con dens or

48
サービス VOL 5 デンソーカーエアコンは、昭和32年(1957年)に「デン ソーカークーラー」の愛称で発売以来、めざましいモータリ ゼーションの発展とともに、「より快適な空調環境」を追求 し、カークーラーからカーエアコン、オートエアコンへと技 術革新しています。 この基礎シリーズでは、最新の新しい技術も紹介しながら連 載します。 第1回� 第1回� 基礎技術シリーズ� カーエアコンの基礎 ”� 今回より「カーエアコンの基礎」をシリーズで紹介していきます。� 、カーエアコ 便 ・安 められ、 し、エアコ が一 しています。 じめ %を 越えています。また、そのなかで オートエアコ %を越えています。 エアコ オートエアコ カーエアコ して に保つように られており、 ちろんのこと、 をほとんど としない れた っています。 たとえ いむし に運 すると、クー ニットで され、ヒーター ニットで されるので、 から てくる 変さわ かになりま す。 くむし 冷房・除湿� 房� 1 1 カーエアコン装着率の推移 2 2 カーエアコンの機能 〈日本国内乗用車のカーエアコン装着率〉

Upload: yohanmulyono

Post on 27-Jun-2015

2.775 views

Category:

Documents


33 download

TRANSCRIPT

Page 1: Con Dens Or

サービス技報 VOL.435 98-45

デンソーカーエアコンは、昭和32年(1957年)に「デンソーカークーラー」の愛称で発売以来、めざましいモータリゼーションの発展とともに、「より快適な空調環境」を追求し、カークーラーからカーエアコン、オートエアコンへと技術革新しています。この基礎シリーズでは、最新の新しい技術も紹介しながら連載します。

第1回�第1回�基礎技術シリーズ�“ カーエアコンの基礎 ”�

今回より「カーエアコンの基礎」をシリーズで紹介していきます。�

高温多湿の日本では、カーエアコンの快適性と利便性・安全運転への寄与が認められ、急速に装着率が上昇し、エアコン装着が一般化しています。現在では、乗用車をはじめ軽自動車でも装着率95%を越えています。また、そのなかでもオートエアコンの装着率は、現在50%を越えています。

100

50

070 75 80 85 90 95 2000

装 着 率�

(%)�

年 代�

エアコン全体�

オートエアコン全体�

カーエアコンは車室内の空気を冷却・除湿して快適に保つように作られており、夏季はもちろんのこと、冷房をほとんど必要としない梅雨時や秋雨時に非常に優れた機能をもっています。たとえば、湿度が高いむし暑い日本特有の日に運転すると、クーリングユニットで冷却・除湿され、ヒーターユニットで適温に加熱されるので、吹き出し口から出てくる空気(風)は、湿度が低く大変さわやかになります。

湿度が高くむし暑い日�真夏の暑い日�(梅雨時や秋雨時)�

冷房・除湿�冷 房�

11 カーエアコン装着率の推移

22 カーエアコンの機能

〈日本国内乗用車のカーエアコン装着率〉

Page 2: Con Dens Or

サービス技報 VOL.435 98-4 6

空気調和とは、室内の空気を使用目的に応じて「温度」・「湿度」・「空気の流れ」・「空気の清浄度」を調整して、一定の状態に保つことをいいます。カーエアコンの空気調和とは、乗員が快適と感じることのできる環境を作りだすために、車室内の温度・湿度・空気の流れ・空気の清浄度のすべて、または、各々について調整することです。

  温度�(空気の冷却・�    加熱)�

  湿度�(空気の除湿・�    加熱)�

風速�・方向�

(空気の流れ�の調節)�

 清浄�(空気の清浄化)�

空気�

調和�

温度�

空気の冷却�(クーリングユニット)�

空気の加熱�(ヒーターユニット)�

空気の除湿�(クーリングユニット)�

空気の清浄度�(エアフィルター)�

湿度�

風速・方向�

清浄�

空気の風速�(ブロワーユニット)�

空気の方向�(ヒーターユニット・ダクト)�

空気調和�

クーリングユニット�

ブロワーユニット(ベンチレーター)�

エアフィルター�

ヒーターユニット�

ここで空気を冷やします。�

車室内の空気または新鮮な外

気を冷却および除湿して、車

室内を冷房するために使用す

る機器です。�

ここでホコリを取り除きます。�

車室内や、外から取り入れる空気

中のホコリなどを除去して、空気

の清浄化をはかる機器です。�

ここで風をおこします。�

新鮮な外気を車室内に取り入れたり、車内の空気

を循環させながら、風量を調節する機器です。�

ここで空気を暖めます。�

車室内の空気または新鮮な外気を

加熱して、車室内を暖房したり、

風の吹き出し口を調節するために

使用する機器です。�

33 空気調和

基礎技術シリーズ�

自動車に装着されている空気調和のための機器には、次のようなものがあります。

Page 3: Con Dens Or

サービス技報 VOL.435 98-47

44 カーエアコンの種類

基礎技術シリーズ�

カーエアコンは、装着位置および制御方式の違いによって次のように分類できます。

装着位置の分類では、フロントエアコンとリヤクーラーを組み合わせたものをデュアルエアコン、フロントエアコンとオーバーヘッドエアコンを組み合わせたものをオーバーヘッドデュアルエアコンと呼びます。

※デュアル:dual(2重の)

装着位置�

制御方式�

1.フロントエアコン�

4.マニュアルエアコン�

5.オートエアコン�

2.リヤエアコン(クーラー)�

3.オーバーヘッドエアコン(クーラー)�

カーエアコン�

カーエアコンの基本的なもので、クーリングユニットが、ダッシュパネルの奥に取り付けられ、ヒーターユニットと接続されています。ブロワーユニットは、外気または内気を吸い込み、空気(風)を送り出します。冷風の吹き出し口は、中央部とさらに運転席側、助手席側のそれぞれにサイド吹き出し口が、設けられています。一方、温風は足元から吹き出します。さらに、ガラスの曇りをとるデフロスター吹き出し口があります。

ヒーターユニット�

クーラーユニット�

ブロワーユニット�

リヤクーラーは、クーリングユニット、ブロワーユニットをトランクルーム内に装備したものです。冷風は後部から吹き出し、フロントエアコンと同時装備することにより、車室内を冷房するためのクールダウン特性が非常によく、室内温度分布も均一化されて快適な空調環境を得ることができます。

ブロワーユニット�リヤクーリングユニット�

ちょっと一言

4-1 フロントエアコン

4-2 リヤクーラー

Page 4: Con Dens Or

サービス技報 VOL.435 98-4 8

基礎技術シリーズ�

ワゴン車などの冷房装置として最適なクーラーです。天井部にリヤクーラーを持つユニットタイプです。車室内の前部にフロントエアコンを装着し、セットで使用すると、クールダウン特性、温度分布とも非常によく、ワゴン車にふさわしい冷房効果が得られます。

オーバーヘッドクーラーユニット�

一般的なエアコンの制御方式であり、乗務員の好みによって、乗務員みずからが調整します。吹き出し口の温度は、温度調整レバーによって調整します。さらに、風量、吹き出し口切り替え、内外気切り替えなどをそれぞれのレバー(またはスイッチ)によって操作する方式です。

自分で調整�

オートエアコンは、車室内の温度を希望温度に設定すると、室内・外の温度変化や日射の影響をコンピューターによって自動補正し、車室内温度を常に設定温度に保つよう自動コントロールする方式です。オートエアコンの制御機能としては、(1)温度調整(2)風量調整(3)吹き出し口調整があり、すべての機能を持ったものを「フルオートエアコン」、(2)と(3)のうちどちらか、または両方の機能がマニュアル固定された状態を「セミオートエアコン」と区別します。

20 3025

希望温度(18℃~32℃)�

今の冷房負荷を調べる�

室内温度(内気センサー)�外気温度(外気センサー)�太陽光の強さ(日射センサー)�

オートエアコン�アンプリファイヤー�

オートエアコン�スイッチON

AUTO

(1)温度調整�  (何度の風を)�

(2)風量調整�  (どれだけ)�

(3)吹き出し口� 調整�

セミオートエアコン�

フルオート�エアコン�フルオート�エアコン�

(どの吹き出し�  口から)�

4-5 オートエアコン

4-4 マニュアルエアコン

4-3 オーバーヘッドクーラー

Page 5: Con Dens Or

サービス技報 VOL.436 98-65

第2回�第2回�基礎技術シリーズ�“ カーエアコンの基礎 ”�

今回は「冷房の原理」について説明します。�

自然現象の中には、さまざまな「冷房の原理」が潜んでいます。みなさんが身近で体験される「冷房の原理」としては、アルコールを皮膚に塗付すると冷たく感じたり、夏、庭に打ち水をすると涼しく感じたりする事などがあげられます。これは、アルコールまたは水が蒸発するときに周囲から熱(潜熱と呼びます)を奪うからです。つまり、液体(アルコールや水など)が気体(アルコール蒸気や水蒸気など)に変わるには、熱(蒸発熱)が必要であり、熱を奪われる側(液体に接している部分)は冷やされることになります。これらは、冷房の原理を端的にあらわす自然現象であり、冷房はこのような自然現象を利用して、冷たさや涼しさを得ています。

11 自然界の冷房

アルコールが�    蒸発する�

熱�

アルコールを含んだ綿�

気体�

液体�

熱�

熱�

熱�

熱�

熱�

熱� 周囲から�熱を奪う�

蒸発�

また、コップの中に、氷水を入れて大気中に置くと、コップのまわりに水滴が付着します。これは、空気中の水蒸気(水が気化したもので空気中には必ずあります)がコップの中の氷水に熱を吸収されて、液化したものです。(氷水は凝縮熱によって逆に暖められます)

このように物体に熱を加えたり、物体から熱を奪ったりすると、その物体の温度が変化したり物体の状態が変化します。物体の変化にともなう熱を潜熱と呼び、変化に応じて熱を放出したり、熱を吸収したりします。

■ 熱を放出する:凝縮熱・凝固熱・凝着熱(囲りを暖める)

■ 熱を吸収する:蒸発熱・融解熱・昇華熱(囲りを冷やす)

吸�収�

放出�

吸収�吸

収�

放出�

放�出�

固体�気体�

液体�融解�

凝縮�

凝固� 昇華�

蒸発�

凝着�

Page 6: Con Dens Or

サービス技報 VOL.436 98-6 6

基礎技術シリーズ�

22 冷房の原理

液体を蒸発させ周囲から熱を奪うことによって部屋を冷却するときに、蒸気をそのまま大気中に捨てていくのでは、液体を常に補充しなければならず実用的ではありません。そこで、いったん蒸発したガスを冷却して再び液体に戻し、循環させています。気体を液化させるためには、気体の熱を奪ってやることが必要ですが、同時に気体を圧縮して圧力を高くしてやれば比較的容易に液化することができます。実際の冷房装置では、気体を加圧するコンプレッサー(圧縮機)、気体の熱を奪うコンデンサー(凝縮器)が必要になります。

冷�

(熱)�

保温箱�

ガス�

コック�温度計�

暖�

蒸発しやすい液体�

熱� 熱�蒸発�

液�

(周りが冷やされる)�

気体になって移動�

液体にして戻す�(循環させる)�

気体�凝縮�

気 体 �

33 冷房装置の条件一般的に冷房装置とは、蒸発しやすい液体(冷媒と呼びます)を装置内に封じ込めて各装置をパイプで接続し循環させ、その途中で「気化-液化-気化」を繰り返す装置のことを言います。カーエアコンでは、蒸気圧縮式冷凍サイクル方式を採用しています。

良く冷える冷房装置の条件は、まず、できるだけ低い温度で気化し、また、容易に液化する性質の冷媒が使われていること、そして、冷媒が蒸発器(エバポレーター)内で効率良く気化することです。

熱を奪う�

熱を放散する�

コンプレッサー�

コンデンサー�

エキスパンションバルブ�

低圧�高圧�

エバポレーター�

液体�

霧状�

気体�

Page 7: Con Dens Or

サービス技報 VOL.436 98-67

基礎技術シリーズ�

44 カーエアコンの構成冷房装置(冷凍サイクル:冷媒が循環する通路)とその中の冷媒状態を観察してみると、

●エバポレーター(蒸発器):(クーリングユニット内)冷媒が気化して、パイプの周囲から熱を奪い、周囲(室内)を冷やす部分です。エバポレーター内では、霧状の冷媒が車室内の熱を奪って急激に蒸発し、出口付近では完全な気体の冷媒になっています。

●コンプレッサー(圧縮機)エバポレーターで蒸発した冷媒ガスを吸入・圧縮し、コンデンサーで容易に液化するよう加圧します。コンプレッサーで圧縮された冷媒は、高温・高圧の気体になります。

●コンデンサー(凝縮器)コンプレッサーで圧縮された高温、高圧のガス状冷媒を冷やして液化させます。冷媒がコンデンサーに入り、通過する間に冷却されて気体から液状の冷媒になります。このとき、コンデンサー出口では確実に液体になっていることが必要です。もし、コンデンサーでの冷却が十分でないと気体状の冷媒が残ってしまい冷房能力が低下します。

クーリングユニット�

コンプレッサー�

低圧ホース�

コンデンサー�

レシーバータンク�

高圧ホース�

●レシーバータンク(貯蔵庫)レシーバータンクは、余分な冷媒を一時貯蔵する容器です。カーエアコンは、コンプレッサーをエンジンで駆動するため、常に回転速度が大きく変動します。また、車内は外気温度の影響を大きく受け、特に夏季、炎天下に駐車されているときの車内温度は大変高くなります。このように、コンプレッサー回転や外気温度が変化すると、サイクル内を循環する冷媒量が大きく変動します。この変動を調整するのも、レシーバータンクの役目です。

●エキスパンションバルブ(膨張弁):(クーリングユニット内)エキスパンションバルブは、膨張弁・絞り弁であり、エバポレーター内を低圧室にする関所の働きがあります。高圧状態の液冷媒を小さな孔から噴射させることにより、低圧・低温の霧状の冷媒にして、気化(蒸発)しやすいようにします。

Page 8: Con Dens Or

サービス技報 VOL.436 98-6 8

基礎技術シリーズ�

55 カーエアコンの冷媒カーエアコンは、ほかのルームクーラーと大きく異なるのは、エンジンに装着されたコンプレッサーの振動を吸収するためのゴムホースによる冷媒配管が不可欠なところです。このため、ゴムを劣化させないHFC-134aが用いられています。また、HFC-134aが使用される理由は次のことがあげられます。

〔1〕環境保護上、オゾン層を破壊しない。

〔2〕蒸発の潜熱が大きく、液化が容易である。

〔3〕燃えたり、爆発したりしない。

〔4〕毒性、腐食性がなく食物、衣服も害しない。

〔5〕容易に入手できる。

66 冷媒の特性カーエアコンの冷媒であるHFC-134aの特性は、図のようになります。曲線から明らかなように、冷媒は強く圧縮されていると相当高温まで液状ですが、低圧の状態では0℃でも-10℃でも蒸発して気体となります。例えば「0℃で気化する状態ではエバポレーターも0℃の状態にある」ということであり、このエバポレーターの中を通り抜けてくる空気は冷たくなるはずです。もし-5℃で気化する状態まで圧力を下げると、エバポレーターも-5℃に保たれますから、いわゆる霜付き状態になり、風通しが悪くなって結局冷えないことになります。次に気化した冷媒を液化しなければなりませんが,自動車におけるコンデンサーの真夏の環境を考えると、これを40℃というような低い温度に保つことは不可能です。今60℃ぐらいまでは可能と考えると、HFC-134aは60℃では約1.7MPa(約17kgf/cm2G)以上では液体になります。また、気体状の冷媒を1.7MPaまで圧縮する(コンプレッサーの役目)と、その気体の温度は約80℃までも上昇します。すなわち、コンデンサー入口の気体の温度は80℃ぐらいとなり、約20℃冷やされるとコンデンサー出口では約60℃の液化冷媒になることをこの曲線は説明しています。

(気体)�

(液体)�

これだけ�冷やせば�液になる�

気 体�

液 体�

-300.00�(0)�

0.50�(5.1)�

1.00�(10.2)�

1.50�(15.3)�

2.00�(20.4)�

2.50�(25.5)�

-20

0

20

40

60

80

90

冷 媒 温 度

ゲージ圧 MPa(kgf/cm2)�

(℃ )�

HFC-134aの特性

CH2FCF3

-26.07℃

198.7kJ/kg

化 学 式

沸点(1atm)

蒸発潜熱(0℃)

次号へ続く

Page 9: Con Dens Or

サービス技報 VOL.437 98-85

第3回�第3回�基礎技術シリーズ�“ カーエアコンの基礎 ”�

今回は、「カーエアコンの心臓部」とも呼ばれる「コンプレッサー」について説明します。��

11 コンプレッサーの役割

22 コンプレッサーの種類

        クランク式(列型)    代表例(2C90、2M110、3A188)�

往復式     斜板式(R型)      代表例(6E、6P、10P、10S)�

        ワップル式        代表例(6CA、7SB)�

                     偏心ローター式    代表例(TV)�

                     同心ローター式    代表例(SV06)�

        スクロール式       代表例(SC08、SCS08) �

ベーン式�回転式�

容積形�

クランク式� 斜板式� ワップル式� ベーン式�(偏心ローター式)�

ベーン式�(同心ローター式)�

スクロール式�

ローター�

ローター�

ベーン� ベーン�(5粒)�

可動スクロール�固定スクロール�

コンプレッサーを分類すると、容積形とターボ形(気体力学形)に分けられますが、カーエアコン用はすべて容積形です。コンプレッサーは、ガスを圧縮する方式および構造上、次のように分類できます。また、現在の主流は斜板式ですが、市場の小型・低騒音化のニーズにこたえるため、ベーン式・スクロール式の採用が増加してきています。

カーエアコン用コンプレッサーは、エンジンよりベルトおよびマグネットクラッチを介して駆動されています。エバポレーターで車室内の熱を奪って気化した低温・低圧の冷媒ガスを吸入・圧縮して、高温・高圧になったガスをコンデンサーに送り出す役割をしています。

市場ニーズ�

コンプレッサーの対応�

年代�

1960 1970 1980 1990 2000

・冷房能力�

・軽量化�

・小型化,低騒音�

・省動力,快適性�

・クランク式�・斜板式�

・ベーン式�・スクロ� ール式�

高温  �高圧の�ガ ス�

  低温�低圧の�ガ ス�

Page 10: Con Dens Or

サービス技報 VOL.437 98-8 6

基礎技術シリーズ�

33 斜板式コンプレッサーの構造・作動

デンソーコンプレッサーは、型式の違いや容量の違いによって何10種類も存在します。ここでは、現在主流として生産されています斜板式コンプレッサーとスクロール式コンプレッサーについて説明します。

斜板式コンプレッサーの特徴は、シャフトに斜板が斜めに固定されていることです。この斜板に5対(10気筒)のピストンがセットされ、シャフトが回転すると、斜板によってピストンがシャフトと同一方向の往復運動を行います。

プレッシャーリリーフバルブ�

リヤハウジング�

ピストン�

シリンダー�斜 板�

フロントハウジング�

マグネットクラッチ�

シャフトシール�

1対のピストンの両端には、それぞれシリンダーが配置されており、片側が圧縮行程にあるときは、他方は吸入行程となります。このため、シャフトが1回転すると10気筒のシリンダーが吸入-圧縮を行うため、トルク変動や吐出圧が平滑され低騒音化を図っています。

ピストン�

ピストン�

シャフト�

斜板�シリンダー�

ピストン�

ピストン配列(10気筒)� 斜板式の原理�

また、シリンダーの両端のバルブプレートには、吸入孔、吐出孔があり、それぞれに吸入弁(サクションバルブ)、吐出弁(ディスチャージバルブ)が組み付けられています。コンプレッサー内部の潤滑は、冷媒ガス中に含まれるコンプレッサーオイルと斜板による遠心力はねかけ式により行われます。一部機種(大容量タイプ、冷凍機専用タイプ)では、オイルポンプを用いてコンプレッサーオイルを強制的に圧送しているタイプもあります。

吐出弁�

ピストン�吸入弁�

(ディスチャージバルブ)�

(サクションバルブ)�バルブ�プレート�

吐出�

吸入�

シリンダー�

注:バルブは静止状態ではどちらも�  閉じている。�

3-1 構  造

Page 11: Con Dens Or

サービス技報 VOL.437 98-87

基礎技術シリーズ�

② 圧縮行程次に、シリンダーの容積が小さくなってシリンダー内の圧力が吐出側(高圧側)より高くなると、吐出弁が開いて高温・高圧になった冷媒ガスがコンデンサーへ送り出されます。このとき、吸入弁はシリンダー内の圧力でバルブプレートに圧着され、バルブプレートの吸入孔をふさぎ、冷媒ガスが吸入側(低圧側)へ逆流しないようになっています。

ディスチャージバルブ� ディスチャージバルブ�

サクションバルブ� サクションバルブ�

吸入� 吐出�

吸入�

吐出� 吸入�

吸入�

圧縮�

ピストン�

ピストン�

ピストン�

ピストン�

圧縮�

① 吸入行程斜板の回転によってピストンが動き、シリンダーの容積が大きくなってシリンダー内の圧力が冷凍サイクルの低圧側より低くなると、吸入弁(サクションバルブ)を押し開いて冷媒ガスがシリンダー内に入ります。この際、吐出弁(ディスチャージバルブ)は高圧側の圧力によってバルブプレートに圧着され、バルブプレートの吐出孔をふさぐため、高圧側からシリンダー内へ逆流しないようになっています。

3-2 作  動

Page 12: Con Dens Or

サービス技報 VOL.437 98-8 8

基礎技術シリーズ�

44 スクロール式コンプレッサーの構造と作動

スクロール式コンプレッサーは、一対のうず巻形をした固定スクロールと可動スクロールで構成されています。固定スクロールはハウジングと一体になっており、可動スクロールがシャフトの回転によって円運動(同じ姿勢を保ちながら)します。そのため、両スクロールで仕切られる空間の容積が変化し、冷媒を吸入・圧縮します。

吐出ポート�

吸入ポート�

吐出ポート�

固定スクロール�

可動スクロール�

シャフト�

高圧側�サービスバルブ�

吐出弁�

吐出ポート�

ベアリング�

シャフト�

シャフトシール�

ベアリング�

可動スクロール�

固定スクロール�

可動スクロール�固定スクロール�

③ 注目すべき点●旋回スクロールは公転運動旋回スクロールは、回転(自転)するのではなく天地の姿勢をそのままに、その場で公転運動をするだけです。●スクロールは1気筒(360°ごとに圧縮)図をもう一度注視しましょう。360°進んだところで注目した圧縮室の外側に、新しい圧縮室が出来始めています。つまり、360°ごと(=1回転ごと)に新しい圧縮室が出来て、360°ごとに1回吐出するので、スクロールは1気筒コンプレッサーです。

可動スクロール�吸入ポート�

吐出ポート�固定スクロール�

(a) 0°� (b) 120°� (c) 240°�

(d) 360°�

(e) 480°�

(f) 600°�(g) 720°�(h) 840°�

(i) 960°�

(j) 1080°�

(j) 1080°�

吸入�(a)��

(d)��

(d)��

(h)

(h)

(b)��

圧縮�

吐出�

4-1 構  造

4-2 作  動

① 吸入・圧縮可動スクロールの円運動にともない、固定スクロールとの間の容積が増加するとき、吸入ポートから冷媒が吸入されます。② 吐出冷媒圧力が高くなると、吐出ポートから吐出弁を押し開いて冷媒ガスが吐出されます。この方式においては、コンプレッサーシャフトが1回転につき1回吐出されます。

次号へ続く

Page 13: Con Dens Or

サービス技報 VOL.438 98-107

第4回�第4回�基礎技術シリーズ�“ カーエアコンの基礎 ”�

今回は、コンプレッサーから送り出された冷媒を液化する「コンデンサー」・冷媒の貯蔵庫「レシーバー」・最近採用が増加している「サブクールコンデンサーシステム」について説明します。�

11 コンデンサーの機能

22 コンデンサーの種類

コンデンサーは、コンプレッサーから送られてきた高温・高圧の冷媒ガスを冷却し、凝縮液化させるための熱交換器です。このときにコンデンサーが放出する熱量は、エバポレーターで吸収した熱量とコンプレッサーの圧縮により加えられた熱量との和に等しくなります。コンデンサーは、チューブとフィンから構成され、ラジエーター前面に取り付けられ、エンジンクーリングファンや電動ファンで冷却されます。コンプレッサーから吐出された冷媒ガスは、下図のA点で、約1.7Mpa・80℃程の高温・高圧状態にあります。この冷媒がチューブ内を通る間に外気の風で冷却され、下図のB点以下になると液化されます。

コンデンサー�

レシーバー�

クーラーユニット�

コンプレッサー�

外気�

放熱�

冷風�(吸熱)�

0.00(0)�

0.50(5.1)�

1.00(10.2)�

1.50(15.3)�

2.00(20.4)�

2.50(25.5)�

-30

-20

0

20

40

60

80

90

ゲージ圧力 MPa(kgf/cm2)�

冷 媒 温 度 (℃)�

気 体�これだけ�冷やせば�液になる�

A点�

B点�

液 体�

冷媒�

チューブ�

フィン�

コンデンサーは、チューブやフィンの構造の違いにより、下記のように分類されます。現在は小型で高性能なマルチフロータイプ(または、パラレルフロータイプとも呼ぶ)の開発により、従来のサーペンタインタイプに替わって多く採用されています。

2-1 フィンとチューブの構造

プレート�フィン�

チューブ�

チューブ�

コルゲート�  フィン�

・プレートフィンタイプは、フィンチューブを挿入しチューブを拡管して接合しているため、性能が悪くサイズが大きくなります。・コルゲートフィンタイプはチューブを蛇行状に曲げ、その間にフィンを入れ、ろう付け接合されています。コルゲートフィンタイプでは空気に触れるフィン表面面積が大きくなるため、性能が良くなります。

プレートフィンタイプ コルゲートフィンタイプ

Page 14: Con Dens Or

サービス技報 VOL.438 98-10 8

基礎技術シリーズ�

33 コンデンサーの冷却と取り付け位置

2-2 サーペンタイプの構造

2-3 マルチフロー(MF)タイプの構造

チューブを蛇行状に曲げ、コルゲートフィンと組み合わせた構造で、ジョイント部へのチューブ取り付け本数により、2パス、3パス化し抵抗を下げられるので熱交換率がアップしています。

両端のタンクの間に配管されたチューブに冷媒が同時に流れるので抵抗が下がります。そのため、薄いチューブにすることができ、また、フィンを多くできるので熱交換率が良くなります。また、タンク内に仕切り板を入れることにより最適なパス設定ができます。

2パス�

1パス�2パス�3パス�

1パス�

コンデンサーは、ラジエーターの前面に配置され、独自に車両ボデーにゴムマウンドを介して固定されるのが一般的です。コンデンサー冷却用ファンは、ラジエーター冷却ファンと共用したり、コンデンサー専用の電動ファンが組み付けられた車両があります。電動ファンの回転速度は、冷凍サイクル内の圧力あるいは、冷却水温に応じて2~3段階に制御しています。

冷却用風�(フロントから)�

コンデンサー�

コンデンサー用電動ファン�

ラジエーター用� 電動ファン�

44 レシーバーの機能レシーバーは、コンデンサーとエキスパンションバルブの間に取り付けられており、コンデンサーで液化した冷媒を、冷房負荷に応じてエバポレーターに供給できるよう一時的に冷媒はここに貯えられます。また、レシーバー内部には、冷凍サイクル内の「ゴミ」や「水分」を取り除くためにストレーナーと乾燥剤が封入されています。もし、冷凍サイクル中に水分が含まれていると、各機能部品を腐食させたり、エキスパンションバルブの細孔で凍結して冷媒の流れを阻害することになります。また、配管の接続方法の違いによりブロックジョイントタイプとユニオンタイプがあります。

乾燥剤�

� �

ストレーナー�

IN� OUT�

チューブ�

ドライヤー�

乾燥剤�

ストレーナー�

OUT

INサイトグラス�

●冷媒中のガスと液の分離(気液分離)レシーバーは、冷媒を一時的に貯える他に、冷媒中のガスと液を分離する役割があります。コンデンサーで冷却された冷媒は、外気の条件によっては必ずしもすべて液化されていない場合があります。もし、ガス冷媒がエキスパンションバルブに送られると冷房能力が低下してしまいます。レシーバー内部では、液冷媒が下側、ガス冷媒が上側に溜まるため、レシーバー出口のパイプは底の方から液冷媒だけを取り出すようになっており、ガスと液の分離が行なわれます。

ガス冷媒�

液冷媒�

サーペンタイン 2タイプ

マルチフロー(MF)U字ターンタイプ マルチフロー(MF)S字ターンタイプ

サーペンタイン 3タイプ

ブロックジョイントタイプ ユニオンタイプ

Page 15: Con Dens Or

サービス技報 VOL.438 98-109

基礎技術シリーズ�

5-1 構  造

55 サブクールコンデンサーシステム冷凍サイクルのコンデンサーから送り出された冷媒をサブクール(過冷却)液にすると効率が上がることは従来から知られています。しかし、従来の技術で実用化するには、構成が複雑となり、重量の増加、搭載性の悪化ほか使用冷媒量の増加など多くの問題があります。しかし、マルチフロータイプのコンデンサーや気液分離器(モジュレーター)の開発により、従来のレシーバーサイクルに比べ、効率アップだけでなく、使用冷媒量や重量が減り、搭載性が向上するという特徴を持った『サブクールコンデンサー』を開発しました。

従来のレシーバーサイクル(コンデンサー+レシーバー)では、コンデンサーで凝縮された気液(気体と液体)二相冷媒をレシーバーにて気液分離し、液のみをエバポレーターに送っています。新開発のサブクールコンデンサーでは、一つのコンデンサーの中を凝縮部と過冷却部とに分け、その間に気液分離器(モジュレーター)を配置することにより、一度気液分離した液冷媒をさらに冷却することで液冷媒自体の持つエネルギー(エンタルピー)を増大させ、冷房性能の向上(高効率化)を図りました。

マルチフローコンデンサー�

サイトグラス�

レシーバータンク�

 気液分離器�(モジュレーター)�

サイトグラス�

マルチフローコンデンサー�

乾燥剤� 気液分離器(モジュレーター)�・液体と気体を分離します。�

凝縮部�・気化冷媒を冷却し、液冷媒に変えて行きます。�

気化冷媒�

液冷媒�

過冷却部(サブクール部)�・凝縮部およびモジュレーターを通過した液冷媒(一部気体を含む)を� さらに冷却し、100%に近い液冷媒にします。�

フィルター�・サイクル内のゴミなどを取り除きます。�

レシーバーサイクル サブクールサイクル

Page 16: Con Dens Or

サービス技報 VOL.438 98-10 10

基礎技術シリーズ�

66 気液分離器(モジュレーター)の役目

77 サブクールサイクルの冷媒ガス充てん上の注意

気液分離器は、従来のレシーバーの役目をしています。レシーバーと大きく異なるのは、右図のサブクールコンデンサーの構造図でも解るように、冷媒が気液分離器の途中から流れ込み、下側から流れ出す構造になっています。これは、レシーバーの機能で説明したように気液を効率良く分離し、液のみをサブクール部へ送るようになっています。気体と液体は、次のように分離されます。(1)流入するガスの一部は、浮力によりタンク内のガ

ス域(気液分離器の上部)に入るが、そのガスは外気により冷却され凝縮し、液面はあるところでバランスします。

(2)さらに、流入するガス量が多くなるとバランスがくずれ液面が押し下げられ、替わりに液冷媒が冷凍サイクル内に供給されます。

(3)逆に、流入する冷媒にガスが少なくなるとタンク内の液が冷却され、さらに上部のガスも凝縮され、液面が上昇し、冷凍サイクル内の余剰冷媒を貯えます。

気液分離器�(モジュレーター)�

気体�

液体�

凝縮部�

サブクール部�サブクール液�

高圧ガス�

気体�

液体�

凝縮部�

サブクール部�

ガスが多い�

液面が�下がる�

気体�

液体�

凝縮部�

サブクール部�

ガスが少ない�

液面が�上がる�

気液分離器�(モジュレーター)�

気液分離器�(モジュレーター)�

レシーバーサイクルでは、冷媒ガスの泡消え点が冷房能力安定域(棚)の入り口にありますが、サブクールサイクルでは泡消え点が冷房能力安定域(棚)の手前にあたるため、適正充てん量まで50~100g補充する必要があります。(泡消え点で冷媒ガス補充を止めると冷房能力が不足気味になります。)なお、オーバーチャージも燃費悪化や冷房能力不足となりますので適正冷媒ガス量の充てんを実施してください。

冷媒充てん量の比較�

サブクールコンデンサーサイクルの�方が、レシーバーサイクルに比べて�約100~150g少ない。�

適正量�の範囲�補充�

50~100g

棚�

泡消え点�50g

棚�

高 圧 圧 力�

冷  媒  量 �

サブクールサイクル�

レシーバーサイクル�

サブクールサイクル�時の冷媒充てん量�

レシーバーサイクル�時の冷媒充てん量�

オーバーチャージ域�

オーバーチャージ域�

●●ガスが多い場合●● ●●ガスが少ない場合●●

次号へ続く

Page 17: Con Dens Or

サービス技報 VOL.439 98-125

第5回�第5回�基礎技術シリーズ�“ カーエアコンの基礎 ”�

今回は、冷風を作り出すエキスパンションバルブとエバポレーターについて説明します。�

11 エキスパンションバルブ

①役 割エキスパンションバルブは、次に示す二つの働きをします。(1)高温・高圧の液冷媒を小さな孔から噴射させることにより急激に膨張させて、低温・低圧の霧状の冷媒

にします。(2)エバポレーター内における冷媒の気化状態に応じて冷媒量を調節します。

エバポレーターの能力を十分に発揮するには、液冷媒が周囲の熱を奪って常にエバポレーター出口で蒸発が完了するような状態に保たなければなりません。そのために、車室内温度(冷房負荷)の変動およびコンプレッサー回転速度の変動に応じて冷媒量を自動的に調節します。

② 構 造エキスパンションバルブの代表的な構造と特徴を下記に示します。

1-1 役割と構造

ジョイント接続型� ボックス型�

取付け例�

構造�

感熱筒(感温部)�位置�

特徴�

管路外�

エバポレーター出口部に感熱筒と均圧管�の接続が必要です。�

管路内�

エバポレーター出口の冷媒をボックス型エキス�パンションバルブ内部に通しているため、圧力、�温度を内部で検出できます。�

エバポ�レーター�

エキスパンション�バルブ� エバポレーター�

エキスパンション�バルブ�

感熱筒�

ダイヤ�フラム�

出口� 出口�

出口�

入口�

高圧入口�

均圧管�

感温棒�

低圧入口�

ダイヤ�フラム�

Page 18: Con Dens Or

サービス技報 VOL.439 98-12 6

基礎技術シリーズ�

1-2 冷媒量の調節冷媒量を調節する基本的なしくみは、ダイヤフラム室とそれに直結されたニードル弁の開閉によって行われます。図においてダイヤフラム室のA室には冷媒ガスが封入されています。このA室の圧力は、エバポレーター出口付近の冷媒温度が高いときは大きく、冷媒温度が低いときは小さくなるしくみになっています。(A室の圧力変化のしくみは、エキスパンションバルブの構造によって異なるので、具体的な作動は次に説明します。)一方、B室にはエバポレーター出口付近からエバポレーター蒸発圧力が加わります。いま、一定量の冷媒が流れているとき、ダイヤフラムはA・B室の圧力とスプリングの力によってニードル弁を一定の開度に保ちます。しかし、冷房負荷(室内温度など)が変動するとA室の圧力が変わり、ニードル弁を左右に移動させて冷媒量を調節します。

ニードル弁� ダイヤフラム�

冷媒ガス封入�

エバポレーター出口付近の�冷媒温度が伝わる。�

コンプレッサーへ�(低圧)�

エバポレーター�

スプリング�

(高圧)�レシーバーから�

B A

① 構 造構造は,ダイヤフラム・感温棒・ニードル弁(ボール)などで構成されており,ダイヤフラムの上部には冷媒ガスが封入されています。ダイヤフラム下部には,エバポレーター出口の圧力が加わります。

1-3 ボックス型エキスパンションバルブ

ニードル弁�

感温棒�

ダイヤフラム�

スプリング�

(エバポレーター)�

(コンプレッサーへ)�(レシーバーから)��② 作 動

感温棒はエバポレーター通過後の冷媒温度を感知します。そのときの温度は感温棒を通じてダイヤフラム室上部の冷媒ガスに伝わります。そのため、温度によりガス圧力が変化し、ダイヤフラムに直結している感温棒を動かしてニードル弁の開度を調節します。

▼エバポレーター出口温度が低いとき(冷房負荷が小さいとき)

ダイヤフラム室中のガス圧力が低くなり、体積が減少し感温棒が右に移動してニードル弁は絞られます。

▼エバポレーター出口温度が高いとき(冷房負荷が大きいとき)

ダイヤフラム室中のガス圧力が高くなり、体積が増加し感温棒が左に移動してニードル弁は開き、エバポレーターへ冷媒が多く供給されます。

エバポレーター�

感温棒�

ダイヤフラム�

コンプレ�ッサーへ�(低圧)�

ニードル弁�レシーバー� から�(高圧)�

Page 19: Con Dens Or

型 式 均圧管 用 途

外部均圧式 有 大容量

内部均圧式 無 小容量

サービス技報 VOL.439 98-127

基礎技術シリーズ�

① 構 造構造は,ダイヤフラム・ニードル弁・感熱筒などで構成され、均圧管の有無により次のように分類されます。

② 作 動感熱筒内のガスは、エバポレーター通過後の冷媒温度によりガス圧力が変化し、ダイヤフラムを介してニードル弁の開度を調節します。

〈外部均圧式〉蒸発圧力(Po)の検出をエバポレーターの入口で行なうと内部の流路抵抗の影響を受けるため、エバポレーター出口付近から均圧管を通して圧力を検出しています。

▼エバポレーター出口温度が低いとき(冷房負荷が小さいとき)感熱筒内のガス圧力が低くなり、体積が減少してニードル弁は絞られます。(Pf<Po+Ps)

▼エバポレーター出口温度が高いとき(冷房負荷が大きいとき)感熱筒内のガス圧力が高くなり、体積が増加してニードル弁は開き、エバポレーターへ冷媒が多く供給されます。(Pf>Po+Ps)

〈内部均圧式〉ダイヤフラム下部のエバポレーター蒸発圧力(Pe)が、エキスパンションバルブ内部の小孔(エバポレーターの入口)から加えられます。

▼エバポレーター出口温度が低いとき(冷房負荷が小さいとき)

感熱筒内のガス圧力が低くなり、体積が減少してニードル弁は絞られます。(Pf<Pe+Ps)

▼エバポレーター出口温度が高いとき(冷房負荷が大きいとき)感熱筒内のガス圧力が高くなり、体積が増加してニードル弁は開き、エバポレーターへ冷媒が多く供給されます。(Pf>Pe+Ps)

1-4 ジョイント接続型エキスパンションバルブ

感熱筒�

均圧管�ダイヤフラム室�

ニードル弁�(絞り弁)�

Pf Po

Pf

Ps

Po+Ps

キャピラリーチューブ�ダイヤ�フラム�

ニードル弁�

冷媒入口�

均圧管�

感熱筒�

Po:エバポレーター出口圧力�Ps:スプリング力�Pf:感熱筒内圧力�

プレッシャー�スプリング�

アジャスティング�スクリュー �

感熱筒には冷媒ガスが封入されており、エバポレーター出口のパイプに取り付けられ、出口の冷媒温度を感知します。また、ダイヤフラム下部には、エバポレーター出口の圧力が均圧管を通して加わります。

キャピラリーチューブ�

ダイヤフラム�

ニードル弁�

プレッシャー�スプリング�

アジャスティング�スクリュー �

冷媒入口�

Pf

Pe+Ps

感熱筒�

Pf

Ps

Pe:エバポレーター入口圧力�Ps:スプリング力�Pf :感熱筒内圧力�

Page 20: Con Dens Or

サービス技報 VOL.439 98-12 8

基礎技術シリーズ�

22 エバポレーター

エバポレーターは、コンデンサーと同じようにチューブとフィンからなる単純な構造ですが、次のような種類があります。(ST:Single Tank ,MS:Multi-Tank and Super Slim Structure)

2-1 構造・作動

エキスパンションバルブで低温・低圧にされた霧状冷媒は、エバポレーター内で多量に気化することによってエバポレーター自身が低温状態になります。車室内の暖かい空気はファンにより、エバポレーターを通過することによって冷却され、室内を冷房します。また、暖かい空気がエバポレーターフィンに当り、露点温度以下に冷却されると、空気中の水分が凝縮しエバポレーターフィンに水滴が付着します。この水滴はドレーンホースによって車外に放出されます。

実際のエバポレーターには、エキスパンションバルブ、サーミスターなどが組み込まれ、一つのユニットとなっています。機種によってはクーリングユニット単体(分割タイプ)のものや、エバポレーターとヒーターコアを並べ1つのユニットにまとめた一体型タイプのものがあります。

2-2 クーリングユニット

ブロワ、クーリングユニット、ヒーターユニット分割タイプ

冷媒出入口�

冷媒入口�冷媒出口�

ドロンカップ式サーペンタイン式

クーリングユニット、ヒーターユニット一体型タイプ

STエバポレーター MSエバポレーター

ヒーターコア�

エキスパンションバルブ�

エバポレーター�ブロアモーター�

ヒーターコア�

エキスパンションバルブ�

エバポレーター�

ブロアモーター�

冷媒出入口�

Page 21: Con Dens Or

サービス技報 VOL.440 99-25

第6回�第6回�基礎技術シリーズ�“ カーエアコンの基礎 ”�

今回は冷凍サイクルに付属する部品の役割ついて説明します。�

11 冷凍サイクルの付属部品冷凍サイクルを効率良く、安全に作動させるため、いろいろな制御部品や各種センサーが、装着されています。また、下記に各部品の装着位置を示します。

EPR

プレッシャースイッチ�

サーミスター� サーモスタット�

プレッシャー�リリーフバルブ�

(TVコンプ�  レッサー用)�

温度センサー�

マグネットクラッチ� コンプレッサー�回転センサー�

サイトグラス�

(配管用)�

(レシーバー用)�

Page 22: Con Dens Or

サービス技報 VOL.440 99-2 6

基礎技術シリーズ�

2-1 マグネットクラッチ

2-2 プレッシャーリリーフバルブ(PRV)

プレッシャーリリーフバルブ�

回転センサー�

マグネット�クラッチ�

冷凍サイクルの高圧側の圧力がなにかの原因によって異常に高くなった場合、プレッシャーリリーフバルブが作動して冷媒の一部を放出します。ただし、通常は制御システムに設けられている高圧プレッシャースイッチが初めに作動してコンプレッサーの運転を停止させるので、プレッシャーリリーフバルブがすぐに働くことはありません。

作動時のガス吐出経路�

作動特性�

0

洩れ流量�

圧力�

( /min)�

2.76 3.43 4.14(MPa)�〔28.1 �35.0 42.4(kgf/cm2)〕�

22 コンプレッサー構成部品

カーエアコンのコンプレッサーはエンジンで駆動されています。そこで、車室内温度が設定温度に達した場合、あるいは車室内温度が高くなった場合に、必要に応じてコンプレッサーを停止させたり駆動させたりする装置が必要になります。この装置がマグネットクラッチでありコンプレッサーに組み付けられています。

マグネットクラッチのクラッチハブは、コンプレッサーのクランクシャフトにはめ込まれており、コンプレッサーを駆動させないときはプーリーだけ回転します。エアコンスイッチを入れると、ステーターに埋め込まれたコイルに電流が流れ、ステーターが強力な電磁石となり、クラッチハブを強く吸着し、プーリーに圧着するため、コンプレッサーが回転します。

ローター�

ステーター�

ステーターコイル�

ベアリング�

クラッチハブ�

プーリー�

コンプレッサー�シャフト�

ステーターコイル�

ダンパー�

クラッチハブ�

原 理� 構 造�

Page 23: Con Dens Or

サービス技報 VOL.440 99-27

基礎技術シリーズ�

コンプレッサーの駆動ベルトが、パワーステアリングポンプと共掛けされている場合、万一コンプレッサーがロック状態になってそのまま運転を続けると駆動ベルトを損傷し、パワーステアリング機能に悪影響を与えてしまいます。そこでコンプレッサーの回転数を検出するのが、この回転センサーです。回転センサーは、鉄心とコイルが組み合わされており、また、コンプレッサー内部の斜板に磁石が付いており、斜板(磁石)が回転すると、回転センサーに交流電圧が発生します。このコンプレッサー回転数とエンジン回転数を比較し、ベルトのスリップ状態を検出し、スリップ率が一定値以上になると、マグネットクラッチをOFFすると同時に、エアコンスイッチのインジケーターを点滅させ異常を知らせます。

EPR(Evaporator Pressure Regulator)とは、エバポレーターとコンプレッサーの間に取り付けられた圧力調整弁です。その役割は、エバポレーターをフロストさせないように、エバポレーター内の冷媒圧力を0.18MPa(約1.9kgf/cm2)以下にならないよう圧力調整しています。冷媒の特性から0.18MPa以上であれば冷媒温度は0℃以下になりません。EPR方式は、エバポレーターからコンプレッサーへもどる冷媒量を調節することによって、エバポレーターでの蒸発圧力を一定値0.18MPa(約1.9kgf/cm2)以上に保ち、フロストを防止します。

2-3 コンプレッサー回転センサーP/Sポンプ�

クランクシャフトプーリー�コンプレッサー�

ベルトの共掛け�

ベーン式コンプレッサーには、コンプレッサーのヘッド部に温度センサーが取り付けられています。この温度センサーは、冷媒の温度を検知し、冷媒温度が異常に高くなったときマグネットクラッチを切り、コンプレッサーを停止させます。

エバポレーターから�

PePs

ベローズ�

金属ベローズ�

ピストン�

コンプレッサーへ�

33 温度センサー

44 EPR(Evaporator Pressure Regulator)

温度センサー�

斜板�

磁石�

回転センサー�

センサー出力波形�1回転�

コンプレッサー回転数の検出(斜板式の場合)

Page 24: Con Dens Or

本体�

感熱筒�

サービス技報 VOL.440 99-2 8

基礎技術シリーズ�

55 サーミスター・サーモスタット

冷凍サイクルの高圧側のレシーバーとエキスパンションバルブとの間に取り付けられ、冷媒圧力を検知します。プレッシャースイッチには、異常高圧および異常低圧を1つのスイッチで検知するデュアルタイプと、さらに中間圧を検知するトリプルタイプがあります。

エバポレーターの後に取り付けられ、エバポレーターの温度を検知します。暖かい空気がエバポレーターフィンにあたり、冷却されると空気中の水分が凝縮し、エバポレーターフィンに水滴が付着します。このとき、フィンの温度が0℃以下に冷やされている場合には、付着した水滴が氷結したり、霜になったりします。このような現象をフロストといい、エバポレーターでの熱交換効率が低下し十分な冷房能力が得られなくなります。サーミスターは、温度によって抵抗値が変化するのを利用して、エバポレーターの温度を検知します。サーモスタットは、感熱筒内のガスが温度によって膨張する性質を利用してエバポレーターの温度を検知し、サーモスタット内のスイッチをON・OFFします。

エバポレーターセンサー�

66 プレッシャースイッチ

サイトグラスは、冷凍サイクル中を流れている冷媒の状態を観察する『のぞき窓』です。一般に、この窓から気泡が見られるときは冷媒不足であり、気泡が見られないのが適正量です。サイトグラスは、一般的にはレシーバーの上に取り付けられていますが、レシーバーの架装状態から、レシーバー上部では使用できない場合や、サブクールコンデンサー搭載の場合は、配管の途中に単独のサイトグラスを使用します。

77 サイトグラス

�中間圧接点�高・低圧接点�

過充てん� 適正� 不足�

サイトグラス�

サイトグラス�

サーミスター

サーモスタット

Page 25: Con Dens Or

サービス技報 VOL.441 99-45

第7回�第7回�基礎技術シリーズ�“ カーエアコンの基礎 ”�

今回は、ワゴン車や1BOXカーに多く採用されていますリヤクーラーと�冷温蔵庫付きの冷凍サイクルについて説明します。�

11 リヤクーラー

1-1 構造リヤクーラーユニットには、リヤ専用のエバポレーター、ブロワーモーター&ファン、エキスパンションバルブが組み込まれています。図Aはトランクルーム内に装備されているユニットの例であり、図Bはオーバーヘッドデュアルエアコンのユニット内部の一例です。

2つの冷媒回路を制御する電磁弁は、レシーバーとエキスパンションバルブとの間に取り付けられており、電磁弁のON・OFFにより冷媒回路を開閉しています。電磁弁は、コイルの電流をON・OFFするとプランジャーと一体になったバルブが上下に移動し、開閉されます。

1-2 リヤクーラー付きエアコンの冷凍サイクル

1-3 リヤクーラーの制御

リヤクーラー付きエアコンの冷凍サイクルは、フロント用およびリヤ用のエバポレーター、エキスパンションバルブがあり、1つのコンプレッサーによって冷媒を循環させています。この2つの冷媒回路を制御するために電磁弁が設けられており、制御スイッチおよびエアコンアンプでON-OFF制御されます。

コンデンサー�

コンプ�レッサー�フロント用�

エバポレーター�

レシーバー�

リヤ用�エバポレーター�

電磁弁� EP(フロント用)�

電磁弁� EP(リヤ用)�

プランジャー�

バルブ�

OUT

IN

コイル�

スプリング�

図A トランクルーム 図B オーバーヘッドデュアルエアコン

EP:エキスパンションバルブ

エバポレーター�

ファン�

フィルター�

エバポレーター� ファン�

電磁弁の構造

Page 26: Con Dens Or

サービス技報 VOL.441 99-4 6

基礎技術シリーズ�

2-1 構 造

2-2 冷温蔵庫付きエアコンの冷凍サイクル

冷温蔵庫付きエアコンの冷凍サイクルは、リヤクーラー付きエアコンの冷凍サイクルと同じように2つの冷媒回路を制御するための電磁弁が設けられていることと、冷蔵用回路に逆止弁が追加されています。また、製氷または冷蔵するため、『間欠冷媒流動制御システム』を採用しています。このシステムは、エアコン側冷凍サイクルを一時的に遮断し、冷蔵庫側のサイクルのみに冷媒を間欠的に流すシステムでF・I・R(Freezing by Intermittent Running)システムとも呼びます。これは、氷を作るために定圧エキスパンションバルブと組み合わせ、極低温を作り出すシステムです。

22 冷温蔵庫

フロントおよびリヤクーラーは、車種によって次のように作動します。

①リヤクーラー単独運転可能型

フロントエアコン、リヤクーラーともに単独でON・OFF できます。

②リヤクーラー単独運転不可型フロントエアコンが作動しているときのみ、リヤクーラーをON・OFFできます。(現在の主流です)

冷温蔵庫は、車室内で缶ジュースなどを冷やしたり、温めたりすることができ、コンソールボックス付近に取り付けられます。さらに氷を作る機能をもつアイスメーカー付き冷温蔵庫があります。冷温蔵庫には、例えば、氷は製氷皿2皿、缶ジュースは8本程度収納することができます。冷蔵・製氷にはエアコン冷凍サイクルの冷媒の一部を冷温蔵庫に導き、温蔵の熱源には電気発熱体を利用しています。ここでは、アイスメーカー付き冷温蔵庫について説明します。

アイスメーカー付き冷温蔵庫は、冷蔵・製氷用のエバポレーター、エキスパンションバルブ、専用アンプ、温蔵用のPTCハニカムヒーター(電気発熱体)とブロワーなどにより構成されています

(冷蔵用)�

コンデンサー�

コンプ�レッサー�エアコン用�

エバポレーター�

冷蔵用�エバポレーター�

電磁弁A EP(エアコン用)�

電磁弁B EP 逆止弁�

エバポレーター�

PTCヒーター�

ブロワーモーター �ファン�製氷室�

冷蔵室�

冷温蔵庫�

単独運転可能型� 単独運転不可型�

フロント�エアコン�スイッチ�

リヤクーラー�

ONON

OFF

OFF

ON

OFF

ON

OFF

ON

OFF

スイッチ� 作動�

フロント�エアコン�スイッチ�

リヤクーラー�

ON

OFF

スイッチ� 作動�

○�

�

�

○�

�

�

�

○�

装着例 構 造

EP:エキスパンションバルブ

Page 27: Con Dens Or

①エアコン作動中に、冷温蔵庫スイッチをON(ICE)にすると冷温蔵庫用電磁弁BがONします。同時に冷温蔵庫アンプによりエアコンアンプを介してエアコン用電磁弁AはON・OFF動作を始めます。

②エアコン用電磁弁AがONしている時、冷媒はエアコン用エバポレーターに流れ、冷蔵用エバポレーターには流れません。

③エアコン用電磁弁AがOFFすると、エアコン用エバポレーターに冷媒が流れなくなるため、低圧圧力が低下します。そこで冷蔵用エバポレーターに冷媒が流れ出します。

④次に、エアコン用電磁弁AがONして低圧圧力が上昇すると、冷温蔵庫用エキスパンションバルブが閉じ、製氷、冷蔵用エバポレーター内の圧力を逆止弁によってエアコン側より低く保ち冷蔵庫内の温度上昇を押さえます。

このように、エアコン側冷凍サイクルを間欠的に遮断して、製氷・冷蔵用エバポレーター内の冷媒蒸発圧力(温度)を低くし、製氷に必要な極低温を得ています。

サービス技報 VOL.441 99-47

基礎技術シリーズ�

氷を作るには冷蔵庫内の温度を極低温に保つ必要があります。極低温を作り出すには、冷蔵サイクルのエキスパンションバルブ*1の作動圧が0.04MPa(0.4Kgf/cm2G)と低い値に設定する必要があります。これは、冷媒の特性上から蒸発圧力を0 .04MPa(0.4Kgf/cm2G)にすることによって、蒸発温度を約-20℃相当にし、極低温を作り出しています。冷蔵サイクルのエバポレーター、エキスパンションバルブは、電磁弁、逆止弁を介してエアコン側冷凍サイクルと並列に接続されています。エアコンの低圧側圧力は約0.2MPa(2Kgf/cm2G) であり冷蔵サイクル側より高い状態であり、このままでは極低温を作り出せません。そこで、エアコン側冷凍サイクルをエアコン用電磁弁Aによって一時的に遮断してこの低圧圧力を下げ、冷蔵サイクル側に冷媒が流れるように制御しています。

2-3 極低温作り

2-4 電磁弁と冷温蔵庫用エキスパンションバルブ

コンプ�レッサーへ�

0.2MPa 0.04MPa

逆止弁�

エアコン用�エバポレーター�

冷蔵用�エバポレーター�

エキスパンション�バルブ(定圧式)�

電磁弁A

電磁弁Bレシーバーから�

+B

ICE

冷温蔵庫�アンプ�

エアコン�アンプ�

コンプレッサー�

冷温蔵庫用電磁弁B��

HOT

タイマー回路�

電磁弁制御�コンプレッサー制御�

エアコン用電磁弁A��

「ICE」ON

開�冷温蔵庫用�電磁弁B�

冷温蔵庫�エキスパンション�バルブ�

エアコン用�電磁弁A�

開�60秒�

開�閉� 閉�

閉� 開�閉� 開�

15秒�

*1 定圧式エキスパンションバルブです。

これは、エバポレーター側の圧力(低圧側)が設定値(0.04MPa)以下に下がらないと冷媒が流れないような構造になっています。

Page 28: Con Dens Or

サービス技報 VOL.441 99-4 8

基礎技術シリーズ�

①制御スイッチを〔ICE〕にすると冷温蔵庫アンプのタイマー回路からエアコンアンプにON・OFF信号を送りだします。(下図A)②この信号に同期してエアコン用電磁弁AはエアコンアンプによってON・OFFを繰り返します。(下図B)③冷媒は、エアコン用電磁弁Aが開(ON)の間はエアコンサイクルに流れ、閉(OFF)の間は冷蔵庫側のサイクルに流れます。低圧側の圧力は、エアコン用電磁弁Aと冷蔵庫用エキスパンションバルブの開閉によって0.04MPa(0.4Kgf/cm2G)から0.2MPa(2Kgf/cm2G)の間を変動します。(下図C)④エアコン用電磁弁AがONして低圧圧力が上昇すると、冷蔵庫用エキスパンションバルブが閉じ、製氷、冷蔵用エバポレーター内の圧力を逆止弁によってエアコン側より低く保たれ庫内の温度上昇を押さえます。⑤〔COOL〕と〔ICE〕の切り替えは、冷温蔵用アンプ出力信号のON・OFF時間を変えることによって行います。すなわち、〔COOL〕時はこのOFF時間を長くして冷凍能力を弱くしています。

冷温蔵庫作動時は、間欠冷媒流動制御システム(F・I・R)が作動します。このシステムはエアコン側冷凍サイクルを一時的に遮断し、冷蔵庫側のサイクルに冷媒を間欠的に流すシステムで、次にこの作動について説明します。

2-5 冷温蔵庫作動時の冷凍サイクルの動き

HOT

ICE

IG�スイッチ�

タイマー�回 路�

冷温蔵庫�アンプ�

冷温蔵庫用�電磁弁B��

エアコンアンプ�

エアコン用�電磁弁A�

マグネット�クラッチ�

リレー�

制 御 回 路 �

15秒� 60秒� 15秒� 60秒�

閉�

閉�

開�

開�閉�

開�

閉� 開�

10

0.2

0.040

冷温蔵庫�アンプ�出力信号�

エアコン用�電磁弁�

低圧側圧力�(MPa)�

冷温蔵庫�エキスパンション�バルブ�

A�

B�

C�

D�

(注)COOL時の作動サイクル�   ON : 10秒�   OFF : 120秒�

通常エアコンと同じように�約0.2~0.3Mpa

冷蔵庫としての作動中は�約0.04Mpa以下�

(注)低圧側圧力が0.04Mpa 以下�   になると『開』になる�

次号へつづく

Page 29: Con Dens Or

サービス技報 VOL.442 99-65

第8回�第8回�基礎技術シリーズ�“ カーエアコンの基礎 ”�

前回までは、おもにカーエアコンの冷凍サイクルや構成部品の構造・作動�について説明してきました。�今回からは、オートエアコンのはたらき、概要について説明します。�

11 オートエアコン1-1 はたらき

オートエアコンは、乗員が車室内の温度を希望温度に設定すると、室内・外の温度変化や日射の影響をコンピューターによって自動検知、自動補正し、車室内温度を常に設定温度に保ち、春・夏・秋・冬いつでも快適な車室内空調に自動コントロールするはたらきがあります。

オートエアコンのはたらきとしては、(1)温度調整(2)風量調整(3)吹き出し口調整があり、すべての機能を持ったものを「フルオートエアコン」(2)と(3)のうちどちらか、または、両方の機能がマニュアル固定された状態を「セミオートエアコン」と区別します。

20 3025

希望温度(18℃~32℃)�

今の冷房負荷を調べる�

室内温度(内気センサー)�外気温度(外気センサー)�太陽光の強さ(日射センサー)�

オートエアコン�コンピューター�

オートエアコン�スイッチON

AUTO

(1)温度調整�  (何度の風を)�

(2)風量調整�  (どれだけ)�

(3)吹き出し口� 調整�

セミオートエアコン�

フルオート�エアコン�フルオート�エアコン�

(どの吹き出し�  口から)�

雨の日�

暑い日� 寒い日�

春・夏・秋・冬いつでも快適�

Page 30: Con Dens Or

サービス技報 VOL.442 99-6 6

基礎技術シリーズ�

マニュアルエアコンでは、車室内が希望温度より高くなったり、低くなったりすると、その都度、運転手(乗員)による微妙な温度調整、風量調整あるいは、吹き出し口モードの選択(切り替え)が必要となります。オートエアコンでは、乗員が車室内の温度を希望温度に設定すると、室内・外の温度変化や日射の影響を室内・外に設置した各種センサーによって検知し、制御装置(コンピューター=ECU)が最適な制御状態を計算し自動補正し、車室内温度を常に設定温度に保つようにコントロールするシステムです。言い替えれば、オートエアコンは、乗員に替わって、マニュアルエアコンを自動制御する方式です。

(外気温度)�

(日射量)�

(室内温度)�

(希望温度)�

吸い込み�空気温度�(� )�

(エンジン水温)�

吹き出し口調整�

風量調整�

温度調整�

吸い込み口調整�

コンプレッサー能力調整�

モードダンパー�

ブロワモーター�

エアミックダンパー�

吸い込み口ダンパー�

コンプレッサー�

オートエアコン �

E�C�U��

水温センサー�

外気センサー�

日射センサー�

内気センサー�

温度設定スイッチ�

エバポレータ後センサー�

上の図は、オートエアコンのコントロール系統を示したものです。コントロールパネルの温度設定スイッチによって、希望温度を設定すると、オートエアコン ECUは、室内温度・日射量・外気温度・エンジン水温・吸い込み空気温度など各種センサーで検出された情報をもとに、一番最適なエアミックダンパー・ブロワモーター・各種モードダンパーなどの制御位置を算出し、設定温度に近づくよう自動的に調整します。

下の図は、オートエアコン制御の情報源である各種センサーの取り付け位置の一例を示します。

内気センサー�

日射センサー�

エバポレーター後センサー� 水温センサー(ヒーターユニット部)�

温度設定スイッチ�外気センサー�

車室内のセンサー�車室外のセンサー�

1-2 概  要

Page 31: Con Dens Or

サービス技報 VOL.442 99-67

基礎技術シリーズ�

オートエアコン ECUは、コントロールパネルのスイッチ操作信号(温度設定)や車室内外の各温度センサー信号(内気センサー、外気センサー、水温センサー)、日射量を検出する日射センサーおよびコンプレッサー作動状態を検出するエバポレーター後センサーの入力信号を基本情報にて演算(駆動信号)し、各アクチュエーターを作動させます。各アクチュエーターは、ポテンショメーターで位置検出信号(フィードバック信号)をオートエアコン ECUに送ります。位置検出信号は、オートエアコン ECU内で演算された駆動信号と比較検証され、サーボモーターが正常に作動しているかを確認するフィードバック信号になります。このようにオートエアコン ECUは、車室内温度が設定温度になるように(保つ)、入力信号をもとに吹き出し温度、吹き出し風量および吹き出し口を自動計算しながら、各アクチュエーターが正常に作動しているか検証(チェック)しながら自動制御します。

M

(FOOT)�

M

内外気切替ダンパー�エアミックスダンパー�

ヒーターコア�

(DEF)�

(FACE)�

吹出口切替�  ダンパー�

ポテンショ� メーター�

エバポレーター�センサー�

ブロワー�モーター�

温度設定スイッチ�

内気センサー�

外気センサー�

水温センサー�

日射センサー�

計 算�

・必要吹出温度(TAO)�

・風 量�

・ダンパー開度�

オートエアコン ECU

エバポレーター�

(希望温度)�

M

オートエアコン ECU

コンプレッサー�

演  算  ・ 検  証�

フィードバック 信 号�

温度設定スイッチ�(希望温度)�AUTOスイッチ�(オート制御モード)�

内気センサー�(抵抗変化)�

水温センサー�(抵抗変化)�

日射センサー�(電流変化)�

外気センサー�(抵抗変化)�

エバポレーター後センサー�   (抵抗変化)�

エアミックスダンパー用�サーボモーター�(ポテンショメーター)�

モードダンパー用�サーボモーター�(ポテンショメーター)��

吸い込み口ダンパー用�サーボモーター�(ポテンショメーター)�

パワートランジスター�  (作動電圧)�

エアミックスダンパー�  (温度調整)�

モードダンパー� (吹き出し口調整)�

内外気切り替えダンパー�(吸い込み口調整)�

ブロワファンモーター�  (風量調整)�

コンプレッサー リレー�

1-3 基本作動

Page 32: Con Dens Or

サービス技報 VOL.442 99-6 8

基礎技術シリーズ�

次号へつづく

1-4 サーボモーターとダンパーオートエアコンでは、温度調整や吹き出し口、吸い込み口切り替えの作動を乗員に替わってサーボモーターが行ないます。このサーボモーターは、取り付け位置や役目によって、次の3つに分けられます。(下図の取り付け位置は、トヨタクラウンの一例を示します。)

�@�À��@�À���@@��ÀÀ���@�À��@�À��@�À��@�À�

�@�À���@@��ÀÀ����@@��ÀÀ���@�À���@@��ÀÀ���

�@@��ÀÀ����@@��ÀÀ���@�À�

内外気切り替え�ダンパーサーボ�

ヒーターラジエーター�(ヒーターユニット)�

モードダンパーサーボ�

エアミックス�ダンパーサーボ�

エバポレーター�

ブロワモーター�コントロール�

ブロワモーター�

内外気切り替え�ダンパー�

<ダンパーの位置>�

デフロスターダンパー�

ヒーターユニット�

ベントダンパー�

ヒーターベントダンパー�

マックスクールダンパー�ヒーターダンパー�

エアミックスダンパーB

エアミックスダンパーA

エバポレーター�

ブロワモーター�

サーボモーターの名称� 役目� 取り付け位置� 制御ダンパー�

エアミックスダンパーサーボ� 温度調整� ヒーターユニット� エアミックスダンパーA、B

モードダンパーサーボ� 吹き出し口切り替え� ヒーターユニット�

内外気切り替えダンパーサーボ� 吸い込み口切り替え� ブロワユニット� 内外気切換ダンパー�

ベントダンパー�センターベントダンパー�マックスクールダンパー�ヒーターダンパー�デフロスターダンパー�

Page 33: Con Dens Or

サービス技報 VOL.443 99-85

第9回�第9回�基礎技術シリーズ�“ カーエアコンの基礎 ”�

今回は、オートエアコンの基本的な『はたらき』のうち、�「温度制御」と「吹出口制御」について説明します。�

11 オートエアコン制御の考え方乗員の希望する温度(設定温度)に対して、コンピューターは、現在の車室内温度、外気温度、日射量から車室内外の環境条件を検出して『いま、何度の風を出せばよいか』を計算します。この計算値は『必要吹出温度(TAO)』と呼ばれ、現在のデンソーオートエアコンでは温度制御の基本となる値です。この『必要吹出し温度(TAO)』は、おおむね次の式で求められます。

そして‥‥ ・今、何度の風を出せばよいか?(吹出し温度制御)・どの吹出し口から出せばよいか?(吹出し口切替制御)・どれだけの風量で出せばよいか?(風量制御)‥‥‥‥‥などを制御します。

TAO = E ×( TSET + △T )ー F × TR ー G × TAM ー H × TS + C

TSET:設定温度 TR:室内温度 TAM:外気温 TS:日射量△T、S:補正定数 E~H:係数

吹 出 温 度 制 御�(何度の風を)�

吹出口切替制御�(どの吹出口から)�

風 量 制 御�(どれだけ)�

吸込口切替制御�(外気か内気か)�

室内温度(内気センサー)��外気温度(外気センサー)��日 射 量(日射センサー)��(今の冷房負荷を調べる)

(希望の温度)

設定温度(18℃~32℃)�

必要吹出温度�

(TAO)�

を計算�

コンピューター�

(注)TAO(必要吹出温度)Temperature Air Outputの略で、希望温度、内気温、外気温、日射量により「今、何度の風を出せばよいか」を計算した値である。

22 吹出温度制御のしかた吹出温度制御では、『必要吹出温度(TAO)』と同じ温度の風を作るためにエアミックスダンパーをサーボモーターによって開閉制御します。しかし、実際には、冷風はエバポレーター温度(約3℃)、温風は、ヒーターコア温度(約50~60℃)までしか変化させることができません。このため、この範囲を超えるTAOに対しては、風量を増加させることで補っています。

Page 34: Con Dens Or

サービス技報 VOL.443 99-8 6

基礎技術シリーズ�

2-1 エアミックスダンパー制御

実際のエアコンの使い始めには、ほとんどの場合、室内温度は乗員の希望温度(設定温度)と大幅にずれています。この差を早く近づけるために、『必要吹出温度(TAO)』を計算し、吹き出す風の温度を制御します。真夏の炎天下のエアコン使い始めは、TAOが極端なマイナス温度(-200℃)になり、エアミックスダンパーは全閉(ヒーターコアを全閉)位置になるよう制御します。室温が徐々に下がり、希望温度に近づくとTAOも希望温度に近づきます。一方、エアミックスダンパーもTAOの変化にともなってダンパー開度を制御し、室温を希望温度に保ちます。

コントロールパネルの設定温度(設定値)に対して、各センサーの情報を基に必要吹出温度(TAO)を算出します。この必要吹出温度(TAO)にエバポレーター後センサー(コンプレッサーの作動状態)、水温センサー(エンジン水温)による補正を加えエアミックスダンパーの目標開度を算出します。

エアミックスダンパー�ヒーターコア�

サーボモーター(ポテンショメーター)�

エバポレーター�センサー�

温度設定レバー�

内気センサー�

外気センサー�

水温センサー�

日射センサー�

計   算�・必要吹出温度(TAO)�・エアミックスダンパー開度�

コンピューター�(希望温度)�

エバポレーター�

制御信号��

M

希望温度�

室温�

吹出温度�

時間�

暖房の時は�逆の関係になる�

}20

25

30

℃�

度�

25

T�A�O

-200

TAO

(温風)�100%��エ

アミックスダンパー�

0�(冷風)�

小� 大�必要吹き出し温度�

エバポレーター後センサー��水温センサーにより補正�

Page 35: Con Dens Or

サービス技報 VOL.443 99-87

基礎技術シリーズ�

コンピューターは、このエアミックスダンパーの目標開度信号をエアミックスダンパー切替え用サーボモーターに出力し、目標の位置まで回転させます。一方、サーボモーターは、ポテンショメーターで実際のダンパー開度を検出し、コンピューターにフィードバックします。コンピューターは、目標開度と実際のダンパー開度が一致するように自動制御します。

2-2 サーボモーターの構造ダンパー(各種切替えダンパー)を駆動する力を発生するためのモーター部分と機械部分(駆動部)および停止位置を制御するための電気回路部分(位置検出部)から構成されています。構造的には、樹脂部分のケースに駆動部(モーター、ギア)、カバーに位置検出部(プリント基板)を収納し、機械的出力は、クランクアームの回転運動として伝達されます。

2-3 サーボモーターの作動サーボモーターの制御回路の一例としてエアミックスダンパーの制御について説明します。(1)温度設定レバーの操作によって希望温度に

相当する抵抗値の変化(実際は電圧値変化)がコンピューターに入力されます。

(2)コンピューターは各センサーおよび希望温度の信号にもとづいて必要吹出温度(TAO)を計算します。その計算結果によって必要なダンパー開度(目標開度)を求め、モーター駆動回路からサーボモーターに通電し、目標開度まで回転させます。

エバポレーター�後センサー�

水温センサー�

エアミックス�ダンパー用�サーボモーター�

ポテンショ�メーター�TAO

エアミックス�ダンパーの�目標開度�

実際の�ダンパー�開度�

オートエアコンECU�

エバポレーター� ヒーターコア� サーボモーター�

吹き出し口�100%�

0%�吸い込み口�

エアミックスダンパー�

(外  観)�

モーター�

(内部構造)� (構  成)�

減速部分�

駆動部�

ケース�

出力軸�

ブラシ�

モーター�

位置検出部�

内気センサー�

外気センサー�

エバポセンサー�

日射センサー�

コンピューター�

計算�回路�

モーター�駆動�回路�

可動接点�

サーボモーター�

C 25 H

温度設定パネル�

M

ポテンショメーター�

5V

12V

モーター�連動�

Page 36: Con Dens Or

サービス技報 VOL.443 99-8 8

基礎技術シリーズ�

次号へつづく

(3)サーボモーターは正転(または逆転)し、ダンパーを動かします。サーボモーターの可動接点と連動してポテンショメーターが同時に動き、ダンパーの開度が抵抗値の変化(実際は電圧値変化)としてコンピューターにフィードバックされます。そこで、コンピューターはそのときの開度を目標開度と比較しながら修正指示を出します。

33 吹出口切り替え制御3-1 マニュアル制御の場合

コントロールパネルのオートスイッチを押すと、自動制御される吹出温度によって吹出口が「FACE」-「BI-LEVEL」-「FOOT」の間で自動的に切り替わります。吹き出し温度が低い場合は「FACE」、中間では「BI-LEVEL」、高い場合は「FOOT」から吹き出されます。

コントロールパネルの吹出口切り替えスイッチを操作すると、そのスイッチの信号がコンピューターに入力されます。そして吹出口制御のサーボモーターを回転させてダンパーを動かします。

3-2 フルオート制御の場合

低�(冷風)�

高(℃)�(温風)�必要吹出温度(TAO)

FACE

BI-LEVEL

FOOT

DEF

FACE

FOOT

FOOT

エアミックスダンパー�DEF

FACE

吹出口切替�  ダンパー�

温度設定レバー�

内気センサー�

外気センサー�

水温センサー�

日射センサー�

計   算�・必要吹出温度(TAO)�・吹出口ダンパー切替�

コンピューター�

エバポレーター�

オートスイッチ�

吹出口切り替え�スイッチ�

(希望温度)�

M

M吹出口切り替え用�サーボモーター�(ダンパー切替)�

Page 37: Con Dens Or

サービス技報 VOL.444 99-105

第10回�第10回�基礎技術シリーズ�“ カーエアコンの基礎 ”�

今回は、オートエアコンの基本的な『はたらき』のうち、前回の続きとして�「風量制御」と「吸い込み口制御」について説明します。�

11 風量制御

風量は、ブロワファンモーターの回転数によって変化します。オートエアコンでは、コンピューターで最適風量が算出され、ブロワ制御信号がブロワコントローラー(制御器)に出力されます。なお、ブロワコントローラーには、パワートランジスター方式とブロワパルスコントロール方式が多く採用されています。

ブロワ�モーター�

EX-HI�リレー�

LOレジスター�

パワートランジスター�

IGスイッチ�

制御回路�

コンピューター�

M

ヒーターリレー�

センサー信号�・日射センサー�・内気センサー�・外気センサー�・水温センサー�・エバポセンサー�

ブロワスイッチ�

パワートランジスター方式� ブロワパルスコントロール方式�

ブロワコントローラー�

(ベース電流制御)� (デューティー制御)�

1-1 ブロワコントローラー

(1)パワートランジスター方式(1)パワートランジスター方式

パワートランジスターは、ブロワ制御信号に基づき、パワートランジスターのベース電流を制御してブロワモーターを無段階に変速します。また、最大冷房(暖房)時や、低速回転時は、EX-HIリレー、LOレジスターの組み合わせによって制御されています。

Page 38: Con Dens Or

サービス技報 VOL.444 99-10 6

基礎技術シリーズ�

ブロワパルスコントローラーは、コンピューターからの信号によってブロワモーターに流す電流をデューティー制御しています。この方式は、ブロワモーターの電流を直接制御するため、パワートランジスター方式のような、EX-HIリレーやLOレジスターは不要です。また、ブロワパルスコントローラーは、内部に制御回路を内蔵しており、ブロワロック時補正制御の安全装置を備えています。すなわち、一定値以上のブロワモーター電流が約1秒以上継続して流れたとき、ブロワモーターはロック状態にあると判断しOFFさせます。デューティー制御とは、モーターに流す電流のON-OFF時間の比率を変化させて、平均電流の大きさを制御しています。ON時間が長いときは、モーターの回転が速くなり、OFF時間が長いときは、モーターの回転が遅くなります。

(2)ブロワパルスコントロール方式(2)ブロワパルスコントロール方式

M

ヒーターリレー�

制 御�回 路�

制御回路�

駆動回路�

エアコン�コンピューター�

ブロワパルスコントローラー�

ブロワモーター�

IG�スイッチ�

ブロワパルスコントローラーの出力波形�

ブロワパルスコントローラー回路�

平均電流 大�

平均電流 小�

電流�

電流�

0

0

ON��

OFF

時間�

1-2 起動時制御

ブロワ起動時は、約2秒間LO回転でスタートし、その後、通常制御を行います。これによりブロワモーター起動時の起動電流(回り始めの大電流)からブロワコントローラーを保護します。 通常制御�風

量�

HI

LO

起動�

2秒�

時間�

Page 39: Con Dens Or

サービス技報 VOL.444 99-107

基礎技術シリーズ�

1-4 オート制御コントロールパネルの「AUTO」スイッチをONにすると各センサーからの入力条件により、風量無(多)段階制御、ウォームアップ制御、クールダウン制御、日射量補正制御を行います。

(補正制御)�

ウォームアップ制御�

クールダウン制御�

日射量補正制御�

基本風量��(TAOにより算出)� 実

際の風量�

HI

LO

ブロワレベル (風量)�   小�

(冷房)�必要吹き出し温度(TAO)�  大�

(暖房)�

+�

補正�

(1)風量無(多)段階制御(1)風量無(多)段階制御コンピューターは必要吹き出し温度(TAO)にしたがって、ブロワコントローラーを自動的に制御し風量を無(多)段階に制御します。この風量(TAOによる風量)は、基本風量となり、この値に各種の補正が加えられ実際の風量が算出されます。

(2)ウォームアップ制御(2)ウォームアップ制御

エンジン始動直後のエンジン水温が低い場合で、ヒーター吹き出しが必要な時は、ウォームアップ制御を行います。これは、エンジン水温が低い場合にヒーター吹き出し口から冷風が吹き出すことを防ぐ機能です。例えば、エンジン水温が30℃以下の場合はOFFし、30℃~50℃の間は水温に応じた風量に自動制御し、50℃以上では通常制御を行います。

すべて満足�

ウォームア プ制御�

(℃)�

ブロワレベル (風量)�

エンジン水温�

(1)ブロワがAUTOモード時�

(2)吹き出し口切り替えモード�

   がAUTO時で、ヒーター�

   吹き出し口にある時�

(3)エンジン水温が50℃以下の時�

ッ�

30

29

4

3

20 500�

1-3 マニュアル制御

ブロワファンスイッチの操作位置に応じた風量になります。コンピューターは、算出された風量に応じたブロワ制御信号をブロワコントローラーに出力し、算出された風量と一致するように自動制御します。

ブロワレベル(風量)�

(最大)�

(最小)�

  オート制御時�(TAOなどにより算出)�

マニュアル時�

LO 2

M  10

M  20

M  30

HI 31HI

LO

2

1

3��

Page 40: Con Dens Or

サービス技報 VOL.444 99-10 8

基礎技術シリーズ�

次号へつづく

外気温度、車室内温度がある程度高い場合で冷風吹き出しが必要な時は、クールダウン制御を行います。これはエンジン始動直後のFACE吹き出し口から温風が吹き出すことを防ぐ機能です。例えば、ブロワファンモーターが回転を開始後、5秒間は、ブロワレベルを「LO」に固定し、コンプレッサーでエバポレーターを冷却します。その後、6秒間は下図のクールダウン制御の風量と基本風量とを比較して風量の少ない値で自動的に制御します。これ以降は、通常制御になります。また、エバポレーター温度が30℃以上のときは、数秒間ブロワモーターをOFFにし、エバポレーターを冷却するタイプもあります。

(3)クールダウン制御(3)クールダウン制御

(1)ブロワがAUTOモード時�

(2)吹き出し口切り替えモード�

   がAUTO時で、FACEにある時�

(3)コンプレッサー作動時�

すべて満足�

クールダウン制御�

時間� (秒)�

ブロワレベル (風量)�

LO

0 5 11

HI

吹き出し口モードがFACE時、日射センサーからの信号(日射量)により、基本風量のブロワLOレベル(最低風量)を日射量に応じて、風量を引き上げる制御を行い、冷房感を強めます。

(4)日射量補正制御(4)日射量補正制御

日射量�

LO

0

日射量によって変化�

ブロワレベル (風量)�

小� 大�(冷房)� (暖房)�

必要吹き出し温度(TAO)�

HI

LO

M1

ブロワレベル (風量)�

kw/m2

M1

22 吸い込み口制御吸い込み口の切り替えは、吸い込み口切り替えダンパー用サーボモーターで行います。

2-1 マニュアル制御コントロールパネルのスイッチ操作位置に応じた吸い込み口に切り替わります。

2-2 オート制御必要吹き出し温度(TAO)に応じて吸い込み口が「外気導入」、「内気循環」と自動的に切り替わります。

内気循環�

外気導入�

低� 高(℃)�必要吹き出し温度(TAO)�

コンピューター�

必要吹き出し�温度(TAO)�

吸い込み口切り�替えダンパー用�サーボモーター�

吸い込み口�「外気導入」�「内規循環」�

Page 41: Con Dens Or

サービス技報 VOL.445 99-125

第11回�第11回�基礎技術シリーズ�“ カーエアコンの基礎 ”�

今回は、オートエアコンの基本的な『はたらき』のうち、前回の続きとして�「コンプレッサー制御」と「自己診断機能(ダイアグノーシス)」について�説明します。�

11 コンプレッサー制御

1-1 制御概要エアコンスイッチのON情報や冷風の温度、コンプレッサーの作動状態、エンジンおよび走行状態などを検知し、コンピューターが自動的にきめ細かな制御をします。最近は電子制御式エンジンが主流なこともあり、エンジンの運転状態はエンジン制御コンピューターが検知してコンプレッサー「ON」の可否を判断し、エアコンコンピューターへ制御信号を送るシステムが多く採用されています。また、エンジン制御コンピューターがマグネットクラッチリレーを制御し、コンプレッサーをON-OFF制御する車両もあります。

エアコンスイッチ�

エバポレーターセンサー�

コンプレッサーセンサー�

プレッシャースイッチ�

A/C、ECON

冷 風 温 度 �

コンプレッサー回転数�

冷 媒 圧 力 �

エアコン�コンピューター�

マニホールド負圧�

エンジン回転数�

車  速�

冷 却 水 温 �

エンジン制御�ECU�

コンプレッサー�

マグネット�クラッチリレー�

IGスイッチ�

コンプレッサーのON-OFF制御は,エンジン制御ECUと�情報交換を行い、きめ細かな制御を行います。�

コンプレッサー制御では、車室内の温度、エンジン回転速度および走行状態などを各センサーで検知し、エアコンコンピューター(またはエンジン制御コンピューター)が自動的にコンプレッサーをON-OFFさせます。

Page 42: Con Dens Or

サービス技報 VOL.445 99-12 6

基礎技術シリーズ�

制御内容は車両やエアコンの型式によって一部異なりますが、おもな制御項目をまとめると次表のとおりです。

項  目�

A/C-ECON制御� • A/Cモード�

• ECONモード�

3℃以下でコンプレッサーOFF

10℃以下でコンプレッサーOFF

エンジン回転数制御�

コンプレッサーロック判定��

注意:制御内容の基準値は一例です。��

可変容量制御�

• 燃費向上� 冷風温度を制御します。�

低回転時(約500rpm以下)はコンプレッサーOFF

エンジン冷却水が一定温度(約100℃)以上になると�コンプレッサーOFF

加速時は一定時間(数秒間)コンプレッサーOFF

冷凍サイクルの異常時はコンプレッサーOFF

コンプレッサーがロックした場合、パワーステアリング�ポンプなどと共掛けのベルトを保護�

可変容量式コンプレッサー(電気式)を冷房負荷に�応じてコンプレッサー能力制御�

�• フロスト防止�

• エンスト防止�

• 加速性向上�

• 燃費向上�

• 機器の保護�

• 共掛けベルトの保護�

加速時エアコンカット制御�

冷媒圧力異常判定�

高水温時エアコンカット制御�

目  的� 制 御 内 容�

1

2

3

4

5

6

7

• エンジン負荷の軽減�

エアコンスイッチの操作モードに応じてコンプレッサーをON-OFF制御します。

• A/Cモード(強冷)早く冷房したいときや真夏の高温時に使用します。

• ECONモード(弱冷)弱い冷房や除湿運転がしたいときに使用します。特に省エネ運転に役立ちます。

押す�

コンプレッサー�

エアコンコンピューター�

エバポレーターセンサー�

1-2 制御内容

1-3 A/C-ECON制御

アイドリング時にコンプレッサーを駆動すると、エンジン出力が不十分で、エンストする恐れがあります。そのためエンジン回転数が一定回転数以下になったときはコンプレッサーをOFFさせます。

1-4 エンジン回転数制御

Page 43: Con Dens Or

サービス技報 VOL.445 99-127

基礎技術シリーズ�

加速時にコンプレッサーをOFFして加速性の向上を図っています。加速時の判定はエンジン回転数、マニホールド負圧、スロットル開度、車速などの条件をきめ細かく定め、エンジン制御コンピューターが判断します。その結果「加速時」と判断したときは、エンジン制御コンピューターからエアコンコンピューターに信号が送られ、コンプレッサーを数秒間OFFさせます。

エ ン ジ ン 回 転 数 �

マニホールド負圧�

ス ロ ッ ト ル 開 度 �

車           速 �

+B

マグネット�クラッチ�リレー�

コンプレッサー�

加速時の�検  出�

エンジン制御�コンピューター�

エアコン�コンピューター�

1-5 加速時エアコンカット制御

冷凍サイクルの高圧側圧力をプレッシャースイッチで検出し、異常時にコンプレッサーを停止させ、冷凍サイクル機器のトラブルを未然に防止します。

冷媒圧力の検出は一般に高圧側のレシーバーとエキスパンションバルブとの間にプレッシャースイッチを取り付けて検知しています。

1-6 冷媒圧力異常判定

コンプレッサー�

レシーバー�

コンデンサー�

エバポレーター�

エキスパンション�バルブ�

プレッシャースイッチ取り付け場所�

コンプレッサーの駆動ベルトがパワーステアリングポンプと共掛けされている場合、万一コンプレッサーがロック状態のまま運転を続けると駆動ベルトを損傷し、パワーステアリング機能に悪影響を与えてしまいます。そこでコンプレッサーの回転が正常かどうかを常時把握し、万一ロック状態になった場合は速やかにコンプレッサーをOFFさせ、A/Cスイッチランプで運転者に異常を知らせます。

1-7 コンプレッサーロック判定

エンジン回転数と�

コンプレッサー�

回転数を比較�

+B

マグネットクラッチ�リレー�

コンプレッサー�

エンジン回転数信号�

コンプレッサーセンサー�

 エアコンコンピューター�

ロック�判 定�

Page 44: Con Dens Or

サービス技報 VOL.445 99-12 8

基礎技術シリーズ�

2-1 機  能(1)インジケーターチェック

各エアコンスイッチのインジケーター(ランプ)および設定温度表示を点滅させ、ランプ切れや表示機能の点検を行います。

(2)センサーチェックセンサーの入力状態をチェックし、正常か故障かを判断して表示します。また、故障状態の場合は、その故障が現在も継続しているのか、過去に発生したものかを区別して表示します。

(3)アクチュエーターチェックコンピューターから決められたパターンの動作を各アクチュエーター(ブロワモーター、吹き出し口切り替えサーボモーター、エアミックスダンパー切り替えサーボモーター、コンプレッサーなど)に出力します。点検者は各アクチュエーターがパターン通り作動しているかをチェックします。

空調制御�

「AUTOと    」を押さない場合�

:スイッチ操作を示す�

アクチュエーターチェック�    (連 続)�

アクチュエーターチェック�  (ステップ作動)�

センサーチェック�(ステップ作動)�

センサーチェック� (連 続)�

インジケーターチェック�

「AUTOと    」を押しながら�IGスイッチOFF→ON

22 自己診断機能(ダイアグノーシス)ダイアグノーシスとはエアコンコンピューターがエアコン信号系統に異常があった場合に、異常項目のコードをダイアグノーシスコネクターに出力、あるいはコントロールパネルなどに表示して点検者に知らせるシステムです。

エアコンコントロールパネル�

2-2 操作と表示

• センサーチェック(ダイアグ12の表示例) • アクチュエーターチェック(パターン2の表示例)

下表の場合を例にします。コントロールパネルの と スイッチを同時に押すと、ダイアグノーシス

機能が作動し、インジケーターチェック、センサーチェックと自動的に行います。チェック終了後はスイッチ操作で次表のように移行しチェックできます。

Page 45: Con Dens Or

サービス技報 VOL.446 00-25

第12回�第12回�基礎技術シリーズ�“ カーエアコンの基礎 ”�

今回は、トラブルシューティングの基本的な項目について説明します。�

�最終回�最終回�

11 冷凍サイクルの取り扱い注意カーエアコンのトラブルシューティングには、冷凍サイクルの点検・修理・冷媒の充てん作業が必ずともないます。この冷媒の充てん作業は、高圧ガスを扱うことにより危険がともないますので、教育を受けた専任者が実施する必要があります。

22 故障診断手順カーエアコンの故障としては、おおよそ冷凍サイクル関係と電気系統の2つに大別されます。トラブルシューティングに当っては、不具合の現象や発生状況を十分確認する必要があります。特に不具合現象が「時々発生する」または「再現しない」場合は、不具合発生時の状況をよく聞き出す、いわゆる「問診」が重要です。基本的には「問診」をもとに下記の手順で実施します。

完 了�

現 象 確 認�

修 理・確 認�

基 本 点 検�

冷凍サイクル点検� 作動圧力点検� ガス漏れ点検�

問 診�

電気系統点検�

(故障現象により)�

コントロール機構�Vベルト�サイトグラス�配管接続部�

Page 46: Con Dens Or

サービス技報 VOL.446 00-2 6

基礎技術シリーズ�

3-1 測定条件

3-3 ゲージマニホールドによる点検冷凍サイクルの低圧側、高圧側にゲージマニホールドを接続し、ゲージの指示値から判断します。

1.0

0.8

0.60.4

0.2

0-0.1 3.0MPa MPa

-0.1

2.5

2.01.5

1.0

0.5

0

低圧側� 高圧側�

33 冷凍サイクルの点検

外気温が低い場合(15℃以下)は、冷媒圧力が上がらず誤判定することがありますので注意してください。冷凍サイクルを点検する場合は、一般的にカーエアコンの負荷を最大にする次の条件で実施します。

ドア‥‥‥‥‥‥‥‥全開 温度コントロール ‥‥‥最強冷エンジン回転数‥‥‥1500rpm ブロワースピード ‥‥‥HIエアコンスイッチ‥‥ON 内外気切り替え ‥‥‥‥内気

3-2 サイトグラスによる点検サイトグラスにより冷媒の状態を確認します。

〈判  定〉

適正量 ‥‥‥ほとんど気泡が含まれていない。アイドル回転数から1500rpmまでエンジン回転数を徐々に上げていくと気泡が消えて透明になる。

過充てん ‥‥気泡が全く含まれていない。この場合は、高低圧圧力が共に高く、冷えが悪い。

冷媒不足 ‥‥気泡が連続的に通過する。

�過充てん� 適正� 不足�

正常の場合

3-1測定条件において低圧側圧力 0.15~0.25MPa

(1.5~2.5Kgf/cm2)高圧側圧力 1.37~1.57MPa

(14~16Kgf/cm2)(注意)ゲージマニホールドの指示値は条件に

より多少異なる場合があります。

現象別による指示値(代表例を示します)

(1)冷媒充てん量不足

1.0

0.8

0.60.4

0.2

0-0.1 3.0MPa MPa

-0.1

2.5

2.01.5

1.0

0.5

0

低圧側� 高圧側�

(低圧・高圧側ともに圧力が低い)

(3)コンプレッサーの圧縮不良

3.0MPa

-0.1

2.5

2.01.5

1.0

0.5

0

高圧側�

1.0

0.8

0.60.4

0.2

0-0.1MPa

低圧側�

(低圧が高く、高圧側が低い)

(2)冷媒過多・コンデンサー冷却不足

1.0

0.8

0.60.4

0.2

0-0.1 3.0MPa MPa

-0.1

2.5

2.01.5

1.0

0.5

0

低圧側� 高圧側�

(低圧・高圧側ともに圧力が高い)

Page 47: Con Dens Or

サービス技報 VOL.446 00-27

基礎技術シリーズ�

冷凍サイクルの部品を交換すると、サイクル内は大気に開放されます。空気中には必ず水分が含まれているため、この水分を取り除く必要があります。サイクル内に水分があると、その量がわずかであっても、エキスパンションバルブの小孔内で凍結したり、コンプレッサーのバルブを発錆させたりしてトラブルの原因となります。従って、冷媒を充てんする前に、冷凍サイクル内の水分を取り除く必要があります。水分を取り除くには、真空ポンプで冷凍サイクル内を真空にして水分を蒸発させる方法を用います。これが真空引き作業です。

ゲージ圧0.1MPa(1kgf/cm2G)まで�冷媒をガス状で入れる�

しばらく放置�

接続部のチェック修正�

ゲージの指針が戻る�

10分�

-0.1MPa以下�(-750mmHg)

ゲージ指示確認�

冷媒による�

気密チェック�

〔気密チェック〕�

(5分)�

3-4 ガス漏れの点検基本点検などにおいて冷媒が漏れている可能性がある場合は、ガスリークディテクターを用いて点検します。

チェック要領ゲージマニホールドを接続し、冷凍サイクル内に残っている冷媒の状態を確認します。ゲージ圧が0.4MPa(4kgf/cm2G)以下の場合は、必要に応じて冷媒を補充し、サイクル内の圧力を高め、ガス漏れ点検の精度を上げてチェックします。

プローブ�

本体�

冷凍サイクルを構成する部品、それと密接に関係する機能部品、コンプレッサーを潤滑するオイルは、HFC-134a(R134a)用カーエアコンとCFC-12(R12)用カーエアコンでは互換性はありません。コンプレッサーオイルやOリングなどは一見しただけでは区別がつかないものがありますので、取り扱いには十分注意してください。

44 部品交換エアコンサイクルの互換性

55 冷媒の充てん作業

5-1 真空引き作業

詳しい点検要領については、ガスリークディテクターに添付してある取扱説明書等を参照してください。

プローブ�接続部を�チェック�

1方向だけでなく周囲�にまんべくなく当てる�

ガスリークディテクター

Page 48: Con Dens Or

サービス技報 VOL.446 00-2 8

基礎技術シリーズ�

テストした結果の温度差(吸込口温度、吹出口温度)を求め、その時の湿度(空気線図から求める)を求めます。そして標準性能表にあてはめ図のように両方の値を直角に結ぶ交点が斜線内に入れば正常と判断できます。

10

12

14

16

18

20

22クーラー吸込・吹出口温度差�

(℃)� 50 60 70

相対湿度(%)�

交点�

真空引き作業が完了したら続いて冷凍サイクルへ冷媒を充てんします。冷媒の充てん量は、車両によって異なりますので適正量を充てんしてください。なお、充てん要領については、当社発行の製品説明書「デンソーカーエアコン」を参照してください。

5-2 冷媒充てん作業

冷媒の充てん作業は高圧ガスを扱うことにより危険がともなうため、責任者以外は勝手に行わないでください。

専任者以外は作業厳禁!!

66 性能テストエアコンの冷房性能は、空気吸込口と吹出口の温度差を測定して、標準性能表により良否を判定します。

6-1 テストの条件

①ブロワースイッチをHIにする。②温度レバーを「最強冷側」にする。③「 」モードにする。④エンジン回転数を2,000rpmにする。⑤コンデンサー圧力(コンプレッサー高圧側で代用)は1.5MPa(15.5kgf/cm2)に保つ。⑥車のドアは全部開放する。⑦日陰の停車状態で行う。⑧空気吸込口温度は25℃~35℃であること。⑨空気吸込口に乾湿温度計(湿度を求めるのに必要)を置き、吹出口中央部に乾球温度計の球部を差し込む。

以上の条件で作動させ、吹出空気温度が安定したところ(約5~6分)で両方の乾球温度計の差と吸込口空気の相対湿度を測定します。

6-2 性能表の見方

この「カーエアコンの基礎」シリーズは、今回をもって終わりとさせていただきます。長い間ご愛読いただきありがとうございました。次回より「多重通信の基礎」が始まります。

乾球温度計�

乾湿温度計�