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〈みずほ〉 の財務運営の考え方(普遍的な原則) 〈みずほ〉 は、 「総合金融コンサルティンググループ」として、お客さま、 日本や世界各国の経済・産業、株主のみなさまを中心とする多様な ステークホルダーの持続的な成長に貢献することを目指しています。 これを実現するため、安定的な収益構造と事業環境の変化に耐え 得る強固な財務基盤を構築し、お客さまと経済・産業の成長を実現する 健全なリスクテイク機能を発揮することを財務運営の基本的な考え方と しています。 2017年度の総括 2017年度は世界および日本経済が堅調に推移しましたが、マイナス 金利政策継続による国内資金利益の減少や、米国の利上げに伴う外債 キャリー益の減少、含み損処理による債券ポートフォリオの健全化オペ レーション実施といった要因により、連結粗利益は前年度比約8%減少 の19,153億円となりました。 また、営業経費につきましては、経費コントロールを徹底したものの約 1%増の14,889億円となり、結果として稼ぐ力、すなわち基礎的収益力 であるところの連結業務純益は前年度比で約3割減益となる4,578億 円となりました。今後も厳しい経営環境の継続が見込まれるなかで、基 礎的収益力の強化が重要な課題となっております。 安定的な収益構造と強固な財務基盤を構築し、 健全なリスクテイクとソリューション提供を通じて、 お客さまと社会の持続的成長に貢献します。 梅宮 真 取締役 執行役常務 財務・主計グループ長 (グループCFO) 25 みずほフィナンシャルグループ 私たちが目指すもの CFOメッセージ

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Page 1: CFOメッセージ - みずほフィナンシャルグループ...〈みずほ〉の財務運営の考え方(普遍的な原則) 〈みずほ〉は「総合金融、 コンサルティンググループ」として、お客さま、

〈みずほ〉の財務運営の考え方(普遍的な原則)

 〈みずほ〉は、「総合金融コンサルティンググループ」として、お客さま、

日本や世界各国の経済・産業、株主のみなさまを中心とする多様な

ステークホルダーの持続的な成長に貢献することを目指しています。

 これを実現するため、安定的な収益構造と事業環境の変化に耐え

得る強固な財務基盤を構築し、お客さまと経済・産業の成長を実現する

健全なリスクテイク機能を発揮することを財務運営の基本的な考え方と

しています。

2017年度の総括

 2017年度は世界および日本経済が堅調に推移しましたが、マイナス

金利政策継続による国内資金利益の減少や、米国の利上げに伴う外債

キャリー益の減少、含み損処理による債券ポートフォリオの健全化オペ

レーション実施といった要因により、連結粗利益は前年度比約8%減少

の19,153億円となりました。

 また、営業経費につきましては、経費コントロールを徹底したものの約

1%増の14,889億円となり、結果として稼ぐ力、すなわち基礎的収益力

であるところの連結業務純益は前年度比で約3割減益となる4,578億

円となりました。今後も厳しい経営環境の継続が見込まれるなかで、基

礎的収益力の強化が重要な課題となっております。

安定的な収益構造と強固な財務基盤を構築し、

健全なリスクテイクとソリューション提供を通じて、

お客さまと社会の持続的成長に貢献します。

梅宮 真取締役 執行役常務財務・主計グループ長

(グループCFO)

25 みずほフィナンシャルグループ

私たちが目指すもの

CFOメッセージ

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Page 2: CFOメッセージ - みずほフィナンシャルグループ...〈みずほ〉の財務運営の考え方(普遍的な原則) 〈みずほ〉は「総合金融、 コンサルティンググループ」として、お客さま、

 一方で、与信関係費用は、過去に計上していた貸倒

引当金の戻入れにより1,563億円の利益を計上、株

式等関係損益についても、政策保有株式の売却推進

や市場部門でのETF関係損益の計上により2,720億

円の利益となり、以上の結果、親会社株主に帰属する

当期純利益は、前年度から約4%減益の5,765億円

と、業績予想の5,500億円を達成しております。

 自己資本につきましては、最重要指標の1つと位置

づけている連結普通株式等Tier1比率(CET1比率)※1

が10.15%と中期経営計画の目標である10%程度に

一年早く到達する等、着実に向上しております。

2018年度の見通しと中期経営計画の進捗

 2018年度も低金利環境が継続し、国内資金利益

の縮小が見込まれますが、One MIZUHO戦略の推進

を通じた非金利収益の増強やリスクテイク力の強化、

業務プロセス高度化による生産性向上等により打ち

返していくことで、基礎的収益力を示す連結業務純益

(含むETF関連損益等)で前年度比約1,600億円増

加の7,000億円の達成を目指します。

 与信関係費用については、2017年度に一過性要

因によって大きく利益計上したところからは減益とな

る200億円の費用計上を見込んでおり、親会社株主

純利益は2017年度並みの5,700億円を目指します。

 足許の経営環境は現在の中期経営計画を策定し

た時よりも一段と厳しさを増しておりますが、2018年

度は基礎的収益力を着実に高める「反転攻勢の年」

にしてまいります。残念ながら、利益目標や経費率目

標等については達成が難しい状況ですが、一方で今

後の反転攻勢の基礎となる連結普通株式等Tier1比

率(CET1比率)※1と政策保有株式の削減目標につい

ては確りとやりきる計画としています。

4,578億円

前期比▲2,055億円

■ 2017年度連結業務純益

5,765億円

前期比▲269億円

■ 2017年度親会社株主に帰属する当期純利益

■ 財務目標(2018年度)

CET1比率※1

10%程度

親会社株主純利益RORA

0.9%程度

連結ROE※2

8%程度

グループ経費率※3

政策保有株式

18年度計画

60%台後半当初計画

60%程度

5,500億円削減※4

2015年度 2016年度 2017年度

CET1比率※1 8.77% 9.27% 10.15%

連結ROE※2 10.0% 8.5% 7.7%

親会社株主純利益RORA 1.0% 0.9% 0.9%

経費率※3 60.0% 66.0% 72.1%

政策保有株式の削減※4 1,157億円削減 2,753億円削減 3,980億円削減

※1. バーゼルⅢ完全施行ベース(現行規制を前提)、その他有価証券評価差額金を除く※2. その他有価証券評価差額金を除く※3. グループ合算※4. 国内上場株式、取得原価ベース、2015年度から2018年度の累計額

中期経営計画の目標に対する過年度推移

26統合報告書 ディスクロージャー誌 2018

私たちが目指すもの CFOメッセージ

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強靭な財務体質の確立に向けて

抜本的構造改革2017年11月に発表した抜本的構造改革の狙いは、10年後を見据え

たグループの持続的成長と将来の競争優位性確保であり、CEOメッ

セージにもあるように単なる経費の削減ではなく、基礎的収益力を強化

するためのプランですが、あえてCFOという立場で経費コントロールにフ

ォーカスさせていただきますと、組織・人員の最適化、システム構造改革、

チャネルの再構築を通じ、次期システム関連償却費を除く経費水準につ

いて、2021年度までに約1,000億円程度、2024年度までに1,000億円

台半ばの削減を目指していくものであり、2018年度は抜本的構造改革

の実質初年度として、着手可能なものから実行してまいります。(⇒P 33

抜本的構造改革)

バランスシートコントロール戦略連結普通株式等Tier1比率(CET1比率)は10.15%と現在の中期経

営計画で掲げた目標を1年前倒しで達成しましたが、昨年12月に最終

合意に至った規制強化を踏まえた試算※では8%台前半となるため、引き

続き資本の蓄積を進めていく必要があります。そうしたなか、バランス

シートを効率的に活用し収益性を高めていくことが重要になります。具

体的には、低採算分野から高採算分野、縮退・効率化分野から注力分野

へと、機動的でメリハリのある資産入れ替えを行うことで、より強靭で採

算性の高い事業ポートフォリオの構築を進めていきます。※ 完全適用ベース。新規制ベースのリスクアセット算出においては、その他有価証券評価差

額金(株式)見合いのリスクアセットを控除

貸出金79兆円

(+1.0兆円)

預金136兆円

(+5.7兆円)

有価証券34兆円

(+1.8兆円)

その他負債58兆円

(△1.8兆円)

その他資産91兆円

(+1.6兆円)

■ 外部環境や規制強化への耐性を高めるため、バランスシートコントロールを深化

● CET1比率10%程度の維持に より財務の安定性を確保

連結総資産205兆円

円貨● 「貯蓄から投資・資産形成へ」の

推進加速● 投資運用商品残高の拡充と

グループ一体営業の加速

外貨● 顧客預金を含む外貨調達コスト

への感度向上● 計画的な顧客預金の積み上げ

株式● 簿価削減計画達成に向けた株式

売却を推進

債券● 外部環境を意識した予兆管理の

徹底● 債券ポートフォリオの再構築時

期の見極め

純資産9兆円

(+0.5兆円)

2018年3月末:( )は2017年3月末比

● リスク・リターン改善への取り組み● 低採算資産の圧縮

■ 2018年度バランスシートコントロールの取り組み

27 みずほフィナンシャルグループ

私たちが目指すもの

CFOメッセージ

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Page 4: CFOメッセージ - みずほフィナンシャルグループ...〈みずほ〉の財務運営の考え方(普遍的な原則) 〈みずほ〉は「総合金融、 コンサルティンググループ」として、お客さま、

政策保有株式削減政策保有株式につきましては、資本コストを踏まえた採算性等を基準

とした保有意義の検証を行い、保有意義が認められる場合を除き保有

しないことを基本方針としております。財務基盤の安定性の観点からは、

財務状況に大きな影響を与える株価変動リスクを適切な水準まで抑制

することが重要であると考えております。2015年3月末から現中期経営

計画最終年度の2019年3月末までに5,500億円の株式簿価の削減を

目標としており、2018年度に残りの1,520億円の削減をやりきる計画と

しております。

2013年度 2014年度

6.5

23

2015年度

7.5

30 31

2016年度

7.5

28

2017年度

7.5

33

2018年度予想

7.5 7.5

33※2

配当性向推移(%)■ ■普通株式1株当たり配当金(円)

■ 着実な株主還元

※2. 2018年度親会社株主に帰属する当期純利益5,700億円を前提

■ 政策保有株式売却計画と進捗※1

19,629 16,875 15,648

2015年3月末 2017年3月末 2018年3月末 2019年3月末

(億円)

2019年3月末迄削減目標

5,500億円

2018年3月末迄削減実績

3,980億円

※1. 国内上場株式、取得原価ベース

持続的成長を支える財務運営

自己資本の充実と株主還元〈みずほ〉が持続的に成長し、さまざまなステークホルダーの期待に応

える財務安定性を確保しつつ、経済環境の悪化時においても金融仲介

機能を十分に発揮していくためには、安定的な自己資本の充実が重要と

なります。また、株主・投資家のみなさまへの着実な利益還元も経営上

の重要な責務との認識のもと、当社は、安定的な自己資本の充実と着実

な株主還元の最適なバランスを図る「規律ある資本政策」を遂行してお

ります。

自己資本の充実においては、国際金融規制の動向を含めた事業環境

の変化への対応力を強化するため、競合金融グループと遜色ない水準

へ自己資本の充実を進めてまいります。

また、株主還元につきましては、連結配当性向30%程度を1つのめど

としたうえで安定的な配当を実施する方針のもと、2017年度の配当は7

円50銭といたしました。引き続き着実な株主還元の実現に努めてまい

ります。

28統合報告書 ディスクロージャー誌 2018

私たちが目指すもの CFOメッセージ

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株主・投資家のみなさまとの双方向のコミュニ ケーション 〈みずほ〉では公平かつ適時・適切な情報開示を経営上の重要課題に位置づけ、

「ディスクロージャー方針」に則った、株主・投資家のみなさまとの双方向の対話を推進しています。 〈みずほ〉の経営陣は、株主総会や投資家向け各種説明会を通じ、経営戦略やガバナンス等の開示、説明に取り組んでおります。 また、海外投資家のみなさまに対しても、英語版資料の早期開示や海外IRによる面談に加え、ニューヨークにもIR専担者を駐在させる等、積極的な対話を推進しています。

毎年6月下旬に開催する株主総会は、いわゆる集中日を避け、株主のみなさまが参加しやすい運営に努めています。また、事業報告を含む招集通知(日本語、英語)については、株主総会開催日の1ヶ月以上前に開示しています。2018年は、6月22日に東京国際フォーラムで第16期定時株主総会を開催し、2,246名の方にご参加いただきました。なお、株主総会の様子についてはウェブサイトで動画を公開しています。

株主総会

対話実績

機関投資家・アナリスト

個人投資家

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

個人投資家向けウェブサイト更新

オンライン会社説明会

株主総会

会社説明会 IR Day

海外投資家訪問

■ 2017年度の取り組み

決算発表後にはネットカンファレンスや会社説明会を実施しており、説明会の動画もウェブサイトで公開しています。部門別事業戦略説明会「IR Day」は、業界初の取り組みとして2012年から継続開 催しており、2015年からは投資家のみなさまからの要望も踏まえ、社外取締役による説明、質疑応答の場も設定しています。2015年から2017年は取締役会議長の大田取締役、2018年については、監査委員会委員長の関取締役が登壇しました。なお、説明要旨や質疑応答の内容についてもウェブサイトでご確認いただけます。その他、投資家のみなさまの関心を踏まえたテーマ別説明会「IR Select」を随時開催する等、さまざまな説明・対話の場の提供に努めています。

機関投資家のみなさま

会社説明会 IR Day

29 みずほフィナンシャルグループ

私たちが目指すもの

CFOメッセージ

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株主・投資家のみなさまとの双方向のコミュニ ケーション建設的な対話の状況

 株主総会や各種説明会に加え、投資家の

みなさまとの面談においては、経営戦略、ガ

バナンス、株主総会における議案等、幅広い

テーマに関する対話に取り組んでいます。

 2018年度も投資家のみなさまとの対話を進め、次期中期経営計画の策定等に反映していきます。投資家のみなさまにおかれましては、引き続きご協力をお願いします。

経営戦略

2017年11月に発表した「抜本的な構造改革」の策定プロセスにおいて、会社説明会や個別面談等の場で投資家のみなさまから頂いたご意見等を取締役・経営陣間で共有し参考にさせていただきました。また、構造改革発表後においても対話を通じて〈みずほ〉の考え方についてご説明を行い、投資家のみなさまから伺ったご意見を参考にさせていただいています。

株主総会における株主提案

2017年6月の株主総会において、当社取締役会が「反対」とする一方、株主総会で相応の賛成率となった株主提案について、取締役会にて改めて真摯に議論し、取締役会としての考えを公表しています。また、中間決算後の「株主の皆さまへ」においてもQ&A形式による分かりやすい説明に努めています。

グループCEOの交代

2018年1月に発表したグループCEOの交代に関して、指名委員会が行った審議等のプロセスを本報告書(P.77「後継者計画」)ほか、以下の資料でご説明しています。

株主総会招集通知

コーポレート・ガバナンス報告書

1月 2月11月 12月 3月

会社説明会

海外投資家訪問

(延べ数、概数)

220社(うち海外60社)

480社(うち海外200社)

経営陣にて実施

IR部にて実施機関投資家面談件数

700社(うち海外260社)

オンライン会社説明会個人投資家向けウェブサイト

個人投資家向けウェブサイトにおいては、業績をワンクリックでご確認いただけるチャートジェネレータを取り入れる等、一覧性・操作性が高く、分かりやすい構成作りに取り組んでおります。2015年からは、全国各地の投資家のみなさまとCFOとの双方向のコミュニケーシ ョンを推進する場として、メガバンク初のオンライン会社説明会(インターネットによるライブ中継)を継続開催しています。2017年度は、動画視聴も含め、累計で約3,000名の個人投資家の方々にご覧いただきました。

個人投資家のみなさま

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私たちが目指すもの CFOメッセージ

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