というのが醍醐味です。そこが「山が専門」の山岳部とは違うところです。春休みには沖縄や小笠原諸島へ行って、釣りやシュノーケリングもします。

 7月までは、夏合宿前の養成を丹沢や奥多摩で2~3回行います。夏合宿では、2,000m ~3,000m の山を縦走するので、そこでバテないようにするためです。初心者で入る1年生がほとんどですが、

基礎的なキャンピングの知識から教えますし、日々のトレーニングの積み重ねや山に慣れることによって確実に体力がつき、上級生になれば自然に下級生のフォローができるようになります。6~8人のパーティを組んで山に登りますが、「つらい」と感じる前に声を掛けあったり、時には歌を歌ったりして、モチベーションを上げるようにしています。 ワンダーフォーゲル部は、今の3年生

で 63 期という歴史あるサークルです。古いOBが建てた山小屋が長野県にあり、10月にはそこの清掃を兼ねて「山小屋ワーク」を行い、OBの皆さんと交流を図っています。在学生同士も仲が良く、「雰囲気が良いから」「面白い人が多くて楽しそうだから」と入部する人が多いです。みんなでワイワイ言いながら一緒に山に登ると一体感が生まれますし、何よりも頂上に着いたときの達成感は最高です。

国際親善会 国際親善会のメンバーは、全員中国人留学生です。海洋建築工学科や建築学科の学生が多いです。毎週月曜日、理工スポーツホールでバスケットボールの練習をしています。毎年数回、他大学や日大の他学部の留学生サークルと合同で試合を開催しているので、そのための練習を行っています。全員バスケットボールが上手というわけではないのですが、経験者が先頭に立って練習をしているので、他大学との試合では結構負けません。

 バスケットボールの練習だけではなく、たまにみんなでするバーベキューや、試合後の打ち上げも楽しみです。2年生になると学科によって校舎が分かれるため、毎年1年生の部員数が一番多いですし、とくに4月はみんなの出席率が高いので、新歓コンパはものすごく大人数になります。習志野祭(学部祭)では毎年、模擬店で手づくり餃子を出しています。皮から手づくりですが、とくに練

習しなくても、部員はみんな作れます。 これまでやっていなかったのですが、今年はぜひ夏休みに合宿がしたいです。夏休みは長いので、みんな故郷に帰ったり、アルバイトを入れてしまったりしてこれまで全然できなかったのですが、ほかのサークルはみんな合宿をしていて楽しそうなので、今後はこのサークルでもぜひ取り入れたいと思っています。

File no. 45

File no. 46

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理 工 サ ー キ ュ ラ ー   N o . 1 6 1 14

『笑うカイチュウ 寄生虫博士奮闘記』藤田紘一郎著/講談社文庫

 この本の初版は 20年ほど前のため、もしかしたら知らない方がおられるかもしれません。著者は東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎先生で、最近もさまざまな本を書かれていますが、本書や本書の続編にあたる『空飛ぶ寄生虫』や、『ウッふん』『えっヘン』などのエッセイ集は、専門的な知識は一切必要ない上、非常に読みやすい本となっています。「寄生虫」と聞くと「汚い」「醜い」イメージを持ちがちですが、そのイメージが大きく変わるかと思いますし、いろいろと考えさせられる本でもあります。 (一般教育化学系列助教 大宅淳一)

『村上海賊の娘』(上・下)和田 竜著/新潮社

 私たちが知っている歴史には、語られていないエピソードが多数存在しています。今回紹介するのは、織田信長が 10年もかけて攻略した石山合戦の中のひとつの話です。 主人公は村上水軍の一人娘で、名を「景

キョウ」といいます。彼女は旦

那の理想が高く婚期を逃し、自ら海賊行為をする元気溌剌な女性として描かれています。作品の中では彼女の喜怒哀楽が細かく描写されていて、戦のシーンでは猛々しく強く、乙女としての一面も見せるなど、彼女の魅力が存分に引き出されています。史実を参考に執筆されているためリアリティーがとても高く、面白い作品となっています。 (精密機械工学専攻博士前期課程1年 日高智浩)

『サロゲート』 ロボットがすべての社会生活を代行してくれる、未来世界を舞台にした作品です。人類は家から一歩も出ることなく、自分とリンクしたロボットを遠隔操作することで安全な生活をしていましたが、ある日不可解な事件が起きます。 現在では、ロボットと人間の相互作用に基づくコミュニケーションの実現性が高まっているため、将来、映画の世界が現実になりそうで興味深かったです。また、人間同士が直接対話しないという映画の設定が、現代の社会問題であるネット依存と通ずるものがあり、人間関係の大切さを知ることができます。主演のブルース・ウィリスの髪形も必見です。 (電気工学専攻博士前期課程1年 新井聡哉)

「サロゲート」ブルーレイ2,381円 +税発売元:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

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理 工 サ ー キ ュ ラ ー   N o . 1 6 115

学生課夏季休暇を迎えるにあたって夏季休暇は、とかく気持ちが緩むことがあり、海、山、行楽地等において事故に直接結びつく危険性を帯びた時期です。夏季休暇を、楽しく有意義に過ごすためにも、次のことについて十分注意してください。

大学生として良識と責任ある行動を旅行など社会における行動は、最高学府の学生であることを常に認識し、良識と責任ある態度を堅持してください。社会常識から逸脱した行為は、厳に慎んでください。また、万が一交通事故等に遭遇した際には、119番通報など負傷者救護措置と警察への通報を行ってください。

研修・合宿等における諸注意研修・合宿等を予定する学生団体は、事前に実施計画書添付の「行事届」を学生課に提出してください。無理のない計画を立て、必ず実施前に学生課に相談するようにしてください。また、移動に際しては公共交通機関を利用するよう心掛けてください。

日本大学傷害事故等給付金規程の適用行事届を提出した研修・合宿等における傷害事故については、大学の傷害事故等給付金規程の適用が受けられます。ただし、適用対象は本来の活動中の事故だけであり、移動、休憩(自由時間)、親睦旅行、懇親会(飲酒が伴うもの)や本人の責任に起因する事故等は適用外となるので、任意の保険加入で事故に備えてください。

海外渡航海外渡航をする場合は、「海外渡航届」を学生課に提出してください。必要に応じた保険加入に加え、渡航先での感染症の流行状況や治安等を「外務省海外安全ホームページ」で確認し、その程度によっては、渡航先の見直しや自粛が必要となる場合がありますので、あらかじめ学生課に問い合わせてください。また、中国で流行中の鳥インフルエンザA(H7N9型)については、帰国時に発熱(38℃以上)や咳など呼吸器系の症状がみられる場合には検疫所へ相談し、帰宅後に同様の症状が出たら直ちに最寄りの保健所に相談するとともに、学生課(保健室)へ連絡してください。

飲酒・喫煙の注意未成年者による飲酒・喫煙の禁止および指定場所以外での喫煙禁止はもちろんのこと、飲酒強要、イッキ飲み、早飲み等過度の飲酒行為は重大事故につながることを深く認識し、本学学生として一層節度ある行動を心掛けてください。

感染症新型インフルエンザ、風しん、結核など感染症については、手洗い、うがいの励行等普段の健康管理を怠らないよう心掛けてください。体調を崩し、発熱や咳などの諸症状が出たら、速やかに医療機関を受診し、感染が判明したら必ず学生課(保健室)へ連絡してください。

研究事務課平成 27 年度覚書提携校派遣 交換留学生募集日本大学理工学部は、教育・研究交流に関する覚書を締結している覚書提携校との交換留学制度があります。平成 27年度に理工学部覚書校へ派遣する交換留学生の募集を行いますので、希望者は募集要項をよく読んで応募してください。

1 募集覚書提携校(国名および渡航開始時期) ①西安建築科技大学(中国、平成 27年度内)

 ②西安理工大学(中国、平成 27年度内)

 ③韓国海洋大学校海洋科学技術大学・工科大学(韓国、平成 27年3月~)

 ④全北大学校工科大学(韓国、平成 27年3月~)

 ⑤ダルムシュタット工科大学(ドイツ、平成 27年4月~)

  *同大学大学院とのデュアル・ディグリー・プログラム参加学生の募集は別途実施。

 ⑥フィリピン工科大学(フィリピン、平成 27年6月~)

 ⑦ミネソタ大学理工学部(アメリカ、平成 27年9月~)

2 留学期間 1年間以内(中国への留学は1カ月程度)

3 応募資格  大学院理工学研究科および理工学部に在籍する学生(ダルムシュタット工科大学は大学院理工学研究科に在籍する学生)

4 募集締切日および提出先 募集締切日:平成 26年9月 29日(月) 書類提出先:研究事務課(駿河台校舎 10号館

3階 03-3259-0997)

注:TOEFL®の一定レベル以上【iBT 61 点、ミネソタ大学理工学部は iBT 79 点を目安】のスコア提出が条件です。

詳細は研究事務課までお問い合わせください。 募集要項・願書は研究事務課 HP よりダウンロードできます。http://www.kenjm.cst.nihon-u.ac.jp

※ TOEFL®はエデュケーショナルテスティングサービスの登録商標です。

就職指導課就職率 95%を達成平成 26 年 3 月に卒業した学部生の就職率は95.02%でした。就職指導課では、個別のカウンセリングから企業セミナーまでさまざまな形態の就職支援を通して学生をバックアップ。平成 24 年、25 年の超就職氷河期でも 90%以上の安定した就職率を維持しています。

図書館事務課第 25 回日本大学理工学部図書館公開講座開催平成 26年6月 17日(火)、理工学部駿河台校舎1号館で図書館公開講座を開催しました。今回の講座は「洋服を着て 150 年、西洋服装史から学ぶドレスコード ―すぐに実践おしゃれな人―」と題し、一般教育教室教授・伊豆原月絵先生が文化やマナーに基づいた衣服の規則性について、絵画やコレクションの資料から成り立ちを読み解き、実践的なおしゃれの基礎知識についてお話しされました。

announcement事務局からの お知らせ

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 理工学部では、2015 年4月から駿河台校舎6・9号館の解体工事を開始し、同所に地上 18 階地下3階・延床面積約 26,800㎡の南棟(仮称)を建設する予定です。 理工学部の今と未来を見据えたシンボリックな建築で、都心にあっても潤いとゆとりのある学習環境を実現します。また、地域に開いた施設を目指し、環境にやさしく安全性を高め、誰もが安心して利用できる施設とします。 2020 年に創設 100 周年を迎える理工学部の新たな“顔”に、ご期待ください。

 今回の特集は「海のエネルギー」。海洋の持つ再生可能エネルギーの将来展望が、わかりやすく記されている。その障害のひとつはやはり漁業権との問題のようだが、海洋資源の探査や漁業資源の確保などと連動させながら、自然に優しいエネルギーの開発と活用が望まれる。CST+な人では、本学出身の数学教員・栗田正行さんの波瀾万丈な半生が綴られている。あらゆる仕事に正面からぶつかる姿勢から生まれた経験と知識を生かして、ご自身の世界を作り上げられていることに感銘を受ける。 (重枝)

発  行 広報委員長・編集長

日本大学理工学部広報委員会 重枝 豊編集委員会藤井敬宏 関 文夫 下川澄雄 佐藤光彦 坪井塑太郎 岡田智秀 鈴木康方齊藤 健 出井 裕 大貫進一郎 岩田展幸 木原雅巳 谷川 実 浅井朋彦保谷哲也 長峰康雄 高橋亮輔 諏訪部健 田中和仁 金木聰和 永田康介小池文夫 塚田 淳 鈴木智子編集協力株式会社ムーンドッグ〈長谷川香 細田明子 熊木美千代 伊藤涼子〉

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