中小企業経営者の2人に1人が自分の代で廃業を予定2016 年 2 月 1 日...

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調査の目的と実施要領 -- -- -- -- -- -- -- -- -- 1 サンプルのウェイト付けと主な属性 -- -- -- 2 調査結果 後継者の決定状況等による分類 -- -- -- -- -- -- 4 廃業予定企業の特徴 -- -- -- -- -- -- -- -- -- 5 決定企業と未定企業の特徴 -- -- -- -- -- -- -- 9 未定企業の事業承継に対する考え -- -- -- -- -- 12 まとめ -- -- -- -- -- -- -- -- -- -- -- -- -- -- -- -- 14 <問い合わせ先> 日本政策金融公庫総合研究所 小企業研究第一グループ TEL 03-3270-1687 担当 村上 ~経営者の廃業予定年齢は平均71.1歳~ 2016 年 2 月 1 日 日本政策金融公庫 中小企業経営者の2人に1人が自分の代で廃業を予定 「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」の概要

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Page 1: 中小企業経営者の2人に1人が自分の代で廃業を予定2016 年 2 月 1 日 日本政策金融公庫 総 合 研 究 所 中小企業経営者の2人に1人が自分の代で廃業を予定

Ⅰ 調査の目的と実施要領 -- -- -- -- -- -- -- -- -- 1

Ⅱ サンプルのウェイト付けと主な属性 -- -- -- 2

Ⅲ 調査結果1 後継者の決定状況等による分類 -- -- -- -- -- -- 42 廃業予定企業の特徴 -- -- -- -- -- -- -- -- -- 53 決定企業と未定企業の特徴 -- -- -- -- -- -- -- 94 未定企業の事業承継に対する考え -- -- -- -- -- 12

Ⅳ まとめ -- -- -- -- -- -- -- -- -- -- -- -- -- -- -- -- 14

<問い合わせ先>日本政策金融公庫総合研究所小企業研究第一グループTEL 03-3270-1687担当 村上

~経営者の廃業予定年齢は平均71.1歳~

2016 年 2 月 1 日

日 本 政 策 金 融 公 庫総 合 研 究 所

中小企業経営者の2人に1人が自分の代で廃業を予定

「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」の概要

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Ⅰ 調査の目的と実施要領

1  調査の目的

(参考)経営者の年齢分布の変化

資料:帝国データバンク調査(日本政策金融公庫による委託調査)(注)1 帝国データバンクがそれぞれの時点に保有していた企業情報をもとに集計したものであり、大企業を含む。

2 経営者の年齢不明を除く。

2  実施要領 

(1)調査時点 2015年9月

(2)調査方法 インターネット調査(スクリーニング調査および詳細調査)

(3)調査対象

(4)有効回答数 4,163人(うち、従業者299人以下の中小企業経営者 4,110人)

 中小企業の経営者の高齢化が進展する中で、事業承継の重要性がいっそう高まっている。そこで、中小企業の事業承継の見通しを把握するとともに、今後の課題について検討するために、本調査を実施した。 なお、事業承継に関する調査は2007年度に旧国民生活金融公庫の取引先である小企業を対象として、また2009年度には日本政策金融公庫の取引先である小企業及び中企業を対象として行った。今回は、当公庫と取引のない企業を含め、中小企業全体を対象として調査を行った。

スクリーニング調査で「会社や団体の経営者」「個人事業主」「自由業」のいずれかに回答した人を対象に、詳細調査で事業承継に関する調査を行った。

0

5

10

15

20

25

19歳以

20~24

25~29

30~34

35~39

40~44

45~49

50~54

55~59

60~64

65~69

70~74

75~79

80歳以

2004年

(n=1,198,841) 2014年

(n=1,231,482)

(%)

60歳以上 70歳以上

2004年 57.97歳 44.5% 13.5%

2014年 59.82歳 54.9% 20.4%

平均年齢構成比

1

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Ⅱ サンプルのウェイト付けと主な属性

1 ウェイト付け

(1)サンプルの年齢階層と企業規模の分布

(2)総務省「経済センサス-基礎調査」(2014年)等による企業の分布

資料:総務省「経済センサス-基礎調査」(2014年)企業等に関する集計第9-1表、事業所に関する集計第10表、帝国データバンク調査(注)

(3)集計ウェイトの設定

・ アンケート回答者は実際の分布と比べて、個人企業、従業者1~4人規模の構成比が高く、70歳以上の構成比が低い。

・ そこで集計ウェイト(下表、上記(2)表を(1)表の対応するセルごとに除したもの)を設定し、実際の企業分布に近似した集計を行うことにした。以下では、ウェイト付けした集計結果を示す(ただし、n値は原数値を示す)。

「経済センサス-基礎調査」から得た個人企業・法人企業別従業者規模別の企業数に、帝国データバンク調査からそれぞれに対応する年齢別の構成比を乗じて、上記の企業数を算出した。

(単位:社)39歳以下 40歳代 50歳代 60歳代 70歳以上 合計

1人 233 329 317 308 125 1,3122~4人 104 133 144 169 95 645

5~299人 31 58 52 33 14 1881~4人 74 287 308 236 56 9615~9人 19 124 131 96 11 381

10~19人 17 103 77 47 10 25420~49人 22 74 92 36 4 22850~299人 15 35 61 27 3 141

515 1,143 1,182 952 318 4,110

個人企業

法人企業

合計

(単位:社)39歳以下 40歳代 50歳代 60歳代 70歳以上 合計

1人 22,450 84,698 141,729 283,484 210,336 742,6972~4人 31,574 119,118 199,325 398,688 295,813 1,044,518

5~299人 8,894 34,004 57,764 115,288 86,427 302,3781~4人 42,969 154,865 211,088 290,217 170,914 870,0545~9人 23,428 84,435 115,089 158,231 93,186 474,369

10~19人 15,725 56,676 77,252 106,210 62,549 318,41320~49人 7,864 34,604 55,321 75,732 34,941 208,46450~299人 4,274 18,808 30,067 41,161 18,991 113,301

157,180 587,209 887,636 1,469,012 973,158 4,074,194

法人企業

合計

個人企業

39歳以下 40歳代 50歳代 60歳代 70歳以上1人 96.4 257.4 447.1 920.4 1,682.7

2~4人 303.6 895.6 1,384.2 2,359.1 3,113.85~299人 286.9 586.3 1,110.9 3,493.6 6,173.31~4人 580.7 539.6 685.4 1,229.7 3,052.05~9人 1,233.0 680.9 878.5 1,648.2 8,471.4

10~19人 706.6 513.2 1,097.4 2,461.2 5,337.020~49人 357.5 467.6 601.3 2,103.7 8,735.450~299人 285.0 537.4 492.9 1,524.5 6,330.3

個人企業

法人企業

2

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2 主な属性

(1)経営組織 (3)業種 (4)現在の年齢

(単位:%)

(注)

(2)従業者規模

(注)  経営者本人、家族従業員、パート・アルバイト、派遣社員・契約社員を含む(以下同じ)。

 ウェイト付け後の集計結果である。ただし、n値は原数値を示している(以下、同じ)。

51.3 48.7 個人

法人

(単位:%)

(n=4,110)

65.2

16.1

9.0

6.6

3.2

1~4人

5~9人

10~19人

20~49人

50~299人

(単位:%)

(n=4,110)

全体(n=4,099)

建設業 11.5

製造業 8.4

情報通信業 3.1

運輸業 2.9

卸売業 6.9

小売業 10.9

不動産業、物品賃貸業 8.6

専門・技術サービス業 13.0

宿泊業、飲食サービス業

5.4

生活関連サービス業、娯楽業

3.6

教育、学習支援業 3.4

医療、福祉 6.6

その他のサービス業 13.9

その他 1.8

合計 100.0

3.8

14.3

22.0

36.3

23.7 39歳以下

40歳代

50歳代

60歳代

70歳以上

(n=4,110)

(単位:%)

3

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Ⅲ 調査結果

1 後継者の決定状況等による分類

◯  類型の構成比を見ると、決定企業は12.4%にすぎず、廃業予定企業が50.0%と半数を占める。

表-1 アンケートの回答による類型化と構成比 図-1 類型の構成比(経営者の年齢別)

資料:

(注)

 後継者の決定状況、後継者が決まっていない場合はその理由をもとに、回答企業を「決定企業」「未定企業」「廃業予定企業」「時期尚早企業」の4タイプに類型化した(表-1)。

 経営者の年齢別に類型の構成比を見ると、時期尚早企業は39歳以下の若年層では67.5%と大きな割合を占めるが、年齢が高まるにつれて減少する(図-1)。一方、廃業予定企業の割合は年齢が高まるにつれて傾向的に増加し、60歳代では57.2%、70歳以上では56.0%を占める。決定企業も年齢の高まりとともに増加するものの、70歳以上でも18.2%にすぎない。

日本政策金融公庫総合研究所「中小企業の事業承継に関するアンケート」(2015年)(以下同じ)

ウエイト付けした集計である(2ページ参照)が、n値は原数値を示した(以下同じ)。

2.0

3.2

7.4

16.2

18.2

11.5

18.3

25.9

21.2

22.4

19.0

36.1

46.2

57.2

56.0

67.5

42.4

20.4

5.4

3.4

39歳以下

(n=515)

40歳代

(n=1,142)

50歳代

(n=1,178)

60歳代

(n=951)

70歳以上

(n=318)

決定企業 未定企業 廃業予定企業 時期尚早企業

(単位:%)

(単位:%)

決定企業

後継者の候補が複数おり、誰を選ぶかまだ決めかねている

3.5

後継者にしたい人はいるが、本人がまだ若い

6.0

現在、後継者を探している 7.7

後継者にしたい人はいるが、本人が承諾していない

3.4

その他 1.2

廃業予定企業自分の代で事業をやめるつもりである

時期尚早企業自分がまだ若いので、今は決める必要がない

分類 アンケートの回答による定義構成比

(n=4,104)

未定企業

後継者は決まっている(後継者本人も承諾している)

12.4

後継者は決まっ

ていない

21.8

50.0

15.9

事業承継の意向はあ

るが、後継者が決

まっていない企業

4

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2   廃業予定企業の特徴(1)主な企業属性

◯  経営組織を見ると、決定企業、未定企業は「法人企業」の割合が高いのに対して、廃業予定企業は「個人企業」の割合が高い(図-2)。

◯ 

◯  業種構成を見ると、廃業予定企業は「専門・技術サービス業」の割合が高い(表-2)。

図-2 経営組織(類型別) 表-2 業種(類型別)

図-3 従業者規模(類型別)

 従業者規模は廃業予定企業が最も小さく、「1~4人」が83.3%を占める(図-3)。

38.7

29.9

68.4

36.2

61.4

70.1

31.6

63.8

決定企業

(n=293)

未定企業

(n=758)

廃業予定企業

(n=1,973)

時期尚早企業

(n=1,080)

個人企業 法人企業

42.9

43.5

83.3

55.7

27.7

23.3

9.2

18.7

17.9

13.1

3.7

13.2

8.4

12.2

3.2

8.1

3.1

8.0

0.7

4.4

決定企業

(n=293)

未定企業

(n=758)

廃業予定企業

(n=1,973)

時期尚早企業

(n=1,080)

1~4人 5~9人 10~19人 20~49人 50~299人

(単位:%)

(単位:%)

(注) は「全体」よりも構成比が3ポイント以上高い業種、

は「全体」よりも構成比が3ポイント以上低い業種である。

(単位:%)

全体(n=4,099)

決定企業(n=293)

未定企業(n=756)

廃業予定企業

(n=1,970)

時期尚早企業

(n=1,080)

建設業 11.5 10.3 9.8 12.1 13.2

製造業 8.4 12.2 7.9 8.4 6.5

情報通信業 3.1 1.2 4.4 2.3 5.0

運輸業 2.9 2.9 3.9 2.6 2.4

卸売業 6.9 8.5 10.5 5.0 7.0

小売業 10.9 11.0 8.6 12.2 9.7

不動産業、物品賃貸業 8.6 16.8 11.9 5.4 7.4

専門・技術サービス業 13.0 10.1 8.1 16.5 10.8

宿泊業、飲食サービス業

5.4 4.6 5.1 6.0 4.4

生活関連サービス業、娯楽業

3.6 4.6 3.0 3.7 3.4

教育、学習支援業 3.4 1.8 3.6 3.4 4.2

医療、福祉 6.6 6.1 7.7 5.7 8.6

その他のサービス業 13.9 9.2 12.2 15.2 15.5

その他 1.8 0.8 3.3 1.4 2.0

合計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0

5

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(2)廃業を決断できる環境-①廃業理由、従業者規模、金融機関からの借り入れ

〇  従業者が1人(本人のみ)の企業では廃業予定企業割合は77.0%にのぼるが、規模が大きくなるにつれてこの割合は傾向的に低下する(図-5)。

〇  金融機関からの借入残高が「ある」と回答した企業の割合を見ると、廃業予定企業では23.2%にすぎず、相対的に低い(図-6)。

図-4 廃業理由(廃業予定企業) 図-5 廃業予定企業の割合(廃業予定企業、従業者規模別)

図-6 金融機関からの借入残高の有無(類型別)

 廃業予定企業の廃業理由を見ると、「当初から自分の代かぎりでやめようと考えていた」が38.2%にのぼり、「事業に将来性がない」が27.9%と続く。「子どもに継ぐ意思がない」「子どもがいない」「適当な後継者が見つからない」という、後継者難を理由とする廃業は合わせて28.5%である(図-4)

77.0

56.5

28.8

20.6

24.0

24.2

16.1

5.4

0 20 40 60 80 100

1人

(n=1,542)

2~4人

(n=1,373)

5~9人

(n=485)

10~19人

(n=285)

20~29人

(n=145)

30~49人

(n=120)

50~99人

(n=88)

100~299人

(n=66)

55.7

52.6

23.2

41.0

44.4

47.4

76.8

59.0

決定企業

(n=293)

未定企業

(n=758)

廃業予定企業

(n=1,973)

時期尚早企業

(n=1,080)

ある ない (単位:%)

38.2

27.9

12.8 9.2

6.6 3.1 1.8 0.4

0

10

20

30

40

50

当初から自分の代かぎり

でやめようと考えていた

事業に将来性がない

子どもに継ぐ意思がない

子どもがいない

適当な後継者が

見つからない

地域に発展性がない

若い従業員の確保が難しく、

事業の継続が見込めない

その他

(%)

後継者難による廃業

28.5%

(n=1,929)

(%)

6

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(3)廃業を決断できる環境-②現在の業績と今後10年間の事業の将来性

図-7 同業他社と比べた業績(類型別) 図-8 今後10年間の事業の将来性(類型別)

 同業他社と比べた業績を見ると、廃業予定企業は「悪い」が23.9%、「やや悪い」が45.5%にのぼり、業績が劣る企業の割合がほかの類型よりも明らかに高い(図-7)。

 今後10年間の事業の将来性についても、廃業予定企業は「事業は継続することはできるが、今のままでは縮小してしまう」が33.4%、「事業をやめざるをえない」が25.6%にのぼり、ほかの類型よりも将来について暗い見通しの企業の割合が高い(図-8)。

7.4

7.2

3.0

6.7

54.7

49.3

27.6

44.2

32.1

36.0

45.5

38.6

5.7

7.6

23.9

10.6

決定企業

(n=293)

未定企業

(n=758)

廃業予定企業

(n=1,973)

時期尚早企業

(n=1,080)

良い やや良い やや悪い 悪い

(単位:%)

20.7

23.7

5.5

27.3

57.8

48.7

35.4

43.8

19.0

23.0

33.4

23.5

2.5

4.6

25.6

5.5

決定企業

(n=293)

未定企業

(n=758)

廃業予定企業

(n=1,973)

時期尚早企業

(n=1,080)

成長が期待できる

成長は期待できないが、現状維持は可能

事業を継続することはできるが、今のままでは縮小してしまう

事業をやめざるをえない

(単位:%)

7

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(4)廃業予定時期と廃業時に生じる問題

図-9 廃業予定時期の経営者の年齢 図-10 廃業するときに問題になりそうなこと(廃業予定企業、現在の年齢別) (廃業予定企業、複数回答)

(注) 「何歳まで事業を続ける予定ですか」という設問に対する回答である。

 廃業予定企業の廃業予定時期を見ると、経営者の年齢が「70~74歳」のときに廃業すると考えている割合は31.9%、「75~79歳」は21.9%、「80歳以上」は16.8%となっており、平均は71.1歳である。現在の年齢が39歳以下の企業は平均56.1歳のときに廃業を予定し、40歳代の企業は同64.8歳、50歳代の企業は同66.9歳、60歳代の企業は同70.9歳、70歳以上の企業は同77.9歳で廃業を予定している。廃業予定企業は、経営者の高齢化とともに緩やかな速度で廃業していくものと思われる(図-9)。

 廃業予定企業が廃業するときに問題になりそうなことを見ると、「特に問題はない」が44.6%を占め、「やめた後の生活費を確保すること」が32.0%と続く。取引先や従業員、一般消費者、地元に対して問題が生じると考えている企業は少ない(図-10)。

32.0

18.4

11.7 10.9

5.7 5.2 2.8

0.6

44.6

0

10

20

30

40

50

やめた後の生活費

を確保すること

自分の生きがいが

なくなること

取引先の企業に

迷惑をかけること

借入金など負債を

整理すること

従業員に迷惑を

かけること

近隣の一般消費者に

迷惑をかけること

商店街や地場産業など

地元の活力が低下すること

その他

特に問題はない

(%) (n=1,936)

2.8

40.6

13.5

3.8

6.8

24.8

23.8

17.0

1.3

19.8

16.2

26.4

39.4

21.5

31.9

14.0

26.3

27.5

51.7

8.1

21.9

2.0

5.1

7.3

17.5

47.4

16.8

2.3

5.0

5.0

8.0

44.5

廃業予定企業

(n=1,936)

39歳以下

(n=140)

40歳代

(n=448)

50歳代

(n=565)

60歳代

(n=577)

70歳以上

(n=206)

59歳以下 60~64歳 65~69歳 70~74歳 75~79歳 80歳以上

(単位:%)

平均

71.1歳

56.1歳

64.8歳

66.9歳

70.9歳

77.9歳

現在の年齢

8

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3 決定企業と未定企業の特徴(1)企業属性と、業績、事業の将来性

〇  同業他社と比べた業績は、決定企業と未定企業に大きな差は見られない(図-13)。

〇  今後10年間の事業の将来性についても、決定企業と未定企業には大きな差は見られない(図-14)。

図-11【再掲】経営組織(類型別) 図-13【再掲】同業他社と比べた業績(類型別)

図-12【再掲】従業者規模(類型別) 図-14【再掲】今後10年間の事業の将来性(類型別)

 経営組織について決定企業と未定企業を比較すると、法人企業の割合は未定企業では70.1%であり決定企業の61.4%を上回る。ただし、その差はさほど大きくはない(図-11)。

 従業者規模を見ると、未定企業のほうが決定企業よりも「20~49人」「50~299人」の割合がやや高いものの、「1~4人」「5~9人」はほぼ同水準である(図-12)。

38.7

29.9

68.4

36.2

61.4

70.1

31.6

63.8

決定企業

(n=293)

未定企業

(n=758)

廃業予定企業

(n=1,973)

時期尚早企業

(n=1,080)

個人企業 法人企業 (単位:%)

参考

42.9

43.5

83.3

55.7

27.7

23.3

9.2

18.7

17.9

13.1

3.7

13.2

8.4

12.2

3.2

8.1

3.1

8.0

0.7

4.4

決定企業

(n=293)

未定企業

(n=758)

廃業予定企業

(n=1,973)

時期尚早企業

(n=1,080)

1~4人 5~9人 10~19人 20~49人 50~299人 (単位:%)

参考

7.4

7.2

3.0

6.7

54.7

49.3

27.6

44.2

32.1

36.0

45.5

38.6

5.7

7.6

23.9

10.6

決定企業

(n=293)

未定企業

(n=758)

廃業予定企業

(n=1,973)

時期尚早企業

(n=1,080)

良い やや良い やや悪い 悪い (単位:%)

参考

20.7

23.7

5.5

27.3

57.8

48.7

35.4

43.8

19.0

23.0

33.4

23.5

2.5

4.6

25.6

5.5

決定企業

(n=293)

未定企業

(n=758)

廃業予定企業

(n=1,973)

時期尚早企業

(n=1,080)

成長が期待できる

成長は期待できないが、現状維持は可能

事業を継続することはできるが、今のままでは縮小してしまう

事業をやめざるをえない

(単位:%)

参考

9

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(2)経営者の属性

〇  経営者の現在の年齢を見ると、決定企業は「60歳代」「70歳以上」の割合が未定企業を上回っており、相対的に年齢が高い(図-15)。

図-15 現在の年齢(類型別) 図-17 経営者と創業者との関係

図-16 経営者に就任したときの年齢(類型別)

 経営者と創業者との関係を見ると、決定企業は「創業者本人」である割合が62.6%と未定企業(52.3%)よりも高い。逆に、「創業者の非親族」である割合は未定企業(18.9%)が決定企業(4.8%)を大きく上回る。創業者は自身の意思で後継者を選びやすいが、創業者の非親族はそうではないことがうかがえる(図-17)。

 一方、経営者に就任した年齢が「29歳以下」または「30歳代」である割合は、決定企業(41.0%)が未定企業(30.8%)を上回り、相対的に年齢が低い。決定企業の場合、年齢がある程度若いときに経営者に就任すると子どももまだ就職前であるため、子ども自身が将来の選択肢の一つとして事業承継を検討できることが背景にあると思われる(図-16)。

0.6

2.0

1.4

16.0

3.7

12.1

10.3

38.3

13.2

26.2

20.3

28.2

47.6

35.4

41.5

12.4

34.9

24.4

26.5

5.1

決定企業

(n=293)

未定企業

(n=758)

廃業予定企業

(n=1,973)

時期尚早企業

(n=1,080)

39歳以下 40歳代 50歳代 60歳代 70歳以上 (単位:%)

参考

14.1

8.7

13.8

14.3

26.8

22.1

22.8

36.7

22.4

29.7

22.5

32.1

15.8

22.1

19.0

13.3

14.6

14.7

18.2

2.7

6.2

2.7

3.7

1.0

決定企業

(n=293)

未定企業

(n=758)

廃業予定企業

(n=1,973)

時期尚早企業

(n=1,080)

29歳以下 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳以上 (単位:%)

参考

30.8

62.6

52.3

73.7

60.2

32.6

28.8

20.0

29.4

4.8

18.9

6.3

10.4

決定企業

(n=293)

未定企業

(n=758)

廃業予定企業

(n=1,973)

時期尚早企業

(n=1,080)

創業者本人 創業者の親族 創業者の非親族 (単位:%)

参考

41.0

10

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(3)子どもの人数

〇  一方、女の子どもの人数については、決定企業と未定企業の間に大きな差は見られない(図-19)。

〇  男の子どもの多寡が事業承継の決定状況を大きく左右している様子がうかがえる。

図-18 男の子どもの人数(類型別)

図-19 女の子どもの人数(類型別)

 男の子どもの人数が「0人」である割合を見ると、未定企業では36.3%であり、決定企業の22.8%よりも高い。また平均人数も、未定企業は0.95人と決定企業の1.17人よりも少ない(図-18)。

1.0

22.8

36.3

48.0

52.2

44.0

37.5

32.3

31.6

26.7

21.4

16.3

14.1

6.4

4.8

3.4

2.2

決定企業

(n=293)

未定企業

(n=758)

廃業予定企業

(n=1,973)

時期尚早企業

(n=1,080)

0人 1人 2人 3人以上 (単位:%)

平均

1.17人

0.95人

0.75人

0.66人

参考

34.1

38.1

46.2

53.1

38.1

37.9

33.4

31.5

23.5

17.7

18.5

12.9

4.4

6.4

1.9

2.5

決定企業

(n=293)

未定企業

(n=758)

廃業予定企業

(n=1,973)

時期尚早企業

(n=1,080)

0人 1人 2人 3人以上

(単位:%)

参考

平均

0.99人

0.93人

0.76人

0.65人

11

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4 未定企業の事業承継に対する考え(1)後継者の候補

図-20 後継者候補(未定企業、複数回答) (参考図) 後継者(決定企業)

(注)1

 未定企業のうち、後継者が決まっていない理由として「後継者にしたい人はいるが、本人が承諾していない」「後継者にしたい人はいるが、本人がまだ若い」「後継者の候補が複数おり、誰を選ぶかまだ決めかねている」と回答した人に対する設問である。

 「男の実子」は「長男」または「長男以外の男の実子」の少なくとも1つを回答した企業である。「親族以外」は「従業員(親族以外)」または「社外の人(親族以外)」の少なくとも1つを回答した企業である。

 未定企業のうち後継者にしたい人(後継者候補)がいる企業について、後継者候補を見ると、「長男」と「長男以外の男の実子」を合わせた「男の実子」の割合は50.5%を占め、「従業員(親族以外)」「社外の人(親族以外)」を合わせた「親族以外」の割合は30.2%を占める。さらに「女の実子」が18.4%と続く(図-20)。

 決定企業の後継者と比べると、未定企業は「男の実子」の割合が低く、「親族以外」「女の実子」の割合が明らかに高い。未定企業は後継者の候補について、選択肢をより広く考えているといえる。

42.7

12.4

18.4

5.0

0.8

5.0

9.6

22.7

10.6

0 10 20 30 40 50 60

長男

長男以外の男の実子

女の実子

娘むこ

息子の嫁

配偶者

その他の親族

従業員(親族以外)

社外の人(親族以外)

(%)

男の実子

50.5%

親族以外

30.2% (n=444)

51.1

10.2

12.1

2.6

0.0

3.4

5.2

12.3

3.2

0 20 40 60

長男

長男以外の男の実子

女の実子

娘むこ

息子の嫁

配偶者

その他の親族

従業員(親族以外)

社外の人(親族以外)

(%)

(n=293) 親族以外

15.5%

男の実子

61.3%

12

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(2)親族以外への事業承継と企業売却の意識

図-21 親族以外の後継者候補 図-22 企業の売却に関する意識(未定企業、従業者規模別)(未定企業、従業者規模別)

(注) 図-20の注1、2と同じ。

 未定企業のうち後継者候補がいる企業について、親族以外の後継者候補の割合を見ると、従業者が5人以上の企業ではおおむね40%前後を占める。一方、従業者が1人の企業は6.3%、2~4人の企業は19.1%にすぎない。従業者規模の小さな企業は、後継者の候補の選択肢を親族以外に広げるといっても限度はある(図-21)。

 企業の売却に関する意識を見ると、未定企業全体では「現在、売却を具体的に検討している」の割合は3.3%、「事業を継続させるためなら売却してもよい」は26.9%である。企業の売却に積極的な企業は少なくない。その一方で、「売却してまで事業を継続させたいとは思わない」も28.7%を占める(図-22)。

 企業の売却に関する意識を従業者規模別に見ると、10~19人の企業や20~29人の企業では積極的な企業の割合が高く「売却してまで事業を継続させたいとは思わない」は15%程度にすぎない。しかし、1人、2~4人の企業では「売却してまで事業を継続させたいとは思わない」は35%前後と高く、企業の売却に積極的な企業は相対的に少ない(図-22)。

30.2

6.3

19.1

41.5

40.1

46.8

37.7

0 10 20 30 40 50

未定企業

(n=444)

1人

(n=50)

2~4人

(n=159)

5~9人

(n=68)

10~19人

(n=57)

20~49人

(n=63)

50~299人

(n=47)

3.3

5.6

3.9

1.5

1.0

8.1

26.9

8.7

18.4

32.6

47.0

34.6

23.6

28.7

37.9

33.5

32.8

15.3

15.2

27.5

41.1

47.8

44.2

33.1

36.8

42.1

48.8

未定企業

(n=758)

1人

(n=98)

2~4人

(n=250)

5~9人

(n=150)

10~19人

(n=90)

20~49人

(n=99)

50~299人

(n=71)

現在、売却を具体的に検討している

事業を継続させるためなら売却してもよい

売却してまで事業を継続させたいとは思わない

考えたことがない (単位:%)

(%)

13

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Ⅳ まとめ

〇 廃業予定企業のうち、後継者が不在であることを理由に廃業を予定している企業は28.5%にすぎない。

 未定企業は、決定企業と比べて従業者規模や、業績、事業の将来性に遜色はない。後継者が決定しているか未定であるかを左右するのは、経営者に就任したときの年齢や創業者との関係、男の子どもの多寡という、経営者の属性にかかる要因である。

 未定企業には、従業員や社外の人など「親族以外」への事業承継や、企業の売却など、親族への事業承継以外に選択肢を広げている企業が少なくない。しかし、従業者規模の小さな企業では選択肢を広げるといっても限度はある。

 事業承継に対する支援策を必要とするのは、決定企業よりはむしろ未定企業である。企業規模や事業内容などは決定企業と比べて遜色がないにもかかわらず、たんに男の子どもが少ないなどの要因によって未定企業が廃業することになれば、社会的に損失であるからだ。未定企業が親族以外の選択肢を実現できるような支援策が求められる。

 後継者の決定状況と後継者が決まっていない理由をもとに中小企業を「決定企業」(後継者が決まっており、後継者本人も承諾している企業)、「未定企業」(事業承継の意向はあるが、後継者が決まっていない企業)、「廃業予定企業」(自分の代で事業をやめるつもりの企業)、「時期尚早企業」(自分がまだ若いので、後継者を今は決める必要がない企業)に分類すると、決定企業は12.4%にすぎず、未定企業は21.8%、廃業予定企業は50.0%を占める。

 廃業予定企業の多くは従業者が少なく、金融機関からの借り入れがない。さらに、業績が劣る企業の割合が相対的に高く、事業の将来性の見通しも暗いなど、廃業を容易に決断できる環境にある。これらの企業は経営者の高齢化に伴って、徐々に市場から退出していくものと思われる。廃業するときに問題になりそうなことは「特にない」と考える企業は半分近くにのぼるものの、廃業後の生活費の確保を指摘する企業も3割程度存在する。

14