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弁理士に求められる スキル標準に関して 令和元年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究

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弁理士に求められるスキル標準に関して

令和元年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究

産業財産権制度問題調査研究

◼ 産業財産権制度に関しての企画立案に資するように、法制面や運用面について改正を行う際の基礎資料となる報告書を取りまとめることが目的。

◼ 調査研究テーマ毎に専門家を交えた研究委員会の開催・国内外公開情報調査・国内外ヒアリング調査・国内外アンケート調査等、調査研究テーマに応じた調査・分析を行う。

特 許 庁

産業財産権制度に関する

多種多様なニーズ国際的な制度調和

関係者(産、学、官)及び有識者(弁護士、弁理士等)による調査研究委員会にて検討

調査研究報告書の

取りまとめ

委員会の検討結果や研究報告書等を制度改正の検討に活用

国内外ヒアリング調査

国内外公開情報調査

国内外アンケート調査

各国の制度調査

<調査イメージ>

産業財産権制度問題調査研究について

<詳細について>

本調査の詳細については、特許庁HP(以下URL記載)に掲載しております。令和元年度研究テーマ一覧「弁理士に求められるスキル標準に関する調査研究報告書」をご参照ください。URL:https://www.jpo.go.jp/resources/report/sonota/zaisanken-seidomondai.html

<お問い合わせ先>経済産業省 特許庁 総務部 企画調査課〒100-8915 東京都千代田区霞が関3-4-3TEL:03-3581-1101(内2156)FAX:03-3580-5741

調査研究機関

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産業財産権制度問題調査研究

■国内アンケート調査企業(3300社)、弁理士(2000名)を

対象に実施。

企業規模を問わず、幅広い業務への潜在

ニーズが存在。企業ニーズと弁理士の

シーズのギャップ・弁理士側の質的課題

が大きい項目として「社内・競合の知財

分析」「対話」等が挙げられた。

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調査の俯瞰図

背景現状、弁理士は知的財産の「権利化」業務を中心としたサービスを担う人材が大半であり、企業ニーズの多様化等の外的課題、弁理士数の減少や業務範囲の拡大等の内的課題の双方において、今後、課題が生じる可能性がある。

弁理士スキル標準の策定弁理士スキル標準は、企業と弁理士をつなぐ「共通言語」であり、これまで、企業が「自社に必要な知財活動が特定できていない」「弁理士の先生と、会話がしにくい」「弁理士のサービスが十分なのかが分からない」等の課題を抱えていた企業が、本スキル標準を通じて、これらの課題を解決するツールを策定。具体的には「知財活動発掘アセスメント」「企業課題・弁理士サービス一覧」「スキル一覧」等を、評価手法等と共に策定した。

■委員会委員長:杉光 一成(金沢工業大

学 虎ノ門大学院 イノベーショ

ンマネジメント研究科 教授)

委員:7名

■国内ヒアリング調査計25者の企業・弁理士・専門家等にヒア

リング調査を実施。

権利化を起点とせず「競合分析」「技術

戦略/ブランド戦略策定」等のニーズや

提供実績が確認された。また、地方の弁

理士は、企業に知財の重要性を喚起する

多様な活動も実践例も確認された。

■国内外公開情報調査

目的中小・スタートアップ等の経営層を中心としたユーザーが求める知財プロフェッショナルサービスを可視化し、「弁理士スキル標準」として取り纏める。これにより企業・弁理士の「共通言語」を開発し、相互の連携加速を図る。

産業財産権制度問題調査研究目次

1. 本調査研究の背景・目的

2. 本調査研究の実施方法

2.1. 公開情報調査

2.2. アンケート調査

2.3. ヒアリング調査

3. 調査結果

3.1. 弁理士スキル標準

3.2. 今後の活用方策

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産業財産権制度問題調査研究1.本調査研究の背景・目的

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• 昨今、企業等における知財活動が複雑化し、弁理士等に対するニーズも多様化している。他方、弁理士は、特に中小・スタートアップ企業等から寄せられるニーズに対して十分に対応し切れていないとの声がある。

• 背景を踏まえ、本調査は、中小・スタートアップ等の経営層を中心としたユーザーが求める知財プロフェッショナルサービスを可視化

• その上で、これを弁理士等によって提供されるべきサービス・スキルに置換。「弁理士スキル標準」として取り纏めの上、活用。企業が弁理士等と適切に連携し、知財活動を高度化することを実現する。

企業における

新たな知財活動の必要性

経営・事業環境の変化

弁理士等の専門家による

新たなサービスの提供

スキル標準

対応

要請 ニーズ

サービス提供

産業財産権制度問題調査研究2.1.公開情報調査

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• 公開文献調査では、企業知財戦略のトレンド、国内外の他スキル標準等の分析を行った

• これを踏まえ、スキル標準の検討の参考とすべき事項・策定方針を以下の通り纏めた。

調査結果:弁理士スキル標準 骨子案

今後5~10年を見越した企業活動の多様化に対応する「権利化」以外も含む多様な支援

スタートアップ支援(特に、経営支援)

大企業におけるサービス拡大(例:知財分析等)

中小企業支援(特に、経営支援)

スキル標準が対応すべきターゲット

①スキル標準の体系 ②スキル標準の内容

スキル(能力)の明示cf. iコンピテンシディクショナリ

サービス(業務)の明示cf. iコンピテンシディクショナリ

スタートアップ・中小向けの徹底したサービス側情報の充実

cf. 弁護士ドットコム

特化した分野・活動実績等、他情報源との接続性の確保

cf. 弁護士ドットコム、iコンピテンシディクショナリ

業務多様化に対応するコンセプチュアルスキル充実化

cf. 公認会計士CPE制度

ベースのインサイトとしての「知財人材スキル標準」活用

体系・内容

産業財産権制度問題調査研究2.2.アンケート調査

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• アンケート調査では、公開情報調査での仮説に基づき、企業における「知財の専門サービスへのニーズ」「弁理士におけるニーズ対応状況」等の現状を把握し、マーケティング視点も踏まえて盛り込むべきコンテンツを明確化すべく実施した。

• 企業3300社、弁理士2000名への配布を行い、企業1121社・弁理士582名の回答を得た。

調査結果サマリ(全体の傾向)

• 企業に関しては、「大企業・中小企業・スタートアップ」および「都市部・地方部」の所在により、回答結果に有意な差は無し

• 弁理士に関しては、 「都市部・地方部」で差が生じ、地方部の弁理士の方が、「幅広い業務を手掛け」「外部の主体(弁理士会・知財総合支援窓口等)との連携を多く実施」している状況となった。

• 企業側の業務実施率が50%超 かつ 弁理士側のサービス提供率が共に30%超を超えた項目は、アンケート内24項目中17項目(70%)となり、多くの企業・弁理士は、課題を有しつつも比較的幅広い業務を実施していた

特筆すべき事項

• 課題として認識すべき点

– 企業ニーズと弁理士側の自己満足のギャップが大きな項目として、「対話(対 経営層・開発者・顧客)」が挙げられ、特に権利化業務における開発者と弁理士の対話について、質的な課題が指摘された

• 特徴等

– 最も企業ニーズが顕在化している項目として、「社内・競合の知財分析」が挙げられた

– 企業側の各業務への「満足度」は、自社のみで実施している企業より、弁理士と実施している企業の方が満足度が総じて高い

– 「社内・競合の知財分析」や「企業経営層との対話」を実施している弁理士は、それ以外の弁理士と比較し、全項目で「企業に十分にサービス提供を提供できている」と回答。

• 仮説として、両業務への取組が、顧客の多様なニーズの引き出しに繋がっているとも想定される

• なお「企業経営層との対話」を実施している弁理士は全体の5%に留まっている

産業財産権制度問題調査研究2.3.ヒアリング調査

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• ヒアリング調査では、企業が求める知財のプロフェッショナル業務に対する深いニーズ、弁理士に対する具体的要望を把握することを目的として、アンケート結果において特筆すべき回答が確認された企業・弁理士等、計25者にヒアリングを行った。

弁理士への要望企業に求められる知財活動

【大企業】従来業務における上流からの関与(IPランドスケープやブランド創造等)【中小ベンチャー】事業の上流に関与するサービスの提供

企業目的に即したサービスの提案・提供

(例:目的に即した研究開発サポート・発明発掘や、保護方針の提案)

企業と伴走するような、ハンズオン型のサービスの提供

(例:VC向け資料作成や、知財インフラ整備)

上流から関与する知財サービス

(知財活動の上流から、ひいては事業の上流から関与するサービス。「どのような事業・研究開発を進めるべきか」)

企業目的に対して効果のある知財活動

(「発明ができたから特許取得」ではなく「なぜ特許を取るのか」を起点に)

経営と目的・課題を共有した知財活動全般の支援・代行(スタートアップ)

(VC向け資料の作成や開発者との深い議論等の、「知財部員」的な活動)

調査結果サマリ

産業財産権制度問題調査研究3.調査結果

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• 公開文献調査・アンケート調査・ヒアリング調査および有識者委員会での議論を踏まえ、企業※と弁理士をつなぐ「共通言語」として、弁理士スキル標準を策定した。

※企業をはじめ、大学・研究機関・自治体等、弁理士のユーザーすべてが対象となるが、ここでは便宜上「企業」とした

これまで これから

企業

弁理士 弁理士 弁理士 弁理士 弁理士 弁理士

企業

弁理士スキル標準ビジネスの課題を知財活動に変換

課題に合致し満足できる弁理士が

見つかる!

✓ 自社に必要な「知財活動」が特定できていない

✓ 弁理士の先生と、会話がしにくい

✓ 弁理士のサービスが十分なのかが分からない

✓ 自社の課題に合致した「知財活動」を特定できる

✓ ビジネスの言葉と知財の専門用語が変換できる

✓ 弁理士のサービスの幅・質が理解できる

企業の課題は?

権利範囲の広い特許を取るのが

得意!!

製品の競争力を高めたい!

共通言語がない

産業財産権制度問題調査研究3.1.弁理士スキル標準:全体像

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• 弁理士スキル標準は、「企業がそもそも実施すべき知財活動の発掘」から、「自社の課題と弁理士のサービスを紐づける」活動、更に、「弁理士のスキルを目利きする」といった各フェーズに対応すべく、以下の構成より作成した。

1. 知財活動発掘アセスメント貴社が抱える「課題」から、必要な知財活動を把握するシート

2. 企業課題・弁理士サービス一覧表貴社の課題に即して、弁理士が提供できる「サービス」を把握するためのシート

2-2. 技術分野一覧表 : 弁理士が対応可能な「技術分野」を一覧化したシート

2-3. スキル一覧表 : 各サービスを構成する「スキル」を一覧化したシート

3. 特許事務所サービス・技術分野一覧表特許事務所単位で提供できる/強みがある「サービス」・「技術分野」を把握するシート

産業財産権制度問題調査研究3.1.弁理士スキル標準:使い方例

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• 例えば、企業における本スキル標準の活用例は以下の流れである。

自社の課題を

特定

課題解決に必要な

知財活動を特定

課題の専門家(弁理士)

を探す

弁理士の

サービス提供可否・強みを確認

弁理士にスキル標準を

記載頂く(P10)

はじめに“なぜ弁理士を探すのか“を、特定する。

「1. 知財活動発掘アセスメント」を活用し、自社の課題(依頼の目的)を定める。

次に、貴社の課題と、弁理士の専門サービス(専門用語)を変換する。

記入前の「2. 企業課題・弁理士サービス一覧表」から、課題とサービスと紐づける。

候補となる弁理士の方に、「2. 企業課題・弁理士サービス一覧表」と「2-2. 技術分野一覧表」の実績欄、「3. スキル一覧表」を記載頂くよう、依頼する。記載頂くのが難しい場合、 「2-3.スキル一覧表」を使って、対話をする。

連携候補となる弁理士の方と、対話をする。その際、候補となる弁理士にて記入済の「2. 企業課題・弁理士サービス一覧表」「2-2. 技術分野一覧表」から、自社課題との合致度・強みを判断する。

特定した「専門サービス」の名称を元に、Web・電話等を活用し、弁理士を探す。

本資料10ページの「弁理士探し方ガイド」をご覧頂き、連携候補を見つける。

自社に合う弁理士の探し方例

産業財産権制度問題調査研究3.2.今後の活用方策

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• 本弁理士スキル標準は、弁理士と企業を繋ぐコミュニケーションツールであると共に、「企業が弁理士と連携して新たな知財活動を実践し、企業価値・事業価値を高める」、「弁理士が、企業のニーズに応えるためにサービスを強化」等の場面において、持続的に活用するため、引続き、環境整備を検討する。

• なお、短期的な課題に向けた施策としては、特許庁の既存施策との連携、日本弁理士会「弁理士ナビ」との連携等について、引続き検討を行う。

企業が新たな知財活動に果敢に取り組み、事業価値・企業価値を向上する

企業 弁理士

短期的課題:弁理士と企業の連携深化「企業が課題認識に即して、弁理士を探し、連携、活動する」「弁理士が顧客の課題を自ら発掘し、新たなサービスを提供」

「支援者が、弁理士・企業を最適な形でつなぐ」

中長期的課題企業の知財リテラシ向上

中長期的課題弁理士のサービス強化

実現したい状態

活用方策

産業財産権制度問題調査研究

禁 無 断 転 載

令和元年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書

弁理士に求められるスキル標準に関する調査研究(要約版)

令和2年3月請負先 PwCコンサルティング合同会社

〒100-6921 東京都千代田区丸の内2-6-1電話 03-6250-1200FAX 03-6250-1201