直接変換型ディジタルマンモグラフィにおける直接変換型...

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直接変換型ディジタルマンモグラフィにおける 直接変換型ディジタルマンモグラフィにおける 直接変換型ディジタルマンモグラフィにおける 直接変換型ディジタルマンモグラフィにおける グリッドレス撮影の画質 グリッドレス撮影の画質 グリッドレス撮影の画質 グリッドレス撮影の画質 要旨 要旨 要旨 要旨 直接変換型ディジタルマンモグラフィにおいて,グリット有,Mo/Mo(タ ーゲット/フィルタ)とW/Rh及びMo/Moのグリッドレスの画質を比較検 討した.40 mm厚(RMI156ファントム)と25 mm厚(RMI156ファントム 蝋部分+20 mm厚アクリルファントム)を,Mo/Moでは28kV,W/Rhでは29 ~33kVの管電圧にて,平均乳腺線量(AGD)を変化させ撮影した.画像か ら粒状性,模擬腫瘤コントラストを測定し,解像特性とからコントラス トを考慮した信号対雑音比(SNRc)を算出した.40 mm 厚では,Mo/Mo, AGD=2.28mGy に対してグリッド無は同等のSNRcを示した.25 mm厚では, AGD=1.41mGy のとき,グリッド無は18.3%,W/Rhでは7%のSNRc向上を 示した.25mm 厚ではグリッドレス撮影が画質向上に寄与することが示唆 された. Ⅰ.緒言 Ⅰ.緒言 Ⅰ.緒言 Ⅰ.緒言 マンモグラフィ装置のターゲット/フィルタは,乳房厚が厚くない場合にMo/Moが選択されるこ とが多い.これに対して,W/Rhを積極的に使用して,被ばく低減と画質維持が可能であるという 報告がなされ[1],W/Rh のみを装備する装置も存在する.また,一般的に使用される散乱線除去 グリッドを除去して,さらに被ばく低減を得る試みもある[2,3].そこで富士フィルム社製直接変 換型ディジタルマンモグラフィ,Amuletを用いて,グリッドレスの画質を,散乱線と被写体コン トラストを考慮しつつ検討した. Ⅱ.使用機器 Ⅱ.使用機器 Ⅱ.使用機器 Ⅱ.使用機器 ・a-Se直接変換方式マンモグラフィ装置 MAMMOMAT NovationDR (SIEMENS) - Target/filter:Mo/Mo,W/Rh - Moフィルタ厚:30μm, Rhフィルタ厚:50μm - グリッド密度:31本/cm, グリッド比:1/5 ・RMI156ファントム (Phantom laboratory) ・アクリルファントム ・線量計 Radcal社製 Accu Dose (チェンバ:MODEL 10×6-6M) Ⅲ.方法 Ⅲ.方法 Ⅲ.方法 Ⅲ.方法 Table 1 ファントム厚と撮影線量 1.ファントム撮影 RMI156ファントムをTable 1の 条件にてグリッド有・無で撮影 した. 40 mm厚は,RMI156ファントム にて,25 mm厚は,RMI156ファ ントムろう部分+10 mm 厚 PMMA ファントム2枚で構成した. 2.23 29 40 W/Rh 0.78~1.73 1.49 25 0.37~1.49 0.55~1.41 1.41 25 0.91~2.28 2.28 29 40 Mo/Mo 平均乳腺線量(mGy) 管電圧(kV) グリッド 厚さ(mm) target/filter 2.23 29 40 W/Rh 0.78~1.73 1.49 25 0.37~1.49 0.55~1.41 1.41 25 0.91~2.28 2.28 29 40 Mo/Mo 平均乳腺線量(mGy) 管電圧(kV) グリッド 厚さ(mm) target/filter

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  • 直接変換型ディジタルマンモグラフィにおける直接変換型ディジタルマンモグラフィにおける直接変換型ディジタルマンモグラフィにおける直接変換型ディジタルマンモグラフィにおける

    グリッドレス撮影の画質グリッドレス撮影の画質グリッドレス撮影の画質グリッドレス撮影の画質

    要旨要旨要旨要旨

    直接変換型ディジタルマンモグラフィにおいて,グリット有,Mo/Mo(タ

    ーゲット/フィルタ)と W/Rh 及び Mo/Mo のグリッドレスの画質を比較検

    討した.40 mm 厚(RMI156 ファントム)と 25 mm 厚(RMI156 ファントム

    蝋部分+20 mm 厚アクリルファントム)を,Mo/Mo では 28kV,W/Rh では 29

    ~33kV の管電圧にて,平均乳腺線量(AGD)を変化させ撮影した.画像か

    ら粒状性,模擬腫瘤コントラストを測定し,解像特性とからコントラス

    トを考慮した信号対雑音比(SNRc)を算出した.40 mm 厚では,Mo/Mo,

    AGD=2.28mGy に対してグリッド無は同等のSNRcを示した.25 mm厚では,

    AGD=1.41mGy のとき,グリッド無は 18.3%,W/Rh では 7%の SNRc 向上を

    示した.25mm 厚ではグリッドレス撮影が画質向上に寄与することが示唆

    された.

    Ⅰ.緒言Ⅰ.緒言Ⅰ.緒言Ⅰ.緒言

    マンモグラフィ装置のターゲット/フィルタは,乳房厚が厚くない場合に Mo/Mo が選択されるこ

    とが多い.これに対して,W/Rh を積極的に使用して,被ばく低減と画質維持が可能であるという

    報告がなされ[1],W/Rh のみを装備する装置も存在する.また,一般的に使用される散乱線除去

    グリッドを除去して,さらに被ばく低減を得る試みもある[2,3].そこで富士フィルム社製直接変

    換型ディジタルマンモグラフィ,Amulet を用いて,グリッドレスの画質を,散乱線と被写体コン

    トラストを考慮しつつ検討した.

    Ⅱ.使用機器Ⅱ.使用機器Ⅱ.使用機器Ⅱ.使用機器

    ・a-Se 直接変換方式マンモグラフィ装置 MAMMOMAT NovationDR (SIEMENS)

    - Target/filter:Mo/Mo,W/Rh

    - Mo フィルタ厚:30μm, Rh フィルタ厚:50μm

    - グリッド密度:31 本/cm, グリッド比:1/5

    ・RMI156 ファントム (Phantom laboratory)

    ・アクリルファントム

    ・線量計 Radcal 社製 Accu Dose (チェンバ:MODEL 10×6-6M)

    Ⅲ.方法Ⅲ.方法Ⅲ.方法Ⅲ.方法 Table 1 ファントム厚と撮影線量

    1.ファントム撮影

    RMI156 ファントムを Table 1 の

    条件にてグリッド有・無で撮影

    した.

    40 mm 厚は,RMI156 ファントム

    にて,25 mm 厚は,RMI156 ファ

    ントムろう部分+10 mm 厚 PMMA

    ファントム 2 枚で構成した.

    2.2329

    有40

    W/Rh0.78~1.73無

    1.49有25

    0.37~1.49無

    0.55~1.41無

    1.41有25

    0.91~2.28無

    2.2829

    有40

    Mo/Mo

    平均乳腺線量(mGy)管電圧(kV)グリッド厚さ(mm)target/filter

    2.2329

    有40

    W/Rh0.78~1.73無

    1.49有25

    0.37~1.49無

    0.55~1.41無

    1.41有25

    0.91~2.28無

    2.2829

    有40

    Mo/Mo

    平均乳腺線量(mGy)管電圧(kV)グリッド厚さ(mm)target/filter

  • 2.定量的画質評価

    (1)コントラスト測定

    Fig.1のように模擬腫瘤のregion of interest(ROI)の平均値Mとその近傍のbackground の ROI

    の平均値 B を測定し,次式(1)よりコントラスト C を算出した.

    MB

    MBC

    +−= ・・・(1)

    (2)解像特性の測定

    エッジ法により,解像特性である MTF(modulation

    transfer function)を測定した(1mm 厚,タングステン板使

    用).測定法は,「日本放射線技術学会監修 標準ディジタ

    ル X線画像計測」に準拠した.

    (3)ノイズ特性の測定

    ファントムの平坦部分に 512×256 の ROI を設定し,

    256x256の2領域より2次元フーリエ変換法を用いて粒状性

    を表す NNPS(normalized noise power spectrum)を測定し

    た.測定方法は「日本放射線技術学会監修 標準

    ディジタル X線画像計測」 に準拠した.

    Fig.1 コントラスト測定における ROI設定

    (4)散乱線とコントラストを考慮した SNRcの算出

    方法 2(1)~(3)で得られたコントラスト・MTF・NNPS を用いて,下式(2)より定量的画質指標 SNRcを算出した.

    NNPS

    MTFSNRc

    22 C×= ・・・(2)

    Ⅳ.結果Ⅳ.結果Ⅳ.結果Ⅳ.結果

    2.定量的画質評価

    (1)模擬腫瘤のディジタル値計測によるコントラスト測定

    Table 1 に模擬腫瘤のディジタル値計測によるコントラスト測定の結果を示す.グリッドレス

    撮影ではコントラストが低下した.

    Table 1 模擬腫瘤のディジタル値計測によるコントラスト測定

    target/filter 厚さ(mm) グリッド 管電圧(kV) コントラスト

    Mo/Mo

    40 有

    28

    1

    無 0.73

    25 有 1

    無 0.83

    W/Rh

    40

    29 0.84

    31 0.80

    33 0.74

    35 0.70

    無 29 0.53

    25

    有 29 0.74

    31 0.78

    無 29 0.62

    腫瘤のROI

    BKGのROI

  • (2)散乱線とコントラストを考慮した SNRcの算出

    Fig.2 に 40 mm 厚での SNRcの測定結果を,Fig.3 に 25mm 厚での測定結果を示す.

    0.0E+00

    2.0E+05

    4.0E+05

    6.0E+05

    8.0E+05

    0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0

    空間周波数 (cycles/mm)

    SNRc

    Mo/Mo 28kV グリッド有 2.28mGy

    Mo/Mo 28kV グリッド無 2.28mGy

    W/Rh 29kV グリッド有 1.73mGy

    W/Rh 29Kv グリッド無 1.73mGy

    Fig.2 40mm 厚における SNRcの結果

    0.0E+00

    2.0E+05

    4.0E+05

    6.0E+05

    8.0E+05

    1.0E+06

    0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0

    空間周波数 (cycles/mm)

    SNRc

    Mo/Mo 28kV グリッド有 1.41mGy

    Mo/Mo 28kV グリッド無 1.41mGy

    W/Rh 29kV グリッド有 1.48mGy

    W/Rh 29kV グリッド無 1.49mGy

    Fig.3 25mm 厚における SNRcの結果

    ・40 mm 厚について

    同一線量下(2.28mGy)で Mo/Mo グリッド有と無の SNRc はほぼ一致した.W/Rh グリッド無は装置

    の関係上同画質となる線量まで撮影ができなかったが,グラフの傾向から同一線量下で画質が向

    上するとは考えにくい.得られたファントム画像を Fig. 4 及び 5 に示す.

    Fig. 4 Mo/Mo グリッド有(2.28mGy) Fig. 5 Mo/Mo グリッド無(2.28mGy)

    ・25mm 厚について

    同一線量下(約 1.41mGy)で Mo/Mo グリッド有に対してグリッド無では 18.3%,W/Rh グリッド無

    では 7.0%, SNRcが向上した.得られた画像を Fig. 6~8 に示す.

  • Fig. 6 Mo/Mo グリッド有(1.41 mGy)

    Fig. 7 Mo/Mo グリッド無(1.41 mGy) Fig. 8 W/Rh グリッド無(1.49 mGy)

    Ⅴ.考察Ⅴ.考察Ⅴ.考察Ⅴ.考察

    40mm 厚について,Mo/Mo 2.28mGy グリッド有の画像に対して,グリッド無の画像は同等の SNRcを示したことから,撮影時のグリッドの必要性については疑問である.

    25mm 厚について,Mo/Mo 1.41mGy グリッド有の画像に対して,グリッド無の画像では 18.3%,

    グリッド無の W/Rh の画像では 7.0%の SNRc向上を示したことから,どちらの組合せでもグリッド

    レス撮影は画質が向上すると考えられた.

    しかし,散乱線の影響と見られるエッジ部のコントラスト変化があり,その補正処理の検討が

    必要であると考えられた.

    Ⅵ.結語Ⅵ.結語Ⅵ.結語Ⅵ.結語

    直接変換型ディジタルマンモグラフィにおいて,グリットの有無が Mo/Mo,W/Rh(ターゲット/

    フィルタ)の画質に与える影響を検討した.

    40 mm 厚ではグリッドレス撮影は同等な画質となるが,25mm 厚ではグリッドレス撮影が画質向

    上に寄与することが示唆された.

    ⅧⅧⅧⅧ. . . . 参考文献参考文献参考文献参考文献

    1) Bernhardt P, Mertelmeier T, Hoheisel M. X-ray spectrum optimization of full-field digital

    mammography: simulation and phantom study. Med Phys. 2006 Nov;33(11):4337-49.

    2) Diekmann F. Diekmann, S. Berzeg, S. Bick, U. Fischer, T. and Hamm B.,“Dose reduction

    through gridless technique in digital full-field mammography”,Fortschritte

    Röntgenstrahlen 175, 769–774 (2003). (article in German).

    3) Gennaro G., Katz L., Souchay H., Klausz R., Alberelli C., and di Maggio C.,“Grid removal

    and impact on population dose in full-field digital mammography,”Medical Physics 34(2),

    547–555 (2007).