海外文献ワーキング 抄訳 tunneling and underground space...

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海外文献ワーキング 抄訳 文献名:Tunneling and Underground Space Technology Sep 2012 How in situ stresses and the driving cycle footage affect the gasoutburst risk of driving coal mine roadway 炭鉱坑道の掘削時におけるガス爆発に影響を与える地山の応力状態と掘進長について 既往の研究では、炭鉱坑道の切羽前方に破砕帯、高 圧ガスが存在する領域、地山の応力状態が集中する領 域が同時に存在すれば、ガス爆発が生じる危険性が高 まることが数値解析により明らかにされている。この ような条件がそろう領域を掘削すれば、図-1 に示す ように切羽が崩壊することでガス圧力が一気に解放 され、ガス爆発を生じるリスクが極めて高くなると考 えられる。本文では FLAC3D を用いて炭鉱坑道の掘削 を模擬した解析モデルを構築し、地山の応力状態と掘 進長をパラメータとした 16 種類の解析を実施し、ガ ス爆発のリスクを高める要因について考察した。 本研究にて得られた結論は以下のとおりである。 地山の最大主応力方向が坑道と直交する方向に ある場合にガス爆発のリスクが高まる 地山の応力集中が生じている箇所を掘削すれば、 急激な応力低下が生じ、ガス爆発の危険性が極め て高くなる。 炭鉱掘削を計画するに当たっては、あらかじめ地 山の応力状態を調査し、主応力方向を補足する必 要がある。また坑道は主応力方向に沿って設置さ れるべきであり、掘進長は地山の過度な応力集中 を避けるように計画されるべきである。 図-1 炭鉱にてガス爆発が生じる切羽の状態 図-2 解析モデル 図-3 地山の初期応力をパラメータとした切羽離れ-地山応力の関係 図-4 掘進長と最大不釣り合い力の関係

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Page 1: 海外文献ワーキング 抄訳 Tunneling and Underground Space ...创世トンネルは福建省に位置する延長764mのNATMにより構築 される双設道路トンネルであり、支保構造および掘削サイクルは

海外文献ワーキング 抄訳

文献名:Tunneling and Underground Space Technology Sep 2012

How in situ stresses and the driving cycle footage affect the gasoutburst risk of driving coal mine roadway

炭鉱坑道の掘削時におけるガス爆発に影響を与える地山の応力状態と掘進長について

既往の研究では、炭鉱坑道の切羽前方に破砕帯、高

圧ガスが存在する領域、地山の応力状態が集中する領

域が同時に存在すれば、ガス爆発が生じる危険性が高

まることが数値解析により明らかにされている。この

ような条件がそろう領域を掘削すれば、図-1 に示す

ように切羽が崩壊することでガス圧力が一気に解放

され、ガス爆発を生じるリスクが極めて高くなると考

えられる。本文では FLAC3D を用いて炭鉱坑道の掘削

を模擬した解析モデルを構築し、地山の応力状態と掘

進長をパラメータとした 16 種類の解析を実施し、ガ

ス爆発のリスクを高める要因について考察した。

本研究にて得られた結論は以下のとおりである。

① 地山の最大主応力方向が坑道と直交する方向に

ある場合にガス爆発のリスクが高まる

② 地山の応力集中が生じている箇所を掘削すれば、

急激な応力低下が生じ、ガス爆発の危険性が極め

て高くなる。

③ 炭鉱掘削を計画するに当たっては、あらかじめ地

山の応力状態を調査し、主応力方向を補足する必

要がある。また坑道は主応力方向に沿って設置さ

れるべきであり、掘進長は地山の過度な応力集中

を避けるように計画されるべきである。

図-1 炭鉱にてガス爆発が生じる切羽の状態

図-2 解析モデル

図-3 地山の初期応力をパラメータとした切羽離れ-地山応力の関係 図-4 掘進長と最大不釣り合い力の関係

Page 2: 海外文献ワーキング 抄訳 Tunneling and Underground Space ...创世トンネルは福建省に位置する延長764mのNATMにより構築 される双設道路トンネルであり、支保構造および掘削サイクルは

Cutter force measurement on tunnel boring machines – System design

TBM のカッターに作用する荷重の計測と設計への応用

TBM のディスクカッターに作用する荷重は推力をカッター数で割ること

により求められ、一般的な 17 番カッターではカッター1個あたり 250kN

程度である。しかし室内試験を実施した結果、カッターに荷重が作用すれ

ば激しく振動するため、想定よりも大きな荷重が作用することが分かった。

カッターの摩耗や脆性的な損傷、疲労破壊等の原因について更なる考察を

行う場合には、カッターに作用する実際の荷重を求める必要があり、岩盤

の破壊を考察する上でも重要である。このため FEM 解析により一般的なカ

ッターの応力・変形状態を再現し、これをもとにカッターの交換を行って

も継続的に応力が計測できるセンサーの取り付け位置を設定した。

1. FEM 解析によるカッター変形状態の再現

ディスクカッターに荷重が作用した際の実際の変形量を推

定し、センサーの設置位置を設定するために図-1 に示す部

品をモデル化し、カッター部に荷重を作用させた際の部材

応力を FEM 解析により求めた。この結果、図-2 に示すよう

にインサート部が最も高い応力が発生しているが、キャス

ティング部の応力は低いことが確認された。

2.計測方法の検討

合理的な計測位置を設定するため、FEM 解析によりカッターに荷

重が作用した際の変位量分布を求めた。この結果サドル部の内側に

ひずみゲージを設置するのが合理的であると考えられたが、センサ

ーを設置するための工作が困難であることが判明した。このため、

ワッシャー(図-3(a)参照)とボルト孔の内部の(図-3(b)参照)

にセンサーを設置して、ボルトに作用する荷重を求めることとした。

3.室内試験

カッターに軸力(FN)、回転力(FR)、せん断力(FS)を作用させ、ボ

ルト 1~4の位置に設置したセンサーにより荷重を計測した。この

結果概ね良好な計測結果が得られたが、試験中の平均的な応力は想

定よりも高い値が計測された。この原因はボルトの締め付け力に依

存すると考えられる。

図-1 FEM 解析によりモデル化する部材

図-2 FEM 解析の部材応力計算結果

図-3 センサーの取り付け位置

図-4 室内試験状況 図-5 室内試験にてカッターに作用させる荷重

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Blasting vibration safety criterion for a tunnel liner structure

トンネル覆工に関する発破振動の安全基準

1.はじめに

発破メカニズムや岩盤の性状が複雑であるため、隣接ト

ンネルに対する発破振動速度に関する安全基準は科学的な根

拠に基づかずに経験的に定められている。本文では、既設

鉄道トンネルの上方にて発破試験を行った結果をもとに

して、3次元 FEM 解析により実挙動のシミュレーションを

実施した。具体的には、発破振動にさらされたトンネル覆

工や周辺岩盤の動的応答を 3次元 FEM 解析により求め、こ

の結果と発破試験結果とを対比させることとした。

2.発破試験の概要

発破試験の概念図を図-1 に示す。本試験では鉄道トンネ

ルより 50m 以上離れた位置にて発破を実施し、トンネル内

でピーク粒子速度を計測するとともに、以下のピーク粒子

速度と最大装薬量の経験式からピーク粒子速度を予測し

た結果を比較した。

この結果、表-1 に示すようにピーク粒子速度予測値の

誤差率は 11.86%となった(表-1 参照)。

3.動的応答に関する 3 次元 FEM 解析

本検討では図-2 に示す解析モデルを構築し、発破振動が

トンネル覆工や周辺岩盤に与える動的影響を検討した。

発破条件が同一であれば、図-3 に示すようにトンネル

覆工の有効引張応力はピーク粒子速度が増加するにつれ

て顕著に増えるが、周辺岩盤はトンネル覆工と比較してピ

ーク粒子速度が増加による有効引張応力の増加が少ない。

この関係から、覆工コンクリートや周辺岩盤の引張強度に

達する際のピーク粒子速度までは被害が生じず、本トンネ

ルにおけるピーク粒子速度の上限値は 11cm/s と考えられ

る。

4.発破試験と数値解析結果の比較

発破試験により得られたピーク粒子速度と 3次元 FEM 解

析結果とを比較したところ誤差率は 4.02%となり、経験

式を用いた場合と比較して高い精度で予測が可能との結

果となった。

Page 4: 海外文献ワーキング 抄訳 Tunneling and Underground Space ...创世トンネルは福建省に位置する延長764mのNATMにより構築 される双設道路トンネルであり、支保構造および掘削サイクルは

Markovian geology prediction approach and its application in mountain tunnels

マルコフ過程に基づく地質予測手法と山岳トンネルへの応用

本文ではマルコフ確率過程とベイズ更新手法に基づく地質予測

手法関して記載する。本手法は切羽が進行し新たな地質情報が明

らかとなった際に、低コストで切羽前方地山の性状を確率論的に

予測することが可能である。また本手法を创世トンネルに適用し

た結果、特に切羽前方の比較的短い区間にて良好な精度で地質を

予測できた。

创世トンネルは福建省に位置する延長 764m の NATM により構築

される双設道路トンネルであり、支保構造および掘削サイクルは

図-1 に示すとおりである。BQ システムと切羽からの前方ボーリン

グをもとに岩石の硬さ(H)としてインタクトな岩石が比較的硬質

(1)か軟質(2)かを、ジョイントに起因する指標(K)として、亀裂

が比較的多いものから少ないものに分けて(1)~(3)を、不連続面

の性状(Q)として、開口・長さ・介在物等の程度を表す(1)~(3)

のインデックスを、さらに地下水に関する指標(C)として切羽が

ドライか湧水があるかによって(1)~(2)のインデックスそれぞれ

設定した。これをもとに表-1 に示す 36 種類のマトリックスを作

成するとともに、地質情報のパラメータに関する遷移強度マトリ

ックスとして表-2 を準備した。また技術者の観察結果が場所ごと

に異なるため、技術者の過去の経験から主観的に推定された可能

性マトリックスとして表-3 を用意した。これらのマトリックスを

利用してマルコフ確率過程とベイズ更新手法により支保パターン

ⅢとⅣの確率曲線を表した結果を図-1 に示す。なお同図は、実際

の地質状況を対比しているが、確率曲線と実際の地質は概ね同等

であると考えられる。ただし、本手法は地質が徐々に変化するこ

とを前提とするものであり、地質が急変するような箇所への適用

は困難である。

図-1 支保構造および掘削サイクル

表-1 创世トンネルにおける地質情報テーブル

表-2 地質パラメータに関する遷移強度マトリックス

表-3 地質パラメータに関する可能性マトリックス

図-1 地質予測確率曲線と実際の地質の対比