contentss)とそれに伴う慢性腎臓病(ckd)が増加した...

8
1 糖尿病腎症により新たに透析導入される患者数 は、1998 年以来、原疾患の第 1 位を維持している。 2008 年の 1 年間ではその数が 16,053 人、新規透析 導入者数全体の 43.4%に及んだ(1)。慢性糸球 体腎炎による透析導入者数が一貫して減少している ことと対照的である。このような数字から把握され ることだけでなく、糖尿病腎症では透析導入 5 年後 の生存率が 50%程度と、他疾患に比べて際立って 予後不良であることも見過ごせない。 糖尿病腎症による透析導入後の予後が不良な理由 として、糖尿病は全身の血管病であり、結局は心血 管疾患によって寿命が規定されやすいことが挙げら れる。よって、腎機能の維持・改善のみならず、全 身の血管障害を管理するという包括的な観点での治 療戦略が求められる。 最近まで糖尿病腎症は慢性高血糖によって生じる 細小血管症に基づくもので、糖尿病に特異的な合併 症ととらえられてきた。治療においても、血糖や血 圧を中心とする細小血管症リスクファクターの管理 が重要視され、脂質に関しては、糖尿病に伴いやす いものの特異的とは言えない大血管症のリスクファ クターとして位置付けられることが多かった。 その一方、腎機能低下に伴い諸種の脂質異常を来 すことは古くから知られている。最も特徴的なのは ネフローゼ症候群における LDL C の上昇だが、ほ かにもリポ蛋白リパーゼ活性低下による TG rich リポ蛋白の増加と HDLC の低下、Lp(a)の増加 など、脂質の‘量的異常’が報告されている。また 脂質の‘質的異常’として、血管障害性の強い酸化 LDLや small dense LDLの増加があり、腎不全患 者から分離された LDLは血管透過性が高く容易に 動脈壁内に浸潤するといった報告がみられる。 糖尿病の合併症 最近の話題 糖尿病腎症進展抑制における 脂質管理の意義 東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 教授 宇都宮 一典氏…………………………… DIABETES NEWS ……………………… 事例研究 フットケア・フロントライン 湘南鎌倉総合病院 足外来 …… CONTENTS 学会レポート 55回 日本透析医学会学術集会・ 総会 42回 日本動脈硬化学会総会・ 学術集会 58回 日本心臓病学会学術集会 …… 文献 Pick Up 脂質低下強化療法が糖尿病 網膜症進行を抑制 …………………… 糖尿病腎症の治療に求められる 全身の血管病変を見据えた視点 糖尿病腎症 進展抑制における 脂質管理の意義 糖尿病の合併症 最近の話題 宇都宮 一典東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 教授 1979年に東京慈恵会医科大学卒業、同大学 院を修了し、2001年からは米コロラド大学に留 学。2002年に東京慈恵会医科大学糖尿病・ 代謝・内分泌内科 助教授。2010年から現職。 腎機能低下により、脂質の ‘量’と‘質’の異常を来す 3 1 4 6 8 V o l . 2 N o . 3 2 0 1 0

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Page 1: CONTENTSS)とそれに伴う慢性腎臓病(CKD)が増加した ことからも、再考すべき時期にきている。つまり、 Met Sの増加により、糖尿病未発症にもかかわら

1

 糖尿病腎症により新たに透析導入される患者数

は、1998 年以来、原疾患の第 1 位を維持している。

2008 年の 1 年間ではその数が 16,053 人、新規透析

導入者数全体の 43.4%に及んだ(図 1)。慢性糸球

体腎炎による透析導入者数が一貫して減少している

ことと対照的である。このような数字から把握され

ることだけでなく、糖尿病腎症では透析導入 5 年後

の生存率が 50%程度と、他疾患に比べて際立って

予後不良であることも見過ごせない。

 糖尿病腎症による透析導入後の予後が不良な理由

として、糖尿病は全身の血管病であり、結局は心血

管疾患によって寿命が規定されやすいことが挙げら

れる。よって、腎機能の維持・改善のみならず、全

身の血管障害を管理するという包括的な観点での治

療戦略が求められる。

 最近まで糖尿病腎症は慢性高血糖によって生じる

細小血管症に基づくもので、糖尿病に特異的な合併

症ととらえられてきた。治療においても、血糖や血

圧を中心とする細小血管症リスクファクターの管理

が重要視され、脂質に関しては、糖尿病に伴いやす

いものの特異的とは言えない大血管症のリスクファ

クターとして位置付けられることが多かった。

 その一方、腎機能低下に伴い諸種の脂質異常を来

すことは古くから知られている。最も特徴的なのは

ネフローゼ症候群における LDL�C の上昇だが、ほ

かにもリポ蛋白リパーゼ活性低下による TG rich

リポ蛋白の増加と HDL�C の低下、Lp(a)の増加

など、脂質の‘量的異常’が報告されている。また

脂質の‘質的異常’として、血管障害性の強い酸化

LDLや small dense LDLの増加があり、腎不全患

者から分離された LDLは血管透過性が高く容易に

動脈壁内に浸潤するといった報告がみられる。

糖尿病の合併症 最近の話題

糖尿病腎症進展抑制における脂質管理の意義東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科 教授宇都宮 一典氏 ……………………………

DIABETES NEWS ………………………

事例研究フットケア・フロントライン

湘南鎌倉総合病院 足外来 ……

CONTENTS学会レポート第55回 日本透析医学会学術集会・ 総会第42回 日本動脈硬化学会総会・ 学術集会第58回 日本心臓病学会学術集会 ……

文献 Pick Up

脂質低下強化療法が糖尿病網膜症進行を抑制 ……………………

糖尿病腎症の治療に求められる全身の血管病変を見据えた視点

糖尿病腎症進展抑制における脂質管理の意義

◆糖尿病の合併症 最近の話題

宇都宮 一典氏東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科 教授

1979年に東京慈恵会医科大学卒業、同大学院を修了し、2001年からは米コロラド大学に留学。2002年に東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科 助教授。2010年から現職。

腎機能低下により、脂質の‘量’と‘質’の異常を来す

3

1

4

6

8

Vol.2 No.3

2010

Page 2: CONTENTSS)とそれに伴う慢性腎臓病(CKD)が増加した ことからも、再考すべき時期にきている。つまり、 Met Sの増加により、糖尿病未発症にもかかわら

2

0

5

10

15

(千人)

糖尿病腎症慢性糸球体腎炎腎硬化症

1983

297

1,538

5,750

602

3,770

7,734

1,453

7,010

9,711

2,002

10,729

10,506

2,824

13,632

9,668

3,936

16,053

8,411

1988 1993 1998 2003 2008(年)

図2 CKDとMet─Sの概念を取り入れた 糖尿病腎症発症様式のパラダイムシフト

心血管疾患

発症リスク

耐糖能異常 糖尿病

蛋白尿

血糖

心血管疾患

発症リスク

メタボリックシンドローム 糖尿病

蛋白尿CKD

血糖

図1 原疾患別にみた新規透析導入者数の推移[日本透析医学会 統計調査委員会:わが国の慢性透析療法の現況 透析会誌 43(1):1〜35、2010]

 腎機能低下がなぜこのような脂質

異常を招来するのか、その機序はま

だ明確ではないものの、RENAAL

スタディなどで脂質異常が腎機能の

予後増悪因子であることが示されて

いる。脂質異常を大血管症・細小血

管症双方のリスクファクターと位置

付け、積極的な治療介入が今後は重

要になるだろう。

 ところで、前述の「糖尿病腎症は慢性高血糖によ

る細小血管症に基づく糖尿病に特異的な合併症」と

いうとらえ方は、メタボリックシンドローム(Met

�S)とそれに伴う慢性腎臓病(CKD)が増加した

ことからも、再考すべき時期にきている。つまり、

Met�S の増加により、糖尿病未発症にもかかわら

ず微量アルブミン尿陽性を呈する CKD 患者が増え

ており、それらの患者の多くはやがて糖尿病を発症

し、糖尿病発症時点では CKD ステージがより進行

してしまっている(図 2)。糖尿病腎症に対して真

に「早期治療」をするのであれば、血糖値が診断基

準を満たすのを待たず介入しなければならない。こ

れはちょうど、動脈硬化進行抑制のために耐糖能異

常の段階からそれを是正すべきであることと同様だ。

 これら、Met�S、CKD、心血管疾患は「インス

リン抵抗性」というキーワードで結び付けられる。

周知のように、Met�S は内臓脂肪の過剰蓄積により

生じたインスリン抵抗性を基盤に、高血糖、脂質異

常、高血圧が同時多発的に起き、アディポカイン産

生異常が加わって血管障害が促進される病態である。

 糖尿病患者を対象としたグルコースクランプによ

りインスリン抵抗性を検討した報告では、微量アルブ

ミン尿陽性例は陰性例に比し有意にインスリン抵抗

性が亢進していることが示されている。また、Met

�S の構成因子が集積するほど糸球体瀘過値(GFR)

が低下し CKD 発症リスクが上昇するとの報告もあ

る。これらは糖尿病か否かを問わず、腎機能低下が

微量アルブミン尿期からインスリン抵抗性と密接に

関係しながら進展することを示唆している。

 以上をまとめると、糖尿病やその前症であること

が多い Met�S において、腎に対する脂質毒性の本

態は、インスリン抵抗性を機軸に腎機能低下と脂質

異常を生じ、双方が互いに拍車をかけ血管障害が進

展するという悪循環だと考えられる。それゆえに全

身の血管障害を見据えた包括的な観点での治療戦略

が求められるのであって、高血糖や高血圧だけでな

く、脂質異常も含めたすべての因子是正が、腎機能

低下の抑制につながると言える。

 糖尿病腎症の進展抑制における血糖・血圧管理の

有用性については豊富なエビデンスがあるが、脂質

管理についてはこれまでやや出遅れの感があった。

これは既に述べたように、「糖尿病の合併症は糖尿

病発症後に生じる細小血管症」であり、「脂質異常

は大血管症のリスクファクター」と考えられていて、

脂質と糖尿病腎症を結び付けた臨床研究が少なかっ

メタボ型糖尿病では、糖尿病発症以前から腎症が進行する

脂質異常症の治療による糖尿病腎症進展抑制の可能性

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図3 FIELDスタディでみられたフェノフィブラートの 糖尿病腎症進展抑制効果 1,2)

1)Lancet: 366 1894〜1861, 2005 2)Diabetes Vasc. Dis. Res. : 4(suppl 3)S15-S20, 2007

12

11

10

9

8

7

(%)

11.0%

9.5%

8.2%

9.4%

プラセボ群 フェノフィブラート群 フェノフィブラート群プラセボ群

p<0.002(フェノフィブラート群vsプラセボ群)Mann-Whitney test

14%抑制

15%増加

アルブミン尿症への進行 アルブミン尿症の改善

進行または改善の割合

 Met�S や糖尿病等の早期発見・

発症予防による心血管疾患の減少

をめざし、特定健診・保健指導(メ

タボ健診)が 2008 年度からスタ

ートしたが、その初年度の実施状

況が厚労省から報告された。特

定健診の対象者は約 5,590 万人で、

うち受診したのは約 1,990 万人と

38.3%。厚労省が掲げる 2012 年

度時点の受診率 70%という目標

の半数程度に止まった。受診者の

うち保健指導の対象となったのは

約 390 万人。そのうち保健指導を

最後まで受けたのは 7.8%だった。

 2010 年 6 月に発売されたイン

クレチン関連薬の GLP�1 受容体

作動薬「リラグルチド」の適正使

用に関する緊急情報が、厚労省や

日本糖尿病学会から出された。イ

ンスリン依存状態にある患者に対

し、インスリン製剤をリラグルチ

ドに処方変更したために、高血糖

やケトアシドーシスおよびそれに

よる死亡例が発生したという報告

を受けての発表。GLP�1 受容体

作動薬はインスリン製剤の代替薬

ではないことなどの周知徹底を求

め、厚労省は「使用上の注意」の

改訂を指示。日本糖尿病学会は「イ

ンスリン依存状態の判断が難しい

場合は専門医に委ねるべき」とし

ている。

 2010 年 9 月、日本脂質栄養学

会は「コレステロール値は高いほ

うが死亡率が低い」という研究結

果をまとめ、『長寿のためのコレ

ステロールガイドライン』を発表。

これに対し、日本医師会、日本医

学会、日本動脈硬化学会は「科学

的な根拠がない」との声明を発表

した。

たことによるのかもしれない。しかし、糖尿病患者

にスチタンを投与するとコレステロール低下ととも

にアルブミン尿が減少するという筆者らの報告に続

き、スタチンによる GFR 低下率の緩和などが、諸

家より報告されている。

 もっともスタチンによるコレステロール低下療法

の腎保護作用については否定的な報告もあり、エビ

デンスが十分確立されたとは言い切れないだろう。

一方、インスリン抵抗性に伴う脂質異常として、よ

り関連性の強い高 TG については FIELD スタディ

で興味深い結果が報告されている。

 FIELD スタディでは TG 低下薬であるフェノフ

ィブラートがアルブミン尿症の進行を抑制し、改善

を促す結果が示された(図 3)。フェノフィブラー

トは PPAR  のリガンドであり、PPAR  は腎にも

発現しているため、スタチンとは異なる経路で腎に

対する直接作用をもつ可能性がある。また、糖尿病

に伴う脂質異常の治療ターゲットは LDL�C よりむ

しろ TG やレムナントであることが、フェノフィブ

ラートの有効性につながったものと考えられる。

 長い間、糖尿病腎症は「一度起きたら元には戻ら

ない」と考えられてきた。しかし、腎症発症後に膵

移植を受けた患者が代謝の正常化により約 10 年を

経て、メサンギウム基質の縮小、糸球体・尿細管基

底膜肥厚の退縮など腎組織の著明な改善がみられ、

アルブミン尿の消失や顕性蛋白尿からアルブミン尿

へ軽快するという報告がなされて以降、糖尿病腎症

は regression 可能な疾患と位置付けられるように

なった。そして近年は RA 系阻害薬をはじめとす

る腎保護作用をあわせもつ降圧薬の普及とあいまっ

て、remission をめざす時代に入っている。

 脂質の腎機能への関与メカニズムはいまだ不明点

が多く、その解明は大きな課題である。同時に、目

の前の患者の予後改善を期し、血糖と血圧の厳格な

管理に加え、腎機能が著しく低下する前の早期に、

脂質にも妥協せず介入することが欠かせない。

DIABETES NEWS

糖尿病腎症は早期に積極介入しremission をめざす時代

◆糖尿病の合併症 最近の話題

厚労省・日本糖尿病学会がGLP-1受容体作動薬の適正使用で緊急情報

コレステロールが高いほうが長生き!?

特定健診 初年度の受診率38%、保健指導終了は8%足らず

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4

 「2001 年 12 月 19 日のこ

とです」。湘南鎌倉総合病

院の副院長で腎臓内科医の

小こばやししゅうぞう

林修三氏は、9 年前のそ

の日のことを、昨日の出来

事のように語る。

 「ある看護師に、一人の

腎不全患者さんの足にでき

た小さな傷の写真を見せら

れました。5 日後に診察す

ると傷は既に潰瘍になっていて、直ちに外科にコン

サルテーションしたものの、2 カ月後に下肢切断と

なり、その 2 カ月後には亡くなりました」。

 わずかな傷の発見から 4 カ月での死という急変に

衝撃を受けた小林氏は、院内の下肢切断患者の予後

を調べてみた。すると「透析患者さんの下肢切断 1

年後の生存率 30%」という事実が浮かび上がった。

「それまで ASO は循環器科や血管外科の問題だと

思っていたのです」。今でこそ、腎不全が下肢切断

のリスク因子であり、下肢切断が生命予後に直結す

ることは教科書的な事実だが、当時、それに気付い

ていた医師がどれだけいただろうか。

 「まず始めたことは下肢切断についての情報収集、

そして院内スタッフ全員が下肢切断の意味を正しく

理解し、そして共通認識するための働きかけを行い

ました」。

 小林氏の活動に、最初にコメディカルが応じた。

透析中に患者さんの足を観察するようになった。す

ると傷がみつかる。処置をするが思うように回復し

ない。基礎にある虚血の解除が先決と、循環器医に

協力を求め、血管エコー・造影、血行再建へと診療

領域を拡大。徐々に院内の医師・コメディカル全員

が‘足’の重要性に気付き始める。それが 2004 年前

後のことだという。偽陰性が多い ABI にかわる指標

として、全国の透析施設の中で最も早い時期に SPP

(皮膚組織灌流圧)を測定し始めたのもこのころだ。

 積極的に SPP を測定すると、下肢虚血はなにも

透析患者だけでなく、透析導入前の患者、あるいは

腎疾患以外の患者にも多いことがわかってきた。特

に糖尿病の存在は見逃せない。そこで糖尿病医が加

わり、院内のフットケア診療体制が確立され、後年

の足外来開設へとつながっていく。しかし当時はま

だ、下跂切断回避には予防的介入が最も効果的であ

ることにようやく気付いたばかりだった。

 「成書には下肢虚血の病期は Fontaine 分類でⅠ

度からⅣ度へ段階的に進行するとあります。しかし

臨床でⅡ度やⅢ度をみることは少なく、短期間でⅠ

度からⅣ度へ進み、血行再建が求められる症例が多

かったのです。血行再建を要するほどなら当然その

前から抗血小板薬を用いるべきなので、SPP を測

定し Fontaine Ⅰ度の段階で診断するよう心掛けま

した。しかし、診断はできても治療となると困りま

した。下肢虚血治療の抗血小板薬として多用される

シロスタゾールには頻脈の副作用があり、心疾患を

併発していることの多い透析患者さんには使いづら

かったのです」。そこで小林氏は PGI2 誘導体のベ

ラプロストに着目。同薬がシロスタゾールと同等に

SPP を改善し、頻脈は生じないことを J�PADD 試

験にて確認した。また、SPP は虚血評価に有用だ

が測定部位や透析前後などで変動する。そこで今は

「透析患者における SPP の評価法と、末梢動脈疾患

のガイドラインの策定が直近で一番の課題」と、そ

の対策を視野に入れている。

 このような臨床に立脚した研究を続けることと並

行し、効率よい下肢診療のためのディレクター的な

振る舞いも小林氏に求められた。

先進的医療サービスで定評のある湘南鎌倉総合病院の「足外来」。下肢診療の理想型を常に探り続けるその活動は、一人の腎臓内科医の悔悟から始まった。

虚血の評価にSPPをいち早く導入FontaineⅠ度からの介入をめざす

下肢診療の窓口としての機能+プラス

フットケアが足外来の役割

小林修三氏

湘南鎌倉総合病院 足外来足を救って命を守る。共通理念の下、多職種スタッフが機能的に協力

事例研究 フットケア・フロントライン

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5

 「下肢診療は時間も人手もかかるわりに保険点数

が低く、病院経営上、投入可能な人的資源が限られ

ます。『人手不足でできません』との言い訳は簡単

ですが、医療のプロであるからには、なんとか工夫

し、目の前の患者さんを救わなくてはなりません」。

 今年になり、これまでの下肢診療の経験を生かし、

腎臓内科医が中心となって、改めて「足外来」とい

う専門外来が開設された。曜日により、糖尿病医も

診察する。特徴的なのは院内におけるその位置付け

である。通常、フットケア外来というとコメディカ

ルによる爪切り、胼べん

胝ち

・鶏眼の処置が中心のことが

多い。もちろん同院の足外来も同様の処置を行うが、

メインの機能は下肢病変を持つ患者の必要な治療を

すべて把握し、各診療科に振り分けることだ。例え

ば足に傷を負った患者が形成外科から回ってくると、

虚血の評価はもちろん、糖代謝や腎機能なども含め

て足外来でチェックする。その結果、複数の診療科

にわたる治療が必要と判断された場合、2 週間に 1

回開かれるフットケアカンファレンスで、何科の医

師がどこまで診るかを調整する。決して足の傷だけ

治して帰すようなことはない。「言ってみれば院内

に下肢病変を見付けるネットを広げ、それにかかっ

た患者さんを足外来に集め、各科の得意な専門技術

を集約してベストの治療を尽くす仕組みです」。

 ただ、このような理想的医療の供給は、先進的な

取り組みで知られる湘南鎌倉総合病院だからこそで

きるという面もあるだろう。「確かに当院は総合病

院というだけでなく‘for the patient’の理念の下、

スタッフが時間を都合し互いに協力しあう伝統が根

付いています。しかし、地域連携パスを作り、だれ

かが熱意をもってキーマンの役を果たせば、きっと

どこでも可能なのではないかと思います」。

 ‘あの日’から 9 年が過ぎ、同院の下肢診療成績

は格段に向上した。小林氏本人は先駆者と称される

ことを強く否定するが、透析の現場から‘足’の重

要性を早くから報告し続け、実臨床に多くの影響を

及ぼしてきたことは間違いのない事実だ。その小林

氏の胸中には今、二つの夢がある。一つは血管病に

対して内科と外科の両面からアプローチできる総合

血管病医の育成。そしてもう一つは、海外では一般

的な足を専門に診る足病医制度の確立だ。

 「いずれもすぐには無理でしょう。しかし、この

二つが現実のものになれば、透析患者さんの下肢切

断がゼロになる日も来るのではないでしょうか。そ

の日をめざすことが、9 年前に亡くなった患者さん

から教えられたことへの、今の私ができる申し訳だ

と考えています」。

「足病学と真のフットケアの確立が これからの大きなテーマです」

同院は本年9月に移転新築。鎌倉の丘陵地に旧院の2.5倍に及ぶ広大な敷地を有する。院内はアメニティーに細心の配慮したデザイン。

湘南鎌倉総合病院「足外来」の位置づけ

足外来下肢病変の診察・治療と

背景因子の検査

2週に1回、関係各科の医師とコメディカル

が参加

コメディカルによるフットケア

フットケアカンファレンス腎臓内科

皮膚科

形成外科

整形外科

血管外科

循環器内科

糖尿病内分泌内科

ハイリスク患者

腎臓内科医 糖尿病医

担 当

各科による専門治療・リスク管理

看護師

看護師医師

医師

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 藤田保健衛生大学医学部内分

泌・代謝内科の四し ば た

馬田 恵めぐみ

氏は、2

型糖尿病患者における血管障害合

併症の既往と心血管疾患の新規発

症の関連を、7 年間追跡したコホ

ート研究の結果から報告。570 例

の患者(既往症は脳卒中が 66 例、

 透析患者に占める糖尿病腎症の

比率が急増し、透析医が血糖管理

や合併症スクリーニングにあたる

ケースが増えており、その手引き

となるガイドライン(GL)の策定

が求められている。

 GL 作成に向けて現状の課題が

討論された本セッションの中で、

東京女子医科大学糖尿病センター

の馬ば ば

場園ぞの

哲てつ

也や

氏は「糖尿病性腎症

患者の網膜症管理における内科医

の役割」と題し講演。同院で透析

導入した 612 名の糖尿病腎症患

者の解析から、非増殖網膜症では

透析導入時の血糖管理レベルが網

膜症の進展に影響するが、増殖網

膜症に進行している症例では血糖

管理レベルとの関連性がみられな

いことを報告した。

 また、網膜症に対して有効また

は有害という相反する報告があり

評価が一定していないエリスロ

ポエチン製剤(EPO)について

51 眼で網膜症病期の変化を検討

し、硝子体手術後などのハイリス

ク患者 5 例で EPO 開始後に硝子

体出血が生じたものの、全例解析

では著明な変化はみられなかった

と述べた。しかし、EPO 以外に

も透析施行時のヘパリン等による

易出血など、透析を巡っては未解

決の課題があるため「GL 策定に

あたっては眼科医の定期的なコン

サルトが必要であることを明記す

べき」とまとめた。

 本セッションではこのほか、透

析患者の血糖管理には HbA1c よ

りもグリコアルブミンのほうが血

 PAD の評価には ABI が多用さ

れるものの、透析患者に多い動脈

石灰化が進行した症例ではその信

頼性が低下する。そのため SPP

が代用されることが少なくないが、

測定部位や血圧、除水量等による

SPP への影響は不明な点も多い。

湘南鎌倉総合病院腎免疫血管内科

の石いしおかくにひろ

岡邦啓氏は、10 名の糖尿病

患者を含む 16 名の透析症例を対

象に、透析施行の前と後で SPP

を測定し、末梢循環動態とその影

響因子の検討結果を報告した。透

析施行後の SPP 値は施行前より

有意に低くなり、その影響因子と

して施行前後の体重変化量、血圧、

心収縮率、ABI と強い相関を示

す一方、施行前後の血圧変化とは

相関しなかった。また透析歴が長

い群では、施行後の SPP がより

低値となることが示された。石岡

氏は「今後、PAD の画像所見と

SPPの関連を引き続き検討したい」

と語った。

 糖尿病では末梢動脈疾患(PAD)

が好発するが、PAD の薬物治

療に関する国際的ガイドライン

TASC Ⅱではシロスタゾールを間

歇性跛行症状の薬物療法として推

奨している。しかし、シロスタゾ

ールは心拍数増加の副作用等によ

り、心疾患を有することの多い透

析患者では使用できないことが少

なくない。一方、PGI 2 製剤のベ

ラプロストは血管拡張作用や抗血

小板作用を有し間歇性跛行に有効

であるものの、透析患者を対象と

したエビデンスはない。湘南鎌倉

総合病院腎免疫血管内科の大おおたけ

剛たかやす

靖氏らは、ベラプロストのシロ

スタゾールに対する非劣性を検討

した前向き多施設共同研究(J �

PADD)の結果を発表した。

 SPP が 50mmHg 未満で有症状

または SPP40mmHg 未満の患者

68 名を 2 群に分類(シロスタゾ

ール群には類薬のサルポグレラー

トも含む)。24 週間後の検討では

2 群とも SPP の有意な改善を示

し、その変化量に群間差はなかっ

たが心拍数は、サルポグレラート

を除いたシロスタゾール群のみ有

意に増加していた。以上より大竹

氏は「シロスタゾールを使えない

透析患者でもベラプロストが同等

に有効であることが明らかになっ

た」と結論づけた。

糖値との相関がよいものの、GL

で目標値を設定するにはデータが

まだ不十分な現状が報告された。

SPPを用いた維持透析患者における透析前後の末梢循環動態についての検討

一般演題

Macrovascular events during 7-years follow-up of type2 diabetic patients

一般演題

透析患者の末梢動脈疾患に対するベラプロストナトリウムの治療効果

一般演題

透析患者の糖尿病治療ガイドラインの作成に向けて

学会・委員会企画セッション

【2010年6月18日〜20日・神戸】会長:あかね会 土谷総合病院副院長 川西秀樹氏

第55回日本透析医学会学術集会・総会

【2010年7月15日〜16日・岐阜】 会長:名古屋市立大学大学院医学研究科基礎医科学講座生物化学分野教授・副学長 横山信治氏

第42回日本動脈硬化学会総会・学術集会

SPP : Skin Perfusion Pressure ABI : Ankle Brachial pressure Index CAVI : Cardio Ankle Vascular Index IVUS : Intra Vascular Ultra Sound OCT : Optical Coherence Tomography MDCT : Multi Detector row CT SPECT : Single Photon Emission Computed Tomograph

Page 7: CONTENTSS)とそれに伴う慢性腎臓病(CKD)が増加した ことからも、再考すべき時期にきている。つまり、 Met Sの増加により、糖尿病未発症にもかかわら

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 近年行われた大規模スタディに

は、短期間の血糖管理強化によ

る大血管障害抑制効果の限界を示

すものが多い一方、1990 年代に

行われたスタディの追跡調査から

は、10 年以上の観察期間を経た

後、ようやく血糖管理の効果が認

められることもわかってきた。広

島市立安あ さ

佐市民病院循環器内科の

土ど て

手慶けい

五ご

氏は「The earlier, the

better : 糖尿病大血管障害抑制の

ための仮説は、冠動脈の解剖に

どのように反映されているのか」

と題して講演。急性冠症候群で

IVUS または OCT を施行した患

者、および糖尿病歴が 20 年以上

に及び無症候性冠動脈病変をロー

タブレーターで治療し得た患者か

ら、粥腫崩壊が観察された群と観

察されなかった群の背景因子を検

討。両群間に有意差がみられた

のは、Met�S の存在(崩壊群 63

% vs 非崩壊群 28%)やBMI高値

(25.1±3.1 vs 22.5±2.3)、若年(64

±11歳 vs 70±8歳)で、糖尿病の

有無(42% vs 44%)は有意差がな

かった。このことから「粥腫崩壊

は糖尿病の経過の比較的早い段階

で生じることが多く、これが‘The

earlier, the better’につながる

のではないか」と述べた。その一

方で罹病期間が 20 年以上の長期

に及ぶと、高度の石灰化が生じ粥

腫非崩壊型の冠動脈疾患が増えて

くることを指摘した。

 東京大学医学部附属病院循環器

内科の藤ふじ

田た

英ひで

雄お

氏は「冠危険因子

としての糖尿病網膜症:糖尿病に

対する新たなアプローチ」という

テーマで、網膜症を有する患者は

無症候であっても冠動脈疾患を高

率に発症していることを同院のデ

ータから報告。同院眼科・糖尿病

代謝内科に通院していて網膜症が

あり、循環器疾患の既往や自覚症

状はない 75 歳未満の糖尿病患者

に、心エコー、トレッドミル負荷、

MDCT、SPECT 等を施行したと

ころ 27%に有意狭窄を見出だし、

しかもその 43%が 3 枝病変、34

%が 2 枝病変と、重症度の高い症

例が多かった。

 東邦大学医療センター佐倉病院

内科の南な

雲ぐも

彩あや

子こ

氏、宮みやしたよう

下洋氏らの

グループは、これまで 2 型糖尿

病患者にスタチンや ARB を投与

することで動脈壁柔軟性の指標で

ある CAVI が改善することを報

告してきたが、本学会では糖尿病

で高頻度にみられる高TG血症患

者に対するフェノフィブラートの

CAVI 改善効果を報告した。

 TG150mg/dL 以上の患者 35 例

(うち糖尿病は 16 例)にフェノフ

ィブラート 100mg/ 日を6カ月間

投与したところ、TC、TG、HDL�C、

non HDL�C などの脂質プロファ

イルに加え CAVI も有意に改善

した。また CAVI の変化量は TC

や non HDL�C の変化量と有意

に相関した。しかし TG 変化量と

の相関は有意でなかった。これ

らより、フェノフィブラートは高

TG 血症患者の血管 stiffness(血

管弾性)を改善し、その機序には

non HDL�C 低下の関連が示唆さ

れると結論づけた。

急性冠症候群 90 例、慢性心不全

26 例、増殖網膜症 157 例、蛋白尿

178 例)から、新たに 44 件の脳梗

塞が発生。その発生と有意な関連

がみられた既往症は、急性冠症候

群、脳卒中、慢性心不全であり、

網膜症と蛋白尿の既往との関連は

有意でなかった。

 一方、570 例から新たに発生し

た急性冠症候群や心不全と、脳卒

中の既往との関連はいずれも有意

でなかった。以上より、血管障害

合併症の既往がある 2 型糖尿病患

者では脳梗塞発症予防が重要であ

る反面、脳卒中の既往と心疾患の

発生との関連はそれほど強くない

と結論した。

 糖尿病患者に無症候性虚血が

多発することは周知であるが、リ

スク上昇の具体的な程度や、どの

ような症例で積極的検査をすべき

かについては必ずしも明確でない。

高瀬クリニック(高崎市)の近こんどう

藤 誠まこと

氏は同院で MDCT を施行し冠動

脈有意狭窄を認めた 777 例のうち、

747 例に血管造影を実施。狭心症

症例に占める無症候性患者の割合

は、糖尿病群で 26%、非糖尿病群

では 17%で、有意な群間差があ

った。しかし、非侵襲で低被曝と

はいえ糖尿病患者全例に MDCT

を施行することは現実的でない。

そこで、対象患者の背景因子をロ

ジスティック回帰分析したところ、

年齢と冠危険因子の保有数が、無

症候性狭心症の存在に寄与してい

た。さらなる検討の結果から、近

藤氏は「70 歳以上で糖尿病以外

の危険因子を 2 つ以上もつ男性に

は、症状がなくても冠動脈 CT を

行った方がよい」とまとめた。

糖尿病と心血管病

パネルディスカッション

冠動脈有意狭窄を有する糖尿病で狭心症状を呈さない患者の頻度

一般演題Fenofibrate administration for the high TG patients inproves

non HDL-C and CAVI

一般演題

【2010年9月17日〜19日・東京】会長:東京大学大学院医学系研究科循環器内科教授 永井良三氏

第58回日本心臓病学会学術集会

SPP : Skin Perfusion Pressure ABI : Ankle Brachial pressure Index CAVI : Cardio Ankle Vascular Index IVUS : Intra Vascular Ultra Sound OCT : Optical Coherence Tomography MDCT : Multi Detector row CT SPECT : Single Photon Emission Computed Tomograph

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血糖・脂質の管理強化による糖尿病網膜症の進行抑制

SEASONAL POST監修・企画協力:糖尿病治療研究会 提供:科研製薬株式会社 企画・編集・発行:糖尿病ネットワーク編集部(創新社)

2010年12月作成CLPD136-10L-20-SO1

シーズナルポスト Vol.2 No.3 2010年12月1日発行

 血糖管理の強化によって標準治

療より死亡が増え、急遽継続が中止

されたことで注目された ACCORD

試験だが、その試験において糖尿

病網膜症の進行抑制効果を検討し

たACCORD Eye試験の結果が発

表された。

 ACCORD 試験では登録され

た 2 型糖尿病患者 10,251 人全員

を、血糖管理強化群(目標 HbA1c

〈NGSP 値〉6.0%未満)と標準治

療群(同 7.0 〜 7.9%)に分け、合

併症抑制効果を比較するという血

糖管理に関する試験が行われたが、

同時に脂質管理、血圧管理に関す

る試験も行われた。

 脂質管理に関する試験は、ベ

ースラインで脂質異常症と診断

された5,518人を脂質管理強化

群(フェノフィブラート 160mg/

日〈リピディル®200mg/ 日に相

当〉+シンバスタチン)と標準治

療群(プラセボ+シンバスタチン)

の 2 群で比較。残りの4,733人は

血圧管理強化群(目標収縮期血圧

120mmHg 未満)と標準治療群(同

140mmHg 未満)の 2 群に分けて

比較検討された。この 2 試験は血

糖管理に関する試験と異なり、当

初予定されていた試験期間終了ま

で続けられた。

 ACCORD Eye 試験は、2,856人

における試験開始4年後の各群の

網膜症の進行を、ETDRS(Early

Treatment Diabetic Retinopathy

Study)レベルで3段階以上の悪化、

またはレーザー光凝固や硝子体手

術の施行で判定したもの。2,856 人

のうち、血糖管理強化群は1,429

人、同標準治療群は 1,427人、脂

質管理強化群は 806 人、同標準治

療群は 787 人、血圧管理強化群

は 647 人、同標準治療群は 616 人。

 ベースラインにおける HbA1c

中央値は 8.0%で、1 年後に血糖

管理強化群は 6.4%、同標準治

療群は 7.5%に低下し、脂質に関

しては、TG がベースラインの

162mg/dL から 1 年後に管理強

化群で 120mg/dL、標準治療群

147mg/dL に低下、LDL�C はベ

ースラインの 93mg/dL から両群

ほぼ同等に低下した。収縮期血圧

はベースラインの137mmHgから

1 年後に管理強化群で 117mmHg、

標準治療群 133mmHg となった。

これらは、管理強化群と標準治療

群で有意な差があった。

 4 年経過した時点で 253 人が、

網膜症が進行したと判定された。

これを試験別にみると、血糖管理

強化群は標準治療群に対してオッ

ズ比 0.67(p=0.003)、脂質管理

強化群は標準治療群に対しオッズ

比 0.60(p=0.006)で、それぞれ

有意に抑制されていた。一方、血

圧管理強化群の標準治療群に対す

るオッズ比は 1.23(p=0.29)で、

有意でなかった。

 網膜症の抑制に、既知の血糖の

厳格な管理とならび、脂質、とく

に TG の厳格な管理が有効である

ことを示した結果と言える。

ACCORD試験における、血糖・脂質・血圧の各強化療法と標準療法の比較

網膜症の進行をサブ解析したACCORD Eye試験

血糖と脂質の管理強化で、網膜症の進行が有意に抑制される

脂質低下強化療法が糖尿病網膜症進行を抑制Effects of medical therapies on retinopathy progression in type 2 diabetesThe ACCORD study group and ACCORD Eye study group. N Engl J Med 363(3); 233-244, 2010

文献 Pick